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【ミ】『星のダイアローグ』

334風歌 鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/09(火) 20:21:05
>>331
「この世の底にようこそ、だ……わざわざ、ありがとうよ」

ひねくれた習性故にか、初手からねじれた言葉を放つ風歌であったが、すぐに朗らかな笑顔をミゾレに向けた。ホームレス狩りのヤカラでも無く、わざわざここを訪れる様な相手に、不躾を貫く理由もない。
そして、ミゾレからスマホと代金を受け取り――『提案』を受ける。
――悪い話ではないと、風歌は思う。
風歌は『アリーナ』をスタンド使いで構成された地元密着型ヤクザの様なものだと認識している――それ自体に嫌悪感はない。ヤクザもホームレスも、社会悪の一つには変わりない。
いや、遊園地での案件を思えば、『アリーナ』は必要悪か……危険物であっても、ゴミではない。
『アリーナ』で過ごす日々は、命がけの物となろう――それにも嫌悪はない。明日をも知れぬ日々は、今となんの代わりがあろう。
総合的に見れば、得だ――だが、風歌は、首を振った。

「わりーな。そいつは断らせてもらうぜ」

風歌は、ミゾレに頭を下げる――これは、済まないことなのだ。

「当然、スマホ分の仕事はする。『アリーナ』がアタシの手を借りてぇってなら行くし。命を預けた仲だ、お前が個人的に力を借りてぇって時も力は貸すさ。だが、それとは別に……自分に自信が、無くてなぁ」

つまるところ、風歌はゴミであることから脱却する事が怖いのだ。
今のままではいけないと解っている、しかし、ゴミとして生きた、まさしくゴミの如き『プライド』が、引き上げられる手を取ろうとはしない。

「見ての通り、アタシはゴミだ。だが、ゴミであることは……これで、自分で選んだ道でなぁ。今のままじゃぁとは思っちゃいるが、上から拾われるのにはどうも気が乗らなくてな」

だが、停滞だけはしない。ホームレスは『終わった』存在だが、『止まる』事は生命の死を意味する。真冬の夜、死なぬために歩き続け、昼間、食うためにゴミを漁る動的存在こそが、ホームレスだ。勇気無き風歌の矜持は、常に静止を拒絶する。

「『アリーナ』には入らねえ、けど、『アリーナ』や、お前の仕事は受ける……これでどうだ」

わがままに満ちた、自分なりの『一歩目』――相手の好意を踏みにじるやもしれぬ案を、風歌は口にした。


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