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【場】『 私立清月学園 ―城址学区― 』 その2

34高見盛 炸盤『デイヴ・エドモンズ』【高2】:2021/04/23(金) 18:15:48
>>33
 
「『セララちゃん』」
 
一音一音を噛みしめるように、高見盛は口にする。
 
「『セララちゃん』『セララちゃん』『セララちゃん』──か。
 良いね。実に良い。俺は『ら行』の発音が不得手だから時に舌がもつれるかも知れないが、
 それでも、俺は、君を『セララちゃん』と呼ぶことにしよう。弾むような音が加わって凄くイメージに合っているね」
 
「もっとも俺は家族からは『おい』と呼ばれるし、友人達からは『オッサン』と呼ばれているから、
 可愛らしい呼び名は少し羨ましいな。勿論そこには、当然男女差もあるのだろうけれど……ね」
 
円谷の弾むような声色と小気味良いレスポンスが高見盛を楽しませ、
そこに大振りの動作が加わることで、なるほど年頃の男子高校生からすれば、『魅力的』に見えることもあるのだろう。
 
「本当は俺たちみんな、両親が愛し合って生まれてくるはずだからね。
 生まれる子供の数だけ、幸せな家庭があるべきなんじゃないのかって、俺は思ったりするよ」
 
「『セララちゃん』を起こしてくれるご両親も、勿論愛情あってのことなんだろう。
 そういう意味では俺たちは」
 
あと一歩で互いの爪先を踏みつけられるような、そこまでの距離へ接近し、
『高見盛炸盤』は穏やかな声音を崩さず言った。
 
「どこか似ているのかも知れないね」
 
「『セララちゃん』」
  
 

「この『ときめき』に、『好き』だと名前を付けたら、そうだね、きっと俺は『セララちゃん』を好きになってしまう。
 別の名前が付けば、もしかすると別の気持ちになってしまうのかも知れない。
 なにせ、こんな『気持ち』は『初めてだ』」
 
『だから』と挟み、僅かに声を潜めて囁いた。
 
「俺は『セララちゃん』のことを、『好きになってしまうのかも知れない』」
 
 
「──フフッ」
 
照れたように短く笑って、改めて一歩後ずさる。


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