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ツンデレじゃない長編投下・評価スレ
131
:
名無しさん
:2005/12/30(金) 15:40:54 ID:OsxQoflE
無機質な音が、刹那的に部屋を支配する。
たった二度のノックは、私の呆けを解くには十分すぎる音だった。
「お嬢様、少し宜しいですか」
聞き慣れた、一番聞きたくない声。瞬時に私は、拒絶の言葉を発する。
『宜しくありませんわ。私が貴方とお話しする事は、一切ありません』
「すみません、失礼します」
いきなり部屋に入ってくる。今まで一度もこんな事をしてこなかった、この使用人に絶句した。
彼のことになると色々と制御が出来なくなる私は、すぐにヒステリックを起こす。
『話などないと言っているでしょう!? すぐにこの部屋から去りなさい!!!』
「使用人として……いえ、人としてお嬢様と顔を合わせるのは、これで最後にします。ですので、どうか」
言葉を凄ませて、彼は言った。
…………何を? 今、彼は何を言ったのだろう? それは、私が“私”を保つために望んでいたはずの事。
彼さえ居なくなれば、自分は何もかもを忘れて全てに打ちかかれる。だのに、どうして…………
どうしてこんなに、心苦しい?
「御結婚されると、本日耳にしました。……いえ、自分が無理矢理聞きだしたのですが……おめでとう御座います」
『親が勝手に決めた結婚ですわ。こちらに情はありませんし、勝手に祝わないで下さる?』
――――自分の想いとは、反対の言葉を口にする。違う、本当に私の言いたい事はそうじゃない。
「そう仰らずに。…………質問を、宜しいでしょうか?」
『勝手になさい。場合によっては、答えませんが』
―――― 一緒にいたい、一緒にいたい。そのはずなのに。
「お嬢様は、自分のことをどう御思いでしょうか?」
『……早々に、消えて頂きたいと』
――――違う、違う、違う違う違う違うっ!
「……これより、異動もしくは退職の意を人事の者へ伝えます。それでは、今までありがとう御座いました」
『………………』
黙っていては駄目。行動を起こさないと、このままでは本当にタカシはどこかへ行ってしまう。
私が望むのはどっち? 立場を考えて行動するのか、それとも感情を優先させるのか。
考えてるうちに、身体は動いた。…………ドアノブに手をかけ、今にも出て行こうとする、タカシの方へ。
132
:
名無しさん
:2005/12/30(金) 15:41:58 ID:OsxQoflE
これでいい。そう、これでいいんだ。
自分でも分かっていたはずだ、“使用人に異性として愛され、喜ぶ主人などいない”と。
今までそばに居られたのも、全てはこの主従の関係があったからこそ。
だから、このドアを開ければ、全部終わり。……もう、後悔は――――
『駄目ですっ! 私が許可しません!!』
――突然、後ろからリナに抱きつかれていた。
「……どう、しました?」
『貴方が、貴方がいけないんですわ! 私は貴方と離れて15年余り、貴方の事を考えなかった日などないのに!!
なのに、なのに会ってみれば、私の事を“お嬢様”なんて呼んで…………』
「…………」
『あなたがっ……グスッ……貴方がそんな事さえ言わなければぁ……私だって、もっと……』
今俺は、触れてはいけないものに触れている。
声を震わせ、涙を流しながら、それでも続けようとするリナに。
これ以上触れ続けると……駄目だ。
『忘れるしかないじゃありませんかっ……こんな、こんな想いなど……』
「俺だって……俺だって!」
絡みつく腕を解き、振り返る。
「考えない日なんて無かった! だからずっと努力した、“役立たずの使用人”にはなりたくなくて!!」
リナは呆然と、こちらを見ている。
「でもそれじゃ意味が無い! 一緒に居るだけじゃ、意味なんてない! ……俺は“使用人”なんだから、
どうしようもないじゃないか!? 突然、リナに見合う大企業の御曹司になんてなれないんだよ!!」
『関係ありませんっ! もう嫌なんですっ……素直になれないが故に、こんな思いをするのは』
「それでもっ……! それでも俺は、使用人です。お嬢様、失礼し――」
『駄目です、行かせませんっ!!』
「もう自分に触れないで下さいっ!!」
…………一瞬の沈黙。今までの言い合いが嘘のように、静まり返った。
「これ以上……これ以上抱き締めないで下さい。自分が、駄目になりそうです」
『駄目です、絶対に放しません……』
「…………いいん、ですね……?」
『貴方が望むのなら、私は構いませんわ……』
「……すみません、俺は、駄目な使用人でした」
ゆっくりと、唇を重ね合う二人。
真夜中になるまで、この二人は部屋から出る事は無かった―――……。
133
:
名無しさん
:2005/12/30(金) 15:42:29 ID:OsxQoflE
「……リナ、やっぱりもっと別の方法を考えないか?」
『あら、まだそんな事をいいますの? 私が部屋に篭り、昼食や夕食まで取らないと他の使用人たちは随分焦っていますわ。
主任である貴方は遠出をした事になってますし、準備まで完璧に整った今、もう引き返せないと思いますよ?』
「うー……いやでも、他に方法……ああああああああ」
『後日連絡をすれば、万事解決ですわ。どの道もう神野家には居られないのですから、覚悟を決めなさいな?』
「何でそんなにパワフル何だ……」
『金銭面はお互い問題ないんですもの。私だって既に貯金は有り余るほどありますし、使用人……それも主任となれば、
給料はかなりの額ですわ。何せ、神野家ですからね』
「今から出て行く当家の自慢をすな……ったくもう……」
『既成事実さえあれば、後には引き返せないですからね。もういい加減お分かりになったかしら?』
「うあああああ……」
『全くもう……うだつの上がらない男ですわね。さっきの激しさはどこに行きましたの?』
「激しいとか言うなああぁぁぁぁ……」
『さ、そろそろ予定していた時間ですわよ。準備はいいかしら……?』
「ん、そだな……キスした時点で、全部俺の負けか」
『分かっているじゃありませんか。正確には、“抱き締めないで下さい”と言った時点ですが』
「リピートしなくていいから!」
『ふふっ、それじゃあ行きますわよ!』
「ちょ、いきなりは待てって!」
―――気弱そうな男の子と、気の強そうな女の子の、成長した姿。
―――二人は心を通わせて、その絆は永遠に続く。
―――当人らの知らぬところで、15年以上続いていたように。
―――これからも、永遠に……
134
:
名無しさん
:2005/12/31(土) 22:11:11 ID:6vXZ3Zic
>>133
感動と萌えで泣いたwwwwwwwwwwwwwwwwwwww最高だよぉ!wwwwwwwwwwwwww
GJ! GJ!!!!
135
:
名無しさん
:2006/06/28(水) 20:19:08 ID:A4qgkQsk
ロストマンのつづきを
wktkしながら待ってますね
136
:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/07/19(土) 08:13:40 ID:ExQh/rAU
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