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【場】『 星見スカイモール ―展望楼塔― 』

437佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/19(火) 23:57:04
>>436

         ヒョイ


       「――――へい」


少し癖のあるショートカット。
ミニスカートと、そこから伸びる黒タイツ。
フライトジャケットのポケットに片手を突っ込んだ、ごく普通の少女。
それが、もう片方の手で『落とし物』を拾い上げて。
顔を上げ、若干三白眼気味の瞳を向けて――――


    「落としましたよ、お兄さん」


口の端を持ち上げて笑いながら、前を行く落とし主に声をかけた。

……ところで、彼女は高校二年生。
もしかするとキミとは顔見知りかもしれないし、そうでないかもしれない。

438鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/20(水) 00:10:55
>>437

「え?」クルリ
「ッ?!」
「………あ」

声をかけられて、振り向き。
それが女性であったので、思わず驚いて、目を逸らしてしまって。
そして投げられた言葉の内容を頭の中で繰り返し、慌てて右手の買い物袋の中身を見た。
一番上に入っていたモノがなくなっている。

「すっ、すまない」「お手数を、おかけして…」

なんとか言葉を紡ぎながら、熱くなっていく頭の中で、努めて冷静になろうとする。
拾って頂いたのだから、当然受け取るために近寄らなくてはならない。
なるべく警戒心を与えないように、自然な立ち振る舞いを意識しようとして、自然ってそもそも何だ?という問いに直面し─────。
ようやく、その声に聞き覚えがあったことに気付いた。

「・・・・・佐奇森さん?」

クラスメイトの名前を口にしながら、一瞬だけ顔を上げる。
ちなみに落とした袋の中身は、ホームセンターで買った『ポーチ』と『釘』だった。

439佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/20(水) 00:24:34
>>438

    「ええ、ええ、佐奇森さんですとも」

   「風邪、大丈夫? 顔赤いよ、夕立クン」

カラカラと笑って、『ポーチ』と『釘』を差し出す。
……ん、『釘』?
ポーチはまぁともかくとして……『釘』?

    「……テスト期間中に『日曜大工』?」

     「ってわけじゃないと思うけど、どしたのこれ?」

『ポーチ』もまぁ、変と言えば変な買い物だ。
テスト前に、風邪っぽそうな顔して、『ポーチ』だの『釘』だの買い込むかフツー?

440鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/20(水) 00:44:57
>>439

「…拾ってくれたのが佐奇森さんで良かった」「ありがとう」

ふぅ、と息をつき感謝の言葉を述べながら、マスクをズラす。
そして差し出された『釘』と『ポーチ』を受け取った。
クラスメイトなら、手で受け取る程度なんでもない。いや、なんでもないは言い過ぎたが。
やはり目は合わせられないし。

「オレは無事だよ。これは『予防』」「母さんが少し前に風邪にかかってね」
「とはいえ、もうすぐ治るだろうけど。念のために、今日の買い物はオレが来たんだ」

分かって言ってるのか、それとも素なのか。何となくからかわれているような気がしつつも、首を振る。
心配させてしまっているなら、それはそれで申し訳ない。


>    「……テスト期間中に『日曜大工』?」

>     「ってわけじゃないと思うけど、どしたのこれ?」

「・・・・・・・・・・」ビクッ

思わず、動きが止まる。しまった、せめてこれは袋の一番下に入れておくべきだった。
いや、そもそも落とさなければ良かったのだが。何か上手い言い訳を探さなくては。

「これは、その、ええと…」

「………」

「…佐奇森さんは、『非常食』とか買っておくタイプ?」

441佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/20(水) 01:00:02
>>440

     「ああ、なるほどね」

      「お大事に、ってお母さんに言わなきゃ意味ない気もするけど」

風邪は感染する病だ。
かかった本人、その身内、そしてまだかかっていない人すらも、感染を防ぐために意識するのは重要なことである。
うんうん、感心なことだ。
佐奇森も手洗いうがいは徹底しているが、体調を崩しやすい時期なのだし。

   「……お、妙な反応」

と、鉄が妙な反応を示した。
まぁ彼が挙動不審なのは今に始まったことではないのだが(失礼)。

       「『非常食』?」

    「ああうん、たくさん買い込んであるよ」

      「こないだ『乾パン』の賞味期限が切れたから買い替えたとこ」

     「それがどうしたの?」


              「……まさか……『釘』を……ッ!?」

食べるのか!?(そんなわけはない)

442鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/20(水) 01:14:44
>>441

「…いや、その気持ちだけでありがたいよ」「母さんにしっかり伝えておく」

佐奇森さんはその瞳の影響でか、やや気が強そうな女性に見えるが
責任感が強く、気配りもできる女性だ。『クラス委員長』を務めているのも納得だろう。
そういえば、『山岳部』にも所属していた気がする。


>              「……まさか……『釘』を……ッ!?」

「ないない」「それはない」

顔の前で手を振って真顔で否定する。
『釘を食べる人間!』みたいなオカルト的な話も意外と信じるタイプなのだろうか。
それならしっかり説明しても通じるかもしれないが、ひとまずは、安全策で行こう。

「そうなんだ、やっぱり佐奇森さんはしっかり備えておくタイプなんだな」
「オレもどちらかと言えばそのタイプで、色んな事態…特に自分にとって、都合のよくない事態を想定しておく方でね」
「できれば使いたくないが、いざという時のために準備しておいた方がいいもの」

「ええと」「まぁ」「『コレ』がそうなんだけれど」

そう言って、『釘』と『ポーチ』を指差す。
…何を言っているか余計分からないかもしれない。自分もよく分かっていない。
元よりウソは得意ではないが、女性相手だと尚更かもしれない。

「さ、佐奇森さんは今日は買い物でここへと?」

とりあえず話題を変えることにしてみよう。

443佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/20(水) 01:35:20

   「あはは、ジョーダン、ジョーダン」

『土』とかは聞いたことがあるが、どう考えても『釘』は食べるものではない。
ショートカットを揺らしながら、カラカラと笑う。

    「ははーん、もしもの時の備えってワケ?」

  「なるほどねぇ……」

うんうん、と神妙な顔で頷いて、

     「いやだからって風邪引いた母親に代わって買うこれ?」

   「っていうか全然説明になってませーん」

    「『コレ』が必要になる状況って何よ。ゾンビパニック? でなきゃ不良の『カチ込み』でしょ」

手首のスナップで虚空にツッコんだ。
露骨に不自然だ。それこそ日曜大工でもするんだろうか。テスト期間に?
流石にそれはこう、『テスト前に片付けが捗る』とかのレベルを超えてないだろうか。

      「私は『方程式』と向き合うのに嫌気が差して気晴らしがてらお菓子買いに来たとこだけど」

    「その言い方だとキミ、『僕は違う理由で来ました』って感じ出ちゃうぞー?」

444鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/20(水) 01:47:58
>>443

>     「いやだからって風邪引いた母親に代わって買うこれ?」

>   「っていうか全然説明になってませーん」

>    「『コレ』が必要になる状況って何よ。ゾンビパニック? でなきゃ不良の『カチ込み』でしょ」

「ごもっとも過ぎる…」

目線を合わせずに、頷いた。
仮に自分でもそう思うだろう。ここまで流暢に反論したりはできないが。
ここは覚悟を決めて話すべきか。
彼女には『頭がおかしいヤツ』と思われるかもしれないが、
仮にそうなったとしても、クラスに吹聴するタイプではないだろう。

「オレも買い物がメインではあるけど、察しの通りこれは『私物』でね」
「・・・・・そうだな」

辺りを見回して、人通りが今は少ないのを確認。
何本も束ねられている『釘』の包装を破いて、その内一本を取り出す。

「佐奇森さんは、『超能力』を信じるタイプか?」
「…いや、話がどんどんヤバい方向に向かってるのは分かってる」
「とりあえず最後まで聞いてもらえれば」

445佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/20(水) 01:57:28
>>444

    「お……」

……話が。
少し妙な方向に動き始めたのを感じる。
楽しげに口角を持ち上げたままポケットから両手を出し、その掌を上に向ける。
続けてどうぞ、のジェスチャー。

        「OK」

     「聞こう。聞くよ」

   「とりあえず最後までね」

面白くなってきた。
そんな感覚があった。

446鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/20(水) 21:26:48
>>445

「ありがとう」

頷き、釘の先端で軽く自分の指を刺す。ほんの僅かに、赤い血が一滴浮き出てきた。
その指を見せ、とりあえず、この釘は『本物』だということを伝えておく。

「先日、オレはとある人から、『超能力』に目覚めさせてもらった」

「それで自分の能力について色々と試行錯誤したり」
「目覚めさせてくれた人に対して訊ねたりしてみたんだ」

「オレの能力には、『刃』が必要なんだけど」

釘を握る右手と重なるように、『シヴァルリー』を発現。釘から『殺傷力』を奪い、『なまくら』とする。

『ビュンッ!』

そしておもむろに、左手へと勢いよく突き刺した。

「…家にある刃物は一通り試したし、『日本刀』も借りて試してみたが」
「あまり大きいものは邪魔になるし、普段から持ち歩くのは危険過ぎる」
「それに、殺傷力が高過ぎるしな」

左手を、佐奇森さんへと見せる。血どころか、傷一つない左手を。
そして彼女へと歩み寄り、その『釘』を渡す。

「それでひとまず出してみた結論が、コレなんだけど」
「…『能力バトル漫画』とか見たことある?それなら理解しやすい か も」

説明しつつも、はたしてこんな説明で理解できるかどうか、不安は残る。
傷付かない『釘』に関しても、途中で手品のように入れ替えたと言われてしまえばそれまでだ。
佐奇森さんの懐の広さに期待したいところだが、どうか。
チラリ、とクラス委員長の顔を伺う。

447佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/20(水) 23:48:00
>>446

   「……へぇー」

          「うわっ」

        「…………痛くないの? マジで?」

受け取った『釘』で、恐る恐る自分の手を刺してみる。
……刺さらない。
痛くない!

    「うへー、すごいね夕立クン」

      「『日本刀』借りられる先ってナニ? って感じだけど」

     「あ、剣道場とかだと結構置いてあるんだっけ」

すごいすごいと感心しながら、『釘』を自分のあちこちに刺そうとしてみて遊んでいる。
当然どこにも刺さらない。とても『不思議』だ。

        「……ん、OK」

       「納得した納得した」

          「『釘』よか『カッター』とか『ハサミ』でもいいんじゃないかって気もするけど」

    「にしても夕立クン、度胸あるよねぇ」

      「『自分は超能力者です』って、フツー信じてもらえないよ? ヤバい奴扱いされるって」

ケラケラ笑って――――佐奇森は、フライトジャケットのポケットに手を突っ込んで仁王に立つ。
超能力者とか、フツーは信じない。
フツーは納得しない。当たり前だ。
……けど。


            「――――『こーいう子』でも無ければね。」


傍らに、『スカイラブ』を発現する。

448鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/21(木) 00:28:34
>>447

「『シヴァルリー』は、能力の対象下に置いた刃物に傷付けることを許さない」
「そういう能力なんだ」

『スタンド』の説明を付け加える。
どうやら信じてくれたようで、一安心だ。女性にヒかれるのは慣れているが、
流石にクラスメイトにあまり距離を置かれると、悲しい。

「いや、『地下アーケード』に『骨董品屋』があってね」
「店頭に並んでいたものから、少し『殺傷力』だけ借りさせて頂いたんだ」
「顧問の先生は持っているのかもしれないけど、学生の手の届くところに置くと危険だからね」

実際振ってみて、リーチも扱いやすさも申し分なかったのだが、値段が高いしかさばるし、何より危険過ぎる。
もし仮に『そういう事態』になったとしても、相手の命を奪いたいわけじゃあない。
ただでさえ、『シヴァルリー』。その能力には、危険が伴う。

「カッターやハサミも、あれば便利だなとは思うけど」
「まぁ『釘』はな…色々な所に刺せるのがいいんだ」


>    「にしても夕立クン、度胸あるよねぇ」

>      「『自分は超能力者です』って、フツー信じてもらえないよ? ヤバい奴扱いされるって」

「その通りだとは思う」「でも事実だからな」
「…いや、ヤバい奴ってところじゃあないぞ」

「説明して、理解してもらえなければ仕方ない。それはオレの不徳の致すところだから」

自分は、あまり嘘は得意ではない。だから単純に話して理解してもらうのが得策だと思った。
この前の風紀委員の少女とのやり取りでも思ったことだ。

「でも、キミは信じてくれただろ?─────」

と、そう語りかけた少女の隣には。自分と同じ、『超能力のヴィジョン』。

「・・・・・・・・・・」
「ここのところ、そういう機会が多かったからな…目玉が飛び出るほど驚く!ってわけじゃあないが」
「『クラスメイト』にいたのは流石にビックリだな」

改めて、自分の隣に『シヴァルリー』を発現する。

449佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/21(木) 00:46:59
>>448

     「……キミは人見知りすごいけど、素直だよね」

   「私、好きだなぁ。夕立くんのそーいうとこ」

傍らに視線をやれば、スマートな宇宙飛行士――――『スカイラブ』が『釘』を手に取る。
それから視線は『シヴァルリー』に。
……なるほど、『おそろい』だ。

      「あはは、せっかく勇気出して信用してくれたのに、悪いことしちゃったかな」

    「あ、ちなみに私は初めて見るよ、『私以外』は。けっこーいるの?」

        「結構違うもんなんだね、能力って。私の『スカイラブ』は――――」

『スカイラブ』が握る『釘』に、刻印。
宇宙船のマークが『釘』の頭に刻まれ――――浮いた。
ひとりでに、ふわりと。

       「物を『宇宙船』にできる」

     「面白いでしょ? 派手じゃないけど、縦横無尽。ある程度ね」

『釘』はそのまま無重力めいた挙動で宙を滑り、鉄の目の前に移動した。

450鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/21(木) 01:06:18
>>449

「うぐっ」「・・・あ、ありがとう」

臆面もなく好きだと言われ、また視線を逸らしてしまう。顔も赤くなっているのを感じる。
当然そういう意味でないことは分かっているが、どんな形であれ、自分が評価されることは嬉しいものだ。

「人見知りというか、単に『女性』が苦手なんだ…」「他の男子が何故緊張せずに話せるのか、不思議なくらいだ」

ぼやきながらも、こちらも改めて『宇宙飛行士風』のスタンドに目をやる。
騎士風の『シヴァルリー』とは違った雰囲気だ。そういえば、確かこの少女の夢も、同じものではなかったか。
これが所謂、心象風景的なものなのだろうか?

「…まぁ仮に佐奇森さんが信じてくれなかったとしても、この事をクラスメイトに言うとは思わなかったからな」
「どちらにしろ、その点に関しては間違っていなかったと思ってるよ」

自分以外を見るのは初めて、という彼女に少し驚く。どうやら自分は中々の偶然に遭遇していたようだ。

「学校の中でいえば、中等部二年生の松尾さん」「高等部一年生の今泉さん」
「外なら、この前会った男性の平石さん」「それに『烏兎ヶ池神社』の巫女さん、鳥舟さん」
「鳥舟さんはまだスタンドを扱えるわけじゃあないけど」

とりあえず、この四人の外見を説明しておこう。いざという時に助け合えるかもしれない。
そして、『スカイラブ』と彼女が名乗ったスタンドの動きに注目する。
そういえば、直に他人の能力を見るのは初めてかもされない。
少しワクワクしてしまう。すると、ひとりでに『釘』
が浮かび上がった。
そしてふわりとした独特の挙動で、目の前に着陸した。

「・・・念動力・・・じゃあないのか」
「『宇宙船』・・・・スゴいな、そんな能力もあるのか」

思わず笑みを浮かべながら、『釘』を手に取る。

「佐奇森さんも、誰かの力を借りて『目覚めた』のか?」

451佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/21(木) 01:39:57
>>450

     「へー……気付いてないだけで、結構いるもんなんだねぇ」

そりゃあ、普通は生きていく中で『超能力』なんて必要なものでもない。
今回みたいなケースでもなければ――――親友がスタンド使いだって気付かないまま一生を終えることだってあるかもしれない。
……というか。

   「……夕立クン、女の子ニガテーって言うけどサ」

      「その感じだと、結構女の子とお話できてるんじゃない?」

    「やるねぇ。このこのっ」

鉄の手の中で、『釘』が軽く暴れる。
と言っても乱暴に動くわけでもなく、ちょっとくすぐるようなものだが。

       「ま、素直だしね、キミ。そういうとこなんだろーけど」

     「目覚めた理由は……んー」

ふと、ぽりぽりと頭を掻いて。

         「ぶっちゃけよく覚えてないんだよね」

    「前に通り魔的ななんかに襲われてさぁ。いや怪我とかは無かったんだけど気ィ失っちゃって」

        「起きたら使えるようになってた。夕立クンは違うの?」

452鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/21(木) 20:21:19
>>451

「いや、そういうわけじゃあ…」
「松尾さんは『女性』じゃなくて『女の子』だし」「今泉さんとは、『スタンド使い』だと知る前から何度か話しているし」

妹と同い年以下の子は『女の子』に属するので平気だ。以前に『子供』と言ったら
妹に蹴られたので、とりあえずは『女の子』と分類する事で納得してもらった。
また今泉さんは、人当たりの良く交友関係の広い子だ。初対面で醜態を見せても、ドン引きせずにまた話しかけてくれた。

「鳥舟さんは…まぁ、大人の女性だったからかな」「情けないが、オレの方に合わせてもらった感じだ」

実際に口に出してこそいないが、彼女にも苦手としている事は悟られているだろう。
よく考えれば、店頭の前で日本刀をジッと見て、話しかけても返事の一つもできない男によく対応したものだ。
それとも職業柄、色々な人の話を聞く機会が多いのだろうか。

「『スタンド使い』、なんだか人格者の方が多いのでは…?」
「うおっ?」

手の中に掴んでなお、動き回る『釘』。なんだか一種の生き物のようで、ちょっと可愛く見えてきた。
ゆるキャラにしてはあまりに飾り気がないのがマイナスポイントだが。

「不思議な『マーク』…これがキミの能力下に置かれたってことか」
「ぬいぐるみとかに能力を使ったら、子供がとても喜んでくれそうだ」「いい『スタンド』だな」

手の中で暴れるソレに微笑んで、暴れる釘を袋の中に戻した。


>         「ぶっちゃけよく覚えてないんだよね」

それを聞き。ああ、生まれついての『スタンド使い』というやつか、と思って。


>    「前に通り魔的ななんかに襲われてさぁ。いや怪我とかは無かったんだけど気ィ失っちゃって」

>        「起きたら使えるようになってた。夕立クンは違うの?」


「───────────────」


鉄が、その切れ長の目を見開いた。佐奇森の顔をしっかりと見て、口早に訊ねる。

「それは、いつ頃だった?」

453佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/21(木) 22:41:46
>>452

    「お、今の『レディキラー』っぽい」

   「そこで殺し文句のひとつでも言えるとさらにポイント高いよー?」

なんて、意地悪くからかいつつ。

   「あんまり精密には動かせないけどね」

  「素敵なコでしょ、私の『スカイラブ』。私もそう思います」

笑いながら、『スカイラブ』を引っ込めさせた。
私の『宇宙飛行士』。うん、お気に入りだ。 

   「……ん。いつってまぁ、『ちょっと前』だけど」

   「なーんも覚えて無いんだよね。急だったし……」

 「…………やっぱ心配?」

  「自分とか家族とか、友達とか」

454鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/21(木) 23:11:58
>>453

>   「……ん。いつってまぁ、『ちょっと前』だけど」

>   「なーんも覚えて無いんだよね。急だったし……」

> 「…………やっぱ心配?」

>  「自分とか家族とか、友達とか」


「・・・・・・・・・・」
「少し前に」「オレの妹が腕を『切られた』」
「人混みの中で。何が起きたか分からないと言っていた」

「命に関わるほどの怪我じゃあない」「『ピアノコンサート』に一度出られなくなる程度だ」

「妹が中学生になってから泣いたのを見たのは、あの時が初めてだ」
「だからオレは、『音仙』さんの所へと赴いた」
「その人が、オレを『スタンド』に目覚めさせてくれた人だよ」

一息に説明し、深く息を吐いて首を振る。

「でもソイツは違うみたいだな」「オレの妹は『スタンド使い』にはなっていないし」

455佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/21(木) 23:35:33
>454

      「……夕立クンってさ」


    「結構『タフ』だよね。やるときはやるぞーって感じ」


     「キミは『イイヤツ』だ。そう思うよ」


にっ、と。
笑ってみせて、彼の隣を追い抜く。

   「……やっぱさぁ」

      「あぶない奴も多いんだろうね。『スタンド』って言ったっけ?」

    「人に見えない超能力とか、悪さし放題だし」

     「私を襲った『なにか』も、夕立クンの妹ちゃんを傷つけた『誰か』も」

   「……いるんだよね。この街に。きっと」

……きっと。
そのために『備えて』いるんだろう。彼は。
また、妹が泣かないように。
くるりと振り向いた。ポケットから出した手を伸ばす。

       「荷物」

   「ちょっと持つよ。また落としちゃうでしょ?」

456鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/22(金) 00:14:55
>>455

「…これでも『長男』だからな」

そう言って、笑ってみせる。女性が苦手でも、あまり欲というものがなくても。
譲れないものはある。


>   「……やっぱさぁ」

>      「あぶない奴も多いんだろうね。『スタンド』って言ったっけ?」

>    「人に見えない超能力とか、悪さし放題だし」

>     「私を襲った『なにか』も、夕立クンの妹ちゃんを傷つけた『誰か』も」

佐奇森さんの言葉に、ゆっくりと頷く。

「今のところ、会った『スタンド使い』は皆いい人だった」「キミを含めてな」
「…だから本当は、妹を襲ったのも奇跡的な『カマイタチ』とかで」
「悪い人間なんか元からいなかったっていうのが、一番いい」

「けれど、そうじゃなかった時のために、こうして『非常食』を買っておかなきゃな」

そして、手を差し出してくれる佐奇森さんに驚いた。
…スゴいイケメンだぞ、この子。
いや、見た目は当然可憐な女性なのだけれど。

「じゃあお言葉に甘えておこうかな」「…顔見知り以外の女性に拾われてしまうと申し訳ないし」

袋の中からなるべく軽めなものを選び、別の袋に入ったそれを渡す。

457佐奇森 届『スカイラブ』:2019/02/22(金) 00:39:46
>>456

     「……『オトコノコ』だねぇ」

           「じゃあさ」

      「なんかあったら呼んでよ」

   「私は『長男』じゃないけど、キミの『友達』だし」

……それはきっと、戦う理由には十分だ。
生まれてこの方、喧嘩なんてそう多くしてきたわけじゃないけれど。


   「『宇宙飛行士』は、チームの仲間が困ってる時は共同で問題解決にあたるもの……だからねっ!」


                 ニ カ ッ


うん。つまり――――そういうことだ。
荷物を受け取って、街を歩く。
とりあえず今日のところは、『通り魔』とかは出てこなかった。
それでよかったのだと、そう思った。

458宗像征爾『アヴィーチー』:2019/02/22(金) 01:15:19

カーキ色の作業服を着た中年の男が、ベンチに腰を下ろしていた。
革手袋を嵌めた手の中に、小さな光る物が見える。
それは、一枚の五百円硬貨だった。

親指で硬貨を弾き、真上に放り上げる。
銀色の硬貨が宙を舞い、再び男の掌中に戻る。
しばらくの間、その動作を繰り返す。

何度目かの後で、落ちてきた硬貨を受け止め損ねた。
手から零れ落ちた五百円玉が、床の上を転がって行く。
おもむろに顔を上げ、その行き先を視線で追った。

459一抹 貞世『インダルジェンス』:2019/02/22(金) 02:13:35
>>458
行き先を視線で追うと小さく青白い手が硬貨を拾う。
血管が薄く見える透き通った肌に見覚えがあるかもしれない。

「写真の次はお金ですか?
物は大事にしなきゃ駄目ですよ」

一度はタッグを組んで戦ったが顔を忘れ去られたりしてないだろうか。
不安になりながらも宗像おじさんに微笑みかける。

「去年の1月でしたね。私達が出会ったのも。
宗像おじさんが生きてて嬉しいです。心配でしたから…」

小走りで駆け寄って硬貨を宗像おじさんに差し出す。

460宗像征爾『アヴィーチー』:2019/02/22(金) 13:40:42
>>459

「暇を持て余していたからな」

「街の景色を眺める事にも飽きてきた」

「今の所は二十九回が最高記録だ」

至って淡白な声色で、聞き覚えのある声に応じる。
硬貨を拾い上げた青白い手が、記憶の一部と重なった。

「拾ってくれた事には感謝しなければならない」

「一抹――久し振りだな」

「君も体調は悪くなさそうだ」

差し出された硬貨を受け取り、相手の顔に視線を向ける。
少年を見やる表情は、最初に出会った時と変わらなかった。

「死相でも出ていたか?」

「俺の方は特に大きな変化は無い」

「強いて言えば仕事を一つこなした程度だ」

461一抹 貞世『インダルジェンス』:2019/02/22(金) 20:36:34
>>460
「スタンドに目覚めてから大病を患う事が無くなりました。
何事も気の持ちようですね」

青白い肌は変わらずだが身長は少しばかり伸びたと思う。
それに対し宗像おじさんは変わらない。
ただ、以前より目に見えない『重さ』のようなものが増した気がする。

「昔を思い出すから見に来てしまうんですよ。
何だかんだで街が好きなんですよ、きっと」

「うーん、見た目は全然変わりありませんね。
死相とは違う。見えない何かの『重さ』が増したような?」

宗像おじさんの顔を見上げ首を傾げる。
血生臭い事件に巻き込まれたのだろうか?

「そのお仕事で何か有りましたか?
人を深く傷つけるような事とか…」

462宗像征爾『アヴィーチー』:2019/02/22(金) 23:19:43
>>461

「ああ――」

「骨の折れる仕事ではあった」

投げられた問い掛けから、最初に会った時の光景が脳裏に浮かぶ。
記憶が正しければ、その時も似たような事を言われていた。

「君は少しばかり勘が良過ぎるようだ」

「やはり神父の息子だからか?」

一抹少年の言葉は事実だが、それを話すべきでは無いと考えた。
どんな理由があろうと、人殺しをした話は子供にしていい内容では無い。

「――『猫探し』だ」

「スタンドを持つ猫を捜して欲しいと頼まれた」

暴力的な部分に触れる事を避けて、仕事の内容を告げる。
嘘では無いが、少年の質問に対する答えになるかは分からない。

「スタンドに目覚めるのは人間だけとは限らないらしい」

「君も気を付けておいて損は無いだろう」

463一抹 貞世『インダルジェンス』:2019/02/23(土) 00:38:37
>>462
「スタンドを使う猫の捜索ですか。
人間並の知性を持つ猫ならスタンドにも目覚める…?」

「スタンドは本体の精神を象徴する存在。
猫が本体なら能力は攻撃性より逃走、または飼い主に益が有るスタンド?」

本体が猫だとしたら対処に苦労したはずだ。
依頼主の意向次第では傷つけることが出来ない。
私のスタンドなら猫を『沈静化』できたかもしれない。

「攻撃性の高い猫なら殺処分。益が有るなら捕獲でしょうか?
気紛れな猫がスタンドを使うだなんてゾッとします」

「害虫を駆除するぐらいの可愛いスタンド使いの猫なら飼いたいです!
益が大き過ぎると争奪戦が勃発しますね。絶対に」

それにしても会話する前に感じた宗像おじさんの『重み』。
あれは懺悔室を訪れる人々が共通して持つ雰囲気だ。
程度の差はあれど罪を犯した者が持っていた気がする。

「勘は良くないです。積み重ねみたいなものです。
懺悔に来る人々を観察する内に気がつくように…」

464宗像征爾『アヴィーチー』:2019/02/23(土) 01:26:43
>>463

恐らく一抹は感付いているのだろう。
そう考えながら言葉を続ける。

「俺も詳しくは知らない」

「分かっているのは『金銭的価値を持つ物を増やせる』という事だけだ」

単純な破壊や殺傷のような直接的な危険性とは種類が異なる。
あの猫が秘めている能力は社会自体に害を及ぼす類の代物だった。
存在するだけで抗争の原因と成り得る能力だ。

「俺は処分するつもりだったが別の勢力に阻まれた」

「最終的に猫は他勢力の手に渡ったらしい」

「今は何処かの保護下にいるようだ」

あの猫が生きている限り新たな争いの火種が生まれる可能性は残る。
しかし少なくとも最悪の結末では無い。
今の所はだが。

「君は賢い――こちらが言わずとも大方の事情を察する事が出来る」

「それなら俺が話す必要は無いだろう」

猫は殺せなかったが猫を守る人間は殺した。
それも俺にとっては仕事の一部だった。

465一抹 貞世『インダルジェンス』:2019/02/23(土) 03:09:46
>>464
「攻撃性を持たないスタンドなら『アヴィーチー』の追尾発動も難しいはず。
ダイヤは人工ダイヤのお陰で価格が大暴落したようです。残るは貴金属。
猫は無傷のまま行く先々で争奪戦の招き猫と化しそうです」

「可哀想に。死んじゃった方が楽だったのに…」

「顔を覚えた飼い主が延々と死に続けるなんて地獄だ。
どんな飼い主でも猫にとっては親みたいなもの。
捨てられた側は、ずっと『捨てられた』って『痛み』を捨てられないのに…」

不幸の連鎖を生むであろう猫を利用する無責任な者達に憎悪を覚えた。
自らを捨てた両親に似通った無責任さを連想してしまう。
自然と声に憎悪の念を込めてしまうのが抑えられない。

「宗像さんが死なずに済んで本当に良かったと思います。
そして無限の富を求めて集まった人たちも覚悟の上でしょう」

「新しく背負った『重み』を大切にしてください。
宗像さんなら途中で捨てないって信じてますから」

466宗像征爾『アヴィーチー』:2019/02/23(土) 07:43:35
>>465

少年の言葉に耳を傾けながら、無言で目を閉じる。
それに対して、俺が言える事は何も無い。
出来る事があるとすれば、彼自身の心からの言葉として受け入れる事だけだろう。

「さっきも言ったように俺自身に大きな変化は無かった」

静かに両目を開き、一抹に語り掛ける。
一人の命を奪い自分も死にかけたが、それは大きな変化とは呼べない。
俺の精神は、その前と少しも変わっていないからだ。

「これからも俺は今までと同じ考えで行動するつもりだ」

「その事を君が覚えていてくれると有り難い」

「俺も君の言葉を覚えておく」

手の中には、少年から渡された五百円玉がある。
曇り一つ無い銀色の硬貨が、日の光を受けて鋸刃に似た鈍い輝きを放っていた。
それを仕舞い、ベンチから立ち上がる。

「――君は何か用事で来ているのか?」

「邪魔で無ければ付き合う」

「何しろ暇だからな」

一抹少年は同じスタンド使いであり、一度は共に同じ場に立った事もある。
俺と彼は対照的のように見えるが、同時に何処か共通点のような物を感じていた。
あるいは、そう思うのは俺の考え過ぎかもしれないが。

467一抹 貞世『インダルジェンス』:2019/02/23(土) 09:29:33
>>446
「あっ! ちょっと引きましたか?
感情の引き金が普通と違うから反省しなきゃいけませんね」

自分は普通の人たちと感情を発露する場面にズレがある。
『インダルジェンス』の刃も歪みの一部かもしれない。
『沈静化』の能力に反してスタンドの攻撃性が高いのも歪だ。

「今に至るまで宗像さんは色々有って精神的に完成しちゃってます。
そういったところが羨ましいし、悲しく思ったりします。
いつかは私も変われるかな。大人になりたいな…」

「あっ、忘れるところだった」

スタンドを発現して背負ったランドセルから財布を取り出す。
以前の親善試合で払わせてしまったタクシー代と同じ金額を取り出そう。

「親善試合の後に擦り付けたタクシー代です。
お金の問題は後が怖いですからね!」

学校で給食費が消えた時は酷い目に遭ったものだ。
どれだけ貧乏だろうが泥棒に落ちぶれるほど切羽詰ってない。

「一応、小学生だから暇です。遊び相手も居ません。
唯一の趣味と言えるレトロ自販機の撮影で来ました」

「変わらないって意味では宗像さんと似てるような?
けど、レトロ自販機は撤去されちゃうから微妙に似てませんね」

昭和から稼働するレトロ自販機は奇妙な物が多い。
かき氷にうどん、サンドイッチのレトロ自販機まで存在する。
近年は撤去が進み残り100台の物も少なくないそうだ。

「近くにラーメンのレトロ自販機が有るそうです。
撤去が近いと聞いて駆けつけましたが…」

468宗像征爾『アヴィーチー』:2019/02/24(日) 01:57:32
>>467

目の前に差し出された金を、黙って見つめる。
あの親善試合の内容は、良く覚えていた。
だが、その後でタクシーの料金を自分が支払った事は記憶の範疇外だった。

「ああ――」

「そうだったな」

少し考えてから、手を伸ばしてタクシー代を受け取る。
実際の所、今まで忘れてしまっていた。
その点に関しては、一抹少年の方が大人だと言えるだろう。

「君も暇か」

「なら同じだな」

「俺は無趣味だが」

淡々とした口調で呟きながら、少年の隣に立つ。
第三者から見ると、親子のように見えるかもしれない。
二者の間には、その程度の年齢の差がある。

「――探してみるか」

「撤去されない内に見つける事にしよう」

少年の歩調に合わせて、緩やかな速度で歩き出す。
スタンド使いの猫探しの次は、撤去間際の自販機探しか。
少なくとも、災いの招き猫を捜すよりは平和的に済みそうだ。

469一抹 貞世『インダルジェンス』:2019/02/24(日) 12:48:21
>>468
作業服の男と制服姿の小学生。
傍から見れば奇妙な組み合わせに見えるだろう。
二人の精神的な共通点を知らなければ…

「人間は生きてるだけで精一杯なんです。
趣味は余裕がある人々のやる事ですから」

「私達も生きてる以上に、何かをするなんて余裕は無いんですよ〜」

二人が見つけたレトロ自販機は二日後、撤去されたらしい。
後日、LINEに届いたURLの先には一抹の撮影したレトロ自販機の動画が投下されていた。
ttps://youtu.be/-DDjZWOHSKU

470今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/03/09(土) 23:49:59

         ガヤ

             ガヤ

「……」

    キョロ  キョロ

        キョロ  キョロ

別に首が痛いとかじゃなくって人を探してるんだ。
待ち合わせ場所、ここであってると思うんだけど。

   キョロ・・・

あんまりきょろきょろしてると目立っちゃうかな。
目立って知り合いとか友だちとかに話しかけられる分には、いいんだけど。

とりあえず、待ち合わせの相手が来るか何かあるまでもうちょっと、待とう。

471芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/03/11(月) 21:14:08
>>470

「――展望楼塔の下から見下ろす景色よりも 
ウィゴーちゃん お前のほうがよっっぽど美しいぜ
あぁぁぁぁ!! なんて美しいんだウィゴーちゃんっ!
100億ドルの景色なんぞ霞んじまうぐらいに今日もイカしてる!
はぁぁぁうぅうぅぅぅああああぁぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……フゥ」

『アー ソウデスカ』

「? どうしたの、ウィゴーちゃん??
何時もなら わっ私はウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトですっ☆(裏声)
って可愛らしい声で訂正してくれてるのによぉ〜。
体調悪いなら、今からにでもラブホ行くかい?」

『オメェの話に何時でもツッコミ入れると思ってんじゃねぇゾ 
それとウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトですを、星マーク付けるような
キャラクターじゃない! 私はお前の望む偶像キャラにするんじゃない!!
ケツの穴に指突っ込まれて歯ぁガタガタ言わすゾ それ以上下らない事言うならナぁ!』

「……ウィゴーちゃん、やっと俺の事を掘ってくれる気になったか。
そりゃ 結ばれたいって言う許可が貰えたって事で良いんだよなぁ?」

『クソッ クソォォォオオ!!! どうやったらっっっ
どうやったら、こいつの性根を叩き直せんだ!! どんな薬を与えれば
真人間に戻るんだぁぁ!!!??! 
妖甘様!! comebaaaaaaacK!!!!!』ガリガリ!!

何かをキメてそうな危険な男と、その発言に狂乱して胃薬や精神安定剤らしきものを大量に
噛み砕いてる人型スタンドが通りかかって来た。

472今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/03/11(月) 22:25:28
>>471

うわ。

「うわ……」

間違えて声に出しちゃった。
それくらいフツーじゃないんだもん。

「……」

          ス  ゥゥゥゥッ  ・ ・ ・  →

目を思いっきり逸らしたけど、逸らしすぎたかな。
少なくとも私の方から、あの人たちに話しかける勇気はない。

というか私はあの『スタンド』が見えてるけど、普通は見えないよね。
警備員さんとか、呼ばれてるんじゃあないのかな。大丈夫なのかな。

473芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/03/11(月) 22:56:04
>>472

間違いなく正しい判断を貴方は行う。こんな危険なタッグに
勇気をもって話しかけるのは、ソレは勇気とは言えないのだから。

警備員が来る様子はないが、このまま騒げば。貴方が話しかけない限り
暫く(1〜2レス)すればやって来て、彼等? を追いかけるだろう。


「――あぁ! それにしても俺は悲しい! こんなに可憐で
空前絶後の美しさを担う、俺のウィゴーちゃんを見れるのが
限定って言うのはよぉ。『見える』派の人間以外にも俺達の
愛を見せ付けられねぇってのは こりゃアレだよな? 
女神様の僻みってやつだよなぁあ ウィゴーちゃん」

『まず間違いなく 私がアンタの側に降り立った事に関しては
邪神とか何かの介入があったんじゃないかと、心底思ってます。
それとmy name is ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト
……ウッ  ウッウッウゥウゥ……』 ポロポロ

「んおっ!!? おい、おいおいおいおいおいどうしたってぇんだ
ウィゴーちゃん?!! 突然泣き出したりなんてして?
誰が、誰がウィゴーちゃんを傷つけたってんだ? それとも腹でも
痛くなったかい? よし、仰向けになってくれ。直ぐに俺のテクニックで……」

『そう言うセクハラ発言で私のフラストレーションがMAXになってるって
事をいい加減理解しろよ!!!!』  バキィ!

「ごふっ!!!」

『痛いっっ!! クソ! やっぱ半自立ってこう言う時は呪い染みてる!
自我なんてない操縦型になるか、自立タイプになりたかった!』

「ボディーはやめとけな、ウィゴーちゃん……君の何時か俺の子を宿す
腹に傷が付くってなるとなぁ。そう思うと目の前が真っ暗に」

『医者を呼んで欲しい。主に あんたの頭を早急に改善
いや完全に改造してくれる医者をな!!!』

スタンドがボディブローを本体に仕掛け、漫才とも言いつかせぬ
やりとりをし始めた……。

474今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/03/12(火) 01:14:00
>>473

あの男のひととは、フツーにあんまり話したくない。
下ネタが全く無理とかそういうのじゃないんだけど。
セクハラの中身が、フツーに『良くないと思う』ものだから。
でもユメミンなら最初っから話しかけるんだろうな。不思議だもん。

ズズ

             『〝先生〟ヲ』

「あは、呼んでないですよ、先生」
「あの人たちはお医者さんを呼んだんです」
「先生は、先生ですよ」

傷に反応してでてきた先生には、帰って貰う。
先生は改造なんてできない。
私の頭もあの人の頭も『改善』なんてできない。
できるのは『元通りにすること』だけだ。

あっ、今ので、私が見てたの……バレちゃったかな?

「……あのーっ」

「どうか、したんですか?」

だからこっちから、フツーな感じで声を掛けることにしたんだ。
知らないふりしてて話しかけられたら、ややこしいことになるかもだし。

475芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/03/12(火) 16:14:33
>>474

>どうか、したんですか?

貴方の声掛けに、危ない気配が発散している男は顔を向ける。

「ん? あぁ、そりゃあアレよ。仲睦まじき夫婦の
愛憎三文芝居って奴じゃねーの」 二ヒヒ

『初っ端から三下り半だよ。コッチからお断りだよ
一体全体何時から誰と誰が夫婦になったんだよ』

「そりゃーウィ」

『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト。ウィゴーちゃんじゃ
あーりーーまーーーせーーーーん!
……ゴホン、あちらの末期患者はお気になさらず。既に付ける薬は無きもので』

「万病に効く一番の薬効ってのーは、愛だと思うんだがなぁ、ウィゴーちゃん」

『ポケットにある喉飴でも舐めておけば? 生産業者の愛が詰まってますでしょうに』

「生産より性産の気分……へいへい、OK マイハニー 暫く口を閉ざすさぁ 俺は」ガリポリポリ・・・

男は少々つまらなさそうに飴玉を噛み始める。それに溜息をついて、少し背丈の低いスタンドは
貴方へと自己紹介する。

『改めて、私 ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトです。妖甘様の元を離れて
今はこの社会倫理的有害の主を矯正する為に生きています』

「矯正より、おりゃあ嬌声……」

『喋んなって言ってるだろ』

本体の口に飴玉を再度投げて封じ込めつつ、今泉に溜息を少しつきつつ話を続ける。

『……前途多難ですが、このウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトは負けませんとも。
いずれ、この何処ぞの大麻畑から産まれたのか知れぬ男を社会的模範の存在にしてみせます。
えぇ! このウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトの この手でね!!』

『……私ともは散歩をしておりました。今日は散歩日和で、私はこの町を練り歩き
色々と古い物を見るのが好きなのです』

「俺は、ウィゴーちゃんとデートがてら。ウィゴーちゃんに女友達が出来れば
良いなぁって思いつつ歩いてんだけどねぇ」 ガリガリ ゴクン

「俺ってば、まぁ世間一般から見て 頭可笑しい感じだろ?
それに話しかけるってこたぁ、余程のお節介焼きの善人か。
俺の事良いように利用してポイ捨てしようとするかどっちかだろうさぁ」 ニヒッ

今泉に、病的な笑った目を男は向ける。

「あんたは、前者って感じだよなぁ〜
ま、けども俺とお近づきになるのはNO Thanksって奴だろ?
 そんでもウィゴーちゃんとは仲良しこよしになってくれよ」

ウィゴーちゃんは なーんも悪くねぇからな

『……え? 飴玉腐ってました? もう一粒ぐらい食べます?
あと、ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトですから 自分』

「あぁ〜 まっ そう言う反応だろうなぁ〜よぉ」

スタンドと変な本体の掛け合いは小気味良いテンポで続いている。

476今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/03/12(火) 22:46:48
>>475

「へ、へぇーーーーーーっ・・・」
「ノーサンクスってわけでは、ないんですけど」

反応に、困っちゃうよね。
とりあえず私も笑うのがいいんじゃないかな。そうした。

「えーと、ともかく、よろしくお願いします」
「『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』さんっ」

でも、このスタンドの人はフツーな性格なのかもしれない。
それに――――この人、『妖甘』さんの所で生まれたんだ。
先生といいこの人といい、あそこで貰うスタンドに『意思がある』のかな。

     イマイズミ ミライ
「あ、私『今泉未来』っていいます」
「それで」

         シュルルル

                コール・イット・ラヴ
           『〝世界はそれを愛と呼ぶ〟』

「こちら、私の『先生』です」

          『ドウモ、ハジメマシテ』
          『〝先生〟カ 〝アイ〟トデモ オヨビクダサイ』

先生が挨拶したそうだし、もうスタンド使いだってわかってるし。

「仲良しになれるかは、ちょっとわかんないですけど……」
「せっかく会ったんですし、本体のあなたの方も、よろしくお願いしますね!」

それで、最後にそう付け加えたんだ。
仲良しになれるかはちょっとかなり怪しいと思うけど、フツーじゃないけど、『悪い人』じゃなさそうだ。

477芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/03/12(火) 23:21:21
>>476(お気になさらず)

『宜しくお願いいたします 今泉様 先生』ペコリ

『オォッ 先生も 私のように意思を持ってらっしゃるのですねっ
他のスタンドの見える方々は、これで三人目なのですが。
一人は、こちらの許容範囲外生理的嫌悪№1生物に気をとられて
どんな力かわからなかったですし。もう一人の方は、巫女様ですが
詳しい事情などは聞かなかったので……』

こうして 私と同一の存在に出会えたのは初めてですねと
はにかむように告げる。

「あーぁぁぁあ〜 カメラ欲しいな スタンドのカメラ。
それさえありゃあ、今のすげぇ萌えキュンなウィゴーちゃんを撮るのによぉ
しゃあねぇから心のフィルムだけに焼き増ししておくけどな」

『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトです。即刻ハートからデリートしろ
……ハァ もう少し強い胃薬を呑まないとやってられませんよ』

良い雰囲気を壊すなと、言外に含める諭しを。気が抜けた相槌で本体たる男は返す。

>せっかく会ったんですし、本体のあなたの方も、よろしくお願いしますね!

「え? 俺ウィゴーちゃんとしかよろしくしたくねぇし」

『鉄拳制裁!!!』 ゴンッ! 『痛イッ!! 半自立サノバビッチ!』

今泉の歩み寄る発言に対し、真顔で男は拒否り。それを諫めるべくスタンドは
跳びつつ眉間を叩くものの、DFの関係で共倒れだ。

殴られた箇所をさすりつつ、男は肩を竦め呟く。

「いや実際よぉ。ウィゴーちゃんが品行方正で、滅茶ラブリーだから
誤解されてるかも知れねぇが。俺ってば自覚ありの屑で、気に食わない奴にゃあ
平然と男女平等に怪我させる性格だしなぁ〜」 ガリガリポリ

飴を更に口に放り込み、噛み砕きつつ飲んで今泉に説明を男はする。

「もしウィゴーちゃんと出会わなきゃ、そのまま納得が心の中で整理つかねぇまま
通り魔か何かの鬱憤晴らす生き方してただろうなぁって思うしよぉ。
ただ俺がそう言う事しねぇのは、ウィゴーちゃんがそう言う事するとマジで嫌がる
からって理由だけなのよ。俺にとっての存在理由っつうか、悪い事は控えるってのは
ウィゴーちゃんの為だけなのよ」

『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトです。
……ネェ 度重なる心軋むセクハラパレードワードは あんたん中でセーフなの?』

「?? 愛情表現の何が悪い事なの?」

『無自覚の最低下劣天然かよ! 出来ればそこは意図的であって欲しかった!!』

訂正だ。この本体は『悪い奴』だ。
ただ、『スタンドに偏愛』を持ってる故に、やってないだけで最悪の部類であるだろう。

「……あぁ、あと自己紹介流れする感じっぽいから言うが。
芦田 裕(ひろし) 28歳 探偵事務所の従業員やって金稼いでるわ」

『今の流れの何処にもそんな要素ないですけど!?』

あと、かなり『マイペース』な男のようだ。

478今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/03/12(火) 23:53:58
>>477

「へー、つまり『フツーじゃない』んですねえ」

        『今泉サン』
        『コノ方ハ アマリ・・・』

「あはは、ケガさせられるのは、いやですもんね」
「それじゃあ『ウェア・ディド・ウィ……えーと」
「あ、『ゴーライト』さんとだけでも、よろしくお願いしますっ」

私は笑った。
自分が危ないって教えてくれるこの人はフツーじゃない。
フツーじゃないし、きっとどうしようもないんだろうな。
セクハラとか、ケガさせるとか、ろくでもないのかも。

でも、『愛』の『こころ』は、本物なんだろうなあ。

「芦田さんとは――――知り合いの知り合い?」

「それくらいの距離なら、フツーじゃなくても」「悪い人でも」
「『ウェア・ディド・ウィ・ゴーライト』さんに免じて、大丈夫ですかね」

笑いをもう一度作った。

「――――あ」

そうして、どうやら待ち合わせの相手が来たみたいだって気づいた。

「それじゃ、私そろそろ行きますねっ」
「『ウェア・ディド・ウィ・ゴーライト』さん、またどこかで〜っ」

だから私はそっちに歩いていくんだ。なんとなく、この人たちとはまた会う気がするな。

479芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/03/13(水) 19:51:20
>>478

『えぇ! 今泉さんも先生も またいずれ!
ゴーライト……フフッ 中々良い語感ですね!』

手を振り、ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトは貴方を見送る。

『……ハァ 何であーいう捻くれた言葉しか出さないんです?
友達とか、親しい絆を作ろうとしないのですか』

「そー言うがね、ウィゴーちゃん。あれらが何かの神様の手違いで
一緒の事件事故や、俺の死に目に偶然合うとかじゃない限り
長くはいねぇじゃねぇか」 ヒヒ

「どーせ 人間。産まれた時は混み混みと囲まれようと
死ぬときゃー、俺のような奴は一人よ。
最後には結局一人なのに、何でそこまでなる過程で友情なり信頼なり
築こうとすんのかねぇ。無くなるもんだってのぉによぉ
そんでも俺はウィゴーちゃんが居てくれるから、寂しいどころか幸せさ。
もし、俺から完全に自立して離れられる時になったら
――そんときゃあ殺してくれ」

『……悲しい人ですねぇ』

「慰めてくれんなら 近くの安ホテルで俺のいきり勃」

『セクハラは止めろっつてっんだろ』 バキィ 『痛い!』

今泉を見送り、一人と一体 光と陰のように対極な性格の二人は
別の道を進んでいく。また何処かで、貴方が思うように巡り会うのかも

480鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/04/28(日) 00:42:15

        スタ スタ スタ

   「ふゥーーー・・・」

モール内の『小劇場』での観劇を終え、
『美術館』の敷地内を見て回る『鳥舟』。

美術館。
あまり普段来る場所ではないが、
こういう『文化の匂い』がする場所が好きだ。

(そーいうのが好きな自分が好き、
 なのかもしれないけどさ――――)

今日は休日を取っている。
スカイモールに来たのは、
観劇のためと、それから・・・

(買い物……は、後でいいや。
 もうちょっといい雰囲気味わっておこう。
 ……霧吹きって何の店で売ってるんだろ?)

今まで使っていた霧吹きが壊れたので、
ここまでちょっといいのを買いに来たのだ。
ちょっといいものはだいたいスカイモールにあると思う。

・・・なぜいいものを買いたいのだろう? そこは『気分』だった。

481鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/05/04(土) 01:22:11

その日はほどよい霧吹きを見つけられず、神社に帰った。

482今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/29(水) 14:11:41

「ふう」

        ストン

お買い物をしてるんだよね。
でも、ずっとお買い物してると疲れるから。
こうして休憩もしてるんだよね。

「……」

       キュ キュ

最近暑くなってきたよね。
今日なんて、水筒なんか持ってきちゃった。
脱水症状とか熱中症とか、フツーに怖いし。

「あっ」

        カラン  カランッ  カラッ ・・・

で、そしたらふたを落としちゃって、向こうに転がっていくんだよね。
ここって、もしかして傾いてるのかな。そういうわけじゃない気はする。

483美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/29(水) 20:32:55
>>482

      〜♪
         〜♪
            〜♪

その日は休日で、私はベンチに座っていた。
何軒か店を回った後だったけど、これといった収穫はなかった。
だから、窓の外にある街の景色を眺めながら音楽を聴いていた。

「――ん?」

どうやら、何かが足元に転がってきたみたいだ。
ワイヤレスヘッドホンを外して首に掛けて、それを拾い上げる。
それから後ろを振り向いて、落とし主の姿を確認した。

「あら、これはこれは……」

「今泉さん――よね?」

「こんにちは」

ニコリと笑って、私はフタを差し出した。
買い物の収穫はなかったけど、別の収穫はあったみたい。
こんな所で会うなんて、面白い偶然だから――ね。

484今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/29(水) 23:05:47
>>483

立ち上がって拾おうとしたら、もう拾ってもらってた。

       キョロッ

「あっえー」「くるみさん!」「じゃないですか〜」
「そうです、今泉です。こんにちはっ」

   スッ

「どーも、ありがとうございます」

ふたを受け取った。
ラジオ聴いてるから、久々に会ったって感じはしないかも。

「くるみさんもお買い物ですか?」
「それとも映画見に来たとかっ?」

買い物袋とか、持ってないみたいだし。
フツーにいらないものは買わないってだけかもだけど。

485美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/30(木) 00:36:32
>>484

ラジオで言葉を交わすというのは、職業柄珍しい体験じゃない。
人に会って会話をする事も、どうって事のないごく自然な事だ。
だけど、ラジオで会話した相手と偶然会って話すというのは滅多にない。

「そう、買い物。何か琴線に触れるものがないかなってね」

「でも、今日は『良い出会い』がなくて。それで、ちょっと一休みしてたのよ」

言いながら、少女が買ったらしいものに軽く視線を向ける。
彼女は何を買ったのだろう。
別に詮索するつもりはないけど、話のついでに聞いてみるのも悪くないんじゃないかしら。

「見たところ、今泉さんも買い物みたいね。『良い出会い』はあった?」

私にとっての『良い出会い』は、今こうしてリスナーと会えたって事。
相手が誰でもお喋りするのは楽しいものだけど、リスナーなら更に喜びを感じる。
たとえるなら、生クリームの上に『チェリー』が乗ってるみたいにね。

486今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/30(木) 00:47:13
>>485

「へー、『琴線』……」「琴線、か」
「私も、触れないですねえ」

触れないよ。

「まあ日用品とかの買い物なので、フツーでいいんですけどねっ」

          ガサッ ガサ

「ほら、『ガムテープ』とか」
「『梱包テープ』とか」
「あと、『マスキングテープ』も!」

「どれもフツーな感じのばっかりです」

袋の中をちょっとだけ見せてみる。
そんなに面白い感じのテープじゃないんだよね。
マスキングテープも、『末吉』って感じで。

「やっぱり、ラジオのお仕事だと『琴線』とか大事なんですか?」

「こう」「えーっと……」
「あっ、『インスピレーション』!」
「でしたっけ、そういうのを仕入れるため、みたいな?」

くるみさん、話すの上手だし、普段から色々仕入れてるおかげなのかも。

487美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/30(木) 01:18:05
>>486

「へえ――」

「何だか『テープ』が多いのね?」

      クスッ

品物を見て、素直な感想を漏らす。
彼女が言うように、確かに日用品だ。
『テープ』が多いのは、気になるといえば気になるけどね。

「んー、そうね……」

「常に『刺激』を得るのは大事だと思ってるわ」

「だから、色んな人と会話をする事は心掛けてるかな」

「今まで自分が知らなかった事を聞ける事もあるし」

「そのためには、普段から積み重ねておく事がプラスになるから」

ラジオパーソナリティーは、誰とでも会話を弾ませる事が求められる。
日常の場で交わす普通の会話も、その糧の一部だ。
もちろん、『今の会話』も例外じゃない。

「その中で『良いな』って思う事があったら、話題の一つに出来るじゃない?」

「日頃から『引き出し』を増やしておかなきゃ――ね」

488今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/30(木) 01:30:46
>>487

「あは」「言われてみたら、そうですねえ」

テープ以外は何もないもんね。

「じつはですね〜私、1人暮らしを考えてまして」
「まだ決まってはないんですけど!」
「荷物の梱包テープを買っておこうかな、って」

          ニコ

「このマスキングテープは趣味ですけどね〜」

    ゴソッ

袋はいったん足で挟んで置いておこう。
床に置くのはだし、横だと場所取っちゃうし。

「なるほど」「刺激ですか〜」
「私も、それ、わかる気がしますっ」

それで、私は、笑った。

「いろんな人と話したりして」
「お話の仕方がわかっていくっていうか」
「あは……そのために話すってわけじゃないですけども」

「積み重ねて、引き出せるものを増やすって、大事ですもんねっ」

489美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/30(木) 02:00:47
>>488

少女の言葉に、同意の意を込めて頷く。

「そうね、何事も勉強――」

「せっかく経験した事なら、出来るだけ活かしていきたいから」

「元々お喋りするのが好きだからっていうのもあるんだけどね」

ところで、少し気になる話が出てきた。
彼女が一人暮らしを考えているっていう話。
軽く聞いてみましょうか。
もし言いにくい事情があるなら、その時は話題を変えよう。
彼女の方から話してくれたなら、そんな事情でもなさそうだけど。

「ところで、今泉さんくらいの年で一人暮らしっていうのも珍しいわよね」

「理由を聞いてもいいかしら?」

少なくとも、何の理由もなしに一人暮らしを考える事はないだろう。
もっとも、本当に『考えてみるだけ』ならあるかもしれないけど。
でも梱包用のテープを買うくらいだから、『考えてみただけ』ではない気がする。

490今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/30(木) 02:37:22
>>489

「それをお仕事に出来るんですからすごいですよねえ」
「ラジオ聴いてますけど」「ほんとお話の引き出しが多くって」
「すごいなあって思いますっ」

      ニコ

本当に、フツーに、そう思う。
話題がとにかく尽きないし、リスナ―への対応もうまいし。
なんだかよくわかんないヒトからの電話も、上手に受け流してたし。

「え? 理由ですか?」
「まー、フツーな感じですし、面白いかわかんないですけどっ」

「えっと」「私『清月学園』に通ってまして」
「……っていうのは前にも言ってたかも。あは」

「それでですね」
「『清月館』っていう学生寮があるんですよっ」
「ご存知ですかね」「あの、グレー色のレンガの」
「そこに住んでる友達も、結構いるんですけど」

学校から近いし。お家賃も安いみたいだし。
高等部以上だと、住んでる子わりといるんだよね。

「それでお部屋見せてもらったりしてるうちに」
「私も、住んでみたいな〜って。思っちゃいましてっ」

「まだ決めたわけじゃないですけどね〜」

私は笑って話すんだ。こう思うのって、フツーだと思うし。私もそうしたいと思うし。

491美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/30(木) 03:13:02
>>490

「あぁ!そういえば『寮』があるんだったわねぇ」

「そういうのって気になるものね。その気持ちは分かるわ」

確かに、それなら突飛な話じゃない。
どこかのアパートに部屋を借りるというのは、さすがに難しいだろう。
学校側が管理している施設なら、ご両親も安心するんじゃないかしら。

「何となくのイメージだけど『寮生活』って楽しそうに思えるの」

「友達も同じ所に住んでいたりする訳でしょう?」

「みんなで集まって勉強したり遊んだり出来そうだから」

「もちろん、羽目を外しすぎるのは良くないんだけどね」

振り返ってみると、私は『学校生活』自体があまり経験できなかった。
何せ、その頃は『アイドル』としての活動が忙しかったから。
今は――まぁ、その頃よりは余裕がある。

「一人暮らしって大変な事もあるのよねえ」

「当たり前だけど、全部自分でしなくちゃいけないから」

「私が一人暮らしを始めた時は――メモを取ってたわ」

「家事のこなし方とか、必要な事を色々と書き留めておいてね」

「役に立つかどうか分からないけど、ご参考までに」

        ニコッ

最初は分からない事も多かった。
今は一人の生活にも慣れている。
それがちょっとだけ寂しいと言えば寂しいけど。

492今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/30(木) 04:13:15
>>491

「そうっ」「そうなんですよ」「さすがくるみさんっ」
「友達がたくさん、同じところに住んでるわけで」
「遊ぶのもだし」「勉強とかもだし」

「きっと、それはフツーに楽しいんじゃないかなって」

「――――思うんですよね」

楽しくない時間が無くなるってコトだもんね。
もちろんずっと皆と同じ部屋にいるわけじゃないけど。
それでも、楽しいと思ってられると思うんだよね。

「あー、やっぱりありますよね」
「洗剤とか」「何使うか、とか?」
「そういうのも楽しそうだけど」

「あっメモですかっ、いいですね〜!」
「メモできる『テープ』もありますし」
「そういうのいろいろ買ってみよっかな」

メモ付きマスキングテープ、一応持ってはいるんだけどね。
かわいいのがいいかなって思ったから、本格的にメモできるやつじゃないし。

「……っと、そうだ、そろそろお買い物の続きしなきゃ」
「くるみさん、お話しできてよかったです」「私そろそろ行きますねっ」

493美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/30(木) 15:26:52
>>492

「こちらこそ今泉さんとお喋りできて楽しかったわ」

「それじゃ――『Have a good day!!』」

軽く手を振って彼女を見送ろう。
それからヘッドホンを掛け直して、また街を眺めながら音楽に耳を傾ける。
こんな休日も悪くないわね。

             〜♪
         〜♪
     〜♪

「――Automatic when you look into her eyes〜♪」

494今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/30(木) 23:21:18
>>493

「はいっ、それじゃあまた!」

そういうわけで、買い物の続きをしに行くんだ。

495アウラ『ミ・パライソ』:2019/06/19(水) 20:50:35
日中 ショッピングモール

「えーっと・・・」

「あら? アレの名前って何だったかしら? 天使様 わかる?」

 フルフル

「んー、そうよね。天使様もわからないわよね。
店員さんに聞こうとしても、名称が出てこないと困ってしまうものね」

玩具コーナーだと思うんだけど……と、私立の女学園の制服を身に纏った
少し浮世離れした感じの女性がうろうろとショッピングモールを練り歩いてる。

496アウラ『ミ・パライソ』:2019/06/22(土) 22:12:58
「あ、見つかったわ。これね これ」

探し物を見つけ、帰って行く

497日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/25(火) 22:56:44

       スタッ  スタッ  スタッ

「ふぅ〜〜〜・・・・・・」

            ドサササッ

モール内の休憩スペースに腰を落とした。
『ヘアーサロン』『ネイルサロン』などはともかく・・・
『洋服』『小物』『本』『ぬいぐるみ』『食べ物』と、色々買いすぎた。

・・・総額、『3万円』は超える、大きく膨らんだ買い物袋が目立つ。

498嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/25(火) 23:29:07
>>497

「――わっ」

その大荷物を見て、隣に座っていた少女が思わず声を上げた。
かなり小さい。
具体的には、小学校に上がったくらいに見える。

チラッ

やはり荷物が気になるらしく、それとなく横目で眺めている。
悪いことだと思っているようで、視線は控えめだった。
少女の足元には、ピンク色のリュックが置いてある。

499日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/26(水) 00:39:44
>>498

染めたばかりの『バニラ』のような髪は目立つ。
だから驚かれたのかもしれない――――

「んん」

と思ったら、視線が買い物袋に向いているのに気付いた。
何か子供が気になるようなものを買っていただろうか?

         ガサ  ゴソ

買っていた。気がする。

「どしたの? 何か気になる〜?」
「んふふ」「もしかして、これかなあ」

               スッ

「ぬいぐるみ……あんま子供が好きそうな見た目じゃないけど」

買い物袋の一つから出した・・・さっき買った、『カイコガ』のぬいぐるみだ。

500嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/26(水) 01:01:42
>>499

「えっと――あの」

軽く目を伏せて、遠慮がちに答える。
どう言おうか迷っている、という感じだった。
しかし、ぬいぐるみが出てくると表情が明るくなる。

「わぁーっ」

「何これー!おもしろーい!」

「モコモコしてる」

「可愛いねー」

ぬいぐるみを観察しながら、矢継ぎ早に感想が飛び出る。
大いに興味を持ったらしかった。

「――これって何ていうんですかー?」

ぬいぐるみを指差して質問する。

モゾ

その時、少女の足元に置かれているリュックが動いた。

501日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/26(水) 01:59:59
>>500

「んふふ……」

ぬいぐるみは予想外だったみたいだ。
目当てではなかったのかもしれない・・・何だろう?
けれど、喜んでいるようだし、それはそれでいいか。

「『カイコガ』」

「カイコってわかるかな〜」
「『虫』なんだけどね。『糸』を作るいい虫なんだけど」
「それが大人になったのが、『カイコガ』だよ」

        スッ

「かわいいよね〜」「二番目に好きな虫なの」

触れるように、椅子にぬいぐるみを置いておく。

「じゃあね、教えてあげた代わりに私も質問してい〜い?」
「えっとねえ」「今、私、そのかばんが動いたように見えたんだけど」

            「それって、何入れてるの?」

502嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/26(水) 02:22:32
>>501

「えー!」

「糸が作れるんだー!すごーい!」

「じゃあ――『これ』も『カイコ』が作ってるのかなー?」

そう言いながら、着ているワンピースの袖をつまんでみせる。
糸が集まって出来ているという認識なので、そのような解釈になったようだ。

「ありがとねー」

椅子に置かれた『カイコガ』のぬいぐるみを撫でる。
それから、また視線を戻した。

「あっ――」

「それはねー」

モゾ モゾ

「――『ディーン』だよー」

ピョコンッ

その言葉と同時に、リュックから一匹の犬が顔を覗かせた。
チワワ――世界最小の犬種として知られる超小型犬。
全身の毛は短く、色は黒一色だ。
『DEAN』と名前の入った首輪を付けていた。
首輪には、革紐の『リボンタイ』が結んである。

(……知らない顔だな)

ヨシエの隣にいる少女を見て、そう思う。
一休みしていたら、ヨシエが誰かと喋りだしたのが聞こえた。
それが少し気になって、こうして出てきたのだ。

503日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/26(水) 03:28:28
>>502

「えーとね、シルクって言うんだったかな」
「『絹』だっけ?」「いや、一緒か」

「その服は……さあ、どうなのかな〜」
「私もねえ、そんなに詳しくはないからね」
「『お母さん』とかに聞いてみたらわかるんじゃない?」

「それで、カバン――――」

シルクの服は高級品なイメージがある。
見た所身なりは良さそうなので、不似合いではないけど。

「んん、『ディーン』?」
「って何だっけ――――あっ」

頭の中の辞書をめくるよりはやく、それが何かはわかった。

「ああ〜! ワンちゃんだったんだ。かわいいね〜〜〜」

               スゥッ

椅子に座ったまま身を乗り出すようにして犬を見る。

「『ディーン』か〜……なるほどだねえ、『ポチ』って顔じゃないもんね」

                      「良い名前だと思うよ」

504嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/26(水) 21:40:14
>>503

袖の膨らんだ花柄のワンピースは、どことなく質が良さそうに見える。
長い髪をくくっている花モチーフの髪留めも、安物ではなさそうだ。
全体的に、中流以上の家の子という雰囲気が漂っていた。

「あっ……そうですね!」

『お母さん』という言葉を聞いて、一瞬表情が沈んだ。
しかし、それを隠すようにすぐに笑顔に戻る。

(…………)

それを見て、俺にはヨシエが寂しがっている事が分かった。
何か言葉を掛けてやりたいが、今はマズい。

「ね、これって『カイコガ』っていうんだってー。
 『糸』を作ってくれるんだよー」

ぬいぐるみを指差したヨシエが、俺に言った。
返事する代わりに、俺は軽く頷いた。

「この前も『ポチ』っぽくないって言われたよねー?」

「お姉さんと同じくらいのお姉さんにー」

横丁で遭遇した少女を思い出した。
そういえば、そんな事を言われた気がする。

505日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/26(水) 23:08:02
>>504

「?」

1人でいるのもだが、親と喧嘩でもしたんだろうか?
フォローするのは大げさかな、と考え、特に追及もしない。

「へえ? そうなんだ。流行ってるのかな〜?」
「パクった!って『使用料』とか取られたらやだねえ」

「まあ実際なんというか、『りりしい』っていうのかなあ」
「『ポチ』とか『ちび』って雰囲気じゃあないよね」
「体は小さいけど〜」

              ノソッ

「『ディーン』ちゃん、こんにちは〜」

犬としゃべっているかのような様子をほほえましく見守る。
そして身を乗り出した勢いで椅子から体を滑らせ、犬の前に座った。

「ね、ね、この子って触ってい〜い? 他の人には慣れてなかったりするのかな?」

その『お姉さん』とやらが何者なのかは分からない・・・
これくらいの年の子なら、『17歳』も『27歳』も『同じくらい』に見えてておかしくはない。

      おないどし
もし本当に『17歳』だとしても見当がつくわけじゃあないけど。見てる番組やサイトが同じなら、語彙も似るもんだ。

506嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/26(水) 23:39:15
>>505

「いいと思うよー!ねー?」

ヨシエは確かめるように、俺に言う。
特に乱暴そうでもなさそうだし、まぁいいだろう。
俺としては『そういう意味』を込めて、ヨシエと『バニラ色』の髪の少女を交互に見返す。

クーン

挨拶されたようなので、こちらも挨拶を返した――つもりだ。
もっとも、それが伝わることは期待していない。
何も反応せずにいるのを、『拒絶』の意味だと解釈されても困る。

「前に会った『ルナのお姉さん』はー……。
えっとー、『金色』みたいな『銀色』みたいな髪の毛だったよー」

「――あと、『おっきい人』がいてー」

(おい、ヨシエ……そこまでにしておいた方がいいぞ)

それ以上はトラブルの元にもなりかねない。
注意したかったが――今スタンドを使うのは却って危険だ。
よって、今は傍観するしかなかった。

507日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/27(木) 00:22:47
>>506

「んふふ、よ〜しよしよしよし」

           シャシャシャシャシャッ

毛を梳かすような手つきで犬を撫でつつ、話を聞く。

「『ルナ』?」「金みたいな銀の髪、え〜」
「えーっとね、名前〜……なんて言ったっけ」

       ヒヌマ ルナ
「ああ〜。『日沼流月』かな? 知り合いってわけじゃないけど」

知り合いの知り合いくらいだが、目立つ存在だ。
珍しい名前なのもあって、知ってはいる・・・けど。

「ん〜……んん、『おっきい人』っていうのはなんだろ?」
「その子たしか『不良』だからね〜。その方向の知り合いかな」

もちろん身長が高い男子や女子はいるだろうが・・・『人』という言い方が妙に気になった。
この子は年上の人間は『お姉さん』と呼んでいるのだし、何か理由でもあるのだろうか?

「ちなみにだけど〜、その『おっきいヒト』っていうのはどれくらいおっきかったの?」

そういうはっきりしない疑問に毎回首を突っ込むわけでもないが、今日はなんとなく、気になった。

508嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/27(木) 01:01:47
>>507

キューン

俺は、ほとんど反射的に喉を鳴らす。
撫でられるのは心地良いものだ。
ヨシエに対する心配があっても、この『自然の法則』には逆らえない。

「そうだよー、『ルナのお姉さん』」

「ヨシエとディーンとお話してくれてー」

あの時は、相手が悪意のある人間じゃなくて助かった。
だが、次もそうだという保証はない。
だからこそ、こうして注意しておかなきゃならない。

「えっとね〜――」

「『あれ』くらい、かなー?」

辺りを見回してから、店の前に置かれている『宣伝用パネル』を指差す。
その大きさを人間の身長に当てはめると、かなり『大柄』になるだろう。

「『長いコート』みたいなの着ててー」

「えっと――――『強そう』だったよー」

ヨシエは、『サグ・パッション』について喋っている。
ほとんど見かけだけの情報なのが幸いと言えば幸いか。

509日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/27(木) 01:41:09
>>508

「『ディーンとも話した』? ふ〜ん、なるほどだねえ」
「まあ〜、そういう雰囲気はなくもないか」

      「よしよしよし」

           シャシャシャッ

「私は残念だけど、ワンちゃんとおしゃべりは出来ないからなあ」
「『ディーン』ごめんねえ」「って言ってもわかんないかな?」

子供相手だから付き合ってあげたんだろうか。
それとも真剣に犬と話してたのだろうか。

知り合いの知り合い……人柄の奥底までは知らない。

「ふん、ふん」

          キョロッ

「あのパネルくらいのおっきいヒトね〜、結構大きいねえ」
「それに、こんな季節なのに『コート』……珍しいヒトもいたもんだ」

長いコートと、具体的な『身長』。
それがかえって現実味を薄れさせているが……『じゃあ何』って言われると返事に困る。


「ま〜でも、いなくはないか。お話教えてくれてありがとうね」

犬を撫でるのをやめて、もう一回椅子に座りなおした。ハッキリ何とは言えないが、違和感は残りながら。

510嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/06/27(木) 02:16:25
>>509

「うん――すっごく『珍しい』と思うよー」

「ヨシエも最初はビックリしたしー」

あれを見た時は、俺も驚いた。
しかし、『ワン・フォー・ホープ』の能力なら『逃げに徹する』事が出来る。
万が一あれが危険なヤツだったとしても、ヨシエに怪我をさせる気はなかった。

「あっ、そろそろ帰らなきゃー。
 今の季節は暗くなるのが早いから、遅くなるとダメなんだってー」

花柄のケースに入ったスマホを取り出して、ヨシエは言った。
もうすぐ家では、家政婦が夕飯の用意を始める頃合だろう。
それが終わる前に帰ると、出掛ける時に言っていたはずだからな。

「お話してくれてありがとー、お姉さん!」

ヨシエは立ち上がり、リュックを背負った。
そして、今まで話していた少女に笑い掛けた。
俺も、リュックの中から少女に視線を向けていた。

511日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/27(木) 03:01:46
>>510

謎の大男については、ここでこれ以上考えても仕方ない気がした。
なのであいまいにうなずいて、それでおしまいにした。

「そっかそっか。うん、それじゃあまたね〜」

           サッサッ

「帰り気を付けてね」「危なっかしくはなさそうだけど」
「『ディーン』も気を付けて。暑くなったらすぐ鳴くんだよ」

「んふ、これで私も『ディーンとしゃべった』事になるのかな」

手を振って、椅子に座ったまま少女と犬を見送った。
いたってふつうの会話――――のはず。なのだけれど。

「……あ〜っ、そういえば『名前』聞いてなかった」

               「から?」

                   「じゃない、気がするんだけど〜」

なんとなく、何か『核心』のようなものが見えていなかった気がした。不思議な感覚だった。

512斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/15(月) 23:35:03
休日に展望台から見る、雨上がりの果ての無い空には虹がかかっていた
斑鳩 翔、彼はただ、その空をぼうっと見上げている。

(…………)

頭の中の泉から、言葉にするのも難しい思考の切れ端が浮かんでは沈んでいく
鏡に映った自分の『スタンド』を見ると、全部を忘れて空を見たくなった。

突き動かされるように、衝動的に此処まで走ってきた
高層ビルと電線に切り取られた空は、自分の姿とダブって見える
広い空がいい、雲一つない青い空が。

(ーーでも、胸に泥が詰まっているような感覚が、まだ消えない。)

時折、星見町から吹き上げる湿った夏の風を受けて、色褪せたスカーフが揺れた。

513<削除>:<削除>
<削除>

514美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/07/16(火) 10:04:32
>>512

その日、私が展望台に来たのは何故だったかしら。
そう――きっと、ちょっとした気紛れね。
そして、私が彼の隣に立っていたのも些細な偶然。

部屋の掃除をしていたら、ステージに立っていた頃の記念品が色々と出てきた。
私にとって、それは栄光の記憶。
眺めている内に、何となくセンチメンタルな気分になって――気付いたら、ここにいた。

ちょうど、目の前を一羽の小鳥が横切っていく。
あれは『サンコウチョウ』ね。
こんな所で見かけるなんて珍しいけど――。

無意識に、その姿を目で追った。
それに従って視線は流れていき――その方向には彼がいた。
いつだったか、ゲームセンターで出会った少年。

「――――こんにちは」

     ニコッ

「『斑鳩翔』君よね。私を覚えてる?」

515斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/16(火) 20:00:55
>>514

視界の隅で何かが横切った
虚ろな目で追うと、尾の長い鳥が丁度、枝に止まって羽を休めている

(サン…コウチョウ……?)

小鳥が記憶から意識を引き戻すのと、隣から声がかけられたのは、ほぼ同時だった

(……笑顔にしないと)

振り向いた先の顔を思い出すより先に、聞き慣れた声だと思い出す方が早かった
ラジオから聞こえる、カナリアのようなよく通る声。


「雨ばかりの日々だと、貴女みたいな声の方は、忘れられそうにありません」
「こんにちは、美作さん」「覚えていますよ。」

そうして笑顔を作り上げる
自分を見失っていようと、流石に気づきもしなかったのは僕の手落ちだ。

(えっと……)


「美作さん、は」
「ーーどうして此方に?虹でも見に来ましたか?」

516美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/07/16(火) 20:42:17
>>515

「ありがとう。そう言ってもらえるのが、私にとっては何よりの報酬よ」

明るい声色で応じながら、彼の笑顔を見つめる。
その表情は、前にも見た事があった。
ただ――その時と比べると、どこか弱く感じるのは自分の思い過ごしだろうか。

「――――『私』?」

おかしな所なんて何処にもない、至って普通の何てことない質問。
だけど今の私には、まるで不意打ちみたいな響きに聞こえていた。
答えるまでに少し間が空いたのは、多分そのせいだったんだと思う。

「私は――――『君に会いたくて』、ね」

いくらか艶っぽい声色で、囁くように『理由』を語る。
それは、場を和ませるための軽いジョーク。
言ってから、悪戯っぽい笑みを口元に浮かべた。

     クスッ

「ごめんなさい、怒らないで。
 ホントは鳥を見にきたのよ。『バードウォッチング』が私の趣味の一つだから」

「ほら、あそこにもいるでしょう?ここからだと、よく見えるの」

『偶然』見かけた『サンコウチョウ』を指差してみせる。
『バードウォッチング』が趣味なのは本当だが、その時は双眼鏡を持参している。
今の自分は――『手ぶら』だった。
だから、これは咄嗟に思いついた『ウソ』。
『本当の理由』は、さっき自分が頭の中で考えていた通りだ。

「でもね――君に会えて嬉しいのは本当よ」

これは『ウソ』じゃない。
紛れもなく本当の事。
そして、『何てことない普通の質問』を問い掛け返す。

「――――斑鳩君は?」

517斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/16(火) 22:03:18
>>516

(ッ…)

急に頬が熱くなるのを感じて、冷静さを取り戻そうと首を振る
僕の周囲には僕をからかう女性が妙に多い気がした
(……いや。)きっと気のせいだろう たぶん。
彼はジョークだと解れば、苦笑しつつも同じく茶化すように口を開いた

「悪い人だなぁ」


彼女への問いはバードウォッチングと言われた、成程。
そういえばゲームセンターでも鳥のぬいぐるみを……どうかした記憶がある
鳥が好きな彼女の趣味だと思えば、疑う余地は彼には無かった。



「僕?僕は――」



「空を見に来たんです」

僅かに顎を引く。

「……正確に言うと、少し悩んでて」
「電線と高層ビルに切り取られた空とか、窮屈だと思うんですよ、それで此処に。」

そう言いながら再び空を見上げる彼の眼に、虹が映った
僅かな間、懐かしい景色を見るように目を細めた後に、彼女に向き直り、首をかしげる

「おかしいですかね?やっぱり。」

518美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/07/16(火) 22:48:08
>>517

「『電線と』――――」

「――――『高層ビルに切り取られた』――――」

「――――『窮屈な空』」

緩やかに歌うような口調で、少年が発したフレーズを繰り返す。
透き通るような声が、雨上がりの空に溶けて消えていく。
それが聞く事が出来たのは、隣に立つ少年と『鳥』だけだった。

「『ステキな歌詞』が出来そうね。良いセンスしてると思うわ」

冗談のような言い方だったが、ジョークではなかった。
心に感じた素直な感想を、率直に口に出しただけ。
でも、それは本題じゃない。

「そうね――『私の価値観』だと、それは『ユニーク』と呼んでるわ」

「『独特』という意味よ。その人にしかないもの」

「『外見』も、『言葉』も、そして『心』も――ね」

「それって、とても魅力的な事だと思うの」

「これが『美作くるみの価値観』よ」

果たして、彼の問い掛けに対する答えになっているだろうか。
正直な所、それは分からない。
ただ、自分が発した答えが、自身の信条に基づく『本当の言葉』である事は確かだ。

519斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/16(火) 23:44:03
>>518

「独特。」

眼を見開き、ぽつりと言い直した、その言葉には驚きが僅かに含まれている

彼にとっては独特というのは聞き覚えがあった
過去の彼には散々聞き覚えがあったのだ。

「成程、独特か……」

彼女、美作くるみの発言をゆっくりと咀嚼する

大体の場合、それは斑鳩にとって、敬称と無理解を通して言われる言葉だった
そしてその全てがどうでもいい事であった
自身の評価を決定していたのは、彼の両親であったから

そして今、もはや彼の良心は、周囲の無理解ゆえに彼の傍から離れた
彼自身が、自らの評価を決定しなければならなくなっている

その中で『美作くるみと言う人物』の心からの本当の発言は
過去に聞いた『独特』という言葉とは、違って聞こえた。

「……美作さんは褒めるのが上手だなあ。」

(ーー多分、これは褒めているんだろう、ならこう答えるのが正しい筈だ。)

照れくさそうに頬を掻きながら、彼は笑った。

「リスナーさんが、貴女に首ったけになる理由が一つ、解った気がしますよ?」

(何故かな、悪い気がしないし、聞き慣れている彼が騒がないのは…寝ているんだろうな。)

520美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/07/17(水) 00:43:42
>>519

「あなたこそ人を褒めるのが上手いじゃない。ねえ、斑鳩君?」

   パチッ★

少年に向けて、軽やかでチャーミングな『ウィンク』を飛ばす。
かつてのアイドル時代に培った『技術』の一つ。
もっとも、『顔出し』がない今は、使う機会は大幅に減少しているが。

(何だか私の方が励まされちゃったみたいね)

少年が返してくれた言葉が胸に響いた。
『今の自分』として、新しい道を歩んできて良かったと思える。
さっきまで胸の中に燻っていた『靄』が、少しずつ晴れていくような感覚だった。

「う――――んッ」

不意に、その場で大きく背を伸ばす。
そして、深呼吸する。
『新しい空気』を胸いっぱいに取り入れるために。

「斑鳩君、これから時間あるかしら?良かったら、ちょっと付き合ってくれない?」

「甘いものが食べたいの。下の喫茶店、結構美味しいのよ」

「何か奢るわ。今は気分が良いから」

「君と、もう少しお話したいし――――ね」

明るく、気さくな笑顔で持ち掛ける。
少年の心の『深奥』までは覗けないし、踏み込む気もない。
それは私の方にしても同じ事だから。
だけど、無理に立ち入らなくたって、お互いに良い影響を与え合う事は出来ると思う。
もしかすると、それは私の自惚れかもしれないけど、でも、きっと――――。

521斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/17(水) 20:46:17
>>520

「喜んで、ご同行させて頂きます。」

この笑顔は作る必要が無かった。

様々な感情と共に、色々と言おうとして、舌に乗せた言葉は、これだけしか出てこなかった。
上機嫌な彼女について行こうとする最後、もう一度だけ空を振り返る。

何処までも青く、広い広い空
虹はもう消えかかっていて、薄っすらと過去の記憶のように残るだけ

(僕の進む先で、あの虹のように、今を昔として思い出す事があるだろうか…)

青空は何も答えず
それで良しとして斑鳩も後に続いた

そんな彼らの背景でサンコウチョウが一声鳴いた。


    ツキヒホシー

522比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/07/22(月) 23:01:40

スカイモールにある一軒の喫茶店。
その一席に、一人の男が腰を下ろしている。
モノトーンで纏めたストライプスーツにフェドーラ帽を被った優男風だ。

(――――『力』)

(力を得たからといって、それを使わなければならない理由はない)

男のテーブルにはあるのは一杯のコーヒー。
そして、五枚のトランプ。
全てが裏向きにして置かれている。

(しかし――使わずに腐らせるというには惜しい)

(どうしたものでしょうね……)

ここは窓側の席で眺めが良い。
だから、あえて相席をする人間もいるかもしれない。
…………あるいは、単に店内が満席だからかもしれないが。

523塞川唯『クリスタライズド・ディスペア』:2019/07/22(月) 23:20:19
>>522
隣の席から、女の喋り声が聞こえてくる……。

「――よォ、『ヨシ男』。
あたしを待たせるとは、いい根性してるぜ……何?
………チッ、わーかったよ。行って来い行って来い! じゃあな!」

ふと見ると、高価な服を着崩したような、
アンバランスな恰好の女が、スマホで喋り終わった所だった。
ため息をつき、何気なく『比留間』と目が合う。

「………なんの『マジックショー』が始まるんだ? そりゃあ。
ちょーどヒマなんだ。私にも見せてくれよ」

馴れ馴れしく話しかけて、
対面の席にドカっと腰を下ろす。

524比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/07/22(月) 23:39:44
>>523

その時、男は一枚のカードに手を伸ばす所だった。

(これは『ダイヤ』かもしれないし、『スペード』かもしれない)

(あるいは『ハート』かもしれない。『クラブ』の可能性もある)

(それとも…………『ジョーカー』――――か?)

心の中で予想を立てながら、カードをめくる。
そこに描かれているのは道化師の図柄。
『ジョーカー』だ。

(当たりましたか……しかし、これは単なる『カン』でしかない)

(逆に言えば、完全な『当てずっぽう』でも五分の一で当てられてしまう……)

思案している最中、不意に声を掛けられた。
顔を上げて、その相手を確認する。
全く知らない顔だったため、少々面食らった。

「ああ、いえ――まだ練習中でして」

「昨日から始めたばかりなんです。
 お見せする程のものじゃあありませんよ」

「何しろ出来が悪いですからね」

テーブルに置かれているのは、ごく普通のトランプだった。

525塞川唯『クリスタライズド・ディスペア』:2019/07/22(月) 23:54:33
>>524
「『始めた』。 なるほど。
これは、どーいうんだ?
私が選んだのを当てるとか、そーいうヤツかな」

面食らう『比留間』を尻目に、
興味深そうにじろじろと観察しながら、
トランプの一枚を適当に捲った。

「『練習』なら、観客が居た方が良いだろーがよ。
『手品』ならな」

526比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/07/23(火) 00:30:54
>>525

カードの中で、白い花を携えた女性が塞川に微笑んでいる。
めくられたのは、『ハートのクイーン』だった。

「なるほど。確かに言われてみれば、そうかもしれませんね」

「では、僭越ながら――――」

それまで置かれていたトランプを退かし、新たに五枚のカードをテーブルの上に置く。
ただし、今度は裏向きではなく、『表向き』の状態で置かれていた。
カードの内訳は、左端から『ダイヤの4』、『ハートの3』、『ダイヤのエース』、『スペードの9』、『ハートのジャック』だ。

「これから、この中のカードを一枚だけ『心の中』で選んで下さい」

「中央に置かれた『ダイヤのエース』――『位置』としては、これが一番目立つでしょうね。
 その隣の『スペードの9』は、たった一枚だけの『黒いカード』です」

「その隣にある『ハートのジャック』は唯一の絵札――これにも何か意味があるかもしれません」

「しかし――あなたは、そんな事を考えたりせず、一枚だけ心の中に思い浮かべて下さい」

これは、ごく初歩の『メンタルマジック』だ。
成功するかもしれないし、しなかったとしても別に不思議はない。

527塞川唯『クリスタライズド・ディスペア』:2019/07/23(火) 00:45:39
>>526
「ほお……それっぽい感じだなァ。
ああ、思い浮かべたぞ。
だが、私は天邪鬼な人間だからな……
期待には沿えないかもわからんがね」

『比留間』の言葉を咀嚼するように聞きながら、
ひとつのカードを心の中で思い浮かべる。

「これだけで『わかる』のか?
私が選んだものが?」

528比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/07/23(火) 01:02:51
>>527

「ええ――そういう『マジック』です。
 ただ、何事も『例外』はありますから。
 あなたの言われる通り、全ての人間に当てはまる訳ではありませんからね」

そう、例外はある。
『力を持つ者』の存在も、その一つと言えるだろう。

「それに先程も申し上げた通り、まだ『練習中』の身なもので。
 外れてしまった場合は、どうぞご勘弁願いますよ」

「それで、ええと…………」

     スッ

そう言って、おもむろにテーブルに腕を伸ばす。
そして、一枚のカードを手に取った。

「あなたの選んだカードは――――『これ』でしょうか?」

取り上げたカードを塞川に見せる。
左端から二番目に置かれていた『ハートの3』だ。

529塞川唯『クリスタライズド・ディスペア』:2019/07/23(火) 01:18:01
>>528
眼前のカードの柄に、片眉を上げて比留間を見た。

「へえ……面白いな。
どういう仕掛けだ?
確かに私は『それ』を選んだ。
何か騙くらかされたようで、シャクだがなァ」

そう言って、クックッと笑う。

530比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/07/23(火) 01:54:18
>>529

「――――恐縮です」

軽く会釈して、短く礼を述べる。
それから、原理についての説明を始めた。

「これは『フォーシング』と呼ばれるものですね。
 観客に自由に選んでもらうように見せて、
 実際は手品師が『選んで欲しい答え』に誘導するテクニックだそうですよ」

「今の場合ですと――――
 まず、『目立つが気にする事はない』と言われた三枚のカードを、
 人は無意識の内に除外しやすくなります」

「つまり、これで『ダイヤのエース』と『スペードの9』、
 そして『ハートのジャック』の三枚が対象から外れる事になりました」

「残ったカードは『ダイヤの4』と『ハートの3』ですが、
 日本では『4』は『死』を連想させる数字として知られていますね。
 ですから、他の数字と比べて避けられる可能性は高い訳です」

「それが『端』に置いてあれば、『ダイヤの4』が選ばれる可能性は更に低くなります。
 最後まで残るカードは一つだけ――――『ハートの3』しかありません」

説明を終えて、『ハートの3』のカードをテーブルに戻した。
代わりにカップを持ち上げ、時間が経って冷めてしまったコーヒーで喉を潤す。

「お分かり頂けたでしょうか?」

531塞川唯『クリスタライズド・ディスペア』:2019/07/23(火) 21:12:34
>>530
「ふん、成程……。
話術によって、心理を誘導する。
この『手品』、これ自体もその一環か?」

真正面から『比留間』をじっと見据えて、
木のテーブルをコツコツ、と叩く。

「こんな事は、態々言ってやる事でもないが……。
あんたはもっと別の事の『練習』。それをやろうとしてたんだろ?
『観客』の要らない事をな」

「ま、それはいいか……・。
私の『手品』も、あんたに見せてやるよ。
その5枚の『トランプ』。
シャッフルして並べな。ただし『裏向きに』……だ」

「そしてあんたが指した『一枚』。
それを私が『当てる』ってのはどうだ?
見事当たったなら……そうだな。ここの払いをあんたが持つってのはどうだ?」

532比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/07/23(火) 22:01:16
>>531

塞川を見つめ返し、コーヒーカップを音もなくテーブルに置く。
その表情は穏やかなままで、特に様子が変わったような雰囲気は感じられない。

「個人的な事で申し訳ありませんが、『ギャンブル』はしない主義ですので」

「ですが――支払いは私が持ちましょう。
 当たっても、そうでなくてもです」

「『お金を出すだけの価値があるもの』を見せて頂けるなら、という注釈が付きますが」

トランプの束を一つに纏め、手際良くシャッフルする。
そして、上から五枚のカードをテーブルに並べた。
全てが裏向きであり、『透視能力』でもない限り当てる事は出来ないだろう。

「――――では、『これ』を当てて頂けますか?」

真ん中の一枚を指差す。
そのカードの表面は、選んだ比留間自身にも分からない。

(このトランプはジョーカーを含めて『53枚』。単純計算だと確立は『53分の1』…………)

(『当てずっぽう』で的中する事も絶対ないとは言えませんが……。
 よほど運が良くない限り、一度のチャンスで当てる事は不可能に近いでしょうね……)

(しかし、彼女からは『自信』が感じられる。
 その『根拠』が何なのか――――拝見させて頂きましょう)

533塞川唯『クリスタライズド・ディスペア』:2019/07/23(火) 22:37:21
>>532
「フン、こっちは『素人』だぜ。
あんまり『過度な期待』をされてもなァ。
ま、いいだろう………それでいいのか?」

軽薄な笑みを浮かべながら、
指さしたカードを一瞥し、胸元からハンカチを取り出し、
仰々しい仕草で広げ、比留間の手ごと、5枚のカードに被せる。

「このハンカチは『魔法のハンカチ』。
いや、『フーディーニのハンカチ』の方が良いか?
ま、そんなんだ。
こいつを被せ、5秒待つと………」

片眼を瞑り、指を折ってカウントダウンをする。
指が全部折れた頃に、ゆっくりと『ハンカチ』を外した。


「あんたが選んだのは、『スペードの5』」


「………いや、違うな。『同じ柄』は無いからなァ」

  パシッ

そう言った『後』。右端のカードを捲る。
『スペードの5』。

「なら、えと……
『ハートのキング』?
それとも『ハートの3』、『クラブのA』………?」

 パシッ パシッ パシッ

『比留間』が何かを言う前に、
三種類の『柄』を口走り、その『後』に
押さえられている『カード』、『それ以外』を次々と捲っていく。

「あーあ、残念。『すべて外れ』………だったか。
私にゃ、手品の『才能』は無いみてーだなァ」

なんてな、と続けて、肩を竦めた。

534比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/07/23(火) 23:05:40
>>533

(当たった……?それも『四枚全て』……)

(単なる『カン』というのは確立から言って有り得ない。
 何らかのトリックか……。
 彼女の自信を考えれば、それは当然ですが……)

(『あるいは』…………)

「――お見事です。大人しく兜を脱ぎますよ」

「何かあるとすれば『ハンカチ』でしょうか?
 意識を向けさせるための小道具――とも考えられますが」

そう言いながら、ハンカチを一瞥する。
無論、それで何かが分かるとは考えていない。

「それが本当に『魔法のハンカチ』なら可能な技なのでしょうね。
 差し支えなければ、どこで手に入れたか教えて頂けますか?
 私も一つ持っておきたいものです」

「いずれにしても――約束通り支払いはさせて頂きます。
 それに見合うだけのものを見せて頂きましたので」

口元に笑みを浮かべ、自分が選んだカードを引っくり返す。
そこに描かれているのは道化師の絵――『ジョーカー』だった。

535塞川唯『クリスタライズド・ディスペア』:2019/07/23(火) 23:36:41
>>534
(『クリスタライズド・ディスペア』………。
テーブルを『硝子化』し、『スタンド』が覗き込んだ。
……能力の無駄だな。何ムキになってんだ、私は)

自己嫌悪でため息をつき、
薄くなったコーヒーを一口飲む。
ふと、自らのスマホを横目で見た。

「ま、『世の不思議』ってのは、あちこちにあるモンさ。
あんたが選んだのは当たらなかったんだ。お代は結構」

おどけて言って、テーブル二つ分の伝票を持って立ち上がる。

「私は『塞川唯』という。
次がありゃあ、あんたの『練習の成果』をもっと見たいもんだな。
期待してるぜ」

ひらひらと手を振り、
その出会いと同じように、唐突に去っていき………


  ドヒュウッ!

その背中を追いかけるように、
比留間の机の下より『何か』が高速で飛び出し、
『塞川』に追いつくと、直ぐに消え失せてしまった。

536比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/07/23(火) 23:57:12
>>535

「ええ、何事も『例外』というのはあるものですからね」

「有難うございました。
 あなたのお陰で楽しい時間が過ごせましたよ」

立ち去る塞川の背中を見送る。
同時に、テーブルの下から飛び出す『何か』を目撃した。

(『あれ』は……?ハンカチに意識を向けさせて――という所でしょうか……)

「さようなら、塞川さん」

「『比留間(ヒルマ)』です――またお会いする事があれば」

テーブルの上にあるトランプを片付け、懐にしまう。
やがて、席を立って喫茶店を後にした。

     シュンッ――――

歩きながら、片手を軽く開く。
その瞬間、マジックのように五枚の『カード』が出現する。

       シャッ

滑らかな動作で『カード』を扇形に広げる。
一瞬後には、カードは消えてなくなっていた。

「そう、練習は必要ですね――――『何事も』」

537エマ『ソルトフラット・エピック』:2019/08/03(土) 21:58:59
展望台にある双眼鏡で街の様子をぐるーっと見渡している。

中東系の女性で、服装も少々年季が入っている……端的に言えばボロい。
古ぼけたキャリーバックを携えており、端から見れば、バックパッカーか何かに見えるかもしれない。

538エマ『ソルトフラット・エピック』:2019/08/05(月) 00:07:56
>>537
立ち去った

539日沼 流月『サグ・パッション』:2019/08/22(木) 20:52:20

「あっつ〜〜〜〜〜〜ッ!
 夏始まるの遅かったからってさぁ〜、
 気合い入れて挽回しようとし過ぎでしょ!」

     パタパタ

スカイモール低層階は飲食店が充実している。
流行がピークを迎えるタピオカも、もちろんある。

      チラッ

「流月アイス食べるけどさ〜、あんたどうする?」

が、日沼は同行者と話しながら、アイスの店を見ていた。
反骨心があってもタピオカは惹かれるものはあったが、
今は腹に溜まるものより冷たい物だ。夏だから。
というか店とかよりここは冷房が効いてるのが大事だ。

なお、日沼流月の同行者は……>>540かもしれないし、
別の人間で、>>540はそれを見ているだけかもしれない。
なぜ同行しているのかは……>>540が同行者なら、知っているはずだ。

540鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/08/23(金) 00:38:16
>>539

(新発売の『黒糖最中アイス』…うん、美味いな)

スカイモール低層階に構えるアイス店、その中にある席の一つに、黒髪の学生服の少年が座っていた。
テーブルの上に買い物袋を置きながら、手にしたモナカに舌鼓を打っている。
ふと、比較的近くの声に反応して、そちらを見た。その声をどこかで聞いた事がある気がしたからだ。

(アレは…日沼さん?)

あの特徴的な髪色は、なかなか見間違えることはないだろう。同じ学年の日沼流月さんだ。
彼女も買い物、あるいは食事にでも来たのだろうか。
以前三枝さんとの会話で話題になったのを思い出しつつ、その様子を追ってみる。
…ひょっとして気付かれるだろうか?

541日沼 流月『サグ・パッション』:2019/08/23(金) 23:51:12
>>540

金とも銀とも言えない不自然色の髪。
流れに逆らった房がいくつかある、特徴的な髪型。
そう、彼女は間違いなく……『日沼流月』だ。

同行している少女も派手な髪の色をしていたが、
着ている制服は明らかに清月と別のデザインで、
彼女の方は、特に鉄にも見覚えはないだろう。

……しばらく同行の少女と言葉を交わしていた日沼。

「…………ん」

        キョロッ

「んん〜〜〜?」

だが…………やがて足を止めた。
そして、目が合ったのだ。

  ルナ
「流月どした〜? なんか面白いもんでもあった?」

そして目が合えば・・・

「面白いってか、あそこ。流月と同じ学年のヤツがいてさ〜〜ッ。
 んでねんでね、なんかあいつに言う事あった気がするんだよね。
 それにほら、こっち見てるし……ちょっと挨拶してくるわ」

        「先、席取っといて!」

鉄の方に歩いてくる、日沼。
気付いたどころか……絡みにくる気満々だ。

「ね、あんたさぁ〜〜〜、えーーーーーと。
  同じ学年でしょ! 清月のさぁ〜、それで、剣道部入ってるよね」

距離を詰め終わる前から、もう声を掛けて来ている。

もはや待ったなし、逃げ場もなし。
この存在、この事態は、鉄の対処可能範囲だろうか……?

542鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/08/24(土) 00:49:43
>>541

日沼流月の印象と言えば、やはり『不良』というのが個人的な所だった。
同じ学年でも、彼女の存在は時折耳にする。普段なら、あまり積極的に関わり合いにならない方だ。
もしも、三枝さんから彼女が『いい人』だと聞いていなければ。

(友人と買い物か…)モグモグ

その時に、今度会った時に言葉を交わしてみると約束はしたものの。ただでさえ女性が苦手な自分で、
そして日沼さんの同行者もまた女性だった。これは流石に、こう、なんというか、分が悪い。
なので、それは今度の機会にしようと思って諦めた瞬間。

「ッ?!」

目が、合ってしまった。
しかも、接近されている。逃げ場はなし。
いや、そもそもあからさまに人から逃げるのは失礼過ぎるのでできないが。


>「ね、あんたさぁ〜〜〜、えーーーーーと。
>  同じ学年でしょ! 清月のさぁ〜、それで、剣道部入ってるよね」

「あっ」「えっ」「え、あっ、その」

思わず目線を逸らしながら、言葉の内容を頭の中で反芻する。落ち着け、少しはこの前の病院で鍛えたはずだ。
とりあえず、この場は自己紹介だ。初対面には違いないのだから。

「くっ、鉄夕立、剣道部、二年」「ひ、日沼さん、だよね。キミは」

543日沼 流月『サグ・パッション』:2019/08/24(土) 01:37:51
>>542

「そうそう、クロガネ君だ! 流月は『日沼』で合ってるよ。
 んで、別に同い(年)なんだし呼び捨てでいいし。
 流月、サン付けされるほど偉いもんでもないしさ〜」

   「もちろんリスペクトしてくれてもいーけどね」

日沼流月は、不良だ――――レッテルでもなんでもなく、自称している。
補導されたとか極度に生活が乱れているとかは聞かない噂だが、
そういう噂がある人間とつるんでいるのは『事実』だし、隠してもいない。

鉄の既知とは、まるで属性の違う女子だ。
以前考えた通り『三枝』とはまるで違うし、
明るい態度も『今泉』等とは種類が違い、
鳥舟や竜胆、塞川のような『大人』でもない。

とはいえ――――

「それで〜〜〜、なんだっけ。
 流月、あんたに言う事あったんだよね。
 前に頼まれててさ。『千草』……あ〜。
 あんたは『三枝さん』って呼ぶのかな」

「真面目そうな感じの子。あんたと同じで……ぷぷ。
 中等部のね、分かる? あの子から伝言してくれって」

少なくとも『ツテ』はあるようだ。住む世界は違っても架け橋があれば問題は無い。

544鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/08/24(土) 01:57:20
>>543

>「そうそう、クロガネ君だ! 流月は『日沼』で合ってるよ。
> んで、別に同い(年)なんだし呼び捨てでいいし。
> 流月、サン付けされるほど偉いもんでもないしさ〜」

>   「もちろんリスペクトしてくれてもいーけどね」


(・・・・・・・・・・)

床を見て、少し熱くなってきた頬を擦りながら思う。
大変失礼だと思うが、想像していたよりも、とても気さくで話しやすい人柄だ。
本当に、三枝さんの言っていた通りかもしれない。しかも好都合な事に、今は一人のようだ。
まだ多少は話しやすい。

「オレも」「クロガネで、呼び捨てで、大丈夫」コクリ

そう言って、頷く。

「し、知っている。オレも、キミのことは三枝さんから聞いたから」
「親しみやすくて、そしていい人だ」
「そう言ってたから、彼女が」

「でも、『伝言』?」

それはなんだろう、と首を傾げる。ひょっとして、先に聞いているかもしれないが。

545日沼 流月『サグ・パッション』:2019/08/24(土) 03:31:39
>>544

「そぉ? そういわれると『逆に』君付けしたくなるな〜
 素直に従うのって、なんだか『シャク』だからさぁ!」

    「クロガネ君って呼ぼ。あえて。
     よろしくね。ひひ……ウケる」

いたずらっぽく笑う日沼。
確かに、不良というにはあまり『圧』が無い。
優等生というには、あまりに無遠慮ではあるけれど。

「マジ? ほんと? 千草ほんといい子だわ〜。
 流月のことやたら褒めるんだよね、なんか。
 マジメなのにさ、流月とは『逆』っぽいのに」

  ニヒ…

「いないとこでも褒めてくれてたんだ、泣ける!」

また別の種類の笑いを浮かべて、それから。

「えーとそれで、そう伝言」

「クロガネ……君にお礼が言いたかったっぽいよ。
 なんだっけ、『道に迷ってた時助けてくれてありがと』ってさ。
 伝言遅くなっちゃったから、だいぶ前の話かもだけど!」

大きなことではないが大事な伝言を、無事に伝えた。約束は果たした形だ。

546鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/08/24(土) 22:31:50
>>545

「…なるほど、『逆に』か。分かったよ、日沼」「…ふふっ」

ウケる、との日沼の言葉に小さく笑って同意する。
この自分たちの見た目で、自分が彼女を呼び捨てにし、彼女から自分に君付けされるというのは
側から見ているとなんとも奇妙で、確かに面白かった。そして笑えば、緊張も少しほぐれる。

「そうだな…三枝さんは真面目でいい子だからな」
「とはいえ、彼女の言葉に間違いはなかったと思っているよ」

伝言の内容に納得して、斜め下を見たまま頷いた。
彼女との出会いのきっかけは、道に迷っていたのを案内したからだ。

「あぁ…三枝さんと初めて会った時のことかな」「律儀な子だ」「君もだけれど。伝言ありがとう、日沼」

「…彼女は生徒会に入ったらしいね」「大きな夢を叶える為に、努力を続けているみたいだ」
「年下ながら、尊敬するよ」

「そういえば日沼は、何かそういう夢はあるのか?」

547日沼 流月『サグ・パッション』:2019/08/24(土) 23:52:53
>>546

「そう、『逆に』ね。それがしっくりくるんだよね」

跳ねた髪のひと房に指を絡めながら、
鉄の同意に頷いて返す流月。

「流月、約束とか『反故』にしないタイプだからさ。
 ま〜あとしばらくしたら忘れてたかもだし、
 あんたのこと探したりしてたわけじゃないから。
 親しみやすいってのは嬉しいけど〜〜〜
 『律儀』とかいい子とかマジメとかそーいうんじゃないワケよ」

「夢とかも……あんま無いしさァ」

「流月、そーいう決まった流れみたいなのに乗るの、ヤダから」

決まった夢を追う道は『まっすぐ』だ。 
切りそろえた前髪以外で、日沼流月に『直線』のシルエットは乏しい。
人は見かけによらないとしても、彼女の『自認』はそうなのだろう。           

「ま〜流月以外で、千草とかもそうだケド、
 そーいう立派な人生考えてる人は偉いと思うけどね」

            「流月はやりたいようにやるだけ!」

『夢』を『決まった流れ』と評するのも、自認に過ぎないのかもしれないが。

548鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/08/25(日) 00:46:52
>>547

「…成る程。ただの冗談と言うだけではないのか」

日沼の言葉に、何やら己なりの信念のようなものを感じ、笑みを消して頷く。
『反骨精神』、単純に言うとそれが近いだろうか。
流れに同調しがちと言われる日本人の中では、珍しい性質だ。それがしっくりくる、そういう性格という事だ。

「夢に関しては、オレもないんだけどな」「訊いておいてなんだが」

段々と、日沼流月という女性を分かってきた気がする。
少なくとも、今まで抱いていた一般的な『不良』のイメージとは少し違うようだ。
他人への同調を強制する人間にとっては、彼女はそう呼ばれるかもしれないが。

「…もっとも最近は、『目標』程度ならできた」
「日沼。君の周りで何か不可解な事件や、『通り魔』事件とかは起きていないか?」

彼女がもし、人通りの多くない所、あるいは夜に出歩くこともあるなら、何かしら
そういった事件の話を聞く機会があったかもしれない。

549日沼 流月『サグ・パッション』:2019/08/25(日) 01:22:42
>>548

「ま〜ね。流月、『逆らう』のが好きなワケ。 
 なんでもかんでも逆らうワケじゃないけどさ。
 例えば椅子に逆立ちしたりはしないワケだし? ぷぷ」

鉄の考え通り、『反骨精神』――――
それを隠すわけでもなく、日沼は口にする。
そういう性格なのか、そうあろうとしているのか。

いずれにせよ、表情に深刻さはない。

「夢とかあっても、しょうがないよね。
 なんてーの? 目標くらいなら……ん。
 あ、目標あるんだ、何、剣道大会で優勝?
 それとも、ぷぷ、『彼女欲しい』とか――」

           「――――通り魔ァ?」

鉄の出した剣呑な単語への反応も、
少なくとも『実体験』は無いのだろう。

「いや〜。そんなんあったら、テレビなりでニュースになってると思うケド。
 う〜ん、流月の友達の彼氏が隣町の不良にいきなり殴られたとかなら聞いたかな」

出てくる話題も――――不良なりの物ではあるが、『真剣み』が無い。
日沼がずぬけて不謹慎ならともかく、深掘りすればおそらく大した『事件』ではない。

「てか、事件って何で? 目標って、『報道部』に鞍替え? それとも探偵でも始めんの?」

550鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/08/25(日) 01:34:07
>>549

剣道大会で優勝と聞かれ、首を振る。
既に大会は終わって、ベスト8だ。もしビルでの戦闘後の治療に時間を取られなければと
考えた事もあったが、それは無意味だ。時間は返らないし、何よりその代わりに守れたものがある。


>           「――――通り魔ァ?」


怪訝そうな表情を浮かべる日沼に、少し安心する。目を見られないので、口元だけで判断したが。
あまりそういった話題に関わり合いがないということだ。
『不良』といえど、流石に一般学生の範囲を大きく逸脱しているわけではないか。

「別に、深い理由はないよ」「ただ、最近の世の中は物騒だからな」
「三枝さん、『血』とか『暴力』みたいなのがかなり苦手みたいなんだ」
「そういうのが、彼女みたいな人間に関わらなければ、それに越した事はない」

買い物袋に手を伸ばし、モナカの最後の一口を放り込む。そうして椅子から立ち上がった。

「…ところで、君の目標は?」「何かあるような口ぶりだったけれど」

551日沼 流月『サグ・パッション』:2019/08/25(日) 01:54:54
>>550

日沼は運動部の活動予定をほぼ知らない。
結果などはさらに知らない。振った首の真意も知らない。

「あ〜、ね。確かにね、暴力とか痛いもんね」

            サス

そして――――自分にも抱く感情の捉えづらい、
ほとんど無意識なのだろう動きで、手首をさする日沼。
何の傷跡もないが、記憶から消えるはずはない。

「千草とか見るからにそーいうの苦手そうだしね。
 ああ見えて『逆に』――――ってわけじゃ、
 あんたの言い方からすると、違うっぽいし?」

「あーいう子のこと考えたらさ、学園の近くとかで、
 なんか事件とかあったら怖いってのは分かるわ〜ッ」

内心、日沼は鉄の言葉に引っかかりを感じていた。
目標――――『三枝千草』に危険を近づかせない事が?
恋してんの? と言いかけたが、言葉の真剣味にそれは止めた。

「流月の目標? いや、マジで大したことじゃないけど。
 夢みたいなデカいレールがあると……邪魔だけどさァ、
 全部に逆らってあてもなく歩いてちゃ、どこにも行けないじゃん?
 それはレール歩いてんのと同じで、自分で決めてないってコトでさ。 
 だから、とりあえず今どっちに歩くかってコンパスは、あっていいかなって思うワケ」

           「そーいうのが、『目標』ってヤツなのかなってね。
             今の流月のは、『ボウリングのスコア』上げる事だけど!」

そして、立ち上がった鉄を見て、それから席を確保したらしい同行の少女を見る。
そろそろ立ち話も終えるべきか。挨拶のつもりが、日沼は意外に盛り上がってしまった。

552鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/08/25(日) 02:14:19
>>551

(・・・・・おや)

暴力は痛い、と言って手首をさする日沼に、僅かに眉が動く。
何か暴力沙汰か、あるいは単純に怪我でもしたのだろうか。
ただ、彼女は先ほど身の回りに『通り魔』などは起きていないと言ったし、
何となく、怯えのようなものは感じられない。深く訊ねる必要はないか。

「そうか。確かに、あくまで流れに逆らうだけじゃあ、その流れがなくては行動できないもんな」
「ひょっとしたら、それがキッカケで『ボーリングプロ』になったりするかもしれないし」

流石にこれは冗談だが。
しかし、彼女の行く末もまた面白そうだ。イエスマンが多いと言われる社会で流れに逆らう力を持つ彼女が
己の目標を持ったなら、凄まじい行動力がありそうで。それに惹かれる人間も少なからずいるかもしれない。

自分はそんな人たちの『夢』や『幸福』は守られるべきだと思っているし、そう行動するつもりだ。
特に、戦う力を持たないような弱い人間を襲う『理不尽』は、何よりも許せない。

「それじゃあ、オレは行くよ」「また今度、学校で」

軽く会釈をしてすれ違い、最後に手を振って店から出る。
良い出会いをした。人は見かけによらない、その言葉の意味がよく分かる。
一見『不良』に見えるような人間でも、危険だとは限らないということで。そしてそれは、逆も真である。
これ以上犠牲者が増える前に、止めなければ。その為の備えは欠かせない。

「とりあえず、公園辺りで試してみるか…」

ちらりと袋の中身を確認しながら、一人呟いた。

553日沼 流月『サグ・パッション』:2019/08/25(日) 02:28:31
>>552

鉄の顔に気づくほどは、日沼は繊細ではなかった。
それが今いい方向に働いたかどうかは分からないが。

「みんながすることしないならさ、
 なんか別のことした方が楽しいしね!
 もしプロになったらサイン書いたげるわ」

        スタ

「あーそうそう。流月も人待たせてるんだった。
 てかクロガネくんさ、噂と違って全然喋れるね。
 また学校で見かけたら声かけるからさァ、
 メーワクじゃなかったら構ってよ。 にへへ」

結局目は合わなかったが、
目を見て話すほど深刻な話は無い。
少なくとも、日沼はそう思っている。

「んじゃ、またね〜ッ」

             スタ

手を振り返し、確保してもらった席に歩いていく。

鉄の目標がどこにあるのか、それが何なのか。
今はまだ、知ることはなかった。
回る歯車に、流れに逆らう日沼は巻き込まれない。

                    ・・・少なくとも、今は。まだ。

554三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/13(金) 22:02:40

その日、千草は展望台にいました。
少し考え事をしたかったからです。
何日か前、猿渡先輩に言われたことについて考えていました。

(優しさも真面目さも、それだけでは毒にも薬にもならない)

その言葉を理解したつもりでした。
でも、まだ分からない部分が多いです。
ここ最近、ずっと考えていました。

「――どうしたらいいでしょうか?」

手の中には、『小さな人形』がありました。
昔から持っているもので、悩んだ時に相談すると考えが纏まりやすいのです。
名前は『ビケ』です。

555成田 静也『モノディ』:2019/09/16(月) 20:29:49
>>554

「そういえばまだスカイモールには行ったことがなかったな・・・」

今、オレはある意味での最大の危機の中にいた。

この前の一件ではからずとも手にした40万という学生個人が持つには多すぎる大金をいかに親から隠して
所持するかを苦心している最中にふと現実逃避が頭をよぎった。

そして休日である事もあり家を出て、バスに乗り、なんやかんやでスカイモールまでやってきてしまった。

「・・・考えなしに来てしまったが来たからと言って問題が解決するわけでもあるまいし…」

逃避した意識が現実に戻りため息をついたちょうどその時に

「―――どうしたらいいでしょうか?」と言う声を捕らえた。

その声の方向に顔を向けてみると、小学校高学年から中学の低学年くらいの女の子(?)が
小さな人形に悩みの解決の糸口を問いていた。

どうしたもんかと悩んでいると少女(?)の方がオレの存在に気付いてしまったようだ。

556三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/16(月) 21:29:32
>>555

その子供は、少年にも少女にも見えました。
どちらなのかは分かりません。
かなり背が低いことは確かです。

       チラ

ふと顔を上げると、眼鏡を掛けた方が見えました。
座る場所を探しているのでしょうか?
千草の隣には、誰も座っていませんでした。

「――空いてますよ」

だから、その方に声を掛けました。
見たところ、千草より何歳か年上のようです。
もしかすると、先輩かもしれません。
何となく、何か悩みがあるような表情にも見えました。
千草が悩んでいるから、そう思っただけかもしれませんけど。

        スッ

また人形に視線を下ろします。
きっと、この答えはすぐに見つかるものではないのでしょう。
でも、つい考えてしまうのです。

557成田 静也『モノディ』:2019/09/16(月) 22:49:16
>>556

「ああ・・・どうも。」

バツが悪そうに少年(?)の隣に座らせてもらう。

改めて服装を見たところ同じ清月学園の生徒のようだ。

「初対面で馴れ馴れしいが、なんか悩みでもあるのかい?話を聞く位ならできるぜ。」

やはり放っておけない性質故に目の前の少年の悩みを聞いてみることにした。

558三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/16(月) 23:16:50
>>557

服装はブレザーですが、これは清月学園の制服ではありません。
だから、服装から清月生だと判断するのは難しいです。
ただ、清月は大きな学校なので、清月生だとしても不思議はないでしょうけど。

「いえ……お話するような事では……」

「お気持ちは嬉しいのですが」

        ペコリ

誰かに相談したい気持ちもありました。
でも、それは人に頼る事です。
それをすると『立派な人』から遠ざかってしまう気がしました。

「あの――失礼ですけど」

「何か考え事をしてらっしゃるのでは?」

「よろしければ、聞かせて頂けませんか?」

『立派な人』に近付くためには、誰かのために何かをする事が必要です。
だから、この人の話を聞こうと思いました。
未熟者の千草に、大したアドバイスは出来ないかもしれませんが。

559成田 静也『モノディ』:2019/09/17(火) 00:01:05
>>558

「おや、当てが外れたか・・・。悪いなオレも転入したばかりでまだこっちの制服とか覚えきれてないんだ。」

「それとオレの悩みか・・・正直悩みはすれど大したことはないって断言してもいいかもな・・・」

何しろ自分はスタンドという特殊能力を持ち、それに関係する事件に巻き込まれた挙句に学生には多すぎる大金を
手にしたなんて、一昔前のオレだったら笑い飛ばしているところだ。

「だってさ多く手に入り過ぎた小遣いをどうやって管理しようってのがオレの悩みだぜ?笑っちまうだろ?」

わざとらしいくらいにおどけて見せた。

どうも目の前の少年はあまり詮索されたくないように感じる。本来なら無理に立ち入るべきではないのかもしれないが
性分なのかどうしても放っておけないのだ。

「良ければだけど・・・やっぱり君の悩みも聞かせてくれないかい?」
「人に頼りたくないようだが案外とどん詰まりを打破するのは自分以外の誰かの考えとかだったりするんだぜ?」

560三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/17(火) 00:14:54
>>559

「『貯金』するというのはいかがでしょう?
 若い頃に、あまり大金を持つのは良くないと聞きますし……」

もちろん千草は、その金額を知りません。
多分、お年玉くらいの金額だと思っているのです。
まさか『四十万』だとは考えていません。

「…………言われてみれば、そうかもしれないです」

「聞いてもらえますか?」

ここ数日、ずっと考えていました。
だけど、その答えは出ていません。
もしかすると、一人で考えていても分からないのかもしれません。

「『立派な人になる』という目標があります」

「『優しさも真面目さも、それだけでは毒にも薬にもならない』――――
 ある先輩に、そう言われました」

「それで…………少し悩んでいるんです」

561成田 静也『モノディ』:2019/09/17(火) 01:01:08
>>560

『立派な人』・・・確かにそれは難問だ。

例えばオレの親は社会的に見れば共働きで両者ともにそれなりの役職についている『立派な人』ってのになるだろう。

しかし家庭では本人たちが望む、望まないにしてもロクな会話もする時間もなくお互い不干渉なんて状況だ。

これでは家庭的に『立派な人』とは言えないだろう。

「『立派な人』か・・・大変で難し目標だな。」

「それに『優しさ、真面目さも、それだけでは毒にも薬にもならない』か・・・まあ、そりゃあそうだろうさ。」

「真面目だったり優しいだけだと行動できなかったり、中途半端になって問題が何も解決しない事が多いからな。」
「だから自分で考えて決めたことを突き進めば善かれ悪しかれ事態を動かすことができるもんさ。」

「オレはそう考えてる。あと一人の力なんざ大したもんじゃないんだからもっと周りに頼った方がいいぜ。」
「じゃねえとまたどん詰まりにはまったときに抜け出せなくなっちまうぜ?」

これは先の戦いで学んだことだ。石動さん、スタモンのみんながいなければオレ1人で勝つのは不可能だっただろう。

「こんなところだな。どうだい?これで少しでも助けになればいいんだが・・・」

少年に自分の考えを伝えてみた。

562三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/17(火) 05:18:28
>>561

「いざという時に『決断』して『行動』できる力――ですね……」

「それは、とても大事な事だと思います」

行動が伴わなければならないというのは、自分でも考えていた事でした。
それを他の人から言われたというのは、大きな意味があると思います。
その事が本当に大事な事だと改めて分かったような気がするからです。

「ありがとうございます。お陰様で、とても参考になりました」

      ペコリ

「一人で出来る事は限られているというのも、肝に銘じておきます」

千草は未熟者です。
だから、大した事はできません。
全てを一人の力でやれるとしたら、もっと『立派』になった後でしょう。

「三枝――『三枝千草』といいます。清月学園中等部一年生です」

「あの……失礼ですけど、お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」

「もし何かあったら、その時はお手伝いしたいので……」

「『周りに頼った方がいい』――そうなんですよね?」

563成田 静也『モノディ』:2019/09/17(火) 23:11:31
>>562

「清月学園中等部三年、『成田静也』だ。よろしくな。」

『千草』に握手を求めて手を差し出す。

握手を返された後、思い出したように提案を出す。

「せっかくの縁だしもうひと付き合いしてくれると嬉しいんだが…」

「実はオレ、スカイタワーに来るの初めてでさ、どこか落ち着いて茶でも飲めるところを知ってる?」

照れくさそうに聞いてみる。

564三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/09/17(火) 23:49:40
>>563

「『成田先輩』ですね。どうぞ、よろしくお願いします」

    スッ

こちらからも片手を差し出して、先輩と握手します。
悩んでいる千草にアドバイスをくれた成田先輩は、尊敬できる人です。
その前向きな姿勢は、ぜひ見習いたいと思いました。
そういう人達と、たくさんの出会いを積み重ねていきたいのです。
それが、千草を『立派な人』に近付けてくれると信じています。

「『お茶』――ですか」

「分かりました。ご案内します。
 先輩の趣味に合うかどうか分かりませんが……」

               ニコッ

「――――付いて来て下さい」

人形の『ビケ』を内ポケットにしまい、千草は笑顔で言いました。
頼られるのは嬉しいです。
だから、千草は笑っていたのでしょう。
まだまだ未熟者ですが、いつか『夢』を叶えたいと思っています。
いつか、きっと――――。

565成田 静也『モノディ』:2019/09/18(水) 02:32:03
>>564

千草のその高い志を聞いて、改めて自分の最初の目標である『アリーナ』への挑戦を

覚悟しなければならない。

たしか前に聞いたアリーナの情報を持っている奴の名は―――

とりあえず今はこの店のコーヒーを飲んで一息ついてからでも遅くはないだろう。

566黒羽 灯世『インク』:2019/10/27(日) 02:52:39

髪をツーサイドアップにした、少女がいた。彼女が『黒羽』だった。
薄く長い……すらりと、しなやかな体躯を、振袖のように袖口を広くした学生服で覆い、
モール内の『ゲームコーナー』に備え付けられた、小さなベンチに座っていた。

「…………………」

それだけの話だが……『ゲームをしていなかった』。
UFOキャッチャーを一度やって外したあとは座ったままで、、
鋭い三白眼の、夕焼けのような色の瞳で、店内の何かを見ていた。

「…………………………………」

視線の先にいるのは、『人間』だ。趣味は人間観察、とでもいうのだろうか? ・・・不審者か?

567蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/31(木) 22:47:30
>>566

一人の人間がゲームセンター内にいた。
イヤホンをつけ、流れてくる音楽を聴いているのかリズム良く首が揺れていた。
ジップアップのパーカーを身にまとい、その上に和服の羽織を着ている。

「……」

特に何をする訳でもなくうろつき、時々筐体などを覗き込んでいた。

568黒羽 灯世『インク』:2019/11/01(金) 00:29:44
>>567

(! …………。違う。違うのだわ。いえ、違って当然)

(……気を取り直しましょう。
 そうでなくては『強い』とは言えない。
 彼ならもしかすると、例の件を『知っている』かも)

       スゥッ

(学生ではなさそうだけど、ゲーセン慣れしてそうだし)

ベンチから立ち上がった。
大股で歩き、『羽織の男』にゆっくりと近づいて行く。

「ねえねえ、ちょっと。そこのあなた!」

そして声を掛けた。

「羽織を着ているあなたよ。おわかりかしら?
 イヤホンを付けてるあなた。…………今、おヒマ?」

あまり分かりやすい『第一声』ではなかった。
やはり不審者か? ゲームの誘いという雰囲気でも、ない。

569蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/11/01(金) 00:38:21
>>568

羽織の背中には揚羽蝶の家紋。
暗い色の蝶が体の動きに合わせて舞っていた。

「ん?」

振り返る。
そして、声を発する。

「なに? なんて? 暇って?」

イヤホンは外した。
問題なく会話は可能だろう。

「ていうか、あんた誰? なんか用事でも?」

570黒羽 灯世『インク』:2019/11/01(金) 00:58:20
>>569

揚羽蝶の家紋を見た少女の目は、特段揺らがない。
和装そのものにも奇異の視線はない。
彼女の袖にも、そのようなエッセンスはあった。

「私は黒羽 灯世(くろばね ともよ)よ!
 清月学園で『新聞部』をしている者なのだわ。
 覚えておいて損はない名前だと思うわよ。……で。
 あなたに話しかけた用は、聞きたいことがあるから」

     キョロキョロ

「もちろんナンパとかではないのだわ」

周囲を見渡す。
人は多くはないが、声の聞こえないほど少なくもない。
それを受けてか声を若干落とし、黒羽は続ける。

「『ゲーセン』によく来てる人を、探してるの。
 『ゲーセン』で起きた……『事件』の噂を聞くためにね」

「特に話に心当たりがなかったりとか、
 実はヒマじゃなかったりとかするなら、
 他の誰かを当たるけど…………どうかしら?」

背筋を張っているせいか、口調か、言葉選びか?
どこか『上から』な雰囲気で、黒羽は問いかけてきた。
高圧的と言うには圧力が足りない気はするが・・・『高い』。

571蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/11/01(金) 19:21:02
>>570

「あぁ、清月の子か。なに」

「ナンパはこっちの方が困るから」

相手が声を落としたのを受けて、少しだけ耳を近づける。
聞くつもりはあるようだ。

「ゲーセンによく来てる人? 星見にいくつゲームセンターがあると思ってるの?」

高い口調に対して物怖じも嫌悪感もない。
実にフラットな態度だった。
さらに上を行こうとする雰囲気も持っていない様子である。

「いや、暇だから別に構わないけど」

「事件ってどんな? 灰皿フリスビーぐらいの話なら聞いたことあるけど」

572黒羽 灯世『インク』:2019/11/01(金) 23:17:23
>>571

「いくつでもある。だから全部回っているところなのだわ!
 まだ本当につい最近追い始めたばっかりだから、
 ここは小さいお店も合わせても『3軒目』だけど……
 今の所、何も収穫がない。しょせん『噂』に過ぎないのかしら?」

「そう思い始めていたところだったの!
 私のその『悪い予感』……
 ぜひとも、ここで断ち切りたい所なのだわ」

            パン

三白眼を細め、笑みを浮かべた。
そしてポケットからスマートフォンを取り出す。

「私がいま追っている『事件』は――――『喧嘩』よ」

喧嘩。
今時、『喧嘩』が『事件沙汰』になるのは『あまり聞かない』。
学校の中での喧嘩は、だいたいが学内で収束する話だからだ。

・・・もちろん、例外もある。

「ものすごく端的に言うと、だけどね。
 『ゲーセン』で『学生同士の喧嘩があった』らしいの。
 日付は今から『7日前』……あくまで事実と信じるなら、だけど」

              ゴソ

「『SNS』に、『目撃情報』が『あった』。投稿『されていた』――のだわ。
 この日、町内のゲーセンで『そういう事件があった』……聞いたこと、あるかしら?」

573蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/11/02(土) 00:08:17
>>572

「三軒ね。三軒分散見したわけね」

「大変だね……喧嘩のために」

三白眼を細める相手とは対照的に目を大きく開いて見せた。
この人間はそういうタイプではないのだろう。

「SNSに、目撃情報が、投稿されていた」

「……なるほど」

ほんの少し頭の中の引き出しを引っ張ってみる。
知識と記憶の棚から引きずり出す。

「あると言えばあるけど」

「ここじゃないよ、それ」

574黒羽 灯世『インク』:2019/11/02(土) 00:21:35
>>573

「知りたがっている子がいるの。
 別に、喧嘩に興味があるわけじゃないわよ?
 そういうのは、私の領分じゃないし……」

「『戦わずして勝つ』のも一つの『強さ』だもの。フフッ!」

なにに勝ったのかは分からないが、
とにかくそういうことらしかった。

少女の上背はそれなりに――年の割には高いが、
体の薄さを見るに、喧嘩に興味がないのは本音だろう。     

「……って!」

「あら、あら、あら! あなた……なにか、知っているのね!
 いいわいいわ。あると言えば、でいい、聞かせてほしいのだわ」

引きずり出した言葉は、彼女にとって望ましいものだった。
見るからに上がったテンションで、続きをせがんでくる。

「ここじゃないなら……どこかしら?
 やっぱり、治安の悪い『横丁』のほうにあるゲーセン?
 それとも……何か地下とかにあるようなヤバいゲーセンかしら!」

575蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/11/02(土) 00:34:04
>>574

「勝つんなら別にいいけど」

何と比べての勝ちなのか。
全てか。

「地下ゲーセンは教えられないかな、危ないし」

存在は否定しないらしい。
どこまで本気なのだろうか。

「うん、まぁ横丁の方だよ。やっぱりそういう土地だからかな」

「学生の喧嘩だろ。スジも通るでしょ」

576黒羽 灯世『インク』:2019/11/02(土) 01:05:56
>>575

「本当にあるの? 『地下ゲーセン』……いえ。
 今日はそれは深入りしないでおくのだわ。
 それより……横丁、やっぱりあっちの方なのね」

          チラッ

「あそこは『駅』の向こうだし、
 『学生』はあまり近寄らない。
 だけど。『不良学生』ならむしろ近寄る!」

『清月学園』や『スカイモール』は、
駅前を挟んで町の『北部』に位置する。
『大通り』なども含め、『北』に多くが集約している。

『歓楽街』だけが、『駅南』にある。
それは物理的な壁ではないが、学生心理には働きかけるものだ。

「先に巡っておくべきは、むしろあっちだったのだわ……!
 有益な情報をありがとう。これで『事件』にまた一歩近づける」

         ゴソ…

そして・・・上機嫌そうな笑みを浮かべて、財布を取り出した。

「そうだ。あなた喉は乾いていない?
 お礼に『缶ジュース』を『おごってあげる』のだわ!
 フフッ! 『エナジードリンク』はだめよ。だって、200円するから」

577蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/11/02(土) 01:17:57
>>576

「どう思う」

あくび混じりにそう告げた。

「乾いてるけど、おごりはいい」

「学生から巻き上げるようなことはしない」

大人だから、という感じではなかった。
純粋に君から何かを受け取るつもりがないようである。

「事件に近づいてどうするつもりなんだい」

「別に構わないけど、何かしたいことでも」

578黒羽 灯世『インク』:2019/11/02(土) 01:39:56
>>577

「私のジュースが欲しくないの?
 まあ、欲しくないなら別にいいけど……」

        ゴソ…

残念そうに、財布をポケットにしまい直した。
奢る事で『上を取ろう』としていたのかもしれない。

「何かしてやるって気でもないのよ。
 犯人を捕まえたいとかもないし。
 ただ……『記事』を書きたいだけ」

             フフッ

「だって、私、新聞部だもの」

「あのねあのね、この『事件』……発端に謎が多いのだわ。
 さっきもちょっとだけ言ったからおわかりかもしれないけど、
 真相を知りたがってる子もいる。ある事ない事言ってる子もいる」

          ジリ

ツーサイドアップの右側を指先で弄ぶ。

「聞きたいかしら? どんな謎があるか。
 ……聴きたいなら差しさわりの無い範囲で教えてあげるのだわ。
 ま、聞きたくないなら別にいいけど! フフッ……学生の話だし」

579蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/11/02(土) 01:51:25
>>578

「飲み会の上司みたいな言い分だな」

『私のジュースが欲しくないの?』という言葉は初めて聞いた。
酒に変えたら上司のニュアンスだ。
なんなので乗った方が良かったのかもしれない。

「新聞部ね」

ジャーナリズム的なものだろうか。
別に彼からすれば推奨する理由も止める理由もない。

「まぁ、聞きたいかな」

「学生の話だしね」

580黒羽 灯世『インク』:2019/11/02(土) 02:19:51
>>579

「あら失礼、あんまり『上等』じゃなかったかしら……」

「何かお礼をしたかったの。
 一方的に『貸し』があったりすると、
 それで『下』に見られたりするでしょう?」

飲み会、というたとえに、
『良くなさそう』な響きを感じたらしい。
弁解のようなことを言いつつ・・・

「フフフッ、聞きたいのね!
 それじゃあ聞かせてあげるのだわ。
 そう、もちろん『お礼』とかは結構よ」

「……さて」

             スイッ

シンプルに飾られたスマホの……画面を見せてくる。

「『謎』の一つは……『現場を見た証言』。
 SNSからはすでに削除されてるから、スクショだけど」

写真アプリが立ち上がっており、
表示されているのは確かに『スクリーンショット』だ。

            スッ

「ほら、これ。おわかりかしら?
 ――『清月生がゲーセンでケンカしてて』」

  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 
「『触られてもないのにブッ飛ばされてた』……『謎』としか言えない」

581蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/11/02(土) 09:08:38
>>580

「見ないよ下になんか」

「貸し借り云々も特に感じないし、気にし過ぎ」

弁解じみた言葉に価値観を上乗せ。

「触れてもないのにぶっ飛ばされてた」

「謎、ね」

謎だろう。
普通の人間からすれば、それは確かに謎だ。
しかし多くの物事がそうであるように、今回のことも見るものが見れば理解出来る。
知っているか知っていなかいかの境界線。

「……」

「そういうこともあるもんだね」

「悪霊のせいかもよ」

582黒羽 灯世『インク』:2019/11/04(月) 09:34:18
>>581

「そう………………かしら?
 まあ、そういう考え方も一つの『強さ』ね」

「物理的な『高低差』ではないものね、
 気にしないなら……無いのと変わらない」

著しい反応はない。
理解はしているが、共感ではない顔だ。

「……そう、『謎』」

     コクリ

「そこは要点とは言えないから残してはなかったけど、
 投稿者と会話相手はこの後『ゲリラ撮影』…………
 SNSでバズるための動画の撮影だったと結論付けた。
 実際…………それも『ありえる』話なのだわ。
 調べてもそんな動画は今の所投稿されてないけど、
 クローズドなコミュニティまでは調べきれないし」

「だからこそ『目撃者』を探してるの」

SNSの発達で、世界には『主観』が溢れかえった。
主観は事実とは違う…………とも言い切れない。
電子の羽は確かめる術に欠ける。それを、黒羽は現実の足で補う。

「もっとも、悪霊の仕業なら……フフッ、
 『目撃』は、出来ないかもしれないけど」

「『それもありえない話じゃない』…………のだわ」

知っているか知らないかの境界線。
彼女は…………『知らない』。

己も持つ『力』のサンプルが、この時点では少なすぎた。
悪霊と言うには穏当な力のみを、ほんの僅かに知っている。
だから即座には結びつけられない。が、可能性を受け入れる事は出来た。

「……さて! さっそく横丁のゲーセンに行ってみないと。
 今日はどうもありがとう、上等な取材が出来たのだわ!」

そして行くべき場所を決めた少女は、その場から立ち去ろうとする。

583蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/11/04(月) 20:55:49
>>582

「目撃者ねぇ……」

「なぁるほど……?」

薄い笑みが顔に浮かんでいた。

「はいはい、上等どうも」

「……はは」

立ち去ろうとする少女を止めはしない。
その代わり、餞別替わりの体験を。
傍らに立つ人型のヴィジョン。
その名を呼ばれない。

584黒羽 灯世『インク』:2019/11/05(火) 05:59:20
>>583

「…………!」

その『名前』は知らない。
だが『意味』は分かった。

「あなた、それ……ッ! 『そう』なのね……」
 
(『可能性』はあると、思ってはいたけど……
 そう、そうだわ、『人型』ならそれが簡単に出来る!
 私の『インク』には出来ないからって先入観があった!)

それは勿論……『自白』ではないと、黒羽には分かった。
実体を持たない『力』の持ち主は『一人ではない』。

「そして『そういうこと』だと……」

>《これは、『ついで』に話すんだが……。
> 俺が出くわしたスタンド使いは、アンタで五人目だ。
> その中で『人型』じゃなかったのは、アンタと『鎖の男』だけ》

そしてその中でのマジョリティは、恐らく『人型スタンド』だ。
あの時は『鎖の男』の存在を重視していたが、点と点が繋がり線になる。

(ますます有益な『気づき』を得られたのだわ…………!
 この事件には『スタンドが絡んでいる』と考えたら自然になる!
 それなら、 『ありえない状況』が見間違えやフェイクとは限らない……!)

そのまま、それ以上の追及はしない。
立ち去ると決めているし、見せた意図は実際は謎だ。
危険がないとは言い切れない……そうでもなくとも、
無言でただ、見せた。つまり『語る』気は無いという事。

         チラ

(……彼にこそ聞きたい事はゼロではないけど、それは今じゃなくっていい)

立ち去る前にもう一度、その姿を見ておく。

スタンドについての話など聞いてみたいところはいくつかあったが、
今はその取材ではない。人は話題の塊。横道に逸れようとすれば無限に逸れられる。
だが、本質を見失う事になる。『好奇心』と『ジャーナリズム』は別だ。

…………いずれまた、会う時があれば。今日の事はメモ帳に書き留めておこう。

585ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/11/13(水) 21:33:53

『女』がいた。
白、青、紫のトリコロールカラーの髪色の長髪の女だ。
逆巻いた『羽衣』を背中に備え、両腕に『羽毛』が覆われ、
踵から『蹴爪』が生えている。

(こうして違った視点で『空から眺める』のも、また一興。
 普段ここまで高く飛ぶ事も、そうありませんけれど)

(そんな事をしてもエネルギーの無駄遣いですものね。
 こういうものを指す『言葉』が何かあったような……)

(…………『省エネ』?)

展望台の一角に腰を下ろして、街を見下ろす。
今は人気がないが、この格好は否応なしに目立つ。
もし誰かが来たら、目に留まるかもしれない。

586ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/11/15(金) 00:25:59
>>585

「…………『低燃費』?いえ、『ダイエット』?」

「あっ、『経費削減』?」

ブツブツと独り言を言いながら、その場を後にした。

587美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/12/05(木) 21:07:02

気分転換のために、ショッピングモールを歩いていた。
考えているのは、少し前にあった出来事についてだ。
気付いたら、何故か『救急車』に乗せられていた。
これといって異常はなかったので、すぐに降ろしてもらったのだが。
それにしても、一体何があったのだろうか?
生憎、その時の記憶は全く残っていない。
馴染みのバーで少し飲み過ぎた所までは覚えているが……。

「何だか知らないけど、この寒いのに上着を脱いでたし――――」

「頭の後ろに『タンコブ』は出来てたし――――」

「まぁ、『声』に傷が付かなかったのは幸いだけど」

とはいえ、記憶がないというのは不安だった。
何か、人に迷惑を掛けるような事をしていないだろうか。
そのような事を思いながら歩いているため、やや前方不注意だ。
もしかすると、誰かにぶつかるかもしれない。
あるいは、ぶつかる直前で気付くかもしれないが。

588不知火琥珀『ポスティルヨネン』:2019/12/05(木) 23:52:45
>>587

「おっと」

かっ、と靴の音がした。
スニーカーからは出ないような硬い音だ。
音の主はぶつかりそうになった美作の前で立ち止まる。
ファーの着いたモッズコートのフードが揺れた。

「考え事かい、お嬢さん」

589美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/12/06(金) 00:31:21
>>588

「ああッ!気付かなくってごめんなさい」

「ちょっとボンヤリしてたもんだから……」

    ザッ

「危うく傷が増える所だったわ」

慌てて立ち止まり、相手の姿を確認する。
初めて見る人間だった。
知り合いと偶然出くわす方が少ないとは思うが。

「そう、考え事をしてたの。どうも記憶が曖昧で……」

「それはそうと――素敵なコートね。よく似合ってるわ」

自分とは雰囲気の違うファッションを眺めて、率直な感想を漏らす。
引き締まっているような印象を受けた。
カジュアルファッションの自分とは、方向性が異なる。

590不知火琥珀『ポスティルヨネン』:2019/12/06(金) 01:49:05
>>589

「別に構わないよ、私も考え事をしていたのは同じだしね」

そう言って薄く微笑む。
そして、美作の言葉に眉が八の字に曲がった。

「おや、怪我をしているのかい? ……それは大変だね。貴方のような人が傷を負うなんて悲しいことだ」

嘘っぽい感じはしない。
挨拶、というよりも本当に身を案じているようだ。
そういう人間なのだろう。

「ふふっ、ありがとう。貴方の素敵ですよ」

コートのジッパーがあげられているので中の服は分からないが、裾からダメージジーンズがのぞき、足元には黒いブーツがあった。

「記憶が曖昧と言ってましたけれど、何かありましたか?」

「どこかで頭を打った……とか?」

591美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/12/06(金) 02:11:38
>>590

「いえ、怪我っていっても大したものじゃないの」

「まあ、頭にタンコブが一つ出来たくらいで」

言いながら、帽子の上から後頭部に触れる。
彼女の心配が言葉だけのものではない事は感じ取れた。
初対面の相手を気遣うというのは、中々出来る事ではないだろう。

「ええ、頭を打ったのは確かだと思うわ。
 何せ、こうして立派なコブを作ってるくらいだから」

「ただ、どうして頭を打ったのか覚えてなくて。
 その時は少しだけ飲み過ぎてたみたいで……多分そのせいね」

    アハハハ…………

バツが悪そうに、軽く笑う。
深酒して悪酔いするような事は余りない。
しかし、様々な要因が重なれば、そういう事も時として起こり得る。

「気付いたら、救急車の中にいたのよ。
 体は何ともなかったから、途中で降ろしてもらったんだけど」

「あ――『タンコブ以外』はね」

「理由は分からないけど、何故だか上着も脱いじゃってたし。
 何かやらかしてなければいいけど……と思って」

592不知火琥珀『ポスティルヨネン』:2019/12/06(金) 02:23:54
>>591

「タンコブでも怪我は怪我さ」

「飲みすぎるというのも考えものだね……」

顎に手を当ててそんなことを言った。
なにか納得するような表情だった。

「救急車……それは驚いただろうね」

「上着まで、か……本当に何も無いならいいけど……あぁ、別に驚かそうって話ではないんだけどね」

状況が状況だけに気になったのだろう。
季節のこともあるし。

「まぁ、タンコブひとつで済んで良かったと言うべきなのかな」

593美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/12/06(金) 02:46:04
>>592

「そうそう、『酒は飲んでも飲まれるな』って昔から――――」

「あはは……反省しなきゃね」

「ホントにタンコブだけで済んで良かったわ。
 何もなくしてなかったし、ヘンなコトも……多分されてない」

「逆に、『私がヘンなコトしてない』って保証はないものね。
 アハハハハ!
 …………何もしてない事を願うわ」

「誰が救急車を呼んでくれたかは知らないけど、
 きっと見ず知らずの人間を心配してくれる優しい人だったんだと思うわ」

出来るなら、会ってお礼を言っておきたい所だ。
もしかすると、何か迷惑を掛けているかもしれないし。
ただ、何処の誰かも分からないではどうしようもない。

「――――丁度あなたみたいにね」

    フフッ

「とにかく、その『誰か』のお陰で風邪も引かずに済んだわ。
 職業柄、喉の調子を崩すのが一番困るから」

声に悪影響が出なかったのは有り難かった。
何しろ、声で全てを伝える職業なのだから。
喉を潰してしまっては、仕事に差し障りが出てしまう。

594不知火琥珀『ポスティルヨネン』:2019/12/06(金) 03:14:28
>>593

「どちらに転んでも、無事では無いかもしれないということだね」

笑う美作に笑みで返す。
深刻な話というよりも美作の笑い話として受け取り始めているのだろう。
琥珀色の目は確かに笑っていた。

「ん? 私かい? 何だか分からないけれど、貴方がそういうなら素直に受け取っておこうかな」

「ありがとう!」

爽やかな雰囲気だった。

「喉の調子って言うと話をする仕事かな? 営業職……というにはちょっと違うな……ふふっ、ちょっとしたクイズみたいだね」

「貴方の謎だ」

595美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/12/06(金) 03:34:00
>>594

「どちらに転んでも――ね」

「本当に『転んだだけ』なら良いんだけど。
 ただ転んで頭を打ってコブを作ったっていうだけなら」

「でも、たとえ転んでもタダでは起きない性分だから。
 これも一つの話題になったと思えば、むしろお得よね。
 物事はプラスに考えなきゃ」

    ニコリ

至って明るい雰囲気で、朗らかに笑う。
酔って記憶をなくしたというのは、決して良い事ではないだろう。
しかし、トークの引き出しが一つ増えたという考え方も出来るのだ。
そう思えば、必ずしもマイナスにはならない。
もっとも、また同じ経験をしようとは思わないが。

「クイズ――――良いわねぇ。気に入ったわ」

「せっかくだから、この謎に少しだけ付き合って貰える?
 私の職業を当ててくれたら……
 そうね、ささやかなプレゼントを差し上げるわ」

「あなたの言う通り、お話をするのが私の仕事よ。
 でも、面と向かって話をする訳じゃあないんだけどね」

    フフッ

「――ヒントの方は、これくらいで十分かしら?」

596不知火琥珀『ポスティルヨネン』:2019/12/06(金) 03:55:27
>>595

「これは上手く返されてしまったね」

また、くすりと笑う。

「あぁ、もちろん。貴方のように美しい人に付き合えるなんて光栄だね」

クイズに乗る意思を示し腕を組む。
どこか余裕そうな笑みを浮かべたまま、考える体勢に入った。

「面と向かうわけじゃない……となると落語家だとか漫才師はない……あぁ、頭の回転が早いようでしたので」

「……コールセンター、いやしかし……」

「ナレーター、アナウンサー、声優、話す仕事……」

「でも、貴方を画面の向こうで見たならきっと覚えられていたはず……」

目を瞑って思考を繋いでいく。

「ラジオのお仕事かな?」

597美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/12/06(金) 20:13:54
>>596

「お見事!私のお仕事は『ラジオ・パーソナリティ』」

    パチッ

流れるように軽やかにウィンクして見せる。
こうした目に見えるアクションは、声では伝えられない。
まさしくボディランゲージならではの表現手段と言えるだろう。

「それでは、正解したあなたに賞品を差し上げます」

    スッ

ジーンズのポケットから名刺入れを取り出し、一枚を抜き取る。
恭しい動作で、それを目の前の相手に差し出した。
そこには、『美作くるみ』という名前が見て取れる。
『Electric Canary Garden』というのは番組名らしい。
『電気コードの付いた小鳥』のイラストが、隅の方に添えられている。

「はい――これが私からのプレゼントよ。受け取ってくれる?」

「んー……お返しと言っては何だけど……」

「あなたの名前を教えてくれない?」

「それで『おあいこ』っていう事で――――ね」

598不知火琥珀『ポスティルヨネン』:2019/12/06(金) 21:39:35
>>597

「ふむ、当たってよかったね」

(まぁ、ラジオ関係ってだけならアナウンサーも、ナレーターも該当するんだけどね)

正確に当てるのではなく少しぼかした表現を使ったらしい。

「どうも……美作くるみ、ElectricCanaryGardenね……覚えておこう」

名刺をポケットの中に突っ込んだ。

「ん。名前か。そうだね」

「不知火琥珀、それが私の名前だよ」

599美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/12/06(金) 22:50:19
>>598

「『不知火琥珀』さん――――イケてる名前じゃない。
 そのままでもデビュー出来そうね」

    クスッ

「何だか長い立ち話になっちゃったわね。
 話を聞いてくれてありがとう。
 おかげ様で、少しスッキリした気分になれたわ」

「そうそう……もし良かったら『電話』してきて。
 その時は、私があなたの話を聞かせてもらうから」

           ザッ

「――――それじゃ、またいつかお会いしましょう」

    ニコリ

笑顔で片手を軽く振って、また歩き出す。
特に行き先は決まっていない。
少し軽くなった心で、気の向くままに歩いていく。

600不知火琥珀『ポスティルヨネン』:2019/12/07(土) 01:52:32
>>599

「えぇ、また」

「素敵な貴方――――美作くるみさん」

言葉と微笑みを返す。
美作を見送る。
この女もまたどこかに消えているのだ。

601日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/09(月) 02:22:13

お金は目に見える価値の典型例だ。
けど、自分だけのための価値じゃない。
一番たくさんの人が使えてそれは大事だ。
けど、自分だけのための価値に代えるためのものだ。

『10万円』が、ある。
宝石という形である。
いつでも『10万円』に出来る。
そう思うと手持ちのお金は羽が生えたようだった。

「買いすぎちゃったな〜」

休憩スペースの椅子を三人分占領していた。
体は広げるどころか縮めていた。両手で持っていた買い物袋のせいだ。

買い物を終えたのは良いが、帰るのに困り、途方に暮れていた・・・・・・

602ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/09(月) 23:17:28
>>601

『カイコガ』を思わせる独特の風貌の少女の視線の先。
その前方から『鳥』のような女が歩いてきた。

背中に『羽』、両腕に『羽毛』、踵に『蹴爪』。
白、青、紫の三色の長髪をポンパドール風に纏めている。
もし知っていれば、彼女が『鳥とのコミュニケーション』を売りにする、
『ストリートパフォーマー』だと分かるかもしれない。
もちろん知らなかったとしても不思議はないだろう。

……そして、彼女の正体が『インコ』である事は誰も知らない。

(大空ではないにしても、こういう『空』も乙なもの)

『スカイモール』――ここから外を見た時の眺めは中々悪くない。
そう思い、ここ最近ちょくちょく来ていたのだった。

603日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/10(火) 22:04:00
>>602

(あれ。今日って『ハロウィン』だったかな〜?)
(クリスマスが今年もやってくる、季節なのに)

「んん〜〜〜」

奇怪な女だ。見たこともない…………
いや、見たことがあるような気はする。
知り合いではない。それが『確かなこと』だ。

「もしもぉーし、ねえねえそこのお姉さん」

こんな知り合いがいたら絶対に忘れない。
ともかく、気になった。立ち上がった。

そして声を掛けた。

「ねぇー、もしかしてあなたって……『トリ』?」

鳥のような風貌で、鳥を使うパフォーマーがいる。
そういう意図での言葉だが……『どう受け取られるか』

604ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/10(火) 22:59:23
>>603

    ピク…………

そこを通り過ぎようとしていた所だった。
しかし、呼び掛ける声を聞いて足を止める。
瞬間的に、『言葉の意味』について考えを巡らせる。

(『正体』を知られた?……いえ、有り得ない)

(決して有り得ない。絶対に有り得ない。何が起ころうと有り得ない)

『正体の秘匿』は完璧だ。
少なくとも、自分の感覚では『完璧』だと断言できる。
ゆえに、『知られた』などという可能性は有り得ない。

(ただ一つだけ可能性があるとすれば……)

唯一知っているのは『音仙』だけ。
彼女が『秘密』を漏らしたという可能性だ。
だが、彼女は『そういうタイプ』ではなかろう。
つまり、『秘密を知られた可能性』は皆無である。
そのように結論付け――――少女に歩み寄っていく。

「ええ、私は『鳥』です。
 鳥達と自由自在にコミュニケーションを取れる私を、
 そのように呼ぶのは決して間違いではありませんわ」

「しかし、もしお嫌でなければ、次からはこうお呼び下さい。
 『ストリートパフォーマー』の『ハーピー』と」

「私は、そう名乗っておりますので」

そう言って、恭しい動作と共に挨拶する。
相手の言葉を肯定しているようだが、
決して『正体』を明かした訳ではなく、そのつもりもない。
何でもかんでも『隠せば良い』というものではないからだ。
全てを隠し通すのではなく、急所に触れられない限りは、
敢えて認めてしまう方が安全な場合も多い。
『この身分』を名乗っているのも、そのためだった。

605日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/11(水) 09:41:51
>>604

「『ハーピー』! そういう名前だったんだねえ」
「メイクすご〜い」

          バサッ

「というか、特殊メイク〜?」

近付いてきたら、遠くから見るより『スゴイ』な。
驚いて思わず手を広げる。マントが大きく動く。
大きく見せるためのマントブラウスだから、それでいい。

「友だちがね、見たことあるって言ってたんだ〜」
「トリとお話しして好きに動かせるヒトがいるんだって」

「確かに……『見るからに』話せそ〜」
「『バイリンガル』って、頭良さそうで憧れる」

              ニコ…

「ねえねえハーピーさ〜ん、『鳥語』ってさあ、勉強して覚えたの?」

鳥と話せたら楽しそうだ。フライドチキンは、食べづらくなるか・・・

606ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/11(水) 20:23:42
>>605

「お友達はご存知のようですね。そう、その『ハーピー』です。
 私は色々な場所で『仕事』をしておりますから」

「――この機会に是非お見知りおきを」

「ご披露したい所ですが、生憎ここには『鳥』はおりませんので。
 申し訳ございません」

実際は一羽だけいる。
正確には『人に化けた鳥』が。
そして、それは知られてはならない『秘密』だ。

「お褒めの言葉、ありがとうございます」

この格好は目立つ。
自然界において、目立つ事は命取りにもなりかねない。
それは人間界でも同じ事だ。

「私にとっては、これも『仕事』の一部ですからね」

だが、一方で違う部分もある。
自分から『目立つ事が必要な職業』を名乗れば、
必要以上の追及を避けられるという事だ。
そうする事で、ブリタニカは正体を知られる事なく、
人間界に溶け込んでいた。

「お見受けした所、あなたも『羽』をお持ちのようで」

「――お仲間ですね」

    バサァッ

少女の動きに合わせて、羽毛に覆われた両腕を広げて見せる。
そして、彼女が身に着けているマントブラウスを眺めた。
自分の翼とは違う趣を持った人工の羽。

「……『鳥語』ですか?」

「私は『ハーピー』ですもの。だから話せるのですよ」

人間界には、悪魔を名乗るミュージシャンもいる。
そして、その事に対して誰も突っ込みを入れたりはしない。
何故なら『無粋』だからだ。
だからこそ、自分もハーピーを名乗っている。
大抵の人間は、『そういう演出』だと納得してくれる。

「もしも私が『ハーピー』」でなければ出来ない事だったでしょう」

もっとも、時には納得しない人間もいる。
そういう相手に対しては、
『研究』とか『訓練』とかいう言葉を出す事にしていた。
それで、ほとんどの場合は解決する。

607日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/12(木) 00:38:09
>>606

「うんうん、覚えとくし、忘れないよ。約束する〜」
「また鳥がいるときに芸は見せてもらうとして」

      キョロッ  

   「ハネぇ……?」

        キョロッ

「ああ〜、このマントのこと! これね〜、飛べないけどね」
「んふ、『虫の羽』だからさ。でも食べないでねぇ」

大きく広げた両手で、マントの両端をつかんで、拡げた。

私の好きなカイコガは飛べない虫だ。
人間に世話をされて生きる。ずっと。ずっとだ。

「そっかあ、そうだよねえ」
「『喉』が違うもんね、『ハーピー』と人間だと」

鳥語。
実際のところ、信じる根拠なんてない。
目に見える根拠がない。
が、あえて疑ってかかる理由も、またない。

「ちなみに、どんな鳥とでも話せるの?」
「鳥っていっても色々いるし〜、ハトとカラスとか違う言語っぽいけどねえ」
「『ハーピー』さんは鳥のマルチリンガル? それとも『共通鳥語』みたいなのがあるの?」

608ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/12(木) 01:19:46
>>607

「フフフ、食べませんよ。今は食事には不自由しておりませんので」

最近は、店売りの『鳥用フード』が主食になっている。
たまには『動物タンパク質』も摂取すべきかもしれない。
舌が肥えてくるのも考え物だ。

「『個人差』はありますが、私の場合ですと、
 どちらかというと『種類』よりも『生息地域』によります」

「カラスとハトは『種類』は違いますが、
 『生息しているエリア』は同じようなものです。
 近い場所に住んでいると、
 最低限のコミュニケーションを取る必要が出てきます。
 そうしないと、『トラブル』の元ですので。
 ですので、『種類』が違っても、
 ある程度の意思疎通が可能なケースは少なくありません」

「そういった訳で、この地方に住む鳥とは全て話せます。
 この地方に限らず、大抵の鳥なら問題ありません。
 もちろん、多少の違いはありますが……。
 いわば『方言』のようなものですわ」

「あまりにも環境の違う場所で暮らしている鳥だと、
 固有の『訛り』が強すぎますので、ヒアリングは難しくなります。
 その場合は『外国語』に近いですね」

「――――そういった所です。お分かり頂けましたか?」

人間の言葉で説明すると、どうしても長くなってしまう。
こういう時は、実際に披露できれば手っ取り早い。
一瞬、短く息を吸い込む。

         「 『♪』 『♪』 『♪』 」

「……今お聞かせしたのは、最も基本的な『挨拶』の言葉です。
 『敵意がない』事を示す言葉でもあります」

発声器官である『鳴管』を震わせて、『鳥のような声』を発する。
普段は、こうして野鳥達を集めている。
今は他に鳥がいないので、独り言にしかならないのだが。

609日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/12(木) 02:06:17
>>608

「や〜ん不自由してたら食べるみたいな言い方〜」
「胸の肉『1ポンド』くらいなら売ってもいいけど」

     ニコォ…

「でも1ポンドってどれくらいか分かんないな〜」
「んふふ」「もちろん冗談だよ、全部ねえ」

自分の肉を食べたことはないけど、多分まずいだろう。
それに痛いだろう。だからこれは冗談だ。
出来るけど、やらない。

「そっか〜。方言って言われたら、そうなのかも」
「私も『ロシア語』とか全然わからないもんね」
「聞くのも読むのも書くのも……」

「鳥語も、分かんないって意味ではおんなじかな〜」
「声真似するにしてもいくつも覚えられないだろうし」

鳥の言葉と人間の言葉はそもそも違う。
ハーピーさんみたいな声は自分には出せないと思う。
いや、本当にどこから出してる声なの? ってなる。

「ねえハーピーさあん、『うちのゴミついばむのやめて』ってどう発音するの?」
「それだけ練習してカラスを追い払えるようになりたい」

「それともそういうの教えちゃうと、『人間びいき』で鳥にひんしゅく買っちゃう〜?」

610ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/12(木) 02:50:39
>>609

「ええ、もちろん分かっております」

「――――私の事も食べないで下さいね?」

「フフフ、これも冗談ですわ」

人間は鳥を食べる。
その範疇に『インコ』が入らないのは幸いだ。
もっとも、鳥も空腹が極限に達すれば、
人の体を啄ばまないとは限らない。

「いえ、お教えしても構いませんよ。
 鳥と人間の間を仲介するのも、仕事と言えば仕事ですから」

「ただ、その言葉だけを覚えても、大きな効果は見込めないかと。
 彼らは、そこが『有益な餌場』であると認識しているからこそ、
 その場所に来る訳です。
 彼らの認識が変わらない限り、何度でも来るでしょう」

「つまり、言葉で退去させるには『交渉』が必要になります。
 一つの言葉だけでは、『会話』が成り立ちませんので。
 『挨拶』のように簡単な言葉であれば別ですが……」

「もし『交渉』するのであれば――――
 『ウチのゴミ啄ばむの止めて』よりは、
 『もっと良い餌場がある』と言った方が食い付いてくるでしょう」

「そうですね…………では、こうしましょう。
 私が現場に出向いて、直接彼らと『交渉』します」

「この件を私に任せて下されば、
 『三日以内』に解決してご覧に入れます。
 彼らに、『もっと良い餌場』を紹介するアテがありますので。
 そうすれば、もう二度とゴミを啄ばみに来る事はなくなるでしょう」

「――――いかがです?」

要するに、彼らを『ハーピー』の傘下に加えるのだ。
パフォーマンスに協力してくれる代わりに食料を供給すれば良い。
今『契約』している野鳥達とも、そのような取り決めを結んでいる。

611日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/13(金) 11:34:19
>>610

「んふ、食べないよ〜」
「私、今日は鶏肉の気分じゃないから」

      フフフ

もうちょっと正確に言うと、『なくなった』から。
ついさっき食べたから。

「あそっかそっか、それはそうだよね」
「鳥が『食べものくれ』だけ言ってきても困るもんねえ」
「逆も同じだ」

納得できる話だ。

「そうだね〜、」
「『交渉』してくれるなら任せちゃいたいけど〜」

「『タダで』ってわけじゃないよねえ?」

            ゴソ

「いやむしろ、『タダ』って言われるほうが怖いんだよね」
「私ね、『わかりやすい』のが好きだよ〜」

財布を出して中身を探る。
当たり前だけど『鳥のための活動できれば満足』なわけない。
それなら鳥を『商売道具』になんかしない。分かってる情報で判断する。

612ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/13(金) 18:14:30
>>611

幸い、人間の世界には『法律』というものがある。
その辺を飛んでいる鳥を勝手に捕獲したり殺傷してはならない。
狩猟に関する決まりとは別に、動物愛護法というのもある。
いずれにしても、大っぴらに動物を傷付けるのは犯罪だ。
法律というのは人間のために作られるが、
動物にとっても利用する値打ちはある。

「いえ、代金は不要です。
 どうしてもと言われるなら、心付け程度に頂きますが。
 いわゆる『チップ』ですわ」

「『本業』の方も、特に料金が決まっている訳ではありません。
 あくまでも金額は自由です。出さない人もいます。
 当然ビジネスが成り立っているのは、
 『出してくれる人』がいるからですが……」

「必ずしも出して頂く必要はありません。
 ただ、私の事を話のタネにして下されば良いのです。
 『ハーピーのお陰で助かった』――――と」

「その話が広まれば、私の『知名度』が上がり、
 見に来る人々も増えます。
 ギャラリーが増えれば、
 当然『出してくれる人』も増えるという訳ですわ」

代金をもらって終わりにするよりは、
『宣伝』してもらった方が長期的なメリットが大きい。
だから、『交渉料』は求めない。
それを取るのは、もっと『需要』が高まってからの方が良いからだ。

613日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/13(金) 23:22:18
>>612

「ほんと? 約束だよ〜。チップだけは渡すけどね」

           ジャラ…

「前払いで500円」
「これはもし失敗しても返せとか言わな〜い」

「それでね、成功したら別でお金あげる」
「もちろん『噂』もちゃんとしてあげる。契約書書いてもいいよ」

「『お仕事』だから、あいまいなのはよくないしね」
「後でもめたりしたら嫌だもん」

財布から取り出した500円玉を目線の高さに掲げる。
500円玉。金色で、一番大きい硬貨だ。
仕事にしては少ないけど、大道芸人の『チップ』なら妥当だと思う。

「前からねえ、『網』掛けててもどかされたりしてね」
「カラスって頭いいんだって、ほんとなんだな〜って思ったよう」
「人間より賢いかも〜」

       ニコ…

「ハーピーさあん、よろしくね。私のクオリティオブライフを守って〜〜〜」

614ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/13(金) 23:57:22
>>613

「――――確かに頂戴致しました」

    ソッ

羽毛に覆われた腕を伸ばし、丁重に500円玉を受け取る。
人間以外の存在にとって、金銭は価値を持たない。
しかし、『人間界に紛れ込む人外』にとっては価値あるものだ。

「ええ、鳥は賢い生き物です。
 そして、それ以上に人間は賢い。
 このように巨大な建物を作り出せるのですから」

「ただ…………」

          フフフ

「もし人間が鳥と同じような大きさや身体構造だったとして、
 鳥より賢くなれたかどうかは分かりかねますね」

どちらかを持ち上げているとか見下している訳ではない。
鳥と人間では、元々の『条件』が違うのだ。
もし条件が同じだったとしたら、どうなるかは分からない。

「では、『場所』を教えて頂けますか?
 『交渉』するには相手方の情報が必要になります。
 そのために下見をしておきたいですわね」

「ところで……結構な大荷物ですね。一つ持ちましょう」

「『前金分』のサービスです。
 それに、その方が早く目的地に着けます。
 早く目的地に着けば、それだけ早く仕事に掛かれますわ」

重そうな買い物袋の一つに視線を向ける。
本来の自分であれば、到底動かすことの出来ない質量だ。
しかし、『ハロー・ストレンジャー』のパワーなら動かせる。
単純な事だが、これもスタンドの恩恵の一つ。
そして、『交渉』に用いる手段は『本体の技能』だ。

615日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/14(土) 01:36:54
>>614

「脳みその大きさが全然違うもんねえ」
「脳みその大きさ、見たことないけど〜」

目に見えないものだが、確かなことだ。
鳥は人間よりずっと小さい。
でも……だから飛べる。

「それじゃあ、案内しようかな。これ持って〜」

           スッ

人間は飛べないけど大きい。
それに、腕がある。

手渡したのはぬいぐるみの入った袋だ。
落としても、雑に扱っても壊れたりしない。
最悪、服と違って家から出すものでもない。
人に任せるには、ちょうどいいものだ。

「私ねえ、荷物が多すぎて帰るのが大変だな〜って思ってた」
「鳥のことも解決しそうだし」「ハーピーさんに会えてよかった〜」

「あ、バス代は前金とは別で出すからねえ」

あとはバスに乗って、家に帰る・・・連れて行くだけだ。
当面の悩みが『2つ』減って、そのためのお金はあんまりかかっていない。
そういう意味で、この『大道芸人』との出会いは意味があるものになったのだ。

616ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/14(土) 19:00:04
>>615

「――――では、参りましょう」

              ザッ ザッ ザッ…………

鳥のような女が、カイコガ風の少女に同行する。
それから三日後、日下部家の周辺における烏の被害は、
キレイさっぱりなくなった。
同時に、『ハーピーのショー』に出演する烏が何羽か増えたようだ。

617比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/17(火) 00:22:37

休憩スペース――ベンチの下に一枚の『カード』が落ちている。
四隅に四つの『スート』が並び、中央には『道化師』の図柄。
それは『トランプ』に似ていた。
誰かの落し物だろうか。
通り過ぎていく人間は何人かいたが、まだ誰も気付いていないらしい。

618不知火琥珀『ポスティルヨネン』:2019/12/18(水) 04:46:29
>>617

「ん?」

フードにファーの着いたモッズコートを着た人間がいた。
その視線は床に落ちているらしいカードを見ていた。
不審がる雰囲気の顔だが一方でどこかそれを当然と思っていそうな、ある意味関心の薄いところもあった。
なぜ落ちているのかと考えながら、落ちていても不思議ではないという顔。

「……」

手を伸ばす。
もちろん、カードに向けてだ。
興味が湧いたのだろう。

「なんでここに?」

619比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/18(水) 16:44:03
>>618

床の上に落ちている『カード』に気付いたのは一人だけだ。
その手が伸びていく。
指先が触れた瞬間、変化が現れた。

         ポンッ

一瞬の内に、『カード』が『兵士』に変わった。
『黒い鎧』を身に着けた『黒い兵士』だ。
それがスタンドである事は一目瞭然だろう。

          ジッ

しかし、『兵士』は動かない。
逃げもしないし、近付いてもこない。
その場に留まって、ただ相手を見上げているだけだ。

620不知火琥珀『ポスティルヨネン』:2019/12/18(水) 23:09:44
>>619

「……ふむ」

なるほど、と頷いた。
思い当たるものがある。
となれば、目の前のこれをどうこうするのもどうなのか。

「……」

周囲に視線を向ける。
兵士には興味が無いようだ。

621比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/18(水) 23:41:04
>>620

    ザワ ザワ ザワ

周囲に視線を巡らせる。
行き交う人間は割と多いが、留まっている人間は少ない。
その中に、一人の男がいた。

「――――…………」

モノトーンのストライプスーツを着て、中折れ帽を被った男だ。
太い柱に背中を預けているらしい。
不知火から見ると、ちょうど柱の陰にいるような格好だ。
その視線は、不知火とは真逆の方向を向いている。
傍から見れば、ごく普通に店を眺めているように見えるだろう。

           スッ

『兵士』は、やや後ろに下がった。
それ以上の動きはない。
他に気付く者も、またいない。

622不知火琥珀『ポスティルヨネン』:2019/12/19(木) 00:32:57
>>621

「ふぅ……イタズラも程々にした方がいい」

立つ。
そして傍に現れる真っ黒な甲殻の人型。
手には白い槍……しかし即座に消えてしまった。

「さて、君のご主人はどこかな?」

再び兵隊に視線を向けた。
そして、騎士が歩き出す。
何かを探しているようだ。

(そこまで気を張るようなことでもないのだろうけどね)

623比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/19(木) 00:55:56
>>622

『黒い騎士』と『黒い兵士』が向かい合う。
『兵士』は更に距離を取り、ベンチの足の陰に移動した。
出現したスタンドを警戒しているのかもしれない。

(『騎士』のスタンドですか……)

(以前、自然公園で見かけたものと似ていますね)

『鉄夕立』と名乗った少年を思い出す。
彼も、『騎士のスタンド』を持っていた筈だ。
偶然だろうが、珍しい一致だ。

(さて――――)

兵士の視界を通して、相手の動向を窺い続ける。
これは、ちょっとした試みだった。
『オルタネイティブ4』の一枚を設置し、離れた位置で待つ。
落ちているカードが何時気付かれるか、
誰が気付くのか、気付いた相手が何をするか。
それを確認するための試みだったのだ。

(何をして来るか……拝見させて頂きましょう)

624不知火琥珀『ポスティルヨネン』:2019/12/19(木) 01:06:29
>>623

「……」

(まぁ、それほどこういうものを見た訳じゃないけれど)

こういうものの射程は長い。
自分のスタンドも人よりは長い射程を持っているだろうが。

(……でも、様子を見てるんだろう。カードが落ちていたんだから)

騎士が人を探そうと動く。
こちらからは見えず、向こうから見える場所。

「さて、どうしてあげようかな」

不知火琥珀は兵士に近づいていく。

625比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/19(木) 01:30:00
>>624

あからさまに隠れている人間は見当たらないようだ。
どの人間も、こちらかも向こうからも見える位置にいる。
そして、不知火の方を見ている人間もいない。

(本体で近付いて来ましたか。
 『オルタネイティヴ4』の特性を知っているとは思えませんが……)

『オルタネイティヴ4』は実体化している。
だから、人間でも干渉が可能だ。
それでも、パワーは人間並みにある。
そう簡単に潰されはしないだろう。
だが、不安要素と言えば不安要素ではある。

(スタンドも未知数。
 一応の警戒はしておきましょう)

ベンチの足が盾になるような位置で『兵士』を待機させる。
ここまでの動きを見ると、攻撃的な人物ではなさそうだ。
しかし、念には念を入れておく。

626不知火琥珀『ポスティルヨネン』:2019/12/19(木) 22:38:29
>>625

「隠れんぼが好きみたいだね」

「……まぁ、敵意がないなら放っておいてもいいかと思うけれど」

ベンチに座る。

「さて、どうしようかな」

騎士が空中に手をかざした。
そして、握り込むと同時にゆっくりと白いものが現れる。
槍のような白い物体。

「……」

ゆっくりと手の中で槍が伸びる。

627比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/19(木) 23:32:58
>>626

(睨み合いを続けるというのは余り有意義とは言えない)

(…………少し試してみますか)

    ダッ

相手が座った直後、『兵士』が動いた。
擦れ違うような形で、不知火の足元を通り抜けようとする。
そのスピードは特に速くはないが、遅くもない。

(このまま何もないなら、引き上げても良いのですが…………)

『四枚のカード』を手の中で弄ぶ。
一つの行動サンプルとして、一応の収穫は得られた。
ここで自分が立ち去ってしまえば、後に禍根を残す事もないだろう。

(しかし、あの『白い槍』――多少の興味はありますね)

見た目だけで分かることは限られている。
しかし、深く知るには危険が伴う。
一時の関心のために、大きな危険を冒すつもりはなかった。

628不知火琥珀『ポスティルヨネン』:2019/12/20(金) 00:17:52
>>627

「うーん、もういいか」

白い槍を途中で折って騎士が投げる。

「こちらから仕掛けよう」

白い槍の穂先の狙いは兵士だった。
真っ白なそれは実体化していた。
真っ直ぐに飛んでいく。
不知火琥珀は首を振った。
目を前に向けたまま横に何度が振っていた。

629比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/20(金) 00:51:12
>>628

    ヒュッ

折り取られた槍の穂先が飛んでいく。
スピードは『兵士』と同等。
しかし、その狙いは至って正確だ。

(おっとッ…………)

          クルッ

(これはいけませんね)

『兵士』が振り向いた。
しかし、避けようとする動作は見えない。
無防備に立ったまま、防御さえしようとしていなかった。

(少々冗談が過ぎましたか)

『兵士』の正体は『ジョーカー(>>623)』だ。
『ジョーカー』には『ダメージフィードバック』が存在しない。
だから、回避も防御もする必要はなかった。

630不知火琥珀『ポスティルヨネン』:2019/12/20(金) 01:50:23
>>629

穂先が当たる。
実態化した白い槍の穂先が落ちた。

「……む、なるほど」

頷くと槍が消えていく。
まるでドライアイスが煙を発するのに似ていた。

「帰ろうか」

倒れない兵士を見てそう判断したらしい。
スタンドを自分の傍に移動させ、解除する。
ベンチから立ち上がる。
帰るつもりなのかもしれない。

631比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/20(金) 02:10:54
>>630

(『槍』が『煙』に……?まるで舞台演出のような……)

(舞台の演出で使われる煙と言えば『ドライアイス』。
 あの『槍』も似たような性質を……?)

    ピッ

立ち上がる不知火を見て、『兵士』が敬礼した。
付き合ってくれた事に対する謝辞だ。
もっとも、伝わるかどうかは定かではないが。

        ――――シュンッ

そして、『兵士』の姿が消えた。
どうやら解除されたらしい。
懐から鎖付きの懐中時計を取り出し、時間を確認する。

「そろそろ戻るとしますか」

                    ザッ

時計の蓋を閉じて、足を踏み出した。
ストライプスーツの背中が、行き交う人々の中に溶け込んでいく。
そして、不知火と同じようなタイミングで立ち去る事になるだろう。

632ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/29(日) 01:54:15
こんばんわ。寒いですわね。皆さん元気?
まゆです。占い師の末石まゆです。
心の中じゃ『(偽)占い師』って名乗ってるけどね。

《  運命視   》
《占い 3000円カラ》

今日は出張営業中よ。
ショッピングモールの中に机置いてます。
手相の表なんか置いちゃってます。

633比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/29(日) 13:43:17
>>632

ザッ

(おや、『あれ』は…………)

ショッピングモールの一角を遠目から見て、足を止める。
進もうとしていた方向は、そちらとは逆方向だった。
しかし、こちらの方が面白そうだ。

      ザッ ザッ ザッ

「――――占って頂けますか?」

モノトーンのストライプスーツを着た男が、机の前に立つ。
人当たりの良い微笑を湛えた優男だ。
前に一度『カード占い』をしてもらった事はあったが、
『本格的に占ってもらう』というのも一興だろう。

634ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/29(日) 22:52:41
>>633
「 (げぇッ  ヒルマ) 」

《前回のあらすじ!》
《ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647631/856-883》
《偽占い師『ラフィーノ石繭』は、胡散臭げな優男『比留間彦夫』にしてやられたのだったっ!》

ぐっクソっ この男今回こそぎゃふんと言わせたるからなっ
あっこないだのこと思い出したらちょっと涙出たかもっ
だめよ私、堪えて!
涙なんて流したら私の綺麗な目が更に潤んでもっと綺麗になっちゃうじゃないっ


「――――――また逢いましたね」
「これも運命でしょうか」

     ニコッ

ああいう顔だけはいい手合いは笑顔の仮面をかぶって、
相手を自分の領分に引きずりこもうとしたり、
平気でうそをついたりするのよ…気をつけなきゃ…
こういうやつが詐欺とかやるのよ…変な商材とか売りつけるのよ…

 「お掛けください」
 「あなたは本日も『楽しんで』らっしゃるようですね  何よりです」

635比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/29(日) 23:27:00
>>634

「ええ、『お陰様』で」

投げ掛けられた言葉に淀みのない微笑みを返す。
事実、その通りだった。
『今も』楽しんでいるのだから。

「――では、失礼します」

         ガタッ

「こちらで『出張営業』していらっしゃると聞きまして」

「是非とも占って頂こうと、こうして出向いた訳です」

「先程から探していたんですが、見つけられて安心しましたよ」

    ニコリ

もちろん実際は違う。
たまたま見かけたから寄ったに過ぎないのだ。
普通の人間なら気付かないかもしれない。
しかし、『イカサマ』とはいえ彼女は鋭い。
見抜かれるかもしれないが――それはそれで面白い。

「ええと……『見料』は前払いでしょうか?それとも後払いで?」

「三千円『から』という事は、『上のコース』などがあるのでしょうか?
 こういった事には、あまり慣れていないものでして……。
 恐縮ですが、説明を願えますか?」

636ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/30(月) 21:49:16
>>635
「あら、ありがたい話です」

「―――説明しますね 
 おひとり様、お連れ様ご家族様、そのほか団体様であろうと、
 相談は一律で3000円 お話は30分まで。 
 料金は先払い。1時間500円で延長もできます」

「出張営業では『石』『星』『カード』までです。『透視』はちょっと…ここでは。」

「また、出張営業では『上のコース』は提供できません。
 私の館……要するに事務所なら予約制で『上のコース』があります」
「私のホームページは見られました?」

この『出張営業』は客をキャッチするためのやつね。
メインの営業は事務所でのそれ。
―――怪しいわ比留間。私の存在を知っててたら事務所に来るとは思うのよね。
事務所でも女子高生グループとか向けの『3000円コース』はあるから。
なかなか怪しいわ比留間。嘘とは断定できないけど。
公式ホームページで出張営業の告知とかしてるし…

あっご予約はホームページから。お願いします。
生活が懸かってるんです。ぜひ気軽にご予約を。お願いします。おねがい。

637比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/30(月) 22:20:26
>>636

「いえ、『まだ』見ておりませんね。後ほど拝見させて頂きますよ」
 
「教えて頂いて有り難うございます」

    ニコリ

『ホームページ』については軽く受け流す。
どのような業種であれ、それを設けるのは現代では常識と呼べる。
しかし、全ての人間が必ずチェックするとは限らない。
ここで更に突っ込んでこられると面倒だが、
そこまで追求するような話題でもないだろう。
時間に余裕があって、まだ覚えていたら、話のタネに見てもいい。

「『透視』にも興味はありますが、
 『石』と『星』と『カード』ですか…………」

「――――なるほど」

「『カード』というのは何となくイメージ出来ますが、
 『石』と『星』というのは?」

『カード』は既に体験している。
選ぶなら『石』か『星』か。
どちらにしても、『真っ当な方法』ではなさそうだ。

(もっとも――『だからこそ面白い』とも言えますが)

どのような手で来るのか。
自分が見たいのは『それ』だ。
そのために、こうして足を運んだのだから。

638ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/30(月) 23:07:03
>>635
あッ嘘ついたこいつ 嘘だ 
ホームページ見てないなら私の出張営業なんてわからないもん。
ショッピングモールの関係者くらいしか知らないわよ。
なんにせよ。ぜったい通りすがりに前にボコボコにした女がいたから
またとっちめて遊んでやろうって魂胆だ くっそォ 死ね

「伝統ある『星詠み』、
 あなたに同調する『パワーストーンの発見』…となっております」

 『占星』は相手の誕生日とかの『力のある数字』に合わせて、
  表に書いてある内容を照らし合わせるだけのお仕事。
  知識さえあれば楽。わたしの知識は中途半端だけど。

 『パワーストーン』は適当な色や選択肢を選ばせ、
  それっぽい『効果を秘めた石』を提示して買わせる商売ね。
  グッズを買わせられるんでもうけが出る。うれしい。

「まず、『氏名』『誕生日』『好きな色』等プロフィール、
 『相談したい内容』『お好みの占いの方法』などお書きになって」

比留間に、ひんやりとした紙切れとボールペンを渡す。


「書きたくなかったら白紙でもいいですわ その場合はこちらで進めます」
「紙とお代を受け取ったら、わたしが『視ます』」

余談だけど横に飾ってある手相表は貰いモンよ。
なんで、『手相』やってください!……と言われると深層意識(PL)が困る。
わたしがドタバタ困る様子を見たければこちらをどうぞ。

639比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/30(月) 23:43:58
>>638

「よく分かりました。ご説明に感謝します」

謳い文句は、いかにもそれらしい。
流石に商売にするだけあって、
『雰囲気作り』には気を遣っているのが窺える。
どのように『視てもらえる』のか、大いに『期待』したい所だ。

「それでは――――」

「おっと、『インクの出』が悪いですね。
 この季節では無理もありませんが…………」

    スッ
           サラサラ

「ああ、大丈夫ですね。失礼しました」

懐から手帳を取り出し、それにボールペンを走らせる。
しかし、あくまで『振り』だけだ。
別に特別な意味はない。
ただ、相手の流れに乗っているだけというのもつまらない。
ほんの少し『揺さぶってみよう』と思っただけだ。

                  サラサラサラ

      氏名:比留間彦夫
      誕生日:七月七日
     好きな色:スカイブルー
    相談内容:友人に関すること
      希望する占い方法:石

「――――これで宜しいでしょうか?」

ボールペンを机に置き、用紙と見料を差し出す。
名前に偽りはない。
『それ以外』については、多少の『脚色』は加えているが。

640ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/31(火) 00:43:11
>>639
む。ボールペンは『熱で消えるインクのやつ』だ。
上手くいけば色々手品とかできたかもしれない。…が、感づかれたか?
動揺するほどのことではないので表情には出さない。
出さないつもり。出てないよね?顔に出てるかもしれない。

 「ご友人ですか」

いやこいつ、正しい意味での友達とかいるの?
心通わす相手とかいるんか?

 「お友達、多そうなタイプに見えますけれど――」

当然私だって嘘はつく。
ここで、ふとまだ比留間の差し出した紙を覗き見る。

 「―――――?」
 「これ、正しい事書いてらっしゃいますよね?」

まだ見料は机に置いておく
私の最初のアクションは以上だ。
さあかかってこいッ そのクールなツラ歪ませちゃるわ

641比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/31(火) 01:18:05
>>640

「ええ、その筈ですが…………?」

「ああ、なるほど――『ごもっとも』です」

よく知った間柄ならいざしらず、
文面だけで真偽を区別出来る筈はない。
そんな考えは微塵も表に出さず、
あからさまに不思議そうな表情を浮かべた。
そして次の瞬間には、さも『納得いった』かのような顔をして見せる。

「どこにでもいるものですからねえ。
 「『いい加減な内容を面白半分に書いて出す人間』というのは。
 『確認』なさるのも当然ですよ」

「もちろん全て『本当』です。
 いえ、わざわざ私の口から言う必要はありませんでしたね」

「貴女の力は紛れもなく『本物』なのですから。
 実際に相手を占ってみれば、
 『本当かどうか』は簡単にお分かりになるのでしょうね?」

「いや、これは失礼しました。
 『素人』が出過ぎた口を聞いてしまいまして」

「――――どうか、お許し下さい」

平然とした顔つきで堂々と言い切り、
申し訳なさそうに軽く頭を下げた。
自分にとって『嘘をつく行為』というのは、
『喫煙者がタバコを吸う感覚』に似ている。
食事をしたり睡眠を取ったりするのと同じで、生活の一部だ。
そして、もし『止めよう』と思っても『止められない』。
幸運なのは、『止める気』が起きないという事だ。

642ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/31(火) 03:24:15
>>639
「ああいえ、疑ったわけではなく わたしこそ失礼いたしましたわ」
「あなたが『誠実』であることは分かりますから 」
 (んなわけないでしょこのポーカーフェイス)

当然さっきの質問は嘘よ。
だが疑ったのでカマを掛けた、というつもりはない。

 「7月7日」
 「7って『幸運』の数字、という風潮もあるじゃあないですか」
 「よい数字です 『二つ揃え』は『特殊』です 『双子のイメージ』です」
 「占星的な話をするとかなり変わってきますけれど、ね」

 「なのですが、どうもそういう雰囲気を感なかったもので」
 「何でしょう、『離れた』『兄弟』の『イメージ』が。」

ここで比留間の目を見る。
そう、この誕生日がマジか、ガセなのかは『どうでもいい』。
会話のフックでしかない。
占いにおける『なんか違うんだけどなんかありました?』は分岐が多く便利だ。

 「何か最近大きな出来事とかありました?」
 「やめた、とか」

ちなみに私、先ほどから投げてる質問はすべて曖昧になっていて、
相手がどうツッコもうと『やはりそうでしたか!』に分岐可能だ。
今は『当たり』を探す段階だ。岐路を増やす。

   ジ――――ッ

目を見ながら一瞬間を置く。比留間が『なんか違うなあ』みたいな無言や喋りをしたら

 「何かから距離を置いたりとか 逆に大きく近づいた、とか」
 「ああいえ、習慣でも何でも。好きなアイドルの引退、とか」
 「人間をやめたァ―――ッ!!!なんて答えでも構いませんけれど ふふ」

と、『ずらす』。

643比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/31(火) 05:15:14
>>642

この誕生日は『出まかせ』だ。
しかし、何の根拠もなく分かるものではない。
それこそ、『身分証の提示』でもしない限りは。
そして、彼女は『疑っていない』と口にした。
今になって『確認させろ』とは言い出しづらくなるだろう。

「『縁起が良い』とは言われますね。
 『七夕生まれで覚えやすい』とも」

「『双子』ですか……。
 言われてみれば、確かにおっしゃる通りだと感じます。
 『プロ』の方の言葉は含蓄が違いますねえ」

「ただ――――私に『兄弟は』おりませんね」

    ニコ……

『困ったような笑顔』で否定しつつ、答え方を微妙に『ぼかす』。
『姉や妹ならいる』ように聞こえる言い回しにするという意図だ。
ただ、明確な狙いがある訳ではない。
言ってみれば『撒き餌』のようなもの。
『胡散臭い言葉』をバラ撒いて、
『隙』を生じやすくさせようといった所だ。

「『止めたこと』……少々お待ち下さい。
 もう喉元まで出掛かっているんですが……」

「『止めた』……『止めた』……」

「――――『止めた』で思い出したんですがね、
 私が小さかった頃に、父が『タバコは止めた』と言い出しまして。
 年中ひっきりなしにスパスパやってる人がですよ。
 『これは一週間持ったら良い方だな』なんて、
 子供心に思ったものです」

考える素振りをする途中で、唐突に『話を変える』。
昔を懐かしむような口調で『存在しない話』を語る。
言葉は、なおも続く。

「そうしたら、なんと『次の日』には、もう吸ってましてね。
 私が『タバコは止めたんじゃなかったのか』と聞きましたら、
 何と答えたと思います?」

「『タバコを止めるのを止めた』と返してきたんですよ。
 いや、『物は言い様』ですねえ。『詭弁』と言うんでしょうか?」

「私は『それは卑怯じゃないか』と言ってやりましてね。
 そうしたら、父はこう返したんですよ」

「『言葉というのは便利なもので、
 使う人間や受け取る人間次第でどうとでも変えられる。
 だから、この世から詐欺師はいなくならない』」

「――――とね」

    ニコリ

「すみません、つい『余計な話』をしてしまいました。
 ここに座っていると、
 何だか色々と打ち明けたい気分になりまして。
 ラフィーノさんに、
 『人を話しやすくさせる力』があるせいでしょうか?」

「『不思議』なものですねえ」

眼前に座る占い師の目を見つめ返す。
その表情には、穏やかな微笑があった。
『作り話』の中の『詐欺師』というのが、
『誰を指しているか』は言うまでもない。

644ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/31(火) 06:54:08
>>643
 「ふふふ、面白いお父様ですね、ですから―――」

不味い。負ける。わたしの話にまともに取り合う気が『皆無』だ。
質問に答えるどころか、己に都合のいい話を始めた。
エゴが強い。それとなく煽る。嘘をつく。比留間は、『最悪』だ。
わたしとしてはキレて殴りかかるか、びーびー泣く10秒前よ。
…いや、


「――――――ですから、『占いなんて信じ切っちゃあいけませんよ』」

 「仰る通り、言葉というのは多角的です」
 「あなたさまは、私に期待して、
  わざわざ出張所にまでいらしてくださったようですが
  …残念ながらわたしが視るのはあなた様の、あくまで一側面でございます」
 「ことばは、誤って伝えてしまうこと、受け取ってしまうことがあります」

 「ですので、違和感があったら言ってください。
  『一緒に』『あなたを探していきましょう』。」

 「兄弟はいらっしゃらないって『マジ』ですか?妹さんとかは?」
 「あなた様が『お話がしやすいと感じた』のなら、とても良かった。 
  もっとお話を聞かせてください?ふふ 」

『負け』だ。内臓を晒して負けよう。
ただし今回のオペレーションが崩壊しない程度の負けだ。
負けとは言うが、言葉の綾は『占い』の本質だ。占い師の内臓だ。嘘がない『誠意』だ。
そして占いというオペは、対話による『共同作業』であることを示したい。
『詐欺師』だと?勘違いしてんじゃねえ。こちとら『(偽)占い師』だ。

 「他愛もない世間話だと思って、リラックスして、お話ししませんか?」
 「大丈夫です。ぶっちゃけますと、『貴方に興味が出てきました』」

これもぶっちゃけよう。
比留間は『やばいクライアントのケース』としては貴重なサンプルだ。
わたしとしてはスタンドでタコ殴りにするか、ガチ泣き5秒前って感じだけど…
…しかし、客観的に見ればなかなか面白いクソ野郎の雰囲気ではある。

    ガサガサ
  「―――それで、友達が多そうなタイプ、の話ですが」

机に置いてある権料を回収する。まだ占いは開始していない。

     ガコン   

      「ちなみにわたしの友達はこれです」
     
  ミスティカル・ガイド
「『神秘への手引き人』」

             ガチャ

瞳に水晶の意匠を持つ『スタンド』を発現。ここから比留間の『体温』の監視を開始する。

そしてわたしが取り出し開くは『トランクケース』。
内部は格子状に細かく仕切られており、
小豆サイズの小さな『色とりどりのクリスタル』が詰められている。

 「綺麗な友達だと思いませんか? では、始めましょうか」

ここから占い開始だ。ここから私の裏をかきたがるなら、
もうそれは占いの『客』じゃなく『客じゃない迷惑な奴』だ。
『ミスティカル・ガイド』で殴るぞ。
…という気力を込め、比留間の目を強く見る。
泣かないわよ私は。キレそうであるけど。料金受け取っちゃったからやるしかない。

645比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/12/31(火) 19:33:42
>>644

「いえいえ、とんでもありません。
 貴女のように立派な方に話を聞いて頂くだけでも、
 私にとっては十分に『有意義』ですよ」

「なるほど――自分自身の事というのは、
 案外分かっていないものですからね。
 私も時々、人から注意される事がありますよ」

「どうも、知らず知らずの内に、
 『無神経な事』を言ってしまう所があるようでして。
 自分では気を付けているつもりなんですが……」

「――いや、お恥ずかしい事で」

実の所、彼女――『ラフィーノ石繭』の事は嫌いではなかった
むしろ、ある種の好感を抱いていると言っても、
間違いではないかもしれない。
何故なら、『張り合い』のある人物だからだ。
彼女のように『狡猾な人間』とのやり取りは、非常に面白い。
少なくとも、その点に関しては偽りのない『真実』と言える。

「ええ、私は『一人っ子』ですね。
 そのせいか、なかなか厳しく育てられまして」

ただ嘘を並べるだけでは『質』が悪い。
真実と織り交ぜる事で、『嘘の質』は高くなる。
だから、これは『本当』だ。

「私に『興味』……ですか?
 いや、何と言いますか……。
 そんな事を言われるなんて思ってもみませんでしたよ」

「『光栄』――――と、受け取らせて頂きましょう」

    スッ

「『ミスティカル・ガイド』」

             スッ

ほんの一瞬、発現した『ミスティカル・ガイド』を一瞥した。
しかし、すぐに『トランクケース』に視線を移す。
感心したような表情で、そこに収められた『クリスタル』を眺める。

「見事なものですねえ。どれも光り輝いている。
 勿論、私は『素人』なので詳しい事は分かりませんが。
 それでも、とても綺麗だという事は理解出来ますよ」

「――――ええ、『よろしくお願い致します』」

『水晶』のような瞳――あれで、
『何か』を見ているらしい事は分かっている。
もっとも、『それが何か』も見当がつかない。
ゆえに、『体温』を読み取られている事には気付かない。

646ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/01/02(木) 00:54:39
>>645
「厳しく、ですか」
「よい教育を受けてらしたように見えます」
「『無神経』だなんて、ふふ
 占い師なんて案外多いのです。疑われること。
 いつもの事です、気にされなくて大丈夫ですよ」

ちなみにだ。
私はさっき強制的に料金を回収し、トランクを広げるという『イベント』を起こし、
そのイベントに気が逸らして無理やり会話の流れを変えたわ。
なんか『イベント』が起こせそうなことをキープしておく。
ヤバいときのための、常套手段ねこれ。

  >ほんの一瞬、発現した『ミスティカル・ガイド』を一瞥した。

 「………ん?」

占い師は相手の顔を見る。『目』を見る。なので、

 「…………ん????」

なので感づいてしまう。
『ミスティカル・ガイド』の方を見る。後ろを見る。
…なんもねェな。え?あれ?
笑顔でキープしていた私の顔に冷や汗が浮かぶ。

  「ええと、比留間さん」

   「マジで、『素人』?」

    「『人に見えない物』とか見えてない?マジで。ウン。」

動揺で口調が崩れてきたわ。いやまさかね…まさか。涙目になってきた。

647比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/01/02(木) 01:46:25
>>646

「『人に見えない』と言われますと、
 いわゆる『霊感』の類でしょうか?」

「いえ、私は『幽霊』を見た経験はありませんね。
 『ホラー映画』でなら見た事はありますが」

これは『嘘』ではない。
事実、『幽霊』など見た事は一度もないからだ。
しかし、若干だが『赤み』が増した。
『温度』を読む『ミスティカル・ガイド』だからこそ分かる、
些細な『色調』の変化。
『決定的証拠』と言える程の変化かというと微妙な所だが、
少なくとも変化があったのは確かだ。

「ラフィーノさんには『お見え』になるのですか?
 貴女のように神秘的な方なら、
 それも不思議ではないような気がしますね」

「そういえば――――『見えてしまう』というのは、
 必ずしも良い事ではないらしいと聞いた事があります。
 『幽霊』というのは、
 『自分が見える者』を求めているそうですからね」

「『見える人間』というのは、『見えてしまう』せいで、
 その『見た相手』に『気付かれてしまう』とか……」

「その相手が『面倒なタイプ』だったりすると、
 こちらの迷惑も顧みず、あれこれと口うるさく言ってくるそうで」

「いや、そんな『トラブル』には巻き込まれたくないものですよねえ」

    ニコリ

クリスタルからラフィーノに視線を移し、にこやかに告げる。
表面的には、単なる世間話にしか聞こえない。
その『糖衣』の下に隠されているのは、
更なる追求に対する緩やかな『牽制球』だ。

648ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/01/02(木) 02:40:50
>>647
 「いや」
 「『牽制球』のつもりだろうけどほぼ『どストレート』よそれっ」
 「わたしの『眼』で見りゃわかるからなッ」

『視線』『体温』『匂わす言い方』。
根拠が3つ揃った。この男『見える人』だ。
そういう風にみえるややこしい人という可能性はある。
なんにせよ『トラブル』だ。この男そのものが『トラブル』だ。
ふざけんなーーッ!!
そしてもし『見える』としたら、前回の遭遇の時も……

 「あんた『見えてたな』!そんでわたしの事をバカにしてたなッ」
 「そうでしょッ この間の『カフェ』の一件にしたって!!」

このへんで赤面し涙目になる 恥ずい。

 「自分が『面倒な人』って自覚あるじゃないの!」
 「もうその甘いマスクには騙されないわよッ」
 「うそつき!ポーカーフェイス!変態!………変態!!!!」

このクソクライアントに『処方する』石は決まった。
トランクケースをあさり、小指の爪ほどの大きさの石を取り出す。
鮮烈な青色をしていて、緻密な白い脈が走っている。

649比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/01/02(木) 03:16:21
>>648

「はあ――――」

激昂に対し、困ったように短い言葉を返す。
どういう反応が返ってくるかと思ったが、これは予想外だった。
一旦ラフィーノから視線を外し、周囲に視線を巡らせる。

「…………ええと、ラフィーノさん。
 あまり『大声』を出さない方がよろしいかと。
 その、『場所が場所』ですから」

           ヒソヒソ
                 ヒソヒソ

ここは『ショッピングモール』だ。
当然、無人ではない。
いきなり轟いた大声に、数人の客達が足を止めて振り返っていた。

    ガタ

「私の言動が気に触ったのであれば、お詫び申し上げます。
 大変失礼致しました」

椅子から立ち上がり、頭を下げる。
模範的なお辞儀だ。
これ以上彼女を刺激しないよう、
そろそろ立ち去ろうという意図もある。

「ところで、ラフィーノさん――――」

「カフェの前で『転びそうになった事』はおありですか?」

「その時、『私の友人』が、
 『地面に倒れないように支えた』と思うのですが……」

「その事を多少なりとも、評価に含めて頂けると幸いに思います」

あの時は、『ミスティカル・ガイド』に捕まってバッグに放り込まれた。
言ってみれば、『助けた恩を仇で返された』事になる。
もっとも、自分は気にしていないが、
その話をここで持ち出したとしてもバチは当たるまい。

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651ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/01/02(木) 03:56:52
>>649
 「む………」「…………」


 すぐ切れるしすぐ泣く、私の悪い所よ
『クールに』、よ。深呼吸。


「比留間さんのパワーストーンは――――『ラピスラズリ』
 自己認識、人生への責任を促します。 」

「人格の誠実さ、思いやり、高潔さを象徴し、増幅します」
「また、思考能力を強化させる効果もあるようです。」

  ガチャ

「『コミュニケーションの問題』『感情への隷属』
 を解決する作用があります。血圧を下げます。
 胸骨から頭頂部の間、特に 喉、胸元、
 あるいは第三の目の位置に当てることでパワーを得られます。」

石をもう一つ取り出し、額に当てる。
こんな効果ほんとにあるかは置いておいて、ひんやりとした石を持つと落ち着くわね。

 「『守護霊にコンタクト』し、
  『人間と霊性の調和』を取る能力も、あるそうですよ」
 「『ご友人』との関係を良くするのに、如何でしょうか」


「それと――――――申し訳ありませんでした」

取り乱した。プロ失格ね。
わたしが所詮(偽)ってのはこういう所よ。

652比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/01/02(木) 04:16:05
>>650

「『人間と霊性の調和』――――ですか。
 非常に興味深いお話ですね」

自分が『嘘つき』なのは事実だ。
『誠実』や『高潔』といった部分は、あまり自分には合わないだろう。
あるいは、『そうなれ』という事だろうか。

「光沢が美しい。
 確かに、何らかの『パワー』があるように思えますよ」

『コミュニケーションの問題を解決』というのも、
なかなか皮肉めいているように感じる。
しかし、一種の『ウィット』だと思えば面白い。
それらも含めて気に入った。

「すっかり気に入りましたよ。是非それを頂戴したいと思います」

「ええと――『お値段』は如何ほどでしょう?」

こういった『運勢アイテム』の相場は知らない。
彼女の性格を考えれば、『それより上』と見るべきだろう。
だが、多少値が張る程度なら支払う事に異論はない。
十分に楽しませてもらった。
その『見返り』としては安いくらいだ。

653比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/01/02(木) 04:17:20
>>651

654ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/01/02(木) 04:43:33
>>652
『ラピスラズリ』は、宝石って程ではないけど比較的高価な石よ。
とはいえ、これくらいのオマケ用の小さな粒であれば
100グラム500〜1000円くらいで調達できるわ。

  「『200円』…のところを」
  「お詫びも兼ねて『100円』で」

だから50%オフにしてもそんなに痛くないのよね。
わたしん所の石の価格、相場より高いから。

 「もっと大きなサイズもありますよ 
  『球』になっていてパワーの効率が段違いです。500円!」
 「こちらのブレスレット!5000円!」

ちなみに『ぼったくり』ではない。
なんでかっていうと私が時間をかけてしっかりパワーを込めているからだ。
効果なんて知ったことではないが誠意を込めてパワーを込めているから、
決してウソのある商品ではないのだ。ところでパワーって何なんだろう?

655比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/01/02(木) 05:06:23
>>654

「――――では、『500円』の物を頂きましょう」

    スッ

財布から五百円硬貨を取り出し、机の上に置く。
その代わりに、『ラピスラズリ』を受け取る。
本当に効果があると信じている訳ではなかった。
しかし、そうかさばる代物でもない。
『話題の一つ』として持ち歩いてもいいだろう。

「『良い手』ですよ。『三つ挙げる』というのはね」

「『値段の違う物』が並んでいる時、
 人間は心理的に『真ん中』を選びやすい。
 売れ行きが悪くて在庫が余っている物は、
 『高い物と安い物の間』に挟むと、
 購入される確率が向上するそうです」

「ですから、もし『五千円のブレスレット』が余った時には、
 『もっと高い物』と『それより安い物』の間に入れてみる事を、
 お勧めしますよ」

懐から懐中時計を取り出し、蓋を開く。
時間を確認する動作だが、それ自体に大した意味はない。
自然に立ち去るための『予備動作』だ。

「そろそろ失礼します。
 お蔭様で、非常に『有意義な時間』を過ごさせて頂きましたよ」

「機会がありましたら、
 また何処かでお会いできる事を楽しみにしています」

「それでは――――」

穏やかな微笑を送り、帽子を軽く持ち上げて会釈する。
特に呼び止められなければ、そのまま立ち去るつもりだ。
『有意義な時間』――その言葉に『嘘』はない。

656斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/23(木) 01:14:12
僕がこの展望台に来たのは
梅の枝につくつぼみが膨らみ、もう目に見える頃だった

 カツン!

ラジオに小鳥のぬいぐるみ、手には硬く小さいボーラーハット
待ちゆく人は白いマスクを口元に、灰色のスーツを着こなして歩いて行き、空には眼にも留めないし
こんな場所に来る気も起きないんだろう。

いつも通りのジャケットとスカーフは、この寒空にも色褪せる事は無い
吐く息は白く、肺が少し痛む青い空、僕はラジオから流れる音に合わせて踊っていた。

 「〜♪」

金属製の踊り場にて流麗な脚さばきでタップダンスを踊る
もっとも、履いているのはそれ用の靴ではなく、スニーカーに鎖が踵とつま先に幾重にも巻きつけられた奇妙な靴だ
そんな異形の靴でも、それがどうしたと言わんばかりに脚を捌き、頬を紅潮させながら踊り狂う

 (……どうしようかな)

僕は迷っていた、即断即決といえば聞こえはいいが
逆に言えば考えなしに行動するという事だ、だからと言って、今の僕は天才でも何でもない。
ただの斑鳩だ。

無駄に考え込むよりは、体を動かしてみよう
ネガティブになるのは3割くらいは運動不足だと言うしね。

小刻みに軽快な音が鳴る、1月の昼の事だった。

657百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/23(木) 22:05:47
>>656

パチパチパチパチ

不意に、背後から手を叩く音が聞こえた。
一人の人物が、壁に背中を預けて煙草を咥えている。
ベリーショートの黒髪の、パンツスーツを着た中年の女だった。
外見から窺える年齢は四十台程だが、詳しくは分からない。
身長は180cm近くあるようだ。

「上手いもんだね。見事な足捌きだよ」

「ま、ほんの素人の見立てだけどねえ」

煙草を口元から離した女が、軽く笑いながら言った。
指の間に挟んだ煙草には、火が付いていない。
ここは『喫煙所』ではないからだ。
それでも咥えていたのは、そうしないと落ち着かないからだった。
要するに、ヘビースモーカーの性という奴だ。

658斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/23(木) 23:57:16
>>657

  カツン!

振り返る前に額の汗を拭う
手すりにかけておいた白いふわふわのタオルは、運動後には実に有難い事だ

 「――それはどうも」

素直に見知らぬ相手からの賞賛に感謝する

しかし一息ついて、さて考えてみると背後の声には覚えがない
一瞬、祖母の親戚かなとも思ったが、それにしては随分と若い。
 
 「素人目に見事だと映るなら、芸は半分成功しているようなもんですよ。」

まあ実際には『感心』させたら芸は失敗なのだが、素人の僕ではその辺りが限度だろう
帽子を頭に戻すと彼女に向き合った、知らない顔だ。

仕草、体型、煙草の銘柄、見える範囲の掌……少なくとも見覚えは無い
少なくとも、僕のファンと言う事は無いだろう まだ『活動前』だし、仕込みは半分終わった処だし。

 「それで、貴女誰です? 踊りに興味が有る様には……見えませんけど。」

(体系からみると肉体労働者、この距離で香るならヘビースモーカーだな、食品系を外すか?)
(軍人かどうかは歩き方を見ないと解らないが、長年仕事を続けると掌には蛸も出来る)
(銃や警棒を吊ってるなら靴の減りは片側だけ増す……と ただ、減りの方は薄いなあ、よく解らないや。)

 「あ、まったまった、当ててみせましょうか? ん――……『警察官』!」

 (…あの『口元の黒子』に『切れ長の細目』…何処かで聞いたような、聞かなかったような)
 (『やっちゃん』に前に聞いて忘れたかなー、試験と重なったからなー。)

659百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/24(金) 00:34:34
>>658

その女の実際の年齢は定かではない。
少なくとも四十は超えているだろうし、もっと上かもしれない。
だが、そういった部分を感じさせない若々しさと力強さがあった。

「いや、邪魔して悪かったね。
 アタシは、ただの通りすがりだよ。
 何やら音がするんで来てみたら、アンタがいたって訳さ」

言葉を返しながら、煙草を手の中で弄ぶ。
未点火の煙草が、くるくると回転する。
銘柄は不明だが、くしゃくしゃになったりはしていない。

「はは、さぁてねえ……。
 そうかもしれないし、違うかもしれないよ」

その答えの『半分』は正解だった。
しかし、自分から明言はしない。
その義務がある訳でもないし、
『情報』というのは簡単に開示するものではないというのが、
体に染み付いた癖なのだ。

「ただ――『何故そう思ったのか』は聞きたいねえ」

それらしい格好をしていれば直ぐに分かるだろうが、
今の自分はそうではない。
『警官』という結論を出した理由には、興味はあった。
初対面の人間に対して、いきなり『職業』を尋ねるというのも、
何か引っ掛かるものを感じる気はする。

660斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/24(金) 00:59:26
>>659

道化がおどけたように肩を竦める

 「――適当ですよ?」

実際たいしたことではない、命中率は2割切っているのだ
4割打者とくらべるべくもない、他愛のない暇つぶし

 「歩き方、掌の形、体型に口調、体の動きの癖、その煙草の銘柄が何処で買えるか」

 「それで大体を絞って、後は適当に一つ放り投げる 偶々当たると……『相手が驚く』。」

 ――ニッ

 「僕の些細な『暇つぶし』ですよ、下らないでしょ?」

ダーツを放るジェスチャーと共にチシャ猫のように笑って見せる

実際、警官だとは思っていなかった、体育教師、…いや、警備員だろうか?大穴でパン屋
まあ『聞き返してくれた』辺り、暇つぶしの妄想ごっことしては、多少上手くいったところだろう。

 「『シャーロック・ホームズ』ならもう少し上手にやるでしょうね、貴女の靴についた土なんかを見たりして」

 「彼のモデルは実際に実在して、その人は医者だった、患者さんが医務室に入ったと同時に、どんな人か言い当てたとか。」

それだけ言ってラジオに向かうとチャンネルを変える
隣にまどろんでる『靴下をはいたような模様の猫』は、のんびりと尻尾を振るばかりだ
まあ、彼女も僕には飽き飽きしている事だろう。

 「今日のカナリアは……っと」

帰ったら何の映画を見ようか、ヴィヴァルディの嵐を一人で弾くのもよさそうだ。

 「それで 回答はお気に召しました? ……えーと、『ヘビースモーカーさん』。」

661百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/24(金) 01:31:16
>>660

「はは、そりゃあいい――――」

    カンカンカンカンカン
           カンカンカンカンカン
                  カンカンカンカンカン

「――――『もし当たってたら』驚いた所だねえ」

緩やかな歩調で階段を上がり、少年に近付く。
手を伸ばせば届くような距離で立ち止まった。
それから猫を一瞥し、すぐに視線を外す。

「そうさね、『まあまあ』気に入ったよ」

「ああ、いや――」

「アンタの顔を、どこかで見た覚えがあるんだけどねえ。
 それが、どこだったか……。
 年のせいか、物覚えが悪くなったかねえ」

煙草を持った手を額に当て、目を閉じる。
再び目を開けると、視線を猫の方に戻した。
切れ長の瞳が、猫を見下ろしている。

「――まあ、いいさ。忘れちまうくらいだ。
 どうせ大した事じゃあないだろうからねえ。
 そこの猫は、アンタの連れかい?」

662斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/24(金) 02:50:39
>>661

「そうですか?」

爪先で地面を叩くと、小気味いい音がする
これなら問題はないだろう

 「別に誰とも仲良くする必要なんて、無いと思いますけどね。」

「みんなでお手手繋いでニコニコ……なんて、気持ち悪いし、不気味だし。」

勢いをつけて、階段の手すりに飛び上がる
身体をすり抜けるように吹く風は、火照った身体には気持ちがいい。

 「その猫ですか?欲しければどうぞ」

手摺りの上で風車みたいにクルクルと回ってみせると
手すりの下の風景にも、多少は色がつくように見えた、誰も見上げはしないこの風景が。


「ただ、悪食で大食いで学校だと怪談になるヤツです」

手すりの上でステップを踏んだり、ヤジロベエみたいに身体を開くと、古い手すりでも小気味いい音を出す。
一足事に、深海で佇むような息苦しさも取れる気がする。

 「この事を知っていれば、6月に丸くなって死ぬ必要も無いのになあ……」

どうして落ちないか?
スタンドって便利だよな。

663百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/24(金) 06:26:16
>>662

全員と仲良くする必要は無い。
それは正論だ。
だが、それを口に出してしまう所に『若さ』を感じた。
しかし、敢えて言葉にはしなかった。
それこそ『必要の無い事』だ。

「ははぁ、折角だけど丁重にお断りさせて貰うよ。
 何しろ『ガキ』の世話で手一杯なんでねえ。
 これ以上は面倒見切れないのさ」

言葉を紡ぐ女の視線が、少年の後姿に移った。
手すりの上の少年を見つめ、その瞳が細く引き絞られる。
僅かな音も動作も無く、短く息を吸い、吐き出す。

        「ところで――――」

     シ   ュ   バ   ァ   ッ

  「――――『危ない遊び』は程々にしときな」

その刹那、展望台に『一陣の風』が吹いた。
両肩に『白百合』の紋章を刻んだスタンドだ。
人間も獣も超えた『音速』に匹敵する『超高速』。
『身投げを止めようとする人間』のように少年の腕を掴み、
手すりの上から引き下ろす。
続けざまに、両腕を使って流れるような動作で抱き止めた。

「特に、『このアタシ』の前ではね」

あるいは、『落ちない自信』があるのかもしれない。
だが、根拠があろうとなかろうと関係ない。
目の前で、『子供が手すりの上でフラフラしている』。
そんな『危険行為』を見てみぬ振りなどしない。
それが百目鬼小百合の『正道』だ。

「やれやれ、つい『勝手に手が出ちまった』よ。
 ま、お節介なのに出くわしたと思って諦めておくれ」

我が子に語る母親のような口調で告げて、少年を下ろす。
優しさを漂わせる言葉とは対照的に、
スタンドの片手には『特殊警棒』が握られていた。
その表面は、鋼鉄を思わせる鈍色の光沢を放っている。

「アンタを見てると、どうも危なっかしくてねえ」

発した言葉には、複数の意味があった。
少年の雰囲気から、どこか『危うい雰囲気』を嗅ぎ取ったのだ。
それは、単にティーンエイジャー特有の不安定さとは、
性質の違うものであると直感した。

664斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/24(金) 16:47:53
>>663

空が遠くなったり近くなったりするのをぼうっと見ていた、正確には見ているしかなかった
流石に自分のスタンドがあっても、他人にバランスを無理やり崩された場合、下手に動くと受け身すら取れないからだ
そしてまた息苦しさが戻ってくる、また窒息しそうになる……

 (そんなに僕を殺したくっても、ほっとけば死ぬのになあ)

同時に、他人の『スタンド』相手にここまで体を預けた事も無いので、内心おっかないと思っていた
花の紋章を持った人型のビジョン、近距離パワー型、花言葉は、純潔、尊厳、ピュア……

 (……まあ精神力っていうのはピュアなパワーかな、根っこの人間は兎も角)

 「――……あーあ ラジオの歌詞を聞き間違えたなあ」

 「ボールのように丸くなって死ぬのは『7月』だった。」

ニコニコと笑いながらズボンをはたく、降ろされるというのは踊るタイミングを逃す事だ
自分にも恥という感情が有るので、また逆戻りしてしまった。

 「まあ、貴女が今ので少なくとも……『良い人』だっていうのは充分解りましたよ」

 「自殺しにいく人に、大概の人は『無関心』なのだから、貴女は相応に、自覚しているようですけど。」

つまり目の前の女性は、僕をまだまだ苦しめたいらしい 両手をあげて降参する
母親相手は僕のタブーのような物だ、少なくとも手を出す気にもならない
まあ代わりにはならないが、偽物が本物を追い越す事はあっても、偽物が本物にはならないように。

 「でも、業務用冷蔵庫とその取り巻きみたいに『ハッパ』だとか『塗料』なんかやってませんよ?」

 「僕のポケットにはそれより先に『ジェイソン・ケイ』と『フランク・シナトラ』が居ますからね。」

665百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/24(金) 20:51:35
>>664

    ズイッ

女の体が近付いてくる。
お互いに触れる寸前の距離だ。
女が少年を見下ろした。
その目を見る。
目の奥にあるものを見ている。

「さっきの言葉、覚えてるかい?
 『どこかでアンタを見たような気がする』って話さ」

「アタシは、『アンタみたいな危うい人間』を見た覚えがあるんだ」
 
「何もかも自分の力で出来ると思ってる。
 全て自分の力で成し遂げなきゃいけないと考えてる。
 他人の助けなんて要らないし、助けなんか借りても仕方が無い」

「ソイツは、そう思ってた。
 『慢心』・『驕り』・『過信』――呼び方は何でも良い」

「ある日、ソイツは『しくじった』。
 取り返しのつかないミスを犯しちまった。
 周りの人間を傷付け、自分自身の人生を台無しにしたのさ」

            スイッ

女が少年から離れた。
おもむろに煙草を咥え直す。
そして、ポケットから年季の入ったオイルライターを取り出した。

       カキンッ
            ――――シボッ

慣れた手つきで指を滑らせると、弾かれたように蓋が持ち上がる。
手の中で灯った炎が、風を受けて揺れる。
その炎を見つめながら、ゆっくりと煙草の先を近付けていく。

666斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/25(土) 00:31:06
>>665

瞳の奥は氷のように透き通り
ニコニコとした表情とは裏腹に酷く冷たく、笑わず、『何も無い』。

 「『失敗』の基準によりますね。」

 「でも、貴女のそれが実感を伴った忠告で、そして……それが『基準』だというなら、そこから推測して…」

 「僕は一度も失敗した事は無く、5年前からずっと挑戦しては、失敗し続けています。」

ニコニコと笑みを張り付けながら、煙草の煙を払っておく

副流煙って怖いよな、ガンだぜガン
『俺』は自分の行動で死ぬなら兎も角、他人に殺されるのは御免だ。

 「ところで、宇宙人の基準と僕達の基準って、同じなんでしょうか?」
 「すぐ隣の国でさえ言語が違うのに。」

同情と共感というのは優秀な道具だ
ただし万人に通じる道具では無いし、ましてや宇宙人…もとい
それほど隔絶した人間には、例えが通じる物なんだろうか?

 「――僕の瞳には、貴女の顔が見えましたか?」

一度も失敗しなかった人間と、一度でも挫折を味わった人間の
『簡単さ』は意味合いが随分違って聞こえるだろう。

――悲しい事に。

667百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/25(土) 01:40:08
>>666

「――――『限界』だ」

     パチンッ

唐突にライターの蓋が閉じられた。
明々と燃えていた炎が消える。
スタンドを解除した女は、しきりに片手でライターを弄る。

「実を言うとねえ、さっきからずっと『我慢』してたのさ。
 でも、そろそろ無理そうだ」

「一瞬でも気付くのが遅かったら、無意識に火を付ける所だったよ。
 あと一分でもここにいると、
 アタシは絶対に『コイツ』を吹かしちまうね」

「アタシは喫煙所に行くよ。
 『クスリ』に染まってない健康な若者の肺を、
 『タールピット』よりもドス黒いアタシの肺みたいにさせちゃあ気の毒だ」

            ザッ

軽く笑って見せてから、女は身を翻した。
ごく自然な何気ない動作。
だが、どこか訓練されたような雰囲気があった。

「ああ、そうだ。一つだけ聞きたい事があるんだけどねえ」

「最近、ちょっと気になるヤツがいてねえ。
 『目立つ』から、すぐ分かると思うんだよ。
 左目に『眼帯』を付けていて、やたらと声のデカい大男さ」

「もし見かけたら――――」

        サラサラサラサラ

「――――『ココ』に教えてくれると助かるねえ」

電話番号を書き付けた紙片を、ラジオの横に置いた。
『ツネハラヤマト』――あの男も『危うい匂い』のする人間だった。
この少年同様に、注意を向けておくべき対象だ。
それを済ませると、女は足早に立ち去ろうとする。
自身の言葉通り、『禁断症状』の兆候が現れ始めているようだ。

668斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/25(土) 04:28:49
>>667

女が去った後に一人空を見上げる
名前を聞かなかったが、別にそれでいいのだ
興味が無いし、そうあるべきだろう 誰も巻き込みたくは無いんだ

でも彼女はスタンド使いで…だから、手遅れなのかも

 「――なあ、『スリーピング』」

ラジオの傍に座り込むと、そう名付けた猫に語り掛けた
彼女は別に理解していないだろう、その必要もない
理解してくれないから、安心して話せるのだから。

 「君は、自分の複雑な…」
 「残酷で、無残で、救いが無くて」
 「犯人が120人もいて、誰も捕まらず、罪も償っていない」
 「警察も捕まえてないし、今も何処かで人並の生活をしている」
 「例え、時を巻き戻しても、救えないし変わらない、まるでマンガみたいな」

 「『家庭の環境』を…話したいと思うかい?」

ホントに漫画みたいで、出来の悪いジョークだ

 「それも、見ず知らずの相手を……救うような『正しい良い人』に。」

乾いた笑い声が歯の隙間から漏れて、冬の風がそれを持っていく
吐息が白み、そして流れる

 「『僕』は他人の事を傷つけたくなんかないさ」

 「でもね、スリーピング ……『間違った人間』は」
 「優しさで救えないし、親切は傷つけるし、正しさは正しさ故に加減が効かない物さ」
 「『正しい道』が舗装した下で、間違った人が生き埋めになっていても、誰も気にしないよ……『正しい』から」

きっと誰もがあの女性を称賛するのだろう
きっと……たとえ間違っても、それを正して、前に進める強さが有るのだから。

 「過去に引きずられて生きるなんてばかばかしいじゃないか」
 「今すぐ全部を諦めて、楽しい事だけ考えて生きていたいんだ」
 「ダンスしたり、楽器を演奏したり、女の子を誘ってデートしてみたり……」

 「でもそれを…他人に、それも 優しい人に言えるわけないんだよ」

 「『僕の両親はずっとねたきりで、もう声だって思い出せない、今じゃ下手糞なダイバーのシュノーケルから漏れ出るような音が、僕の愛する両親の声です』」
 「『カーテンの前で名前を呼んでも、振り向きもしないし、頭を撫でてもくれない、ずっと僕じゃないし、窓でも天井でもない何処かを見ています。』」

 「……だ、なんて。」

誰がそんな事実を信じて共感するだろう?
事実は小説よりなどと、誰が言ったんだろうか

 「起き上がったところで、もう『5年』たってるんだ、社会の居場所は?就職先は?入院にだってお金がかかる」

 「――それでも自分の為に元に戻したいんだ、でも、もう元には戻らないんだ」
 「誰かが殺してくれれば……言い訳もたつし、諦められるのにね。」

自分の全身に巻き付いた『鎖』をみる
前と変わらずにそれはそこにある、何時でも僕の全身を絡めとる様に巻き付けられて
……それは枷だと人は言った。

 「……『枷』か」
 「なあ、あの人は見抜いていたと思うかい? 音を聞いて……『僕達』は自分の事しか考えていないんだって。」



 「心は諦めてくれない」



 「『限界だ』――死にたいよ。」

笑い声をあげてみる。
ここはショーシャンクの空じゃない、冬の空の下で1人、座り込んだ子供を迎えに来る人はいない
その事に誰も同情も共感もしない、『理解できない』からだ、今日も世界は『正しく』回った。

669今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/06(金) 14:22:46

『学生寮』に引っ越す手続きはもう、済んだんだ。
お部屋も確保できたし、あとは書類とかそういうの待ち。

「……」

だから今日は自分で使うコップとか、そういうのを買いに来たんだ。
一つも持ってなかったわけじゃないけど。

「……」

フツーはどういうのを使うんだろう。
洗うのが簡単なのがいいのかな。
見た目がかわいいと思うやつがいいのかな。

そう思ってたら。

                   ドンッ

    「わっ」


走ってた子供にぶつかられて、コップが手から床に落ちていく。
子供はそのまま走って行っちゃうみたい。こら!って言うべきなんだろうけど。

とにかく、私は床に真っすぐ落ちていくコップに、色々追い付いていないんだ。

670十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/06(金) 22:23:37
>>669

ヤバイな――――と思って、手が出た。

多分、咄嗟だったのが良かったんだと思う。
咄嗟だったから考える暇も無かったし、反射的に体が動いた。

けどまぁやっぱり、『全盛期』ほどじゃないって言うか。
別に『全盛期』の俺だったとして、間に合うかどうかはまた別なんだけどさ。
間に合わないって、長年培ったキャッチャー経験が叫んでた。
でも間に合わせないと、落ちちゃうだろ。コップ。

だから本当に『反射的』に――――『ジャンクション001』の手が伸びて、落ちるコップをキャッチした。

「っと」

遅れて、俺自身の手がコップを掴む。
……誤魔化せたかな。
多分、そこまで不自然なラグじゃなかったと思うんだけど。
咄嗟だったからさ。咄嗟だったから。

「アー……」
「……落としたよ、これ」

頼むから違和感を覚えないでいてくれよと祈りつつ、俺はコップを女の子に差し出した。

671今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/07(土) 00:25:56
>>670

落ちる、と思って声を出した。

┌─────────────────────────┐
│          十字路には『それ』が見えた。             │
│   長いツインテールを揺らすその少女に重なる影。     │
│   『それ』は、彼女とは全く異なるシルエットを持つ。     │
│   そして彼女自身が『それ』を意識したようにも見えない。  │
└─────────────────────────┘

「あっ」

そしたら『手』が、掴んでくれてたんだ。
『人間の手』じゃ、なかったような気がしたんだ。
『先生』の手でもないんだよね。

「あ〜! ごめんなさいっ、落としちゃいました!」

          ┌───────────────────┐
          │ 十字路が『掴んだ』その時には消えていた。 │
          └───────────────────┘

でも、今見えてるのは間違いなく、人間が差し出すコップ。
もし『スタンド使い』だとしても、それは変わりはないわけで。

「これ、欲しかったけど」「ちょっと高くて、買えそうにないなって」

私は顔を上げて、コップを受け取る。
そして、笑った。

「だからもし落として弁償とかになってたら、フツーに払えなかったので」
「あは……ほんと〜に助かりました」「ありがとうございますっ」

ほんとは割れても、先生が直してくれるかもしれないんだけど。
先生、さっき出ようとしてた気がするしね。でもよかったって思うのがフツーなんだ。

672十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/07(土) 12:43:08
>>671

「アー……」

……なんか。
チラッと『見えた』気もするんだけど。
見間違い?それとも『俺と同じ』?
女の子の方は、特に何かを気にした風でもなく。
俺と同じく、なんでもない風に誤魔化してるのかな?
それともこういうのは触れないのがマナーなんだろうか?
単純にマジで俺の見間違いってこともあるよな?
もしかすると、この子とは無関係な存在ってこともあるのか?

……わ、わかんねぇ。
わかんねぇけど、とりあえず。

「……どういたしまして、かな?」
「まぁ、なんもなくてよかったよ」
「お金もそうだけど、破片とか危ないし。コップ含めて、怪我無くてよかった」

万事無事だったのは確かなわけで、ホッと胸を撫でおろした。

「……結構、こういうコップって」
「値段高いのもあるけど、気後れするよね」
「それこそ、割れちゃったらどうしよう……とか」
「色々考えちゃって、安くて無難な奴買いがちだな。……俺は、だけど」

673今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/08(日) 02:57:28
>>672

「あ、そうですねっ」「危ないですよね、破片!」
「子供とかが踏んじゃったり、するかもしれませんし」

「それも含めて、助かりましたっ」

そうだ。フツーそうだ。
『先生』がいるからかな、忘れてたよね。
今のはフツーじゃなかった。良くないことだ。

「気後れ」「……あはは、そうかもしれませんねっ」
「私も普段は、フツーの、透明のプラスチックのやつ使ってますし!」
「買っても勿体なくって、棚に飾ったままにしちゃうかも」

実際、使うあてがあるってわけじゃないんだよね。
見た目はかわいいけど、取り扱いが難しそうだし。
ほんとに置き物にしちゃう気がするんだ。

「きっと置き物にしてもかわいいですよね、これっ」
「けど置き物じゃなくて、使う物を買いに来たので〜」


        コト…

「今日のところは、これはやめておきます」

とりあえず、受け取ったコップを置いてた場所に戻す。
また落としちゃったりしたら大変だから、そっと戻す。

「やっぱりプラスチックが使いやすいですよねっ」
「軽いですし〜、割れないですし」
「フツーに買えるお値段ですし」

             キョロキョロ

「あとはお湯も入ったりすると、便利かなあ」

そういうのって、どこに置いてあるんだろう。

このあたりはガラスコップばっかり、並んでるみたいなんだよね。
別の通路にあったりするのかな。まだここしか見てなかったから。

「……あのー、すみませんっ」
「そういうコップ、どこかで見かけたりとかしませんでした?」

そういえば、この人はどんなコップを探してるのかな。
ここってフツーに雑貨屋さんだから、別にコップとは限らないけど。

674十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/08(日) 03:18:05
>>673

「実際、インテリアで集めてるって人もいるらしいけど」

まぁ、そういうのは『趣味人』のやることだ。
俺はそうじゃないし、この子もそうじゃないっぽい。

「学生は学生相応の、ってとこかな……あ、学生だよね?」

その想定で話していたが、そういえばもしかすると違うかもしれない。
中卒とか、逆に見た目が幼いだけで成人してるとか、可能性としては十分あるし。
もし間違えてたら悪いことしたな、と思いつつ。

「fmmm……他のコップはこの裏のとこだけど」
「お湯入れるなら、『マグ』っぽい奴の方がいいかな」
「それならさらにもう一個隣の通路だよ」

上の案内掲示板を指で指し示す。
……と言っても『食器』ってざっくり書いてあるだけだから、まったくアテにならないんだけどさ。

「……俺もそっちで探すかな」
「使うにしてはやっぱり、気後れしそうだ」
「部屋の片付けしてたらコップ落として割っちゃってね……代わりを探しに来たんだけど」
「……ハハ、『コップ落としたら危ないよ』ってのは実体験に基づくワケだ。俺も怪我しちゃいないけどさ」

これがなかなかどうして、決められずに困っているのだった。
あれでもないこれでもないと探して、もう何分ぐらい経つのかな。30分ぐらい経ってるかも。

675今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/08(日) 05:02:26
>>674

「コレクターってやつですよね〜」
「私も、マスキングテープとか集めてますけど」
「コップはフツーにかさばって、保管に困っちゃいそうですし」

「はいっ、『清月』の一年です」「あ、高等部の」

この人もフツーに学生ってことかな。
私とそんなに年は変わらなさそうだし。
見た目の雰囲気的には、多分先輩だと思うんだよね。
少なくとも同学年では見たことないし。

「あー、あっちですか! ありがとうございますっ」

指差してもらった先を見る。
食器。ざっくりしすぎだ。

「マグ……そうですね、マグカップの方が良いのかも」
「ココアとか紅茶とか、そういうの飲みたいかなって」
「白くて小さいのがいいな」「それに、安くて丈夫で」

透明か、白がいいんだよね。
そういう色が好きだと思うから。

「そうですねえ。『気後れ』しなくて使いやすそうな〜」
「って」「実体験!」「あはは、そうだったんですねっ」

「それなら、次は割れないコップが良いですねえ」
「あっちで一緒に探しましょう! 良いのあるといいな」

そういうわけで、マグカップ売り場に移動するんだ。
その通路に入ると、さっきと同じ『コップ売場』でも雰囲気が違う。
値段も。色も。親しみやすいって感じ、なのかな。多分気後れしないって事。

676十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/08(日) 12:35:12
>>675

「よかった」
「俺は二年。ジュージミチコーヤ。よろしく」

名乗りながら、マグカップ売り場へと移動する。
年上じゃなかったのも一安心。
高校生レベルだと童顔な先輩ぐらい普通にいるしな……

「ガラスだと、レンジにかけられないしね」
「耐熱マグならかけられるのも多いし……」

ざっと商品を眺める。
そりゃあまぁ立派で高い奴だってあるが、たいていは手頃な奴だ。
機能だのデザインだのに拘れば拘るほど高くなるし、その逆もしかり。
……なんて、さっきも見たからわかってるんだけどさ。

「fmmm……」
「……『気遅れ』はしないけど、ちょっと迷うな」

嘘。ほんとはちょっとどころじゃなくて迷ってる。

「どうするかな……キミは、どういうデザインの奴が欲しいんだい?」

677今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/08(日) 23:14:17
>>676

    イマイズミ ミライ
「私は『今泉 未来』っていいます」
「よろしくお願いしますっ、ジュージミチ先輩」

        ペコ

一つ年上だった。
後輩だったら、変な感じになりそうだったよね。

「レンジにかけられるコップ、いいですね〜」
「私、今まで持ってなかったから」「そういうのが良いかな」

           ス

手を伸ばした先にあるのは、白いマグだ。
何の絵も描かれてない。フツーの白いプラスチック。

「色々ありすぎて決めにくいですよねえ」
「私はとりあえず、色は『白』が良いです!」

でも、持ち手が『持ちやすい形』なんだって。
研究とかして分かった、そういう形らしい。

「あとは、そうですね」
「持ちやすい大きさだといいですねっ」
「使う物だし」「それ以外だと……うーん、柄は無い方が好きかなあ」

「先輩はどういうのが良いんです? やっぱり、頑丈なのですかっ?」

678十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/08(日) 23:32:45
>>677

ああ、結構迷いなく手に取ったなぁ、とか。
内心でこっそりと感心したというか、尊敬した。
俺には中々できないことだ。それを買うと決まったわけではないにせよ。

「……俺かぁ……」
「fmmm……確かに頑丈に越したことはないんだけど」
「『白』は汚れが目立つのが気になるし……」
「いやでも洗う時のこと考えると目立った方がいいんだよな……」
「『黒』だとどこが汚れてるのかわかりにくいし……」
「大きさも結構……大きすぎると逆に困ることもあるし……」
「用途ごとに分けるのが一番なんだろうけど流石にそんなにたくさん買う余裕はないし……」

ああ、恨めしきは我が優柔不断のラビリンス。
一度こうなるとなにが最善最適の選択肢なのかわからなくなってしまい、どうにも決められないのだ。

「…………実はさっきからずっとこんな調子」
「『優柔不断』というか、こういうの迷うタイプでさ……」

「…………あ、そうだ」
「今泉ちゃん。もしよかったら、俺のも選んでみてくれないかな……?」
「人が選んでくれた奴なら、だいたい納得できる気がするんだ」

679今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/09(月) 00:16:36
>>678

「な」「なるほど〜〜〜」

優柔不断。
それは『こころ』が豊かって事なんだと思う。

「先輩は色々考えてるんですねえ」
「わかりました。なら、私が選んでみますっ!」

とりあえず、今持ってるコップは置く。
探すのに邪魔ってほどじゃないけど。

「あ……でも、えーと」「もし私が選んだのが」
「……フツーじゃなかったら、教えて下さいねっ」

       ニコ

笑った。
それから、先輩の言ったことを復唱してみる。

「うーん」

「白でも黒でもなく」「大きすぎず小さすぎず〜」

そんなコップがあればいいんだけど。
そんな決め方で、いいのかな。フツーだし、良いよね?

「そうですねえ〜っ」
「ジュージミチ先輩、ベージュ色とか好きですか?」
「汚れは目立ちにくいけど、見えないほどではないし」

「例えばこれとかっ! かわいくないですか?」

手にとったのは、まさにそのベージュ色のマグカップだ。
グレーとかもあるけど、暖色って、落ち着くらしいし。

丸い形で、絵柄とかは無いけど、こういうのはフツーに良いんだと思うんだ。

680十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/09(月) 00:33:42
>>679

「フツーじゃない……ああ、ダメだったらってことね」

口癖なのかな、それ。
なんかさっきからちょくちょく聞いてる気がする。
まぁ、任せたって言ってもよっぽど変な奴だったらNOを突き付ける権利はある。
任せてる手前、ちょっと気になるところは呑み込むつもりだけど……
……というか、そうしないと任せた意味ないし。

「なんか、悪いね……俺がぶつぶつ言ってたこと忘れてくれてへーきだから……」

本当に、しゅっと選んでくれてもいいのだ。
自分にできないことを人に押し付けてるのも少しは気が引けるけどもさ。
そこはほら、さっきコップ拾った分ってことでひとつ。

「……『ベージュ』かぁ……」

しげしげと、今泉ちゃんが手に取ったマグカップを眺める。
無地の、シンプルなタイプ。
淡い色合いで、汚れは目立つだろうけど目立ちすぎるということもなさそうで。
なにより、中途半端な俺が使う分には、すごく丁度いい気がして。

「…………うん、いいんじゃないかな、これ」
「うん、うん、いいよこれ。これにしよう」
「ありがとう、助かったよ!」
「今泉ちゃん、結構こういうの選ぶセンスがあるんじゃない?」

681今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/09(月) 23:35:58
>>680

「あ」「はいっ、そうですね」
「『よくなかったら』また選び直すので〜」

「……」

渡したベージュのカップを見る。
フツーに良いはずなんだ。
私が知ってる『良いもの』に、近いと思う。

「……あはっ! ほんとですか!」
「気に入ってもらえたならよかったですっ!」
「先輩の雰囲気にも合うかな〜、って」

雰囲気しか知らない、からね。この人の事。
でも、派手な色とか、そういうのじゃないと思ったんだ。

       ニコ

「センス、ありますかねえ〜? あはは」
「あんまり自信とか、無いんですけど」

「そう言ってもらえるのは嬉しいですっ」
「他にも選ぶものがあったら、私のセンスに任せてくれていいですよ!」「……なんて!」

なんて、ね。
それから、さっき置いたコップをもう一度手に取った。

「やっぱりこれに決めちゃおうかな」「センスで選びましたし!」

682十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/10(火) 00:20:38
>>681

雰囲気かぁ。
どっちつかず……ってのは穿って見過ぎだよね。
穏やかな人柄っぽい、ぐらいに考えておくべきだろう。

「はは……生憎、今日の所は他の買い物の予定は無いけど」
「でも、うん。センスあるって思ったのはほんとさ」
「ケッコー気に入ったよ、これ」
「こいつとは長い付き合いになるだろうし、キミには感謝しないとね」

と言ってもまぁ、具体的に何かできるってわけでもない。
……甲斐性のある人間なら今泉ちゃんの分のマグも買ってあげるのかもしれないが。
生憎と言うか、経済的な余裕がある方でもないのだ。

「そうやって即断即決できるの、尊敬するなぁ……」
「いやでもほんと、ありがとね。助かったよ」
「もしまたどこかで会ったら……俺で力になれることがあるなら、お礼に何かするから」

683今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/03/10(火) 01:02:08
>>682

「あは……」

私はそんなに迷うほうじゃないんだ。
引っ越すのだって、すぐ決めたねって皆に言われた。
みんなそれを誉め言葉として言ってくれてるんだ。
でも、迷うっていうのはきっと。

「長持ちすると良いですねえ」
「そしたら私としても鼻が高くなりますし」
「私が作ったものじゃないけど」

私は笑う。

「私はもうちょっと、買い物つづけますので〜」
「そろそろバイバイですかねっ?」

      コロン

「また学校とかで……え? 力に、ですか?」

そして買い物かごに、コップを入れた。

「ええ、そうですね〜〜〜」
「掃除とかしてたら手伝ってくれたり」
「分からない宿題があったら教えてくれたり」
「そーいうの、期待してます」

「そーいうわけで」「尊敬する後輩を、よろしくお願いしますねっ」

そういうわけで、コップ以外にも色々、見ようと思うんだ。

684十字路荒野『ジャンクション001』:2020/03/10(火) 22:25:08
>>683

「すぐに壊しちゃったらキミに悪いしな……」
「せっかく選んでもらったんだから、大事に使わないと」

自分で選んだんなら、諦めもつきやすいんだろうけど。
人に選んでもらったんだから、大事に使わないとバチが当たるってなもんだ。
……いや、自分で買ったものでも大事に使うべきなんだけどさ。

「はは、勉強は中の下ってとこだけどね……」
「掃除とか力仕事ならそこそこ自信あるから、できればそっちで」

カラカラと笑いながら、マグをレジまで持っていこう。

「それじゃ、うん。バイバイだ」
「俺はもう帰るから、気を付けてね」
「またコップとか落とさないように……なんてのは、ちょっとイジワルかな!」



手を振って別れて――――ふと、帰り道。

「(……そういえばあの、最初に見えた『輪郭』……あれは結局なんだったんだろう)」
「(その後俺の『ジャンクション001』を気にしたそぶりもなかったし……)」

『スタンド』。
まだ、わからないことだらけだけど……うーん。

「(………………気のせいだったのか、な?)」

685斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/28(土) 22:43:07
――唐突だが、斑鳩 翔という高校生は宝くじが嫌いである。

 「『Aの123456』……『Aの123456』……。」

別に親の仇とかそういうわけではないし、宝くじにまつわる嫌な思い出があるというわけでもない

 『宝くじィ〜?ハッ!そんな物は一等に当選するよりも、自分が交通事故にあって死ぬ確率のほうが高い事を知らない奴が買う物さ!バーカバーカ!』

だが聞こえてくる話と言えば醜く不穏な物ばかり
当たった話が何処からか洩れ、名前も知らない親戚が大挙して押し寄せただの、豪遊から身を滅ぼして家族すら無くしただの……
無駄な努力は嫌いだが、過程を無視して単なる幸運で結果を得るのは尚の事嫌いだった。

 「……『A』の、『123456』。」

春の訪れを如実に感じる近頃、どうにも斑鳩は夢見が良くなかった
悪夢のような、さりとてとてもいい夢だったような、しかし起きて思い出そうとすると、全ての夢が得てしてそうであるが如く
雪が解けるように消え失せて思い出せない、しかしこうなると寝るのが億劫で、ついついスマホ片手に夜更かししては教室で欠伸をしていた。

今朝も体が妙にだるいのを理由に、桜が満開になっている休日、人ごみから離れたベンチに寝転びながら雑誌を広げ……
目を雨の日のワイパーの如く動かして確認する、何度見た所でそこに書いてある数字が変わるわけでもないのだが。

     ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
      ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ      ピッ

手にした雑誌の1頁からずらした指先の後ろには、何度も確認したナンバー、手に持ってるしわくちゃの『宝くじ』は、クラスメイトに記念とかいうよく解らない理由で
『まあ、一枚くらいなら機嫌を損ねるよりはいいか』等という軽い気持ちで購入し、ポケットに突っ込んで忘れた物。

 (A組123456 三等……100万円)

何度見ても『当たっている』、覆せない事実であるし今から持っていけば銀行員が営業スマイルを顔に張り付けながら用意してくれるであろう場面が眼に浮かぶ
その後の営業トークまで考えた所で我に返り、宝くじを胸ポケットに突っ込んで、落ち着くために深呼吸。

 (嘘だろォ〜〜〜ッ 何で『僕』の宝くじがあたってんだァ〜〜〜!? しかも100万円・・・!つまり、千円札が10枚で1万なんだから……1000枚?)

どう考えても高校生には手に余る金額だ、…………どうしよう、かつての発言がブーメランの如く後頭部に突き刺さる
そんな斑鳩の混乱と事情等どこ吹く風と言わんばかりに春一番が桜の花びらを攫い、ベンチの近くで桜色の小さな渦を巻いていた。

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<削除>

687斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/31(火) 19:32:43
>>685

桜並木の下で斑鳩 翔は考える

100万円の使い道といっても色々とあるが、真っ先に思いついたのはスニーカーだった、自分の靴はもう汚くてボロボロだ
ナ〇キの最新モデルが確か5万円くらいだった筈だ、5000円払えば1足揃う物に5万円など馬鹿らしいとも思えるが
ピカピカのスニーカーを履く事を考えるとこれがどうして胸が躍った

祖父母を誘って豪華な食事もいいだろう、自分を引き取ってくれた二人だ
あの2人に恥じない人間ではありたいと思うし、日ごろの感謝をあぶく銭ですると言う事に
少し眉をひそめたが…金は金だ、感謝には違いないのだし、100万も有ればかなりいい所に行けるだろう。

桜の散る様を眺めながらうんうんと唸り、色々なアイデアが頭をよぎっていく……

……最後に思いついたのは『入院代』の事だった。

(大人一人で一ヵ月に約『30万』、2人なら『60万』)
(……1年分なら?『720万円』)

学生が捻出できる額では到底あり得ない
だがここに全部とはいかないまでも、1ヶ月分なら充分に足りる金額が有る。

(祖父母はなんというだろうか……あの時と同じ様に、自分の為に使えというのだろうか。)
(こういう幸運は、あの人たちのような善良な人達に与えられるべきであって、何故今僕の手に有るのだろう?)

ポケットをまさぐると、確かにそこに宝くじが1枚入っている
それがこの世の不公平さを如実に表しているようで、なんだか気持ちが悪かった

起き上がって宝くじの真ん中を摘まむ
こんなものビリビリに破いてしまえばいい、少なくともそれだけ公平にはなる……

だが指に力が入らなかった、先程自分が考えた通り『金は金』なのだ
そこに付随価値を見出したり、何か特別な物を感じ出すのは人間だけだ。
公平になる、等というのも単に自分の『そうなればいい』という願望に過ぎない。

(――最低だ。)

くしゃくしゃになった宝くじを懐に仕舞い、再びベンチに寝転ぶ
紙切れ1枚の為に人が死ぬことも有り得るのだから、今使わない事だって十分選択肢だ
自分の情けなさにそう言い訳しながら、眼を閉じる。

持って生まれた力を使わずにいる者は、ただの卑怯者だ
そうでない筈なのに、その考えが頭を離れなかった。

688三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/04/18(土) 21:28:07

千草です。
『春眠暁を覚えず』という言葉があります。
春の夜は寝心地がいいという意味だそうです。
今は昼間なのですが、さっきから目蓋が重く感じています。
昨日の夜、遅くまで勉強していたせいでしょうか。
それとも、この喫茶店で飲んだ紅茶のせいかもしれません。
ともかく、何だか無性に眠く――――。

     スゥ……

いつの間にか、テーブルに突っ伏していました。
腕を枕にして、静かに寝息を立てています。
もちろん、千草自身は知る由もないことなのですが。

689???:2020/04/19(日) 20:33:10
>>688(目覚めるのもよし、眠り込むのも一興)

〜〜♪

一人の人物が喫茶店の戸を開いた。特有の開閉の鈴の音が
静かな室内に僅かながらの振動を満たす。

 ――コツコツ

「……、  ……」


    ――ファサ

 
三枝千草に気づくと、眠り込む千草に対して其の人物は
マスターに毛布を借り受けとると、その背中に極力柔らかにソレを掛けた。

「……」    

  ――コツコツ       スタッ……


数秒、その眠り込む姿を眺めるように見下ろすと。
満足したように、その人物は踝を返して少々離れた席に腰を下ろし
自らの作業に没頭し始める。

690三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/04/19(日) 22:26:06
>>689

  …………ザッ

――――――『森』の中を歩いていました。
木が多いせいでしょうか。
昼間だというのに周りは薄暗いです。

             ザッ

しばらく歩いていると、一際大きな木が見えてきました。
その根元に背中を預けるようにして、
知らない誰かが座り込んでいます。
最初は眠っているように思えました。

                     ザッ

でも――――実際は違いました。
手足は捻じ曲がっていて、表情は酷く歪んでいたからです。
その人に『息がない』のは、遠目からでも分かりました。

「ッ………………!!」

咄嗟に逃げ出そうとしましたが、出来ませんでした。
濁ったガラス球のような両目に見つめられて、
そこから動くことが出来ませんでした。
そのまま意識が遠のいていき――――――。

             ビクンッ

まるで泥の中から起き上がるように、千草の意識は、
ゆっくりと現実の世界に戻ってきたのです。
それは『夢』でした。
だけど、『現実』です。
紛れもなく『現実に起きたこと』です。
何年か前、千草は『それ』を見たことがあります。

「ふぁ…………」

目を擦りながら、頭を上げました。
てっきり『寮』だと思ったのですが、違うようです。
まだ頭がぼんやりしているせいで、よく思い出せません。

「ん…………」

これは――――『毛布』でしょうか?
千草が気付かない間に何が起きたのでしょう。
何だか恥ずかしい気がして、控えめに辺りを見渡しました。

691 小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/04/19(日) 23:12:03
>>690

シャリッ シャリ キュル キャルキャルキッ キュッキッ

或る果てに、群青の帳を透かすようにして 6月22日の あの頃に
隣り合ったセピアの隣人と飲み交わしたラムネの中の硝子玉を思い起こす彼のような
あの陽射しは鎹を光の剣と見立て 眼窩底を切り裂き 深意識に一筋の頂きを……

>ふぁ…………

「……うん、あぁ おはよう御座います」 ニコッ

彼(ロダン)と謎かけをした後も、幾多の出会いを心掛け様々な場所へ
足を運んでみる事にした。
 その心掛けが実ったらしい。こうやって知り合いとも偶然に出会える。

「段々と暖かくなってきましたからね。
唯だ喜ぶ簾前 風稍暖かに と言ったところでしょうか」

「……よく眠ってたようなので、起こすのは忍びなかったんですが。
こう静かな場所ですと、私の書き物も少々微睡みを濁してしまいましたね」

覚醒した千草さんに詫びの言葉を述べる。
 なるべく静かに速筆で作品を作成していたが、それでも惰眠を打ち破る程には
大きな物音をしてしまったのだろう。

692三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/04/19(日) 23:48:36
>>691

「――――――『小林先輩』?」

そこには見知った顔がありました。
小林先輩とは、何度かお話させて頂いています。
でも、こんな風にお会いするのは初めてでした。

         キョロ キョロ

「あ…………」

「ええと…………」

「寝てしまっていたみたいですね……」

「――お恥ずかしいです」

           ペコリ

「その……こんな場所で……」

「みっともない所をお見せしてしまいました」

『顔から火が出る』とは、こういう事を言うのでしょうか。
とても良くない事をしてしまった気がして、
視線が自然と下に向きます。
口から出る言葉も、つい早口になってしまいました。
店の中で寝ていると、お店の人に迷惑が掛かります。
こんな事では、『立派な人』にはなれません。

「……あの、この毛布は先輩が?」

「あっ――――」

「そうじゃなくて…………」

焦って舌がもつれます。
うっかりして言い忘れていた事がありました。
知っている人に会ったら、
一番最初に言わなければいけない事です。

        スゥゥゥ……

「――こんにちは、小林先輩。お久しぶりです」

人に会ったら、何よりもまず『挨拶』です。
挨拶は基本です。
基本を疎かにしてはいけません。

693小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/04/20(月) 22:33:00
>>692

>みっともない所をお見せしてしまいました

(……?)

その言葉の意味を、私は推し量りかねて少しだけ思考した。

別に千草さんが微睡みを、この喫茶店で行った事で誰にしも
迷惑はかけてない。店内にも、私や千草さんを除いては少数なのだから。
 
『みっともない』とは、見苦しい・恥ずかしい・見たくもないと言う意味合いだ。

瞼を閉じ、先刻の千草さんが自身の腕枕で眠る姿と横顔を思い返してみた。

……うん、やはり文章的に異なると私は思う。

「みっともない、ですか? 
私には何時まで見ていても飽きない情景でしたが」

>お久しぶりです

「えぇ、お久しぶりです。学年も異なりますから、学園では
そうそう顔を合わす機会も少ないですし、最近は寮でも余り
会う頻度は多くなかったですものね」

 こう、穏やかに話せる日々は何よりも掛け替えなく

「親友の事は覚えていますか? つい最近も、
お前(私)はマメに見えて出不精だから、知り合いには
定期的にラインなど取り留めのない事でいいから報告してやれ
と言われてましてね。……正論ではあるとは思ってるのですよ」

 きっと、ある日ふと この時の流れる砂粒が
砂金で積り隆起した山々よりも価値あると思い返すのだろう

694三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/04/20(月) 23:12:34
>>693

  「えっ」

        「あっ」

              「は、はい…………」

小林先輩の言葉に、何となく頷いてしまいました。
先輩の迷惑になっていないのなら良かったです。
でも、今の千草は変な顔をしていないでしょうか。
おかしな後輩だと思われていないでしょうか。
それが少しだけ心配でした。

「小林先輩は、高等部の三年生でいらっしゃいますよね?
 お友達の方も……」

確か、『宮田さん』というお名前だったと思います。
前にお会いしたのも、ここスカイモールだったと思います。
『宮田さん』もお元気でしょうか?

「学年が離れていると、
 お会いする機会は少なくなってしまいますね。
 先輩方とは同じ『寮生』ですが、
 生活のリズムまで同じではありませんし……」

「そういえば、不思議と『高等部二年生』の先輩とは、
 よくお会いする気がします」

「『鉄先輩』、『日沼先輩』、『猿渡先輩』、『斑鳩先輩』……。
 小林先輩は、ご存知の方がいらっしゃいますか?」

指を折って数えてみます。
数え忘れはないでしょうか?
もし間違いがあったら失礼です。

695小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/04/20(月) 23:39:15
>>694

「えぇ、私は高校三年で間違いありません。
彼(ヤジ)も……偶に、親友は同学年の筈ですが
態度や行動が突飛なので同学と思いにくいのが正直な心情ですね」

喫煙に飲酒 星見の裏路地の界隈では不良達に親身だし
彼はスタンド関連の組織にも手広く足を運ばせている。
 実際、普通の高校生の日常生活で無いだろう。

>『鉄先輩』、『日沼先輩』、『猿渡先輩』、『斑鳩先輩』

「いえ、学園では余り接しないし話もした事の無い方達だと……。
……『斑鳩』?」

……何故だろう。少しだけ、その言葉に違和感を覚えた。
 とても、とても遠い何処かで。深いとは言わざるも
浅はかならぬ連帯の一員であったような……随分と奇妙な感情だ。

「……斑鳩、斑鳩……私の親友が何処かで話した事のある人物かな?
あぁ、すいません千草さん。多分、実際に会った事は無いと思いますよ」

「接した事のある人だと、そうですね……『志田忠志』さんと言う
大学生の方とでしたら、学園や旅館のほうで会った事があります。
 目の隈が特徴的な方でしてね、慢性的な寝不足なのか……」

「……そう言えば、先程。少々魘されていましたか……?」

作業しながらでも、周囲に目は配れる。
 千草さんが覚醒する前に、一瞬何かに衝撃受けたように肩が
跳ね上がったような気がした。

696三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/04/21(火) 00:00:28
>>695

「――――?そうなんですね」

斑鳩先輩のことは、まだよく分かりません。
でも、きっと親切な方だと思います。
この間は、『草取り』を手伝っていただいたので。

「その方は存じ上げないです。
 大学部の方とは、
 まだ一度もお会いしたことがありませんでしたので……」

大学部といえば、成人している方が大半です。
そういう方とお話が出来ると、良い刺激になるのでしょうか。
いつか、お会いしてみたいです。

「え、ええ……」

「ちょっとだけ『夢』を見ていたようなので……」

「それで、その……」

『夢の光景』が頭に浮かびました。
それが夢なら良かったのですが。
だけど――それは『夢』ではありません。
夢であって夢ではないものです。
忘れたいけど忘れられないものでした。

「――――いえ……何でもありません」

       ニコ

頭の中に纏わりつく映像を振り払うために、
出来るだけ明るい表情を作ろうとしました。
それが成功したかどうかは分かりません。
ただ、先輩に余計な心配を掛けてはいけないと、
そう思いました。

697小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/04/21(火) 22:52:40
>>696

>ちょっとだけ『夢』を見ていたようなので……

「夢、ですか」

 ――夢

その単語に、少しだけだが微かに何かが脳裏を霞む。

中世時代を描いたかのような街並み  踏みつけた氷面の如き空

 怒号 濃密な血霧 眩い光

きっと、何かしらで私が見た事のある記憶なのかも知れない。普段は
全くと言って良い程、意識の途切れは全て無しか映し出さないが。

>――――いえ……何でもありません

その『微笑』に、何処となく私は誰かに似ていると感じ得た。

誰にだろう? 

……あぁ、そうか。

「――泣いているのですか?」

その『微笑』の主は『私』だ


ずっと、随分前に 自分自身の心は欠け落ちて 
悲しいのか 楽しいのか 虚しいのか 怒りか 諦観か
 理解してるのか 目を背けているのかすら覚束なかった。

けど、今 貴方の微笑を見ていると……

「私には……千草さんが泣いているように、見えます」

手を伸ばし、その見えない涙を拭うべきなのではと思えてしまう。

698三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/04/21(火) 23:16:53
>>697

      「それ、は――――」

思わず言葉に詰まってしまいました。
先輩に気を遣わせてはいけないと、そう思ったのです。
それなのに気を遣わせてしまいました。
良くありません。
これでは『目標』に辿り着けません。

      「そんな、事は――――」

『そんな事はありません』――そう言おうとしました。
ですが、言えませんでした。
その言葉が『嘘』になってしまう気がしたからです。
嘘をつくのは悪い事です。
悪い人は『立派な人』ではありません。

        「っ――――――」

言葉が出てきません。
何を言えばいいのか分かりません。
『何かを言うべきなのかどうか』も分かりません。
今、どんな顔をしているのでしょうか。
もしかすると――
『今にも泣き出しそうな表情』をしていたのかもしれません。

699小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/04/22(水) 00:13:08
>>698(宜しければ次で〆たいと思います)

在りし日々 憧憬の一幕 今や亡き故郷の景観

そこに私は幾つもの失ってはいけなかったであろうものを置いてきた
 いや……堕としてしまった と言う表現が似合いなのか

その中には、『心』もあったのだろう 
 埋められる事もなく 今も未だ もう陽の射さぬ場所で其の形は
元に戻る事を願い彷徨っているのかも知れない

 取り戻せぬ半ば抜け殻の木偶の坊は、こうやって無為に日々を生き
『貴方』と言う 奇しくも既視の陰りを見咎めて……

「――いいんです」

 だから 私は『指を絡める』 あの時の謎掛けの時のように

その時は勇気を授かりたく だが、今は毛布を掛けた時のように
ただ ただ見えぬ五月雨を凌ぐ布になればと願い

「いいんですっ……」

この瞬間 『貴方』は『私』だった 
『私』もまた『貴方であった

 姿も形も性別も 進みし岐路も違えども 鏡合わせのように
その心境は、何も言わずとも理解出来るのではと
 
 既に何も居ぬ器の中で 一つ 水泡が生じる音が胸の内で高鳴っていた

700三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/04/22(水) 00:37:33
>>699

『あの時』の事を思い出していました。
以前、学校でお会いした時の事です。
小林先輩は、こう言われました。

   「私は何に見えますか?」――――と。

それは難しい質問でした。
どう答えるべきか悩みました。
そして、千草はこう答えました。

     「『人』に見えます」――――と。

千草には『人の心』は分かりません。
ただ、今は何となく、
先輩の『心』に少しだけ触れられたような気がします。
そう思うのは、勝手な思い込みかもしれませんが。

        「――――――」

      「――――――あっ……」

   「――――――ありがとう……ございます……」

     ニコ……

今、千草はそう言って頭を下げました。
先輩が掛けてくれた毛布を、
無意識の内に両手で握っていました。
きっと今の千草は、
『無理のない笑顔』でいられているんだろうと、
そう思います――――。

701比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/01(金) 20:44:33

――――展望台。
見物客達に交じって、モノトーンのストライプスーツを着た男が立っていた。
特に何をするでもなく、ただ静かに街を見下ろしている。

その数メートル後方。
ベンチの下に、何かが落ちていた。
一枚の『トランプ』――いや、『カード』だ。
四隅に『スート』が配され、中央には『道化師』の顔が描かれている。
まだ誰も、それに気付いている様子はない。

702逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/03(日) 02:41:46
>>701
躊躇なくカードを手に取り裏表を確認する。
好奇心に従って拾ったが…

「オーギュストかな? それともクラウン?」

よく病院に来てくれたピエロは明るく楽しい人だった。
カードのピエロを眺め過去を振り返る。

703比留間彦夫『オルタネイティブ4』:2020/05/03(日) 04:46:59
>>702

誰かの落し物だろうか。
逢瀬の指先が『カード』に触れる。
しかし、『拾い上げる』事は出来なかった。

       ポンッ

何故なら、『カード』が『兵士』に変わったからだ。
『黒い鎧』を身に着けた『兵士』。
逢瀬には、それが『スタンド』だと分かるだろう。

           ――――ジッ

出現した『兵士』は、逢瀬を見上げている。
様子を窺っているようだ。
それ以上、何かをしてくる気配は見られない。

704逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/03(日) 06:09:38
>>703
「これは驚いたね。私以外に『超能力』の使い手が存在するなんて」

「こんにちは。君のお名前は?」

そうじゃないかな、って感じの白町さんを除く『超能力者』との初遭遇だ。
『超能力』が意思の発露なら人の形を取るのにも意味があるはず。
そして、『ガンジャ・バーン』のように不思議な力を持っているのだろう。

「私の『ガンジャ・バーン』に比べて率直な形だね。可愛い。現れ方もセンスがある」

705比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/03(日) 09:37:48
>>704

『兵士』は、逢瀬を観察していた。
そして、『兵士の視界』を通して、
『比留間彦夫』は逢瀬を観察していた。
『兵士』は『実体化したスタンド』であり、
『力』を持たない一般人にも見る事が出来る。
だが、この落ち着き方は一般人のそれではない。
彼自身の言葉と考え合わせると、
この少年も『スタンド使い』と見て間違いないだろう。

《――――私の名は『オルタネイティヴ4』》

逢瀬の呼び掛けに応じて、奇妙な声が語り掛けてくる。
それは『スタンドが発する声』だ。
『黒い兵士』は、更に続ける。

《突然現れた失礼はお詫びします。
 どのような反応が返ってくるのか、
 それを確かめたかったものですから》

《恐縮ですが、不用意に『本体』を曝す事は出来ませんので、
 このような形でお話する事を御了承下さい》

『ガンジャ・バーン』がそうであるように、
スタンドとは『精神の顕現』。
『オルタネイティヴ4』も、本体の精神を象徴している。
『嘘』を糧とするのが、『オルタネイティヴ4』の本質だ。

706逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/03(日) 22:34:18
>>705
「面白かったから良いよ」

「私の名前は逢瀬泰葉。見ての通り学生だよ」

日本式に目鼻立ちが細く楚々とした中性的な青年が自己紹介をする。
顔の左半分を覆う火傷を隠そうとするが途中で諦めて困った顔を浮かべる。

「私の『ガンジャ・バーン』を警戒してるのかな? 安心して、ほぼ無害な花だから」

自分の足を軽く蹴って『ガンジャ・バーン』を発現する。
何の変哲もない花が一本だけ逢瀬の片足に生えてくる奇妙な光景が『戦士』を通して見えるだろう。

「かつて恐竜を絶滅させたという植物の学説…を模した能力。食べない限りは無害なだけ」

「それが『ガンジャ・バーン』」

風向き次第で独特な、しかし、不快ではない甘い香りが本体に届くかもしれない。

707比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/04(月) 01:06:39
>>706

甘い匂いが風に乗り、比留間の下まで届いた。
その香りに、目を細める。
大抵の場合、『良い香り』というのは、
生物を引き寄せるためのものだ。
引き寄せて何かをする。
それは『罠』を連想させた。

《ご説明に感謝します。
 ですが――『本体』は曝せません。申し訳ありませんがね》

《第一に、私は『能力の説明』を要求してはいません。
 第二に、それと引き換えに、
 『本体を教える』という約束もしていない。
 つまり、『本体を教える義務はない』という事になるのですよ》

《教えて頂いた内容は決して口外しませんので、
 その点はご安心を》

勿体ぶるような言い回しで、『兵士』は告げた。
口には出していないが、
逢瀬の言葉が真実である保障がないというのも、
簡単には本体を教えない理由の一つだ。
別に、この少年を疑っている訳ではない。
彼に限った話ではなく、口では何とでも言えるという事だ。
他ならぬ自分が、『嘘』を好んでいるように。

《ですが、何も教えないというのも『アンフェア』というもの。
 そうですね、一つ『耳寄りな情報』をお教えしましょう》

《『ラフィーノ石繭』という名前をご存知ですか?
 巷で話題の『占い師』ですよ。
 よく当たるという評判で、私も占って頂きました》

《もし機会があれば、是非とも占って貰う事を勧めますよ。
 彼女の実力は、『本物』ですから》

彼女の占いが『本物ではない』事は知っている。
それを知っていて宣伝しているのは、彼女の下へ、
一人でも多くの人間を送り込むためだ。
純粋な好意――――というと『嘘』になるが。

708逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/04(月) 02:39:59
>>707
「単なる自己紹介だから対価は要らないよ。でも、ありがとう」

「普通は『本体』とか隠すものなのかな…
 能力バトル漫画みたいで格好良い」

『ガンジャ・バーン』は『本体』を必要としないし、自分も『ガンジャ・バーン』を平気で絶滅させる。
この『オルタネイティヴ4』と『本体』の関係は私たちと異なるものなのだろうか。

「『絶滅』してなかったんだ、占い師…」

「本当に人の『運命』を見通せるなら、精神を病んでもおかしくないのに。何も知らなければ無責任な事を言えるから楽なんだろうけどなぁ」

「気になるから行ってみようかな」

面倒な客が『ラフィーノ石繭』の元に襲来する可能性が高まった瞬間であった。
撃退できるかについては彼女次第である。

「うーん、そっちだけ最初に面白いことをしてズルい気がしてきた」

「私も、君を楽しませてみたい」

唐突に不思議なことを言い出した逢瀬が靴に生えた花を引っこ抜く。
そして、躊躇なく口に放り込み食べてしまった。

「本当は『化石化』するまでを見せたかったけど…」

709比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/04(月) 10:18:03
>>708

《是非どうぞ。
 彼女の事務所は歓楽街方面にありますが、
 『出張占い』もやっているようですからね。
 運が良ければ出会えるかもしれません》

何しろ『宣伝』をしているのだから、悪い事ではないだろう。
少なくとも、『客観的』には。
そして、比留間はラフィーノを嫌ってはいない。
『趣味』と『仕事』の差こそあれど、
『同じような方向性』を持つ者として、
『親近感』を抱いていると言ってもいい。
だから、どのような手口で彼女が客を捌くか見てみたいのだ。

《『恐竜を絶滅させた植物』ですか……。
 幼い頃は、私も『恐竜』が好きでした。
 彼らから感じる独特の『力強さ』には憧れたものです》

『黒い兵士』を通して、逢瀬の奇妙な行動を見守る。
彼は、『食べなければ無害』と言っていた。
逆に言うと、『食べれば有害』と解釈できる。
この少年は、それを自ら口にした。
一体どういうつもりなのだろうか。

ちなみに、『恐竜が好きだった』というのは『嘘』だ。
自分の少年時代、両親は『英才教育』を施そうとし、
少しでも『悪影響』を及ぼすと判断されたものは、
全て遠ざけられていた。
楽しみと言えば『嘘』をつく事くらいだった。

710逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/04(月) 22:54:55
>>709
        パキッ
               メキッ

「かつてジュラ紀の生態系を支えていた植物は『奴隷』でしかなく、葉は無惨に喰い尽くされ、花粉さえ餌として奪われていた」

「一日一頭当たり600キロから1トンもの植物を食べていたとされる草食恐竜はまさに天敵」

逢瀬の皮膚が徐々に『鱗』らしき物体に覆われていく。
全体的に『爬虫類』寄りの姿となっている。

「そこで植物は花という革命を起こす。蜜を使い虫たちに花粉を付着させ、受粉してから生殖に必要な時間を僅か3分に縮め、世代交代を繰り返し勢力を広げた」

「一方で『草食恐竜』を敵と見なした花は毒性を獲得し、味覚の無かった彼らを『絶滅』に追い込んだ…」

「この学説を再現するのが『ガンジャ・バーン』。私の『精神』の象徴だよ」

『オルタネイティヴ4』の本質が本体の執着する『嘘』ならば、『ガンジャ・バーン』の本質は『破滅』。
学説通りなら花は増えていくことになる。
そして、摂食した生物は逢瀬のように『草食恐竜』と化してしまう。

「びっくりしたかな? 四本食べて『化石』になった姿も見せたかったなぁ」

「流石に『草食恐竜化』したら危ないからね。カードの時にびっくりしたお返し」

711比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/05(火) 01:00:47
>>710

《――――ははぁ、なるほど……。
 その『花』を食べると、あなたのように、
 『タイムスリップ』してしまう訳ですか……。
 『外見』だけではなさそうですね。
 いや、何とも『スケールの大きな能力』のようで》

驚いたような声色だった。
『嘘』ではない。
規模の大きさという点では『オルタネイティヴ4』を超える。

《それに比べると、私は大した事はありませんよ。
 『本体』を見せないのも、その辺りが理由とお考え下さい》

《せいぜい『人間以上に力強く』、『人間以上に素早く』、
 『人間以上に器用』で、『長い射程距離』を持ち、
 『ダメージの伝達も無い』というくらいですから》

滑らかな口調で言葉を続ける。
『事実』だ。
もっとも、全てを同時に発揮する事は不可能だが。

《フフ――――もちろん『冗談』ですよ。
 もし本当なら、『本体』を隠す意味はありませんからね。
 『驚かされたお返し』に、少し驚いて頂こうかと思いまして》

712逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/05(火) 03:08:39
>>712
「私の個人的な欲望は『醜い』ものを『破滅』させたい、または人生で最も『美しい』時に『破滅』させたい程度」

「でも、不思議と愛着のようなものがあるよ」

     ボロッ

              ボロッ

逢瀬の肉体を覆う『鱗』が剥がれ落ちて消え去っていく。
『ガンジャ・バーン』が根絶された証だ。
調子に乗って1日放置したら元果樹園を越えて近隣の住宅地に侵食した時は驚いたものだ。

「そこまで強いのに姿を見せないのは発現条件が厳しいみたいだね。『ガンジャ・バーン』のようにスロースターターなタイプ」

「と、言っても『超能力』に気づいたのが最近だから適当な推測だよ。数年ぶりに目覚めたら知らない間にね?」

逢瀬は天然物のスタンド使いだ。
本人は『スタンド』の概念すら知らない。
人為的に目覚めたわけでもないから『親』に値する者もいない。

「『冗談』が好き? 騙したりするのが発動条件っぽいね」

「こっちも仕返しさせてもらうよ。実はね、私の精神年齢は小学6年生+1年なんだ」

713比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/05(火) 03:58:11
>>712

《お蔭様で貴重なものを見せて頂きました。
 『人と恐竜の中間の状態』を目撃するというのは、
 なかなか得難い経験でしたよ》

《私の『能力』について詳しい事は、ご想像にお任せします。
 考えるのは『タダ』ですからね》

『教える気はない』事を暗に示す。
実は、『能力の一つ』は既に『発動中』だった。
『黒い兵士』の『正体』は『ジョーカー』(>>701)だ。
『ジョーカー』には、『ダメージフィードバック』が存在しない。
『カード』に触れた相手が攻撃的な人物だった時の事を考え、
用心のために『ジョーカー』を設置していたのだ。

《ただ、『冗談が好き』というのは少し違いますね。
 『ウィットが好き』と呼んで頂いた方が近いでしょうか?》

《フフ、『ヒント』はこれくらいにしておきましょう。
 あなたは鋭い方のようですからね。
 仮に分かったとしても、『内密』にお願いしますよ》

もっとも、正解かどうかは確かめようがないだろう。
見せる気はないし、当たっていたとしても否定すればいい。
例えば、今この少年と自分が戦うというような場合は別だが。

《なるほど――――不躾で失礼ですが、その『火傷』。
 大きな『事故』で長期入院されていたようで。
 お察しします》

『火事』という言葉を避けたのは、相手に配慮したからだ。
何気ない一言が、思わぬ問題となる事もある。
『司法書士』である比留間は、そういった点には慎重だ。
比留間彦夫は『嘘つき』だが、『外道』ではない。
その辺りは、両親の『英才教育』が成功したと言える。

《私の入院経験というと、
 『小学生の頃に腕を折った』時くらいですよ。
 『スキー』の最中に、うっかり転倒しましてね》

《当時、同じクラスに『好きな女の子』がいたもので。
 つい見栄を張ってしまって、身の程も弁えずに、
 『上級者コース』に行ったのが悪かったんでしょうねえ》

気遣いの言葉を掛けた直後、流暢な『嘘』の話で締めくくる。
比留間は『外道』ではない。
しかし、やはり『嘘つき』なのは変わらない。

714逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/05(火) 06:30:22
>>713
「うーん、全然分からない。こういった能力はカラクリが知られると不味いから仕方ないね」

名前的に残りの『手札』が三枚……と見せ掛けて四枚はあるかもしれない。
私が見つけたカードの絵柄は『ジョーカー』。
残りは『クラブ』『ハート』『ダイヤ』『スペード』だろう。
『本体』の性格的に残り52枚全部が『兵士』の可能性もある。

「火傷は一家心中で生き残った罰みたいなもの。死ぬべきだったのにね」

「パパは植物学者で果樹園経営からフルーツ食品業界に進出した成金。不況や不幸が続いて幅広く手を拡げてた分だけ損失も大きかったよ」

「借金は返せるだけ返したけどパパも、ママも精神的に追いつめられて一家心中。そして、私は1年前に目覚めた」

「時代に取り残された恐竜の『化石』みたいにね? ふふっ、嘘だよ…?」

精神年齢に見合わない逢瀬の言動は達観しているようにも見える。
実際は、みんなどうせ『破滅』する存在だから大差無いと思い込んでいるだけだなのだが。
揺るぎない『結果』を知ったばかりに『過程』を美醜で大雑把に処理しているのだ。

「オルタさんは大人っぽいのに子供の時はやんちゃさんだったの?」

「話し方は上品で立ち回りが堅実な性格とばかり思ってた。先生が気に入るタイプの良い子みたいな感じだ」

715比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/05(火) 10:15:27
>>714

《フフ、当てずっぽうで正解が出るほど簡単ではありませんよ。
 私が困ってしまいますからね》

『オルタネイティヴ4』の『正体』が明かされるのは、
『図柄』を言い当てられた時だけ。
逢瀬からは、その『黒い兵士』が『ジョーカー』である事実を、
窺い知る事は出来ない。
目に見えるのは、単に『黒い鎧を身に纏う兵士』というだけだ。

《…………私から言える事は、あまり無いでしょう。
 ただ、『人生の残り時間』は、私よりも貴方の方が長い》

《『長く生きればいい』というものでもありませんが、ね》

そう言って、『兵士』は肩を竦めた。
展望台には、他の人間も何人かいる。
逢瀬より年上と思われる者も少なくない。

《人間とは『一組のトランプ』のようなものです。
 『赤』があれば『黒』があり、『スート』があれば『数字』がある》

《『一枚のカード』ではなく、様々な『カードの集合体』。
 だから、一人の人間も『様々な面』を持っている》

《――――という話を前に聞いた事がありましてね。
 外国の作家だったか政治家だったか……》
 
《とにかく『誰かが言った言葉』です》

716逢瀬 泰葉『ガンジャ・バーン』:2020/05/05(火) 22:21:45
>>715
「人間が様々な絵柄の集合体であるカードだとして、その多彩な面は『美しく』もあり『醜く』もある」

「その辺はタロットカードの領分かな?」

絵柄の解釈1つで様々な一面を見せるタロットカードの起源は寓意画という説がある。
今、持っていれば話の種にもなるが持っていない。

「タロットカード占いのやり方を知ってるからやってみようかな、と思ったけど家に有るんだった」

「あまり引き止めるのも悪い気がしてきたし、ラフィーノ石繭さんの事務所でも探そうかな。長々と話しちゃってごめんね?」

「また会えた時に備えてびっくりさせるネタを探しておくから。またね」

真っ黒い『兵士』に手を振って歩き始める。
次の目標をラフィーノ石繭に定めて…

717比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/05/05(火) 22:48:14
>>716

《ええ、楽しみにしておきますよ》

《それでは、『御機嫌よう』》

       ――――シュンッ

逢瀬が立ち去るのを確認し、『黒い兵士』の姿が消えた。
手元に戻った『カード』を見下ろし、そのヴィジョンも解除する。
反応を試す『実地テスト』としては有意義だった。

「丁度『あの辺り』でしょうか?」

「――――『彼女の事務所』は」

『歓楽街』の方向を見つめ、誰に言うでもなく呟く。
あの少年が『彼女』に出会うとすれば、一悶着ありそうだ。
それを確かめられないのが残念ではあるが――――。

718斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/05/25(月) 00:32:28
ふと気が付けば5月もそろそろ終わりが近づいていた
もはや春の季節は足早に過ぎ去りつつあり、あの蒸し暑い夏に向けての最後の日々と言えない事も無い

学友たちと中身の無い話を延々としたり、新入生の歓迎会を寮で開いたり
そういった事柄も桜の花びらと供に過ぎ去っていった

 (――期末テストの用紙も一緒にふきとばないかな。)

ガッコーに隕石落ちて休みになんないかな、とも思っている
実際に落ちたら3分は顎が外れたままになりかねないが、あの時と比べればそこまで驚かないだろう。

       ―真昼の展望台にある塗装の禿げたベンチに一人寝転んで斑鳩は考える―

カーネーションの花束は病室に飾り、足音を立てぬようにその場を逃げるように去った 130万もあれば2か月は両親を入院させておける。
その為に役に立った右腕を動かすと、まるで何事も無かったかのように動いてくれる あの質量が掠ったとはいえよくも原型が残った物だとも思う。

 (そーいえばGB崩れと戦った時も右腕が折れてなかったっけ?)

我らが被害担当になりつつある右腕であった。
今はしっかりと動くのは有りがたい事だ、これが祖母にバレたら冗談を抜きに死ぬ覚悟をせねばならない処である
――しかし、遠目から見ると愚かな事でしかないが……眼を瞑ると今でもハッキリと、あの瞬間を思い出せるのだ。

        あの『皇帝』との戦いを。

しかし今はこうしてゴロゴロと腹のくちくなった猫のように寝転んでいると
なんだか悪い…否、いい夢だったのではと思えるのだ。

 (1…2…4……。)

そんな風に考えだすと、なにやら体がむずがゆく、フワフワとして落ち着かない
帰る場所の無い雲のような心持で、斑鳩は5月の空の雲を数えだした。

719一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/05/25(月) 10:20:52
>>718
1…2…3…4…視界の隅を人型スタンドが通り過ぎた。
十字架の意匠を各部に持つ、それは明らかに近距離パワー型と分かる体格だった。

「最近、心が荒れた方々が多いですね。
『インダルジェンス』で悪感情を『鎮静』して歩いたら疲れました」

スタンドの主と思わしき人物は変声期前のハスキー声で愚痴っている。
警戒心が薄いのかスタンド能力まで喋っている。
珍しいタイプの能力を持っているようだが…

720斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/05/25(月) 19:11:40
>>719

あの雲の向こうにラピュタがあるんだ!
……さすがにそんな積乱雲は何処にも存在していないが、それよりも目を引かれるものが視界の端をよぎった。

例えるなら一般女性が「あ、このバック可愛い〜!」とショーウィンドウに眼が引き寄せられるような物だ
男性視点からの例えは少しばかり品が無いのでここではスルーする物とする。

斑鳩翔の真っ黒な目玉が捉えたのは『スタンド』だった
おまけにその本体らしき男まで共に歩いているでは無いか!

 (なんだありゃ?スタンド使いがスタンド丸出しで、自分の能力の事までベラベラ喋ってるぞ?)

罠だろうか?にしては杜撰過ぎるし、見た限りでは他に人影も無い
襲われる覚えは無くはないが、だからといって流石にここまではないだろう…とは思う。

 (……なんにせよ『悪感情を鎮静』って部分は聞き逃せない部分だな、俺達の目的もある。)

効力があるかどうかは聞いてみないと解らないが
例えそれが砂漠の中の砂金粒の厳選作業だったとしても、逃す手は無い
風に揺れるスカーフを払いのけながら、僕は体を起こして彼に話しかけることにした。

 「――へいッ!そこのハスキーボイスがイカした少年!」
 「『十字架』背負ってる君だぜ君、そんなヤツ連れて何してんだ?仮装パーティーか?」

なお呼びかけるセリフはテキトーだった だって寝起きだからね。

721一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/05/25(月) 21:10:53
>>720
「少し昔のライダーみたいな人…
 あっ、えっと、これが見えてるみたいですね」

近距離パワー型スタンドの本体と思わしき玲瓏とした風貌のあどけない少年が振り返る。
女子生徒ならナンパの類いと勘違いしそうな気軽さに少しビビっている。

「仮装パーティー? 私の外見のことでしょうか…?」

透き通った肌は血管が薄く見えて、瞳には淡い青色に微かなエメラルドの反射が混じっている。
中1ぐらいだろうか。少年は明らかに怯え始めた。

722斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/05/25(月) 23:27:16
>>721

第一印象?『上手くできた蝶の標本』のようだというのが一つ ピンを胴体にすっとね
昔読んだロシア文学の一つに彼のような眼をした女が出てきた気がしなくもない。

 (……むしろガラス細工みたいだな?スタンド使い何てそんなものか。)

 対して僕と言えば一昔前のヒーローショー。
 何方がグッドかというのは実に議論の余地がある。

 まあそれはそれとして、怯えさせておくのは別に本望では無いのだが
 他人に配慮し続けるとそもそも友人とかは出来ない物だ、社会人がそれを証明している。

 「ん――君の方は別に……えー……その十字架張り付けた君の『スタンド』って言うヤツ」
 「僕が興味あるのはそっちだな、丸出しにして出歩く奴はそんなにいない。理由知ってるか?」

 今の彼みたいに怯える羽目になるから。というのが一つ
 スタンドだしっぱというのは例えるなら、抜き身のポン刀ぶらさげて商店街をあるくようなものだ
 大抵の人は芸の小道具かな?と思う、残りの少数が警察に通報する 捕まる チャンチャン。

 「何を思ってそんな事してるのか、実に聞きたい所だ、端的に言えば知的好奇心。」

ア ナ タ ノ ナ マ エ ハ ?
 「僕は斑鳩 斑鳩 翔 名乗ったぜ誰かさん。 What's your name?」

723一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/05/26(火) 00:10:16
>>722
「わ、私の名前は一抹 貞世。中学一年生です!」

「あっ、また仕舞い忘れてる…」

本人も出しっぱなしにしていたのを忘れていたらしい。
近距離パワー型なら数分で疲れてしまうはずだが少年に疲れている様子はない。

「もしや、お兄さんは正義のスタンド使い…」

「け、消さないでください! 助けて、宗像さん…小林さん…鉄先輩…アリスさん…宗像さん!!」

続々と頼りになりそうな人達の顔を思い出す。
真っ先に宗像さんを思い出し、最後も宗像さんの名前を呼ぶ。

724斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/05/26(火) 00:37:15
>>723

彼の礼儀正しい名乗りにゆっくりと拍手する パチパチパチ
ただ理由の方は眉をひそめるほど想像つかない物だった

 「よくできました――しまい忘れェ?」

そんな馬鹿な。
しかし正義のスタンド使いかと言われると何方かと言えば邪悪よりなのでスルーする事にした
集団気絶事件とかこわいねー、ぼくにはとてもできない。スタンド的にも。まるでこころあたりがない。

 「ワハハ そうとも怖いパイセンだぞー 君、結構知り合い多いな?」
 「色々知ってる名前がちらほらと……宗像?」

その名前から思い出されるのは、かの作業着の眼光だけで2.3人殺してそうな男

 「――君、彼と知り合いなのか (じゃあ強硬手段無しだな、面倒だし。)」

『皇帝』以外の近距離型に負ける気はさらさらない が、勝つのは少々面倒くさい
また右腕に犠牲になって頂くわけにもいかないのだが。親から貰った身体なのだ。

 「まあ僕が気になったのは『精神の鎮静』って君が言った所だけさ、アリーナとか興味無かろうしネ」
 「それがどの程度まで行けるか教えて頂きたいが……対価に払えるのがないんだよな、僕。」

130万がふと頭によぎったが、この年頃に与えて親に露見すると芋づる式に僕に猜疑がかかる
それだけは御免被りたい、祖父母に妙な心配をかけるのだけは御免だ。

 「あ〜〜……『なんか聞きたい事』とかある?それを僕が出来る限り教えるか……」
 「『等価交換』の対価ってそれくらいしか思いつかないな…後は見逃すとかくらいか。」

寝ぼけた頭部を気だるげに振りながらぐだぐだと舌を回す
……今自分が喋っているのはどう言う意味だったか?

725一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/05/26(火) 01:19:42
>>724
宗像さんの名前が出た途端に勢いが止まった。
おそらくは『アヴィーチー』の脅威を知っている。
それに仕掛けて来ないということは純近接パワー型のスタンド使いではない。

「あわわ、宗像さんの知り合いなんですね
 寡黙な人だけど悪い人じゃないんですよ」

「色々と凄まじいだけで…」

私自身に『インダルジェンス』の『鎮静』を使う。
即座に冷静さを取り戻す様が能力の証拠だ。

「いえ、死ぬ目に二回遭う間に色々と知ったので情報は要りません」

「例えば、町に変な組織が存在したり人々の夢の中に魂を弄る男が潜伏してるとか色々…?」

目の前の彼も色々な修羅場に身を投じたのだろう。
出来れば戦いには発展したくない。

「精神というより『悪感情』の『鎮静化』です。
 薬品と違って後遺症無し、依存性も無いようです」

「目の前に『危険』が無い限りは確実に状態を『好転』させます。
『インダルジェンス』が手を離すと解除されますけど、触れてる間に何とかすれば大丈夫です」

726斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/05/26(火) 20:20:56
>>725

 「知ってるか?『それが無ければいい人』は『それが有るから駄目な人』なんだぞ。」

少なくとも時と場合によって『再起不能』でなく『殺害』に舵を切りそうなのは、知る限りでは彼だけだ。
――なんでそんなことわかるかって?ひみつ。

 「――ああ、『喧嘩』を期待してるのか?それならNOだ」
 「僕が欲しいのは『協力』だからな」

           スタンドツカイ
 「今聞いただけで『お仲間』が3人以上はいただろう?」
 「ここでオタクに危害を加えたとしよう、そしたら残りの知り合いからは僕が危険視されるわけだ。」

 「『そんな危険なヤツ生かしちゃおけない!縄で縛って吊るさなきゃ!』ドーン!終わり。そんなの僕に何一つメリットが無い。」

 「ある意味では抑止力みたいなものだな、国家同士が『核爆弾』持ってにらみ合うみたいに――」
 「僕達は『スタンド』を持って睨みあいをするわけだ……それが解らないのは脳みその代わりにおがくずが詰まった案山子か」

肩を竦める

 「――それ以上にメリットが上回ると判断した奴くらいだな いねーと思うけど。」

 「しかし……そっかあ …… そ っ か あ 」

ガクーンと首を垂れる、別に彼に落ち度があるわけでは無い
勝手に期待して勝手に失望しただけだ、つまり、人類の悪癖だ。

『手を離すと解除される』……それだと意味が無いのだ。

727斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/05/27(水) 21:35:03
>>726

 *おおっと*

展望台のベンチに誰でも座れるようになった。

728小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/17(水) 20:24:56

ベンチの近くに『喪服』の女がいた。
身を屈め、床の上に散らばった品物を拾い集めている。
うっかりしてバッグの中身を落としてしまったのだ。
ハンカチ、携帯電話、小さな香り袋、果物ナイフ、包帯。
それらを一つずつ手に取っていく。

729成田 静也『モノディ』:2020/06/17(水) 22:11:09
>>728

・・・女性がベンチの前で屈んで物を拾っている。

見たところ服装から葬式の帰りだろうか?

どうやらカバンの中身を何かの拍子にぶちまけてしまったようだ。

・・・ここ数日のオレならば見て見ぬふりもあり得たことだが、葬式…か。
親しい人物の喪失、オレもここ最近ずっとそれを引きずっている。

そう思ったら喪服の女性に声をかけていた。

「すみません、大丈夫ですか?良ければ拾うのを手伝いますよ?」

・・・声をかけてしまったのならば助けなければ無責任というものだ。

落ちている小物を見る。

ハンカチ、携帯、香り袋とここまでは普通だった、しかし…むき身の果物ナイフ、それと包帯とあまりいい想像が
できないものまで落ちており、背筋に冷たいものが走った。

・・・念のために果物ナイフだけでも『モノディ』で素早く回収しておく。

「すみません、危なそうだったので思わず拾ってしまいました。」

「オレが口出しするのもなんですが誰に使うにしろ、こういうのはあまり良くないですよ?」

何かがあってこうなったのならば、話を聞くことで何か変わるかもしれない。

730小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/17(水) 22:54:28
>>729

つばの広いキャペリンハットを被った頭が、僅かに揺れる。
それから、ゆっくりと声の方へ顔を向けた。
女の視線が、眼鏡を掛けた少年に向けられる。

  「ええ、大丈夫です……」

『果物ナイフ』は木製の鞘に収まっており、
『抜き身』ではなかった。
もし誰かが触れたとしても危険はない。
足元に落ちていた『それ』を、『モノディ』で拾い上げる。
無意識の内に、その動作を目で追っていた。
『速い』が『見える』。

  「それは……」

  「――『果物を剥くためのもの』です」

        スッ

  「……拾って頂いて、ありがとうございます」

片手を伸ばし、『果物ナイフ』を受け取ろうとする。
『モノディ』の『聴覚』は、
その声色の中に若干の『動揺』を感じ取った。
『理由』までは分からない。

731成田 静也『モノディ』:2020/06/18(木) 20:19:54
>>730

・・・この女の人、『モノディ』の動きを『目で追っていた』。
それに声の中に『聴こえた』震え、それと荷物に紛れていた『包帯』・・・これはただ事ではなさそうだ。
さて、どうするべきか…手で持ったナイフを見て考える。

「すみません貴女の言動から見て、これを返すは少し話をしてからでいいですか?」

再び『モノディ』を出し残りの小物をバッグへ素早く詰める。

「たかがイチ学生のオレが言うのもアレですが…」
「ここで話しにくいのなら他の落ち着ける場所に移動してもいいので話すだけでも少しは楽になるかもしれませんし。」

一番にあり得るのは…『自殺』…だろうか。喪服…さっきも思ったが誰かを亡くしたのだろう。
それを引きずって後追いの為に・・・と言った所だろうか。

兎にも角にもここで見逃して後で新聞に載りました。なんてことになっては目覚めが悪い。
本当に自殺する気ならば思いとどまらせなければ。

732小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/18(木) 21:37:19
>>731

持ち物の中には『包帯』があった。
『包帯』というのは手当てのために使うものだ。
本当に『自殺』するつもりなら必要ない。

  「――『大丈夫』です」

『モノディ』には分かる。
女の声には、もう動揺は聴こえなかった。
短い言葉の中に『強い意志』が秘められている。
それは、単に表面的なものではない。
『裏打ちされた何か』を感じさせる。

  「すみません……」

  「『それ』を……返して頂けませんか?」

  「お願いします……」

懇願するように言葉を続け、深く頭を下げる。
『果物ナイフ』は『大事なもの』らしい。
それゆえの執着は見えるものの、態度は落ち着いていた。

733成田 静也『モノディ』:2020/06/18(木) 23:11:19
>>732

「・・・」

女性にナイフを返還する。

彼女の顔、そして声に自分を害するという様子が見られなかったからだ。

「・・・すみません、これは返します。」

「そしてどうやらオレの早とちりだった(?)みたいですね。」

しかし、お節介を終わらせる気はない。

「そのナイフ…大事な物なんですね・・・何か思い出でも?」

少しだけ興味が湧いた。

相手の感情の境界・・・怒りや嫌悪を抱かないように注意しながら少しずつ探っていく。

734小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/19(金) 00:07:26
>>733

  「――ありがとうございます」

『自傷用のナイフ』を受け取り、丁寧にバッグに戻す。
『第二の刃』を得ている今、これは必ずしも必要ではなくなった。
それでも、『使い慣れたもの』というのは手放しにくい。

  「……ええ、大事なものです」

  「『これ』は……」

  「これは――『薬』です……」

少年に向き直り、穏やかな微笑を浮かべる。
『薬』――『鎮静剤』。
『成長』を経た今も、それは自分にとって必要なものだった。

  「あなたも――お持ちのようですね……」

           スッ……

人型スタンド――『モノディ』に視線を移す。
自分のそれとは大きく異なるヴィジョン。
そこに込められた『意味』も、また違うのだろう。

735成田 静也『モノディ』:2020/06/19(金) 00:21:10
>>734

「『薬』・・・ですか…ならば取り上げるような真似をしてしまいすみませんでした。」

アスリートなどがよくやる『スイッチ』というやつだろうか?
だとしてもナイフが薬(スイッチ)とは少し変わっているが・・・

やはりというか何というか…分かっていた事だが彼女もまたスタンド使いのようだ。

「そうですね…オレも『スタンド使い』という奴ですね。この街ではそこまで珍しくもないようですが…」

「オレは『成田 静也』って言います。そしてコイツはオレのスタンドの『モノディ』です。」

相手の女性は比較的無害そうなので名前とスタンド名を晒す。

ここで会ったのも何かの縁、それにこの人の音はオレの平和を妨げることはなさそうだ。

736小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/19(金) 21:31:51
>>735

  「ええ――『この街』では、よくお会いします……」

  「私と成田さんも……『その一人』ですね」

         ニコ……

柔らかな微笑が、少年に向けられる。
これまで、『スタンド使い』と出会う機会は少なくなかった。
この街には多くの『スタンド使い達』がいる。
その中には、人を傷付けるために力を使う人間もいた。
悲しい事だが、『事実』として存在する。
知らない場所で、今も誰かが傷付いているかもしれない。
それを考えると、微かに胸の奥に痛みを感じた。

  「……『小石川』と申します」

  「成田さん――よろしければ、少しお話をしませんか?」

          スッ……

ベンチに腰を下ろし、バッグを膝の上に置く。
背筋は伸びており、座り方は丁寧だった。
その視線は、遠くを行き交う人々を眺めている。

  「――『スーサイド・ライフ』」

  「そういう『名前』です……」

『名前』に対し、『名前』を返す。
人と人との繋がりにおいて、それが『礼儀』。
だからこそ――『第一のスタンドの名』を告げた。

737成田 静也『モノディ』:2020/06/19(金) 23:20:35
>>736

「小石川さんですね、改めてよろしくお願いいたします。」

この人はオレ以上に『スタンド使い』との戦いを経験しているのかもしれない。

「ベンチの隣、座らせてもらいますね。」

ベンチに腰を掛ける。

そうしてまず、オレの方から今までの体験を掻い摘んで話始める。
そうすることで小石川さんも話しやすい雰囲気を作っていく。

738小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/19(金) 23:45:54
>>737

  「『不思議な夢』――ですか……」

少年の口から語られる話に、静かに耳を傾ける。
その中に、気に掛かる部分があった。
『夢の中』で『奇妙な女性』に出会ったという話。

  「私も……その方とお会いしたような気がします」

  「成田さんと同じように、『夢の中』で……」

あれは確か『冬の出来事』だったように思う。
『不思議な夢』を見た翌日、『スタンド使いの争い』に直面した。
その時は、『薬師丸』という名前の少女も、
同じ場に居合わせていた。

  「私達は……『スタンド使い』ということ以外にも――」

  「『共通点』があるのかもしれませんね……」

最初の頃は、
『スタンド』で人を傷付けることに大きな動揺を覚えた。
だけど、今の自分は落ち着いてしまっている。
誰かを『斬る』時にも、以前のように心は乱れなくなった。
『斬る瞬間』も『斬った後』も平静なまま。
慣れてしまったのだろうか。

  「成田さん……失礼ですが、『何年生』ですか?」

739成田 静也『モノディ』:2020/06/20(土) 00:38:07
>>738

まさかオレや石動さんたち以外に『夢』を見たことのあるひとがいるとは…
やはりあれはただの夢ではなく、スタンドか何かによる現実だったのだろう。

「そうですね…『スタンド使いはお互い惹かれ合う』・・・そんな重力が働いたのかもしれませんね…」

>「成田さん……失礼ですが、『何年生』ですか?」

「ええっと…一応ですが『3年』・・・『中学3年生』です。何か問題でもありましたか…?」

小石川さんに申し訳なさそうに尋ねる。

この人は『スタンド使い』としても…『戦う人間』としても『先輩』に当たる人だ。
『敵』ならばともかく、無駄ないざこざは起こしたくはない。

740小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/20(土) 01:07:24
>>739

  「いいえ……何でもありませんよ」

微笑みを湛えたまま、言葉を続ける。
『共通点』――確かに、それはある。
『同じ夢』を見たという『共通点』。

  「成田さんに楽しい学生時代を送って欲しいと……」

  「ただ――そう思っただけです……」

  「突然おかしな事を言ってしまって、ごめんなさい……」

一方で、疑問に思うこともあった。
人を傷付けることに慣れてしまった自分は、
彼と『同じ』なのかどうか。
考えてみても、その答えは出てこなかった。
しばし目を閉じ、自分の心の奥を見つめる。
やがて、ゆっくりと両目を開け、少年に向き直った。

  「成田さん……お話して下さって、ありがとうございました」

  「私は、これで失礼させて頂きます……。
   いつか――また何処かでお会いしましょう」

  「――それでは……」

       スッ……

別れを告げて立ち上がり、静かに歩いていく。
『自分のようになって欲しくはない』――
その言葉は口に出さなかった。
喪服の後姿が、徐々に遠ざかる。

741成田 静也『モノディ』:2020/06/20(土) 01:44:42
>>740

彼女の…小石川さんの音には様々な思いが入り混じっていた。『思いやり』、『慈しみ』、そして『悲しみ』・・・

そんな小石川さんにオレは…

「小石川さん!…オレが言うのもおこがましいかもしれませんが…あまり思いつめ過ぎないでください。」

「貴女と話をした時間は少ないですが、貴方が思っている以上に貴女は良い人だとオレは思いますよ。」

思いを口にする。言葉は音にしなければ伝わらない。

これで小石川さんの憂いが晴れるなんて思わないが、少しは重荷が軽くなってくれることがあれば…
去っていく彼女の背にそう願うほかなかった。

742関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/29(月) 23:18:12

「ふぅ……」

        ガサッ

セールの時間帯だった。
買い物袋を3つも持った少女が『ベンチ』に座る。
おだんごにまとめた髪と、温和そうな顔立ち、
そして『エプロン』を付けているのが、特徴的だった。

「……」

             チラ

視線の先には『クレープ』や『タピオカジュース』など、
その場で食べられるような『甘味類』の店があった。

                          パラ

それを見ていた目を、手元に伏せる。
いつの間にか『そこに開いている』ノートの名前は――『ペイデイ』という。

743霜降 寒夜『ヘパティカ』:2020/06/30(火) 00:27:46
>>742

視線の先の甘味屋…その店先、3m。さっきから、少女が立っている。
中等部の制服の上から、白いウィンドブレーカーを着た少女だ。


「 ………………………………………」


立っているが…何も注文しに行かない。じっと店を観察している。



    スッ…

ふと、振り向いた。君の店への視線に気づいたのかもしれない、近寄ってくる。



 スタスタ…

   「 ……………『あなたも』?」

744関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/30(火) 00:47:36
>>743

            パタンッ

声に『ノート』を閉じ、近付いてくる少女を見る。

「あっ……ふふ、気付かれちゃいましたか〜。
 私ったら、想像以上に欲しがってたみたいですねえ」

当人としては、そこまで『見ていた』つもりはなかった。
実際にはノートに視線を落とすまで『ガン見』だったが。

「『タピオカミルク』……
 流行りが終わったって人もいますけど。
 すっかり『定着』した感じだと、思うんですよう」

      「ただ」

           じ ・・・

『Mサイズ』500円。

「ちょっと……ジュースにしては、『お高い』んですよねえ」

745霜降 寒夜『ヘパティカ』:2020/06/30(火) 01:17:48
>>744

「 …ここのお店、ちょっとイマイチで」
「 …『専門店』じゃないからしょうがないけど、タピオカが茹でたてじゃないの」
「 … 何時間かごとに茹でたのを、作り置きしてて…」


       ジーーーーーーーーーーーーーーッ

  「……ちょうど『今頃』。いつものタイミングならそろそろ、『茹でたて』が来る。」


白いウィンドブレーカーの少女は店を睨んでいる。並々ならぬ執念。




>「ちょっと……ジュースにしては、『お高い』んですよねえ」


「 ………『タピオカ』って『ラーメン一杯』ぐらいのカロリーがあるんだって…」

「 …水分補給でジュース代わりに『タピオカ』は、高いし くどいし ノド乾くし だけど…」

「 ……『カロリー補給』になら向いてる すぐ飲めるし もうどこでも買えるし わたし『ラーメン』嫌いだし」


   ズイッ

…立ったままの少女は、屈みこみ、君の手元の方に目線を向けた。

「 ……なんか、『家計』やってるの?
   袋、ずいぶんいっぱい有るし ノート睨んでるし」

746関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/30(火) 01:46:13
>>745

「まあ〜っ、そうなんですか!
 よく調べて……というか、よく待てるんですねえ。
 私ならきっと、知っててもすぐ買っちゃいますよう」

「その方が『コスパ』が良いかなあ、って……」

劇的に変わるなら別だが……
コンビニのソレが『規準』になっていると、
店で作ってさえいれば『余程でないと』分からない。
少なくとも関は、待つ気にはなれないだろう。

「そうですね……カロリーも、お高くって。
 ……って、ご飯代わりにしてるんですか!? 
 だめですよう、栄養が偏っちゃいますよ。
 まあラーメンも、別に身体に良くはないでしょうけど」

買い物袋の中からは、
ちょうどその『ラーメン』も覗く。
袋麺……安くて、幾つも入っているものだ。

「ええ、家計簿をちょっと……
 ここ最近あまりバイト代も稼げてなくて、
 あんまり大盤振る舞いは出来ないんですよねえ。
 特に困窮してる、ってわけではないんですけど」

ノート……『市販品』では、なさそうだが、帳簿のようだ。
手を表紙に添えて閉じており、中は窺えないが…………

「それで……ほら。Sサイズなら50円安いでしょう?
 今日はそっちにしておこうかな……と、迷ってまして」

それでも飲むのは飲むあたり、困窮はしていないのは事実なのだろう。

747霜降 寒夜『ヘパティカ』:2020/06/30(火) 02:19:13
>>746

>「……って、ご飯代わりにしてるんですか!?」

「 …ウッ」
ちょっと苦い顔をした。

「 …お昼ごはんって食べちゃうと…こう…ボヤーってするし…」
「 …放課後に『運動』するとお腹痛くなっちゃうし…」
「 …朝と夕はお米五杯おかわりするし…」

言い訳をしている。量は十分だが、バランスの面には不安が残るようだ…


「 …オトナびている…
  …わたしも中学のうちから、そういうの書いた方がいいのかなぁ…」


>「今日はそっちにしておこうかな……と、迷ってまして」

「 …大きいのにした方がよくない…?」
「 …食べ物に使うお金は、『贅沢』じゃないし」

「 …オトナは飲み過ぎたら太っちゃうけど…
  …今の私たちは『成長期』なんだし むしろ、たくさん食べないほうが……『損』、じゃない?」
「 …あと、そうだ せっかくの『茹でたて』、沢山食べないのも『損』じゃない?」

進言。『利害』に絡んだ用語を使うあたり、霜降なりに『家計』の手伝いをしようとしているのかもしれない。

748関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/30(火) 02:48:01
>>447

「えっ、5杯も!!」

「……ほ、他の食事でちゃんと栄養取れてるなら、
 問題はないんでしょうけど…………ああ、それに、
 背もお高いですしねえ、勝手な心配してすみませえん」

関はいま座っているためわかりにくいが、
年下であろう『霜降』と背丈はほぼ変わらない。
肉のつき方も、どちらも健康的な範疇だろう。

「ふふふ、子供ですよう……私なんてまだまだ。
 ……だから、あんまり誘惑されると、揺れるんですけど」

霜降の進言に耳を傾ける。
たしかに……そうかもしれない。

「あなたは……どれをいつも飲んでるんですか?
 せっかく『ぜいたく』するなら、
 一番美味しいのを飲むのがコスパが良いと思うんです」

とはいえ、タピオカドリンクは嗜好品で、
嗜好品は『ぜいたく』だとは思っているが……

「やっぱり、あの、アイスが乗ってるやつが美味しいんですかねえ?」

749霜降 寒夜『ヘパティカ』:2020/06/30(火) 03:29:58
>>748

「 …アイスが乗ってるやつなら…マンゴー味とか、いいよ…」
「 …掛かってるマンゴーソースが、マンゴーって感じで…」


「 …私は今日は…『焦がし黒糖』…
  …ミルクティーに黒糖入れて黒糖で煮たタピオカ入れてミルクの泡を乗せたのの上に黒糖かけて炙ったやつ…」


「 …モールが涼しくて体冷えちゃった…
     …ホットにしようかな…
               …………」
                    …グイッ ニュッ

 
おもむろに霜降は体を伸ばし、甘味屋のほうに顔を向けた。


  フ ワ…

「 …匂いがする…鍋から揚がったタピオカの匂い 」


「…そろそろ頃合いかぁ」
「…どうする?ツルツルもちもちの『ぜいたく』を味わえるのは『今だけ』だけど」
「…買い物袋で動きにくいなら、私がタピオカ買ってベンチまで持ってくるよ」

霜降は、上着のポッケから財布を引っ張り出し、目を爛爛とさせて店を睨んでいる。
今にも駆けだしそうな感じだ。

750関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/30(火) 05:05:42
>>749

「あぁ、いいですねえ。マンゴー。
 『タピオカドリンク』って甘あ〜いですし、
 フルーツソースがかかっていると、
 さわやかになって最後まで楽しめそうで」

           ゴソ

「『におい』……? 私ったら向こうのお店の、
 『ソースの匂い』しか分からないです」

『粉もの』を売る店が、視界の端にある。

「鼻がいいんですねえ〜・ええと、じゃあ」

                ゴソ
     チャリ

「お金はお渡しするので……ご厚意に甘えます。
 買い物袋から、出来たら目を離したくないので……」

食料品が主な買い物だったが、
総額を考えれば安くはない。
走り回っている子供等も多い中、
あまり目を離したくはないのは確かだ。

「これを……お役立てください〜」
                        スッ

『タピオカマンゴーミルク』『アイストッピング』『Mサイズ』――『650円』。
モスグリーンの財布から、500円玉に加え、『100円玉二枚』を、包むように握らせる。

751霜降 寒夜『ヘパティカ』:2020/06/30(火) 22:21:31
>>750
「…炭水化物が出来上がるにおいって、独特じゃない?」
「…ほら、ご飯が炊けるにおいか…それと似たようなにおい…」

  ストトト…

霜降は君から受け取った硬貨を握り、店へ早歩き。
店員に注文を告げ、お釣りの一部を財布に放り込み、
すぐに出てきた二つの容器のうち、片方を持って、またベンチに寄ってくる…


「はいこれ と、『お釣り』」

左手のオレンジ色の『マンゴーミルク』、右手の『50円玉』を同時に差し出してくる。





関が両方を受け取り次第、また店先まで歩いていき、
自分の『黒糖ミルク』を改めて受け取り、また帰ってくる…

  ズ…
    「 …うん、甘い…すごい甘い…上のホイップもカワイイ…」


「 …でも熱いな…思ったより熱いやこれ…
  …上のホイップが『断熱』してるから…」


「 …どうしよっか…ちょっと冷めるのを『待つ』なら……」

…そう呟き、何故か鞄から『ポケットティッシュ』を取り出す霜降、その隣。
『ネコ科動物』の『氷像』のような…そんな『ヴィジョン』が、いつの間にか…

      『korrrrrrrrrrrrrrrrrr…』

752関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/30(火) 22:45:48
>>751

「そう言われてみたら〜……『良い匂い』なような?」

それは『甘いドリンクの匂い』だ。
ともかく、ドリンクを受け取って傍に置き、

「まあ! これはこれはご丁寧に……
 はあい、ありがとうございます」

        スッ

「たしかに……『50円』受け取りましたよ」

それから両手で包むように、お釣りを受け取る。
『貰っておいてくださいよう』とは言わない。
貰うつもりなら渡すつもりだった……それだけ。

「あぁ〜、本当……甘いですねえ。
 タピオカドリンクの甘さって、こう、
 舌と喉だけじゃなくて『脳』に響きますよね。
 糖分の処理に脳の容量を割かれる甘さっていうか、
 甘さのことしか、考えられなくなりますよう」

「ふふ……それが良いんですけどねえ」

実際はカロリーの事とかも考えているが……
だが、それ以上に強く、『考えを引かれる』物が見えた。

「……………………!」

      シャッ―

帳簿を片手で開く。
名を、『ペイデイ』と言う。

「……あのう。見えますよ? 私」

端的にそう告げる。そうするのが『無駄がない』からだ。

753霜降 寒夜『ヘパティカ』:2020/06/30(火) 23:27:25
>>752

容器を分解し、タピオカドリンク特有の太いストローの先に
ポケットティッシュの口を引っ掛け…緩慢に動く『ヴィジョン』の鼻先に差し出す。

  『korr…』

      パキッ 
        コッチーーz___ン


そしてポケットティッシュは唐突に…『凍り付いた』。


>「……あのう。見えますよ? 私」
「 …ムムム」
  「 ……『初めまして』?」


凍ったポケットティッシュを無造作に『黒糖ミルク』に放り込み、呑気に啜る。

「 ……割と『いる』のかな…『見える』人…」
「 …あなたがその…『敵』なら、今これって、危ない状況なのかなぁ…」


「 ………ウン、良い感じにヌルイや」
「 …甘さって冷たければ冷たいほど甘くなるって言うし…」
「 …甘さでなんも考えらんない…どうしよ……」


観念しつつ、タピオカの甘さに現実逃避。

「 …せめてタピオカ無くなるまでは、襲い掛からないでくれると嬉しいなぁ……」

754関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/01(水) 00:20:45
>>753

「まあっ、『敵』だなんて、そんな――
 ……味方、かどうかはわかりませんけれど、
 私そんな、『襲う』ような真似はしませんよう」

スタンド使いは『ひかれあう』。
実際にそれを実感したのは、初めてだ。
あまりに唐突……内心、冷静とは言えない。
氷像のような姿をゆっくりと眺める。

「『脅かす』ような言い方になっちゃいましたねえ」

       ズズズ…

「まだ、見るの、慣れてなくって。
 つい……驚いちゃってるんだと、思います。
 私ったら、自分の事ながら曖昧なんですけど」

ノートを閉じて、タピオカを啜り、一息ついて答える。

「『スタンド』……『はじめまして』ですねえ」

そうだ。はじめまして、だ。
物理世界に大きく依存する『ペイデイ』とは違う……『スタンド体』。

「便利な能力、ですねえ。あのう……
 その『氷』 ……食べても、平気なんですか?」

      「だとしたら、製氷機いらずですよう」

気になったのは、そこだった。『ごく普通に』食べ物に入れているが……

755霜降 寒夜『ヘパティカ』:2020/07/01(水) 01:18:20
>>754

   ズ…

「 …普通の氷みたいなものだけど…」
「 …食べたり、触っちゃったりすると、すぐに融けちゃうし……」
「 …こうやって『ストロー』越しに触ったり飲んだりするから大丈夫なの…」


「…あと…隠しときたい…んだけど、」
「あなたは触らないほうがいいよ、この氷」

霜降はチラリと『スタンド体』のほうを見て、

  「…『ヘパティカ』。ここまで。戻りなさい…」

    『rrr…』 スーーッ…

『ヴィジョン』を消した。


唸るだけで、凍ったようにじっとしていた『ヴィジョン』…
しかし、獣らしいしなやかな体と、つららの如く鋭い牙や、爪を持っていた。
『スタンド』は、その人の『精神性』を表すとは言うが…




「 …『はじめまして』とはいうけど…」
「 …あなたにも、あなたの力になる『何か』があるのよね…?」

「 ……いや、はじめましての人に、興味本位で変な話を聞いちゃったね…」
「 …迷惑だし、危ないよね、ごめんね…」


   ズ…
     スポ スポポポポ…

   「 …飲み辛…底のタピオカ飲み辛い… 『氷』が邪魔で…」


「 ……『はじめましての人』のまんまも、失礼か…」


  スッ

「 …私は、『しもふり かよ』。霜が降る、寒い夜、で霜降寒夜…
  …雪の降ってる寒い夜に…『デキた』から、寒夜なんだって……」

「…失礼じゃないのなら、『あなたは』?」

756関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/01(水) 01:52:36
>>755

「はあ〜、そうなんですねえ。
 私の『ペイデイ』とは、
 何もかも違うんですねえ、やっぱり」

        パララ
             ララ

   ―――『マンゴーミルク 650円』

ノートをおもむろに開くと、『記述』が増えている。
筆記具を使った様子すらなく、だ。

「少しだけ教えてくれたので……お返しです。
 『帳簿』なんですよう、私のスタンドは。
 ふふ、私ったら能力まで『ケチ』なんですよねえ」

        ニコ〜

「あなたは『クール』だから『氷の能力』……
 なあんて、単純な話では無いですよね。
 これから知っていけたらいいなあ、って思います」

温和な笑みを浮かべて、タピオカドリンクを一旦置く。

「『デキた』……まあっ! そうなんですねえ……」

    セキ スズメ
「私は『関 寿々芽』っていいます〜
 関は『関所』の関……寿々芽は『寿(ことぶき)』に、『芽吹く』
 前向きな名前ですよねえ。ふふ、兄弟姉妹みんなそうなんですよう」

            「スタンド使い同士。
             仲良く、しましょうねえ」

       スッ

握手を求め、手を差し出されたなら両手で握り返す。

757霜降 寒夜『ヘパティカ』:2020/07/01(水) 02:42:33
>>756

スポポポ…スポ…

「 …帳簿がケチ…ケチかなぁ…」
「 …しっかり者って感じで、素敵だと思うけど。」

底に残った丸くて甘いタピオカまで味わい尽くした後、
右手に残った『黒糖ミルク』の空容器を見つめる。

底に残ったタピオカを吸うのはケチ臭いだの、
そもそも全部飲むのがアホらしいだのいう女の子もいるが…
お金を払った美味しいものを全部食べようとするのは、変なことじゃないよね。


>握手

右手の空容器を地面に置き…


               サッ

「 …『すずめ』さん…」
「 …『すずめ』さんね…これでもう失礼じゃないや…」

「 …兄弟がいるんだ…だから…しっかり者なんだねえ…」

差し出された手に、自分の右手を返し、握る。

同じ性別、近い年齢と似た嗜好を持つ『スタンド使い』と、
願わくば、良き関係を築けることを願い…


   ヒョイ

  「 …容器、わたしが捨てとくよ…」
  「 …袋たくさんだし、大変でしょう?」
  「 …私はほら、身軽だからさ…この後に用事も無いし…」


兄弟の為の買い物をしているのかな、すずめちゃんは…
あんまり足を止めさせるのも悪いし…


  「 …そろそろ帰らなくちゃ
    …モールに用事もないし、あと宿題をやんなきゃだし」


   「 …次は私も、マンゴーの頼もっかな」
   「 …じゃあ、また、」

   「 …また、会ったら、その…よろしく。」



帰ろう。『機会』があれば、きっとまた会えるだろう…

758関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/01(水) 04:25:03
>>757

「素敵だなんて……ふふ。
 買いかぶりですよう、『かよ』さん。
 確かに、この帳簿は『しっかり者』ですし」

完全にカラになった容器に目を細める。
無駄がない、というのは良い事だ。

「ふふ……『長女』なので。
 しっかりしなきゃとは、
 思ってはいますけどね」

          ギュ

「そんなに『いい子』では、ないんですよう」

握手を終えると、拾い上げられた空容器を見る。
持って行って貰えるなら、そうしてもらおう。
それが一番『むだがない』。

「あら……どうもご親切に!
 それじゃあ、お願いします。
 私は、もう少しだけお店を見てから帰りますので」

         「はあい。それじゃあ、またどこかで〜」

759関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/08(水) 23:38:24

          ガヤ   ガヤ …

「……」

     スッ スッ

エプロンを付けたお団子ヘアの少女が、
モール内フードコートの一角に座っていた。

            スッ

注文は既にしている――――
が、まだそれが出来上がっていない。
待ち時間を『スマホ』の『ポイントアプリ』で潰している。

   スッ

また、卓上には『格安スマホ店』の『紙袋』が置かれている。

760比留間彦夫『オルタネイティブ4』:2020/07/09(木) 00:35:07
>>759

いつからだろうか?
足元に一枚の『カード』が落ちている。
誰かの落し物かもしれないが、
落とし主らしき人間の姿は見えなかった。
少し離れた席には、一人の男が座っている。
モノトーンのストライプスーツを着て、中折れ帽を被った男だ。

761関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/09(木) 00:46:21
>>760

アプリの日課を済ませ、ふと顔を上げると、
見覚えのない『カード』らしき物が見えた。

「ん」

      グ…

手を伸ばしてみたが、
座ったままでは届かない。

…………一円玉を拾うためのエネルギーは、
一円以上かかっている……という話がある。
が、『一円玉を見逃したこと』を思うと、
それは拾う以上のエネルギーがかかる気もする。

      ガタ

もっとも落ちてるのは金銭ではないが……
得にならないとしても『見逃すのも気になる』。
椅子から立って、それを拾ってみる事にした。

なお、中折れ帽の男には今の所、気を払っていない。

762比留間彦夫『オルタネイティブ4』:2020/07/09(木) 01:10:38
>>761

     ――――ポンッ

指先が『カード』に触れた瞬間、代わりに『兵士』が現れた。
黒い鎧を身に纏う『黒い兵士』。
これは『スタンド』だ。
お互いに至近距離。
不意打ちを仕掛けてくる――というような事はなかった。

          ジッ

『兵士』は動かない。
襲ってはこないが、それ以外の動きも見せていない。
少なくとも、今のところは。

(触れられましたか……)

(――さて、今回はどうでしょうね?)

『兵士の視界』を通して、相手の姿を観察する。
『比留間彦夫』は、スタンドの理解を深めるため、
時々こうした『実験』を行っていた。
その中で、『槍を持った騎士』のスタンドと、
『恐竜化させる植物』のスタンドを目撃した事がある。
もっとも、相手が『一般人』だった事も多かった。
その場合も、全くの無意味ではないが。

763関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/09(木) 01:47:20
>>762

「…………!」

         サッ

正中線を隠す姿勢、つまり『半身』になる。
そして『後ろ側』になる手に『それ』を発現する。

(…………私を狙った『刺客』!?)

可能性が頭をよぎるが、
すぐに打ち消した。
それは『ほぼありえない』。

――――後ろ手に、『帳簿』の存在を意識する。

「……」

(動きませんか〜……まあ、そうですよねえ。
 刺客なら最初の一瞬で攻撃出来たはず。
 『本体』が見当たりません……
 狙いは何なんでしょう? 『スタンドは囮』?)

                パララ …

(……私ったら、冷静に冷静に。
 ただの『いたずら』かもしれませんよう)

エプロンのポケットから『ボールペン』を1本抜き出し、
椅子を挟んで『黒い兵士』と向き合うように位置取りを作りつつ、
周囲を油断なく見渡し、『こちらを見る存在』を探す。

         ――――という様子が、『比留間』には全て見えている。

764比留間彦夫『オルタネイティブ4』:2020/07/09(木) 02:16:05
>>763

(『何か』出したようですが……。あれは――?)

(『ノート』――――でしょうか?)

相手は『スタンド使い』だった。
まずは『当たり』という所だ。
この場にいる客は一人ではなく、
『本体』の自分もあからさまに彼女を見てはいない。
おそらく見つかる事はないだろう。
しかし、『そういう能力』がないとは言えない。

《――驚かせて申し訳ありません》

不意に、『黒い兵士』が言葉を発した。
『スタンド会話』だ。
落ち着いた成人男性の声に聞こえる。

《『これ』を見つけた方の反応を確かめたかったものですから》

寿々芽を見つめていた『兵士』が『ボールペン』に視線を移す。
『ボールペン』は『筆記具』だ。
この状況で取り出すという事は、
あの『ノート』に関係しているのだろうか。

765関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/09(木) 02:43:16
>>764

《……『攻撃』のつもりじゃ、ないみたいですねえ》

         ジ…

それらしい影は見当たらない。
なら、スタンドを注視する事にした。

《『反応』……つまり》
《ちょっとした『いたずら』……ってこと、ですか》

        スッ

椅子に視線を落とし、
ボールペンを一旦『しまう』。

(……『私をピンポイントで狙った』と、
 そういうわけではない……みたいですねえ。
 『かよ』さんや『ユキシラ』ちゃんと同じ、
 偶然……『スタンド使いはひかれ合う』ですか)

《ふふ……私ったら、すっごく驚いちゃいましたよう》
 
《あのう……今の、『録画』とかしてないですよね〜?
 SNSに上げようとか……まあドッキリっていうよりは、
 自主制作のCG映像か何かと思われちゃいそうですけど》

そういう『ドッキリ企画』なら……けっこう恥ずかしい。

ともかく、こちらの望みは『戦闘』には無い。
警戒を示すためにも『ペイデイ』は解除しないが、
表情には笑みが入り、探るようにだが会話を返していく……

766比留間彦夫『オルタネイティブ4』:2020/07/09(木) 03:05:55
>>765

《『悪戯』というと少々御幣がありますが――
 客観的には似たようなものかもしれません》

《『否定』はしませんよ》

挙げられた名前に聞き覚えのあるものはない。
しかし、何人かの『スタンド使い』と出会っている事は分かる。
あるいは、『手馴れた相手』なのかもしれない。

《いえ、あくまでも私の個人的な興味の範囲です。
 他人に見せるつもりはありませんので、ご安心を》

《失礼ながら、『オルタネイティブ4』と名乗らせて頂きます。
 私は、ごく最近『スタンド使い』になった者でして……》

《『スタンド』については、まだまだ分からない部分が多い。
 それで、自分なりに色々と調べているのです》

『嘘』はない。
スタンドを手に入れたのは最近というほど最近でもないが、
『スタンド使いとしての経験』が浅いのは事実なのだ。
だからこそ、『知る必要』があると考えている。

《そのお二人の名前は存じませんが……。
 お見受けした所――既に、
 『多くのスタンド使い』と会われていらっしゃるようですね?》

『多くの』を付けたのは、確認のためだ。
彼女が出会っているのが『数名』なのか、
それとも『大勢』なのか。
その辺りを見極めようという意図があった。

767関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/09(木) 03:38:22
>>766

《『オルタネイティブ4』さんですねえ。
 スタンド越しではありますけど……
 はじめまして、よろしくお願いします〜》

《さっきは恥ずかしい所を見せてしまいましたけど……安心しました。
 ぜひあなたの心の中だけに閉まって……いずれ忘れちゃって下さい〜》

一安心、といった所だろう。いろいろな意味で。

思考に浮かんだスタンド使いの名を試しに挙げたが、
反応は無かった。『彼女らは知らない』と見て良いか。
よほどの狸、という可能性はあるが……置いておく。

《……まあ! スタンドについて、お勉強を!
 それは……素晴らしい事だと思います。
 本当に、この『力』は分からない事だらけ……》

確かにスタンドは謎が多い。
あまりにも、あまりにも……
彼の姿勢には、共感できる。

《でも……私もまだまだ『成り立て』ですからねえ。
 スタンドの『タイプ』もあなたとは少し違いそうで、
 他に会ったことがある『使い手』もほんの、数人だけ》
 
《その人ちに連絡が取れたりも……『しません』し、
 勉強のお役には、あまり立てないかもしれませんが……》

『嘘』だ。
まずユキシラには、連絡出来る。
関『も』嘘をそれほど忌避しない。

《それでも良ければ、お話くらいは……付き合わせていただきますよう?》

嘘をつく理由は多少、他にも混ざるが……
主に『ユキシラは多分、知らない』と思われるからだ。
引き合わせても、さほどお互いのためにならないだろう。

768比留間彦夫『オルタネイティブ4』:2020/07/10(金) 06:02:07
>>767

《では、お互いに『入門したばかり』という事になりますね》

『嘘をつく』のは自分だけではない。
当然、相手も同じ事をする可能性は常に存在する。
相手は初対面の他人なのだから当然だ。
それが『スタンド使い』となれば尚更だろう。
ゆえに、この少女の言葉が『真実』であるとは限らない。

《『ビギナー』同士、よろしくお願い致します》

比留間彦夫は『嘘』を好む。
『嘘をつく』だけではなく、『嘘をつかれる』事も。
だからこそ、比留間は『今の状況』を楽しんでいた。
『真実』は『一つ』しかないが、『嘘』は『無数』にある。
その『楽しみ方』も『無限』に存在しているのだ。

《『なりたて』――という事でしたが、
 何か『きっかけ』などがおありで?》

《例えば『朝起きたら目覚めていた』というような事など……》

《私の場合は、『ある人物』と出会いましてね……。
 その方に『引き出して』頂いたのですよ》

比留間にとって、『嘘』は『人生の楽しみ』だった。
同時に、『他者に危害を加える事』は好まない。
また、『損害を与えかねない嘘』もつかない。
そのラインが、比留間を悪人にしない『最後の一線』だ。
比留間彦夫は『嘘つき』だが、『詐欺師』ではない。

769関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/10(金) 23:55:45
>>768

≪はあい……よろしくお願いしますねえ。
 初心者同士、分からない事も多いですし、
 お互いの知識を分け合って、助け合えたら≫

       ニコ …

≪それはステキですよねえ≫

信用できるかは分からない。
『かよ』や『ユキシラ』と違い、
スタンドで最初から干渉してきた相手。

だが、信用できないと決め付けもしない。

≪私も、『ある女の人』に見つけて貰いましたね。
  朝起きたら……なら、きっとすごくびっくりしますよう≫

温和なのは、『元々そういう顔だ』。
だが、『温和な笑みを浮かべる感情でもある』。
うそをつくことはあるが、うそをつくのが好きという訳では無い。

≪『同じ人』……ですかねえ。
 それとも『複数人』いるんでしょうか? 『スタンドを目覚めさせる人』≫

770比留間彦夫『オルタネイティブ4』:2020/07/11(土) 00:39:57
>>769

《『女性』に――ですか……》

《私も『ある女性』が『事の起こり』でして……》

《いや、何とも『奇遇』ですねえ》

『黒い兵士』は、所々で人間的な手振りを交えながら語る。
『スタンドを目覚めさせる女性』――
真っ先に『音仙』が思い浮かぶ。
この少女の力も、『出所』は同じなのだろうか。
興味はあるが、深くは追究しない。
こちらから尋ねるという事は、
こちら側も『明かす』流れになるだろう。
それは出来る限り避けたかった。
『音仙』に対する義理立てというよりは、ただ単純に、
『あっさり明かしてしまうのはつまらない』と思ったからだ。

《『その方』には、少々『ゲーム』に付き合って頂きましてね。
 何しろ、まだ勝手が分からないものですから》

《ここでお会いしたのも何かの『縁』です。
 不躾な提案で大変恐縮ですが、
 もし宜しければ、
 ちょっとした『テスト』にご協力願えませんか?
 いえ、決して『危険』なものではありません》

《先程の『カード』の『四隅』には、
 『四つのスート』が描かれていたのを覚えておいでですか?
 『カードの表面』には、
 『ある絵柄』が入っていたのですよ》

《その『表面』――つまり、
 『私の絵柄』を言い当てて頂きたいのです。
 もし『正解』なら、『私』は自動的に『解除』されます》

《――――如何でしょうか?》

少女に対し、ささやかな『ゲーム』を持ち掛ける。
この言葉の中に『嘘』はない。
ただし、『一つの情報』が意図的に伏せられていた。

771関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/11(土) 01:21:58
>>770

≪ふふ、そうですねえ……≫

(……明かさない、踏み込まない。
 『探っている』という感じはしませんけど)

≪『テスト』……まあ、トランプみたいですねえ。
 ええ、危なくないことみたいですし、喜んで。
 助け合えるところは助け合うべきですよう≫

           ガタ

≪あ、でも〜……≫

椅子に腰かけ直し、
改めて『兵士』をまっすぐ見る。
座った状態から素早い回避は難しい。
だからこそ、言外に『信用する』と示す。

≪質問。が、あるんですけど。
  ひとつだけ……先に、答えて貰えますか?≫

              スッ

卓上に『ペイデイ』を閉じた状態で置き、
兵士の目をまっすぐに見つめる……

≪あのう……じゃあもし、『不正解』だったら、どうなるんです?≫

772比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/07/11(土) 01:58:19
>>771

《いや、ありがとうございます。
 なかなか付き合って頂ける相手がいないものでして。
 『引き出して下さった方』の所にも、
 しょっちゅうお邪魔する訳にはいきませんのでね》

《あぁ、これは失礼しました。
 うっかりして肝心な事を言い忘れていましたね。
 もし『不正解』だった場合は――――》

        トッ 
             トッ 
                  トッ

《――――『私』の『射程距離』が『向上』します。
 ええ、『そういう能力』でして》

ゆっくりと歩きながら、『黒い兵士』が答える。
これも『嘘』は言っていない。
もし言い当てられなかった場合、
『射程距離の向上』は起こり得る。
ただし、それはあくまでも『可能性の一つ』に過ぎない。
その中から『射程距離』を選んだのは、
『他の三つ』よりも『分かりにくい』からだった。

《他に『ご質問』はおありですか?》

773関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/11(土) 08:55:39
>>772

(クイズをして当てられると解除……
 外れたら射程を伸ばすことができる、
 それを繰り返して射程を伸ばし続けられる?
 だとしたら本体はこの場にはいないのかも……)

《いいえ、ルールの質問は一つだけですよう。
 少なくとも、今のところは…………》

改めて兵士の姿を見ても、
スートを類推出来る要素は無い。
あるとしてもそれは『活かせない』情報だ。
『黒い』事が『クラブ/スペード』を象徴していても、
赤い兵士を見ない限りはそれは有益なヒントではない。

《普通にやれば、1/4の確率…………
 『くじ』なんかよりはずっと高いですけど、
 じゃんけんで勝つよりは低いですよねえ》

《うーん、悩むところではありますけど……》

          チラ

《まあここは…………『ダイヤ』にしてみましょうかあ》

     《ふふ、憧れますよねえ、ダイヤモンド》

視界の端に入った、同フロアの『宝飾店』。
そこから直感的に答えを出す……果たして、どうなるか。

774比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/07/11(土) 11:29:00
>>773

《『ダイヤ』――――ですか?》

        ス
           ゥ ゥ ゥ
                 ッ

《いいえ、『私』は『ハート』です》

その言葉通り、『黒い兵士』の胸に『ハート』が浮かび上がる。
しかし、それは『真実』ではない。
伏せていたカードは『ジョーカー(>>760)』だ。
『ジョーカー』は、任意の絵柄に『成り済ます』事が出来る。
少女の前にいるのは、
『ハートの兵士に化けたジョーカー』だった。

《お陰様で勉強になりました。改めて感謝を申し上げます》

《何か『お礼』をさせて頂きたいと思うのですが…………。
 あぁ、そうそう…………》

《『ラフィーノ石繭』という名前をご存知ですか?
 最近よく当たると評判の『占い師』です》

《実を言うと、私も占って貰った事がありましてね。
 今の悩み事に対する的確な助言を頂きましたよ》

《ご本人も実に『楽しい方』でして。
 『歓楽街』に事務所を持っていらっしゃいますが、
 時々『辻占い』もやっているようですね》

《占いにご興味がおありかは存じませんが――――
 『話のタネ』としてお教え致しますよ》

お礼と称して、『ラフィーノ石繭』の『宣伝』を行う。
この少女はスタンド使いだ。
もし二人が出くわしたら、
何か『面白い事』が起こるかもしれない。
その中で、あの占い師が、どのような対応を取るか。
実際に見られないのは残念だが、
想像するだけでも『面白い』。

775関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/11(土) 23:34:32
>>774

≪ああ……そうだったんですねえ≫

特に違和感などは『ない』。
『ダイヤでは無くハートだっただけ』。

外したことで何かが起きたようでもない。
研究の一環――というだけだったらしい。
何か見落としが、無いとも限らないが。

≪ラフィーノ……覚えておきますねえ。
 私は占いには凝ってませんけど、
 そういうのが好きな知人もいますし……≫

        ピピピピ …

と、そこで『フードコート』に特有の『呼び鈴』が、
注文が出来上がったことを知らせて来た。

≪……あ、すみません。ちょっと取ってきますけど≫

≪オルタネイティブ4さんはどうします?
 ご一緒……は、出来ませんよねえ。
 お話はお上手ですけど、お口があるようには見えませんし≫

776比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2020/07/12(日) 10:30:40
>>775

《『口を動かさずとも会話が出来る』というのは、
 全く便利なものですねぇ。
 その『ノート』が口をお持ちのようには見えませんのでね》

《どうぞ、お構いなく。
 お付き合い下さってありがとうございました。
 非常に参考になりましたよ》

こちらも、そろそろ『時間切れ』だ。
『オルタネイティヴ4』の発現時間は『三分間』。
会話を交わしている内に、その時間が過ぎようとしていた。

         《お会い出来て本当に良かったですよ》

  《では、良い一日を――――》

            シ ュ ン ッ

その言葉を最後に『黒い兵士』が消える。
持続時間を越えた事で、自動的に解除されたのだ。
直後、手の中にある『四枚のカード』が一枚増えて、
『五枚』になった。

(――――『騙す事』に関して『ジョーカー』は強い。
 その代わり、『ジョーカー』で勝ったとしても『報酬』はない)

(今後は、この点について考えていく事にしましょうか)

              フ ッ

さながら手品のように、掌中から『五枚のカード』が消失する。
そして椅子から立ち上がり、出口に歩いていく。
ストライプスーツの後ろ姿は、モールの雑踏の中に消えた。

777斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/08/01(土) 14:22:05
夏の陽気に木陰でスマホを弄る男の姿ありけり
名を『斑鳩 翔』といふ

 『・・・・・・やっぱりさぁ』

彼は二重人格であった
大抵の場合それは彼のスタンドの頭部から会話を交わしていたが
それは知らない人が見れば奇妙な独り言であった。

具体的に言うと『』で囲われた台詞が切り抜かれて聞こえるのだ。
 
 『ピアノが元凶だっつーんならbonfire lit(隠語)すればいーんじゃねーの?お高いのだと4桁万円いくらしいけど、命は星より重いというのが凡人共の価値観だろ。』

 「……いやぁちょっと2000万する焚き火は豪華すぎるなぁ。弁償も出来ないし。」

 『俺なら愛する家族の為なら何年かけてでも払うんだがなぁ?でも『彼』は出来なさそうだし……やはりここは親切心でbonfire lit(隠語)すべきなんじゃねぇ?』

 「そんなどす黒い親切心を持ったBJは現実にいないんだよ コミックじゃあるまいし。」

安い味付けのペットボトルティーを飲み干すと
数メートル先のゴミ箱に放り投げた。

セミの声がやたらうるさい夏であった。

778斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/08/02(日) 11:22:08
>>777

 『それで?どうすんだ。』

 「ま、約束はしているのだし。必要なら呼んでくれるだろ。」

 『その時にくたばってなきゃいいけどなぁ? 通り魔から集団犯行へ繋がる以上氷山の一角だぜありゃあ。』

 「ところで何歌う?『津軽海峡冬景色』とか駄目だぞ?」

 『チョイス演歌かよ……。』

そんなことを呟きながらその場を後にした。

779ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/08/13(木) 22:39:15

「お゛ー……」

長い金髪を投げ出した子供が、モール内のベンチの一角を占領し、だらーっと横たわっている。
ベンチの足元の通路には、新聞紙で折られたカブトやハリセンが並んでいた。

780十字路荒野『ジャンクション001』:2020/08/13(木) 23:38:18
>>779

「あ゛ー…………」

少し、逡巡する。
別に普段なら、子供が公共のスペースを派手に占拠しててもそこまで思うところはない。
そりゃあだって、子供ってそういうものだろ?
俺にだって心当たりはあった。子供はベンチとか、占拠するものだ。

だからベンチの一角を占領する子供がいたって、本来なら「かわいいもんだ」でスルーするところ。
いや、もしも迷惑だったら「ちょっといいかな」なんて言うかもしれないけどさ。
まぁともかく、今は迷惑には感じていないのでそれもないわけだ。

……でも。
スルーしようとして、ちょっと考えたんだけど……時期的にさ。
『ある』……よな。可能性。
考えすぎなら、いいんだけども。

「……なぁ、キミ」

だから俺は、意を決して話しかける。

「大丈夫か? 『水』とか……ちゃんと飲んでるか?」

……『ある』よな。
時期的に、『熱中症』とか。

781ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/08/13(木) 23:51:24
>>780

「お?」

子供は寝転がったままごろりと顔を向け、十字路を認識すると、ゆるやかに上体を起こした。
体調が悪そうといった感じは無い。モール内は冷房が入っていて涼しかった。

「いらっしゃい。
 水? 水は無いんじゃ。
 お茶ならあるぞい。飲むか?」

微妙に質問に答えていないが、見た感じ大丈夫そうではある。
子供はどこからともなく水筒を取り出し、お茶を注ぎ始める。

782十字路荒野『ジャンクション001』:2020/08/14(金) 00:00:49
>>781

「ああ……いや、俺は自分のがあるからいいよ」

ポケットから『スポーツドリンク』のペットボトルを出して見せる。
涼しい店内だが、それでも水分補給は重要だ。
……外出ると暑いし。

「ごめんごめん、ぐったりしてたから、体調でも悪いのかと思って」
「しかし、『いらっしゃい』って……」

視線を下に。
新聞紙の『工作』の数々。

「…………もしかして、『お店屋さん』かい?」

ああ、そういえばこういうの、俺も小さいころにやったなぁ……なんて。

783ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/08/14(金) 00:11:32
>>782

「なんじゃいらんのか」

そう言って自分でお茶を飲む子供。
入っていた氷をがりがりと噛み砕く。

「そうじゃ。ここは店を並べるところじゃろ?
 涼しむついでにわしも店を開こうと思ったのじゃ。
 何か買ってゆくか?」

そう言うと子供はベンチの横に置いてあったリュックから、どんどん新たな折り紙を繰り出してきた。
ベンチ前に置いてあるのは新聞紙で折った大型のものだが、普通の小さな折り紙もあるらしい。
ただ、それほど複雑な形のものは無いようだ。

784十字路荒野『ジャンクション001』:2020/08/14(金) 00:15:29
>>783

テナント料……と思ったが、口には出さなかった。
子供に言っても仕方ないし、マズければ店員が注意するだろう。
しかし古風な言い回しの子だな。

「おー、色々出てくるな……」
「…………ちなみにこれ、それぞれいくらぐらいなんだい?」

値札のようなものがあるなら、それを確認してみるが。
元手は限りなく0に近かろうに、さてどのくらい『ボって』来るのかな……と、興味本位で。

785ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/08/14(金) 00:26:48
>>784

「む? いくらか?」

折り紙を見ると、使っている紙が折り紙のものではなく、
チラシだったりと材料費は限りなくゼロに近いというか、実際ゼロのようだった。

「そうじゃな。金ではなく交換じゃ。
 おぬしは何か持っておるか?」

金銭のやり取りは発生しないらしい。
お店屋さんごっこだからだろうか。

786十字路荒野『ジャンクション001』:2020/08/14(金) 00:39:47
>>785

「ああ……『物々交換』ってワケね」

なるほど、なるほど。
微笑ましいじゃないか。お店屋さんごっこだ。

さて、自分が何を持っているのか考えてみる。
飲みかけのペットボトル……は流石に論外だし。
それ以外で、子供にとって価値がありそうで、いい感じに価値がなさそうなものとなると……

「うーん……」
「今持ってる物、となると……ああ」


ポケットの中から、個包装の『塩タブレット』を取り出す。
もしもの時のために持ち歩いているものだ。時期的にね。

「これとかどう?」

子供からすれば、ラムネ菓子の親戚みたいなものだろう。

787ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/08/14(金) 00:51:12
>>786

「なんじゃそれは?
 飴か?」

興味深そうに塩タブレットを覗き込む。
一見しただけではわからなかったらしい。
それ以前に塩タブレットという存在を知っているかどうかあやしい。

「それなら小さい折り紙と交換じゃ。
 大きいのも……どうしてもというならよいぞ」

新聞紙で折ったカブトやハリセンも交換できるらしい。
少し惜しそうなのは大きさに差があるからだろうか。

「これとかどうじゃ?
 シュリケンじゃ」

788十字路荒野『ジャンクション001』:2020/08/14(金) 01:01:45
>>787

「これは『塩タブレット』って言って……まぁ、『ラムネ菓子』みたいな?」
「飲み物で言えば『スポーツドリンク』みたいな、体にいいお菓子だよ」

ざっくりとした説明。
甘いお菓子を期待すると、ちょっと裏切られちゃうかもしれないけど。
……極端にまずいってわけでもないし、大丈夫だろう。

「はは、ありがとう」
「……大きいのもどうしてもならいいんだ……」

まぁ、元手ゼロっぽいしな……気分的な問題なのかもしれない。
とはいえ、そんな大きなもの貰っても持ち帰るのに困るし。
言われる通り、小さめのやつで……

「じゃあ、そのシュリケンと交換しようかな」
「しかし器用だね、キミ」

789ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/08/14(金) 01:12:02
>>788

「体に良いラムネ?
 甘い飲み薬みたいじゃな?」

子供用の甘いシロップの風邪薬みたいなのを想像したらしい。

「折り紙はテレビで勉強したのじゃ。
 うむ、ではシュリケンと『交換』じゃ」

十字路は器用さを褒めるが、手裏剣の折り紙はちょっといびつだった。
単に素材となったチラシがそもそも正方形ではなかったのかもしれないが。

790十字路荒野『ジャンクション001』:2020/08/14(金) 01:20:31
>>789

「ありがとう」

お礼を言って、シュリケンを受け取る。代わりに塩タブレットを渡す。
……まぁ、俺が子供のころに作ったシュリケンはもっと出来が悪かったしな。
別に塩タブレットひとつぐらいは惜しくないし、『いい買い物』なんじゃなかろうか。
…………もしも塩タブレットが口に合わなかったら、申し訳ないなぁと思うけど。

「…………ところでキミ、いっつもこういうことしてるのかい?」
「いや、やけに準備がよかったから」

涼むついでに……とは言っていたけど、普通はこんなに『紙工作』を常備したりはしないだろう。
となると、この子は普段からこういう遊びをしているのでは?
だからどーってワケでもないけれど、ちょっとした疑問だった。

791ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/08/14(金) 01:30:19
>>790

「どういたしましてじゃ」

そう言ってさっそく、口に塩タブレットを放り込む子供。

「ん? そうじゃ。
 わしはいつでも何か交換できるものを探しておる。
 そして『わらしべ長者』みたいにビッグになるのじゃ」

いい笑顔でそう言うが、次の瞬間には口をもにゅもにゅさせ、眉根を寄せる。

「なにか……変な味じゃなシオタブレット……
 まあええ。折り紙以外にも何か見てゆくか?」

そう言い、リュックからさらに物を取り出す。
折り紙は品切れなのか、何かのネジやらキーホルダー、パチンコ玉など、
道端で拾いました。って感じのラインナップだ。

792十字路荒野『ジャンクション001』:2020/08/14(金) 01:43:52
>>791

「へー……『わらしべ長者』か……」

好きなのかな、わらしべ長者。
確かに、夢のある話だ。子供ながらに憧れるというのも理解できた。
やっぱ甘くはないよね、塩タブレット……と若干申し訳ない気持ちになりつつ。

「ほんとに色々持ってるね……これ全部キミの『わら』か」
「とはいえ、俺の方は『塩タブレット』以外だともう……」

あとはもうマジで財布ぐらいしかないんじゃないか。
というかその、一個ぐらいなら記念に『買って』もいいんだけど、二個目となるとさ。
率直に言って『ゴミ』だもんそのラインナップ。ちょっともういいかな……

「……そういうワケだから、もう買い物はできないかな。ごめんね」

とはいえ『ゴミはもういらない』なんて言えるわけもなく、大人の対応。

793ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/08/14(金) 01:52:41
>>792

「うむ、そうか。またのゴライテンをお待ちしております」

意味はよくわかっていないが言う定型句なのだろう。
またのご来店も何も、また同じ場所にいる保障が無い。ベンチだし。

「でもこれでシオタブレットが商品に加わったのじゃ。
 長者へ一歩近づいたな」

リュックにネジやら折り紙を仕舞う。

794十字路荒野『ジャンクション001』:2020/08/14(金) 02:01:43
>>793

「今食べたじゃん」

苦笑する。
塩タブレットは食べ物だから、食べたら消滅する。
別に子供のごっこ遊びにそこまで本気でツッコむ気もないけどもさ。

「まぁ、お店の人に怒られないようにね。あんまり物広げると、邪魔になっちゃうから」

特に意味もなさそうな忠告をして、シュリケンをポケットにしまう。
さて、俺もそろそろ本来の目的地である本屋に向かおう……

「それじゃあ、俺は行くよ」
「バイバイ。クーラー効いてるとこにいても、水分補給はこまめにねー」

795ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/08/14(金) 02:13:43
>>794

「それはわしの特技でな……ん? もうゆくのか?」

「うむ、さらばなのじゃ」

子供は十文字を見送り、そのまま再度ベンチに横たわった。
十字路が本屋から出てくる頃には不用心にも寝てしまっている姿を見る事が出来たかもしれない。
時間によっては日が落ちて涼しくなったので去ったあとかもしれないが。

796関 寿々芽『ペイデイ』:2020/09/12(土) 15:56:19

おだんごにした髪に草花のアクセサリーを散りばめ、
苔のような色のエプロンを付けた少女が座っている。

       ジッ ・・・

スカイモール内『食品売り場』付近、
設置されたベンチに、十数分ほど座っている。
手にはスマホ、画面には『ポイントサイト』。

泣き黒子のある目を細め、時折売り場に視線を遣る。
温和な顔立ちに、今日はどこか真剣みが備わっていた。

797三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/09/14(月) 21:51:48
>>796

「寿々芽さん――」

今日は買い物に来ていました。
値段が手頃なお店を見つけたので、それから時々来ています。
清月館からは少し遠いですが、節約のためです。

「――お隣よろしいですか?」

持っているエコバッグの中身は『日用品』です。
さっき買い物を終えてきた所です。
キッチンペーパーがお安いので助かりました。

798関 寿々芽『ペイデイ』:2020/09/15(火) 01:03:46
>>797

掛けられた声に、スマホを見ていた顔を上げた。

「あっ……! どうぞ、どうぞ〜。
 ちょっとだけ詰めますねえ」

      ズイ

「よいしょっ……と」

言葉通り、腰を少しだけずらす。
子供一人が座る余裕は十分空く。

「こんにちはぁ、千草ちゃん。
 今日は……お買い物ですか?
 ふふ、季節の変わり目になりましたし、
 買う物が沢山で大忙しですよね〜」

エコバッグに視線をやる。中身はわからないが。

「急に涼しくなって……嬉しいけれど、びっくりですよう」

以前会ったのは、まだ本格的な猛暑が到来する前だ。
半ば季節越しの喜ばしい再会に、温和な笑みを浮かべる。

799三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/09/15(火) 01:37:40
>>798

「失礼します」

      ペコッ

頭を下げて、寿々芽さんの隣に座ります。
前にお会いした時を思い出しました。
山菜取りをしてらっしゃったと思います。
それから『寮』の事を話して……。
あっ、エコバッグは足元に置いておきましょう。

「はい。『台所用品』などを色々と……」

言いながら、エコバッグを少し開きます。
ラップやアルミホイル、
食品用ポリ袋などが見えるかと思います。
あまり季節とは関係ありませんけど。

「それから『保存容器』を買いました」

       ゴソ

エコバッグから、保存容器を取り出します。
琺瑯の白い容器です。
電子レンジはダメですが、直火で温められるのが便利です。

「はい、夜は肌寒いくらいで……。ビックリしました」

「寿々芽さんもお買い物の途中ですか?」

さっき見えた『真剣な表情』が、少しだけ気になりました。
『食品』がお安いのでしょうか?
千草も節約しているので、ちょっと興味があります。

800関 寿々芽『ペイデイ』:2020/09/15(火) 02:13:23
>>799

「まあっ、どれもここだとお買い得な物ですね!
 それに自炊するならよく使う物ばっかり……
 う〜ん。千草ちゃんは買い物上手なんですねえ」

          ニコ 

「この保存容器、便利そうですね」

笑みをエコバッグの中に向ける。
買い置きしておきたい物ばかりで、
市街地の店より安く買えるのも確かだ。

「はぁい、私も買い物中なんですよう。
 冷えてきたので、暖かいものを作ろうかと……」

「それで……今、その、タイムセールを待ってるんですよ」

          チラ

「だいたいいつも、もうすぐ割引シールを貼るんです〜」

腕時計を一瞥した後、食品売り場の方へ視線を向けた。
今のところそのような動きはないが……『待つ価値』がある。

801三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/09/15(火) 02:37:17
>>800

「あっ、そうなんですか。
 お安く買えると嬉しいですよね」

    ニコッ

自炊をしていると、『値引きシール』は馴染み深いです。
でも、時間までは把握していませんでした。
まだまだ勉強不足です。

「でも、つい予定にないものまで買ってしまう事もあって……」

「それは気を付けたいです」

         チラ

寿々芽さんにつられて、食品売り場の方を見てみます。
本当は食品売り場に寄る予定はありませんでした。
でも、このまま立ち去るのは惜しい気がします……。

「あの……一緒に待っていてもいいでしょうか?」

千草はベジタリアンです。
なので、見る範囲は広くありません。
だから、同じ商品に手を伸ばす事は――
『多分ない』と思います。

802関 寿々芽『ペイデイ』:2020/09/15(火) 02:50:09
>>801

「倹約はこういう小さな事からですよねえ。
 大切な時にしっかり使うために、
 引き締めるところで引き締めないと〜」

「それに……うふふ。
 ここのお惣菜は、とっても美味しいですしねえ」

安かろう悪かろうではいけない。
倹約そのものが目的ではないのだから。
コスト・パフォーマンスを見極めてこその『倹約家』だ。

「ええ、もちろん構いませんよう!
 一人で待ってるのは、ヒマでしたし……」

         ゴソ

スマホをエプロンのポケットにしまう。
ポイントアプリも、悪い時間の使い方ではないにせよ。

「ちなみに……今夜のメニューは、何の予定ですか〜?」

「ふふ、売ってるお惣菜次第かもしれませんけど……
 洋食の気分とか、和食の気分とか、ありますよねえ」

803三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/09/15(火) 03:23:19
>>802

「ありがとうございます」

       ニコッ

「寿々芽さんとお話するのも楽しいですから……」

節約しようとすると、
何でも安ければいいと思ってしまいがちです。
『国産』と『輸入物』があると、
つい『輸入物』に手を伸ばしてしまいます。
『国産』は品質は良いですけど、値段が張りますから。

安さだけを追いかけてはいけないと、
改めて気付かされたような気がしました。
寿々芽さんの考え方は、とても勉強になります。
もちろん、『輸入物』が良くないという訳ではないですけど。

「事故や病気で、急にお金が必要になる事もありますし……」

「備えておくためにも、節約は大切だと思います」

「大きな怪我をして病院に行けなかったら恐いですから」

人間は、いつ死ぬか分かりません。
『死なないための備え』は、
とてもとても大事な事だと思います。
もちろん『いつか』は死にますけど、
『酷い死に方をしないようにする』事は出来ます。

「あっ、今日はまだ決まってないです」

「ですけど……」

「千草は『マカロニサラダ』が好きなので……」

「もしあったら、とても嬉しいです」

「寿々芽さんはメニューを決めていらっしゃるんですか?」

804関 寿々芽『ペイデイ』:2020/09/15(火) 21:00:51
>>803

「まあっ! 千草ちゃんはお上手ですねえ。
 お世辞でも嬉しいです……ふふ。
 せっかくですし、たくさんお話ししましょう〜」

笑みには笑みを、
好意には好意を返す。
打算ではなく、自然な話だ。

「ええ。世の中、いつ何があるか分かりませんから……
 蓄えがあれば、何かあってもしばらくは安心ですよう」

三枝の秘める『サガ』は関は知らない事だ。
が、それでも同意するに十分な意見だった。
怪我の例えが多いのは、身内に何かあったのだろうか?
思いはするが……それこそ軽々しく触れるべきでもない。

「あぁ〜マカロニサラダですか!
 いいですねえ。おかずにもなって……
 そういうのが一品あると、食卓が彩られますね」

「私は、ええと、そうですねえ……」

           スゥ

手を口元に添え、やや俯いて思案する。

「『ハンバーグ』のレトルトが期限が近いので、
 それの付け合わせになるような物を作りましょうか。
 まあ、お惣菜にそれっぽいのがあったらそれでも……」

「ふふ、一品くらいは手作りにしたいんですけどね〜」

話しているうちに視界の端に入る、他の客が増えてくる。
主婦や主夫、仕事帰りらしき者……セールに集まって来たのかもしれない。

805三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/09/15(火) 22:32:07
>>804

「ハンバーグに添えるものというと……
 『フライドポテト』などでしょうか?
 『ポテトサラダ』もいいかもしれません」

「レトルト食品や缶詰は便利ですけど、賞味期限が長いと、
 かえって期限を忘れがちになってしまいますね。
 気を付けておきたいです」

「お腹を壊して倒れてしまう事もあるかもしれませんし……」

『ローリングストック』というのがあるそうです。
非常食が期限切れになるのを防ぐために、
非常食を定期的に消費して、
減った分を買い足しておくという方法だそうです。
非常食ではないですが、
普段から期限をチェックしておく事は大事だと思います。
もしかすると、お腹を壊して倒れて死ぬかもしれません。
それは嫌です。

「寿々芽さんはお料理がお上手なんですよね」

「寿々芽さんの作るお料理、いつか食べてみたいです」

         チラ

話しながら、売り場の方も見ています。
何だか人が多くなってきたようです。
やはり、皆さん『値引き待ち』なのでしょうか?
そろそろ千草達も行った方がいいのかもしれません。
『マカロニサラダ』がなくなってしまいます。

806関 寿々芽『ペイデイ』:2020/09/15(火) 22:59:09
>>805

「そうですねえ。
 お芋だと『マッシュポテト』とか、
 『こふきいも』なんかも素敵です〜」

「ただ……ハンバーグも茶色いですから、
 彩りを考えると『ポテトサラダ』ですかねえ。
 きゅうりやニンジンをたくさん入れて……」

メニューを思い浮かべ笑みを浮かべつつ、
三枝の続く言葉には大きく頷いた。

「期限切れはもったいないですからねえ。
 どんなに安く買っても、
 使わなかったら丸々損してますから……」

その裏に、『死』までは考えていない。
賞味期限切れくらいなら熱せば問題は無い。
すすんでそんなものを食べたくはないし、
食卓にあげる気も無いが、知恵として知っている。
もちろん期限内に使うのが一番いいのは前提だ。

「ふふ……今度時間がある時にでも、
 千草ちゃんのお部屋で作ってあげましょうか〜?」

「……あら、そろそろ『時間』が来そうですねえ。
 千草ちゃん、シールが貼られたら後は競争ですよう。
 もちろん、押し合ったりするのは良くないですけど」

視線の先には売り場を巡回する店員が捉えられている。
席を立ち、足を向ける先はもちろん食品売り場だ…………

807三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2020/09/15(火) 23:27:54
>>806

「えっ、いいんですか?」

「じゃあ、いつか……」

      ニコッ

「――楽しみにしています」

いつ誰かが来てもいいように、掃除は毎日しています。
ただ、調理用具はそんなに充実はしていません。
でも、本当に料理が上手な方は、
道具がなくても美味しいものが作れるのかもしれませんけど。

「そうですね。じゃあ、行きましょう」

「千草も負けないように頑張ります」

        スタ スタ スタ

「――――『マカロニサラダ』は譲れませんから」

ほんの少し真剣な表情で売り場に向かいます。
もし『マカロニサラダ』がなかったら、
『ポテトサラダ』にしておきましょうか。
あっ、でも寿々芽さんとブッキングが……。
ハンバーグには付け合せが必要ですし……。
……その時は『レンコンサラダ』で妥協しましょう。

808関 寿々芽『ペイデイ』:2020/09/15(火) 23:36:30
>>207

「ふふ、時間がある時なら喜んで。
 私も、『いつか』を楽しみにしてますよう」

        スタスタ

「ええ……それじゃあ、行きましょう〜」

そうして、タイムセールの売り場へ歩いていく。

……『ペイデイ』に、本来『買い物』は要らない。
だが、それは十分な資金の無い今は『もったいない』し、
仮に資金が集まっても……買い物は、楽しくもある。

いつか千草に料理を振る舞うとしても、
その材料はこの手と目で選ぶだろう……そんな気がする。

809関 寿々芽『ペイデイ』:2020/10/13(火) 04:04:12

モール内の『激安店』――
雑多な品揃えと値段だけが売りの店に、
エプロンを付けたお団子頭の少女が滞在している。

「…………」

      スッスッ

滞在。
それなりに長い時間、この店にいるのだ。

商品を見て回りながら、時折スマホに何かを入力する。
買い物カゴにも数点は入っているが……精算の様子は無い。

810三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/10/13(火) 19:50:12
>>809

「シャケ弁当と、お惣菜ももう少し買っていきたいねぇ
 ・・・・ん? あれはこの前の・・・・?」

立ち止まる関から少し離れた場所、総菜売り場にて
会社帰り風の様相を漂わせるスーツ姿の男が一人いた
男のカゴには『弁当』にサラダ、揚げ物などの惣菜類が入っている

「関さん・・・だったよね? こんな所でまた会うなんて奇遇だねぇ」

とことこと近づき、話かけた
関の目の前には壮年の男性がにこにことした微笑みを浮かべながら立っている

811関 寿々芽『ペイデイ』:2020/10/13(火) 22:03:10
>>810

「まあっ、三刀屋さん!
 こんにちは、この間ぶりですねえ。
 ふふ……ここ、よく来るんですよう」

     スッ

スマホをポケットにしまい、
三刀屋に笑みを向けて小さく頭を下げる。

「お夕飯のお買い物ですか?
 ここのは安くてボリュームがありますよね〜」

            チラ

「タイムセールはもうちょっと先ですけれど……」

腕時計に少しだけ視線を落とし、
売り場の様子に視線をゆっくりと回す。
目的は変わる事になりそうだが、知人と話すのは好きだ。

812三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/10/13(火) 22:24:18
>>811

 「や、お久しぶり 堤防の時以来だね」

気安い口調で話しかける
関の視線に釣られて売り場に目を移すが、安売りのシールはまだ張られていない

「僕の方は夕飯の買い出しに来たんだけどね
 関さんもやっぱり、夕飯の食材を買いに来たのかな?」

ちらりと買い物カゴに視線を向ける
じろじろと見るつもりはないが、どんな夕飯を作るんだろう、と好奇心からだ

813関 寿々芽『ペイデイ』:2020/10/13(火) 23:08:44
>>812

「ふふ、あの時はちょっと心配しましたよう。
 大事な原稿を持って水場にいたんだから……」

      ニコ

「でも、おかげさまで大きな魚が釣れて……
 あの時は、家族みんながとっても喜んでくれました」

あの原稿の『顛末』は勿論知らない。
それに付随して起こった『変化』も。

「ええ、そうですね〜。
 私の方も、晩ご飯を買いに……」

細かい嘘だ。
が、事実無根というわけでもない。

「今夜はですね、『シチュー』を作ろうと思うんです。
 『クリームシチュー』……冬も近づいて来ましたしねえ」

籠の中にはたしかに、シチューのルーが入っている。
価格調査の傍ら、『夕飯の買い物もしている』のは事実だった。

814三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/10/13(火) 23:38:56
>>813

「あ!? あぁ〜〜、あれね・・・・そうかぁ、そういえば君に会ったのはあの時だったね」

何か、痛いところを突かれたように表情が強張る
斜め上の方を見て視線がズレる

「あー・・・・、あの後なんだけどね、ちょっとしたうっかりミスが起きて・・・・
 すったもんだの挙句に『原稿』は水落ちしちゃったんだよねぇ
 ま、でも、色々あったけど最後には良い感じに着地出来たから結果オーライなんだけどね」

うんうんと頷く

「『シチュー』かぁ・・・・冬になると温かいものが欲しくなるよねぇ
 人参とかジャガイモとか入れてさあ できたシチューをごはんによそって食べるんだ
 残念ながら僕はあまり料理しないから滅多に作らないんだけどね」

「関さんの家では、関さんが料理を作ってるのかい?」

815関 寿々芽『ペイデイ』:2020/10/14(水) 00:09:38
>>814

「え、ええっ……………!?
 原稿が水に……そ、そうなんですねえ〜。
 そのう、無事に落着したなら良かったです」

一大事に思わず絶句するが、
三刀屋の仕事を関は全ては知らない。
上手くいったのなら、それで良いのだろうし、
そこを上手く行かせるのが真髄なのかもしれない。
少なくとも糾弾するような筋合いはない。

「ふふ、大きな野菜をたくさん入れて……
 ご飯にかけるのも素敵ですよねえ。
 邪道だっていう人もいるみたいですけど、
 うちにはそうして食べる人も多いです」

食卓を想像し、思わず笑みを浮かべる。

「あぁ、そうですね〜。
 毎食全員分っていうわけではないんですけど、
 私、そういう家事とかするのが好きなので……
 みんな喜んでくれますから、やり甲斐がありますよう」

「ふふ……まあでも、お惣菜も買うんですけどねえ」

大切な家族だ。例え血は繋がっていなくても。
誰に頼まれなくても、寿々芽は家族を慈しんでいる。

「三刀屋さんは、自炊はあまりされないんですか?」

そして三刀屋の買い物カゴの中を見ながら、問い返す。

816三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/10/14(水) 00:25:36
>>815
「ハハハ・・・・休日ならそれなりにちゃんとしたものを作るんだけど
 仕事がある日はどうしてもねぇ」

カゴの中の物をひょいと持ち上げて見せる
『弁当』に『煮物』、『サラダ』、どれも出来合いのものだ

「やっぱり、関さんは偉いねぇ
 僕なんて自分の食べ物を作るにも難渋してるのに、みんなの分も作るなんて
 ところで・・・・」

なんか・・・・ちょっとひっかかる『語句』だなぁ、と三刀屋は思った
最初は『大家族』を支えるしっかり者の長女のようなイメージを抱いていたのだが・・・


  うちにはそうして食べる人も多いです


  毎食全員分っていうわけではないんですけど


何か・・・・妙な違和感を感じる
想像するよりも、ずっと、ずっと人数が多いような・・・・そんな違和感を
普通の人間であれば、何か複雑な事情を察してそれとなく話を逸らすだろうが
三刀屋に『デリカシー』というものはあんまりなかった

「随分と大所帯で暮らしてるみたいだね、お家は何かやってるのかな」

817関 寿々芽『ペイデイ』:2020/10/14(水) 22:59:08
>>816

「あっ……いえ、その、自炊した方がいいとか、
 自炊しなきゃダメとかは思ってませんよう。
 特に、三刀屋さんはお仕事もされてるんですし」

「それに、お惣菜で済ませた方が、
 安上がりな事もありますしねえ……」

自炊をしないことを責めてしまった、
と感じたのか、どこか弁解めいた口調で話す。
そして、続く三刀屋の『質問』には――

「ああ、そうですねえ〜。
 じつは……『大家族』なんですよ、うち。
 ふふ、何を隠そう私が『長女』でして……」

ごくごく慣れた答えだ。

「……そういう三刀屋さんは、今お一人暮らしなんです?」

そして、笑顔のまま話題を三刀屋の方に持っていく。

818三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/10/14(水) 23:39:59
>>817

「・・・・・・ ・・・・・ なるほど
 やっぱり、大家族の子は下の子の面倒もみないといけないから大変だねぇ
 うちは一人っ子だったからなぁ」

何か誤魔化されてしまった気もする
だが、そこまで深く追求したいわけでもないので話を逸らす事とした

「僕はまあ勝手気ままな一人暮らしさ
 勤め先がこの町にあってね・・・・」

「聞いた事あるかな? 『民星書房』っていう出版社なんだけどね
 マイナーな漫画雑誌を売ってる小さな会社さ」

819関 寿々芽『ペイデイ』:2020/10/15(木) 00:15:21
>>818

「…………そうですねぇ。
 面倒を見ろと言われるわけじゃないんですけど、
 なんていうか……どうしても、ほうってはおけませんから」

どうやら上手く誤魔化せたようだ。
あるいは『誤魔化されてくれた』のか。
余程でなければ、知られたくは無かった。

「勤め先……ああっ。
 あの時の原稿はそういう!
 本を世に出すなんて、素敵なお仕事ですねえ」

『原稿』というワードから想像はついたが、
ハッキリ聞いたのは初めてだったように思う。
嘘偽りなく、尊敬できる仕事をしている。

「『民星書房』……漫画雑誌ですかあ。
 ううん、ごめんなさあい。
 私、あんまり漫画は読まなくって……
 会社の名前は、聴いた気がするんですけど」

「ちなみに、どんな漫画が有名だったりするんですか?
 もしかしたら、家族が読んでたりする……かもしれませんので」

820三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/10/15(木) 00:43:41
>>819

「そうだなぁ・・・・」

そう呟きながら、脳内で自社のコンテンツについて検索をかける
単行本となったもの、Web連載を続けているもの、いくつかあるが・・・・

(関さんが『長女』だとすれば兄弟の子達はもっと若いはずだよねぇ
 中学生から小学生に受ける漫画・・・・ 少年漫画系・・・・あるいは・・・・)

『能力バトル物』 『不条理ギャグ』 『ファンタジー』 などなど
脳内を駆け巡るいくつかの候補から、一つの名前を取り出す

「そうだねぇ・・・『こざるのマーモ』ってタイトルは聞いた事あるかな?
 ピグミーマーモセットと飼い主の交流を描いた漫画なんだけどね
 ネットで公開してるからきっと、読みやすいはずだよ」

年少の子供が家族で読める漫画・・・・
『民星書房』のようなマイナー出版社の雑誌など、よっぽど漫画が好きでないと読まないだろう
しかし、Web連載しているこのタイトルなら・・・・と、三刀屋はそう思った


    ペチャ   ペチャ  

さて、そう話していると遠くの総菜売り場の方で
店員が『半額シール』を張り始めた

「おっと・・・・もうこんな時間か」
「ごめんよ、関さん、そろそろ行かないといけないみたいだ
 また、会う時があったら、今度はゆっくりとお話したいところだね」

そう言うと買い物カゴを抱えてすたすたと歩いていく

「それじゃあ 縁があればまた」

男は軽く手を振り、この場から歩き去っていった

821関 寿々芽『ペイデイ』:2020/10/15(木) 00:59:08
>>820

「『こざるのマーモ』……
 あぁ〜そうですねえ、聞いたことはあるような……!
 ネットで公開されてるなら、一度読んでみますよう」

            ニコ〜

「動物のお話って、結構好きですし」

初めて聞いたが、『読んでみる』のは事実だ。
無料で読めるWeb漫画は時々手を出すこともある。

と、歓談の内に――――

「まあっ! もうこんな時間……!
 そうですねえ、私も何か買って帰りたいですし、
 今日のおしゃべりはこの辺りにしておきましょう〜」

『本番』が始まったようだ。
関としても安売り総菜などは確保しておきたい。

「それじゃあ三刀屋さん、またどこかでお会いしましょうねえ」

三刀屋とは別の売り場へ、手を振り返して歩き去っていった・・・

822ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/10/15(木) 19:52:37

気温が下がり、人の少なくなった展望台に女がいた。
古代ギリシャ風の装束を身に纏い、足元はサンダル。
白・青・紫の三色で彩られた頭髪を、
ポンパドールに固めている。

        ヒュォォォォォ…………

最も特徴的なのは、背中に生えた『翼』だ。
それ以外にも、両腕は『羽毛』で覆われ、
踵には『蹴爪』が備わっている。
一言で表現するなら、『鳥人』のような姿だった。

           「♪」

      クルックー
              クルックー

           「♪」

        カァー
              カァー

           「♪」

女が『鳥のような声』を発する。
両肩には、『ハト』と『カラス』が一羽ずつ留まっていた。
女の声に合わせて、二羽の鳥も鳴き声を上げており、
まるで『会話』しているかのような光景だ。

823ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/10/16(金) 15:49:31
>>822

それから数分後、『三羽』の鳥が飛び立っていった。

824ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/12(木) 21:57:52

「シール〜」

地面に毛布を敷いて、道路の隅に座り込む金髪の子供がいた。
ブカブカの服を着ており、傍らには大きいリュックがある。

「シールはいらんかね〜」

言う通り、毛布の上にはシールが並んでいた。

825ダイアナ『オンリー・ガール』:2020/11/14(土) 21:07:45
>>824

「あ、またいたわ」

            タッ タッ タッ

どこかで見た幼稚園児が近寄ってきた。
前と同じような制服姿。
大きなテディベアを抱えているのも同じだ。

「『石』の次は何?『シール』売ってるの?」

何の気なしに、並べられたシールを眺める。
それから、『この前の事』を思い出した。
『ブラックリスト』の『三人目(スタンド使い)』の事だ。

「ねえ、ちょっと前にとんでもない目に遭わされたのよ」

「いきなり変な女に襲われて、上から大きな岩を落とされたの。
 わたしは避けたけど、あれは絶対に殺す気だったわ!」

聞かれてもいないのに、勝手に自分の体験談を話し始める。
ちなみに、実際は避けてもいない。
最初から狙いを外されていただけなのだが、
ダイアナはそうは思わない。

826ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/14(土) 22:37:49
>>825

「ん、おお。
 そうなんじゃ。シールいるかの?」


前に見た顔だ……小さく一礼した。
毛布……店頭にはキャラクターもののシールがいくらか並んでいる。
おそらく、興味ない者が捨てて行った菓子パンのおまけだ。
それからこれまた食品などについているポイントシール。
集めて応募すると何かもらえたりするやつだ。


「なんじゃと?
 物騒じゃな……。
 怪我はないかの? バンソウコーいるか?
 変な女とはどんなやつなんじゃ?」


唐突な話題だがそう言われれば普通に心配もするし、
自分も用心しておこうと考える。

827ダイアナ『オンリー・ガール』:2020/11/14(土) 22:54:08
>>826

「よく分からないけど、変な格好してた。
 あんまり見かけない感じの。
 見るからに怪しいやつだったわ。
 そういう怪しいやつには気をつけないと」

「服もどろんこにされてサイアク!
 しかも笑ってたし!あの性悪女!
 もし見つけたら絶対やっつけてやるわ!」

「あ、バンソーコーはいらない。
 ケガしてないから。
 自分がケガした時に使いなさいよ。
 あなた、ボケーッとしてそうだし」

一気に話し終えて一息つく。
愚痴やら何やら吐き出してスッキリした気分だ。
出し抜けに、菓子パン付属のシールを手に取った。

「――で、売れてるの?」

またもや唐突な話題転換だった。
幼児特有の傾向だ。
しかし、相手もまた子供なのであった。

828ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/14(土) 23:08:15
>>827

「ふうむ?」


具体性の無い発言に首をかしげる。
どんな外見だったのかまるでイメージが湧いてこない。
岩にも覚えがなかった。
知っている人物だとしても、その人の全てを知っているわけではないのだから仕方ない。


「岩? 泥?
 まあ、怪我せんでよかったのう。
 バンソウコーはいくらでも出せるから必要なら言うんじゃよ。
 いくらでもと言ってもタネは必要じゃが」


ダイアナがシールを手に取ると、有名ゲームの可愛らしいモンスターが印刷されていた。
他にも並んでいるのは一応知名度が高いキャラクターが多い。
そうでなくてはそもそもシールにならないだろうから、当たり前だが。


「売れておらんなぁ」


金髪の子供は袖を余らせながら腕組みして言った。
いつもの事なのか、平然としている。

829ダイアナ『オンリー・ガール』:2020/11/14(土) 23:30:33
>>828

「フーン、売れてないんだ」

やっぱりという感じだった。
正直、ほんのちょっとだけ惹かれるものはあるが……。
でも、そこまで欲しいという訳でもなし。

「じゃあ、なにか売れる方法でも考えたら?」

       トスッ

『座る動作』をすると、『半透明の椅子』が現れた。
『自分専用の椅子』。
そこに腰を下ろし、悠然と足を組む。

「――もっと注目を集めるとか」

            ヒソヒソ
                   ヒソヒソ

遠くの方で、数人が内緒話をしている。
奇妙な『半透明の椅子』が、密かに注目を集めたようだ。
当の本人は、全く気付いていなかった。

830ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/14(土) 23:46:24
>>829

「色々売るものを変えたりしておるんじゃがな……
 この間の石もそうじゃが、夏はトンボとかバッタとかも売っておったんじゃが……」


ラインナップが基本、採取したか拾ったものなのである。
そもそも価値があるものは仕入れが無理なのだ。
条件が、この子供でも手に入るものなのだから仕方ない。


「注目?
 そう言われてものう。
 わしはお嬢ちゃんらのように守護霊とか妖怪が憑いとるわけでもないし……」


目の前の空気椅子を見ながら答える。
自分がスタンド使いという人々の一種らしいというのはなんとなく理解しつつあるが、
守護霊……つまりヴィジョンが無いことも事実で、直接的な干渉力を持たないのだ。

とはいえ、売れないのはママゴトとしか見られていないことも原因だろう。
ママゴトと思われてるから存在を許されているとも言えるが。

831ダイアナ『オンリー・ガール』:2020/11/15(日) 00:05:49
>>830

「まぁ、ムリよね。何となく分かるわ」

シールを見下ろして、素直な感想をこぼす。
お店屋さんごっこなら上等だが、
お店として成立するような商品とは思えない。
ダイアナはお店屋さんごっこなどしないのだ。
そういうのを見ると『コドモ』だと思う。
そうする事によって、
自分自身を一段階上げているというのもあるが。

「でも、この間の石は結構キレイだったけど。
 今、部屋に飾ってあるから」

批判だけでなく、フォローも忘れない。
それこそ建設的というものだ。
実際、綺麗だと思っているのは本当だった。

「フーン…………」

「あ、そうだ。いい事考えた。とってもいいアイディア。
 もしかしたら、お客が沢山増えるかも」

         フフン

「――聞きたい?」

得意気な顔をしながら、上から目線で勿体ぶる。
椅子の上にいる分、高度的に上なのは確かだ。
もっとも、『精神的な高度』は大して差はないだろう。

832ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/15(日) 00:17:23
>>831

「そうじゃろ?
 でも石もお嬢ちゃん以外には全然売れんでの」


眉根を寄せる。
そもそも物々交換という縛りがあるのだ。
逆に価値ある物ばかり置いてあっても、金銭で買えないのは不審だろう。


「な、なんじゃ?
 アイディア料が必要か?」


下から覗き込むように期待した目で見る。

833ダイアナ『オンリー・ガール』:2020/11/15(日) 00:37:45
>>832

「それはね、わたしが『違いの分かるオンナ』だからよ。
 わたしの美的センスは人の何倍も先を行ってるから」

自慢げに言って、偉そうに胸を張る。
ダイアナとしては、
自分の感性には大きな自信を持っていた。
だからこそ『人が気付かない良さに気付いた』という解釈だ。

「フフン、すっごいアイディアよ。
 ホントにビックリしちゃうくらい。
 今までにないような発想よ」

「わたしが『宣伝』してあげる。
 これから会う人達にね。
 そうしたら、もっともっとお客が増えるでしょ?
 フフ!わたしってかしこい!」

散々もったいつけた割には、
そこまで革新的なものではなかった。
ただ、ダイアナにとっては斬新だったのだ。
何しろ『五歳』なのだから。

「『アイディア料』は、そのシールでいいわ」

          スッ

先ほど手に取っていたシールを指差す。
何だかんだで気になっていたらしい。
謝礼を出すに値するような案かどうかは相手次第だ。

834ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/15(日) 00:52:50
>>833

「ということはわしも……?」


自分が良いと思った石=ダイアナの目にかなった石
→自分の美的センスはダイアナと同じく常人の何倍も先を行くものである。
どうだろうかこの方程式は。


「ん? しかし同じくらいの方が良いのか?」


別にこちらとしては美的センスに磨きをかけたいわけではない。
そういう意味では大衆に合わせた方が良いのだ。


「ふむ? なるほど?
 ……うーむ、まあ、それなら頼もうかのう」


それはともかく、アイディアについてだ。
先ほど自分にはスタンドヴィジョンが無いので注目を集めるのは難しいと言ったが、
だったらヴィジョンを持つダイアナの方が宣伝には向いている。のか?
よくわからなかったが、どうせ売れていないのだし、頼んでみることにした。
シールを手渡す。

835ダイアナ『オンリー・ガール』:2020/11/15(日) 13:22:50
>>834

「あなたもそこそこイイ線いってるんじゃない?
 まぁ、わたし程じゃないけどね」

もしかすると、センスは似ているのかもしれない。
少なくとも、年齢に関しては同じようなものだ。
『子供らしさ』と言い換える事も出来るだろうか。

「わたしと同じレベルの子はなかなかいないから。
 でも、褒めてあげる」

「人間って、出来すぎてると、
 かえって理解されない事もあるわ。
 『わたし達』みたいにね」

        フフン

「お客をジャンジャン呼んであげる。
 わたしは顔が広いから。
 商品をいっぱい用意しときなさいよ」

受け取ったシールを胸ポケットに入れる。
『オンリー・ガール』は実体化しているので、
一般人にも見える。
そういう意味では、
確かに注目を集めるには向いているだろう。

「早速いってくるわ。あなたも頑張りなさい」

                 タッ タッ タッ

「また何か相談に乗ってあげてもいいわよ〜!」

『椅子』から立ち上がり、歩いていく。
その途中で振り返り、手を振った。
センスのせいか、何か気に入られたようだ。

836ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/15(日) 23:18:48
>>835

話を聞いていると、人の先を行くと何も良い事は無い気がしてきた。


「うむ、まあ、頼んだぞ」


彼女にはなんだか敵が多いようだが、友好的に客寄せが出来るのだろうか。
そう思いながら去っていく幼稚園児を見送ったのだった。


「大丈夫かのう……」

837御影憂『ナハトワハト』:2020/11/18(水) 23:21:18

フードコート内のレストラン。
隅っこの席に女が一人で座っていた。
いわゆる『お一人様』というやつだ。
白いワンピースを着た髪の長い女。
前髪の隙間から片目だけが覗いている。

   スッ……

        ドバドバドバドバドバ

ゆっくりと腕を伸ばし、
テーブルに置かれていた『タバスコ』を持ち上げた。
さっき来たばかりのカルボナーラに、
瓶の中身を勢いよく掛けている。
中身を半分ほど使いきり、ようやく瓶を置いた。

     コトッ
           ズズ……

一口食べて、首を傾げる。
そして、またタバスコの瓶を手に取り、中身を掛け始めた。
店内には団体の客が多い。
お昼時という事もあって、ほぼ満席の状態だ。
『女の向かいの席』を除いては。

838??『???』:2020/11/18(水) 23:33:35
>>837

「あ、あの お客様」

異様な空気が、その女性(御影)の周囲に立ち込めているのを
敏感に感じとったらしい店員が、おずおずと言った調子で声を掛ける。

「よ、宜しければ相席の形をとっても宜しいでしょうか?
何しろ、この通り周りが満席なものでして」

貴方の恐ろし気な雰囲気に当たったのか、青白い表情で尋ねる。

839御影憂『ナハトワハト』:2020/11/18(水) 23:42:22
>>838

    ズズ……

女は無言で『カルボナーラ』を食べている。
だが、それが何なのか想像する事は難しい。
既に全体が真っ赤に染まっており、
もはや原型を留めていないからだ。
その『真っ赤なカルボナーラ』を、女は平然と口に運んでいる。
やや間があって、女がフォークを置いた。

         「…………『タバスコ』」

          ボソッ

  「『タバスコ』…………下さい」

相席についての返答はなかった。
だが、『拒否』もしていない。
案内したとしても、文句は言われまい。

840芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2020/11/19(木) 00:00:37
>>839

「――ウィゴーちゃん 君の瞳は全宇宙一の宝石だ」

『黙れ』

「いやぁー、今日もウィゴーちゃんの毒舌は限りなく最高だなぁ―――zノアアッ!
俺の下半身が、いきり勃つぜっっ゛。
 あ、そこの姉ちゃん。ほい、オーダーしたタバスコ。
つか、そんだけ掛けるならハバネロでも丸かじりした方がうめぇんじゃね??
まぁ俺とウィゴーちゃんの睦時を見せつけられたら、辛さも中和しちまうかも
知れねぇがなっ!!! WRYyyyyyyyyyyyッッ!!!!」

『本当黙れ』

変な男が、スタンドと共に目の前に堂々と座って来た。
貴方の恐ろしいまでのカルボナーラのタバスコや雰囲気にも全く
気にしない感じで男は何故か理由は不明だが自身のスタンドに愛を囁いてる。

スタンドは簡潔にクタバレと返してる。

『あんまり刺激物をとりすぎると、後でトイレに行く時に苦しくなりますし。
今なら、私の力で引き返す事も可能ですが……』

「おいおい、ウィゴーちゃあああぁあん。見ず知らずの女性の事なんて
気に掛けないで、俺だけを見てくれ! そうっ!! お・れ・だ・け・をっ!!」

『話しかけないでくれます? あ、自分はこのプリンアラモードね
それといい加減に学習しろよ!
 ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト!!!』

841御影憂『ナハトワハト』:2020/11/19(木) 00:15:37
>>840

     ズズ……

女は意に介した様子もなく、淡々と食事を続けている。
スタンドの言葉にも反応しないため、
『見えているかどうか』も定かではない。
対照的に、周囲の客は戦々恐々としていた。

     ヒソヒソ
             ヒソヒソ
                     ヒソヒソ

気付かないフリをしながら、
誰も彼もが関わらないようにしている。
おかしな人間が二人もいるのだから、それは当然の事だ。
店側は、さぞ迷惑している事だろう。

         ズズ……

女の食事は続く。
目の前の狂ったやり取りなど見えていないかのようだ。
髪で顔が隠れているため、表情も読み取れない。

(何…………こいつ…………)

(頭…………おかしい…………)

(関わりたく…………ない…………)

御影憂は『感情が表に出ないタイプ』だ。

842芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2020/11/19(木) 00:30:23
>>841

「すげぇだんまりだな、姉ちゃん。
あぁ! 俺とウィゴーちゃんのアツアツっぷりに閉口過ぎるのも無理ないよなぁ」

『そもそも見えてないのでは……?
いや、私が人間だとして。貴方と初対面で、こう言う店で遭遇したとしたら
絶対に話しかけないですし、近寄らないですし、半径50m範囲の視界に
入らないようにして欲しいと思うのは当然の反応かと。
あと、マイネームイズ・ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』

「――そんなツレナイ天使が、俺は堪らなく愛おしい」

『おめぇの脳味噌どうなってんだよ』

「ウィゴーちゃんの全てを何時も妄想してるぜぇぇええ!!」

『……(ドン引き顔)』

狂った光景は尚も続く。気色悪い様子で隣のスタンドに話しかけてた男は
突如何かのスイッチが入ったのか真顔になりつつ呟いた。

「……そういや、あの時の『幽霊騒ぎの工場』ってよ。
あれ以来、何にもないんだが。まだ、ちょっと俺引っかかる事あんだよな」

『なに突然』

プリンアラモードをスプーンで掬いつつ、呆れ声のスタンドに構わず
頭を掻いてフケが落ちつつ男は天井に目を向け話続ける。

「いやよ。あそこの工場の隣に位置する病院の院長も居なくなったろ?
ついでにミイラ死体も、結局未解決だしさ。
アレってよ……結局、なんか繋がりあったのかなーってさ。ウィゴーちゃん」

『……うぅん…………状況だけ見ると全くの無関係に思えますが。
確かに発生したタイミングが少し気にはなりますよね。
あと、ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトです』

何やら気になる会話をスタンド、変人な男がやりとりしている……。

843御影憂『ナハトワハト』:2020/11/19(木) 00:47:14
>>842

    ズズ……

女は全くの無反応。
当たり前といえば当たり前だ。
目の前に、『ドラッグジャンキーみたいな男』が座ったとして、
会話したいと思うだろうか?
御影憂は思わなかった。
そして、他の客も、
『Jホラーみたいな女』と会話したいとは思わないだろう。


(ミイラ死体…………)

        ズズ……

(こいつもスタンド使いだし…………それ関連か…………)

        ズズ……

(こいつ…………そういう話に詳しいのかも…………)

        ズズ……

(後で伝えた方がいいかな…………)

        ズズ……

                (…………『彼』に)

何食わぬ顔で食事を続けながら、
『事件の話』を聞き取った。
これについては、後で報告しておく必要がありそうだ。
『彼』なら興味を示すだろう。
『スタンドに関わりそうな事例』は、
全て知らせろと言われている。
数日前の『音仙との接触』も、
『彼』の指示によるものだった。

844芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2020/11/19(木) 09:36:52
>>843(この辺で〆ます)

「星児病院も大変だよな、名医だったとか噂されてた
『いのり院長』が行方不明になった感じだし。今は代理で回してる
だろうけど、ありゃ潰れるのも時間の問題ってか」

『笑いごとじゃないですよ』

「けど住んでる家も特に荒らされた形跡ないし、軽く荷物とか免許とか
そう言った身辺の大事なものだけ消えてたから。自分からどっかに
無責任に旅立ったんじゃねぇかって話も探偵事務所に仕える俺には
飛び込んでくるしさ、ウィゴーちゃん。
もしかしたら、どっかでひょっこり会えるかも知れんぜぇ〜?
 まっ! 死んで化けて出たとしても俺が君の事は守り抜くよ!!」

『いま絶賛本体と言う狂気的な存在に呪われてて地獄なんですが。
そんでもってウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトだ、戯けが!!』

スタンドはプリンアラモードを食べきった、本体のほうも軽いサラダなり
食べきると席を立つ。

「さぁて、そんじゃあ嬢ちゃんが探してる。
――『虹の紐の使い手』って奴について
 何かしら今日は手掛かりがあるといいねぇ」

『えぇ、あの方と何やら因縁のある様子。
少しでも町の平和へと貢献せねば』

……奇妙な男とスタンドは去っていく。
 彼等の雑談の中で出てきた単語、失踪した『いのり院長』に『虹の糸の使い手』
それはきっと貴方の頭の中に残るだろう……。

845御影憂『ナハトワハト』:2020/11/19(木) 14:55:51
>>844

立ち去る男の背中を視線で追う。
それから片手を上げて、先程の女性店員を呼んだ。
精一杯の営業スマイルを浮かべて、店員が駆け寄ってくる。

  「すみません…………」

             ボソッ

           「…………『コーヒー』下さい」

食事を終えて、スマホを取り出す。
液晶に表示されているのは『Line』のチャット画面。
無言で文字を打ち込んでいく。

【関係ありそうな事を見つけた】

【『工場の幽霊騒ぎ』】

【『ミイラ死体』】

【『星児病院院長失踪』】

【『虹の紐』】

           ピコンッ

運ばれてきたカップを傾けていると、返信が入る。
『彼』からだ。
前髪から覗く片目で、その内容に目を通す。

              ――――――【それだけか?】

【喋ってた男は『スタンド使い』】

【スタンドは『人型』で『自立した意思』を持ってる】

【スタンドの名前は『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』】

【能力は『引き返させる』こと】

【『本体』は危ないやつ】

              ――――――【分かった】

              ――――――【戻って来い】

【了解】

846甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/11/21(土) 08:21:00
ここは、『展望台』のある高層エリア

「助けて……」「誰か…助けて……っ!」

誰かの助けを求める声がする

847ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/21(土) 22:35:52
>>846

「どこじゃここは」

パコパコとサイズの合わない靴を鳴らしながら金髪の子供が迷い込んでくる。
背負ったリュックも着た服もどれもブカブカだ。

「なんじゃ、どうした。迷子か?」

他人事のように言いながら甘城に寄ってきた。

848甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/11/22(日) 08:58:15
>>847
そう他人事のように言い、声に近寄るナイ
そこには、展望台の手すりに片手で掴まり落ちそうになっている甘城がいた
一体何をどうしてこうなったのか?
助けてやるのもいいが、見殺しにするのも面白いかもしれない

849ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/22(日) 10:52:47
>>848

何が楽しい? 何が面白い? 命を何だと思っているんだ(鬼滅)


「……おー」


とはいえ、小学校低学年くらいの年齢の女児である。
手を出せばそのまま一緒に落ちていくだろう。
『スタンド』という力を持ってはいるが、紙一枚持ち上げるパワーも無い。
というかヴィジョンが無い。


「なんで片腕なんじゃ? 危ないから両腕で掴んだほうがええと思う」


とりあえず助言してみた。

850甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/11/22(日) 11:20:10
>>849
「『安価』…なんだ…」

ボソリと呟く

「『安価スレ』で……こうしろって言われて……」

『安価スレ』で書かれた命令を必ず実行する、『安価は絶対』主義らしい
ただの馬鹿だ

しかし流石に限界が来たのか、助言通り両手で掴み、自力で上がって来た

「はぁ…はぁ…いい運動になった」

851ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/22(日) 11:32:24
>>850

「なんじゃ……大丈夫ではないか。
 あまり人を騒がせるんじゃないぞ。
 びっくりしたじゃろ」


あっさり登ってきたので少し苦言を呈した。
命の危機に突っ込んでいくのはともかく、
自力でなんとかなるのに人に助けを呼ぶのは迷惑である。
それとも叫ぶところまで含めて安価だったのだろうか……


「あんかすれというのはお嬢ちゃんの飼い主か?
 駄目じゃぞ、嫌なことは嫌と言わんと。
 しかしこの行為になんの意味があるんじゃ?」


展望台に片手で掴まる理由と意味が見いだせないようだ。
ただの馬鹿であるという可能性にはまだ思い至らない。

852甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/11/22(日) 11:56:12
>>851
「驚かせてごめんなさい、『安価』の命令は絶対だから…」

甘城の語る所によると、あまりにも暇で安価スレを立ててみたところ
片手で手すりに掴まり助けを呼んで引き上げてもらう所までが安価だったようだ、今回は自力救済なので失敗した形になるが
妙な所でクソ真面目に安価を守ろうとして人様に迷惑をかける
こんな馬鹿はいっそ本当に落ちて死んでしまった方が世のためだったかもしれない

「でももうしないから…反省してる…」

申し訳なさそうに言い、一応反省はしているようではあるが

853ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/22(日) 12:04:17
>>852

「あんかすれとやらに弱みでも握られておるのか?」


説明されてもいまいち理解が追い付いていなかった。
いや、顔も名前も知らない他人にやれと言われたから
展望台からぶら下がるというのは、
安価について知っていたらそっちの方が「正気か?」という話だが。


「まあええがな……
 わしは別に何もしておらんし……
 そうじゃ、よくわからんが暇なら、わしの脱出を手伝っておくれ。
 ここはどこなんじゃ?」


自分が迷子だったことを思い出したらしい。

854甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/11/22(日) 12:40:36
>>853
「ここは、星見スカイモール高層階」

「お嬢ちゃん、迷子…?パパとママは?」

ナイが迷子である事を知り、心配した顔でご両親は一緒か尋ねる
馬鹿ではあるがこの女にもそれなりの良心はあるようだ

855ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/22(日) 12:52:14
>>854

「入場料とかいるのか?
 わし、不法侵入か?」


どういう建物なのか、言葉だけだとピンとこないらしい。


「パパママ? おらんが……
 ようは下に行けば帰れるということでよいのか」


高層という言葉から、いつのまにか高いところに来てしまった事くらいはわかるらしい。
いや、展望台から外を見ればそんな事は自明だが。

856甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/11/22(日) 13:07:16
>>855
「別に、入場料とかないから大丈夫だけど…そっか、一人で来たんだね
 下に降りていけば帰れるけど…大丈夫?一人で行ける?一緒に行く?」

少し子供を馬鹿にし過ぎのようにも見えるが、その顔は本当に心配をしている顔だ
彼女は子供には優しいのだ、心配し過ぎだが

857ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/22(日) 13:16:32
>>856

「わしは一人でも大丈夫じゃ。
 が……暇ならば一緒に行くか?」


ちらっと顔をうかがう。
行かないと言えば、「そうか」と一人で帰りそうだが、
微妙に一緒についてきて欲しそうな感じでもある。

858甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/11/22(日) 13:27:10
>>857
「うん、じゃあ一緒に行こうか」

頼ってもらえた事が嬉しいのか、その無表情な顔にも若干の笑みのような物が見られる

「あっ、そうだ(唐突)
 ちょっと掌出してみて?」

行く前に何かくれるというのだろうか?掌を出す事を提案する

859ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/22(日) 13:36:40
>>858

「うむ?」


歩き出そう、としたところで振り返り、不思議そうな顔をする。
右手を上げ……る途中で少し考え、左手も上げ、
どっちか迷ったらしいが、とりあえず両方の手のひらを見せた。


「なんじゃ? 占いか?」

860甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/11/22(日) 13:43:45
>>859
「手品を見せてあげる」

すると、甘城の傍らに『人型』が現れる…!
そして…触った、『人型』が、ナイの右手の掌に…!

「何か食べたい物を言ってみて、甘い物限定だけど」

861ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/22(日) 13:57:08
>>860

「えっ、なんじゃいきなり……」


驚いた様子の子供。
『人型』のヴィジョンに?
いや、唐突なリクエストを考えるのに慌ててそっちにリアクションしている余裕は無い。


「ええと? 甘いもの……?
 チョコモナ○ジャンボ……?」


チョコもモナカもジャンボも一般的な単語だが、
繋げると一応商品名なので伏字にしておいた。

862甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/11/22(日) 14:10:26
>>861
「それがあなたの望み(リクエスト)なら・・・!」

すると、ナイの手にはチョコモナ○ジャンボが握られていた
いきなり現れたそれは冷え冷えで手が冷たい

「どうぞ、食べてみてください」

知らない人からもらった、それもスタンド能力由来の怪しい物を
食べてもいいのだろうか…?

863ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/22(日) 14:20:35
>>862

「チョコモ○カジャンボじゃ!」


出現したそれを、裏返してみたりする。
どこからどう見てもチョコでモナカなジャンボだ。


「……チョコ○ナカジャンボじゃな?」


ブロック状に別れたモナカを割って、食べてみる。
中のチョコがパリッと音を立てて割れた。

864甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/11/22(日) 14:28:48
>>863
中に板チョコが入ったジャンボなアイスモナカを割り、食べてみる
パリパリのモナカ、濃厚なバニラアイス!そして中の板チョコ!
市販の物より美味い…一流のパティシエが作った本格的なスイーツと言える逸品だ

「ちなみに、5分以内に食べないと消えちゃうから」

このジャンボなモナカを5分以内に食べきらなくてはならないらしい

865ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/22(日) 14:45:08
>>864

「や、やりおる……!
 ……わしも出来るぞ。
 見ていろ……」


なんらかの対抗意識を燃やしたらしく、
糸くずを握りこみ、開くと、特にエフェクトもヴィジョンの出現もなく、
そこには白いラムネみたいなものがあった。


「ほれ、どうじゃ? シオタブレットじゃ。
 これをやろう。交換じゃ」


同じく怪しげな品だが……とりあえず包装はされている。


「5分で? なんでじゃ?
 まあ、大丈夫じゃろ……」


いくら子供が小さく、チョコモナカがジャンボという名だからといって、
一般的な食事に比べたらそれほどでもないのだし、食べられるだろう……多分。
でも気持ち急いで食べる。

866甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/11/22(日) 15:04:46
>>865
「!?こ、これは…?」

自分と同じような能力なのか…?ただの手品か?
いずれにせよ、怪しい物だが……
ナイが自分の『スイーツ』を食べたのに、自分が受け取らないのは失礼だ

「うん、ありがとう」

交換は成立され、差し出されたシオタブレットを受け取り、一つ口の中に入れる

「そこそこね(無礼)
 じゃあ、食べながら行きましょうか」

そう言いながら階段を降りていく
『ビター・スウィート・シンフォニー』の『スイーツ』は完食した者を『5㎏増量』させるのだが
それは本体の意思によって抑える事が出来る、子供に優しい甘城はきちんと抑えてくれるだろう
冷たくてジャンボな物を5分で食いきれなどと抜かすのは優しいかは疑問だが…

867ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/11/22(日) 15:14:11
>>866

「しょっぱいじゃろう」


味は、まあ市販と同じでまずくはない……
甘いものしか出せなさそうなので、じゃあ塩味なら喜ばれるだろう(?)という判断だ。


「もぐもぐ」


11月なのに、なぜアイスを頼んでしまったのだろうか……暖かいものにすればよかった。
そして味は妙に美味しいが、会話する余裕も無く、急かされながら食べると嬉しさも半減だな……
と思いつつも頑張って食べたのだった。

さすがにこれ以上迷子になることも無く、帰路につく2人。
食べきれたかどうかは不明である。

868村田 瑛壱『ディズィー・すてぃっく』:2020/11/29(日) 20:51:48
夜の展望台。

眼下に広がる夜景を眺める、学ランの男が一人。

「(あれから方々当たってみたが…それらしい情報は得られなかった。
表向き、街は平和を保っている…『音仙』はそう言っていた。)」

「…気にいらねえな…」

夜景の中に今も蠢めくであろう、得体の知れない何かに悪態をつく。

869氷山『エド・サンズ』:2020/11/30(月) 21:42:42
>>868

村田が夜の街へ向かって悪態をつくその隣で
同じく、この街を眺める女子がいた

冬の街並みを飾る星の煌めきは人々の営みの証だ

「そうですか? 私は結構好きですけどねぇ、この光景
 冬になるとどこも綺麗に飾り付けてますしねー」

その少女は誰に言うでもない村田の呟きに反応を返した

870村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/12/01(火) 18:56:50
>>869

  「…聞かれたかい。つまんねえことを耳に入れちまったようだな。」

そちらを向いて、困ったフウに目を細め、眉を釣り上げる。

  「表向きは綺麗だろうさ。それはそれで結構だが」

  「こいつで目を絡ませて、『裏っ側』を有耶無耶にしようってんじゃないかと…そう勘ぐってみたくなる時もあるのさ」

夜景に顔を戻して、元々よくない目つきをさらに目を細める。

871氷山『エド・サンズ』:2020/12/01(火) 20:32:04
>>870

村田が隣を振り向いた時、そこには清月学園の制服を着た少女が立っていた
そちらを向くわけでもなく、視線は相変わらず窓の外へと向けていた

「『裏側』・・・・」

『裏側』という言葉を聞き、鸚鵡返しに言い淀む
今までの自分であればそんな言葉を聞いたところで気にも留めなかっただろう

だが・・・・・ この街を覆う薄皮を一枚剥がした向こう側に
『本物の悪霊』がいる事を知った今の自分は・・・・ その言葉にいくらか思うところがある
この街の裏にいる『組織』と、それらに打ち倒された『悪霊』の存在を知った今の自分には

「・・・・・・・・それでも
 それでも、『表側』でちゃんとした日常が流れているのはきっと素晴らしい事なんだと思います
 『裏側』に負けてないって事なんですから」

窓から目を離し、隣にいる男に向き合う

872村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/12/01(火) 21:03:51
>>871

「表に居られないものが集まって裏を成すのか、裏がその有り様を隠すために表を作り上げるのか…考えたところでキリのない話だがね。」

夜空を見上げる。
絢爛たる光を放つ夜景と対になるかのように、星の瞬きは数えるほどしか見えない。

「いや失敬、ヒネた見方しかできない性分でな。
あんたのその言い分、嫌いじゃないぜ。」

目線だけを氷川の方に向ける。
学ランの男…歳の頃は氷川と大して違わないように見えるが、諦めたような、悟ったような物言いをする男だ。

873氷山『エド・サンズ』:2020/12/01(火) 21:33:50
>>872

「どちらが先でも構いませんよ、大事なことはそれが面白いかどうかですから」

この街で最も天に近い位置にあるこのタワーでも
天の光には程遠く、星の光は地上の灯りにその役目を奪われたかのように弱弱しい
村田が天を仰ぐのとは逆に彼女は地を眺めた

「悲観的ですね」

874村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/12/01(火) 22:28:11
>>873

 「『悲観的』か。確かにそうも見えるだろうな。」

 「自分が何のために生きてゆくのか・・・そこんとこが俺には今まで分からなかった。
  くだらん家族だの、どうでもいい世間体のために、命を張る必要があるのかってね・・・」

目線を夜空に戻す。
少ないが、確かに星の瞬きは見える。

 「それもまぁ、この間までの話・・・『諦め』つけることができるようになった。
 くだらんしがらみを振り切っていく『諦め』がね」

875氷山『エド・サンズ』:2020/12/01(火) 22:42:53
>>874

「『諦め』・・・・・」

家族や世間体、自分にとって捨てるには重すぎる『関わり』だ
では、目の前の男はどのように『諦め』を得たのか
・・・・・少し、興味を持った

「何か、『諦め』を得るような出来事があったんですか?」

876村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/12/01(火) 23:26:03
>>875

「人を二人、助けた。それだけだ。でも、それだけで十分だった。」

展望台の窓ガラスに手を触れる。

 「ことの始まりは成り行きだったが、思いがけずいいものを貰ったよ。」

 「少なくとも、俺の人生の中で最も尊いものだ。最も美しいものだ。
 おれ一人の命を懸けるに値する、『生きる価値』を貰った。」

わずかに吊り上げた口角から漏れる吐息に、窓ガラスが白く煙る。

877氷山『エド・サンズ』:2020/12/01(火) 23:48:03
>>876
「それは・・・・」

話を聞く限り、目の前の男にとって『諦め』とはネガティブな意味を持つ言葉ではないようだ
むしろ、その意義は『日常からの解放』、または『脱出』、『希望』などか
人助けを好しとするその価値観は氷山もまた好ましく思うものであり・・・・

「なるほど、人を助ける事が出来た、それがあなたの『価値』なんですね
 良かったじゃあないですか、何か気に入らない事でもあります?」

878村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/12/02(水) 01:20:46
>>877

 「否が応でも、『裏』を見ることになるからさ。」

 「一回でもそっち側を見たなら、気にせずにはいられなくなる。
 ・・・チラシの裏にビッシリ文字書いてあるのに気付いたときみてーにな。」

 「・・・まともな目で『表』を見られなくなる・・・
  これもひとつの『諦め』だ。」

879氷山『エド・サンズ』:2020/12/02(水) 19:17:33
>>878

「そんな、それじゃあ『木乃伊取りが木乃伊』になるような話じゃ・・・・!」

気付く。
『木乃伊取りが木乃伊となる』・・・・ それは・・・・
自分もまた『そう』なのではないか・・・・・と

「・・・・・一つ、私も話をしていいですか?」

訥々と話し始める
自分にとって誰でもない人間だからこそ話せる事もある

「私もまた・・・・ 人を助けるために『裏側』を見た事があります
 何言ってんだお前って思うかもしれませんが、
 そこにはこの世のものではない『モノ』達や、超常的な『チカラ』が集まっていました・・・・」

続ける。

「助けたい人を助けて・・・・『日常の尊さ』を再確認しました
 表側の日常、人々の営み、その素晴らしさを・・・・・
 でも・・・・私がそれ以上に魅せられたのは・・・・・むしろ『裏側』の・・・・!」

思い返す。
敵として戦った『あの男』の姿を・・・・
そして、自覚した自身の『欲望』を・・・・

「『裏側の戦い』の中で・・・・強い魂の輝きを見ました
 それは・・・・私が求めてやまなかったもので・・・・・」

「・・・・・・私は『表側』にいていい人間なのでしょうか?」

880村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/12/02(水) 21:16:13
>>879

 「真面目だな、あんた。最近にしちゃ珍しいくらい真面目だ。
 てめえの都合で『表』と『裏』を行ったり来たりすんのが気に入らねぇと見える。」

話をすべて黙って聞いた後、冷やかし交じりに口をだす。

 「裏表なんてのは本人の考え次第でどうにでも変わっちまう。
 あんたがどっち側かなんてのは、俺には断言できねぇ。」

 「一つだけ確実に言えるのは・・・じきに『諦め』がつくってことだけだ。」

 「結論を急ぐなよ。時間はまだあるんだろう?もったいないぜ。」

 「・・・それでもあえて言うなら、そういう気持ちがあるなら、あんたはまだ表側にいていいのさ。きっとな。」

881氷山『エド・サンズ』:2020/12/02(水) 22:08:13
>>880
「・・・・そう、ですね」

『裏』への関心と、『表』への執着
そのどちらの心も自覚してしまった今、半端者でいる事に迷いが生まれる
だが・・・・・・

「表側から、おっかなびっくり裏側を覗き込むくらいが・・・・
 私には合ってるのかもしれませんね・・・・」

それが許されるのなら
迷いを抱えたまま生きていくのが自分なのかもしれない

「余計な話をしてしまいましたね」

         「・・・・・ありがとうございます」

最後に一言だけ残して、この場所から立ち去って行った

882ダイアナ『オンリー・ガール』:2020/12/18(金) 19:45:11

            ヒュォォォォォ…………

       「フフフフフ――」

「私が手に入れた『力』……。
 この力で、いずれこの街を私の『イス』にしてやるわ!」

北風の吹く展望台に、幼稚園児くらいの幼い少女がいる。
正確には『半透明のイス』に座っていた。
遠目からは空気椅子にも見える状態だが、
そうでないのは明らかだった。
何故なら、少女の両足は完全に地面から離れていたからだ。
悠然と足を組み、膝の上にテディベアを乗せている。

       「フッフッフッ……」

             「クシュン!」

季節は『真冬』。
そのせいもあり、展望台には誰もいなかった。
くしゃみをしても独りだ。

883石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/12/19(土) 15:12:00
>>882(ダイアナ)
……スッ

「お嬢ちゃん、風邪引くぞ。」
髪の毛がシャチのヒレのようにが逆立った少年が1人、音もなくダイアナに近づいてきていた。

「子供が寒いのはよくねぇ。それは悲しいことだ。」

ボゥゥ……ボロッ……ボロッ

少年の隣には『魚人型のスタンド』が浮かび上がっている。
少年の悲しみを反映してか、『魚人』は、目に涙を浮かべ、その涙が『泡』となってフワフワと浮かんでいる。

884ダイアナ『オンリー・ガール』:2020/12/19(土) 15:49:40
>>883

「うるさいわね。私の勝手…………」

        「――――――!?」

     ビクゥッ

『魚人のスタンド』を見て、思わず体が飛び跳ねた。
『椅子』から飛び降り、スタンドを睨み付ける。
その隣で、『半透明の椅子』が『半透明の人型』に変形した。

「何よ『それ』。怪しいわ。怪しすぎるわ……」

        ジリ……
               ジリ……

「わかった!私を『誘拐』する気ね!
 そうやって優しい言葉で油断させてから、
 どこかに連れて行くつもりなんでしょ!」
 
「フン!そうはいかないわ!逆にやっつけてやる!」

           ドシュンッ!

ダイアナの勘違いしやすい頭脳が、
親切な少年を『誘拐犯』と決定させてしまった。
『半透明のスタンド』が、
『魚人のスタンド』めがけて殴りかかってくる!
後先考えてないため、スピードは速いが軌道は直線的で、
単純極まりない動きだ。

885石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/12/19(土) 17:28:24
>>884
「どうも『見えてる』みてぇだな」

「それに速い」

「うらやましいな、俺のパイオニアはパワーもスピードもない」

「そして、悲しいな、小さい子供が『誘拐』とか考えちまう、ってことが」

……ボロッ……ボロッ……フォンッ!

少年の『魚人型スタンド』の目から零れた、1つの『泡』が
『人間の投擲程度のスピード』かつ『精密な動き』(ス精CB)で
ダイアナの『スタンド』の『パンチしてきた腕』の横に周り込んで……破裂!(破壊力C)
破裂した勢いでパンチを逸らす!

……ボロッ……ボロッ……フォンッ!

そして、少年の『魚人型スタンド』の目から零れた、もう1つの『泡』が、ダイアナ目がけて飛んでいく!
こちらも『人間の投擲程度のスピード』かつ『精密な動き』だ!(ス精CB)

886ダイアナ『オンリー・ガール』:2020/12/19(土) 18:11:15
>>885

「『サオ』といい『アキハ』といい、
 大きな岩で押しつぶそうとしてきた『変な女』といい……」

           ブツブツブツ

「まったく!この街には『危ないヤツ』が多すぎるわ!」

      ブンッ!

いずれも『ブラックリスト入り』した三人。
ダイアナにとっては『恨みの対象』でもある。
そうした『八つ当たり』も含めつつ殴りかかったのだが……。

            パァンッ!

    「わッ!?な、なんなの!?」

『半透明のスタンド』の横で破裂する『泡』!
その勢いで、単調なパンチは、
容易く軌道を逸らされてしまった。
目標を見失った拳が空を切り、
『人型スタンド』が軽く体勢を崩す。

           「――――はッ!?」

スタンドの操作に気を取られていたため、
気付いた時には『泡』が迫っていた!
反射的に、持っていた『テディベア』を両手で掲げ、
『泡』を防ごうとする。
思慮と経験が不足しているため、
『回り込んで当てられる』だとか、
そういう事を考える余裕は全くなかった。

887石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/12/19(土) 18:32:44
>>886
>1.人魚を思わせる、美麗で中性的なヴィジョン。下半身は『魚』のそれ。
ちなみに俺のスタンドのヴィジョンは『魚人』と言っても『怖いヤツ』じゃなくて『美しいヤツ』なんだ……

「あー、勘違いさせちまったか?」

クンッ……

『テディベア』を避けるように、ダイアナに『泡』を当てる。(ス精CB)

……が、ダイアナはなんの衝撃も感じない。ただ、少し、『ぬるっとする』かもしれないが。

「あぶねーパンチを避けるためにちょいと衝撃は与えたが……
俺はまったくもってお嬢ちゃんに危害を加えるつもりはねぇんだわ。」

「単に『お嬢ちゃんが寒そう』だったからよ。」

「『防寒機能』があるんだ……俺の『泡』。」

>【ぬめりについて】
>☆このスタンド、および泡が命中してコーティングされた生物は以下の能力を有している。
>1.気体、液体、炎、電流など『不定形物』の中を『水中』と同じような感覚で『泳ぐ』事が出来る。
>2.『不定形物』から直接にダメージを受ける事もない。毒等の影響も受けない。

「『温度』でダメージを負うことが無くなる、とでも言えばいいのかな?」

「炎だろうと熱気だろうと冷気だろうと『無効化』するんだわ、俺の『泡』は。」

「……もう寒くないだろ?」

『泡』に当たった生物は、上記の能力を得る。空中を泳げ、空気の『温度』によるダメージを無効化する能力だ。

888ダイアナ『オンリー・ガール』:2020/12/19(土) 20:05:25
>>887

『魚人』もとい『人魚』の美しさはダイアナも感じ取っていた。
だが、ダイアナの『勘違いの激しさ』はダテではない。
『見た目がキレイだからって騙されないわ!』と考えていたのだ!

「しまッ――――」

    スルッ

        「?」

            「?」

                「?」

予想していたような『衝撃』が来ない。
その事に戸惑いを感じた。
見れば、自分の周りを『泡』がコーティングしている。

「こ、これは…………」

「『寒くない』!
 それに、何だか……」

「『もっとスゴイ事』が出来そうな気がするわ!!」

         タンッ

『保温効果』に驚きながらも床を蹴る。
いくらかの『主観的誤解』が交じりながら、
ダイアナは『直感』で理解した……。
この力は『空を飛べる力』だと!

             スィィィ――――――ッ

  「ス、スゴい……!!この『泡』スゴすぎるわ!!」

        スィィィ――――――ッ

空中を泳ぎながら、満足げに騒ぐ。
説明は聞いているのか聞いていないのか分からないが、
とりあえず伝わってはいるようだ。
『半透明のスタンド』は、既に解除されている。
さっきまでのやり取りは忘れてしまったかのようだ。
もう襲い掛かってくる事もないだろう。

889石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/12/19(土) 20:20:56
>>888
「……はしゃぐのは子供らしくていいが、まぁ……あんま離れんなよ。」

「俺のスタンドから『7m』、そして持続時間は『7分』。」

「それが俺の『パイオニア』の『リミット』だ。」
宙に浮くダイアナを射程から出さないようにするためか、『魚人型スタンド』がダイアナに近づいていく。

「やろうと思えば、『展望台の外まで泳げる』が、目立つことはやめておけよ?」

「危ないし、『塔の上を子供が泳いでる』とかの噂が立ったら、お嬢ちゃんも困るだろ?」

(……ちびっこの世話は骨が折れるぜ) ……ボソッ

少年がなんか『年下のちびっこの世話は慣れてるぜ』的な空気を醸し出す。

890ダイアナ『オンリー・ガール』:2020/12/19(土) 20:41:20
>>889

                 「世界が!」

              スィィィ――――――ッ

         「『私の下』にいる!」

      スィィィ――――――ッ

  「フフッ!気分いいじゃない!」

            トンッ

ひとしきり泳いだ後、展望台に着地する。
その場で『座る』動作をすると、
そこに『半透明の椅子』が出現した。
そのまま腰を下ろし、テディベアを膝の上に置く。

「『パイオニア』って言ったわね。
 なかなかやるじゃない。褒めてあげるわ」

        フンッ

肘掛にもたれつつ、やたら偉そうな態度で少年を見る。
目の前にいるのは『スタンド使い』。
その時、『ちょっと前にした約束』を思い出した。

「あ、そうだ。『いい事』教えてあげる」

「タボダボの服を着て、ブカブカの靴を履いた子がいるの。
 その子は『商品』を売ってるから、
 見かけたら何か買ってあげてよ。
 売ってるのはガラクタばっかりかもしれないけど、
 たまにはいいものもあるから」

「支払いは、『お金』じゃなくて『交換』だけど。
 だから、何か適当なものと交換するのよ」

この外で『ナイ』と話した事を思い出し、
約束通り『宣伝』する。
効果があるかどうかは別として、約束は果たしておく。
その辺りは、ダイアナは律儀な方だ。

891石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/12/19(土) 21:21:16
>>890
>タボダボの服を着て、ブカブカの靴を履いた子がいるの。
「……ほぅ。そいつは、『いい情報』だな、『交換屋』ってヤツか?」
少年は『ダボダボの服を着て、ブカブカの靴を履いた子がこの町に何人いると思っとるだァーッ?』と思ったが、顔には出さない。

「何歳ぐらいだ?
 男か?女か?
 他になにか特徴は?」
適当に話を合わせておこう。

892ダイアナ『オンリー・ガール』:2020/12/19(土) 22:05:15
>>891

「私より『少し上』くらいじゃないの?」

「『女の子』よ」

「髪の色は『ブロンド』で、
 『おかしな喋り方』をしてるからすぐにわかるわ」

『椅子』の上で足を組みつつ、律儀に一つずつ答えていく。
意外と話が通じるのかもしれない。
しかし、本当に話が通じるならば、
いきなり襲ってはこないだろう。

「ほら、これがその子から買ったものよ。
 『ハンカチ』と交換したの」

       ゴソ

半透明で水色の『ガラス片』を取り出してみせる。
波で洗われてカドが取れた『シーグラス』だ。
当の本人はそんな事は知らず、
単に『キレイなもの』くらいの認識だったのだが。

893石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/12/19(土) 22:27:46
>>892
「なるほど、『おかしな喋り方のブロンドの女の子』か。
それなら珍しいから見つかりそうだな。」

「これは……『シーグラス』だな。
海の波間で磨かれ、浜辺などで見つかるガラスの破片だ。
『水色のシーグラス』はなかなかマニア人気もある……。
もしかするとこりゃ、年代物の古いものかもしれんな」

「このスタンドの名は、『パイオニアーズ・オーバーC』……
こんなスタンドに目覚めるぐらいの『海好きの俺』が言うんだから間違いねぇ。」

空中に『魚人型スタンド』を浮かばせながら、『ウンチク』を語る。

894ダイアナ『オンリー・ガール』:2020/12/19(土) 23:03:47
>>893

「ふーん?そうなの?『価値があるモノ』って事ね。
 フフッ!やっぱり私はセンスあるわ!」

       ソッ

「じゃあ『コレ』――――あなたにあげる。
 『海』が好きなんでしょ。
 そっちにいるのだって『マーメイド』だし、
 私よりあなたが持ってた方が『お似合い』みたいだから」

「勘違いしないでよ。
 あなたのためじゃないわよ。
 その方が、この『シーグラス』に相応しいから。
 だから、あげるだけなんだから」

「だから、ちゃんと『大事』にしなさいよ」

         ズイッ

やや押し付けがましく『シーグラス』を渡そうとしてくる。
『海好き』・『人魚』という共通点から、
『自分よりも似合っている』と思ったのだ。
口には出していないが、
『空中遊泳』のお礼も兼ねているのかもしれない。

895石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/12/19(土) 23:21:38
>>894
「待て待て待て……」
『シーグラス』を押し付けられて、困ったように頭を抱える。

「こんなに『価値あるもの』を、『タダ』で、『年下の女の子』から貰っちゃ、俺の沽券にかかわるだろ〜。
しかも、これはお嬢ちゃんが自分の『ハンカチ』と交換したモンだっつーしよ〜。」

「あっ、そういえば……」

「『タダ』で貰うわけにはいかねぇから、『これ』と交換っつーのはどうだ?」
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1465476899/13
↑の『ネイルケアセット』を差し出す。

「俺にゃよく分からねぇが、『レディ』はこういうの好きだろ?」

「あと、これはオマケだ」
サラサラサラッ……メモに自分の連絡先を書いて差し出す。

「俺は石動 織夏(いするぎ おるか)、これは俺の連絡先。」

「なんか困ったことでも、野暮用でも、空を飛びたいとかの小さなことでもいいから俺の手が必要なら連絡しな、お嬢ちゃん。」

896ダイアナ『オンリー・ガール』:2020/12/20(日) 00:08:23
>>895

「『交換の交換』ね。ふーん、面白いじゃない」

「気に入ったわ。『トレード成立』よ」

「――大事にしなさい」

興味深そうに『ネイルケアセット』を受け取る。
そういうものも気になる年頃なのだ。
引き換えに、『シーグラス』が石動の手に渡された。
宣伝した自分までが、
『物々交換』をする事になるとは思わなかった。
とにかく『取引』は無事に完了した。

               オンリー・ガール
「『ダイアナ』よ。こっちは『唯一無二』」

「でも、『連絡先』は教えないわよ!
 フフッ!『どうしても』っていうなら、
 今度会った時にでも教えてあげるわ」

           サッ

取り出したのは、親御さんも安心の『子供用スマホ』だ。

           スクッ

もらったメモをポケットにしまい、
『オンリー・ガール』から立ち上がる。

           ドギュンッ

『人型』に変形した『オンリー・ガール』が、
テディベアの中に『潜伏』した。

「私、寒いから帰るわね。バイバイ、『オルカ』」

        スタスタスタ

「今度はいきなり人を襲ったりしちゃダメよー!!」

    スタスタスタ

さりげなく呼び捨てにしつつ、
『ネイルケアセット』を手にして歩いていく。
いきなり襲い掛かったのはダイアナだ。
それを自覚しない彼女は、
石動少年に手を振りつつ遠ざかっていくのだった。

897石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/12/20(日) 00:14:38
>>896
「あばよ!」
手を振り、見送る。

「しっかし……変わった女の子だったなぁ……」

「でもまぁ、俺にゃあ使い道のねぇ『ネイルケアセット』が貴重な『シーグラス』に化けたのはラッキーだったぜ!イヤッホウ!」

「大事にしーよぅっと!」
足取りも軽く、帰っていった。

898ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/19(火) 22:40:53
ショッピングモール内部


「ダメじゃな外は……寒すぎる」


冬物、子供用という正しい装備ではなく、
数で補うと言わんばかりに着ぶくれした子供がベンチに座っていた。
大人物の服の袖をマフラーのように首に巻き付けた隙間から覗く髪は金髪だ。
リュックから紙の束を取り出し、何やら描いている。

899度会一生『一般人』:2021/01/20(水) 07:14:56
>>898

    コッ コッ コッ

フード付のロングコートを着た男が歩いてくる。
銀の握りが付いた黒檀製の『杖』を手にしていた。
片足を軽く引きずっている所を見ると、
足が悪いのかもしれない。

            「――――?」

通り過ぎようとした時、その『奇妙な風体』に注意が向く。
立ち止まり、子供に視線を向ける。
フードを被っているために分かりにくいが、
二十台半ばぐらいの男らしい。

900ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/20(水) 21:53:54
>>899

「ん? 何を見ておる……いや、そうか」


視線に気が付いたのか、顔を上げると怪訝そうな表情をしたが、
すぐに何か合点したように頷いた。


「それで何が描いてほしいのじゃ」


見知らぬ男性に物怖じした様子も無く、そんな事を言ってきた。
奇妙と言えば奇妙かもしれないが、
単に厚着した子供が遊んでいるといえばおかしいとも言い切れない。

901度会一生『一般人』:2021/01/20(水) 22:39:15
>>900

「『描いて』…………?」

         コッ

「あぁ、いや――なるほど。『似顔絵』か何かかな?」

街中の絵描きといえば、まず思い付くのはそんな所だ。
もっとも、絵描きには見えない子供ではあるが。
『絵描きごっこ』でもして遊んでいるのかもしれない。

「じゃあ、何か描いてもらおうかな。ええと…………」

「生憎すぐには浮かばないなぁ。『君が描きたいもの』でいいよ」

今は急いでいる訳でもなかった。
どことなく不思議な雰囲気を感じる子供に、
興味を持ったのもある。
こういう人間は、
『ある共通点』を持っている事が少なくないからだ。
それを確かめてみたかった。
もし『外れ』だったとしても、別に困りはしない。

902ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/20(水) 22:50:48
>>901

「なんじゃと?
 わしの描きたいもの?
 ウーム……」


そう言われた子供は考え込んでしまった。
「なんでもいいよ」というのが一番困るものだ。
まあ、突然「なにがいい?」と聞かれた方もそりゃ困るだろうが。

______________

           /^l
  l^`\      /  /
  \  丶 __/  /  
   \ /   、  'ヽ
    /●  ●    ヽ  
    |          ヽ
    ヽ ▼       ヽ
                        
______________


「どうじゃ?」


そして数十秒後、描き終えたらしい絵を見せてきた。
感想を求めている……

903度会一生『一般人』:2021/01/20(水) 23:11:22
>>902

         ――――スッ

杖の握りに両手を置き、出来上がった絵を眺める。
手には幾つもの『傷跡』が刻まれていた。
古いもののようだ。

(…………『動物』か?まぁ、多分『動物』なんだろうな)

耳があって目があって口がある――ように見える絵だ。
『ぬいぐるみ』じゃなければ、
動物なのは間違いないと思われた。
しかし、『種類』までは特定しかねる。

「うん、いいと思うよ。僕は好きだな」

「何というか『味』がある。ほら、ここなんかね」

そう言って『眉毛?』らしき部分を指差す。
実際の所は分からないが、目の上にあるのなら『眉』だろう。
もしかすると違うかもしれないが、それ以外に考えられない。

「ええと――『ウサギ』かな?」

この絵は、耳が長く見える。
耳が長い動物といえばウサギだろう。
ただ、正解の自信があるかと言われると『ノー』だが。

904ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/20(水) 23:22:57
>>903

「犬じゃ」


犬らしい。
犬と特定するような情報は何もないが、本人がそう言うのならばそうなのだろう。


「ふうむ。
 わかりやすいように字も付け足しておくか。
 こういうのはポエ……ポエ? ……詩も書いてあった気がするしの」


ウサギと間違えられても気を悪くした様子も無く、続行する子供。
やはり道端でポエムとか売っている店のつもりらしい。


「完成じゃ」


『ワンワンワンワワーン
                犬』


そして詩(!?)が付け足された犬(?)の絵を手渡してきた。
紙はチラシの裏だった。

905度会一生『一般人』:2021/01/20(水) 23:40:21
>>904

「あぁ、『犬』か」

「僕が見た事のある犬とは違ったから、気付かなかった」

耳が長い犬もいるのかもしれない。
それを、この子供が見たという事も有り得る。
もっとも、偶然こうなっただけの可能性の方が高そうだ。

「『ポエム』だね」

一応、正しい呼び方は教えておく。
それから、受け取った絵を、しばし見つめた。
この『詩』は、なかなか個性的だ。
『ストレート』と言うべきなのだろうか。
確かに、これなら間違えようもあるまい。

「ありがとう。もらっておくよ」

「ええと…………『お代』とか、あるのかな?」

ごっこ遊びとはいえ、露天みたいなものだ。
その辺のリアリティを気にする子供もいるだろう。
この子がそうなのかは知らないが。

906ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/20(水) 23:51:59
>>905

「ポエム。そう、それじゃな。
 犬は色んな種類がいるからのう。
 大きいのとか、足が短いのとか」


実際犬というのは特に種類で外見の差が大きい生き物だが、
この場合は単に耳が尖っていることに注目しすぎて大きさを間違えたのかもしれない。
本人が気にしていない様子を見るに間違えたという意識があるかすら怪しいが。


「お代は……なんでもよいぞ」


意趣返しというわけではないだろうが、そんな事を言ってきた。
お代がいらないわけではないが、なんでもいいらしい。


「いや、じゃがお金以外の物でな」


と思ったら条件を付け足してきた。
金銭のやり取りはダメらしい。

907度会一生『一般人』:2021/01/21(木) 00:07:39
>>906

(まぁ……子供の遊びで『金』を出す気は元々ない)

(自分から言ってくるというのは『殊勝』と思うべきなのか――)

「これはどうかな?『三色ボールペン』」

         ゴソ

「『黒』以外にも『赤色』と『青色』が使えるんだ。
 絵を描く時にでも使うといいよ」

          スッ

コートのポケットからボールペンを一本取り出す。
どこにでも売っている数百円の品物だ。
それを子供に渡す。
この子の好みは知らないが、少なくとも絵を描くのには使える。
悪くないチョイスだろう。

908ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/21(木) 00:18:46
>>907

普通に考えれば、わざわざ言ってくるあたり、
金銭のやり取りに関しては身近な大人に注意されているのかもしれないが……


「ほう?
 赤と青とな」


興味深そうにボールペンを見る。
一方で、今、子供が手に持っているのは銀色の万年筆だった。
そこまで高級には見えないが、安物というほどでもない。
描かれる側であるチラシの裏紙に比べて妙にしっかりした品だ。


「……お前さん、何やら苦労しておるようじゃな。
 特別にもう一品描いてもよいぞ」


手の傷跡や、杖を見てそう思ったのか、
商売的にサービス精神を発揮したのか、
あるいは単にさっそく赤や青を使いたくなったのか、そんな事を提案してきた。
絵の腕に期待できそうには無いが……

909度会一生『一般人』:2021/01/21(木) 00:36:15
>>908

(何となく――――チグハグだな)

キャンバスであるチラシと万年筆を見比べて、そう感じた。
そもそも万年筆を使う子供自体が珍しい。
子供に万年筆を与える親というのも、
今の世の中あまり多くはなさそうだ。

「どうも。じゃ、お言葉に甘えて描いてもらうよ」

「そうだなぁ…………」

「……君が最近見た中で『一番ビックリしたもの』とか」

「――どうかな?」

普通にリクエストしてもいいが、それではつまらない。
何か面白いものが出てきてくれる事を期待しよう。
絵の腕は分かっているので、
それが何なのか見ても分からないかもしれないが。

910ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/21(木) 01:58:15
>>909

「うーむ?
 最近一番驚いたものとな?」


少し悩んだ様子だったが、さっそくボールペンを使って絵を描き始める。
さきほどと違って少し時間がかかったが……


「できた」


─────────────────────────────────

                                        ∧ ∧  
                                       (・ヮ・) 三
                                       ⊂   ⊃三
                                        |  |〜



    .ヽ:───────────────────: ───────
     .\─────────────────────── : : /
       `'-、─────────────────────: : /      
         `''ー───────────────────-‐'
         / ̄ ̄ ̄\
       /       \
      /    ●    ●  ヽ
      |      ●     |
      |      ▼     |
      |            |

─────────────────────────────────

911度会一生『一般人』:2021/01/21(木) 10:45:19
>>910

「ふむ…………」

出来上がった絵を見て、フードの奥で目を細める。
これは、さっきよりも難解だ。
まず『三つの要素』から成り立っているのは分かる。

(上のは『猫』か?まぁ、猫だろうな……。それはいい)

(一番下にいるのは…………『モグラ』?)

そんな風に思えた。
地面から頭を出しているような姿に見えたからだ。
しかし、最も謎なのは真ん中だった。

(『舟』――――なのか?)

この形は、横から見た舟にしか見えない。
しかし、不思議な状況だ。
構図に関しては、
子供だから深い意味は無いのかもしれないが、
この『取り合わせ』は奇妙だった。

「ええと、最近『こういうの』を見たんだね?」

「良かったら、その時の事を教えてもらえるかな」

分からないなら本人に聞くのが早い。
もしかすると、期待を上回るものが出てきたのかもしれない。
ボールペン一本以上の価値はありそうだ。

912ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/21(木) 14:43:49
>>911

「この時のことか。
 最近、なんといったか……何の集まりだかよくわからんが
 机にある料理を勝手にとって食べてよい会合に参加したんじゃが……

 わしが会場にいたラッコを撫でておる時じゃった。
 突然、上半分だけの猫のオバケが飛んで来たんじゃ。
 それにも驚いたが、立ち直ったところに、
 突然空中にボートが出現しての。
 おかげでわしは二回連続で転んでしもうた」


子供だったら夢の話でもしているのか? で済むかもしれないが、
大人だったら、危ない薬でもやってるのか? と言いたくなる話が飛び出してきた。

下のモグラのようなものは、ラッコらしい。
上の方の、猫とボートは推測通りだが、それが分かったとしても、
何に驚いたかというストーリーを察することは不可能だろう。

913度会一生『一般人』:2021/01/21(木) 15:53:13
>>912

「へぇ、それは凄いね。何だか大変そうだ」

相手は小さな子供だ。
普通なら空想の話で済むのだが、
そうとも限らない場合がある。
度会は『スタンド使い』ではないが、
『スタンド』の存在を知っていた。

(『猫のお化け』というのは『スタンド』か?
 空中に出現した『ボート』というのも、それらしいが……)

ただ、『ラッコ』は微妙な所だろう。
そこらにいるような動物ではない。
確かに珍しいが、話を聞く限りではそれだけだ。

(この子供が『猫のお化け』だとか、
 『空中のボート』を見たのは最近の事だ。
 何かの集まりがあって、それに参加した)

(……そういえば少し前に、
 『憂』を『アリーナ』のパーティーに行かせたな。
 『猫』とか『ボート』の話は聞かなかったが)

『スタンド使いの情報』を得るため、
度会は『御影憂』をパーティーに入り込ませた。
しかし、御影が来たのは、騒動が終わった後だった。
その辺りの話は、報告から漏れていたのだ。

「教えてくれてありがとう。面白い話だったよ」

(『アリーナ』のパーティーにいたなら、
 この子供も『スタンド使い』か?)

        コッ

「じゃ、これで。寒いから風邪引かないようにね」

(ボールペン一本分以上の価値はあったな)

                  コッ コッ コッ

挨拶して踵を返し、歩き出す。
杖をつく音が徐々に遠ざかっていった。
手の中には、チラシの裏に描かれた『二枚の絵』。

914ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/01/21(木) 17:04:06
>>913

「そうじゃろうそうじゃろう」


語っておいてなんだが、少なからず
自分の話が荒唐無稽である自覚があったのかもしれない。
だがそれを否定されなかったことで満足気な顔を見せた。


「うむ。早く暖かくなればよいんじゃがな。
 そちらも息災での」


子供はしばらく杖をつく男性を見送り、落書きに戻った。

915関 寿々芽『ペイデイ』:2021/01/22(金) 23:02:21

黒い髪を後頭部でお団子にまとめ、
草花のような髪飾りをいくつか付けた、
泣き黒子と温和な顔立ちが特徴的な少女がそこにいた。

「…………」

くすんだ緑色のニットワンピースの上には、
より濃い緑のエプロンを着けており――
今はベンチに腰掛け、『何かの紙束』を眺めている。

916度会一生『一般人』:2021/01/23(土) 16:16:26
>>915

           コッ コッ コッ

  (……?)

少し前(>>913)に『風変わりな子供』と別れて歩いていた時、
その少女を見かけた。
見覚えは無かった。
しかし、何か引っ掛かった。

       (そうか……)

思い出したのは、『御影憂』から聞いていた人相だ。
『アリーナ』主催のパーティー会場に居合わせたらしい。
『スタンド使い』である可能性が極めて高いと思われる。

        コッ

            「おっと――」

不意にバランスを崩し、地面に倒れ掛かる。
そういう芝居だ。
古い手だが、きっかけを作るには丁度いい。
そして、芝居の精度を高めるには『リアリティ』が必要になる。
つまりは、少女の前で『本当に転ぶ』という事だ。

917関 寿々芽『ペイデイ』:2021/01/23(土) 23:32:04
>>916

「? …………ああっ!」

視線を感じて顔を上げると、
歩いている見知らぬ男がいた。
気のせいと思い顔を下げようとすると、
突然コケる姿が、ちょうど視線に合う。

         ガタッ…

ポケットに紙束をねじ込みながら、
ベンチから慌てて立ち上がって、
転んだ『度会』に歩み寄り、しゃがむ。

「あ、あのう……大丈夫ですか?
 思いっきり転んじゃいましたねえ。
 どこか痛くありません? 絆創膏、持ってますよう」

『咄嗟の行動がそれだった』。
――――『スタンドで支える』選択肢は無かった。

関は心配げな視線を向けつながら、自分のカバンを漁る。

918度会一生『一般人』:2021/01/24(日) 00:05:54
>>917

「ありがとう。僕は大丈夫」

フードを被った頭を少女の方に向ける。
顔立ちは分かりにくい。
ただ、声から二十台半ば程の男らしい事は分かる。

「うっかりして、石か何かに躓いたみたいだ」

        グッ

地面に両手をついて、緩慢に体を起こす。
ロングコートの袖口から覗く手には、幾つもの『傷』が見えた。
しかし、転んで出来たものではなく、古い『傷跡』だった。

「見ず知らずの人に頼むのは気が引けるんだけど、
 実は、ちょっと『足』が悪くてね」

「それ、拾ってもらえないかな?」

           ――スッ

申し訳なさそうに言って、やや離れた所の地面を指差す。
転んだ時に手放した、
銀の握り付きの黒檀製の『杖』が落ちていた。
そして、その近くに『チラシ』が二枚。

919関 寿々芽『ペイデイ』:2021/01/24(日) 00:33:06
>>918

「怪我がなかったならよかったです〜
 ……まあっ、『足』を!
 その、軽々しくは言えませんけど、
 大変な思いをされているんですねえ」

『傷跡』と足の悪さという事実に、
ほんの一瞬だけ顔を曇らせるが――

「ええ、もちろん拾いますよう。
 これくらいの事、気にしないでくださいねえ。
 困ったときは、お互い様ですから」

            スッ
               スッ

穏やかな声色に相応する、
和やかな響きの声。
すぐに調子を取り戻して、
笑顔でうなずき、落としたものを拾う。
まずは、『杖』――――それと。

「この、ええと……『チラシ』も、あなたのですか〜?」

二枚の、その紙を拾う。『何か』書いているのだろうか。

920度会一生『一般人』:2021/01/24(日) 10:58:33
>>919

近くで見ると、杖は本格的な作りである事が分かった。
握りの部分には、繊細な『鷲』の彫刻が施されている。
知識が無かったとしても、安物ではない事が察せられた。

「あぁ、そうだね。一応、それも『僕の』って事になるかな」

チラシの裏には、奇妙な『絵』が描かれていた。
どちらも子供が描いたようなタッチだ。
一枚目は、まだ分かりやすい。
『動物(>>902)』が描かれており、『キャプション』のように、
『ワンワンワンワワーン 犬』と添えられている。
わざわざ書いてあるという事は、
これは『犬の絵』で間違いなさそうだ。

「僕が描いた訳じゃなくて、ちょっと前に『貰った』んだ」

二枚目は、一枚目よりも『要素』が多い。
まず、飛んでいるように見える『猫』が上段におり、
中段には宙に浮かぶ『舟』。
その下には、『動物の頭』らしきものが見える。
具体的には(>>910)のような絵だ。
これを見たのが無関係な人間なら、
何を表しているのか読み解くのは非常に困難だろう。

921関 寿々芽『ペイデイ』:2021/01/24(日) 13:37:00
>>920

関自身は『杖』を使わないが、
価値を理解するのは苦手ではない。

「これ……大事なものですよね。
 はい、どうぞ。お返しします〜」

拾ってからその品質に気付き、
やや丁重な形に握り直して、
ゆっくりとその男に手渡す。

「まあっ、そうだったんですねえ。
 ええと……お子さんからの、
 何か、プレゼントとかですか?」

対して、この謎の絵には笑みを浮かべざるを得ない。

「なんだか、かわいらしいお絵かきですけど〜」

関は『あの場』にいたのだが、
その光景に関与はしていない。

何より……この絵の『意図』を読むのは簡単ではない。

922度会一生『一般人』:2021/01/24(日) 15:50:12
>>921

「ハハ……違うよ。あぁ、ありがとう」

        コッ

「ちょっと前に、たまたま居合わせた子供が絵を描いていてね。
 何か描いてくれるって言うから、それを貰ったんだ」

「お返しに『ボールペン』をあげたよ」

手渡された杖をついて立ち上がる。
片足を軽く引いており、言葉通り足が悪いようだ。
ベンチに腰を下ろし、少女の手元にある絵に視線を向ける。

「『何でもいい』って言ったら『犬』を描いてくれた」

「そっちの方は……
 『最近見た中で一番ビックリしたもの』をリクエストしたんだ。
 最初に見せられた時は、何が何だか分からなかったよ。
 一番下のヤツは『モグラ』かと思ってね」

「それ、何だか分かるかな?」

923関 寿々芽『ペイデイ』:2021/01/24(日) 23:41:13
>>922

「あぁ、そうだったんですか。
 ふふ……とっても優しいんですねえ。
 知らない子と遊んであげるなんて。
 無視しちゃう人とかも、多いじゃないですか」

「あっ、無視するのが悪いとは言いませんけど」

勿論自分でも付き合うだろうが、
どこかミステリアスなこの男性が、
そうした側面を持つのは微笑ましいし、
『優しさ』は尊ばれるべきものだ。
何か『意図』があったかもしれないが、
あえて追及はしない。なあなあでいい。

「ああっ、そうですねえ。これは犬ですね、ふふふ」

  ニコ〜

      「でも、これは……」

『犬』の圧倒的な分かりやすさに対し、
『もう片方』は――――どういうことだろう。

「上の方にネコ、あと、『舟』ですよね。
 最後に、これは……な、なんなんでしょう。
 好きなものを三つ描いてね、って注文したなら、
 なんとなくわかるような気はするんですけど〜」

「下の、ううん……なんでしょうねえこれ。
 私にも、そう言われたら『モグラ』に見えてきましたよう」

目を細めて、『謎の生物』を見る。
たとえあの『顛末』を見ていても、即答は出来まい。

「ほら、下の方にいますし……あの、正解はあるんですか〜?」

924度会一生『一般人』:2021/01/25(月) 10:02:17
>>923

「僕も気になって聞いてみたんだ。
 もしかしたら、
 まだ世間に知られてない新発見の動物かもしれない。
 それは冗談だけど――――」

「何と『ラッコ』だって言うんだよ。
 さすがに思い付かなかったな」

実際、自分も言われるまで分からなかった。
『アリーナ』のパーティーに『ラッコ』とは。
余興の為に用意した……訳は無いか。
しかし、そうでないとしたら、もっと分からなくなる。
改めて考えると、疑問は尽きない。

(……『まさか』な)

無意識に排除した可能性だった。
だが、スタンドは『精神の象徴』。
スタンドを持ち得るのは人間だけでは無い。

(『手なずけ方』を調べるべきか……)

「でも、不思議なのはそれだけじゃない。
 この『構図』が面白いと思うんだ」

「『ラッコ』が下にいて、その上に『舟』。
 さらに、その上に『猫』がいる。
 どういうシチュエーションなのか、さっぱり見当がつかない」

「でも、その子が言うには『最近見た』そうなんだよ。
 そういう風にリクエストしたからね」

925関 寿々芽『ペイデイ』:2021/01/26(火) 00:31:57
>>924

「あ、あぁ〜〜〜っ。
 確かに言われてみれば、そう見えなくも。
 でも……ううん。ラッコですか? あの水族館にいる?」

    「とっても寒い所の動物ですよねえ」

実のところ、関は『この時点で感づいた』。
この絵が『パーティ会場で起きた』事は知らないが、
『何かを探っている』という事は分かった。

ラッコを探しているのだとしたら。
――――それは『毛皮』目当てでは?
この傷だらけの男、カタギとも思えない。

(『あの子』を守らないと)

「本当なら、なんだか、不思議な話ですねえ。
 ああ……でも、どうなんでしょう〜?
 子供って、案外見間違えも多いですよう。
 絵からして、その子、だいぶ小さい子でしょうし」

『最近見た』というのなら、
間違いなくあの『ラッコ』の筈。
だが、こういう嘘は『平気』だ。

「それにほらぁ、ラッコって、似ている動物も多いですしねえ」

「カワウソか何かと、見間違えたんじゃないでしょうか? ふふ……
 ……でも、そうだとしても『舟』と『飛んでるネコ』は分かりませんけど〜」

              「実は、『おひるね』中に見た夢とかじゃあ……?」

926度会一生『一般人』:2021/01/26(火) 07:36:45
>>925

「あぁ、そうだね。小さい子だったよ。
 幼稚園から小学校に上がるくらいかな?」

あの子供も『スタンド使い』だという事は分かっている。
『アリーナ』のパーティーに出て、
『上半身だけの猫』や『宙に浮かぶボート』を目撃しているのだ。
それらが『実体化したスタンド』なら、その限りでは無いが。
『絵』の方にばかり気を取られていたが、改めて考えてみれば、
あの子供も謎めいていた。
『スタンド使いであるという部分以外』に、だ。

(『スタンド使い』という人種は、
 何処かしらに『奇妙な所』があるのが多い)

(スタンドを生み出す源は『精神』だ。
 だからこそ、精神構造が特殊な者ほど、
 スタンドに目覚めやすいという事だろう)

(変わっているからといって、
 必ずしも『スタンド使い』とは限らないから、
 『見分ける根拠』としては頼りないが……)

「ハハ、『カワウソ』か。
 それはそれで珍しいけど、
 確かに『ラッコ』に比べれば身近な動物か。
 僕は、どちらも生で見た事は無いけど……」

「カワウソもラッコも似たような外見だし、
 『見間違え』は大いに有り得る。
 それとも、『イタチ』とかかもしれないし。
 遠くからだったら分からないだろうね」

「『舟と猫』も、案外『風船』か何かだったのかな。
 それだったら、空に浮かんでても不思議じゃない。
 『宣伝用のバルーン』みたいなものを見たのかもしれない」

「それに――――『作者』は小さな子供だ。
 仮に、全部が全部『空想』じゃなかったとしても、
 見た景色には、大人以上に『主観』が混じる。
 この絵も『豊かな想像力の産物』という所かな」

「でも、なかなか『味』があると思うんだ。
 『現実には有り得ない光景』だしね。
 『額』に入れて飾っておいてもいいかもしれないな」

        スッ

少女の持っている『絵』を受け取る為に、
古傷の残る片手を差し出す。
受け取ったら、そろそろ行く事にしよう。
『仕事』が出来た。

927関 寿々芽『ペイデイ』:2021/01/27(水) 05:05:49
>>926

「それくらいの子だったんですねえ。
 なら、やっぱり、間違ってるところもあるのかも」

「『幼稚園児のお絵かき』ですし、
 『全部が本当』な方が、珍しいですよう」

『幼児』の言うことだ。
嘘とかじゃあなく、
『見えている世界が違う』のはよくある。

(……でも『ラッコ』はきっと本当。
 『ラッコを描きたかっただけ』なら、
 『貝を持ったところ』を描くはずですから)

実際は『全てが本当』だが……
それを知っているスタンド使いはあまり多くは無い。
『多くは無い』だけで、『いる』のだが。

「風船……あぁ、そうかもしれませんねえ!
 全部が本当じゃあなくても、
 『想像力』だけで描いたにしては、
 なんだか……妙に『説得力』がありますし」

「もしくは、『ラジコン』か何かかも……あ、これ、お返しします〜」

             スッ

『絵』を差し出して、受け取ってもらう。
『ラッコの手掛かり』になってしまうし、『謎』も残っているが、
少なくとも、関がそれを貰い受けるような正当性も無いだろう。

928度会一生『一般人』:2021/01/27(水) 11:09:07
>>927

「『ラジコン』――そういう事もあるかもしれない。
 『ドローン』と呼ぶと現実的だけど、
 『空を飛ぶ舟のラジコン』なんてロマンがあるね。
 どこかの物好きな発明家が自作したのかな」

「あぁ、そういえば『猫』も飛んでるか。
 開発者は相当な物好きみたいだ」

『絵』を受け取りながら、フードの奥で軽く笑う。
頭を向けた角度によって光の入り具合が変わったせいか、
男の顔が少し見えた。
顔にも、手と同じような『傷跡』があった。

「拾ってくれてありがとう。それじゃ、僕は行くよ」

          ――――コッ

立ち上がり、杖をついて歩き出す。
丁寧に折り畳まれた『絵』は、コートのポケットにしまわれた。
足を引きながら緩慢に歩く男の姿が、徐々に遠ざかっていく。

929関 寿々芽『ペイデイ』:2021/01/27(水) 22:25:44
>>928

「あぁ、ドローン!
 そう言うんでしたねえ〜
 私ったら、ああいうのって全部、
 『ラジコン』っていうイメージで……」

         「……」

顔の傷跡には、さすがに『動揺』はする。
『カタギではない』のは間違いないが、
『鉄砲玉』という雰囲気でもない。

「いえいえ〜。
 あれくらい、大した事じゃあないですよ。
 それじゃあ、お気を付けて〜」

……『悪党』とも見えないが、謎の多い男だ。

遠ざかる背中からなんとなく目を離せず、
それが消えてから、またポケットの『新春くじ』を取り出した・・・

930御影憂『ナハトワハト』:2021/02/10(水) 23:01:30

          ヒュォォォォォ…………

展望台に、白いワンピースを着た女が立っていた。
前髪が異様に長く、顔の大部分を覆い隠している。
『ジャパニーズホラー』から抜け出してきたような風貌だ。

「――――…………」

       ガサッ

その手には一枚の『チラシ』が握られている。
裏面には、『奇妙な絵(>>910)』が描かれていた。
前髪の隙間から覗く片目が、街を見下ろしている。

931日下部『アット・セブンティーン』:2021/02/11(木) 01:18:01
>>930

「『100万ドルの夜景』〜」

後ろから声が聴こえた。
質の悪いホラーのような驚かすための声では無く、
独り言のような調子を帯びた、伸びやかな声。

「あれってね、電気代が100万ドルって意味で、
 『それくらい美しい』って意味じゃないんだって」
「それでガッカリだって友達が言ってたの」

「んふふ。私ならガッカリどころか、
 気分上がっちゃうけど〜」

実際にはそれは、『通話』らしい。
白のマントコートを着た、白い三つ編みの、色白な少女。

932御影憂『ナハトワハト』:2021/02/11(木) 01:42:55
>>931

        ――――ピクッ

振り向かず、背中で声を聞く。
特に気になるような内容では無かったが、『癖』みたいなものだ。
近くで誰かが喋っていると、密かに耳を欹てる。

(『100万ドル』…………日本円なら『一億円』…………)

(それだけあったら…………『活動』も捗りそう…………)

      チラ

さりげなく体の角度を変え、
前髪の隙間から相手の姿を確認した。
容姿は特徴的だが、見覚えは無い。
かといって、特に気に留める理由も無かった。

933日下部『アット・セブンティーン』:2021/02/11(木) 04:48:20
>>932

「『そうだと思った』って?
 私ってえ、そう見られてるの〜?」

「んふ、ううん〜、怒ってるとかじゃあないけど」

         スタスタ

少女はスマートフォンを手に、
御影の近くにあるベンチに腰掛ける。

「じゃあ、今度こそ切るけど〜。
 何か言うこととかあったら聞いてみちゃおうかな」

     「んふ」 
     「上手いこと言ってもダメで〜〜〜す」
     「また今度ねえ」

声には緩やかな笑いが乗って、表情も豊かに笑んでいる。
そして通話を切ると、その笑みを『御影』に向ける。

「こんにちは〜。ここって座ってもい〜い?」
「『展望』するのにジャマだったら、よそに行くけど〜」

視線を感じたから、というのも、話しかけた理由の一つだった。

934御影憂『ナハトワハト』:2021/02/11(木) 18:07:55
>>933

(あ、『バレた』…………)

特徴的な少女を一瞥した御影憂も、容姿は特徴的だ。
ある意味、『バレて当然』とも言える。
ヘアスタイルのせいで、表情は読み取りにくいが。

    ススッ

        「…………どーぞ」

             ボソッ

言葉少なに、『肯定』の意を告げる。
顔は見えにくいが、少なくとも『笑顔』では無いようだった。
同時に、何となく『苦手なタイプ』っぽさを感じて、脇に退けた。
平然と距離を詰めてくる種類の人間は、注意せねばならない。
場の『不気味さ』を薄れさせてしまうからだ。

935日下部『アット・セブンティーン』:2021/02/11(木) 22:07:16
>>934

「ありがと〜」
「よいしょっと」

        ストン

「いやぁ、座るところがあるって嬉しいよねえ〜」
「たくさん買い物して、疲れちゃったから」

やたらと物理的距離を詰めては来ないが、
やや離れた別のベンチまで行くこともしない。
単に、遠くまで行くのは面倒だからだ。

「まあ、景色は立たないと見えないけど……
 そこはトレードオフっていうことで〜。
 それに……景色だけが見ものでもないよねぇ」

        クルッ

と、視線を御影の持つ『ちらし』に向けた。

「お姉さぁん、面白いもの持ってるねえ〜。それ、何?」

         「かわいい絵だけど、
          んん……何の絵だろ〜?
          お姉さんが描いたんじゃなさそう」

936御影憂『ナハトワハト』:2021/02/11(木) 22:24:56
>>935

            「…………『これ』?」

            ボソッ

  「『親戚の子』が描いた…………」

実際は、『知人』が『不思議な子供』から受け取ったものだ。
その『知人』が、自分に『これ』を渡した。
だから、『親戚』という言葉は『ウソ』だった。

       ピラ

「…………『何』に見える?」

両手で絵を広げるようにして持ち、尋ねる。
すぐに正解を言ってもいいが、
『先入観の無い視点』を確かめてみたかった。
知らない人間なら、『別の何か』を思い付くかもしれないからだ。
とはいえ、『大体の印象』くらいは共通しているだろう。
少なくとも、『ロールシャッハテスト』ほど難解では無い。

937日下部『アット・セブンティーン』:2021/02/11(木) 23:58:17
>>936

「小さい子ってさぁ……見えてる世界が違うよねえ〜」

「んふ…………小さい子だけじゃあなくって、
 私とオトナの人でも違う所はあるだろうけど」

     「私には、この景色は描けなさそ〜〜〜」

日下部は真偽を重視しない。
少なくとも、疑いから入るタイプではない。

「え〜〜〜難問クイズだあ。
 難しいよぉお姉さん、これ本当に『正解』とかある?
 それで、当たったら、何かいいものくれたりする〜?」

絵をまじまじと見つめるが……
わかりやすいようで、見れば見るほどに難解だった。

「私ね、『解釈』とか苦手〜。
 見たままでいいなら、ん〜……舟と、ネコと〜」

「これ〜。これが分からないよ、カピバラとか〜?」

         「ああでも、舟が、あるもんねえ。
          じゃあ水辺だし……ビーバーかも〜」

938御影憂『ナハトワハト』:2021/02/12(金) 00:14:13
>>937

「舟とネコは『正解』…………」

実際、これを見た時は自分も理解できなかった。
一応ネコと舟は分かったが、
『下にいる何か』が不明だったのは同じだ。
それぞれの要素が分かったとしても、『全体図』としては謎だが。

「『ビーバー』は惜しい…………」

        ボソッ

「…………かも」

「下にいるのは…………『ラッコ』」

        ボソッ

「…………なんだって」

普通、舟があるのは『水場』だ。
そして、ラッコも海に暮らす動物。
それだけ聞けば、納得のいく構図だと言えるかもしれない。

939日下部『アット・セブンティーン』:2021/02/12(金) 00:30:10
>>938

「え〜? ラッコぉ〜? んん〜。
 あぁ〜、でもそう言われたらそう見えるかも。
 たしかにビーバーよりは、ラッコっぽ〜い!
 んふ、水族館の絵なのかな〜」

「聞いたことあるよお、小学校の課題とかで、
 生き物のスケッチをしてきなさいっていうの〜」

ラッコといえば水族館の生き物。
動物園のキリンやゾウと同じで、
暮らしの中に根付いた生き物ではなく、
それを鑑賞しに行く価値の高い生き物だ。

「んん……でもそれだと舟と猫は変か。
 あ!YouTubeにこういう動画があるのかも〜。
 外国の、ラッコが住んでる国の動画とか」

「どうかな〜? これは何割くらい当たってる〜? んふふ」

クイズは主旨ではないのだろうが……日下部はそのつもりだ。

940御影憂『ナハトワハト』:2021/02/12(金) 00:47:05
>>939

「それは…………ちょっと違う…………」

「『ラッコを撫でた』って言ってたから…………」

「だから…………『動画』じゃない」

『VR』という技術もあるが、『ジャパニーズホラー』のように、
本当に画面の中から出てくる訳ではない。
これを描いた子供は、ラッコと直に対面したようだ。
やはり、水族館に出掛けた時の事を絵にしたのかもしれない。

「じゃあ…………『次の問題』…………」

         ボソッ

「この『舟とネコ』は何でしょうか…………?」

『絵』を片手で持って、舟とネコを指差す。
ラッコと水族館は自然に繋がるが、ネコと舟は微妙な所だ。
動物園と併設の水族館なら、ネコがいた可能性はある。
舟というのも本物ではなく、何かの飾りとかかもしれないし。
ともかく、『謎の構図』だ。

941日下部『アット・セブンティーン』:2021/02/12(金) 01:41:27
>>940

「んん、じゃあ水族館だと思うけど〜。
 でも、アザラシとかは聞いたことあるけど、
 ラッコを撫でさせてくれる所なんかあるのかなあ?」

「私もね、水族館って、
 そんなに詳しくないんだけど〜」

他県や海外の水族館という可能性もあるが、
どうにも芯を食った感のない『推測』になる。
日下部は首元の『宝石』のネックレスを指で弄ぶ。

「んん、舟があるのもよくわかんな〜い。
 子供が想像で描いた……
 っていうわけじゃ、ないんだろうし〜」

舟、猫、ラッコ。
それが自然に揃う状況とはいったい何なんだろう?

「お姉さん質も〜ん。
 このラッコとか〜、舟とか猫っていうのは、
 全部『見たまま本物』って考えていいの〜?」

「船がおもちゃとか、ラッコかネコがキャラクターとか」

        「そういうの、あったりしない〜?」

942御影憂『ナハトワハト』:2021/02/12(金) 02:07:58
>>941

           チラ…………

指の動きにつられて、自然と『ネックレス』に視線が向いた。
『宝石』を一瞥し、改めて『絵』を見る。
これは、何らかの『スタンド』が関わっている光景らしい。
この絵を渡した『知人』から、そのように聞いていた。
もっとも、その『詳細』までは知らないが。

「さぁ…………どうだろ…………」

        ボソッ

「『ネコ』が飛んできて…………
 『舟』は空中に浮かんでた…………」

「『描いた子』は…………そう言ってた…………」

『伝聞』で耳にした内容を、そのまま口にする。
意味不明な状況だが、描いたのは子供だ。
リアルを度外視すれば、有り得るかもしれない。
または、現実と虚構が入り混じっているか。
『ラッコを撫でた』のは本当らしいが、
それが『ラッコのぬいぐるみ』だとしても不思議は無いだろう。

943日下部『アット・セブンティーン』:2021/02/12(金) 02:41:46
>>942

「ふぅ〜〜〜ん……猫と舟が飛ぶ?
 猫ってウミネコの事じゃないよね?
 んん〜……私はねぇ、見てないから」
「ちょっと、信じられないかもねえ〜」

日下部は『見たもの』を信じるタイプだ。
見ていないものを鵜呑みにする事はない。
子供の言う事なら、なおさらだが……

      「んふ」

「でも、嘘や気の所為にしては、
 なぁ〜んか『具体的』というか」
「『もっと色々描く』と思うんだ〜、そういうのなら」

しかし、『嘘と断じる』には『根拠が足りない』。

「お姉さんは信じてる〜? これが『あった事』だって」

これが『何』なのか答えは出なさそうだが……
少なくとも、『出題者の考え』という事実は知ってみたい。

944御影憂『ナハトワハト』:2021/02/12(金) 03:05:45
>>943

「お姉さんは…………『信じてる』」

       ボソッ

「『正直な子』だから…………」

会った事は無いので、どういう人間かは知らない。
しかし、子供と顔を合わせた『知人』は信じた。
そして、御影憂は『その知人の考え』を信じている。
だから、『絵』を描いた子供の話を信じるという事だ。
御影自身が『スタンド使い』であり、
超常的な力の存在を認識しているというのもあるが。

「まぁ…………
 舟とかネコとかが『本物』とは限らないけど…………」

「これ『絵』だし…………」

「だから…………『フィクション』でもいい…………」

          ――――ガサ

『チラシ』を折り畳み、おもむろに空を見上げる。
冬の時期は日が落ちるのが早い。
気付けば、辺りは徐々に暗くなり始めていた。

945日下部『アット・セブンティーン』:2021/02/12(金) 03:23:32
>>944

「んふ、『親戚』のお姉さんが言うなら、
 それじゃあきっと、それで合ってるよ〜」

       「まぁ、それに」
       「ネコと舟が飛ぶことだって、
        信じるかどうかは別だけどぉ、
        あってもおかしくはないよね」

「無いよりはあった方が、素敵だし〜?」

まだ『見ていない』世界にも、
たくさんの『信じられない真実』はあるだろう。
ネコや船もその一つかもしれない。

「そだねぇ〜。『フィクション』でも」「『リアル』でも」

「『こういうことがあった』なら……
 んふ、その子はきっとすごく、楽しかったんだろうなぁ」

               「そんな気がする。んふっ」

口元に長い両袖を当てて、笑って空を見る。

「……わ、もう暗くなってきてるじゃ〜ん」
「休んでる場合じゃなかったかも。お姉さん、私行くね〜」

     「お話しできて楽しかったよ〜。それじゃあ、また遊ぼうね」

――それがもうずいぶん暗くなってきていたので、立ち上がった。
『明らかにならなかった』事も多いが、楽しかったのは『間違いない事実』。
価値のある時間を背負って、『お姉さん』が止めようと止めなかろうと、その場を去る。

946御影憂『ナハトワハト』:2021/02/12(金) 19:06:14
>>945

「『お姉さん』も…………そう思う」

知人の話では、
『最近一番ビックリした事』をリクエストしたらしい。
描いた本人は驚いたようだが、
特に『トラウマ』になったりはしていなかったようだ。
それはいい事だ。

「バイバイ…………」

誰もいない展望台に立ちながら、
『白尽くめの少女』を見送る。
それから、また空を見上げた。
闇の帳が、徐々に世界を覆い始めている。

        バ サ ァ ッ

唐突に、頭を勢いよく振り上げる。
パンクロッカーを思わせる派手な動きによって、
顔の前に垂れ下がる前髪が後ろに追いやられた。
露になった『素顔』の口元には、『笑み』が浮かんでいた。

            「…………『フェードアウト』」

  ――――ドシュゥッ

『闇色の帽子と外套』を身に纏うと、
その姿が溶けるように消える。
『幽体』に変異した体で『空中』を歩いていく。
『狩りの時間』だ――――。

947関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/14(日) 23:55:08

バレンタイン『翌日』のスカイモールでは、
売れ残ったチョコレートが大量に並んでいる。
味も見た目も何も変わってはいないが、
意味を喪失しただけで、安くなっている。

「…………」

ワゴンの前に立ってそれを吟味しているのは、
黒い髪に草花を模したアクセサリーを付け、
後ろでおだんごにした、泣き黒子が特徴的な少女。
華々しい包装のチョコが、既にいくつか籠の中にある。

948百目鬼小百合『ライトパス』:2021/02/15(月) 02:10:04
>>947

火の点いていない煙草を咥え、スマートフォンを眺めていた。
画面には、新たに加わった番号が表示されている。
登録された名前は『風歌鈴音』だ。

「おや、あれは…………」

その時、『見覚えのある姿』を目に留めた。
スマートフォンをしまい、そちらに歩み寄る。
近付いてくるのは、白いパンツスーツを着た年嵩の女だ。

「こんにちは、寿々芽ちゃん。買い物かい?」

籠の中を見下ろし、声を掛ける。
バレンタインなどには、とうの昔に縁が無くなった身だ。
それでも、『大体の状況』くらいは見れば分かった。

949関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/15(月) 03:05:55
>>948

「あっ……こんにちは。年末ぶりです〜。
 あの『ハンドクリーム』
 あれからよく使わせてもらってますよう」

          スッ

「冬は肌荒れしやすいですし……
 改めて、ありがとうございました」

近づいてきた女性、『百目鬼』に頭を下げ、
籠を持たない手で血色の良い手のひらを見せる。

「ええ、お夕飯の買い物に。
 それから……ふふ、少しケチな話ですけど。
 今日はチョコレートがお買い得なので〜」

   ゴソ

「これなんて、たくさん入っててこの値段。
 個包装で便利ですし…………とっても経済的ですよう」

喜色に満ちた顔で、カゴの中のチョコレートを指さす。
『本命』に使われる事はなさそうな、廉価なアソートだ。

950百目鬼小百合『ライトパス』:2021/02/15(月) 20:24:33
>>949

「ハハ、そりゃあ良かった。
 アタシもプレゼントした甲斐があるよ」

差し出された手を見て、軽く笑いながら頷く。
同時に、その時の事を思い出した。
『ペイデイ』――興味深い能力だ。

「そういえば、そんな時期だったね。
 『節分』は覚えてたんだけど、
 そっちは縁が無いもんで忘れてたよ」

この国の風習に則り、節分の時期になると、
年の数だけ豆を食べてきた。
小さい頃は一粒ずつ増えるのが嬉しかったが、
今では見るのも嫌になる。
しかし、それは『そういうもの』だから、
文句を言っても仕方が無い。

「買い物上手だねぇ、寿々芽ちゃんは。
 それに倣って、アタシも何か買って帰ろうかねえ」

         スッ

「この辺なんか、なかなか良さそうだ」

ワゴンに腕を伸ばし、
そこからチョコレートの箱を引っ張り出す。
『洋酒入り』だ。
元はそこそこの品だが、
『時期外れ』となった今では手頃な値段となっている。

951関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/15(月) 23:23:01
>>950

「ふふ、今月は『節分』もありましたし、
 短い割に行事が多くって……
 おかげで、お買い物はしやすいですけど」

           スッ

「『ソレ』も、大人っぽい感じでいいですねえ。
 元々が少しお高いですけど、味は美味しそうです」

洋酒入りチョコを見て、納得したように頷く。
百目鬼に対しては『大人』のイメージがあった。
大人のチョコといえば、洋酒入り…………
そういう『子供らしさ』は、寿々芽にもある。

「ご家族にもプレゼントするなら、
 こっちとかも良さそうですねえ。
 ほら、個包装ですし……」

個包装への熱い信頼を見せつつ、
また別の『酒入りチョコ』を取ってみせる。

「箱入りのアソートだと、
 開けたらすぐ食べちゃわないといけませんしね〜」

952百目鬼小百合『ライトパス』:2021/02/15(月) 23:56:58
>>951

「そうだねぇ、別々に包んであるヤツなら配りやすい。
 『おすそ分け』もしやすそうだ」

自分だけで選んだなら、箱入りを買っていただろう。
個包装は便利ではあるが、
箱入りの方が出るゴミは少ないからだ。
もっとも、包装に関して寿々芽ほどの拘りがある訳でも無い。

「じゃあ、そっちも買っておく事にするよ。
 親父の差し入れにね」

       スッ

個包装の『ウイスキーボンボン』を手に取る。
大酒呑みではないものの、父も酒が好きだった。
大抵は日本酒だが、たまには毛色を変えるのも悪くない。

「ところで、寿々芽ちゃんは誰かにあげたのかい?
 答えにくかったら言わなくてもいいよ」

「まぁ、寿々芽ちゃんは『想われる方』が多そうだ。
 器量良しで気立てもいいからね」

彼女には、家庭的な印象を持っている。
これまでの様子を見ると、事実そうなのだろう。
改めて、自分とは正反対のタイプだと思えた。

953関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/16(火) 00:16:01
>>952

「ふふ……お父さんもきっと喜びますよう」

      ニコ

百目鬼に温和に笑いかける。
それから、自分のチョコ選びに戻るが……

「え! あ、ああ〜。
 私から誰かに……その、義理とか本命とか、
 そういうのの話ですよねえ〜っ」

振ってこられた話題には、
いつもよりも大きな反応があった。

「ええと、家族には今日渡しますし……
 そのお、それ以外では特に、渡す予定とかは無くって」

     「気になる人とか、
      そういうのも、今はいなくて」

 「あんまり、出会いもありませんし……
  あっ、別に、出会いが欲しいわけじゃないですよう」

家庭的で、どこか所帯染みた様子はあるが、
寿々芽もまた『高校生』の年頃。
年相応の一面もある、という事だろう。

……『出会い』が無いのは、学生には妙な話ではあるが。

954百目鬼小百合『ライトパス』:2021/02/16(火) 00:41:17
>>953

「ハハハ、いきなり変な事を聞いて悪かったよ。
 何せ、それがセールの『本来の意味』なんだから」

「ま……そういう話に口出しする気は無いよ。
 ただ、世の中には『良くない男』もいるからね。
 そういうのに引っ掛からないように気を付けて欲しくってさ」

『出会いが無い』というのは、
『新しい出会いが無い』という意味だと受け取った。
どこの学校に通っているかは知らないが、
そういうのはなかなか無いものだ。
しかし、少なくとも『清月生』ではなさそうな気はした。
あそこは生徒数が非常に多い。
寿々芽が奥ゆかしい性格だったとしても、
学校の行事なんかで、
出会いは自然に出来そうだからだ。

「だけど、もし『いい人』が見つかったとしても、
 そっちのアドバイスは出来そうにないねえ。
 アタシは昔からガサツで、
 『女らしさ』についてはからっきしだったよ」

「そこら辺についちゃあ、むしろアタシの方が、
 寿々芽ちゃんに教わらなきゃならないねぇ」

長く男所帯に身を置いてきた為、周りは男が多かった。
だが、『女』として見られた経験は少ない。
というより、自分からそうしていたという方が正しい。
周囲から侮られないようにする為だ。
当時の自分にとっては、それが重要な事だった。

955関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/16(火) 00:58:55
>>954

「まぁ……そうなんですよねえ。
 こうして安くなってるのも、
 本当はそれの残りだからですし……
 ふふ、おこぼれに預かってるというか」

        クス

「あらっ、ご心配ありがとうございます〜。
 そうですねぇ、私、あんまり……経験がないので。
 変な人に騙されないように、気を付けないと」

「『いいひと』に見つけてもらえたら、いいんですけど」

見つけるではなく、見つけてもらう。
……あるいは出会いが無いのではなく、
そもそもが奥手、なのかもしれない。
籠を持たない手を口元に当てて、はにかむように笑む。

「百目鬼さんも素敵なひとだと、思いますけどねえ。
 ふふ。私に教えられる事なんて…………とてもとても」

百目鬼の人柄は間違いなく『素敵』だ。
が、男受けするかはまた別の話で、
寿々芽にはその辺りの機微を読む程の経験値は無い。

「よいしょっと。これくらい買えば、しばらく困らないですねえ」

             ボスッ

……アソートチョコをもう一つ籠に積んで、持ち手を握り直した。

956百目鬼小百合『ライトパス』:2021/02/16(火) 01:17:59
>>955

「嬉しい言葉だねえ。
 寿々芽ちゃんにそう言ってもらえたら、少しは自信になるよ」

異性に言われるのと同性に言われるのとは、
また意味が違ってくる。
しかし、褒められて喜ばない人間はいない。
自分より遥かに女らしいと思える寿々芽に、
そう言ってもらえたというのもあった。

「これとこれと……こんなもんでいいね。
 それじゃ、アタシは会計して来るよ」

「またね、寿々芽ちゃん」

        クルッ

チョコレートを手にして、レジの方に向かう。
そういえば、少し前に出会った『風歌』も同じくらいの年頃か。
年代が同じでも、それぞれの立場は大きく異なる。

(人それぞれ、人生それぞれ――か)

心中でそんな事を考えながら、その場を立ち去っていく。

957関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/16(火) 01:28:27
>>956

「ふふふ、褒めていただけて嬉しいです。
 ええ、またどこかでお会いしましょう〜」
     
         ペコリ

百目鬼に頭を下げて背を見送り、
別の買い物も済ませてからレジに向かう。

その日は『家族』にチョコレートを配って、
大いに喜ばれたが…………『義理と本命』。
その言葉が、寝るまで頭のどこかに渦巻いてはいた。

958風歌 鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/16(火) 19:08:16

展望楼塔周囲を一区画として定義した場合の『低層』には、星見町の博物館がある。
その名を風歌は知らない。雑草の名を多くの人が知らぬように、落ちているゴミの『分別』を気にしないよう輩の様に。
ただ、ずっと自然にそこにあった場所として、風歌は、ただ『博物館』とだけ認識していた。
その認識は、チケットを買って入場した今も変わらない。

(生まれて初めて入ったが、やっぱり静かなもんだなぁ)

来る前に着替え、訪れた銭湯で身体を磨くことよって多周囲に与える不快感を抑えた風歌は、きょろきょろと辺りを見渡した。
住所不定無職の風歌が『博物館』に金を使ってまで訪れたのは、理由がある。
最底辺のゴミから、僅かなりとも『踏み出す』決意をした風歌は――まずは、学んで見ようと思ったのだ。
地元密着の博物館である『博物館』には郷土史の記録もあるし、地元の芸術家の作品も置かれている。
国内外からの様々な美術品も収蔵されており、常設されている展示物だけでも、中々の物であると風歌は聞いたことがあるのだ。
身なりを整える手間を掛けてでも、『学び』に来る価値はあるだろうと、風歌は思っていた。なかったとしたら、無駄である事を『学ぶ』だけだ

(さて)

今日は、『ゴッホ』やら『ピカソ』やら『ダヴィンチ』やら、風歌ですら名前と代表作を知る画家の特設展示会が開かれている訳ではないので、休日ではあるが人はそう多くない。あまり密集すると『匂い』に気づかれるかも知れないので、人混みのなさはありがたい物である。
そして、今日の展示会の内容は、お世辞にも人混みを生めるようなものでもない。
風歌が目線をやった先には――『古今東西武器博覧会』との看板がある。
武器である、刀とか剣とか銃とか、そういう品々が展示されているのだという。
それも、『ホンモノ』も。
数年前、落ちていた新聞に『刀剣女子』という見出しのニュースを見たことはあったが、今更ブームに乗ったのだろうか。周回遅れが過ぎる、だから客がまばらなのだ。
だが、それでも未知の世界ではある――学ぶ価値は、あるだろう。

(せっかくだし、見ていくか……)

入場料とは『別』にまたチケット代を取られるのだが、それが痛くない程度には懐は厚い。
風歌は、新たな学びを得るために『古今東西武器博覧会』のエリアに足を踏み入れた。

959風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/17(水) 20:03:45
>>958
数多くの武器は人の叡智であり、また愚かさの進歩を示していた。
ホンの少しだけ賢くなった風歌は、日も落ち始めたので通常の展示物を見る前に帰った。

960名無しは星を見ていたい:2021/02/26(金) 23:28:57

『ご来塔のお客様へ』

『スカイモール』内の『営業』は終了致しました。
また明日のご来塔をお待ちしております。

【場】『 星見スカイモール ―展望楼塔― 』 その2
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1614349479/


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