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【場】『 私立清月学園 ―城址学区― 』 その2
30
:
高見盛 炸盤『デイヴ・エドモンズ』
:2021/04/21(水) 13:29:36
>>29
「そうか、良かった……!
びっくりは長く続かないものな……。ずっとびっくりし続けたら、人はどうなってしまうんだろうね」
目を細め、穏やかに微笑む。
春の似合う少女だなと、そんなことを考えながら。
「たまたま両親が俺を作る気になったのが、君より一年早かったッてだけのことで、
先輩風を吹かせるつもりもないよ。呼び方も、好きにしてくれたらいい……。
そもそも呼び方なんて、常に一定じゃない方が自然なくらいだからね。
実際俺も、母さんのことを呼ぶときは……フフッ!『ねえ』だの『あのさあ』だのと呼ぶことの方が多いくらいだ」
どこか照れたように、自らの坊主頭を幾度か撫でる。
出会ったばかりの少女に家族の話をするという所に、気恥ずかしさを覚えたのかもしれない。
ただ、続く少女の言葉にその羞恥心は吹き飛ばされ、高見盛は両目を驚愕に見開いた。
「『あれ』──なくしちゃあいけないものだったのかい!?
それも、『メルカリ』で、『売れる』?
そんなに詳しいってことは、まさかきみもその『制服』を……、
いや、『貸してくれる』というんだから間違いないな。
つまり、信じがたいことだがここまでを纏めると──『君は制服を持っている』」
「と、いうことになるんだね、『円谷 世良楽』さん。
涼やかな流れを感じる、いい名前だ。ご両親に感謝しなくてはいけないね」
円谷に対し大仰な態度で『制服の所持』を確認する高見盛。
その様子から、ともするとこの一件が彼の『タブー』に触れかねない気配を、円谷は感じるかも知れない。
「かくいう俺の名前も──いや、俺以外の兄弟もだが──祖父に名付けてもらってね。
なかなか気に入ってはいるんだよ。『昨日の夜』みたいな響きが少しコミカルで」
「『冬眠』というのは……冬の寒い時期、
日の沈むくらいの時間から毛布と布団に頭までくるまって、
そのまま朝日が昇るまで眠るんだ。
朝が来ても、ずっと布団の中で過ごす。日が高くなって、暖かくなるまでね。
暖かくなってきたら、布団から出たり、出なかったりして、また夜には眠るんだ。
それをいつまでもいつまでも続ける。春が来るまでね」
円谷から視線を外し、何かを懐かしむように、遠くを見ながらそう言った。
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