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【過】『武闘列伝』

1『運営者』:2016/01/25(月) 22:25:18
『アリーナ』の過去ログスレッド。

11東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:34:29

(…よう作っとるわ)

倉庫街の一角にあるこの特設ステージを見て、思う。
さながらテレビなどで見る格闘技の舞台のようだ。
思えば小さい頃よりケンカは数え切れないほどしてきたが、こうして
人に見せる為のものとしてやるのは初めてだ。だからと言って緊張はしない。

「・・・・・・・・」

この解説者も言う通り、自分はルーキーであり『挑戦者(The contender)』だ。持てるベストを尽くし、相手を倒すことに集中する。
学ランの袖の中、右腕に巻きつけるようにしてあるロープを握りしめながら、入場しよう。(特に希望するステージギミックはなし)。


入場曲:Royal Crown Revue - The Contender
ttps://www.youtube.com/watch?v=ZwYmIsIkmFc

12 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:36:29
掻き鳴らされるベースビート、けたたましいスウィング、
ロックのリズムを刻むが、ジャズの上品さを根底に秘めている。
――――『The Contender』。ゴキゲンなBGMと共に、『東雲』は入場する。


    「身長182cm、九州男児を連想させる精悍な目つき!
     船仕事で鍛えた肉体には、戦士の素質は十分ッ!

     今、未知の大海原へと、一歩を踏み出したッ!」


          「『戦闘経験』は皆無。外見に反して『新雪』のような男。
           雪解けに覗ける景色は果たして、荒野か野原か花園か――――」


解説席から飛び出す言葉からは、ルーキーの『東雲』をアピールする苦心が伺える。
煙の途切れた位置で足を留める。ここで後入場者を待つ形らしい。


   「さあ、『選手入場』です!
    青コーナー、『尾藤一騎』ィ!」    「出てこいやぁ!」


             ブシュゥゥゥゥ――――z______


『スモーク』の道を割って現れたのは、三日前に顔を合わせた『尾藤』その人。
格好も同じだが、けったいなギターケースの代わりに『日本刀』を帯刀している。
流れるようなラップのリズムさえ何処吹く風、泰然と歩を進めていく。


入場曲:Diggy-Mo 『サムライズム』
ttps://www.youtube.com/watch?v=9V_C3aDZr8g


      「かの『宮本武蔵』も『五輪書』への記載を拒んだとされる、
       実践式剣術、『尾藤真正流』の継承者!

       刀は未だ抜かずッ  悠然と『ルーキー』を見定めます――――」

             「室内を想定した『居合』か、
              『刀』より鋭い『殺気』がまた『心地好い』――――」


照明が戻り、互いに顔を合わせる。その距離、『3m』。


       「おおおおおおおおおお!!!!!!!!」


           「尾藤ィー!」          「サムラァーイ!」


                 「ルーキー、やれぇぇ!!!」


      「ギミックを用意しなかったのか、アホが。
       お前が俺に勝つには、『小細工』以外に無いだろうにな」


              「さぁ、両者やる気十分!
               ノーレフェリー、時間制限なし!
               いざっ、尋常に――――」

                                   「――――『勝負』」


観客達の歓声が響き渡り、『尾藤』の挑発もそれに交じる。
『森田』の実況、『山本』の静かな言葉が試合の開始を告げる。


                       カァァァァ――――z_____ン!!



             『  G   O  N  G  !  !  』

13東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:38:36
>   「さあ、『選手入場』です!
>    青コーナー、『尾藤一騎』ィ!」    「出てこいやぁ!」


>             ブシュゥゥゥゥ――――z______


あのギターケースの中に入っていた奴の得物は、日本刀か。
最悪の想定として軽機関銃などを考えていたが、少なくとも軍人ではないということか。
もっともこれだけの近距離で開始するなら、同じ手練れなら
大型の銃器よりも、日本刀の方が警戒すべきだろう。

しかし実況の通りの『居合』であるなら、必然的に片腕での斬撃となる。
力より速度で勝負するスタンドということか?
試合前の今の内に軽く周囲を眺め、尾藤が設置しさせたと思われるギミックがあるか確かめる。

>      「ギミックを用意しなかったのか、アホが。
>       お前が俺に勝つには、『小細工』以外に無いだろうにな」

「・・・・・」

最初から見える小細工を弄して、それに拘泥しあまつさえ敵に利用されることを恐れた。
『ルーキー』たる自分の判断だ、消極的と言われればそれまでだ。
だがまずはこの戦いで、『ザイオン・トレイン』をしっかりと理解する。

>              「さぁ、両者やる気十分!
>               ノーレフェリー、時間制限なし!
>               いざっ、尋常に――――」


                                   「勝負ッ!」


両拳を握りしめ、『ザイオン・トレイン』を発現。即座に能力を発動し、自身を『噴塩化』させる。
敵に対し半身の姿勢で、まずは待つ。このまま両拳と両足を『岩塩』で武装させたいところだが、
尾藤が攻めてくればそうはいくまい。敵が自ら踏み込んでくるタイプなのか、
それとも射程に入ってくるのを誘うタイプなのか、調べる。
すぐ攻めてくるのならば、またそれに応じて策はある。

14 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:39:15
周囲を確認するが、特殊な『ギミック』は存在しない。
実況も触れていない以上、何処かに『隠れている』こともないようだ。


           シュォォォォ.....


              「『東雲』選手、スタンドを発現しました。
               身に纏うスタンドではありますが、
               更に何かを『纏っている』様子です」


『ザイオン・トレイン』を身に纏い、その身に『岩塩』を吹き出していく。
そのスピードは『秒速5ミリ』、『岩塩』に変えて『武装』するには、
肉体と同程度の『厚さ』にまで『堆積』させなければならない。

しかし、『掌』や『足裏』であれば『数秒』程度で覆い尽くせる。
その間に『尾藤』の動きを待つ。『尾藤』は未だ、刀を抜か――――


       シュラッ

             「おっと、『尾藤』選手」


                     「『刀』を抜いたァァァ〜〜〜〜〜ッッ!!!」



                              スゥゥゥ――――


片手で刀を抜き放った瞬間、『尾藤』の姿は『消える』。
一拍遅れ、パネル床を踏む音と共に、風切り音が響き渡る。

                                         ビュオッ!


            「き、消えたァァァ〜〜〜〜〜ッッ!!

             『尾藤』選手、『刀』と共に姿を消したァ!」


∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□?□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□東□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

□:闘技場内。床はコンクリートで、タイルの大きさは1x1m。
■:『2m』の高さの壁。その上は『金網』が張られ、会場と観客席を隔てる。
∴:観客席。会場を見下ろす形となる。
?:尾藤がいたであろう場所。

15東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:40:22

ーーー刀を抜いた。つまりは仕掛けるということだ。
じっと尾藤の挙動に注目し、間合いを詰めてくるのに備え、迎撃を目論んだ瞬間。



>            「き、消えたァァァ〜〜〜〜〜ッッ!!


               「なっ・・・ッ?!」

これでは動作を注視するどころではない。本体のみならず、刀まで消えている。
これがヤツの『スタンド』か。
惚けている余裕はない、この床に踏み込む音、そして風切り音。既に攻撃は迫っている可能性が高い。

よっていまだ『岩塩化』していない両腕、それを利用する。
両手両足を即座に武装することは諦め、俊敏な動きでバックステップ。
同時に両腕を振り上げ、少しばかり積もった『塩』を前方に振りまく。
ただの目潰しの効果だけでなく、パラパラと砂のようなそれを当てることで、
尾藤は確かにそこにいるかどうか確認できるはずだ。なお自身の『噴塩』は継続する。

16 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:40:46
『東雲』は両腕を即座に振り上げながら、バックステップを行う。


                   ゴガァッ!


『1m』ほど背後に飛び退いたが、その腕に確かな衝撃が伝わった。
これは『鞘』だ。投擲された『鞘』が両腕に命中し、『東雲』の両腕が痺れる。


    「『命中』ッ!  ファーストヒットは、『尾藤』選手が奪いました。
     鞘です! 鉄拵えの鞘を投擲しました、これは痛そうだッ!」


           「あッ、『尾藤』選手が姿を現しました。
            抜身の『刀』を手にし、『東雲』選手へ襲い掛かるゥゥ〜〜〜〜ッッ!!」



                ビュォォオオオ!!


『東雲』の視界の端に、横薙ぎに『刀』を振るう『尾藤』の姿が見える。
狙いは『脛』。確実に機動力を奪おうと―――――


                      フゥゥッ


またしても『消える』。
敵影を目指できないまま、『風切り音』だけが確実に迫るッ
『塩』のソナーもまるで無意味だ。ほんの数振りでは『乏しすぎる』。

17東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:41:14

>                   ゴガァッ!

「ぐうっ…?!」

繰り出されたのは刃ではなく、投擲された鞘。いきなり初撃に賭けるのではなく、
まずは牽制として腕を潰す。鞘にこんな使い方があったとは。
実戦式剣術というのは、伊達ではないようだ。

そして本命の二の振り。狙いは脛。
姿の見えない相手に対して機動力を削られるのは非常にマズい。
逆に距離を詰めて威力を殺すリスキーな選択もあるが、危険過ぎる。
腕も使えない以上、ここは回避に全力を注ぐ。

尾藤が現れ、刀を振った側とは反対の斜め後ろへ、転がるように回避したい。
今度はただ後ろに下がるでは逃げ切れず、食らってしまう恐れがある。
それに上方向への跳躍を加え、斬撃を上手く飛び越えられれば上々だ。
できることなら背中側に手をついて転倒を防ぎたいが、腕が痺れてうまくいかない可能性もある。
その場合は、文字通り背中から着地し、床を転がって距離を取る。

少なくとも、尾藤は消え続けたまま攻撃はできないようだ。それなら打開策はあるはずだ。

18 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:41:34

         バッ

                   ズザザザザザァァァ―――z____


      「『東雲』選手、危うく回避ィ!
       受け身を取りながら距離を保つゥ!」


壁際に埋め込まれた『スピーカー』から実況の声が響く。
『尾藤』の姿こそ見えないが、斬撃の回避には成功した。
床上をゴロゴロと転がる。全身に衝撃を散らし、辛うじて『怪我』だけはない。


          スゥゥ...
                         「地べたを這いつくばるか、『東雲』ェ!」

刀を構えたまま、姿を現した『尾藤』が吠える。
その刀身は『鏡面仕上』のように、曇り一つない。
刀匠の『執念』さえ伺える作りこみだ。


           「あ、あの刀は!?
            『鏡面仕上げ』です! 互いの顔がピッタリ映り込んでいます!
            実戦に耐え得るだけの『名刀』と思われますが、
            これは後々の加工でしょうか!? 何を思ってこんな作りにしたか!?
            やはり、『新潟』の職人が一生懸命磨き上げたのでしょうか!?」


           「『研鑽』を重ねた『人生』が『鑑』と称えられるように、
            『生涯』を費やした『傑作』もまた、『美しい』――――」


地面の上を這う視線、『東雲』の視界には『床板』に繰り抜かれた『穴』、
『一円玉』程度のサイズの穴にピッタリと設置された『ノズル』が映る。
これは『スモーク』を噴出させる『ギミック』だ。


                    フゥゥ...


またしても『尾藤』の姿が消える。

       


∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□尾□□□□■∴
∴■□□□□□◎□□□□□■∴
∴■□□□□□□\□□□□■∴
∴∴■□□□□□□東□□■∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

19 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:43:29
143: 東雲 忍『ザイオン・トレイン』 :2015/06/07(日) 23:34:21
>>142 質問

・鞘を受け止め痺れた腕は、現在どれほど回復したでしょうか?
・スモークの『ギミック』を起動させるスイッチは、ステージ内に設置されているでしょうか?

144: 『尾藤ブラック』 :2015/06/07(日) 23:37:18
>>143
>・鞘を受け止め痺れた腕は、現在どれほど回復したでしょうか?
痺れはまだ残っている。

>・スモークの『ギミック』を起動させるスイッチは、ステージ内に設置されているでしょうか?
ない。

20東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:43:51
>                         「地べたを這いつくばるか、『東雲』ェ!」

「…最後に立つためなら、何度だって膝をつく覚悟じゃ」

尾藤の言葉に返しつつ、立ち上がろうとする。腕が痺れていても、肘までが動けばそれくらいはできるはずだ。
そして、尾藤の携えた日本刀が見えた。まるで『鏡』のように美しい作りだ。

「………」

以前父親が言っていた、物体というのは光が当たるからこそ、目に見えるのだと。
例えばそこに物体があっても、光をねじ曲げられると、まるでないかのように認識してしまうらしい。
『蜃気楼』というのはそういう現象が関係しているらしい。
可能性の一つはそれだ。尾藤はあの刀を使い、光を反射させ自らの姿を隠している。

もしこの過程が事実だとするなら、一つ問題が生じる。
というのも、尾藤が自らの目に入るはずの光も反射させてしまっているのなら、
消えている最中は、敵はおろか全ての視覚に依存する情報を失ってしまうということだ。
適宜『透明化』を解除する理由として、敵の位置を確認するためとするなら、筋は通る。

が、あくまで予想であり、ここまで決め付けるのはまだ早い。
仮にAが事実だとしても、Bに繋がるとは限らない。それが『スタンド』だ。
いま確かめるべきは、『透明化』にあの刀が関与しているかどうかだろう。
両手はまだ満足には振るえない。この状態で行動を取る必要がある。


まずは人並み外れた膂力で、床を強く踏み抜き、左へとステップで移動。
衝撃による誤作動でスモークが起動すれば御の字だが、そうでなくとも
破壊が起きれば瓦礫や、砂煙が生じるはずだ。それに期待したい。
また仮に尾藤が直線的に、移動した先へと向かってきたなら、
そのコースはいまだ『噴塩』を続けている自分が転がったルートを通過する。
その際は、こちらへと移動する際に音が聞こえると思われる。

21 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:44:26
透明化の正体を『光学迷彩』の一種と推理する『東雲』。
両腕の『痺れ』を考慮し、まずは距離を取る。


            バスンッ!


地面を思いっきり蹴り飛ばし、『左』へステップ移動。
スモークは発生しない。もしも『誤作動』を狙うのであれば、
埋め込まれた機械を『殴りつける』くらいの『精度』は必要になるだろう。
板上からの衝撃は、流石に『アリーナ』も想定してセッティングをしている。
(『移動』が主体の為、『衝撃』が抜ける『踏抜き』は出来なかった。)


               「おのれェ!」

                    「ちょこまかと!」


透明になったまま、『尾藤』の悪態が聞こえてくる。
どうやら、『東雲』のスピードには追いつけないようだ。
そして、『足音』を消す程の『技術』は備えていないようだ。


                    ダダダダダダッ!


        「姿を消した『尾藤』が迫るッ!
         さぁ、『東雲』はどうするッ!?」


足音が接近してくる。
此方に迫ってくるのは解るが、正確な位置は掴み取れない。

ふと、『東雲』は二つの違和感を覚える。
一つは『尾藤』だ。先ほどの二回と異なり、『透明化』の時間が長い。
ほぼ一瞬だった前回と違い、既に『3秒』以上経過している。

もう一つ。
――――『会場』だ。何処か『トゲトゲしい』雰囲気を覚える。

22東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:44:48

>               「おのれェ!」

>                    「ちょこまかと!」


ーーー見えている。『透明化』中もこちらを認識している。となると、光の屈折によるものではないようだ。
視覚以外の情報に頼っている可能性もあるが、ひとまずその線は外していいだろう。
そして『足音』は聞こえる、塩の仕掛けがなくとも敵の移動は近距離でなければ、察知できる。
距離を詰められてしまえば、走る必要などないため奇襲を受けるだろうが。

そしてこの違和感。もし『透明化』のままでも敵をずっと認識できるなら、
解除の必要はない。にも関わらず尾藤が姿を現したなら、呼吸を整える時間が必要だと考えられる。
しかし、今回は透明化の時間が長い。先ほどとは違う条件がある。

また、このどことなく嫌な雰囲気のする会場。学校で目をつけられ、上級生に呼び出され囲まれた時を思い出す。
あの透明化の仕掛けが会場にあるのか、それとも透明化に限らないスタンドの応用か。

「ちぃとばかし待っとれ!」

反撃の手はずは、両腕が完全に回復してからだ。右袖の中に隠したロープを、
スタンドは通常物質に干渉されないという特性を活かし、腕を振るって先端を少し『ザイオン・トレイン』より出す。
そして円を描くように、左方向へと走り出す。そのまま斜め上へと。
(MAPイメージ的には、左へ三マス移動してから斜め上へと二マス移動するように)。
速度で勝るという利点を使わない手はない。
時間を稼ぎつつ、会場の様子を確認し『違和感』の正体を探りたい。

23 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:56:06
スピードという武器を活かし、フィールドを逃げ回る『東雲』。
姿を現す理由を『インターバルの必須』と推理しながら、
両腕の回復を待って逃げ続ける。


                シュルッ


袖に隠した『ロープ』を取り出し、走り続ける。
会場の様子を確認するが、目立った『変化』が見えない。
――――見えない『変化』が確実に起こりつつある。



           「……おい、どーいうことだよ」


                      「逃げてるだけじゃねぇか」


          「つまんねぇぞルーキー!」


                      「テメェ―、何がサムライだよ!」


          「さっさと殴れやヴォケェ!」



            ガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャア!!!


痺れを切らした観客達が金網を掴んで揺すり始める。
尋常ではない『民度』の低さだ。思わず、実況も驚いたかマイクを取り落とす。


              ガガッ
                        ピィィ――――z____!!


     「か、観客の皆さん! ど、どうか落ち着いてください!

      し、しかし『尾藤』選手! 中々姿を現しません。
      一体どーしたのでしょうか? 『東雲』選手のスピードに恐れを成したか」


ビビった『森田』は実況席で早口を捲し立てる。

                                スゥゥ


            「誰がビビるか、貴様じゃああるまいし。
             我が愛刀、『鏡花水月』も血の花をお望みだ」


                          ガァァ
                                    ピィー!


                      「貴様の死に顔を、この『やいb ピィー!』に映してやるぞ」


                                             フゥゥ...


マイクからの異音が響く中、『尾藤』が消える。
会場のブーイングは止まらない。
罵詈雑言の響き渡る場内、『東雲』が唯一人そこにいる。
痺れは抜けた。……が、殴るべき『敵』の姿はなく、
遠巻きの大衆達に一方的な罵声を浴びせられる。


∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□東□□□尾□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

24東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:56:31

「じゃかあしいのう」

外野はどうでもいい。自分はプロレスラーのように、観客を楽しませに来ているのではない。
あくまで相手に打ち勝つため。そしてそれは相手の尾藤も同じことのはずだ。

(…仕込んどるんか?)

見えない変化を感じさせる場内を見て、思う。
隠すのは、自分の身体やその周りのものに限らないということか?
それを確かめてみよう。

即座に足を止め、左手でロープの端を掴みながら、尾藤がいた方向を確認する。
一気に引き抜き、右手でロープの中ほどを握って頭の上に掲げよう。
そしてあたかもカウボーイの投げ縄のごとく、残りの半分を右手で振り回しながら、『噴塩化』。
先ほどの両手に乗った塩をかけるだけでは探知としては使えなかったが、
約50cmの幅に秒速5mmで積もる『塩』。周囲へ振り回せば相当な範囲と量となるだろう。
これを用いて、敵や仕掛けの位置を確認できるか、否か。

ちなみに止まることで、自身の『岩塩化』も少しずつ、及びロープ残りの半分の『岩塩化』は即座に行われるだろう。

25 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:56:53

               ヒュォンッ

                          ヒュォンッ


ビニールロープを振り回し、『塩』を降らせていく『東雲』。
『尾藤』との距離は『5m』前後。その位置までは『塩』が届かない。
無風の室内では『塩』を届ける術はなく、『東雲』の周囲に『塩』が降り積もるのみ。


         「か、替えのマイク! 早く!」


         ピッ
                   ピィー!


     「『東雲』選手、取り出したロープを振り回すゥ!
      何でしょうか、白い『結晶』が降り積もっています。

      『東雲』選手、ここで『名誉挽回』かァ!?」

                               ガッ
                                       ピィー!


                        「やらせねェよぉ!」


                  バビュォッ!


先ほどの『風切り音』、それを認識したのは遅かった。
振り回す『ロープ』の音に紛れてしまい、マトモに聞き取れなかった。
『尾藤』が足を止めた位置、それは先ほど『東雲』が初撃を受けた場所。


            ―――――バキィッ!


                             『鞘』の落ちていた場所だ。


       「直、撃ィィ〜〜〜〜〜ッッ!!

        アバラのへし折れた音です! クリーンヒットォ!
        これは手痛い一撃です!」


                   「不可視故に、人は恐れる。
                    骨の軋る音に初めて、人は理解する――――」


『塩板』を砕いて威力が減じていたのが幸いした。
『実況』と異なり、『骨』の砕けるほどのダメージは受けていない。
――――だが、『呼吸』は乱れ、『激痛』が駆ける。
膝を着いて崩れ落ちそうになるも、辛うじて堪える。


                    スゥゥッ...


距離『2m』。刀を上段に構えた『尾藤』が姿を現す。
『両足甲』、『左手甲』にのみ、『岩塩武装』が完成する――――

26 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:57:18
151: 東雲 忍『ザイオン・トレイン』 :2015/06/08(月) 23:49:25
>>150 質問

・落ちていた鞘は、いつの間にか透明になりましたか?
 それとも、拾ってすぐさま投げてきましたか?

152: 『尾藤ブラック』 :2015/06/08(月) 23:52:36
>>151

>・落ちていた鞘は、いつの間にか透明になりましたか?
> それとも、拾ってすぐさま投げてきましたか?

見えていないので不明だが、恐らく『後者』と思われる。

153: 東雲 忍『ザイオン・トレイン』 :2015/06/09(火) 00:11:11
>>152 質問

回答感謝します。

・見えていない、というのは周囲や敵の姿を探していたが、
 いつの間にか透明化に気付けなかった、という認識でいいでしょうか?

154: 『尾藤ブラック』 :2015/06/09(火) 00:14:30
>>153

>・見えていない、というのは周囲や敵の姿を探していたが、
> いつの間にか透明化に気付けなかった、という認識でいいでしょうか?


>マイクからの異音が響く中、『尾藤』が消える。
>会場のブーイングは止まらない。

>>148で既に『透明化』している。

155: 東雲 忍『ザイオン・トレイン』 :2015/06/09(火) 00:20:15
>>154 質問

誤解を招く質問で申し訳ありません。

>>140で『鞘』だ、とあったので投擲された鞘は可視化されていると思っていましたが、
 ひょっとして、ずっと『透明化』されていましたか?

156: 『尾藤ブラック』 :2015/06/09(火) 00:23:46
>>155

>・>>140で『鞘』だ、とあったので投擲された鞘は可視化されていると思っていましたが、
> ひょっとして、ずっと『透明化』されていましたか?

別段、床に落ちている段階では『透明化』はされていない。
唯、『尾藤』が手にした瞬間(と思われる)、『透明化』した。

157: 東雲 忍『ザイオン・トレイン』 :2015/06/09(火) 00:34:38
>>150 質問

なるほど、理解しました。最後の質問です。

・『岩板』を砕いた、とありますが、まだロープは健在でしょうか?

158: 『尾藤ブラック』 :2015/06/09(火) 00:38:32
>>157

>・『岩板』を砕いた、とありますが、まだロープは健在でしょうか?

健在。半分は『岩塩棒』と化している。

27東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:57:43

>            ―――――バキィッ!

「〜〜〜〜〜があっ!」

走る激痛を、歯を食いしばって耐える。
『不可視』というのは想像以上に厄介だ。例え行動のタイミングが分かっても、反応が間に合わない。
だが少なくとも見える範囲内の『5m』、特に仕掛けはないようだ。
先ほど(>>146)尾藤は接近するように走ってきたようだが、
しばらく隠れた後、姿を表した時(>>148)はあまり移動していなかった。
その時点で何かをしていたなら、そこの周辺ということになる。
また同じ手を使ったことからしても、遠距離攻撃の手段は極めて少ないはずだ。
刀を投擲しなかったのは、やはり『透明化』が解除されるからか。

現在の彼我の距離、『2m』。姿を現した尾藤。
こちらを仕留めに来ているのか。だが、今ならこちらも敵が射程内に含まれる。
現在手にしている『1m』のロープ、そして腕の長さを含めれば一歩の間合いだ。

「ゥオラァッ!」

右手のロープに対する握りを逆にして、端までスライド。強く握りしめ、
前方に踏み込みつつ尾藤の胴体目掛けて横になぎ払う。
半分の『岩塩化』している部分を敵に叩きつけるのだ。
今までの相手の動作から、膂力も速度もあくまで人間の範疇を超えないことは分かっている。
回避するにせよ、防ぐにせよ、見てから反応するのでは十全とはいくまい。

が、何らかの手段で回避されることも想定しておく。その為に『左手甲』は反撃に備えて構えよう。

28 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:58:19
透明化を解除し、一足飛びに間合いを詰める尾藤。
そのまま刀を振り下ろすが、その表情が変わる。


         ダッ

                「な、何故だ」
                                        l_/
                          「何故、『見えてい』 ク

                                      ボ
                                      ォ /
                                       ・


                  「強・烈ゥゥ〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!

                   硬化した『ロープ』が、『尾藤』選手の脇腹ァ!
                   クリーンヒット! 二遊間を抜ける勢いだァ!」


一瞬にして、浮かべる『焦燥』は『苦悶』へと燃え上がる。
互いに間合いを詰め、縦横に『得物』を振り抜く、刹那。

先制を仕掛けた『尾藤』だが、『ザイオン・トレイン』のスピードは常人を上回る。
何年も何十年も修行をして『剣術』を習得していようと、その速力は『凡人』程度でしかない。
つまり、この一戦においては全くの『無意味』だ。何の『優位』もあるわけがない。
全く当然のように、振るわれた『塩棒』は脇腹を穿ち、真っ二つにへし折れて役割を終える。


                     ドダッ

                                ゴロロロロロロロ―――ーz____


           「無様に転がる『尾藤』選手、しかし刀は離さない!
            ここで離せば勝機はない! 溺れる『尾藤』選手にとっては藁にも等し―――」


                                  スゥゥ...


またしても『消える』。
転がる音が遠ざかりながらも、その姿を確認することは出来ない。
――――『尾藤』の動揺。『何故見えたか』、と問うように嘆いた。
つまり、『ザイオン・トレイン』と違い、『尾藤』の意思一つで『発動』出来る能力ではない……。

∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴■□□□□↑□□□□□□■∴
∴■□□□□|□□□□□□■∴
∴■□□□□?□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□東□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

?:『尾藤』の消えた位置。矢印は直前の軌道から予想される『進行方向』。

29東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:58:36

「・・・まずは一撃っちゅうとこか」

この打ち合いで判明したことは二つ。
やはり尾藤の身体能力は、人間の範疇に収まる。既に尾藤が構えていても、多少の不利ならば速度差で打ち勝てる。
そしてもう一つは、何より重要だ。尾藤は自由自在に消えられるわけではない。
更にに言うと、自身が消えているかどうかは自分では確認できない。
今この何らかの状況に、尾藤が予想外の何かがあったということだ。

刀による初撃(>>140)では、ヤツは攻撃しながら消えていた。刀の攻撃と同時に解除されるわけではない。
他に先ほどと違う環境と言えば、床に大量の塩が散乱していることか。

すぐ側に落ちているであろう、刀の鞘を左手で拾い上げつつ、人間並に速度を落として北側へと向かう。
(イメージとしては、MAP左方向に一つ分移動し、その後上方向に向かう)
速度を落とすことによる狙いは二つ。
一つは、自身の『岩塩化』を進めて装甲を纏う部分を増やすこと。
人間並の速度で動けば、関節を除いた全身が少しずつ『噴塩』した塩が重なっていく。
そしてもう一つは、集中して音に注意したい。床を転がっている以上、立ち上がる時に
何らかの音がする可能性がある。それなら現在の居場所が分かるはずだ。
這った状態で接近してくる可能性もあるが、それはそれで素早い動きが出来ない。
音がしなければ、また塩による探知を使える。





・ちなみに、ロープは『岩板』が砕けた時にその部分は千切れたでしょうか?
 それとも『岩板』は砕けたが、芯のロープはそのままでしょうか?
・スモークのギミックがある範囲は、MAP下側のみでしょうか?

30 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:58:56

      「ウォォォォ―――z_____ッッ!!」


                    ガシャガシャガシャガシャガシャガシャ!!!!


先ほどまで『ブーイング』の嵐だった観客達も、さらっと掌を返して歓声を上げる。
『東雲』の名を叫ぶ声が響く。しかし、その呼声は『東雲』にとって『逆効果』だ。
『実況』の声も相まって、『音』への注意が乱される。微かな物音は掻き消されてしまう。


      「『東雲』選手、一撃を    ザザァ   ヒットォ!
       人外の膂力で振るわれた『棒のようなもの』、- -ザザァ -ーだが威力は十分!
       『尾藤』選手のアバラは確実にへし折れたでしょう! さぁ、もう後がないか!?」


                   「――――否、身一つならば『守護』の配慮は必然。
                    『受身』、『廻受』、『消力』、いずれも『格技』の基礎基本」


ノイズ混じりのスピーカーから、実況が響き渡る。
その声を尻目に刀の鞘を拾い上げ、早歩きで北方向へと向かう。
一歩、二歩、三歩、『首周り』、『両脛〜足首』、『両前腕〜掌』に『岩塩武装』が完成する。



               スゥゥ...


                  「チッ、さっさと『マイク』を換えろッ!
                   雑音が耳障りだろうがッ!」


追い詰められての悪態か、実況席へ怒鳴りながら『尾藤』が姿を現す。
『尾藤』は既に立ち上がり、刀を構えている。大きな『負傷』の形跡はない。
『塩棒』の損壊によって撃力が吸収されたか、体力は『東雲』と同等といったところだ。


           「ここまで俺を追い詰めたのは、お前が初めてだ。
            褒めてやるが、――――ここからは『真髄』を見せてやろう!」


                              「テメェーこれが『初戦』だろうがッ!」


                              「イキってねェでとっとと攻めろや!」


距離にして『1m30cm』、互いの拳の間合い。
状況は身体能力に勝る『東雲』が有利。会場の心象も『東雲』に向いている。
しかし、刀の切っ先を突きつけ、『突き』を放とうとする『尾藤』は、不敵な笑みを浮かべる。


           「俺が、お前の『能力』を『理解』したとしたら、どうする?」


              ペロォ...


口角に舌先を這わせる『尾藤』。そこには『塩粒』が付着している……。



∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴■□□□尾□□□□□■∴∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□東□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

31東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 22:59:19

(こうまで血の気があるんじゃけぇ、格闘技でもやっとったらええじゃろうに)

にわかに騒ぎ立てる観客の声を耳にして、思う。
もっとも、うるさいのは観客だけではなくて実況もだが。
それに関しては尾藤も同じようだ。能力に音が関係しているわけではないと思うが、
やや神経質にがなり立てている。自分の言葉が中断されるのが嫌いなタイプなのかもしれない。

(…っちゅうか、アンタも初戦じゃったんか)

尾藤の構えは『突き』。動作の前モーションを少なくして、速度差を補おうという考えなのか。
しかし今度は『透明化』を使わない。否、使えないのかもしれない。

>           「俺が、お前の『能力』を『理解』したとしたら、どうする?」

「…だとしても、それがどうしたんじゃ」

攻撃を食らった際に、破片の中の塩を文字通り食らったか。
だが、だからといって『ザイオン・トレイン』は簡単に対策が打てる能力ではない。
強いて挙げるなら、『水』だ。塩は水に弱い。しかしそれが分かったからと言って、
極度に不利になるわけではない。能力だけではない、この格闘性能もまた『ザイオン・トレイン』の強さなのだから。

「フッ!」

左を前にした半身になりつつ、左手に握った鞘を振るい、尾藤の刀身、その鍔近くを狙って横から叩く。
鉄製の鞘の重さは、このパワーでカバーできる。スピードの関してはそろそろ『岩塩鎧』による重さが影響してくる頃だが、
全身に纏わない限りはまだ一般人よりは速い動作ができる。
刀を手放せば上々だが、放さずとも衝撃は尾藤の手元に来る。そうすればスキができる。
尾藤がそのまま突いてくるにせよ、刀を引くにせよ、打撃は当てられるはずだ。
尾藤のここに立っている姿が幻覚でもなければ。

32 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:59:37
「そう、これが『鏡花水月』のしんず――――」


                   ベゴォッ!


『突き』を放つ『尾藤』を牽制するように、
『東雲』の振り落とした『鉄鞘』が『尾藤』の『手首』を打ち据えた。
『東雲』の懸念通り、『岩塩武装』を施した肢体の『スピード』は低下しているものの、
それでもまだ常人よりは速い。『予想』しようと、『理解』しようと、『能力差』の前には無力だ。


            「ンガアアアアァァァァァァッッッ!!!!」


                  「最早、『東雲』選手の独壇場!
                   『鬼に金棒』とはまさにこのこと、
                   やはり『鞘』を捨てたのは『死亡フラグ』だァァ〜〜〜ッッ」


              「うおおおおおお!!!!」


                           「東雲!」
                                      「マッスルゥゥゥ――――」


『手甲』によって『握力』こそ減じたせいで、『鉄鞘』の勢いは減じている。
しかし、それでも『尾藤』の左手首をへし折り、絶叫を上げさせるには十分過ぎる。
『尾藤』の突きは『死に体』となり、『東雲』の右側を倒れこむように通り過ぎて行く。


              ゆらぁぁ...


揺れる身体、伸び切った腕、――――『東雲』は『刀身』を無意識に覗き込む。
さながら『湖面』のように嫋やかな『刃筋』、その根本に彫られた『銘』。


              『鏡花水月』


                               「お前、『見たな』」


                    グニャァァァァァァァ......


              「き、消えたァァァ〜〜〜〜〜〜ッッ!!

               『尾藤』、またしてもッ!」


一体、何度目だろうか。『尾藤』は再び姿を消す。
……だが、今度は勝手が違う。


                          シィィ〜〜〜〜ン


『無音』だ。『足音』も、『息遣い』も、『声』も聞こえてこない。
すぐ傍にいるはずの『尾藤』、その『存在』が感じられない――――

33 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 22:59:51
165: 東雲 忍『ザイオン・トレイン』 :2015/06/13(土) 01:13:01
>>164 質問

>>161の下部にある2つの質問に、ご返答頂けるとありがたいです。

166: 『尾藤ブラック』 :2015/06/13(土) 01:16:21
>>165
ごめんなさい。

>・ちなみに、ロープは『岩板』が砕けた時にその部分は千切れたでしょうか?
>それとも『岩板』は砕けたが、芯のロープはそのままでしょうか?

ロープはそのままです。


・スモークのギミックがある範囲は、MAP下側のみでしょうか?

∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
∴∴∴■□□煙□煙□□■∴∴∴
∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴■□□□□煙□煙□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□煙□煙□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□煙□煙□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴∴■□□□煙□煙□□□■∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

この位置。

34東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 23:00:11

「このケンカ、もらったァ!」

小手を放ち、尾藤の手首をへし折った。それでも刀を手放さない敵の姿勢は見事だが。
しかし自分の有利は揺るがない。
尾藤が倒れ込むのなら、自分は『ロープと鞘』を捨ててマウンティングの
体勢で、刀の間合いを潰し一気に勝負を決めるーーー。

が、その前に尾藤の刀、『鏡花水月』の銘を見てしまう。
途端に尾藤の姿のみならず、今まで尾藤の存在を感じさせていたものがなくなっていた。

(より深い術中にハマっちまったっちゅうことか…!)

この状況、足を止めるのはマズい。
先ほど(>>147)で確認した限り、自分の斜め後方に、またスモークのギミックがあったはずだ。
そちらへと飛び退き、『岩塩鎧』の重量をプラスしたパワーで床を踏み抜く。
誤作動を期待したい。自分だけでなく、敵も視界が利かない状態にすることで難を凌ぐ狙いだ。
またギミックが発動しようがしまいが、なるべくまたすぐに飛び退きたい。
発動した場所に止まっていては、煙幕の効果はないからだ。

35 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 23:00:29


               ガボォッ!


                            ブシュゥゥ――――z____ッッ!!


飛び退いた『東雲』は地面を踏抜き、『スモークマシーン』を蹴り壊す。
蓄積された『二酸化炭素』は一気に噴出し、白煙を吹き上げる。


              「東雲ッ  ここで『スモークマシーン』を破壊ッ!」


         「                 」


                  「                   」



               「こ、ここでッ   『尾藤』の勝利宣言だァッ!
                『手首』を折られ、身体能力にも劣る中、
                確かに『ホームラン』のポーズを取ったァ!」


                        「『血染め』の刀を手に、未だ『闘志』は十分ッ!」



           「な、何言ってるんだコイツ」

                                 「でも、でもやるんじゃねェのか?」

実況と観客がどよめいている。
姿が見えず、物音が聞こえないのは『東雲』だけだ。
吹き上がった『スモーク』は二人の間を立つ『煙幕』となる、もう少しの間続きそうだ。


∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□煙□□□□□□■∴
∴■□□□煙煙煙□□□□□■∴
∴■□□□東煙□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□□■∴
∴∴■□□□□□□□□□■∴∴
∴∴∴■□□□□□□□■∴∴∴
∴∴∴∴■■□□□■■∴∴∴∴

36東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 23:00:43

スモークで何とか時間稼ぎはできそうだ。この間に打つ手を考えなくては。
実況や観客の、尾藤の様子を伝える声が聞こえる。

(…わし以外の人間には、声は聞こえとる、姿も見えちょる)

先ほどまでの自分や、実況の人間の進行度を『第一段階』とするなら、
今の自分の、尾藤の姿も見えず音も聞こえない状況は、『第二段階』というわけか。

姿が見えない以上、ここは全身に『岩塩』を纏い刀を通じなくさせるーーーのは悪手。
尾藤が手にしているのは『血染めの刀』、つまりは『水』に濡れている。
やはり『ザイオン・トレイン』の特性は理解されている。
濡れた刀を前にしては、『岩塩鎧』もただのハリボテとなる。

しかし、自分は今に至るまで一度も刀傷を食らっていない。
つまりその血は、尾藤が自傷したものとなる。今回の『秘匿化』が
どこまで尾藤の存在を消してくれるのか?尾藤自身の身体から離れた血液まで消せるのか?
それが否なら、足跡代わりに見つけられる可能性もある。

ひとまず自身の『岩塩』を解除、スピードを得てとっさの対応力を上げる。
そして両手の『ロープと鞘』を『噴塩化』させ、岩塩を纏い次第、地面に叩きつけ破片を前方に撒き散らせる。
例え足音や姿を消せたとしても、そこに存在がある限り、物体をすり抜けることはできない。
破片を避けて回り込むなら、必然的に尾藤の進行は遅くなるはずだ。

37 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 23:00:57
実況、観客にまで姿を見せない状況を『第一段階』、
自らにのみ『感覚』を与えない状況を『第二段階』と位置付ける。


                     ――――バシュンッ


自身の『岩塩武装』を解除し、スピードを向上。
両手の『ロープ』と『鞘』に『岩塩』を纏わせ、周囲に撒き散らす。
――――だが、『スモーク』の吹き出す音、互いを分かつ『白煙』、
床に落ちた『岩塩』の細かな状況を知る術は、『東雲』にはない。



               ブ   シュバッ!


       「         」

                       「           」


       「命中ッ!  血の花が咲く! 鉄の雨が振るッ!

        『尾藤』選手の猛攻に、為す術のない『東雲』選手ッ
        『赤い夢』は終わらないィィィ―――――ッッ!!」


『東雲』の右手首、右太腿が切り裂かれ、『出血』を放つ。
鼻先から『風』を感じる。血の滴が頬に付着する。真正面だ。
最短ルートを突っ走り、『真正面』から『東雲』を切り裂いている。
――――恐ろしい話だ。『痛み』を感じず、『痛覚反射』による回避さえ働かない。

だが、『流血』へと『着目』していた『東雲』の観察眼が活きた。
スモークと混じらぬ『赤色』、床に落ちる『血雫』は数を増している。
大まかな位置は、特定出来る。『真正面』だ。

38東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 23:01:11

(『秘匿化』、ここまでかッ!痛みすら感じさせんとは…!)

煙が消えるまでは慎重に攻めてくるかと思ったが、完全に防御は捨てている。
もはや短期決戦ーーーそれも向こうは勝つつもりだがーーーに決め込んだようだ。
動ける内に、決めてやる。

左手の鞘を即座に捨て、右手のロープを奪い、そのまま『真正面』へと向けて横から振るう。
もし右手にまだ、まともに振れる感覚があればそのまま振るう。
同時にロープを『噴塩化』。このロープは『1秒』あれば『岩塩化』する。
敵に巻き付いた状態で止まった場合だ。ましてや、巻き付いたロープが
一周してロープの一部分に接触すれば、そこで完全に岩塩化して『固定』される。
一部分に血液が流れているくらいならば、捉えるのに支障はない。
また服は『血液』を吸い取って、服から絞り出しでもしない限り解除はされない。
全身に血液を纏っている可能性もあるが、どちらにせよ敵の詳細の位置が分かればいい。

固定されれば逃げようがない、数少ない敵を捉えるチャンスだが、
どちらにせよ手応えがあった時点でロープを握ったまま、そこの位置へと肩からタックルをする。
可能ならば、そのまま刀の間合いを潰して至近距離戦へと持ち込む。

39 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 23:01:30

               ブシュッ

                         ブッ


右手からの出血は夥しいが、『筋』を斬られなかったのは幸いだ。
『東雲』の選択は早い。『鞘』を放り捨て、『ロープ』を振るい当てる。

           ギュ             「こ、これはァァ――――」
             ァ
           /
          ・                          「捕らえたァァ―――」


絡み付いたロープは即座に『岩塩化』し、『尾藤』の動きを留める。
その瞬間、

          「き、さまぁ!」
                            ズァァ!


噴出する『スモーク』も切れ、掻き消える煙から『尾藤』がその姿を現した。
先ほどへし折った『右手首』から『鮮血』を垂れ流しているが
胴体に纏わり付いた『ロープ』からは遠く、流れる血液が染み込まない。
動きを拘束したまま、『東雲』はタックルをぶちかます。


            「お、おごおおおおおお!!!!!」


                          バッグォォ―――z____ッッ!!


片足を負傷したタックルは出足こそ遅かったが、
それでも身動きの取れない『尾藤』を倒すには十分だった。
その場に尻餅を付いた『尾藤』。刀もまた、地面に転げ落ちている。


                            「貴様、見たな――――」


不敵な笑みを浮かべる『尾藤』の傍に、『鏡花水月』の銘が見える。
――――が、先ほどと異なり、『尾藤』の姿は消えない。

40東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 23:01:55

               「もうあんたの言葉は聞かん」

捕縛は成功、ロープは固定された。これでもう尾藤は逃げることはできない。
万が一ここで逃がしてしまえば、こちらは負けてしまうだろう。
だから確実に仕留めるための、追い打ちだ。

タックルで転倒した尾藤に、自身に『噴塩化』を再度施しながら、左足で地面を蹴り胴体の上にのしかかる。
そして自分の重量を『噴塩化』で更に増やしながら、無事な左拳を握りしめ、
尾藤の顔を殴りつける。殴った後は、更に裏拳で殴る。それを可能な限り、奴が気絶するまで繰り返す。

     「お」

                         「ど」

               「りゃあああああああああーーーーーz______ッ!」


殴る前に邪魔になるロープは手放しておく。のし掛かりが成功すれば、どちらにせよ逃げられまい。
仮にのし掛かりの前に逃げられたとしても、ロープは目印になるはずだ。

41 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 23:02:23


            ニヤリ...


                      「もう一度、だ……。
                       『尾藤真正流』の『ヤワラ』、とくと」


姿が消えたと誤解した『尾藤』は倒れた身体を捻り、
そのまま『足関節』を取って地面へと引き倒そうとするが――――


                     ゴガァッ!


         「乱打、乱打が入る! パウンドによる『死刑執行』ッ!
          止まらない、『東雲』選手は止まらないッ!!」


           ボズッ
                                    ごギィッ


                 「あ、が、ぁんで、 見、 ぇ」


                             「ぇ  ぇ」


ドジョウひげを蓄えた口元が恐怖で歪む。
『岩塩』による武装を施さなくとも、『ザイオン・トレイン』の鉄拳は『凶器』に等しい。

     「お」

                         「ど」

               「りゃあああああああああーーーーーz______ッ!」


                   
                          ボゴォッ!!!


              「グげっ

                           ぐぅぉおおおおおお――z___」



              カンカンカンカァァァ――――z_____ンンッ!!



      「そこまで!」

                      「そこまで、勝者は『東雲』選手です!」


      「なんということでしょう、誰も注目していなかった『ルーキー』がッ!
       あわや『塩試合』になりかけたバトルを鮮やかに収めてくれたッ!」


                「うおおおおおおお!!!」


       「良くやったぞ、『東雲』ェェ――――」


                      「俺は最初から勝つって信じてたぜェ!」


       「私達は『過ち』を正さなければなりません!
        何が『刀』でしょう、何が『サムライ』でしょう!」


       「肩書や経歴など、真の闘いには無意味なのです!
        それは、己の『強さ』だけを信じてリングに飛び込んだ、
        この少年が証明してくれましたッ!」


実況席の『森田』が弁舌を捲し立て、観客達も惜しみない賛辞を送る。
そう、『東雲』は確かに『勝利』したのだ。

42東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2018/11/24(土) 23:02:45

>      「そこまで!」

>                      「そこまで、勝者は『東雲』選手です!」


「・・・はぁっ・・はぁ・・・・!」

実況の声が耳に入り、拳の乱打を止め、立ち上がって尾藤の上から退く。右足が動き辛いかもしれないが、
なるべく早急にだ。死に体の相手にいつまでも乗っているなど、気分が良いものではない。

「・・・・・」

意識はないかもしれないが、尾藤へと小さく頭を下げる。試合中はそれこそ
全力でブチのめす事しか考えていなかったが、終わってしまえば同じ一人の男、怨恨などない。
己の能力に対しての過信が見受けられたが、それでも強敵ではあった。
自らにも反省すべき点は多々ある。彼と戦うことで、それも少しでも理解することができた。
そうして、観客席の方へと振り返る。

>       「良くやったぞ、『東雲』ェェ――――」


>                      「俺は最初から勝つって信じてたぜェ!」

「・・・はン」

調子の良い彼らのセリフに、思わず笑ってしまう。
最初こそブーイングの嵐を浴びせていたくせに、勝てば官軍というわけか、手放しの賞賛を送ってくる。
だが、今ならそれも悪くないと思える。未だ収まらぬ心臓の高鳴り、戦闘の終わったこの場所に立っている高揚感。
これからの行動は観客の為にではなく、自分に敗れた尾藤へ、そしてこの身体の中から湧き出てくる勝利の喜びのために。

                    「ーーーーーわしゃあ、『強い』ッ!!」


          「うおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーッ」


腹の底から、吠えた。

43 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 23:02:56

       「『東雲』ェ――――」

                       「『東雲』ェ――――」


大胆な手のひら返しを見せる観客達さえ、許せる余裕が『東雲』にはある。
勝利から沸き起こる『歓喜』のままに、一人立つ『アリーナ』の中心で、吠えた。


                    「――――――わしゃあ、『強い』ッ!!」


          「うおおおおぉぉぉぉぉ――――――――――――ッ」



               ヒュゥ――

                            ヒュゥ―――


その後、『東雲』は指定した口座に『30万円』の振込を確認した。


東雲『ザイオン・トレイン』 → 『右手首裂傷』、『右太腿裂傷』、『左脇腹に打撲』
                   『全治2週間』、『30万円ゲット』。

尾藤『一般人』 → 『右手首粉砕骨折』、『顔面に無数の殴打』。
             『敗北』、――――『再起可能』。

『鏡花水月』 → 『無傷』、『再起可能』。

44 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 23:03:07
『偽正宗』、史実にて実しやかに囁かれる『名刀殺し』。
『石田三成』が偽装した正宗を手土産に豊臣方への勧誘を行い、
対抗した『徳川家康』もまた大量の『偽正宗』をバラ撒いたとさえ言われている。
江戸時代にもまた刀の性能・評価を記載した『折り紙』を偽装し、
『銘』を潰してまで『名刀』の贋作を作り出した例は枚挙にいとまがない。

無論、どれだけ手を掛けても『凡作』に『偽物』が務まるわけがない。
石田三成は『中興の三傑』とも称された『堀川国広』を贋作者に起用し、
徳川家康もまた無名の刀匠に『正宗』の贋作造りを命じさせた。
擬物の乱舞する『正宗合戦』の勝敗はともかく、時代は『徳川』へと天秤を傾け、
太平の世は『刀』を武器から自身の格を示すための『装飾品』へと役割を変える。

その『刀匠』は自死する間際に一振りの刀を打ち据えた。
現代技術を以っても再現の難しい『鏡面加工』を刀身に施し、『鏡花水月』の銘を彫り残す。
腹を切らずに縊死を望んだ『刀匠』の執念は『遺作』へと宿り、奇怪な力を与える。
その刀を褒め称え、賞賛する度に『姿』を消し、決して見つかることはなかったとのことだ。
時代を越えて数多の持ち主を移り変わり、――――やがて一人の男の手に渡る。

『鏡花水月』、それは儚い幻の例え。
手に取ることは出来ず、例えることも出来ず、まさに『不可思議』。
その美しさを『物語る』度に真実から遠退き、決して本質を示すことはない。
その強さへの『賛美』は『蒙昧』、弁舌の後に『名誉』は残らず。
『語るに落ちる』とはまさにこのこと。

45 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 23:03:21
刀身を『鏡面』に磨き上げた『日本刀』、その銘は『鏡花水月』。
『刀剣』のスタンド使いであり、『尾藤』自身が『スタンド』を用いるわけではない。
鞘から抜かれている間、『発動条件』が満たされた瞬間に能力が発動する。

『言葉』で『表現』された時、その『姿』を消し去る能力。
『表現』の『字数』に『透過』の持続時間は比例し、
『刀』、程度であれば『数秒』が限界である。
この能力は『尾藤』自身の言葉でも発動が可能だが、それでも『十数秒』が限界である。

真の能力は『銘』を凝視させた際に発動する『五感消失』。
刀そのものである『銘』での『表現』は『透過能力』を最大限に発動し、
姿も音も消し去り、切られた感覚さえ察知出来ない『無拍子』を可能とする。

スタンド名は下記の通りであるが、専門学校を中退した『尾藤』自身が過剰に気にしており、
闘技場の登録名とは別に『鏡花水月』と名乗っている。


『ザ・カレッジ・ドロップアウト』
破壊力:B  スピード:C  射程距離:E(B)
持続力:C   精密動作性:B 成長性:B

46 『尾藤ブラック』:2018/11/24(土) 23:03:37
ランカー名:『鏡花水月』
スタンド:『ザ・カレッジ・ドロップアウト』
ランク:C
ステージ:闘技場
賞金額:『30万円』
備考:
『透過』の能力を持つ『日本刀』。
『鏡面』に磨き上げられた刀身は重く鋭く、何よりも『美しい』。
昨今の『刀剣ブーム』によってにわかに注目を浴びており、『女性ファン』も急増中である。

その戦闘スタイルは『幽玄』。
『透過』と『五感消失』を併用し、神出鬼没の連撃を放つ。
尚、戦闘時には付属品である『尾藤一騎』によって使用される。

47『六道辻』:2021/04/20(火) 19:50:52
      ザァァァァ―――

                      ザァァァァ―――――z_______


                                  |
                                  |
    「まだ十七歳でしょう?」              ..| 摩訶般若波羅蜜多心経
                                  |
                                  | 観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五
          「どんな気持ちでしょうね。        .|
           ……息子さんの為に、       .....| 蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不
                                  |
           見てられませんよ、こんなの」     .| 異色色即是空空即是色受想行識亦復如
                                  |
                                  | 是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄
    「住職から言い出しのですよ。            |
     私では、とても止められませんよ」       ..| 不増不減是故空中無色無受想行識無眼
                                  |
                                  | 耳鼻舌身意無色声香味触法無眼界乃至
          「……ご立派でいらっしゃる。      |
           最後まで務めを果たされて――」  | 無意識界無無明亦無無明尽乃至無老死


                               ポタッ...


                                           ポタッ...


                                   「世は、世は全て『空』」


.

48『六道辻』:2021/04/20(火) 19:51:07
「『サードマン』の『太田垣』だな?

 俺の名は『尾藤一騎』、アリーナのファイターだ」


放課後、夏休みが明けたばかりの気だるい空気。
『太田垣』が校門を出るとすぐさま、何者かに呼びかけられた。
着流しを纏った角刈りの中年男だ。背中にはギターケースを背負っている。
何処か人を喰ったような雰囲気を醸し出しながら、『尾藤』は近づいてくる。


「わざわざお前を呼び止めたのは他でもない。
 お前、アリーナでの戦績は『一戦一敗』ってところか。

 ――――クククッ、どうした? 戦績は公表されるんだ。
 俺が知っていて何の不思議がある? だが、そうじゃあない。
 『太田垣』、お前は『かませ犬』で終わるつもりか? そう聞いているんだ」


         「お、『太田垣』ぃぃ……。
          そのオッサン誰? まさか知り合い?」


鬼の首でも取ったかのように不遜な喋り方をする『尾藤』。
見るに見かねた『太田垣』のクラスメイトが、おっかなびっくりで話しかけてきた。

49太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/20(火) 19:52:27
>>48
「アー、ウンウン知り合い」
「知り合いダヨー」

クラスメイトには適当言っとく。
どうせ今からお知り合いになるんだ、嘘をついてる訳じゃない。


「アリーナの関係者ッスね?」
「用件は…いや、言わなくてもいい、だいたい察したッス」


「……リングに立て、とおっしゃる?」
「自分、これから『夏休みの宿題』やらなきゃで忙しいんッスけど」


「……先生が大目玉なんで早くやらなきゃなんッスけど…」

50『六道辻』:2021/04/20(火) 19:53:15
>>49
「ま、マジで?
 ……お、お達者でー」

クラスメイトは引き攣った笑いを浮かべ、足早に立ち去っていく。
『尾藤』はそれを一瞥するが、視線はすぐに『太田垣』へと戻る。


>「……リングに立て、とおっしゃる?」
>「自分、これから『夏休みの宿題』やらなきゃで忙しいんッスけど」


     「ハンッ、捨て置け」


     「そして、その答えじゃあ『半分』だ。
      『太田垣』、『勝利』において最も必要なものは何だ?

      ――――『情報』だろうが。
      かの『ゼロ戦』も墜落した機体を回収さえされなければ、
      装甲を犠牲にした機動力を、米軍に悟られることはなかったはずだ」


     「その『情報』を得られる手段がある。――――『観戦』だ。
      チケットを購入し、試合を観戦すれば対戦者の『能力』が解る。
      『対策』を立てれば自身の有利に戦闘を進められる、そういうことだ」


『観戦チケット』、『太田垣』の闘った頃には聞かされていない制度だ。
恐らく、近日になって新しく導入されたシステムなのだろう。


     「『白岡慧観』、C級ファイターが一人だ。
      『太田垣』、コイツのチケットを俺は所持している。
      コイツから情報を剥ぎとって、対戦者に『指名』する。

      このチケットは、お前の『勝利』への切符だ。
      さぁ、どうした?いつまでも『永遠の0』とはいかんだろう?」


                   「――――いつまでも、『永遠のゼロ勝』とはいかんだろう?」


双眸は引き締めたまま、確信的な言葉を次々に繰り出す『尾藤』。
懐から取り出された『封筒』。差し出されたそれこそが『チケット』んあのだろう。

51太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/20(火) 19:54:22
>>50
「…ふゥん……」

見るだけか。見るだけなら…



 《私は良い太田垣です…宿題をやりましょうッス…》
    《先生に、『キミほど提出物出さないやつは先生はじめて見たよ』って言われたでしょうッス…?》
    
   《俺は悪い太田垣だぜ…行っちまえよ…アリーナに行っちまえよッス…》
      《オッサンがわざわざ学校に来て勧誘してくるんだぜッス…?》

     《先生に失望されまッスよ…?》
       
     《お前は期待されてるんッスだぜ…?》


    《このまえ、『今度こそ課題ちゃんとやりまァす!』っていったじゃないですかッス…?》
    《このまえ、『次は勝ちてえ』って言ったろッス…?》


「………」
「先っちょだけ……」
「ちょっとだけだかんな…」

     「見に行ってやるッスよ、『闘技場』…」


終わってすぐに帰れば宿題できる。徹夜すればいいんだ。ヨユーヨユー。

52『六道辻』:2021/04/20(火) 19:54:59
>>51
苦渋の決断をし、『観戦』を選択する『太田垣』。
その英断に満足したか、『尾藤』は口角を吊り上げて笑んだ。


     「『歓迎』しよう、お前の賢い選択を」


           「――――ところで、このチケットも『タダ』じゃあない。
            『五万円』だ。……だが、なあに安いものだろう?

            Cランクのファイトマネーは『三十万円』だ。
            無策で挑んで手痛いキズを負うのと比較すれば、
            『二十五万円』、丸々手に入った方がおトクというものだ」


ここからが『本題』と言ったところか。『尾藤』は身を乗り出す。
ひらり、ひらりとチケット入りの封筒をチラつかせながら、対の掌を突き出す。


     「夏休みはどうだった? 楽しかったか?
      今年は『シルバーウィーク』、『五連休』がある。
      ――――『軍資金』も必要なんじゃあないか?」


(※PLマネーからの出費になりますが、今回はミッション中に『補填』されます。)

53太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/20(火) 19:55:34
>>52
思わせぶりに誘ってからカネを出させるのか…


「…まあ、…断れないッスよね」

金だしたくない!お前出せ!やだやだやだ!とゴネようとも思った、が、
そもそもオッサン相手に勝てる気がしないので従っとく。


  「…ハイ」
 「とりあえずフ○レステ4が欲しいんッスよね」


生活費(五万PLマネー)を生贄に、チケットを受け取ろう。情報は高い。

54『六道辻』:2021/04/20(火) 19:56:09
>>53
「クックックッ、『毎度あり』」


     ペララララッ
                 ――――スゥゥ


身一つで親元を飛び出した『太田垣』にとって、
『五万円』は決して安い金額ではない。なけなしの生活費が消える。
『尾藤』は差し出されたお札を丁寧に数えると、引き換えにチケットを差し出す。


      「じゃあな、『太田垣』。アリーナで会おう。
       この坊主を倒す俺の姿を見届けろ。

       ――――いや、『見る』ことは敵わぬだろうがな」


双眸を細めた『尾藤』の含み笑い、満足気に立ち去っていく。
チケットに記された試合開始時刻は『午後10時』。会場は以前と同じ場所だ。

55太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/20(火) 20:00:22
>>54

あの尾藤とかいうオッサン、背中から自信満々のオーラがあふれ出ている…


  「強いのか…いや、見に行けば分かる話ッスね」
 
「もし弱かったら、俺もカモり返しちゃろっと」



「…よし」
「宿題やるか」

 という訳で、寮に帰って、でも結局すぐ寝てしまったのだ。
このへんの意識の低さが、太田垣が弱いスタンド使いである所以…なのかもだった。

56『六道辻』:2021/04/20(火) 20:01:10
>>55
『尾藤の背中から』溢れんばかりの『自信』を覚える『太田垣』。
それが『矜持』か、はたまた『自惚れ』かどうかは、今夜にも判明するだろう。


               Zzzzzzz

                         Zzzzzzzz


寮の自室へ戻った『太田垣』はグッスリと眠りに就き……。
(宿題以外は)万全の準備を整え、『倉庫街』へと向かったのであった。



            ヒュォォォォォォ―――――z__________



九月の海風は生温い。『太田垣』にとっては久々のアリーナとなるのだろうか。
似たような倉庫群の中ではアリーナの区別は付きにくい。
チケットには『地図』も描かれているが、流石に小さすぎて解りづらい。


               ガラララララララララ ・ ・ ・


       「へーい、ちょっとちょっと!」

 
                「ねぇ、ねぇそこの君!
                 チケット持ってる君!

                 ちょっと押してってくれる?
                 何か滑っちゃってさー、タイヤ取られちゃって」


背後から近付く『車輪』の音。夜闇をかき回す喧しい声が響く。
『太田垣』の背後から声を掛けたのは、タンクトップにローライズジーンズの少女だ。
『車椅子』に座ったまま、その手に『チケット』を振り回して『太田垣』に声を掛ける。

57太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/20(火) 20:02:31
>>56
「うーッい」

 断る理由はあんまりない。
 

「車椅子…ここのハンドル持ちゃいいんスかね」
「……じゃ、行きますぜ…」

後ろに回って、押してやろう。



 「今回の試合は…尾藤VS白岡、っしたか」
  「どんな奴らでしたっけ?」

 
適当に話をふる。

そして座り込んだタンクトップ少女を後ろから見下ろす形になる。
…その…これならなんか、『見える』…?タンクトップだからさ、こう上から覗き込むようにすればさ…

胸元とか、胸元とか胸元とか……?

58『六道辻』:2021/04/25(日) 22:14:15
>>57
「いぇーい、助かるぅー!
 ありがとー、後でコーラおごるから!」

快活な声でお礼を言われる『太田垣』。
ショートカットの少女は、車椅子に反して随分と元気そうだ。


              カラカラカラカラカラカラ・・・


「えーっと、『白岡』さんは『和尚』だよ。
 スタンド名は『エンプティ・エステート』で、
 どーいう能力かは、まだ闘ったことないからなー」


          「あれ、でも『白岡』って聞いたことあるなー。
           ええと、……ほら! 国道沿いのお寺、あそこの住職!」


「『尾藤』さんは消えるサムライ、私も闘ったんだけど。
 んー、でもスッゴく、うーん、能力の差かなー?

 いやー、でもちょっと拍子抜けだったねー、
 あんな無様に負けるなんて、なんでだろーねー」


車椅子を押しながら『好機』を伺う『太田垣』。
暗い倉庫街では相手の姿さえ曖昧だ。だが、先に進めば違う。
『街灯』の明かりを利用すれば、『目的』を達成することは可能だ。


            カァァァァ―――――


一筋の光が『太田垣』に降り注ぐ。白熱電球の明かりが二人を照らし出す。
その眩しさから両目を守るように、視線を下す『太田垣』。


                  ドシュルルルルルッッ!!


「ああ、そうだそうだ。
 『自己紹介』しとかないと、『蓮田淳子』でーす。

 こっちは『スパニッシュ・ブレークファスト』!

 ファスト    ブレイク     スパニッシュ
 『疾く』!  『砕く』!   『情熱的に』!」


『蓮田』はスタンドを纏い、瞬間的に『ターバン』と『武道着』へと変じる。
そうこうしている間に、『アリーナ』へと辿り着いてしまった。

59太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/25(日) 22:14:58
>>58
    カァァァァ―――――

    (凝視する太田垣)

尾藤のおっさんの話?知らん。そんなことより双丘が大事だ。

       

   ドシュルルルルルッッ!!

「なッ」




 …分かってたよ。
 むっさい男、ロクデナシ、金持ちの客が集まるアリーナに、場違いな『車椅子』の『女』。
 たぶんスタンド使いだろうナーとは思ってた…



「(だからって…『憑依装着型』かよ…ツいてないッス。ほんとに神は死んだんだ。)」

…武道着、ターバン…名前も、いかにも『バトル』って感じだ。
覗き込んだのがバレたら飛ばされてたかもしれない…逆に幸運だったと思っておくか…

「ん……『自己紹介』?
 …太田垣…名は『良』ッス…」

「『スタンド』はね、うーんとね、…ヒミツっスね…」


そんなこんなで会場に着いたのだ。チケットで入場手続きをしてしまおう。

60『六道辻』:2021/04/25(日) 22:15:34
>>59
「ええー、ケチくさいなー。
 いいじゃーん、ガッキィー」


ガックリする『太田垣』に対し、『蓮田』は馴れ馴れしかった。
スタンドを纏ったまま、二人はアリーナの入り口に到着する。
閉ざされた鉄扉の前に直立不動の『黒服』が見張りをし、一瞥を向ける。


     「チケットを拝見致します」


                          「はい、これ二人分ね」


     「――――では、どうぞ中へ」

                              ギィィィ――――・・・


二人のチケットを確認すると、すぐに『黒服』は鉄扉を押し開ける。
挨拶もそこそこなのは、誰かに見つからない為の配慮なのだろう。
『秘匿』された『戦場』、アリーナの特性を『太田垣』は再確認する。


    「じゃあ、二階に上がろうよ。
     席は自由だから、狙ってるファイターの近くにしよっか。

     アタシは断然、『白岡慧観』かなー。
     噂によると『非業を背負った菩薩』とか、
     『一子相伝のファイター』とか、スゲー噂多いんだよー」


アリーナの二階観客席は東西に二分され、互いを行き来するには一階を経由する必要がある。
『蓮田』は『スパニッシュ』を纏ったまま車椅子から立ち上がり、それを畳んで端っこに寄せておく。
そして、観客席へと続く階段を登ろうと、手すりに掴まってケンケンを始めた。


    「今日の試合、あの『慧観』が出るとはな……」


            「いいや、果たしてどう出るか……」


               「『尾藤』も災難だな、ありゃあタダじゃあ済まねェぞ……」


ロビーにたむろする観客達の囁き声が響き渡る。
『慧観』の評判について噂立てているが、その雰囲気は妙なものだ。
観客達は熱狂を潜め、やけに『神妙』な口振りだ。

61太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/25(日) 22:16:01
>>60
「暗い。熱い。くさい。」
さすが地下闘技場。


おッ、いいケツ。
…階段から落ちたりしたら可哀想だ。蓮田の後ろについて登ってやろう。



   「…『噂』ァ?  聞いたことないッスね」
  「自分、アリーナ観戦、初めて、なもんで」


  嘘は言ってない。アリーナの『観戦は』初である。



「随分神妙な空気ッスね…客席はいつもこう…では無いッスよね」

  「ッん〜〜〜〜む」
 「自分はァ〜…応援するのは、尾藤サンっスねぇ」
「なんか自信マンマンだし」



『応援するのは』尾藤。『観察』するのは、無論『白岡彗観』。
なんせ、後の対戦相手となるかもしれないから…。


「(オッサンが勝てばそれまでなんだけどな)」
「(まあ様子見だ、様子見。)」


 …試合開始を待つか。売り子が通ったらポップコーンでも買っとこ。

62『六道辻』:2021/04/27(火) 22:32:41
>>61
「なーんか、変な感じッ

 いつもはもっとワーワー騒いだり、
 なんかこう、『粗暴』って空気なのにねー」


               「あっ、ポップコーンッ!
                それとコーラ二つね!」


ヒソヒソ声の醸し出されるアリーナに、『蓮田』も困惑気味だ。
だが、二階の観客席で売り子を見つけると、元気そうに飲食物を注文する。
『太田垣』もポップコーンを買い、『コーラ』を『蓮田』から手渡されると、
ケンケンで移動する『蓮田』をそれとなく注視しながら、座席へと腰掛ける。


         「あの人、すぐ消えるから注意したほうがいいよ。
          私も闘った時、チョロチョロしてて面倒だったし、
          『刀』の話を始めると、三秒か五秒くらい消えちゃうから」


隣に座った『蓮田』がヒソヒソと耳打ちをする。
どうやら『刀』という言葉をキーワードに発現する『透過能力』のようだ。

63『六道辻』:2021/04/27(火) 22:33:09
>>61-62

                         シュゥゥ ・ ・ ・


           \ カッ /
                                     \ カッ /


突如、アリーナの照明が一瞬にして消える。
ポツリ、ポツリと灯る光。それが照らすのは天井から吊るされた『実況席』だ。
そこに陣取る実況者と解説者。二人の男がマイクを手に、朗々とした語りを始める。


   「紳士淑女の皆様、おまたせしましたァ!
    忘れたとは言わせない! あの『悲劇』から半年が過ぎようとしております。
    敢えて多くは語りません。熱戦を見届けた皆様の網膜に、深くふかぁく焼き付いてるでしょう。
    しかし、その『悲しみ』を乗り越えて、ここに一人のファイターが立ち上がったッ!」


『サングラス』の隙間からハンカチをねじ入れ、涙を拭う仕草を見せる男。
実況者の隣に腰掛ける儚げな青年は、悲しげな素面を伏し目にして首を振っている。


   「さぁ、もう涙はおしまいだッ! 笑えなんて言いません、ただ叫んで欲しい! 怒ってほしい!
    そう、激情を胸に『闘って』ほしい! よくぞ来てくれた、『玉泉寺』のダルマ住職ッ!
    赤コーナー、『白岡慧観』ンンン!」

                                       「出てこいやぁ!」


               ブシュォォォ―――――


赤色のLED照明がチカチカと点滅し、それを反射する濃白のスモークが赤く染まる。
スモークの奥から現れたのはずんぐりむっくりとした壮年の『仏僧』だ。
金縁眼鏡を掛けた温和な顔立ち、双眸を閉じてブツブツと何やら唱えている。
浅黒い肌に纏われた『袈裟』、足袋に草履、手にした数珠と、明らかに場違いだ。

そして、入場曲が鳴り響く。
袈裟を纏った太躯に反し、ゴシカルなプログレッシブ・ロックだ。
雄々しさと甘ったるさを使い分けるボーカルの声調、
目まぐるしいアレンジテクニックはサイケデリックという言葉が最適だろう。
先ほどまでの不穏な『噂話』も相まって、物々しい雰囲気を醸し出していく。

入場曲:ALI PROJECT 『六道輪廻サバイバル』
ttp://youtu.be/u3NvNKjXRg4

64『六道辻』:2021/04/27(火) 22:33:30
>>63
「ふうん…消える…尾藤サンが。」

 「…お、そんな事を言ってる間に…」
 「お出ましッスよ『白岡彗観』!!」


> 一連のォ演出ゥ


ムシャ ムシャムシャ


「(すッ すげぇッス…)」

  ムッシャムッシャ

   「(…ま る で 捉 え ど こ ろ が 無 え !)」

「(どーいうキャラ付けだ。サポーターは何やってんスか)」

   ボリボリボリボリ


「何…半年前なんかアリーナでなんか記憶に残る試合があったけど
 なんか白岡さんには悲しいかんじで、なんかその時の怒りで戦ってるかんじ…」


        ズズズズズ

「いったい…何ッス…何だァ?」
「蓮田サンは…どう思う?」 

目が離せねえ。


   パクパクパク

65『六道辻』:2021/04/27(火) 22:34:21
>>64
「さぁー、なんだろう。
 私もこのアリーナに出入りしたのは最近だし……」


『蓮田』も詳しくは解らないようだ。
『太田垣』の指摘通り、『コンセプト』が全く定まっていない。
本来であれば、コーディネーターを兼ねる『運営側』が、
それとなく『調整』でもするのだろう。このデザインで推すつもりなのか、
――――それとも、衣装や入場曲程度の些事であれば、
アリーナ側での『関与』や『助言』も出来ないほどの事情があるのか……。


   ≪そして、対するは『0勝4敗』、後もなければ先も怪しいこの男!
     初戦の勢いはどうしたァ!? 今宵、挽回のチャンスとなるのか!?
     仏の慈悲に縋れるか、明王の怒りに消し飛ぶかッ!?≫


   ≪さあ、『選手入場』です!
    青コーナー、『尾藤一騎』ィ!≫    ≪出てこいやぁ!≫


             ブシュゥゥゥゥ――――z______


『スモーク』の道を割って現れたのは、夕方に顔を合わせた『尾藤』その人。
着流しに『日本刀』を帯びた格好に似合わぬラップのリズム。
眼前にて佇む『慧観』を睨み付けながら、風に揺れるように緩やかな歩調で近づいていく。

入場曲:Diggy-Mo 『サムライズム』
ttp://youtu.be/gZQYHvWEgK8


    ≪決するは『武士道』か『仏道』か、
      初戦は引き分けと成った『慧観』氏の初勝利となるか、、
      『場数』を踏んだ『尾藤』氏の健闘も有り得るか、果たして――――≫


    ≪今回はステージにガジェット無し、コンクリート砂漠でのバトルです!
      互いの実力差がハッキリと出るステージ、これより『戦場』へと変わりますッ!≫


    ≪さぁ、互いに戦意は十分ッ


                             いざ尋常に、始めェッ!≫


          カァァァ――――z_____   ンンッ!!


実況、解説の両人がたっぷりと話し尽くしたところで、『ゴング』が鳴り響く。
『刀』を抜き放つ『尾藤』、一方の『慧観』はスゥゥと息を吸い込んだ。


     ≪『尾藤』選手、カタn  「摩訶般若波羅蜜多心経

                         観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五

     「我が『鏡花水月』は   .蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空ゥゥ―――――」


洞窟を吹き抜ける風の音にも似た、テノールの『朗唱』が響き渡る。
『般若心経』、いわゆる『お経』の類だ。マイクの音さえ掻き消す『念仏』が場内に轟く。

66太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/27(火) 22:34:50
>>65
「なんかそうなんか」

 …
  …

  … お…おーきたきた尾藤きた

「は…」
「(は…0勝4敗とかしょっぼ)」


  いや
  …負けたあと、めげずに『3回も』勝負に出たって事だろ
  0勝1敗が言えた義理じゃ無い。…
  ……。


 「…おっと」 「始まってらあ」「ボーっとしてたッス」


「ッスか…ね…念仏?」

…腹から声出してるな。坊主の念仏ってなんかこう、ボソボソしたイメェジがあったのだが…

「うむ、不気味ッスね。逆に」
「…『ギャップ怖え』?」


そうだ、坊主は…念仏唱えてるフリして別の事したりしてない?それは手品やイタズラの常套手段だが…
ポップコーンは齧りながら、注意深く観察。飛び出すのは何だろう。

67太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/27(火) 22:35:17
>>66
『慧観』は唯、淀みなく『般若心経』を唱えるに過ぎない。
しかし、それだけの行為で『尾藤』は刀を構えたまま攻められず、
互いに睨み合いとなって時間が過ぎていく。


       ≪こ、これは全くの予想外です!
         なるほど、これでは『尾藤』選手は『消えられない』!≫


       ≪『ザ・カレッジ・ドロップアウト』の発動トリガーを、完全に封じていますッ!
         最早、私達の『実況』さえ耳に入らぬ状態でしょう! なんという策士!≫


       ≪無為に重ねた敗北は己の首を締め上げ、無様にも晒される。
         『多様性』を失った生物は滅びる、脳の劣りし恐竜も同然。
         秀でた一芸を鼻に掛けた道化の末路、憂うが先か嘆くが先か――――≫


『太田垣』はブラフを念頭に置き、『慧観』の観察を続ける。
『慧観』は念仏を唱えながら虚空に手を掲げ、空手に『弓矢』を発現する。
距離を保ったままの『尾藤』に狙いを定め、――――放つ。


                シュッ
                              ――――パァンッ!


        ≪おおっと、ここで『慧観』選手のファーストヒットッ!
          手中に現れたのは『弓矢』、『尾藤』選手の左肩に命中です!≫


        ≪不可思議、あれは幻像にあらぬ実在る器物。
          成る程、器具の創造、野武士に反して『多様』なるか≫


  「『尾藤』さんは自分の『刀』の話を聞いた人から、
   自分と『刀』を見えなくする能力なんだけどさ、

   なるほどねー。じっくり観察されてたかー、そりゃあそうだよねー。
   予め能力が解ってれば、封じる手段なんていくらでも考えられるし……」


『四敗』の重みは誇りや心情の問題には収まらないほどだ。
即ち、『太田垣』と『春上』の試合を観戦していたものなら、
『ザ・サードマン』の弱点を看破し、試合に利用することは容易なのだ。

68太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/27(火) 22:35:38
>>67
「って事は…   尾藤サン、…やべーじゃん!」
「これじゃ『完封』ッス」

「弓矢でチクチク刺されて、終わりっ、ッスよ!」


「バッカヤロー動け尾藤ォァー!!」


 おっさん応援してやろ。
 だが『観察』するのは、 坊主の方…『手の内』を晒しているのは敗者だけではない。
 あの白岡とて、スタンド能力をここで晒しているのは同じ。

 あれは『弓矢を生み出す』だけの能力か?何かあんだろ、たぶん。 …見るんだ。




しかし…まあ解説者のよく舌の回ること。なんだあの喋り方。
そんな迂遠な言い方しなくても伝わるって。…しない方が伝わるってば。

 『ふしぎだよぉ、あの弓矢はほんものなんだよぉ、』
 『剣士のおじさんとはえらい違いなんだよ、おにいちゃん!』

「(こういう意味ッスよね、おそらく) (本物…ヴィジョンじゃないのか)」


とにかく観戦だ。何かを掴もう。

69『六道辻』:2021/04/27(火) 22:36:31
>>69
>「バッカヤロー動け尾藤ォァー!!」


          「ビビってんじゃあねェぞ!」


                  「『尾藤真正流』使えやゴラァ!」


『太田垣』の声援を皮切りに、『尾藤』への野次混じりの応援が入る。
『尾藤』と『太田垣』の視線が合う。思いっきり睨み付けられた。
だが、『発奮』にはなったようだ。『尾藤』は刀を逆手に持ち、対の手に『鞘』を掴む。


      ザザザザッッ


                「『尾藤真正流』、――――『野火止』」

                「是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄――――」


『尾藤』は姿勢を低くし、両手に構えた刀と鞘にて顔面と上半身を守りながら、
さながら『蛇行』にも似たスプリンター・ダッシュを見せる。
迎え撃とうと『二の矢』を発現する『慧観』だが、その鏃は定まらない。


     ≪なるほど、弓矢で『足元』は狙いにくい!
       刀と鞘で顔面を守り、弓矢対策は万全かッッ!!≫


     ≪『慧観』氏も良い腕をしているが、あれは恐らく『弓道』の経験か。
       だが、動かぬ的を射抜くだけの儀礼化した『弓道』では、
       ゴキブリの如き『尾藤』の奇歩を捉える術など教練の外よ……≫


          シュゥゥ――――


実況の『刀』という言葉に呼応し、走り抜ける『尾藤』の姿が消える。
『蓮田』の解説通り、『刀』への言葉を聞いた者から、その姿を消す能力のようだ。
だが、果たして今の『実況』が『慧観』の耳に届いているかは解らない。


    「不増不減是故空中無色無受想行識無眼――――」


しかし、これにはたまらぬとでも思ったか、『慧観』は念仏を唱えたまま、背後へと下がる。
弓矢を構えて間合いを維持し続けたまま、後ずさった先にはアリーナの壁だ。
壁を背にし、完全に追い詰められた『慧観』。二人の距離はもう『2m』だ。


                 バシュッ!


我慢の限界に至ったか、『慧観』は遂に二の矢を放った。
しかし、それは『鞘』を掠めるだけに終わる。後一歩で、『刀』の間合いへと納められる――――


        「うおおおおおお!!!!!」


            「尾藤ォォォ――――!!!!」


                  「スパニッシュゥゥゥ――――!!!」


思わぬ活躍に会場は湧き上がり、隣の『蓮田』は空いた紙コップを握り潰して声援を送る。

70太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/27(火) 22:37:06
>>69
「わぁーわーわー」
「ワァ―――――ッ!」


わーわー言う。興奮してきた。


「(妥当な策だ…尾藤これ勝てちまうんじゃねえか)」
「(…あれ、そしたら『あの話』はナシィ?)」

まあいいか。実際良いエンターテインメントだ。
5万はちと高いが…試合は良いかんじだ。


 「(…自分だったら…『・ヴィジョンで受け止める』『・どんでん返しで逃げる』所ッスね)」

 「(『白岡住職』…『念仏』で能力潰しを行った奴だぞ)」「(ここで終わるって事は…)」


「…はたして『白岡』…どう出……ッ」

71『六道辻』:2021/04/27(火) 22:37:54
>>70
『ヴィジョンで受け止める』、『どんでん返しで逃げる』、
自身ならどういう対処をするか、『戦闘者』らしいイメージを働かせる。
『防御』か、それとも『回避』か。――――その予想は、外れることとなる。


                「『尾藤真正流』、――――『双柳』」


     ≪『抜かずのナマクラ』とも囁かれていた『尾藤真正流』、
       ここに来て『慧観』選手を追い詰め、刈り取ろうとしているゥゥ――――≫   シ
                                                     ャ
                                                     ラ
     ≪最後に『菩薩』は微笑むかァァ!!!                        ン
       今ッ、刃が振り上げられるゥゥ――――≫                      ・
                                                       .
                                                      .
           ャ      ,/ l /
        ズシ       /" ̄ ーz l |
                    _/    オ   オ  ォ  ―――z______


『尾藤』の勝利を見届けようと刃の軌跡を目で追う者に、その異変は気付けなかった。
気付いたのは『太田垣』を始めとする、『慧観』から視線を外さぬ者が十数名。
二の矢を外した『慧観』の右手は垂れ下がり、その手には何かを掴んでいる。
金属輪のぶつかり合う、澄んだ音色が響き渡った。――――『錫杖』、金属の杖が発現していた。
末端の一方は『壁』から垂直に充てがわれ、金属輪の連なる対の先端は――――


            「ぁ、    ぁ   あ  ん…… ..だァ?」

                                       「ど、どぉ、ぢ」


壁に押し付けられた『錫杖』は突進する『尾藤』の顔面を押さえ、鼻骨を砕いてその勢いを留めた。
刀と鞘で顔面を庇って駆ける『尾藤』は、瞬間的に発現される『錫杖』を視認し、捌くことは出来なかった。
『慧観』は逃げ回った果てに壁際に追い詰められわけではない、
『錫杖』を固定する為に『壁』を利用したのだ。――――『尾藤』を確実に仕留める『カウンター』の為に。


      ≪こ、ここまで、ここまで読んでいたか『慧観』選手ッ!
       『弓矢』への対処に敢えて乗り、『尾藤』選手を油断させたァァァ――――≫


      ≪慢心こそが自害の刃。成功こそがその得物を研ぐ。
        周囲の『歓声』、生じる『麻薬』に身を委ねたが故の悲劇か……≫


     「ば 、  ば ぁ  だ だ」
                                 「ば、だ、    や で――――」


                 ボグォ!!!        「亦無老死尽無苦集滅道無智亦無得以無」

                                               「所得故菩提薩依般若波羅蜜多故心無」

                                    ゴッ
                                               ガッ!!!

              「礙無礙故無有恐怖遠離一切顛倒夢―――――」


取り落とした刀を拾おうと手を伸ばした『尾藤』、そこに『錫杖』が振り落とされる。
地面に膝を付き、頭を垂れる『尾藤』に容赦の無い『杖の雨』が降り注ぐ。
念仏を唱える『慧観』の目は穏やかだ。さざなみ一つ立たぬ、凪の海原にも似ていた。

72太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/27(火) 22:38:55
>>71
「どう出……ッ!」

「……あえて、あえてかァっ!」
「織り込み済みッスかよ!」

 「弓矢、錫杖…。仏像…明王の『持物』スね…?詳しいんスよ自分」


何という目だ表情だ!坊主らしいといえばそうだが、しかしその腕は、杖は!悪鬼を打ち滅ぼす明王がごときッ!
唱えられる念仏は、説法のためではなく、メタ戦法!
白岡、『先を読んでた』…尾藤の倒し方を考えていたであろう事実ッ!まったく何という…ッ

尾藤、マズい。能力を使えないまま、アンフェアな『近接戦闘』をやらされている。
非常にマズい。
というか、負ける…嘘だろ。


「け、決着…?」

 ポロッ

ポップコーンを零しながら行く末を見守る。

73『六道辻』:2021/04/27(火) 22:39:27
>>72
『弓矢』、『錫杖』から『明王』に辺りを付ける『太田垣』。
入場時の『念仏』から『錫杖』でのトドメに至るまで、『計略』の糸で繋がれていた。
『太田垣』はポップコーンを貪るのも忘れ、戦況を見守っている。
自分のを食べ終わった『蓮田』が、残ったポップコーンをしれっと横取りしていく。


       「想究竟涅槃三世諸仏依般若波羅蜜多故――――」


       「ご、どぉ、」

                    「見 ぉ゙ ぉ...」


       「得阿耨多羅三藐三菩提故知般若波羅蜜――――」


                    「『鏡花水ーz、l /
                          _/     オ

                               ォ      / 
                                  ン ・                   カ

                                                        ン  /
死に物狂いで拾い上げた『鏡花水月』は、錫杖に打ち据えられる。                  ・
二度、三度、骨肉を打ち抉る音は、破れた血膚を打つ粘った音へ変わり、         カ
見かねた実況席から『ゴング』が鳴り響き、二人は動きを止める。              ァ
                                                     ン/
                                                     ・
       ≪そ、そこまで、『尾藤』選手の『失神』により、
         この勝負、『慧観』選手の勝利ですッ!!≫


       「多是大神咒是大明咒是無上咒是無等等――――」


       ≪お、恐ろしい! 能力の片鱗だけで『尾藤』選手を完封ッッ!
         反撃さえ出来ずに『おシャカ』にされる、これぞ真の『葬式仏教』かァ――――≫


       「いやー、圧巻だったねぇー。
        でも『能力』は解らなかったなぁー、だって道具を出すだけなわけないじゃん。
        もう一段階くらいあるでしょ、なんかこう、弓矢が光って強くなるとか……」


『太田垣』のポップコーンを奪いながら、ざっくらばんとした感想を告げる『蓮田』。
血みどろで運ばれる『尾藤』を見てもノーテンキな様子だが、その鷹揚な態度は少数派のようだ。
周囲の観客は不穏な表情を隠さない。何人かの客は、射抜くような視線で佇む『慧観』を見据えている。
『警戒』と『闘志』の入り混じった熱情、彼らが血を滾らせた『ファイター』だと、『太田垣』は肌身で理解する。

74太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/27(火) 22:40:03
>>73

「…あっらァ…」

試合が終わった。…一方的だった。


「…『隠し手』…はまだ残ってそうッスね、蓮田サンの言う通り。」
「…油断ならねえファイターッス…『白岡彗観』」


感じる、獲物を見定める獣のような視線…『白岡』を狙っていたのは、尾藤だけではないという事。
自分も同じような目をしているのだろう…

…何故か尾藤に目をつけられ、『白岡』とぶつけられる事になっていたファイター太田垣。何故。何でだよ。謎だよ。



 「(あとで尾藤サンに会いに行かないとッスね… …色々話したい…。)」
 「(知り合いですって言えば、すぐ面会させてくれっかね…)」
 


「あれ」「ポップコーン」
無くなってら…いつの間に食ったんだっけえ?

75『六道辻』:2021/04/27(火) 22:40:35
>>74
無意識の内に『慧観(エカン)』を睨み付ける『太田垣』。
五分刈りの筋骨隆々の男、緩くマフラーを巻いた甘いマスク、
熱い視線を送る彼らもまた、『慧観』を危険視するファイターなのだろう。
(注:智慧の『慧』に観音の『観』)


         「…あっ、ごっそーさんッ!」


空の容器に手を突っ込み、『太田垣』は怪訝な顔を作る。
チロリと舌を出した『蓮田』は、逃げるようにケンケンで去っていった。


                  ・

                  ・

                  ・


『尾藤』への面会をしようと、ロビーをうろつく『太田垣』。
『尾藤』の名前が記されたチケットの半券を所持しており、
それを見せれば『知り合い』というのも信じてくれるだろう。



               シャラランッ

                              シャラランッ


『錫杖』の硬質な響き、無傷の『慧観』は悠々とロビーを闊歩する。
その表情は大人しい。柔和な笑みを口元に浮かべ、さながら休日の商店街を歩くようだ。
彼に話しかける者はいない。ただ、眉を潜めては遠巻きに見守っている。


                ペコリッ
                           「やあ、いかがでしたかな?
                            怖がらせて、しまいましたかね」


『太田垣』と視線の合った『慧観』は、表情を崩さずに一礼をする。
『敵意』や『悪意』を感じられない、『菩薩顔』とはまさにこのものだろう。

76太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/27(火) 22:41:17
>>75
ポップコーン、余ってたら飼いネズミにでもやろうかと思ってたのになァ…などと考えブラブラしていたら

  「(げッ…『住職』!)」


「……」「…コンチワッス」

  「(…場違いッス。マジでなぜボウズがこんな所に)」
  「(怖いつーか訝しいわ)」

「……ウス」


  「(あの錫杖…さっき尾藤をボコボコに殴ってたやつッスか?)」
  「(怖っわ…)」


「……シツレイシタッス」
「……」


やっべ気まずい…菩薩スマイルやめてくれ…
 萎縮するッス。この『いい人』オーラは何だ。


「…」
「ウー…」
「……コ、コンチワッス」

77『六道辻』:2021/04/27(火) 22:41:56
>>76
先刻の惨劇が脳裏に過ぎり、『太田垣』はビビり全開で対応する。
返り血の点々とした『袈裟』に反し、『錫杖』は年季こそあれど血錆はない。
こちらは『私物』のようだ。相変わらず、『慧観』は柔和な笑みを崩さない。


    「今日は、観戦でいらっしゃいますか?
     ……ああ、そのチケット。いけませんね、あの人も。

     きっと、無理矢理売り付けられたのでしょう?
     厄日でしたね。――――どうぞ、此方をお受け取り下さい」


お経を唱えるように朗々とした話し方、人によっては『人格者』にも見えるだろう。
懐から取り出した『万札の束』、恐らくは『アリーナ』の『ファイトマネー』だ。
一枚、二枚、『五枚』を差し出し、緩やかな手刀を切りながら差し出される。


    「怯え、震え、そうしてまで『闘い』を見る必要などありません。
     早く帰りなさい。ここは『修羅道』への迷い道、地獄の交わる『六道辻』。
     子供が興味本位で覗いては、――――『仏罰』が下りましょう」


『太田垣』を一見様と勘違いした『慧観』は、穏やかな表情のまま『太田垣』を『諭す』。

78太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/27(火) 22:42:21
>>77
えっ

「あッ! いえ、お坊さんからお金なんてそんなとてもッス!」


まあ無理矢理…とは言わないが、流れでチケット買わされたのも事実だし、よって5万は惜しい…
怯え、震えも無いわけではない。
が、こちらとて『ファイターの端くれ』。

 「(…それに、さっきの試合見たあとだと…)」
 「(どーも無下に出来ないんスよ、尾藤サンのこと。
  自分に話もちかけたのにも理由があんだろうし…)」
 
「(カネもらうのは『裏切り』な気がする…)」


よって金を押し返す。ギューッ。


「…それに子供じゃ無いッス、もうすぐ18歳ッスよ自分!?」

「ん…『六道辻』?」

なんだそれ?

79『六道辻』:2021/04/27(火) 22:44:15
>>78
差し出された紙幣を受け取らず、押し返す『太田垣』。
『尾藤』への義理立てか、ファイターとしての『矜持』か。
『慧観』はそれ以上押し付ける真似はせず、懐へと引っ込めた。


    「18歳ならば、尚の事。
     親御さんも心配しているでしょう、盛り場など以ての外です」


穏やかな口調を崩さず、しかし視線を逸らさない。
もう一言、添えようとした『慧観』へ『太田垣』の疑問が挟まれる。


    >「ん…『六道辻』?」


    「……『六道』、人の迷いを『地獄』の巡り道と例えたものです。
     安楽に満ちた『天道』、苦楽の交じる『人道』、争い傷付け合う『修羅道』、
     欲を満たすだけの『畜生道』、欲さえも満たされぬ『餓鬼道』、
     ――――そして、己の罪を味わう『地獄道』、人の生涯は六道を行き交うが如し」


通りの良いテノールボイスは、『六道』の解説を行う。
このアリーナを『六道辻』と評するということは、
いずれかの『道』と『人道』の交わる場所、そう解釈しているということだろう。


     この『アリーナ』は、喩えるならば『修羅道』そのもの。
     無為の争いで勝敗を分け、勝者は驕り高ぶり、敗者は醜く倒れ伏す。
     そして、勝利を求めて心を擦り減らし、失くした矜持を奪わんと、次の闘いを望む。

     あの男、『尾藤一騎』も無様なものよ。最早、アリーナは彼を必要とはしない。
     『手を抜いた』、拙僧にさえ勝てない『備品』に、『鏡花水月』というファイターは任せられない」


    「哀しいかな、これも『菩薩』の導きよ」


その表情は変わらない。厳しい言葉を告げる時さえ、穏やかさに満ちている。
まるでそれこそが『サダメ』であるかのように、『慧観』の言葉は確信に満ちていた。

80太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/27(火) 22:44:48
>>79
「(手抜き…備品…)」
「(残念ながら、尾藤サンがブザマなのは違いないッスけど、)」

「(なんか、こう、エンターテイメント的にその発言は良くないってゆーか…)」
「(アリーナって興行で見世物だし…)」

あんまり良い響きではない…
…いや、止そう。アリーナに対する見解、主義主張は人それぞれだし。




しかし不思議だ…

 「…アリーナが『修羅道』…なぜアンタは、そこにいるんスか……」
  「お坊さんでしょ?ホトケ様とは関係が切れない生き様ッスよね」

「…」 

「…あッ、すみませんッ。ヘンテコな事言っちゃったッスか!?」
「言わなくていいです!自分、難しい事はサッパリなので!」

81『六道辻』:2021/04/27(火) 22:46:27
>>80
不穏な響きに眉を潜める『太田垣』。
その言葉は飲み込みながら、ふと沸いた疑念を口に出す。


    「『虎穴に入らずんば虎児を得ず』。
     一人でも多くのファイターを、『修羅道』から救い出す。

     求める闘いが如何に『無意味』か、結末が如何に『無情』か、
     ――――長話になってしまいましたね、帰るように説教をしておきながら……」


失念していた、と『慧観』は双眸を細めた。何処か、恥じ入った態度を見せている。
『難しいこと』を語りすぎた、それを反省しているような様子だ。


    「若者に口うるさいのは、歳を取った証拠ですな。
     ……車を待たせておりますので、私はもう戻りましょう。

     お若い人、ここに何を求めるのですか?
     『闘争』で得られるものなど、何もありはしないのに」


最後まで穏やかな表情を崩さず、問い掛けを残して『慧観』は去っていく。
ふと、何やら背後が騒がしい。選手控室に通じる廊下から、騒ぎ声が聞こえてくる。


    「む、無茶ですって『尾藤』さんッ!」


    「骨は、折れていない。
     鼻だけだ。だから、離せ……」


    「なんて人だ……。車なら私が用意しますから」


    「要らんわ!」


血を拭ってシャツ一枚に着替えた『尾藤』が、ヨロヨロと廊下を歩く。
その後ろから押し留めようとするのは、セルロイド眼鏡を掛けた頼り無さそうな中年男性だ。

82太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/27(火) 22:46:52
>>81
以外とがっちりした、白岡の背中を見送る。


「ナルホド…『救済』のためッスか」
 納得納得。

「…なにを求める…か?」

「(どうしよう俺、完全に『流れ』で戦ってるよ)」
「(意思も何もあったもんじゃねえ…)」

「(試合とかそれ以前に舌戦で負ける…このままじゃ)」
「(理由づけがいるな…)」


おっと、何やら騒がし…


 「……って、びとッ、尾藤サン!」

 「何やってんスかぁ〜ッ! 」
 「無茶は結構ですがまず落ち着きましょうッス、ねね!?」


ドタドタドタと駆け寄る。

83『六道辻』:2021/04/27(火) 22:47:50
>>82
『太田垣』は満身創痍の『尾藤』へと駆け寄る。
『尾藤』は横目で『太田垣』を見遣り、バツが悪そうに視線を逸らした。


  「ハッ、来たか。
   どうだ? 勝算は見えたか?」

  「ああ、貴方は……『太田垣』さんッ!
   ちょっと、この人を押さえて下さい!」

  「もう要らんわ! コイツに会うのが俺の『用事』だッ

   『太田垣』、『勝算』は見えたかと訊いている!
   あの男、『慧観』はこの『アリーナ』で闘う『理由』がある。

   ヤツは『三ヶ月』に渡って、全ての試合を『観戦』し続けた。
   俺の知る腕の良いファイターは二人、いずれもお前と同い年だ。
   だがな、ヤツ等の試合は見られている。スタンドから弱点まで丸裸だッ」


『尾藤』は唾泡を飛ばしながら、ぜいぜいと息を荒げながら、『太田垣』へと熱弁する。
ドアノブを支えにし、やっとのことで立ち続けながら『太田垣』を睨み付ける。

   「良くも言ってくれたな、『バッキャロー、動け尾藤!』とな。
    次はお前の番だ、『太田垣』! お前が『慧観』と闘うんだ。

    ヤツは、ヤツは『アリーナ』を潰そうとしてやがる……!
    『慧観』には、それをする十分な『動機』がある……!」


校門で出会い、余裕ぶった様相とはまるで異なる。切迫した雰囲気だ。
『動機』、先ほど聞いた『救済』とやらで間違いないのだろうか……?

84太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/27(火) 22:48:25
>>83
「まず」

 「『勝算』の話ッス…『ほどほど』。」

 「『道具を生む』だけの人間相手なら、
   自分の『スタンド』で十分にヒネれます。」
 「ただ、『白岡』…今日の試合では、能力の『一端』しか見せてない、…かもしれないんで…」

  「『現段階のデータでは勝てると推測できる、だが懸念材料が多い』…って所ッス」


「なので」

 「尾藤サン、何を感じたッスか?白岡の筋力がすごかったとか、ヘンな感覚、とか…」
 「聞かせて欲しいッス。データを少しでも多く持っておきたい…」
 「…あ、無いならイイッス。」



「で…」
「潰すゥ?『動機』ィ?」

「何ですじゃそりゃァ?」

それも聞いておかねば。なにせこの太田垣には『動機、やる気』が足りない…補強したい。
『流されてアリーナ参戦』ではダメだ…

85『六道辻』:2021/04/27(火) 22:49:20
>>84
>『現段階のデータでは勝てると推測できる、だが懸念材料が多い』


             ズ
                     「お前、
              ゥ
                             死ぬぞ」
             ウ


『尾藤』は倒れ込むように顔面を近づけ、ミリ単位で眼を突き合わせる。
血走った眼球、眉間に刻まれた皺、その怒りにも似た『真摯』が有り有りと伝わる。


    「落ち着いて下さいよ、『尾藤』さん!
     いきなり言われても、『太田垣』さんもビックリするでしょうが!」


    「聞けッ! お前が見た『試合』が全てだ!
     『観戦』はお前の『選択』、だからそこまでだ。
     俺はファイターとして、『戦場』での情報を渡す気はない。

     ――――だが、他の情報ならくれてやる。『動機』だ。
     スタンドバトルも『心技体』、ヤツには十分な『心』がある」


それだけ言い残すと、『尾藤』はびっしょりと吹き出す汗を手ぬぐいで拭った。
代わりに、口を開いたのは中年の男だ。彼は、自身を『吉田』と自己紹介する。


    「今から半年前、アリーナを熱狂させる『ルーキー』がいました。
     さながら『狂犬』のようなファイトスタイル、B級ランカーも一目を置く『問題児』。

                 チカラ
     彼の名は『白岡知空』、一切の条件を問わない『喧嘩』を望んでいました。
     そのシンプルさ、豪胆さ、ブーイング以上の『喝采』を以って決着を付けていた」


                 「――――今は、もういません。
                  半年前、彼は試合中の『事故』で亡くなった」


  >アタシは断然、『白岡慧観』かなー。
  >噂によると『非業を背負った菩薩』とか、
  >『一子相伝のファイター』とか、スゲー噂多いんだよー」


                   >「『尾藤』も災難だな、ありゃあタダじゃあ済まねェぞ……」
                   >観客達は熱狂を潜め、やけに『神妙』な口振りだ。


  >忘れたとは言わせない! あの『悲劇』から半年が過ぎようとしております。
  >しかし、その『悲しみ』を乗り越えて、ここに一人のファイターが立ち上がったッ!」


  >「是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄――――」


  >子供が興味本位で覗いては、――――『仏罰』が下りましょう」


『太田垣』の脳裏に『慧観』の噂、闘い、そして穏やかな『笑み』が蘇る。

86太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/27(火) 22:49:55
>>85
「とどのつまり…」
「ふ…」

「ふ、  『復讐』 ッスか」



何ということだ。まったくもって尾藤の言う通りである。自分は既に『動機負け』だ。
心が負けたら勝負も『負け』だ。


自分は、住職の言う通り、本来ならこんな不健全、モラルに反した闘技場なぞ潰れてしかるべきとは思う…
思ってしまってる時点でも負けだろう。


『白岡慧観』と『太田垣良』が戦ったとして…
…この調子では『心と体で勝てる可能性』は…


「…うッ」「うう…」



「…」
 
 「…吉田サン」

  「…持ち込み品ッ、および設置物、…」
             

    「『あり』のレギュレーションでやらせていただきたいッ」「ス」 

    「 頼めますかッ!! 」


  『心技体』『まず技で攻めよう』そのために補助が必要だ。
  心の理由づけなぞ死地に立てば何とかなる。自分はノリと伊達の男だから。
  
  太田垣良の『ザ・サードマン』、最大限に生かそう

87『六道辻』:2021/04/27(火) 22:50:53
>>86
『太田垣』は弁戦で勝つための『理由』を求めた。
しかし、人生を賭す理由に『復讐』よりも重い『動機』があるだろうか?
『血は水よりも濃い』、――――『慧観』の背中は厚く、逞しかったはずだ。


> 「…吉田サン」

> 「…持ち込み品ッ、および設置物、…」
             

>   「『あり』のレギュレーションでやらせていただきたいッ」「ス」 

>   「 頼めますかッ!! 」


   「――――ええ、勿論ですとも!」

                             「そうだ、それでいい」


『吉田』は満面の笑みを浮かべ、『尾藤』は醒めた微笑を口元に作った。
己の土俵で張り合う。『技』を活かせる場を作れば、自ずと『勝機』は生まれるに違いない。


   「『慧観』住職が挑戦を受ければ、アリーナを始められます。
    しかし、『知空』さんが生きていれば、貴方と同い年のはずです。
    果たして、住職がこの試合を受けられるか……」


懐からスマートフォンを取り出し、『吉田』は離れた場所で電話を掛ける。
『夜分遅くに失礼します』、という挨拶が控え目に告げられる。会話が始まったようだ。


   「『太田垣』、お前は運の良い男だ。
    『慧観』は三ヶ月前から試合を見続けている。

    ――――つまり、お前の闘いは見られちゃあいない。
    だから俺は、負けた時の『保険』にお前を選んだんだ。
    先の二人では、既に対策を練られているからな――――」


              「ヤツは『一勝一引き分け』、この引き分けの意味が解るか?
               ……『慧観』はギブアップを許さず、対戦相手を『再起不能』にした。

               チェーンソーパフォーマーの『反町』、
               今は持病を悪化させ、総合病院で長期入院になった……」


『アリーナ』への復讐、それが『ファイター』の選手生命を断つことであれば、
それは直接的な『暴力』だけを意味するものではない。
不遜な態度を崩さぬ『尾藤』だが、その双眸が時折、頼りなく揺れる。『恐怖』を覚えているのだ。

88太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/27(火) 22:51:21
>>87
「自分は…簡単に『再起不能』にゃならないッスよ」
「そこん所は自信あるッス」


「そして自分のスタンドは、どんな不利でも、負けてなければ『どんでん返し』を起こしてみせるッスよ」


平面を巧みに操り、逃げ隠れと手品が得意な『ザ・サードマン』なら、勝ち筋になんとか繋げる。


「…約束するッス」



「逆に、自分が簡単に負けたとしたらそれは『オレ』っつぅ一個人のせいなんで」
「…だから『オレ』になんか一言ないッスかね…?エールとか…。」


尾藤ですら怖いのなら、自分はその50倍くらい怖いと思うのだ。
現役ファイターによるかっこいい後押しちょーだい。

89『六道辻』:2021/04/27(火) 22:52:11
>>88
「言葉に縋るんじゃあねェ、『太田垣』。
 俺はこれで『五敗目』だが、このままでは毛頭終わらん。

 いいかッ! 負けるのは『恥』でもなんでもねェ!
 だが、負け続けるのは『恥』だ。そして、

 負けてもヘラヘラしてんのは、『恥』を越えて『悪』だと思えッ!
 “簡単に負けたら”じゃあねェだろ! テメェの『心』は死んでンのかァ!?」


両目をひん?いた『尾藤』の強烈な激が飛ぶ。
『矜持』の高さが伺える言葉だ。そして、


               ブワァ――――


     「やりました! オッケーです!
      『太田垣』さん、試合は『一週間後』に行われます。

      その間に持ち物や設置物の『ガジェット』を申請し、
      加えて、ファイター自身の『観戦チケット』を販売出来ます。
      チケットは『3枚』、これ以上はアリーナを通じての売買に――――」


                       「――――『2枚』だ。
                        もう、『予約済』だからな」


『尾藤』が取り出した『紙幣』、一万円札が五枚だ。
紛れも無い、『太田垣』が泣く泣く手渡した生活費だ。

90太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/27(火) 22:52:47
>>89
 グ サッ

「ぐっはァッ!」
心に刺さった。いたたたた。ここまで言われるとは。


「…キッツいお言葉ありがとうよォ…」
 「……OKッス、ケツと心に火が付いた。」

 やるしかない。

 
 「チケットのお買い上げに感謝ッス」
 「…1週間後!最ッ高にエキサイトな試合をお届けしてやるッ!」


「そして打倒『白岡慧観』っ!!乞うご期待ッス」

        「 見とけよ !! 」

91『六道辻』:2021/04/27(火) 22:53:51
>>90
痛烈な鞭を浴び、決意を新たにする『太田垣』。
未だ、『慧観』のスタンド能力は片鱗程度にしか見えていない。
そして、『アリーナ』に挑む気概は、他のファイターを大きく上回るだろう。
スタンドは『精神』の力だ。決して、勝敗と無関係ではないはずだ――――


             ド

                            ド

                  ド


決戦は『一週間後』、『夏休みの友』よりも重い難題だ。
『太田垣』は歩き出す。その道は険しい。『六道』に勝るとも劣らず。

92『六道辻』:2021/04/27(火) 22:54:12
>>91
>全ファイター

┌────────────────────────
│慧観『エンプティ・エステート』……『一勝一引き分け』


│              V S


│太田垣『ザ・サードマン』……『ゼロ勝一敗』
└────────────────────────
       【形式】:Cランクマッチ
       【会場】:常設アリーナ@倉庫街
       【日時】:X月X日  23時より
       【販売】:チケットの申込は対戦ファイター、若しくは『ラクアクア』まで

93『六道辻』:2021/04/27(火) 22:55:21
     ┌─────────────────────────────
     │               敬   ノ土    
     │               言    [ ]   
     │
     │  (株)ラクアクア  吉田殿
     │
     │  下に記す選手の著しい成績不良については、
     │  観戦者の興を削ぎ、興業の不振を招くに留まらず、
     │  同ランク選手との連勝により上位ランクへの挑戦権を得る、
     │  闘技場規定において悪用の恐れがあるものである。
     │
     │  氏においては選手の勧誘及び登録の責任を取り、
     │  備品の交換を含め、選手の成績向上に協力願いたい。
     │
     │  尚、当該選手については闘技場規定である、
     │  『スタンド使いの戦闘』の項目に反する疑いがあり、
     │  改善が不可能だと氏及び運営側が判断した場合、
     │  登録抹消の措置を執ることは留意されたし。
     │
     │                                     以上
     │
     │  【当該選手】:鏡花水月
     │  【スタンド】 . :『ザ・カレッジ・ドロップアウト』
     |  【成績】 .   .:下記の通り
     │          ●東雲『ザイオン・トレイン』
     │          ●反町『チョコレート・ソルティ・ボール』
     │          ●■■■■■■■■■■■■■■■
     │          ●蓮田『スパニッシュ・ブレークファスト』
     │          ●慧観『エンプティ・エステート』

94『六道辻』:2021/04/30(金) 18:53:14
    「何度も、お願いに上がっております。
     坊主の願い一つ、聞き届けては頂けませんか」


ファミリーレストランの『ジョナクン』のテーブル席、座するは四人。
仕立ての良いスーツに身を包んだ『慧観』に相対する、『吉田』、『森田』。
穏やかな笑みを絶やさぬ『慧観』、深々と下げる頭は鈍く輝いている。


    「住職のお気持ちは痛み入ります。
     私個人としましては、いくら悔やんでも悔やみきれない……」

    「しかし、『アリーナ』の試合映像は秘中の秘。
     一目であっても見せるは勿論、お渡しするのは敵いません」


『慧観』よりも深く、『吉田』に至っては卓板に額を擦り付けんとするように。
幾度、このやり取りが繰り返されただろう。周囲も異様な視線を送っている。


    「そう、ですか。やはり、お見せにはならないか。
     ――――あれは、『妹』の子。私にとっては『甥』になります。
     両親が亡くなった『知空』を寺に引き取り、面倒を見てきました。

     いいえ、あれは『食客』。寺にも戻らず、夜の町で『喧嘩』に明け暮れた。
     幾度と心を砕いても解り合えず、遂にはあの『末路』……」

    「死した魂を戻すのは、いかなる『スタンド』でも出来ません。
     そして、『知空』選手との『契約』は、『あらゆる条件を飲んだ喧嘩』――――」

    「聞いていますとも。『死亡』さえも納得に含まれていたと。
     ……理解が及ばない、そこまでして『闘う』理由が何処にある……」

    「貴方達、『アリーナ』も。そこに居続ける『ファイター』も。
     『修羅』に堕ちて、勝敗に拘泥する意味は、
     ――――『知空』は何故、死を覚悟してまで闘いを望んだのでしょう」

    「私達も、何も聞いていません」


後ろめたさのない、ハッキリした口調で『森田』は答えた。
突っぱねるような言葉遣いの『森田』に反し、『吉田』は背中を縮めて成り行きを見守っている。
長い沈黙の後、『慧観』は諦めたように吐息を零した。


    「……やはり、話し合いの余地はありませんな。
     結構、次の試合でしたな。相手は『太田垣良』、スタンドの名は『ザ・サードマン』。
     フフフッ、人が悪い。『東雲』選手や『稲積』選手、まだ『学生』を起用しておられるか」

    「これは、『太田垣』選手からの挑戦状です。
     ……再度、確認します。貴方は『学生』が相手でも闘えるのですか?
                                 . . . . .
     ――――『知空』選手と同い年であっても、あのような闘いが出来るのですか?」

    「無論、女人小人も同様です。
     多少の『痛手』を被らなければ、目も覚めないでしょう。
     あれからいかがですかな? 『反町』選手、『尾藤』選手は」

    「――――その表情から伺うに、もう『闘えない』のでしょうな。
     では、三日後にまた、お会いしましょう。……ここは、私が」

95『六道辻』:2021/04/30(金) 18:53:26
  「……わ、私は、その、試合の映像さえ見せれば、
   それで『慧観』さんの気が済むのでしたら、構わないと思いますが」

  「それはダメでしょう、『吉田』さん。
   我々は『アリーナ』の秩序が第一、全ては『興業』の為に。
   選手のわがままで『情報』を渡すのは、あってはならないことです」

  「し、しかし、選手の摩耗は『アリーナ』にとって不利益のはず!
   既に二人の選手を失いつつある今、このまま『慧観』さんを闘わせては――――」

『慧観』の立ち去った後、座席に相対して話し合いを続ける二人。
おずおずと提案をする『吉田』に対し、サングラスを掛け直した『森田』は冷静に言葉を重ねる。
『スタンド』を視認出来るサングラス、『一般人』でも観戦が出来るように『アリーナ』の用意した道具だ。


              「別に、構わないんじゃあないですか?」


サングラスの奥、『森田』の双眸が光る。
表舞台でも名を馳せた『実況者』、幾多の熱戦を見届けた男。


  「『復讐劇』というのは、いつだってウケの良い題材ですからね。
   それに、あの二人は長くは続かないファイターでしたよ。

   『反町』選手は持病があり、『尾藤』選手は私と同じ一般人だ」

  「せ、選手を使い捨てにする気ですか!?」

  「利益になるからこそ、『アリーナ』は住職を『追放』も『始末』もしない」
   その逆も然り、でしょう? ――――『吉田』さん、『全てはアリーナの為に』」


『吉田』は背筋が凍った。
『人生』を賭した試合なのだと、『稲積』と『小久保』の闘いを理解したつもりだった。
だが、それは互いの『情熱』だけでは済まされない別の問題も孕んでいる。
『見る者』は、『観客』は何を思って他人の『人生』を覗いているのだろうか。


   「ファイター達の士気も上がっている。次の試合も『満員御礼』ですよ
    『ニコラ』、『クァンガン』、『B級』の二人も住職には注目している。
    『吉田』さん。貴方はまだまだ、『興業』の世界には疎いようですな」

                       サードマン
               「――――『 第 三 者 』である限り、
                『悲劇』は至高の『エンターテイメント』なんですよ」


三日後に控えた『試合』は『試合』と成り得るのだろうか。
――――『吉田』は不安と疑念を抱いたまま、当日を迎えたのであった。

96『六道辻』:2021/04/30(金) 18:53:42
あの試合から三日後、決戦の時は訪れた。
『太田垣』は『アリーナ』へと到着し、選手控室へと足を踏み入れる。
もうすぐ、試合が始まる。『アリーナ』には『太田垣』の望んだ『ギミック』があるだろう。


(※スタンド能力、能力詳細、持ち物、服装の記入をお願いします)

97太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/30(金) 18:56:05
【ファイター】太田垣 良(おおたがき りょう)  スタンドは『ザ・サードマン』。

      リバーサル
【二つ名】『表裏一体』

【能力詳細】ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1311712763/420-42

【テーマ】WILD CHALLENGER/JINDOU  ttps://www.youtube.com/watch?v=_IWg-mmO_6Q

【服装】ネズミ色のワイシャツ、ズボンは黒の制服、ローファー。今日ははりきってピンクの蝶ネクタイつけちゃった。
【持ち物】ボールペン数本(数はGMに決めていただきたい)、胸ポッケに刺す。

【ギミック要求】デカくて重くて四角いやつ…ありったけ転がしておいて欲しい。
       『冷蔵庫』『クローゼット』『箪笥』『仏壇』、何でもいいです。

98『六道辻』:2021/04/30(金) 18:56:30
>>97
「『デカくて重くて四角い』ものですね。
 とにかく、用意はしてみます!

 唯、用意出来る『ギミック』は一つだけですので、
 必然的に『一種類』となります。上手く、その辺りで調整が出来れば――――」


ファミレスだろうか。ざわめいた声が電話越しに聞こえてくる。
何にせよ、準備は承諾してくれた。後は『当日』まで待つだけだ。

                    ・

                    ・

                    ・

『選手控室』の薄い壁越しに、ガタガタと何やら音が聞こえる。
どうやら、大きなものを運んでいるようだ。『太田垣』の目論見通りならば良いが……。
胸ポケットに挿した『二本』のボールペン、重たい金属製と扱いやすいプラスチック製が一本ずつだ。
鮮やかなピンクの蝶ネクタイもバッチリ決まっている。何処に出しても恥ずかしくないだろう。

99太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/30(金) 18:57:02
>>98
 
  ガタ ガタ…

要求のものの運搬かね…キチンと用意してくれてて安心。


スゥ〜〜〜

  「…」

   フゥ〜〜  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  〜 〜ッ

意気込みはなんとなく決めた。覚悟に関しては十分に。

3秒吸って、2秒止めて、15秒吐く。落ち着きたい時の呼吸法だ。
これやりながら待とう。


スゥ…

100『六道辻』:2021/04/30(金) 18:57:40
>>99
                 スゥゥゥ――――


丹田に意識を集中させ、呼吸法によって意識を整える。


          フッ

   ≪紳士淑女の皆様、おまたせしましたァ!
    遂に、遂にあの『白岡慧観』がB級チャレンジに王手を掛けましたッ!
    『怒り』、『同情』、歓声は皆様の心のままに! ですが、ですが、それが何でしょう!
    『死別』を乗り越えた『仏僧』にとって、外野の言葉など些事に過ぎるッ!≫


『鳩星』とは異なる、前の試合と同じ『森田』が熱弁を振るう。
腹の底から絞り上げるシャウトに、観客達も思い思いに声を上げる。
――――この試合、『太田垣』は全く注目されていないのだろう。


      「うおおおおお!!!! 『慧観』ンンン――――ッッ!!!」


                  「テメェの試合を息子に魅せてやれよォォ!!!!」


      ≪さぁ、まずは『挑戦者』の入場です!
        赤コーナー、『太田垣良』、出てこいやァ!≫
                                             ――――フッ


会場の照明が全て消え、壁面に埋められたLEDライトが戦場を照らす。
吹き上がるスモーク、ライトに着色された真っ赤な煙が『挑戦者』の道筋を浮かばせる。
『太田垣』の入場だ。姿を現せばすぐに、用意した『BGM』が流れるだろう。

101太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/30(金) 18:57:55
>>100
「(始まる…スイッチを入れるッ)」


目の前のステージへと、歩む。



「イイッスねェ〜〜〜…喝采、俺のための!」


いっぱい歓声が聞こえる。この太田垣への熱いエールに違いない!
お辞儀してやろう。手も振っちゃおう。ウィンクもしちゃうよ。
観客にはいっぱいサービスしちゃうぞっ。



  「ありがとう…有難うっ…」「ありがとう御座いまスッ」

  「よろしくッ!」

102『六道辻』:2021/04/30(金) 18:58:19
>>101
己の選んだ入場曲と共に、意気揚々と現れる『太田垣』。
ポップなダンスミュージックが刻む軽快なリズム、歯切れの良いパンクヴォイス、
高みを目指す『向上心』よりも、一発当ててやろうという『破れかぶれ』さえ覚える――――

入場曲:JINDOU『WILD CHALLENGER』
ttps://www.youtube.com/watch?v=_IWg-mmO_6Q



       ≪身長170cm、昨今のアリーナを騒がせる『学生ファイター』!
         彼もまた、その波に乗れるのでしょうか!?

         ――――ピンクの蝶ネクタイがイカしてます!≫


     「いいぞー行けー。              「ファイトー!」
      期待してんぞ」
                               「かっとばせー!」


先ほどの熱声と異なる、何処か投げやりな『声援』が飛ぶ。
実況も対応に困ったのか、『学生ファイター』で括られてしまった。
所定の位置に付く『太田垣』、周囲に在るのは『巨大冷蔵庫』だ。
恐らくは『業務用』だろう。スチール製のそれは、直立したひと一人、スッポリ収まるだろう。


   ≪その能力は明らかにならず、未だに『片鱗』を見せるのみッ!
     温存されたパワーは、果たして『開放』されるのか!?≫


   ≪さあ、『選手入場』です!
    青コーナー、『白岡慧観』ン!≫    ≪出てこいやぁ!≫


             ブシュゥゥゥゥ――――z______


青色のLED照明がチカチカと点滅し、スモークを真っ青に染める。
以前と同じ格好で現れた『慧観』、今度は『般若心経』を唱えない。
入場曲も以前と同じ、本人の雰囲気と会わない『プログレ』だ。

入場曲:ALI PROJECT 『六道輪廻サバイバル』
ttp://youtu.be/u3NvNKjXRg4


    「貴方が、『太田垣』さんでしたか。
     ――――ここで、出会ってしまえば、」


                    「……よもや、『容赦』の余地はありませんな」



∴∴∴∴■■□□■■∴∴∴∴
∴∴∴■□□□□□□■∴∴∴
∴∴■□□□□□□□□■∴∴
∴■□□箱□太□□箱□□■∴
∴■□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□■∴
∴■□□箱□□慧□箱□□■∴
∴∴■□□□□□□□□■∴∴
∴∴∴■□□□□□□■∴∴∴
∴∴∴∴■■□□■■∴∴∴∴

103『六道辻』:2021/04/30(金) 18:58:39
>>102
そして…お出ましだ、『白岡慧観』。
相変わらずワケのわからん演出だが…

…あれはもしかして『息子さんの使ってた演出』だったり?
誰かに聞けば分かるかな。


   >「貴方が、『太田垣』さんでしたか。
       ――――ここで、出会ってしまえば、」

    >「……よもや、『容赦』の余地はありませんな」



ならば、是非そうしていただきたい。


     「Come onッ!」

104『六道辻』:2021/04/30(金) 18:58:54
    

    ≪ステージに用意しましたのは『巨大冷蔵庫』です!
      電源こそ入っていませんが、『太田垣』選手はどうやって扱うか!?

      これだけの巨物を扱える、圧倒的パワーを有しているのか――――≫


    「良いでしょう、これもまた『救道』なり。
     安息の有り難み、『病院』にて知るといい――――」


柔らかな語調を崩さぬまま、低い声は真っ直ぐに『太田垣』へ放たれる。
『戦意』を露わにすることなく、緩やかな『威圧感』だけが肌に届く。


    ≪さぁ、互いに戦意は十分ッ


                             いざ尋常に、始めェッ!≫


          カァァァ――――z_____   ンンッ!!


鳴り響くゴング。『慧観』は空手から『弓』を発現する。
大きく引き絞られたそれは、中空より現れる『矢』を番えられ、


          ≪出ましたァ! 『エンプティ・エステート』ォ!
            その片鱗の一つ、『弓矢』の発現ですッ!≫


                 ≪『慧観』選手は弓道の有段者でもあり、
                   地元の高校では指導も行っております!≫


    「南無ッ!」


              ―――――バシュッ!


『太田垣』目掛けて、一直線に放たれた。
『和弓』の射出速度は『200km』前後とも言われ、
ピッチャーの硬球を上回るスピードにて、『太田垣』に迫るッ!

105太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/30(金) 18:59:09
>>104
「矢ッスかッ…何も対策してねえッス」 
「…それは!」

 スタンド発現、そしてその左手で『キャッチ』、不可能なら逸らす。
 自分のスタンドのスピードは人間以上、そして器用さは超精度!(ス精BA)


 「『対策』なんて要らないからッスよォ…『ザ・サードマン』!」
  「あんたのプレッシャーに負けはしないッ」


で、西にある冷蔵庫に向かう…冷蔵庫の扉はどこに向いている?

106『六道辻』:2021/04/30(金) 18:59:32
>>105
         ズバ
                  シィッ!!


発現される『ザ・サードマン』、放たれる『矢』をキャッチする。
握った矢に引っ張られる感覚は受けるものの、
さながら『キャッチボール』を取る気軽さでキャッチに成功した。


            ≪『太田垣』選手、ガッチリと捕獲しました!
              矢の勢いを逸らす技量、要チェックです!≫


西にある『冷蔵庫』に到着する『太田垣』。
その『扉』は太田垣側の二つは『南側』、慧観側の二つは『北側』だ。
互いに『扉』を付き合わせるように向かい合っている形だ。


              バシュッ!


『ザ・サードマン』の握っていた矢が解除される。

∴∴∴∴■■□□■■∴∴∴∴
∴∴∴■□□□□□□■∴∴∴
∴∴■□□□□□□□□■∴∴
∴■□□箱太□□□箱□□■∴
∴■□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□■∴
∴■□□箱□□慧□箱□□■∴
∴∴■□□□□□□□□■∴∴
∴∴∴■□□□□□□■∴∴∴
∴∴∴∴■■□□■■∴∴∴∴

107太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/30(金) 19:03:34
>>106
「よっしゃキャッち…」「ち…」

消えたか…矢の再利用はさせない…と。



 「まあいい…自分は『ついてる』」
 よりにもよって『業務用冷蔵庫』用意してくれたんだ…最高。愛してる。


『サードマン』は『白岡』の方を向き警戒。矢は無駄だぜ…

本体は業務用冷蔵庫の南側に回る。
余裕があるなら冷蔵庫の扉をオープンだ!


    「ツいてるッスよ」「冷蔵庫だなんてなァ…」

108『六道辻』:2021/04/30(金) 19:03:57
>>107
       バカァ!


『太田垣』は幸運に感謝し、『冷蔵庫』の扉を開く。
中身は空っぽだ。脱臭剤一つ入っておらず、電源も切れている。


      「『空っぽ』、ですな」


       ザッ                     シ
                  ザッ          ャ
                               ラ
                               ・.
       ≪『慧観』選手、接近です!        ’
         弓矢を捨て、錫杖に持ち替えて『接近』ッ!≫
                                          シャラ ン
                                               ・ .

       「――――哀しい、ですな。
       貴方の縋れる『武器』は、それだけなのですね」


       ≪生身とスタンド、その戦力差を知って尚、歩みを止めなァァ―――い!!≫


『弓』を解除し、『錫杖』に持ち替えた『慧観』は『太田垣』へと接近する。
その両目は真っ直ぐに『太田垣』を見据え、臆した様子は微塵もない。

109太田垣良『ザ・サードマン』:2021/04/30(金) 19:04:18
>>108
「おっしゃる通り。自分のスタンドは、開けた『闘技場』に向かない…」
「戦闘特化でも無いスタンドッスね」


武器は少ない。

「でも…これで十分なんスよ」



一枚の板からも多くの手品を引っ張りだせる、それが『ザ・サードマン』


…… 本体は、冷蔵庫に飛び込むッ!
    本体の背後に続き、『サードマン』も冷蔵庫に入る。で、扉を閉めッ(ス精CA)!

    自分と『ザ・サードマン』は冷蔵庫の中に閉じ込もるのだ!


   「それでは、しばしのお別れ…でもってShowtime!」

110『六道辻』:2021/04/30(金) 19:04:43
>>109
 >   「それでは、しばしのお別れ…でもってShowtime!」


            バタムッ!


     ≪な、な、何を考えているんだァァァ〜〜〜〜〜!?
       『太田垣』選手、引きこもったァァァァ!!!!!!≫


     ≪い、今ほど『解説』が欲しいと思ったことはありません!
       誰か説明してください!? 一体、意味あっての行動なのかぁぁ!!!≫


     ≪これには『慧観』選手も思わず苦笑いィィ―――≫


『太田垣』は冷蔵庫に入ると『サードマン』を重ね合わせ、扉を閉める。
『太田垣』にとっての幸運は二つ。一つは『弓矢』の解除だ。
本来ならば絶好の隙なのだが、それを攻めるだけの武器を『慧観』は用意していない。
もう一つ、扉だ。『マグネット』が切れている。これなら『内側』からでも開くだろう。


               ザッ

                      「摩訶般若波羅蜜多心経」


               ザッ

                      「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五」


               ザッ

                      「蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不」


『慧観』は念仏を唱え、悠然と歩み寄る。
その様子は『太田垣』には解らないが、
近づく足音と朗々とした念仏が聞こえてくる。
狭い空間と相まってさながら、葬式の『遺体』になった気分だ。


∴∴∴∴■■□□■■∴∴∴∴
∴∴∴■□□□□□□■∴∴∴
∴∴■□□□□□□□□■∴∴
∴■□□箱□□□□箱□□■∴
∴■□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□慧□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□■∴
∴■□□□□□□□□□□■∴
∴■□□箱□□□□箱□□■∴
∴∴■□□□□□□□□■∴∴
∴∴∴■□□□□□□■∴∴∴
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