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持ち帰ったキャラで雑談 その二

1名無しさん:2007/05/13(日) 21:30:22
リディア「僭越ながら、新しいスレを立てさせてもらいますね」
アーチェ「本スレにはあげられないのをあげる場所だから。主にSSかな」
リディア「それでは、楽しんでください」
アーチェ「いつでも参加募集中〜」

2確執編十章:豪雨の茶会      2/5:2007/05/13(日) 21:31:43
 違う。
 あたしは答えをすでに知っていた。
『知らない』から、知っている。
 赦せなかった。
 あの時の、あのリディアの言葉だけは。
 時間の流れくらいでは消え去らないほどに。

 ――あたしが持たないものを持ってるあの娘が。
 ――あたしが持たないものを手に入れて。
 ――あたしに対して、紡いだ言葉。

 どれかひとつでも欠けてれば、ここまで理性を失うことはなかっただろう。
 あの娘は理解してるんだろうか。
 自分がどれだけの高みからあたしを見下して、あの言葉を紡いだのか。
 持たないからといって、あたしは欠けてるわけじゃない。
 不幸の看板背負って生きてきたつもりなんてないんだ。

 確かにあたしとあの娘はよく似たところがある。
 けど、違う。
 その違いを、あの娘は本当のところ理解してない。
 しょせん上っ面だ。言葉で理性的に区分けして、その意味が見えてない。
 だからあんなことが言える。

 ――バカにすんな。

3確執編十章:豪雨の茶会      3/5:2007/05/13(日) 21:32:28

 ・二日目 PM12:00 サイド:アーチェ

「やっぱり観光地のおみやげ屋は風情があるデスねー」
 こういうところに来るとカメラスキーの血が騒ぐんだろう。
 さっきからカメラのレンズ越しからしか世界を見ずに、ふらふらとあちこちを彷徨う四葉。
「はい、ジョニーの糧さん。チーズ」
「おう! って誰がジョニーの糧だよ! ――僕は覗き魔だから」
「…わざわざ自己主張するあたり本物デスね」
 さすがに観光地だけあって、街並ひとつとっても住んでる街とはずいぶん違う。 
「いい、四葉。今度勝手に姿を消したらおでこに『迷子』って書くわよ。当然、油性」
「う゛っ!? そんな人間迷子札は激しくイヤデス…」
「あははは、弱そうな悪魔超人だね――僕は覗き魔だから」
「ならあんたも自分のおでこに『覗き魔』って書いとけば? 史上最弱のヘタレ超人が誕生するわよ」
 人が行き交うだけでいっぱいの細い道の周囲に立ち並ぶ、見慣れたそれとは違った家々。
「おぉ! 今や懐かし三角ステッカー! これはチェキデスっ!」
「へぇ、なんだか昔の駄菓子屋チックね」
「お、スコープじゃん。僕がガキの頃住んでたとこってド田舎でさ。
 よくこれ使って遊んだもんさ――僕は覗き魔だから」
「…子供の頃から覗き魔だったわけ、あんた?」
 ただ歩いてるだけなのに、不思議と穏やかな気持ちになれるのが不思議だった。
「あ、四葉。ハンカチ落とした」
「僕が拾ってやるよ。…はい、気をつけなよ――僕は覗き魔だから」
「ど、どこ覗いてるデスか!?」
「陽平…あんた白昼堂々、それは人としてどうなの?」

「もうイヤじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 春原が奇声をあげながら地面をのたうちまわりだした。
 即座に杏が蹴飛ばして黙らせる。賢明な判断だ。
 けど、今回は惜しくもすぐに復活した。
「何で普通に会話してるだけでヘンタイになってくんだよ!」
「春原」
 軽くこめかみを押さえてから――ひと睨み。
「罰罰ゲーム」
 気迫に押され、「ひぃっ!」と黙り込む春原。
「け、けどこれってあんまりだろ!」
「本当のことじゃん」
「どこの世界に『覗き魔』自称して歩く奴がいるんだよ!」
「最初の一人、っていい響きだと思わない?」
「場合によるだろっ!」
「はいはい、わかったわよ。――なら罰罰罰ゲームね」
「もうイヤじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

4確執編十章:豪雨の茶会      4/5:2007/05/13(日) 21:33:09
「あ、国崎さんデス」
 四葉が指差す先。見慣れた銀髪が目に入った。
 どうでもいいけど、周囲の風景からビビるほど浮きまくってる。
「国崎…アンタ、何してんの?」
 胡坐をかいて道端に座ってたその姿は、あたしの声に顔を上にあげた。
「見ればわかるだろう」
「わかんないから聞いてんだけど」
 冗談抜きで本当にわからない。
「あのな…人形劇に決まってるだろうが」
「どこに人形があんのよ」
「お前らが俺からふんだくったまま返さないんだろうが!」
「答えになってないし」
「このガキ…仕方がないから、部屋にあったので代用することにしたんだよ」
 言って、指差す先。

 カミソリと石鹸が転がってる。

 しばし、無言。
「……これで、何をするって?」
 こめかみを押さえつつ、うめく。
「人形劇」
「動くの?」
「動くとも」
 動いた。うぞうぞと。
『…………………………』
 きっとあたし達は、揃って同じ顔をしてたことだろう。
「……せめて、関節らしきものがあるので代用しなさいよ」
「ムチウチになったヘビと、陸に上がった死にかけのナマコみたい」
「亀さんだってもっと機敏に動くデス。けどこれはこれで面白いのでチェキ、と」
「文句言うなら人形返せ!」
 当然のように無視して。
「で? 誰か見てく人、いるの?」
「いや。何故か思いっきり避けて通られる」
「……お願いだから、捕まるのだけはやめてよね」
 これ以上話をして関係者と思われるのも嫌なので、
あたし達はもはや何も見なかったことにしてその場を通り過ぎた。

5確執編十章:豪雨の茶会      5/5:2007/05/13(日) 21:33:52
 ふと気づくと、昨日まであった蒼穹は姿を消し、
空一面に黒と灰のグラデーションが立ち込め出していた。
「何か日が陰ると、途端に寒くなる気がするわね」
 襟を押さえて服の中に寒気が入るのを防ぐ杏。
「ひょっとして、雪でも降ってくんのかしら」
「それもいいかも。きれいだし」
 と、一人先行してた春原がふいに戻ってきた。
「おい、向こうに穴場の共同浴場があるってさ」
「何? 絶好の覗きスポット?」
「僕の言葉が信じられないなら、向こうの連中に聞けよ。女の子もいるし」
 その先には、なるほど、数人のメンバーが談笑してる様子。
「知り合い?」
「ついさっき知り合ったばっかだけど。僕らと年同じくらいらしいぜ。
 行くなら、一緒に行かないかってさ。どうする?」
 正直、ちょっと春原のことを見直した。
「春原、アンタのそういう誰とでも気さくに話せるとこは嫌いじゃないよ。
 ――けどアンタ、覗き魔だもんね…」
「ホント、そこは陽平の長所よね。
 ――けどあんた、覗き魔だもんね…」
「いい加減それ引っ張るのやめてくれませんかねぇっ!?」
 もちろんあたしとしてはその提案に異論はなかった。
「じゃ、一緒に……」

 ――その時。

 針で突き刺すような痛みが頭に走る。
 一瞬目を閉じた瞬間、世界は『変わった』。

 足音が聞こえてくる。
 あたしでなければ、音の主は一人しかいない。
「お楽しみのところ、申し訳ありません」
 ――『アクマ』。


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