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イラスト・SSスレ

27空憂 愛:2011/07/17(日) 00:53:49
>>26


 その声は微かであるが、確かに私の耳元で囁かれている。
 気が遠くなるような、そんな気がした。
 逃げ出したいという衝動に、身体が支配されていく。

 それでも、私は逃げなかった。
 すると、しだいにその囁き声は遠のき、やがては聞こえなくなった。 

 恐る恐る目を開ける。球体の影はもうなかった。
「お、終わった……」
 腰が抜ける。
 今の今まで、心臓を掴まれていたような気さえする。
 
「……みずっち」

 みずっちは何事もなかったかのように、すやすやと眠っていた。
 ベッドからは血の跡も無く、蒼白だったその顔にも生気が戻っている。

 恐らく、あの病魔は転移を行ったのだろう。
 病魔を取り除く方法は二つある。一つは、物理的に排除する方法。もう一つは病魔自身に、宿主を替えさせる方法である。
 前者はまさに実力行使であり、後者は対話によって行う。
 だが、一度物理的に排除しようとした病魔に、対話は通じない。もちろん、小型の病魔であれば、こちらの実力を持って、話を聞かせることはできるが、今回は私の方が圧倒的に実力不足だった。
 宿主の死とともに、病魔たちも消滅する。
 顕現させられた直後は、基本的に血が上っている彼ら病魔であるが、冷静に考えれば、病魔たちは宿主とともに滅びるよりも、宿主を次々に替えていった方が、長く存在できる。
 今回、あの"夜"の病魔の体液によって、あの目玉の病魔は視界は封じられていた。
 それによって、我に返り、自ら転移を行ったのかもしれない。
 転移の対象に私を選ばなかったのは幸いであるが、もし、あのとき動いていれば、恐らく私に転移していたことだろう。


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