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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その2

87小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/06/09(木) 22:22:31
>>86
――私の想像とは……少し違ったようね……。

被っている帽子のつばを片手で少し持ち上げて、意外にも簡単に入ることができそうな鉄柵を見つめ、
うっすらと目を細めて考えを巡らせる。
頑丈な南京錠で施錠された上に、太いチェーンがグルグルと何重にも巻かれ、
屈強な警備員が昼夜問わず目を光らせている。
有菜の話からは、そんな光景をイメージしていたのだ。
そして――ここで一つの疑問が浮かぶ。
相手は徹底した秘匿厳守を方針にしている会社だ。
それなのに、部外者が簡単に敷地内に入れるようになっているのは、いささか妙だ。
果たして、このまま素直に足を踏み入れてもいいものか……。
少しでも不安な要素があるからには、あらかじめ探りを入れておき、
それを取り除いておく必要がある。
自らの考えをまとめると、一人で行くことを提案する有菜に向き直り、それに答える。

  「いえ……。私が先に調べてみるわ。ただし――中には入らずに……ね……。
  そうね……ここで少し待っていてもらえないかしら?車の中に『道具』を置いてきてしまったものだから……」

そう告げて、いったん車の傍らに戻ると、その陰になるように立つ。

     スラァァァァァ―――z____

そして、利き手である左手を軽く握ることで、
『自殺衝動』を持つ自身の精神を象徴する『スーサイド・ライフ』を発現させる。
その刃に視線を落とすと、使い慣れて手に馴染んだ万年筆で『ペン回し』をするかのように、
鮮やかな手つきで回転させ、普段通りのコンディションであることを確認する。

     スパァァァンッ!
             
軽いウォーミングアップが済んだら、まずは『左耳』を根本から一気に削ぎ落とす。

     ザグゥッ! 
            スゥゥゥゥゥ―――z____ッ
                                スパッ

続いて『左目』を抉るように切除し、外科手術のような精密さで摘出する。
わざわざ車の横に移動したのは、いくら出血がないとはいえ少々グロテスクな場面になる『自傷』を、
有菜の前で見せて驚かせてしまうのを控えたためだ。
さらに、帽子を左側に傾けて目深に被り直すことで『左目』と『左耳』を切除した痕跡を隠し、
念のために左の瞼は常に閉じておく。
そして、切り離して自分の側に浮遊させておいた『左耳』と『左目』を右手の中に隠し持ち、
また有菜の下へ戻る。
左手には抜き身の『スーサイド・ライフ』があるが、彼女が一般人ならば見えないだろうし、
スタンド使いだとしたら説明すれば理解してくれるだろうから、特に問題はないだろう。

  「――待っていてくれてありがとう……。『道具』を取ってきたから、今から少し様子を確認してみるわ。
……少し離れていてもらえるかしら?」

一声かけて、彼女に少し下がるように頼む。
離れていれば、仮に『左耳』と『左目』が見えても、それが実物だとは思わないだろう。
有菜が離れたのを確認したら、鉄柵には触れずに、
その隙間から『左耳』と『左目』を低空で浮遊させて送り込む。
こうして切り離されていても、それらの感覚は通常通りに自分に伝わる。
いわば『盗聴機』と『監視カメラ』だ。
最初の5mは浮遊して進ませ、残りの5mは地面に下ろして更に進ませ続け、
射程限界の10mまで到達させたい。
その位置から、『左耳』と『左目』をぐるりと回転させ、周囲の様子を探らせる。
何が見えるのか、あるいは何が聞こえるのか。
もし人の気配がしたなら、そのことを有菜に知らせると共に、
『左耳』と『左目』を目立たない位置に退避させて隠したい。


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