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【場】『 大通り ―星見街道― 』 その2

1名無しは星を見ていたい:2020/04/15(水) 08:27:36
星見駅を南北に貫く大街道。
北部街道沿いにはデパートやショッピングセンターが立ち並び、
横道に伸びる『商店街』には昔ながらの温かみを感じられる。

---------------------------------------------------------------------------
                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
---------------------------------------------------------------------------
前スレ:
【場】『 大通り ―星見街道― 』
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647631/

636美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/06/03(木) 07:11:44
>>635

「そう!何ていうか、風と一つになったような感覚で。
 二輪車ならではの体験ですよねぇ」

          カチャッ

「事故の危険っていうのは勿論ありますけど、
 それを防ぐ努力をする事は出来ますし――――」

                カチャ

そこまで言った時、
眠目が傍に立ってくれている事に気付いた。
事故を防ぐ努力――今まさに、彼女はそれを行っている。
種類は違えど、同じ『二輪車乗り』として、
感謝の意を込めて目礼する。

           カチャッ

「荷物を載せたりするんなら車の方が向いてますけど、
 その代わり小回りが利きますから、
 街で乗るにも丁度いいですよね」

                カチャ

美作がスクーターに乗り始めたのも、
それがきっかけだった。
かつては『アイドル』だったが、
引退して『パーソナリティー』となってからは、
トークの『引き出し』を増やすために、
街の様々な場所に赴くようになった。
そのために、
軽快なフットワークで動くための『足』を必要としており、
それには『二輪車』が最適だったのだ。

「あぁ!それは分かりますよ。
 スラッとした女性が二輪に乗ってる姿って、
 とってもカッコいいですもんねぇ」

確かに彼女は背が高い。
乗っている時の姿は、さぞかし映えるだろう。
バイクの横に立っている姿でさえ絵になるのだから。

「――――よし…………と!」

工具を元の場所に戻し、
シートに腰を下ろしてキックレバーを力強く蹴る。

                ――――ドルンッ

二度目のキックでエンジンが始動し、
排気音と共に息を吹き返した。

「せっかくですし、もしお時間あったら一緒に走りません?
 ちょっとした『ツーリング』ってトコですね」

       フフッ

「『穴場』にご案内しますよ」

637眠目倫『ノワール・デジール』:2021/06/03(木) 08:06:42
>>636

「特に今の時期って、晴れた日は気持ちいいですよねぇ。
 桜が散ってる時期は走ると滑って怖いんですけどぉ、今は本当に爽やかで」

 桜にイチョウ、濡れたマンホール。横断歩道の白いところでさえ、バイクは滑る。
 事故を防ぐ為の意識は必要だが、それ以上に気持ちいいものだ。

「やっぱり、街乗りなら二輪ですよねぇ。
 車みたいにスカートでーとかは難しいですけどぉ、気楽でいいものです」

 そういう眠目の服装はメッシュジャケットにライディングパンツ、グローブと夏のバイク乗りそのものだった。

「あ、直ったんですねぇ。よかった。
 レッカー車呼ばなくてすみましたねぇ」

「『ツーリング』ですかぁ!
 いいですねぇ、もしよければご一緒させてください」

 眠目は声を弾ませ、いそいそとバイクをキックした。

638美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/06/03(木) 18:58:15
>>637

「決まりですね――――じゃあ、行きましょうか」

眠目に笑い掛け、愛車の『ヴェスパ』を発進させる。
向かう先は穴場のツーリングスポットだ。
そこは『職場』の近くでもあった。

            バァァァァァ――――…………ッ

ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1619194604/
(※次レスはこちらで行います)

639名無しは星を見ていたい:2021/06/13(日) 22:33:37
大通りの一角に、真新しい看板が一つ。
近すぎず遠すぎない絶妙な立地、綺麗にリフォームされた外観、広い間取り。
自分の大きな体躯に合わせた余裕のある水場。シンクには水垢の一つも浮いていない。

 「さ、『ブルース』。ここが今日からのぼくたちの城だ。仲良くやっていこうじゃあないか。」

 『コケッコ』

 「そうだね。そろそろぼくも君も『羽ばたく時』だ。
 ここから始めよう。ぼくらの『フルコース』を。」

→ 【衣笠料理教室】、開業。

640更山 好陽『イルーシヴ・エデン』:2021/06/15(火) 21:10:05
 
「多分、この辺……で、間違いないハズなンだよな」
 
薄いオレンジ色のサングラスを掛けた痩身の男が一人、昼食時の大通りで何事かを呟き歩いている。
その両手には一台ずつ『スマートフォン』が握られており、それぞれを同時に操作しながら、
左右のディスプレイに交互に視線を走らせているようだ。
 
周囲に気を払う様子は無い。
『歩きスマホ』の中でも、とびきりに危険な状況。
 
次の瞬間に向かいから来た誰かと衝突してしまうかもしれないし、
その行為自体を咎める親切な人物が、現れないとも限らない。
 
「確かにここが『最後』で……そっからだ。
 多分、間違い無いンだ」

641更山 好陽『イルーシヴ・エデン』:2021/06/18(金) 20:27:53
>>640
 
「『IT先進国』じゃあなかったのか……?
 いくらなんでも情報が、少なすぎるだろ。
 『レビューサイト』の類にはそもそも載っちゃいないしよ」
 
苛立ち混じりに吐き捨てるように呟いて、通りを抜けて何処かへと向かう。
 
「『SNS』には多少の、本当に多少の、『それらしいそれ』があるっちゃあるが、
 そもそもこのアカウントは、アレだろ……」
 
両手のスマートフォンを同時にスリープさせ、ボトムスの左右のポケットに乱暴に捩じ込んだ。
 
「『何があったのか』は知らないけどよ、 『何かがあった』のは間違いないんだ。
 『借り』は返してもらう」
 
誰に向けるともなく決然と放たれたその言葉は、ある意味ではこの町そのものに対する、
ささやかな宣戦布告ですらあったのかも知れない。
 
「俺のこの、『イルーシヴ・エデン』の能力で」
 
 
 /|_________ _ _
〈  To BE CONTINUED…//// |
 \| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~ ~  ̄

642稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/06/19(土) 14:54:40
パラ パラ…


大通りに接した位置にある、猫の額程の広さもない小さな児童公園。
眼鏡をかけた女が、公園内の古びたベンチに腰掛けハードカバーの本を読んでいる。


      「ふむ」   パタムッ


「やはり、この【綴り手】の【儚きも美しき感情】の【魔導書】は【魔力】が溢れるなぁ…

 描写された【叙事詩】は【真夏に流す汗】の如くだが、
 【綴り手】の【術式】の基礎がしっかりとしており、すっと【月の秘箱】に入り【我】の感情を揺さ振る。

 【遠くない未来】に、【真名】は失明したがあの面の良い【憑かれ者】が【糸を手繰られ】、現世の【布】に【召喚】されるらしいからな。
 いやぁ…非常に【二十四の次の世界線】だな…」

643大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/06/19(土) 20:38:01
>>642
黄色リボン付シルクハットを頭に乗せた、緑髪で、右目が青で、左目が赤で、清月学園の黒制服(改造済)を着た男装少年(16歳 女子)が通りかかった。
買い物の帰りなのか、手には『洋菓子屋 甘城』の箱を持っている。

「いやはや、先日、甘城さんにお世話になってしまったから、
ご実家の洋菓子屋さんを訪ねてスイーツショッピングしてしまったわけだけども、
これはこれは大正解だったかもしれない」(↓ハスキーボイス↓)

「ややや、箱の中からボクの鼻腔まで甘い香りが漂って来るではないか」(↓ハスキーボイス↓)

 〜〜〜甘い香り
  〜〜〜甘い香り
   〜〜〜甘い香り  ←おいしそうな匂い

「これは寮の誰かか、その辺りの誰かでもいい、他の誰かと美味しさを共有せねば、人類文化の損失というものだ。
人間、最大多数の最大幸福を追求したいものだ、ホントかな?」(↓ハスキーボイス↓)

「おっと、ちょっとそこの方、前をシ・トゥ・レィー」(↓ハスキーボイス↓)

甘い香りと共に前を通りかかる。
ついでなので、読んでいる本の背表紙を覗いていこう。
なんだろなんだろ?

644稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/06/19(土) 22:11:07
>>643


  「むむッ」

目の前を横切りながら奇妙な言動と出立ちの少年に思わず眉を顰めたが、
鼻腔を刺激する甘い香りに強張った顔を緩めた。


「なぁに、構やしない。
 此処は【大衆の機関】(公共の施設)だ…。
 気にせず【進撃の旋風】(通り過ぎれば)すれば良い」


女が読んでいる本は、最近書店で平積みされている著名な作家の恋愛小説だ。
 (どの様な捉え方をするかは『大神』次第だが)

645大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/06/20(日) 13:01:05
>>644
>女が読んでいる本は、最近書店で平積みされている著名な作家の恋愛小説だ。
> (どの様な捉え方をするかは『大神』次第だが)

   了解いたした。

「む、あの本は、アマゾンで大人気の

 『25の瞳・勇者パーティを追放された恥知らずの俺がケーキの切れないワクワクワクチン脳の織田信長の膵臓を食べたい猟奇的な方法パーフェクトガイド〜僕がダンサーになった理由は動かない〜』 (著者:東尾 革命)

ではないか。」(↓ハスキーボイス↓)

   こうですか。

「もしもし、そこのお嬢さん、『その本』って面白いですか?
 題名は見たことがあるんですけど、中身までは読んだことがなくて……」(↓ハスキーボイス↓)

   投げるぞ。
   いや、もしかしたら、背表紙に書いてある題名とは、別の本が挟まれているかもしれないな。(安全策)

※質問
ところで、メタ的な質問なのですが、【】内は『音』としては聞こえない、という理解でいいでしょうか?
例えば、

>此処は【大衆の機関】(公共の施設)だ…。

の場合、実際の『音』として出ている・聞こえるのは、

 正解:○ ここは こうきょうの しせつ だ…

 不正解:× ここは たいしゅうの きかん だ…

という理解でいいでしょうか?

646稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/06/20(日) 13:25:47
>>645
(※不正解が正解です。
 【】内が実際に発声している台詞で()内は聴こえていません)

「ムムッ」

「【我】が【魔力掌握】(読んで)しているのは、
 その様な【最終幻想】な【題名】の【魔導書】(本)ではないが…」


女が手に持っているハードカバーの本には『恋愛』と簡素な題名が書かれている。
その『25の瞳(略)』というタイトルは--『見間違い』だろう。



「まぁ、非常に【魔力が満ちた】(面白かった)な。
 やはりこの【綴り手】(作者)の【術式】(文章力)はしっかりとしており、
 悲しきも儚き【クリスタルに導かれし世界の顛末を眺めている気分】(読後感)を得たな。

 最も、それは【索超】(急に現れた)な【汝】によって【皿ごと落としたミートパイ】(台無し)にされたが…」

647大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/06/20(日) 14:07:20
>>646
※台詞の件、承知しました!

「ああ、失礼。間違えてしまったか。
 アマゾンの表紙と実物が違うのはよくあることだから、しょうがないかもしれない、すまないな。」 (↓ハスキーボイス↓)

「しかし、さてはて……ボクが【皿ごと落としたミートパイ】だって?」 (↓ハスキーボイス↓)

「ふむ、言い得て妙だね。
 初対面で、ボクが『小麦の薄皮に包まれ炎で焼かれた薄っぺらい挽肉にも似た存在』であることを見抜くなんて、流石だ。」 (↓ハスキーボイス↓)

流石だ。

「まさに彗眼と言える。」 (↓ハスキーボイス↓)

慧眼だ。

「この状況をあえて例えるなら、さきほど『洋菓子屋 甘城』で買ってきた、
 『山形県辻野市の 梅澤さんちの 台風に耐えたド根性りんごで作った 自然淘汰と適者生存と幸運と強さのひとかけら アップルパイ 580円 そして幸せが訪れる』
 のごとし。」 (↓ハスキーボイス↓)

アップルパイだ。

648稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/06/20(日) 16:00:52
>>647

「【汝】は【カンパネラ】や【新世紀】(よくわからない)だな…。
 つまり、その手に持っている【禁断の果実だったもの】(アップルパイ)を、
 【我】に施すという腹なのか…?」


この手の人種は得意じゃあないのだろう。
ベンチから立ってこそいないが目の前の女は明らかに『大神』に対してヒいている。

649大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/06/20(日) 18:18:02
>>648
「ん?」 (↓ハスキーボイス↓)
若干ヒいてる稲崎を見て、首をかしげる。

「ああ、もしかしてアレかね。」 (↓ハスキーボイス↓)

「ボクのコレはどちらかと言うと『演技性』なのだが、もしかしてキミのソレは『素』なのか?」 (↓ハスキーボイス↓)

「それは失礼した……
 てっきり、『同輩』かと……」 (↓ハスキーボイス↓)

申し訳無さそうな顔をした。

650稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/06/20(日) 21:47:47
>>649

「……」

口をへの字に曲げ、露骨に「何この人」と言わんばかりの表情を見せた。


「この【語り口】をしてから【冷霊】や【炎霊】の類いには【魔力耐性】を備えているつもりではいたが、
 【星王の盾】を構えた所でやはり【限界】はあると言う事か…
 【過負荷を背負いしモノ】の【相手】をするにはこの【世界】の四季は些か【巡り過ぎた】し、
 せっかくの【ライム酒の飲み口】の【余韻】を【シヴァ】に侵略されたくないので、
 【汝】には悪いが【我】はこれにて【帰還】するさ」

ベンチから立ち上がると足早に去っていった。

651ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/06/25(金) 06:23:36

    トッ トッ トッ

5歳くらいの女の子がいた。
『有名私立幼稚園』の制服を身に着け、
大きな『テディベア』を持って歩いている。
彼女の名は『ダイアナ』。
思い込みの激しさと勘違いしやすい性格で、
出会う者達にケンカを売っては、
ことごとく『ワンパン』でノックアウトされ続けてきた。
エメラルドグリーンの瞳は足元を睨み、
三つ編みにしたプラチナブロンドが揺れる。

        ムスッ

見るからに不機嫌そうな表情だが、
事実ダイアナは苛立っていた。
通っている幼稚園で、
『イス取りゲーム』をやって負けたからだ。
それ自体もムカついたのだが、
何よりも勝った相手の態度が気に食わなかった。

「ふんぞりかえってエラソーに!ナニ様のつもり?」

            フンッ

「しょせんコドモのお遊びじゃない!ガキよガキ!」

本当は自分も同じようなもの(勝った時は威張る)なのだが、
本人は気付かないものだ。
そして、愚痴をこぼしながら歩いているため、
前方にも気付いていない。
ゆえに、『誰か』とぶつかってしまうのは、
ある意味で自然の成り行きだった。

    「――――わぷっ!?」

地面に尻餅をつきながら、ぶつかった相手(>>652)を睨む。

652ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/06/27(日) 07:10:44
>>651

「このォ〜〜〜〜〜」

「わざとぶつかったわねそうねそうに決まってる」

        キッ

「ボッコボコにしてや…………」

睨んだ相手は『街路樹』だった。
植物に八つ当たりするのはカワイソーなので、そのまま帰った。
代わりにテディベアに八つ当たりしたらしい。

653甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/07/03(土) 09:07:46
「…」
>>654「…」

土砂降りの雨の中
一体何故>>654と相合傘をするハメになってしまったんだろう

654ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/07/03(土) 11:20:57
>>653

     トコ トコ トコ

隣を歩くのは『有名私立幼稚園』の制服を着た少女だった。
片手にテディベアを抱えており、
プラチナプロンドの三つ編みと、
エメラルドグリーンの瞳が特徴だ。
口をへの字に曲げて、
見るからに不機嫌そうな顔をしていた。
それもそのはずで、
もう片方の手には『無残な状態になった傘』を持っている。
突然の強風で傘がブッ壊れ、
雨に打たれていた所で甘城が通りかかり、
現在の状態に至ったという訳だ。

「あぁ、もう……!お気に入りの傘だったのに……!」
 
「ゼッタイ許さない……!」

        ブツブツブツ

「まぁ、でもあなたがいてくれて助かったわ」

「ありがとう」

『風』に対してキレながら、
お礼を言う少女の名は『ダイアナ』である。

655甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/07/03(土) 11:52:42
>>654
「どういたしまして…」

自然現象に文句を言ってもどうしようもなく
容赦なく吹き荒ぶ雨風

しかし、入れてあげるのはいいのだが
あま公は高校生、ダイアナは幼稚園児
流石に身長差がありすぎる
こう、身長が離れてると…

             ザァァァ――――ッッ!!

あまり相合傘、意味の無いのでは…?

「…」

そっ、と屈んでダイアナが濡れないように守ってあげるあま公だが
こんな姿勢では歩けないし、いつまでもこうしているわけにはいかないのだが…

656ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/07/03(土) 12:36:04
>>655

甘城の身長『148cm』に対し、ダイアナの身長は『110cm』。
その差は40cm近い。
つまり、どうなるかというと…………。

   ザァァァ――――ッッ!!

「ちょっと!濡れてるじゃない!」

「傘をさしてないと濡れる。傘をさしてたら濡れない。
 それが常識でしょ」

「『傘をさしてるのに濡れる』なんて…………
 ゼッタイおかしいわ!アンフェアよ!」
 
「『bloody hell(このクソが)』ッ!!」

       キョロ キョロ キョロ

やり場のない怒りを吐き出しつつ、辺りを見渡す。

「あ!あそこに屋根があるわ!ちょっと休憩しましょうよ」

壊れた傘の先端で、適当な軒先を指し示して提案する。
雨宿りしている間に雨が止むかもしれない。
少なくとも、雨風の中で立ち往生するよりは良さそうだ。

657甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/07/03(土) 13:04:47
>>656
「そうね」

最近の幼稚園児怖いなぁ…
などと考えながら、ダイアナが示した場所へ移動する
二人が雨宿りに選んだ場所、そこは

ブッチャー「いらっしゃいませ…!」

肉屋だ
いかにも何人か人を殺った事がありそうな、厳つい店主が
肉切り包丁を手に、こちらを見ている
何か買わなくては殺される…!
そんな雰囲気を醸し出している…!

あま公「コロッケ二つください」

コロッケといえば台風、台風といえばコロッケ
台風ではないが折角なのでコロッケを買う事にしたあま公だった

658ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/07/03(土) 13:31:24
>>657

「フーン、まぁまぁの店じゃない」

異様な迫力を発してくる店主。
それにも怯まず、
やたらデカい態度で肉屋の店舗と主人を値踏みする。
そして――――。

「ようやく一息つけるわ」

   ――――トスッ

その場に『座る』。
地べたに座るのではない。
『座る動作』をした直後、そこに『椅子』が現れたのだ。
まるで『空気椅子』のようだが、
両足は完全に地面から離れている。
よく見ると、そこだけ空間が歪んでいるようになっており、
『空気の椅子』が存在する事が分かるだろう。

       スッ

「私はカボチャのコロッケが好きなの」

『椅子形態』の『オンリー・ガール』の上で足を組み、
膝の上にテディベアを置いて、横から注文を出してきた。
払うのは甘城であり、
しかも自分の分があるとは決まっていない。
しかし、そんな事は考えもせず、
既に買ってもらう気でいるのだった。

659甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/07/03(土) 13:57:51
>>658
あま「すいません、カボチャのコロッケ」
ブッチャー「無い!」

食い気味に言う店主

あま「…そうですか」
ブッチャー「さっきまでならあったんだがな、俺がおやつに全部食っちまったぜ」

しょうがない、ダイアナにはじゃがいものコロッケで我慢してもらおう
ふと、ダイアナの方を見やるあま公

「…?」

『空気椅子』…?
否!『椅子』がないようで『椅子』がある…スタンドの使い手か!

「食べる?カボチャじゃないけど…」

二つ買ったじゃがいものコロッケ(本当はあま公が二つとも食べる気だった)
の一つを、ダイアナに差し出してみる
これはこれで、揚げたて熱々で美味しそうだ

660ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/07/03(土) 14:17:02
>>659

「『カボチャのコロッケ』がないの?フーン、使えない店ね!」

         ソッ

「でも、ないものはないで仕方ないわね。
 一応もらっておくわ」

店主の一言を聞いて評価を一変させる。
それはともかく、ポテトコロッケを受け取った。
多くのバリエーションを持つコロッケの中でも、
基本形とも言うべき一品だ。
調理する者の腕が問われる。
…………かもしれない。

        サクッ

「ん…………!?」

サクサクと香ばしい衣と、
程よい塩気を持った熱々のジャガイモ。
これは……美味しい!
しかし、たった今けなした手前、
それを素直に口に出すのは負けた気がする……。
『プライド』は守らなければならないが、
ここで不味いと言うのは『アンフェア』だ。
なにか上手い言い方は……。

「『マズくない』……じゃなくて」

「ええと…………」

「…………悪くないじゃない」

五歳児の頭をフル回転させて、『妥協点』を見出した。

661甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/07/03(土) 14:43:35
>>660
ダイアナの「悪くない」という評価に概ね満足そうなブッチャー
『悪くない』というのは大抵『美味い』という意味が込められている
しかし、これが許されるのはダイアナがまだ子供だからだ
もしも大人だったら…

「美味しいですと言え、言わねば
           ―――折る」

とやられていたかも知れない

「良かった」

ダイアナが喜んでくれているようで何より
そう思いながらあま公もコロッケを食べる

「ところで…」

「貴方、何に座ってるの…?」

ダイアナが座っている『空気の椅子』
さっきから気になって仕方がないあま公だった

662ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/07/03(土) 15:02:25
>>661

発言した人間によっては有り得たかもしれない未来。
幸か不幸か、それを理解するほど成熟してはいなかった。
実際の実力は伴っていないが、態度だけは一人前なのだ。

 オンリー・ガール
「『唯一無二』よ。『道具屋』っていう人にもらったの。
 私だけが座れる『私専用の椅子』」

「それだけじゃないわ。
 『人みたいな形』にもなれるし、
 『物の中』に入ることだって出来るんだから」
 
      フフン

「どう?とってもスゴいでしょう?」

両手で持ったコロッケをかじりながら、自慢げに話し出す。
調子に乗って、聞かれてもいない『能力』の事まで、
ペラペラ喋っている。
偶然だが、『入手先』は甘城と同じだったようだ。

「たたかっても強いのよ。
 今までだって――――」

これまで戦った相手が脳裏をよぎる。
動きを止められてくすぐられたり、
吹っ飛ばされて湖に沈められたり、
大岩を落とされて全身泥だらけにされたり…………。

「――――『いい勝負』してきたもの!」

力を込めた口調で言い切る。
やつらには『仕返し』しなければいけない。
いつか絶対に泣かせてやる…………!!

663甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/07/03(土) 15:37:47
>>662
「『道具屋』…」

そういえば、『BSS』はそんな人に貰ったんだっけ…
ダイアナの話を聞いて今、『道具屋』の事を思い出し
あの時、何であんな注文したんだろう…?そんな事を考える

コロッケを食べながら、うんうん頷きダイアナの話を聞いている
こんな子供が『戦い』をしてきたのか…
今まで『いい勝負』をしてきたと嘯くダイアナ
彼女が惨敗続きだという事など知らないあま公

この子の言う事が本当なら自分より強いんだな…
戦闘経験の無いあま公はそんな風に思うのだった

「そう、強いのね、尊敬するわ」

その歳で何度も修羅場(?)潜り抜けてきているダイアナに敬意を表するあま公

コロッケを食べ終えたあま公はダイアナに聞く

「ところで、何か食べたいデザートある?」

しょっぱい物を食べた後は、甘い物を食べたくなるかもしれない
ならないかもしれない

664ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/07/03(土) 15:59:08
>>663

実際は修羅場など何一つ潜っていないが、
本人からすれば『負けられない戦い』ではあった。
その度に『ブラックリスト』の名前は増えていく。
スタンド使いに限らず、ちょっとした事でも追加しているため、
全員分合わせると相当な量になっていた。

「フフン、そうよ。『強い』のよ。なかなか分かるじゃない」

返ってきた言葉を聞いて、満足げに頷く。
客観的には、毎回ほぼワンパンでやられてきたのだが。
『挫けない』という意味では、
強いと言えなくもないのかもしれない。

「――――『デザート』?」

コロッケを完食し、両手に付いた衣を払う。
そう言われてみると、甘いものが欲しくなってくるものだ。
肉屋の中には、それらしいものは見えないが……。

「それなら『アップルパイ』がいいわ。
 この店はデザートも売ってるの?」

林檎をたっぷり使ったアップルパイはダイアナの好物なのだ。
見える範囲にはないが、
肉屋に売っているものだと勘違いしていた。
当然、そんなはずはないのだろう。

665甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/07/03(土) 16:19:13
>>664
「無い」

無いと一蹴するあま公
肉屋にそんな物があるわけがない

「けど、作れる人はいる」

人型スタンド『BSS』を傍らに出すあま公

パチン

あま公が指を鳴らすと
その手には出来立ての一切れの『アップルパイ』が現れた
(別に指を鳴らす必要等無いのだが、やりたかっただけかもしれない)

「話、聞かせてくれたお礼」

林檎の甘酸っぱい香りを漂わせる『アップルパイ』をダイアナに渡す

知らない人から物を貰ってはいけない
子供でも知っている常識だ
ましてやスタンドの作った得体の知れない物だ
ダイアナの危機管理意識が問われる瞬間だ

666ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/07/03(土) 16:43:02
>>665

人からもらった物は食べない。
未知のスタンドは警戒する。
それらは、この世界を生き抜くための『常識』だ。

「なぁんだ、あなたも同じだったのね。『お菓子』を出せるの?
 『便利』じゃない。そこの人より使えそうね」

「せっかくだし、もらっておくわ」

そこの人というのは『肉屋』の事だ。
『ビター・スウィート・シンフォニー』の手から、
『アップルパイ』を受け取る。
そして、次の瞬間……。

            モグ モグ

――――『食べた』。
肝が据わっているのか、それとも単に無警戒なだけか……。
ともかく所望した『アップルパイ』は、
無事にダイアナの胃に収まっていく。

        「 ! ? 」

『美味しい』。
それも、『とてつもなく』。
今まで食べた事がない程かもしれない。

「……あなた、なかなかやるわね。
 覚えておいてあげるわ」

       スイッ

「私、『ダイアナ』。あなたの名前は?」

『オンリー・ガール』から立ち上がり、
目の前の相手を見上げる。
ぼつぼつ雨が上がり始めていた。
相手の名前を聞いたら、別れる事になるだろう。

667甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/07/03(土) 17:08:41
>>666
「私は、『甘城天音』
 『あま公』って呼ぶ人もいる」

もう雨も上がった、そろそろ行かなくては
あま公とダイアナは、それぞれ別の道を行く事になる

「ダイアナ、今日は話を聞けて楽しかったわ」

スタンドの戦闘経験者(?)の話を聞けたのは、あま公にとっては貴重な体験だった

「もし、またどこかで会ったら、また話を聞かせてちょうだい」

そう言って、あま公は自分の行くべき道を歩むのだった

雨上がり独特の匂い嗅ぎながら
そういえば、今日は片頭痛がしなかったな…
何でだろう?今更そんな事を考えるあま公だった

668ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/07/03(土) 18:11:13
>>667

「バイバイ、『あま公』。またお話してあげてもいいわよ」

       ――――ドシュンッ

『オンリー・ガール』をテディベアの中に潜り込ませ、
あま公に手を振った。
傘は壊れてしまったが、いい遊び相手が見つかった。
帰り道、ふと考える。
『オンリー・ガール』は『実体化』している。
上手く使えば、雨を防ぐ事が出来たのではないか?

「雨が降ってれば試せたのに…………」
 
       ダンッ!

「――――もうッ!!」

一人で勝手な事を言いながら地面を踏み付け、
ダイアナは家路に就いたのだった。

669更山 好陽『イルーシヴ・エデン』:2021/07/07(水) 05:19:44

シンプルな現実として、男には金が必要だった。
できれば纏まった金額が、アシのつかない形で手に入る、そんな金が。
 
「これっていう『アテ』も無いってンだから……ヒヒ。参るよな」
 
薄いオレンジ色のサングラスを掛けた痩身の男が一人、
昼食時の大通りで何事かを呟き歩いている。

両手には一台ずつ握られたスマートフォンに忙しなく指を走らせ、
しかし視線はキョロキョロと周囲へ巡らされており、ディスプレイに目を向けることもない。
 
「ともあれ『メシ屋』だ。多分、そっからなんだ」
 
まとまった金を持たない男はだからこうして、『飲食店』を捜している。

670薄島漣『イカルス・ライン』:2021/07/07(水) 23:13:56
>>669
あなたが最終的にどんな店に入ったのか、それは>>671でそちらから明らかにしてほしい。
ともかく、その店に先客として居た。


「うーん、迷うなあ……」


メニューを手に、うんうん唸っている男がひとり。
もしもカウンター席のあるような店なら、カウンターに座っている。
もしも混んでいるならあなたは隣に座ってもいいし、混んでなどいないものとして別の席についてもいい。
もちろん『おとなしく席について注文する』以外のことをするのも、自由だ。

671薄島漣『イカルス・ライン』:2021/07/11(日) 01:21:17
>>669
あなたは>>670の店に入らなかったので、薄島は普通にご飯を食べて帰宅した。


「あーおいしかった」

672夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/15(木) 19:59:14

「ほうほう、きょうも『イイてんき』ですな〜〜〜」

「げんざいの『シツド』は…………」

      ズギュンッ

「――『62%』くらい??」

『ドクター・ブラインド』を発現し、
『超人的四感』の一つである『超触覚』で『湿度』をチェック。
気温は高いが、カラッと晴れて、ほぼ『快適』に近い状態だ。
満足した表情でベンチに腰を下ろす。

「アオいソラにシロいクモ…………」

「おっ、ヒコーキか??」

頭を持ち上げ、サングラス越しに『空』を眺める。
『空の色』は一つじゃない。
時間とか天気とか季節によって色々な色を見せてくれる。
晴れだったり曇りだったり、明るかったり暗かったり、
青かったり赤かったりする。
だから、ずっと眺めていても飽きない。
でも、ずっとみてたらほかのコトできんしな。
そのへんがムズカシいトコロだ。

「おん??クビがいてえぞ??」

あと、ずっとウエむいてるとクビもいたくなってくるしな。
クビがいたくならずに、
『ずっとうえをむいてるほうほう』がひつようだ…………。
いや、まてよ??
はっそうのテンカン……!!
キシカイセイのかっきてきアイディア……!!

「つまり、こうすればイイのか!!」

          ゴロンッ

隣が空いている事を確認してから、ベンチに寝転ぶ。
こうすればクビをいためずに、
スキなだけソラをみていられるというコトだ!!
まさかこうなるとはアインシュタインでもわかるまい!!

「――『フランケンシュタイン』だったっけ??」

673夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/16(金) 18:42:31
>>672

                     ヒラヒラ

       「――――おん??」

    ガバッ

不意に目の前を横切った『モンシロチョウ』。
また一つ『見た事のないもの』を目の当たりにし、
ベンチから飛び起きる。
『ミハッケンのシンシュ』か??
きっと『フランケンシュタイン』でもしらないにちがいない……!!
ワレワレはただちに『ツイセキチョウサ』をこころみた!!

          タッ タッ タッ タッ タッ

674空井イエリ『ソラリス』:2021/07/17(土) 03:53:26

大通りの中でも比較的人の少ない辺りで、
空色の目をした少女が立ち往生していた。

       ミャー

          ミャー


「落ち着けよヨル、
 悪いところに連れてくんじゃあない。
 おまえさんもシャンプーは好きだろう」

髪を二つ結びにし、童話調の服を着た彼女は、
いわゆる『キャットキャリー』をベンチに置き、
そこから顔を覗かせる『ラグドール』を、
しきりに説得しているようだった。

675夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/18(日) 15:33:46
>>674

『アリス風ファッション』の少女が通りかかった。
カラフルなネイルアートとブルーのサングラス、
頭に巻いた派手なスカーフがパンキッシュなイメージだ。
立ち止まり、辺りを見渡す。

       キョロ キョロ キョロ

『モンシロチョウ』を追いかけてきたのだが、
うっかり見失ってしまった。
ガッカイにハッピョウするよていだったのに…………。
『フランケンシュタイン』にさきをこされてしまうぞ。

       キョロ キョロ キョロ

このまま手ぶらでは帰れない。
何かないものか。
そんな事を考えながら、辺りを見渡す。

      「お??お??お??」

          トッ トッ トッ

『キャットキャリー』を見つけて、そちらに近寄っていく。
『見た事のないもの』に興味を引かれたのだ。
これは――――『チェシャ』かな??

676空井イエリ『ソラリス』:2021/07/18(日) 23:19:47
>>675

「ん……」

(アリスファッションか…………
 これを買った店に、似たのが売っていたな。
 しかし爪まで徹底してるのは珍しい)

      ス

(……おれの方、いやヨルの方を見てるな)

奇抜な(人の事は言えないが)少女を見て、
自然な形でキャットキャリーに手を添えた。
勝手に触られたりしないように、だ。

「どうかしたかな。これはおれの飼い猫だけど」

      「それとも、おれに何か用かい?」

座ったまま、先んじて少女に声を掛ける。
猫は鳴くのをやめて、近づいて来る少女を見ていた。

677夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/18(日) 23:49:30
>>676

『ネイルアート』や『サングラス』は、
本来『アリス』の構成要素ではない。
頭に巻いているのも『リボン』ではなく『スカーフ』である。
しかし、それらはファッションの中で浮いておらず、
全体に『統一感』が存在した。
『パンク風』のアレンジでコーディネートされているためだ。
だからこそ、『生活必需品』である『サングラス』も、
そこにあるのが不自然に見えない。

「いやいや、ヨウジってほどのモンじゃないんだけど」

       ジィッ

「『めずらしい』からさぁ〜〜〜」

サングラス越しに瞳を輝かせながら、
キャットキャリーの中の『猫』を眺める。
といっても、世間的に珍しいのかどうかまでは知らない。
ただ、『見た事がない』のは確かで、
それは全て『珍しいもの』なのだ。

「――――『ナマエ』は??」

みたカンジ、『ケ』がナガいっぽいからな…………。
『エリアシ』とかどうよ??
あってる??

678円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/07/19(月) 00:16:42
>>677

今着ている『白雪姫』風のワンピースへのこだわり通りに、
イエリもこの手のファッションには一家言あるが、
目の前の少女のそれは、見事だと思った。
マネキン通りに着るのではなく、『作っている』。
そういう営みには、きっと、大いに意味があるのだろう。

「そうか……確かに、ラグドールはあんまり見ないかもな。
 名前は『ヨル』……『ヨルムンガンド』。
 おれがつけた、すげーいい名前だよ」

                 ミャー

「もっとも、神話のそれみたいに『毒』は無いしさ」

名前を呼ばれたと思ったか、猫が顔を上げた。
イエリは一撫ですると、再び少女の方を見る。

「それに、こいつは『チェシャ猫』にも似ても似つかないだろう。
 …………猫が好きなのかな? それとも、動物が好きなのかな」

猫とイエリは同じ空色の目をしていた。その両方が少女を眺める。

679夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/19(月) 00:54:35
>>678

「『ヨルム』…………??」

一瞬、不思議そうな眼差しを向けた。
耳慣れない言葉だったからだ。
しかし、その表情はすぐに鳴りを潜め、
元通りの明るい色を取り戻す。

「『ヨル』かぁ〜〜〜。ゲンキ??いまは『ヒル』だよ〜〜〜」

『ドク』はなくても、
もしかすると『ドクゼツ』だったりするかもしれない。
さらっと『キツイひとこと』をつけくわえたりするとか。
カワイイかおしてやるもんだな。
もしそうだったとしても、ゆるしちゃうね。
コレが『ホレたよわみ』ってヤツか??

「ん〜〜〜まぁ、ナンでもスキだよ。
 『イロ』とか『カタチ』とかあるモノならだいたい」

       「『ワタアメ』もスキだし、
        『ハトドケイ』もスキだし、
        『カマキリ』もスキ!!」

             クルッ

『ヨル』から視線を外し、『飼い主』を眺める。

「あと『ようふく』もスキだな〜〜〜。『そういうの』とかさぁ」

「イイね〜〜〜。『イイ』よ、『イイ』。うんうん」

『白雪姫』を思わせるファッションを見て、
興味津々といった調子で大きく頷く。
いつのまにか、
『シラユキヒメのセカイ』にはいりこんでしまったか??
まんがいちのために『イブクロ』をきたえておかないとな。
ひとちがいされて、
マジョに『ドクリンゴ』くわされるかもしれないし。
『やきリンゴ』がいいな!!

680空井イエリ『ソラリス』:2021/07/19(月) 01:23:20
>>679

「そう、呼ぶんだったら『ヨル』でいい。
 昼だって、朝だって、いつだって、
 名前ってやつは変わらないものだから」

          ニャ―

「猫語は翻訳出来ないが、元気らしいぜ」

少女が猫に害を与える人間ではないのは、
ここまでの会話で何となく分かってきた。

「おれも好きなものは――――多いよ。
 本を読むのがすげー好きで、飼っている動物も好きだ」

       スッ

「そして、こういう服も好きなんだ。
 自分の体に似合う格好をしたいし……
 単純に、こういうのは、かわいいと思うからな」

自分だけ座っているのもなんだ。
視線も感じるので、立ち上がって向かい合う。
低い背丈に眠たげな顔、童話の世界は自分によくなじむと思う。

「『アリス』と『白雪姫』が会うなんて、遊園地でしか見られない光景だぜ。
 ……そのネイルアート、それは自分でやっているのかな。興味があるよ」

681夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/19(月) 01:50:56
>>680

「おっ、きがあうな〜〜〜。
 ウチら、イイなかまになれそうじゃない??」

「ソコにめをつけるとは、さすが『シラユキヒメ』だ!!
 どう??なかなかのジシンサクだけど」

          ササッ

        「――――どう??」

両手を上げて、『トランプモチーフ』のネイルを見せる。
多彩なパーツを配置して、彩り豊かに仕上げてある。
ゴチャゴチャしていない辺りはセンスがあるのかもしれない。

「あ!!いっしょに『シャシン』とらない??
 『アリス』と『シラユキヒメ』の『であいきねん』ってコトで。
 コレがきっかけで『あたらしいドウワ』がうまれるかも!!」

          スッ

「ついでに『ヨル』もいれようよ。
 『アリス』と『シラユキヒメ』のセカイを、
 こうやってつないでくれたワケだしさぁ〜〜〜」

相手が立ったのを見計らい、
スマホを取り出して構えるポーズをする。
目の前の『白雪姫』が言う通り、こんな機会は中々ない。
もし『ショセキカ』されたら、『インゼイ』もらって、
『スイーツビュッフェ』と『ヤキニクたべほうだい』いこうぜ!!

682空井イエリ『ソラリス』:2021/07/19(月) 02:21:03
>>681

「そうだな――――
 こういう服を着ている人はたまに見かけるが、
 おまえさんは『コスプレ』じゃあなくって、
 それを『ファッション』でやってるのが、素敵だ。
 良い仲間になれたら、マジにうれしいぜ」

        ジッ

「――――技術もプロ顔負けみたいだし、さ。
 今度教えてくれないか、センスまでは真似できないけどさ」

アリスファッションに合わせるネイルとして、
トランプというモチーフを持ってくるのが、『巧い』。
目の前の少女には、可能性が溢れているようだった。

「写真か、いいぜ。
 ただ、SNSに拡散とかはしないでくれるかな。
 おれは、そんなに、そういうのは得意ではないからさ」

                   グイッ             
 
「それにヨルもさ。おれは猫ブログとかは書いていないし」

                    シュルッ

                 ニャー

キャットキャリーを担ぎ直す。猫はそこから顔を出している。

「でも、わがままだけど……綺麗には撮ってくれると、嬉しいかな」

683夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/19(月) 03:08:52
>>682

「よ〜〜〜し!!」

二人と一匹の全員が収まるようにしてスマホを構える。

「じゃあ、『チーズ』っていったらとるから!!」

「――――『ゴルゴンゾーラ』!!」

       パシャッ

「お!!いいカンジじゃない??」

        ソッ

スマホを差し出し、撮影した写真を見せる。
全員がきちんとセンターに集まっており、
さすがにプロ並みとはいかないまでも、
即興にしてはそこそこいい出来だ。
満足げに頷いて見せたあと、ふと思い立つ。

「ひとりでみるのもサビシイし、あとでシャシンおくるね!!」

「えーと、『シラユキヒメ』のレンラクサキは??
 せっかくあえたんだし、トモダチになろうぜ!!」

これ幸いとばかりに、ついでに連絡先の交換を提案する。
あとはアカズキンとシンデレラとラプンツェルと…………。
『ユニット』くむのもユメじゃないかもな!!

684空井イエリ『ソラリス』:2021/07/19(月) 04:14:15
>>683

「青カビチーズときたか。
 でも、それくらい癖のあるほうが、
 おれたちには似合いなのかな」

         スス…

少しだけ近寄り、写真を見る。

「ああ、良いな、おまえさんやっぱりセンスがいい。
 アルバムに納めたら、きっと映えるだろう」

           ニャー

「ヨルも嬉しいのかな、それとも、腹が減ったのかな」

バズるかもしれない。
その価値は分からないが、
価値がある事は分かる。

「友達か、それは、すげーいいことだ。
 是非お願いしたいもんだよ。
 おれと遊んで楽しいかは分からないが、
 せっかくだ、努力はさせてもらうぜ」

スマートフォンを取り出して、連絡先交換を執り行う。

「もっとも、年長者として頼られる自信はないが……
 ああ、それと、『白雪姫』でいつづける自信も、だな」

         「なにせ明日は赤ずきんの予定だからさ」

685夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/19(月) 23:39:48
>>684

「『あかずきん』〜〜〜??」

あしたは『かぐやひめ』かな??
それとも『クレオパトラ』か??
『トモダチ』がふえると『セカイ』もふえる!!

「それイイ!!
 『アリス』は『アリス』だから、
 いろんな『セカイ』にいかなきゃならないからさぁ〜〜〜」

「だからスッゴイいいよ!!ソレいい!!
 あうたびに『べつのセカイ』にいけるじゃん!!」

ひょっとしてひょっとすると、
トンでもない『いつざい』をみつけてしまったかもしれない……。
『しろウサギ』よりスゴイじゃないか!!
いるトコにはいるもんだなぁ〜〜〜。

        ヒラヒラヒラ

              ――――ピトッ

その時、どこからともなく飛んできた『モンシロチョウ』が、
スカーフの上に着地した。

「で、これからドコいくの??
 なんかアレじゃなかったらさ、ついてってもいい??」

「『あかシラユキずきん』といっしょだと、
 なんか『おもしろいであい』とかありそうだし!!」

         パタ パタ パタ

蝶が羽ばたくように大きく両手を動かしながら、
唐突にのたまった。
目の前の『不思議』は逃さないのが『アリスの心得』だ。
『チュウイ1びょうケガいっしょう』っていうし!!

686空井イエリ『ソラリス』:2021/07/20(火) 12:33:04
>>685

「おれは。一つのお話の登場人物じゃないからさ。
 中身は結局のところ、全部おれみたいなやつだけど、
 それでいいんだったら、おまえさんを満足させられると思うよ」

「人間、中身も、すげー大事って言うしな」

興奮した様子に見えるアリスに首肯した。
実際、イエリは特定の童話や幻想に執心していない。
ファンタジーやメルヘンは好きだが、なりきるのではなく、
自分の身体をより綺麗に飾るために、そうしていた。

「首の……蝶がついてるぜ。
 超カラフルで綺麗だからさ、花と間違われたのかな」

と、一言告げてから鞄越しに猫を撫でる。
猫の機嫌とは分からないもので、今はもう大人しかった。

「着いて来てもいいが、行くのは『猫のシャンプー』だぜ。
 おまえさんが来ても、会えるのは別の猫だけじゃあないかな。
 それでもいいなら、道中の話し相手になってくれると、嬉しいけど」

「一応――――連絡先にも書いてる通り、おれの名前は『イエリ』
 ま、呼び方の方はお前さんに任せるけどさ」 

イエリは花と違い動くものだが、蝶に追えないものでもないだろう。

687夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2021/07/20(火) 20:18:44
>>686

「イイじゃんイイじゃん!!
 『いろんなセカイにいってる』ってコトだし」

「『アリスのライバル』とうじょうだ!!」

スカーフに留まったモンシロチョウは大人しくしている。
傍から見ると、アクセサリーか何かのようだ。
言われて気付き、それを見下ろした。

「おん??いっしょにきたいのかな??」

「それじゃ、いっしょにいこうぜ!!」

『蝶』に呼び掛け、それから『イエリ』に向き直る。

「ナニそれキョーミあるゥ〜〜〜!!
 『ネコのシャンプー』ってみたコトないしィ〜〜〜」

「いっしょうにいちどでイイからみてみたいなァ〜〜〜」

        ザッ

「わたしは『アリス』だから『アリス』でいいぞ。
 いざ、『ヨルのシャンプー』へ!!」

スマホをしまって歩き出す。
空の色は一つじゃない。
それと同じように、
何気ない日常の中にも『不思議』は隠れている。
『アリス』は『不思議』を追いかける。
だから、こうして今日も歩いていくのだ。

688空井イエリ『ソラリス』:2021/07/20(火) 21:32:34
>>687

「友達で、ライバルか。
 いいことだな、物語みたいでさ」

       フ

「誰だって来る者は拒まないよ、おれは。
 トリミングサロンがどう言うかは、
 別かもしれないけど――――
 まあ、きっと問題は無いだろう」

          スタ スタ

「確かガラス張りだったはずだから、
 おまえさんも見られると思うよ。
 おれの猫が洗われるところをさ」

友達もライバルも大きな価値は感じないが、
そういうものを作る営みは、自分にとっても、
或いは相手にとっても、いいことに違いはない。
そういう物事を探しながら、歩いていく。

689宗像征爾『アヴィーチー』:2021/08/04(水) 18:21:02

街中にある公園のベンチに、一人の男が座っていた。
カーキ色の作業服を着た中年の男だ。
革の手袋で覆われた手を開き、『そこにある物』を見下ろす。

        チャリッ

「どうするべきか――」

手の中には『花飾りが付いたお守り』があった。

690宗像征爾『アヴィーチー』:2021/08/07(土) 01:03:33
>>689

手の中の『お守り』を見つめる。
以前、『アリーナ』が開催した『催し』で渡された物だ。
考えるのは『価値』に関する事だった。
俺が『これ』を持っている事は、『宝の持ち腐れ』ではないか。
あるいは、もっと他に相応しい人間がいるのかもしれない。

「だが、俺は『これ』を受け取った」

俺の手に渡ったのは、単なる偶然の一致だ。
だが、一度手にした以上は粗末に扱う事は出来ない。
それは『義理』に反する。

         ザッ

『お守り』をポケットにしまい込み、公園を後にした。

691御影憂『ナハトワハト』:2021/08/07(土) 01:48:16

賑やかな通りに面したカフェのテラス席。
その一隅に、異様に前髪の長い女が座っている。
手元には、一冊のノートが開いた状態で置かれていた。

          トン トン トン

ボールペンの先で、紙面を軽く叩く。
そこには、短い数行の『文章』が書かれていた。
頭を悩ませている問題と向き合っているのだ。

         様子を見ていた

          教室から出た

          文章を書いた

          教室に戻った

           窓を開けた

(どうして『バレた』のか………………)

『仕事』の最中、また『赤月』と遭遇した。
『逃げ隠れ』を得意とする『ナハトワハト』にとって、
『サクソン』の能力は厄介だ。
『いる事』が探知されるのは知っていたが、
『移動した事』まで察知されるのは予想外だった。
この前は上手く逃げ切れたが、次に遭遇した時は、
今度こそ『正体』を暴かれてしまうかもしれない。
早急に何らかの『対策』を講じる必要があった。

(『サクソン』の能力が発動する『条件』は………………
 『同じ場に第三者がいる事』………………)

(今までは『そう思ってた』けど………………)

だが、逃走のために『窓』を開けた時には、
赤月はノーリアクションだった。
『教室から出た』時には即座に気付いたのに、
なぜ『教室に戻った』時には何の反応もなかったのか。
そこに『謎』を解く『鍵』があるはずだ。

692赤月『サクソン』:2021/08/07(土) 09:43:19
>>691

「あっ・・・・!」

穏やかな風が吹き抜けるテラス席に一人座る御影の背後から
聞き覚えのある声がかけられる
噂をすれば・・・という言葉もあるが、その声は御影が今まさに考えていた人物のものであった

「御影じゃないか、丁度良かった」

寒色系のワイシャツにパンツルック、男性的な服装をしたその少女は
手に紙袋を持ちながら、御影に近づく
以前、遭遇した時は精神的な不安定さがありありと存在していたが、
今の彼女の顔はあの時と比べて大分穏やかな様子だ

693御影憂『ナハトワハト』:2021/08/07(土) 19:51:45
>>692

「………………!!」

               ――――パタン

聞こえてきた声に反応し、おもむろにノートを閉じる。
まさか、こんな場所で出くわす事になるとは…………。
ここは真昼間の街中。
『ナハトワハト』は役に立たない。
しかし、『この前』とは違って、
別に『能力』を使う必要はないのだ。

「………………こんにちは」

内心の考えを押し隠し、ごく普通に挨拶する。

「『そこ』………………どうぞ………………」

        スッ

向かいの席は空いている。
その場所を手で指し示した。
テーブルにはサンドイッチと紅茶が並んでいた。
御影が注文した品だ。
また、脇には数冊の本も置かれている。

694赤月『サクソン』:2021/08/07(土) 20:56:36
>>693

「ん・・・・どうも」

閉じられたノートに軽く視線を向けたきり、興味をなくしたように視線を外す
そして、空席であった向かい側に腰を下ろすと手に提げていた紙袋を余った椅子に置いた
荷物を置く時に袖のない左腕を伸ばしたが、その内側には2条の新しい切り傷が僅かに走っていた

「この前はどうもありがとう
 あの時は色々と追い詰められてて・・・・君の部屋に匿ってもらったおかげで
 久しぶりにぐっすりと眠る事が出来た」

「それで、その時のお礼がしたくてこれを持ってきたんだ」

そう言うと、赤月は椅子に置いた紙袋の中身をがさがさと漁る

695御影憂『ナハトワハト』:2021/08/07(土) 21:12:57
>>694

真新しい『切り傷』を見る。
先程まで考え事をしていたせいか、それが妙に気になった。
どこかで怪我をしたのか?
少なくとも、自分のせいではない。
具体的な『手出し』はしていないのだから。

「………………『元気』になったなら良かった」

それは本心だった。
御影が恐怖を与えるのは『ろくでなし』だけ。
『それ以外の人間』を怯えさせる事はしないし、
実際に危害を加える事もしないと決めている。
だからこそ御影は、『リーダー』の考える、
『危険なスタンド使い』から外されているのだ。
もし、その『誓い』を破った時は、
『組織』から『破門』される事になるだろう。

「『お礼』………………?」

『正体』が知られているなら攻撃も視野に入れる所だ。
しかし赤月は、目の前に座る相手が、
『夜警』を名乗った者である事を知らない。
『スタンド使い』である事さえ知らないはずだ。
同じ学校内で、
御影が『スタンド』を持っている事を知っているのは、
『円谷世良楽』と『飯田咲良』だけ。
その二人にしても『能力』までは知らない。

696赤月『サクソン』:2021/08/07(土) 21:40:25
>>695

『切り傷』はつい最近受けたように真新しいものの、
その深さはとても浅く、前腕の手首に近い部分・・・その内側についていた
だが、それ以上の観察をする事は出来ず、紙袋の中に隠される

「そう、『お礼』」

僅かな警戒心を抱く御影に対して、赤月はまったく警戒する素振りを見せない
『攻撃』を狙っているとすればかなりの演技力と言えるが・・・・

「ほら、これ」

紙袋から手の平に乗るくらいの大きさの缶が取り出された
上面のプリントからはこれが焼き菓子の詰め合わせである事が推測される
赤月はその缶を御影に向けて差し出した

697御影憂『ナハトワハト』:2021/08/07(土) 22:08:58
>>696

『正体』は知られていないはずだ。
だから、攻撃される可能性も考えられない。
この場において、過剰な警戒は必要ないだろう。
平常通りに接すればいい。
単なる『大学生』の御影憂として。

「ありがと………………」

         ソッ

手渡された『焼き菓子の缶』を受け取り、
足元に置かれた鞄の中に入れる。
そういえば、『遊園地の事件』では、
セララに『クッキー缶』をあげたんだった。
状況は逆だが、何となくその事を思い出していた。

「『腕』………………」

      ボソッ

「………………『怪我』したの?」

そして、『腕の傷』に話題を移す。
見ようによっては『リストカット』とも思える傷。
寮の『自室』に入れた時は、ひどく動揺していたし、
あの時の様子を考えれば、
有り得ない事ではないかもしれない。
しかし、今は至って落ち着いているし、
あの傷は最近のものだ。
そこが引っ掛かる。

698赤月『サクソン』:2021/08/07(土) 22:24:56
>>697

「ん・・・・・あぁ、これの事?」

ちゃんと『お礼の品』を渡せた事にはにかむ赤月
話が『腕の傷』の事に移ると少しだけ考えるそぶりをする

(どうしようか・・・
 正直に言ったらこの前の『いのちの電話』の時みたいに心配をかけてしまうかも
 少しだけ・・・・方便を使うか)

「実は『この前の夜』・・・・・『学校』で・・・・」

真実の話から、少しだけ細部を変える事
それがバレにくい嘘をつくためのコツであると聞いた事がある
大まかな流れは変えずに・・・・少しだけ・・・・

「学校に忘れ物を取りに行った時があって
 その時に慌ててたせいで壁から突き出てた釘に引っ掻いてしまったんだ」

身振り手振りを添えながら説明をする赤月
しかし、動きが少しぎこちなく・・・・違和感が大きい

699御影憂『ナハトワハト』:2021/08/07(土) 22:40:34
>>698

「………………そうなんだ」

説明を受けて、納得したように頷く。
しかし、今一つ腑に落ちない。
『学校の壁から釘が突き出ていた』というのも妙だが、
その他にも疑問点がある。
傷は『二条』あった。
本当に『釘で傷付いた』というなら、
釘が『二本』突き出ていた事になる。
もしかすると、
一本の釘に『二回当たった』のかもしれないが、
いくら何でも一回触れたら気付くだろう。
慌てていたとしても、同じ釘に二度も当たる事は考えにくい。

「『夜』は気を付けないと………………」

『夜の学校に来た』というのは本当だろう。
なにしろ、自分も『同じ場』にいて、
『闇の中』から見ていたのだから。
しかし、全てを見届けた訳ではない。
『見ていない』部分もある。
『逃げた後』の事は当然知らないし、
あの『トレンチコート』は何かを隠すには打ってつけだ。

「その『釘』…………………『どこ』にあったの?」

「『危ない』から………………。
 学校に言っておかないと………………」

何気ない口調で質問を重ねる。
もしウソをついているなら、どこかで『ボロ』が出るだろう。
それを見極めたい。

700赤月『サクソン』:2021/08/07(土) 22:50:40
>>699

「うん、だから御影も暗い所では気を付け・・・・」

>「その『釘』…………………『どこ』にあったの?」

「う、ん・・・・? それは・・・・」

それまでは多少早口ながらも流れるように説明をしていた赤月の言葉に言い淀みが生じる
質問に対して、何かを考えるような間が空き・・・・
そして数秒後に視線を御影に向け直して答える

「・・・・玄関だよ
 玄関の門を開けた時に突き出てた釘に引っかけたんだ
 目立つ所にあったから、今頃はもう対処されているかもしれない」

御影は知っているかもしれないが、中等部の正面玄関はガラス戸だ
釘が出る余地など一切ないはずだが・・・・

701御影憂『ナハトワハト』:2021/08/07(土) 23:03:13
>>700

ガラス戸なら釘は出ない。
『中等部の玄関』とは言ってないから、
別の入口かもしれないが。
しかし、それでは、
『忘れ物を取りに来た』という発言と矛盾する。
普通に考えるなら、やはり『中等部の玄関』だ。
そこに釘がないという事は、これは『ウソ』なのだろう。

「じゃあ、言わなくてもいいかな………………」

一旦、追求を中断する。
だが、完全に中止した訳ではない。
ひとまず安心してもらおう。

「………………『注文』する?」

       スッ

テーブルの上にあったメニューを、赤月に差し出す。

「『釘』………………『二つ』あったの?」

そして、差し出しつつ、不意打ち気味に尋ねる。
安心させてから虚を突こうという算段だ。
前髪の隙間から、赤月の表情を窺う。

702赤月『サクソン』:2021/08/07(土) 23:21:20
>>701

「ふぅ・・・・」

追及の手が弱まった事にほっとしたような表情を浮かべる
別に悪い事をしているわけではないのだが、
助けてくれた恩人に対して嘘をつくというのは、赤月にとって後ろめたい事なのだ

「ん、それじゃあ『アイスティー』を・・・」

>「『釘』………………『二つ』あったの?」

「・・・・・・!?」

店員を呼び、注文の言葉を口にした直後に御影の横入りが入る
安心しきったところに入った不意の一言に戸惑い、反射的に言葉を口にした

「そ、そうなんだ
『玄関』に釘が二つ突き出してて・・・・」

語った直後にしまった、というような表情に固まる
釘が二つ刺さった玄関・・・・どう考えても不自然な光景だ
だけど、このまま押し切るしかない

703御影憂『ナハトワハト』:2021/08/07(土) 23:50:12
>>702

「『危ない』ね………………」

        ――――ポン

それだけ言って、メニューを渡した。
『釘の話』がウソである以上、可能性として考えられるのは、
『別の場所』で付いたか、『誰か』に付けられたか、
『自分』で付けたか。
そもそも誤魔化そうとしている理由は何だろうか?
何も後ろめたい事がないのなら、隠す必要がない。
ウソをつくという事は、
『知られたくない何か』があるという事だ。

「………………『二年生』だっけ」

       ズズ…………

「『中等部』の………………」

紅茶を啜り、世間話をしながら考える。
ウソをつく時のタイプは大きく分けて二つある。
全てをウソで塗り固めるタイプと、
肝心な部分だけウソをつくタイプ。

「………………『飯田咲良』って知ってる?」

おそらく、『場所』は本当だろう。
実際に『目撃した』というのもあるが、
本当でないのなら、わざわざ『夜の学校』などを指定せず、
もっと都合の良い状況を挙げればいい。
つまり、そこで『傷』が出来たと思って良さそうだ。
では、『誰かに付けられた』というのはどうだろうか?
『音楽室の少女』の例もあるとはいえ、
あの場所に『別の人間』がいたというのは考えにくい。

704赤月『サクソン』:2021/08/08(日) 00:02:21
>>703

「ああ・・・危ない」

言葉を重ねるごとに鼓動が早くなり、冷や汗が流れる
御影の告げる言葉のテンポに平常心を崩されながらも、
なんとか乗り切ったのだと自分に言い聞かせる

>「………………『二年生』だっけ」

「・・・・・ッ!?」

次に放たれた言葉に思わず息を呑むが、
続けて問いかけられる内容に、少しだけほっとする
嘘をつく必要がない質問だったからだ

「そう・・・・今年になってから中等部に編入したんだ
 それまではちょっと別の国にいてね、最初の頃は慣れなくて大変だったよ」

「咲良は・・・・うん、同じクラスの友達だ
 ・・・・うん?もしかして、御影も咲良と知り合いだったりするのかな?」

705御影憂『ナハトワハト』:2021/08/08(日) 00:23:26
>>704

「そう………………『知り合い』………………」

最も可能性が高いのは――――『自分で付けた』か?
確証はないが有り得る事だ。
『後ろめたさ』の理由にもなる。
しかし、それでも疑問は残る。
夜の学校で自分の腕に切り傷を付ける事の『不自然さ』だ。

「………………何回か会った」

『共通の知人』がいるというのは都合がいい。
コミュニケーションが円滑に進み、
『情報収集』もしやすいからだ。
それを話している当人の風体は別として。

「………………知ってる?」

「学校の近くで『事件』があったって………………」

「………………怖いね」

赤月が知っている事は分かっている。
あの『ビラ』を見たのだから。
だから、この言葉は、赤月に『あの夜』を思い出せるためだ。
『闇』に潜んでいた自分と対峙した夜の事を。
そうする事で、『傷の謎』を解く手掛かりを掴みたい。

706赤月『サクソン』:2021/08/08(日) 00:30:48
>>705

「そうなのか
 君は・・・・結構顔が広いんだな」

共通の知り合いがいる事を知り、再び少しだけ警戒が薄れる
そこに先ほど注文をした『アイスティー』がやってきたため、
シロップとフレッシュを投入してぐるぐるとかき混ぜる

「学校の近くで事件・・・・!?」

アイスティーを混ぜる手ががちゃっと音を立てて止まる
一瞬だけ、『あの夜』の事を思い出したが、すぐに別の可能性に思い至る
あんな『ビラ』が配られていたという事は、自分の以前にもそういう事件があったという事で・・・・

「その事件、聞いた事があるな
 知らず知らずのうちに学校に配られていた『ビラ』に書いてあったんだけどさ
 なんでも両目の色が違う少女が生徒を襲う事件があったとか・・・?」

「あ、もしかして君の所にも『ビラ』が配られていたのか?」

707御影憂『ナハトワハト』:2021/08/08(日) 00:51:16
>>706

     ――――ゴソッ

答える代わりに、鞄から『例のビラ』を一枚取り出し、
テーブルに置く。
鞄の中には『まだ配り終えてない分』が入っていた。
『リーダー』から、
『ほとぼりが冷めるのを待つ』と言われたため、
そのままの状態になっているのだ。

「………………『大学部』にも配られてたから」

仕込んだのは自分だが、当然それは口にしない。

「それから………………」

        ソッ

「………………これは『星見横丁』で拾った」

『歓楽街の通り魔』についての『ビラ』を新たに取り出し、
『傷害未遂のビラ』の隣に置いた。

「何だか………………色々と起きてるみたい………………」

        モクモク

「お互いに気を付けなきゃ………………」

玉子サンドを齧りながら、『注意』を促す。

708赤月『サクソン』:2021/08/08(日) 10:31:14
>>707

「やっぱり・・・! ・・・っと、それは」

『歓楽街の事件』についてのビラを眺める
以前、学生寮で受け取ったものと同じ内容だ
(もっとも、実際もらったビラには一抹による加筆がされていたのだが)

「『星見横丁』に『学校』・・・・
 『夜警』め・・・・一体、どれ程広い行動範囲をしているんだ・・・・?」

『夜警』の事を小声で呟くとともに、身体を縮める様にして左腕の傷を握りしめる
無意識に自分を守ろうとするような動きだ

709御影憂『ナハトワハト』:2021/08/08(日) 19:07:33
>>708

「………………『夜警』?」

さも疑問に思ったかのように聞き返す。
『ビラ』には印刷されていない情報だからだ。
もちろん本当に知らない訳ではない。
『夜警』――――『オランダ語』では『ナハトワハト』。
咄嗟の思い付きで名乗った『通称』だったが、
自分としては、なかなか悪くないと思っている。

             ゴソッ

不意に、鞄から小瓶を取り出す。
『髑髏のラベル』が貼られていた。
『デスソース』と呼ばれる『超激辛ソース』だ。

     キュッ

          ドボドボドボドボドボ

栓を開け、玉子サンドに『デスソース』を振り掛ける。
少しばかり『物足りなさ』を感じたのだ。
見る見る内に、『血のような赤』に染まっていく玉子サンド。

710赤月『サクソン』:2021/08/08(日) 19:40:26
>>709

「そう、『夜警』
 私も実際に会った事はないんだけど・・・」

卓上に置かれた『ビラ』を目で指し示す

「そんな感じの危険人物の『ビラ』
 それを色んな場所で配ってる人物の呼び名・・・・らしい」

正確に言えば、本人から間接的に名乗られた名前なのだが
スタンド能力の事を話さずに説明するのが面倒なので濁す事にした

「とはいえ、『夜警』もかなりの危険人物だから気を付けた方がいい
 確かにその場にいるはずなのに、誰にもその姿を見せつけないような恐ろしい奴で
 たぶん・・・・その気になれば証拠を残さないように人を殺す事だって出来るはず」

「まあ・・・・多分、君が襲われる事はないと思うけど」

『夜警』本人が嘘を言っているのでなければ、奴の対象は『悪いスタンド使い』のはず
御影のような一般人が襲われる事は・・・・恐らくないだろう
赤月はそう考えていた

     キュッ

          ドボドボドボドボドボ

話の途中で不意に取り出された『デスソース』に目が吸い寄せられる
最初は興味深そうに見ていたのだが、冒涜的なまでに赤く染まる玉子サンドを見ている内に
赤月の口がぽかんと開く

「それ・・・・・そんなに入れて大丈夫なのか?」

711御影憂『ナハトワハト』:2021/08/08(日) 20:26:06
>>710

「『危険人物』………………」

「………………そんな人がいるんだ」

少々『心外』だが、まぁそれはいい。
こちらとしても、目の前に座る赤月は『脅威』だ。
誰にも気付かれないはずの『ナハトワハト』に気付ける人間。
だからといって、何かしようとは思わない。
少なくとも『正体』を知られない限りは。

「分かった………………」

「………………『気を付けとく』」

        キュッ

『デスソース』の栓を閉め、
『真っ赤な玉子サンド』に片手を伸ばす。

     モクモクモク…………

「………………味が『引き締まってきた』」

至って平然とした様子で、サンドイッチを齧る御影。
もしかすると、意外と辛くないのかもしれない。
それとも、味覚がだいぶ偏っているのだろうか?

「………………『食べてみる』?」

         ソッ

玉子サンドが載った皿が差し出された。
外見は見るからに辛そうだが…………。
果たして、食べてみても平気なのだろうか?

712赤月『サクソン』:2021/08/08(日) 21:04:51
>>711

危険な色に染まったサンドイッチを齧り、平気な顔で咀嚼する御影をじっと見る
常識的に考えれば辛くないはずがないのに・・・・
興味深そうにその挙動を見つめていた

「ゴクリ・・・・ ありがとう、一ついただくよ」

差し出されたサンドイッチを一つ手に取り、目の前に掲げる様に見つめる
真っ赤に染まった色合いはそれが劇物である事を示している

「ぱくっ・・・・」

意を決して、それを口にの中に放り込む
まずは一噛み・・・・・パンの香ばしい風味と玉子の旨味が・・・・・

 「・・・・・・!!!!?!?????」

口内に広がったのは『味』ではなかった
鋭い刃の様な刺激が舌先を超えて鼻腔内を暴れ回る
赤月は声にならない嗚咽を上げながら、椅子が軋むほどに身体を仰け反らせる

「―――――――ッ!!!!」

だが、口の中で暴れ回るそれを吐き出す事はしない
歯を食いしばりながら、どうにかそれを喉の奥へと送り込み
ごくりと大きな音を鳴らしながら胃の中へと嚥下した

刺激を我慢するために握りしめた二の腕は手の形に赤い痕を残し、目には涙が滲む
惨憺たる光景である

713御影憂『ナハトワハト』:2021/08/08(日) 21:21:31
>>712

やはりというか、そのサンドイッチは非常に『辛かった』。
辛さは『味覚』ではなく『痛覚』で感じるという話がある。
まさしく、それを体言したかのような強烈な味わいだった。

「あ………………」

『やっちゃった?』という表情で、眼前の光景を見守っていた。

「………………どうぞ」

手元の紅茶を押し出す。
アイスティーだけでは足りないかもしれない。
焼け石に水かもしれないが…………。

      モクモクモク

残った玉子サンドは自分で片付ける。
赤月とは対照的に、落ち着いた様子で少しずつ噛み、
それらを胃の中に収めた。
それから、テーブルの上にビラやノートを鞄にしまい、
店を出る準備をする。

「横になった方がいいかも………………」

        ソッ

立ち上がると鞄を片手に持ち、空いた手を赤月に差し出す。
拒否されないなら、赤月を支えて店の外に出るつもりだ。
店の外には丁度いい大きさのベンチがあった。
誰も座っていないし、近くには人もいない。
少しの間休んでも、文句は言われないだろう。

714赤月『サクソン』:2021/08/08(日) 21:53:46
>>713

「だ、大丈夫・・・・ごほっ この程度なら大丈夫だ
 それにしても・・・・げほっ げほっ 凄いものを食べてるんだね・・・・」

ジュゾゾゾ・・・・と自前のアイスティーを飲み干す
一瞬だけ辛さが緩和したが、すぐにヒリヒリとした感じが戻ってくる
涙目になりながら、御影を見つめる

「でも・・・・すまない、まだダメージが大きいみたいだ」

差し出された手を握り、店の外へと出ていく
必要な代金は卓上に置かれた

「はぁ・・・・ 世の中にはとんでもないものがあるんだね
 そんなソース、どこで買ったんだい?」

ベンチに座り、舌を空気に晒して冷やしながら言う
口元がだらしなくなってしまうが仕方がない

715御影憂『ナハトワハト』:2021/08/08(日) 22:08:43
>>714

『美味しいのに』と心の中で思ったが、口には出さなかった。

               チャリン

           ピッ

     ガシャンッ

「これ………………」

      コト

「………………『おごり』」

自販機から『ミネラルウォーター』を購入し、赤月の横に置く。
舌を冷やすには十分だろう。
『デスソース』の事を尋ねられ、赤月に向き直った。

「『秘密』………………」

       スッ

「………………『お大事に』」

それだけを言い残し、鞄を手にして赤月から離れる。
まだ『サクソン』の『対策』は出来ていない。
次に遭遇した時のために、
一刻も早く『条件』を解明する必要がある。
自室に戻って、じっくり考えよう。
思考を巡らせつつ、その場を後にするのだった――――。

716赤月『サクソン』:2021/08/09(月) 00:22:53
>>715

「何から何までありがとう・・・・ごほっ いつかまた、お土産を持ってお邪魔するよ」

『ミネラルウォーター』を受け取ると、お礼の言葉を口にし、
御影が去って行くのを見送る

「うーん・・・・『秘密』か それでは仕方ない・・・・
『デスソース』を戦術に組み込むことが出来れば、もっと強くなれると思ったのだけど」

この前の『試合』では『一味唐辛子』を武器として使った
より強く、より刺激的なものがあれば『サクソン』はもっと強くなれる・・・と思っている

「しかし、それにしても『夜警』・・・・
 御影もあの『ビラ』を持っていた事を考えると凄いフットワークの軽さだ
 あいつは私は『対象外』だと言っていたけど・・・・人は心変わりするものだし、当てにならない」

「『夜警』への『対策』はまだ万全じゃない
 あいつが姿を隠す条件もどんな事が出来るかもまだまだ未知数だ・・・・
 次に遭遇した時に備えて、何か効果的な方法を考えないと」

そんな事を考えながら、自室へと帰って行った

717鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2021/08/28(土) 12:01:47
ふわり、とシャボン玉ひとつ。
商店街の中を飛んでいく。
その出処はというとひとりの少年である。

「……」

和菓子屋の前、店頭販売の小さな屋台の店番を任されている。
肩にかかるほどの黒い癖毛を尻尾のように結び、和服に身を包んでいた。
シャボン玉、これはこれで客の意識を引くための手段だ。
ふわり、ふわりと空に飛んでは割れていく。

「ふ、む……」

今日は暇な日だった。

718美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/08/28(土) 12:25:46
>>717

「――――やっぱり、まだまだ外は暑いわね」

      スタ スタ スタ スタ スタ

スニーカーを履いた足で、軽やかに通りを歩く。
下半身を包むのは、細いシルエットのスリムジーンズ。
脱いだスタジャンを腰に巻き、
露出の多いタンクトップを着た上半身を外気に晒している。

「………………ン」

キャップのツバを片手で持ち上げ、屋台の前で立ち止まる。
和菓子に興味を持ったというのもある。
仕事柄、流行には敏感であらねばならない。
だが、それ以外の理由もあった。
そこにいた少年に見覚えがあったからだ。

「お久し振りね。私の事、まだ覚えてくれてるかしら?」

「『鈴元さん』」

彼とは、以前に町中で出会った事がある。
それ以前に『番組内』で話した事もあった。
何にせよ、久し振りの再会だ。

「前に教えてくれたわね。お家が『和菓子屋さん』だって。
 確か、元は『京都のお店』だって聞いてたけど」

記憶力には自信がある。
前に聞いた話を思い出しながら、商品を眺める。
どんなものがあるだろうか。

719鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2021/08/28(土) 13:38:24
>>718

「美作さん」

顔を上げる。
仕事柄、人の顔や名前はよく覚える。
後は本家にいた時の性質だが細かいことは今はいいだろう。

「……えらい、大胆な格好で」

頬を少し赤らめて目を伏せる。
小さなショウケースに視線が落ちていた。
『葛饅頭』や『水羊羹』『若鮎』などの商品の見本がケースに入っていた。

「本家は京都なんですけど、お兄ちゃんの修行と……後は他んとこにお店出さんかって話になってここに」

720美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/08/28(土) 14:24:33
>>719

「覚えていてくれて嬉しいわ」

       ニコッ

名前を呼ばれ、明るい笑顔を見せる。
『スマイル』は得意だが、これは本心からのものだった。
思わぬ所で知人と出会えたのは、ささやかな喜びだ。

「とっても清涼感があっていいわね。
 『目にも涼しい』っていうのかしら」

             スッ

        「よく見せてくれる?」

ずいと近寄ってケースを除き込む。
襟ぐりが広いため、胸元は緩い。
少年の反応を見て、
ほんの少しだけからかってみたくなったのだ。

「うーん…………色々あって迷っちゃうけど…………」

「それじゃあ『葛饅頭』を頂こうかな」

ケースの一角を指差し、それから和装の少年を見つめる。

「さっきの『シャボン玉』――――お客さんを呼ぶ作戦?」

         クスッ

「上手い考えだと思うわ。
 だって、こうして引っ掛かっちゃったから」

先刻の笑みとは打って変わり、
悪戯っぽい表情で笑い掛ける。

721鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2021/08/28(土) 15:23:37
>>720

「仕事柄……必要やから……」

とはいうものの、彼自身は和菓子を作れるほどの身でもない。
たとえ試しだったとしても、和菓子を作ることは許されていない。

「目ぇで見て楽しんで、舌で味わって楽しむ。それが和菓子の楽しみ……」

言葉の途中でまた、目をそらす。
今度は悪いとわかりつつも顔ごと背けるように。
少し、横目で上目がちに呟く。

「す、涼しそうやね……」

何とか絞り出したのはそんな言葉で、未熟さというものを痛感する。

「あ、葛饅頭……ですね……う、うん……」

そう言ってクーラーボックスの中にある葛饅頭の箱を取り出した。

「桜の葉ぁがなくて申し訳ないんやけど……ん?」

「あぁ、これ?」

シャボン玉のボトルを指さして。

「まぁ、そんなところやねぇ。人の目ぇひくんは難しいもんで……」

「ただ大きい声出すしてお客さん呼ぶんも、なんやろ?」

722美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/08/28(土) 17:19:00
>>721

「ええ、ありがとう。おいくらかしら?」

笑みを湛えたまま、
ジーンズの後ろポケットから財布を引っ張り出す。

「人を集めるには色んな方法があるけど、
 あんまり騒がしいのは、
 確かに鈴元さんには似合わないかもね」

「でも、あなたが立っているだけでも、
 足を止める人はいると思うわ」

「だって、こんなに魅力的なんだもの」

和装とシャボン玉。
一見すると奇妙な取り合わせだが、
不思議と吊り合っているように感じられた。
それは、彼から漂う儚さに由来するものかもしれない。

「集客では私も苦労してるから、見習いたい所ね」

        フッ

次に口元に浮かんだのは、やや苦い微笑だった。

「実は、最近ちょっと悩んでたの。このままでいいのかなって」

「説明が難しいんだけど、
 今の自分に納得できてない気がして…………」

「あ――――あはははは…………。
 ごめんね。何だか変な話しちゃって」

その場を取り繕うように、明るい表情を取り戻す。
こんな話をしてしまったのは、偶然知人に出会えたからか。
それとも、目の前の少年の雰囲気によるものだろうか。

723鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2021/08/28(土) 21:23:25
>>722

「十個入りで二千百円です」

「こっちは贈答品とかにも使えるやつやからひと月くらいは持ちますけど、二週間以内に食べてもろた方がええです」

そう言ってから、少し止まる。

「……おおきに」

魅力的と言われて悪い気はしない。
嬉しいという気すら起こるが、少しくすぐったい。

「……」

黒い瞳が美作を見ていた。
どこまでも黒い。
星の輝かない夜をそこに作ったかのような黒。
その奥に月の光よりもか弱い光があって、それによって瞳の中に美作が映っているのだ。

「……僕でええんやったら」

「相談、乗らせてもらいますけど……」

724美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/08/29(日) 05:47:10
>>723

「気温や湿度が高い時期だものね」

「ええと――――はい、ちょうど『二千百円』」

         スッ

少年の手に代金を渡し、引き換えに葛饅頭を受け取った。

「…………ありがとう」

「どう言ったらいいのかなぁ…………」

顎に人差し指を添えて考えながら、黒い瞳を見返す。
悩みというのは、少し前に知った事だ。
小さなニュースだったので、今まで気付かなかった。

「こんな話を聞かせて申し訳ないんだけど、
 知り合いに『不幸』があってね」

「その人は、とっても明るい感じの人で、
 私は別れ際に言ったの。
 『明日もお互い前向きに』って…………」
 
「――――その『すぐ後』だったわ」

「自分では良かれと思って言ったつもりだった。
 心から『応援』してあげたかったから」

「でも、実は『独りよがり』だったのかなって。
 もしかしたら、その人の事を、
 気付かない間に傷付けてたのかもしれなくて…………」

「私…………」

「『間違ってた』のかな…………」

普段の明るい雰囲気は鳴りを潜め、
ぽつりぽつりと胸の内を明かす。
『出会い』が好きだし、
出会った人達を全力で『応援』してあげたかった。
けれど、あの出来事で、
『これまでの自分』が否定されてしまった。
今までの自分は間違っていたのだろうか?
そんな気持ちが心に根付いた事は否定できない。

725鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2021/08/29(日) 15:39:20
>>724

静かに、言葉を聞いていた。
肯定も否定もなく、ただそこにいた。
ふわりと商店街の中を風が吹いて、前髪を揺らしていく。

「……」

静かに、発したことは。

「そう思う限りは間違(まちご)うとるかもね」

「『人の心は玩具にあらず』とはうちの家訓やけど……その本質は」

「他人の心は決して分からない」

美作とその人物の間にどんな積み重ねがあって、どんなことがあったのかなど、鈴元は知らない。
それでも、他人を思いやることを知る人に彼は優しくあろうと思う。

「やから、美作さんがほんまに間違うとるとは僕は思わへんよ」

「その答えを確かめることは出来ひんからね」

咲けば花は必ず散る。
道具は壊れ、建物は崩れ、生物は死に、それを繰り返す。

「世のあらゆることはたった一つの出来事で変わるわけやあらへんから」

「……」

「美作さんが前向きでないと、その人も進めへんし」

「美作さんが前向きでないと、今を生きる人は心配になるし」

答えの出ない問題を前に彼はそう答える。
その言葉自体が道を指し示すことは無いが、前に進むものを見送り、そこに留まるものに寄り添うように。

「化けて出られん限りはその答え合わせはずっとずっと先のことやけど」

「僕は……」

「間違うとるとは思うて欲しないかな」

726美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/08/29(日) 17:54:18
>>725

「………………あはっ」

少年の言葉に耳を傾け、やがて笑う。
明るい笑い方ではなかったが、暗い表情でもない。
ただ、何かに気付いたような顔だった。

「やっぱり私は『間違ってた』わ」

「私の一言だけで、何かがどうにかなる訳ない。
 そんな風に思う事こそ『独りよがり』よね」

あの時、もっと別の言葉を掛けていれば。
そうすれば違った結果になっていたかもしれない。
この所、その事が頭から離れなかった。

「世界は『複雑』なんだから」

でも、それは結果論に過ぎないのだろう。
先の事は誰にも分かりはしない。
今を生きるというのは、そういう事なのだ。
前に進むしかない。
『その人』のためにも。

「鈴元さんのお陰で元気が出たわ」

         ニコッ

「――――『ありがとう』」

キャップの下から覗くのは、普段通りの明るい笑顔だった。
もう陰はない。
これまでと同じように『前向き』であろうと決めたから。

727鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2021/08/29(日) 21:00:09
>>726

「……僕は別に」

また、伏し目がちに。

「気休め程度のことしか言えんけども」

多分、もっと言い方というのはあっただろう。
もっと当たり障りのないことを言う事も出来ただろうが。
この場では、あるいは今の少年にはこれだけのことしか出来ない。

「でも、美作さんが元気になったんやったら」

「僕は……それで……」

728美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/08/29(日) 21:48:14
>>727

「あはは、気にしなくていいのよ。
 諭してくれた事が嬉しいんじゃないの。
 もちろん、それはそれとしてありがたい事なんだけど」

「私はね、あなたが真剣に付き合ってくれた事が、
 何よりも嬉しいんだから」

          ポン

        「本当にありがとう」

和装の肩に軽く手を置き、正面から目を見て笑い掛ける。
それから、通りの向こう側に視線を移す。
何人か歩いてくるのが見えた。

「お客さんが来るみたいだし、そろそろお暇しようかな」
 お邪魔になっちゃ悪いから」

           スッ

「『これ』はスタッフの皆と一緒に頂く事にするわ」

購入した『葛饅頭』を手にして、屋台から身を引く。

「あぁ、そうそう。
 私の番組は『星見FM放送』でやってるんだけど、
 最近『オープンスタジオ』が出来たの。
 もし時間があったら見学しに来てね」

            クルッ

「それじゃ、また会いましょう――――『鈴元君』」

                パチッ★

別れ際、『名前の呼び方』を変え、少年にウィンクした。
美作は気さくなように見えて、
実際は常に一定の距離を保っている。
自分から距離を縮めるのは珍しい事だった。

729鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2021/08/29(日) 23:26:41
>>728

「あ、え……」

肩に残った手の感覚が熱を持っているように錯覚して。
反応が、遅れる。

「……どうも」

呼び方が変わったことに気づくのは数分後のこと。

730<削除>:<削除>
<削除>

731村田瑛壱『ディズィー・スティック』:2021/09/11(土) 21:58:05
大通りの入り口、『駅前のカフェ』に腰を据えて、人を待つ。
屋外の席で見通しがよく、おれの顔を見逃すということも、おれが待ち人を見逃すという事もないだろう。

 「あ、スイマセぇん。この『生クリームと季節のフルーツパンケーキ』をひとつ・・・」

趣味と実益を兼ねている。

732鉄 夕立『シヴァルリー』&『C・セッション』:2021/09/11(土) 22:11:02
>>731

『チリーン』


「意外だな・・・村田くんは甘いものも好きだったのか」

卒直に言わせてもらうと、村田くんがあまり外食に赴いているイメージはなかった。
人の作ったものよりも自分の作ったものが好きなイメージだった。

「こんにちは、村田くん。ちなみに例の話はどこで聞いたんだ?」

向かいに腰掛け、竹刀袋を下ろして邪魔にならないように椅子に立てかける。
そしてメニューを開きながら、訊ねた。

733村田瑛壱『ディズィー・スティック』:2021/09/11(土) 22:51:34
>>732
 「甘いもんは作るのが大変だからな。
 『パティシエ』の技術には脱帽するほかねえ」

にやりと笑いながら頬をかく。
村田が甘いもの好きなのはあまり知られていない。

 「『例の話』、さわりを聞いたのは『小林』って男からだが
 詳細を聞いたのは・・・『エド・サンズ』からだ。」

734鉄 夕立『シヴァルリー』&『C・セッション』:2021/09/11(土) 23:14:17
>>733

「すみません。『黒蜜きなこ餅』を一つお願いします」

村田くんが食べているのを見て、自分も甘いものが食べたくなってしまった。
オレも結構甘いものは好きな方だと思う。そしてどちらかと言えば、和菓子派だ。

「それには同意する。自分も簡単な料理なら作れるが、甘いものを作ろうとは思えないな」
「量に比べて、村田くんの言う通り手間がかかる。やはり外で頼むか、あるいは買うかの方がいい」

しかし、甘いものに向けられた意識は一旦止まることになる。
村田くんが話を聞いた先に、予想外の単語が来たからだ。

「『エド・サンズ』…?!いや、しかし本体の氷山さんは今動けないはずでは…」

735村田瑛壱『ディズィー・スティック』:2021/09/11(土) 23:28:47
>>734

 「ふむ、そのカオを見るに、本来は『そういうタイプ』じゃないらしいな。」

そう言って一瞬考えるそぶりを見せた後、言葉を続ける。

 「なんでか知らんが、その『エド・サンズ』は今独立して動いている。
 本体が『かき氷』になったことも、お前と『七條』という人間が調査を始めたことも、『一抹』という人間が洗脳されたことも・・・
 すべて憶えている。この街を冬の風物詩・・・『クリスマス』で染めるために、独自の動きをすると言っていた。
 駅前の『掲示板』あるだろ。あそこに一筆書いておけば連絡がとれるように話をつけておいた。」

事前に運ばれてきていたコーヒーをひと口すすり、ひと呼吸おく。

 「おれがお前におしえなきゃならないコトはここまでだ。
 ・・・で、お前はこれからどうするつもりだ?『夏の魔物』・・・どう料理する?」


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