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【場】『 大通り ―星見街道― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:00:31
星見駅を南北に貫く大街道。
北部街道沿いにはデパートやショッピングセンターが立ち並び、
横道に伸びる『商店街』には昔ながらの温かみを感じられる。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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748門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/17(月) 02:08:37
>>747(日下部)

「形(ヴィジョン)がないタイプか―――
  というか、君はそんなに、この超能力、
   『スタンド』については知らないみたいだね。

  呼び方については分かったよ。『日下部ちゃん』。
         ………ああ、俺の方は『良次さん』で構わないよ」

『門倉』は『日下部』にそう告げる。

「それで、『見せてもらった』俺としては改めて訊きたいんだけど、
 『引きこもり男子を連れ出す』ミッション、引き受けてくれるかな?

  イエスにしろノーにしろ、とりあえず連絡先はきいておきたいわけだけど」

749日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/17(月) 02:22:33
>>748

「んふふ、それじゃあ、良次さんって呼んだままにしとく」

「え〜と、ねえ。『スタンド』っていう言葉と……」
「これが『アット・セブンティーン』って名前なのは聞いたけど」
「詳しいって言えるような事は、何も知らないかな〜っ」

「その言い方だと良次さんは詳しそうだし、今度教えてよ」
 
    「あっ今度っていうのはねえ」

        「またいつかとかはっきりしない話じゃなくって」

板チョコを模したケースに収めた、スマートフォンを取り出す。

           ミッション
「――――その『お仕事』の時にでも、ね?」

見せた画面には、『QRコード』。
それから、はっとしたような顔でそれをテーブルに置きつつ。

「あ、良次さんは『ラ●ン』、分かるよね〜? でも私ね、別にメールでも使えるから」
「不便ならメールでもいいよ。オトナの人だと、たまにいるからさあ、そういう人も……」

年より扱い……ではないのだろうが、『世代間の隔たり』を感じなくもない配慮を見せた。

750門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/17(月) 02:43:38
>>749(日下部)

「ああ引き受けてくれるのか!

             ―――じゃあ、また今度」

『門倉』はスマホを取り出し、『QRコード』を読み取る。
そしてその場で、「門倉だよ」とメッセージを送ってくる。

     「手取り足取り教えてあげよう、色々ね」

 そんな事を言っていると、

   突如―――

     ス ウ ウ ウ ウ ウ ………

              一瞬で、『視界』が変わる。

 ………

今までいた『喫茶店』がまるで夢だったかのように、
『日下部』と『門倉』は、焦げが残る『門倉不動産』に居た。

            「ああ――― もう、『時間』か」

 『門倉』が名残惜しそうに言う。

奇妙な『部屋』、『超能力』、『タイムリミット』―――
『門倉』という男が『日下部』と同じ超能力者、
『スタンド使い』なのだとしたら、
その能力を類推するのはそう難しい事ではないだろう。

751日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/17(月) 03:30:03
>>750

「はい、登録」「っと〜」

      スゥッ

「や〜ん、言い方がいかがわしい〜」
「良次さんたまにそういうとこあるねえ」「なぁい?」

メッセージに『スタンプ』を返し、スマホを懐にしまう。
そして飲み終えた飲み物のストローを回していると・・・

>     ス ウ ウ ウ ウ ウ ………       

          「……んんん」

「なるほど、なるほどだね〜」
「こういうのも『アリ』な世界ってことか」
 
         キョロッ

「タピオカ……『飲んだ気』は残ってる気がする」
「カロリーもあの部屋みたいに、なかった事にならないかな〜」

              キョロッ

来た時と同じように、後ろ手を組んで、『来たままの部屋』を見渡す。
が――――少なくとも今日は、それをいつまでも続けてはいなかった。

「ま〜こうやって見てても原理はわかんないか」
「原理なんか、ないのが『能力』なんだろうし」

「それにねえ、私、そろそろ行こうかなって思うんだ」
「『10万円』貰えるなら、いろいろ買いたいものとかあるしぃ」

        ザッ

          「それじゃあ行くね。また仕事でね〜、良次さん」

そのまま、『門倉不動産』を発つ――――次に会うのはおそらく、仕事の席で、だろう。

752門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/17(月) 03:50:22
>>751(日下部)

「いかがわしいつもりはないんだけれど………
               よく言われはするね。

 そして、残念ながら『飲食』は血肉となる。
       あの部屋が『思い出』の彼方に消えてもね」

 『タピオカ』も『ミルクティー』も高カロリー。
  流行りには文字どおり甘い罠があるという事だ………

「それじゃあね―――
   詳しい日程の調整が出来たら『連絡』するから」

 去りゆく『日下部』の背に『門倉』は手を振る。
  残されたのは彼自身と、まだ完全に修復しきらない彼の『仕事場』。
   『門倉』の次なる仕事は
    自らの傷を癒せる『17歳』の女の子と一緒に、という事になりそうだ。


                                      TO BE CONTINUED…

753エマ『ソルトフラット・エピック』:2019/06/22(土) 21:09:37
古ぼけたキャリーバックを転がし、キョロキョロと見渡しながら商店街を歩いている。
中東系の女性で、服装も少々年季が入っている……端的に言えばボロい。
端から見れば、バックパッカーか何かに見えるかもしれない。

754エマ『ソルトフラット・エピック』:2019/06/24(月) 00:59:25
>>753
立ち去った

755夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/19(金) 00:26:00

趣味の町歩きの途中、オープンカフェで一休み。
少しして、テーブルの上に泡立つジンジャーエールが置かれた。
グラスを持ち上げて、ショウガの利いた炭酸を喉に流し込む。

       グビッ グビッ グビッ

「――――ッかぁ〜〜〜!!」

やっぱ、ジンジャーエールは『カラクチ』だな!!
ベロにガツンとくる、シゲキテキでクセになるようなオトナのあじわい。
ナツいアツはコレにかぎるぜ!!

    《L(エル)》
                     《I(アイ)》
            《G(ジー)》
      
     《H(エイチ)》
               《T(ティー)》

そのまま休憩しつつ、何か面白そうな情報を求めて『町の声』に耳を傾ける。
『ドクター・ブラインド』の『超聴覚』――――それを使って客やら通行人の声を拾う。
なんかミミよりなハナシとかない??

756???『???・????????』:2019/07/19(金) 21:23:18
>>755

夢見ヶ先明日美、そのスタンド、傍に立つ『ドクター・ブラインド』の超感覚が
周囲の喧騒を拾い続ける。

 ガヤガヤ                  「……学校で猫が……」
                  ジャー
   「……幽霊だって!ほんと……」      ワイワイ
                       レロレロ       「……キャー!私のサンドイッチ!……」
コツコツ       「……肝試し?それは……」
                               ジャリンジャリン


その無数の音は絡み合いながら、本来なら雑踏の騒音として私達の耳に入るだろう
だが、彼女のスタンドはそれを確かに聞き分け続ける。

        ……コツコツコツコツ

その中から一つの靴音が方向を変え、貴方の背後からだんだんと近づいてくると
急にサングラスの目の前に、ハンカチで覆い隠された

 「さあ、僕は誰でしょう?」

唐突に背後から質問を投げ掛けられる。
同じくらいの年頃の少年の声だ。
どこかで聞いたことがあるような気がする。

757夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/19(金) 22:19:51
>>756

誰かが背後から近付いているのは『聞こえていた』。
だが、いきなりの目隠しまでは予想していなかった。
ナニモノだキサマ!!
さてはソシキのエージェントか……!!
このミセで『マッケンジー』にうけわたすよていの『ブツ』がねらいだな!!

「ほうほう――」

どこかで聞いたような声を聞き、思案する。
このまま普通に当てるのもいいだろう。
しかし、それじゃあ『ツマらない』とおもわないかね??

「じゃあ――――『あてて』みよっかな」

      シュバッ

『ドクター』を動かし、ハンカチを持っている手に爪で『チクッと』する。
ほんのちょっとでいい。
それだけで十分。
『ドクター』の能力の一つ――『視覚移植』を行うためには。
本来は盲目である『ドクター』だが、それによって一時的に『視覚』を得る事が出来る。

「えっとね〜〜〜」

『ドクター』を振り返らせ、その人物を目視する。
                  ブースト          ブラックアウト
そういえば、前に会った時に『鋭敏化』は見せたけど『盲目化』は伏せていた気がする。
ま、ベツにいっか。

「――『イカルガのショウさん』ににてるっていわれないッスかぁ〜〜〜??」

本人は相変わらず目隠しされたままで答える。 ブラックアウト
ちなみに、『視覚移植』が成功しているなら、彼は『盲目化』しているだろう。
つまり、イマのわたしと『おなじジョウタイ』ってコトになるな!!

758斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティー』:2019/07/19(金) 22:38:27
>>757

「ーーあたり。」
「君みたいには上手くいかないな。」

ハンカチが取り除かれ、視界が開ける
彼が貴方の背後から現れた、夏風に色褪せたスカーフを揺らし、笑みを湛えた少年
斑鳩 翔。

その腕に鎖が巻かれたかと思うと、即座にボロボロと崩れ落ち、ずるり、と影のような腕が現れた
腕が夢見ヶ埼の肩を叩き、そしてテーブルの縁を触りながら、少年を向かいの席へと誘導する。

「やるもんじゃあないなあ、キャラじゃない事は
 今度は僕からからかおうと思ったんだけど、逆にやられてしまった。」

「椅子、椅子……何処だっけな。」

たどたどしい様子でテーブルの周りを回る
肩を竦めつつも、しばらくするとお手上げのようで『4本の腕で降参』しつつ口を開いた。

「……よければ助けて頂けると、嬉しいんだけど。」

759夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/19(金) 23:24:53
>>758

『視覚移植』の持続時間は『10秒』だ。
解除しなくても自動的に元に戻るが、それまでの間に『事故』が起きるかもしれない。
たとえば、テーブルにぶつかった拍子にグラスが倒れるとか。

「ほうほう、ソレはいちだいじですな。よし、すぐ『シュジュチュ』しよう!!」

だから、『持続時間切れ』になる前に能力を解除する。
ただし、そうなると別の問題が出てくる。
いわゆる『ささいなモンダイ』ってヤツだけど。

「――――『アリス』のワンポイントアドバ〜〜〜イス!!」

「さいしょはさぁ、ハッキリあけとかないほうがイイとおもうよ??」

人間の目は、暗い所から急に明るい場所に出ると『眩しさ』を感じる。
しかも、今の季節は『夏』だ。
視力が戻る際に感じる眩しさは、相応に強いものになるだろうから。

「あせらなくてもイイのよ??さぁ、カラダのチカラをぬいてリラックスして……。
 おちついたキブンで、ゆっく〜〜〜りとあけていきましょうね〜〜〜」

さながら保健の先生か何かを思わせるような作り声で語りかける。
テーブルの上のグラスは手に持っている。
眩しさが事故の原因になるとも限らないからだ。

760斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/20(土) 00:13:18
>>759

急激に戻った夏の日差しに目を細めつつも、どうにか椅子に座って一呼吸入れる
視界に明瞭な世界が入ると同時に、夏の暑さと喧騒が同時に戻る気がした

「ご親切にどうも、アリス。」

涼し気な声と微笑みを返して彼女と対面する
前と会った時と別段違いはなく、何時ものように陽気にすら思えた

「気分はさながらジブリの大佐だったよ」
「最後にめがぁって言いながら彷徨う感じの。」

(影の頭で視界を確保すれば良かった気もするが、まあ気づかなかった事にしておこう
 事実、見えたかは怪しいし……。)

「で、其方は暑い夏に冷えたジンジャーエール?いいね。すいません、そこの可愛い緑のエプロンした店員さん、アイスティーを」

少年は彼女の手に持った結露したグラスを見て
呼ばれてやってきた店員と二言三言かわすと、店員が二人を見てから斑鳩に話しかけた。


「え?キャンペーン?ストロー2本のカップル用の大きいサイズがある?じゃあそれで。」

店員を何でもないように見送った後、目の前の彼女に向き直る
いつも通りの笑顔で。

「それで、夢見ヶ埼ちゃんはどうしたの?散歩の休憩?鏡の世界探し?」

761夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/20(土) 00:42:13
>>760

「わたしぃ〜〜〜??いつもどおり、この『フシギのセカイ』をボウケンしてる。
 なんかユカイなコトとかないかな〜〜〜って」

「そしたら、ホラ――――ちょうど『みつかった』トコ」

両手でテーブルに頬杖をついて、正面の相手を見つめる。
まるで恋人と語らっているかのように。
そんなワケねーけどな!!カンチガイすんなよ。

「――で、どうよサイキン??あの、アレだアレ。なんかあった??
 こう、かわったコトとか。モグラがサカダチしながらスキップしてるようなカンジの」

「つーかさ、ショウくんはナニしに……いやまて、あぁ〜〜〜。うんうん――わかった」

一人で何事か納得して、何度か大きく頷く。
アリスのカンサツリョクとスイリリョクは、ヒトツのケツロンをみちびきだしたのだ。
ほかのヤツならいざしらず、このアリスのめはごまかせない。

「さては、さっきのウェイトレスをマークするためだな!!やるねぇ〜〜〜」

「ナツはこれからだからな〜〜〜。『アツイよる』をすごすのは、まだまだまにあうぞ!!」

762斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/20(土) 02:04:13
>>761

彼女にとっては不思議な世界
例え僕にとっては深海の底でも。

生まれた時から、さっきスタンドが見せた光景で、急に光が戻るなら
確かに彼女にとって色に溢れるここは不思議な世界なのだろう

(感受性が豊かというか…一緒にいて退屈だけはしないで済むタイプだな)

そう考えつつも、店員が持ってきたグラスを受け取る
……想像以上にでかい、おまけにハートマークの意匠で作られた
これまたでかい二口ストローが刺さっている。

(安いし興味本位で頼んでみたけど、成程 向かい合わせで飲むんだな
 そうでないと一人では吸えず、飲めない仕組みか。)

「モグラが逆立ちはないなあ、チェシャ猫のようなのなら海で一匹。」

そう言いかけた所で夢見ヶ先……もとい、アリスが自信満々に間違った推理を披露しだした
とりあえず断じておこう、ターゲットが違う、フラミンゴではボールが打てないのと同じだ。

「いや?マークは僕の目の前の、素敵な女の子だけど」

自分でも驚くくらいに、その台詞はあっさりと舌から滑り出した
夏の暑さのせいだろう、きっと たぶん メイビー。

「『アツいよる』に、一緒に夏祭りを見て回るの、どうかなって」 「駄目?」

視線を合わせ、はにかんで言っては見るが、まあ断られたら諦めよう
此方としては散々からかわれた記憶が有るので、目指せ赤面ではある。

(……おかしいな、僕は何やってるんだろう。)
(スタンド使いを探して…いや、夏祭り会場なら人も多いし、スタンド使いも集まるのでは?)
(つまりこれは両親のためにも合理的なお誘い、うん!そう!よし!)

言った後に今更鎖まみれの脳みそが回転を始める。
夏の風景を移すグラスの氷が、ほどけて子気味良い音を立てた。

763夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/20(土) 03:03:07
>>762

「なるほど??それが『いつものテ』ってワケですな〜〜〜。
 アマいコトバで『ソノき』にさせて、アソんであきたらポイしてツギのエモノを……。
 そうやって、イマまでナンニンなかしてきたんだ??おおん??
 もうショウコはあがってるんだ。ジハクしたらツミがかるくなるぞ!!
 さぁ!!さぁさぁさぁ!!」

やや早口で、テキトーなコトをベラベラ喋る。
そうこうしている間に、目の前にクソでかいドリンクが置かれた。
まぁフタリぶんだし、ナットクだな!!
1ぷんでのみきったら、5マンエンとかない??
たぶんショウくんがチョウセンしてくれるハズだ!!
わたしは『5マンエンをもらうカカリ』をやろう!!
これぞ『チームプレイ』だ!!

「あのさ、いちおういっとくんだけど――」

「『いっていいコトとワルいコト』があるぞ」

「もし、それが『シャレだったら』のハナシで」

「マジだってんならイイよ。イマのトコよていないし」

「――タノシソーじゃん??」

アスファルトから照り返された太陽光を、サングラスのレンズが反射している。
そのせいか、表情は今一つ分からなかった。
しかし、少なくとも声色は普段と同じだ。
ただ平時と比べると、多少静かな感もある。
ほんの少しだけマジメになったような、
あるいは『マジメになったフリ』をしているような――そんな雰囲気だった。

「まぁソレはソレとして――――」

改めて『ドリンク』に視線を移す。
今まで見たコトがない代物だ。
コレはコレでヒジョーに興味がある。

「コイツはスゲーのがきやがったな……!!
 まったく、こんなのチュウモンするヒトのカオがみてみたいぜ。
 ミヂカなバショにも、こんな『フシギ』があったとは……!!イイねぇ〜〜〜」

サングラスの奥の瞳を輝かせ、ストローに口をつける。
しかし、ドリンクが上がってこない。
『同時に吸わなければ飲めない』というコトを知らないようだ。

764斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/20(土) 04:35:44
>>763

「あ、バレたぁ〜?」

少女の怒涛の追求に、舌先から出た言葉は悪びれも無く軽かった。

「お祖父ちゃんが『女を口説く時はこう口説けって』うるさいんだよ、
まあ顔の方はイケメンに生んでくれた両親に大感謝だけど
僕より上手のアリスには通用しないしなー!参っちゃうよな!」

「ちなみに今は君が初めて使う相手だから、失敗もあるよね!精進します。」

そう言うと肩を竦め、苦笑いで誤魔化そうとした

(ま、それも『今こうなった原因』の一つなんだから複雑と言えば複雑だが……。
 『そのいかした顔がイラつく』だって?まったく、あいつらどうかしているよ。)

「でも、約束の方は『マジ』さ女に礼を失するなって言うのが、僕の家の教えだ。
 それに、僕が約束を破ったのは ……1回だけだからな。」



(もっとも、タイムリミットが先に作動しない限りは、だが。)

タイムリミットとは結局のところ、彼の複雑な人格に終始する
1番目は僕達の生死に興味がない

問題は2番目だ、怒り狂った2番目の人格が『スタンド』で、そこらのチンピラを殺す手段を確保したとたん
まず間違いなく殺して回るのが見えている、そして善人のスタンド使いなら、
『あまりにも証拠が残らない殺人』は見逃さないだろう……そうなると

(最悪なのは、『善人』が『徒党を組んで』襲いかかってくる事だ……
 そうなったら、僕はもう、両親を助ける機会すらなくなる。)

(その前に人格を統合か分離か……やれやれだ、
 何方にせよ『僕が主人格になる保証は無い』、断頭台に向かって歩いているような物だ)

(感謝はしているが、あの人も無茶を言うな『人類そのものを憎んでいる人格』が『熱愛』なんて、できるわけがない)
(だが他の二つは『死線』と『悲劇』……成長できても僕が死んだら意味がない、結局全部困難という事か。)

(『ロスト・アイデンティティ』…これ以上何を無くせと言うんだろうな。)

「ま、それはそれとしてデートの約束ゲット 浴衣姿とか楽しみだな。」

悪い予想を振り払うように首を振って思考を現実に戻す
見ると、丁度夢見ヶ崎がカップル用ドリンクに、(サングラス越しに)瞳を輝かせている所だ
だが、頑張っても吸い出せていない、仕組みを知らないのだろう

しばらく苦戦するのを見ているのもいいと考えたが
流石に少年が見かねたので

「……ノックせずにもしもぉ〜し」
「それ、1人じゃ、飲めない奴 ほら、こうやって……」

もう片方のストローを銜えて、一緒に吸おうとした。

765夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/20(土) 13:14:22
>>764

「ナニこれ??このストローこわれてる。だってゼンゼンのめないし。
 ストローってのは、のむためにあるんじゃねーのかよ??
 すえないストローなんて、もちてがサカサマについてるヤカンみたいなモンだ。
 つかえねーヤツだな〜〜〜カネかえせ!!」

この『アリス』をコンワクさせるとは、イガイにガッツあるじゃあねーか。
だが……『そのていど』でとめたきになってるんならナメすぎだぜ!!
『アリス』のじゅうなんな『ハッソウリョク』をアマくみるんじゃあねー。
『ストローをつかわなきゃならない』なんてダレがいった??
ストローがつかえないんならよぉ〜〜〜

      ガシッ

「『ちょくせつのめば』すむハナシだぁ――――ッ!!」

役に立たないストローを完全に無視して、グラスを持って直接飲もうとする。
しかし、飲み方を教えようとしているのを見て、ギリギリで手を止めた。
同じように、再び自分もストローに口をつける。

「あ、のめたわ」

ごく自然にドリンクが吸い上がる光景を見て、納得した。
だけど、すこぶるメンドくせーな。
これ、ヒトリでリョウホウくわえてもイケるのかね??

「さすがによくしってるじゃん??
 こうやってオンナつれこんで、いつもおなじようなチュウモンしてるワケだ。
 ついにうごかぬショーコをおさえてやったぜ!!」

「――――で、ナンのハナシだっけ??『ユカタ』がどうとかって??」

「わたしは『ユカタをきる』なんてヒトコトもいったオボエはありませんね。
 イカルガさんが、そういうカッコウをおこのみだというなら、ヤブサカではありませんが。
 ただ、そういうカッコウがスキならスキと、『ハッキリ』おっしゃっていただきませんと」

「――どうなのですか??」

感情を抑えた声色と口調で、容赦なく追及を続ける。
そう、まるで男性社員からデートに誘われた『高嶺の花のエリートOL』のように!!
さぁ、おもいのままにジブンの『シュミ』をぶちまけるがいい!!フハハッ!!

766斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/20(土) 17:22:25
>>765

「フッ、僕のクラスメイトの知識を甘く見るなよ…年がら年中『彼女欲しい』とか言いながら
 学生服の第2ボタンを仮縫いして取られやすいようにしている奴だ…!流石の僕も戦慄する。」

別名:色ボケした馬鹿とも言う。
だが健全な男子生徒とかそんなもんである。

(まあアイツには後で自慢するとして)

悔しがる顔が目に浮かぶが
今度は浴衣が好みなのか等と問われてしまった
声色が抑えられて、真夏のクーラーのような印象を受ける


(話しぶりがころころ変わるなあ、夢見ヶ崎ちゃんは
 とはいえ……)


「そうだなあ。」
「好きと言うよりは、夏の祭りを更に楽しむための装いだと思ってるけど。」


やぶさかではないと言われ、今一度目の前の少女を見直す

セミロングの金糸が夏の日差しを反射して煌めき
ネイルアートの施されたカラフルな付け爪が指先を彩り、
黒目がちの大きな瞳を、ブルーレンズのサングラスが覆う


「元がいいから何着ても似合うとは思うし
 頼んだら着てくれる辺り優しいよね、アリスは。」

本心からそう言うと、アイスティーを更に飲む
冷えた液体が喉を流れ落ちていく

(白地に紫陽花辺りもいいと思うけど、白は汚れが目立つからなぁ。)



「それとも、夏用の特別な装いはお気に召さない?
 他の時期だと着れない物だけど。」

彼女の好奇心をくすぐるように囁く
事実、興味が無いわけでは無いのだ。

「ところでさらっと飲んでるそれ、僕のドリンクなんですけどー!
 資本主義に乗っ取り代金を要求するー!」

767夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/20(土) 18:19:25
>>766

「あー、うん、まぁね、そりゃそうだ、うんうん」

こうもストレートに褒められると、何だかミョーに照れくさい気分になる。
だから曖昧な相槌を打って、この話題を切り上げてしまおう。
だけど考えてみれば、これも『未知』の経験の一つだ。
『全ての未知』を網羅する予定の『アリス』としては、体験しておくべくなのかもしれない。
そう考えていた所に、『ダメ押しの一手』が放たれる。

「くッ…………!!『トクベツ』か…………!!」

心が揺らいだ。
その手の誘いには弱い。
なぜなら『アリス』だからだ。
アリスは『フシギ』を追い求めるモノであり、私は『アリス』である。
つまり、私は『フシギ』を追い求めなければならないのだ。

「――――『のった』ッ!!『きて』やろうじゃないか!!
 わたしを『ソノき』にさせやがって……。コウカイすんじゃねーぞ!!」

    ズズズズー

さりげなくドリンクの量を減らしながら、ビシッと宣言する。
それから顔を上げて、不意にニヤリと笑ってみせる。
何事か企んでいるような――そんな不適な顔だった。

「ヘイヘイヘイヘイッ!!ショウくんさぁ〜〜〜、ヒトツだいじなコトわすれてるよ??
 『わたしといっしょにカフェでくつろぎのヒトトキをすごしてる』ってコトをさぁ〜〜〜。
 『モトがイイからナニきてもにあうアリス』とイッショに。
 ソレが『ドリンクだい』にならないのは、ちょっとシツレーすぎるとおもわないかい??」

            ニヤッ

「ショウくんはわたしとヒトトキをすごす。わたしはドリンクをいただく。
 コレで『つりあい』はとれてるワケだよねぇ〜〜〜??
 ココでわたしがオカネだしたらさぁ〜〜〜
 『ワリ』にあわなくなるんじゃないのぉ〜〜〜??」

「しかもさぁ〜〜〜『デート』のさそいまでオーケーしたよねぇ〜〜〜??
 さらにオカネまでとろうなんて、ソレこそ『シホンシュギイハン』じゃないのぉ〜〜〜??」

ニヤニヤしつつ、ドでかいグラスを挟んで向かい側に座る相手の顔を眺める。
『シホンシュギ』っていうのがナニか、よくしらないけどな!!
さぁ、どうでる??イカルガショウ!!

768斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/21(日) 02:20:39
>>767

「グッド!」

口角が嫌でも吊り上がる
彼女…アリス相手にまず一勝と言う所だろう
好奇心をくすぐるのは成功だったらしい

「そうだね、後悔するのは隣に誰もいないクラスメイトだろうけど。」

動揺して話題を斬り上げられた、
ポイント1-0。
ただし、彼女はただで倒れる相手では無かった
不敵な笑みと共に、即座に反撃の手を刺し始めたのだ

「女生とカフェのひと時での支払い?」

そう言われると困った事になった
なにせ、確かに僕が褒めているのは事実だし
これに下手なNOを突き付けるのは、今までの言葉を嘘にする事になる

(そう言いつつ更にドリンクを減らすあたり抜け目ないなあ。)
(が、どうかな……)

資本主義と言うのは適当にはなった言葉だが
このまま彼女に言わせておくのは男がすたる、気がする。
よろしいこの斑鳩、受けて立つ、ならば『ふたつの』頭をフル回転すべし。

うんうんと唸りながらも、ドリンクが半分を切った頃に、は何とか影の頭共々ひねり出し
説明の為に指を一本ずつ立て、順に折っていく

「……一つ、デートの誘いが無ければ浴衣を着ようなんて『特別』考えてなかったんじゃない?
 つまり僕から君に『教えてる』という体で『デートは双方に利益が有る』、よって、チャラ。」


要は自分は『デートの機会を得る』、彼女は『浴衣を着る機会を得る』
という事で相殺しようという論理だった、彼はそのまま続けて口を開く


「二つ、確かに君は美人だ、それは認めていて、覆えさない
 だが、僕だってそれに負けているとは思っていない、僕は斑鳩家の一人息子で…この顔に生んでくれた両親に感謝しているから」

彼は自分が整っているとは考えていたし、事実その通りではあった
ただ、彼の自信は鏡を見た主観的評価では無く、単に両親への愛で自分も美形だと信じているのだ



      「それに」



「君のような女の子が、たったのドリンク一杯で『デートに誘われた』、なんて自分を安売りしていいわけがない」
「友人にはこう言えばいい、清月学園一のイケメンをタダで『デートさせてやった』…のほうがいいんじゃないか?」

(……我ながら結構苦しいかもしれない!)

斑鳩は言い終えると、こう考えた
世の中の女を口説くのが礼儀だと思っている男性は、皆、同じような苦労をしているのか……と

769夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/21(日) 07:01:30
>>768

「『イケメン』だったの??」

今初めて気付いたような口調だった。
客観的に見て自分のルックスがいいのかどうかも、正直な所よく分かっていないのだ。
そう言われたから、深く考えずに同意しただけで。

「まぁ、そういわれてみればそーかもね」

生まれつき視力が働かなかった自分は、顔に対する『優劣の感覚』が薄かった。
それぞれが違っていて、その違いが面白いとは思っているのは事実だ。
しかし、『そこに優劣を感じるか』と言われると、あまりピンとこない。

「うんうん、そのトオリだ。やっぱりイカルガくんはかしこいなぁ!!
 ハンサムでスマートでおまけにアタマもいい!!
 よっ、プレイボーイ!!イロオトコ!!ジェームズ・ボンド!!」

あまりにもアッサリと、ほぼ全面的に同意する。
特に反論してくる様子もない。
ソレはナゼか??

           (――――ニヤリ)

表情には出さず、内心でほくそ笑む。
こちらの目的は最初から、『勝手に飲んだドリンク代の支払いを回避する』ことのみ……。
そのために!!論点を『ウヤムヤ』にして忘れさせるッ!!

「ユカタの『ガラ』は、どんなのがイイとおもう??『トリガラ』いがいで」

さらにダメ押しにッ!!ごく自然な流れで『話題』を転換する!!
もし思い出したとしても、あれだけ力説した後で『カネを出せ』とは言いにくかろうッ!!
『いつまでもコゼニにこだわるミミっちいオトコ』という『ちいさくないマイナスイメージ』が、
『ウワサずきのジョシたち』のあいだでフイチョウされるコトになるぜぇ〜〜〜??

「やっぱ『ブルーけい』か??そこはかとなく『アリス』っぽい。
 コーディーネートがジューヨーだからな。ネイルもあわせないといけないし」

ソレはソレとして、ユカタはタノシミなのだ。
むしろジブンのほうが、それまでのハナシをわすれつつある。
あれ??さっきまでナニはなしてたっけ??モグラのハナシか??

「よし!!これからみにいこうよ!!
 おもいついたら、すぐコウドウしなきゃ!!
 はやくしないとユカタがにげるぞ!!アイツらケッコーはえーからな!!」

「――――イイよね??」

さも当たり前のように提案を持ち出す。
まぁ断られたら一人で行くだけなんだけど。
どうよ??

770斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/21(日) 18:08:45
>>769

「……有難う!」

彼女に感謝をしつつも脳内でゴングが鳴り響く
苦笑しつつも今回の舌先に置いて敗北を喫した

(くっ、これ以上の追求は無理か…!
 すまない、男子生徒諸君、僕が男であるが故の敗北だった…!)

自身の見目を女性に褒められた以上
これ以上の金銭への追求は、男としても『みっともない行為』にしかならないのだ
男のプライドにより始まった戦いは、漢のプライドにより敗北したのであった――

「まあ、(僕以外の男子生徒の尊厳とか、別にどうでも)いいや
 それで?浴衣を見に行くんだったらお祖母ちゃんの贔屓の店を紹介するけど。」

席を立ち、レシートを持って彼女の傍に立つ
夢見ヶ崎を誘うように手を振ると、口を開いた

「何せ、夏の時間は有限だからねアリス?
 お茶会の時間は終わり、お店で君に似合う帯を探す時間だよ。」

意地の悪そうな笑顔と共に、歩きだす。

(――そう、時間は有限だ。僕達にとっても。)

結露したグラスが、夏の風に吹かれて、残されたテーブルを濡らしていた。

771夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/21(日) 23:23:12
>>770

「ナニそれキョーミあるぅ〜〜〜。
 まさか、そんなバショをしってるとはな…………ナカナカやるじゃないか!!」

目の前に出されたのは、新しい世界への招待状。
答えは決まってる。
なぜなら、私は『アリス』だから。

「そうね、ジカンはたちどまらないもの」

      ガタッ

「だから――――わたしたちはあるいていくのよ」

椅子から立ち上がり、芝居がかった口調で応じる。
『アリス』は立ち止まらない。
世界から世界へ、常に新たな『未知』を求めて渡り歩いていく。

「では、『ウサギ』さん――『アリス』をあんないしてくださる??
 あたらしい『フシギのくに』のいりぐちへ」

      ニコッ

一片の曇りもない晴れやかな笑顔で語りかける。
その表情は、二人の頭上に広がる夏の空のようだった。
今日もまた、『アリス』は新たな冒険へ赴くのだ――――。

772宗像征爾『アヴィーチー』:2019/08/07(水) 21:34:04

小さな公園の隅に設置された自販機の前に作業服を着た男が立っている。
硬貨を入れてコーヒーのボタンを押す。
反応は無い。
少し待ってから緑茶のボタンを押す。
やはり反応は無い。

「この暑さだ」

続いて返却レバーを操作する。
反応は無い。

「機械も狂う」

踵を返して自販機に背を向ける。
歩き出しかけた時に背後から音が聞こえた。
コーヒーと緑茶が一本ずつ出て来た音だ。
自販機に近付いて二つの冷えたスチール缶を取り出す。
頭の中では余る一本を片付ける方法を考えていた。

773芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/08/07(水) 23:59:36
>>772

「あぁぁぁ〜〜〜〜暑っっちぃなぁ たぁぁくよぉ

蒸して蒸して蒸し蒸し蒸し……嫌気差す中でも、ウィゴーちゃんの
体臭が咽るぐらいに漂う事が、地獄みてぇな環境の中での天国だよな」

『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト です。だぁぁれの体臭が
漂ってくるだ、コラッッ゛!! こちとら無臭だわっ!!!』

「安心してくれ この世で一番の香りだ」

『くっそ! 30℃超える熱でも、こいつのイカレ脳味噌を正すのは無理かっ!』

貴方の横を平然と通り過ぎる、ヤバイ雰囲気の男と ある程度まともな調子の
スタンドが堂々と会話しつつ自販機へ立つ。

「どんれぇにすんの?」

『慣れ慣れしく肩に手を置こうとすんな。んじゃ 午後ティーで』

「はいよぉー」  カチ   カチャン

『まったく、何時になれば猛暑は過ぎるんでしょうか』 ゴクゴク プハー!

そして、缶へとスタンドが手を翳す。

キィィン スラッ   ギュンッ

缶から『フィルム』が抜き出され、スタンドが手を弄ると蓋を開ける前の
状態へと戻っていく。それを男が平然とした様子で頂いた。

ゴキュ ゴキュ プハーッッ!

「んっめぇぇぇ〜〜 やっぱウィゴーちゃんとの間接キッスは最高だぜぇぇ〜え!」

『……駄目だ 抑えろ 自分。いずれ妖甘様か成長するにしても、自立型になり
こいつを思う存分ぶっ倒すその日まで、抑えるんだ……っ!』

こんな奇妙な光景が、貴方の眼前で繰り広げられている。

774宗像征爾『アヴィーチー』:2019/08/08(木) 00:21:57
>>773

「ああ――」

スタンドと男を見た。
コーヒーの缶を開けて中身を飲み干す。

「この暑さだ」

空になった缶をゴミ箱に捨てる。
やはり自分で始末するべきだという考えに至った。

「人間も狂う」

緑茶の缶を開けて一息に呷る。
空になった缶を無造作に捨てた。

775芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/08/08(木) 19:56:57
>>774(レス遅れ失礼しました)

男の奇行に対し狂気を垣間見る。だが、この男の場合は正気も狂気も
見てくれはどちらも変わり映えはしないものなのだろう。

空き缶がゴミ箱に入る音に、狂気を纏う芦田は緩慢な動作で首を向ける。

「あっっついよなぁ本当によぉ、なぁ? 年々気温が上昇しててよぉ
南極だが北極の氷も溶け切ってなぁ」

やってられねぇよなーと、空き缶を逆さにしつつ残る雫を舌で受け止める。

「苛々が堪らねぇ。なぁ、あんたも偶には暑さ以外でも何でも
ストレス発散したくならねぇか?」

自販機を指しつつ、男は嘯く。

「俺の嫁さんは器物破損するとブチ切れんのよ。おたく、一丁派手に
ぶっ壊してみね? 見るだけでも、こちとらちょいとは胸がスカッとすると思うし」

『誰が嫁だコラ』

貴方(宗像)へ自販機を破壊する誘惑を薦める・・・。

776宗像征爾『アヴィーチー』:2019/08/08(木) 21:45:01
>>775

「自販機に八つ当たりしても俺の気分は変わらない」

「つまり俺には一つの得も無い」

男とスタンドから視線を外して自販機から離れる。

「どうしてもと言うなら自分でやれば良い」

近くのベンチに腰を下ろして再び男とスタンドに視線を向ける。

「その後で起こる全ての問題に責任が持てるなら――だが」

「自分の行いの後始末が出来ないなら止めるべきだ」

777芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/08/08(木) 21:54:48
>>776

>自分の行いの後始末が出来ないなら止めるべき

「出来るぜ?」

さも当たり前の顔を男(芦田)はする。そして、自分のスタンドにも
目線を向けた事も何となく勘付いたようだ。

「うちの嫁さんは最高だからなー。完全にぶっ壊れて原型留めずとも
多少パーツあれば直ぐに元通りなのよ。凄くね? 凄くね?」

『嫁呼ばわり、止めてくださいよ』

そして軽い能力自慢と共に、不平不満もうぶつけてきた。

「けど、俺一人で自販機ぶっ壊しやろうにも、無駄に運動して
余計に上着と股間に汗がだらっだらになるだけで不快度マッハでよぉ。
ウィゴーちゃんも女の子で細身だから、自販機壊すような悪い事なんて
しないし、俺にもさせませんだとよ」

そう言う部分に惚れてんだけどよ、と零す男を。スタンドは
ウィゴーじゃなくウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトだと返しつつ
惚れたとか呟くなと本体を、まったく仕方がない奴だとばかりに睨んでる。

「なぁ、能力説明したんだしよぉ。あんたの知り合いか、あんた自身
喋れるスタンドの知り合いっている? 
教えてくんねえかな。ウィゴーちゃんの友達増やしたいのよね 俺。
それか、ウィゴーちゃんでも着れるスタンドの服作れる人とかいたら
あんたのなんか貴重品壊れた時とか、無償で直すけど」

ウィゴーちゃん任せだけど、と。スタンドに改めて正式名称を言い返されつつ
男はマイペースに告げた。

778宗像征爾『アヴィーチー』:2019/08/08(木) 22:11:00
>>777

「俺は能力を教えてくれと言った覚えは無い」

「能力を聞く代わりに情報を提供する取り決めをした覚えも無い」

他人に能力を教える事は大きな危険性を孕んでいる。
その相手と敵同士になった時に不利になる可能性があるからだ。

「だが敢えて答えるなら――」

「知らない」

男の言うようなスタンドと出くわした経験は無かった。
もし知っていたとしても教えるかどうかとは別の問題だ。

「それだけだ」

779芦田『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』:2019/08/08(木) 22:43:35
>>778

「ふぅん まっ、知らねぇなら仕方がねーな」

所詮この世は納得出来ない理不尽の連続。そう上手い具合に答えが
転がりこんでくる事など無いのはわかっている手前。芦田はパタパタと
手うちわで生ぬるい風を顔に運びつつ了解した意を唱える。

「んじゃまー、またどっかで出会えた時に。もし知り合ってたら
教えてくれーな」

あー暑い暑い。海にでもいっかウィゴーちゃん。

ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライトですよと訂正を告げられつつ
足の向きは宗像と真逆のほうへと進んでいく。

(あー、暑いし面白い事も転がってこねぇなぁ)

(なんか一発、どでかい事が町で起きれば良いんだが)

780宗像征爾『アヴィーチー』:2019/08/08(木) 23:02:53
>>779

「――確約は出来ない」

立ち去る男の背中に投げ掛ける。
そのまま遠ざかる男とスタンドを見送った。

「妙な奴だ」

それが男に対して抱いた感想の全てだった。
客観的に見て正常とは言い難い。

「暑さのせいなら良いが――」

781ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/08/16(金) 22:24:12

少し前から、一部の人々の間で『奇妙な噂話』が囁かれるようになっていた。
それは、『高速で走り去る少女』の噂だ。
リュックを背負った七歳ぐらいの少女が、常識では考えられないスピードで駆け抜けていくのだという。
ある目撃者によると、自転車を追い抜いてバイクと並走していたらしい。
そして、その少女は主に『夕暮れ時』に現れるという事だ――――。

  タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタッ

「――――早くッ」

「帰らなきゃッ」

「はぁッ――――」

「『永添さん』がッ」

「心配しちゃうからッ」

俺とヨシエは――正確には『リュックに入った俺を背負ったヨシエ』は、夕方の通りを走り抜けていた。
俺の『ワン・フォー・ホープ』の能力は、人間に『超人的なスピード』を与える。
今は、遊びに夢中になって帰るのが遅くなったヨシエのために使っているワケだ。

               バッ
                        ババッ
                   バッ

だが、この姿は少々――いや、かなり目立つ。
一応、出来るだけ人目につきにくいような狭い道を選んではいた。
ヨシエに与えた『達人的な精密性』で、障害物の多い場所でも速度を落とさず突っ切る事が出来る。

                           タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタッ

しかし、だからって透明になれるワケじゃないからな。
完全に姿を見られなくするなんていうのは、まぁ無理な話だろう。
どこかで、『変な噂』にでもなってなきゃいいが。

782成田 静也『モノディ』:2019/08/19(月) 23:42:34
>>781

「大分遅くなってしまったな・・・」

この街の学校に転入して数か月、前の学校より今の学校の方が先に進んでいる科目がいくつかあり、
それのために放課後過ぎまで居残りしていたのだ。

「早く帰って夕食の準備しないとな・・・っ!?」

後方から尋常じゃない速度でこちらに来る足音(?)が迫ってくるのを『モノディ』が聞き取った。

いきなりの接近で驚いたのもあり振り返って反射的に『モノディ』で防御の構えをとった。

が、振り返って目にしたのは小さな子供の姿であった。

「子供!?しかしこの速度、とてもこの年の子供に出せる速度では…まさかまたスタンド使いか!?」

783ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/08/20(火) 00:29:46
>>782

 タタタタタタタタタタタタタタタタ

遠方から接近してくる足音を、『モノディ』の鋭い聴覚が聴き取った。
『モノディ』程ではないが、その速度は『高速』と呼んでいい速さだ。
『短距離走専門のプロアスリート』でさえ、到底不可能なスピードで近付いてくる。

            タタタタタタタタタタタタタタタタタタ

いや、これは『陸上選手』どころではない。
その子供は、『バイク』に匹敵するスピードで走っている。
どう考えても普通では有り得ない――――『スタンド使い』だ。

「――わわッ!?」
                ズザッ

驚いた様子の少女が、急ブレーキをかけて立ち止まった。
明らかに『モノディ』が見えている。
それは間違いない。

(『スタンド使い』らしいな……)

ヨシエのリュックの中で、俺はどうするか考えていた。
見られたのは仕方ない。
しかし、スタンド使いに見られたとなると面倒な事になるかもしれない。

(……ひとまず様子を見るか)

相手がまともな奴なら、大きなトラブルにはならないだろう。
だが、そうでない可能性がないとは言い切れない。
その場合は、何か手を考えなければならなくなる。

784成田 静也『モノディ』:2019/08/20(火) 23:02:43
>>783

・・・今のところはまだ様子見だが敵意とかは目の前の少女からは感じられないな。

ならば・・・

「驚かしちゃってゴメン、いきなりすごいスピードで走ってきたもんでついとっさにスタンドを出してしまった。」

「一応聞くけど、キミはスタンド使いかな?オレの『モノディ』も見えている(?)みたいだし。」

警戒やいらない敵対心を持たれないように優しめの声色で聞いてみる。

785ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/08/20(火) 23:29:17
>>784

「――――『スタンド使い』?」

少女はキョトンとした表情だった。
単に、スタンド使いという言葉を知らないだけかもしれない。
それとも何か『別の理由』があるとも考えられる。

「あッ、こっちこそゴメンなさい。でも、ぶつからなくて良かったね!」

   スッ

少女が手を伸ばし――――『モノディ』に触れた。
本来なら触れないはずのスタンドに『素手』で触っている。
触れられている感触が、『モノディ』を通して確かに伝わってくる。

「ケガしてないですかー?大丈夫みたいですねー」

看護師のマネでもしているのか、少女はそう言って『モノディ』から手を離した。
その様子から、少女が警戒していない事が分かる。
触られた場所も、別に何の変化もない。

       ニコッ

少女は笑っている。
裏のない子供らしい笑みだ。
子供らしいからこそ分かりにくいとも言えるかもしれないが…………。

786成田 静也『モノディ』:2019/08/21(水) 00:00:56
>>785

『モノディ』に触れた上にこの少女はスタンドを知らない?
オレはスタンドに目覚めた時に一通りの説明は『心音』さんから聞いた。

この子は聞かなかった?それとも説明されなかった?何か違和感があるな・・・

少し『モノディ』の聴覚で周りを探ってみるか。

「ありがとう、でもちょっとスピードの出し過ぎかな。」
「オレはモノディ・・・このそばに立つコイツがいるから大丈夫だけど他の人ならもっと驚いてしまうし、
キミ自身も車とかにぶつかると危ないから今度からはほどほどの速度でね?」

諭すように話していると。モノディが二つ目の心音を捕らえた。少女のものと比べると小さいが確かに聞こえる。

「キミ・・・えっと名前を聞いてもいいかな?オレは成田、ナリタシズナリっていうんだ。」

「キミは今、一人じゃなくてそばにだれかもう一人いるのかな?」

少女に聞いてみる。

787ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/08/21(水) 00:31:57
>>786

よく見ると、少女の手の甲に『光の紐』が繋がっていた。
その先にあるのは、少女が背負っているリュックだ。
そこに向かって『光の紐』は伸びている。

「はーい!ヨシエは嬉野(うれしの)ヨシエっていいまーす!」

ヨシエは元気よく返事を返した。
そして、『モノディ』の優れた聴覚は第二の心音を捉える。
その位置は『ヨシエの背後』だ。

「いるよー。ねっ?」

       シュルルルルルルルッ

その時、『光の紐』が少女から離れ、リュックの中に戻っていった。
中に何かがいるように、リュックが小さく揺れ動く。
次の瞬間、『黒い何か』がリュックから顔を出した。

       ヒョコッ

一匹の『チワワ』だ。
一般にスムースコートと呼ばれる短毛種で、毛の色は黒い。
こうした黒単色の種類は『ソリッドブラック』という名で知られている。

「『ディーン』っていうんだよー」

黒いチワワは、『DEAN』と名前が入った首輪を付けている。
首輪には、革紐の『リボンタイ』が結んであった。
チワワは愛嬌を振りまくでも吠えるでもなく、じっと成田の方を見つめている。

788成田 静也『モノディ』:2019/08/21(水) 01:48:38
>>787

「なるほど・・・そういうことだったのか。」

おそらくこのスタンドの本体はこのディーンなのだろう。
『モノや生物と一体となるスタンド』少しだけ聞いたことがある。多分それなのだろう。
だからヨシエにはスタンドの知識が欠けているのだろう。

「心強いボディガードがいるんだね、これなら夕暮れ時でも大丈夫そうだ。」

ディーンの方を見て感慨にふける。

かつてオレも幼い時に犬を飼っていた。まだ家族が仕事でバラバラになる前の事だ。

犬種は覚えていないがフレッドという名前でとても可愛がっていたことと幸せだったことは覚えている。

結局、親の仕事の都合で引っ越す羽目となり引っ越し先のアパートはペット禁止で
近所の犬好きの人に引き取ってもらうことになったがとても悲しかったのも覚えている。

「オレさ昔犬を飼っていて動物が好きなんだ。だからもしよければディーンを少し撫でさせてくれないかな?」

ヨシエとディーンに頼んでみる。

789ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/08/21(水) 02:15:52
>>788

動物のスタンド使い。
ヨシエやディーンは知る由もないが、成田は既に出会った事がある。
ここでまた遭遇したのも、何かの縁かもしれない。

「だってー。いいかなー?」

ヨシエの問いかけに対して、ディーンは成田からヨシエに視線を移した。
『アイコンタクト』――――視線による無言の会話が交わされる。
それは、この一人と一匹だからこそ通じるものだ。

「『いい』って言ってますよー。成田のお兄さん!」

ヨシエが成田に背中を向ける。
同時に、ディーンも向きを変えて、ヨシエとは逆の方向を向く。
つまり、成田と向き合うような形になる。

    ジッ

ディーンは無言だが、態度は落ち着いている。
過剰な警戒や敵意は見られない。
ヨシエの言葉通り、撫でても問題ないはずだ。

      ポウッ

不意に、ディーンの『リボンタイ』が淡い光を発した。
先程の『光の紐』と同じ光だ。
おそらく、これがスタンドなのだろう。

《『ガラス細工』のように扱えとは言わないが――――『程々』にな》

『声』が聞こえた。
これは『スタンド会話』だ。
目の前のチワワが、そのスタンドを通して言葉を発している。

790成田 静也『モノディ』:2019/08/21(水) 03:02:35
>>789

「ありがとうヨシエちゃん、ディーン。」

そういうとディーンの頭を毛並みに沿う形で指の腹を使って優しくなでる。

・・・昔の幸せの思い出とついこの間まで一緒に戦った仲間たちの事を思い出す。彼らは元気にしているだろうか?

「うん、昔一緒にいた犬のフレッドを思い出して少し懐かしい気分になったよありがとう。」

撫でるのを終えて、ヨシエとディーンに感謝する。

「さてと、ヨシエちゃんもそろそろ帰らなきゃなパパとママが心配してるよ?」

もうすぐ完全に陽が落ちる頃だ、オレも残業で帰れない母の代わりにスーパーで夕飯を買わなければならない。

791ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/08/21(水) 04:10:35
>>790

「うん!よかったねー!静也のお兄さん!」

ヨシエはクルリと体の向きを変えて、再び成田に向き直った。
うまり、それに合わせて俺も体の向きを変えなくちゃならない。
そうじゃなきゃ、俺は成田に背を向ける事になる。
生憎、背中に目や口は付いてないからな。
別にスタンドを通して喋ればいいんだろうが、その間ずっと背中を見せているのは『本能的』に嫌な気分だ。

《その代わりと言っちゃなんだが、今日ここで見た事は内密にしておいてくれ。
 『普通じゃ有り得ないスピードで子供が走ってた』って事を、な。
 昔の思い出の代金だと思えば安いもんだろう?》

実の所、撫でられるのを了承したのは『口止め』しておきたかったという理由も多少あった。
まぁ誰かに喋られたとしても俺には分からないだろうから、さほど期待はしていない。
だが、この成田という男(オス)の人柄を推し量る参考にはなるだろう。

「あっ…………うん…………そう…………だね…………」

『パパとママ』という言葉に対して、ヨシエはあからさまに表情を曇らせた。
家に帰っても、ヨシエの両親は待ってはいない。
二人は仕事で常に色んな場所を飛び回っていて、滅多に帰ってくることがないからだ。
実際、ここ数ヶ月は顔を見ていない。
家で待っているのは、両親が雇った家政婦の『永添』だけだ。

      ワンッ

ヨシエの様子を見て、俺は小さく鳴いた。
『永添』が待ってる。
それに俺もいる。
そういう意味を込めた鳴き声を発した。
『言葉が通じなくても伝わるもの』がある事は、つい最近思い出す機会もあった。

「うん、そうだね。大丈夫。ヨシエは一人じゃないから」

           ニコッ

「――――ありがと!静也のお兄さん!」

                 タッ

「『モノディ』さんも!バイバイ!」

                     トトトトトッ

成田の親切な注意が効いたらしく、ごく普通の速度で少女が駆けていく。
その後姿は夕日の中に溶けるようにして消えていった。

792成田 静也『モノディ』:2019/08/21(水) 23:44:59
>>791

ヨシエとディーンを見送った後、我ながら無神経だったと思った。

あの子も自分と同じで家族がバラバラになってしまい寂しい思いをしていたのかもしれない。

・・・ただ、あの子はオレとは違っていつもそばに寄り添ってくれるディーンがいる。
他にも寄り添ってくれる人もいる様子だった。だから多分大丈夫だろう。

「ただ、もしもああいう子とかがスタンドの事件に巻き込まれるのは嫌な気分だな・・・」

この間の戦いの物騒な連中を思い出し、強くなるという目標を遂げるだけではなくこの街で知り合った人を
守れるようになるのも悪くないかもしれないな。

そう思いにふける中、改めて夕食を買いにスーパーへと歩き出した。

793斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2019/09/21(土) 00:36:30

 「――だってさ、ありえないじゃあないか そんなの。」

9月、夕暮れ時の日差しが柔らかに差し込む大通り
その喧騒から離れた場所に、1人の少年が歩いていた

 「バイクが最低時速50㎞、ウサイン・ボルトが時速45㎞」

ライダーズジャケットに赤いスカーフを首に巻いた少年は
耳にスマートフォンをあてて、喋りながら路地の先へと歩いている

歩み方に迷いはないが、その姿は何処かうんざりとした雰囲気を纏っていて
手にしたスマートフォンで電話越しの相手と会話しているようだった。

 「『バイクと並走』っていうのはつまり、ワールドレコードを追い抜いて、壁に向けて走れば自殺できるって事なんだぜ?」
 「ターボばばあみたいな都市伝説だろ?」

――正直、それ以外に思いつかない というわけではない
『都市伝説』以外に、僕達にはもう一つだけ可能性が有る。

そして、その可能性が有る限り、僕達は無視するわけにはいかないのだ。

 「そりゃあ……噂の出所を辿って確認には来たけどさ」
 「あのチンピラ、ホントにここで見たと言っていたのか?」

だが、お陰で僕は酷く疲れていた
顔も知らない相手、その姉、その親戚のお婆さん、その御婆さんの友人、etc、etc、etc……

おまけに聞きまわった中の一人にギャングボーイズが混ざっていたせいで
要らないトラブルに巻き込まれ、朝方から歩き回ってもう昼頃になっている

……スタンドも、僕も、くたくただった。
そうして辿り着いた場所を見回せば『大通り ―星見街道―』 その路地裏だ。


 (人目につかない路地裏、これじゃあ障害物競争になるじゃあないか、足跡なんて何処に残っている物なんだろうか。)


溜息を一つつき、スマートフォンを懐に仕舞うと少年は
ジャケットの襟を正して、せめて今日の労力に、何か納得できるものが無いかと目を皿のようにして探し始めた。

794ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/09/21(土) 07:03:21
>>793

『バイクと並走する少女』――まさしく眉唾物の噂だった。
ごく常識的に考えれば、まず存在するはずがない。
枚挙に暇がない『都市伝説』の一種だと思うのが普通だ。
しかし、斑鳩翔は『知っている』。
それが、決して『絶対に有り得ない話』ではない事を――――。

         シィィィィィ――――ン…………

賑やかな表通りとは裏腹に、この場所は至って静かだ。
人もいなければ動物もいない。
そして、『噂』に繋がるような何かも見当たらない。

                      タッ タッ タッ
               トンッ
    タッ タッ タッ

ふと、曲がり角の向こうから軽い足音が聞こえてきた。
やがて、一人の『少女』が姿を見せる。
花柄のワンピースを着た七歳くらいの小さな少女だ。
花モチーフの髪留めで纏められた髪が、軽く走る度に揺れている。
『噂の少女』と同じように、背中に『リュック』を背負っていた。

795斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/09/21(土) 13:05:45
>>794

 「……。」

数分程探した後に、膝を伸ばし
懐に借り物の小型のルーペを仕舞い込む。

 「やっぱり、何も無さそうだな」

失意に額を抑えながら空を仰ぐ
いままでの苦労とはいったい……3割程は自分のせいだった気がしなくもないが

 (靴跡の一つでも残っていれば、そこから年齢くらい解るんだが……。)

何もない物は仕方がない、かの高名な山高帽を被った男でも
靴に土がついていなければ、推理のしようがないではないか

 (そうと決まれば、さっさと帰ってロッ〇マンDASH3でも…… うん?)


顔を上げると、ふいに耳にその靴音を捉えた、視線を向けると
物音ひとつしない路地裏の奥に、靴音の発生源……1人の少女の姿を捉える。


 (『スタンド』の類は見えない、ただの女の子か? しかし、都合のいい事には違いない。)

 「――さて、アレが僕の幻覚じゃあなければ、話の一つでも聞くべきなんだが。」

自身に呼びかけるように呟くと、少女の方に向き直った
人気のない路地裏を、此方に向かってくる姿に呼びかける。

 (リュックを背負って走り回る、遊び盛りって感じだな)

 「――そこの、花飾りの素敵なお嬢さん」
 「そんなに急いで何処に行くんだい、転んでしまうよ?」

796ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/09/21(土) 16:16:47
>>795

――――ピタッ

「こんにちはー!」

立ち止まった少女が、元気よく頭を下げて挨拶してきた。
よく見ると、年齢や外見も『噂の少女』と似ているように思える。
もちろん、ただ単に『似ているだけ』かもしれない。

「えっとねー」

「――――『あっち』!」

       ピッ

少女は、路地から『表通り』に向かう道を指差した。
かなりアバウトな答え方だが、とにかく通りに出るつもりのようだ。
現状、本当に『単なる少女』にしか見えない。

「お兄さんは、どこに行くんですかー?」

何ら他意の感じられない様子で、そう尋ね返してくる。
やはり、どこからどう見ても『普通の少女』だ。
ただ――『似ている』のも事実ではある。

797斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/09/21(土) 20:21:38
>>796

少女の挨拶につられて頭を下げる

 「ん、こんにちは」

礼儀正しい子だ、親の教育が良かったんだろう
――良い事だ こういう子供は巻き込まれるべきではない。

ちらっ……と靴のサイズを目算してみる
『鎖』のお陰と言うべきか、見るだけで大体の長さを推定できた

 (目算の靴のサイズは約20cm、靴のサイズからの推定年齢は、7〜8歳……とても、似ているな)

しかし、この子か?と言われるとまるでそうとは思えない
単なる礼儀のいい子が、たまたまここを通っただけかもしれない



何処に行くのか、と聞かれて返答に詰まった
哲学的な問いではないだろう、恐らく、ただ行き先を聞いているだけだ。

 「そうだなぁ――」

……返答に詰まるのは、自身の後ろめたさのような物だ
自身の為に、無関係の人間を巻き込む事への。

 「僕は、ここが終点みたいなものでね、知ってるかい?」

 「最近の噂話。」

笑顔を崩さず、話し続ける。

 「この辺りでね、とても奇妙な事が有ったと言うんだ」

 「なんでも、自転車より早く走る女の子だとか、あの自転車だぜ?」

肩を竦め、おどけたように首を振る
そして、問わなければならない。

 「――聞いた事、あるかい?」

798ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/09/21(土) 22:43:23
>>797

「そうなんだー。ヨシエも会ってみたいなー」

事も無げに、少女は言う。
『とぼけている』という感じはない。
そして――ここからは『俺』しか知らない事だ。
彼女には『噂になっている自覚』がない。
ゆえに、それは『自分ではない』か、
あるいは『自分以外にもいる』と思っているのだ。

    スタ スタ スタ
              ピタッ

「あのー」

「『公園』って、こっちで合ってますかー?」

再び歩き始めた少女が、途中で足を止めて質問してくる。
この近くにある公園に行きたいらしい。
出る前に調べたはずだが、『ド忘れ』したのか。

「それとも向こうですかー?」

               ニコニコ

本人は笑っているが、何だか頼りない雰囲気だ。
このまま放っておいたら迷子になるかもしれない。
もし斑鳩が知っていたら、そこまで付いて行った方がいい気もする。

799斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/09/21(土) 23:48:51
>>798

 (知らない、か……)

その態度は、隠しているという事でもないようだった
やはりあのチンピラにはガセを掴ませられたのだろう

 「ああ、会えたらいいな 夢が有る。」

とはいえ、この辺りに目撃情報が集中しているのは間違いない事だ
録画機器等の何かしらを設置するべきか……

そんな事を考えていると、不意に
公園の場所を問われた、どうやら少女の目的地らしいが

 (名乗りもしない見知らぬ奴をあまり信用するなと言うべきか)

 (でもブーメラン帰ってくるしなあ、それ。)

ボーラは飛んでも帰っては来ないが、自分の行いは帰ってくる
笑顔の裏で苦虫を噛み潰しながら、自分の為にどう断ろうかと考えて、口を開いた。

 「それじゃあ、案内しようか?」

 「迷うと、こんな所に来てしまうからね。」

――正反対の言葉が飛び出してきたので、自身に閉口した

無意識に1人で頼りないと考えたか、放っておけないと考えたかは解らないが
まあ既に散々時間を無駄にしているのだ、少しくらいいいだろう

 「それで、公園の方? エスコートさせて貰おうかな。」

徒歩でスカーフを揺らしながら
そう無理やり自分を納得させた。

800ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/09/22(日) 00:18:02
>>799

斑鳩の苦悩に気付く事もなく、少女は無邪気に笑っている。
もし彼女が『スタンド使い』だったとしたら、相当な食わせ者だろう。
この年齢で、そこまでの手練れというのも、
有り得なくはないかもしれないが、やはり考えにくい。

「うん!」

「あ――」

「ありがとーございますー」

    ペコッ

一度返事をしてから、改めて少女は頭を下げる。
やはり、育ちは良いようだ。
オーダーメイドとまではいかないが、身なりも『高級な既製品』らしい。

          スタ スタ スタ

そして、二人は路地から表通りに出た。
斑鳩の案内もあって迷う事もなく歩き続けると、横断歩道の前に着く。
これを渡れば、目指す公園は『すぐそこ』のはずだ。

                   チカッ チカッ

青信号が点滅し始めている。
それを見て、ヨシエと名乗る少女は立ち止まった。
まだ車は来ていない。

「――――え?」

「うん」

不意に、少女が『独り言』を呟いた。
ちょうど会話は途切れていた時だったし、近くには他に誰もいない。
まるで、『イマジナリーフレンド』か何かと喋っているかのようだ。

801斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/09/22(日) 02:24:02
>>800


 「――どういたしまして。」


……公園のすぐ手前で、点滅する青信号を見て、隣に止まる、並んで立つ姿は
周りから見れば年の離れた兄弟にでも見えるのだろうかと、ふと考えた

一人っ子の自分にはそういうのとは無縁ではあったが
自分に上や下の兄弟がいれば、今の境遇も少しでも変わったのだろうか?

たられば、等と言う疑問に答えが出る筈もなかった
頭を振り、疑問を散らす。

9月の風に、涼やかな物が混ざっている事に
夏は去り、秋が近いという事を連想したほうが、幾分かマシな生き方という物だろう

落ち葉が散って積もった頃には、芋でも焼いてみようか等と考えながら
傍にいる少女の方を眺めた

改めてみるその姿は、頭髪をきちんとポニーテールに纏め
衣服などもブランド物の既製品のように見える、いい家の出なのだろう

ふいに、独り言のように彼女が呟いた時も
ほとんど疑問には思わなかった、ただ、

『誰かに対しての返答』のようだったのが気になった。

自分かと思ったが、それは違う、目線は自分には向いていない
スタンドとの会話ではない、それなら自分にも見える筈である

他を考えれば、携帯電話などと思い浮かんだが、そういう物を手に持っている様子もない
――では、誰に?

自分の心当たりは3つくらいであった

1つ、イマジナリーフレンド これは幼少期によくある『自分にしか見えないお友達』を作り出す物で
年齢を重ねれば自然と無くなる物だ (このうちの何割が『スタンド使い』なのだろうか?という疑問は有るが今は無視する)

1つ、多重人格者、ただし人格が互いに会話する例はかなり少ない

1つ、……自分には見えていない場所に『もう一人いる』

斑鳩に断定は不可能であった。

ただ、歩く時に少女がふらついて見えたのなら、
それは彼女とは別の「重心をずらすように動くような物」がリュックサック内に入っているだろう、という推理だけの想像であり

(まあ、UFOだの幽霊だの、無いと断言するよりは、有る方が面白い)

という考えであった。


故に、斑鳩はこの交差点で、ヨシエと名乗る小女が、次に何をしようとも、それを傍観する事に決めた
彼女が何をしだすのか、むしろ楽しみになっていて、中身の見えないおもちゃ箱を見ている気分になっていたのだ。

802ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/09/22(日) 08:37:27
>>801

「あー、『もうすぐ』だったんだねー。そうだったんだー」

「もうヨシエは大丈夫なのでー。あっち行ってきまーす」

「――――ありがとーございましたー」

    タタタッ――――

ヨシエが斑鳩に向き直り、笑顔で感謝の言葉を告げる。
そして次の瞬間、横断歩道を渡ろうと走り出した。
『時速60km』程のスピードで。

        タタタタタタタタタタ
                 タタタタタタタタタタッ

あっという間に横断歩道を渡り切ったヨシエは、
そのまま斑鳩から離れていく。
たまたま人通りが少なかったため、
その光景を目撃できたのは斑鳩だけだ。
それを見た人間が他にもいたとすれば、
おそらく『高速で走り去る少女』と表現するだろう。
いつの間にか、ヨシエの手の甲には『光の紐』が繋がっている。
『例の噂』の中には、そういう話もあった。

(…………よし)

行儀良く足を止めていたヨシエを『説得』する事には成功したようだ。
リュックの中にいた俺は、他の人間には気付かれないように伝えた。
『もう近くだから早く行こう』――――と。
だが、本当の目的は違う。
『道案内してくれた同行者』を、ヨシエから引き離すためだ。
今は、ちょうど信号が変わるタイミングだった。
こっちにとっては、それも都合がいい。

(さっき、コイツはヨシエに対して『探り』を入れてきた。
 狙いは知らないが、この手の人間には関わらせたくないんでね)

    チカッ チカッ チカッ

青信号の点滅が終わろうとしている。
車も近付いてきているようだ。
今から飛び出すと、車と衝突する可能性があるかもしれない。

803斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/09/22(日) 14:17:04
>>802

此方に笑顔で向き直った少女に、返礼をしようとして

 「ああ、どういたしまし……」

その少女が急にすさまじい速度で走り出した時の、僕の表情は傑作だったろう
鏡が有れば自分も見れたのだけれど、惜しい事をした。

 「て?」

変に上ずった声まで出て、ぽかんとしたが
同時に、『もう一つの頭』が周囲を見渡すと状況が見えてきた。


 (成程、成程……高速移動の話から、能力でなければ『器物』か『纏う』タイプだと思っていたんだが)

 (青信号は点滅状態、無理に渡ろうとすれば僕は車にひかれる)

 (つまり、そういう状況まで持っていく『知能』まである。)

 (しかし女の子の方ではない、別のスタンド使い……動物という前例が無いわけではない、リュックサックの中、か?)


 「さて、どうした物かな 送って終わりとしたいが」

 「こうも目の前で使われると、リュックサックの中身が知りたくなった」

ふたつの脳みそが、青信号の点滅が途切れるまでに考え込んだ後に、一つの結論を出した。

 「走るか。」

――ウサイン・ボルトの叩きだしたレコードは『時速45㎞』
ただし、それは彼に脚が二本しかなかったからだ。

 「――『ロスト・アイデンティティ』」

両足に鎖が巻き付き、砂のように崩れ去ると
重ね合わせるように発現する『影の脚』

それは、斑鳩の脚に、影で出来たもう二つの脚を生やし
二倍の脚力を得ることを可能にする、斑鳩の『スタンド』の一部だった

クラウチングスタートの態勢を取ると、四本の脚が互い違いに地を踏みしめ……

 (追いつけるか試してみよう、目的地は知っている)

常人の二倍の速度で地を滑るように駆けだした。

804ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/09/22(日) 16:31:22
>>803

『鎖』を解除した事によって発現する『影の脚』は、
常人の『二倍』に相当する『脚力』を生み出す。
それがもたらすのは、通常の人間には不可能な初速と加速だ。
信号が青から赤に変わる直前に、斑鳩は見事に横断歩道を渡り切った。

(こうして『能力』を見せた以上、このまま終わりとは思えない……。
 『噂』について、妙に興味を持っているようだったからな。
 何より――アイツは『行き先』を知っている)

単純なスピードだけなら、やはりヨシエの方が速い。
しかし、『一歩で進める距離』という点では明らかに斑鳩の方が上だ。
その『歩幅の違い』が、『スピードの差』を縮めていた。

(だが、俺の目的は『振り切る事』じゃあなく『引き離す』事だ。
 アイツを『ヨシエに近付かせない策』は既に考えてある。
 そのための時間さえ稼げれば……)

『スタンド』の発現には『一呼吸分』の時間を要する。
『鎖』の解除にしても、僅かな間が生じるだろう。
それらは決して長い時間ではないが、
その短い間にヨシエは数メートルの距離を稼いでいる。
最初に走り出した時点から、二人の間には小さくない差が開いていた。
『二人分の脚力』を以ってしても、即座に追いつく事は難しそうだ。

    タタタタタタタタタタ
             タタタタタタタタタタ――――ッ

ほとんど減速する事なく、ヨシエは角を曲がった。
彼女の進行方向には、多数の『車止め』が並んでいたが、
ヨシエは、その狭い隙間を一度もぶつかる事なく通り抜けていく。
その動きは、『ロスト・アイデンティティ』と同等の『精密性』を思わせた。

                       タタタタタタタタタタ…………

そして――ヨシエの姿が斑鳩の視界から消えた。
『公園』の中に入ったために見えなくなったのだ。
少なくとも、その『敷地内』にいる事は間違いない。

805斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/09/22(日) 20:19:10
>>804

 (見失った ……か?)

数メートル遅れで到着した公園に、彼女らの姿を認識できなかった斑鳩は
公園内に姿が見えない事に驚きを覚えた。

 (そこまで遠くには行っていない筈だが、鬼ごっこの次はかくれんぼと来たか。)

 (『ロスト・アイデンティティ』に『探知』の能力は無い 対して向こうは……)
 (少なくとも此方と同等以上の精密動作が有ると見ていい。視界外から忍び足で去られるのは随分と困る。)

 (だが、少なくとも能力が『他者への譲渡』ならば)
 (それ以外の『透明化』『隠蔽』等の能力は持っていないだろう)

 (移動能力も、走る以上は無いと考えてよさそうだ。)

 (そう考えれば、発見するにはあくまで聴覚及び視覚で捉えればいい)
 (……攻撃が許されるなら、ボーラの投擲で捕まえられたんだが。)

『影の頭』からの提案を振り払うように首を振ると、斑鳩の全身を『鎖』が覆った
銀色の鎖が、夕日を浴びて鈍く輝く。

 (怖いほうが出てこない内に、手段を選ばないと)

向こうが『能力を見せて』逃走を選択した以上、取れる手段はそう多くはない
対話を不可能と判断した斑鳩は、スタンドの使用を良心の許す範囲内で選択した。

 (……やはり、これが一番かな)

 (これが戦闘なら、自分も身を隠す所なんだが。)

頭部の鎖が砂のように解け、もう一つの『頭』が出現する
影のような黒い頭部は、不機嫌そうに被りを振った後に、少年の視界外を確保する様に周囲を見渡し始めた

同時に、両腕の『鎖』が伸び始め、約2m程に達すると、それを振り回し始める
高速で回転し始める銀の鎖は、まるで円盤のようにも見えた。

 (距離は離されていない、それは事実だ、視界内に捉えることを最優先に視界外には聴覚で対応する)
 (離れたのは数メートル前後 ……ならば射程内だ)

――夕暮れの空から銀色の雨が降り注いだ、遠心力で回転している鎖が分離して千切れ飛び、空から降り注いでいるのだ
スタンドで出来た鎖の破片、その雨が半径20m以内に降り注ぐ

 (視聴覚の確保という点では、これが一番だろう、『鎖を踏めば音が出る』『降り注ぐ鎖に当たればその音で居場所を探知できる』『下手に物陰から移動すれば僕の視界内に入る』)
 (……さて、お次は何を見せてくれるんだろうな?)

806ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/09/22(日) 21:25:28
>>805

公園内で隠れられそうな場所は多くはない。
遊具の後ろ、自販機の陰、あるいは茂みの中……。
ヨシエがいたのは、その『どれでもなかった』。

(――――…………)

自ら砕け散った『鎖の破片』が、公園内の『ほぼ全周囲』に降り注ぐ。
『鎖のヴィジョン』と『切り離しの能力』を駆使した、
『銀色の雨』による『広範囲探知』だ。
しかし、それらしき『反応』が見られない。

(つい『策』なんて言葉を使っちまったが……
 何というか、それは少し『言い過ぎ』だった。
 実際、そう大したものじゃない事は認めざるを得ないな。
 『工夫』や『応用』って意味じゃあ、向こうの方がよっぽど上等だろうさ)

『鎖の雨』が降り注ぐ音は、こちらにも聞こえている。
だから、相手が『何かしている』事は分かった。
どうやら、かなり大掛かりなトリックを仕掛けているらしい。

(俺は、ただヨシエに伝えただけだ。
 天気が悪くなりそうだから少し『雨宿り』しないか?――ってさ。
 それが出来そうな場所は、ここじゃあ『一つ』しかない)

そこは、ごく小さな場所だった。
屋根があり、床があり、壁がある。
その中の様子を、外から窺い知る事は出来ない。

(人間は『オス』と『メス』で『場所』が分かれてるよな?
 最初は妙だと思ったんだが、すぐに納得できたよ。
 『二ヶ所』に分けた方が混雑しなくて済むからな)

ヨシエと俺は『公園のトイレ』の中にいた。
これは当然だが、『メス』が入る方だ。
人間の言う『女子トイレ』ってヤツさ。
まともな『メス』なら『オス』の方には入らない。
もちろん、その逆も同じだ。
もしかすると、『ここにいるんじゃないか?』と思われるかもしれないな。
だが、それを実際に『確かめる』のは容易じゃあない。

807斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/09/23(月) 19:40:52
>>806

 (反応がない、か)

その公園には銀の破片が散らばり
ある種の童話のような光景と化していた

実際には全てがこの場より逃げだそうとする者を探知する『罠』なのだが。

 (しかしこの場合、『反応がない』という事が判断材料になるわけだな。)

遊具の後ろ、自販機の陰、茂みの中、樹木の根元、鎖の落ちない箇所はそう多くないと判断し
数か所に視線を同時に向けるが、動くような姿は無い ――当然だ、そこには誰もいないのだから

 (参ったな、僕の見間違いで 既に公園の外に逃げたか?)

猜疑を振り払うように頭を振る

 (……いや、その為わざわざ視界まで増やした 絶対にまだこの公園内にいる。)

斑鳩は情報を整理する事にした
鎖を踏む音は聞こえず、視界にも捉えていない……

 (つまり、『動く必要性がなく』、『僕の視界外』で『鎖を防ぐ屋根が有る』場所……)

ぐるりと公園内を再び見渡せば、鎖のばら撒かれた光景の中に
条件に当てはまる個所の中で、『自分ではいけない場所』が有る事に気づいた

 「……まいったな、そこか?」

斑鳩は苦々しげな表情でぼそりと呟いた――『公衆トイレ』、屋根には無数の破片が乗ってはいるが
視界は通らず、自分のスタンドから隠れるに絶好の場所

 (相手は、僕のスタンドを必要最低限の動きで無効化したわけだな)

『スタンド』の鎖を振りかぶり ――力無く元に戻した

 (駄目か、敗北だな 僕のスタンドは能力の射程はあれど、僕自身からは1mmたりとも離れる事は出来ない)

 (……これ以上は『僕』には無理だ。)







公園のトイレの中

一度はやんだ『雨音』が、再び鳴り始めた

――未だに外からは『雨』の降る音が聞こえてくる

808ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/09/23(月) 20:52:37
>>807

「降ってきたねー……」

《…………ああ》

「どうしよー?傘もってきてないよー」

《諦めて止むまで待つしかないな》

「うん……分かったー」

ひとまずは『凌いだ』と考えていいだろうか?
『雨』ではなく『アイツ』を――だ。
何者かは知らないが、明確な『目的』を持っているらしいヤツだった。

(わざわざ『能力』を使う事もなかったか?いや……)

並んで歩いている途中に、俺はアイツから『良くない臭い』を感じ取った。
それが何に由来するのかまでは分かりはしない。
だが、何処か『暴力的なもの』を嗅ぎ取った事は事実だ。
そして、俺は『そういう人間』を警戒する。
得体の知れない人間の近くにヨシエがいる事が、気に食わなかった。

(……しばらくは、この辺りには来させない方が良いかもしれないな)

雨音を聞きながら、俺は今後の事を考えていた。
雨が上がったら『窓』から出るか?
その理由をヨシエに説明する事を考えると、今から頭痛がしてくる。

(全く――――面倒な事になった)

809斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/09/23(月) 22:24:59
>>808

酷い頭痛に頭を抱えながら、『それ』は晴れた空から降り注ぐ雨のささやきの中を歩いていた

それは人目につかない路地裏に入り込むと獣じみた唸り声をあげ、額をコンクリートの壁面に叩きつける

鈍い音がして、赤い筋が目尻を通り頬をなぞって顎から滴り落ちる

爪が掌に食い込み、赤い跡を残すのも構わず唇を千切れんばかりに噛みつぶす

 「馬鹿な事をしたなあ、俺に任せておけばいい事を」

路地裏に男の声が響いた、路地裏の外を通るサラリーマンは、その声に気づかずに鞄を傘代わりに走り抜けていく

 (――――)

 「何故そんな良心なぞを気にする?それは死にかけの老人を態々延命させている事に他ならないではないか」

それは反応を見せない、或いは答えられない。

男の声は氷のような冷ややかさを持って続けられる

 「リュックサックの中身が何であれ、アレは俺達よりよほどうまくやっているよ。」

それの影は苦笑した、泣いている理由なぞとうに解っているが、馬鹿らしいプライドで認められないのをよく知っているからだ

 「みじめだなぁ?俺達がどれほど『努力』しても出来ない事をやってのけ、あるじを『守り』、無事『危機』を切り抜けた」

 「拍手と称賛を送ってやれよ、よくやったってな。」

それが顔をあげた、額の血は赤い涙のように流れていく

その顔は何の表情も浮かんではいなかったが、はたから見れば泣いている事を押し殺しているように見えた

 「次にアレと少女を見る時は、俺達が鉄格子付きの病院の窓からである事を祈ろうじゃあないか」

 「そして幸福な人生を送る事をな、イカレ野郎。」

天気雨が上がり始め、パイプから滴る雨粒が、空の虹を写しながら地面に吸い込まれていく

 「知っているか?天気雨は涙雨とも言うそうだ そして性質上よく虹が観察できる。」

石のように動かない本体を尻目に『ロスト・アイデンティティ』はしゃべり続ける

 「――今頃、公園の空には虹がかかっているだろうよ。」

810ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2019/09/24(火) 19:31:19
>>809

あの時――『ボーラ』の使用を躊躇しなければ、少女を捕まえられただろう。
しかし、少年は『それ』をしなかった。
彼の行動を『優しさ』と呼ぶ者がいれば、
その一方で『甘さ』と呼ぶ者もいるかもしれない。

だが、客観的に見れば正しい判断だったはずだ。
もし『ボーラ』を使っていれば、少女に傷を負わせてしまった可能性もある。
『影の腕』の精密性なら無傷で済んだかもしれないが、
絶対に有り得ないとは言い切れない。

そうなった場合、謎めいた『リュックの中身』は、
斑鳩の存在を本格的に『敵』と見なしていただろう。
だが、そうはならなかった。
少年の――斑鳩の『良心』が、それを選ばなかったからだ。

        ――――トッ

しばらくして、俺はヨシエと共に外へ出た。
雨上がりの空には、虹が掛かっているらしい。
不意に『何か』を思いかけたが、その正体は掴めなかった。

俺はヨシエを守らなければならない。
ヨシエを傷付ける可能性のある全てのものから。
もし俺に『生き甲斐』というものがあるとしたら、多分それなんだろう。

811黒羽 灯世『インク』:2019/09/25(水) 01:40:16


クロバネ トモヨ
『黒羽 灯世』という、少女がいる。
清月学園に通い、『報道部』に属している。

「コーヒーを。……ええ、ええ、そうよ。ブラックで!」

猛禽類のような印象を抱かせる三白眼と、
袖だけを飛膜――――『振袖』のように改造した制服が目立つ。

             スタ  スタ

それ以上を知る人間は少ない。
なぜならば、彼女は『友達』が少ないからだ。

      ストン

「…………」

だからこうして、買ったコーヒーを手にベンチに座るのも一人で、だし。
彼女が手にしている『筆』について知る者は――――『一人もいない』。

812ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/09/26(木) 00:46:57
>>811

    トッ トッ トッ

ちょうど同じ頃、一匹のチワワが歩いてきた。
何かの偶然か、手元のコーヒーと同じように全身が真っ黒だ。
『DEAN』と刻まれた首輪をしている。
そこには『リボンタイ』が結んであった。
近くに飼い主らしき人間はいない。

(流石にいないか……。まぁ、それならそれでいい)

その日、俺は一匹で公園を訪れていた。
一言で言うなら『確認』のためだ。
俺とヨシエは、この近くでスタンド使いらしいヤツに遭遇した。
その時は回避できたが、まだ安心はできない。
だから、こうして確かめに来たってワケさ。

           チラ…………

(おい、待てよ……。
 この辺はスタンド使いの溜り場じゃあないだろうな?)

何かを探すように動いていたチワワが、ふと少女の方を向いた。
一瞬、『筆』の方を見ていたような気もする。
たまたま視線が向いただけかもしれないが。

813黒羽 灯世『インク』:2019/09/26(木) 02:19:30
>>812

             ……チラッ

「……」

       フイッ

一瞬だけ、目が合った。
が、黒羽灯世は特に『犬好き』とかではない。
すました様子で、すぐに視線を戻したが・・・

            スゥ―――

手にした『筆』を、軽く上げる。

「…………………………」

そして、これ見よがしに『消す』。

     サッ

代わりに取り出したのは・・・『スマートフォン』だ。
無言で、カメラを『ディーン』に向けているのが、ディーンの動物的直観で分かる。

814ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/09/26(木) 12:03:45
>>813

(…………?)

正直、少女の意図は今一つ読み取れなかった。
まぁ当然と言えば当然だろう。
初対面だし、何より『人』と『犬』だ。
向こうだって、俺が何を考えてるかなんて分かりはしない。
『会話』すれば多少は理解し合えるだろうが、その必要も今はない。

(あぁ、『アレ』だな)

それが『スマートフォン』と呼ばれる道具である事は知っている。
人間がいる場所では、必ず一つか二つは見かけるヤツだ。
ヨシエも持っている。
『犬も歩けば棒に当たる』という言葉があるらしいが、
今は『スマートフォンに出くわす』事の方が多いのかもな。
そして、それに『カメラ』が付いている事も知っていた。

(別に、このまま撮られてもいいんだが……)

撮られる事は始めてではなかった。
ヨシエが撮ることもあるし、たまに他の人間にも撮られる。
それ自体は、特に何とも思わない。

(――――ちょっと試してみるか)

     トッ トッ トッ

カメラから外れるように、自然な動きで少し横に『ズレる』。
少女のリアクションを確かめるためだ。
『どういう人間か』を推し量る参考にさせてもらうとするか。

815黒羽 灯世『インク』:2019/09/26(木) 19:30:00
>>814

「……………………………………」

     ・・
(…………杞憂、のようね。
 いえ、杞憂というのはこの場合だと逆。
 ゆか喜び……そう、それなら間違ってない)

消えた筆に反応することは特になく、
『スマートフォン』には反応した。
黒羽の考え方では、こういう事になる。
筆を見ていたのではなく、『手元を見ていた』……と。

『インク』――『それ』が見える者を、探していた。

(もっとも、犬が『インク』を見られたところで、
 話を聞けるわけじゃあないのだから…………
 これくらいは、特に落ち込むようなことでもないけど)

何気なくシャッターを切ろうとした……が。
被写体がいつの間にか、ズレている事に気づく。

「…………」

      ムッ

(カメラを『避けた』……!? これって偶然?
 それともつまり、私に『勝った』つもりでいるの?
 つまり……私が、犬に、負けてるってこと……!?)

「……………………………………!」

      カシャッカシャッ

ズレた先に素早くカメラを動かし、動く前に撮ってやる。
特に意味は、ない。が、『負けたまま』なのはシャクだ。

816ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/09/26(木) 22:13:56
>>815

(気のせいか?今のは妙に熱が篭っていたような……)

少女のリアクションを見て、そのように解釈した。
今度は動かなかったので、写真は綺麗に撮れている。
やがて少女に背を向けたチワワは、そのまま少しずつ離れ始めた。

                     トッ トッ トッ

(『スタンド使い』――――か。
 後々のために、もう少し『勉強』させてもらうのも悪くないな)

世の中や人間に対する知識は、多ければ多いほどいい。
それが『スタンド使い』なら尚更だ。
今、ヨシエはいない。
だから、多少は大胆な行動を選ぶ事も出来る。
つまり、スタンド使いの人間に自分から『接近』するという事だ。

                 タタタタタッ
           ヒョイッ
    ポスッ

距離を離したのは『助走』のためだった。
駆けてきた勢いのまま、四本の足で地面を蹴り、ベンチに飛び乗る。
そして――――少女との間にスペースを空けて座った。

(普通に近付いても良かったんだが……。
 何となく、どんな反応があるか見たくなった)

横にズレてみせた時の反応は、俺の興味を引いた。
『人間観察』は趣味の一つでもある。
知識を得るためもあるが、言ってみれば『趣味と実益』を兼ねたって所さ。

817黒羽 灯世『インク』:2019/09/26(木) 23:17:32
>>816

「………………フッ」

         スゥー

スマートフォンを懐にしまい直す。
それから、離れていく犬を見ていた。
犬そのものに、特別な興味はないのだ。

「……!?!?」

だけれど急に戻ってきた犬には、もともと鋭い目が引き絞られる。
反応と言うほどの反応も出来ず、コーヒーを落とすことだけは、
それは『弱すぎる』と思ったから――――しないように、手の力は無くさない。

「……」

そして犬を見つめる。
フェイントのような行動。『付かず離れず』な位置取り。

遊んでほしい犬とは思えない。
黒羽の『記者』としての観察が、そう告げる。

(こ、この犬……やっぱり『杞憂じゃない』。
 普通の犬とは思えない……私に、挑戦している。
 『観察』して『分析』する……『上から私を見ようとしてる』)

    『シャラッ』

    (気にくわないわ! ……『上の方』に立つのは、いつでもっ、いつでも私!
      それにもしかすると……勝ち負け以上の意味もあるんじゃないの!)

だから立ち上がって、『ディーン』を見下ろす。
傍から見れば『急に犬が来たから立った』用にも見えるだろう。

そして利き手を逆の袖に入れ、『居合』のように、しかし緩慢に抜き出す――――『インク』を持った手を。

818ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/09/26(木) 23:47:14
>>817

表情を変えず、少女を見上げる。
相手が何を考えているかは分からない。
しかし、『何か』をしようとしている事は察せられた。

(さて、どうするか…………)

      チラ

『筆』が出てきたのを一瞥し、考えを巡らす。
未知のスタンド使い相手なら、『警戒』はしておくべきだろう。
いつでも飛び降りられるように、密かに四肢に力を込める。

(少なくとも外見は『ただの犬』の俺に対して『スタンド』を出した。
 そこが問題だな)
 
(――次の行動で、コイツが『危険なヤツ』なのかどうか計れる)

少女を見つめたまま、その動きを見逃さないように観察する。
もし危害を加えられそうなら、すぐに離れるつもりだった。
『ワン・フォー・ホープ』は――――まだ出さない。

819黒羽 灯世『インク』:2019/09/27(金) 00:59:38
>>818

「………………」

          シャッ

                シャッ
    
    シャッ

黒羽がしたことは『危害』ではなかった。
彼女のスタンドは――――『剣』ではない。
武器は、『ペン』だ。少し古風な形ではあるが。

            シャッ

ペンの用途は、『書くこと』。文字列は――――――――

           目の前の 犬 が インク を 見た

「――――――――『ゴースト・ストーリーズ』」

                      『ヒタッ』

「ペンは剣より強い……フフッ! 今の私には事実!
 真実のみを暴き出す私のペンは、特に強いのだから」

             「さあ、さあ、今に『真実』は……あれ?」

   「……? あっ」

ディーンの目には、相当に意味不明な行動に見えるだろう。

文字列は――――空気に貼り付いたように、黒羽が触れようと何も起きない。
『ゴースト・ストーリーズ』……『人間の行動』を再現する力が『犬に効かない』のは道理だ。

                     ……それを行動より早く導くには、経験が不足している。

820ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/09/27(金) 14:09:02
>>819

     カァー 
            カァー

(……)

(…………)

(…………ん?)

数秒間の間、何ら関わりを持たない犬と少女が見つめ合った。
何とも言えない『微妙な空気』が流れる。
誰かが通りかかったとすれば、それは『奇妙な光景』に見えただろう。

(『何もない』……のか?いや、何もないワケはないな。
 『何かをやろうとした』のは間違いない……)

少女の様子を見て、さらに考える。
何かをやろうとしたが、何もない。
そこから考えられる結論は、おそらく一つだろう。

(ひょっとして――――『ミスった』のか?
 何故かは知らないが……とにかく上手くいかなかったんだろう)

目の前の犬が『インク』を見た。
それは確かに『事実』だ。
しかし、『人のみに作用する能力』であるため、再現されない。
奇しくも、それは『犬のスタンド』と同じ特徴だった。
その事を、『目の前の犬』が知る由もないが。

(しかし……何というか『困る雰囲気』だな。
 まさか、こんな事になるとは思わなかった……。
 こういう時にヨシエがいてくれたら、場を和ませられるんだが……)

(だがまぁ、少なくとも――――『危険なヤツ』ではなさそうだ)

             シュルルルルル

首輪に結んだ『リボンタイ』が独りでに解け、一本の『光の紐』に変わる。
その紐が、空中で蛇のように動く。
すぐに出来上がったのは、簡単な『記号』だった。

        クルッ

現れたのは『マル』だ。
『光の紐』で形作られたため、『ネオンサイン』のように発光している。
『目の前の犬がインクを見た』という文字列に対する『返し』なのだろうか?

821黒羽 灯世『インク』:2019/09/27(金) 22:48:41
>>820

「んなっ……」

          「…………!?」

(な、なにこの「〇」は……どういう意味!
 私が文字を書いているのを『真似した』ってコト!?
 犬にそんな知能が……!? いや、それより……)

「見つけた。私以外の『スタンド使い』……やっぱり『いた』!」

               シャッ   シャシャシャッ

確信はなかった。いるのが『自然』だと思ってはいたが、確信が欲しかった。

『光の紐』に筆先を向け――――
それに重なるような位置に『二重丸』を描く。

「ねえねえ、私の言葉……それにマークの意味が分かるなら!
 これより『上』のマークを作れる? あなたの『スタンド』で……」

もちろん、二重丸は一重の丸よりも――――『上』だ。

「負けを認めるのでもいいけど。フフッ!
 どちらにしても……『貴方が話せるのか』教えて。
 私ね。自分以外の『スタンド使い』に話を聞いてみたかったの。
 その『マル』だけなら『偶然』かもしれない……確信が持てない。だから」

背筋を伸ばし、目の高さは合わせないまま見下ろすような形で、『ディーン』の目を見る。

822ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/09/27(金) 23:57:56
>>821

潔く負けを認めても良かった。
元々、勝負を挑んだつもりはなかったのだ。
ただ、もう少し『ゲーム』を楽しみたい気分だった。
これも、スタンドの訓練になるだろうという考えもある。
だから、この勝負を受ける気になった。

(なら――――俺は『こうする』)

      シュルルルルル…………

犬が少女を見上げ、『光の紐』が再び動き出す。
そして、別の形を作り始めた。
やがて出来上がったのは『二つの丸』だ。
ただし、少女が描いたような『二重丸』とは違う。
それは、二つの丸が横に繋がったような形の記号だった。

         クルッ 
             クルッ

空中に描かれたのは――――『∞』だ。
人間の間では『無限』を意味する記号として知られているらしい。

《――こんな感じでどうだ?》

そして、同時に『スタンド会話』を少女に飛ばした。
あまりやらない事だが、向こうが話したがっているなら、
まぁ乗ってみてもいい。

823黒羽 灯世『インク』:2019/09/28(土) 00:58:56
>>822

「うッ……!!! それは……!?」

一筆書きで『三重丸』は書けない。
戯れに勝てる勝負を仕掛けたつもりだったのだ。

         「い……」

(犬なのに賢い……だけじゃない!?
 人間の『記号』をちゃんと理解していて、
 それを自分の能力で応用できている!?
 こ、この犬……たぶんスタンド使いでも、『上の方』!)

『∞』――――それを信じられない物を見る目で見る。

「……………………言っておくけど。
 私が負けだと認めない限り、私の負けじゃない。
 だけど…………『私の勝ちとも言い切れない』」

「それは、フフッ。認めざるを得ない」

              スンッ

すました顔を作り出す。『気持ち』で負けないのは大事なのだ。

「あなたもなかなか『上等』なようだわ。
 それに日本語も喋れるようだし……えっ? !?」

「…………喋れるの!? なんで! ……それも『スタンド』の力!?」

824ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/09/28(土) 01:38:51
>>823

発せられた『声』は男性的なものだった。
おそらくは『二十台前半から半ば』ほどの年齢を思わせる声だ。

《なかなか楽しいゲームだった。俺は、それで十分だ》

    シュルルル

『光の紐』が元通り『リボンタイ』の形に結ばれていく。
しかし、放たれる淡い光は消えていない。
解除してしまうと、会話が出来なくなるからだ。

《『話がしたい』と聞いたのは俺の空耳だったか?
 俺だって、『犬と会話が出来る人間』を見たら驚く》

《だけど『俺達』は別だ。スタンドを通して意思をやり取りするのさ。
 スタンド同士の『糸電話』みたいにな》

四肢に込めていた力を緩め、やや落ち着いた姿勢で座り直す。
目に見える危険はないと判断したからだ。
少なくとも、今の時点では。

《で――――何を話すんだ?
 俺が知ってる『人間向きの話題』と合うかは保障できないが》

今までの様子から、スタンド使いになって間もない事は分かる。
もっとも、俺も似たようなものだ。
スタンドについて、それほど中身のある話が出来るワケじゃあない。

825黒羽 灯世『インク』:2019/09/28(土) 02:56:29
>>824

「『話はしたい』けど……まさかそういう風に話せるなんて。
 その『ひも』で『〇』を作って質問に答えるくらいかなって」

「――――そう、まずは、これも収穫。フフッ!」

             スッ

先ほどしまったばかりのスマホをせわしなく取り出す。
ディーンには見えない角度だが、『メモ』を取るためだ。

「それで、それでね。あなたの言い方だと『スタンド使い』……」

       キョロ …

と、言いかけて周囲を一瞥する。
犬と話す女というのを見られたくないが、あいにく人も皆無ではない。

数度考えて、自分の中に今までにない『出力』があることを自覚した。

≪……こう。こうね。『覚えた』……『スタンドの会話』。
  それで……あなた、スタンド使いに会ったのは初めてじゃなさそう。
  まずはこれを聴きたい。単刀直入――――シンプルに言うから答えてね≫

             ≪……スタンド使いに関わる、集団とかは、ある?≫

気にかけているのは『スタンドそのもの』ではない。
その力が生み出す、取り巻く世界だ。それを知ることが『必要』だと考えている。

826ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/09/28(土) 11:50:31
>>825

《……いや、知らないな。聞いた事もない》

その話題は初耳だった。
しかし、言われてみれば十分に有り得る話だ。
むしろ、そういうグループが全く存在しない方が妙な話だろう。

《だけど、そういうものがあったとしても俺は驚かない。
 同じ生き物同士が『群れ』を作るのは自然な事だ》

肉食動物なら効率的に狩りをするため。
草食動物なら生存の確率を上げるため。
その他にも色々な事情で動物は群れを作る。

《『人間』も同じだし、『スタンド使い』も例外じゃない。
 俺は――そう思う》

少女に向けていた視線を、しばし遠くに見える『高層ビル』に移す。
人間も集まる事で、一人では出来ない事を成し遂げられる。
『スタンド使い』なら、もっと大きな変化を世界に与える事も出来る筈だ。

《俺みたいなのも当然いるだろうしな。
 まぁ、もしもの話だが猫とか鳥とか魚とか……》

《……話が逸れたな。とにかく俺は知らない。
 だが、『スタンド使いの集団の有無』という話は俺も興味が湧いてきた》

《もしアンタが何か掴んだら、俺も知りたいね。
 それよりも……何かするなら、その時は『手』を貸してもいい》

『大きな変化』――それは良し悪しに関わらない。
それがヨシエにも影響を及ぼすものであるなら、俺は知る必要がある。
いや、知らなければならないだろう。

827黒羽 灯世『インク』:2019/09/29(日) 00:17:22
>>826

《そう…………なら少なくとも『知ってるのが普通』、
 知らないと『情報弱者』……そうではないようね。
 それだったら、別に何も、問題はないと言えるわ》

組織力ほど大きな力はない。
一人一人が違う能力を持つスタンド使いの組織が、
誰もが知るほどに勢力を拡大しているのであれば、
それは今後の身の振り方にも関わる……『強者』としての。

《とはいえ……そうね、あなたは犬だものね。
 頭は中々いいようだけれど、知れる情報には偏りがありそうだわ。
 人間で頭がいい私なら、また違った答えを知れるかもしれない》

      「フフッ!」

《……笑いをスタンドでやるのは、ちょっと難しいのだわ。
 これもひとつ勉強ね。とにかく、そう、違った答えよ。
 あなたと私では視点が違う、それにきっと考え方も。
 何をする気もないけど、手の『貸し借り』は賛成だわ》

と、そこまで言い終えて『手』を見る。
振袖に半ば隠れた自分の手ではなく、ディーンのを。

・・・『手』?

《でも、あなたのそれは『足』と言うんじゃないの?
 あなたの自認では『手』? 気になる……とても、とても気になるわ》

828ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/09/29(日) 00:50:50
>>827

《賛成できる意見だ。視点が増えれば、それだけ考えの幅も広がる。
 考えの幅が広がれば、行動の選択肢も増やせる》

《世の中には『動物お断り』の場所も多い。
 そういう場所だと、俺が入るには苦労するからな》

《その代わり、『鼻』なら俺の方が利くだろう……。
 『頭』は、アンタの方がいいかもしれないが》

現状、この少女からは『危険な匂い』を感じ取れなかった。
まぁ、信用してもいいだろう。
少なくとも、『仕事をする上での協力者』としては問題ない。

《――『足』?ああ、これは『前足』だ。『手』じゃあないな。
 人間みたいに何かを持ったりするようには出来てない》

教えるべきかどうか。
それについては迷いがあった。
しかし、今後『同じ仕事』をするなら知らせておく必要がある。

《……まぁ、いい。教えておこう。俺の『能力』を。
 ただし、『アンタの』も教えてくれるのが条件だ》

         シュルルルルル

《――――それでどうだ?》

『光の紐』が再び解けていく。
その先端が、握り拳を開くように展開していく。
よく見れば、人間の『手』のような形をしている事が分かるだろう。

829黒羽 灯世『インク』:2019/09/29(日) 02:23:39
>>828

《そう、人間だから入れる所の方が多いと思うけれど、
 逆に、人間じゃあ入れない所も多いのだわ。
 私は『記者』だけど……探偵やら警察やら、
 謎解きが仕事の人達の相棒は、『動物』が多いの。
 私とあなたは……相棒というほどではないと思うけど》

     スゥーー ・・・

《種族は違えど『上位』に立つ存在同士ではある》

《つまり、手を取り合うことは出来そうだわ!
 それと、少しずつくらい、秘密も共有できる。
 あなたなら、大多数の人間には『言いふらせない』し》

『筆』を手に浮かべ、それをかざす。
その筆先には文字通りの『墨(インク)』が滲み、
空間に残す。極めて儚く、しかし明確な『筆跡』を。

《フフフ……私の『インク』は、見ての通り。
 空間に文字を書く……それも、とても、とても速くね》

         シャシャシャシャッ

《あなたの走る足より、私の筆の方が速いくらいでしょう》

勝ち誇る笑みを浮かべ、意味のない筆跡は消える。
残ったのは筆……それに最初に書いた『文字列』のみ。

《それと……『筆法』という、特別な技も使えるそうだわ。
 もちろん、与えられた技が全てじゃあないけれどね。
 私が編み出した『筆術』も、フフッ。大いに『強さ』になる!》

《…………とまあ、こんな所かしら? 教える情報のレベルは? どうかしら?》

830ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/09/29(日) 11:15:49
>>829

《――――オーケー、問題なしだ。見た事のないタイプだな。
 俺も他のスタンドに出くわした経験は少ないが……》

『筆』というのは、あまり目にする機会がない。
前にテレビか何かで見たので、それが『筆記用具』なのは知っていた。
おそらく、概ねは『その通り』なのだろう。

《確かに『速い』な。『俺が走る』よりも速そうだ。
 その『筆法』とかいうのも――何か底知れない『強さ』を感じる》

だが、『それだけ』ではなさそうだ。
現に、さっきも何かしようとしていた。
もっとも、それを見る事は出来なかったが。

《次は俺の番か。名は『ワン・フォー・ホープ』。
 見ての通り『光の紐』だ》

        シュバババッ

《こうして、アンタの『手』みたいに動かせる……。
 そして『俺が走るよりも速い』》

空中に伸ばした『ワン・フォー・ホープ』を柔軟に動かしてみせる。
そのスピードは、『インク』の筆記スピードと同等だ。
もっとも、指先から『墨』が出てくるワケじゃあないが。

《俺の能力は、この『手』と『人間の手』が合わさった時に使える。
 つまり、『人間』がいてこそ役に立つ能力なのさ。
 『その人間』は基本的には強くなって、
 アンタや俺の『手の動き』と同じくらい速く動けるようになる》

《俺から教えるのは、これくらいだな。満足してもらえたか?》

831黒羽 灯世『インク』:2019/09/29(日) 19:40:52
>>830

《ふうん? 筆は珍しいのかしら……まあ納得だわ。
 普通に筆記具は『ペン』の方が主流だものね。
 私だって、紙にものを書くときはペンだけれど……》

《ああいえ、私のことはいい、あなたのその『紐』。
 能力からしても『リード』のスタンドって事よね。
 面白いわ。きっと人間には目覚めない力でしょうね。
 それに…………あなたの『ユーモア』も。それから……》

動く『光の紐』を目で追い、笑みを浮かべる。
人間がリードを付けないとも限らないとはいえ、
それを『力』として発現するのは……相当のものだろう。

《……名前も面白いわ。『犬だけに』……フフッ!》

(『ワン・フォー・ホープ』も『彼』が名付けたのかしら?
 なんだかイメージとは違うわね……何度も話したわけじゃないけど)

力を与える存在であった『道具屋』に、力を与えた人間もいるだろう。
そう考えればディーンと自分の力の出所は違ってもおかしくはない、と考えてはいた。

《面白くって……ええ、ええ。満足出来たのだわ。
 私たちが今回明かした『強さ』がほんとに等価なのかは分からないけど……
 同じ価値観のはずもないものね。大事なのはお互い満足できたこと》

         フフフ……

《もう一つだけ教えてくれる? その首輪に書いてる……
 で、で…………アルファベット四文字。それがあなたの名前?》

832ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/09/29(日) 21:09:25
>>831

《『名前』か…………。ああ、そういう事になるだろうな。
 少なくとも、そう呼ばれている》

『首輪』と『リボンタイ』は、見た目の年数が一致していなかった。
『リボンタイ』の方は真新しく、ごく最近の品だと分かる。
『首輪』の方は、それよりは使い込まれたものらしい。

《『ディーン』――――それが俺の名前だ。
 まぁ呼び方はアンタに任せるが……》

自分でも無意識の内に、『あの女』の事を思い出す。
俺に名前を与えた女だ。
それは『ヨシエ』じゃないし、『ヨシエの身内』でもない。

《ただ、『チワワ』や『犬』って呼ぶのはオススメしない。
 他のヤツと区別がつかなくて、お互いに困る事になるからな》

しかし、考えるのは一瞬だけだ。
おそらく二度と会う事はない。
俺自身、会いたいと思ってるワケでもない。

《これは、『ついで』に話すんだが……。
 俺が出くわしたスタンド使いは、アンタで五人目だ。
 その中で『人型』じゃなかったのは、アンタと『鎖の男』だけ》

    グッ グッ グッ グッ グッ
                     ピッ ピッ
   
『ワン・フォー・ホープ』を軽く持ち上げる。
そこにある『五本の指』が、順番に折り曲げられていく。
そして、『二本の指』だけが元通りに伸ばされた。

《年は、アンタとそう変わらない――――ように見えた。
 とはいえ、この点はアテにはならんかもしれないが……》

《ソイツも『スタンド』について調べている様子だったな。
 『何かに駆り立てられている』というか…………。
 とにかく、大きな『動機』のようなものがありそうに見えた》

《俺からの『情報提供』は以上だ。
 その代わりといっちゃあなんだが、
 次に会った時に何か『新しいネタ』でも仕入れていたら教えてくれ》

《――――おっと、うっかり忘れる所だった。
 出会いの記念に、アンタの名前も聞いておこうか。
 『女』や『人間』じゃあ他のヤツと区別が出来なくて困るからな》

833黒羽 灯世『インク』:2019/09/30(月) 15:31:01
>>832

≪ディーン。なるほどね、私もそう読むって思ってたところだわ!
  フフッ! あえてあだ名を理由もないし、名前で呼ぶことにする≫

もちろん読めてなかったのだが、
それを確かめるすべはどこにもないのだ。

≪スタンドの形の統計は置いておいて……『鎖の男』?
  ふうん――――『学生』で、スタンドを探してるなら、
  いずれ会うかもしれないわね。ありがと、貴重な情報だわ≫

実際の所、役に立つ情報と言える。
鎖の男がどういう動機を持ってるのかは謎だが、
知っていることは、基本的にそれだけで意味がある。

                     クロバネトモヨ
≪私のことは『筆の女』じゃなく、『黒羽灯世』……
  区切りは『クロバネ』と『トモヨ』の二つだから、
  好きな方で呼んでくれていいわ、『ディーン』≫

             キョロ   ・・・

≪それで……そういえば、あなたの『飼い主』はどこにいるのかしら?≫

首輪や人間風の名前の存在からも存在しているのは明らかだが、
彼の『帰る場所』はどこなのだろう。周囲を見渡して、それらしき人間を探す。

834ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/09/30(月) 19:19:29
>>833

あの『鎖の男』から、俺は『良くない匂い』を感じた。
しかし、それは言わなかった。
『先入観』を与えたくなかったからだ。
『別の視点で見る』事を重視するなら、その方がいい。
もしかすると、『別の何か』が見えてくるかもしれない。

《分かった。『トモヨ』――そう呼ぶ事にしておく。
 これで、お互いに平等だ》

俺は、物心ついた時から『檻の中』にいた。
ドライな表現をすると、『商品になるために生まれてきた』とも呼べるな。
だからどうってワケじゃあないんだ。
それについて、たまに少しだけ考える事はある。
だが、それだけさ。

《それで、俺の『飼い主』だが……『ここ』にはいない》

ある日、一人の女が俺を買った。
だけど、その女は『今の飼い主』じゃない。
なぜなら、俺を捨てたからだ。
理由は知らないが――まぁ『何か』あったんだろうな。
訳もなく捨てたんじゃないと、俺が思いたいのかもしれないが。

《今は『家』にいるからな。
 眠ってたから、俺だけで出掛けたんだ。
 次に会った時にでも紹介するさ》

《まぁ、そろそろ起きる頃だろう……。
 俺がいないと心配するだろうから、ぼちぼち帰らなきゃならないな》

近くには、『飼い主らしき人間』は見当たらない。
遠くには数人の人が見えるが、通り過ぎていくだけだ。
言葉通り、『家』にいるのだろう。

835黒羽 灯世『インク』:2019/09/30(月) 23:54:51
>>834

≪『平等』――――そうね、それで構わないのだわ。
  現にあなたは私に比肩する知性を見せてくれた。
  少なくとも、今は……『どちらが上か』決められない≫

≪それに、必ずしもはっきりさせる必要もないのだわ≫

犬に――――いや、『ディーン』に負けているとは思わない。
だが、すぐには勝ち負けを決められない。『どちらも上』だ。
犬ながらにして自身を驚かせたという、その時点から、今まで。

自分が『強者』で『上の方にいる』――――
確信があれば、他の、並び立つ強者の存在は問題ない。

≪あら、そうなのね……
  飼い主を心配させるのは、すごく良くないわね。
  次いつ会えるかは分からないけれど、約束は守るわ。
  なにか『新しいネタ』があれば教えてあげる!≫

             コト

コーヒーの容器をベンチに置いた。
いつの間にか氷が解け始めていた。話に夢中だった。

≪さあ、さあ……お行きなさい。出来たらまた会いましょう。
  この出会いはとても、とても実りがあるものだったのだわ!≫

836ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/10/01(火) 01:18:13
>>835

捨てられた時は、
その事実を受け入れるのに時間が必要だった事を覚えている。
それを受け入れた頃には俺は衰弱し、
死という泥沼に半分ほど浸かった状態だった。
あまり気持ちのいい思い出とは呼べないな。
だが、それがヨシエと出会うためのプロセスだったとすれば、
そう悪くないと思えてくるんだ。
今の俺は、そう考えている。

《アンタの話は興味深かった。いつかまた聞かせてくれ。
 それに、『ゲーム』も嫌いじゃない》

    ヒョイッ

《それじゃあ、またな――――『トモヨ』》

          シュルルルルル

ベンチから飛び降り、『光の紐』が『リボンタイ』に結び直される
そして、『リボンタイ』から光が消えた。
『ワン・フォー・ホープ』が解除されたのだ。

               ――――ワォンッ

別れの挨拶代わりに、俺は一声の鳴き声を発した。
意味は伝わらないだろうが、別に大した意味はない。
人間が『別れ際に手を振る』程度のものだ。

                    トッ トッ トッ…………

背中を向け、トモヨの前から立ち去っていく。
今度は、『急に戻ってくる』というような事はない。
『帰る場所』――ヨシエの傍に戻らなければならないからだ。

837黒羽 灯世『インク』:2019/10/01(火) 11:17:10
>>836

《私の話は、いつだって興味深いわ。
 国語の作文とかもいつも点数が高い方だし……フフッ》

去っていく犬の背中に、振袖の中で小さく手を振る。
……初めて出会うスタンド使いが犬とは思わなかった。
ディーンの言葉から察するに、犬が多いわけでもないだろう。

(なかなか『上等』な体験だったと言わざるをえない。
 ああ、さっそくメモに残しておかなきゃいけないのだわ)

スマートフォンを取り出し、今日あったことを記す。
記事にするのは無理のある話だ……事実ではあるが、
大多数が受け入れられない事実は、そうは扱われない。
不満こそあるが、いまはまだ、その時では無いだろう。

(何より次につながる話も聞けた…………『鎖の男』。
 ……とりあえず、学内で鎖をジャラジャラさせてる不良とかは、
 いつも以上に気をつけておくに越したことはなさそうだわ。
 …………しまった。ほかの四人についても聞いておくべきだった!?)

全てがうまくいったわけではないが、意味はあった。
色の薄れてきたコーヒーの残りを喉に通しながら、機嫌よくメモを残す・・・

838美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/03(木) 22:42:03

          ――――キキッ

駅前にある広場。
停車したスクーターのシートに腰を下ろし、視線を落とす。
眺めているのは、
駅構内のマガジンラックに置かれていた『フリーペーパー』だ。

「大抵の事は『デジタル』が解決してくれる時代とはいえ、
 やっぱり『アナログ』も大事よね」

そのフリーペーパーはラジオ局が定期的に発行しているもので、
出演者の紹介や番組情報などが記載されている。
公式サイトやSNSアカウントもあるが、気付かれなければ意味がない。
人目につく場所に置くことで、存在を知ってもらう事が出来る。
表紙に写っているのは、パーソナリティーの一人だった。
化粧っ気のある整った顔立ちに、ラフなアメカジファッションの女だ。

「今はスマホでも手軽にラジオが聴けるし、もっと身近になるといいんだけど」

手にしたフリーペーパーを眺めているのは、
表紙の人物と『同じ顔と姿の女』だった。

839釘宮『ミュオソティス』:2019/10/03(木) 23:29:55
>>838

「……おっと」

襟のない白シャツを着た男がいた。
自然石のネックレスが胸元にあった。
フリーペーパーに手を伸ばす。

「参ったな。美作さんだ」

どうやらそちらを知っているらしい。

840美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/04(金) 00:01:26
>>839

「――――はい?」

不意に名前を呼ばれて、そちらの方を向いた。
相手の姿を見て、記憶を辿る。
顔見知りの人物だっただろうか?

(思い出せない……。同じ業界の人だったかしら?
 違う局の人なら、流石に全部は分からないし……)

目の前の相手について、しばし思考する。
顔と声を、自分の知っている人物と当てはめていく。
その中に該当する人物が、一人いた。

「釘宮さん――ですよね?」

841釘宮『ミュオソティス』:2019/10/04(金) 00:42:42
>>840

「そう、釘宮さんだよ」

「……流石ですね、よく覚えてらっしゃる」

そう言って淡く微笑んだ。
その背後にぴったりと何かがくっついている。
半透明なそれはスタンドらしい。
女性的な幽鬼がそちらを見ていた。

「お綺麗ですね。まぁ、写真よりやっばり実物ですが」

彼は自分の背後にいるものに無頓着だ。

842美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/04(金) 01:11:38
>>841

「これでもアンテナは広く持ってますからね」

「私と同じ業界の方ですよね?
 こんな場所で出会うなんて、ビックリしましたよ」

    ニコリ

「ありがとうございます。釘宮さんもステキですよ。
 ネックレスが、よくお似合いで――――」

その時、それが見えた。
まるで背後霊のような幽鬼のヴィジョン。
見た瞬間に、『スタンド』だと直感した。

「…………えっと、何のお話でしたっけ?
 ああ、そうそう。『凄く偶然ですね』っていう話で……」

「いえ、違いました。ネックレスの話でしたよね?
 その石は、どういった種類のものなんでしょうか?」

予想外だったせいで、内心は少々動揺していた。
理由は他にもある。
そのスタンドの視線に、どこか『嫉妬』めいたものを感じたからだ。

(危険は……ないわよね。
 彼は、そんな人には見えないし……)

そう思ってはいるが、不安もないではなかった。
大抵の人間は、嫉妬する相手の事を良くは思わない。
もちろん、これは人間の場合だが、
もしかすると、そういうスタンドもいるのかもしれない。

843釘宮『ミュオソティス』:2019/10/04(金) 01:43:07
>>842

「最近は同じ局で番組もしてますよ」

「……言っても曜日が違うから会うこともないですけど」

そう呟いてフリーペーパーを開く。
途中で閉じてしまったが。

「なんだったけっなこの石、ガーネット? とか、そういうのだったかな」

ネックレスを指で押し上げながら言う。
小くてゴツゴツとした石が連なっていた。

「……?」

「大丈夫ですか? なんだか、間があったような……」

不思議と男は目線を合わせずに話している。

844美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/04(金) 02:26:39
>>843

「ああ、そうなんですね?失礼しました。
 私ったら、ついウッカリしちゃって」

「まさに『灯台下暗し』とは、この事ですねえ。
 視野を広げすぎると、却って近くが見えにくくなる。
 うん、結びの言葉としては上々。
 この話、いつか使わせて頂いても構いませんか?」

同じ局なら把握してると思ってたけど、私もポカやらかしたものね。
まぁ、最近はチョット忙しかったから……。
何てのは言い訳にならないわね、反省反省。
でも、それも『ただの失敗』にはしない。
これもトークのネタになると思えば、むしろ収穫なんだから。

「いえ、少し考え事をしていたもので……。
 『ガーネット』ですか。私も、もう少し宝石の勉強をしなくちゃ。
 普段、あんまりアクセサリーらしいアクセサリーを付けない方なので」

会話を続けながら、スタンドの様子を窺う。
これが、彼のスタンドなのは間違いない。
彼が何故か目線を合わせようとしないのは、
何かスタンドに関係しているのだろうか?
そもそも、彼がスタンドを出している理由は何なのか?
そこまで考えた時、何となく『試してみたくなった』。

「まぁ、私に似合うものがあれば――――ですけどね」

不意に、肩の上に『機械仕掛けの小鳥』が現れる。
『プラン9』を発現した。
彼の反応を見たくなったのだ。

845釘宮『ミュオソティス』:2019/10/04(金) 02:39:13
>>844

「構わないですよ。私も使わせてもらおうかな」

「……いや、嫉妬されるかな?」

微笑み。
よく笑う人だった。
だがどこか遠くを見ている。

「意外ですね、結構オシャレさんなんだと思ってた」

「まぁでも、美作さんはあんまりゴテゴテ装飾品をつけるイメージもない、か……」

「素材がいいと、シンプルな方がよく映える」

褒めていても相手を見ていないのだ。

「必要なら馴染みの店を……おっと」

「……なるほど、理解した。そういうことか、パズルのピースが埋まった気持ちだ、ほんのちょっぴりだけど」

肩の上に視線を送るが一瞬で目を逸らした。
忙しなく目が動くが焦っている訳では無いらしい。

「見えるんですね、僕の『ミュオソティス』が」

846美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/04(金) 03:03:30
>>845

「ご覧の通り、普段はカジュアルなファッションが多いので。
 でも、必要があればアクセサリーも付けますよ。
 『TPO』みたいなものですね。
 たとえば、ステキな男性とロマンチックな時間を楽しむ時なんかには、
 それなりの格好じゃないとサマになりませんし」

「――『素材が良いと』というお言葉は、ありがたく受け取らせて頂きます」

    ニコリ

「ええ、そちらの彼女が見えてますよ。
 私の事は、あまりお気に召して頂けてないようですけど……」

「『恋人』が別の女性に近付くのは、確かに気になりますからねえ。
 私も、その気持ちは分かりますよ」

「あなたも私の『プラン9・チャンネル7』が見えてらっしゃるようで。
 同じ業界で同じ力を持っているなんて、随分と奇遇ですよねえ。
 そう思われません?」

(また視線が逸れた。逸らそうとしているのは確かみたいだけど)

「――――私は、そう思いますねぇ」

スクーターのシートから降りる。
そして、何気なく彼の視界に入るように歩み寄る。
別に困らせたい訳じゃない。
恋人同士の間に割り込むような趣味はないから。
ただ、何となく気になるのよね。

847釘宮『ミュオソティス』:2019/10/04(金) 13:40:37
>>846

「はは、なるほど。理解した」

「そういうものですね、確かに」

笑みには笑みで返す。

「『ミュオソティス』はちょっとばかり、私を守る意志が強い」

「この奇遇は呪いみたいなものだけど」

視界に入るように美作が近寄る。
視界内への侵入。
同時に釘宮と美作の視線の交差。
目が合った。
黒い目がそちらを見ている。

「おっと……好奇心は猫を殺す」

「分かってて近寄りましたね?」

苦笑いを浮かべながら言葉を発する。

「私の視線は太陽光線よりも危険です」


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