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【場】『 歓楽街 ―星見横丁― 』 その3

1『星見町案内板』:2022/08/03(水) 13:44:17
星見駅南口に降り立てば、星々よりも眩しいネオンの群れ。
パチンコ店やゲームセンター、紳士の社交場も少なくないが、
裏小路には上品なラウンジや、静かな小料理屋も散見出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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※前スレ
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1607077443/

63美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2022/11/22(火) 21:20:53

  バァァァァァァァァァァ――――――――ッ

              キィッ

『カナリアイエロー』の『ベスパ』が駐車場に停まる。

     「ふぅ」

ゴーグル付きのハーフヘルメットを脱いで、シートから降りた。
美作くるみは『パーソナリティー』だ。
会話の『引き出し』は、多ければ多い程いい。

「さて、何か『話題の種』を見つけられるかしら」

こうして休日に散策しているのも、それが目的だった。

64美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2022/11/26(土) 02:32:03
>>63

「――――『これ』は…………」

小さなコインランドリーの前で見つけたのは、
『ハンバーガーの自販機』だ。
いわゆる『レトロ自販機』に分類されており、
今では製造されていない。
残っている数少ない筐体が、現在も各地で稼動している。

「一個『200円』――――」

           ゴソ

「『話題が買える』と思えば安いわね」

     チャリン チャリン

硬貨を投入し、ボタンを押す。

        ピッ

「…………どれくらい待つのかしら」

内部の電子レンジで温めているため、すぐには出てこない。

           コトッ

一分ほど経った頃、軽い音を立てて、
取り出し口に白い箱が現れた。
開封すると、小振りなバンズにパティとレタスが挟んである。
バンズに塗られたケチャップの匂いが、ほのかに香る。

「このチープな感じがいいじゃない」

          パクッ

一口食べてみると、どこか懐かしい味わいだった。
初めて味わったはずなのだが、
心の奥でノスタルジーを感じさせる。
不思議なものだ。

「ずっと頑張ってきたのよねぇ」

ハンバーガーを食べ終え、自販機を眺める。

「私も、まだまだ頑張らなきゃ」

空を見上げ、そして歩き出した。

65カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/12/11(日) 19:55:09
「あー、気持ちワル……!
本当に来なきゃ良かったよ、うぅ〜」

灰色の長髪にロイド眼鏡の女が、
ベンチにもたれ掛かるようにして座っている。
まだ日も落ち切っていない頃ではあるが、アルコールの匂いを漂わせている。酔っ払いだった。

66花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2022/12/13(火) 05:20:29
>>65

「ハハハッ、気持ち良すぎてフラフラしちまうぜェ〜」

     ドサッ

『レザージャケット』を着た『赤毛の男』が隣に座った。
同じく酔っ払っているらしく、だらしなく両足を投げ出している。
カリヤとは対照的に、こちらは『いい気分』らしいが。

「ちょっとばかし酔いを覚まさねえとなァ」

          ガチャリ

「『酔い覚まし』には、こいつが一番だ」

いつの間にか、男の手には『拳銃』が握られていた。
回転式の弾倉を持つ『リボルバー』。
さも当然のような動作で、銃口をこめかみに押し当て、
引き金を引く。

   ガァァァ――――――――ンッ!!

『銃声』が響いた直後、男の体が力なく崩れ落ちた。

67カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/12/13(火) 16:14:23
>>66
「うわっ……なんだ? 『死んだ』ッ!
あはぁ、飲みすぎたかなぁ…………なんて、
そんなセオリーどおりなリアクションはしないぞ、私はぁ!」

怪しく笑ってのそりと体を起こし、
ベンチを這うようにして花菱の側へと移動して『銃』を持つ手首を掴む。

「あははぁ、やっぱり『スタンド』じゃあないかぁ。
ええと、じゃあこれって、どういう『能力』なんだ?
その前に、何か言ってたような気もするけど……何だっけ?」

『銃』を観察しながら、花菱の顔の前で手を振る。

68花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2022/12/14(水) 06:44:31
>>67

  「ヒュゥゥゥ〜〜〜〜!!」

         ガバァッ

      「頭ン中が『スッキリ』しちまったぜェ」

ガックリと項垂れていたが、唐突に頭を持ち上げる。

「『生まれ変わった気分』ってか?」

      「ハハハッ!」

その直後、『拳銃』を握っていた右手を掴まれた。
同時に、相手の顔が視界に入る。
揺れ動く手を、反射的に目で追う。

「おっと、ネエちゃんも『同類』かよ?
 おまけに同じ『酔っ払い』と来たもんだ」

「ハハハッ、『コイツの能力』が知りたいってんならよォ〜」

        「アンタも試してみるかァ?」

    「『悪酔い』なんざ一発でブッ飛んじまうぜ」

言葉だけ聞くと冗談のようだが、『本気』だ。
引き金には指が掛かったままで、銃口は至近距離にある。
このまま『発砲』したら、『当たる』かもしれない。

69カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/12/14(水) 18:32:36
>>68
「うわっ、『起きた』ッ!
なにぃ〜? きみ、いきなり何だよッ!
あははぁ、さては、酔っぱらいだなぁ〜!」

にまーっと笑った顔を近づけて、ずり落ちそうな眼鏡の位置を正すこともなく、
酒臭い息を吐きかけながら、既に指摘されている事実を得意げに話した。
紛れもなく酔っぱらいだった。

「やらないよっ、怖いなぁ〜〜。
きみぃ、どういう人間なんだい? これも『何』?
どういう『スタンド』なのかはぁ、興味あるけど」

そうして、両手で『スウィート・ダーウィン』を取り上げようと持つ手に掴みかかった。

70花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2022/12/14(水) 20:03:41
>>69

「オレかァ〜?オレは『花菱蓮華』ってんだよォ〜」

   「ただの『気のいいニイちゃん』だぜェ」

         「ハッハッハッ!」

酔い覚ましに『偽死弾』を撃ち込んだものの、
物理的にアルコールが飛ぶ訳ではない。
気分の問題なのだ。
従って、こちらも依然として酔っ払いには変わりなかった。

「オレはよォ、三度の飯より好きなのさ」

「『デッドライン』ギリギリの『スリル』ってヤツがなァ」

次の瞬間、両手で掴みかかってくるカリヤ。
この行動は読めなかった。
スタンドは奪われなかったが、結果的に体勢が崩れる。

        「うおッ――――――」

『一瞬の弾み』で、引き金に掛かっている指に力が入った。

    ガァァァァァ――――――――ンッ!!

再び轟く銃声。
発射された『弾丸』は、カリヤの『左胸』に命中した。
至近距離から『心臓』をブチ抜かれたのだ。
傷口から大量の血が溢れ、意識が徐々に遠のいていく。
おそらく、もうじき『死ぬ』だろう。

    「おっと――――つい『やっちまった』ぜ」

何でもない事のように、軽い調子で呟く。
装填されていたのは、『失血死』を再現する『偽死弾』。
非常に『リアル』だが、制限時間の『4秒間』が過ぎれば、
全ての影響は『幻』のように消え去る。

71 カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/12/14(水) 21:08:34
>>70
「ガっ……なっ、これは……!
何笑って……しっ、死ぬ…………!
ーーーーーーーハッ!」

『擬死』の時間が経過して、ベンチからがばっと起き上がり、
胸元に傷がないことを確かめた後、顔面蒼白で花菱を見る。

「はひっ……こっ、これ……私、死んでた……?
なんなんだよこれはぁ〜〜! 怖かったじゃあないかッ!」

酔いもすっかり引いたようで、
両肩に手を置いて揺さぶりながら怒りの声を上げた。

72花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2022/12/15(木) 05:05:15
>>71

「ハハハッ、とびっきり『スウィート』だろ?」

「『スウィート・ダーウィン』は『死因』を再現できる。
 『焼死』に『溺死』に『感電死』……
 どんな死に方でも『お望み通り』だ」

「オレはコイツが『病み付き』になっちまったのさ」

激しく揺すられながら、極めて愉快そうに笑う。

「おいおい、ありゃあ事故だ事故……。
 そりゃ撃ったのはオレだけどよォ〜。
 不用意に掴み掛かってきたアンタも悪いぜェ」

「これでアンタも『生まれ変わった』って訳だな」

『偽死弾』は生物に対して殺傷力を持たない。
傷口も出血も綺麗サッパリなくなっている。
ただ『服に開いた穴』だけが、
『着弾の痕跡』として残っていた。

   「だが――今日のアンタは『ツイてた』ぜ」

   シャラララァァァァァァァァァァァ――――――――ッ

慣れた手付きでシリンダーを勢い良く回転させ、
さらに言葉を続ける。

「『スウィート・ダーウィン』は『ロシアンルーレット』だ。
 弾倉の中の『一発』は『実弾』だからなァ。
 『大当たり』だったら、『生まれ変われなかった』だろうぜ」

          「ハッハッハッ!」

銃口を下ろし、『物騒な種明かし』をした。

73カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/12/17(土) 20:57:56
>>72
「自分の『スタンド』に病みつきに……?
それはなんだか、危険な響きがあるねぇ。
まあ、元々危なっかしい性格なような気がするけどね、きみは。
『拳銃』の『スタンド』かぁ……」

服の穴を指でなぞりながら、
物珍しそうに『スウィート・ダーウィン』を眺める。

「うーん……まあ、暴発って事ならそうかもねぇ。
良い体験したって思うかなぁ、撃ち殺されるなんて滅多にないし……
服がちょっぴり破けたくらいだし……」

>弾倉の中の『一発』は『実弾』だからなァ。

「それは『駄目』じゃあないかなぁ!
……きみさぁ、もしかして、
何回も『偽物の死』を味わってるうちに、
『本物の死』もそんなに深刻なものと思えなくなっちゃってるんじゃあないの?
大丈夫かい? そーいうの」

74花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2022/12/18(日) 04:43:51
>>73

「『デッドライン』を越えちまったら、
 二度と『スリル』を味わえなくなっちまうだろ?
 オレは『ギリギリ』が好きなんだよ」

花菱蓮華は『スリル』を愛している。
だからこそ、『ロシアンルーレット』のスタンドが目覚め、
それは『拳銃』のヴィジョンを持つ。
全ての大元は、『少年期の体験』に根ざしていた。

「ガキの頃、死ぬ程ビビッた事があってよォ。
 多分その時に、『防衛本能』ってヤツが働いたんだろうな。
 逆に『多幸感』みたいなモンを感じてきて、
 それ以来すっかり『虜』さ」

         「ハハハハハッ!」

「色んな『死に方』を試してきたが、
 まだ『マジで逝っちまった事』はねえなァ。
 その瞬間は『最高にシビれる』だろうとは思うけどよォ〜」

     ガァァァ――――――――ンッ!!

呼吸するように引き金を引くと、
足元を這っていた『虫』が潰れ、
自動的に『リロード』が行われる。

「ハッハッハッ、『実弾』は『三発目』だったみてェだぜ」

           グルグルグル

手の中で『リボルバー』を回転させ、解除する。

「これでもオレは『カタギ』だ。
 『鉄砲玉』やった事も一度や二度じゃねえけどよ。
 オレの商売が何だか分かるか?」

75カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/12/20(火) 21:13:11
>>74
「ふうん、そういうのって癖になるものなんだ。
なんか面白そうな『話』が潜んでそうだねぇ〜〜
きみは、何にそんなに怖がったんだい?」

眼鏡の奥の瞳が光り、座り直して花菱に尋ねる。

「ム……なに?『実弾』……??
…………ハァ、まあ……出なかったから良しって事にしとくよ。
こんな『危険』、私は求めちゃあいないって事だねぇ」

「『職業』。
そうだなぁ……危険を好む、
それに『銃』……あっ、わかった!
ふふ、『花火職人』じゃあないかなぁ。
どう? 私の『洞察力』!」

明らかに洞察力以外の場所から捻り出した答えを、胸を張って答えた。

76花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2022/12/21(水) 07:29:02
>>75

「ハハハッ!ネエちゃんよォ、
 オレが『ハナビシ』だからってんじゃあねえだろうなァ?
 残念ながら、そいつは『ハズレ』だ」

        ゴソッ

レザージャケットのポケットに片手を突っ込み、
小さな箱を取り出す。
『タバコ』――ではない。
昔からある由緒正しき『ミルクキャラメル』だ。

「こう見えてもオレは『役者』さ。
 いわゆる『スタントマン』ってヤツだな。
 意外だったか?」

              ポイッ

喋りながら、一粒の『キャラメル』を口の中に放り込む。

「カラダ張って派手に落ちたり燃えたり……
 ま、オレの場合は『やられ役』みてェなもんだな。
 主役級の仕事なんかは来た事ねえからな」

「だが、『やられるヤツ』がいると『話』も引き立つだろ?
 『オレの話』が面白いかどうかは知らねえけどよ」

「あー、そうだな……。
 要するに『人質』だ。
 『強盗の人質』になった事がある。
 もちろん最初はビビッたが、だんだん時間が経ってくると、
 その状況が逆に気持ち良くなってきちまったんだな」

     「で――――『こうなってる』って訳だ」

右手で『銃の形』を作り、こめかみに押し当てながら笑う。

77カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/12/21(水) 22:02:09
>>76
「あははぁ、それは残念。
名前が仕事ってわかりやすいキャラで良いと思うんだけど、
『リアリティ』は無いよねえ。
『リアリティ』を大事にしない話は、すぐにチープになっちゃうからさ」

間違えたのを悔やむ事もなく、
うんうんと頷きながら一人呟く。

「『スタントマン』! 知ってるよぉ。
俳優が危険なお芝居をする時に、代わりに演じるって仕事だろ。
それなら、確かにきみにピッタリ、かもねぇ。
『仕事』は楽しいかい?」

話をしながら手を伸ばして、
拒まれなければ勝手にキャラメルを一粒摘んで、自分も口に含む。

「『人質』かぁ、珍しい体験だね。
もっと詳しく教えてほしいなぁ……
どこで『人質』になったのか?とか、
どうやって助かったのか、とかさぁ……ね、いいだろ?
私は人の話を聞くのが趣味なんだ。
面白い『物語』(ストーリィ)ならもっと良いけど……脚色はしなくって良い。
『リアリティ』が無くなっちゃうからね」

78花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2022/12/22(木) 10:29:15
>>77

「今の仕事には、それなりに満足してるぜ。
 だが、『スタント』ってのは、
 『危険に見せる』方が大事だからよ。
 危険は危険なんだが、『マジの危険』とは少し違うなァ」

「オレとしちゃあ、あくまで『仕事でやってる』って感じか?
 そこら辺はキッチリ分かれてるのさ」

現代において、安全対策は万全だ。
それでも事故の可能性はゼロにはならない。
だが、そうそう頻繁に起こるものでもないし、
『命の危険』を伴うようなケースは限られる。

「『オレの話』を続けてもいいけどよ…………」

         スッ

カリヤが腕を伸ばしたのを見て、
その手元にキャラメルの箱を近付ける。

「ネエちゃん、アンタなにもんだ?
 さっきから妙に知りたがるじゃねえか」

「『プライベートを教えろ』とは言わねェが、
 アンタの事もちったぁ喋ってくれなきゃ不公平だぜ。
 いわゆる『公平な取引』ってヤツだ」

「『物語』だの『リアリティ』だの言ってるから、
 『脚本家』か何かか?
 ま、『当てずっぽう』だがなァ。
 『下手な鉄砲数打ちゃ当たる』ってな」

『スウィート・ダーウィン』がそうであるように、
『スタンド』は『精神の象徴』だ。
そのせいか、『スタンド使い』という人種は、
特徴的な精神構造を持つ事が多い。
コイツも『その類』だろうという考えで、目の前の女を見る。

79カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/12/22(木) 22:02:55
>>78
「ええ〜……『私の話』かい?
名前は『カリヤ』という。
あっ、『甘い』なぁ〜〜『キャラメル』」

やる気なさそうにキャラメルを舐め回し、
ため息をつく。

「まあ、それできみの話が聞けるなら良いや。
私はねぇ。文章を作って、売ってるんだ。
書きたいけど文章が書けない人とか、書けなくなっちゃった人とかに、
それっぽーいモノを作って売る仕事さ。
『ゴーストライター』ってやつ。
あははぁ、これ、あんまり人に言わないでねぇ」

へらっと笑って、おもむろに立ち上がる。

「でも、いろんな『物語』(ストーリィ)が知りたいのは、ただの趣味さ。
ただの趣味で、生きがいなんだ。
面白い『物語』を知ると、嬉しかったり、悲しかったり、気持ちが良いよねぇ。
その時だけは、矮小で陳腐な私自身の事を忘れられるんだ。
そうやって、生きてるってわけ」

80花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2022/12/23(金) 07:40:00
>>79

「そりゃ『甘い』だろーよォ〜。
 キャラメルが苦かったら消しゴムか何かだぜ」

「オレは『甘党』なんだ。
 危険な仕事やってると『糖分』消費するからなァ」

一緒になってキャラメルを舐めながら、
『カリヤの話』を終わりまで聞いていた。

「ハハハハハッ!
 こんな時間から『幽霊』に出会えるとはよ。
 道理で『死ななかった』訳だぜェ」

「ま、人間なんざ大なり小なり刹那的なもんさ。
 オレだって『新しい死に方』は常に試したいと思ってる。
 似たようなのばっかりブチ込んでると、
 どんだけ刺激があっても飽きてきちまうからな」

喋っている途中で『いい事』を思いつき、口元を歪める。

「『カリヤ』よォ、『珍しい死因』とか知らねえか?
 ただし『ノンフィクション』じゃなけりゃあダメだ。
 アンタの商売だったら分かるんじゃねェかと思ってよ」

「オレに『新しいスリル』を提供してくれるんなら、
 『話の続き』をしてやってもいいぜ」

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82カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/12/25(日) 20:35:42
>>80
「ふうん、そんなものかい。
まぁ、私も甘いものは好きだよぉ。
苛々したら、甘いものを食べるんだ」

ベンチの前を歩いて、花菱の眼前で立ち止まる。

「うーん、『珍しい死因』かあ。
そおだなぁ、『ワイン樽の中で溺死』した人っているらしいよ。
あははぁ、すごいよねぇ。
酒に飲まれちゃったんだよ。
……こんなやつで良かったかい?」

83花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2022/12/26(月) 08:22:22
>>82

    「ハッハッハッ、ソイツは悪くねェな。
     なかなか『洒落た死に方』じゃねえか」

          「今度『試す』ぜ」

歩き回るカリヤの姿を目で追いながら、
真っ赤に染めた頭髪を軽く揺らす。

「さて――――忘れない内に『オレの話』をしてやるよ」

「あれは確か……この近くの『質屋』だったか?
 いきなり『刃物』を持った男が入ってきてよ。
 その野郎が賢かったのは、オレに目をつけたところだ。
 邪魔な大人を黙らせるために、
 まずガキを抑えちまおうって考えだな」

「普通は欲しいもん手に入れたら、さっさと消えてるんだが、
 その時はそうもいかなくなった。
 ちょうど近所で『交通事故』が起きたからなァ。
 そのせいで、タイミング悪く警察が来ちまってた訳だ」

「警察が引き上げるのを待つ間中、
 オレは『刃物』を突き付けられる事になった。
 同時に、人質側と強盗側の『駆け引き』が始まったのさ。
 『どっちが相手を出し抜くか』ってな」

「最初はオレもマジにビビッてたが、
 だんだん気持ち良くなってきちまってよォ〜。
 『スリルの快感』みてェなもんに目覚めちまったんだろうぜ。
 『この時間が終わって欲しくない』とさえ思ったな」

「まぁ、結局は終わっちまったんだがなァ。
 店主の出した『サイン』に気付いた警察が、
 引き上げたフリして強盗が出てくるのを待ち構えてたからよ。
 この一件に関しちゃあ、それで終わりだ」

「だがよォ〜、オレは今でもハッキリ覚えてるぜ。
 警官が構えていた『拳銃』をな。
 『アレを突き付けられたのが自分だったら』なんて、
 思わず想像しちまった」

           ズ ギ ュ ン ッ

「だから、『こんなスタンド』が目覚めたのかもしれねえなァ」

再び発現した『スウィート・ダーウィン』を片手で構え、
口元を歪めて不敵に笑う。

「どうだ?ちったぁ『足し』になったかよ?」

84カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/12/26(月) 21:25:40
>>83
「きみが気に入ったなら良かったよ。
うんうん、聞かせて聞かせて」

歩き回るのをやめて、ベンチに正座して話し始めるのを待つ。
途中でふんふんと頷き、ほうと息を吐いて花菱の語りを全て聞き終えた。

「へぇ〜〜! 面白い話だねぇ。
劇的な結末がないのが残念だけど……うんうん、それもリアリティだよ!
『スタンド』は、やっぱりその人の『精神性』が反映されるんだねぇ。
あははぁ、良い話聞けちゃったなぁ。得したなぁ〜〜」

にやにやと気持ちの悪い笑みを浮かべて立ち上がる。

「今日はありがとお、花菱さん。
楽しかったよ。それじゃあね〜」

軽く手を振って、そのまま唐突に立ち去った。

85花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2022/12/27(火) 10:34:51
>>84

「ハッハッハッハッハッ!
 クライマックスに、
 ド派手な『銃撃戦』でも起きてりゃ良かったけどよォ〜」

「『劇的な結末』があるとすりゃあ『オレ自身』だろうぜ。
 『イカれちまった人間』が一人『出来上がり』って訳だ」

                 〜〜〜〜♪

      シャラララァァァァァァァァァァァァァッ

口笛を吹きながら、ルーレットを回すように、
『リボルバー』のシリンダーを回転させる。

     「おう――気ィ付けて帰りな」

             「『酒』は程々にしとけ」

                  グッ

       「『ワイン樽で溺死』か」

カリヤを見送ってから、こめかみに銃口を押し付ける。

  ガァァァァァ――――――――ンッ!!

やがて、遠ざかっていくカリヤの背後で、
一発の『銃声』が響いた。

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<削除>

87リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/01/19(木) 16:34:37

ゴシック風のドレスを身に纏う女が、人通りの少ない裏通りを歩いている。
羽飾りの付いた大きな帽子を被っており、素顔は見えない。
その下から覗く肌は、まるで死体のように白かった。
レースの長手袋をはめた腕の中に、古めかしい『人形』を抱いている。
青い目の『西洋人形』だ。

     「青い目をしたお人形は」

    「アメリカ生まれのセルロイド」

      「日本の港へ着いた時」

     「いっぱい涙を浮かべてた」

     「わたしは言葉が分からない」

    「迷子になったらなんとしよう」

緩やかに歩きながら、歌を口ずさむ。
『青い眼の人形』という童謡。
異国情緒を醸し出す歌詞は、戦時中は敵国の歌と見なされ、
歌う事を禁じられた歴史を持つ。

88リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/01/20(金) 18:27:51
>>87

女の体を構成するのは『FRP』――――『強化プラスチック』だ。
もっと単純に言うなら『マネキン』だった。
本体は抱いている『西洋人形』。
結局の所、どちらも作り物。
真の意味で本体と呼べるのは、人形に宿っている『魂』だろう。

     「優しい日本の嬢ちゃんよ」

     「仲良く遊んでやっとくれ」

              ――――――ピタッ

不意に、女の足が止まる。
目線の先には小さな人形が落ちていた。
頭の先に紐が付いたマスコット。

「あなたも人間に捨てられたのね」

       ソッ

     「可哀想に」

道端にしゃがみ込み、それを拾い上げた。

89リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/01/23(月) 17:14:45
>>88

        ク ル リ

唐突に、後ろを振り向くマネキン人形。

「ねぇ――――――」

     「あなたが捨てたの?」

            「あなたが捨てたのね?」

徐々に近付く。
少しずつ近付いてくる。
やがて、表情の変わらない無機質な顔が間近に迫った。

  「ウフフフフフフフフフフフフフフフフフ」

次の瞬間、訪れるのは緩やかな暗転と静寂――――――。

90リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/01/23(月) 17:15:56
>>89

91史『カルマ・フラグメンツ』:2023/02/04(土) 20:38:32

日本史における『史(ふひと)』とは、古代の朝廷で記録や文書を司った役人を指す。
すなわち『歴史を綴る者』。
そして、『業』を抜きにして歴史は語れない。
『業の断片』と名付けられた力が目覚めたのは、必然的な帰結だった。
切っても切れない『宿命』だ。

「――――――西洋の戦闘様式が導入された当初、
 日本軍はフランス式のサーベルと同じ物を使っていた。
 ただ、両手で使う日本刀に慣れた彼らには、扱いが難しかったんだ。
 それを改善する為に、外装はサーベルのままで、
 刀身だけを日本刀に変えた『軍刀』が生まれたのさ」

二人の人物が対峙していた。
片方は派手なジャケットに開襟シャツを着たチンピラ風の男。
もう一人は、細身のスーツにミリタリーコートを羽織ったモッズファッションの青年。

「実用性以上に『軍刀』は精神的な支柱だった。
 『誇り』であり『信念』であり『魂』………………」

両者の傍らには、それぞれ『人型スタンド』が発現している。
人通りの少ない寂びた路地裏で、今まさに『戦闘』が行われていた。
既に数回の交錯を経ており、決着は近い。

「だけど、僕にとっては『人を斬るための道具』に過ぎない」

        ズ ッ バ ァ ッ !

人型スタンドが切り裂かれ、ダメージのフィードバックによって、
本体の身体から血が飛び散る。
それを為したのは一振りの『軍刀』。
柄を握るスタンドは、幾つもの『勲章』を帯びていた。

     「お………………ッ………………!!」

          ドサッ

斬られた男は倒れ、そのまま意識を失った。
その様子を確認した青年は、深呼吸してからスマホを取り出す。
『依頼人』の番号に電話を掛ける。

  「…………終わりました。
   はい、死んではいません。
   後の処置はお任せします」

      「ええ、報酬は振り込みで…………」

             ピッ

          「――――ふぅ…………」

やがて電話を切ると、その場から立ち去る為に踵を返す。

92熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/02/06(月) 19:11:36
>>91

    パチ・・・・

         パチパチ・・・・・

男を斬り、この場を離れようとする史の頭上から小さな拍手の音が届く
賞賛か、それとも小馬鹿にしているのか、音からは判断が出来ない
史が上を見上げると、10m近く上のビルの屋上から一人の女があなたを見下ろしている事がわかるだろう

「素敵な演目ね。タイトルは何かしら?」

女は、史にそんな言葉を投げかける

93史『カルマ・フラグメンツ』:2023/02/06(月) 20:39:54
>>92

かつて『華族』であった壬生家は、代々この地域に根を下ろし、
特異な能力を武器に軍事面で功績を立て、繁栄を築いた歴史を持つ。
一族にとっては輝かしい過去だが、末裔である『壬生史』は、
それを否定する立場を取っていた。
『自身がスタンド使いではない』という事実も、
それを後押しする形になっていたのかもしれない。
だが、つい最近になって、
これまでの信条が根底から覆されかねない出来事が起きた。
幸か不幸か『超常の力』を得てしまったのだ。
自分にも同じ血が流れている。
認めたくなかった事を、嫌でも自覚させられた。

そして、新しい自分と向き合う為に、『スタンド使いとしての仕事』を受けた。
『あるスタンド使いを戦闘不能にする』というシンプルな依頼。
事前に動かす練習はしていたものの、
実際に戦闘でスタンドを使うのは初めてだった。
思っていたよりも『躊躇い』を感じなかったのは、『血筋』のせいだろうか。
『人を斬る事』に対して。

『依頼人』の希望は生け捕りにする事。
諸々の後始末は向こうでやってくれる。
自分は、この場から立ち去るだけで良かった。

「――――――!?」

声の方向を見上げ、内心『しまった』と感じる。
戦闘を行うに当たって周囲は警戒していた。
しかし、頭の上まで注意を回す余裕はなかったのだ。

「そう、だな…………」

「…………『カルマ・フラグメンツ』とでも言っておくよ」

戦闘を観察していたなら、『青年のスタンド』については、大まかに理解できるだろう。
基本的なスペックは『メイド』と同等らしい。
能力は不明だが、『軍刀』の攻撃力は単純に強力だ。

「まず僕が考えるべきなのは『敵かどうか』…………」

「もし敵だとしたら、これまで何もしない訳がない。
 今だって、不意打ち出来る絶好のチャンスを、自分から捨てている」

「だから、貴女は『敵じゃあない』」

そこまで言い切ってから、なおも言葉を続ける。

「でも…………敵じゃなければ、なおさら不思議に思う。
 様子を見ていたとしても、わざわざ声を掛けるだろうか。
 そこが僕には分からないんだ」

「…………良かったら教えてくれないかな」

『カルマ・フラグメンツ』を解除していないのは、
相手に何処か得体の知れなさを感じていたからだった。

94熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/02/06(月) 21:26:05
>>93

「・・・・・・・・・・・。」

口に出しながら行われる考察
それを耳に留めながらも、屋上の女性は無言のまま史を見つめる
どうやら、女性は大学生程度の年齢層に見える
比較的年若く・・・・こんな場所には珍しく、質が良く整えられた身なりをしている

「『面白い』と思ったから・・・・それでどう?」

史の質問に答えるように、そんな言葉が投げかけられる

「何か・・・・とても『危険』で面白いと思ったから、それで見ていたの
 あなたに話しかけたのは・・・・そうね。お話を聞きたくなったから、というのはどう?
 野球とか、サッカーの中継の後の『勝利者インタビュー』みたいに」

    グッ!

そう言うと、女は屋上の縁に足をかける

「良かったら、お話を聞かせてもらえる?」


     バッ!!!

女の身体が空中に投げ出される
あの高さから落下してしまっては、相当な重傷を負う事は必至に見えるが・・・・・!

95史『カルマ・フラグメンツ』:2023/02/06(月) 22:05:32
>>94

眼下に立つ青年は、熊野と似たような年齢に見えた。
また、全身を包む衣服も安物ではないようだ。
熊野と同じく、『環境』は恵まれているのかもしれない。

「なるほど、ね…………」

口では納得したような素振りを見せたものの、
完全に理解できたとは言えない。
分かるような分からないような、そんな理由だった。
なんにせよ普通ではなさそうだ。

「――――なッ!?」

相手が次に取った行動に驚きを隠せなかった。
10mの高さから、地上に生身のダイビング。
打ち所が悪ければ――いや、運が良くても大怪我は免れない。
死ぬ可能性だって大いに有り得るだろう。
あまりにも無謀すぎる。

「くそっ!!」

咄嗟に『軍刀』を手放し、
走りながら『カルマ・フラグメンツ』を先行させる。
地面に激突する前に、どうにか受け止めようという体勢だ。
間に合わない確率の方が高いだろうが、
あれこれ考えるより先に身体は動き出していた。

96熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/02/06(月) 22:36:20
>>95

「へぇ・・・・」

数秒後の惨事の予感も気にせず、空中に身を躍らせる女
史が軍刀を捨ててまで自分を助けようとしている様子を見て、
女は感心するように息をつく

「『あんなこと』をしていたからどれだけ非情な人かと思ったら」

「結構、情が厚い立ったりするんだね」

   パァンッ!!

             ――――――!?

史が彼女を受け止めるべく、着地地点へと駆けた直後
その『現象』が発生した

  パァンッ!!

     パァンッ!!

          パァンッ!!

              パァンッ!!

『絨毯』だッ!!
空中の・・・・女の足元に一瞬だけ『赤い絨毯』が出現!
数瞬の後に消えるそれが、連続的に女の足元に出現する事で
女が落下する衝撃を少しずつ弱め・・・・落下速度を遅らせていた!




           すたっ!

「・・・・・・こんにちわ」

そして、最後には着地・・・・女は無傷だ
彼女の様子を見るに・・・・怪我はないように見える

97史『カルマ・フラグメンツ』:2023/02/06(月) 23:29:41
>>96

男を斬り捨てた時、青年は冷徹な程に落ち着いて見えた。
任務に忠実に動き、敵兵を斬る軍人のように。
しかし、飛び降りた熊野に駆け寄ってくる姿は、ひどく感情的だった。
『血筋』を否定する面と、そこから逃れられない面。
異なる二つの側面が、対照的な『二面性』となって表出している。

「!!」

「いや…………『そうか』…………」

スタンドと共に立ち止まり、『降りてきた女』を見据える。

「僕と『同じ』なら、『着地する手段』があって然るべきだった」

彼女は『見えていた』。
無策で飛び降りる訳がない。
分かっていた筈だが、『飛び降り』のインパクトが強すぎた。

「『話を聞きたい』とか言ってたようだけど――――」

       ザッ

『血筋の影響』で、無意識に一歩後退する。

「…………どんな事を話せばいいのかな?」

『軍刀』は手放した瞬間に消えてしまっていた。
今は、素手となった人型スタンドだけが残っている。
そのヴィジョンを飾り立てているのは、多数の『勲章』だ。

98熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/02/07(火) 00:01:48
>>97

「・・・・・・・・・。」

今まさに生命の危機を感じさせる高さから落下したとは思えない程に
女の態度は落ち着き払っていた
その目が、無言のまま史の全身を見つめる

(『軍刀』を消して、ヴィジョンだけを残している・・・?
 最低限の警戒は怠らせないようにしながら、攻撃の意思はないと見ていいかしら?)

(何にせよ・・・・)

「『危険』な匂い・・・・・」

ふっ、と口元に笑みを浮かべる

「ああ、いえ、ごめんなさい。今のは独り言
『独り言』って言ってもそれ程大したことじゃないの
 ただちょっと・・・・お話をしたいだけ」

言いながら、手を後ろに組みうろうろとその場で足を踏む

「ねえ、その人は殺しちゃったの?」

99史『カルマ・フラグメンツ』:2023/02/07(火) 00:59:31
>>98

最初に目撃した通り、目の前の青年はスーツ姿だった。
この年代にしては着慣れている雰囲気がある辺り、普段着なのだろう。
『育ちの良さ』が垣間見える。
その上から羽織っているのは、オリーブグリーンの軍用パーカー『M64』。
1964年に採用されたフランス陸軍のフィールドジャケットだ。
史が着用しているのはデッドストックであり、現在では入手困難となっている。
目線を足元に向けると、履き込まれた風合いを持つブーツが見えた。

「こういう事は慣れてるみたいだね。
 つまり――――『荒っぽい事は』って意味だけど…………」

『警戒していない』と言えば嘘になる。
敵ではないとしても、この相手は『異質』だ。
その点に関しては、最低限の注意を払わなければならない。

「『生きてる』よ。
 派手に出血してるように見えるけど、重要な血管は傷付けてない。
 気を失ってるだけさ」

倒れている男を一瞥する。

「なんというか…………『生け捕りの手伝い』を頼まれたんだ」

『軍刀』は『射程外』になって一時的に消えただけだ。
出そうと思えば、またすぐに出せる。
だが、それが必要にならない事を願う。

100熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/02/07(火) 21:58:17
>>99

>「こういう事は慣れてるみたいだね。
> つまり――――『荒っぽい事は』って意味だけど…………」

「ふふふ・・・・そう見える?
 猟奇事件の現場に直面して、怖くて身が竦んでるだけかもしれないのに?」

ふわふわとした足取りのまま、両手を軽く上に上げておどけたような仕草を取る
上機嫌に笑みを浮かべているものの、その視線は一度も史から切らせていない
警戒と緩和。その二つが矛盾せずに同居している

「まあ、随分と器用な事が出来るのね
 あんなに大きな出血があったから、てっきり死んでしまったのかと思った」

「もしそうだとしたら、『110番』に電話をしなければならないもの」

くくく、とおかしそうに笑う

「こんな物騒な『生け捕り』は見た事がないわ
 いったい、どんな人がそんな恐ろしい仕事をあなたに頼んでいたの?」

101史『カルマ・フラグメンツ』:2023/02/07(火) 22:32:12
>>100

「この場から逃げもせず、自分から声を掛けてきて、大胆に飛び降りる。
 そんな人間が『怖くて身が竦む』?」

      「――――なかなかキレのある『ジョーク』だ」

今までの行動を観察していれば分かる。
油断はしていないが、怯えてもいない。
明らかに『慣れた人間』だ。

「…………ちょっとした知り合いさ。
 『家族ぐるみの付き合い』っていうのかな。
 僕は今まで、あんまり関わってこなかったけど」

    「ただ、そうもいかなくなった」

『依頼人』は、壬生家と深い繋がりを持つ人物だった。
古くからの仕事仲間。
その縁で『特別な仕事』を斡旋してくる。

「こういう事は『初めて』でね。
 一種の『通過儀礼』だよ」

「『成人式』みたいなもの、かな…………」

スタンド使いになった瞬間から、責務を負う事になった。
街を守る為に力を使う。
それが壬生家の責務である。
個人としては否定しながらも、どこか逃れられない部分を感じる。
『血筋』というのは、簡単には切り離せない。

102熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/02/07(火) 23:00:54
>>101

「話を聞く限りでは、随分と『素敵な家族』のようね
 家業みたいなものかしら? 私が知らないだけで、世界は全然広いみたい」

少しずつ、女が近づいてくる

「それじゃあ、あなたは『通過儀礼』を無事にやり遂げたという事ね
 おめでとう。大した怪我もせずにこれだけの事を成し遂げたのだから
 今夜はお祝いに美味しいディナーでも食べに行くのかしら?」

歩くような足取りで、ゆっくりと

「素晴らしいわ
 もしよろしければ、あなたの名前を教えていただけない?」

103史『カルマ・フラグメンツ』:2023/02/07(火) 23:31:30
>>102

よく観察すれば、男が受けた傷が『勲章』に変化しているのが分かるだろう。
『血』を連想させるような赤黒い色をしている。
そこから出血しているようだった。

「まぁ、『家業』っていう部分は否定しないけど…………」

           スッ

   「…………そんなに立派なものじゃない」

口元に苦い表情を浮かべ、近付く女から目線を逸らす。
どんな大義名分を掲げようと、力尽くで他者を捻じ伏せる事に変わりはない。
そういうやり方が、昔から好きになれなかった。
力で礎を築いた家柄も、その中に自分が含まれているという事実も。
そして、自らの傍らに佇む『カルマ・フラグメンツ』も。

        「史(ふひと)」

普通ならば、名字を名乗る所だが、敢えて『下の名前』を告げたのには理由がある。
簡単に言うなら、壬生家に対する反感だ。
だから、名字を口に出したくなかった。

「大昔の日本で、『記録や文書に携わった役人』の事を、そう呼んでいたらしいよ」

だが、結局は『この名前』が、『歴史を綴る者』である事を暗示している。

104熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/02/08(水) 22:05:16
>>103

「ふひと、ふひと・・・・・史(ふひと)さん」

「私は熊野です」

何度か呟くように彼の名前を唱えると、自身の名を口にする
家への反抗心から名前のみを口にした史とは逆に、こちらは苗字のみだ
とは言っても、特に家名にこだわりがあるわけではなく、なんとなくだろう

「さて、史さんの御実家のとても興味深い家業は気になるけれど・・・・」

ひょこ、と逸らした目線の先に顔を出す
ちょっとした悪戯、いじわるのたぐいかもしれない

「意外だわ。結構まともな人なのね」

史を片手で指し示しながら、言う

「あんな事をしていたから、もっと話の通じない『通り魔』みたいな人かと思った・・・・
 それに、ちゃんとした『倫理観』もあるみたいだし」

「現場を誰かに見られたら、口封じをするタイプかと思った」

105史『カルマ・フラグメンツ』:2023/02/08(水) 22:42:32
>>104

「――――…………」

間近にある顔を見つめ返しつつ、思考を巡らせる。
感情に流されてしまう部分がある一方で、
目の前に立つ女に対する分析は冷静だった。
これも引き継いだ『血筋』の一部だ。

「…………『褒め言葉』として受け取っておくよ」

『通り魔かもしれない』と思ったのに声を掛けてきた。
さっきの『独り言』といい、『期待』していたのか?
ほんの一瞬、そんな考えが脳裏を過ぎる。

        ブロロォォォォォ…………

まもなく、遠方から『エンジン音』が響いてきた。

  「『依頼人』が寄越した車が来たんだ。
   そこに転がってる男を拾いにね」

      「『危険』はないだろうけど、
       あれこれ聞かれて余計な時間を取られるかもしれない」

            「引き上げるなら『今の内』さ」

史と名乗る青年は、それとなく熊野を促した。
ここに残っていても、ただ面倒になるだけだ。
『熊野の望む物』は得られないだろう。

106熊野『フォー・エヴァ・ロイヤル』:2023/02/08(水) 23:08:02
>>105

「・・・・・・ふふ。」

熊野風鈴は『危険』を好む
目の前の青年は、その攻撃的な能力の割に、ひどく倫理的で冷静な気性のようだ
だが、彼の家、彼の家業はどうだろう。『危険』の香りは・・・・

「・・・・・。」

「・・・・そうしておくわ」

そこまで考えたところで、面倒事の気配がし始めた
『危険』は好ましい事であるが、面倒事は嫌いだ。無駄に時間と体力を消耗する
そう考え、青年の言葉に従う事にした

「ありがとう、史さん
 とても興味深い『社会見学』になったわ」

「願うなら・・・・今度はあなたの『家業』についてよく知りたいところだけど
 それはまた今度のお楽しみ・・・・ね」

くるりと、身をひるがえして青年に背を見せる

「またね」

そう言って、歓楽街の喧騒の中に混じり、去って行った

107史『カルマ・フラグメンツ』:2023/02/08(水) 23:52:51
>>106

「あぁ、気を付けて…………」

車の音を気にしながら、熊野に別れの一言を告げた。

「………『気を付けて』、か」

遠ざかる背中を眺めながら、小さな声で呟く。
自分で口に出した言葉が、ひどく奇妙に感じられた。
トラブルを恐れる人間なら、そもそも踏み込んでこない状況だ。
そこに自ら飛び込んできた彼女に対しては、意味のない注意だったかもしれない。
深みに入りかけた思考を中断させたのは、車のブレーキ音だった。

「――――いえ、何でもありませんよ。
 念の為に待機していただけですから」

車から降りた人物に応答し、『カルマ・フラグメンツ』を解除する。

「僕は歩いて帰ります。
 今は一人になりたい気分なので」

「ええ、それじゃあ…………」

車内に押し込められる男に背を向け、そこから立ち去る。

(『業の断片』――――いつか『これ』を捨てられる時が来るんだろうか)

取り留めのない事を考えていると、心の奥底に『引っ掛かる物』を感じるような気がした。
だが、それが何なのかは分からない。
ただの気の迷いだと結論付け、壬生史は『スタンド使い』としての道を歩み始める。

  『血筋』を否定する為に『勲章』を手放した行為が、
   逆に『血』から逃れられなくなる結果を招いた事に、彼が気付く事はない――――。

108百目鬼小百合『ライトパス』:2023/02/16(木) 22:12:08

フランスの『エス・テー・デュポン』が製造するライターは、高級ライターの代名詞であり、
一種のステータスシンボルとして扱われている。

「いやいや、こんなに連れてくるとは恐れ入ったよ」

それを手にした人物が、狭い路地の真ん中に立っていた。
白いパンツスーツに身を包む背の高い女。
ベリーショートの黒髪、口元にはホクロがある。
服装に飾り気はなく、白百合のイヤリングが唯一の装飾品だ。
とっくに『花の盛り』を過ぎた年齢ではあるものの、その力強い佇まいは、
身体的な衰えを感じさせない。

「大方、あの時の報復か何かだろうけどねえ」

      キィィィィ――――――ン

親指で蓋を開くと、心地良い反響音が耳に響く。
デュポンのライターは、独特な『開閉音』で有名だ。
どういった原理で鳴るのかは定かではない。
鳴る場合もあれば、鳴らない場合もある。
また、使い続けている内に、音が変化するケースもあるそうだ。

「ま、アタシも『まだまだ捨てたもんじゃない』って事さ」

         シボッ

咥えた煙草に着火しながら、周囲の地面を見下ろす。
一見して真っ当ではないと分かる男達が、1ダースほど纏まって倒れ、一様に意識を失っていた。
前後から『挟み撃ち』にされたのだが、それらを返り討ちにして今に至る。

109ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/02/17(金) 20:35:26
>>108
「おや、そこの人」
路地裏の外から声が聞こえてくる。
この場所には似つかわしくない修道服の女性だ。
見たところ若そうだが

「ちょうどよかった。
 火、貸してもらえる?」
そう言ってタバコを差し出してきた。
見た目からはさらに似つかわしくない代物だろう。

110百目鬼小百合『ライトパス』:2023/02/17(金) 21:40:12
>>109

「おっと――――」

路地に踏み込んだヨハネには、『それ』が見えていた。
右手に『警棒』を持つ『人型スタンド』が。
本体のスーツと同じく、そのヴィジョンは白い。
また、両肩には『白百合の紋章』が刻まれている。
女のイヤリングと重なるイメージだ。

「ああ、失礼。ちょいと取り込んでたもんでね」

      ボッ

差し出された煙草の先に、ライターの火を近付け、着火した。
使い込まれた真鍮製のライターだ。
経年変化で、くすんだ金色になっている。
喫煙具の知識があれば、『デュポン』だと分かるだろう。
そうでなくとも、高級品であろう事は、何となく推測できる。

「アンタ、『教会』の人なのかい?
 外見で判断するのは良くないとは言うけど、それしか材料がないからねえ」

「ここらは物騒だから、用心した方がいいよ」

地面に倒れている男達を一瞥し、紫煙を燻らせる。

111ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/02/17(金) 22:01:13
>>110
「これはどうも。」
そう言ってタバコを近づけ、火をつけてもらうことにした。
彼女のタバコはコンビニで撃っているような安物のようだ。

「ありがたいありがたい。」
ちらりと、小百合の持っている警棒に視線を向けた。
その視線は小百合からも見えているかもしれない。

「ああ、見ての通り私は町外れの教会の人よ。
 他人の懺悔に耳を貸す変わり者さ。」
そう言ってタバコを吸い、煙を吐く。

「その物騒なのってのはここで倒れてるやつのこと?
 たしかに危ないけど、このへんは歩きなれてるんで、気にしなくていいよ。」
そう言ってまた彼女のスタンドを見る。

「で、貴方は何を生業にしているの?」

112百目鬼小百合『ライトパス』:2023/02/17(金) 22:27:35
>>111

「――――なるほどねえ」

『ライトパス』に向けられた視線に気付き、それが示す『意味』を理解した。

「確かに、それなら大丈夫そうだ。
 厄介事に巻き込まれても、切り抜けられる『力』があるんならね」

         フゥゥゥゥゥ――――…………

景気良く煙を吐き出し、ジャケットの内ポケットから名刺を取り出すと、
それを目の前の人物に手渡す。

「アタシは『こういう者』だよ」

『大門総合警備保障:主任指導官・百目鬼小百合』――シンプルな名刺には、
そのような肩書きが記されている。

「コイツらはアタシに恨みを持ってる。
 ここで袋叩きにしてやろうと狙ってたのさ」

       「生憎、上手く行かなかったようだけどねえ」

   ……………… ……………… ………………

今の所、目の動きに『嘘』は感じられない。

113ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/02/17(金) 23:09:34
>>112

「ふむ、力…ねぇ。
 つまりその、警棒がその『力』ってことかな?」
ちらりとそれを見て答える。
ヨハネもなんとなく普通ではないと察してはいたが、
あまり確証は持てていなかった。

「これはどうも…
 警備の人ねぇ。どうもよろしく、小百合さん」
そう言って名刺を受け取った。

「あいにく、こっちは名刺を持ち歩くような職業じゃないから口頭になるけど…
 私は鷲津ヨハネ。よろしく。」
タバコを口にくゆらせながら答える。

「まぁ、警備の人ってならそういう人を毛嫌いするやつも多いだろうねぇ。
 普通に暮らしてりゃ、恨むこともないだろうけど。」
彼女の目の動きを見て嘘がないことがはっきりわかる。

「随分とモテモテみたいねぇ。悪い奴らに。」

114百目鬼小百合『ライトパス』:2023/02/17(金) 23:33:29
>>113

           ジ ャ キ ッ

ヨハネの言葉に答えるように、『人型スタンド』が握る『警棒』が短く縮む。
伸縮機構を持つ『特殊警棒』。
『ライトパス』が持つのも、それと同じ物だ。

「本職とは別に、自主的な『ボランティア活動』をやっててね。
 ここに転がってる連中とは、それ絡みだよ」

「アタシに寄って来る男は、昔から『こんなのばっかり』さ。
 有り難くない事にねえ」

苦笑しながらも、百目鬼の表情からは、後ろ向きの感情は読み取れない。
むしろ、どこか溌剌としているようにも見える。
『自分自身』に『嘘』をつかずに生きているのだろう。

「ここで会ったのも何かの縁だ。
 ちょっと尋ねたい事があるんだけど、構わないかい?」

そう言い置いてから、本題に入る。

「アタシは『刀』を探してるんだ。『特別な刀』をね。
 正確には、『それを持ってるヤツ』を追ってるのさ」

「――――そういう話を耳にした事はあるかい?」

115ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/02/18(土) 00:17:09
>>114
「ふーん。『街の美化運動』ってやつ?
 これはありがたい限りだねぇ。」
彼女の活動についてはなんとなく理解できた気がする。

「困ったもんだねぇ確かに。
 声掛ける相手にまともな男がいたらいいだろうに。」
地べたに転がっている男連中を見ながら皮肉交じりに答える。
小百合は嘘をついた様子がなく、話しやすい相手に思える。

「なんだい?懺悔なら好きにしても…
 と、違うみたいね。」
彼女の言葉に耳を傾ける。
どこか真面目そうな話をしているように感じたからである。

「特別な刀…ねぇ。」
少し考え事をする。
思い浮かぶものはない。

「……そういう話題は聞かないねぇ。
 教会は、刀だかの話とは縁がないし。」
少し考えては見たものの、そういったことはないなと
彼女は答える。

116百目鬼小百合『ライトパス』:2023/02/18(土) 00:54:10
>>115

「ま、そんな所だよ」

         フ ッ

百目鬼の言葉と共に、『ライトパス』のヴィジョンが消えた。

「ハハハ、そりゃそうだ。
 今の世の中で『刀』がある場所なんて限られてる。
 少なくとも『教会』には置いてないだろうさ」

      「だけど――――これは『スタンド絡み』でね」

薄いベールのように漂う紫煙の中で、話の先を続ける。

「『才能』のある人間が、その『刀』で斬られると、『スタンド』に目覚める」

         フゥゥゥゥ――――…………

ゆっくりと口に出してから、再び煙を吐く。

「『流星刀』って呼ばれてる。
 何処かの誰かが、ソイツを振り回して『悪さ』してるって聞いてね。
 『美化運動』の一環として手を付けたのさ」

「もし何か分かった事があったら、アタシに教えて欲しいんだよ」

       スッ

ヨハネに渡した名刺に目線を向ける。

「代わりと言っちゃあ何だけど、困った事が起きた時には『力』を貸すよ」

『力』――――その意味は言わずとも伝わるだろう。

117ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/02/18(土) 01:04:31
>>116
「フッ、教会ではでっかい刃物はご法度さ。」
冗談交じりに言葉を返す。

「スタンド絡みの話か…
 随分とまた変わった刀だねえ。
 才能があったら死なないってところか。」
彼女に合わせるように煙を吐き出す。
たまに輪っかを作っているようだ。

「私もスタンドを持ってるが、
 少なくともそんな妙なもので斬られた覚えはないな。
 そんな恐ろしい辻斬りにはなるべく会いたくないねえ。」
この町にそんな恐ろしいやつが居るというのはあまりいい気分はしない。
ちょっとゾットする話だとヨハネは思う。

「もちろん教えるつもりだよ。
 …まぁ教会内で聞いたことには守秘義務があるから
 そっち方面の話は難しそうだけどねぇ。」
いかにも生臭シスターに見えるが、そこはきっちり守っているようである。

「ありがとう。力を貸してくれるとありがたいよ。
 自分で解決できない相手が来たときはきっとそうなる。」

「この辺の連中を倒せるくらいの相手なら
 貸してもらう力としては申し分ない。」

118百目鬼小百合『ライトパス』:2023/02/18(土) 02:01:08
>>117

「言えない事を教えてくれとは言わないよ。
 人様の領分に、気安く踏み込む気は更々ないからね」

「もっとも、懺悔室に『罪の告白』に来るような、殊勝な辻斬りじゃあないだろうけどねえ」

現状、手掛かりは皆無に等しい。
だが、何かを探すという行為は地道な作業だ。
たとえ砂漠で米粒を見つけ出す程度の可能性であろうと、動く事を放棄してしまえば、
本当の意味で可能性はゼロになってしまう。

「難しい案件ではあるけど、アタシは諦めないつもりさ。
 だから、協力してもらえると大助かりだ」

そして、『協力者』を増やせば、その可能性を少しずつでも上げていける。

「ヨハネさん――――アンタ、『酒』も結構いけるクチじゃあないかい?」

別に確固とした根拠がある訳ではなく、単なる勘だった。
ただ、煙草という共通点がある。
吸い方から見て、おそらく彼女も量は多い方だろう。
もちろん喫煙者の全てが酒好きであるとは限らない。
しかし、このヨハネからは、何となく自分と似た部分を感じるのだ。

「場合によっちゃあ、『力』じゃなく、そっちでお礼をさせてもらうよ。
 いい酒を出してくれる店を知ってるんでね」

『協力者』とは別に、『飲み仲間』が増えるのは、それはそれで嬉しいものだ。

119ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/02/18(土) 12:23:59
>>118

「もちろん、後悔している人間を突き放すみたいな真似は聖職者には出来ないさ。」

「…違いない。もし懺悔をしながら辻斬りしてるんだったら
 そいつはとんだ狂人だよ。」
実際にいたらゾッとする話だと言える。
もし実際に来たら自分はどう思うだろうか、とも考える。

「大丈夫さ、出来ることはするよ。
 …フッ、お酒?もちろん大好物だよ。」
口元を軽く吊り上げながら彼女に言葉を返す。
小百合の予想通り、ヨハネはお酒も嗜んでいる。聖職者っぽさはないが、酒もタバコも、ついでに肉も好きなのだ。

「いいねぇ。お礼が楽しみだ。できればシードルが一番いい。
 ついでに肉料理も美味しいお店だとなお嬉しいねぇ。」
タバコを吸いながら嬉しそうに注文をつけてくる。
彼女が酒好きであることもお肉好きであることも聞いて取れるだろう。

120百目鬼小百合『ライトパス』:2023/02/18(土) 19:42:48
>>119

「ハハハ、そうじゃないかと思ったよ」

「『シードル』――リンゴ酒か……。
 アタシは『日本酒』が好きだけどね。
 新鮮な『馬刺し』があると尚いい」

「だけど、アンタとは気が合いそうだ。
 アタシの若い頃に似てる」

笑い返しながら、不意に空を見上げる。
次第に赤みを増していく空の色を。
夕方から夜に移り変わろうとしているのだ。

「なんなら、今から一杯やりに行くかい?
 こんな所にいるって事は『仕事中』じゃあないんだろ?」

「この辺の居酒屋も、ぼちぼち開き始める時間帯だからね」

          ザ ッ

ライターをポケットに収め、路地の出口に向き直る。

「ついでに言うと、ここに倒れてる連中も、そろそろ起き始める頃合さ。
 そうなる前に、さっさと立ち去った方が良さそうだよ」

「『もう一回相手をする』のは、流石に御免被りたいからねえ」

そう言った時、ヨハネには見えただろう。
物陰に潜んでいた一人の男が、百目鬼の背後から忍び寄り、今にも襲い掛かろうとしている。
どうやら『恨みを買っている人間』は他にもいたらしい。
百目鬼が気付いているかは不明だ。
しかし、彼女には『自らのスタンド』を出そうとする様子がなかった。

121ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/02/18(土) 20:35:23
>>120
「馬刺しも嫌いじゃあないよ。
 あれは酒との相性がいい。」
そう言って指差す。
楽しげな会話をしているあたり、酒の話題が弾みそうだ。

「それはそれは。
 若い頃の貴方も、こんなふうな目だったのかい?」
自虐するように冗談を飛ばす。
彼女の目は確かにやや悪く見えるが、顔立ちはまぁ悪くないはずだ。

「大丈夫、今日はお休みだからね。
 まぁ多少羽目を外しても神様は無視してくれるでしょ。」

「こういう縁にはなかなか出会えないからねえ。
 せっかくだからその好意に甘えてみようかな。」
そう言って路地の方に歩いていく。

「あぁ確かに。
 ここにいたら色々ひどい目に合いそうだ。」
と、何気なく別方向を見ると、背後に忍び寄る何者かの存在が見えた。

「……まぁ、背中に目はないから仕方ないね。」
そういうが早いか、

「ゴッド・ノウズ」
そうつぶやくと同時に

ゴッ

背後から鈍い音が響くのが聞こえた。
「神のみぞ知る…ってね。」
小百合が振り向けば、ベールで顔を隠した聖職者のような見た目のスタンドが立っており
背後の男を顔面からぶん殴っているのが見えるだろう。

122百目鬼小百合『ライトパス』:2023/02/18(土) 22:15:07
>>121

        ――――ドサァッ

『ゴッド・ノウズ』の拳が、男の顔面を捉えた。
高速の打撃を正面から受けて、その身体が崩れ落ちる。
まさしく『神業的』な精度により、意識を失ったようだ。

    「ははぁ――――」

         「やっぱり似てる気がするねえ」

背後から響いた音を聞いて振り返り、『ヨハネのスタンド』を視界に収めた。
『聖職者』のようなヴィジョンを見つめる切れ長の目が、僅かに細められる。
それから叩きのめされた男を見下ろし、再び口を開く。

「さっき『この辺は歩き慣れてる』って聞いたからね。
 いや、見事な一撃だったよ」

「実を言うと『それ』が見たかったのさ。
 だから、『気付かないフリ』をさせてもらったよ」

襲撃者の存在を察知できたのは、ヨハネのお陰だった。
彼女の視線を注視していたからこそ、背後に迫る相手に気付いたという訳だ。
しかし、『ゴッド・ノウズ』を確認する為に、敢えて『ライトパス』は出さなかった。

「これで気持ち良く『お礼』が出来る。
 助けてもらったお返しだ。
 今夜はアタシが奢るよ」

       ザッ ザッ ザッ

口元に笑みを浮かべて、ヨハネの先を歩き始める。

「なかなかの『穴場』でね。
 居酒屋じゃなくて『蕎麦屋』なんだけど、いい酒とツマミを出してくれるんだよ」

お互い『酒呑み』同士――――二人の邂逅は『長い夜』の始まりになりそうだ。

123ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/02/18(土) 22:56:48
>>122
「ちょっと危なかったね。
 まぁ、大丈夫そうだったけど」
そう言って小百合に向き直る。

「なんだ、出さなくても大丈夫だったってことかな?
 案外、貴方も見る目がありそうじゃないの。」
もうすでに気づかれていたのだと聞き、感心したように言う。
もしかしたら自分自身の目線がそう思わせたのか。そう思った。

「ほう、助けたかいがあったね。
 それじゃあ早速…ご案内させていただこうかしら」
どこか楽しげにヨハネは歩いていった。


「楽しみだ。
 ちょっと多めに注文させてもらおうかねえ。」

二人はおそらく、居酒屋でとても楽しく話ができたことだろう。

124リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/03/03(金) 05:20:57

人通りの少ない夜中の路地に、一体の『マネキン』が転がっていた。
ゴシック風のドレスを着て、羽飾りの着いた帽子を被っている。
何よりも奇妙なのは、全身をメチャクチャに砕かれている事だった。
『FRP』――強化プラスチック製のボディが、容赦なく叩き壊されている。
まるで『ツキノワグマ』が暴れ狂ったかのように、辛うじて原型を留めている状態だ。

「――――――こんなにされちゃって」

残骸の傍らに佇み、『リトル・メリー』は呟きを漏らす。
無惨に破壊されたマネキンの姿が、人間に裏切られた『姉妹達』の末路を、
否応なしに思い出させる。
作り物の器に宿った『魂』。
その奥底から、尽きる事のない『絶望』と『憎悪』が、溢れんばかりに湧き上がる。
黒い衝動の赴くままに、『意地悪な人間』を片っ端から呪ってやりたい気分に駆られるが、
『仲間』を放っておく事は出来ない。

           ソッ

   「『マダム』に直してもらわなきゃ」

        ズ ギ ュ ン ッ

マネキンに触れて、自らの『魂』を移す。
比率にして『40%』。
『子供並みの力』と『平均的な精度』を与えた。
これで最低限の移動は出来るが、ボディの破損が激しい。
どうしても『鈍足』にならざるを得なかった。

         キョロ キョロ

メリー自身が周囲の安全を確認しつつ、マネキンを連れて移動を開始する。

125大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』【高1】:2023/03/04(土) 07:35:06
>>124 リトル・メリー
そんな夜の路地に、黄リボン付シルクハットを被った緑髪・右青目・左赤目・改造済清月学園黒制服の男装少年(16歳 女子)が通りかかりました。
オオカミ少年の大神さんです。

「週末の大通りを黒猫が歩く♪ 御自慢の鍵尻尾を水平に威風堂々と♪
その姿から猫は忌み嫌われていた♪ 闇に溶けるその体目掛けて石を投げられた♪
孤独には慣れていた、寧ろ望んでいた♪」(澄んだ歌声)
なにやら小声で歌っています。

「はぁ…どうにも今日の『芸』は『稼ぎ』が悪かったな…。
『あなかま様』に呪われたかな…。
『カッコ』つけずにあのお金受け取っておけばよかったかな…」(↓ハスキーボイス↓)
なにやら景気の悪そうなことまで呟いています。

「おや? 今なにか動いたような……」(↓ハスキーボイス↓)
そんな大神さんは通りかかった路地奥が少し気になりました。
何かが動いたように見えたからです。
大神さんはオオカミのように鋭い目を路地裏に向けました。

※通りかかっただけでまだ見つけていない状態。隠れたりしてもオッケー。
 例:隠れる・逆に気を引いてみる・捨てられた人形のふりをしてみる など

126リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/03/04(土) 07:57:46
>>125

大神は路地の方向に目を向けた。
奥の方には、月の光も届きにくい。
だが、何か動いたように見えたのも確かだ。
『勘違い』かもしれない。
『気のせい』という事もあるだろう。

確かめてもいいし、確かめなくてもいい。

127大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』【高1】[:2023/03/04(土) 08:56:33
>>126 リトル・メリー
「うん、なにかが小さく動いた気がしたな…」

  スッ……

大神さんは、スマホをポケットから取り出し、ゆっくりと『スマホのライト』を裏路地の方向に向けました。
大神さんは、一気に奥まで照らすようなことはせず、地面を這うように下から段々と、裏路地をライトでゆっくりと照らしていきます。

「…もし『危ない人』なら、『もう襲ってきている』だろう。
気付かれる時点で、『三流の襲い方』だ。
このままスマホを使って助けを呼びつつ、逃げればいい。」

「…もし、『野良ネコ』や『野ネズミ』、『食べ物を漁るゴキブリ』なら、少し驚かせてしまうだろう。
驚いて逃げてしまうかもしれない。
でも、逃げるのは別に悪いことじゃない。 それは、『元気で助けがいらない証拠』だ。
ただ、そうした野生に近い動物は、直接照らされるのが苦手だ。 光を直視して、目を悪くしてしまうケースもある。
だから、向こうからも『光の接近』を確認できるように、こうして下から這うように照らす。」

「…もし、『ケガ人』や『酔っ払い』、『ケガした野良猫』などの『弱い存在』なら、助けが必要だろう。
 余計なお世話かも知れないが、『手遅れ』よりはいい。
 まだ春になったばかりで、夜は冷える。 夜道に置いておいていいものじゃない。」

「…もし、『それ以外』なら……それはその時に考えよう。」
大神さんはそんなことを呟きました。

128リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/03/04(土) 09:39:05
>>127

「――――…………!」

スマホのライトが暗い路地を照らすと、そこには一人の『女』が立っていた。
ゴシック風のドレス、羽飾りの付いた帽子、レースの長手袋。
不意の眩しさを避けるように、顔の前に片手を翳し、
もう片方の手を壁について体を支えている。

    …………ザッ

無論、それは『人』ではなかった。
『魂』を宿す人形である『リトル・メリー』の『分身』だ。
『死後も在り続けるもの』とは、似ているようで根本的に違う。
メリーの『魂』の根源は『謎』に包まれている。
そもそも死んでいるかどうかさえ、定かではないのだから。

       …………ザッ

片足を引きずりながら、女は歩いていく。
その歩みは遅く、足取りは覚束ない。
客観的には、具合が悪そうに見えるだろう。

  (ウフフフフフフフフフフフフフフフフ)

         (――――――『見つかっちゃった』)

咄嗟に姿を隠したメリーは、『この後』の事に考えを巡らせる。
誰か来てしまったのは仕方ない。
しかし、今のメリーは『機嫌が悪い』のだ。
もし相手が『意地悪な人間』なら、有無を言わさず襲い掛かっていた。
『そうでない』なら――――このまま『通り過ぎる』だけ。

          …………ザッ

必然的に、大神に近付いていく事になる…………。

129大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』【高1】:2023/03/04(土) 10:29:02
>>128 リトルメリー
「……失礼しました。」 (紳士的な声で)
『眩しそうに避ける姿』を見て、大神さんはスマホを下ろしました。

「大丈夫ですか?」 (16歳相応の大神さんの本来の声で)
リトルメリーが大神さんに近付くように、大神さんもまた近付き始めました。

「助けは呼んでありますか? ああ、『貴女から頼まれない限り、ボクの方から助けを呼ぶことは、しません』よ。」

「なぜなら、『今の時代はスマホを持っている方が普通』です。
だから、『貴女がまだ助けを呼んでいない』場合、『貴女はスマホで助けを呼べない事情がある』 と察せられる。」

「その上で、『スマホを持っていない・奪われた・電池が切れた』可能性もあります。この場合は、ボクに連絡を頼めばいい話です。」
近づきながら、大神さんはそう声をかけます。

「ただ、『弱ったフリをして襲う強盗』という可能性も拭いきれないでしょう。」
大神さんは、少し不安そうな声でそう言います。

「その上で……こんな話があります。 『とあるCMのお話』です。」
大神さんは、勇気を絞り出すような声でそう言いました。

〜〜〜
 ナレーション「この街には、ふたつのタイプの人がいる」

 ナレーション「嘘をつく人と、つかれる人」

 バーに入ろうとしたある男が、貧相な風体の女になにかのお願いをされている。
 男は女に金を差し出し、友人が待つバーへ入る。

  バーで先に待っていた男の友人はこう言った。

 男の友人「よう、だまされたな。 今の人、病気の子供がいるといっただろ」

 男の友人「あれ、うそなんだ」

  すると、男は微笑んだ。

 ある男「よかった、病気の子供はいないんだ。」

 男たちは静かに乾杯をした。

 (サントリー『ジョニーウォーカー黒ラベル』CM 『病気の子供はいないんだ』編 から引用)
〜〜〜

「……という『お話』です。 この話の元ネタは、『とあるゴルファーにまつわる作り話』だそうです。」
そう一息に言い終えると、大神さんはまたリトルメリーを見つめました。

「貴女は、どう見ても調子が悪そうだ。 だから、ボクは手を貸します。 その上で『病気の子供がいないならそれでいい』 。」
そう言って、大神さんはリトルメリーに手を差し出しました。

「歩くなら、支えますよ。 どこへ行きたいですか。」

「ちなみに今日のボクは『稼ぎが少ない』(>>125)から、襲ってまで取るモノなんて持ってませんよ。」 ← 軽口

あなたは、その手を取っても、取らなくてもいいでしょう。

130リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/03/04(土) 11:23:27
>>129

『マネキンの視界(というのも妙な話だが)』を通して、メリーは目の前の人間を観察する。
こちらが『弱っている』と見て、そこにつけこんでくるような相手なら、それは『敵』だ。
今の状態ではロクな動きが出来ないので、『あの男』のように『力』を持たずとも、
容易く返り討ちにされてしまうかもしれない。
だが、そんな事は関係なかった。
『本体にダメージがないから』ではなく、
『意地悪な人間』はいなくならなければならないのだ。

「『ありがとう』――――」

でも、この人間は『そうじゃない』。
メリーは『優しい人間』が好きだった。
『人間の友達』になる事が、リトル・メリーに与えられた『本来の使命』。
一度裏切られた事で、そこには『歪み』が生じた。
『友達になれる人間だけが残ればいい』という歪な形に。

  「でも、気にしないで」

        「『帰る』だけだから」

             「あなたも気を付けてね」

差し出された手を取らない。
ここは『意地悪な人間』と出会った場所だ。
もしかすると『仕返し』に来るかもしれない。
片方の足を『腐らせた』とはいえ、何をするか分からない『目』をしていた。
それに巻き込んで、傷付けてしまう事がイヤだったのだ。

「――――『悪い人』に見つからないように」

少しずつ、大神の方へ近付いていく。
帽子の下から覗く顔は、異様に白かった。
暗さもあって断言は出来ないが、何となく『生気』が薄いように見える。
体調が悪いせいかもしれない。
しかし、声はハッキリしているので、歩いている途中で倒れるような事はなさそうだ。

131大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』【高1】:2023/03/04(土) 11:57:24
>>130
「そうですか。」
返事を受けて、大神さんは手を引きました。

「あなたも気をつけて。」

「――――『悪い人』に見つからないように」
そう言って大神さんも立ち去るようです……

……が

「……提案なのですが。 『歓楽街』を抜けるまで、ご一緒してもいいですかね。」

「この歓楽街、微妙に治安が悪くて、女性1人では危ないですからね。 あなたも、ボクも。」

「……ああ、こう見えて、ボクは『女』なんですよ。 いわゆる『かよわい女性』です。」

「そして、たとえ女同士でも『一緒の方が安全』というものではないですかね。」

「ああ、断っても構いませんよ。

 『偶然、ボクがアナタの近くにいるだけ』、
 『偶然、ボクがアナタに合わせた速度・歩調で歩くだけ』、
 『偶然、帰り道が同じ方向なだけ』、
 『その方がボクとしても安全というだけ』

そんな話です。 」

そう言うと、大神さんは『リトルメリー』にそっぽを向き、その前を歩き始めてしまいました。
『特に返事を聞かなくてもいいか』という感じで、歩いていきます。 リトルメリーの速度に合わせてなのか、少しゆっくりとした歩みで。

※特に何もなければ、『一緒に歓楽街を出て終わり』の方向で動きます。

132リトル・メリー『メリー・バッドエンド』:2023/03/04(土) 12:32:53
>>131

  「ウフフ――――――」

      「ウフフフフフフフフフフフフフフフ」

丁度すれ違った時、背中越しに笑い声が漏れた。

「あなた、とっても優しいのね」

「『優しい人』は好きよ」

     ク ル ッ

踵を返し、改めて大神に向き直る。

「いいわ。一緒に『お散歩』しましょう」

「少しの間だけ、ね」

この辺りは、あまり人の目が届かない。
そういう場所で『良くない事』が起こりやすいのは、メリーも知っていた。
実際、『乱暴な人間』がいたのだから。
もし何かあったら守ってあげたい。
そう思った。

   「わたし『メリー』」

話しながら、また歩き始める。
メリーとマネキンが向かう先は『老舗人形屋』。
主人である『マダム』は、『人形』と名の付くものであれば、種類を問わず扱っていた。
それもあってか、時折『曰く付き』の品も持ち込まれる。
リトル・メリーが彼女と関わるようになったのも、似たような経緯だ。

   「さっき、『歌』を歌っていたでしょう」

         「今度は、わたしが聞かせてあげる」

       〜〜〜〜〜〜♪

      「 『青い眼をしたお人形は』 」

  「 『アメリカ生まれのセルロイド』 」

戦前の童謡『青い眼の人形』を口ずさみながら、大神と共に夜道を歩いていく――――――。

133大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』【高1】:2023/03/04(土) 12:46:32
>>132 リトルメリー
「ボクは大神(おおがみ)と言います、メリーさん。
だから、ボクは『優しい人』とかではなく、『ただのオオカミ少年』ですよ。 『少年』で『大神』なのでね。」 

(※ 『優しい人』という『カテゴリ』ではなく、『大神少年』という『個人』でボクを見てくれませんか と言う意味を含む。)

そうしてオオカミと人形は、夜道を歩いていきましたとさ。 おしまい。 どっとはらい。

134美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/03/23(木) 13:24:39

過去に起きた災害の教訓から、『公衆電話の設置場所』は公表されるようになった。
調べる気さえあれば、どこに設置されているかは誰でも分かる。
だが、『番号』を知っている人間は少ない。
『電話機の管理会社』と『警察』。
そして、『美作くるみ』だけだ。

      ズギュンッ

ひっそりと佇む『電話ボックス』を視界に収め、
注意深く周囲を確かめてから、『プラン9・チャンネル7』を発現。
『忘れられた歌鳥』に気を配る者はいない。
だから、これから行う『やり取り』も知られる事はなかった。

  「あなたの『電話番号』を教えてくれる?」

    《ハイ!『××××××××××』デス!》

     「――――どうもありがとう」

『本人』から入手した『番号』をスマホに登録する。
また一つ『カナリア』の『止り木』が増えた。
そして、これが最後。
今、この街に置かれた『全ての公衆電話』を掌握したのだ。
設置台数が激減した事は、裏を返せば全部を確認しやすい。

「これで『プラン』の『第一段階』は『コンプリート』。
 あとは『第二段階』を『第三段階』に繋げれば『オールクリア』ね」

          ドルンッ!

停めてあった旧型の『ヴェスパ』に乗り、
キックペダルを力強く踏み込んでエンジンを始動させる。

「…………いいえ、そこから始まるのよ」

  バ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ

ある種の決意を秘めた呟きを残し、軽快な響きと共に、
エンジン音は遠ざかっていった。

135カナリア『プラン9・チャンネル7』:2023/03/24(金) 16:55:29

星見町内の各所に設置されている『公衆電話』。
普段は意識される事もなく、ただ通り過ぎていくだけの存在。
しかし、『カナリア』にとっては密かな『止り木』だった。

     ジリリリリ…………

            ジリリリリ…………

『電話ボックス』の中に置かれた電話機が『着信』を告げる。
『忘れられた歌鳥の囀り』が響く。
誰かが受話器を持ち上げてくれるのを待っているかのように。

136ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/03/26(日) 01:01:54
>>135
ガチャリ

受話器を取る音が聞こえた。
手に取った人物は、シスター服を着た人物。

「もしもし?」
先程からずっと受話器がなっていたのが気になり、ヨハネはその受話器を取った。

「出張懺悔室はやってないんだがねぇ。
 どなたかしら?」
どこか皮肉めいた口調で受話器の向こうに人物に声をかける。

137カナリア『プラン9・チャンネル7』:2023/03/26(日) 13:34:56
>>136

「――――ハロー」

「『忘れられた歌鳥の囀り』に耳を傾けてくれて、どうもありがとう」

「懺悔をする予定はないけど、ちょっとだけ『お喋り』がしたいと思って。
 それから、電話に出てくれた貴方に、『ささやかなプレゼント』を用意してあるの」

受話器の向こうから聞こえてきたのは『女の声』だ。
しかし、その『音程』は普段よりも低い。
別にボイスチェンジャーを使っている訳ではなかった。
『アイドル』から『パーソナリティー』。
長く『声』に携わってきた経験から、『カナリア』こと『美作くるみ』は、
『自分の声を操る技術』を身に付けている。

「私は『カナリア』よ。
 よかったら、あなたの名前を教えてくれる?」

「あぁ、『本名』じゃなくていいわ。
 私も教えてないんだし、お互いに『秘密』が保たれてないと『フェア』じゃないものね」

「ちなみに、前に話したのが『ウルフさん』で、その前が『ウサギさん』。
 そんな感じで『仮の名前』を決めてもらいたいの」

現在、美作は『星見FM放送』の局内にいた。
今は休憩時間中だ。
窓辺に立って歓楽街の方向を眺めながら、スマホを手にしている。

138ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/03/26(日) 13:54:33
>>137
「ハロー。
 なるほど、ようするに…」
少し考えてから言葉を返す。

「お暇ってわけかしら?
 ちょうどよかったわ。私も暇だったから相手をしていいわよ。」
ひねくれ者っぽい声でヨハネは答える。
暇だったのは確かだ。

「了解よ、カナリアさん。
 私の名前は…そうねぇ」
少し考えてから返事を返す。

「さとるくんとでも呼んでくれない?
 言っとくけど男性ではないわよ。」
ちょっとからかう様子で返答した。
なんだかひねくれた雰囲気を感じる。

139カナリア『プラン9・チャンネル7』:2023/03/26(日) 14:40:41
>>138

「まぁ、ちょっとした『プロモーション』よ。
 私の事を知って欲しいと思ってるの」

「フフ、『さとるくん』ね。
 そんな名前が来るなんて思ってもみなかったわ」

「でも――中々いい『センス』じゃない」

受話器から聞こえる声は、さらに話を続ける。

「実は、私は『ある技術』を持ってるの。
 具体的に言うと『機械に強い』のよ」

そこまで告げると、少しだけ間を置いた。

「その『証拠』は、貴方の『目の前』にあるわ」

懺悔室のように外部から区別されたボックス内で、
鷲津ヨハネの前にあるのは、緑色に塗装された『電話機』。

「『公衆電話の番号』は『非公開情報』。
 『管理会社』と『警察』しか知らない」
 
     「『私以外』はね」

「それを知る事が出来たのは、『私の技術』で入手したからなの」

『スタンド』という表現を使わないのは、相手の事が分からないからだ。
『スタンド使い以外』にも通じるように、『技術』という言い回しを用いている。
実際、機械から情報を取り出す『プラン9』の能力は、どちらかというと『技術寄り』だ。

140ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/03/26(日) 15:21:06
>>139
「じぶんのことをしってほしいねぇ…?
 それが公衆電話に通話ってこと?
 確実性はあるのかねぇ…」
手に取った当人からしても
果たしてうまくいくのだろうかと思えた。

「私みたいな人間以外に触るか微妙なところねぇ。」

「名前について褒めてくれるのは、まぁ悪くないけど。」
ヨハネは目を見ることで相手が嘘をついているか判別できる。
故になんとなく考えた名前である。

「てっきり公衆電話にも電話できるのかと思ってたけど、
 そんな気軽にできるわけじゃないのねぇ。」
ふと、電話機の様子を見てつぶやく

「その言い分だとあなたは管理会社の人でも警察の人でもないってことらしいね。
 …どんな技術なのかしら?」
技術という言い回しに、どこかヨハネは興味を惹かれる。
もしかしたら自分が知るものかもしれないからである。

141カナリア『プラン9・チャンネル7』:2023/03/26(日) 16:06:25
>>140

「もう少し詳しく話すと、『機械から情報を抜き取れる』の。
 ただし、何でもいいって訳じゃないわ。
 色々と『条件』があってね」

「貴方の言う通り、『公衆電話に出てくれる人』は少ないわね。
 でも、だからこそ『私の価値』も高められるのよ」

「『プレゼントを用意してある』って言ったでしょう?
 『幸運の鳥』を見つけた『ラッキーな貴方』だけに、『私の技術を使う権利』をあげる。
 『さとるくん』の為に、『一回』だけ『カナリア』が力を貸してあげるわ」

         プラン
『カナリア』には『計画』があった。

まず、星見町内の『全ての公衆電話』を掌握する。
それを『第一段階』と定めていた。
次に、それらの電話機を利用して、『カナリア』の存在をアピールするのが『第二段階』。
そして、自らの才能――『プラン9・チャンネル7』を活かした『依頼』を受けるのだ。
これが『第三段階』であり、それを果たす事で、
『カナリア』の名前は密かに広がっていくだろう。

『正体』を隠しながら、
『スタンド使い』として『キャリアアップ』する為の『セルフプロデュース』。

「だけど、『公序良俗』に反する事は手伝えない。
 それ以外で良ければ、いつでも『依頼』を受け付けてるから」

もちろん『犯罪行為』に加担する気はなかった。
『モラリスト』である『カナリア』は、
社会に不利益を与えるような事はしないと決めている。
そんな人間に『情報を暴く能力』が目覚めたのは、ある意味では非肉なのかもしれない。

142ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/03/26(日) 17:26:26
>>141
「ふぅん…
 ハッキングみたいなやつ?
 その条件に合致したのが公衆電話ってわけなのかねぇ。」

「価値を高めるねぇ…
 噂を広めてもらうということかしら?」
彼女の言葉に首を傾げる。
自分の持つ能力も、電話越しでは通用せず
底が知れないものだ。

「力を貸すといったけど…
 見ず知らずの相手にはどこまで頼めばいいかわからないわねぇ…
 犯罪行為はしないとしても…『どこまで』できるのかしらね?」
電話越しでの初対面であるため
ヨハネは彼女がどこまでできるかは、まず疑問に思った。

(…その気になれば犯罪もできる力ってことかしらね…これは…)

143カナリア『プラン9・チャンネル7』:2023/03/26(日) 18:10:01
>>142

「よく考えてみて。
 誰もが手に入るんじゃあ『希少価値』が低いでしょう?
 貴方みたいに『カナリアの電話を取った人だけ』が手に入る権利。
 『価値が高まる』っていうのは、そういう意味よ。
 『私と出会えた事そのもの』に『価値』がある」

「俗な言い方をすると、私は『レアキャラ』なの」

「もちろん『何が出来るか』はキチンと説明させてもらうわ。
 まず『条件』だけど、『スピーカーが付いた機械』じゃないとダメ。
 そこにある『電話機』みたいにね」

「『保存領域のある機械』――例えば『スマホ』や『タブレット』なら、
  その中に入っている『データ』を全て確認できる。
 『それ以外の機械』なら、『過去三日間の使用記録』よ」

『プラン9』の能力は他にもある。
『カメラ』や『マイク』の付随した機械なら、
それらを使ってリアルタイムで『情報』を得られるのだが、これは伝えない。
『情報の閲覧』には関係ないし、何もかも明かしてしまう必要はないからだ。

「今から口頭で『メールアドレス』を教えるわね。
 もし『依頼』してくれる時は、そこでやり取りしましょう」

「念の為に言っておくけど、いわゆる『捨てアド』よ。
 貴方も適当なアドレスを取得しておいてくれないかしら?
 何事も『フェア』にしておきたいから」

         ゴソ

休憩室の椅子に腰を落ち着けながら、事前にメモしておいたアドレスを、
スタジャンのポケットから取り出す。

144ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/03/26(日) 19:00:44
>>143
「まぁ、たしかにそうね。
 量を渋ったほうが、価値は高まると言うのはその通りかも…
 神様がありがたがられるのは、全く人前に現れないから、とも言うわね。」
どこかひねくれた言い回しで答える。
一応神職なのだが、わりかし真面目ではないのだ。

「電話機を使わないと無理ってわけね。
 了解したわ。
 …こうして聴くと、まるで都市伝説みたいな条件ねぇ。」
そう言って、いつも持ち歩いているスマホを取り出した。
フリーのメアドはちょうどよくヨハネも持っているのだ。

「了解、準備はいいわよ。
 こっちも貴方の言うメアドをスマホに保存しておくわ。」

145カナリア『プラン9・チャンネル7』:2023/03/26(日) 19:50:35
>>144

「あははは…………確かに『さとるくん』の言う通りかも。
 もし『神様』が簡単に現れたとしたら、ありがたみも薄れちゃいそう」

    「私は、そんなにスゴい存在じゃあないんだけど」

最初の一言が『懺悔室』だった事を思い出し、そういった職業なのだろうかと考えた。
だが、あまり深くは突っ込まない。
こちらも素性は明かしていないのだから。

「それじゃあ、言うわね――――」

メモの内容を読み上げ、こちらのアドレスを伝える。

「『スピーカーの付いた機械なら何でも』ね。
 スマホ・タブレット・パソコン・カーナビ・インターホンとか、
 とにかく『スピーカー』さえ付いていれば、どんな機械でもオーケーよ」

「そういう訳で、今後『私の力』が必要になった時は、連絡をちょうだい。
 実行できるかどうか検討してから、返事をさせてもらうわ」

会話が一段落したところで言葉を区切る。

「そこは『星見横丁の電話ボックス』よね。
 ちょっと後ろの方を見てくれない?」

「最近オープンした『トルコ料理』のお店が見える筈だから。
 テイクアウト出来るビーフ100%の『ケバブサンド』が、『カナリア』のオススメよ」

    「フフ――――この『情報』はオマケしておくわ」

他に何か尋ねられなければ、謎めいた存在である『カナリア』との通話は、
まもなく終わりに向かうだろう。

146ヨハネ『ゴッド・ノウズ』:2023/03/26(日) 20:12:36
>>145
「滅多に姿を見せないほうが
 その人はなんだか凄い人に見えるってことでもあるわねぇ。
 カナリアさんはまぁ…実際に凄い人かもしれないけど。」
と言って軽く微笑んだ。

「了解了解、アドレスはわかったわ。」

「スピーカーさえついてればねぇ。
 ここまでするのは流石にハッキングの範疇じゃなさそうね。
 了解したわ。
 …とりあえずこっちもアドレスを伝えとくわ。」
そう言ってアドレスを読み上げる。
向こうからの返事が来るとは限らないが
連絡をとりあうのであれば必要となるだろう。


「ふぅん、後ろを見てくれとはね…
 後ろにカナリアさんがいるのかと思ったわ。」
振り向いた先にあったのはトルコ料理店だった。

「…ちょうどよかったわ。
 ケバブサンドは大好物なのよ。
 ついでにお酒も良いのがあったら最高ね。」
そう言って笑う。

「フッ、このまま話してたらあなたのことを探りたくなりそうね。
 何かあったときに連絡するわ。」
ヨハネは笑いながら答える。
このままカナリアとの通話は終わりに向かう事になるだろう。

「それじゃ、またね。
 …次に会うときは力を貸してもらうときかしら。」
そこまで言って、彼女が通話をきるのを待った。

147カナリア『プラン9・チャンネル7』:2023/03/26(日) 20:46:38
>>146

「あら、それは良かったわ。
 お肉の漬け込みから焼き上げまで、『丸二日』掛けて仕上げるそうよ。
 スパイシーだから、お酒との相性もバツグンなの」

『さとるくん』のアドレスをスマホに登録しておく。
こちらからコンタクトを取る可能性は低いが、全くないとも言い切れない。
それに、あって困るものでもなかった。

「フフフ、私の事は『秘密』にしておくわ。
 さっきの神様の話じゃないけど、素顔を見せない方が演出としては効果的だから。
 『覆面アーティスト』みたいなものかしら」

「でも、何だか『さとるくん』には暴かれちゃいそう。
 『正体』がバレる前に退散しなきゃ」

冗談めかした言い方だが、『さとるくん』という名前からは、
本当に見抜かれてしまいそうな印象を覚えた。

「お喋り出来て楽しかったわ。それじゃ、ごきげんよう!」

     ツー ツー ツー

『別れの挨拶』と共に通話を切る。

「――――『ここから』ね」

       スッ

手の中のスマホを見下ろし、椅子から立ち上がる。

「『カナリア』は、ここから始まるのよ」

窓の外に広がる街を眺め、
『スタンド使い』としての『新たな挑戦』に、胸を高鳴らせる。

148美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/05/01(月) 07:23:46

昼食時を少し過ぎた星見横丁。
その日は『仕事』で来ていた。
といっても『ラジオ』ではない。

       「奥まった場所に暖簾を掲げる、
        知る人ぞ知る名店がこちら!」
 
    「蕎麦処『天狼』!」

「現代的なビル群の中に佇む風情のある店構え。
 時代が変わっても変わらないものがここにある。
 そんな雰囲気が伝わってくるお蕎麦屋さんです。
 なんと創業は明治時代という老舗で…………」

『テレビの仕事』だった。
カメラ・音声・ディレクターが同行している。
テレビ撮影にしては少数だが、それもそのはず。
テレビはテレビでも『ケーブルテレビ』で、その『自主制作番組』。
『地元の隠れたスポットを紹介する』という趣旨だ。

「――――天狼さんのお蕎麦は、蕎麦の実の殻を入れて挽く『黒蕎麦』。
 蕎麦らしい風味が強く感じられ、
 しっかりしたコシで確かな歯応えがあるのが特徴です」

「さぁ、私くるみは『天ぷら蕎麦』をいただきましょう!」

        ズズ…………

  「蕎麦の味が、とっても力強いですね。
   これだけでも食べられちゃいそうです」

    「スッキリしていて、それでいてコクの深いつゆが、
     長い歴史を感じさせてくれますねぇ」

            サクッ

「そして、揚げたての『天ぷら』ですよ!
 素材の持ち味を最大限に引き出した滋味あふれる味わい――――」

『テレビ映りが良くて喋れる人材』が必要とされたが、
予算が少ないので、あまり有名人は呼べない。
そこで『美作くるみ』に白羽の矢が立ったのだ。
小さなケーブルテレビ局ではあるものの、
久し振りの『テレビ出演』という事で、かなり気合が入っていた。

「こちらには、お酒を飲みに来るお客さんも多いそうです。
 天ぷらを肴に晩酌をして、蕎麦で〆るなんて粋ですねぇ。
 そんな楽しみ方も出来る蕎麦処『天狼』さんでした!」

      以上が『昨日の出来事』だった。

  「『昨日』は久し振りだったから、
   ちょっと気負い過ぎちゃってた感じはあるわね」

     「次は、もう少しリラックスしなきゃ」

        「――――『次があれば』の話だけど…………」

今日は『プライベート』だ。
だが、『昨日の撮影』を見ていた人間がいたとしても、何ら不思議はないだろう。
そして、今この瞬間に出くわしたとしても、別におかしな事ではない。

149美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2023/05/04(木) 04:24:08
>>148

       テト テト テト テト テト

「…………ん?」

路地の奥から姿を現したのは、一匹の『海獣』だった。

     「ミャー」

         「あ…………」

『ラッコ』である。
以前、自分の番組で紹介した事があるので、よく覚えていた。
しかし、こんな場所に出てくるものだろうか。
常識的には絶対に『NO』だ。
どう考えても奇妙なのだが、このラッコは『スタンド使い』らしいし、
その能力と関係しているのだろう。

「『ブーム』は過ぎちゃったし、ちょっとだけ私と似てるのかもね」

        「ミャア」

「でも、あなたはあなたで私は私。
 それはずっと変わらない」

     「ミャッ」

美作の言葉に答えるように鳴くラッコ。
通じているのだろうか?
いや、おそらく違うだろう。
だってラッコなんだし。
人は人であり、ラッコはラッコである。

「えっと…………何かしてあげられたらいいんだけど…………」

       テト テト テト テト テト

思案しつつ辺りを見渡していると、その間にラッコは緩やかに歩き始めた。
『鵺鳴川』の方向へ向かっているようだ。
水辺を目指している事を察し、後をついていく。
人は人であり、ラッコはラッコ。
それでも、共に生きていく事は不可能ではない――――。

150百目鬼小百合『ライトパス』:2023/05/25(木) 16:53:18

蕎麦処『天狼』は、明治時代に創業したという老舗の蕎麦屋だ。
風格の漂う古風な店構えで、目に付きやすい表通りには面しておらず、
さながら隠れ家のように佇んでいた。
蕎麦の実のデンプンを主体とした白い蕎麦ではなく、
豊かな風味とコシの強い歯応えが特徴の『黒蕎麦』を出す。
この黒い色は『蕎麦の実の殻』を利用している事に起因する。
多量に使うと『えぐみ』が目立ってしまうが、
蕎麦を熟知した職人がバランス良く使えば、
絶妙な『隠し味』として活きるのだ。

いわゆる『知る人ぞ知る店』だが、
つい最近『ケーブルテレビ』で紹介されたらしい。

151百目鬼小百合『ライトパス』:2023/05/28(日) 20:02:41
>>150

店内の一隅に座る年嵩の女がいた。
名は『百目鬼小百合』。
『天狼』の常連客である。

   ――――――コトッ

まもなく一人の男が酒器を運んできた。
この店で働く『蕎麦職人』だ。
年齢は三十代半ば程だろうか。
一見すると堅気風に見える風貌だった。
反面、どこか達観したような雰囲気が窺える。

  ……………… ……………… ………………

盃の傍らには『肴』が添えられている。
折り畳まれた一枚の紙片だ。
おもむろに手に取って、中身に目を通す。
『反社会的勢力』の名前と、そこに属する人名。
それらに関する最近の動向が走り書きされていた。

「生きの良さそうなのが揃ってるじゃないか」

       グ イ ッ

紙を懐に収め、日本酒を注いで一息に呷る。
まだ引退するには早い。
この世を騒がす者達がいる限り、『鬼の小百合』の戦いは続く。

152トロイオンス『ライヴ・イン・リッチモンド・VA』:2023/06/13(火) 23:32:21

ボテ  ボテ   ボテ


表通りを少し離れた路地。なにものかが歩んでいる。

153三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2023/06/14(水) 20:55:36
>>152

「お〜〜〜?」

        チチチチチ……

通りがかったのは壮年という年頃をしたスーツ姿の男性であった
彼は路地を歩むなにものかの姿を見ると、差出した指先をくしゃくしゃと動かしながら
啄むような音でなにものかの興味を引き付けようとしている

154トロイオンス『ライヴ・イン・リッチモンド・VA』:2023/06/14(水) 21:20:32
>>153

  >チチチチチ……


『豹柄の猫』が視線をくれる。
野良特有の、雨風や地面に擦れた毛並みををしているが、
体躯はやや大きめ……というかデブ。

立ち止まってスーツ男性のほうを
"そこの人間の仕業ですか?"と言いたげに見やっている。

155三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2023/06/14(水) 21:32:54
>>154

「わ・・・・! 遠くから見たらそんなでもなかったけど
 こうやって、よ〜く見ると凄いおデブな猫ちゃんだねぇ」

帰宅途中のため、遊び道具の類は持っていないが
代わりに指先をゆる〜く動かす事でねこじゃらしの真似をしている

「ほ〜ら。こっちこっち」

左手がスーツのポケットへと伸びる
取り出した物は長方形の金属板・・・・・スマホだ

156トロイオンス『ライヴ・イン・リッチモンド・VA』:2023/06/14(水) 21:49:00
 ボテ ボテ

………『直線』ではなく『斜め前』へ歩む。
"私は猫ですが特にそういった物には興味ないですが?"
的なすました顔で横を通り過ぎようとしているが、
ときおり立ち止まり、三角形の耳を人間へと向けている。

157三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2023/06/14(水) 21:58:48
>>156

「う〜ん。ふてぶてしい態度だなぁ」

   カシュ
           カシュ

構えたスマホで写真を撮る
残念ながら、動いているせいか解像度が悪く、よくわからない置物にしか見えない

「食べ物でもあれば少しは違うかな?」

 ひょい

             ひょい ひょい

男はさらに鞄の中を漁る
跳び出してくるものは、猫にとってはよくわからない仕事道具の類がほとんど

「おっと?」

不意に、鞄の中から甘い匂いがする物が飛び出してきた
それはどうやら包装された焼き菓子のようだ

「本当は餌付けとかは駄目なんだけどねぇ」

男は改めて右手に焼き菓子を構える

158トロイオンス『ライヴ・イン・リッチモンド・VA』:2023/06/14(水) 22:39:48
>>157
人間が鞄を漁り始めたあたりから、
猫の歩みは遅くなり、チラチラと視線を送っている。
ときおり鞄から覗く、ペンやら革製品やらを、
首を上下させて注視したりしていた。

 >菓子

猫が完全に立ち止まった。目をやや見開いている。
”それは食べ物ですか?猫のものですか?人間は猫のことを騙しますか?”
的表情。尻尾だけが緩やかに動いている。

159三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2023/06/14(水) 22:49:54
>>158

「食らいついてきたねぇ」

 ひょこ

               ひょこ

猫の目の前で焼き菓子が大きく左右する
相手を誘い出すための『疑似餌』のように
または、頭から吊るされるニンジンのように

このまま行けば、容易にこの菓子が手に入るだろう・・・・その瞬間!

          パシュッ!

男が掲げたスマホからフラッシュ光!
先ほどとはモードが違うのだろうか。猫にとっては不意討ち気味の一撃だ

160トロイオンス『ライヴ・イン・リッチモンド・VA』:2023/06/15(木) 00:10:36
>>159
> ひょこ
< ひょこ

 首を動かして菓子を凝視している。
 金色で彩られた派手な首輪がちゃり、ちゃりと鳴る………
 
 前足を上げ、菓子に接触しようかな………という気配を見せた、
 ……その時!

 > バシュッ


唐突なフラッシュに"ウアアアアワアアアなんだ人間ふざけるな!?"的な形相で飛びのく猫。
それと同時に、

    ズォ

  「フーーーーッ   フーーーッ」
  「シャアーーーーーーーー」

猫の前に現れる、『豹柄の上着』を纏った、これは………『人型スタンド』!
両手で引っ?くような動きで、
人間(三刀屋)の『スマホ』を叩き落とそうとしている(ス精CC)!

161三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2023/06/15(木) 00:36:44
>>160
        バシュッ

「あ・・・・しまっ・・・・・」


  「フーーーーッ   フーーーッ」
  「シャアーーーーーーーー」

                   「たっ・・・・・!?」

スマホが発した閃光。それはどうやら彼にとっても本意ではなかったようだ
誤動作した機器に驚きの声を上げ・・・・・その言葉は途中から更なる驚愕に塗りつぶされる

猫が放った『スタンド』の姿を男は『見る』

「・・・・・困るなあ
 壊されると高いんだよねぇ、最近のスマホは」

   バッシィィッ!

スマホを叩き落すために振りかざされたスタンドの手を
男の腕から分離するように現れた半透明の手がはたき返す!
言うまでもなく・・・・これはスタンドだ!

162トロイオンス『ライヴ・イン・リッチモンド・VA』:2023/06/15(木) 21:13:24
>>161
 スカッ

『豹柄のスタンド』の手が宙を空振る。
猫のほうはというと、
みじかい前足をまげて屈みこみ、
人間の腕と、そこから現れた『スタンド』を睨んでいる。
警戒からか背中が毛羽立ち、もこもこだ。

 「…………」

ちらちらと菓子のほうも見ている

あッ『豹柄のスタンド』が菓子をもつ手の方に腕を伸ばしてきた(スC)!
人型スタンドらしからぬ猫パンチの動き。


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