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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その2

154『きらきら星を追え!』:2016/07/15(金) 00:41:19
>>153

 貴方、小石川は。最愛の相手の胸に飛び込まんと駆け出した。

これが、ただの幻想であり。もしかすれば今の風景や、その相手すらも
ホログラムのような脆いものかも知れない。
 そう言う、悲しい現実も存在していた可能性はあった。だが、この工場は
この部屋は……『夢を抱くもの』を、裏切る事はないのだ。

 
 ―ガシッ

胸板の中に納まるように、貴方の体は『治生』へ預けられる。すり抜けたりもせず
彼の体は死者のように冷たく作り物めいたものではない。
 長く共に居た貴方ならば実感できる。密着した際に聞こえる鼓動も、その体温も
その背中に回される、泣きたい程に優しい腕の感触も全てリアルで。これがチャチな
幻覚の産物である等と、疑う余地はないだろう。

 夢だろうとマヤカシであろうと構わない。 この時間が永遠に続けばいい。

時間にしては一分も満たなかったかも知れない。だけど、貴方が望むよりも
無常に、貴方を取り巻く時間は貴方の意思に関係なく前に進んでいく。

 「――文子   忘れないで欲しいんだ」

抱きすくめた彼は、貴方の両肩に手を置き、お互いの顔が見えるように
少しだけ密着した体に距離を置いて、そう言葉が紡がれた。
 貴方の目元に流れる涙を、その六本指の人指し指の腹が拭い
ゆっくりと、耳に染み込ませるように声はピアノジャズに交じるように発せられる。

 「僕の言葉を 僕が君と歩んだ道のりを」

「文子   君が覚えてくれる限り、僕はいなくならないよ 決して
目に見えなくても、瞼を閉じれば。すぐ傍に    僕はいるよ」

「君を愛してる   ――文子」

 
 其の言葉と共に、『治生』の体から、淡い白い光の粒子が昇る。
感覚的に、貴方は直感で『終わり』が近いのだと予感した。
 
 足先から、頭のてっぺんまで彼の体を白い優しい光が包み込む。
『Heads or Tails(ヘッズ・オア・テイルズ)』の中、すべても気づけば
白い粒子へと包まれていく。

 あとは、一瞬だった。

 また再び、白い奔流が貴方達を襲い。目を開いた時には
白い何もない壁が貴方を迎え入れる。
 先ほどの邂逅が、ただの短い夢であったように。彼の痕跡も全てない。
……いや。
 貴方は覚えてる。肌と肌をあわせ感じた優しい体温を。目元を拭った
その感触を、覚えている。

 光がすべてを包み込む前に、何もかも知り抜いてるかのように
包み込む微笑みを投げかけた治生の表情を、想いを。


 ……ガチャ。

 ふと、背後から扉を開く音が聞こえた。……この工場で
人間用サイズの扉が開く音は自分の手を除いて聞いた事はない。

第三の人間か、或いは貴方が会いたいと望んだ意中の相手か。
 振り向けば、相対する事だろう。


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