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【場】『 歓楽街 ―星見横丁― 』 その3

1『星見町案内板』:2022/08/03(水) 13:44:17
星見駅南口に降り立てば、星々よりも眩しいネオンの群れ。
パチンコ店やゲームセンター、紳士の社交場も少なくないが、
裏小路には上品なラウンジや、静かな小料理屋も散見出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
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                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
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★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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※前スレ
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1607077443/

32カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/04(火) 19:10:32
灰色の長髪にロイド眼鏡の女が、黙々と本を読みながら歩いている。
このままでは、数メートル先の電柱に衝突することは
火を見るよりも明らかなように見える。

33ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/10/06(木) 19:45:52
>>32

灰色の毛皮を持つラッコが、その様子を眺めている。
ラッコはラッコなので、女を止めなかった。
このままでは、火を見るより明らかな結果になるだろう。

34カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/06(木) 20:32:24
>>33

  ゴッ

「痛い!」

火を見るよりも明らかな結果となり、
本を持ったままその場に蹲った。
唸り声を上げながら脇を見ると『ラッコ』に気づく。

「ぐえぇ、痛た…………んん?
この『動物』……なんて名前だっけ。
『カワウソ』かなぁ…………?」

実物としての『ラッコ』を見た事のない『カリヤ』は、頭をさすりながら立ち上がり、
そろそろと『ラッコ』へ近づいていく。

35ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/10/06(木) 21:09:46
>>34

ラッコとカワウソは似ていた。
どちらもイタチの仲間だからだ。
大雑把に言えば、『川辺』に棲むのが『カワウソ』で、
『海辺』に棲むのが『ラッコ』という事になる。
間違えても不思議はないかもしれない。
こんな場所にいる方が、よほど不思議な事だろう。

      「ミャー」

               スクッ

ラッコは鳴き声を上げ、後ろ足で立ち上がった。
何の意図があるのか不明だが、特に逃げようとはしていない。
つぶらな瞳で、近付くカリヤを見上げている。

36カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/06(木) 21:51:47
>>35
「あぁ、その鳴き声………なんだっけ?
ミャーミャー鳴くのは、ええと……」

ラッコの前でしゃがみ込み、首を捻る。
立ち上がったラッコを見ても、そこまで動揺した様子はない。

「あははぁ、立った立った。
うーんと、ウミネコだっけ………?
でも、ウミネコがいるのは、ウミだよねぇ。
随分と人に慣れてるけれど、飼いカワウソって奴?
飼い主が、その辺にいるとかぁ………」

一人呟き、人通りの少ない歓楽街の一角を見回す。

37ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/10/06(木) 22:09:06
>>36

周囲には、それらしい人間はいない。
だが、野生とは思えない程に人馴れしているラッコだ。
そして、ラッコは『野生のラッコ』だった。

              ゴソ

ラッコが『脇の下』に前足を差し入れた。
あまり知られていないが、ラッコには『ポケット』がある。
正確には、毛皮の余った部分なのだが、
そこには小物を入れておけるのだ。

      「ミャア」

ポケットから取り出されたのは『石』だ。
何の変哲もない石。
しかし、ラッコにとっては『お気に入りの石』だった。

            ソッ

二本の前足で包み込むように持ち、カリヤに見せてくる。
自慢しているのかもしれない。
これといった特徴がある訳でもなく、
人間にとっては『ただの石』でしかないだろう。

38カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/07(金) 14:11:28
>>37
「リクにいる奴は……何だろ。
それも何?……『石』だよねぇ。

……あっ」

ラッコとじぃーと見つめ合った後、
ふと目線を外して声を上げる。
そうして『ラッコ』の注意を逸らして、手中の『石』を引ったくろうとする。

39ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/10/07(金) 19:03:08
>>38

カリヤの策に嵌まって、ラッコの注意が逸れた。

           「ミャッ」

完全に油断した瞬間、『お気に入りの石』を引ったくられる。
呆気ないほど簡単に、いとも容易く奪う事が出来た。
何が起きたか分からないといった様子で、
じっと獲物を待つ『ハシビロコウ』のごとく硬直するラッコ。

     ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

         …………背後から『音』が聞こえてくる。

40カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/07(金) 20:24:25
>>39
「あははぁ、引っかかったねぇー。
大事なものならちゃあんと持っておかなきゃあダメじゃないかぁ〜。
さて、この石に君のストーリィがあるのか……何?」

カリヤは性格が悪かった。
ラッコに対して勝ち誇っていたが、
背後からのただならぬ音に振り向く。

41ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/10/07(金) 20:46:53
>>40

振り返ったカリヤの目に飛び込んできたのは――――。

  ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

陸上には不似合いな一艘の『ボート』だった。
その上に乗っているのは『人型スタンド』。
片手に握られているのは、長さ『2.5m』の『銛』だ。

    ザザザザザァァァァァ――――――――ッ

人間が走る程度のスピードで、
『ボート』はカリヤの周りを回り始める。
正確には本体であるラッコの周りを回っているのだが、
カリヤと位置が近いため、このような状況になっていたのだ。
客観的に見ると、様子を窺っているかのような体勢だった。

            「ミャー」

ラッコはカリヤに取り上げられた『石』を見つめている。

42カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/08(土) 22:26:57
>>41
「『スタンド』! なぜ急に……?
いや、これはもしかして君の……」

恐る恐る『ラッコ』の方を見る。
石を握りしめたまま、『ラッコ』としばし見つめ合った。

「なんだい、これを返せって事?
ふうむ……どうしようかなぁ〜?
どうしたら、面白い『話』になるだろうか……よし」

取り敢えずは『ラッコ』から距離を取るべく、
スタンドと接触しないよう駆け出す。

43ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/10/08(土) 23:14:30
>>42

   ザザザザザァァァァァ――――――ッ

回転の隙間を縫って、ラッコから離れていくカリヤ。
『ボート』は追跡してこない。
どうやら『自動的』に動いているようだ。
もちろんラッコの移動速度で人間に追いつけるはずもない。
距離を取る事は難しくなかった。

        「ミャア」

走り出すカリヤを見て、ラッコは周りを見た。
カリヤの前方には、大きな『水溜り』がある。
そして、ラッコの足元には『ただの石』が落ちていた。
人間から見れば、『お気に入りの石』も『ただの石』でしかない。
しかし、ラッコにとっては大事なものだ。

             ソッ

『ただの石』を拾い上げ、ポケットから『貝殻』を取り出すラッコ。

                 カツンッ

その二つを打ち合わせる音が、カリヤの後ろから聞こえた。

44カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/09(日) 05:59:51
>>43
「『スタンド使い』の動物が見れるなんて、得しちゃったなぁ〜。
……でも追ってこないというのは、期待外れって感じだねぇ。
『貝』……ああ! 『ラッコ』じゃあないか?もしかして!」

追ってこない事に拍子抜けして水溜りの手前で立ち止まり、
腕を組んで『ラッコ』とそのスタンドの方を観察する。
『貝』を取り出したのを見てぽんと手を打った。

「読んだことがあるよ。
石で貝とかを割って食べる……。
でも、こんな街中に『ラッコ』って有り得るのかなぁ?
もっとこう、ぷかぷか浮いてるイメージだったけど、
立てるんだねぇ」

腕組みをしたまま、呑気に『ラッコ』を観察する。

「私があの『ラッコ』なら……って、
ちょっと思いつかないなあ。
『ラッコ』が『主人公』の話は、読んだ事無いんだよねぇ」

45ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/10/10(月) 21:01:42
>>44

その毛むくじゃらの生き物は、まさしくラッコであった。
本来なら、こんな街中にいるはずもない『海獣』。
だが、何故か『いる』。

    「ミャー」

          トテ トテ トテ

陸上におけるラッコの移動速度は『常人以下』だ。
『ボート』――『ハッピー・スタッフ』のスピードも、
水上よりも低下する。
ラッコ本来のスペックを発揮できない環境だった事は、
人間のカリヤにとって幸運だったと言えるのかもしれない。

        ズズッ

ふと、唐突に『ボート』の動きが変わる。
本体からの『合図』を受けた『ハッピー・スタッフ』は、
『餌やり』を行うべく、『水面』に向かって移動するのだ。
よって、カリヤの手前の『水溜り』方向に、突進を開始した。

   ザザザザザァァァァァ――――――――ッ

『餌やり』は他の全てに優先される行動であるため、
全長『3m』の船体が突っ込む形となっている。
ただ、軌道は一直線だし、
スピードもカリヤの全力疾走と同じくらい。
迫力はスゴいが、避ける事は十分に可能じゃないだろうか。

46カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/11(火) 20:22:06
>>45
「ん〜、何だ……来たッ!
この『突進』、スゴイ迫力だよッ!
あははぁ、『画』になるなぁ〜
『タイプライター・トーメント』のぉ〜ッ!」

ボートを前に目を輝かせるカリヤの背後から立ち昇るように、
両手を振り上げた人型スタンド、『タイプライター・トーメント』が出現した。
そのまま真正面から、『ハッピー・スタッフ』を受け止める。

     ドガァッ!

「あはははぁ!スゴイ『パワー』だっ!
私の『タイプライター・トーメント』と同じくらい!
そしてこの巨体が!」

パワーは同等の『タイプライター・トーメント』だが、
『ハッピー・スタッフ』の突進の勢いを止めきれず、
本体ごとじりじりと水溜り上まで押し込まれていく。

47ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/10/11(火) 22:04:15
>>46

突進する『ハッピー・スタッフ』は、
『タイプライター・トーメント』の豪腕によって受け止められた。
『高パワー同士の正面衝突』という構図は、
確かに非常に『映える』絵面だ。
『鍔迫り合い』にも似た状況は、
両スタンドともに固定されている状態に近い。

        トテ トテ トテ トテ トテ

その隙を突いて、のんびりした速度でカリヤに迫るラッコ。

            「ミャー」

        トテ トテ トテ トテ トテ

何を思ったか、ラッコはカリヤを通り過ぎていってしまった。
そして、『ハッピー・スタッフ』は、
なおも『タイプライター・トーメント』を押し続ける。
元々の地力は同等だが、
突っ込んできた分だけ『勢い』がついており、
それが『僅かな差』となって現れたのかもしれない。

   ――――――グワァッ!!

『水溜り』との距離が縮まった時、
『人型』が手にしている『銛』を振り上げた。
どうやら、『ボート』とは別に動く事が出来るようだ。
常人並みの速度だった『ボート』とは異なり、
『人型』のスピードは本体であるラッコよりも、
また対峙しているカリヤよりも速かった。
『ボート』の前進を阻むために、
『タイプライター・トーメント』の両腕は塞がっている。
おそらく一瞬後には、『銛』が振り下ろされる事になるだろう。

48カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/12(水) 21:11:11
>>47
「『人型』、そっちも当然飾りじゃあないか!
ここは……そうだ、後ろに逃げる!
バトルの定石は、相手の力を利用してぇ〜……うわっ!」

スタンドのパワーを緩め、
『ボート』に押される力を利用して、背後へと跳ぼうとするカリヤ。
その目論みの半分は成功し、銛を避けるように空中へと飛び出すが。

  ベシャア!

「ぐえぇ…………」

着地を盛大に失敗し、水溜りの端のぬかるんだ部分に突っ込んで
泥だらけになってゴロゴロと転がった。
そしてその拍子に、握っていた『石』も地面に転がりおちた。

49ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/10/13(木) 00:05:24
>>48

『ボート』に押される力を効果的に利用し、
カリヤは『銛』の脅威から脱出する。

    ドスゥッ!!

しかし、当初の予想に反して、『銛』はカリヤではなく、
その足元にある『水溜り』に狙いを定めていたようだ。

        ザ ッ バ ァ ッ

まもなく、『水溜り』から『銛』が引き上げられた。
鋭い先端に『何か』が突き刺さっている。
『8本』の足を持つ『海洋生物』――――。

 ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

『人型』が『獲った』のは――――『マダコ』だ。
タコとしては最もポピュラーな種類。
『街中のラッコ』と同じく、
『水溜り』なんかに生息している生物ではない。

   トテ トテ トテ

            「ミャー」

                    ソッ

ラッコは『お気に入りの石』を拾い上げると、
大事そうにポケットに収めた。

50カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/13(木) 20:30:03
>>49
「はぁ……はぁ……何?
『タコ』だ………………なんで?」

地面に座り込んだまま、
泥を払いもせず、ぼんやりと『マダコ』を眺め、
視線をそのまま『ラッコ』へと移す。

「『謎』だ。謎めいたストーリィだよ、これは。
水溜りからタコを漁獲するスタンドと、
街中に出没する『ラッコ』……!」

51ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/10/13(木) 23:35:57
>>50

カリヤの問いに対する答えは返ってこない。
ラッコなのだから当然だろう。
ただ『奇妙』としか言いようがない光景だけが、
紛れもない『現実』として存在する。

  ――――――ブォンッ!!

『人型』が『銛』を振るうと、
すっぽ抜けた『マダコ』がブッ飛んでいく。
常人以上のパワーとスピードが合わさって、
かなりの『剛速球』となっている。
地面に座り込むカリヤの頭上を、
ものすごい勢いでタコが通過していった。

            バシッ

      「ミャッ」

二足で立ち上がったラッコが、飛来するタコをキャッチする。
厳密には、ラッコは立っていただけで、
ちょうど前足の辺りに投げられたため、
『たまたまキャッチ出来た』という方が正しい。
『ボート』に乗る『人型』は、
かなり正確なコントロールが可能なようだ。

        ムグ ムグ ムグ

当たり前の流れのように、
漁獲した『マダコ』を食べ始めるラッコ。
他の海獣と比べて小型のラッコは、
分厚い脂肪を持っておらず、
高密度の毛皮と非常に高い代謝率によって、
自らの体温を維持している。
つまりは『大食い』なのだ。

52カリヤ『タイプライター・トーメント』:2022/10/15(土) 21:53:04
>>51
「『タコが飛んだ』ッ!
面白い! 面白いラッコだ!
君の事は、たっぷりと観察させてもらうぞ、あははははぁ……!」

泥だらけのカリヤはおもむろに立ち上がり、
両手を広げてじりじりとラッコに迫っていく。
そして、ラッコの行動を追うべく歓楽街の闇へと消えていった。

53ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2022/10/16(日) 00:14:31
>>52

ラッコの一連の行動は、カリヤにとって、
何らかの『インスピレーション』を与えたのかもしれない。
そもそも『石』を取り上げなければ、
この『奇妙な光景』を見る事は出来なかっただろう。
その意味で、カリヤは見事に『目的』を果たしたと言える。

     「ミャー」

            テト テト テト テト テト

まもなく『マダコ』を食べ終えたラッコは、
『ハッピー・スタッフ』を解除して歩き始める。
そのスピードは遅い。
人間の足なら、まず見失う事はないはずだ。

     ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・

やがて、カリヤとラッコは『川』に辿り着いた。

          ザブンッ

一人の『奇特な人間』に見送られながら、
『野生のラッコ』は何処かへ流れていくのであった――――。


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