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【場】『 私立清月学園 ―城址学区― 』

1『星見町案内板』:2016/01/24(日) 23:57:56
『H城』の周囲に広がる『城址公園』の敷地を共有する『学び舎』の群れ。
『小中高大一貫』の『清月学園』には4000人を超える生徒が所属し、
『城郭』と共に青春を過ごす彼らにとって、『城址公園』は広大な『校庭』の一つ。

『出世城』とも名高い『H城』は『H湖』と共に『町』の象徴である。

---------------------------------------------------------------------------
                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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299硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2018/03/02(金) 00:00:13
>>298
「俺は、俺の事はよくわからないんだ。
だが俺をわかってくれる人間が居る、と言うことは、
中々に良い気分なんじゃあないかい」

抱き寄せられたまま腰を曲げ、
頭の高さを佐奇森に合わせる。

「俺はそろそろお暇するが。
そつだ、折角だしケータイの番号を交換しないかい」


ジーンズのポケットにねじ込んだ使い込んだガラケーを取り出す。

300佐奇森 届『スカイラブ』:2018/03/02(金) 02:55:51
>>299

      「OK!」

    「そのケータイも、イイ趣味してる」

パッと離れて、こちらもポケットからケータイを。
こちらが取り出したのは、オーソドックスに『スマホ』だ。

       「……ああ、でも」

         「結局、ナンパみたいな流れになったね?」

              クスッ

      「なんてね!」

   「私はもう少し、遊んでから帰ることにするよ」

彼女の手には、ボールが握られたままだった。

301硯 研一郎『RXオーバードライブ』:2018/03/02(金) 15:28:24
>>300
あっ、と言う間に携帯の電話番号を交換する。

「そうか、成る程。
どうやらこれが『ナンパ』ってやつなのか。
今度、俺の行きつけの喫茶店でお茶でもしよう」

「では」「また」

ヒラヒラと手を振り、去っていった。

302佐奇森 届『スカイラブ』:2018/03/02(金) 22:47:36
>>301

    「じゃねー」

去っていく研一郎を、こちらも手を振って見送る。
その背が消えれば、辺りにはもう誰もいない。
陽はもう沈みかけ、カラスが鳴く。

        ポーーーーーン

           パシッ

      「『宴会芸』、か」

真上に投げ……キャッチしたボールには、『宇宙船』のマークが描かれていた。

   「……必殺魔球ッ!」

      ヒュッ

                グンッ


        ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
                                ゥ
                                 ゥ
                                 ゥ
                                  ゥ
                                  ゥ
                                   ン
                                   ッ
                                   !!

             「……なんて」

                「これはちょっと、反則だよね」

少しすると、もう公園に佐奇森の姿はなかった。

303鹿沼 紅太『ドレッドノート』:2018/03/05(月) 00:00:44



   『 バ キッ !! 』


「…………ヤッベぇ〜〜〜〜〜〜」

         『 ホ ゙ ロ ・・・ 』

 グラウンド、体育用具室にて。
 木造の、よく言えば年季の入った、悪く言えばオンボロの、人の寄り付かない倉庫の陰から、不信な音。

304白瀬 希『トンプソン・スクエア』:2018/03/05(月) 00:23:44
>>303

「おーい。なにやってんだー?」

異音を聞きつけて女がやってきた。
180cm前半の身長を持つ電信柱のようなノッポだ。

305鹿沼 紅太『ドレッドノート』【中3】:2018/03/05(月) 00:47:50
>>304

 白瀬の目に最初に映るのは、ツンツン頭の赤毛の少年だ。
 人工的な色は、おそらく自分で染めたのだろう。

「べっ、別に! 何でもねェー……っスよ!」

 少年の口調は荒いが、見知らぬノッポ女の出現に、殊に動揺しているように見える。
 その視線の先には――――

         『 ミシ  ミシ … 』

 巨大な、『穴』があった。
 木造の壁に、まるで重機でも突っ込んできたかのような、どでかい穴が開いているのだ。

 当然、周囲に重機などはなく、少年以外の人影も見当たらない。

306白瀬 希『トンプソン・スクエア』【大二】:2018/03/05(月) 00:56:23
「……」

女が黙り込む。
大穴とそちらを交互に見つめている。

「おい。アタシの質問に答えろよ?」

「今ちょっとキレてるから」

明らかに敵意のある態度を見せている。
白瀬ノゾミの嫌いなものは自分の利益のために誰かを傷つけるものだ。
他人を踏みにじる人間だ。
目の前の人間は後者ではないが前者ではあるかもしれない。

「それはお前がやったのか?」

「やったのなら何のためにそんなことをした?」

「嘘つくなよ。その顔、もう覚えたから」

307鹿沼 紅太『ドレッドノート』【中3】:2018/03/05(月) 01:10:23
>>306

 上から睨まれると、少年は怯んだように首を竦める。
 しかし、ぐっと正面から目を見て答える。

「言えねェ」

 その短い答えが、ともすれば肯定の意となることを、知っている目だ。
 ビビってはいる。白瀬の怒りに圧されているのは、表情が物語っている。

「……」

 が、不思議と逃げようとはしない。

308白瀬 希『トンプソン・スクエア』【大二】:2018/03/05(月) 01:22:19
>>307

「言えない? 答えになってるけど、質問の答えとしてはゼロ点だな」

「お前、テストで答えの欄に『書けません』ってやるのか? ん?」

高圧的。
物理的な高さだけでない。
精神的に下に見ている。

「やったか、やってないか」

「言えないっていうのは『そうだ』って言外に言ってるってことでもいいんだよな?」

「『処刑』すんぞ」

309鹿沼 紅太『ドレッドノート』【中3】:2018/03/05(月) 01:35:46
>>308


     『ピク』

「アンタに採点される筋合いねェーだろ……!」

 怯えばかりが浮かんでいた目に、明確な敵意の色が宿る。
 処刑、という言葉に反応したようだ。
 が、逃げ腰に代わりはなく、素直に白状を始めた。

「……そうだよ! 俺が壊したッ!
 方法は言えねェーけど、『わざと』じゃねェ!」

         「これでいーかよ!」
                      フンッ

 怯えを隠すように声を張り上げる。

310白瀬 希『トンプソン・スクエア』【大二】:2018/03/05(月) 01:43:42
>>309

「あ? テメェ立場分かってんのか?」

手が胸倉まで伸びる。
そのままなら掴み上げられるだろう。

「……テメェやっぱり壊してんじゃないか」

「潰すぞ……ってなんだよーわざとじゃないのかよ」

急に表情が変わる。
敵意はない。明るい顔だ。

「ビックリしたー。故意じゃないのかよ」

「間違いってのは誰にでもあるよなー。まぁ、大穴はやり過ぎだけどさぁ」

311鹿沼 紅太『ドレッドノート』【中3】:2018/03/05(月) 21:39:15
>>310

「…………」

 相好を崩す白瀬とは対照的に、少年の警戒は解けない。
 胸倉に伸びた手に驚いたように身じろぎし、その体勢のまま白瀬を怪訝そうに見つめている。

「アンタ……用務員さんとか、スか?」
「それとも、ここが何か特別な、忘れられない思い出の場所だったとか……」

 もしもそうなら、謝らなければいけない。
 相手は被害者で、自分は加害者だ。
 迷惑をかけたのだ。怒りも誹りも、正当なものだ。
 ……だから、その全てを甘んじて受け入れる、とまではいかないが。

 しかし、そうではないのなら。

「そ〜〜〜……ッスね……わざとじゃないからイイ、とは、思わねェーけど……」

 ヒグマを相手取ったかのように、ゆっくりゆっくり後退する。

 自分は器物破損の容疑者候補で、彼女はその目撃者。
 それ以上の関係にはならない。
 にも拘らず――――上から目線での威圧と命令、どころか私刑の示唆。


(……チクショ〜〜〜〜っ こいつ『ブっ飛んで』る! きっと『不良』ってやつだ!
  最悪だ、目ェつけられちまった!! やっぱ髪染めたの失敗だったかなァ……)

 この学園で、凡そ関わるべきではない類の相手。
 機嫌は直したようだが、それにしても顔を覚えられてしまったのは不味い。

「ハァ……とりあえず、職員室行かなきゃ」
「何て言い訳すっかな」             ボソ

 ――――速やかに、この場を離脱しなければ!

312白瀬 希『トンプソン・スクエア』【大一】:2018/03/05(月) 23:30:06
>>311

「用務員じゃねぇよ。だがここの生徒だった」

「思い出以前に使った時間があるんだよ」

にらみをきかせる。
が、そんな色も今はない。

「おい、おい。待ってよ。さっき胸倉掴んだりして悪かったよ」

「アタシってすぐ頭にきちゃうみたいでさ。ごめんな」

「職員室ついていくよ。弁護って訳じゃないけど、ほら第三者の意見ってゆーの?」

「そういうのも必要じゃない?」

313鹿沼 紅太『ドレッドノート』【中3】:2018/03/05(月) 23:47:16
>>312

「……あー」

 短慮を少しだけ恥じる。
 学生であれば誰だって、校舎への思い入れや帰属意識があるはずだ。

「てーことは、卒業生スか。なんでまたウチの校舎に……?」

 つまり、『少しカッカしやすい人』というだけのこと。
 だとすれば、こちらが気を付けていればいい。

 鹿沼は学園の指定ジャージを身に付けている。
 この色と柄であれば、中等部の三年生だと分かるだろう。

「……ウス。助かりまっす」

 白瀬の申し出にも、素直に頭を下げた。
 警戒も、先ほどよりかは薄い。

「けど、コレ。なんつって説明したもんカナー」

 まだ土埃のたつ穴を、気まずそうに覗き込む……

314白瀬 希『トンプソン・スクエア』【大一】:2018/03/06(火) 00:20:24
>>313

「卒業生。いまは大学の一回生」

「今日は後輩のバイト見る予定だったんだけど、インフルで休みだってさ」

あっけらかんと笑って見せた。
その辺はさっぱりしているのか愚痴っぽさもない。

「なにしたらこんなんになるの?」

「あれ? グラウンド整備用のローラーでもぶつけた?」

315鹿沼 紅太『ドレッドノート』:2018/03/06(火) 22:39:06
>>314

「イヤ〜〜〜〜……それはちょっと説明がムズくて……」

 グラウンドには、それと思しき機材は転がっていなかった。

 視線を泳がせる。
 どうにか誤魔化してしまいたいが、それが出来るほど器用ではない。

「もののはずみっつーか、『腕』が滑ったっつーか」
「えーと……」

 職員室に向かうには、体育館の通用口から校舎内へ入らなければ。

316白瀬 希『トンプソン・スクエア』【大一】:2018/03/06(火) 23:34:45
>>315

「腕?」

腕を握りに行く。
言葉をそのままの意味で受け取る。

「何だよ。なんかやばいものでもついてんのか」

317鹿沼 紅太『ドレッドノート』:2018/03/07(水) 00:26:51
>>316

「うぉっ」

 腕を握ろうとする白瀬。
 警戒こそ残していたものの、咄嗟の出来事に対応できない。


    『ぎゅ』


 鹿沼の腕は、細い。
 しかし、『もやし』というほどの細さでもない。
 草食動物のような、必要な筋肉のみを残した腕。

「な、なんスか!」

 キョドっている。

318白瀬 希『トンプソン・スクエア』【大一】:2018/03/07(水) 01:25:56
>>317

「いや、腕になんかあるのかと思ってさ」

「細いけど……これはこれで……」

うんうん唸っている。
なにかに納得しているようだ。

「なにきょどってんだよー」

「なに、照れてんの?」

319鹿沼 紅太『ドレッドノート』:2018/03/07(水) 23:42:55
>>318

「いや、ライオンに食われるシマウマってこんな気持ちかと思って……」

 ビミョーな視線を白瀬に向ける。
 ……居心地が悪そうだ。

「つーか、ヤバいものってなんスか」
「俺そーゆーのニブい方なんで」

 職員室まではさほど遠くない。
 じきに着くだろう。

320白瀬 希『トンプソン・スクエア』【大一】:2018/03/08(木) 00:12:12
>>319

「なんだよそれー。さっきいじめたの怒ってんの?」

「ごめんって。悪い事したってのは思ってるからさ。責任とっとく?」

唇を尖らせる。
相手の心情をあまりくみ取れていない。

「ヤバいもの?」

「あー。あれじゃん、悪魔とか幽霊とか」

「スタンドとか」

321鹿島 紅太『ドレッドノート』:2018/03/08(木) 00:45:45
>>320

「ん……あぁー」

 『スタンド』。
 切り出した白瀬に、反応は薄い。

 別段、特別なことというものでもない。
 ただ、知っている人は知っていて、知っているのなら話は早いというだけだ。

「ぶっちゃけると、裏で寝ボケてて、拍子で壁殴っちゃったンス」
「サボってた罰が当たったのかなァー……はぁ」

 やがて職員室に辿り着く。
 鹿沼は恭しく扉をノックし、ぼそぼそと挨拶をして中へ入っていった。
 白瀬はどうするだろう。

322白瀬 希『トンプソン・スクエア』【大一】:2018/03/08(木) 01:00:51
>>321

「おいおい、サボりはダメだぞ。アタシも分かんないなりに授業うけてたし」

「ま、寝てる時も多かったからお互い様か。あっはっは」

あっけらかんと笑う。
そして職員室に自分も入っていった。

「こんちはーっす!」

「せんせーごめーん。壁壊しちゃった。どーんってぶつかっちゃってー」

323鹿島 紅太『ドレッドノート』:2018/03/09(金) 00:06:13
>>322

 職員室は閑散としている。
 鹿沼と対照的に賑々しく入室した白瀬。
 幾つかの視線がそちらに向く。

「白瀬ェ、まだヤンチャしてんのか」

 近くにいた、見覚えのある初老の教師が声をかけた。
 眉をハの字に曲げ、深いため息を吐く。

「いや、あの俺が」
「大学部に行きゃあ大人しくなるかと思ったんだがなァ。どこの壁だ」

 ……よほど目立つのだろうか、鹿沼が目立たないのか。
 教師は白瀬が主犯だと思い込んでいる。

 言い訳をせねば、あらぬ容疑をかけられるかもしれない。

324白瀬 希『トンプソン・スクエア』【大一】:2018/03/09(金) 00:51:01
>>323

「またって酷いなー」

「そりゃちょっと飛んだり跳ねたりが多かっただけだって」

フランクに話しかけ笑っている。
特に気にすることでもないのだろう。

「壁、あーあれだよあれ。体育用具室のとこ、木造の古いやつ」

「転んじゃってさー」

言い訳もしない。
むしろ自分がしたのだと言わんばかりの態度だ。

325鹿島 紅太『ドレッドノート』:2018/03/09(金) 02:02:52
>>324

「勘弁してくれ……維持費にも底がはあるんだから」
「一応、親御さんには報告行くからな」

 軽やかに笑う白瀬に、老教諭はため息を大きくした。

 鹿沼は、意を汲んだように口を噤んでいる。
 ただ、もの言いたげな視線が、白瀬を見上げているだけ。

「とりあえず、……あー、用務員さんがもう帰っちまってな。
 立ち入り禁止のテープを貼らなきゃいかん。
 生徒が近づいたら、危ないからな……用務員室の場所は、分かるな」

 老教諭は、ひどく声を荒げはしないものの、批難するような視線で白瀬を見上げる。
 『それくらいは自分でやれ』……言外に、そういう意味がある。

326白瀬 希『トンプソン・スクエア』【大一】:2018/03/09(金) 02:16:16
>>325

「えー! 父ちゃんに怒られるし兄ちゃん心配しちゃうじゃーん」

そこは嫌なようで困り顔。
顔を傾けながら頭を掻いている。

「はいはーい。立ち入り禁止テープね。オッケーオッケー」

「行こうか。えーっと少年」

327鹿島 紅太『ドレッドノート』:2018/03/10(土) 00:04:10
>>326

「…………」

 鹿沼は答えない。

「ン……なんだ、鹿沼。付き添いか?」
「あんまり中等部を振り回すなよ」

 老教諭は、白瀬を見送りもせず、自身の机へと戻っていった。


     ガ ラ ラ ・・・
                    ピシャッ!

 職員室を後にする。
 値踏みするような視線が、白瀬を捉えている。

「ンで」「どういうつもりスか」

 直球に尋ねる。
 恩を着せたのか、それとも善意で庇ったのか。
 前者なら厄介だが、後者なら猶更だ。

328白瀬 希『トンプソン・スクエア』【大一】:2018/03/10(土) 00:10:21
>>327

「はいはーい。すいませんでした」

最後だけは真面目に頭を下げて謝罪した。

「ん?」

職員室を出て相手と視線を合わせる。
値踏みをするような視線に困り笑い。

「どういうつもりって」

「故意じゃないのに胸倉掴んで悪かったなーって」

「それにこれから先? 変な噂とかさ、たったら困るでしょ?」

彼女なりの善意のようだ。

329鹿沼 紅太『ドレッドノート』:2018/03/10(土) 01:29:48
>>328

 困ったように笑う白瀬。
 眉根を寄せる鹿沼。
 無償の善意というのが、最も厄介だ。
 自分を庇ったせいで、他人が泥を被っている。その居心地の悪さたるや。


「……ざっス!!!」

 威勢よく、真っ赤な頭を下げて、誠意を見せる。
 それ以外に報いる方法がないのだから。

330白瀬 希『トンプソン・スクエア』【大一】:2018/03/10(土) 01:46:26
>>329

「わっはっは。いいよ。頭なんて下げなくて」

「ま、ここで下げないと男が下がるかもしんないけど」

特に気にした様子もない。
白瀬ノゾミにとって善行は自身の立ち位置の証明だ。

「あ、この後暇? 暇だったらご飯行く?」

「その頭とか色々話聞きたいし。あ、そういえば名前、なんだっけ」

331鹿沼 紅太『ドレッドノート』:2018/03/12(月) 01:16:58
>>330

「……鹿沼っス。鹿沼紅太。
 動物のシカ、『さんずい』の沼、色の紅、太刀の太」

 白瀬の後をついて行った。
 学食あたりにでも立ち寄ったかもしれない。

332今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/03/13(火) 00:29:12

フツーじゃない力を手に入れたからって、日常までフツーじゃなくならないのは、安心した。
フツーじゃないことなんて期待してない。そんな『今泉 未来』は、いたってフツーの女子高生。

              _   _   __           _
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   <:::/ヾ::::>               /:::::::::::::7 __   /::::::i __  二|::| |::::::::::::|  \/ /::::/
                           7:::/7:/ i::::::::/   ̄__./::/ |::::::::::|   ̄ ̄   _/::::/   ○ ○ ○
                           /;;;//;/   ̄    i;;;;;/     ̄           |::::::::/
                                                    ̄


        「それじゃあまた明日〜」

                       「明日7時に駅前ね!
                        遅刻厳守だからね!」

「うん、バイバイ! また明日!」

          ガララララ     バタ ン

「……」

    スタ  スタ

憂鬱な放課後っていうのはこういうことだろうか。
テストの点が悪かったのは勉強不足のせい?
それとも前日に遅くまでラインしてたせい?

どっちにしろ、職員室に呼び出しなんて。早く過ぎろこの時間。

「あーあ、気づいたら職員室出る所まで飛んでないかなぁ」

思わず口に出てしまうくらい、めんどくさい話。
ファッションとかの事も言われたりして。
というか、もしかしてテストの点じゃなくて、繁華街で遊んでたのがばれた?

でも、高等部ではそんなに強く言われないってセンパイ達が言ってたし・・・
ともかく職員室に歩いていくけど、足取りは重いし、なんとなく前方不注意でもある。

333今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/03/20(火) 08:12:46
>>332(続き)

            ガラララ

                      バタ ム!

結局職員室ではじっくり絞られてしまった。
まあでも、お説教だけで済んでよかったのかな。

    スタ  スタ

1人で通学路を歩くのはけっこう久しぶりなような気もする。
もうみんな帰っている頃だし、部活のみんなはまだだろうし。
終わるまで待っている、って言っても、流石に・・・長すぎる。

              「……ふぅ」

城址公園のベンチに腰掛ける。
帰らないわけじゃないけれど、まだ帰る気が起きない。
そういう日もあるって事だ。家、近くは無いし。徒歩だし。

「――――あ。先生」

        『今泉サン、ソロソロ帰ル時間デスヨ』

「あはは、ほんとに先生みたいなこと言うんですもん。
 幻覚でもないみたいだし、フツーじゃないですよねぇ……」

まばらな人通りを眺めながら、背後に立つ『先生』に振り返った。
あの日から時々自分の傍に現れる。この人の名前は『コール・イット・ラヴ』。

傍から見たら・・・独り言してるように見えるのかな。それはやだなあ。

334夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』【高一】:2018/03/22(木) 23:11:27
>>333

「――そうそう、そろそろ帰った方がいいんじゃない?」

『コール・イット・ラヴ』との会話の途中で、見知らぬ相手が声を掛けてきた。
いつの間にか、隣に誰かが座っている。
制服ではないが、年齢は同じくらいのようだ。
青いジャンパースカートに黒いタイツ、頭にはリボンのように巻いたカラフルなスカーフ、
薄いブルーのサングラスをかけ、両手の爪にネイルアートの施された付け爪が見える。
一言で言えば、『不思議の国のアリス』をパンキッシュにしたような格好だった。

「『センセー』も、こう言ってることだし」

「ね、『センセー』」

座ったまま首だけをぐるりと巡らせ、ベンチの後ろに立つ『コール・イット・ラヴ』に呼び掛ける。
その気安さからは、初対面の余所余所しさは全く感じられない。
やがて今泉の方へ向き直り、屈託のない笑顔を見せた。

335今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/03/23(金) 23:17:26
>>334

「そうよね、そろそろ良い時間だし――――って」

    クルン

いつの間にか隣に座っていたから、クラスメイトか誰かだと思った。
けれど、見たことの……見たことはあるかも。喋ったことのない人。

「わっ! ……えーと、ちょっと待ってください!」
「あなたは、確か……」

あまりに突然だったし、とっぴな恰好だから驚いた。
それでもどうにかこうにか、頭の中から名前を探してみた。

「同じ学年、でしたっけ。どこかで見た気がするんだけど」
「あ、もしセンパイとかだったらごめんなさいね!」

けれどすぐには浮かんでこない。きっと友達の友達とかでもない。

       『ソノ通リデス。空ガ 暗クナッテシマイマス』

そのとき背後で先生が、その子の言葉に応えた。……先生が?

「って、あれ? あなたには見えるんですか? 先生が?」
「他のみんなは見えなかったんだけど」

「……あっ違いますよ!? 不思議ちゃんとか、そういうキャラではないんですから」
「ただ、ちょっとだけフツーじゃないのかなって。……思ってたりは、するんですけど」

きっと笑顔ではない表情で、私は言った。おかしな話だと思うし、フツーじゃない。
でも、幻覚とかウソだって思うには『和国さん』も、『先生』も、私もリアルすぎた。

336夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/03/23(金) 23:50:13
>>335

「いや、会ったことないよ。いわゆる初対面ってやつ。見かけたことだったらあるかもね」

「まぁ、この学校はけっこうデカいから。学年が同じでもクラスはいっぱいあるし」

うんうんと頷きながら言葉を返す。
クラスは違うが、学年は同じだったようだ。
たぶん?おそらく?メイビー?

「ほほう、それは一大事ですな」

「って、客観的に見てフシギちゃんなのは私だろ!
 いいや、私はフシギちゃんじゃないぞ!私は『アリス』だ!
 誰だよ、フシギちゃんとか言ったやつ!出てこいよ!」

なにやら勝手に盛り上がり、ひとしきり騒いでから静かになった。
怒っているようなセリフだが、別にそうではない。
言ってみれば、単なる悪ふざけの類だ。

「はいッ、『センセー』質問ですッ」

『センセー』の名前は、なんていうんですか???」

再び視線を『センセー』――『コール・イット・ラヴ』に向け、元気よく手を上げて質問を投げかける。
サングラスの奥の瞳がキラキラと輝いている。
それは強い好奇心によるものだ。
『見たことのないもの』を前にすると、心が大きく動かされる。
この『未知のスタンド』と、それを連れた少女には大いに興味をそそられていた。

337今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/03/24(土) 00:55:26
>>336

「廊下か教室か、校舎の中で見かけたはずなんですよね〜」
「まあどっちにしても、今日からはサイテーでも『顔見知り以上』です」

「仲良くしてくださいね、フシギちゃんの容疑者同士」

          ニコ

                     コール・イット・ラヴ
                『〝世界はそれを愛と呼ぶ〟』

                『アルイハ 日本人ラシク 〝アイ〟 ト』

                『ソノヨウニ 呼ンデクダサイ』
                『〝先生〟モ ヤブサカデハナイデスガ』

先生がお辞儀をした。綺麗な30度。
マスキングテープが夕焼けの風に揺れた。
頭の後ろから垂れているそれは、ポニーテールみたいだ。

「ちなみに私は『今泉 未来』です!気軽に未来って呼んでください!」
「ちなみに一年です。高等部の一年ですけど」

そして私も小さくお辞儀をした。15度くらい。
先生はそんなにおしゃべりじゃないから、私が自己紹介を引き継ぐ。

「あなたは? 高等部ですよね? あ、同学年だったら、ため口の方が良い?」

有名な歌みたいな話だけど、友達は100人いたって困らないんだから。

338夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/03/24(土) 01:37:46
>>337

「よろしく、未来くん。私の名前は『夢見ヶ崎明日美』だ。
 君と同じ高等部一年だよ。好きなように呼んでくれたまえ」

「――そんな感じぃ?」

どこか妙なテンションで名乗り返す。
特に意味はない。
やりたいからやっただけだ。
フシギちゃん被疑者らしいと呼べるかもしれない。
自分で疑いを深めてしまった!

「『アイちゃんセンセー』ってのは?」

「まぁ、細かいことはおいといて。よろしくッ、『コール・イット・ラヴ』ッ」

たなびく『マスキングテープ』を見つめる。
見た感じ、あれが『能力』の鍵になりそうな気がした。
私のもそうだから。

「ついでに私も『ジコショーカイ』しちゃおっかな」

「名乗られたら名乗り返すのが『レーギ』ってモンだし」

           ズ ギュ ン ッ

その言葉と同時に、『コール・イット・ラヴ』の隣に、人型のスタンドが姿を現した。
スタンドの両目は固く閉ざされ、両手には『医療用メス』のような形の鋭い爪が備わっている。
よく聞くと、スタンドは何事かを呟いている。

  ……『 L(エル) 』……『 I(アイ) 』……『 G(ジー) 』……『 H(エイチ) 』……『 T(ティー) 』……

表面に傷が付いたレコードのように、ある一つの単語を途切れ途切れに発している。
その声はあくまでも無機質で、『コール・イット・ラヴ』のように独自の意思があるわけではないらしい。
ただ、機械的な独り言を繰り返しているだけのようだ。

「これが「『ドクター・ブラインド』――いわゆる私の『カタワレ』ってやつ」

「目は見えないけど、腕は確かだよ」

「ある意味『センセー』同士だよね。『ティーチャー』じゃなくて『ドクター』だけどさ」

339今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/03/24(土) 02:25:06
>>338

「アスミさんですね! よろしくお願いします」
「え〜〜っと、じゃあ、アスミンって呼んでいいですか?」
「あ、ユメミンの方がファンシーでかわいいかしら」

「アスミさん的にはどっちのほうが良いでしょうか」

あだ名は親しみの第一歩みたいなところがあるし、覚えやすい。
もちろん夢見ヶ崎明日美さんって名前も素敵だし、フツーに呼ぶのもいいけど。

          『〝アイちゃんセンセー〟』

          『イイデスヨ。ゼヒ、ソウ呼ンデクダサイ』
          『ソシテ、ヨロシクオネガイシマス』

「気に入ったんですね、先生。私もフツーに可愛くていいと思いますよ」

    ニコ ニコ

先生が嬉しいのはいいことだと思う。
まだまだフシギが多いけど、私の先生には違いないから。

「……っと、それより」
「あなたにも『先生』がいるんですね!? その人って『お医者さん』ですか?」
「そういうのもあるんだなあ」

「でも、その人が『カタワレ』という事は、先生も私のカタワレって事になるのかな?」

           『〝先生〟ハ〝先生〟デスヨ』

ハテナマークを浮かべたくなる気持ちだった。
でもまあ、いきなり自分のそばに現れる存在だし、カタワレって思うのもフツーなのかも。
先生は喋るけど、『ドクター・ブラインド』さんは何だかよく分からない事を言ってるし、なおさら。

340夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2018/03/24(土) 03:01:30
>>339

「あッ、なぞなぞ出していい?『ユメミン』と『アスミン』――二人合わせてなんになる?
 制限時間三秒で。スリー、ツー、ワン、ゼロ。答えは『夢見ヶ崎明日美』でした!」

「じゃあ、コイン投げるから、それで決めよう。
 表が出たら『ユメミン』、裏が出たら『アスミン』で」

          キィィィ――ンッ

コインを指で弾いて真上に飛ばす。
やがて出た面は『  』だった。
うんうん、まぁいいんじゃない???

「よし、ミライちゃんよ。お近づきの印に握手しようぜ!」

そう言って、唐突に片手を差し出す。
顔は笑っている。
悪意のない笑顔だ。

「『未来』と『明日』ってなんかいい感じだし」

「同じ『センセー』の『カタワレ持ち』ってことで」

「――『アイちゃんセンセー』もよろしくッ」

本体と同じようにして、『ドクター・ブラインド』も『コール・イット・ラヴ』に爪のある片手を差し出している。
だからといって、何か能力を仕掛けようというような雰囲気はない。
あくまで親善という言葉通りの意味だ。

341今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/03/24(土) 03:50:39
>>340

「それじゃあユメミン、で!」
「お互い前向きな名前同士、よろしくです」

    ギュッ

                『ドウゾ ヨロシク』

握手を返した。返したというか、こっちから握る勢いで。
背もたれの後ろでは、先生もきっとそうしているんだ。

「私の事もイズミンって呼んでもいいですよ」
「そういうフウに呼ぶひともいるんです」
「でもミライちゃんも良い響きだよね」

「……っと、そういえばですけど」

         スッ

握手の手を引っ込めるときに腕時計が見えた。
日が沈み始めて、空は綺麗なオレンジ色に染まる。
それはいいんだけれど、気になる事もある。

「ユメミンはこんな時間に何してるんです?」
「そんなにオシャレで、帰り道って雰囲気でもないし」
 
                 「あ、忘れ物取りに来たとか?」

少なくとも職員室でしぼられてた、ってわけじゃないと思うけど。

342ユメミン『ドクター・ブラインド』【高一】:2018/03/24(土) 22:56:30
>>341

「メキメキメキィッ!うおおおッ、このパワーはッ!見かけ以上にすごい力をもっているな……!」

握られた手を開いたり閉じたりしながら何事か口走る。
擬音は口で言っただけなので、もちろん腕は無事だった。
『ドクター・ブラインド』も同じような動作をしているのが滑稽だ。

「『イズミン』、『イズミン』、『イズミン』――」

「『イズミンと『ユメミン』ってなんかデビューとかできそうじゃない???」

「人気が出たら、がっぽりもうけようぜ!」

目標は札束で埋もれたバスタブに入ることだ。
お札に点火して『どうだ、明るくなったろう』って言ってやろう。
このひとでなしのカネの亡者め!!

「ふふふッ、学校にものを忘れる?つねに隙のない私に限ってそれはないね」

「――忘れ物とりにきたんじゃなくて、落し物さがしにきたのさ!
 コーヒーショップのドリンク無料券おとしてしまったのだ!」

「たぶん、この辺で落としたんだろうなぁと思って来たら、
 『イズミン』と『センセー』が話してるのが見えて、それで今にいたる」

そう言う『ユメミン』の足の下に、何かがあるのが見えるかもしれない。
どうやらなくした無料券のようだ。
知らずに踏んづけていることに気付いていないらしい。

343今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/03/24(土) 23:34:43
>>342

「へえ、先生って力強いんですか?」
「良くないですよあんまり、格闘家みたいな握手しちゃ」

            『強クハナイデスヨ。普通デス』
            『〝体罰〟トハ 無縁デスノデ ソレデ困リマセン』
           
「そうなんだ。フツーは良い事ですよね」
「って、じゃあメキメキメキィッ↑は冗談だったんだ」
「ちょっとびっくりしちゃった、先生の事、まだちゃんとわかってないから」

「ユメミンはわりと詳しそうっていうか、慣れてる感ありますよね」

一通りの説明は受けた……受けた?けれどまだまだ謎は多い。
それに、先生がいて、その説明を受けるって事自体、けっこう謎だ。

「っとそれより、落とし物ですか?」
「それは大変――――あ」

           ススス

視線が素直にそれを追った。足元に何かあると伝えるには十分かも。

「あの、それ。靴の下、何か踏んでません?」
「紙みたいな……もしかして、その『探し物』だったりして!」
「フツーにそんな感じしません? 色がそれっぽいし」

「もしレシートとか、ガムの包み紙とかだったらごめんなさいですけども」

344今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/03/24(土) 23:38:55
>>342

「へえ、先生って力強いんですか?」
「良くないですよあんまり、格闘家みたいな握手しちゃ」

            『強クハナイデスヨ。普通デス』
            『〝体罰〟トハ 無縁デスノデ ソレデ困リマセン』
           
「そうなんだ。フツーは良い事ですよね」
「って、じゃあメキメキメキィッ↑は冗談だったんだ」
「ちょっとびっくりしちゃった、先生の事、まだちゃんとわかってないから」

「ユメミンはわりと詳しそうっていうか、慣れてる感ありますよね」

一通りの説明は受けた……受けた?けれどまだまだ謎は多い。
それに、先生がいて、その説明を受けるって事自体、けっこう謎だ。

「いいですねコンビデビュー。夢は大きく――っと、落とし物ですか?」
「それは大変……あ」

           ススス

視線が素直にそれを追った。足元に何かあると伝えるには十分かも。

「あの、それ。靴の下、何か踏んでません?」
「紙みたいな……もしかして、その『探し物』だったりして!」
「フツーにそんな感じしません? 色がそれっぽいし」

「もしレシートとか、ガムの包み紙とかだったらごめんなさいですけども」

345ユメミン『ドクター・ブラインド』【高一】:2018/03/25(日) 00:23:57
>>344

「うんうん、『ドクター』よりは力は強いね。すげームキムキのマッチョってわけじゃないけどさ。
 あれくらいはありそう」

そう言って、遠くを通り過ぎていく教師の一人を指差す。
ジャージを着ているので、体育教師のようだ。
『ドクター・ブラインド』の力は人間以下。
それより強いということは今のでなんとなく分かった。
ものすごいパワーという感じでもなかったので、力はそれなりだろうと解釈した。

「そんなでもないけど、『ドクター』が出てくるようになってから、それなりに時間が経ってるから。
 同じような『カタワレ持ち』とたたかって、腕をバキバキに折られたことあるしな!
 まぁ、勝ったけど!
 あとは街中で謎の少年を追いかけたり、『デンノークーカン』でなんだかんだあったり」

思い返せば、学校で同じような人間と出会ったことはなかった。
『イズミン』のように、学校内にもまだまだ沢山いるんだろうか。
身近な場所に未知がある。
それは盲点だったのかもしれない。
これからは学校の中も詳しく見てまわる必要があるな!

「おう?」

『イズミン』の視線を追って、自分の足元を見る。
履いているのはピカピカのエナメル靴だ。
お気に入りだけど、手入れが大変だぜ!

「さすが『イズミン』!私が見込んだだけのことはあるな!
 これからは、なくしものをした時は『イズミン』に頼もう!
 緊急ダイヤルは『1230(イズミン)』で!」

よく見ると、確かに落とした無料券だった。
喜びの表情を浮かべ、それを拾い上げるために身を屈め、手を伸ばす。
そして――。

           ビリッ

        「   あ   」

手の中に残ったのは、破れて真っ二つになった無料券だった。
まだ半分ほど踏んづけた状態で靴底から引き抜いたせいだ。
両手に片方ずつ無料券の残骸をつまみ上げ、メデューサに睨まれた犠牲者のごとく、石像のように固まる。

346イズミン『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/03/25(日) 00:49:53
>>345

「あ、えーと体育の先生……名前が出てこないんですが」
「サッカー部の先生ですよね。あれ。ランニングか何かかな」

「先生があの人くらい力強いなら頼もしいですよね〜」

         『〝暴力〟ハ ヨクアリマセンヨ』
         『〝話シ合イ〟デ カイケツスルノガ イチバン』

「じゃなくて、荷物が多い時に持ってもらったりとか?」

         『先生ハ 荷物持チデハ アリマセンヨ』

「今のは冗談みたいな――えっ腕を!? 戦ってって……フツーじゃないですね」
「それは冗談って感じじゃない、ですよね。意外と『不良』だったりとか?」
「あ、私不良の人の事を悪く思ったりとかはしないですよ」「不良の人じゃなくてもね」

「というか、他にもいるんだ、カタワレ持ちの人。まあ私達だけって事もないでしょうけど」
「ユメミン・イズミンの『最大公約数』じゃないっていうのは、ちょっとつまらないですね」

               ニコ

クラスのみんなは偶然誰も『そうじゃなかった』のか、それとも知らんぷりをしたのかな。
隠したい人もいるのかもしれない。フツーなのがどっちかは、まだ分からないけれど。

「探し物が得意、ってわけじゃないけど、頼ってみてください」
「私、こう見えても『占い』とか好きだし、もしかすると――――あれ、先生?」

……そのとき、先生が後ろにいない事に気づいた。けれど何をするのかは『直観』のように分かった。
だから私はそこに視線を向け直した。そこには先生がいた。『ちぎれてしまった無料券』に寄り添うように。

              コール・イット・ラヴ
          『〝世界はそれを愛と呼ぶ〟』

                       『補修ノ時間ヲ 始メマス』

  /Z -,
  V7./ /7「l_
  .// // .レ' ロロ/7
  ¨  ¨     ,/
    
先生の手が、巻き付いた『マスキングテープ』をほどいて無料券に巻き付けたら……それは『一つ』になっていた。
ほんとうにそれくらい、感慨とかはなく――――行為はすぐに完了していた。今泉未来はこのフツーじゃなさをいつの間にか知っていた。

347ユメミン『ドクター・ブラインド』【高一】:2018/03/25(日) 01:30:55
>>346

「 お お お お お お お お お ッ 」

『コール・イット・ラヴ』の『補修』と、それによる結果を目の当たりにし、石化が解けたように歓声を上げる。
無料券が直ったことにではなく、『未知』を目にしたことに対する驚きと喜びだ。
『見たことのないものを見る』というのが、自分にとっては何よりも大切なことだからだ。

「さすが『アイちゃんセンセー』!私が見込んだだけのことはあるな!
 これからは、ものが壊れた時は『アイちゃんセンセー』に頼もう!
 緊急ダイヤルは『3031(センセイ)』で!」

元通りに修復された無料券を眺める。
『コール・イット・ラヴ』の能力により、そこには傷一つ残っていない。
納得したように大きく頷いた。

「そんで、なんだっけ???
 腕折られたっていうのは、歓楽街の路地裏でたむろしてたら、別の学校の不良が絡んできてさ。
 最初はガンの飛ばしあいから始まったんだけど、途中から殴り合いのケンカに……。
 相手が大勢だったから、さすがの私も手こずって……。
 っていうマンガを、この前よんだ」

「ホントは『地下にあるヒミツの格闘場』みたいなとこの試合に出たからだけど。
 なんか選手が足りないとかっていう話で、面白そうだったから。  
 『ファイトマネー』も貰えたし」

そういう場所が、この町にはある。
私も詳しくはしらない。
でも、フツーじゃない力があるんだから、フツーじゃない場所があってもおかしくないと、私は思ってる。

348イズミン『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/03/25(日) 15:05:57
>>347

「先生すごいじゃないですか! まあ話には聞いてたけど」
「実際見ると便利ですねえ。消しゴムが壊れたりしても平気ですね」

            『〝便利遣イ〟スルモノデモ ナイデスケド』
            『モノガ 壊レタトキハ 先生ニ 言ッテクダサイ』

「靴底に穴が開いた時とかはお願いしますね」

「あ、緊急ダイヤルで思ったんですけど番号交換しません?」
「スマホの番号ね。LINEとかも交換しときましょうよ」
「ガラケーだったらメアドとかも」

      スッ

スマートフォンを取り出して、すぐ交換できる画面にしておいた。
ケースに貼ってるマスキングテープ、ちょっと剥がれて来てるかも。

「そうそう、その話気になってるんですよ」「フツーじゃないし」
「って、またフツーじゃない要素が増えちゃった。地下闘技場ですか〜」
「それこそマンガみたいな話じゃないですか! 出場した理由も含めて」

             『イケマセンヨ 〝悪イ遊ビ〟ハ』

「私が出たいって事はフツーに無いんですけどね」
「というか、遊びとかそういう次元じゃないですよねそれ」
「ファイトマネーってことは結構本格的な『格闘団体』みたいな感じなのかな」

ドクターがいるユメミンが出て戦って腕を折られるって事は、多分相手にもそういう何かがいるんだろう。

「世界は広いですね……私みたいに先生がいるだけなら、あんがいフツーなのかも」
「フツーじゃない中でのフツー、くらいなのかもしれませんが」

「あ、さっき言ってた『電脳空間』っていうのも、ソレ絡みの話なんですか?」

よく考えたら和国さんのところでカタワレを貰えるなら、私達以外にもたくさんいたってそれはフツーなんだ。

349ユメミン『ドクター・ブラインド』【高一】:2018/03/25(日) 19:23:33
>>348

「なおせるってことは『保険のセンセー』かぁ。なんか『ドクター』みたい。
 『ドクター』は、なおせないけど。他の『シュジュチュ』が専門だから。『シュジュチュ』って言いにくくない???」

『ドクター・ブラインド』の能力は『感覚の移植』。
『ドクター』という名前に反して、治療や修復はできない。
同じ『センセー』でも、その辺りが違うところだ。

「――オッケイ!!」

『イズミン』に応じて、こちらもスマホを取り出す。
ケースは様々な色や形のステッカーやらパーツやらでデコレーションされて、キラキラと光っている。
そして、なんら問題なく番号の交換は完了した。

「まぁ、なんにでもキョーミを抱く年頃だから、ちょっとした火遊びもたまには、ね?ね??」

「フシギな世界があったら飛び込んでいかなければならんのだよ」

「なぜなら、そこにフシギな世界があるからだ!」

山に登る理由を聞かれ、ある登山家は言った。
そこに山があるからだ、と。
つまり、そういうことだ!

「うんうん、『カクトーダンタイ』みたいな。
 『カタワレ持ち』同士がたたかって、それをギャラリーが見て盛り上がるっていう。
 30万もらえた」

「そうそう、『デンノークーカン』の話は……。
 『カクトージョー』と同じとこからのバイトで出たんだっけ。
 用意されてる問題に『カタワレ』を使って答えるっていうやつ」
 
「たたかうのに向いてない『カタワレ』もいるから、そういうのも活躍できるようにするためのキカクなんだって。
 ケガしなかったけど、10万もらえた。
 これくらいだったらフツーかも?かも??」

『ユメミン』から『ドクター』を引き出したのは、『妖甘』ではなく『音仙』だ。
だから、『イズミン』も同じ場所で『センセー』を貰ったのだろうと思っていた。
当然ながら、得た場所が違うということは知る由もない。

350イズミン『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/03/25(日) 22:58:26
>>349

「家庭科の先生かもしれませんよ。私、家庭科好きですし」
「『手術』、『しゅじゅ』……『シュジュチュ』」「確かに言いにくい」

               『〝先生〟ハ 〝先生〟デスヨ』

「科目とかはないんでしょうか、小学校の先生なのかな」
「まあともかく、っと」

             スススス〜ッ

番号の交換もできたし、これで『学年が同じだけ』って間柄じゃないよね。
それにしてもユメミンの話はすごい。フツーじゃなさすぎる。内容も、数字も。

「私はフツーなのが好きなんですが、30万って……すごいですね」
「でも危ない事をしてるわけだから、お金が高いのはフツーなのかな」
「10万もすごいですけどね、大学部のセンパイが月10万で自慢してましたし」
「そう考えたら……カタワレの力って、お金になるんですね」

               『先生ハ ソウイウコトニハ 協力シマセンヨ』

「けちですねえ、でも先生だしそれがフツーか」
「私もあんまりフツーじゃない事って、する気が起きないですし」
「……ケガしないならちょっとは興味ありますけど」

先生の視線を感じて、ごまかす気持ちで笑顔。半分くらい、自然に笑顔だけど。

「でも、ユメミンはお金じゃなくて『ロマン』みたいなのがお目当てなんですよね」
「それじゃあやっぱり、『和国』さんのお店に行ったのもそういう気持ちで?」

自分は……まあ、うわさを耳に挟んだってくらいの話なのかな。深い気持ちじゃなかった。
こうしてフツーじゃないのがフツーになったけれど、過去をどうこうしたいとは思わない。出来ない。

351ユメミン『ドクター・ブラインド』【高一】:2018/03/25(日) 23:45:13
>>350

「お?一緒に悪い子になっちゃう??
 『イズミン』みたいなタイプは一回ハマるとやみつきになってしまうかもしれないぞ。
 そして、そのまま行ってはいけない道に足を踏み入れて……。
 あぁ、私があの時さそわなければ、こんなことには!
 『イズミン』よ、すまん!!」

「――まぁ、実は私もそんなにたたかうのは得意じゃないけどね。
 『ドクター』の力は弱いし。だから、『技』で勝った!」

自信満々に得意げな顔をしてみせる。
別に深い意味はない。
やりたかったからやった!!

「ザッツライト!!
 私は色んなものを見てみたいのだよ。
 生きてる間に色んなとこに行って、まだ見たことないものをたくさん見るのが目標だ!
 いずれは遠くへも行くとして、今はとりあえずこの町の全部を、この目で見る!
 おカネがあれば、そのための資金にもなるし、一石二鳥ってやつだぜ!」

サングラス越しの瞳を輝かせて、自分の夢を語った。
夢を語る『ユメミン』。
さむい!だれだ、つまらんこと言ったやつは!

「『和国』――?」

「誰それ?『イズミン』の行きつけの和風カフェかなんか??
 抹茶オレおいてある???」

ポカンとした顔で『イズミン』を見つめる。
オススメの店だったら、紹介してもらおう。
わらび餅も欲しいところだ。

352イズミン『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/03/26(月) 00:31:01
>>351

「うーん、私も良い子ってわけじゃないんですけど」
「さすがに地下闘技場デビューはちょっと躊躇っちゃいますね」
「それに、先生は戦うとかはしてくれませんし」
 
               『先生デスカラ』
               『怪シイ仕事ハ 感心シマセンヨ』

「先生ですもんねえ」
「私には、それが合ってるのかもですけど」

力とか技とかの話じゃなくて、先生は『戦う』ことをしてくれない。
直してくれる。先生の持っている特別な力で、『私の力』じゃない気もする。  
 
「ユメミンは夢が大きいですねえ」
「私は今のことに精一杯で、具体的にはテストとか」

        エヘヘヘ

「でも、見たことのないものを見てみたいっていうのは分かります」
「遠くに旅行とか、憧れちゃうな」「そういえば修学旅行ってどこなんでしょうね」  

一年生はまだ遠足くらい、って聞いた気がする。
それも楽しみだけど、やっぱり修学旅行は一大イベントだし、夢は膨らむかも。

「……あれっ」

なんて思っていると、ユメミンの一言に思わず目を丸くした。     

「いえ、『カフェ』じゃなくて……えーと、『絵描きさん』?」
「和風カフェの行きつけもありますけどね」「抹茶ラテもある感じの」
「でも、あれっ、ユメミンも行ったんじゃないですか? カタワレがいるのに」

「……もしかして、別のお店もあるのかな?」

和風カフェのことと、あの不思議な部屋の事が頭の中で混じるけど、とにかく変な話。

353ユメミン『ドクター・ブラインド』【高一】:2018/03/26(月) 01:13:29
>>352

「シューガクリョコーかぁ。やっぱり世界一周とか?
 いや、そんなの無理に決まってるじゃん!
 しょうがないなぁ。ヨーロッパ一周くらいでガマンするか!」

修学旅行の範疇では到底ありえない希望を出した。
言うだけならタダだ。
夢はでっかく持とう!!

「いや、行ってないけど。わたしは『音仙』っていう店??に行った!
 藤原しおんっていう人がいて、その人と話してたらいつの間にか『ドクター』が出てきた!」

「――私には、生まれつき欠けている部分があったから。
 『ドクター・ブラインド』は、それを補うために私の中に備わっていた私の片割れなんだって。
 その眠りを覚ましたのが、あの人だった」

不意に笑うのを止めて真面目な顔つきに変わる。
そして、先程とは打って変わった静かな声色で経緯を告げた。
やがて小さく一呼吸してから、また笑ってみせる。

「――なぁんてねッ!」

「だから、『イズミン』と『センセー』にも、つながってる部分があるんだろうなぁってこと。
 『イズミン』が『イズミン』だから、『センセー』は『センセー』なんじゃない??
 ん??『イズミン』が『センセー』で、『センセー』が『イズミン』で……。ややこしいな!!」

「なるほど、『イズミン』は『和国』ってとこで『センセー』をもらったのか……。
 ふむふむ・・・…」

そんな場所があるとは知らなかった。
心の奥で、好奇心がくすぐられるのを感じる。

354イズミン『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/03/26(月) 01:42:12
>>353

「世界一周! いいですねえ、お婆さんになるまでにはしてみたいです」
「ヨーロッパは特に行ってみたい国が多くって」「イタリアとかフランスとか」
「私立なんだし外国だったらいいですね、それか、ディズニーランド」

せっかくだしそういうところに行ってみたいなあ。
テストをあと何回受けたら行き先が分かるんだろう。
センパイ達はどこに行ったのか、今度聴いてみようかな。

でも、今はユメミンが行ったお店が気になる。

「『音仙』ですか、初めて聞きました」
「じゃあ他にもあるんですね、『カタワレ』をくれるお店」
「私は今をしっかり楽しめとか、いろいろ言われましたけど」
「……」「先生がどういう存在なのかは、教えてくれなかったかも」

「あ、私を思ってくれる存在だ、とは言ってましたね?」

                『今泉サンノ先生デスカラネ』
                『ソレガ〝普通〟トイウ物デス』

「そうなると、先生が『私』ってこともないのかな」
「自分思いというか、自分が嫌いとかじゃないですけど」

「……うーん、謎が多いなあ! 分かんないですねえ」

            『世ノ中 分カラナイ事モ、多イモノデスヨ』
            『トコロデ、今泉サン。モウ空ガ暗クナリマス』

「っと、もういい時間だったんでした」「思わず話し込んじゃった」
「私、そろそろ帰らなきゃ……また学校か、電話でお話ししましょうね」

                    ニコ

カタワレがどういう存在なのか、今の私じゃお手上げ。
ユメミンにとっては……何か、大事な話なのかもしれない。
それを話した時の顔は、見たことが無いくらい真剣だったから。
まあ、まだ会って短いけど。でもなんとなく、わかる。気がする。フツーに。

何か引き止めたりされないなら、今日のところは学校から帰ろうかな。

355ユメミン『ドクター・ブラインド』【高一】:2018/03/26(月) 02:12:19
>>354

「うんうん、世の中わからんことだらけだ。だからおもしろい!
 名探偵と呼ばれたわたしが、その謎を解き明かす!
 どっちが先に真実にたどりつくか。勝負だ、『イズミン』!」

謎の人物からの招待状で孤島の屋敷に集められた男女!
そこで次々に起きる奇怪な事件の数々!
果たして犯人は誰なのか?その目的は?
謎を解く鍵は、十年前に起きた事件の中にあった!
関係者全員を食堂に集めてください、犯人はあなただ!!

「おぉ〜〜〜、そういやそんな話してたっけ。
 そろそろ帰らなきゃって。私も帰ってメシ食うぞ!」

『イズミン』に続いてベンチから立ち上がり、『ドクター』と並ぶ。
ずいぶんと長く話していた気がする。
『イズミン』とは、けっこう気が合うのかもしれない。

「よし、途中までいっしょに帰ろう!
 その『和国』ってとこの話、もう少し聞きたいし。
 ついでにオススメの店も教えてもらえれば一石二鳥だ!」

『イズミン』がオーケーしてくれたら一緒に帰る。
断られたらこっそりついていく。
ウソだ!素直に一人で帰る。こんな日もあるさ!

356イズミン『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/03/26(月) 03:25:23
>>355

「いいですね、勝負。負けませんよユメミン!」
「とはいうものの、『友達』でもありますからね」
「情報は交換していきましょう、『フシギ』も『フツー』の事も」
「おすすめのお店はけっこう色々あるんです」「和風も洋風も」

             ザッ

ベンチから立ち上がると、先生は消えていた。
けれどいつでも傍にいる。『必要だ』と思ったら出てきてくれる。

「そうなんです、明日の準備もありますし」「そろそろ、と」
「それに、これ以上暗くなったら危ないですからね」
「それじゃあそういうわけで、一緒に帰りましょうか!」

「どの辺りまで一緒かわかんないですけど」

空はまだ何とか明るさを保ってくれてるけど、頼りないオレンジ。
1人で帰る道はやっぱりなんだか面白くないから、よかった。

「いやあ、いつも一緒の子達が今日は先に帰っちゃってて」
「私が職員室に呼ばれちゃったのが悪いんですけどね」
「でもおかげでユメミンと会えたので、怪我の功名でしょうか」

本当に良かったと思う。
友達が一人出来たし、それは少し今までと違う友達だ。
私が『先生』に出会ってから最初の新しい友達には、『ドクター』がいた。

フツーじゃない日々が始まる、合図だったりして。まあ、先の事なんてわからないや。

357猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2018/04/17(火) 01:07:46
屋上。曇り空がどんよりとしている日である。
ポータブルプレイヤーからラジオの音。
そして座り込む少年。
彼の視線の先には缶が一つ置いてある。

358今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/04/18(水) 00:01:29
>>357

「……」「あの〜っ」「すみません、お邪魔しますね」

                 ススス〜ッ

その人の視界のはしっこに入ってみる。

     キョロキョロ

「あのっ、この辺で白いスマホ見ませんでしたか?」
「あ、マスキングテープがペタペタ貼ってるんで、言うほど白じゃないですけど」

屋上で友達とご飯を食べて、それからポケットの中にない。
だからフツーに考えたらここ。のはず。じゃなきゃ困るもん。
だけど先客がいて、黙ってウロウロしづらい感じだから声をかけてみた。

    キョロキョロ

「さっきの休憩の時、このあたりに置き忘れたっぽいんです」
「……って、言われても困るとは思うんですけども〜」

                   キョロキョロ

声はかけたけど、自分でもしっかり探す。歩き回って、首を回して。
さっきの今だから連絡とかは来てないと思うんだけど、ちょっと落ち着かない。

359猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2018/04/18(水) 00:42:45
>>358

「?」

「そういうのは見たらすぐに分かるんだけど……」

缶を見つめながら言葉を返す。
右手に持ったスマホを操作してラジオの音量を下げた。

「手伝おうか」

360今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/04/18(水) 01:39:52
>>359

「やっぱり、見当たらない感じですか〜っ」
「っと。手伝ってくださるんですか!?すごくありがたいですけど」
「何だか、催促したみたいで悪いですね……」

手伝って欲しい、って思ってなかったわけじゃないけど。
でもなんとなく罪悪感、みたいな。ちょっとした気持ちだけど。

「あ! 後でジュースか何かお礼しますよ」
「……って、今飲んだ所なんですかね?」

空き缶を見る。
この人も空き缶を見てたけど、なんだろう?
珍しい空き缶とかなのかな?

「とにかく何かお礼はしたいって事なんですけど〜」
 
        キョロキョロ

「うーん、ジュース以外だと何かあります?」
「ありますっていうか」「思いつきます?っていうか」
「まずスマホがあるか無いかなんですけどね」

                        エヘヘヘ

やっぱりフツーに見ているだけじゃ見つからない。
別の場所に置いてきたのかな、それとも変な場所に転がったとか?

361猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2018/04/18(水) 01:58:32
>>360

「別にいいよ。動かない缶を見るのも飽きてきたところだし」

そう言って立ち上がる。
背の低い男性だった。
女生徒と同じくらいだろうか。

「礼は良い。別に、必要ないし」

「大体どのあたりに置いたとか心当たりはある?」

362今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/04/18(水) 02:18:56
>>361

「動かない缶……? そうだったんですね」

缶が動かないのはフツーだ。
でも、なんでフツーの缶を飽きるまで見てたんだろう?
ちょっと聞きづらい感じ。クールな雰囲気の人だし。

「それじゃ、気持ちだけ受け取ってもらうという事で」
「気持ちはかさばらないし」「まあ返品は受け付けますけど」

            ト
                 トト

「えーと」「置いた場所、置いた場所……」
「この辺っ! に座っていたので、近くだと思うんですけど」

数歩先、このあたりの壁によりかかってた。
そこでスマホを触ったのは絶対、間違いないんだけど。

「うーん、見当たらないんですよね」

「誰かが落とし物と思って……いや落とし物なんだけど」
「ともかく、拾って届けちゃったとか? そういう感じかもしれないです」
「私より前に誰か来たりとか、してました? ここ」

                                  チュン チュン

鳥の声。春だなあって思うんだけどそんな場合でもなくって。
後で職員室に聞きに行こうかなあ、ちょっと緊張するけど。
それに、落とし物の行き先は職員室なのかってよく知らないけど。

363猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2018/04/18(水) 10:23:28
>>362

「……まぁ缶が動かないのは当然なんだけど」

ボソリと呟いた。

「ないの」

ゆっくりと屋上を歩きながら探してみる。
やはりそれらしいものはない。
目立つはずだからあれば気付くと思われる。
それでもないとなるとここにはないのかもしれない。

「いたよ。なんかうるさい男女のグループ。なにしてたのか知らないけど」

「落し物にされたかもね。職員室かな」

「それともまだ持ってるか。電話、かける?」

自分のスマホを差し出す。

「そういえばなんでマステ貼ってるの」

364今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/04/18(水) 14:47:56
>>363

「?」
「ですよね。動きませんよねえ、缶」

ただなんとなく見てただけ、とかなのかな。
それなら別にフツーだよね。私もボーッとする事ってあるし。

             スタスタスタスタスタスタスタ

歩き回ってくれるこの人と同じくらい、私も歩き回る。
歩数の競争とかじゃなくて、自分は見てるだけっておかしいし。
あ、これ『先生』がもし出てたらきっと同じような事言うんだろうな。

「あ〜っ、そうなんですか!」「結構いますよね、屋上使ってるグループ」
「……どうしようかな。じゃあ、掛けてみてもいいですか?」

スマホをそっと受け取って、自分の番号を入れてみる。
『気持ちだけ』でここまでしてもらうのって、なんだか悪いような。

「なんだかすみません、至れり尽くせりで」
「……至れり尽くせり?」「合ってるのかなこの言い方」

          テヘヘ

これは照れやら申し訳ないやらの笑い。

「え、マステですか? カバーを『デコってる』んですよ」
「ほら、かわいいカバーって結構高いですけど、無地のは安いですし」
「マステは他のことにも使うし、貼り替えも出来ますし、ケーザイ的にかわいく出来ます!」

365猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2018/04/18(水) 23:31:49
>>364

床を見て、それから相手を見て。
交互に二つを見る。
そして時々立ち止まってまた空き缶を見る。

「別に、至れり尽くせりってわけでもないよ。言葉が間違ってるとかじゃなくて、そう言われるほどでのことでもないって意味で」

「デコる?」

耳馴染みがないのか少し驚いたような顔。
それから言葉の意味を理解したのか表情が変わる。

「なるほどね」

「そういう使い方もあるんだ。マステ」

「ボクもやってみようかな、つって」

366今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/04/19(木) 00:07:13
>>365

「そうですか? フツーに超親切だと思いますけど」

               プルルルル
     プルルルル

「……」「繋がらない感じですね」
「っていうのは焦りすぎか。2コールですもんね」

               プルルル

「あっ」
「もしかしたらマナーモード、解除してなかったかも」

    プルルルル…

「授業中は流石にマナーモードなんですけど……」
「休み時間は解除したり、しなかったりなんですよね」
「もしそうだったらすみません、貸してもらってそんなオチだったら」

                 プルルルル

電話はまだ出てくれる感じがしない。
こういう時って最後まで出てくれない事が多い気がする。

「……あ! マステに興味ありますか?」
「もしよかったら、教えましょうか」
「売ってるところとか」「おすすめの使い方とか」

             ニコ  ニコ

この人のスマホを耳から少しだけ離して、趣味の話をしてみる。
マスキングテープとか、占いとか、話が合う人が増えたら嬉しいし。

367猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2018/04/19(木) 00:28:19
>>366

「どうかな」

「ほら、いまキミの番号をボクのスマホに入れたろ?」

「もしキミの電話番号を聞き出すために差し出したとしたらどうする?」

「ってかー?」

左手を口に当てる。
しまったという表情とか笑っているのを隠そうとしているのではなく、反射的に手が伸びた。

「……冗談だよ」

「電話、出ないか。そうかそうか」

「……困ったな」

見つからないというのは困る。
自分のものではないけれど関係の無いことではなくなった。

(マステの件も冗談だったんだけどな)

「いいね。そういうの、ボクみたいな男でも大丈夫かな?」

368今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/04/19(木) 00:49:14
>>367

「えっ」「あ、冗談……冗談ですか!」
「まあ知られて困るわけでもないですけど」
「自慢じゃないですが結構、知ってる人多いですし?」

    プルルルル

ばつの悪そう、っていうのかなこの感じ。
勘違いかもしれないけど、冗談っぽく返してみた。

                               モシモシ

「男の人もたまに買ってるの見ますし、大丈夫ですよ!」
「スマホをデコったりだけが役目じゃないですし」
「例えば栞代わりになったりとか」「フツーにテープ代わりとか」

                        モシモーシ?

             『今泉サン、繋ガッテマスヨ』

「――あっごめんなさい! 電話繋がったみたいでっ」
「もしもしっ」「あーっごめんなさい、私その携帯の持ち主です!」
「拾っていただいたんですか、はい、はい、そうです、屋上で」

話の途中でごめんなさいなんだけど電話に出る。
『先生』のおかげで気づけたからよかった。
これ気づかなかったらごめんなさい過ぎるし。

             『…………』

『先生』は私の後ろに立ってる。もしこの人にも見えたら、どうしよう?
べつにどうしようって事もないのかな。フツーじゃないけど、フツーに話せば。

369猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2018/04/19(木) 23:11:20
>>368

「へぇ、人気者だ」

(ボクとは大違いだな)

「栞か。便利だね」

左手を当てたまま言葉を返す。
それから後ろに現れた謎の存在を見つめる。

「……誰」

電話が終わったタイミングで先生に声をかける。、

370今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/04/19(木) 23:37:08
>>369

「はい、はい、ありがとうございます!」
「すぐ取りに行きます……えっ、あー」
「10分後、くらいには!」「はい、じゃあそういう事で」
「はい切ります、はい。またすぐ後で〜っ」

      ピ!

「いやいや、人気ってほどでも」「それはともかく」
「マステ便利ですよ〜、わりと剥がしやすいですし」
「色んな柄をそろえて、気分で変えたりとか」

電話を耳から離しながら、ちょっと焦って返す。

「あっ、電話ありがとうございまし――」

そして先にお礼と、電話を返すべきだって気づいて。
そこからまたもうちょっと遅れて、『誰』の意味に気づいた。

「っと、と。『誰』って」「ということは」
「もしかして見えてるんですか、『先生』が」

私の後ろに立つ、マスキングテープに包まれた姿が。

                 コール・イット・ラヴ
           『〝世界はそれを愛と呼ぶ〟』
           『今泉サンノ 〝先生〟ヲ シテイルモノデス』

「そんな感じで、この人……人とは違いますけど」
「『コール・イット・ラヴ』さん」「私は『先生』って呼んでますけど」

           『〝アイ〟デモ カマイマセン』
           『モチロン、〝先生〟デモ。オ好キニ』
           『ヨロシク オネガイシマス』

                     イマイズミ ミライ
「らしいです。ちなみに私は一年の『今泉未来』です」「あ、高等部の!」

ようやく電話を差し出しながら、先生にならって自己紹介をしてみる。

371猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2018/04/20(金) 22:14:09
>>370

「見えるよ」

(どれでもいい……選べないな)

「じゃあ、アイ先生で」

結局ふたつを合わせる形になった。

「ボクは猿渡楓。17。高二」

スマホを受け取り上着の内ポケットへ。
特に驚いた様子もなくまた先生を見る。

372今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/04/20(金) 23:02:48
>>371

「猿渡センパイ、ですね!」

            『〝アイ先生〟』
            『エエ ソレデ 構イマセンヨ』

「見える人ってセンパイで二人目です」
「多いのやら少ないのやらですけど……」
「『100万人に一人!』とかってペースじゃなさそうかな」

「見える仲間どうしよろしくお願いします、センパイ!」

先生はあんまり動き回ったりはしない。
後ろに立って、猿渡センパイを見ているのは分かる。

「っと、私スマホを取りに行ってきますね」
「手伝ってくれたりしてありがとうございました!」
「ではまた!」

            『ソレデハ猿渡サン、サヨウナラ』

       シュルル

先生がいなくなったのを背中で感じた。

             タッ

屋上から、待ち合わせの場所に向かおうとして。
そういえば言っておくことがあるんだった。いったんストップ。

「――――あっ。それと、さっきの冗談」
「私の番号、消しとかなくて大丈夫です」
「せっかくのご縁ですし」「マステの事とか聞いて下さい!」

               「では今度こそ、さようなら!」   

要らないなら消すだろうけど、一応言っておかなくちゃ。よし、スマホを取りに行こう。

373猿渡『ウェスタン・ホワイト・キッド』:2018/04/20(金) 23:59:59
>>372

「二人」

自分の他にもそういう人間がいるということだ。

「ふうん。じゃあ消さないでおこうかな」

「そう。バイバイ」

スマホを取りに行く彼女を見送る。
それからまた屋上を歩く。
一歩一歩噛み締めるようにゆっくりと。

(可愛い子だったな)

開く左手。
念じると現れる拳銃。
缶を狙って引き金を引く。

(ここが射程いっぱい10m)

感覚が掴めてきた。
弾丸は缶に命中する。

(少し寝て帰ろう)

ひゅうと風が吹き彼の足元を塊が転がった。

374花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』【OB】:2018/06/14(木) 23:50:28

誰もいない校舎の屋上に、一人の男が立っている。
レザーファッションに身を包んだ赤毛の男だ。
その雰囲気から、学生ではないらしいことが分かる。

「ここに来るのも卒業以来か。
 ま、特に変わりはねえようだが。結構結構」

グラウンドを見下ろしながら、ふと片手を懐に突っ込む。
ライダースジャケットの内側で、手の中に『拳銃』が握られた。
自身のスタンド――『スウィート・ダーウィン』だ。

(ここで『死んでみる』ってのも一興かもしれねえな)

不意に、そんな考えが頭を掠めた。
やがて軽く頭を振って懐から手を引き抜く。
その手の中には何もなかった。

「――やめだ」

こんなナリだが、さすがにTPOは弁えているつもりだ。
学校で『死んだフリ』なんてやったら、ちょっとした騒ぎになっちまう。
そう考えて、このまま大人しく束の間のノスタルジーに浸ることにした。

375花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』【OB】:2018/06/16(土) 21:20:23
>>374

「ここら辺も変わってねえな。ま、そう急に変わるもんでもねえか」

屋上から立ち去り、特に目的もなく敷地内を歩く。
既に卒業した身である自分が学校にいるのは理由があった。
この学校の生徒から、卒業生の進路に関する取材を受けていたのだ。
確か新聞部か何かだったか。
それを終えた後、少しブラブラ散歩しているという訳だ。

「この辺で、よく不良連中がヤニふかしてやがったが――
 今はいねえな……」

校舎裏に立ち寄り、手近な壁に寄りかかる。
そして、おもむろに懐から金属製のシガレットケースを取り出す。
しかし、中身は煙草ではない。

「――静かなもんだ」

シガレットケースの中から、一粒のキャラメルを出して手に取った。
コイントスをするように親指で弾き、空中に投げ上げる。
同時に上を向き、キャラメルを口で受け止めた。

(この辺なら軽く『死んでみても』目立たないかもしれねえな)

空っぽの手を見下ろす。
次の瞬間、そこに『スウィート・ダーウィン』を発現した。
銃口を自分のこめかみに当て、引き金に指を掛ける。

「いや――ダメだな。どうも気がノらねえ」

思い直して『スウィート・ダーウィン』を下ろし、解除する。
学校という教育の場でやる遊びにしては、不謹慎すぎるからだ。
発現と解除は僅かな間の出来事だったが、見える人間には見えたかもしれない。

376花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』【OB】:2018/06/18(月) 20:31:51
>>375

「――さあて、そろそろ帰るとするか」

ひとしきりノスタルジーに浸った後で両手をポケットに突っ込み、
校舎裏から出てくる。
そして、そのまま学園の敷地内から立ち去っていく。

(どっかに軽く寄ってみるか……)

自宅に向かっていた足を別方向へ向け、歩き出す。
人気のない場所まで来ると、『スウィート・ダーウィン』をこめかみに当てる。

「『ノスタルジー』もいいが、やっぱり俺は『スリル』の方が好みだぜ」

        ――ガァァァンッ!

躊躇なく引き金を引き、銃声が鳴り響くと同時に、地面にブッ倒れる。
『スウィート・ダーウィン』の能力――
『擬死弾』がもたらす擬似的な『死の瞬間』の再現。
それを受けてのた打ち回り、束の間のスリルを味わったのち、
衣服の汚れを払って立ち上がる。

「ハハッ、こいつはやめられねえなぁ」

「――『スウィート』だ」

人知れず満足し、今度こそ家に戻っていった――。

377高天原 咲哉『ウィーピング・ウィロウ』:2018/07/15(日) 22:18:25

 ずっと同じ町で暮らしているはずなのに、奇妙な違和感をおぼえることがある。

 ふと目を遣った看板に描かれている人の絵が、もともと逆向きだったような気がしたり。
 いつもの通路を歩いていたはずなのに、一本早く道を曲がってしまっていたり。
 『あれ、ここの商店の店構えってこんなに暗かったっけ』なんて首を捻ることもしょっちゅうだ。

 それでも人間の脳は便利なもので、多少の認知のズレならばすぐに修正してしまう。
 瑣末な情報であればあるほど、記憶の片隅に『重要度:低』のラベルを貼られて、蓋をされて。
 結局はズレていたのが自分の認識か、それとも世界の方なのか、分からないまま。



                    プ シ ュ ー


「――――――ありえねェ」

 けれども、極稀に。
 『変わってはいけないもの』が、『変わってしまっている』ことに気付く事がある。
 そうした『非日常』に面した人間は、たいていの場合はその現実を受け入れることも出来ず、
 混乱の果てに激昂したり、発狂したり、壊れてしまうのだ。

 高天原 咲哉は、『スタンド使い』である。
 そういった『非日常』にも、割かし慣れている方だと、自分でも思っていた。
 だというのに、今日ばかりは、『何もできなかった』。
 変わってはいけないものが、変わってしまっているという事実を、ただ受け入れるしか出来なかったのだ。


「……なんで」

       「なんで」



   「なんで5年間も内容おんなじ『テスト』やっといて、
    今年ンなって急に内容変えてくるかなァ〜〜〜〜……
    先輩に無理言って『過去問』譲ってもらったっつーのに……」  ハァー…


  深いため息を落とし、やや乱暴に自販機のボタンを指で弾く。


    ピピ!

           ゴト ン


 『清月学園』が土地を所有する『城址公園』は、昼飯時というのも相まって、多くの生徒で賑わっている。
 そんな中、陰気な雰囲気で自販機にぶつぶつ話しかけている、イタいやつ……

 それが、高天原 咲哉だった。誰か話しかけてくれ。

378鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/07/15(日) 23:17:57
>>377

「えーと、お取り込み中すんません」

そう言って後ろから声をかけた。
柔らかい声だった。

「僕、その自動販売機使わせて貰いたいんやけど」

「ええやろか?」

後ろを振り向けば改造していない制服を着た背の低い少年がいるだろう。
癖のある伸びた黒髪をミサンガを髪紐にして結んでいる。
そして彼は小さな和傘を差していた。

379高天原 咲哉『ウィーピング・ウィロウ』:2018/07/15(日) 23:39:44
>>378

「ン!? お、おお……!」

 弾かれたように振り返り、自販機の前を空ける。

 と、一瞬の間を挟んで、



    「……『すずめ』の!!」


 妙なことを口走り、眼を開かせた。
 『すずめ』。当然だが、鳥のことを言っているわけではない。

 少年のやわらかい声質にも、古風な出で立ちにも、
 ぬばたまのような黒の瞳にも、見覚えが――――


   「あれ、」


       見覚えが、


  「えぇと……鈴元君、だよな。俺のこと、覚えてる?」


 かなり前の。それも、たった一度だけではあるが。
 彼と、会ったことがある。はずだ。
 確か、『総合ショッピングセンター』のような場所で、
 何か、印象深い言葉を交わした、はずなのだが。


 あるいはそれも、『認識のずれ』で。
 これが初対面なのだろうか――――?

380鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/07/15(日) 23:58:03
>>379

「鈴眼、やよ。すずまなこ」

また、柔らかい声を発する。

「覚えてるよ」

こともなげにそう言った。
揺れる黒髪。ほんの少し汗の浮かぶ額。
夏だ。

「この髪紐……えっと、元はミサンガやったっけ」

「これもあん時に買うて(こうて)もろた奴やのに」

そちらに見せるように横を向く。
白い肌の首筋、髪の生え際にも汗が浮かんでいた。

「覚えとったんは僕だけやったん? ……せっかく高天原さん見かけたから結んだのに……」

「酷い人……」

381高天原 咲哉『ウィーピング・ウィロウ』:2018/07/16(月) 00:20:32
>>380

>「覚えとったんは僕だけやったん? ……せっかく高天原さん見かけたから結んだのに……」

>「酷い人……」


 な、なんだ…… この感情は……

 すごく『ワルイ男』になったような気分だ……
 女の子に言われているワケでもないのに……


「えっ、ご、ゴメン……って、いやいやいやいや」

「そっか、『この時間帯』に『この公園』にいるってことは……
 鈴元君も、『清月』の生徒だったのかァ」

「その後、どう? 学校とか」

 当たり障りのない話題を振ってきた。
 こいつ、それとなく話題をぼかして逃げるつもりだ。

382鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/07/16(月) 00:39:32
>>381

「その後? ぼちぼち、やろか」

自販機に近づき、小銭を入れていく。
細い指だ。
男子の中では文句なしに華奢な体つきだ。
骨格は男性のそれだが、肉付きが薄く女性っぽい部分があるのかもしれない。

「そ、清月の生徒やで。引っ越してきてからずぅっと」

「……そうやねぇ。なんか、なんか、いまいちぴったりハマってない感じがせんでもないけど」

「でも、高天原さんに会えたからエエ日よ」

383高天原 咲哉『ウィーピング・ウィロウ』:2018/07/16(月) 01:11:05
>>382

「まっ、ずっと調子サイコーってのも変な話か。
 イマイチしっくりこねェーことだってあるよな」


       パ キ !


 一足先に、購入した炭酸のペットボトルを開ける。


   グビ
      グビ


  「…………あ゛ァア〜〜〜っ」

        「飲まなきゃやってらンねーぜまったくよォー」 プハァ…


 親父のような唸り声のような低い声を吐き、一口で半分ほど飲み干してしまった。
 若干荒れているらしい。

384鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/07/16(月) 01:36:30
>>383

「うふふ。おじさんみたいやね」

「まだ若いのに」

口元に手を当てながら鈴元が笑う。
自分はその相手よりも若い。

「なんかつらい事でも?」

「僕でエエんやったら話聞いたり、出来ることやったりするけど」

385高天原 咲哉『ウィーピング・ウィロウ』:2018/07/16(月) 22:17:13
>>384

「ンンー? いやいや、大したコトじゃあねーのよ。
 テストがちょっとネー……
 いやまあ、普段から勉強しときゃあ苦労はしねーんダローけどさ」


     チャプ
          チャプ

 ペットボトルを弄びながら、退屈そうに応える。
 好きなこと、得意な教科なら幾らでも頭には入ってくるが、
 生憎と、それだけをやっていればいいというわけではないのが学生の辛いところだ。

「鈴元君は、そのへんどーなん?」

 清月学園は私立の一貫校だ。
 外部進学の必要がない分、トップの進学校と比べて、成績にうるさいわけではないだろう。

「俺みたいに不真面目っぽくは見えないけど……」

386鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/07/16(月) 23:52:05
>>385

「まぁ、得意不得意はあるし」

自分も英語が苦手だ。
なんだかイマイチ上手くいかない。

「……真面目にやってきたからなぁ」

「全部、やってきたから……」

387高天原 咲哉『ウィーピング・ウィロウ』:2018/07/17(火) 00:07:41
>>386

「そっかァ。まあ、アレだ。全部まじめにってだけで十分スゲーッスよ。
  俺なんて、興味ないと教科書開くのも億劫だったりするからナァー」

(おっと、何か地雷か……?)

 口ごもったようにも見える。
 そもそも、休憩時間にベンキョーの話題というのも野暮な話だ。
 単に、語るほどのことがないだけかもしれない。

 さて、ともなると。

「今時のコって、普段なにしてンだ……?
 運動部って雰囲気にも見えないしな……あっ、そうだったらゴメンネ」

「草野球とかも、今時やんないだろうし」

 この時分の学生は、どんな話題を好むのか。
 自身のように、ゲームや音楽やカップ麺の新作チェックに明け暮れているようには見えない。

 ふざけ半分で、往年の大投手の投法で振りかぶり―――



         『ズ  ギュン!!』


        ひゅ

              ガ  コン !



 飲み終えたペットボトルをクズカゴへシューッ(精B)!!

388鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/07/17(火) 00:54:52
>>387

「まぁ別に勉強が好きなわけでもないし」

困ったように鈴元が笑った。

「普段はゲームとかやろか」

「後はお店の手伝いとかやね」

部活もまぁしているっちゃいている。
していないといえばしていない、そんな状態だ。

「あ」

ペットボトルの投擲の際、何かが見えたような。

389高天原 咲哉『ウィーピング・ウィロウ』:2018/07/17(火) 02:03:19
>>388

「エッ! ゲームするんだ……」

 さすがにちょっと失礼なので『意外』とまでは口に出さないが。
 スマホを起動して、いっそう慣れ慣れs……親しげに近寄ってくる。

「なぁなぁ、『パズ○○』とかやってる?
 それか『○○スト』。フレコ交換しよーぜ。
 俺、授業の合間とかにケッコーやっちゃうんスよねー」

 高天原が挙げたのは、いずれも有名なソシャゲの名前だ。
 『流行の』、が付くには少し古いものだが、どちらも界隈では大手に分類されるだろう。


    「ン」


 『見えた』鈴元の反応に、さして驚くこともない。
 『スタンド使いは惹かれあう』―――その言葉の本意が、ようやく馴染んできた頃合だった。
 『見せた』のは、油断や侮りではない。

「へへ……なんとなく『そうかな』とは思ってたんスけどね」
「『やっぱり』、君もか」

 袖振り合うも他生の縁、というやつだ。

390鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/07/17(火) 23:25:31
>>389

「ど、どっちもお兄ちゃんに誘われてやってるけど……」

特にやるのは家庭用の据え置き型のゲームだが、一応そういうのもしている。

「ぼ、僕もやで……?」

スタンド使いに出会うのは初めてではない。
何人ものスタンド使いと出会ってきたはずだ。
そんな気持ちで生きている。

391高天原 咲哉『ウィーピング・ウィロウ』:2018/07/18(水) 01:38:05
>>390

「まあまあ、コイツはお近づきの印に」

 瞬く間に『そこそこやりこんでそうな』フレンドコードが送られてきた。
 君はリクエストを承認することもできるし、あとからそっと拒否することも出来る。

 さて、学生の休憩時間は短い。
 そろそろ予鈴がなる頃だろうか。

392鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/07/18(水) 01:49:24
>>391

「どうも……」

その場でリクエストを承認する。
忘れてしまわないうちにしておくのがいい。

「……そろそろ、予鈴鳴る時間やね」

「せやから、その、別れんと、あかんね……?」

名残惜しいがそういう時間なのだろう。

393高天原 咲哉『ウィーピング・ウィロウ』:2018/07/19(木) 02:09:06
>>392

「まっ、同じガッコーだし、フレコも交換したし。
 また会おうと思えば、幾らでも会えるっしょ。
 案外、同じ顔見飽きてくるかもしんねーッスよ?」

 何せ、この町は狭い。
 一度名を交わしただけの少年と、もう一度会うことが出来るほどには。
 『スタンド使いは惹かれあう』が本当ならば、二度と会わないようにする方がむしろ難しいだろう。

 高天原には、再開の予感がある。
 別れにも、楽観的のようだ。

「はぁ〜〜〜〜〜ッ 午後はゼミかぁあ……」

 自動販売機に背を向け、去ってゆく。

394鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/07/19(木) 03:15:51
>>393

「うん。そうやね」

「僕も、そう思う」

そう、惹かれ合う。
だからこそ再開できるかもしれない。
そうでなくとも再開できるのかもしれない。
それは鈴元が決めることではない。

「ほな、さいなら」

高天原の背中を見送る。

「はぁ……」

出るため息は不満からくるものではない。
重い息が出る。
肺の中から息が出て、瞳からは涙が出そうになる。

「んぅ……」

(足りひん……なんかが、足りひん)

ほの暗い雲が心にかかる。
スタンド使いが惹かれ合うのなら、天はこの心の穴を埋めてくれる人を連れてきてくれるのだろうか。
運命を運んできてくれるのだろうか。

395斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』【高2】:2018/07/31(火) 01:44:34
――7月の終わり
 遠くの光景を水蒸気が歪ませ、近くにはパステルカラーのプールサイドに陽光が照り付ける
 赤い小鳥の乗った携帯ラジオからの音楽は、セミの鳴き声と跳ねる水音に紛れて耳を上滑りするようだ
 塩素の香りがほんのりと鼻を衝く、ここは『私立清月学園 ―城址学区―』……のプール

「……参ったな」

そして、プールサイドに足を付けている、水着の少年が 1人。

396名無しは星を見ていたい:2018/08/02(木) 17:59:36
「――まさか、泳げないとは思わなかった」

(授業でもあったと思ったんだけど、記憶がどうも曖昧なのだよな…)

プールサイドから上がり、荷物を纏めて背負い込む


「見つからない内に、帰ろう、斑鳩
 先生方は兎も角、生徒相手だと説明が面倒だし、ね」

誰に言うでもなくそう独り言ちてその場を後にした。

397今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/09/27(木) 17:04:30

                   ビュォオオオオ〜〜

もうすっかり秋の風になって来たような気がする。
中庭のベンチに腰かけて、私はお昼ごはんタイムだ。

「……」

      ガサゴソ

一人で。だって今はもう放課後だし。
お昼休みに食べるタイミングが無かったパンだけど、
賞味期限が今日までだから、ここで食べて帰る事にした。

                モク‥・ モク・・・

誰か食べる相手がいたらいいんだけど、もうみんな帰っちゃった。
他のクラスとか学年の人、いないかな。ラインで呼ぶ程ではないんだけど。

398今泉『コール・イット・ラヴ』【高1】:2018/09/29(土) 22:48:31
>>397
結局パンを食べ終えたあと、知り合いと合流して帰ったのだった。


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