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【個】『烏兎ヶ池神社』【場】

1『星見町案内板』:2019/02/02(土) 00:04:12

             〜ご由緒〜

星見町の『鵺鳴川』沿いに存在する『パワースポット神社』。
インターネットで『S県 パワースポット』と検索してみれば、
まず『20番目』までには間違いなく表示される程度の知名度である。
ご利益は主に旅の安全、学業成就、病気平癒、安産祈願など。

境内池が『霊池』として名高い。神社名も池に由来する(池が先にあったのだ)
霊験の由緒は諸説あり『京で討たれた鵺の一部が、この池にも落ちたのだ』とか、
『転落し、水を飲んだ人間が御利益を得たのだ』といったものが比較的多く見られる。

現在は厳重に柵で囲っており、出入りが許されるのは社家をはじめ関係者のみ。
一般の参拝客に向けては、柵の前までのみを開放している。撮影などは自由。
専用のボトルに詰めての授与(300円)も行っているが、飲用の際は『煮沸』推奨。

社務所では他に御守りや、おみくじ、絵馬、御札、御朱印帳などを頒布しており、
特に『御守り』については半ばアクセサリーのようなデザインの物も多く、
神社(池)の名にちなみ『カラスとウサギ』を戯画化したストラップ型のものが人気。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││  
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
     ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││ #
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
#:『烏兎ヶ池神社』
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249百目鬼小百合『ライトパス』:2020/05/26(火) 04:30:55
>>248

「なるほどね。いやぁ、お蔭様で勉強になったよ」

「言われてみると、自分に合ってるような気がするしねえ。
 もし良さそうなのが見つかったら、報告させて貰うよ」

「学文さん――どうもありがとうねえ」

親しい仲なら砕けた呼び方もするが、まだ知り合ったばかりだ。
あまり馴れ馴れしい態度を取る訳にもいかない。
関係ない事だが、自分に『娘』がいたとしたら、
これくらいの年だったのだろうかと思う。
自分に結婚歴はないし、子供もいない。
我ながら『親不孝』も甚だしいが、『今更』だ。

    ザッ

「さてと……『渇』も入れたし、
 『目当ての品』でも探しに行くとするかね。また来るよ」

「――それじゃあねえ」

                 ザッ ザッ ザッ

片手をひらひらと振って、境内を歩き出す。
『目当ての品』は『二つ』ある。
『アンティークライト』と『犯罪』だ。

250鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/05/26(火) 13:35:50
>>249

「ええ、それじゃあまた、小百合さん。
 いつでもいらしてくださいね。
 ご参拝でも、そうでなくとも」

親子程に歳が離れていても『趣味』は共有出来る。
去る背中に手を振り、しばらくすると、掃除に戻った。

251百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/28(火) 21:45:16

    ザッ ザッ ザッ

白いパンツスーツの女が、ぶらぶらと境内を歩いている。
煙草を咥えているが、火は付いていない。
片手には紙袋を下げていた。

252『烏兎ヶ池神社』:2020/07/29(水) 01:31:01
>>251

未だ湿気の絶えない夏の境内に、
『巫女』の姿は見当たらないようだ。
他の誰か(>>253)は、いるかもしれない――――

253百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/29(水) 18:04:35

「『また今度』にしとくかねえ」

別に急ぐ用事でもない。
踵を返して池に向かう。
この神社の起こりになっている『烏兎ヶ池』だ。

「『鰯の頭』なんて言う気はないけど、
 『神秘的な力が宿ってる』と聞くと、
 それが本当に思えてくるから不思議なもんだ」

「『神秘的な力』ね……」

自分で言ってみて、妙な気分になった。
この池が『スタンドと関わっている』という可能性を考えたのだ。
頭に浮かんだ思い付きを、即座に打ち消す。

「ハ――――そんな訳ないさ」

254三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/30(木) 20:16:15
>>253
   カシャッ
          カシャッ

静謐な雰囲気を纏う『烏兎ヶ池』
その神聖な空気を無造作に引き裂くような『シャッター音』が不規則に響く

音の方向を見ると勤め人風のスーツを着た壮年の男性が目につくだろう
スマホを手に持ち、カメラの角度を変えながら、何度も池の撮影を行っている

「う――――ん・・・・この角度よりもこっちの方が・・・・
 いやいや、この方向の方が『何か出そう』な雰囲気が・・・・・あっ」

      パシャッ


歩きながらカメラの方向を変えていたせいか、百目鬼の姿に気が付かなかったようだ
カメラの向きを変えた拍子に思い切り百目鬼の姿を映す角度で写真を撮ってしまった


「あー・・・・これは失礼しました」


バツの悪そうな顔を浮かべる・・・・

255百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/30(木) 21:12:33
>>254

「ん…………?」

「いやいや、気にしなくってもいいよ」

           ザッ

「ここの巫女さんなら絵になったろうけど、
 こんな年増が写っちまってアタシこそ申し訳ないねえ」

軽く笑いながら男に向き直り、一歩近付く。
本人が言うように、女は三刀屋よりも年嵩だった。
外見から窺える年齢は、四十台の前半か半ば程度だろうか。

「アンタが言うように、確かに『何か出そう』ではあるね。
 『季節柄』って事もある。
 さて、『鬼』が出るか『蛇』が出るか……」

「――ハハ、まぁ『毒蛇』が出ないなら一安心だ」

池を取り囲む林を見回し、冗談交じりに呟く。
ひょっとすると、小さな蛇くらいはいるかもしれない。
少なくとも、今は特に生き物らしき影は見えなかった。

256三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/30(木) 21:37:10
>>255
「いえいえ、僕の方こそ『取材』に夢中になっていて不注意でした、すいません」

と、言いながら、スマホに撮影された百目鬼の写真を見せ、目の前で消す
肖像権を侵害する気はなかったという意思の表れだろうか
ふと、本日撮影したであろう写真がカメラロールの中に見える
同じような『烏兎ヶ池』の写真だが、少しずつ角度を変えながら何枚・・・何十枚と撮られている

ただの観光客というわけではなさそうだ


「ハハハ・・・『毒蛇』とは穏やかじゃない話ですね
 待ってくれ・・・『蛇』・・・・『鬼』・・・・『毒』・・・・いや?」

『毒蛇』という言葉を聞いて一瞬だけ冷っとした表情を浮かべるも
すぐに何かを思い浮かべ考えこむ様子でぶつぶつと呟いている

そして・・・不意に顔を上げると百目鬼に向かってこう言った

「あー・・・・ とても『変な』質問をするようで申し訳ないのですが・・・
 もし・・・・もしも、あなたが『悪い奴』と戦っているとして、
 この池で『何かヤバイもの』が出てくるとしたら・・・・・・・『何が』出てくると思います?」

257百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/30(木) 21:56:27
>>256

「おやおや――――そりゃあ、本当に『妙な質問』だね」

        フッ

「さて、どうだろうねぇ…………。
 『烏兎ヶ池神社』の『大元』を知ってるかい?
 大昔、この池の中に『鵺』が落ちたそうだよ」

水面に視線を落とし、腕を組む。
一見した所、何の変哲もない普通の池だ。
しかし、神社の敷地内に存在する事で、
何かしらの力があるようにも感じられる。

「いつの間にか『不思議な力がある』とかいう話が広まって、
 この神社が出来たって話さ。
 『巫女さん』が見当たらないんで、
 代わりに説明させて貰ったけど、間違ってたらごめんよ」

「――――もしかすると、その『鵺』が出てくるかもしれないねえ」

258三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/30(木) 22:19:56
>>257
「ふむふむ・・・なるほど『ぬえ』がですか
 『鵺』というと・・・確か、京都で帝の御所を飛び回っていた変な生き物、でしたっけ?
 京都はこの町から結構遠いのに、同じネタの『話』があるというのは確かに面白いですね」

百目鬼の視線に従い、池を見る
カメラのシャッター音が消えたことで周囲には静謐な空気が戻っている
この雰囲気なら・・・・確かに『何か』が出てきてもおかしくはない


「いやいや、ありがとうございます
やはり、詳しい方のお話を聞くと違いますね」

「あぁ、突然妙な質問をしてすいません
実は僕は漫画の編集者をやっておりましてね、ネタ探しを兼ねて取材に来たんですよ
いや〜、ハハハ、『敵のボスが出てきそうなヤバイトコロの資料』が欲しいとか急に言われても困りますよねぇ〜」

苦笑を浮かばせながら語る

259百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/30(木) 22:42:50
>>258

「ま、『化け物』の類ってのは色んな場所にいるからね。
 おっと、化け物なんて言っちゃあ、ここの『神様』に失礼か」

「へえ、それで『取材』ね。
 そういう仕事には詳しくないけど、ご苦労さんだねえ」

「――――で、『資料集め』は上手くいきそうかい?
 何なら、アタシを『資料の足し』にしてくれてもいいよ。
 話くらいなら付き合うからさ」

「せっかくだから名乗っとこうか。
 アタシは『小百合』って名前さ。
 『警備』の仕事をやってるよ」

『白百合』を象ったイヤリングが揺れる。
ベリーショートの黒髪に、180cm近い長身。
女っ気が欠片もない姿の中で、
唯一『女らしさ』の垣間見える部分だった。

「ずっと『アンタ』って呼ぶのも何だねぇ……。
 良かったら名前を聞かせて貰えないかい?」

260三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/30(木) 22:59:19
>>259
「僕の名前は『三刀屋(みとや)』と言います
僕としてはどちらかというと『化け物』がいてくれた方が楽なんですけどねぇ・・・ハハハ、なんて」

『化け物』の話に冗談交じりな口調で相槌を打つ

「『警備』のお仕事・・・それはまた大変そうですねぇ
失礼ながら女性の方の場合、危険な事も多いでしょう
いや、しかし・・・・確かにお話を聞かせていただけたら参考になりそうですね」

スマホの画面を操作して『メモ』を開く
白紙のページに一言、『警備』の文字をタイトルとして入れた


「『警備』の仕事をされていて出会った中で、『一番悪い奴』ってどんな人ですか?
・・・・・あッ! も、勿論、言える範囲の中で結構ですから!
聞いたら奴らは問答無用で『ブッ殺していい奴リスト』に入れられるようなやべぇ話は大丈夫ですからね! ・・・ハハ」

261百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/30(木) 23:38:40
>>260

「えらく物騒だね。そういう話の方が『資料』にはなるか。
 そんな大層なネタを提供できるかは保証しないけどねえ」

それから片方の目を閉じ、考える体勢に入る。
今の仕事は、昔のように、
『凶悪な人間』に出会う回数は少ない。
だが、それでも全く機会がない訳でもなかった。

「『悪い奴』――――色々あるけど、
 分かりやすいのは『盗み』だろうね。
 コッソリやるのもいれば、腕尽くで来るのもいる」

「まぁ、『対応』は同じだよ。捕まえて引きずっていくのさ」

「現行犯なら『傷害』や『放火』、
 『器物損壊』なんかがあるかねえ。
 たまに頭のネジが外れた連中もいて、
 面白半分でやってる事もある」

「でもねぇ、本当は『悪事』に『一番』も『二番』もないのさ。
 『ちょっとだけならやっていい』ってもんじゃあないからね」

「ただ、強いて言うなら、『殺し』をする奴が『一番悪い』。
 頭のネジが外れた奴だと、尚更タチが悪い」

「――――もちろん、
 そんなイカれたのは滅多に見ないけどねえ」

262三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/31(金) 00:03:45
>>261
   スッスッス
         スゥ――ッ

「なるほど、やはり『リアルな悪』はそんな感じになりますか」

スマホの画面をなぞりながら文章を打ち込んでいく
貴重な話だ 内容を包括的にまとめていく

「確かに貴重なお話ですが・・・・漫画の敵として考えると少し・・・・小市民的な感じですね
ああ、勿論こういう犯罪を馬鹿にしているわけではないのですけどねぇ
ただ、僕としてはもっとこうエキセントリックな・・・」

図々しい話だな、と自覚はしているが、口から出てしまう
より『面白く』、より『刺激的な』内容を求めてしまう

>「ただ、強いて言うなら、『殺し』をする奴が『一番悪い』。
> 頭のネジが外れた奴だと、尚更タチが悪い」

「へぇ・・・確かによくよく『漫画のネタ』になりますね・・・・その手のサイコ野郎は
 まあ、その辺で見かけるようになっちゃあ治安の終わりですがねぇ・・ハハ
 ちなみに、そんな『イカれた奴』に遭遇した事は・・・・?」

―――さらに一歩、踏み込む。
池の周りはほんとうに静かだ 時折、魚が水面に顔を出す

263百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/31(金) 00:26:03
>>262

「ハハ、そりゃあそうだ。
 世の中まともなのに越した事はないからね」

       カキンッ
              シボッ

おもむろにライターを取り出して親指で蓋を跳ね上げ、
煙草に火を付ける。
あちこちに傷がある年季の入ったライターだ。
口から煙を細く吐き出し、
その行く末をぼんやりと見上げていた。

「ええと……何の話だったかねえ……。
 年を取ると忘れっぽくなるもんでね」

「あぁ、さっき言った通りだよ」

「――――そんなのは『滅多に』見ないさ」

滅多に見ない。
つまり、『見た事がある』という意味だ。
深く語るつもりはないらしく、そこで言葉を区切った。

「おっと……つい無意識に火を付けちまったよ。
 良くないねえ。こんな『神聖な場所』で」

指の間に挟んだ煙草を持ち上げて笑う。
誤魔化そうとしているのかもしれなかった。
さらに突っ込むかどうかは三刀屋次第だが。

264三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/31(金) 00:49:41
>>263

「・・・・えぇ それはまあ、確かに『滅多に』見る事なんてないですね
ハハハ、ちょっと突っ込み過ぎた質問でしたね、忘れてください」

雰囲気の変化を察する
思った以上に『強固』である事を感じ、誤魔化すように笑いを浮かべる
へらへらとした力の抜ける笑いを

「いやしかし・・・・」

指先で四角形に『枠』を作りながら百目鬼を見る


「これはなかなか『画』になる光景ですねぇ
『熟達の戦士が聖なる場所に佇む』ようで・・・・なんというか、そう
 漫画で言えば『師匠枠キャラ』の大物感って感じの・・・そうか!」

何かを、閃いたように目を大きく開ける


「何も強大な『悪』が全てではないか
 主人公の師匠が裏切れば、それだけでかなりショッキングな展開になる
 あー・・・でもマーケティング的には不味いかな・・・・」

265百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/31(金) 01:23:03
>>264

「いやいや、そんなに偉いもんじゃないよ。
 褒めて貰って悪いけどね」

「でも、まぁ『参考』になったんなら良かったよ」

指先で形作られた『枠』越しに、
煙草の先端を三刀屋に向ける。
形式的な謙遜ではない。
決して驕らず常に『謙虚』である事が、
自分にとってのポリシーなのだ。

「ははぁ、漫画の話に関しちゃ素人だけど、
 そりゃあ確かに『ショッキング』ではあるだろうねえ」

頷きながら相槌を打つ。
実際、この手の話は全く分からない世界だ。
そういう意味では、ある種の新鮮さを感じてもいた。

「アタシにも『目標にしている人間』がいたからさ。
 その相手に裏切られた経験がある訳じゃあないけどね」

「いや――――」

「むしろ、アタシの方が『裏切ってる』かもねぇ…………」

266三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/31(金) 17:54:19
>>265
「へぇ・・・『裏切り』・・・・ですか
フィクションの中ではよくある話ですが、リアルでそういうのがあると・・・・
なかなか穏やかじゃあない話ですね」

裏切りの話というのはなかなかに興味をそそる内容だ
本音を言えば根掘り葉掘り聞いてみたい話だが・・・・先ほど『踏み込み過ぎた』ばかりだ


「・・・・・・・。」


一旦、口を閉ざす。
神社の静かな空気に任せ、話してくれるなら聞くという態度を示す
周囲の木々からは次第にカナカナという虫の声が聞こえてきた

267百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/31(金) 19:26:51
>>266

「ハハ――――いや、別に深刻な話じゃあないのさ。
 『目標にしていた人間』っていうのはアタシの『親父』でね。
 七十過ぎの頑固ジジイだよ。
 勿論とっくに引退してるけど、昔は『警官』だったんだ」

柔らかい笑みを浮かべながら、片手をヒラヒラと振る。
言葉に過去形が混じっているが、
既に『故人』という訳でもなかった。
もっとも、年が年なので、
いついなくなったとしても不思議はないが。

「良く言えば正義感の強い、悪く言えば堅物の男でねえ。
 何だかんだでアタシも影響を受けたって訳さ。
 体を張った仕事をしてるのも、そのせいだよ」

父親は、かつて『鬼』と呼ばれた刑事だった。
そして、いつしか自分も『鬼の小百合』と呼ばれていた。
刑事になったばかりの頃は、
古株達から『鬼娘』と呼ばれた事もあった。

「ただ、結局ずうっと『独り身』のままだったからねえ。
 孫の顔も見せてやれないなんて『親不孝な娘』だと、
 この年になってみると感じるんだよ。
 『期待を裏切っちまった』――――ってね」

「ま、『男運』がなかったからね。
 長いこと男所帯の中にいるってのに、
 これっぽっちも男が寄り付きゃしない。
 むしろ避けられたりしてねぇ」

全ては過去の話だ。
今の自分は、民間の警備会社に属する一員でしかない。
『自主的な活動』を行っている事以外は。

「ハハハ、そういう事さ。
 つまんない話をしちまって悪かったね」

268三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/31(金) 20:12:18
>>267
「『警官』のお父さんですか、さぞかし御立派な方だったのでしょうねぇ」

百目鬼の半生を聞き、ぽつりと呟く
面白さの方向性としては、求めていたものとは違うかもしれないが、
それはそれとして、興味を惹かれる内容だ

「それにしても・・・・ハハハ・・・僕自身、身につまされる話ですねぇ
この歳まで独り身でいると、それなりに罪悪感もありますから
ありがとうございます、直接ネタにするわけにはいきませんが、参考になりました」

269百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/31(金) 20:58:02
>>268

「なぁに、三刀屋さんぐらいなら『まだまだ』いけるよ。
 近頃は結婚年齢が上がってるって聞くし、
 胸を張って生きてりゃ、その内いい人が見つかるさ」

「アタシは、もう諦めたけどね。ハハハ」

肩を竦めて笑う。
仕事ばかりしてきて、気付いたら年を食っていた。
『今更』という所だろう。

「さてと、そろそろ引き上げるとするかねぇ。
 三刀屋さん――アンタと話せて楽しかったよ」

「そうそう、アタシの『名刺』でも渡しとこうか。
 何かしらネタの足しにでもなるといいんだけどね」

           スッ

懐から名刺入れを取り出し、その中の一枚を差し出す。
装飾の少ないシンプルな名刺だ。
連絡先と共に、以下のような文面が記載されていた。

    『 大門総合警備保障

            主任指導官

                百目鬼小百合 』

270三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/31(金) 21:28:46
>>269
「お互い、ですよ 百目鬼さん」

顔を合わせて、苦笑いを浮かべる

>「そうそう、アタシの『名刺』でも渡しとこうか。
> 何かしらネタの足しにでもなるといいんだけどね」

「そうですねぇ、また面白い話があれば聞かせてください
 『本物の現場』にいる方の意見というのはやはり貴重ですからね」

百目鬼が取り出した名刺を一瞥し、こちらも名刺入れから一枚を取り出す
エンタメを扱う会社という割には意外なほどにシンプルなデザインだ
一か所だけ、端の方にデフォルメされたキャラの顔が描かれている

中心には三刀屋 路行の名前がフルネームで記載されている

「では、また何かありましたら」


最後に一言、そう言うと三刀屋は神社から離れていった
静かな池のほとりには百目鬼だけが残った

271百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/31(金) 22:15:18
>>270

「ハハハ、お世辞でも嬉しいよ。これでも一応『女』だからさ」

「それじゃ、またねぇ」

三刀屋を見送った後、『烏兎ヶ池』に視線を落とす。
もしかすると、何かがあるのかもしれない。
今はなくとも、昔はあったのかもしれない。

「『鬼』が出るか、『蛇』が出るか――――」

         ザッ

「――――それとも『鵺』でも出るのかねえ」

やがて烏兎ヶ池に背を向け、静かに歩き出す。
その背中越しに、紫煙が緩やかに立ち昇っていた。
『池』は、黙して語らず――――。

272ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/12/21(月) 21:22:23

『烏兎ヶ池』。
烏兎ヶ池神社の敷地内に存在し、
霊験あらたかな『パワースポット』として知られる名高き霊池。
信仰の由来には諸説あり、
多くの人々が『御利益』を求めて訪れている。
謎と神秘に包まれた奇跡の池。
柵で囲われた池の近くに、今『野生のラッコ』がいる事は、
伝承とは何の関係もない。

         ミャー

林の中で、『ラッコ』は柵越しに池を眺めていた。
もしかしたら参拝に来た誰かが目撃するかもしれない。
しないかもしれない。

273ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/12/29(火) 17:08:50
>>272

まもなく、ラッコは姿を消していた。
池の周辺には、『奇妙な足跡』が残されていたらしい。
それと同じ頃、四足の哺乳類らしき影が、
目撃されたとかされていないとか。

274ソラ『ステインド・スカイ』:2021/01/23(土) 12:37:26
丑三つ時の神社、そいつはいた
真っ暗闇の中で光る、深紅の瞳と真っ白な髪の毛の童
その姿はまるで妖怪のようだ

275鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/01/23(土) 17:32:04
>>274

寝付けないので、冷たい夜風を浴びに外に出た。
鳥舟の住居は『社務所』と一体のため、
外に出るといえば、境内に出る事になり、
夜霧の立ち込める中、『それ』を見た。

「わっ」

と思わず情けない声が出た。
丑三つ時の神社に人がいる事自体は、
巫女を長くやっていれば何度かは見たし、
悲鳴を上げるほどではないのだが……

      「ああ!」

少しして、それが『子供』と気付いた。
それは別の種類の焦燥を生む。

「ねえ、きみ……ああ、ええと、どう言うべきだろう。
 もしかして、うちに『お詣り』に来てくれたのかな?」

     「この辺に住んでる子……
       じゃあ、なさそうだけどさ」

目立つ風体は、見覚えは無い。
巫女という職業柄『地元』には詳しい。

「……って、こんな夜中にいきなり話しかけちゃあ、
 ボクってやつは、『不審者さん』だよね。
 ボクはね、ここの『巫女』をしてる人なんだ。
 や、この見た目じゃ信じないかも、しれないけどさ」

対する鳥舟自身も、ほぼ部屋着の格好であり、
普段神社を訪れる者だとしても、見慣れた姿ではないが。

276ソラ『ステインド・スカイ』:2021/01/23(土) 18:10:08
>>275
「おぉ、巫女さんか
 こんな夜中にご苦労だね」

巫女を名乗る鳥舟に謎の労いをする

「散歩がてらに近くに寄ったんでね
 ちょっと参拝に来たのさ
 まぁ、お賽銭は持ってないんだけど…」

何故こんな真夜中に散歩をしていたのかは謎である

277鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/01/23(土) 18:22:03
>>276

「いやあ、巫女である事には。朝も夜もないからね。
 きみこそ……夜遅くによおこそお詣りです。
 お賽銭はね、本当は無くたって別に構わないんだよ。
 『祈り』の気持ちがあるんだったら、それでね」

        ザッ…

「もちろん、あると喜ぶことも、あるんだけどさ」

笑みを浮かべて、少しだけ近寄り、
視線を下げてある程度目を合わせる。

「夜の散歩って、良いよね!
 ボクはね、散歩するなら夜か明け方が好きだよ。
 しん、と静かでさ……考え事がよくまとまるから」

話しかけながら、頭から足の先まで、
改めて観察するが……やはり『子供』だ。
中高生ならまだ『共感』するところはあるが、
この歳の子供の一人歩き、しかも深夜だ。
流石に、内心『警戒』する所はある。

――同じくらい、『謎』に思うところも。

「ボクがきみくらいの歳の時はこんな時間は眠くて、
 とても楽しめなかったけど――きみは大人なんだねえ」

「そんなきみの……ああ、嫌なら言わなくたっていいけど、
 今日のお散歩はさ、お家の人には内緒の冒険なのかな?」

目の前の子供は『家出』という様子も、
発作的な深夜徘徊という様子もない。
むしろ落ち着いている……謎と感じるほどに。

場合によっては『警察』の世話になると思いつつ、話を続ける。

278ソラ『ステインド・スカイ』:2021/01/23(土) 18:39:43
>>277
合わせた童の不気味な赤い目が、じっと鳥舟を見つめる

「うーん、別に内緒ってわけでもないけど…
 出かける時に一々報告したり許可を取ったりもしない
 私は私の思うままに動くだけだからな」

家の者に報告も許可も取らずに出てきたと言う
この子供は自分の思いついた事をすぐに行動に移してしまう無軌道なタイプらしい

「さて、じゃあさくっと参拝でもしてくるか」

そう言うと、賽銭を持たずに賽銭箱の前へと移動する

279鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/01/23(土) 19:10:54
>>278

鳥舟の金色の瞳が細まったのは、
夜霧の中でその赤を見つめるためであり、
また、笑いかけるためでもあった。

「それは――いや、なるほど。
 そうだねぇ、親はすぐ心配をするからさ。
 夜中の散歩をするなら、そうするしかないよね」

放任主義という言葉もあるが、
それにしても奔放すぎる。
勝手に出て来たならまだ良いが、
暴くべきで無い『闇』があるのか?

「案内しようかな、巫女として……
 ほら、なにせ足元も暗いしさ。
 昨日の朝なんかは、水溜りが凍ってたりもして、
 ほんと、転んだりしないようにね、気をつけるんだよ」

後ろをついていく。
参拝のマナーなどを教えるためでも無く、
言葉通り……そして言外の不安から、単に見守るためだ。

(……家まで送っていくべきかな、
 警察を呼んだ方がいいのかな。
 それとも、『家に帰してもいい』のかどうかなんて、
 そんなことまで考え出したら、それこそ答えが出ない)

       (……この子は、どこから来たんだろう?)

280ソラ『ステインド・スカイ』:2021/01/23(土) 19:27:17
>>279
「おっ、ほんとだ、つるつるしてる」

凍結した地面で遊び、滑りながら歩いて行く
こういう所は子供らしいと言うべきなのか
忠告したのに言う事を聞かない愚か者というべきか

そうこうしているうちに賽銭箱につく

ガラガラガラガラ

と鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼
賽銭こそ入れなかったがその動作は意外と丁寧だった

281鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/01/24(日) 00:44:47
>>280

「ああ、やっぱり凍ってる。
 ほんと危ないからさ、気を付けてね。
 明日の朝……や、この後ででも、
 ちゃんと割っとかないと、いけないなあ」

               フゥ ――― ・・・

白い息を吐いて、
滑り歩く子供を後ろから眺める。
転びそうなら、すぐ支えるためだ。

「……」

(――――ああ、『知ってる』んだ。
 ということは、『うち』じゃないにしても、
 どこか……神社によく来てる家の子なのかなァ)

人の参拝に口出しする事は、
それを望まれない限りはないが――
仮に望まれても、この子の参拝作法に指摘するのは難しい。

何を願うのかは分からないが、それを終えるまで静かに待つ。

282ソラ『ステインド・スカイ』:2021/01/24(日) 09:57:25
>>281
「南無妙法蓮華経、南無阿弥陀仏、オン コロコロ センダリマトウギソワカ」

何かおかしい!
神道の神に対してお経を唱えだした
神に祟られても文句は言えない罰当たりな行為だ

「神様、優しい母上に出会わせてくれてサンキュー」

神に対して願いではなく、感謝の祈りを捧げる
祈りとは、神を畏れ敬い、感謝を捧げる事である
神に対して好き勝手に願いを言う事ではない
それにしてもやけにフランクだが
母に出会わせてくれてというのも妙な言い回しだ

283鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/01/24(日) 12:13:48
>>282

「……………………………」

(信心深い家の子……なのかなァ。
 この調子で『聖書』の一節も誦じれそうだ)

鳥舟は、『神』を『信じて』はいない。
尊ぶのは人々の『信仰』という『行い』だ。
この子供が信仰のためにそうしたいなら、
それも、あえて止めはしない……

(とりあえず、家族の仲は良い、ってことみたいだ。
 お父さんに、触れてないのは、気になるけどさ。
 ……『出会う』って言い方も、なんだか普通とは違う。
 ああ、なにか、難しい事情があるのかもしれない)

例え『祈り』がどのようなものでも、
よりどころになれるなら、それはそれで良い。
神を『使う』のは悪いことじゃあない。
……巫女はその手伝いをする仕事であって、
『カウンセリング』をする者とは考えていない。
少なくとも、ここで掘り下げるのは下世話だろう。

「…………」

それにしても、やはり不思議な子供だ。
よく知っているし、分かっているが、不可解さもある。

参拝はもうじき終わるだろう。それまでは待っておく。

284ソラ『ステインド・スカイ』:2021/01/24(日) 12:52:15
>>283
「よーし、参拝終了
 別に信じてもいない神様にお祈りをするっていうのも疲れるな」

ソラも特に神を信じているわけではないらしかった
参拝が終了したソラは、グルりと辺りを見回す

「うーむ、折角神社に来たんだし、何か面白い物は無いかな
 おみくじを引こうにも金が無いしな」

そう言って、面白そうな物を探し探索をし始める
そう言って

285鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/01/24(日) 13:47:44
>>284

境内にはもちろん他の人はいないし、
鳥居や狛犬といった一般的なものはあっても、
ここにしか無いような、珍奇な物は見当たらない。

「んー、社務所自体、この時間は開けてないしねえ。
 後は……きみが楽しんでくれるとしたら、
 そうだね、『池』くらいしか、ないけどさ」

「今は夜だし、それに芯まで染みるくらいに寒いし」

空は真っ暗で、霧が立ち込めていて、
どこか不安になる夜でもあった。
霊池、『烏兎ヶ池』は『見所』だが、
これ以上子供を歩き回らせるのも、怖い。

「こんな時に水辺に行くのは、ちょっとどうだろうね。
 ま、柵はあるけどね、間違えて落ちちゃったら大変だ。
 また、明るい時間にでも見に来たらどうかな?
 なにせ池だからさ、逃げたりはしないんだし」

       「そろそろお家に帰らないかい?
        家の前までは、送ってくけど」

早いうちに帰宅するように促しつつ、後をついていく。

286ソラ『ステインド・スカイ』:2021/01/24(日) 14:12:25
>>285
「そうだなぁ…
 そろそろ眠くなってきたし、今日はもう帰るか…」

とりあえず辺りを見回し、目ぼしい物が見つからず
帰宅を迫られたソラは大人しく帰る事にした

その時、その頭には雲を纏った冠が現れ、その手には杖が握られた

「送迎の提案ありがとう、だがそこまでしてもらわなくて結構だよ」

「なんせ私は」

「『雲魔人』だからな!」

突然、その口から『雲魔人』なる謎単語が飛び出てきた
それと同時に、その妖怪のような少女は人間とは思えないスピードで駆け、神社を去って行った

ターボババァならぬターボ幼女か…

287鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/01/24(日) 23:49:03
>>286

「うんうん、それが良いよ。
 昼間の方が色々見るところも多いしさ。
 実はボクも、今、結構眠かったりするしね」

ちょうど眠気が来てくれた。
後は送迎だけして――――

「いや、夜は何があるか分からないよ。
 遠慮をしなくたって――――え?」

           「……!」

『スタンド』。
そう直感したが、『知らないタイプ』だ。
『2つのヴィジョンがあるタイプ』もあるのか。

「あっ、速い……」

(あれは、ちょっと追いかけられない。
 ああいう『能力』もあるんだ。
 『動きを速くする』――――『雲魔人』って言うんだし、
 きっとそれ以外にも、何かできることがあるんだろう)

           「……じゃあ、ボクは?
            『ヴィルドジャルタ』――」

                 「きみは何が出来るんだい」

霧の夜の中、己の『力』は今だ応えない――――『謎』だけが渦巻く。

288風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/25(木) 17:33:36
夏ならば未だ日も残っていようが、魂さえも凍えるこの時期である。丑三つ時では無くとも、草木は眠りだす時間だろう。
しかし、その様な時間に、道端の雑草にも等しい社会のクズ、風歌鈴音は神社の境内に姿を現した。
見た所、既に社務所も閉まっており、人気と言うものはめっきり無い。パワースポットであろうとも、冬の平日のこの時間帯に訪れるのは、余程頓狂な人間か、風歌の様に明瞭な目的を持った人間だけだろう。

(人気なんぞ欠片もねぇ。時期遅れの初詣だってこの時間にはねぇだろう)

風歌が訪れた目的は、『ダストデビル・ドライヴ』の訓練である。
未だ、風歌はこの才能を使いこなしているとはとても言えない。有り体に言えば、武器を手にした素人なのだ。
学ぶ、必要がある。自分を深く知る為に、そして、これから起こり得る『驚異』に備えるために。遊園地で晒したような醜態を二度とは晒したくなく、再度誰かと組む時に、足手まといにもなりたくなかった。
そして、自らのホームである公園で訓練を行いたくない『事情』があった。

(あの辺は、他の連中もいるからな……)

他のスタンド使いが公園で能力を見せようとも、彼らは『来訪者』であって『居住者』ではない。万が一、何か『奇妙』な光景を見ても、君子危うきに近寄らずの鉄則を貫くだろう。
だが、風歌は『住人』である。生活補助に使うレベルを越えた、『訓練』のレベルで能力を使えば、他の『住人』に感じ取られる可能性もある。
そうなれば、危うい。社会のゴミにもゴミなりのコミュニティはあり、ゴミの群れはゴミ故に異端を嫌う。得体の知れない力を持っているとなれば、間違いなく『今』のままでは済まないだろう。
万が一の、可能性ではある。しかし、命に関わる万が一を怖れない度胸は風歌にはない。
そこで、風歌は他のホームレス達が近寄らず、かつ人気のない場所として日の落ちた神社を選んだ。

(さて、やるかね)

風歌は、手近な木に近づくと、『ダストデビル・ドライヴ』を出し――未だ枝にへばり付いている枯葉に、掌を向けた。

289御影憂『ナハトワハト』:2021/02/26(金) 01:02:03
>>288

見る限り、人影は無い。
『誰もいない』。
そう考えたとしても不思議は無いだろう。

(――――…………?)

人知れず佇む者がいた。
『闇の衣』を身に纏い、見られる事も触れられる事も無い。
『ナハトワハト』の本体である『御影憂』が、そこにいた。

(この前…………見たっけ…………)

少し前に起きた『遊園地』の事件。
そこに居合わせた人間達の中に混じっていた筈だ。
『スタンド使い』なら、『観察』する価値はある。

(…………『人型』)

『不可視の幽体』となって、『ダストデビル・ドライヴ』を見つめる。
『情報収集』の為だ。
ここに来た『当初の目的』とは違うが、悪くは無い。

290風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/26(金) 17:26:56
>>289
風歌は影の視線に気づかず、ただ自らの訓練に集中していた。より厳密に言うならば、枯れ木に残った木の葉に。
そして――『ダストデビル・ドライヴ』の手の穴から、最小範囲(指先サイズ)の風が放たれる。
人を傷つけるには、最大威力でも眼球か耳に撃ち込むでもしなければ足りない威力の突風だが、木にしがみつく木の葉を吹き散らすには十分な威力。枯葉は一瞬で木との永別を果たし、ひらひらと舞い降り始める。
そこから――舞い降りる木の葉目掛け、風歌は更に『ダストデビル・ドライヴ』の風を撃つ、撃ち続ける。

(『ダストデビル・ドライヴ』は思うままに狙えるが……アタシが狙うのが下手だと意味がねえからな)

いわば、風歌が行っているのは射撃訓練である。小さな目標を地面にぶつけずに風に乗せ続ける。
威力精査、命中精度、そして自分の噴射時間限界の感覚的把握を行う為の訓練であった。

291御影憂『ナハトワハト』:2021/02/26(金) 18:47:19
>>290

    スタ スタ スタ スタ スタ

目を細め、風歌に向かって歩いていく。
相手は『未知のスタンド使い』。
普通であれば、無防備に近付くのは、
『トラブルの元』になりかねない。

                   ――――――スルゥッ

御影の体が風歌と重なり、そのまま『すり抜ける』。
『非実体化』した『ナハトワハト』は、
あらゆる物に干渉されない。
比喩や誇張ではなく、絶対的な無敵状態だ。

(手に『穴』…………そこから『風』が出る…………)

(葉っぱを落とさない程度の『速さ』と『精度』もある…………)

『ダストデビル・ドライヴ』の正面に立ち、訓練の様子を眺める。
風歌の眼前には、
『闇色の帽子と外套』に身を包んだ長髪の女がいる。
そして、その存在に気付く者は誰もいない。

(これは『スタンドの練習』…………)

(つまり…………『目覚めたのは最近』…………)

次に目を留めたのは、風歌の外見だった。
『どういう身分か』は分かる。
重要なのは『危険性が無いかどうか』だ。
『円谷世良楽』と共に『遊園地の事件解決』に尽力した一人。
しかし、『万一』が無いとは限らない。

292風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/26(金) 19:14:07

>>291

(よし、こんなもんだろ)

一枚目を地面に落とし――その後、数枚ほどに同様の訓練を続けた風歌は、この訓練の一段落を決めた。
突風を起こす時に感じる『息を吐き続ける』感覚は、実際に息を吐いている訳ではない。
しかし、突風を起こし続ければ、気持ち的に『呼吸が乱れる』感覚に囚われる。
3枚の後半から徐々に狙いが乱れ始め、5枚目にはとうとうろく突風が当たる事なく地面に落ちた。狙い続ける限界は、今の所この辺だろうと風歌は判断。

(鍛えれば鍛えるだけ伸びるのかも知らんが……今は、まず『己を知り』ってやつだ)

そう思いながら、意識的な呼吸を整えた風歌は、次いで『型稽古』を始めた。
『ダストデビル・ドライヴ』にファイティングポーズを構えさせ――握った両拳を突き出す。
否、乱れ撃つ。
人の限界を超えているだろう速度(スB)で、人並の拳(パC)が狙いなどを一切付けずに繰り出される。目の前に『人間』がいたならば、確実に叩きのめせる乱打であろう。
相手の速度と精密性が『風歌を下回っている』、という都合のいい前書きはいるだろうが。

(……あのクソフクロウみたいに『硬い』や『触れない』相手じゃなきゃあ、これを撃ち込める距離まで近づければどうにかなるよな)

自らの『最大火力』を眺めながら、しかし、これだけでは足りないと思う。

(もうひと工夫……)

風歌は、腕を組んで唸り始めた。

293御影憂『ナハトワハト』:2021/02/26(金) 20:10:58
>>292

(…………『スタミナ切れ』?)

口出しも手出しもする事無く、『観察』に徹する。
枯葉の落下。
それを見て、『息切れ』を察した。
具体的な感覚までは分からないが、動きに乱れが生じてきた。
つまり、何度もやってると『キレが鈍る』という事だ。

      ドババババババババババババババ

           (おー…………)

      バババババババババババババババ

          (…………速い速い)

      バババババババババァァァァァッ!!

『ダストデビル・ドライヴ』の両拳が『正面』に――
すなわち、そこに佇む『御影』に叩き込まれた。
的確に放たれる疾風のような乱撃。
無論、『ノーダメージ』だ。
この身を包む『闇の衣』は、
単純なパワーやスピードの一切を『無力化』する。
『硬い』のでは無く『触れられない』。

          (あ…………終わり?)

思案を始めた風歌を見つめる。
『風』を放つ事による遠距離攻撃。
そして、接近戦の火力も十分。
範囲に穴が無く、味方につければ心強いだろう。
逆に言えば、こういう相手は敵に回すと面倒な事になる。
念の為、『弱点』も把握しておきたい所だ。
パッと見では、『風の連射はそれ程でも無い』くらいか。

294風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/26(金) 21:28:15
>>293


(工夫……)

思慮の果て、風歌は一つの答えに至る。
遊園地――かの戦いにおいて、ミゾレに行った思いつき。

(風の勢いを、拳に乗せる――)

その一打を持って、ミゾレの戦闘能力を大きく削いだ事を、忘れていた。
『ダストデビル・ドライヴ』が裏拳を放つ。あの時と同じ様に――風の噴射が乗った裏平手を。
風の唸る音を立てながら、『ダストデビル・ドライヴ』は裏の平手を放つ――そして、握る。風歌は溜息を付く。

(平手のまんまじゃ威力が足りねーし、あん時は上手く言ったが、命中直前に拳を握れるかどうかは、運だな……)

根本的に、欠陥がある。決まれば威力は上がるし、急激な速度変化は、何かの本で読んだ『拍子』の変化をもたらし、命中確率を上げるだろう。しかし、握れなければ、『ダストデビル・ドライヴ』のパワーでは実害は与えられまい。
それでも、ほんの一発、たった一発を叩き込む局面であれば有効だろう。それ以外では、単純に1段階上の速度を求める時か。

(肘はどうだ?)

思いつくままに、風歌は『ダストデビル・ドライヴ』の風噴射を行いながら、肘打ちの所作を行う。
打ち下ろし、バックエルボー、横突き……

(初速の勢いを乗せられる分、不意打ちならこっちの方がいいか……)

本当に地味な試行錯誤を行っていた風歌は、一息を付くと、『ゴミ箱』を探し始める。

295御影憂『ナハトワハト』:2021/02/26(金) 22:09:16
>>294

      ――――ドシュゥッ!!

追い風を受けて放たれる『バックハンド』。
速度を増した一撃は、文字通り風を切った。
『あれ』を不意にやられたら、
相手は意表を突かれるに違いない。

(『いい応用』…………)

裏を返すと、事前に分かっていれば対策を立てられる。
そして御影は、今それを『目撃』した。
もし敵対した場合、最初から織り込んでおく事にしよう。

                  ブォンッ!

             ゴァッ!

      ドバァッ!

(『肘』を使って…………『威力の底上げ』…………?)

挙動を観察して、風歌の『意図』を悟った。
妥当な改善案だ。
加速に加えて、命中時のリターンも大きい。
あの『精度』なら、的確に一点を狙い打つ事も出来るだろう。
欠点があるとすれば、どうしても大振りになる点か。
出は速いが、放った後に隙が生じる。
今後『敵』になった場合は、
『あれ』を外させた直後を狙うのがいいかもしれない。

          (…………何か探してる?)

      スタ スタ スタ

さながら『背後霊』のように、風歌の後ろについていく。
ここまで来たら、とことん付き合おう。
あくまでも『一方的』ではあるが。

296風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/26(金) 22:46:23
>>295
ゴミ箱――それも、各種の分別毎に別れたゴミ箱を見つけた風歌は、周囲の人影を改めて確認する。ない、誰もいない。
これから行う『最後』の訓練は、明らかに視覚的な異常を伴う上に、万が一誰かを巻き込んだら怪我をさせる予定があるからだ。

(よし、と)

風歌は、護身用に持ち歩いている『カップ酒』の空き瓶を地面に置くと、踏み砕く。ミゾレからの報酬で買った踏み抜き防止の鉄板底の靴でなければ、まず足を怪我していただろう。
カップ酒の空き瓶が「破片」になった所で――距離を取ると、残骸を中心に『渦』を起こす。
必然、『地面に落ちたゴミを質量を無視して飛ばす』風に乗った残骸は、渦に乗って土煙と共に巻き登る。厚手の服を着ていれば防ぎきれるだろうが、渦の『中』に巻き込まれていれば、まず『顔』に破片を浴びる事になる。
なんなら、釘とか、画鋲とかを代わりに持ち歩いてもいいのだ。

(地雷にも、不意打ちにも使える……けど、これもやっぱり欠陥があるよな……)

凶器の渦を眺めながら、風歌は悩む。そも『知られて』いたら無意味だし――わざわざ危険物を撒いたら、確実に利用を感づかれる。釘とか画鋲の様な露骨な危険物を持ち歩いて撒いたら、それの武器利用を疑うなというのが難しい。撒いたら、どんな馬鹿でもまずは『浮く』事を疑うだろう。

「もう一手、足んないんだよなぁ」

ぼつり、と呟く声を風歌が漏らすと共に『渦』は止んだ。重力に従って、破片が落ちる。
風歌は丁寧に破片を拾い集めて、カン・ビン入れに地道に捨てた。破片を捨てるのはマナー違反であろうが、放置よりはマシだろう。

「まぁ、ないない言ってもしょうがない……あるもん磨いていくしかねえか」

本日の訓練を終えた風歌は、境内を去り始めた……

(風歌これで帰っちゃうので、干渉がなければ次で終了でお願いします)

297御影憂『ナハトワハト』:2021/02/26(金) 23:10:46
>>296

(へぇ…………)

渦に舞うガラスの散弾を見て、声に出さない感嘆を漏らす。
『リトル・スウィング』を思い出す光景だ。
準備は必要だが、広範囲かつ高威力。
『氷の散弾』程ではないが、十分に切り札として使える。
狭い場所なら、より効果的か。

(『牽制』として使われたら…………厄介)

強力な手札ではあるが、欠点が無い訳ではない。
準備の段階で悟られる可能性があり、
感付かれたら警戒される。
それなら、いっそ『警戒させてしまう』という手もある。
『渦』に意識を向けなければならなくなると、
その分だけ他の注意は疎かにならざるを得ない。
隠すのが困難なら、逆に見せ付ける事で、
動きを制限するのも一つの策だろう。

(『仕事』は完了…………)

      スッ

(ここからは…………『プライベート』の時間…………)

         ドッ 
             ヒュゥゥゥゥゥ――――――ッ!!

風歌に『明瞭な目的』があったのと同様に、
御影にも『目的』があった。
ここを訪れる人間に『恐怖』を与える為だ。
普段は『歓楽街』周辺を『狩場』にしているが、
たまには『趣向』を変えてみようと考えたのだ。
しかし、御影は『悪意の無い人間』は狙わない。
結局『いつもの場所』に戻る事にしたのだった――――。

298百目鬼小百合『ライトパス』:2021/04/13(火) 22:41:51

「さて、来てみたはいいものの…………」

人のいない境内に、一人の女が立っていた。
白いパンツスーツを着た背の高い女だ。
具体的な年齢は分からないが、四十台頃だろうか。
両耳には『白百合のイヤリング』が見える。
煙草を咥えているが、火は点いていない。

「――――『アポ』を取るべきだったかねえ」

呟きと共に、辺りを見渡す。
出掛けているのかどうか知らないが、
『目当ての人物』は見当たらない。
佇む女の足元には、『紙袋』が置かれていた。

299薄島漣『イカルス・ライン』:2021/04/13(火) 23:14:14
参道から鳥居をくぐり、境内に入ってくる一人の男の姿があった。
歳の頃は20代後半から30代前半といったところ。
ラフな服装で、取り立ててセンスがいいとも悪いとも言い難い。
背は高くも低くもなく、太っても?せてもいない。
顔立ちは美形でも不細工でもない。
取り立てて特徴のない中庸な人物……そういう印象の男だった。
ただ、何かを訴えかけるように、生気のないじっとりとした目つきをしていた。

>>298
先客を発見する。
軽く会釈をした。


「……………………。」


周囲を見回す。
神社が彼女以外には無人であることを確認した。


「ええと、この神社の人……じゃないですよね。
休みかぁ……」


薄島は普通に参拝に来たのだが、お守りを買いたかった。
がっかりした気持ちが顔に出てしまう。

300百目鬼小百合『ライトパス』:2021/04/13(火) 23:35:03
>>299

挨拶に応じ、こちらも会釈を返す。

「そう。アンタと同じ参拝客さ」

「見ての通り、今は生憎『ご不在中』みたいだよ。
 休みかどうかは知らないけどねぇ」

       スッ

話しながら、上着のポケットからライターを取り出す。
使い込まれたオイルライター。
『真鍮削り出し』の一品だ。

「アタシは、ちょっとした『用事』があって来たんだけど、
 また出直さなきゃあならないね」

身に着いた『癖』で、それとなく男の全身を観察する。
どうにも妙な雰囲気の男だ。
特におかしな格好をしている訳ではなく、むしろ逆なのだが、
ここまで無味乾燥で没個性的だと、
逆に特徴的だと言えるだろう。
それに、あの目付きだ。
『何がどう』とは言えないが――――。

「アンタはお参りに来たのかい?」

301薄島漣『イカルス・ライン』:2021/04/14(水) 00:03:22
>>300
「ああ……やっぱりそうですか。
お互い災難でしたね……って、お参りするだけなら別に問題ないか。
僕は『お守り』を買いたくて」


恨めしそうに目を細めて、閉まっている授与所を見つめている。


「用事ですか。出直しますか。そうですね、それがいい。
そんな時は出直した方がいい。
そういう時、どっちに行ったらいいかもわからないのに
右往左往して探し回るような無駄は……」


そこまで言って、何かを思い当たったかのように言葉が途切れた。


「いや、これは僕の事か。
それも『夢』の話だ」


独り言のように小さくそう言ってから、言葉を続ける。


「すみません、変な事を言って。
ここのところ『おかしな夢』を見ることが多かったから、
どうにも『道に迷っている』みたいで」

302百目鬼小百合『ライトパス』:2021/04/14(水) 00:22:33
>>301

「あぁ、『お守り』を――そいつは残念だったね」

       カキンッ

おもむろに親指を持ち上げ、ライターの蓋を跳ね上げる。

「――――『夢』ねぇ」

「夢っていうのは願望の現われだとか、
 記憶を整理するためだとか、色んな説があるそうだね」

「まぁ、アタシも詳しい訳じゃないけどさ」

言葉を返しながら、軽く笑う。
『夢』――最近は、あまり見た記憶がない。
年を取ったせいかとも思ったが、おそらくは関係ないだろう。

「ところで、どんな『夢』だったんだい?」

『本来の用事』は空振りだったが、
目の前の男には少しばかり興味が湧いた。

303薄島漣『イカルス・ライン』:2021/04/14(水) 00:53:30
>>302
「仕事で悩んでて。
それで、もう辞めようって辞表……いや退職届か。
届まで書いたんですけど、やめとけって止められて。
それで『商売繁盛』か『出世昇進』のお守りでも買おうかなと」


光のない大きな……『つぶら』と言うには薄気味の悪い、
『動物園の檻の中で鬱屈とする獣』を思わせる目で百目鬼を見た。


「でも、やっぱりいいか。
ここで買えないってことは、そういう事なんでしょう」


ふう、と息を吐く。


「家に帰れないっていう夢ですよ。
通い慣れた道で迷ったり、電車が止まったり、無謀な距離を歩こうとしたり……
今はない、むかし住んでた家に帰ろうとするんですけど。
『夢占い』なんかだと、『あの頃に帰りたい』って意味らしいんですが。
……『むかし住んでた家』って言っても、僕はあちこち転々としてるもんだから、いくつもあって。
どの家か、どんな道を通ってか、何に邪魔されるか……細かいところは違うんですけど、
何度も何度もその筋書きで似たような夢を見るもんだから、何か意味があるのかなって」


「それで……聞いて……」


薄島の顔色が青ざめる。


「……誰に?誰に聞いたんだ?
はて……?」


なにか、混乱しているようだ。

304百目鬼小百合『ライトパス』:2021/04/14(水) 01:13:27
>>303

「なるほど――――」

       ボッ

「『巡り会わせ』って奴か。
 アンタがそう感じるんなら、そうなのかもしれないねぇ」

ライターを点火しながら、男に頷いてみせる。
お守りを買えなかったのは、
単にタイミングが悪かっただけとも言える。
そう思うが、口出しをする気はなかった。

「ははぁ、そりゃあ確かに『変わった夢』だね。
 ま、『夢』は『現実』じゃあない。
 大なり小なり、『不条理な部分』はあるもんだ」

「しかし、そんな夢を見るって事は、
 アンタの心の中に『何か』があるんじゃないかと思うよ」

「もちろん、『それ』が何かは分からないけどさ」

そこで言葉を切り、相手の様子を黙って見つめる。
顔色が変わる様子を前にして、目を細めた。
手の中では、ライターの火が微かに揺れている。

305薄島漣『イカルス・ライン』:2021/04/14(水) 01:34:30
>>304
「人に止められたんで辞めるのはやめましたけれど、
その気になればいつでも辞めていいし、無理に職場で出世しなくても良くなりましてね」


「いつだって、どっちへ進んだらいいもんだかわからないことばっかりですよ、人生。
だから今日の巡り合わせも……『これ』も……『道しるべ』だと思うんです」

そう言って手のひらを見つめ、笑みを浮かべる。




「……すみません、取り乱しました。
誰か、会って話をした人がいるんですが、その人の事がどうにも思い出せなくて……
大事なことだったような気がするんですけど。
それこそ、それは夢の中の出来事だったんでしょうか」


落ち着きを取り戻した。
百目鬼をじっと見て言う。


「突然、変な事を聞いて申し訳ないのですが。
僕が何を言っているのかわからなかったら、忘れてほしいのですが。


…………『ファム・ファタール』という言葉に、聞き覚えはありませんか?」

306百目鬼小百合『ライトパス』:2021/04/14(水) 02:02:02
>>305

「ハハハ、気にしないでいいよ。
 人間、生きてりゃ色々あるもんだ」

    「おっと…………」

          ――――パチン

その時、無意識の内に、
煙草に火を点けようとしていた事に気付いた。
さすがに神社の境内で喫煙するのは行儀が悪い。
ライターの蓋を閉めて火を消し、元通りポケットに収める。

「『夢の中で会った』って事かい?」

「『現実で会った人の夢を見た』っていうんなら、
 何となく分かるけどねぇ」

それから、ゆっくりと首を振った。

「――――『無い』ね。
 少なくとも、アタシは聞いた覚えが無い」

「『会って話をした相手を覚えてない』ってのは、
 アンタの記憶が何かの理由で飛んじまってるか――――」

「もしくはアンタの言うように、
 『夢だった』って事になるんだろうねえ」

307薄島漣『イカルス・ライン』:2021/04/14(水) 02:25:47
>>306
「そうですね。
煙草ですか?僕は平気ですが……あ、神社ですもんね」


そうするなら最初から取り出さなければいいのではと思ったが、口には出さない。
なにかしら咥えていることで禁煙に繋がる、というのを何かで読んだ気もする。


「……そうですか。
声と名前、声からして女性だろうという事しか覚えていません。
覚えていないというよりは、そもそも姿を見ていない、声だけ、だったのかも。
『夢で会った人』なんて、実際に存在するかどうかもわかりませんね……。
知っている人がいたら探せるかもと思いましたが」


「じゃあ、僕はこれで。
話を聞いてくれてありがとうございました。
いい『道しるべ』になりました。『用事』が早く済むといいですね」


別れを言い、来た道へ去る。
その目に少しだけ光が戻ったように見えた。

308百目鬼小百合『ライトパス』:2021/04/14(水) 02:44:14
>>307

実際、火の点いていない煙草を咥えていたのは、
喫煙の欲求を抑えるためだった。
気休めに過ぎないが、それでも無いよりは幾らかマシだ。
『禁煙』するつもりは今の所ないが。

「人生、人それぞれ――――アンタもアタシも色々だ」

「ま…………少しは『足し』になったんなら良かったよ」

「暇があったら、また来なよ。
 アタシは関係者じゃないけど、
 ここの『巫女さん』は聞き上手だからね。
 何かしら役に立つ助言が貰えるかもしれないねぇ」

      「じゃあね」

男を見送ってから、足元に置いてあった紙袋を持ち上げる。

         ザッ

    「――――アタシも『出直す』とするか」

                         ザッ ザッ ザッ

309りん『フューネラル・リース』:2021/05/06(木) 08:06:07
「キボウノハナー」

年齢は10歳程、鈴蘭があしらわれたワンピースを着た少女が、歌を歌いながら神社にやってきた
別に何て事は無い、普通の子供だろう

頭 に 鈴 蘭 が 咲 い て い る

という事を除いては…

310鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/06(木) 10:50:54
>>309

境内には、今日は『巫女』がいた。
左右で長さの違う髪と、金色の瞳が目立つ。

       ザッ―
            ザッ―

境内の掃き掃除をしていると、
その少女の姿が目に入った。
いや、正しく言えば…………

「……?」

(リアル過ぎる気がするんだ、髪飾りにしては――)

その頭に『ついた』鈴蘭のことが目に入った。
とはいえまさか生花ではないだろう。
あれは『毒』があるのだし――

「やあどうも、お嬢さん。今日は『お詣り』ですか?」

           ニコ…

声を掛けた。
いきなり髪飾りに話を触れる事はしない。
珍しくはあるが、参拝客なのは間違いないからだ。

     ……

それと同時に、視線を周囲に巡らせ『保護者』の有無を探す。

311りん『フューネラル・リース』:2021/05/06(木) 11:06:20
>>310
「あーっ、巫女のおねえさんこんにちわー」

鳥舟の声に反応して、そちらに歩み寄りぺこりとお辞儀をする鈴蘭の少女
歩いたり、お辞儀をする度に揺れるそれは

ど う 見 た っ て 本 物

造花にしてはあまりにも精巧過ぎる

「おねえさんの目、金色できれいだねー
 うち、目が綺麗な人ってすきだな〜」

出会ってそうそう、目について褒める奴なんて怖いだろう

>それと同時に、視線を周囲に巡らせ『保護者』の有無を探す。

周囲を見渡し、『保護者』を探す鳥舟だったが、それらしき人物は見当たらない
今、この神社にいるのは鳥舟とりんの二人だけのようだ

「『お詣り』?うーん……
 うち、家族にあげるためにお水買いに来たんだけど
 そうだなぁ、『お詣り』もしていこうかなぁ?」

312鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/06(木) 13:07:37
>>311

「はい、こんにちは。挨拶が出来て偉いねぇ。…………」

(まいったよね。本物にしか見えない。
 ――や、ボクは造花には詳しくないんだ。
 それくらいのクオリティなのかも、しれないし)
  
         ……チラ

(親御さんが『防犯』として付けてあげてるなんて、
 まさか、そんなことも、ないだろうしさ。
 だって毒の花だ。それも、頭にだなんて)

明らかに『本物』だ。鳥舟にも分かった。
だが、そうだとして意図が読めないし、
彼女が平気そうにしてるのも『謎』だ。
保護者に聞く余地も無さそうだし、
それは、『暴くべき』謎なのか?
そうでもない気もする。

「へえ! 家族のために、お使いに来たわけだね。
 良い子だねぇ、階段登るのとか、大変だったでしょ。
 水はこっちで『授与』してるからさ、ついておいで」

(…………子供に『買いに来させる』っていうのは、
 神さまのやつがもし見てると信じてるならさ、
 それは、あんまり良くないんじゃないのかな。
 ボクがこの子にそんな顔をしちゃ、いけないけどさ)

烏兎ヶ池神社はあまり『アクセス』は良くない。
秘境というわけではないが、子供の遊び場には適さない。
見当違いの思いを抱きつつ、『りん』を案内する。

「っと、でもそうだね――お参りをしてくれるなら、
 先にそっちをした方が『荷物にならない』のかな」

「お参りの仕方、知ってるかな。ええと――ああ!
 ボクは『鳥舟 学文(とりふねまーや)』」

     「――きみのお名前も、教えてくれるかい?」

313りん『フューネラル・リース』:2021/05/06(木) 13:32:07
>>312
「う〜ん……そうだねぇ〜
 先にお参りしていこっかな」

まずは参拝を優先する事にしたようだ

「『鳥舟 学文』だね!うち覚えたよ!
 うちはね、『りん』っていうんだ、覚えてくれると嬉しいな」

『りん』とだけ名乗る鈴蘭の子
名字は…?

「お参りの仕方、うち知ってるよ〜っ
 人間の事いっぱい調べたからね!
 二礼二拍一礼……でいいんだよね?」

314鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/06(木) 14:19:07
>>313

「りんちゃんか、綺麗な名前だね。
 教えてくれてありがとう。
 ボクのことは、なんて呼んでくれてもいいからね。
 マーヤさんでも、マー君でも、あやちゃんでもね」

(…………高学年くらいに、見える気がする。
 この歳の子はまだ『名前だけ』言うものなのかな?
 確か、ヨシエちゃんはそうだったけど、
 あの子は多分『低学年』くらいの年だ。
 須磨くんは……や、あの子はちょっと『マセてた』か)

(お使いといい、家庭に、何かあるのかもしれない。
 ……ただ、この子を見るのは今日が初めてだ。
 多分だけど。…………親がうちの氏子さんなら、
 この子もこれまでに連れてきてないとおかしいし、
 ミーハーなだけなら、わざわざウチを選ぶのも変だ。
 ……………っていうのは、悲しい話ではあるけどさ。
 実際、知名度とアクセス的に、もっと『ある』だろう)

自分は小学校高学年くらいの頃にはすでに、
自己紹介で『苗字』も名乗ってた気がする。
――すずらんだけじゃない。何かと『謎』がある。

「そう、正解! りんちゃん、本当に詳しいんだねえ。
 その通り、お参りは『二礼二拍』最後に『一礼』だよ」

(………………人間の事??)

『謎』が、ある。

「りんちゃんみたいな小さい子が知ってくれてるのは、
 ボクとしても、なんだか嬉しくなっちゃうな。
 決まり通りじゃなきゃダメ、ってわけでもないけどさ」

巫女としての言葉を選びながらも、
内心ではこの不思議な少女について、大いに気になる。

「あー……お参りはさ、分かってるなら、ボクは邪魔しない方がいいかな?
 それとも、場所とか、そういうのを案内した方が良かったりするかな?」

315りん『フューネラル・リース』:2021/05/06(木) 14:40:26
>>314
>ボクのことは、なんて呼んでくれてもいいからね。
>マーヤさんでも、マー君でも、あやちゃんでもね」

「あやちゃんって言うの可愛いなぁ〜
 じゃあうち、あやちゃんの事あやちゃんって呼ぶね〜」

あやちゃん、という可愛らしい響きが気に入ったらしい
りんの中では鳥舟の呼び方はあやちゃんで決定した

>「あー……お参りはさ、分かってるなら、ボクは邪魔しない方がいいかな?
>それとも、場所とか、そういうのを案内した方が良かったりするかな?」

「ん〜?別にいても良いよ〜?
 っていうか、うちは人間と一緒にいたいから
 一緒にいて見ててくれると嬉しいなぁ
 うちのやり方間違ってたら、教えてほしいし、また人間の文化を勉強しなおしたいから」

「あっ、そうだ、入れるお賽銭は5円でいいんだよね?」

そう言うとポケットから鈴蘭柄が入ったお財布を取り出して5円玉をあやちゃんに見せつける

316鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/06(木) 16:55:38
>>315

「どうぞどうぞ。
 何回でも呼んでくれていいし、
 いつだって呼んでくれていい」

子供から親しくされるのは嬉しい。

「それにしても勉強熱心だねえ、りんちゃんは! 
 そういう姿勢ってさ、素晴らしいと思うんだよ。
 良いよ、ボクもついてこう。なんでも教えたげるからさ」

(なるほど、この子は『他人』の事を、
 『人間』と呼んでるのかもしれない。
 人間のことを調べた、ッていうのは、
 他の人の参拝を見て勉強した、って意味かな)

             (……本当に?)

頭のすずらんがどうしても目に入る。
神の存在とは別に『スタンドはある』。
つまり『想像の外の存在』は、『ある』。

「ああ、『ご縁がある』、ってね。
 たしかに、五円のお賽銭をする人は多いかな。
 ただ、お賽銭の額なんていくらでも良いんだよ。
 十円だって『遠縁』だから良くないって言われがちだけど、
 『重ね重ねご縁がありますように』とか言うこともあるしさ」

    「だから――――大事なのは、気持ちだよ」

深く頷いて、それから『鳥居』の方に視線を向けた。

「それじゃ、試験じゃないけど――
 とりあえずりんちゃんの思うように、やってみてもらえる?」

317りん『フューネラル・リース』:2021/05/06(木) 18:01:40
>>316
>「だから――――大事なのは、気持ちだよ」

「気持ちかぁ……やっぱりうちは、沢山の人間達とご縁が欲しいから5円を入れるね」

「えぇと、鳥居は真ん中を通っちゃ駄目なんだよね、神様が通るから
 神様っているかどうか分かんないけど……」

神様がいるかどうかなんて事は、観測しようがないため分からない
故にあまり信じてはいないが、人間の慣習という物に倣い、鳥居を端からくぐる

「次は、手を洗えばいいんだよね
 やっぱり、花も洗わなきゃいけないかな?」

第一関門を無事クリア出来たのなら、次は手を洗いに行かなくては
もちろん

                頭 の 花 も だ

318鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/06(木) 20:24:31
>>317

「沢山のご縁――――そうだね。
 その気持ちがあれば、きっと良い方向に進むと思う。
 ボクも、きっとそうなるように、応援してるよ」

「少なくとも、ボクとの縁は結ばれたんだから」

願ったから、ではない。
ここで『願いを言葉にしたから』。
あるいは、願いを叶えるために動いたから。

「その通り、神さまの通り道――って、言われてるね。
 今ここにいるかどうかを確かめる方法はないけど、
 今日は神さまを頼りにしてきたんだから、さ」

その方が、納得を得られる。
納得は多くのことに優先する。
この点で、りんと『あや』のスタンスは、遠くはない。

「ここまでは順調って感じだね、りんちゃん。
 でも――――手水舎で身を清めるのは合ってるけど、
 ちょっとだけ間違ってるかな!」

「花は洗わなくっていいんだよ。
 ボクらだって、頭……髪の毛は、洗わないからさ」

        「清めるのは『手』と『口』。
         それも、ちゃんと柄杓を使ってね」

(……………洗う必要があるってことは、
 その花はやっぱり、きみの体の一部って事なのかな)

内心の疑問は膨らみつつ……
どうあれ、熱心に参拝を進めるりんを指導しつつ見守る。

319りん『フューネラル・リース』:2021/05/06(木) 20:43:56
>>318
「そっかぁ〜、花は洗わなくていいんだ
 何か洗わないと、物凄く失礼な気がしたんだけど
 あやちゃんがそう言うならしなくていいんだよね」

何気にバイオテロを働く寸前だったのだが
あやちゃんが指摘してくれたおかげで未然に防がれた

「まず、えぇと…?左?」
まず、右手で柄杓を持ち、左手を清める
「左の次は、右だよね」
次は左手で、右手を清める
「美味しそうだなぁ…飲んじゃ駄目?」
花の本能で飲もうと水を飲もうとするが、そこはグッと堪えて口を漱ぐだけに留める
最後に柄杓自体を清めて完了だが…

「美味しそうだなぁ……美味しそうだなぁ……」

ダラッと涎を垂らし、非常に名残惜しそうに手水舎を後にする
「やっぱり飲みたいなぁ…」
物凄く未練がましい

そして次は賽銭箱の前だ

320鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/06(木) 21:48:13
>>319

「ここのお水って結構冷たいからさ。
 頭から被ったら、きっと風邪を引いちゃうし、
 そしたらご縁を探しに出かけられないからね。
 左手、右手、それから口――――そう、それだけ。
 冷たくて美味しいかもしれないけど、
 飲んじゃダメだからね。そう! 偉いねえりんちゃん」

手水舎を突破したりんを、本心から称える。
誘惑が想像以上に強いものである事には、
恐るべきバイオテロの兆候と同様に、
当然ながら、気付く事はなかったが……

この年頃の子供がほぼ完璧に作法を熟すのは、
相当に熱心な氏子さんの家の子くらいのものだ。

「おっと……ほら、口の周り。水がついてるからさ。
 これで拭ってから、いよいよ『参拝』だね。
 とは言っても、それのやり方は知ってるみたいだけど」

袖口から手拭いを出して、渡してやる。
よだれだとまでは思っていない。

「終わったら、ちゃんとスーパーで買った、
 人間が飲むためのお水をご馳走したげるからさ。
 手水舎のお水よりそっちの方がきっと、美味しいよ」

        「……」

とはいえ水が飲みたいのは伝わった。
今、だと文字通り水を差すことになるので、
これが終わったら社務所に行って水を汲んで来よう。

321りん『フューネラル・リース』:2021/05/07(金) 09:31:44
>>320
「ありがと〜あやちゃん」

借りた手拭いで涎を拭きとって返すりん
汚い


「えーと、5円玉」
沢山の人間とのご縁がありますように、というゲン担ぎで5円玉を賽銭箱に投入

ガラガラと鈴を鳴らし、二礼二拍手
と、ここまでは良かったが…

「うーん、ねぇあやちゃん、神様にお祈りする時って、何かお願いした方がいいのかな?」

「うち、神様がいるかどうかは分かんないけど、もし神様がいたとして
 こういう時にお願いをするのって何か違うかなーって思うんだ。
 だって、神様も神様の都合があって、人間の願いを何でも叶えてくれる都合の良い存在じゃないでしょ?
 人間がみんな次から次へとお願いしてたら神様も疲れちゃうと思うんだよね…
 それにうち、音のおねえさんに鈴蘭を食べてもらうのは、神様に叶えてもらうより自分の実力で叶えたいんだよね。
 だから……どうすればいい?」

322鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/08(土) 02:33:51
>>321

「良いよ、気にすることじゃあないさ」

手ぬぐいを両手で受け取り、
濡れた面を内に畳み、
袖の中に再びしまう。

           「……」

その後は、参拝を見守っていたが――――

「それ、は」
 
      (いや、ちょっと待った)

「そうだね――――うん、りんちゃんは賢い。
 『お願い』は、絶対しなきゃいけないものじゃあない」

「むしろお願いじゃあなくって、
 『宣言』をする場、って考え方もあるんだよ」

ネットに流れる真偽不明の『神社マナー』だが、
願うだけで叶わないよりは、建設的とも言えた。

―――のだが、それより。

      (すずらんを……食べてもらう……!?)
 
「つまり――――『私はこうなりたい』『こうしたい』
 『そのために頑張る』『だから見守っててください』」

      (それを頑張るのは、その、不味いんじゃないか?
       『音のお姉さん』ってひとは、恨みでも買ってるのか?
       いや……話しからして、そういう風でもない)

「誰かが見てると思うと、
 一人で抱えてるより、きっと気が楽になるし」
 
「それに――――見てるだけなら、神さまもきっと、しんどくないよ」

しんどくなどあるはずがない。何もしないのだから。
だが――――それが夢を支える力になるなら、無意味ではないだろう。

                   (いや……これを、応援していいのかな。
                    止めるべきなンじゃあないのか?
                    頭に花が――――『咲いた』子の言う事、とはいえ)

323りん『フューネラル・リース』:2021/05/08(土) 08:20:47
>>322
「そっか、『宣言』かぁ
 誰かに宣言すればもっと頑張ろうって気になれるもんね
 流石巫女さんだよあやちゃん!」

あやちゃんのアドバイスを聞き、神の前に目を瞑り祈祷を始めるりん

「音のおねえさんに食べてもらえるような、美味しい鈴蘭料理を作るから
 見守っててね、神様」

傍から見るとただの殺害予告にしか聞こえない

最後に深いお辞儀をして終わり
「あやちゃんどうだった?うちのお参り?ちゃんと人間らしく出来てた?」
これにてお参りの全ての工程終了である、採点はいかに?

「あー……そう言えばうち何しに来たんだっけ…?
 あっ、お水買いに来たんだった」

324鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/08(土) 22:36:41
>>323

「――――ふふ、ありがとう。
 きみの役に立ててたら嬉しいよ、りんちゃん」

巫女とは神と民の仲介者だ。
神がいないと仮定しても、
『どこでもないところ』への言葉を、
受け止めてどこかに運ぶものだ。

「…………」

(『害意』じゃあ、ないんだろう。
 でも、だからこそ、悲劇が起きるかもしれない。
 いや、劇なんて言葉には収まらない。
 起きるのは、純粋な『悲痛さ』だ)

「ああ、ええとね――――『完ぺき』!
 ッて、言いたいところなんだけどね、
 りんちゃんが満足したかどうかが一番大事なんだよ」

「でも。少なくとも、マナーとか、順番とか、
 そういうのはバッチリだったから、ね。
 とっても『人間らしかった』。ただ……いや、後にしよう」

問題があるとすれば、
その宣言の内容だろう。

「『お水』の『授与』を、きっとお待ちかねだろうからね。 
 ついでに普通の冷たい水も持ってくるからさ、
 悪いんだけど、あそこでちょっと待っててくれるかい?」

社務所の方を指さして、『りん』が動き始めるのを待っている。

325りん『フューネラル・リース』:2021/05/09(日) 07:51:04
>>324
*神前で音のおねえさんに鈴蘭を食べさせる事を誓い
*りんは決意で満たされた。

「うん、じゃあ先にお金払っちゃうね」

りんはお財布から千円札を3枚取り出しあやちゃんに渡した
10本買うつもりだろうか

「じゃあ、待ってるからね〜」

社務所に移動して座り込み
折り畳み式の鈴蘭柄のエコバックを広げて待っている
結構大きい、10本くらい入るかもしれない

326鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/09(日) 20:03:26
>>325

     バターカップ
奇しくも『有毒の花』絡みの悲劇が起きた作品の構文は、
りんの中に燃え沸る『決意』がマジである事を伺わせる。

「おっと! 10本か、たくさんだね。持って帰れるかな。
 無理そうなら、その分のお金は返すからさ、
 とりあえず……必要な分を持って来るよ」

(……10本も? いや、そういう事はあるけど、
 家族に『あげる』……『あげる』?
 待てよ、その言い回しも、なんだか妙じゃあないか?)

「ちょっとだけそこで座って待っていてね」

内心には疑問が再燃するが、
手際良く札を数えると、
そのまま『社務所』に歩いていく。

    ・・・
        ・・・
            ・・・

少しして、『神社』らしくはない『クーラーバッグ』と、
完全に私物であろうレトロなガラスコップを持って来た。
コップの方には、透き通る水が入っている。

「ここに『10本』、間違いなく入ってるから。
 一応りんちゃんの目でも、見てもらえるかな」

と言いつつ、空いている椅子にクーラーバッグを置く。
なるほど、中身は揃っている。

「あのね、一応だけど……これを『飲む』前には、
 絶対に『沸騰』させてから、飲むようにするんだよ。
 ありがたいお水だけど、外にある池の水だからさ、
 何か変なものが混じってたりすると、良くないし」

        「なにせ」

当然ながら、必要なだけの処理はしているが。
……それから少しだけ間を空け。

「人間の体って、思ってるよりも、弱いものだからさ。
 煮沸したら平気になるものなら、まだいいんだけど」

    「……さっきのお願い事。
     りんちゃんも分かってはいると思うけど、
     鈴蘭の毒は、煮沸じゃあ済まないからね」

『すずらん』の危険性にはやんわりと触れておく事にした。

327りん『フューネラル・リース』:2021/05/09(日) 20:25:08
>>326
「ありがと〜あやちゃん
 いーち、にーい、さーん」

あやちゃんが持って来てくれたお水を、1本1本数えていく
10本全部ある事を確認し、エコバッグに仕舞い込む
「これで鈴蘭茶を淹れたら美味しそうだなぁ〜」

「お水頂きまーす」

コップに入った綺麗な水を、美味しそうにごくごくと飲む少女
そして…

「頭のお花にもあげなきゃねぇ〜」

半分くらい飲んだお水を、頭から被った!!
その姿はまるで、『禊』でもするかのようだ

>絶対に『沸騰』させてから、飲むようにするんだよ

「うん、うちはそうするけど、家族はそれ必要かな…?」

まるで家族には『沸騰』は必要無いかのように言う

>鈴蘭の毒は、煮沸じゃあ済まないからね

「うん……そうなんだよね
 普通の人間は危険だから困ってるんだぁ
 この前も、おじさんがうちの花を触った指舐めちゃって大変な事になっちゃったし
 だから今、普通の人間でも食べられるように無毒な料理を研究してるんだぁ
 うちの家族、大切な人に食べて欲しいし、家族もきっと、人間に美味しく食べてもらったら嬉しいと思うから」

328鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/09(日) 22:38:20
>>327

水は冷たく、味は高級なミネラルウォーターのそれだった。

「わ! ちょっとちょっと、風邪を引いちゃうんじゃあないかな。
 とはいえ――――確かに花には水が必要だ。
 こうなるんだったら、タオルも持ってくれば良かったね」

手ぬぐいで拭える量でもないし、
タオルが手元にあるわけでもない。
何かないかと思っていると――――

(――――『謎』を暴くつもりじゃあなくっても、分かる事もあるんだ)

(花をアクセサリーとして付けてるならこんな事はしない。
 水を『あげる』って言う言い方――――
 今の『水を遣る』行動、それに――――)

「それは、さ」

「…『口から飲むなら』大人の人でも煮沸した方が良いよ。
 何かを清めるとか、水やりに使うとかだったら、
 そのままでも良いとは思うけど、ね」

そう前置きをしてから。

「りんちゃんが『何者』なのかは、ボクには分からないしさ、
 分かったってきっと、正しい事を全部は教えてあげられないんだ。
 でも、きみがちゃんと鈴蘭の事を分かってて、考えてるのは分かったし、
 きみはボクが教えた神社の事を、ちゃんと覚えてくれる子だ」

鈴蘭の毒、彼女の『家族』の毒。
『鈴蘭が家族である理由』は分からないし、
彼女の頭の花にも毒性がある、という恐ろしさや、
今受け取った3千円の出所も、何もかもが分からない存在ではある。

「――――『いい子』ってことさ。だから、きっと心配はいらないんだろうね」

            「願い、叶うようにって。ボクも応援させてもらうよ」

だが、『善性』であり、なおかつ『理性』ある存在だという事は、今の言葉で十分分かった。

329りん『フューネラル・リース』:2021/05/10(月) 09:18:22
>>328
りんは、ポケットから鈴蘭の刺繍が入ったハンカチを取り出して頭を拭いた
あやちゃんは手拭いの類をりんに貸さなくて良かったかもしれない
それで拭いたら手拭いに鈴蘭の毒が付着してしまう可能性もあるだろう

>『口から飲むなら』大人の人でも煮沸した方が良いよ。

「あやちゃんがそう言うなら、そうする事にするね」
正直、りんの家族にとってそれは余計な手間なのだが、
あやちゃんの言う事ならばと、手間を甘んじて受ける事にするりんだった

>願い、叶うようにって。ボクも応援させてもらうよ

「ありがとうあやちゃん!あやちゃんが応援してくれるなら、
 うち絶対作れる気がするよ!もし料理が完成したら、あやちゃんも食べてね!」

鈴蘭食わせるリストにあやちゃんも登録されてしまった!

「お水ご馳走様、凄く美味しかったよ
 また来るから、今度はうちの鈴蘭茶をご馳走してあげるねぇ〜
 じゃあねぇ〜」

そう言うとりんは、10本もの水が入った重そうなバッグを持ち
重そうに引きずりながら神社を後にした

あやちゃんにとって何もかもが『謎』な鈴蘭女は
あやちゃんに鈴蘭料理を食わせるだの鈴蘭茶を飲ませるだのと言っていたが
果たしてあやちゃんの運命やいかに

330鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/10(月) 23:10:18
>>329

「ウン、聞き分けがよくって良い子だよ、本当にさ。
 ――――鈴蘭、もし食べられるようになったら、
 そうだね、その時はご相伴に預からせてほしいな」

彼女なら無理に食べさせたりはしない。
善性を、そして理性を信じたい。
彼女が――――

「それじゃあ、また。いつでもおいで」

――――彼女が、『すずらんの精霊』か何かだとしても。

331飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/11(火) 10:56:39
茶髪を二つに結わえた少女が、制服姿で鳥居をくぐった。
どうやらお詣りに来たらしい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

意外と、遠かった…!
ここがこの街の神社かぁ。

「ふう、とうちゃーく!
 最近変な人によく会うから神頼み…ってね」

みんな見かけが変な人なだけで良い人だったけど、それでもびっくりはするから…。
それに、引っ越してきてまだこのあたりの神様に挨拶してないことに気付いちゃったしね。
えっと、拝殿は……。

332『烏兎ヶ池神社』:2021/05/11(火) 12:47:40
>>331

星見町内には他にもいくつか神社があるが、
中でもこの『烏兎ヶ池神社』は、
いわゆるパワースポット神社として名高い。
故にか、他にもちらほら参拝者は見あたる。
拝殿の位置も、人の流れで分かるだろう。
>>333も、その内の1人かもしれない。

巫女や宮司等は、今は境内には見当たらない。
何か、忙しくしているのかもしれない――――

333宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/11(火) 18:35:35
>>331

    ザッ ザッ ザッ

少女の背後から、一人の男が歩いてきた。
カーキ色の作業服を着た中年の男だ。
両手には革の手袋を嵌めている。

               ――――スッ

男は少女の横を通り過ぎ、
そのまま前方に向かって歩いていく。

334飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/11(火) 19:25:16
>>333

横を通り過ぎていく男の人に目を取られた。
クソ親父くらいの年齢かな?
筋肉質な人だ。クソ親父と比較しちゃいけないくr――

「きゃあ!」

余所見してたからだと思う、気付けば私は石畳の縁に足を引っかけて転んでしまった。
それも、あの男の人にぶつかってしまうような形で。

「ご、ごめんなさい!痛くないですか!?」

335宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/11(火) 20:18:16
>>334

不意に声が聞こえると同時に、体に軽い衝撃を受けた。
その場で立ち止まり、何が起きたかを確認する為に振り返る。
最初に視界に入ったのは、地面に倒れた少女だった。

「いや、俺は平気だ」

次に、自分自身の手を一瞥する。
使い込まれた手袋は綺麗とは言えないが、
俺自身の手よりは恐らくマシだろう。
そのように考えてから、おもむろに片手を伸ばした。

       スッ

「――――大丈夫か」

声を掛けながら、少女が立ち上がる手伝いをする。
本来、この手は人に触れるべきではない手だ。
だが、役立てずに腐られておくよりはいい。

336飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/11(火) 20:43:19
>>335

「あ、ありがとうございます…」

こういう風に人の手を取って立ち上がるの、なんだか恥ずかしいな…。
握った手は大きくて、革の手袋は柔らかかった。よく使い込まれているんだろうね。
革製品って大人の男の人って感じがすごいよね。なんて言うんだっけ? 硬ゆで卵?みたいな。

立ち上がり顔を見上げて、びっくりした。
すっごく大きい!私より40センチくらい違うんじゃない…!?

「…………。
 ご、ごめんなさい。すっごくおっきくてびっくりしてました…!」
「ぶつかっちゃってごめんなさい。
 お兄さんも、参拝ですか?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
飯田の身長は146cm

337宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/11(火) 21:48:15
>>336

「怪我をしなかったなら、それでいい」

少女を立ち上がらせた後、静かに手を離す。

「確かな目的があって来たのとは違う。
 歩いていたら辿り着いただけだ」

しばらく歩き続けていると、
いつの間にか鳥居の前まで来ていた。
自覚している限り、そこに理由らしいものは無い。
あるいは、何か理由があったのかもしれない。
自分自身が、それに気付いていないだけか。
考えてみても、どちらなのかまでは分からなかった。

「だが、来た以上は参拝するのも悪くない」

         ザッ

安全靴の底が石畳を踏み締め、
拝殿の方向に視線を向ける。

「この神社には、前に一度だけ来た事がある。
 その時は『関係者』に案内してもらった」

「――――今はいないようだな」

周囲を軽く見渡すが、そこに『巫女』の姿は無かった。

338飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/11(火) 22:18:05
>>337

「はい、怪我とかはないみたいです。
 ありがとうございます」

ちょっと膝は赤くなってるけど、怪我という怪我はなさそうだった。

「お兄さん、ここに来たことあるんですか?
 私、実ははじめてで…その、もしよかったら一緒に参拝してくれませんか…?」

お兄さんを見上げながらちょっと不安げに話した。
周囲には参拝者がちらほらいるし、たぶん拝殿はあっちの方だってこともわかった。作法もたぶん大丈夫だと思う。
だけど、今までは隣にお母さんがいた。知らない土地の神社に一人でとなると少し不安かもしれない。

一緒の参拝でもよさそうなら拝殿の方向に歩きながら話を進める。

「『関係者』…って、巫女さんですか?
 確かここには巫女さんがいらっしゃるんですよね。どんな方だったんですか?」

地元の神社にはアルバイトの巫女さんが年末にいるくらいでプロの巫女さんなんてみたことない。
どんな人なのか興味があった。

339宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/11(火) 23:00:29
>>338

「別に構わない」

「何かの役に立てるなら、そうする事にしよう」

言葉を返し、拝殿の脇を見やる。

「最初は『向こう』だそうだ。
 信じる心があれば、
 必ずしも細かい手順は重要ではないらしいが、
 決まった手法に則る方が『入りやすい』と聞いた」

         ザッ ザッ ザッ

そう言い置いてから、手水舎へ歩いていく。

「少なくとも、俺の見た限りでは親切な人間だった」

「祈願する内容を考えていなかった時に、
 この神社の『得意分野』を教えてもらった覚えがある。
 『旅の安全』と『病気平癒』という事だ」

「それ以外は――――『金色の目』を持っていたか」

記憶を遡り、『巫女の両目』を思い出す。
見る者によっては、
『神秘的な輝き』と表現する事も出来るだろう。
それが神性に由来するものかどうかは知らないが。

340飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/11(火) 23:19:25
>>339

「ありがとうございます!
 お兄さん、優しい方なんですね、初対面でぶつかっちゃった私にも親切にしてくれて…」

この街の人は優しい人ばかりなのかな。
ちょっと優しすぎてびっくりかも。

「まずはお手水ってことですね」

ついていって柄杓を取る。水が冷たくて気持ちいい。

「『旅の安全』…!
 私、田舎から出てきてるので実質『旅』ですね、もしかしたら得意分野なのかも!」
「『金の目』って神秘的ですね、もしかしたら外国の人だったりするのかな?いつかお話ししてみたいです!」

お手水で清めながらお話しする。
うん、この街で安全に過ごせるようにお祈りしちゃお。あと、いつか巫女さんに会えるように!

「お兄さんはこの街、長いんですか?
 一回だけ来たことあるってことは地元って感じじゃなさそうですよね?
 あ、答えにくかったら全然大丈夫ですから…!」

うーん、詮索のしすぎ…?
伺うように見上げて首を傾げる。

341宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/12(水) 00:08:25
>>340

多くの言葉がそうであるように、
『優しい』という言葉にも幾つかの解釈が存在する。
それが『人を傷付けない』という意味なら、
俺は自分が優しい人間だとは思わない。
だが、それを敢えて口にする必要はないだろう。

「日本人のように見えたが、確かに珍しい色だった。
 言われてみれば外国の血が混じっているのかもしれない」

「どちらにせよ、ここにいたとしたら見間違う事はないだろう」

           スッ

同じように柄杓を手に取り、手順を済ませる。

「長いと言えば長い。
 ただ、しばらく他所で暮らしていた。
 帰ってきたのは最近の事だ」

刑務所で過ごした二十年は長かったとも思えるし、
逆に短かったとも思える。
だが、出たからといって許されるとは考えていない。
許されてはならない。
それが罪の重さというものだ。
生きている限り、償いは永遠に続く。

「街の様子が色々と変わっていた事には驚いた。
 だが、身近な場所でも、
 知らない部分というのは意外に多い」

「例えば、この場所にしても同じ事が言える」

この神社に来たのは、出所した後が始めてだった。
恐らく、それ以前からあったのだろうが、
これまでは縁がなかったのだろう。
案外、そんなものなのかもしれない。

「――――拝殿では『二礼二拍手一礼』だそうだ」

            ザッ

手水舎に背を向け、拝殿に向かって歩き始める。

342飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/12(水) 00:30:49
>>341

「そうなんですね、ハーフさんとかなんでしょうか?
 巫女さん、次来たら会えるといいなぁ…!」

見間違えないくらい特徴的ならきっといつか会えるだろうし、また今度ここに寄ろっと!



お兄さん、話してくれた…ってことは大丈夫な感じだったのかな?
よそってことは『Iターン』とかで違うところから戻ってきたとか?
お兄さんと話してると知りたいことがどんどん増えて、なんだか楽しいかも。

「遠くに行かないと地元なのにわかんないことってありますよね!
 私、最近越してきたんですけど、田舎の風景と重ねて知らないことがたくさん見えて面白いなって」

話しながら拝殿に向かう。
ここは山の姿も、海の有無も、人の優しさも全然地元とは違う。
私が愛人の子だなんて言う人もいないし、困ってたら親切にしてくれる人がいる。優しい街だよね。

「んと、5円玉5円玉…。
 せっかくだから『15円』にしよっと。ここに来たおかげでお兄さんと会えたんですし、『いいご縁』です」

そう言いながらお金を取り出し、お詣りを始める。

343宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/12(水) 01:14:40
>>342

「場合によっては、その逆も有り得る」

「君は田舎から来たと言ったが、故郷に帰った時、
 今まで気付かなかった点に気付く事が出来るかもしれない」

「それの良し悪しは別として、
 視野を広く持つ事は有意義だと言えるだろう」

百円硬貨を取り出して、賽銭箱の中に落とす。
これといって深い意味はなく、
最初に目に付いたというだけの理由だ。
そこまで済ませて、忘れていた事を思い出した。

「ああ――――」

「『祈願の内容』が必要だったな」

以前に来た時は『仕事の成功』を祈願した。
事実、成功はした。
『全治七ヶ月』と引き換えではあったが。

「『病気平癒』――――ではないな」

「多少違うが、『健康』を祈願しておく事にしよう」

今は完治しているものの、少し前までは入院中の身だった。
能力の都合上、『スタンド絡み』の仕事をする場合、
どうしても負傷は避けられない。
だが、あまり入院が長引くと『本業』に差し障りが生じる。
前回の参拝を考えると、
あるいは『御利益』があったのかもしれない。
なかったとしても、
自分自身の決意表明という意味はあるだろう。

344飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/12(水) 01:50:29
>>343

「田舎に帰ったとき、うーん。どうだろ?
 ちょっと帰るときが楽しみになったかもしれません、ありがとうございます」
「視野を広く…できたらいいなって思うんですけど…」

正直、帰ったからといってなにか見つけられる気がしないのは…
まだ経験が足りないからかな、それとも気付きたくないのかな。
わからないけど難しそうに思える…。

「私は…『旅の安全』と『旅先でのご縁』を願います。
 あ、『お兄さんの健康』も…って欲張りすぎですかね?」

 チャリン
   ガラガラガラ
       パンパン

引っ越してきました。ここの神様、よろしくお願いします。
叶いますように!

安全は気をつけるに越したことはないけど、私が足りてないところは神様が叶えてくれると信じて拝殿から離れた。

「ふぅ、一緒に参拝してくれてありがとうございました!
 あ、そうだ!自己紹介してなかったです!
 私、『飯田咲良(イイダサクラ)』っていいます。
 えっと連絡先交換しませんか…?」

制服のポケットからスマホを取り出して聞いてみた。
大人の男の人に、連絡先聞くのってなんだかちょっと恥ずかしい…。
でも神様が繋いでくれたご縁だ。仲良くなれるならなってみたい。

345宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/12(水) 12:57:40
>>344

どんな人間にも、心の奥に何かがある。
彼女の場合は、故郷に起因するものか。
言い淀んだ事から察せられたが、
それを追及する義務も権利もない。

「――――『宗像征爾』だ」

取り出された『スマートフォン』を見下ろす。
この街に戻ってきてから気付いた事は多い。
『これ』も、その一つだ。
最初は何なのかさえ分からなかった。
今は誰でも持っていて、
それを持つ事が半ば当然のように考えられている。

「『それ』は持っている。
 ただ、俺は扱いに慣れていない」

          スッ

「悪いが、君の方で適当に済ませてくれ」

ポケットから出した『スマートフォン』を、
飯田と名乗った少女に差し出す。
ケースや保護フィルムの類は使われておらず、
剥き出しの状態だ。
店員に勧められるままに契約したものの、
今に至るまで使いこなせていない。

346飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/12(水) 13:49:07
>>345

「『宗像』さんですね、登録しちゃいますね」

手渡された『スマートフォン』を操作する。
私の連絡先を『宗像さんのスマホ』に、『宗像』さんの連絡先を『自分のスマホ』に登録して返した。

「登録終わりました。ありがとうございます」

連絡先交換を頼んでおいて、ちょっと言うのも気まずいけど…言っといた方がいいよね…?

「……宗像さん、その、今スマホ貸すと悪いこともできちゃう時代なのでちょっと不用心かもです…。
 もし、スマホの使い方とか、困ったら連絡ください。手伝えることがあればがんばります」
「今日は本当にありがとうございました!
 あの、ぶつかって本当にごめんなさい!」

お礼と謝罪を言って、なにもなければこのまま寮に帰るかな?

347宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/12(水) 14:46:17
>>346

「――――そうなのか」

少し前にも、同じような事をやった覚えがある。
確か『湖畔』の方だったか。
あの時は指摘されなかったが、
同じような事を思われていたのかもしれない。

「今後は注意しよう。
 忠告してくれた事に感謝する」

返却されたスマートフォンを受け取り、一礼する。

「あの程度ならどうという事もないだろうが、
 ぶつからないに越した事はない」

「相手によっては、面倒な状況になる事も無いとは言えない」

「万一そうなった時は手を貸そう」

      ザッ

「俺の『健康』と、君が『街』に馴染める事を――――」

                   ザッ ザッ ザッ

別れの言葉を告げ、背中を向けて境内から立ち去っていく。
実際に『御利益』があるのかどうか。
それは分からないが、あったとしても頼る気はなかった。
参拝は単なる意思表明だ。
今後『次の相手』に出くわした時は、
もっと的確に仕留めなければならない。

348喜古美礼『ビトウィーン・2・エンズ』:2021/05/15(土) 14:30:01
『場所』が環境で決まるというのならば、『時刻』はこの私が決めさせてもらおう。

さまよい歩いて辿り着いたのは『9時01分』。
私は、ここ―――『烏兎々池神社』に居た。
せっぱづまった思いで、神社の由来をしっかり熟読する。
『霊池』があるのか。『お祓い』などはしてもらえるのだろうか。

社務所が空いているのなら何はなくても『お守り』を買っておこう。
『参拝』もしておこうか―――鳥居は端をとおらないといけないんだったか?
私は自分が納得できるまではここに居ようと誓った。


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