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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その2

549小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/05/28(日) 14:09:41
>>544

自らの心境を吐露するアルキスの言葉に黙って耳を傾ける。
血の滲むような彼の苦悩を思うと、胸が強く締め付けられる。
愛する者を想う気持ちは、痛いほどに理解できるから。

  「……私も、あなたに対して羨望の念を感じていることは否定できません」

  「でも……それでも手を取り合うことはできると思っています」

  「あなたも私も――同じように誰かを想い続けている人間なのですから」

彼は私に嫉妬している。
そして、私は彼に羨望の念を向けている。
それらの感情は動かすことのできない事実として存在する。

私と彼が、お互いに対して複雑な感情を抱いていることは確かだ。
けれど、相手の全てを一つ残らず肯定して生きている人間はいない。
だから、相容れない部分を持つというのは自然なこと。

それは、必ずしも同じ世界で生きられない理由にはならない。
たとえ割り切れない部分があったとしても、互いを尊重しあうことはできる。
少なくとも、私はそう思っている――。

       スッ・・・

おもむろに手を伸ばし、庭にあるラベンダーを一輪摘み取る。
芳しい芳香を放つ紫色の花。
その花穂を茎から外し、掌に乗せて静かに息を吹きかける。

それらは穏やかな微風に乗り、アルキスのいた方向に舞い飛んでいく。
ささやかな花吹雪。
彼に対する自分なりの選別だ。

  「どうか――」

  「――どうか、あなたの心にも救いがありますように」

アルキスの姿は見えなくなっている。
まだこの場にいるのか、それとも既に立ち去ってしまったのか、それは分からない。
けれど、今この瞬間、彼のために真心を込めて祈りを捧げた。


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