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【場】『自由の場』 その1

529夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/20(金) 01:18:53
>>528

「なんだよなんだよ〜〜〜、ミョーなキタイもたせやがって〜〜〜。
 てっきりリカオンのオトウトかとおもったぜ〜〜〜」

まぁ、いいや。
ショウくんがリカオンのオトウトなワケねーしな。
いや、たぶんだけど。
だって、いかにも『ひとりっこ』ってカンジだし。
アリスも『ひとりっこ』だから、そこらヘンはなんとなくわかる。

「せっかくだから、みてやろうじゃないか!!
 『くるものこばまず』が『アリス』のモットーだからな!!
 なんかオモシロイものでもうつってるかもしれないし!!」

素直に写真を覗き込む。
そのカレシがオモシロイってカノウセイもある。
カレシが『ニンゲン』だとはヒトコトもいってないしな。
もしかすると、かわったイキモノってコトもかんがえられる。
アレはいつだったか、『ミズウミ』でのチョウサでみつけられなかった『ほしみUMA』のサイライか!?

530リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2019/09/20(金) 18:29:26
>>529(次レスで〆させて頂きます)

>てっきりリカオンのオトウトかとおもったぜ

「……ぁ〜 うん」 ポリポリ

耳下腺のある場所の皮膚を小指の爪で掻きつつ、曖昧に同意する。

――おとうと か……。

「そうだったら、奇妙な面白さがあったかもね。
けど、現実はそこまで愉快じゃないかなぁ」

夢見ヶ崎が見た写真には、軽く手を振るリカオン 横向きで億劫そうな顔つきの
『ウツボカズラ』のヘアバンドをした大体成人なり立てか未満に見える男が居る。

「出会いはフッツ―なんだけどね。てきとーに今日見たいに野草探しして
てきとーに休んでる時に知り合って。誰かに迷惑なナンパされたのを助けられたとかの
ラブロマンスは一切無いから」

手を軽く振りつつ苦笑い。私が理想とする『群れ』とはズレている。

「けど、まあ傍にいても煩わしくないし。隣が寂しい時に居てくれると
しっくり来るんだ。アリスも、そー言う男を捕まえて囲まないとね」

それでも惚気は聞いて頂こう。これ位、奇妙に知り合った使い手に対し
ちょっと馴れ馴れしくしても罰当たらないだろう。
 それに恋バナ出来るスタンド仲間とか、結構希少な気がするし。

531夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/20(金) 22:12:34
>>530

「ほうほう、まぁなかなかイイんじゃない??
 ワルくないワルくない。リッパなもんだ」

自分から話を振ったワケだが、正直『顔の良し悪し』はよく分からない。
そういった価値観は、幼少期に養われる部分が大きいと思う。
自分は、ごく最近まで『見えない』人間だった。
だから、『その手の審美眼』が足りないというか欠けている。
そのせいで、どう返事していいものか困ったというのは事実だ。

「その『ヘアバンド』はイケてるな!!スゲーおもしろいセンスだ。
 うんうん、コレはイイな」

むしろ、顔よりもヘアバンドの方に興味を引かれた。
こんなのつけてるヤツみたコトない!!
コレ、どこにうってんの??

「でも、『わたしのカレシ』もイケてるんだけどね!!
 いつもいつも『ちがうカオ』をみせてくれるんだ!!
 ソレをみつけるのがサイコーにタノシイよ。
 『フシギのくに』っていうナマエのカレシでさぁ〜〜〜」

この世界は『見たことのないもの』で溢れている。
見えるようになった時から、私はそれに『恋』している。
だから、私の恋人は『この不思議な世界』そのものだ。

「イマは、『ヒトリのオトコ』にしばられてるヒマないんだよね。
 だって、わたしは『アリス』だから!!
 いろんな『フシギ』が、わたしのきをひこうとしてくるからさぁ〜〜〜。
 ソッチのあいてをするだけで、『ていっぱい』!!」

だから、カレシを作るとかいう気はない。
『見てみたいモノ』が『星の数ほど』あるから。
『アリス』は、いそがしいのだ。

532リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2019/09/21(土) 21:59:49
>>531

「『ちがう顔』・・・アリスは私に似てるね」

御山もそうだ。入る度に私の愛する場所は違うものを見せてくれる。
だからこそ『群れ』を作りたくなる。もっと違う獣と巡り合いたくなる。

『飢え』は未だない。『狩り』をするには何て穏やかな月光だろうか。

「私もこれから『色んなモノ』に出逢って、見て 感じて
出来ればそれを味わったりしたいんだ」 二ヤッ

「だからアリス。もし、その道中で再び会う時は私もご同伴させてよ。
リカオンは帽子屋程に盛り上げるのは上手くなくとも白の騎士程には
手助け出来る筈だからさ」

「それじゃあアリス また夜の散歩道や それ以外で」

(彼女は『群れ』には入らぬだろう)

(リカオンは女王に関心ない。多くの兵隊達も要らない。
ただ、心から寄り添える 手の指で数えられる程度の『群れ』があれば良い)

リカオンは月を見る
 何時かの晩に起き得るだろう『狩り』を想い

533美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/14(月) 21:57:54


                  〜〜〜♪

町のどこかで『ラジオ』が流れている……。

「――今日も、あなたの隣に『電気カナリア』の囀りを」

「『Electric Canary Garden』――
 この時間は、パーソナリティー・美作くるみがお送りしますッ!」

「最近ますます秋めいてきましたねえ。
 紅葉が見頃を迎えるのも遠くない感じですよねぇ〜」

「秋っていうと、チョットしんみりした雰囲気がありませんか?
 夏の次だからっていうのもあると思うんですけど。
 こう……しっとりした印象ですよね」
 
「それが良いと思うんですよ。『侘び寂び』っていうか。
 エネルギッシュな季節の後で、ホッと一息つかせてくれる感じで」

「秋というと、色々な言葉がありますよね。
 『芸術』・『食欲』・『スポーツ』……。
 『ハロウィン』なんてのもありますよねえ〜。
 リスナーの皆さんは、どんな『秋』がお好きでしょうか?
 本日は、このような話題で皆様とお喋りしていきますよぉ〜」

「っと――早速リスナーの方(>>534)から『コール』を頂けたようです。
 お電話ありがとうございます!こちらは美作くるみですッ!」

534蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/18(金) 23:40:08
>>533

「もしもーし」

「あれ、これ繋がってます?」

男性の声だった。

535美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/19(土) 00:03:58
>>534

「はい、もしもし!大丈夫ですよぉ〜。バッチリ繋がってますからッ!」

『カナリア』を思わせる高く澄んだ声で、電話に応じる。
この瞬間は、いつも胸がときめく。
どんな話が聴けるのだろうか。
しかし、ただ聞き役に徹するだけでは『パーソナリティー』は務まらない。
次の言葉を発しながら、頭の中で考えを巡らせる。

「早速ですが、お名前もしくは『ラジオネーム』を教えて頂けますか?」

性別や年齢や性格など、声から読み取れる事は意外に多い。
相手が男性である事は分かった。
次は、大体の年齢が分かればいいのだが。
話をする事と話を聴く事が、『パーソナリティー』の仕事だ。
相手の事が分かれば分かる程、それに合わせた会話をしやすくなる。

536蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/19(土) 01:22:06
>>535

「あぁ��よかった、こういうのよく分かんなくて」


丁寧だがどこかラフな印象の言葉遣いだった。

「名前……は長いからラジオネームであー……『マラドーナ』でいいや」

軽い雰囲気でそう告げる。
マラドーナのままで通すつもりらしい。

「秋の話すればいいんだっけ?」

537美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/19(土) 01:50:36
>>536

「――ありがとうございます!『マラドーナ』さんですね!」

(声の雰囲気から判断すると……年齢は私より少し上みたいね)

『名前が長い』という部分が気になってはいた。
だが、そこを突っ込んで聞くのは止めておいた。
状況によっては『話題作り』のために尋ねてもいいが、今はしない。

「はいッ!おっしゃる通り、今回のテーマは『秋』です!
 『秋』にまつわるエピソードや、『秋』と聞いて思い浮かぶ事など、
 『秋』に関する事なら何でもオーケーですよぉ〜」

第一印象から、既に興味を引かれた相手だ。
この放送を聴いている他のリスナーも、
同じような感想を抱いているだろう。
自分としても楽しみだし、『番組を盛り上げる』という意味でも有り難い。

538蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/19(土) 09:08:42
>>537

「そう、マラドーナ。ディエゴ・マラドーナ」

からからと笑う声が聞こえた。

「あぁ、秋の話だな。うん、分かってる分かってます」

ほんの一拍だけの間があって、再び話し始める。

「よく、何とかの秋って言うじゃないか。秋は過ごしやすい、みたいな話」

「それで、行楽シーズンとかも言うけど、おかしくないかと思って」

539美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/19(土) 20:30:09
>>538

「はいはいッ、この時期になると必ず耳にするフレーズですよねえ。
 『風物詩』といいますか『時事』といいますか……。
 ある意味では、『標語』みたいなものかもしれませんねぇ〜」

特に不思議な事だとは思っていなかった。
昔から何度も聞いてきた言葉だからだ。
だから、疑問など持つ事なく納得してきた。

「かくいう私も使ってますからねえ。
 というか――今さっき使っちゃいましたねッ!
 いやはや、アハハハハ…………」

思わぬ不意打ちを食らったが、番組の雰囲気を壊す訳にはいかない。
ここは、冗談交じりの苦笑いで場の空気を和らげる事にした。
確かに言われて見れば、昔から聞く言葉が正しいとは限らない。
彼は、どんな理由で『おかしい』と思うのだろうか?
自分としても、それは大いに興味を引かれる部分だ。

「『マラドーナ』さんは、どんな所に疑問を感じておられるんでしょうか?
 これは是非お聞きしたい所です!
 今まで、そんな人に出会った事がなかったですからねえ」

540蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/19(土) 23:36:22
>>539

「疑問というか、正直なところ美作くるみさん、あんただってそれを感じられると思う」

「その他の人も同じように」

そう言った。
なんて事ないように言葉を吐いている。
強調することも意地になる事もない。

「行楽シーズンでなくとも、皆出かけてるじゃないか」

「むしろ、イベントごとで言えば夏の方が多いでしょ?」

それが男の主張だった。

「過ごしやすい、出かけやすいなんて言いながら、皆クソ暑い夏にフェスに行ったり祭に行ったりする」

「あるいは、クソ寒い冬にイルミネーションを見に行ったりする」

「紅葉狩りだって、結局は花見をリフレインしてるだけじゃないか」

一つ一つ、言葉を繋いでいく。

「だから、秋を行楽シーズンっていうのは適切じゃないでしょって話」

541美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/20(日) 00:14:42
>>540

「はい……はい……なるほどぉ〜ッ!
 言われてみれば…………。鋭いご指摘ですねぇ。
 確かに、どんな季節でもやっている事ですもんね」

「私も真夏の野外フェスは好きですし、イルミネーションも……。
 うん、とても納得ですね。
 含蓄があって、すごく興味深いお話だと思います」

言葉と同時に、深く頷いた。
当然、音声だけを伝える『ラジオ』では届かない。
しかし、動作を入れる事によって声色の説得力が増す場合もある。

「『マラドーナ』さんは、
 ユニークな着眼点をお持ちでいらっしゃるんですねえ。
 あ、変な意味じゃないですよ。
 こう――独自の切り口を感じるというか」

「それじゃ、『いつでも行楽シーズン』って事ですねぇ〜!
 というよりは、
 それぞれの季節の良さを楽しんでいると言う方がいいでしょうか?
 『秋』だけ特別扱いじゃあ不公平ですもんね!」

身近な話のようで、なかなか考えさせられる内容だと思う。
それに、彼自身にも興味が湧いた。
彼の語り口からは、
周囲に流される事のない『強い意思』のようなものを感じたからだ。

「――――『秋』の話題からは外れるんですが、
 『マラドーナ』さんは、お好きな季節はおありですか?」

542蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/20(日) 00:32:12
>>541

「いつでも出歩いてる以上はどの季節も行楽シーズンだ」

「年がら年中ね」

美作の言葉を補強する様に言葉を復唱していた。

「好きな季節?」

「うーん……」

静寂、悩んでいる。
即答ではない。
その割には迷っている気配はない。

「どの季節もそこまで?」

「正直、どの季節っていうのがなくて、どれも好きで嫌いだな」

「美作さんは?」

543美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/20(日) 01:13:50
>>542

「アハハハッ――『マラドーナ』さんはトコトン平等な方なんですねえ。
 人でも何でも、見かけだけで判断しちゃあいけませんもんね!」

「――――私ですか?そうですねえ…………」

こう聞かれると、少しばかり悩んでしまう。
何しろ、彼の話に納得した後なのだ。
季節に対する考え方も、話を聞く前とは多少変わってくる。

「普段ならビシッと答えるんですけど、
 改めて考えてみると、
 『マラドーナ』さんと同じような気がしてきますねぇ〜」

「スキな所やイヤな所は、それぞれにありますもんね!
 そう思うと、なかなか決めるのは難しくなりますねぇ〜。
 自分で言い出しといて、こんなんじゃダメダメですね!」

「でも、一つだけ決めるとしたら『夏』ですかねぇ〜。
 派手というか賑やかというか、
 『夏』特有のエネルギッシュな雰囲気が好きなんですね。
 ヘンな言い方ですけど、暑さと張り合ってるみたいな感じで」

きっと自分は、明るく陽気な雰囲気が好きなのだろう。
だから、『夏』と答えた。
大きなイベントが多いのも理由の一つかもしれない。

「それで熱中症にでもなってたら大変ですけどねッ!
 そういう心配がないのは『秋』のイイ所だと思います!」

544蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/20(日) 02:09:03
>>543

「平等というか……まぁ、平等と言えば平等か」

頷いてみる、見えないけど。

「夏が好きなんだ。そうなんだ。なるほどな」

なにか納得した様子だった。
そんな雰囲気であるわ

「秋はね、熱中症にはならないけど」

「急に秋めくからな」

545美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/20(日) 02:50:54
>>544

「そうそう、そうなんですよねぇ〜。
 昨日まで残暑だったと思いきや、
 次の日には急に冷え込んだりしますからねえ」

「日によって気温がコロコロ変わっちゃうんですよね。
 昨日は夏物、翌日は秋物、その翌日はまた夏物!って感じで。
 こう、季節に翻弄されるというか。
 体調を崩しやすいですし、その辺りは『秋』の困る所ですよね!」

「ちなみに、くるみの困る所は『ドジ』をやる所ですかねぇ〜。
 イイ所は、それを気に病まない事ですねッ!
 いえ、もちろん反省はしますよ!」

一番いいのが失敗しない事なのは言うまでもないが、
最も良くないのは失敗を気にして前に進めない事だろう。
失敗しない事も大事だが、失敗にめげない事も大切だ。
だからこそ、どんな時でもポジティブに明るく振舞う事で自分を鼓舞する。
自分を一番応援してあげられるのは、他ならぬ自分自身なのだから。
それが、『美作くるみのスタイル』だった。

「くるみから見た『マラドーナ』さんのイイ所は…………
 『意思』がしっかりしていらっしゃる所でしょうか?
 あまり大きな事は言えないんですが、
 今回お話を伺ってみて、そんな風に感じましたねえ」

話の『纏め』に入るには、丁度いい頃合になってきた。
そのように考えて、通話を締めくくり始める。
もし何もなければ、そろそろ『生電話』もお開きに向かうだろう。

546蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/20(日) 23:19:42
>>545

「ありがたい」

「意志は大きい方がいい」

そう言ってまた笑う。
くっくと内に落とすような笑い方だった。

「あぁ、うん。そんなことを言いたかっただけだ」

これ以上彼からも言う事はないのだろう。
だったが、ぽとりと一言。

「あ、切る前に落としたいことがあって。もちろん、これを言ったら切るんですけど」

「秋だけ、英語での表現が二通りあるのはなんでなんだろうねってこと」

そう言い切ってから、じゃあね、と言う。
もう通話を終えるつもりらしい。

547美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/21(月) 01:03:16
>>546

「『秋』というと……『autumn』と『fall』ですよねえ。
 ああッ、確かにぃ〜ッ!」

「何でしょうね?
 『アメリカ英語』と『イギリス英語』の違いでしょうか?
 『subway』はアメリカでは『地下鉄』の事ですけど、
 イギリスでは『地下道』を指すそうですし――」

「これは気になりますね!
 次回の放送までに調べておきたいと思います!」

「『マラドーナ』さん――
 今日はお電話いただき、どうもありがとうございましたッ!!
 是非、この後も放送をお楽しみ下さい!」

「後日、『番組特製クオカード』をお送りしますので、
 そちらの方もお楽しみに!
 それでは、いつかまたお話いたしましょう」

「――――『See you again !!』」

挨拶を述べて、通話を切る。
ユニークで個性的な相手だったと感じた。
こういう出会いは、自分にとって『プラス』になる。

「さて、次のコーナーに入る前に一曲お届けしましょう。
 ハロウィンにもピッタリな『Shakira』の『She Wolf』です!!
(ttps://m.youtube.com/watch?v=booKP974B0k)」

後日、『マラドーナ』に一通の封書が送られてきた。
中身は『Electric Canary Garden特製クオカード』だ。
それと一緒に、『メッセージカード』が同封されている。

『先日は、お電話ありがとうございました!
 今まで考えた事もなかった話題で、すごく考えさせられました。
 とっても興味深かったです。
 よろしければ、またお気軽に電話してきて下さいね!
 待ってます!』



蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』⇒『番組特製クオカード(500円分)』Get!!

548斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/29(日) 21:28:18
年の瀬と言うのは忙しいものであるが
それとは関係のない話。

 ――カキィン!

 「いやー……」

半身を開いて体を山のように動かさず
ヒッコリーのバットを構え、見様見真似で振る。

 ――カキィン!

甲高い音と共に白球が空を舞う 
目指せ今日だけべーブルース

 ――カキィン!

『バッティングセンター』甲高い音と共にボールを飛ばす爽快感は何事にも代えがたい快感が有る
ストレス解消には最適である。

 「僕のバット当たらないんですけどぉ!なぁ隣のオッサン打ちすぎじゃない?元プロ?」

……あたれば。
 
 「違う?腰が引けてる?」

 「ちゃうわい飛んでくるボールの腰が引けてるんだよ(?)」
 「見てろ元プロ次はかっ飛ばすからな!」

すぐ傍の装置でボールの軌道を変更できる事を
彼は知らなかった。

549斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/01(水) 16:53:39
>>548

カキィン

 「シャオラ!当たったぜ見たか!」

ピーヒョロ〜

 「……うっわ、すっげぇしょっぱいファンファーレ。」

(まあ、勝手に期待して勝手に裏切られるのは、未だに変わらぬ人間の悪癖だよなァ)

 「だからだろうな、あまり良い事には思えないのは」

バットを元に戻して背を向ける
まだ、見つからない。

550百目鬼小百合『ライトパス』:2020/02/07(金) 00:22:48

『地下アーケード』――その場所は、何処かアングラな匂いが漂う。
何気ない視線をショーウィンドウに送りながら、女が歩いている。
外見は四十台程であり、決して若くはないが、
軽快な足取りは年齢を感じさせない。
白いパンツスーツ、ベリーショートの黒髪。
口元にホクロがあり、
両方の耳には『白百合』を象ったイヤリングが揺れていた。

「相変わらず愉快な場所だねえ」

「――『この辺』は」

かつて、ここに出店していた違法な店に、
『警察』として踏み込んだ事があった。
もっとも、今は違う。
そういった店は見える範囲には見当たらないし、
今の自分は『警官』でもない。
しかし、身に付いた癖というべきか。
特に欲しい物がある訳ではなくとも、
つい無意識に『探るような視線』を向けてしまう。

551鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/02/10(月) 21:42:49
>>550

        ギィ ・・・ ――――

重いドアが開く、独特の軋んだ音が聞こえた。
看板の出ていない店から出てきたのは少女か、
女性というべきか、曖昧な背格好の女だった。

「…………?」

「ええと」

その女と、目が合った。

「何かお探しですか? それともその、失礼なんですけどね、
 ボクってもう、お姉さんとはお知り合いなんでしたっけ―――――?」

探るような視線の意図を、そう捉えていた。
レトロな意匠のコートに合わせたマフラーが、傾げた首に合わせて揺れた。

552百目鬼小百合『ライトパス』:2020/02/11(火) 00:03:24
>>551

若く見られてはいても、『お姉さん』と呼ばれる年齢は越している。
そういう言い回しがポンと出てくるという事は客商売か。
『何かお探し』と言ったのなら、客ではなく従業員かもしれない。

「ん?ああ、いや――赤の他人だよ」

「そこの店、看板が出てないだろ?
 『どんな物』を扱ってるのか気になってねえ」

「出入りする人間を見てれば、
 何かしら分かるんじゃないかと思ったのさ」

目の前の女から怪しい気配は感じなかった。
単に変わった店というだけか。
そう思いながら、やはり気にはなる。

「分かったからって、別にどうって事は無いんだけどねえ。
 もし気分を悪くさせちまったんなら謝るよ。
 すまないね」

「――――もののついでに聞くんだけど、そこは『何屋』なんだい?」

だから直接尋ねる。
女が客か店側の人間かも分かるだろう。
それから入ってみればいい。

553鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/02/11(火) 00:30:06
>>552

「でしたねぇ。覚えは無かったんですケド、
 もしそうだったら申し訳ないな――――と」

         フ…

鳥舟は微笑を浮かべ、振り向く。
今出てきた扉にも、『表札』等はない。

「気を悪くなんてとてもとても。
 こちらこそ、急に話しかけてすみません。
 視線を感じたもので――――と、まあ、
 自意識過剰だったみたいですケド。
 ふふふ、お恥ずかしい限りで……」

「それでええと、このお店は――――」

        ガサッ

「『骨董品店』っていうんですかね、アンティークショップ?
 何かの『専門』ってわけでもないんですが、色々売ってますね。
 アンティークはお好きですか? ボクは、結構好きなんですケド」

袋の中身を見せる。
・・・『木箱』にしか見えないが、中身は『食器』だ。

「それにしても……なんだか、『張り込み』みたいですねえ。
 ホラ、刑事ドラマとか、探偵モノとかの。
 ……まぁーでも、確かに、この店は『何屋』か分かりづらいですよね!」

           「看板もないし、ネットにも出てないし」

554百目鬼小百合『ライトパス』:2020/02/11(火) 00:53:20
>>553

「なるほど、『知る人ぞ知る』ってヤツだねえ。
 世の中には珍しい店もあるもんだ」

「お陰様で疑問が解けたよ。ありがとねえ」

顔を近付けて木箱の中身を覗いた。
確かに食器だ。
『食器の形をした何か』って訳でもあるまい。
もっとも、本気で仕込もうと思えば何にだって仕込める。
そうはいっても、そこまで疑う理由も別にないのだ。

「ハハッ、『張り込み』ねえ。そんな風に見えたかい?
 でも生憎だけど、アタシは『刑事』でも『探偵』でもないね」

「まあ、体を張る仕事ではあるけどねえ」

今の職業は『警備員』。
近くはないが、そこまで遠くもない。
少なくとも、体力を使うという点では同じだ。

「嫌いじゃあないけど、詳しくはないよ。
 その、アンティークってのはね」

「アタシが持ってるもので、『それらしいの』って言ったら……」

    ゴソ

「――これくらいだね」

スーツの内ポケットから、『オイルライター』を取り出して見せる。
かなり年季が入っていて、あちこち傷が付いていた。
数十年は使われていそうだ。

555鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/02/11(火) 01:44:43
>>554

「そうですね、隠れ家的っていうのかな。
 骨董屋は別にもあるんですけど、
 隠れてるだけあってこっちも面白いのが多くって」

木箱の蓋の中は、本当にこのこじんまりとした『食器』でしかない。

「歴史的価値があるかは、まぁ怪しいとは思うんですがね」

いつの時代の物かもあいまいだが、
間違いなくただの、実用品としての食器だ。

「ただ、そのライターもですけど……いや。
 そのライターの方がずっと『そう』だと思うんです。
 つまり、『歴史』があるっていうのは、その分『ロマン』がある。
 そういうところが、アンティークってやつの、好きなところですね」

「例えば、どうして傷がついたのか、とか。
 どうしてこういう模様にしたんだろう、とか。
 分からない事ですし、暴きたいわけでもないんですけどね。
 そういうのを考えるのが、ボクは好きなんですよねえ」

       ニコ・・・

「とまあ、自分語りをしちゃいましたけどね。ふふふ……」

そこまで言い終えてから、箱のふたを閉じた。
箱の中の食器にも、そのようなロマンを感じていた。

「それにしても、良いライターですねえ。もうずっと……使われてるんです?
 ボク、アンティークは好きなンですけど……『鑑定眼』がお恥ずかしながら今一つでして」

556百目鬼小百合『ライトパス』:2020/02/11(火) 02:11:15
>>555

「ははあ、素敵な話だねえ。
 何十年も何百年もかけて、
 人から人へ渡っている物だってあるだろうしさ。
 そんな風に考えた事なんて、あんまり無かったよ」

「アタシは『キチンと使えるかどうか』っていう方を気にするタチでね。
 そういう細やかな感性にまでは気が回らないんだ」

「『全部が全部』――って訳でも無いんだけどねえ」

    カキンッ

親指を滑らせると、金属の蓋が勢いよく跳ね上がる。
同時に、耳に心地良い音が手の中で響く。
数十年の間、慣れ親しんだ音だ。

「これはね、『昔の仲間』に貰った物さ。
 部品を交換したり点検したりしないと、よくヘソを曲げるんだ。
 いい加減で買い換えてもいいんだけど、
 なかなか手放す気になれなくてねえ」

          フッ

「ただ、そんな大層なロマンはありゃしないよ。
 ずっと使ってるからガタが来てるだけだし、
 傷が付いてるのはアタシの使い方が荒いからさ」

「『コレを胸ポケットに入れていたお陰で弾を防げた』――
 なんて話の一つでもあれば面白かったんだけどねえ」

557鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/02/11(火) 02:33:28
>>556

「参考になったなら、光栄ですね。
 マアでもボクも全部が全部、
 『ロマン』を求めてるわけでもないんですよね。
 連絡手段とかは、実用性重視してますし!」

「使い方も、実用品ならまあ、荒くはなっちゃいますねえ」

ライターを眺める。
使い、古されている。

人に歴史あり……歴史は人が紡ぐものだから。
全部が全部、紐解かなければならないものではない。
『昔の仲間』の物語も、暴くつもりはない。

「それにしても――――『弾』とはまた。
 や、確かに映画なんかじゃお約束ですケド。
 現実中々、『撃たれる』シチュエーションもありませんからねぇ」

「それこそ、『刑事』や『探偵』でもなくっちゃあ」

弾という言葉に、どこか真実味を感じた。
それが何を意味するのかも――――
今ここで暴き立てるのは、あるいは危険かもしれない、とも。

「……そうなると、お姉さんがこのあたりに来たのも、
 ライターの替えのパーツを買いに来た、とかなんです?」

          「どこで売ってるかは、見たことは無いですケド」

558百目鬼小百合『ライトパス』:2020/02/11(火) 22:00:11
>>557

「それもあるけどね。
 ちょっとブラブラしてみたくなったのさ」

「この辺りは、昔はちょくちょく来てたんだけどね。
 最近は、あんまり来る機会が無くてねえ」
 
「だから久しぶりに来てみたんだよ。
 相変わらず見ていて飽きない場所だね」

    パチン

軽く笑いながら、ライターの蓋を指で閉じる。
それから周囲に視線を走らせた。
どこか怪しさの漂う空間。
歓楽街の周辺とは、また毛色が異なる。
もしかすると、『良くない輩』が潜んでいないとも限らない。

「おっと、随分と話し込んじまったね。
 これ以上お邪魔をしちゃあ悪いし、アタシは行くよ」

「アンタのお陰で興味が出てきたからね。
 『アンティーク』ってヤツに」

向けた視線の先には、『看板のない店』があった。
骨董品に関心が湧いたというのはウソでは無い。
本当に真っ当な店かどうか確かめておきたいというのもあるが。

「それじゃあね、親切なお嬢さん。
 色々と教えてくれて助かったよ。ありがとねえ」

          ザッ

「――ああ、そうだ。最後に一つだけいいかい?」

559鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/02/12(水) 19:09:57
>>558

「そうですねえ、表通りや歓楽街には無い雰囲気ですよね。
 よくわかんない店もあるんだけど、それも楽しいっていうか」

「あ、いや。お邪魔なんてとんでもない。
 お話しできて楽しかったですよ。
 アンティークにハマってくれたら嬉しいです」

             ニコ…

「ここ以外にもその手のお店は、
 事欠かないですんでね、アーケード街なら」

屈託のない笑みを浮かべた。
同好の士が欲しいという訳ではないが、
自分の話で興味を持たれるのは気分が良い。

同じく店に視線を向ける。
その意味合いが異なるのには気づいていない。

       クル

足音に振り向く。
立ち去るなら呼び止める気はない、が。

「――――ん、なんですか?
 ボクに答えられる事でしたら、なんでもどうぞ」

その前に質問に応じる事にした。道案内か何かだろうか――――

560百目鬼小百合『ライトパス』:2020/02/12(水) 23:14:28
>>559

「いや、大した事じゃあないよ。
 アンタの言う通り、ここらは変わった雰囲気があるからねえ。
 もしかしたら、中には『妙なの』も混じってるかもしれない」

「――なんて思ったのさ
 昔、そういう『噂』を聞いた事があったもんでね。
 本当かどうかは知らないんだけど」

「もしも『妙な場面』にでも出くわした時は、
 『ケーサツ』に知らせた方がいいかもねえ」

    フッ

そこまで言って、口元に笑みを浮かべる。
表面的には、あくまで冗談めいた言い方だった。
しかし、目の奥には何処か真剣さもあった。

「ま、それだけだよ。世の中には迷惑な連中もいるからね、
 こういう所でお嬢さんの一人歩きを見ると、
 つい余計なお節介を焼きたくなっちまうのさ」

「――――それじゃあねえ」

ひらひらと小さく手を振って、ゆっくりと店の中に入っていく。
さて、『アンティーク』とやらを拝ませて貰うとしよう。
他意が全くないとまでは言わないが、別に疑ってはいない。
ただ、こういう場所にはいてもおかしくないだろう。
この辺りは、『そういう事』には事欠かないのだから。

561鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/02/13(木) 03:46:31
>>560

「――? そうですねぇ、妙な場面。
 ひったくりとかが出たってハナシは聞きますから、
 被害に遭ったら、泣き寝入りはしないようにしときます」

「勿論見かけたら、それは通報しますしね」

言葉の真意は掴みかねたが、否定するような内容ではない。
そう、真意だ。何かが裏に秘められた、そんな言い方に感じる。

(やっぱり『何かを調べてる』ように見える。
 まァ、ボクに関係のある事じゃないんだけども、
 『何となくぶらぶらしてるだけ』にしては……
 『何か』の確信がある、そんな感じが、するんだよね)

「ええ、それじゃあまた!
 骨董にハマったらぜひ情報交換とかしましょう」

           「ボクはこの辺に、よく来ますんでね」

が、いずれにしても深入りの必要は感じなかった。
重厚な背景を辿るのはロマンがあるが、
見知ったばかりの生の人間する事でもない。

店の中に入った背中が扉に遮られる頃には、その場を去った。

562美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/03/02(月) 22:31:38

ある日――――。
星見町の何処かで『ラジオ』が流れていた。
この町の誰かが、それを聞いている。

         〜〜〜♪

    「今日も貴方の隣に『電気カナリア』の囀りを」

         「『Electric Canary Garden』」

  「『パーソナリティー・美作くるみ』がお送りしまぁ〜すッ!」

「少し前の放送では、『バレンタイン直前企画』として、
 『恋のお悩み相談室』をお送り致しましたッ!
 リスナー様の恋の悩みを、
 私くるみが解決しようという企画でございます!
 皆様、『今年の結果』は如何でしたでしょうか?」

「以前の放送で相談をお寄せ頂いたリスナーの方々から、
 番組宛に沢山のメッセージを頂戴しておりますッ。
 皆様、ありがとうございましたぁ〜ッ!」

「ちなみに、私は誰に差し上げたかと申しますと……。
 いえいえ、これはちょっと言えませんねぇ〜。
 かなり『プライベート』な内容になってしまいますので……」

「でも、せっかくなので、思い切って言っちゃいましょう!
 ハイッ!『スタッフ一同』でございますッ!
 日頃の感謝を込めまして、
 『それなりに良いお値段の品』を配らせて頂きました!」

「そろそろ私も『本命』を渡す相手が欲しい所ですが、
 そこは気にせずにッ。
 一度気にし始めるとキリがないですからねぇ〜。
 あはははは……。
 しっかりと『未来』を見据えて、
 『次』に向かって邁進していきましょう!」

「バレンタインが終われば、次はホワイトデー。
 先日たまたま買い物に行った時に、
 『ちょっと面白いもの』を見かけまして。
 バレタインの後だったんですが、
 もうホワイトデーの売り場が出来てたんですよ」
 
「それで、何気なく一つ手に取ってみたんですね。
 そしたら、『妙な事』に気が付いた訳です。
 何故か分からないんですが、
 その商品に『見覚え』があったんですよ」

「『どこで見たんだろう?』と思って、少し考えまして。
 そしたらピンと来て、その答えが分かっちゃいました」

「実はそれ、『バレンタイン商品の再利用』だったんですよ!
 私も同じ店で買いましたからね。
 だから見覚えがあったんですねぇ〜」

「『バレンタインの売れ残り』を安売りしてなかった訳も、
 これで分かりました!
 いやぁ〜、上手い事やってるもんですねえ。
 もらった側としては、ちょ〜っと『複雑』かもしれませんが……。
 バレンタインを通じて、
 『世の中の仕組み』が少し分かったような気がしましたねぇ〜」

「さてさてッ――
 ここでリスナーの方(>>563)と電話が繋がったようです。
 『バレンタイン』・『ホワイトデー』・『恋愛』・『未来の目標』・
 『意外な場所で分かった意外な真実』などなど、
 今日はこのようなテーマでお話していきたいと思います!」

              pi

    「もしもし、お電話ありがとうございます!
     こちらは美作くるみでございます!」

563美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/03/11(水) 20:57:29
>>562

「――はいッ、ラジオネーム『ハルちゃん二号』さんでしたぁ〜!
 いやぁ〜、とっても興味深いお話でしたねえ。
 まさか『間違って渡したバレンタインチョコ』が、
 そんな事になるなんて……。
 この世の中、本当に何が起こるか分かりませんね!
 さてさてッ、それでは次のコーナーに参りましょうッ!」

「ここからは、私くるみが町のホットな情報をお届けしていきます!
 まず最初にご紹介するのは『地下アーケード』!
 ちょっとアングラというかマニアックな場所なんですが、
 中には意外な掘り出し物もあるようで……。
 表通りとは違った刺激を求める方にもオススメです!
 特に、くるみのイチオシなのは――」

564花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/03/24(火) 22:13:32

打ち捨てられた廃工場の中で人影が動いた。
全身を『レザーファッション』で統一した男が歩いている。
髪の色は鮮やかな赤色だ。

  コツ コツ コツ

コンクリートで固められた床に、革靴の音が響く。
当然だが、他には誰もいない。
その筈だった。

         ズギュンッ

男の右手に、一丁の『拳銃』が現れる。
回転式拳銃――『リボルバー』。
両腕を構え、狙いを定める。
銃口の先には、幾つかの空き缶が並べられていた。
射撃用の『ダミーターゲット』だ。

           ガタッ

「――――ッ!」

不意に物音が聞こえ、拳銃を手にしたまま反射的に振り返る。
そこには一匹の『野良猫』がいた。
ここを住処にしているのか、たまたま入り込んだか。

「脅かしやがって……」

「だがまぁ、なかなか悪くねえ『スリル』だったぜ」

「……いや、待てよ」

ダミーに向き直ろうとした時、『一つの考え』が浮かんだ。
おもむろに右手を上げ、銃口の先を猫に向ける。
野良猫は、積み上げられたガラクタに興味を移していた。

「動かない的より、『こっち』の方が良いかもしれねえなァ」

               ――――チャッ

呟くように言いながら、猫に照準を合わせる。
指は引き金に掛かっている。
ほんの少し力を込めれば、『銃弾』が発射されるだろう。

565リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2020/03/24(火) 22:30:00
>>564

 多分、彼は先客だったのだろう。
私も偶には、人知れず狩の欲求や腕を錆び付かせない為に
狙撃の訓練は行う。そう言う私と同質の輩が一人か二人いても不思議でない。

ただ、彼が次にとるであろう所業は私には『禁忌』だ。

   ヒュッ……タンッ パララッ

猫と彼(花菱)の間に割り込むように、スリングショットで使用される
ラバーボールを彼女(アタランテ・オーバーチュア)に発現して貰い
投擲する。乱雑な軌道で跳ねるゴム製のボールに、猫も驚いて見えぬ方角に
逃げていくだろう。
 それで良い、少なくとも悪戯に的となって良い生き物など存在しないのだから。

「こんにちは、と言って良い時刻かな?」

スタンドを傍らに出しつつ、愛想のよい口調は醸しつつ邪魔をしたばかりの
彼へと声をかける。ただ、目元まで楽の感情を形成する自信はもてない。

「……で、見ず知らずの方の遊びを邪魔しては悪いんだが」

「――今、君は何を撃とうとして。そして何故撃とうとした?」

質問を投げ掛ける口調には冷ややかさが多分に含まれている。

566花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/03/24(火) 23:14:09
>>565

唐突に転がってきたボールに視線を向ける。
リカオンの思惑通り、野良猫は逃げていったようだ。
それを見て拳銃を下ろし、何もせずに猫を見送る。

「なに、構わねえさ。別に俺の家って訳でもねえしな。
 もしアンタの家だったら悪かったけどよォ」

「こんな寂れた場所に、
 俺以外の人間がいるとは思わなかったぜ」

「――しかも『スタンド使い』と来たもんだ」

         ザ ッ

人型スタンドを従えた女に向き合う。
右手には相変わらず拳銃が握られている。
リカオンには、それがスタンドである事が分かるだろう。

「順番に答えるぜ。一つ目の質問の答えは『猫』だな」

「そこに空き缶が置いてあるだろ?
 それを使ってたんだが、ふと思ったのさ。
 『これだと上達しないんじゃないか』ってよ」

「そいつが『二つ目の答え』になるだろうなァ」

冷ややかな口調に、緊迫感を覚えた。
同時に、胸の内に『心地良さ』を感じる。
一種の『スリル』と呼んでもいいだろう。

「――丁度その時に、アンタが来たって訳だ」

目を逸らす事なく女を見つめる。
『スウィート・ダーウィン』に心を読む能力はないが、
女の言わんとしている事は大方の予想がついた。
だが、それを敢えて口に出す事はしなかった。

567リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2020/03/24(火) 23:32:38
>>566

「あぁ、私の家で無い。それに、私は動物愛護団体とかでないし
どちらかと言えば真逆の方面に立つ側の人間だ」

彼の手に握られている拳銃がスタンドである事は理解出来る。
だからと私の態度は変わらない、変えれもしない。

言葉には真実があると思った。浮付いているような口調に眉が片方
自分自身が上がるのを感じつつ、次の言葉は流れ出るように紡がれていた。

「そうか、君の答えはわかった。
なら、次に聞く事は重要だが。君は、先程逃げた猫を私が邪魔せず
見事に撃ち仕留めたとして、だ」

「――君は、その猫を食そうと決めてたか?」


「もし、そう思っていたのなら。私は君の『狩り』を邪魔したのを詫びる
だが、私の常識に当て嵌めるなら。猫を撃って食そうと言う悪食をなそうと
する人間には今まで巡り会った事はない。
 なら、君は私の世界観では悪戯半分に生き物を殺生する人物だと捉えられる」

もしかすれば、君が初めて出会うその人物かも知れないが。と言葉を続ける。

彼の腕を磨くと言う発言には、首を傾げかねた。

「……射撃を磨きたいのは、何故なんだ?
それは一分一秒でも長く、糧となる生き物の苦しみを少しでも短くさせると
言うような理由か?」

568花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/03/25(水) 00:08:33
>>567

「俺も、猫を食うようなヤツは今まで見た事がねえ。
 『俺自身』も含めてな」

「さっきの猫が俺の撃ったタマで死んだとして、だ。
 俺はソイツを食おうとはしなかったろうなァ」

もし邪魔が入らなかったなら、猫は撃たれていたかもしれない。
しかし、そうだとしても『死ぬ』事はなかった。
装填されていたのは『偽死弾』だ。
それは、『偽りの死』を齎す能力を持つ弾丸。
だが、傍から見れば撃ち殺そうとしたようにしか見えないし、
安全である事を差し引いても、
生き物に狙いを付けていた事には変わりない。

「言い訳になっちまうが、『殺す気』はなかったぜ。
 まァ……『生き物に銃を向けた』ってのは本当だからな。
 客観的に見て、アンタの言い分は正論だ」

『命』に対する相手の意見は筋が通っている。
ただ口先だけではなく、
経験に裏打ちされた『根拠』のようなものを感じた。
『動物愛護と真逆の立場』という言葉からも、
それが察せられる。

「『何故』――か。その質問は、ちっと難しいな。
 言ってみりゃあ、より『スリル』を味わうためか」

「研ぎ澄まされた強さを持ってるヤツ程、
 『そういう機会』にぶつかる回数ってのが、
 多くなるんじゃねえかと思ってよ。
 そのために腕を磨いてるって所か」

「少なくとも――
 『アンタの理由』とは全く違うって事だけは分かるぜ」

569リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2020/03/25(水) 00:53:57
>>568

「あー……そう言う手合いか」

頬を掻く。多分だが『わかりあえない』のが目の前の相手だ。

世の中には色々な思想の人物がいる。
命を尊び、生き永らえる為に奪う命に対して礼と謝を重んじる者もいれば
ただただ、その奪い合う事に対しての興奮に囚われる者もいる。

彼は圧倒的な後者で、私はその真逆に位置する前者だ。

別に私はその事に対し非難をする気は無い。釈明でもなく、これは確かだ。
 狩人として、私は山の掟に従い生きていく事を決心した事と。
目の前の彼が『スリル』の為に危ない場所に歩みを入れてる事に対して
何の関連性もないのだから。

 ふーっと細くも長い溜息を吐く。

「…………別に長く会話してる訳では無いが。君と私では恐らく
どちらの主義思想主張をぶつけても、相互理解は難しそうだな」

「少なくとも、結果的に命を奪うか奪わなかったとしても。君がしようと
した行為は私にとって『禁忌』に当てはまる出来事だったし。
 私の願いや祈りといったものは、君の望むものにかけ離れてるだろう」

「……アタランテ ――私達の『信義(能力)』を見せよう」

彼自身が『銃(スタンド)』を見せているのなら。私も既に
アタランテは姿を現してるものの、彼に自身の意思を見せるべきだと思った。

 ――キィン

 アタランテの手元に『村田銃』が発現され、それを私が受け取り
垂直に銃口が天井に向かうように構えて持つ。決して彼に対し向けるような
愚かな真似はしないし、アタランテも許しはしない。
 祖父が、倒れ伏すまで愛用していたものだった。

「これが、私。いや、私達の意志だ。死するまで、この先奪うであろう命に
詫びて感謝し、私の血肉とする為に扱う」

「……君の向かう道と、私の進もうとする道は。
多分交わらない。だけど、知って欲しくて見せた」

ただ、ただ言葉で訴えるよりも。これが一番彼に伝わると思い
能力を、アタランテ・オーバーチュアを見せた。

570花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/03/25(水) 01:29:06
>>569

「――だろうなァ。お互いに分かり合える部分があるとすりゃあ、
 『意見が合わない』って所だけだろうよ」

目の前の相手は、自分とは全く違うタイプの人間だ。
短いやり取りの中で、そのように感じた。
一つの命が別の命を生かす。
それが、この女の考えなのだろう。
『猟師』か何か――勿論そこまでは知らない。

「……コイツは驚いたな。いや、マジに予想外だったぜ。
 こんな辺鄙な場所でスタンド使いに出くわしただけじゃあなく、
 『銃』まで持ってるとはよォ」

「そいつぁ……『ライフル』か?『本物』なんざ初めて見たぜ。
 それを『本物』と呼んでいいのかどうかは分からねえけどな」

発現された『村田銃』をまじまじと見つめる。
『拳銃』と『小銃』――型は違うが『銃器』には違いない。
それらが同じ場に存在しているという事実がある。
そのせいか、何処か奇妙な親近感を覚えた。
もっとも、さっき言われた通り、『歩む道』は真逆なのだろうが。

「なるほどな……。何となく分かったような気がするぜ。
 『銃』に対するアンタの価値観ってヤツがよ」

  スッ

心の中で納得し、視線を『ダミー』に移す。
おもむろに拳銃を持ち上げ、空き缶の一つに狙いを定めた。
そのまま引き金を引く。

      ガァァァァァ――――ンッ!

発射された弾丸が、勢い良く『ダミー』を弾き飛ばす。
床に転がった空き缶には、穴が穿たれていた。
それを見下ろして、銃口を下ろした。

「ちっと狙いがズレたか?まだ『練習』が足りねえなァ」

「ところでアンタ、ここに何しに来たんだ?
 俺も人の事は言えねえけどな」

「散歩しに来たって訳じゃあねえんだろ。
 見て楽しいようなもんは何もない場所だからな。
 だが、『練習』するには丁度いい場所だ」

「――そう思わねえか?」

571リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2020/03/25(水) 18:04:30
>>570(寝落ち失礼しました。宜しければ次レスで〆ればと)

>ところでアンタ、ここに何しに来たんだ?

「理由は違えど、多分君と似たものだろうな。
欲求を晴らしたいから、此処に君はいて。
私は逆に欲を抑えたくて人目につかない場所に行く事にした」

もっとも、君が居た事で破綻したけど。と呟き廃屋の窓から
射す月光に目を向ける。

こう、淡くも強い光が照らす夜空の時は。無性に体の奥底が
何かを狩れと訴えかける。獣であれ、人であれ何であれと無差別な咆哮を。
 そう言う時は、静かに誰も寄り付かない孤独だと実感出来る場所に
ただ一人で居たくなる。

今は小さいし、聞く耳をもたぬ事も出来る。けど、いずれ日増しに
増える心の中の獣を満たすには。何かを狩る事でしか鎮める術は無いのだろう。

「……思えるか思えないかで言えば、理性では頷きがたいけど
本能では首を縦に振っても可笑しくない。
 確かに、君と同じで表に出さないようにする我欲がある。
それを私は抑え込んでるし。君は程良く吐き出しているんだろう」

だが……と、発現した小銃を消して手を銃の形で彼に向けて言葉を紡ぐ。

「忠告するまでもないと思うが……君が進む方向には
切り立った崖が聳え立っている。私の進むべき場所に立つ崖とも異なる
危うい傾斜を作る、いつ転落しても可笑しくない山道だよ、その道は」

「こうして、出逢えたのも奇縁であり山の計らいなのかも知れない。
釈迦に説法では無いが……くれぐれも、使い方を見誤らないでくれ」

軽はずみに、あの猫に銃を向けた横顔に。確かに私は暗い笑みが覗いたと
廃屋の暗がりの中で視たのだ。

彼の言う『スリル』が、今よりも深い暗がりの中を求めれば
その胸に飼っている獣の為に、いずれ彼は喰われるだろう。

「私は尾月 李下
そして別称はリカオンだ。山と生きて死する事を誓った者だ
狩人の担う物を、用途は異なれど持つ君に
その目指す道が明るい事を私は望もう」

572花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/03/25(水) 20:29:31
>>571

「へえ?てっきり俺はアンタも『撃ち』に来たのかと思ったぜ。
 こんな場所でやる事なんて、他になさそうだからよォ」

「だがまぁ、言われてみりゃあ一人になるには絶好の場所かもな。
 俺のせいで台無しになっちまった訳だがよ」

さっき猫に銃を向けた時は、俺の方が邪魔されちまった。
そして、俺自身もアイツの邪魔になってたって訳だ。
俺達は『同じ得物』を持ってる。
それなのに、お互いに邪魔し合うってのは妙な話だが、
何となく納得も出来る。
どうやら徹底的に『ウマが合わない』って事らしいなァ。

「『花菱蓮華』ってのが俺の名前だ。
 似合わない名前だって言われる事もあるがよォ。
 自分じゃあ悪くないと思ってるぜ」

「花みてえにパッと咲いてパッと散る。
 『刺激的』ってのは、大抵そういうもんだからな。
 そして、そういうヤツほど『早死に』する」

「だが、死んじまったら意味がない。
 『スリル』は生きてる間しか味わえねえからよ。
 アンタとは違うが、
 俺にも『越えちゃあいけないライン』ってのはある」

『危険』に近付く程に興奮が増す。
だからこそ、自ら『デッドライン』に歩み寄ろうとする。
しかし、そのラインを越えてはならない。
『デッドラインギリギリ』のスリル。
それこそが、花菱蓮華の追い求めるものだ。

「『練習』してるのは、そのためでもあるなァ。
 いざ危険に踏み込んだ時に、うっかり死なねえようにな」

         ――――チャッ

己の精神の象徴である『スウィート・ダーウィン』を両手で構える。
そして、再び『ダミー』に照準を合わせた。
『5m』なら外さない自信があるが、
それ以上の距離になると『動かない的』でも不確定になる。

「忠告は有り難く受け取っておくぜ。
 尾月――アンタも、抑えすぎて暴発しねえようにな。
 銃は『メンテナンス』が大事だからよ」

「ま、それこそ『釈迦に説法』かもしれねえなァ」

       ガァァァァァ――――ンッ!

軽く笑い、引き金を引くと同時に銃声が響いた。
転がる空き缶には、先程と同じように穴が開いている。
今度は『ド真ん中』だった。

573リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2020/03/25(水) 21:24:42
>>572

ガァァァァァ――――ンッ!

背後で銃声が鳴る。もう話す必要が無いと理解すれば、自然と軽い別れの
言葉を除いて会話はいらない。
 慣れ親しんだ音を背後に、罅割れた建物から出て道なりに足を前に出す。

「蓮華……か」

随分と奇妙な巡りあわせだ。泥のような中で美しく咲き誇る花の名を持つ男子
李下瓜田といわれるように、疑われるような所業するなかれと言う語句を含む
スモモ(李)の名を冠する自分と彼が出逢い、そして似た力も備えてた事。

「月が……今日の月は、随分と妖しく輝いてるな」

彼の蓮の華は、微温湯のような生を突出する極限の中でしか咲かないのだろうか?
 実は彼の向けてる先を、少しだけ上向きになれば。また違った美しい花が
頭上に咲いていると気付けるのではないのだろうか?

フゥー……。

「なぁ、アタランテ。私は間違ってるのかな」

「……いや、間違いや正しさで区別できるものでは、そもそも無いんだろうな。
彼も、私も……同じ命だ」

574斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/04/13(月) 20:06:57
――鋼の心臓が狼の遠吠えのような唸り声をあげて時速150km以上で疾走する
眼前の光景はまるで黒いピラミッド、すぐ下のタコメーターはついている針をせわしなく降り続ける

 「――ハッ」

バイクの上には漆黒の体躯を持った髑髏が一つ
ハンドルを握り締め、その体からバイクまでもを大量の『鎖』が枷のように締め付けているソレは
その眼窩から『炎』を撒き散らしながら疾走していく

 「ハハハハハ!ハハハハハ!ハッハハハーッ!!」

後に残る轍が炎の線を刻み、次の瞬間儚く消える
まるで悪夢のように、アスファルト上に残されたのは火傷しそうな熱のみだ。

 キキィーッ
               VvOoo…… ガチン

鋼の馬が人気のない夜の側道にて足を止める
髑髏が銀色に輝く歯の隙間から吐息を漏らすと、懐から携帯を取り出して耳に当て、喋り始めた

 「――おい、どうだよオトモダチ、『ゴーストライダー』になった気分は。」
 「ああ?この町をグルグル回るのが必要か?俺達にはとっても必要な事さ、オトモダチ。」

 「又聞きだが……人の出会いは『重力』だとよ、『運命』って呼び変えてもいい」
 「スタンド使いっていうのはその『重力』が他人より大きいんだ、故にお互いが引かれ合う」
 
 「本来なら飛んでいく筈のお月様を、周辺に回して留めて置くみたいにな……自覚した奴ァ、更にそれが大きくなる」
 「良い物も悪い物も全ては『重力』!どちらも相応に引っ張ってくるが、なあに、『たかがその程度のリスク』だ」
 「俺達にはその『重力』が必要だ、当たり引くまで少しでも確率を上げるためなら何でもするべき理由があるッ!」

 「――……で、なんだった? おお、そうそう この町の外周をグルグル『ゴーストライダーごっこ』してる理由だろ?」

 「『回転』だよオトモダチ、すべては『回転』だ」
 「月、地球、太陽、太陽系、銀河……大きな『重力』を持ちながら、全ては『回転』の中にある。」
 
 「俺達はスタンド使いだ、俺達にも重力があるが、人間一人じゃちっぽけなもんさ」
 「だが……この町を、この町に住んでいるスタンド使い全てを『星に見立てて周囲を回ってみたらどうだ?』」
 「本来なら遠くの運命が、俺達の重力に引っかかるかもしれねぇ……そのままここに来るコースに入るかもしれねぇ」

 「丁度、大気圏で燃え尽きずに突入する隕石みてーにな……星をみあげるばかりじゃ掴めない物だってあらぁよ。」
 
 「だ か ら スタンドのパワー全開にして走り回ってんじゃねーか」
 「ついでにチンピラ共がビビッてこの辺り静かになるしなァ!安心安眠!カッハハハーッ!」

鋼の骸骨が笑い声をあげ
漏れ出すそれは本物の炎として、今が実に愉快だと言うかのように燃え上がる。

 「あ?……そっちも解ってるよ『切り裂き魔』だろ? ……そっちはほぼ収穫がねえ、既に倒されたって話も聞いたが……」
 「それじゃ犯人が違う……勘だがな ずっと追い続けて未だに尻尾がつかめない だいぶ用意周到なのか、天性の勘なのか。」

 「――それよりオトモダチ、お前アレだよ、ガッコーの『ウェーブ』はどうすんだ?仕込み終わったんだろ?」
 「『人が争うには理由は要らぬ、ただ線を一本引けばいい』よく言ったもんだぜぇ……?」

 ズッ
            …………
 
 (――ふん?咄嗟にケータイ仕舞っちまったが……気のせいか?誰か近づいてんのか?)

575斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/04/15(水) 23:46:28
>>574

  「――っていう夢を見たんだけど、どう思う『スリープ・トゥギャザー』。」

 ナーオ(何言ってんだこいつ)

 「やはり問題あるだろうか?ちょっとあの理科の講師を後押しして、他者を排斥しながら成長するファシズム体制を作り上げ」
 「学園に不和の種をまいて其処のスタンド使いに試練与えて成長させようという試みなんだけど。」

 マーオ(え、何で出来ると思ってるの?バレるよ?)

 「だってPTAの書類にOBの親だけに通達する様に一部書き換えたり、寮生と通学生というだけでもいじめが起こるし」
 「気弱で授業に集中させる事の出来ない教師が試行錯誤して、勝手にそれに扇動された生徒たちがファシズムを広げる分には…」
 「――誰も僕が起点だなんて、思わないだろ?」

 「スタンド能力なんざなにひとつ使わない、ただ背中を押すだけで、かつて現実に引き起こされた事件を再現できる。」
 「そしていじめや排斥の対象になる子が、『スタンド使い』ならなお良い、ってか、そう誘導するし それが『ウェーブ』なんだ。」

 「『信頼』がいい、『まさかそんな、あの人が』そう言わせながら信頼はヒトの眼を曇らせる。」
 「『信頼』は『犯罪』の隠れ蓑に素晴らしい道具なのさ。」

 「……その誘導の為の証拠品がまさかゴミごと跡形無く消されると思ってなかったけどね、あんな子いたんだなー。」 コワーイ

  ムキムキ  
      モムモム

 「ところで、こたつでみかん食べてると、みかんの白い筋とか気にならない?どう思う?」

 ナーオ(近づけないでね下僕。その匂い嫌いだから。)

576花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/05/05(火) 14:22:54

閉鎖された廃工場に人影があった。
全身を『レザーファッション』で固めた『赤毛』の男だ。
積み上げられたガラクタを椅子代わりにして、男が腰を下ろす。
男の右手には『拳銃』が握られていた。
回転式拳銃――『リボルバー』。

             カラララララララララララァァァァァァァァァァ――――ッ

『シリンダー』が勢い良く回る音が、無人の廃墟に響く。
徐々に回転は弱まっていき、やがてシリンダーが停止した。
それを見届けてから、おもむろに男が右腕を持ち上げる。

  ガァァァァァァァァァァ――――――ンッ!!

           ――――ド サ ッ

引き金が引かれると同時に、銃口から飛び出した『弾丸』が、
男の側頭部に命中した。
大きく傾いた男の体が、スローモーションのように、
ゆっくりと後ろ向きに倒れていく。
そのまま地面に倒れ込んだ男は、ピクリとも動かない。

577花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/05/11(月) 20:14:58
>>576

「――――ハハッ」

「ハハハッ、いつもながらブッ飛んじまうぜ。
 コレだから『コイツ』はやめられねェな」

「最高に『スウィート』だ」

         ム ク ッ

『死の淵』から帰還し、何事もなかったかのように起き上がる。
そして、自らの精神の象徴である『拳銃』を見下ろした。
『スウィート・ダーウィン』――『ロシアンルーレット』のスタンド。
回転するシリンダーに装填されているのは、
『偽りの死』をもたらす五発の『偽死弾』と、
『死』をもたらす一発の『実弾』だ。
ついさっき、自分の頭を打ち抜いたのは、
当然『偽死弾』だった。

「しかし、何だなァ――」

「この頭に『実弾』ブチ込んだら、
 もっとスカッとするのかもしれねェよな?」

時々、そういう誘惑に駆られる事がある。
だが、その度に踏み止まっていた。
何故なら、死んだら二度と『スリル』を味わえなくなるからだ。

           ザッ

「危うく、もうちょいで試しちまう所だった」

「あぶねえあぶねえ」

               ――――ザッ ザッ ザッ

578美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/05/11(月) 22:14:06

         〜〜〜♪
   p i

「はいっ、『お電話』ありがとうございます!
 『Electric Canary Garden』――――
 パーソナリティーの『美作くるみ』ですっ!」

『番組』の収録中、いつものように、
『リスナーから掛かってきた電話』を受け取った。
番組側で『トークテーマ』を用意している場合もあるが、
より気軽に話せる『雑談』的なフリーメッセージも、
随時受け付けている。
さて――今日は、どんな話を聞かせてもらえるのだろうか?

579美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/05/19(火) 19:20:15
>>578

「――――そういうのって、スゴく素敵な事だと思いますねえ。
 部活動に打ち込むっていうのは、
 学生の間しか出来ない訳ですから」

「『シルク』さんの目標を、
 私くるみも全力で応援させて頂きますね!
 今日は、お電話ありがとうございましたっ!」

「次のコーナーに入る前に、ここで一曲。
 本日のナンバーは――――」

580今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/25(月) 01:54:17

アーケード街に来てるんだ。
家具を買いに来たから……じゃなくって。

「……」

           トコッ   トコッ

『カメラ』を、買いに来たんだよね。
写真たてなんか、持ってしまったから。
スマホの写真じゃ、もてあましそうで。

そういう専門道具って、ここにあるって聞いたんだ。だから歩いてる。

581鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/26(火) 00:43:55
>>580

『骨董品屋』の前にて、竹刀袋を肩にかけた学生服姿の少年が佇んでいた。
顎に手を当て、ショーウィンドウを眺めている。
ふと何かを思い立って辺りを見回すと、そこで見知った女性の姿を見つけた。

「おーい」「こんにちは、今泉さん」

声をかけながら、近付いていく。

582今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/26(火) 01:16:15
>>581

「あっ」「鉄センパ〜イ」
  
        トトトッ

先輩だ。
こっちからも、近付いた。
けっこう自然な笑顔で、だと思う。

「学校の外で会うの、珍しいですねっ」
「何かお店見てたんです?」「当てていいですか?」

「うーん」
「剣道道具! って推理はフツーすぎますかね。あはは」

実際剣道道具ってどこで売ってるんだろうね。
この『専門店』街なら、売ってそうかなって思ったんだ。

583鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/26(火) 01:33:47
>>582

>「剣道道具! って推理はフツーすぎますかね。あはは」

「はは、惜しいな」
「確かにこの『専門店』街には武道具屋があって、スポーツ用品店にはない品もあるんだ」

今泉さんの笑顔を見て、いつものように安心し、少し目線を逸らす。
何か少し違和感があったような気もするが、まあ気のせいだろう。

「ただ今日は別の用事でな」
「…いや、用事というほど大したものではないか。そこに並んでいる『刀剣類』を見ていたんだ」

「今泉さんは、そうだな…専門店、化粧品とか、美容の品だろうか?」

女の子の買い物イコール、そういうイメージが勝手にある。
自分の女性の知識などあまりに少ないので、貧困な想像だが。

584今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/26(火) 01:57:53
>>583

いつも通り目線を逸らす先輩に、私は笑う。

「なるほどっ、刀ですか!」
「お侍さんですもんねえ、鉄センパイは」

刀。ここにはそんなのも売ってるんだ。
美術品ってやつなのかな。聞いたことはあるよ。

「でも、そういうのってお高いんでしょっ?」
「前に友達が、調べてびっくりしてました」
「何万円もするんだ〜って」

剣道やってるの、剣が好きだからなのかな。
やっぱりサムライに、憧れたりするのかな。

「コスメ!」「あは、センパイもハズレです!」
「そういうのは私、ドラッグストアで買ってますね〜」
「あとはちょっと高いけど、モールの百貨店とか」

「そんなにお化粧はしない方ですけどねっ」

全くしないわけじゃないけどね。
フツーにしかしないってこと。

「今日はですねえ」「カメラを探してるんですっ」
「ですけど、お店を探すのに迷ってまして〜」

「鉄センパイは、この辺ってよく来るんです?」
「さっきの言い方的に」「どんなお店があるか、詳しいんですかっ?」

585鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/26(火) 02:17:36
>>584

「うむ、その通りである。武士たるもの、やはり己が刀には憧れを抱くものよ」

仰々しい言い方をしつつ、自分の胸を拳で軽く叩く。
まぁ実際、自分がこのスタンド、『シヴァルリー』に目覚める前から刀剣類には興味があったのだ。
そもそも、刀剣に興味がない男などいるだろうか?いや、いない(反語)。

「まぁ、気軽に手が出せる金額じゃあないな…」
「オレの『スタンド』、『シヴァルリー』は周囲に刃物があるほど戦闘力が上がる」
「だから、手元に置いておきたい気持ちもあったが…まぁどちらにせよ、持ち歩いていたら捕まるしな」

そう言って小さく笑う。
まぁ仮に警察に見つかったとしても、能力を使って切れ味を落とし、演劇に使う模造刀ですと言い張る事もできなくもない。
とはいえ、あまり後ろめたいことはしたくはない。

「ふむ、普通はそういう場所で化粧品を買うんだな…」
「しかし、『カメラ』は予想外だったな。最近はスマホで写真を撮る機会も多いから」

勉強になった。いつ活きる機会が来るのかは知らない。

「ああ、大体ならどこにどういうものがあるか分かるぞ」「それなら、ひとまず歩こうか」
「しかし『カメラ』はどういった種類のを探しているんだ?」

歩き出しながら、今泉さんに訊ねる。

586今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/26(火) 02:40:19
>>585

「あはは、やっぱりそういうものなんですねっ!」

その友達は、剣道部じゃないけどね。
侍のキャラクターが好きなんだって。
いや侍のキャラじゃないのかな、刀のキャラ?

「へえ〜っ。スタンドも『侍』なんですねえ」
「それとも騎士?」「かっこよさそうです」

「『シヴァルリー』……」
「『銀』とかそういう感じの意味なんですかね?」

戦闘力、って言った。
鉄先輩は、なんで『戦闘力』が欲しいんだろう。
ユメミンみたいに、『戦う』事があるから?

「……あ」

あ。そういえば。スタンドとユメミンで思い出した。
鉄先輩がスタンド使いだって、教えちゃったことを。
でも、これって……謝った方が、いいのかな。
だってユメミンがスタンド使いなの先輩は知らないよね?
ユメミンなら、教えていいって言いそうだけど。

ちょっと一旦置いとこう。

「あ、えーと!」
「そうですね〜。ドラッグストアで買う子多いですよ」
「私の周りは、ってだけですけどっ」
「100均で揃えてる子とかもいますしね」

もっとオシャレなグループの子達は違うのかもね。

「それでですね」「カメラなんですけど〜」
「写真たてが一つ空いてるので」「それに入れる写真が撮りたいんですよねっ」
「『スマホ』の写真をプリントして入れても、なんだか収まり悪いですし」

「まあ、フツーのインスタントカメラとかでもいいんですけど」
「それでせっかくなら、かわいい感じのカメラがいいかな〜とか」

「たとえば……こういうのとか?」

スマホを出して、ちょっと立ち止まってネットのページを見せる。
ttps://www.expansys.jp/sjcam-funcam-2-lcd-1080p-kids-camera-white-318532/

「『カメラ かわいい』って調べたら出てきたんですけど」

587鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/26(火) 03:05:13
>>586

「見た目は『騎士』に近いかな」
「『シヴァルリー』・・・・・そのまま直訳するなら『騎士道』らしいが、
 『音仙』さんは、他を守り武を担うもの・・・とも言っていた」

そう言って、『シヴァルリー』を発現する。
自分はその名を背負うにはまだあまりに未熟だが、それでも精進するだけだ。
一応他の『スタンド使い』の目も気になるので、すぐに解除しておく。

「なんと、『百均』にも化粧品があるのか…!」
「色々なものが安く揃うのは知っていたが、化粧品すらも取り扱っているとは」
「ふーむ、恐るべしだな」

腕を組んで頷く。
当然自分も『百均』を利用したことはあるが、用のある場所以外はほとんど見ていなかった。
恐らくその分質もそれなりなのだろうが、あまり拘りのない女性には有用なのだろう。
しかし、これでかなり女性の知識に詳しくなった気がする。帰ったら妹に自慢しよう。

「『写真立て』か、なるほどな」

頷きながら、ちょっと距離を置きつつ今泉さんのスマホの画面を見る。
確かにかわいいデザインだ。角張過ぎない、小さくて丸いフォルムが優しい雰囲気を受ける。
彼女らしいセレクトとも言えるだろう。

「やはり一眼レフとかではない、普通のデジカメだな」「承知した」

頷き、とある『家電量販店』を目指す。
あそこの店は、フロアの大部分をカメラが占めている階がある。恐らくそこなら見つかるだろう。

「ところで、どんな写真を入れるかは決めてあるのか?」

588今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/27(水) 00:40:41
>>587

「あっほんとだ、完全に騎士さんですねっ!」
「先生とは全然違う感じ」「当たり前ですけども」

『シヴァルリー』を眺める。
そうだ、『銀』はシルバーだ。関係ない。
シヴァルリー……『騎士道』、かあ。

「『武を担う』」「『他を守る』」
「戦えない人のために戦う、って事かな」
「それって、かっこいいですね!」

鉄先輩の『こころ』が、そうって事なのかな。
だとしたら、それってやっぱり、かっこいいと思う。

「百均、なんでもありますよね〜っ」
「マスキングテープも、色んな種類が置いてますし」
「たまに行ったらつい色々買っちゃいます」
「この前も、小さいお皿とか何枚も」

話しながら、先輩に着いて歩き始める。

「一眼レフ!って言葉だけは聞いたことありますねっ」
「ほんとフツーに写真が撮れたら、それでよくて」
「特別な機能とかは、考えてないんですよね」
「フツーが一番です!」

一枚撮って終わりじゃ、無いとは思うけどね。
難しい機能とかよりは使いやすいのがいいと思う。

「どんな……」「うーん」
「フツーに、友達と一緒に撮った写真がいいかな〜とか」
「なんとなく」「そんな感じで……」

「具体的にこれって決めてるとかは、ないですね〜」

589鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/27(水) 00:56:50
>>588

>「戦えない人のために戦う、って事かな」
「・・・・・」

今泉さんの言葉に、ゆっくりと頷く。

「自ら争いを引き起こした人間が、それで傷付くのは仕方ないと思っている」
「けれど、そんな事を考えたようなこともない人間が。あるいは戦う力を持たない人間が。
 一方的な力の犠牲になって、その夢や命を失ってしまうのは、あまりに理不尽だ」
「だから、オレはそういった人達を守り、戦いたい」

「…人に言うのは初めてだけど、オレは今『警察官』になろうと思っていてね」
「そういった生き方が、自分には合っている気がするんだ」

そう言って、隣の少女に笑いかける。目を合わせられて1、2秒だが。

「確かに、あると便利だな…と思うものをつい買ってしまうな。所詮百円…というのも買う理由になってしまう」
「しかし、『マスキングテープ』…?今泉さんは、『DIY』とかやるのか?」

ふと疑問に思って訊ねてみる。最近流行しているらしいが、今泉さんも工作をするのだろうか。

「ああ、友人と共にとった写真というのもかけがえの無いものだな」
「オレも部活の仲間たちと一緒に撮った写真は、大切なフォルダに入れてある」
「後は、家族と撮った写真も入ってるな。そういうのも良いんじゃあないか?」

などと喋っている間に到着した。
かなり大きな五階建ての『家電量販店』だ。そのまま中に入っていく。

「ここの三階は、半分以上カメラに関連するものが置いてあるんだ」
「恐らく、キミが探しているようなのもあると思う」

590鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/27(水) 00:57:19
>>588

591今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/27(水) 01:50:06
>>589

「………………」

「『夢』があって」「それがみんなのためになるもので」
「フツーに憧れます、そういうの」

「鉄センパイは、すごく立派ですっ」

目を合わせてくれた先輩をまっすぐ見て、そう言った。

私には夢が無い。
『今』を考えるのでせいいっぱいだから。
そうじゃなくても、無いかもしれないけど。

「あ、えーと」「ディーワイアイ?っていうか」
「私『マスキングテープ』を集めるのが好きでして〜」
「かわいくないですか? 『マスキングテープ』」
「お家にたくさん、置いてあります」

買ったのを全部使ってるわけじゃないよね。

「ものをデコったりとか〜」
「まあフツーに、テープ代わりにも使いますしね」
「良いですよ、マスキングテープ!」

スマホの裏面を見せる。
無地のカバーに、テープを貼って飾っている。
マスキングテープが好きなんだ。私は。

そうこうしていると、それっぽいお店に来た。というか電気屋さんだ。
そっか、カメラってフツーに電化製品だった。

「……」「そうですねっ」
「そういう写真も、あれば、いいかもしれませんね」

私は笑う。それがフツーだ。

「いや〜、ご案内ありがとうございますっ鉄センパイ!」
「一人で探してたら、ずっとさまよってるところでした」

                     ペコ

鉄先輩は、凄くいいヒトだ。人にやさしいし、もっと広い、世界にも優しい。

「それで」「あのー」「じつは、私センパイに謝る事がありまして……」

だから切り出す事にした。黙ってるのは、なんだか、不義理だと思うから。
ユメミンにもちゃんと後で謝っとかないと。そうするのが、フツーだと思うから。

592鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/27(水) 21:47:14
>>591

チラリと目を合わせた今泉さんから、真っ直ぐな視線を返されて、思わず口に出る。

「・・・まぁ、こうも大層な事を口にしていても、オレもまだまだ未熟なんだけどな」
「以前、共に戦った仲間の人に言われたよ。オレには『暴力性』があると」
「確かにオレは、やると決めたら冷静さを失って、一線を超えかねない所があるみたいなんだ」
「人を守るという大義名分で、敵を必要以上に傷付けてしまわないよう、気をつけなきゃな・・・」

これは今後の課題だ。
初めて『シヴァルリー』を発現した時は、その能力の危険性に少し恐れを抱いたものだが。
いざ実戦となると、自分は躊躇なく刃を振りかざしたていた。自らの力に溺れないようにしなければ。
そして、今泉さんに差し出されたスマホを見た。

「・・・・・・・・・・ふむ」
「なるほど、これが『オシャレ』か」

『マスキングテープ』をスマホに貼っている彼女を見て頷く。この『カワイイ』という感覚は難しいが、
本来作業などに使うマスキングテープをスマホに貼るのが、こう、なんか、『ギャップ』があっていいのかもしれない。
また一つ、女性の心理に詳しくなってしまった。今日で相当レベル(何のかはよく分からない)が上がってしまったかもしれない。

「いや、この程度などお安い御用だ」

頭を下げる今泉さんに対し、こちらも軽く会釈をする。礼儀正しい子だ。
友人に対してこれくらい、当たり前だと自分は思っている。そしてカメラコーナーへ歩いていく。
が、その後に切り出されたのは予想外の言葉だ。そんな彼女が、自分に謝罪しなければならない事などあるのだろうか?

「ん?一体、何だろうか」

593今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/27(水) 23:15:51
>>592

「『暴力性』……ですかっ?」「へー……」
「先輩にぜんぜんそういうイメージは無いですけど」「うーん」
「普段怒らない人だから怒ると怖い、みたいなことなのかな」

「難しいですねっ。『こころ』の問題って」

鉄先輩はむしろ『優しい』印象だ。
気弱とか、暗いとかじゃないけど、激しい感じはしない。
でも、『戦う』ってなると、そうなっちゃうのかな。
先輩にも難しい話なら、私には深い所は分からない。

「あは、おしゃれですよ〜」
「普通のシールとか貼ってる子もいますけどね」
「元からかわいいデザインのケースも多いですけど」

こういうのが『かわいい』事は分かるけどね。
人によって、違うらしいけど、近い所はあると思うんだ。

・・・やっぱり先輩はやさしくて、良い人だと思う。

「じつは」「私の友達にスタンド使いの子がいてですね」
「…………」「その子に、お話の流れで」
「先輩がスタンド使いなの、勝手に教えちゃいまして」

「ごめんなさいっ、もし教えるなら、先輩に確認してからにすべきでしたよね」

594鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/28(木) 00:11:29
>>593

「ああ、難しいな」「今泉さんには、そういう『こころ』の問題はないのか?」

人当たりが良くて友人も多い今泉さんに、そういうのはあまり無縁かもしれない。
だが、一応訊ねておきたい。
もっとも有ったとしても、悩みに対して解決策をすぱっと言えないかもしれないが。

「…ああ、そういう事か。構わない」
「今泉さんが話していいと思ったのなら、別に隠す必要はないよ」
「ちなみにその子は、なんていう名前なんだ?」

会ったことのない『スタンド使い』か。同い年なのだろうか。今泉さんの友人なら、やはり女性なのか。
…挨拶しておくべきだろうか。少し気が重い。

「お、この『カメラ』じゃあないか?」

彼女にスマホで見せてもらったものと、同じものを手に取って見る。

595今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/28(木) 01:07:19
>>594

「あは」「私は、ごくごく、フツーですよ〜」

私は笑う。

  ┌─────────────────┐
  │   今泉 未来の『笑み』は『ぎこちない』  │ 
  └─────────────────┘

「それで、えーと」「その」
「その子って言うのが、センパイとも知り合いで」
 
             チラ

スマホを見る。

「……明日美ちゃん」
「『夢見ヶ崎 明日美』ちゃん、ってわかります?」

ユメミンは『誰にも言うな』とは言ってない。
鉄先輩とはフツーに仲良いみたいだし、言っていい、とは思う。

「あの子と話してる時に、つい……ほんと、ごめんなさい」
「あ」「ただ、ユメミン……」「明日美ちゃんは私、『話していい相手』だとは思います!」
「言っちゃったのは、間違えてですけど」「言ったらまずい相手だとかは、無いです」

「そこは、ご安心くださいっ」

ただ、あとでちゃんと連絡はしておこう。
鉄先輩が『知ってる』ってことは伝えとかないと。

ユメミンが『話していい』と思える相手だってことも、ちゃんと伝えておく。

「……あっ! ほんとだ」「鉄センパイ、これですこれ」「写真通りっ」

それから、鉄先輩の持ったカメラを覗き込む。『白』は私の『好きな色』だ。

596鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/28(木) 01:24:20
>>595

「─────」

先程も垣間見た、彼女にしては少しぎこちない笑み。思わず今泉さんの瞳をじっと見てしまう。
アレは見間違いや気のせいではなかったのだ。
だが、ここで踏み込むことはできない。自分は今泉さんの友人だと思っているが、
だからと言って何でも話してくれるとは思わない。年上で、異性でもある。

「…すまない。詮索が過ぎた」
「オレは確実にキミの力になれるとは言えない。だが、力になりたいと思っている」
「それだけ、言わせてくれ」

彼女と『食堂』で会った時に、とある質問に、ほんの少し変な反応を見せた。
それに関することなら、あまりに繊細な事案だ。手元のカメラに、改めて視線を戻した。

「知り合い?・・・・・『夢見ヶ崎 明日美』・・・」「ああ、『アリス』か」

脳裏に、あの華やかで元気な少女が思い浮かんだ。

「・・・・・・・・・・いや、何となくそんな気はしていた。彼女なら驚かないな」
「しかし、やはりというか…今となっては都合が良いか…ただ、心配でもあるな…」

うーん、と顎に手を当てて唸る。
彼女はオレの行動に協力してくれている。だから、『スタンド使い』である方が
万が一危険に巻き込まれた時でも安心かもしれない。ただ、力があるからこそ危険に飛び込んでしまう可能性もある。
『生兵法は怪我の元』というヤツだ。

「ああいや、大丈夫だ。オレも彼女のことは信頼…いや、信用している」
「何も問題はない、むしろ遅かれ早かれ互いに気付いていたかもしれない」

カメラを覗き込む今泉さんに、そっとそれを手渡す。
今泉さんの方に視線を向けなければ、この程度は容易いものだ。
それに、何回か会えば少しずつ慣れてくるというもの。

「どうぞ。写真も試し撮りできるみたいだな」

597今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/28(木) 01:55:35
>>596

「なにも」「なにもないですよ、鉄センパイ」
「私は『フツー』、それだけなんですよ」
「信じてください」「本当に、なにもないんです」

私は笑う。
・・・笑う。

┌───────┐
│ 自然な笑いだ。 │
└───────┘

「でも、そうですねっ」
「何かフツーじゃない事が起きたら〜」
「その時は、センパイにも頼らせてくださいっ」

そうすることが私にとって一番いい。
フツーじゃないなんてことは無い。

「そう、『アリス』みたいな恰好の」「あの明日美ちゃん」

都合?心配?そのあたりはよくわからない。
鉄先輩とユメミンの間でも、何かがあるんだろうな。

「ああ、ならよかったです」「良くはないけども」
「でも気を付けますね」
「ヒミツにしてることとか言っちゃわないように」

今回は偶然、ユメミンを鉄先輩が信用してただけ。
あんまり仲良くない組み合わせとかもあってもおかしくない。
フツーにを気を付けよう、と思った。

「試しどり! いいですね」「ちょっと貸してください!」
「ボタン、ここか〜」「レンズ伸びたりするかな?」

先輩から受け取ったカメラを、ひっくり返してみる。
レンズが自分側を向く。カメラってここが伸びるんだよね。

                       スッ
           『パシャッ』

「あっ」
「撮れちゃいました」「あは、ツーショットですよ先輩」

画面を見る。ちょうど先輩も端っこに入っちゃった。
ツーショットとして見るには、ちょっとアンバランスな感じだ。

598鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/28(木) 02:13:10
>>597

「ああ、よろしく頼むよ」「オレにとって、『将来の夢』の練習にもなるからな」

そう言って、この話題を終わらせる。
少なくとも今は、これが互いにとって一番望ましい形だろう。
ここから先は、『アリス』にも少し話を聞いてみたい。それは今度彼女に出会ってからだ。

「まぁ、アリスに対して特に隠すべき事もないが…」
「いや、もし彼女が『スタンド使い』でなかったら、『スタンド』の事は隠したかったな」
「性格的に、そんな面白そうなモノを耳にしたら、興味津々で突っ込んでいきそうじゃないか?」

今泉さんに同意を求めることで、話題を切り替える。
アリスに対して秘密にしていたわけではないが、面白い出来事を探している彼女に
『スタンド』のことを話さなかったのは、色々と危険かもしれないと思ったからだ。
好奇心を抱いたあの子を止める術を、まだ自分は知らない。


>           『パシャッ』

「…む。ツーショットは少し恥ずかしいな」
「いや、まぁ、そもそも家族以外の女性とのツーショット、人生初めてなんだが…」

カメラの方を見ていたため、意図せずカメラ目線になってしまっていた。
まぁ端っことはいえ、女性とツーショットの写真を撮ったのだ。家族と友人に自慢しよう。自分の手元にはないが。

599今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/28(木) 02:43:40
>>598

「あはは、そうですねっ」「鉄センパイの夢、応援します」
「って、もちろん何も起きないのが一番ですけども」

不思議でも危なくないなら、いいんだけどね。
あの『白い町』の件みたいに。

「そうですね〜、ユメミンって何にでもチャレンジしますし」
「危ないこととかにも」「飛び込んで行っちゃいますし」
「ほんと、『アリス』みたいに」
「不思議の世界に入って行っちゃう」

私なら喋る兎を追いかけるかは分からない。
追いかけても、トンネルに入るかは分からない。

「でも、そこが良い所だとも思うんですよね」

私はユメミンが、ちゃんと戻って来れる先になれたらいい。
『フツーじゃないこと』を『フツーにできる』のがユメミンなんだ。
『不思議の国のアリス』は、『フツーに帰る』までが物語。

「あはっ。そうだったんですか!」
「ごめんなさいセンパイ、記念すべき初ツーショットを〜」
「事故ですし……ノーカウントにしてくださっても、良いですよ」

画面を眺めてたけど、それをやめてカメラを下ろす。

「どっちにしても、このカメラを持って帰るわけじゃないですしね〜」
「買ったら、今度はもっとちゃんとしたの撮りますかっ?」「あはは」

そして買うための、見本じゃない商品を手に取る。よし、これを買おう。

600鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/28(木) 03:04:18
>>599

「…そうだな。彼女は色々な物事に目を輝かせて、楽しんでいる。
 その姿を見ていると、こちらも何だか幸せな気持ちになってくる」
「だから、その結末までも楽しいものじゃなくちゃあな。
 『ハートの女王』が現れるなら、オレや今泉さんも協力して、追い返してやろう」

アリスの良いところ、という今泉さんに同意する。
三人寄れば文殊の知恵と言うが、この場合は三人もの『スタンド使い』だ。
仮に彼女がどんなトラブルに巻き込まれようと、無事に日常へと帰ってこれるはずだ。

「いや、折角だし自慢しよう」「妹も、これでオレを見る目が変わってくるかもしれない」

己の女性が苦手である点に関して、妹はしっかりと理解している。
だが、学校での友人とツーショット写真を撮ったとなればいつものように馬鹿にはできまい。
ましてや今日は、『百均』で化粧品が売っているという知見も得た。もはや昨日までの自分ではない。

「ああ、そうだな。どうせならアリスも誘って、三人で撮るのもいいかもしれない」
「そうしたら、後でオレにもデータを送ってくれ」

その頃には、問題なく女性と写真を撮れるくらいには強くなっているはずだ。…根拠はないが。
そして今泉さんがお会計を終わらせるのを見届ける。

601今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/28(木) 03:32:40
>>600

「はいっ。そうしましょう! その時は私頑張ります」
「何も危ない事がないとは、言えないですしね」

ユメミンは現に危険な目にもあってる。
いつか頼られることがあれば、その時は。
それは友達としてフツーのことだ。

「あは」「良いですね、妹さんを見返してやりましょう」
「私、そっちも協力していいですよ!」

鉄先輩の妹さん。どんな子なんだろう。
実は直接話したことはないんだよね。

「ユメミンと私とスリーショットなら、もっと見返せそうですね」
「ぜひ撮りましょう」「このカメラで!」
「写真立てに飾る写真にも、いいかもしれません」

いつになるかは分からないけど、きっと楽しいと思う。
だから私はカメラをレジに持っていくんだ。

                クルッ

「鉄先輩、ほんと今日は着いて来てくれてありがとうございましたっ」

振り返ってお礼を言って、それからお会計に入った。
明日からいろんな写真を撮ってみよう。きっとそれも、『楽しい』んだと思う。

602鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/28(木) 03:36:03
>>601

603ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/29(金) 01:14:00

    ザザァァァ……

本格的に海水浴が始まる前の初夏の海。
海岸から少し離れた海面に『何か』が浮いている。
毛むくじゃらの塊のようなものだ。

          プ カ ァ

それは一頭の『ラッコ』だった。
『海獣』――海に適応した『水棲哺乳類』。
そして、霊長類以外の哺乳類の中で、
唯一『道具』を用いる生物としても知られている。

                   ゴソ

脇の『ポケット』から、『石』を取り出す。
ラッコは『お気に入りの石』を持っており、
ずっと同じ石を使い続ける習性がある。
お腹の上に石を乗せたラッコは、
持っていた『貝』を振り上げた。

         ガ ツ ン ッ !

勢いよく貝を石に叩き付けると、
割れた所から器用に『中身』を取り出す。
最近この町で、『野生のラッコ』の『目撃例』が、
チラホラあるらしい。
しかし、そんな事実を『彼』は知らない――。

604氷山『エド・サンズ』:2020/05/29(金) 19:40:37
>>603

  ヒュンッ・・・

    チャプン!  チャプン! チャプン! チャポン・・・・

『ラッコ』・・・が浮かぶ海面の近く
海辺に座りながら、一人の少女が石を投げている
石は何度かの跳躍を行った後に水面に沈む・・・・・『石切り』である

『オイオイ・・・イイ加減ニ元気出ソウゼェ〜〜〜あきはちゃんヨォォ』
「はぁ・・・・そんなに簡単にはいきませんよ、『さんずさん』
結局私は・・・あなたをちゃんと活躍させられなかったんですから
『さんずさん』の力をちゃんと発揮出来ていれば、もっと面白いものが見れたのに・・・」
                ヴィジョン
よく見ると少女の隣には半透明の『 像 』が佇んでいる
―――『スタンド』である

『ハァァァ〜〜〜〜コリャカナリ重症ダナ
・・・・・・・オッ? オイ見テミロヨ アリャア何ダ? 
石ヲ持ッタ変ナ「かわうそ」ガイルゼ?』

「石を持った『かわうそ』?
はは・・・それじゃあまるで『ラッコ』じゃないですか・・・・」


      ジ―――――――・・・

「――――『ラッコ』だ
すごい!あれラッコですよ!」

    ウキウキ
             ウキウキ

突然海面に見えたラッコの姿にうきうきとしながら近づく
はしゃいでいるのだ

605ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/29(金) 20:58:25
>>604

そういえば、最近この辺りで、
『ラッコを見た』という噂があるとかなんとか。
普通『ラッコ』は何処にでもいる生き物ではないが、
目の前にいるのは『ラッコ』にしか見えない。
少なくとも、十人中十人が『ラッコ』と答えるくらいには。

       ムシャッ
              ムシャァッ

『彼』にとって、この辺りが住みやすかったのは意外だった。
食事には困らないし、強力な敵もいない。
波も穏やかだ。

                 …………ピクッ

貝を平らげたラッコは、つぶらな瞳で周りを見渡した。
急に『人の声』が聞こえてきたからだ。
それも『二人分』。

    グルッ
                ――――ザボンッ

『二人』の姿を認めたラッコが、不意に体勢を変えた。
水の中に自ら頭を突っ込み、そのまま『潜水』していく。
瞬く間に、その姿が見えなくなる。

          ザバァッ

数秒後、ラッコが再び姿を現した。
『人間とスタンド』の2mほど近くに。
見かけによらず、意外と肝が据わっているのかもしれない。
それとも、単に警戒心が薄いだけか。
とにかくラッコは、
『あきはちゃん』と『さんずさん』に興味を抱いたようだ。

606氷山『エド・サンズ』:2020/05/29(金) 21:17:38
>>605
>    グルッ
>               ――――ザボンッ

「あっ!潜っていきました! 驚かせちゃったのかも」
『ア〜〜・・・・惜シイナ逃ゲラレタカ?』

>          ザバァッ

「と思ったらこっち来ましたよ!凄い人懐っこい!」

一瞬、波打ち際近くまで来たラッコに驚くが
次の瞬間には喜色をあらわにする 動物は好きだからである

「ラッコといえば近年では絶滅危惧種に指定されるくらい数を減らした希少動物ですよ
ペットとして飼うなんてありえないし、水族館にいた子が逃げ出したなんて話も聞かないし
北の方から流れ着いたんですかね」

『・・・・・・詳シイナ』

もう少し近づいたら触れそうな距離だ
靴と靴下を脱いでちょっとずつ海に入っていく

「冷たっ」

607ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/29(金) 21:48:24
>>606

通常、ラッコは冷たい海で暮らしているにも関わらず、
他の海獣と比べて皮下脂肪が少ない。
その秘密は『体毛の密度』にある。
毛の間に空気を保持する機能が高く、
これによって『保温』と『浮力』を維持しているのだ。
一説によると、『ラッコの毛皮』は、
『ミンク』よりも上質だとされている。
そのせいで『狩猟対象』となった事が、
世界的に数を減らした一因でもあった。

         ジィッ…………

だが、彼にとっては関係ない事だ。
今まで人間と近くで遭遇した事がなかった彼にとって、
『あきはちゃん』は非常に珍しい存在だった。
もちろん『ハッピー・スタッフ』以外のスタンドも見た事はない。

         ミャー
                 ミャー

ラッコが鳴いた。
『声』を掛ける事で、
どういう相手か探ろうとしているのかもしれない。
そして、その鳴き声は『猫』に似ていた。
姿を見ていなければ、猫だと思ったかもしれない。
しかし、紛れもなく『ラッコ』だ。

             ミャー

徐々に近付いてくる『あきはちゃん』を見上げる。
逃げ出そうとする気配はない。
手を伸ばしたら触れそうだ。

608氷山『エド・サンズ』:2020/05/29(金) 21:59:45
>>607
「・・・・・ゴクリ」

手を伸ばせば届くところまで来てしまった
上質なラッコの毛皮はかつては高級品としてもてはやされた程だ
その触り心地・・・・如何程のものか

「で、でも、ラッコの毛皮は体温保持・浮力維持の点でも重要な存在で
かつて石油タンカー事故の際には毛が油で汚染されて凍死した子が何匹もいるとか!
そんな大切なものに面白半分で手を出すわけには!
人間社会と野生動物がうかつに関わると双方にとっても悪影響が出るとか言いますし!」

  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・

「あははは〜〜〜ラッコちゃんだ〜〜〜〜!」

数分の葛藤の後!
そこには理性とか野生動物への配慮とかそういうのをすべて頭からフッ飛ばした氷山の姿が!
ふわふわの毛皮に手を伸ばす!

609ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/29(金) 22:26:59
>>608

『あきはちゃん』の心には、真摯な葛藤があった。
種族の垣根を越えて、お互いを尊重しようとする精神は、
とても尊いものだ。
そんな考えを理解しているとは思えない表情で、
『あきはちゃん』を見上げるラッコ。

    ソッ…………

伸ばされた手が毛皮に触れた。
その瞬間、『高級絨毯』を撫でているような感覚が、
指先を通して伝わる。
『ミンク以上』と称された手触りは――――
まさしく『至高』のものだった。

           ミャー

ラッコにとって、毛皮を清潔に保つ事は『死活問題』。
ゆえに、入念な『グルーミング』は欠かせない。
とはいえ、それは自分の手で行う事であって、
こんな風に他人の手に触れられる機会は少なかった。
まだ『幼獣』だった頃は、
『母親』に『毛繕い』して貰っていたものだ。
昔の事を思い出して、
何となく『懐かしい』ような気持ちになってきた。

                  チラッ

そうこうしていると、ラッコの視線が、おもむろに動く。
その先には『さんずさん』がいた。
もしや、『見えている』のだろうか?

610氷山『エド・サンズ』:2020/05/29(金) 22:40:33
>>609

   ふわっ さぁ・・・

「あぁ!」

ラッコの毛皮には1平方cmあたり10万本以上の毛が含まれている
哺乳類の中でも破格の密度を誇るこの体毛は至高のふわっふわっ感を持つとともに
中心部では空気を蓄え、断熱効果を生む


  じわっ・・・・


ゆっくりと手を沈ませると、中心部から細かい空気の泡が滲み出る
それらはラッコの体温で程よく温められ、撫でる氷山の手から多幸感を伝わらせた!


>                  チラッ

『ン? ナア、あきは、サッキカラコイツ俺の事ヲ見テルミタイダガ・・・
「見えて」ルンジャネエカァ?コイツ』
「ん〜〜〜〜〜〜〜・・・? 何かいいましたぁ〜〜〜〜・・・?」

最高の毛皮の質感に目を細める氷山を横目に
さっ さっ と『エド・サンズ』はちらちらと左右に反復横跳びをする
ラッコの視線の方向が気になるのだ

611ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/29(金) 23:04:44
>>610

ラッコは『地球上で最も毛むくじゃらな生物』とされている。
その全身を覆うのは、二種類の体毛だ。
硬い『ガードヘアー』と柔らかい『アンダーファー』。
前者は身を守るために役立ち、
後者は体温維持や浮力維持において重要な役割を果たす。
そして――今は『あきはちゃん』に極上の手触りを与えている。

          チラッ チラッ

横跳びする『さんずさん』を目で追うラッコ。
『人型スタンド』だ。
それも『意思』を持っている。
『ハッピー・スタッフ』と同じように。
内心そのように思いながら、ラッコは触られ続けている。

            ゴソ

ふと、ラッコが再び『石』を取り出した。
ラッコの脇には『ポケット』があり、とても便利なのだ。
もう片方の手には、
一緒に『ポケット』に入れてあった『貝殻』が握られていた。

612氷山『エド・サンズ』:2020/05/29(金) 23:17:17
>>611
『ヤッパリダゼ・・・・サッキカラ俺の事ガ見エテルミテェダゼ
ソウイエバ、コノ前ノ「喧嘩場」ノ時モ動物のスタンド使いガイタ・・・
マサカ・・・・・コイツモ・・・・「スタンド使い」ナノカ!?』

「へぁ〜〜〜〜何か言いましたぁ〜〜〜?」

>            ゴソ

『!?』
『オイ!何ヲ取リ出ソウトシテヤガルンダァ―――ッ!?』

動物のスタンド使いと勘づいて警戒心を露わにする『エド・サンズ』
それと対照的に氷山はラッコの毛皮の手触り感に骨抜きにされている!

石を取り出そうとするラッコに思わず声をあげる『エド・サンズ』だったが――――

「もう!この子の前で大きな声を出さないでくださいよ!
ラッコの脇にはぷるぷるにたるんだ皮膚があって、間に物が入れられるんですよ!
それに『石』だってどうでもいいわけじゃないのに・・・・驚いて落としちゃったらどうするんですか!?」

『・・・・・スマン』

613ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/29(金) 23:39:33
>>612

ラッコにとって、『石』は『最重要アイテム』だ。
うっかり『お気に入りの石』をなくしたラッコは、
とても落ち込んで物凄く悲しい気分になってしまう。
そうならなかったのは幸運だった。

「――――?」

『あきはちゃん』と『さんずさん』を交互に見つめるラッコ。
少し驚いたようだが、
どちらかというと不思議そうな顔をしていた。
やがて、その手に持った『石』と『貝殻』を、
『拍子木』のように打ち合わせる。

       カツンッ 
               カツンッ

軽い『音』が響き、一瞬の静寂があった。
続いて、ラッコの後方に『大きな何か』が出現する。
ラッコの体と比べると、その全容は『かなり巨大』だ。

    ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…………

現れたのは一隻の『ミニボート』だった。
海であれば特に違和感もない代物。
しかし、それは普通のボートではなかった。
船内には『人型スタンド』が乗っている。
『ボートのスタンド』だ。

614氷山『エド・サンズ』:2020/05/29(金) 23:53:16
>>613
「はぁ〜〜〜 私、野生のラッコの食事風景初めて見ましたよ〜〜」
『ソ、ソウカ・・・ヨカッタジャネエカ・・・』

ラッコが手に持った石で貝を叩くあまりにも有名な1シーン
本物の食事風景を見て、氷山は幸福そうに目を細める

>    ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…………

『ナ・・・・コレハ・・・・・オイ、コイツ・・・・・「スタンド」ヲ出シヤガッタ!
オイ、お前! マサカあきはヲ攻撃スルタメニワザト近ヅケタンジャ・・・・!?
「何者」ダ、お前―――――――ッ!』

突然、出現したスタンドに再び警戒心を掻き立てられる『エド・サンズ』!
一方、氷山の方はラッコの食事風景を眺めるのに忙しく、『ボートのスタンド』は一瞥するだけだ!

   ブゥゥン・・・

いつの間にか『エド・サンズ』の手には
時代劇で見るような(もっともラッコは時代劇など見ないだろうが)『捕獲縄』が握られていた
何かを縛るわけではないが、両手に握ったまま『ボートのスタンド』を睨みつけている!

615ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/30(土) 00:12:45
>>614

『さんずさん』の対応は至極当然だろう。
『見知らぬラッコ』が『見知らぬスタンド』を出したのだ。
警戒するには十分すぎる光景と言っていい。

               ブォォォォォォォォォォ…………

          ブォォォォォォォォォォ…………

    ブォォォォォォォォォォ…………

しかし、『攻撃の兆し』は一向に見えてこない。
出現した『ボート』は、
本体であるラッコと近くにいる『あきはちゃん』の周りを、
ただグルグルと旋回し続けている。
乗っている『人型スタンド』は、
『さんずさん』の方には全く注意を払っておらず、
ラッコと『あきはちゃん』の触れ合いを見守っている。
その様子は、まるで『水族館の飼育係』か何かのようだ。
この瞬間――海辺は『ふれあい水族館』と化していた。

           ミャー

向こうが出していたから、『こちらも出してみた』。
ラッコとしては、それだけの考えに過ぎなかったらしい。
本体とは異なる自我を持つ『さんずさん』に、
『自分のスタンド』と似たものを感じたというのもある。

616氷山『エド・サンズ』:2020/05/30(土) 17:24:17
>>615
『オ、オウ!?来ルノカ!? 仕掛ケテクルカ、ココデ!』

息を巻いて『ボートのスタンド』を威嚇する『エド・サンズ』
怪しすぎるやつだ!

               ブォォォォォォォォォォ…………

          ブォォォォォォォォォォ…………

    ブォォォォォォォォォォ…………

しかし、予想とは異なり一向に近づいてくる様子がない
中心部では氷山とラッコのふれあいが続いている・・・・

『ドウイウ事ダ、テメェ!
黙ッテナイデ何トカ言ッタラドウナンダ!?』

相手が攻撃してこない以上、こちらも敵対するわけにはいかない
しかし、とてつもなく怪しい!
ひとまず誰何してみる事とした もっとも、普通はスタンドに話しかけたところで意味はないのだが・・・

617ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/30(土) 18:27:48
>>616

《『サンズサン』――――》

《モウスコシ オシズカニ オネガイシマス》

《ビックリ シテシマイマスカラ》

《――――『ラッコサン』ガ》

            ブォォォォォォォォォォ…………

『さんずさん』の怒鳴り声に対して、
『人型スタンド』が不意に反応を見せた。
一方、本体は『捕獲縄』に注目していた。
ラッコは『時代劇』を見た事はなかった。
そもそも『テレビ』を見た事がない。
さらに言うと、テレビという言葉が、
『何を意味するか』も知らなかった。

         ブォォォォォォォォォォ…………

《ミンナデ 『ラッコサン』ヲ ミマモリマショウ》

《モット チカクデ ゴランニナッテハ イカガデスカ?》

《『ラッコサン』ハ コワクナイデスヨ》

    ブォォォォォォォォォォ…………

『飼育員』さながらの丁寧な口調で、
『人型スタンド』が語り掛けてくる。
その話しぶりからは、『攻撃の意思』は感じられない。
ただ、片手に『銛』を携えていたが。

618氷山『エド・サンズ』:2020/05/30(土) 21:00:38
>>617
『何・・・ダ・・・・コイツ・・・・・喋ッタゼ・・・!?

 ・・・・
「俺ト同ジ」・・・・「意思を持ったスタンド」カ!?

オイ、あきは!コイツ、不気味ダゼ・・・・・!』

>《ミンナデ 『ラッコサン』ヲ ミマモリマショウ》
「そうです みんなで『ラッコさん』を見守りましょう」

>《モット チカクデ ゴランニナッテハ イカガデスカ?》
「『ラッコさん』の動きが愛くるしくて、近くで見るともっとかわいいですよ?」

>《『ラッコサン』ハ コワクナイデスヨ》
「『ラッコ』さんは 怖くないですよぉ・・」
「うふふふ・・・・あはははははは・・・・・」



       ゾ・・ゾォォ〜〜〜〜〜〜ッ!

『あきは・・・お前、ヤバイゼ!
マサカこの「ボートのスタンド」に頭ヲヤラレタンジャネェダロウナ・・・・』

『ハッピー・スタッフ』とともにラッコの愛くるしさにやられ頭がトリップする氷山
・・・・・それを見て、顔色を青くする『エド・サンズ』(もっともスタンドに顔色などないが)
この状況においてはそれも無理もないことか


不意に『銛』を携えた『ハッピー・スタッフ』を見る

『オ、オイ、お前! その「銛」ヲドウスル気ダゼ!?』

619ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/30(土) 22:12:16
>>618

『意思』を持つスタンド――決して多くはないタイプだ。
『ボート』に乗った『人型』は、
間違いなく『さんずさん』と同じく『自我』を備えている。
他者の精神に影響を及ぼすような能力を、
このスタンドが持っているかは定かではないが。

《――――『コレ』デスカ?》

《『モリ』ノ ツカイカタハ 『ヒトツ』シカ アリマセン》

         カツンッ
                カツンッ

その時、ラッコが『石』と『貝』を打ち合わせた。
響く『音』が合図であるかのように、
『スタンド』――『ハッピー・スタッフ』が腕を持ち上げる。
腕の先には、鈍く光る『銛』が握られている。

               ――――――ドスゥッ!

素早く精密な動きで、
『ハッピー・スタッフ』が水面に『銛』を突き立てる。
やがて引き上げられた先端部には、
『何か』が突き刺さっていた。
どうやら、小さな『イカ』らしい。

    ポォォォ――――ンッ

             ザバァッ
                   ――――パシッ

『ハッピー・スタッフ』が銛を振り、イカをラッコめがけて放る。
大きく伸びをしたラッコが、
投じられたイカを器用に両手でキャッチした。
当然のように、そのまま食べ始める。

《――――コレガ 『モリ』ノ 『ツカイカタ』デス》

銛を下ろした『ハッピー・スタッフ』は、そのように締めくくった。
ラッコは美味しそうにイカを食べている。
『あきはちゃん』と戯れながら。

620氷山『エド・サンズ』:2020/05/30(土) 22:27:22
>>619
『ソノ「銛」ダゼ! ギラリと尖ッタ穂先・・・俺達ヲ攻撃スルツモリジャ・・・・
何ィィィイイイ――――――――ッ!』

おもむろに『銛』を突き立てる『ハッピー・スタッフ』
その先端に突き刺さった『イカ』を注視する

『餌ヤリ・・・・・ノヨーニ見エルナ・・・・』

余りにも平穏な『銛』の使い方に拍子抜けする
こいつ・・・・・本当に攻撃する気はないのか? 警戒心が少しずつ薄れていく

「妙ですね・・・・・
ラッコは1日に体重の30%も食事を取る動物であり、貝類以外にもイカや海藻なんかも食べるかわいい動物です
でもこんな浅瀬であれほど新鮮なイカが取れるなんて・・・・・まさか!」


   ゴゴゴゴゴ・・・・



「でもかわいいからいっか〜〜っ!」


もはや人間と野生動物の境界とか、遠慮とかそういうのがどうでもよくなった
ラッコを抱きかかえて もっふ と両手でホールド

621ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/30(土) 22:49:53
>>620

ここは海だ。
しかし、こんな海岸近くで『イカ』は採れない。
そう、『普通』なら。

    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………

あらゆる『水面』から、『水棲生物の死骸』を得る。
それが『ハッピー・スタッフ』の能力だった。
本体であるラッコは、
『食事に便利な力』程度にしか認識していないが。

          モ フ ッ

ラッコは、いとも簡単に抱き締められた。
『極上の毛皮』の感覚が、『あきはちゃん』に伝わる。
ラッコを抱っこした経験のある人間は、きっと少ないだろう。
ラッコにとっても、人間に抱きかかえられるのは、
初めての体験だった。
でも、まぁ悪くはないかな。しょっちゅうは困るけど――
そんな風に、ラッコは思った。

《ソウ 『エサヤリ』デス》

《コレハ『ヤリ』デハナク 『モリ』デスガ》

一人と一頭を見守りつつ、『ハッピー・スタッフ』が喋る。
『ジョーク』のつもりらしい。
…………今日も、海は至って『平和』だ。

622氷山『エド・サンズ』:2020/05/30(土) 23:05:27
>>621
>《ソウ 『エサヤリ』デス》
>《コレハ『ヤリ』デハナク 『モリ』デスガ》
『アァ・・・・ソウネ・・・・ウン、ナカナカ面白カッタ、カナリ大爆笑』

『平和』でふわふわした時間が流れる中、
唯一張りつめていた『エド・サンズ』の精神もゆるふわに堕ちていく

「あははははははは!」
『ハハハハハハハハ!』

そうして、一人と一体のスタンド使いは
日が暮れるまでラッコと遊んで心が癒されたとさ


めでたし   めでたし




氷山あきは『エド・サンズ』⇒落ち込む事もあったけどラッコと遊んで元気が出た
              『再起可能』!

623ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/30(土) 23:14:08
>>622

624白町 千律『ハード・タイムス』:2020/06/05(金) 02:52:49

アーケード街に、その少女がいた。
短く、流れるように跳ね気味でいて、
頭頂でアンテナのように一層跳ねる黒髪と、
見開いたような印象を受ける、大きな目。

「……………」

       スタッスタッ

清月の『風紀委員』としての活動は、無い。
まず服装自体、制服ではない。私服だ。
今日は休日だからだ…‥では、何を?

歩く彼女の目的地は、どこなのだろう?
どこかメルヘン調の服装は、何を意味するのだろう?

625白町 千律『ハード・タイムス』:2020/06/07(日) 16:57:32
>>624

          ガチャ

やがて『ドール専門店』の戸を開き、その中に消えた・・・

626美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/06/07(日) 21:15:55

    ザザァァァ……

           ザザァァァァァ……

初夏の海。
砂浜に立てられたパラソルの下に、
水着姿の女が仰向けに寝そべっている。
スポーティーな雰囲気が漂うセパレートタイプの水着だ。
その上から、前を開いたパーカーを羽織っていた。
しばらくして被っているキャップを持ち上げ、辺りを軽く見渡す。

「……まだあんまり人、いない感じね」

人の姿は『まばら』だった。
休日ではあるが、本格的なシーズン到来には少し早いようだ。
軽く溜息をつきながら、体勢をうつ伏せに変えて海を眺める。

「せっかく新しい水着用意してきたのになぁ」

「――うーん、『残念』」

627稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2020/06/07(日) 21:45:33
>>626

「【水無月】であるわけだが、我は【水場】にいる。
 【泳人】の姿はあまり見受けられない」

   リョコウ
「【悠久への旅路】は我々【働き蟻】に与えられた愉悦ではあるが、

【葉月】や【弥生】は【種】(コドモ)を連れた【防人】(オヤ)が多過ぎる。
やはり、【ウツツを抜かす】には、【時期】を外した【閑散期】の【水無月】が良い」


美作の横に白衣を着た黒髪の女が立っていた。



「【汝】も、そう思って【星見】に来た【外界】からの【来訪者】か?」

628美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/06/07(日) 22:20:47
>>627

不意に頭上から降ってきた『声』に反応し、そちらに顔を向ける。
『白』というのは熱を吸収しにくい色だ。
それだけなら、夏の海辺に合っているかもしれない。
だが、『白衣』を着てビーチに来る人間は普通いない。
少なくとも、『目の前の相手』を除いては。

「あー…………そうね」

「うん、まぁ――『そんな感じ』よ」

まるで『暗号』のような言い回しには、流石に意表を突かれた。
『理解不能』とまでは言わないが、相当『理解困難』な部類だろう。
だが、すぐに気を取り直して話を合わせた。
職業柄、『そういう人間』の相手をするのは慣れている。
『宇宙人』とコミュニケーションを取るよりは楽だ――多分。

「えっと……もし良かったら、ここ入らない?」

「そこ、暑いでしょ?」

パラソルの下にはレジャーシートが敷かれている。
少し横にズレて、スペースを空けた。
そうしながら、頭の中で『ある記憶』が浮上していた。
いつだったか、『難解な言葉を使うリスナー』と話した事がある。
その相手は、確か『こんな喋り方』だったような……。

629稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2020/06/07(日) 22:45:58
>>628

奇怪な喋り方をする『白衣の女』、
首元には『ストラップ』がかかっておりその先に繋がったIDカードを裏返しにし胸ポケットに突っ込んでる。


「【把握】はしてくれたと言う事を【理解】した。
 【我】の【呪詛】(シャベリカタ)について【汝】が気に病む必要は無い。
 【見えざる闇】に【呪詛】を強いられているわけではない。
 【世界】ではなく【我】自身の選択なのだから。クククッ」


敷かれたレジャーシートの上の砂を軽く払い、
横に座ると美作に向き直る。


「【水無月】とは言え、【陽の力】(ヒザシ)はだいぶ強まってきた。
 【密室】の【者】(インドア派)にはだいぶ毒だ。
 【汝】の【翼】(ココロヅカイ)非常に有難い

 --ひょっとして【汝】、【伝播者:美作】か?」

630美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/06/07(日) 23:28:17
>>629

「あはは――それはどうも」

「どうぞどうぞ、ご遠慮なく」

彼女の話し方は『奇怪』そのものだ。
でも、中身は案外まともなのかもしれない。
そんな事を思いながら隣に座る。

「…………よくお分かりになりましたね」

「ええ、そうですよ。『美作くるみ』です」

『やはり』というべきか、想像した通りだったようだ。
世の中には『そっくりな人間が三人いる』と聞いた事がある。
しかし、彼女と『同じような人間』が、
『同じ町』に何人もいるとは最初から考えていなかった。

「『稲崎さん』――――ですよね?」

「こうして『実際に』お会いしたのは始めてですけど……」

確か、彼女は『医療関係者』だった。
前に『電話』で話をした時、そんな事を聞いた覚えがある。
今の格好を見ると確かに納得できたが、
『それで海に来る』理由は、よく分かっていなかった。

631稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2020/06/07(日) 23:56:54
>>630


「キャア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!
 やはり【我】の【確信】は【偽りの翼】ではなかったぁ〜〜ッ!
 【網で身を縛らずに崖から闇へ身を投じ】(オモイキッテ)、【声明】を発し【僥倖】ォォ〜〜!」


『美作』が自らの名前を告げた瞬間、黄色い悲鳴を上げる『白衣』の女。
その表情には『驚き』と『喜び』が混じっている。


「【我】が以前【綱で身を縛らず闇へ身を投じ】、
 【伝播者:美作】の【盲目劇】(ラジオ)で【対話】したのを、【脳】に刻んでるのかッ!?
 クッハッハッ!【歓喜の雨】が我が街に降り注いでいるぞッ!(ウレシイ)」

「【我】は【伝播者:美作】が古の時代、
 【偶像】の【戯天使】(アイドル)として【謳歌】していた頃から、【汝】の【狂信者】(ファン)だッた!
 もちろん、【汝】の『盲目劇】も毎回【黒雷】(拝聴)している!ハーハッハ!!

 【伝播者:美作】ッ!我との【儀式】を!」


纏っている白衣の袖で手を拭い、そのまま差し出す。
要するに『ファンなので握手おねがいします』という事らしい…,

632美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/06/08(月) 00:23:55
>>631

「………………」

考えもしなかったリアクションを目の当たりにして、
思わず一瞬呆気に取られてしまった。
自分の職業には本来あるまじき事だが、
今日は『オフ』という事もあって、
気が緩んでいたのかもしれない。
だが、『パーソナリティ』であり『元アイドル』である経歴が、
瞬時に意識を現実に引き戻す。

「そう――――なんですね」

「『嬉しい』です。そんな風に思ってもらえるなんて」

    ニコッ

「『稲崎さん』――どうも、ありがとうございます」

          スッ

差し出された手を笑顔で握り、『儀式』もとい『握手』を行う。
『パーソナリティ』としての人気は、それなりにある。
その関係で、たまに握手を求められる事はあった。

「これからも精一杯頑張っていきますので、
 応援よろしくお願いしますね」

ただ、『昔の姿』を知る者は少ない。
世間からは既に忘れられて久しいからだ。
だから、余計に嬉しかったのだと思う。

633稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2020/06/08(月) 00:51:08
>>632

「か」

    「き」

「ぎ」


「【僥倖】ゥゥ〜〜〜〜ッ!

 クッ、クッ、まさか【伝播者:美作】と【契約】を交わせるとはな。
 【我】が【忙殺】の日々に姿を現した一匹の【虹色の龍】(ハッピー)!
 契約に応じた結果、我は【髑髏を垂れる】(アリガトウ)
 ……我の【仮面】(カオ)…【血の朱色】が混じっておらんか?(テレテル)」


握り返された手を両手でギュッと握り、照れで顔が赤らんでないか尋ねる。
そして、名残惜しそうにゆっくりゆっくり握った手を放し、立ち上がったを


「非常に、名残惜しいが【我】はまだ【蟻の身】(キンムチュウ)。
 【時】を使い果たした【補給】の【翼】(キュウケイ)もそろそろ【朽ちる】(オワリ)。
 【戦場】(カイシャ)へ【帰還】せねばならぬ。

 【伝播者:美作】よ。今日の【邂逅の翼】を【神】に感謝する。
 【水無月】の【無影】(ヒトノスクナイ)の【七割】(ウミ)で戯れていればいい。ククク」

634美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/06/08(月) 01:12:37
>>633

「ええ、大丈夫です」

「とっても『素敵』なお顔をされていますよ」

笑顔で言って、ゆっくりと手を離した。
それから一緒に立ち上がる。
『オフ』とはいえ、座ったまま『ファン』を見送るというのは失礼だ。

「あ、そうなんですね。この近くにお勤めなんですか?」
 
「――お仕事ご苦労様です」

労いの意を込めて、お辞儀をする。
言葉を交わす内に、独特の言い回しにも少しずつ慣れてきた。
『翻訳』を仕事にしている人達も、こんな気分なのかもしれない。

「良かったら、また『電話』してきて下さいね」

「お時間のある時に、お休みの時にでも」

           ニコッ

「――『電気カナリア』も楽しみにしてますから」

635稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2020/06/08(月) 01:28:56
>>634

「クッ、クッ、クッ!!
 【伝播者:美作】いや、改め【電気愛玩鳥】(カナリア)の激励を受けるとは、非常【愉悦】ッ!
 残り【数刻】の【混沌幻魔時間】(キンムジカン)を戦い抜く活力となるッ!!」


「うむ、【汝】の【盲目劇】は【我】の【楽園の神々】(タノシミノヒトツ)だ。
 いずれ【汝】の【戦場】に、【雷獣】の【咆哮】(デンワ)を響かせよう。
 ではーーー【暗黒の風と共に】(サヨウナラ)」


同じく立ち上がり、美作へと頭を下げ砂浜を後にした。

636美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/06/08(月) 02:07:25
>>635

「アハハ、そう言って貰えると私も嬉しいですよ」

「ええ、では『また』」

最後にそう言って、遠ざかっていく後姿を見送る。
『嵐』のように現れ、また『嵐』のように過ぎ去っていく。
『稲崎』に対して、心の中でそんな印象を抱いた。
ただ、決して悪い人じゃない。
言い回しは分かりにくいけど、きっと根は良い人なんだろう。

     ザザァァァ…………

                ザザァァァァァ…………

「――――ふぅ」

再びシートに寝そべり、一人で海を眺める。
生憎、『水着を見てくれる相手』は見つからなかった。
その代わり、『応援してくれる人』と顔を合わせる事が出来た。

「なぁんだ――『上々』じゃない」

「それに、こうして静かに海と向き合うのも悪くないしね」

目を閉じると、波の音が聞こえてくる。
穏やかで優しい音色。
ただ、ほんの少し『物足りない』。

「でも、まぁ折角だし――――」

              バッ

「この水着は『海』に見て貰いましょうか」

パーカーを脱ぎ去り、パラソルから出て波打ち際に歩いていく。
この『魅力』で、『海を虜に出来るか』試してみるのも一興。
ただ、やり過ぎて『荒れてしまっては困る』けど。

637日下部『アット・セブンティーン』:2020/06/12(金) 02:11:02

ここはどこだっただろうか。
待ち合わせ場所を指定したのは、>>638だった。


      「お待たせぇ〜」


>>638と日下部虹子は『知り合い』だ。
そして、>>638の『用』にこの少女を呼んだ形になる。
 
             ・・・何の用、だったか。

638<削除>:<削除>
<削除>

639日下部『アット・セブンティーン』:2020/06/12(金) 19:27:54

>>638は人違いだった……>>640が『知り合い』だ。

640日下部『アット・セブンティーン』:2020/06/13(土) 02:39:07
>>639
その後、待ち人と合流して1日中遊んだのだった。

641小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/14(日) 20:49:43

    ザァッ……

雨が降っていた。
急に振り出した通り雨。
傘の持ち合わせはなく、軒先で雨が過ぎるのを待っている――。

              ザァァァ……

642小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/17(水) 20:07:24
>>641

やがて雨が止み、その姿は街の中に消えていった――。

643関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/21(日) 02:26:59

エプロンを付け、黒髪をお団子にした少女。
温和そうな顔立ちで、水面を眺めていた。

        ザザーー ・・・

『夕暮の海』で何をしているのか、と言えば……『釣り』だ。
趣味でもあったが、実益も兼ねる。『コスパが良かった』。
こちらの方に来る用があったのも、ますます無駄がない。
すでにしばらく経っており、クーラーボックスには釣果がある。

「ふう〜……」

                  スッ…
 
次を座って待ちながら、『スマホ』で『ポイントアプリ』を起動する。
水の揺らぎを楽しんでもいいのだろうが……『小遣い稼ぎ』も、大事だ。

644三刀屋 路行『一般人』:2020/06/21(日) 18:24:50
>>643
「あー・・・お節介を焼くようで悪いんだけどさ」

関が『ポイントアプリ』に夢中になっていると、横から男の声が聞こえた
釣りをする関の隣にいつの間にか壮年の男が座っていた
シャツとジャケットをカジュアルに崩し、手にはB4サイズ程度の封筒を抱えている

   ギギギィ・・・・


「君・・・引いてるよ? 魚の影を見るに結構な大物かもね」

手元を見れば気が付くだろう
釣り糸がゆっくりと水面に引かれ、釣り竿がずり落ちそうになっていることに

645関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/21(日) 19:27:41
>>644

「あらっ、ご親切にありがとうございます!」

スマホを座った横に置き、
延べ竿を竿受けから手に取った。

            グググ…

「ほんとっ大きい! それに重たいですねえ〜っ」

そして、釣り上げにかかる……
特別『上手い』という風ではないようだが、
釣果が示す通り、それなりに慣れてはいるようだ。

        グイーッ
              バシャバシャ

「これは、期待出来ますようっ……!!」

喜色を見せつつ、暴れる魚と戦う。そろそろ上がりそうだ。

646三刀屋 路行『一般人』:2020/06/21(日) 19:57:18
>>645
「おっ、と いいねぇ、この感じ
僕も昔、ちょぉ〜〜〜っとだけ釣りをやってた時期があるんだけどさぁ
この引き方は『大物』・・・なんじゃないかな? たぶん」

手に持った封筒を地面に置き、近くにあった手網を取る
岸に近づく魚影はそれなりの大きさだ

「よっ と」

  バシャバシャバシャ!

網を使って魚を掬ってみよう
さて・・・・・『釣果』は・・・・・ッ!?

647関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/21(日) 20:34:36
>>646

そうして網で上がった魚は――――

「あら〜っ、また、ご親切に。
 これは…………『スズキ』ですかねえ!
 『ムニエル』なんかにすると美味しいんですよう」

恐らくその通り、『スズキ』だろう。
開けたクーラーボックスに横たわる『アジ』より、
一回りか、二回りほど大きい魚だった。

「いやあ、大きいですねえ〜」

「あなたが網をしてくれなかったら、
 このサイズ……逃してたかもしれませんね。
 本当にありがとうございます〜。ええと……」

網の中の魚を取ろうとしつつ、笑みを向ける。
言い淀んだのは、恐らく『呼び名』に困ったのだろう。

648三刀屋 路行『一般人』:2020/06/21(日) 20:48:03
>>647
「へぇ〜この魚は『スズキ』って言うんだねぇ
 昔、同僚に付き合わされた時に何度か釣れたやつだよ
いいねぇ、映(バ)えるねぇ〜この魚」

 カシャリッ

手に取ったスマホで自撮りをする
自分の顔と釣れた『スズキ』が映るように
プライバシーを考慮して関の顔は写さないようにする

「この写真、SNSにあげちゃっていいかな?」

「あぁ、僕の名前は三刀屋 路行(みとや みちゆき)って言うんだよ
 出版社でサラリーマンをやっていてね
 ここへは・・・・まっ、仕事をサボりに来たって感じかな」

にやりとした表情を浮かべて口元に人差し指を立てる

「内緒だよ?」

「それにしても君みたいな若い女の子がこんなところで釣りって珍しいね」

釣り人というよりも、もっと家庭的なエプロン姿を見ながら言う

「流行ってるの?」

649関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/22(月) 00:57:03
>>648

「『スポーツフィッシング』でも、
 人気があるお魚だそうですよ。
 大きくて、『釣った感』がありますもんねえ」

                スッ

写真を撮り終えたのを見計らい、
口から針を外したそれをクーラーボックスへ。

「ふふふ、どうぞどうぞ〜。SNSでも、ラインでも。
 『三刀屋さん』が獲った事にしちゃってくださいよう」

          ニコ

「自己紹介、ご丁寧にありがとうございます。
 私は『関 寿々芽(せき すずめ)』といいます。
 三刀屋さん、これからよろしくお願いしますねえ」

笑みを称える少女――関は、『内緒』にも頷く。

「あら……『さぼり』だなんて、いけませんよう。
 でも、ふふ。働いてたら、そういう日もありますよねえ。
 もちろん言いふらしませんよ。安心してください、内緒にしますから」

柔和な笑みだった。いけない、とは言うが、『本気』ではないだろう。
そして釣竿を一旦竿受けに置く……『話す』のに集中する為だった。

「流行り……ではないと思います、あまり見ないですし。同年代。
 私も『趣味』と『実益』を兼ねて、ちょっと前から始めたばかりですけど〜」

「実益っていうか、まあ、食べるんですけどねえ……」

『実益』――――エプロンもだが、どこか所帯じみた色を帯びる。

650三刀屋 路行『一般人』:2020/06/22(月) 17:10:17
>>649
「それじゃあ、お言葉に甘えて・・・・いや、今アップしたら仕事をサボってるのがバレるね」

途中まで打ちかけた文面を削除していく
やばいやばいと苦笑交じりに呟いた

「『実益』ねぇ どうやら僕みたいないい加減なおじさんと違って
 関さんは『しっかり者』みたいだね」

「お金の管理だって、何となく給料が入って、何となく使って
 何に使ったのかもよく覚えてないくらいだからね

最近じゃあ、財政管理用の家計簿アプリなんかもあるらしいけど・・・
ま、三日坊主ってところだったね」

ダメなおじさんオーラ全開で砕けた話を続ける

651関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/22(月) 19:48:53
>>650

「あら、そっかあ、それもそうですねえ〜!
 ごめんなさい私ったら、引っ掛けるみたいな事」

          クス

「許してくださあい」

口元に手を添え、微笑する。

「ふふ……口ではこんなこと言ってますけど、実践はできてるかどうか。
 この餌だって買ったあとから、もっと安いのを見つけたんです」

        スッ

その手を下げ、いわゆる『アミエビ』を指し示す。
見るからに廉価品のようだったが……

「やりすぎると『悪かろう安かろう』……
 でも、安く上げられるところは安くしたいんですよね」

「まあ、しっかりというか……ふふ、ケチなだけですよう」 

さらに、そのアミエビを糸の先の『かご』に詰めていく。
特に関から言うことはないが、『さびき釣り』だった。

「そういえば〜……その『封筒』は、三刀屋さんのお仕事道具ですか?」

置かれた封筒に、目線が動いた。
乾いたコンクリだが、『水場』だ。中身次第では『心配』もあった。

652三刀屋 路行『一般人』:2020/06/22(月) 21:10:30
>>651
「やれやれ、最近はコンプライアンス的にうるさいからね
ネットのあれこれには気を付けないといけないよ くわばらくわばら・・・」

>「そういえば〜……その『封筒』は、三刀屋さんのお仕事道具ですか?」

「封筒・・・? あぁッ! いけないいけない 忘れるところだった」

目線につられて自分で地面に置いた『封筒』を再び手に取る
波しぶきの上がる堤防であったがギリギリ水には濡れていない

「まあ、仕事道具といえば仕事道具だね
さっきも言ったように僕って出版社に勤めてるんだけどさ?
預かり物の大事な原稿がこの中に入ってるんだよ

やばい やばい 本気でコンプライアンス的にアウトを喰らうところだった」

涼しい顔をしながらも冷や汗がたらりと流れている
表情はあまり困ったようには見えないが、マジでひやりとしているようだ

653関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/22(月) 21:30:47
>>652

「まあ原稿なんて……大変じゃないですか三刀屋さん!
 入れておく袋とか、持ってない〜、です?
 裸でこんな水気の多いところに置いちゃ危ないですよう」

「サボりとかコンプライアンスどころか、
 もっと直接的に怒られちゃいますよ〜?」

        ゴソ…

「あの、もしよければこれ、お貸ししましょうか?」

小さな鞄から、もっと小さな袋を出した。
買い物袋有料化……当然『エコバッグ』は購入済みだ。

「網を手伝ってくれた『お礼』……だと思ってくれれば〜」

すずめの柄が描かれている辺り、自分の名前が好きなのだろう。

654三刀屋 路行『一般人』:2020/06/22(月) 21:45:47
>>653
「ははは・・・危うくいろんな人の人生を巻き込んで爆発四散するところだったよ
関さんには何から何まで本当にお世話になるねぇ」

ありがたく、『エコバック』に原稿を入れさせていただく

「不味いねぇ・・・未来ある子にこんないい加減な大人の姿を見せてしまってさ
大人に対して幻滅させてしまった・・・か、な?
君みたいなしっかりした子はこんな大人にならないように気を付けなよ〜」

すずめの絵柄をじっと見つめる 可愛らしい絵柄だ
思わず微笑んでしまう

655関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/22(月) 22:13:39
>>644

「良いんですよう、困ったときはお互いさま……
 それに、いくら大人の人だからって、
 ずっとしっかりしてなきゃなんて事ないですよ」

          ニコ〜

「それに……私が何も言わないのに、
 すすんで助けてくださった、親切な方に……」

           ス…  

「幻滅だなんて。そんなこと、しませんよう」

柔和な笑みを浮かべ、エコバッグを渡した。
倹約するのは『必要な時に出せるように』。

「袋は……またいつかお会いした時に、
 もし覚えてたら返していただければ。……っと」

         ひゅんっ

そう言うとまた、釣竿を水面に向けて振るった・・・

656三刀屋 路行『一般人』:2020/06/22(月) 22:27:26
>>655
「君は・・・本当に『いい子』なんだなぁ
僕が君くらいの時なんて『大人達はみんなクソ』とか言ってイキりまくってたというのに
でもまあ 流石にこれは返すことにするよ」

『エコバッグ』から封筒を取り出して、返す

「幸いにも、予報では今日は雨が降らないみたいだしね
僕もそろそろ会社に戻らないといけないし、さ」

『封筒』を手に抱えて言う

「君みたいな『いい子』に会えて今日は本当にいい日だったよ、ありがとう
機会があったらまた会おうじゃないか」

と、言いながら手を振り その場から離れていった

657関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/22(月) 22:46:39
>>656

「ふふ、いい子だなんて。
 それこそ、幻滅させちゃいそうです」

          スッ

「ああ、お戻りになるなら必要ないですかねえ」

エコバッグを受け取る。

「ええ、またどこかでお会いしましょう。
 お仕事頑張ってくださいねえ、三刀屋さん〜」

手を振り返し、また釣りとポイントアプリに熱中する・・・

658シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/06/24(水) 23:35:20

     「はッ」
                 「はッ」
           「はッ」

                タッ タッ タッ タッ タッ

一人の少女が海沿いの道をジョギングしていた。
半袖のシャツにハーフパンツ、首にタオルを巻いている。
黒葛純白――『ワタシ』は『シルク』と呼んでいる。

          タッ タッ タッ タッ タッ

シルクは合唱部に所属している。
そして、『音感』や『歌唱力』なるものとは『無縁』だ。
当然の帰結として、彼女は『歌う事』に向いていない。

    タッ タッ タッ タッ タッ

しかし、幸か不幸か『運動神経』は人並み以上だった。
未だに『運動部』から声が掛かるが、彼女は断り続けている。
承知した方が『世界のため』になる筈だと、
『ワタシ』は信じているが。

659シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/06/27(土) 20:37:11
>>658

その日、シルクは一日運動に励んだ。
 ワ    タ    シ
『トワイライト・ゾーン』も久方振りに平穏な時間を過ごす事が出来た。
願わくば、これが永遠に続いて欲しいと思うが――――『運命』は残酷だ。

660三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/02(木) 20:33:29
「うーん・・・あの『奇妙な部屋』で見つけた原稿を試しにトレスしてみたけど・・・」

夕暮れ時の海辺・・・・堤防に座りながらスーツ姿の壮年男性が『紙の束』を見つめている
後ろから見るとその紙が何かの『漫画の原稿』だという事がわかるだろう

「まったくダメだね
『あの能力』で線は正確に引けているけど『元原稿』の迫力が全然ない
ははは・・・・僕じゃあゴーストライターにはなれないってわけだね」

その男性はそれらの『原稿』を眺めながら独り言を呟いている

661三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/02(木) 23:38:00
>>660
「ま、地道に探してみるしかないかな
幸い『超能力』のおかげでタンスの裏の狭い隙間とかも楽に探せるからね」

そういいながら、男は去っていった
『原稿』はいまだ見つからない

662両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/03(金) 00:05:28
ここはBar『黒猫堂』。
星見町の『夜の顔』の一つであり、お客様が一時の安らぎを得るためのスペースでもある。
そこで僕、両角はバーテンダーを営んでいる。

キュッ……キュッ……カウンターでグラスを磨きながら考える。

今日のお客様はどんな方だろう?……と。

663ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/03(金) 21:06:53
>>662

    ガチャッ

一人の『客』がやって来た。
若い女だ。
白・青・紫のトリコロールカラーのポンパドールヘア。
そして、古代ギリシャの装束である『キトン』を身に纏っている。
足元はサンダルだった。

「――――こんばんは」

女が礼儀正しく会釈をする。
その両腕は『羽毛』で覆われ、背中には『翼』が生えていた。
踵には『蹴爪』が備わっている。
いずれも、本物と見紛う程に『リアル』な作りだ。
普通に考えれば、『本物』であるはずはないが。

664両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/03(金) 21:28:37
>>663
おや、不思議なお客様だ。
仮装だろうか。コスプレだろうか。

「こんばんは、いらっしゃいませ。」
だが、一度バーの扉をくぐれば、それはお客様だ。
バーテンダーとしてもてなすべきであろう。

「今晩は空いております。お好きなお席にどうぞ。」
幸か不幸か、ブリタニカの他に客はいない。
好きなカウンターの席に座れそうだ。

665ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/03(金) 21:56:11
>>664

「どうぞ、よろしくお願い致します」

何処か『ズレた感』のある言葉と共に、
バーテンダーの前の席に腰を下ろした。
座っていても、『翼』は目立つ。
同時に、女から『不思議な香り』が漂ってきた。
晴れた日に干した布団のような、焼きたてのクッキーのような、
あるは柑橘系の果物のような……。
悪い匂いではないが、何とも『形容しがたい香り』だ。

「こちらでは何を頂けるのでございましょう?」

女が顔を上げて尋ねる。
こういった場所には詳しくないようだ。
とはいえ、成人は過ぎているようなので、
法的な問題はなさそうだった。

666両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/03(金) 22:18:17
>>665
どうやら初見のお客様のようだ。
しかも、不思議な香水を使っている。あまり嗅いだことのない銘柄の香水だ。

「承知しました、お客様。
どうやらバーをご利用するのが初めてのご様子ですね。私の方から、おおまかにお教えしましょう。」

にこやかにブリタニカの質問に答えていく。

「バーは『酒場』とも『止まり木』とも訳されまして、『一時の安らぎ』を提供する場です。」

「具体的には、ゆっくりとした時間の中で、ご歓談や軽食や飲料を味わっていただき、
 お客様の心に安らぎをもたらすのが、目的でございます。」

「飲み物、食べ物のリクエストはご自由におっしゃってください。
 小さなバーではありますが、一通り、揃えておりますので。」

「総じて、大まかな予算としては……
 1.チャージ (ナッツなど)
 2..2〜3杯のアルコールやカクテルなど
 3.サービス料
などで、3000〜5000円を見て頂ければ結構です。」

「つまりは、飲食歓談により、『一時の安らぎ』を提供するのが、
この『バーという場所』なのですが……ご理解いただけましたでしょうか?」
少し話しすぎたので、ここでいったん話を切る。

667ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/03(金) 22:48:22
>>666

「なるほど、『止まり木』ですか」

「『止まり木』――――」

      クス

「私、ここが気に入ってきたようです」

興味深そうに説明を聞き、謎めいた笑みを浮かべる。
『ニンゲンの世界』にも『止まり木』があるとは知らなかった。
これは、『我々』を進歩させる『鍵』になるかもしれない。

「『ヒエ』・『アワ』・『キビ』などは御座いますか?」

「『ナッツ』や『ドライフルーツ』でも構いません」

「『その他』は、お任せ致します」

床の上には、手荷物である古ぼけた鞄が置かれていた。
口が少しだけ開いていて、中身が僅かに覗いている。
『鳥用シード』だ。

668両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/03(金) 23:03:39
>>667
「ええ、バーは『止まり木』です。
町と言う、自由な空に疲れた『人』がほんの少し休みに来る場所です。」

「食べ物ですが……『ナッツ』や『ドライフルーツ』ならございますね。」
『チャージ』として、『ナッツ』と『ドライフルーツ』の入った皿をブリタニカの前に出す。

「さて、お飲み物ですが……少々お好みをお聞きしたいですね。
 ①普段飲んでいるお酒などはありますでしょうか?そもそもお酒が苦手だったりするでしょうか?
 ②強めのお酒と、弱めのお酒のどちらが好きでしょうか?
 ③甘いお酒と、さっぱりとしたお酒のどちらが好きでしょうか?」

「この3つを答えて頂ければ、お飲み物をお出しし易くなります。」

669ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/03(金) 23:16:41
>>668

「面白い『接点』で御座いますね。
 私、大変に興味が沸いて参りました」

出された皿を見下ろす。
その中から一つを摘んで、目の前に持っていった。
しばし観察したのち、それを口の中に運ぶ。

「『お酒』ですか。私は飲んだ事が御座いません」

「どの程度の反応が起こるか未知数ですので、
 『弱いもの』を頂戴したく思います」

「味付けは『甘いもの』を――――」

『ニンゲンの飲食物』を、自らが調査する。
それも、いずれ『制空権』を握るための『研究』の一部だ。
この成果をフィードバックし、より『高度』に至る糧とする。

670両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/03(金) 23:32:44
>>669
「承知いたしました。
まずは一杯目……度数が弱めで甘い味付けとなりますと……」

   カラン……

グラスに氷とクリーム・ド・カシス、オレンジジュースを入れ、軽くステアする。

   サラサラサラ……

「『カシス・オレンジ』でございます。」
爽やかな香りが香るオレンジ色のカクテルを、ブリタニカの前に差し出す。

「こちら、度数の低さと、爽やかさから、女性を中心に人気の高い最もポピュラーなカクテルとなります。」

671ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/03(金) 23:52:38
>>670

  「『カシス』――――」

          グ リ ィ ン ッ

           「――――『オレンジ』ですか」

オーバーな動作で大きく首を傾げ、カクテルを見つめる。
まず、その色を確かめる。
それからグラスに手を伸ばし、一口目を口に含む。

「なるほど、確かに『これ』はオレンジで御座いますね」

「色といい香りといい味といい、まさしく『オレンジ』です」

「そして、緩やかに浮上するような感覚。
 これが『お酒』というものですか」

感想を述べつつ、グラスを傾ける。
『空を飛ぶ時』とは異なる奇妙な浮遊感を覚えた。
やがて、空になったグラスをカウンターに置く。

「これは『女性(メス)に人気が高い』と伺いましたが、
 『男性(オス)』に支持されているのは、
 どのような種類なのでしょうか?」
 
「次は、それを頂きたく思います」

『調査』において重要なのは、多角的な視点からの観察。
出来る限り多くの情報を収集しなければならない。
ここを訪れたのも未知の場所だったからだ。

672両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/04(土) 00:09:54
>>671
(不思議なお客様だな……)
「はい、基本がオレンジジュースですからね。飲みすぎてしまう方も時々いらっしゃいます。」

「男性の場合、かなり好みが分かれますが……『ジン・フィズ』などはいかがでしょう。」

「度数があまり高くありませんし、シェイクが見られるので頼まれるお客様は多めです。」

ドライ・ジン、レモン・ジュース、砂糖、氷をシェイカーに入れ、シェイクする。

    シャカシャカシャカシャカ……

手慣れたシェイクだ。そして、シェイクした中身にソーダ水を加え、ステアする。

「こちら、『ジン・フィズ』になります。」
レモンの風味を炭酸が飛ばす爽やかさと香ばしさの入り混じったカクテルを、ブリタニカの前に差し出す。

673ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/04(土) 00:34:40
>>672

「美しい動作で御座いますね。
 『攪拌』するための行動を、
 芸術的な『演舞』に昇華していらっしゃいます」

       ジッ…………

「私も『エンターテイナー』をやっておりますので、
 僭越ながら『親近感』を覚えてしまいます」

手捌きを見つめながら、感想を漏らす。
もっとも、彼は『エンターテイメント』がメインではないだろう。
このブリタニカも、『パフォーマー』としての顔は、
あくまでも『隠れ蓑』なのだ。

    グッ

「『レモン』の色と香り、そして酸味――――」

             グッ

「そして、『カシス・オレンジ』よりも、やや強い『浮遊感』」

                     グッ

「――――興味深い味わいで御座いました」

              コト

          「ウフフ」

分析しながら、カクテルを口に流し込む。
先程よりも早いペースで、グラスは空になっていく。
何だか、少し『気持ち良くなってきた』ような気がする。
無意識の内に、体が左右に揺れる。
慣れないアルコール摂取によって、
『本来の習性』が表に出始めていた。

674両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/04(土) 00:47:40
>>673
「シェイクをお褒めにあずかり光栄です。」
軽く礼をする。

「エンターテイナーをやっていらっしゃるんですか。
 なるほど、不思議な衣装はそのためですか。」

「……お客様? 少々揺れているようですが、大丈夫ですか?」

「そうなると、最後の一杯は落ち着けるための、『ノンアルコールカクテル』にしてみてはどうでしょうか?」

675ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/04(土) 00:59:45
>>674

「申し遅れました。
 私、『ハーピー』と名乗っております。
 『ストリートパフォーマンス』を生業としている者で御座います」

「この街の各所で『バード・ショー』をやっております。
 どうぞ、お見知りおき下さいませ」

      「――――ウフフフ」

ユラユラと揺れながら、上機嫌で語る。
心なしか、入店時より声のトーンが高い。
これも『鳥の本性』の一端だった。

「ええ、お任せ致します。
 私、少々『気分』が良くなって参りました」

           「ウフフ」

皿からドライフルーツを摘みながら、『最後の一杯』を待つ。
地上にいるにも関わらず、
まるで空を飛んでいるような感覚がある。
『奇妙』だが――――悪くはなかった。

676両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/04(土) 01:14:30
>>675
「ハーピーさんですか。」
(芸名かな……?)

「僕は両角 晶(もろずみ あきら)と言います。
 このバー『黒猫堂』でバーテンダーをやらせてもらってます。」

「気分良くなっていただいたならこちらも本望ですよ。」

「それでは『最後の一杯』は……こちらになります。」

オレンジジュース、レモンジュース、パイナップルジュースを混ぜてシェイクする。

    シャカシャカシャカシャカ……

手慣れたシェイクだ。そして、氷の入ったグラスに中身を注ぎ込む。
最後に、パイン・オレンジ・レモンのスライスで飾り立てる。

「こちらは……ノンアルコールカクテルの『シンデレラ』になります。
 『シンデレラ』……24時までのお姫様にして、成功のカクテルです。」

3種の果物で飾られた華やかなカクテルがブリタニカの前に差し出された。

677ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/04(土) 01:40:21
>>676

「『シンデレラ』――その名前は聞いた事が御座います」

「恵まれない境遇に置かれていた女性(メス)が、
 『魔法使い』の助けを借りて、
 最終的に幸福を手に入れる童話ですね」

          「ウフフ」

『魔法』ではないが、『奇跡の力』ならば覚えがある。
『ハロー・ストレンジャー』――『ニンゲンに擬態するスタンド』。
それは、シンデレラが身に纏う美しいドレスのようなものだ。

「そうした話を『シンデレラストーリー』などと形容するそうで」

シンデレラは『舞踏会』に向かい、『王子の心』を手に入れた。
ブリタニカは『人間界』に溶け込み、『種族の進歩』を目指す。
『成功』のための『変身』という意味で、
両者には奇妙な『共通点』があった。

「『洗練された選択』をして頂けた事に感謝を申し上げます」

            「ウフ」

    クイッ

最後の一杯――『シンデレラ』を飲み干す。
オレンジの爽やかさとレモンの酸味、パインの甘味が調和し、
口の中に広がる。
満足した表情で、グラスをカウンターに戻した。

「お蔭様で、とても有意義な時間を過ごす事が出来ました。
 これでお暇させて頂きます」

             ドサッ

     「お会計をお願い致します」

            「ウフフフ」

笑いながら、古ぼけた鞄をカウンターに置く。

678両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/04(土) 02:10:47
>>677
「ええ、シンデレラの如く成功を掴めると、よいですね。」

「有意義な時間となって幸いです。」

「会計は……税込で3000円になります。」

ガチャガチャチーン……

679ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/04(土) 02:22:55
>>678

「『成功』――私も常々『そう在りたい』と思っております」

    ゴソ ゴソ

「生憎『細かいもの』が多いですが、
 お差支えは御座いませんか?」

            ジャラララララァッ

鞄の中から『裸の小銭』を掴み出し、カウンターの上に置く。
五百円玉も混じっているが、百円玉や十円玉が多い。
合計金額は『三千円』だ。

「先程も申し上げましたが、
 私は街の様々な場所で仕事をしております。
 お時間のある際は、両角さんも是非ご覧下さいませ」

「――――それでは、失礼致します」

            「ウフフフフ」

                       ガチャッ…………

ドアを開け、店の外へ出て行く。
若干左右に揺れながら、夜の街を歩いていった。
『酒』――癖にならないかどうかが、ほんの少し心配だった。

680両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/04(土) 02:26:39
>>679
「はい。
 お金に貴賤はありませんので、ありがたく頂戴します。」

「あなたの『止まり木』、バー『黒猫堂』。」

「またのお越しをお待ちしております。」

681関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/15(水) 18:28:09

駅前広場に時々、『露店』が出ている事がある。
いや、露店というのは『美化』した言い方だ。
実際は『違法』であり、勝手に売っているだけ。

「…………」

それを遠巻きに眺めている少女がいた。
黒髪を前は目の上で切り揃え、後ろはおだんごに。
服の上には、無地の『エプロン』を付けている。

        じーーーー  ・ ・ ・

欲しいトランペットを眺めている、という風でもなく、
手には『スマホ』を持って、時々何かを打ち込んでいる。

682小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/07/15(水) 23:38:00
>>681

チョン チョンッ

そんなスマホを覗き込み、文章か何かを打ち込む貴方の肩を
指先で小突くようにする感触が後ろから。

「あー、すまねぇ。此処らのものを買うのは良いとしてもさ
インスタか何か知らんけど勝手に写真とか撮ってんなら
悪いけど止めて欲しいんだが……」

貴方より背丈が大きい、髪型は染めていてファッションもどちらかと
言えば不良めいた人物が少し困り気に頭を掻きつつ告げている。

「まぁ、此処ら辺の店も許可は取ってないでしょうけど。
それでも、生活の為ですしね」

少し遅れて、学生服をバンカラマント風に着こなす高等部らしき
人物も、貴方のほうより奥の店に視線を投げ掛けつつ。声を掛けてきた
不良と同じ位置へ歩みを寄せた。

683関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/15(水) 23:55:39
>>682

「……っ!」

     トッ …

『突然触れられた』事に軽く跳ね、
背後からの見知らぬ男の声に、さらに驚く。
ここはさほど、『治安』が良くない。

       クルッ

「あ、あちらのお店の……『関係者』の方ですか〜?」

まして『店の違法性』を指摘するより先に、
それを観察する人間を指摘するという事は、
彼らは前者の関係者の可能性が高い。
つまり、『無法』側の人間の可能性が、高い。
不良風の装いは、関の警戒レベルをより高める。

「あのう……」

          スッ

「私、ただ、アクセサリーの値段を調べてたんです。
 市販品より、高いのか、安いのか……
 安いならここで買う方が『節約』になりますから」

示すのはスマホの画面だ。

「……ですから、『生活のため』ですよう」

なるほど、『写真』を撮ってはいないようだった。
メモがびっしりと書かれた『メモ帳』が開かれている。

「メモをしただけで、写真は撮ってません。
 アルバムを見せてもいいですけど……今日の分だけなら」

温和な声色は事を荒立てないよう……ではなく生来の物だ。
が、事を荒立てたくない気持ちはある。まして闇の人間相手に。

684小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/07/16(木) 00:17:27
>>683

ヤジ「関係者……まぁ、何軒か顔見せたら知り合い居るかも知れないし
関係者で良いけどな」

僅かに眉間に皺を寄せて、考える顔付きになりつつ。貴方に声をかけたほうの
闇側と思える人物は、そうあっさりと告げる。

ヤジ「あー、節約な。そりゃ、勘違いして悪かった。
たまに隠し撮りしてネットに上げるとか、そう言った奴等もいてよ」

少々神経質になってたわ。と、申し訳なさそうな表情を浮かべる。

小林「私には理解しかねますが、何故撮るんですかね? 意味も無いのに」

ヤジ「ジョー、そいつ等には意味があんのさ。撮って相手が気分よくないのが
楽しいだとかさ。理由なんて掃いて捨てるぐらい作れんだろ。
アクセサリーか……そういや、蛍石だっけ? まだ今日も持ってんの?」

小林「えぇ、勿論」

ジョー、と呼ばれた青年が。制服の内側から手の平に煌くフローライトの
石を取り出す。お守りなのだろうか? 
彼はそれを手で弄りつつ呟く。

小林「私も、これを加工してアクセサリーでも作って貰えれば良いんですが」

ヤジ「職人の伝手は無いからな……」

     ボソッ「そう言うスタンド使いも知らんし……」

不良らしき見た目の青年は、そう独り言のように小さく呟く。
貴方に聞こえるかどうかは不明だが……。

ヤジ「んっ。あー悪かったな嬢ちゃん 
もう、特に俺達は用件ないから行ってくれて構わないぜ」

685関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/16(木) 00:33:04
>>684

「隠し撮り……私見ですけど〜、『悪い事をしてる』からですよう。
 ほんのちょっとの悪い事でも、見逃せない人って、いるんです。
 そういうのを撮って広めると、『いいことをした』気分になれるんです」

「お店を出すくらい、別にいいと思うんですけどねえ」

         ニコ〜

もちろん『良くない』のは理解している。
店を出す、というその行為だけでなく、
彼らの『背後』に暗い部分があるし、
場所によっては単純に『邪魔』にもなる。
周囲の『正規の許可を取った店』にも、
彼らの存在は『百害あって一利なし』だ。

が、それは口に出さず、『通報』などもしない。なあなあにする。

「きれいな石ですねえ…………」

             じ ・ ・ ・

蛍石を眺める。眺めているのは事実だ。
そして『話を聴いている』。
ほとんど独り言に聞こえるが、
そこから重要なワードを拾う事が出来た。

「…………『スタンド使い』?
 あのう……『スタンド使い』って、いま、おっしゃりましたかあ?」

用件は『できた』。場合によっては、そうはならないかもしれないが。

686小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/07/16(木) 00:44:37
>>685

小林「知人……いや、言い方に語弊があるが。謎を好む同士からの
贈呈品でして ――貴方も?」

『スタンド使い』の言葉に、少し瞠った目で最後の部分で強調するように告げる。

ヤジ「……こんな場所でもが。学園でも未だ覚醒してなさそうだったけど
出会うし。最近よく会うのは、ジョーの引力の所為かね」 フゥ・・・

軽い溜息のあと、金魚の玩具のような小さなスタンドに包まれたビー玉。
そんな形の『スタンド』をヤジが取り出す。少しだけ指で弾いたソレは
宙に1、2秒静止して。ゆっくり彼の手の平の中に下降した。

ヤジ「そんで、君は能力は自覚してる感じ? 音仙って人の知り合いなら
話はすげー早くなるんだけど」




親友が少女と話すのを眺めつつ、小林は手元の蛍石を手の中で遊ばせつつ思う。

この街のスタンド使いの中の黄金の意思を確かめる。
 彼は、何時かの時にそう宣言した。
何故か? と問いかければ、決まってるだろ と笑いつつ告げた。

それが『ジョジョ』なんだ。ジョジョなら誰だってそうする。

……私には、まだその真意が掴み切れていない。

687関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/16(木) 01:11:42
>>686

「はあ〜、『同士』さんからのですか……」

美しい石を見つめる視線を、
そのまま『バンカラ』の男の目に向ける。

「腹の探り合いは、無しですねえ。
 はい〜。私も『スタンド使い』で」

           『ズギュン』

「これ。特別な『帳簿』なんですよう」

          「名前は、『ペイデイ』」

「ジョーさんのは、石と同じくらい……
 『きれい』なスタンド、なんですねえ〜。
 ふふ、私のはプライバシーの塊ですので、
 じっくりとは見せられませんけど……」

            パラララララララ 

「とっても便利で、お気に入りです〜」

表紙を見せ、ページをぱらぱらめくる。
書かれているのは無数の『収入』と『支出』だ。
それが書かれているページをめくり続ける。

「『オンセン』さんのことは、存じませんけど……
 ええと……その人はお二人の『上司』か何かですか?」

688小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/07/16(木) 09:30:59
>>687(レス遅れ失礼しました)

ヤジ「いや、ジョーの力を引き出してくれた人。
……あぁ、因みに俺は今は柴田 甲と名乗ってる。
みんなからはヤジって呼ばれてるから、そう呼んでくれりゃいい」

あと、俺はスタンド使いじゃないんだ。ジョーだけでさ。
とヤジが少し一歩下がり、小林は前に進み出た。

小林「名乗り遅れましたが、小林 丈(たける)
彼からは愛称でジョーと呼ばれてますが、小林でもジョーでも
どちらでも構いませんよ。
 ……ノートの形をした、スタンド ですか」

ヤジ「器具型、それでいて一般人にも見えるタイプは中々珍しいな」

ノートを一瞥する二人だが、覗き込む程に馴れ馴れしい真似はしない。

ヤジ「まっ、特にそっちが危険とかじゃない限り。俺達だって何か
手出ししようとか、そう言う気はないから心配しないでくれよ。
異能専門の自治団体めいた行動してるだけだし」

小林「君、いい加減にスタンドが見えるかどうかの道具ぐらい
貸し受けるように、上司でも誰でもいいですから頼んだらどうです?
見てて危なっかしいですよ」

ヤジ「誰でもスタンドが見えるようにするアイテムなんて、俺の雀の涙
見たいな給料で借りようとしたら、3ヶ月はもやしだけで生活しなきゃ
ならねぇよ。買うなんて、考えるだけでおっそろしい」

そんな風に、貴方の目の前の二人は好き勝手に話している。
特に何かしでかすようでもないし、特に悪人でも無い感じだが……。

ヤジ「そう言えば、君の知り合いとかに居ないか?
 そう言った、何かスタンドが見えるように便利にするような」

30万程度なら、何とか工面して借りれる準備は出来るんだけど、と。
ヤジは悩む色も表情に含んで貴方に尋ねた。

689関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/16(木) 11:04:06
>>688

「ヤジさんと、ジョーさんですねえ。
 私、関 寿々芽(せき すずめ)って言います〜
 同じ星見町民同士、よろしくお願いしますね」

      ペコ

「まあ、自治団体。そういうのもあるんですねえ。
 心配どころか、安心ですよう。
 人を傷付ける『悪い人』も、いる所にはいますもんね」

どうやら、強い警戒は受けていないようだ。

異能専門の自治団体。
上司、が存在する組織体系。
特殊な道具の『貸与制度』がある程の規模。

もちろん彼らにとって『話して良い』秘密なのだろうが、
関寿々芽にとっては、十分な『収入』となる情報だった。

「ううん、『質のいい道具』のツテならありますけど、
 そういう『特殊な道具』は、心当たりがありませんね。
 と〜っても目に効きそうなブルーベリーとかでしたら、
 格安で、ご都合させていただく事も可能ですけど……」

            パタン

「そういうのじゃあ、ないですよねえ。
 そのう、『オンセン』さんが持ってたりとかは……?」

帳簿を閉じながら、ヤジに話を返す。
商売についてチラつかせつつ、『音仙』について掘り下げる。

690小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/07/16(木) 11:18:05
>>689

関 寿々芽(せき すずめ)の思惑を知らぬまま、ヤジは
気さくな感じで対応を続けていく。

ヤジ「音仙さん? あの人は『供与』専門で、人の心の音の
育み具合とか、そう言った事以外で手助けはしないと思うぜ」

小林「彼女は、そうでしょうね……専門の事のみ相談してくれますが
この街の大事小事の騒動に手を出す事はないでしょう」

ヤジ「未覚醒の、素質ある人達を引き出すってのはなぁ……。
俺は色々事情あるから、スタンド使いにはなれないし なる気も将来
ないから、あんまあの人と縁が深くはなれねぇな」ハハ……

何やら自虐めいた小さな笑いをヤジは放つ。
 多分、色々と彼等にも背景はあるのだろう。『話して良い』秘密があるように
決して口外出来ない内容も。

ヤジ「『質の良い道具』……んで異能は絡んでない、か。
もしかして、そのノートで記帳したものを自由に取り出せるとか?」

小林「親友、御法度でしょ。人の能力を詮索するのは」

ヤジ「まぁまぁ。想像して勝手に独り言として話す分にはいいじゃん。
関ちゃんにも、黙秘権はあるんだし。
……俺からも質問だが、関ちゃんは誰かからスタンド能力を
開花して貰った感じかい?」

691関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/16(木) 23:28:44
>>690

音仙、については気になりはするが、
今のところ深く考えるべき存在でも無さそうだ。

「ふふ、企業秘密ですけど……
 そんなに便利な能力ではありませんよう。
 ただ、購入のツテがある、っていうだけの話です」

笑みを浮かべる。
『ペイデイ』の秘密は明かすつもりはない。
彼らの深層と同じだ……明かせる秘密とそうでない秘密。

「はぁい、私も『目覚めさせてもらった』クチです。
 オンセンさん、とは別の方なんですけどね。
 名前を言って良いのかは、わかりませんけど……」

「あ、ツテって言うのはその人ではないですよ」

彼ら自身はごくごく気の良い人達に思えるが、
背後にあるらしい『組織』もそうとは限らない。
仮に組織まで『完全に善性』だとしても、
彼らと『妖甘』の関係性までは分からない。

「お返し……じゃあないですけど、
 私からも質問、させてもらっていいですかあ?」

「スタンド使いの『組織』があるだなんて、
 私ったら全然知らなかったので…………
 もしよかったらですけど、色々聞いてみたいです〜」

692小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/07/17(金) 22:22:55
>>691

ヤジ「別に名前言いたかなけりゃ構わないって。
うん? 属してる組織の名前は『アリーナ』だよ。
主に、俺が行く所は地下闘技場とか開催する施設だが。派閥が
違う所だと、港の倉庫街とかにも確かあるな」

小林「スタンド使いにしか見えない張り紙で、闘技者を募集する
ような部署もありますし。謂わば、異能でのエンターテインメントで
収益を得たり、この街でスタンドの悪事の鎮圧などにも関わってますね」

言い渋る様子もなく、彼等にとっては極秘でもないらしい
『アリーナ』と言う組織について開示する。

ヤジ「……それと、気を付けときな関ちゃん。『エクリプス』って言う
単語に反応して、何かしら根掘り葉掘り聞き出そうとする
危なさそうな奴が居たら、人目を憚らず逃げたほうがいい」

アリーナについて話す時より、明るさを陰らせヤジは真顔で告げる。
小林は、口添えする様子は見せず貴方と相棒らしい彼を静観している。

ヤジ「この街で、大体の悪事に関与してた組織だからな。
人が想像する最悪な悪事の大体をやり遂げてきたと言って過言でない。
 もし、見かけたり。そんな感じの奴が居たら何時でも俺達に
連絡してくれれば、何かしら助けにはなれるからさ」

スマホを出しつつ、彼はそう力強く言い切った。
 電話番号を交換するのも良いかも知れない。少なくとも、貴方の
連絡先を悪用するような輩ではないだろうから。

693関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/17(金) 23:55:29
>>692

「『アリーナ』…………」

    ギュ

      「…………『エクリプス』」

「私ったら……そんなの、どっちも初めて聞きました!」

口元を『ペイデイ』で抑え、目を見開く。
……噛み締めるように、その二つの名を復唱する。

「この町に……そんな事があったんですねえ。
 でも……………………ふふ。安心ですよう。
 お二人みたいな人達が、私達みたいな、
 何も知らない人の事もちゃーんと守ってくれてるなら」

       スッ

「安心して、暮らせますよう」

スマホを取り出した。連絡先は、交換しておく。
彼らとの繋がりはきっと大きな意味がある。

「それで、あの、さっきちょっとだけ言いましたけど、
 私……『ちょっと質の良い道具』のツテがあるんです」

         『シュン』

スタンドを解除して、スマホの操作に手を空ける。
顔はヤジの目を見て、温和な笑みをさらに深めた。

「守っていただくお礼……ってわけでもないですけど、
 困ったことがあった時はお互い様、ということで……
 もし都合してほしいものがあったら……連絡して下さいねえ」

694小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/07/18(土) 22:37:27
>>693(長らく、お付き合い有難う御座いました。
次レスで〆させて頂ければと)

>『ちょっと質の良い道具』のツテがあるんです

ヤジ「へぇ、それじゃあ。期待ってわけじゃないけど
楽しみにしておくぜ、『また』会う時にな」

小林「親友、そろそろ次の場所の見回りがありますから」

ヤジ「わかってるって。可愛い女の子と話す時は
ちょいとぐらい、時間を消費するのを気にするなんて野暮だって事
ジョーも覚えとくべきだぜ」

軽口を交えつつ、ヤジと小林は貴方に暗に別れを告げる。
 
ヤジ「そっちも、エクリプスなり。奇妙な事件が身近で起きたら
直ぐに連絡してくれよ。何時でも力になるからな」

小林「えぇ、私達の役目ですので」

彼等は別の場所へと向かう。まだ、何か言いたい事があれば今の内だ

695関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/18(土) 23:28:20
>>694

「かわいいだなんて……照れちゃいます。
 ええ、ぜひ『また』……ふふ。
 見回り、お疲れさまです。頑張って下さあい」

           スッ

言葉通り朱が差す頬で、笑みを浮かべた。

スマホをエプロンのポケットに入れ、
小さく手を振ってその姿を見送る。


「あ、それと……!
 暑いので、水分補給にはお気を付けてえ!
 ジュースじゃなくてお水がいいですよう〜!」

遅れて、それだけ付け足した。

『収入』は大きい。
『アリーナ』について、多くを知る事が出来た。
そして繋がりさえ作れた……これは、大いに意味がある。

「……ふふ。
 『ペイデイ』……無駄遣いは、しませんからね」

この規模に隠れ蓑は恐らく通じない。
むしろ……『後ろ盾』にするつもりで行く。
そこにはやましいことなどなにもない、ちょっとした『副業』に過ぎないのだから。

696関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/23(木) 22:02:13

休日、真昼間の海岸にその少女がいた。
目にかからない程度に伸びた前髪と、
きっちりとおだんごにまとめた後髪。
温和気な顔立ちで、左目の下には泣き黒子。
服の上に着けた苔色のエプロンには、
胸元に真新しい『らっこ』のピンバッジ。

         ザザァーーー

寄せて返す波を見つめ、水面に釣り糸を垂らす。

「…………」

この少女は『釣り』を純粋に趣味の一つとしている。
だから、別の物を待つとしても、釣りは手段に上がった。

697氷山『エド・サンズ』:2020/07/23(木) 22:30:06
>>696
「ん・・・・・?」

昼間の海岸沿い、普段の『見回り』コースからは外れるが
なんとなく、今日は海な気分だったため、散歩に来た

ふと見ると海岸線には釣りをする女の子の姿が見える
その子本人に見覚えはなかったのだが・・・・

「あれ?」

胸元につけたピンバッジが気になった
あの絵柄は・・・・

      トコトコ  トコトコ・・・

「こんにちわ 釣れますか?」

関に話しかけたのは高校生くらいの少女であった
休日なのに清月学園の制服を着ていて、地味な印象だ

698関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/23(木) 22:39:39
>>697

「こんにちは。良いお天気ですね〜」

年の頃は、近いようだった。
顔立ち以上に温和な笑みを浮かべ、
体ごとそちらへと向き直る。

「今日はですねえ、たくさん釣れますよう。
 おかげさまで晩ご飯に困らないどころか、
 無駄にしない献立を考えるのに困っちゃいます」

       ニコ〜

なるほど、釣果は上々なようだった。
だが、少女の笑みは『今』一段と深まる。

「あなたも、釣りをされにきた…………
 わけでは、なさそうですね。
 ふふ……この海岸は、散歩道にも良いですよねえ」

699氷山『エド・サンズ』:2020/07/23(木) 22:50:35
>>698
「へぇ〜、こういうトコロでも結構釣れるものなんですねぇ」

温和な表情や柔らかい物腰にほっとする
急に話しかけて嫌がられないかな〜、と心配だったが杞憂だったようだ


      ジロジロジロ

氷山の視線はじろじろと『ラッコのピンバッジ』に向いている
気になるけど、どう話を切り出したものか・・・

>あなたも、釣りをされにきた…………
>わけでは、なさそうですね。

「あ〜・・・ そうなんですよねー
実は私、最近この辺で『ラッコ』と遊んだことがあるんですけど・・・・
もしかして、お土産屋さんとかで『グッズ』が売ってたりします?」

ちょいちょい、と『ピンバッジ』を指さしながら言う
好奇心が表情からあふれている

700関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/23(木) 23:31:34
>>699

「ふふ……こうして根気よく座っていれば、
 いつかは、ちゃーんと釣れるものなんですよお。
 時間の無駄になる事も、無いわけじゃないですけど」

「今日は大漁で……これで、プラマイゼロです〜」

           パタン

クーラーボックスの蓋を閉じ、
顔を上げる……と、目が合った。

「あら……? ええ、と」

胸元に露骨な視線を感じ、一瞬戸惑うが……

「……………あぁ〜っ! このバッジですかあ?」

エプロンについたバッジをつまみ、強調する。

ラッコの、ピンバッジ。
無地のエプロンに調和する、よく言えばシンプル、
悪く言うならば、あまり工夫のないデザイン。

「これは、スカイモールに売ってたんですよ。
 ほら、三階にある、安いアクセサリーのお店……
 ふふ、お安い割にはかわいいのが多くって…………!」

         「……」

「あのう……それより。
 ラッコと遊んだ、って。本当ですか?」

            ジッ ・・・

今度は逆に、その好奇心に満ちた顔を見つめる。

「もし、よかったらですけどお……
 そのお話……私に、詳しく聞かせてくれませんか?」

701氷山『エド・サンズ』:2020/07/23(木) 23:52:57
>>700
   ジロ〜〜〜〜〜・・・・

        ブンブン!  ブンッ!

つままれたバッジを注視しながら無言の首肯
ちょっとした期待感を感じながら言葉を続ける

「そうです! それですよ!
もしかしたら・・・・観光名所みたいにグッズが作られてるのかなぁって思ったんですけど・・・
あっ でも、凄いかわいいピンバッジですよね なるほど、三階の・・・」

少し、期待とは違った事に多少落胆しながらもすぐに表情を変え、
良い事聞いたな〜、というグッドニュースに口元を緩める


「あ〜・・・ やっぱり気になりますよね〜?
そうですねぇ、みんなに話しても『うっそぉ〜』とか『どうせ見間違いでしょ』とか言われるんですけど・・・
あれは確実に『ラッコ』でした、まあ・・・・信じてもらえないかもしれないですけど」

好奇心に満ちた顔に押されて、少しずつ話し始める

702関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/24(金) 00:36:09
>>701

「……北の方には、野生のラッコもいるんだとか。
 そこから、ここまで流れて来たのかも……
 ちょっと昔、ほら、『アザラシ』とか……
 ラッコと同じ寒〜い海の生き物が川に来たとか、
 そんなニュースもあったそうじゃないですか?」

        ニコ ニコ

「ならラッコだって、いてもおかしくないですよね。
 もし見つかったら『ホシちゃん』なんて名付けられて、
 『住民票』が発行されたりするんですよう。ふふ……」

眉唾物のラッコ目撃談を、全肯定する。
もちろん、関自身も見たからだ。
が、『言いふらして』良いのかどうかは悩ましかった。

    「……あのう」
 
「ラッコに会ったときのお話……私、もっと聞きたいです。
 ……横、座ります? 立ち話も疲れるでしょうし。
 敷き物してあるから、お尻は冷たくないですし……」

               ズッ

         「……狭かったらごめんなさいねえ」

地面に敷かれたシートは、詰めた今は十分座れる広さだ。
   
                ポス

体をずらした関の膝から、ラムネの袋が敷物に転がる。

袋の中で数粒ずつ小分け包装されたそれらは、
しかし高級感や華やかさと言うよりは、所帯じみた彩り。

703氷山『エド・サンズ』:2020/07/24(金) 01:09:09
>>702
「『アザラシ』・・・・・?
そういえば、結構昔に東京の川にアザラシがいたらしいですね、確か名前は・・・『タマちゃん』?
千島海流とか・・・・そういうのに乗ってはるばるとやって来たんですかねー」

よくよく考えるとこんな場所までとても長い旅路だ
可愛らしい『ラッコ』だったけど、思いの外苦労をしていたのかも、と
ラッコに対してちょっとした同情の念を覚えてしまう

「いいですね!『ホシちゃん』!
当人(当獣?)にとってはありがた迷惑かもですけど、あの可愛らしさは皆に広めたいです!」

両手を上向きに構え、『もふっ』とした触感を指先でゆっくりと表現しながら言う
記憶の中の毛皮の感触を想起しながら、目を細め、遠い方を見る

「あっ これはどうも」

    ヒョイ

転がったラムネの袋をひょいと持ち上げ、さっと関の手元に返す
同時にちょっと詰めてもらった敷物に身を縮ませながら腰掛ける


「あれは私がこの辺の海岸で黄昏れてた時なんですけどねー
にゃーにゃーっていう猫みたいな鳴き声が海から聞こえて・・・・ふと鳴き声の方を見たんですよ
そしたら流線型のぼでぃをした・・・・ふわっふわの『ラッコ』がそこにいて・・・・・!
・・・・・・・『カワウソ』じゃないですよ? あれは本当に『ラッコ』でした」

体育座りをしながらぽつりとラッコの話を始めた

704関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/24(金) 22:29:49
>>703

「あぁ〜、『川の名前』がそのまま名前になったんでしたっけ。
 うちの町の川ぁ〜……といえば『鵺鳴川』ですから、
 ホシちゃんじゃなく、『ヌエちゃん』ってことになるんでしょうねえ」
 
「もしくは……あ、いえ」

湖の名前を出しかけたが、
やはり目撃情報をやたらと広めるのはためらわれる。

「ヌエ……あんまり、かわいらしい響きじゃあないですねえ。ふふ。
 それなら『ホシちゃん』の方が、きっと本人も、気に入りますよう」

誤魔化しつつ……

「まあっ、どうもご親切に〜。
 ありがとうございます……あのう。
 ……おひとついかがですか? ラムネ。
 お礼というほどでも無いですけど」

ラムネの袋を受け取り、『個包装』を1つ、取り出す。
受け取ってもらえるかに問わず、話には笑顔で耳を傾ける。

「うふふ……疑ったりなんて、しませんよう。
 カワウソと見間違えるには、かわいすぎますし。
 毛皮がモフモフで、ぬいぐるみみたいで〜……」

「あっ……カワウソが可愛くないっていうんじゃあ、ないですけど〜」

705氷山『エド・サンズ』:2020/07/24(金) 23:16:04
>>704
「『ヌエちゃん』・・・ 『湖の名前』・・・ うーん・・・・」

妙に耳に残るような、語感のいい名前ではあるけれど別の意味が含まれそうな名前と
よくよく考えると誰も正式名称を知らない『湖の名前』を比較・・・

「『ホシミン』・・・ 『ホッシー』・・・ 『ホシちゃん』・・・
うん。 やっぱり『ホシちゃん』が一番かわいい響きですねー
あんまり外野がはしゃぐのもよくないですけど、こっそりと呼ぶ分には・・・まあ」

「あ、どうも」

ラムネの袋は遠慮なくいただき・・・口の中に放り込む
清涼感のある甘さが口中で拡散していく  アンマァ〜イ


「そうなんですよねー! 
知っています? 『ラッコの毛皮』は水中で空気の泡を蓄えるために緻密で繊細な毛がもふっと生えていて・・・
触ると手がこう・・・! 沈み込むように・・・・! えぇっ 
結構人懐っこい感じでゆっくりと優しく近づけば触らせてくれたんですよね!」

語る 語る
今まで誰も信じてくれなかった鬱憤が溜まっていたのか
堰を切るように、『あの体験』を語りだす 早口で

706関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/24(金) 23:38:26
>>705

「ふふ……もし『記念グッズ』を作るとしても、
 せっかくなら星見町にちなんだ名前の方が、
 町のイメージアップにもなって一石二鳥ですよねえ」

            ジュゥ ゥゥ ゥ

「同じ町の仲間、っていう感じもしますし……」

『清涼感のある甘さ』――――――『その通り』だ。
だが、これは『何』なのだろうか?
ラムネなのは間違いない。口どけも味の系統も、
ラムネという食べ物を超越するものではない。
だが、好みなどは抜きにして言えば……

              ハイクオリティ
その『味』が、あまりに『美味しすぎる』。

「まあっ、あのふわふわさにそんな秘密が……!
 ラッコのこと詳しいんですねえ、ええと……
 ああ、お名前……まだ聞いてませんでしたし」

「私ったら、自己紹介もしてませんでした」

       ニコ〜〜〜

「私、関 寿々芽(せき すずめ)って言います〜。
 苗字でも、名前でも、お好きに呼んでくださいよう。
 あなたのことは……なんて、お呼びしたらいいでしょう?」

関の方からラムネについて触れる事はない。ラッコトークに、笑みを浮かべるだけだ。

707氷山『エド・サンズ』:2020/07/24(金) 23:53:03
>>706
「・・・・・・!?」


            ジュゥ ゥゥ ゥ

何気なく口に放り込んだ『ただのラムネ』・・・・そのはずだった。
だが、この『甘味』はなんなのだろう?
氷山自身、ラムネはそれなりに好きな方だ、スーパーやコンビニで買い食いした事も多い
世の中に出回っているラムネの味についてはわかっている・・・・それほど大差はない事を

でもこれは・・・・・!?


「そ、そうですねー・・・ 『町の人気者』になって欲しいですよね」

疑問符が大量に頭の中に浮かびながらも、会話に答えていく
これは一体どこで売られているラムネだろうか・・・・などと考えながら


「あー・・・そういえばまだでしたね
私は氷山(ひやま)あきはって言います 高校一年です
あの〜〜・・・ところで」

       チョイチョイ    と、自分の口を指さしながら

「凄く美味しいラムネですけど、どこで売ってるんですか?
『ゴディバ』とか・・・ 『フォション』とか・・・ そういう『ブランド品』だったり、して?」

スイーツにはあまり詳しくはないが、思いついた『ブランド名』を言ってみる
本当に『ブランド品』だったら遠慮なく食べちゃって悪いな〜といった感じに、
申し訳なさそうに眉尻を下げながら・・・

708関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/25(土) 00:18:21
>>707

「あきはさん、ですね。
 ふふ、同じ町民同士、よろしくお願いします〜」

        ニコ〜

清月学園……そういえば『関』は同年代に見えるが、
学内でこの少女を見かける事は、あまり無いかもしれない。

「ああ……この『ラムネ』! 気になりますかあ?
 ふふ、市場には出回ってない品なんですよう。
 といっても、そんなに貴重な品ではないんですけど〜」

            ガサ…

ラッコのピンバッジも、持ち上げた袋に隠れる。
シンプルなデザイン。海外のメーカーだろうか?

「ちょったした『極秘ルート』がありまして……!」

やや不穏当な単語だが……笑みに暗さはない。
元々垂れ気味の目尻を下げた、穏やかな表情だった。

「そこから『通販』してもらってるんです。
 味がしっかりしてて、おいしいでしょう〜?
 普通のラムネよりはちょっとお値段しますけど……」

「ふふ……『無駄にお高い』わけじゃあないと、思いませんかあ?」

709氷山『エド・サンズ』:2020/07/25(土) 00:39:59
>>708
「ああ! やっぱり『特別な品』なんですね!
なるほど、なるほど〜 どうりで美味しいわけです」

ふと思う 同年代くらいに見えるけど学校ではあまり見ないなぁ、と
違う学校に通っているのかな? それとも何か事情が? 頭の中にいくつかの『答え』が浮かび上がる

「(まあ、あの学校凄く広いし、全然見たことがない人も結構いますし、ね)」

そう・・・・自分を納得させようとしていた、が・・・・

>「ちょったした『極秘ルート』がありまして……!」

「・・・・・・!? へ、へぇ〜、『極秘・・・・・・ルート』ですかぁ・・・」

何か・・・・凄く不穏な気配の漂う言葉が出てきた
『極秘ルート』・・・・・『白い粉状のモノ』・・・・・ 昨晩、父と一緒に見た『海外ドラマ』を想起する
あれは確か・・・・『麻薬密売』をネタにしたギャング物だった・・・・が・・・

「な、なるほど〜・・・・ 『ツウハン』でご、ご購入されたのですね
た、確かに、お値段に見合った価値がありますねぇ〜・・・」

ただの『妄想』でしかない、とフツーに考えればわかる
しかし・・・・不穏な単語と少女の持つ独特の『凄み』、そして先ほどの『疑念』
それらのちょっとした『要素』達が、頭の中で『ありえない妄想』を加速させていく・・・・っ!

モシカシテ・・・・    モシカシタラ・・・・・
                   ヒョットシテ・・・・・!


「あっ あー! そうでした、そろそろ帰らないと!
関さん、今日は美味しい『ラ・・・・ムネ』をご馳走していただきありがとうございます
『ホシちゃん(仮名)』が出たら教えてくださいね・・・・! では!」

そう、一息に言い放つと連絡先を聞くこともなく、
足早にこの場から去ってしまった

710関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/25(土) 01:34:58
>>709

「はあい、とっても特別で、
 価値に見合った…………あっ」

「そっ、そうですねえ、出没情報を共有しましょう〜。
 あきはさんも、もし見かけたら私にも教えてくださいねえ」

          「それでは〜」

                  「…………ふう」

去っていく足の速さを見て、ラムネの袋を閉じ直す。
ちょうど釣り竿に魚がかかった。が、逃した魚は大きい。

「ううん……怪しまれちゃいましたかねえ。
 『すぐ食べられる』『材料がシンプル』『単価が安い』」

「『宣伝』には良いかと思いましたけど〜。
 ……私の『言い方』のせいでしょうか?
 なんにしても……無駄にはしたくないですから」

         グググッ
                    ヒュッ!

「根気よくいけば、きっと……『お客さま』もキャッチ出来ますよう」

          パシッ

                      「……まぁっ! 『ながぐつ』……」

その後は、釣りを続けた。期待は少ししていたが……ラッコは、出てこなかった。

         『本日の支出』→『ラムネ菓子』購入に『500円』。定価は『100円』。

711夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/09(日) 00:47:29

穏やかな夏の昼下がり。

海辺に整備されたプロムナード。
道に沿って等間隔に並んだ街路樹。
その近くに倒れている『アリス風』の少女。

穏やかな昼下がり――――。

712三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/13(木) 21:01:06
>>711
「・・・・・・!?」

道を歩いていたらとんでもない光景が目に飛び込んできた
穏やかな昼下がり・・・・太陽はサンサンと照り付けり、道端ではアスファルトでセミが焼けている
これは・・・・・・危険な光景では?

「君・・・・!大丈夫かい?」

流石に見捨ててはいけない
倒れた少女に駆け寄り、抱きかかえようとする

713夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/14(金) 02:00:19
>>712

         ジュワァァァァァ…………

真夏のアスファルトは、さながら熱せられた鉄板のようだ。
転がっているセミも、いい感じに焼けている。
多分、『ミディアムレア』くらいだろうか?
少女はうつ伏せに倒れており、ピクリとも動かない。
こちらも似たような焼け具合になっていそうだ。

    「………………」

動かない少女の体を抱き起こす。
『アリス』を思わせる奇抜な格好をした金髪の少女。
両手の爪には『ネイルアート』が施され、
青い『サングラス』を掛けている。

                 「………………う」

微かな声で少女が呻いた。
これは――――『熱中症』だ。
何はともあれ、とりあえず生きてはいるらしい。

714三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/14(金) 17:07:01
>>713
   ミィーン ミンミンミンミーン

           ミィーン ミンミンミンミーン

起こしてみるとなかなかにエキセントリックな服装だ
最近の女の子にはこんな服装が流行ってるのかな、などと悠長な事を一瞬考え

「いやいやいやいや、ヤバいでしょ、これは
 ええっとぉ・・・・まずは水分を、いや救急車の方が先だったかな?
 ええい、ままよ! 『ブラック・アンド・ホワイト』!」

            ズギャンッ!

                    ヴィジョン
慌てふためいた様子の男・・・・その体から『人型の像』が発現する!
            ス タ ン ド
倒れる少女を前にして、『超常の能力』で何をしようというのか・・・・!?

     ジャララララララ!!

          ガトンッ  ゴトンッ  ゴタッ!

スタンドに『財布』を持たせ・・・自販機まで走らせる!
そして購入しているのだ・・・・『ポカリスエット』を! 
遠くの物を取りたいときスタンドがあると便利だよね!

「あー・・・もしもし、救急ですか?
 道端に女の子が倒れてましてね・・・はい
 多分『熱中症』だと思うのですが・・・・」

本体は悠々と『119番』に電話をしている

715夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/14(金) 21:42:45
>>714

意外ッ!!それは『飲み物購入』!!
まさしく予想の斜め上を行く超絶的トリック!!
ついでに救急車も呼んでおくという抜け目のなさ!!

    「う………………」

だが、同時に『落とし穴』も存在した。
電話を掛けるために、
一瞬だけ意識が少女から外れてしまったのだ!!
『予想の斜め上を行く事態』は、その間に起こっていたッ!!

              ドドドドドドドドドドドドドドドド

いつの間にか、少女の後ろに『人型スタンド』が立っていた。
両目は存在するが、何故か固く閉じられている。
その両手には、医者が使う『メス』の如き『爪』が備わっていた。
スタンドが音もなく腕を振り上げる。
そして、鋭利な『爪』を少女めがけて振り下ろさんとしている!!

716三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/14(金) 22:11:10
>>715
「はい・・・・・それではよろしくお願いします」

   ドドドドドドドド・・・!

「これ・・・・・は・・・・・!?」

電話で救急車を呼びながら自販機でポカリを買う『マルチタスク』
三刀屋の脳内キャパシティ的には結構辛い!
そのため・・・・・『突如として起きた事態』に今の今まで気が付かなかった!


「・・・・・・!? な、何ィィ―――――――ッ!」

『人型スタンド』の蛮行!
その行動を止める事は・・・・できない! 間に合わないのだ!
『ポカリ』を抱えた『ブラック・アンド・ホワイト』が慌てて駆け戻る!

717夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/14(金) 22:41:56
>>716

『ブラック・アンド・ホワイト』が『人型スタンド』に接近する!!
しかし、敵の動きは『速かった』!!
次の瞬間、人間以上のスピードで『爪』が振るわれるッ!!

        シ ュ
              バ ァ ッ 
                      ! !

だが――――意外にも、傷は『浅い』。
というより、傷自体『ほぼない』と言った方が良かった。
肉眼で確認するのが難しい程に、
『小さな傷』を付けただけのようだ。
外科手術を思わせるような精密さだ。
このスタンドは、
『ブラック・アンド・ホワイト』と同等の精度を持っている。

    「う…………ん…………」

『ドクター・ブラインド』の『能力』。
本体に『超人的聴覚』を移植した。
意識が朦朧としていて声が聞き取りづらかったせいだ。
『視覚以外の感覚』は繋がっているので、
本来は出すだけでいい。
ただ、より『クリア』に聴くためには、
こうした方が都合が良かったのだ。

                「…………ミ…………ズ」
          バ タ ッ

小さく呟いた少女の体が、前のめりに傾ぐ。
そして、そのまま倒れ込んでしまった。
とりあえず、『ポカリ』を飲ませた方がいいかもしれない……。

718三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/14(金) 22:58:29
>>717
大慌てで駆け戻る『ブラック・アンド・ホワイト』
その目の前で、無情にも『謎の人型スタンド』の『爪』が振り下ろされる!
あなや!『少女』は無残にも惨殺されてしまうのか!?

「――――――浅い!?」


正確無比な爪捌き、薄皮一枚も傷つけず撫でるようなその動き!
あれぇ〜ひょっとしてコイツって『敵』じゃない? と、三刀屋が思うや否や!

>「…………ミ…………ズ」

『熱中症アリス』の呻くような呟きが聞こえた
思わず勢いで『謎の人型スタンド』を殴ってしまいそうになっっていたが、
これは・・・・・もしかして、この娘のスタンドかな? という発想に至る

「そうだ!ねぇ、君、水分はちゃんと取らないと駄目だよ」

      パッシィィ!

              グイィィ!

『ブラック・アンド・ホワイト』から『ポカリ』を受け取る!
そして、目の前の少女に飲ませようとする!
あぁ、残りのポカリはまだ冷たいから腋の下とか冷やすのに使っておこう

719夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/14(金) 23:28:37
>>718

『人型スタンド』はそれっきり何もせず、無言で佇んでいる。
おそらく、三刀屋の予想は当たっているのだろう。
もし殴っていたら、その一撃によって、
『トドメ』を刺す結果になっていたかもしれない……!!

    グビグビグビグビグビィ

ほどよく冷えた『ポカリ』が少女の喉を通るッ!!
それと同時に、少女の顔色が少しずつ正常に戻っていく。
腋の下も冷やせて一石二鳥!!

     「お」

           「おおお」

                   「おおおおおッ」

            ガバァッ!!

  「 い き か え っ た ! ! 」

                   「――――ぞ!!」

唐突に、『熱中症アリス』が勢い良く立ち上がった。
どうやら『復活』したようだ。
三刀屋の勇気ある行動が、『一つの命』を救ったのだ!!

720三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/14(金) 23:46:49
>>719
     ゴゴゴゴ・・・

無言で佇む『人型スタンド』・・・ギラギラとした爪に威圧感を感じる
とくに何もしてこないということは・・・・やはりこの『熱中症アリス』のスタンドなのだろうか

>  「 い き か え っ た ! ! 」


「ふっ、復活した!
 あ〜ほらほら、急に立ち上がると立ち眩みとか危ないから物陰で休んでいなよぉ
 それにしても凄いね、君の回復力
 ハハハ、僕があんな状況だったら2-3日は寝たきりだったよ」

ちょい、ちょい、と少女に肩を貸しながら物陰への移動を促す
あ、でもやっぱり人と密着すると暑苦しいのでスタンドで肩を貸す

「やっぱり、若さってヤツかな?
 格闘漫画の『復活ッッ!』シーンもかくやって感じの起き上がりだったよ」

721夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/15(土) 00:11:56
>>720

             「おっとっとっ」

       グラッ

不意に、少女の体が揺れる。
やはり、まだ完全には復調していなかった。
『ブラック・アンド・ホワイト』に肩を貸され、
大人しく木陰に運ばれていく。

    「いいや――――」

            「――――『アリス』だからだ!!」

自称アリスは、『謎の根拠』を語る。
少なくとも、外見はアリスらしく見える。
やや『パンキッシュ』な方向にアレンジされているが。

「『いろんなセカイ』をわたりあるいてきたからな〜〜〜」

「『アレ』とか『コレ』とか」

「あ!!『ソレ』もあったか!!」

スタンドと共に頷きながら、少女は一人で納得している。
暑さのせいで、頭の芯が茹っているのだろうか?
だが、その口調からは『妙な自信』が窺えた。

722三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/15(土) 00:28:00
>>721
>「――――『アリス』だからだ!!」

「―――――ッ!? ・・・・なるほどねぇ」

なかなか奇想天外な格好をした女の子だけど
この暑さのせいか頭がイカれてしまったようだ。かわいそうに
とはいえ、救急車が到着するまで暇だ
流石に放っておくわけにもいかないし、世間話でもしてみようか
それに・・・・こういう荒唐無稽な妄想が何かの『ネタ』に繋がるかもしれないし

「それじゃあ君はまるで『異世界転生モノ』の主人公みたいに
『別のセカイ』を股にかけて冒険してきたというのかい?
 それじゃあさあ、君が一番『面白い』と思ったセカイはどこかな?」

よっこらしょ、っと木陰にアリスを座らせながら、聞く

723夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/15(土) 01:08:13
>>722

「『イチバン』〜〜〜??そりゃムズカシイぞ。
 だって、きめらんないし」

「まぁ、イロイロあったけど。
 チカの『ヒミツトウギジョウ』にサンカしたり、
 『サイバーくうかん』にゴショウタイされたり、
 『しろいホンをもったナゾのショウネン』をおいかけたり」

「コモリのバイトしたら『ボウレイ』とたたかうコトになったり、
 『ユメのセカイ』で『マシンガン』ぶっぱなしたコトもあるし」

少女は自らの『体験』を口にする。
夢見がちな少女の妄想と片付けてしまう事も出来るだろう。
だが、この少女が『スタンド使い』である事は事実なのだ。

「あ!!『イセカイなんたら』っていうのは、
 どっかできいたコトあったな〜〜〜。
 ソレと『にたようなコト』があったっけ??」

「ミチあるいてたら、『バール』でアタマなぐられてしんだ。
 めがさめたら、ショクドウみたいなトコにいてさぁ」

「『さっきのはユメだけど、『ヤッたヤツ』をツブさないと、
 『マジでしぬ』っていわれたから、ソイツをツブしにいった。
 『ナントカおうこく』みたいなセカイで、『バシャ』にのって」

「『ナイフ』できられたときはイタかったな〜〜〜。
 『ユビ』が4ほんまとめてフッとんだし!!
 『トウギジョウ』で、
 かたてがバキバキにおられたときよりイタかった!!」

思い出したかのように、
少女は自らの片手を軽く振ってみせた。
彼女の話しぶりは、スラスラとしていて淀みがない。
これが全て頭の中で作り上げたでっち上げなら、
かなり『想像力』が豊かと言える。

724三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/15(土) 01:23:50
>>723
「ほうほう、ふむふむ、なるほど」

思った以上に『持ちネタ』が豊富だなぁ、この子
とか思っていたが、スラスラとした、とても流暢な話しぶりに段々と心証が変わっていく

うわ言のような妄想であればもっと単発的な話し方になるだろう
作家のように想像力豊かな人間というだけなら話に一貫性があるはずだ
しかし、この少女の話に一貫性はまったくない、支離滅裂だ
で、あるにも関わらず、話が破綻しているわけではない

まるで・・・・本当に目も眩むような大冒険をしたかのような・・・・

「うーん・・・この子が『想像力豊かな女の子』で今の話が全部『フィクション』だったら話は楽なのにね
 もしそうなら、僕はこの子を漫画の原作者としてスカウトしていたのだけれど・・・・」

と、小声でつぶやく
普通は聞こえないはずの小声だが・・・『超聴力』があれば聞こえてしまうだろう


「凄いねキミ その・・・ジャンルの幅が広すぎる
 それじゃあ、こんなところで倒れていたのも、何か・・・強敵とのバトルとかがあったわけかなぁ?」

725夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/15(土) 09:06:21
>>724

「アリスをスカウトするなら、
 ギャラは『100フレミッシュジャイアント』で」

『フレミッシュジャイアント』とは『世界一デカいウサギ』である。
要するに、『それくらいビッグなネタ』を、
『100個』提供して欲しいという意味だ。
なぜウサギか??
アリスはウサギをおうモノ。
そして、わたしはアリスだからな!!

「あぁ、そのとおりさ……。『ヤツ』はツヨかった。
 フカクにもユダンしていて、
 きづかないあいだにやられてしまっていたんだ……」

「『ナツだからウミがみたい』とおもってココまできて、
 たのしくなってついはしりまわっていたら、
 きゅうに『たちくらみ』が……!!」

「まさか、こんな『コウカツなワナ』をしかけていたとは……。
 わたしがココにくるコトまでケイサンにいれて……!!」

           グッ

「――――『ナツのタイヨウ』はツヨかった!!」

『ハルのタイヨウ』とはレベルがちがう。
ホンキになった『ヤツのチカラ』がこれほどとは、
ソウテイガイだった……。
だが、『にどめ』はない。
『ギャクテンのサク』はスデにできている!!
ツギは『ポカリ』もってこよう。

726三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/15(土) 11:02:39
>>725

「耳がいいねぇ」

相当小さな声で呟いたのに聞かれてしまった、これが若さか
高い音がそろそろ聴こえ難くなってきた自分の耳に哀愁を覚える

「へぇ〜、『立ち眩み』をねぇ
 ただでさえ今年の夏は暑いからねぇ、はしゃいでるとすぐに脱水になるよ」

どうも『スペクタクルな大冒険』の末に倒れたとかそういうわけではなさそうだ
如何に強大な『スタンド使い』といえども『夏の暑さ』には勝てない

・・・・・いや、勝てる能力とかもあるのかな?

    ピーポーピーポー


そうこうしているうちにサイレンの音が近づいてきた
三刀屋が呼んだ救急車だろうか?

727夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/15(土) 12:40:29
>>726

「フフフフフ、おうさまのミミはロバのミミ。
 アリスのミミは『ウサギのミミ』だ!!」

「おまけに『ハナもきく』し、しかも『グルメ』でもある!!」

    グビグビグビィ

自信満々に胸を張り、残っていたポカリを一気に飲み干す。
遠くからは、サイレンの音が近付いてくる。
とはいえ、まだ『遠い』。
普通の人間には聞き取れない距離だ。
『ドクター・ブラインド』の『超人的聴覚』だからこそ、
『それ』をキャッチ出来た。

          「………………」

「さて!!そろそろかえるか!!
 ひさびさに『しおんちゃん』のトコでもよってこうかな〜〜〜。
 たすけてくれてサンキュー!!」

「――――――そんじゃ!!」

                   タタタタタッ

挨拶を済ませると、そそくさとその場を離れていく。
救急車が来る前に逃げ出そうという算段だ!!
あとはまかせた!!

728立花『キャッチ・マイフォール』:2020/08/15(土) 21:13:42
雷雨。雷を伴うスコール。
にわかにざわめく住宅街、コンクリートのにおい。

雨雲を見上げ、不敵に笑う男が一人。
ラバースーツの上にスーツを着込んだ出で立ち。

「クク、もう…貴様らの好きにはさせん」

      ーーーズギャン!

男はスタンドを発現する!その人型スタンドは針…
否、槍とも呼べる凶器じみた得物を構えている!

729三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/15(土) 22:34:38
>>727
「あ、逃げた・・・・」

   ピーポーピーポー

救急車が来るから、と呼び止める間もなく夢見ヶ崎は去っていく
・・・・遅れて救急車のサイレンが近づいてきた

「困ったね・・・・これは僕が説明する流れになりそうだけども・・・逃げるか」

非道! こちらも逃げた!
後からこの場所に来た救急隊員はとても誰もいない路上を前にとても困ることになるだろう!
こういうヤツがいるから救急車の適正利用について問題提起されるのだ!

よいこのみんなはきをつけよう!

730花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/08/19(水) 21:02:19
>>728

「…………何だァ〜?」

雨宿りの最中に、その光景を目撃した。
あからさまに怪しい男が『スタンド』を発現している。
警戒心を抱いたとしても無理はないだろう。

「この前も自販機の前でイカれた野郎に出くわしたしよォ。
 どうも暑くなると、妙な連中が湧いてきやがるぜ……」

        ズギュンッ

万一に備えて、手の中に『スウィート・ダーウィン』を発現する。
客観的には、
『レザーファッション』で固めた赤毛の男が立っているだけだ。
だが『スタンド使い』には、
男が『拳銃』を握っているのが分かるだろう。

731花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/08/22(土) 20:48:05
>>730

「…………何だったんだ、ありゃあ?」

しばらく男の様子を観察し、雨が上がるのを待って、
その場から立ち去った。
とりあえず危険はなかったものの、解けない謎が残る。
こういう気分の時には、
頭に一発ブチ込んで『スッキリ』するのが一番だ。

732俵藤 道標『ボディ・アンド・ソウル』:2020/08/23(日) 13:08:55

  ミ――――ンミンミン…ジジジジジジジ…

真夏の路上…
陽炎立つアスファルトの向こうでダンスする人影どもは、
熱せられた空気に歪められた景色なのか、
暑さでおかしくなっちまった奴がマジに踊ってるのか、
それともあれは…おかしくなっちまったオレ自身の影なのか…

フラッ     …ビリ  
         ボトボトトーッ…

「…」「…ずぎゃぁァァ!」

白髪の男が、路上に手荷物をブチ撒けている。

733花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/08/23(日) 14:22:18
>>732

(オイオイ、どっかで見たツラだと思ったら……)

(この前のイカレ野郎じゃねえか……!)

偶然その場を通りかかり、思わず足を止める。
いきなり車で突っ込んできた上に、
自販機に話しかけていたようなヤツだ。
あまり関わり合いになりたくはない。

              ザッ ザッ ザッ…………

気付かれる前に後ずさり、そこから離れようとする。
だが、ブチまけられた荷物の一部は、
こっちにも転がってきていた。
俵藤の方に注意が行っていたせいで、
それを足で蹴っ飛ばしてしまう。

             ザリッ

「…………チッ」

734俵藤 道標『ボディ・アンド・ソウル』:2020/08/23(日) 15:05:24
>>733

> ザリッ

 コロコロ…

花菱が蹴っ飛ばしてしまったのは……『スゴイカップ チョコミント味』。
カップに入ったアイスだ。円筒形だからよく転がる…

…思わず地面に意識が向いて、周りに落ちている物が見えた……
『氷』、『めっちゃチョコミントバー』、『ざるそば』、『チョコミントフラッペ』、『コーラ』…
清涼感溢れるラインナップ…はやく拾わないと温まっちゃうやつ…



>「…………チッ」


  チラッ
    「…」

イカレ野郎は君の足元から転がってくる『スゴイカップ』を見て…



      
「……『チョコミント』が足蹴にされたァァーーッ!!」


「あっゴメンゴメン『チョコミント』だったのかぁ☆
 土みてーな味するから地面だと思って間違って蹴っちゃったぁ☆
              …とでも言いたいんだろ えーッ!?」

「チクショーあっちいし!『袋』は破れるし!」
「『チョコミント』は世間から理不尽な迫害を受けているし!」


  「…ぬぐああああッ!」

            バッッ!

なにやら宙に向かって吠えだした…ひとまずは、怒りは花菱のほうを向いていないようだ。
単純に認識してないのかもしれない…今のところは。

イカレ野郎は前と似たような格好だ…白Tにジーンズ、サンダル。『マイハンドル』を腕に引っ掛け…
…白Tに紛れて見えにくいが…携えているのは『破れたビニール袋』か?

735花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/08/23(日) 17:42:33
>>734

(コ、コイツ……!
 分かっちゃいたが、
 相変わらず『斜め上』の方向にブッ飛んでやがる……!)

(どうも『暑さ』のせいだけじゃない気がするけどよォ……)

「………………」

      ズギュンッ

少しの間、無言で狂乱する姿を見つめる。
そして、右手に『スウィート・ダーウィン』を発現した。
以前に出くわした時に見せた『回転式拳銃のスタンド』だ。

       ガァァァァァ――――――ンッ!!

腕を上げ、躊躇する事なく『発砲』する。
狙いは野郎の『足元』。
放ったのは『実弾』ではないため『無害』とはいえ、
流石に当てる気はない。
『銃声』で威嚇して、とりあえず静かにさせようという魂胆だ。
前回の仕返しという意味もあるが。

「オイ、落ち着けよ……。
 そうやって目の前で騒がれると、
 余計に暑苦しくなっちまうからよォ……」

「……心底どうでもいいんだけどよ、
 やたらと『チョコミント』ばっか買ってやがんなァ」

そう言いながら、『スゴイカップ チョコミント味』を拾う。
辺りを見渡すと、
『捨てられたビニール袋』が落ちていたので、
それに入れておく。
残りのヤツもさっさと助けてやらないと、
あっという間に原型を留めない姿に変わり果てるだろう。
放っておきたい所だが、既に関わってしまった。
『成り行き』上、他のも拾ってやる事にする。

736俵藤 道標『ボディ・アンド・ソウル』:2020/08/23(日) 20:09:44
>>735


 >      ガァァァァァ――――――ンッ!!


  ビクゥッッッッッッッッッ


…突如響いた銃声と、地面に刻まれた弾痕に硬直。


「…………」
 「…あっお久しぶりです…」


…気付いた。

「いやァー…暑苦しいトコお見せしちゃって…
 あっアザッス…手間もかけさせちゃってすんません…
 …あ 転がってる缶コーヒーもそうです あのガードレールの裏の奴 
 そうそうソレソレ……(…チャカ持ちに近づくの怖い…)」


イカレ野郎は花菱から微妙に距離を取っている…



>「……心底どうでもいいんだけどよ、
  やたらと『チョコミント』ばっか買ってやがんなァ」

「ハハハ俺用の訳ないじゃないですか
 こんな沢山食べたら口ん中歯磨き粉になっちゃうっすよ気分悪い…」

「差し入れ用っす チョコミント」
「『何かアイス買ってきて』ってお得意先に言われて…
 とりあえず布教すっかなって…チョコミント。」


「って理由で…こんのホットな中で荷物抱えて歩いてる訳です
 っっってのにさぁ――――…」


 ミチミチミチ…
   ベリベリベリベリ

「…それもっこれもっ」
「この『ビニール袋』の野郎がァッ」
「金ェ出して買ってるのにッ破れやがるからッッ」

まだ微妙に怒りが残っているようで、手元の破れたビニール袋を更に引き千切っている…


というか…小さい…
…いやヒトとしての器の話じゃなくて…そりゃ俵藤の器はSサイズだろうが…
…『破れたビニール袋』が…モノの量に対して明らかにSサイズ…

737花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/08/23(日) 21:09:57
>>736

「オメー、そりゃアレだろ……『袋のサイズ』が……」

言いかけて止めた。
わざわざ口出しする事でもない。
そもそも、言っても無駄なような気もする。

「……ま、いいか。
 ビニール袋が信用できねえってんなら、
 『エコバッグ』でも使ったらどうだ?」

「いやいや、そうじゃねえな。
 イラついてる気持ちは分かるけどよ、
 さっさと『残り』を拾った方がいいんじゃねえか?」

「こうしてる間にも、
 サウナに入ってるみてえにジリジリ焼かれてんだからよォ。
 差し入れる前に溶けてなくなっちまうぜ」

「――ホレ、コレでいいだろ」

片手に『拳銃』を持ったまま俵藤に近付き、
商品を詰めた袋を差し出す。
残っているのは、俵藤の後ろに転がっているものだけだ。
地面からの熱を考えると、恐らく早く助けた方がいいだろう。

738俵藤 道標『ボディ・アンド・ソウル』:2020/08/23(日) 22:50:51
>>737

>『エコバッグ』でも使ったらどうだ?

「え…嫌だ…」
「手荷物増えたら体が『重く』なるじゃないですか…」
「重くなったら遅くなるんですよ?1グラムであろーと妥協したくないんで…」

       ヒョイ
後方のざるそばを後ろ手で拾う…
目の前のチャカ持ちさんが未だにチャカ持ってるし…なんとなく目は離さないようにしとこう…
…暴発とか怖いしな…


>「――ホレ、コレでいいだろ」

「あざっす…」

      ガサ…

手を伸ばしに伸ばして、指先で引っ掛けるように受け取る…
ざるそばをきったねえ袋に突っ込みつつ…

「…あのォ…その『拳銃』…しまってくれません?怖いんで…」

「なんで『拳銃』そんなブラブラさせてるんです…?…現代日本で拳銃必要な状況あります…?」
「突然誰かが襲ってくるわけでもあるまいに…ましてや俺が…こんなにひ弱そうなのに…」

  ゴソゴソ…

「ウーン…まいっか…命乞いというか、お礼というか、お詫びというか…これあげます」

        ベチャァ…

差し出されたのは『チョコミントバー』…何となく曲がっている…元気のないシルエット…

739花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/08/23(日) 23:34:26
>>738

「好きにすりゃいいさ。
 人様に迷惑掛けてなきゃ問題ねえからよ」

「――――あぁ、『コレ』か?わりィな。忘れてたぜ」

(『襲ってくる訳でもない』だァ?
 車で突っ込んでくるヤツの言うセリフかよ……)

             フ ッ

次の瞬間、『拳銃のスタンド』は煙のように消え去った。
俵藤の言動に気を取られて解除するのを忘れていたようだ。

「『使い道』ってのは色々あるもんだ。
 目の前に『イカれた野郎が現れた時』なんかには役に立つ」

『誰』とは言わないが。
もっとも、『スウィート・ダーウィン』の最大の用途は、
自分の頭をブチ抜く事にある。
それを考えれば、案外コイツと同類なのかもしれない。

「ありがとよ――って、オイ……。
 コレ、だいぶ形が崩れてねえか?」

「まぁ…………『一応』受け取っとくけどよォ…………」

微妙な気分で、元気のない『チョコミントバー』を受け取った。
あまり食いたいとは思えないが、
このまま無駄にしてしまうのも勿体無い。

「そういや『差し入れ』に行く途中なんだろ?
 早いトコ行った方がいいぜ」

俵藤が向かっていた方向に視線を動かす。
渡された『チョコミントバー』が溶けてしまう懸念もあるが、
このクソ暑い中で立ち話を続けるのもキツイものがある。

740俵藤 道標『ボディ・アンド・ソウル』:2020/08/24(月) 01:48:28
>>739

「まぁこのあっちい中…突然暴れだす奴もいますよね…」
「この前自販機に当たってたアンタみたいに…フフフッ」

俵藤のスタンド、『ボディ・アンド・ソウル』は、
『尽きず、余らず、パワフルで軽い、完全な燃料』を俵藤が『道具屋』に求めた結果の力だ…

こいつの『拳銃』のヴィジョンも…
普通に頑張ってても手に入んない『なんか』を求めた結果なんだろうか…

割と興味があるが…正直今はそんな空気じゃないよな…あっちい。


>「そういや『差し入れ』に行く途中なんだろ?
  早いトコ行った方がいいぜ」

「ウス アザス」
「…あと…」

    ズイッ

花菱に近寄り、耳打ち…

      ヒソヒソ… 

 「なんかいつもアンタ変なことしてますよね
  …今日も突然地面を撃ってたし…ビックリしましたよオレぇ」
 「…お節介ながら…そういう目立つことするのやめた方がいいっすよ…変な奴に絡まれちゃう…」


純粋なお節介…花菱の周りにイカレた野郎が寄って来る理由ってそういうトコなんじゃないか?

 ザッ 
  「じゃッ」

「…あっちいわ…もういいやその辺の車で帰ろ…」
そこにあった路駐してる車に『ボディ・アンド・ソウル』を憑依させ、そいつを操縦して去る。
路駐禁止の道に停めとくヤツが悪い。

741花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/08/24(月) 20:25:29
>>740

「ハハハッ、そりゃあ悪かったな。
 『自分の事』ってのは意外と気付きにくいもんでよォ」

(オメー、人に説教できる立場かァ?)

(……『分かってねえ』ってのは恐ろしいもんだぜ)

色々と思う所はあったが、口には出さなかった。
これから立ち去るのだろうし、わざわざ引き止める事もない。
何しろ、ただ立っているだけでも、
体力を削られるような暑さなのだ。

「『その辺の車』って、お前…………」

いくら『路駐』とはいえ、
人の車を堂々とパクッて行く姿には呆気に取られた。
普通に考えれば『犯罪』だが、
そもそも駐車している側も『犯罪』だ。
それを考えれば『どっちもどっち』――なのか?

「ま、俺も他人に説教できるような人間でもねえしよ……。
 何よりメンドくせェ……」

             ザッ

「しっかし――――
 最後の最後まで『とんでもない野郎』だったぜ……」
 
「マジにブッ飛んでやがる」

『チョコミントバー』が完全に溶けきる前に、その場を去る。
結局の所、俺がイカれてるから、
あんなのと出くわしちまったのか。
そんな事を考えかけたが――――途中で止めた。

742ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/08/24(月) 22:01:45

「ふん!」

どちらかというと湖に近い、自然が多い道端で。
金髪の女の子が飛び跳ねていた。

「うーむ……難しいのう」

743ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/08/25(火) 23:23:10
>>742

「疲れたのう……帰るか……
 骨折り損の……骨折り損のくたびれ……なんじゃったか……」

とぼとぼ去って行った。

744関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/26(水) 19:16:17

「…………」

小規模な『フリーマーケット』の一角に、
エプロンを付けた少女が席を取っている。
前髪は目の上で揃え、後ろでお団子を作った髪には、
草花を加工したようなアクセサリーが幾つか付いていた。

出品はそれと同じようなアクセサリーがいくつかと、
古着が入ったケース、料理本、調理器具など。
後ろにダンボールが数個あるが、それが在庫だろうか?


『他にも日用品あります 値段応相談』


少なくとも、『他』が充実している様子はないが…………

745百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/26(水) 19:48:38
>>744

    ザッ

しばらくして、一人の女が足を止めた。
白いパンツスーツを着た背の高い中年の女だ。
煙草を咥えているが、火は付いていない。

「古着にアクセサリー……それと料理の本に料理道具」

「フフ――何だか『家庭的』って感じがするねえ」

腰を落とし、並べられている品物を見下ろす。
少女の前で立ち止まったのは、
特に理由があっての事ではなかった。
強いて言うなら、『勘』のようなものだ。

「そっちのダンボールには『日用品』が入ってるのかい?」

ダンボール箱に視線を向けながら、少女に尋ねる。
多分、別に何でもない事なんだろう。
ただ、何となく『気になった』。

746関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/26(水) 20:03:42
>>745

「はぁい、いらっしゃいませえ」

        ペコ……

座ったままだが、頭を下げる。
かしこまり過ぎていない、とも言えるだろう。

「ふふ、どれも家庭で使ってたものですので〜。
 古くなったり、使わなくなったので売りますけど、
 まだまだ捨てるのは勿体ない物ばかりですよう」

タバコに一瞬だけ視線が移ったが、
火もつけていないなら注意する理由もないからか、
すぐに笑みを称えた目を、目に合わせた。

「あ、その箱はそうですね〜。
 ここに無いものは、そこにありますよ。
 ええと〜、何か……お探しのものとかありますか?」

「あ、無理にというわけではありませんけど〜。
 こう見えて……品揃えには自信があるんですよう」

箱の大きさは常識的なレベルだが、
果たしてどれほど『揃えられる』ものだろうか?

ともかく、少女の温和な笑みに『ウソ』はまだ無い……

747百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/26(水) 20:45:05
>>746

「いい事だと思うよ。
 使わなくなった物でも、必要な人の手に渡っていくと、
 その品物にとっても幸せなんじゃないかねぇ」

煙草を咥えているのは、ただの気休めだった。
本当なら、火を付けて煙を味わいたい所だ。
しかし、近頃は喫煙に対する風当たりが強い。
そうでなくとも、こうした場で歩き煙草は『モラル』に反する。
自分から反面教師になるつもりはない。

「いや、何か探し物があるって訳じゃあないんだけどね。
 ただ、こういう場所は掘り出し物があったりするもんだから」

「それで、こうしてブラブラ歩いてるのさ。
 『何かないか』と思ってね」

「面倒かけて悪いんだけど、
 その『箱の中』見せて貰ってもいいかい?」

「もしかすると、アタシの欲しい物があるかもしれないからさ」

少女の後ろに置かれた箱を指差す。
普通、宣伝文句というのは大きくするのが自然だ。
だが、少女は『自信がある』と言い切った。
この小さなフリーマーケットで、
そこまでの品揃えを実現出来るとは考えにくい。
彼女の掲げる『宣伝文句』がどれ程のものか、
確かめてみたくなった。

748関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/26(水) 22:18:57
>>747

「ふふ……そうかもしれませんねえ。
 少なくとも売った私と、
 買った人は幸せなのは間違いないですし」

         ニコ 〜

「それだけでも十分ですのに。
 物も幸せなら、もっといいですね〜」

そう言いながら、指差した先を振り返る。
話題の中心になりつつある『段ボール箱』だ。
過剰に膨らんでいるといった、風でもないが。

「あ、あ〜。これの中をですか?
 あのう……これはお店で言えば『倉庫』で、
 お客さまに探してもらうところじゃないんですよう」

       スッ

小さく手を出して、指先からそれを遮る。
しかしそれは自信の『虚偽』ではなく。

「期待に添えられなくてごめんなさぁい。
 『物』が何か決まってれば、探せるんですけど〜」

「例えば……『ライター』なんかも、
 とっても幅広く、扱ってますけどお……?」

品揃えの自信自体は、嘘ではないようだった……『何』だ?

749百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/26(水) 23:06:19
>>748

「ああ、気にしないでいいよ。無理にとは言わないからね」

「『ライター』も間に合ってるんだ。だから、今は結構」

軽く手を振って、少女の言葉に応じる。
『出してない』のだから、
それを見せないのも不思議ではないのかもしれない。
だが、持ってきているという事は、
『売るつもり』があるという事だ。
そうでなければ持ってこない。
はっきりとは言えないが――何か『奇妙』だった。

「さっきも言ったけどねえ、
 特に『目当ての品』ってのは無いんだよ。
 こういう場所ってのは、
 『気になる物を見かけたら買う』ってのが多いだろ?
 来る前から欲しい物が決まってるってのは、
 あんまりないんじゃないかねぇ」

「いや、別にお嬢ちゃんを責めてる訳じゃないんだよ。
 ただ、『中身』を見せて貰って、
 何か良さそうなのがあったら買おうかと思ってたもんでね」

「もし迷惑じゃなかったら、
 『どんな物が入ってるか』だけ教えてもらえないかい?
 それでピンと来るって事があるかもしれないからねえ」

口元に薄く笑みを浮かべながら、更に問い掛ける。
箱の大きさは、常識的なサイズだ。
そんなに沢山の品物が詰まっているようには見えない。
だから、『決まっていれば探せる』という言い方が気になった。
探すのに苦労するとは思えないからだ。

750関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/27(木) 09:25:50
>>749

「……『どんな物』ですか、そうですね。
 あの、ちょっと待ってくださいねえ。
 品物を揃えたのは私、自分でじゃないので」

「ええと、今日はぁ……」

細かい嘘を混ぜながら、
立ち上がって箱の中を見る。
そして漁るように手を動かすが。

「『調理器具』……が、揃ってますね〜」

百目鬼ほどの『目の効く』人間なら、
それが『手振りだけ』と見抜けるかもしれない。

「ここに置いてるもの以外でも、
 『調理器具』でしたら色々ありますよ。
 刃物は危ないので扱ってませんけど……
 ピーラーとか、ちょっとしたミキサーとか」

少なくとも『ミキサー』のような、
それなりのサイズのものが詰まっているとは思えない。

「ミキサー、便利ですよ。もうお持ちですか?
 余ったお野菜でジュースが作れて、
 おいしくてヘルシー、と〜っても経済的ですよう」

にも関わらず勧める。関には、『手段』があるからだ。

751百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/27(木) 15:01:31
>>750

「『調理器具』――――」

『倉庫』といっても、『通信販売の倉庫』ではない。
簡単に中身が分かるなら、
直接見せても大して差はないだろう。
むしろ、客に見せた選んで貰った方が、
手っ取り早く売り上げに繋げられる。
値段は『応相談』と書いてあるし、
見せない理由が見当たらない。
無茶な内容ならともかく、
『客の要望』を拒否するのは余程の事だ。

「そうだねえ……」

腕を組み、思案するように箱と少女を交互に見つめる。
買い物に悩んでいるかのようなポーズ。
だが、実際は『売り子の少女』について考えていた。
本当に調べているのか、それとも形だけかの区別はつく。
そして、これは『後者の方』だ。

「じゃあ、その『ミキサー』を見せてもらうよ」
 
「家にはなかったからね」

『嘘』だった。
いつだったか買ったのが家に置いてある。
結局あまり使う事がなく、しまったままになっているが。

「『保存容器』はあるかい?
 出来るだけ『大容量』で『ガラス製』のヤツが欲しいんだよ」

「最近、『ジュースサーバー』なんてのがあるだろ?
 『ミキサーで作ったジュース』を入れといたら、
 洒落てると思ってね」

思いついたように要望を一つ追加する。
調理器具とは少し違うが、かけ離れてもいないだろう。
『ない』と言われるかもしれないが、それはそれで構わない。
少女の動きを目で追い、一挙手一投足を観察する。
百目鬼小百合は、『白黒ハッキリしている』のが好きだ。

752関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/27(木) 21:20:45
>>751

「『ミキサー』と『容器』ですねえ!
 もちろん、どちらも『在庫』はありますよ。
 それで……おいくらくらいで買いたいですか?」

笑みを浮かべながら、『値段の相談』を持ちかける。

      ゴソ ゴソ

「実は、『何種類か』在庫があるんです〜」

箱を探る腕の動き――
ランダムではない、規則性がある。

「欲しいお値段で、それに合った品質。
 ふふ。それが一番、無駄のない買い物ですよう。
 ミキサーでしたら『2000円』〜『5000円』」
  
            ゴソ

「あ、それに追加で……
 容器の方は、『100円』からありますねえ。
 値段が決まったらお見せできますけど……」

百目鬼小百合なら観察できるだろう。
箱の中で『なにかを書いている』?

「それで……どうしますか〜?
 もちろん、買わなければタダ。
 それが一番、倹約にはなるんですけどねえ」

既に察せるはずだ。
この少女の『販売品』は……『今ここに無い』。

つまり『買うことができない』……『店ごっこ』なのか?

753百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/27(木) 22:08:06
>>752

「なるほど――――『看板通り』だ」

「随分と『品揃え』がいいんだねえ」

        フッ

少女の言葉を聞いて、笑みを浮かべる。
もし自分に娘がいたとしたら、
それ以上に年が離れているであろう少女を慈しむような表情。
その瞳の奥に、真剣さを帯びた『光』があった。

「ただねぇ、『一つだけ』いいかい?」

          ――――ドンッ

傍らに『ライトパス』を発現する。
『白百合の紋章』を肩に持つ人型のスタンド。
右手に持った『警棒』の先端で、
左手の掌を二度三度と軽く叩く。

「アタシは『品物を見ない買い物はしない』主義でね」

       シ ュ
             バ ァ
                   ッ ! !

目にも留まらぬ『超高速』でスタンドを飛ばし、
左手でダンボール箱の縁を掴んで、静かに傾ける。
こちら側に、箱の『中身』が見えるようにだ。
『ガサ入れ』って訳じゃあないが、
買う前に『商品』を見せて貰ったとしても、
バチは当たらないだろう。

754関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/27(木) 22:38:20
>>753

「はあい、大抵のニーズには応えられますよう。
 ただ、高級品……ぜいたく品については、
 デパートとかで買うのが良いと思うますけどねえ」

           ニコ〜


「……? なんでしょう〜?
 他に何か、ご入用な道具でも」

温和な笑みを浮かべて語る少女には、
悪意こそ感じられないが『何か』がある。
百目鬼がそう判断するのは、当然のこと。

「……………わっ!?」

            『パサ』

箱を傾けると、中にあった『それ』が見えた。
ノート……『帳簿』だろうか?
それから、ボールペン。
手元を照らすためか、スマートフォンも。

…………どれも、『実体』はあるようだ。
だが少女の視線は間違いなく、『ライトパス』を追った。

そして、それ以外の実体は何もない。
ミキサーも、容器も、調理器具など何もない。

「……………………あ、あのう」

          チラ

バツが悪そうに、百目鬼の様子を伺う。
それが神速のスタンドを前に遅れて来た行動。

「み、見せられはしないんですよう。
 だってその商品は、ここには『まだ』無いので……」

そして……『申し開き』にしては稚拙な、言葉が続いた。

755百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/27(木) 23:10:48
>>754

「おやおや――――」

       クッ クッ クッ

含み笑いを漏らしながら、箱の中を見た。
案の定だが『商品』はない。
客観的に見ると、
現物もなしに値段の話を持ち掛けた事になる。

「年を取ったせいか、目が悪くなったかねぇ」

    トン

「アタシの見間違いじゃなけりゃあ、
 『帳簿』と『ペン』と『電話』しかないように見えるもんでね」

       トン

「それとも、お嬢ちゃんの扱ってる品ってのは特別あつらえで、
 普通の人間には見えないような代物なのかい?」

           トン

「ところで、『まだ無い』ってのを詳しく聞きたいねえ」

               トン

「――――『いつ』来るんだい?」

                   トン

ライトパスを傍らに戻し、少女に問う。
右手の『警棒』が左手の掌を軽く叩く。
拍子を取るような動作。
悪意のなさそうな少女だが、
人は見かけだけでは判断できない。
例えば、『詐欺』に類するような可能性を疑っていた。

756関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/28(金) 00:18:36
>>755

「…………わ、私が扱ってるのは『普通の品』です。
 品揃えが豊富なだけで、市販品と同じような物で。
 やましいものを売ったりは、私、してませんよう……!」

拍を取るような動きに関しては、
さほど気にはならなかった。
ここは『人がいない』訳ではないし、
自分の前に立っている人は、一人だけだ。
スタンドによる攻撃はもちろん警戒すべきだが、
攻撃が会話の前提にはならない……そう考えられる。

「……あなたが買うなら、
 今すぐここに『出します』けど」

         スッ

「でも、仮に出すだけ出して『買ってくれない』と、
 それはもったいない……そういう『能力』なんです!」

制されないならペンと帳簿を手に取る。

「つまり、そのう、察せるかもしれませんけど、
 『在庫』は、私のスタンドで確保できるんですよ」
 
「あなたの『それ』と違って、
 こういう商売ごとにしか使えない、
 ささやかな『能力』なんですけどねえ……」

ほとんど嘘は言っていない。
関寿々芽の『ペイデイ』は無限の在庫を持ち、
商売にのみ特化している……『買う側』として。
出す、のではなく『仕入れる』……そこだけは嘘だ。

それと、『ささやか』というのは『謙遜』に過ぎない。
実際には『ペイデイ』は『絶対的』なスタンドと言える。

「だからこそ、私、こういう場所で、
 せっかくの能力を役立てようと思いましてえ……
 ほら、買った美容グッズとかを使わないままずっと、
 埃被らせてるのとか……もったいないじゃないですか」

「それと同じで……もちろん、
 人に迷惑をかけるよつな使い方もしてませんよう」

757百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/28(金) 01:10:14
>>756

「驚かして悪かったね。でもねぇ、お嬢ちゃん」

一時も目を逸らさず、少女の言葉に耳を傾ける。
それを聞き終えると、『ライトパス』が右手を持ち上げた。
『警棒』の先端で、『問題のダンボール箱』を指し示す。

「『そっちのダンボールには日用品が入ってるのかい?』って聞いたね」

「『そうですね。ここに無いものは、そこにありますよ』」

「アタシは、そう聞いたと思ったんだけどねえ」

「ま…………アンタの『能力』で出すんなら、
 『そこにある』と言えるかもしれないけどねぇ」

「だけどね、お嬢ちゃん――
 アタシは『ハッキリしてる』のが好きなんだ。
 だから、確かめさせて貰ったのさ」

「――――アタシの『この目』でね」

百目鬼小百合は『曖昧』を嫌う。
この世に存在する全てが、
『善』と『悪』の二つで割り切れると信じるほど、若くはない。
だが、『白黒つけられるに越した事はない』とも考えている。

「『人に迷惑を掛けるような遣い方はしてない』って言葉。
 それを聴けて、心底安心したよ」

『ライトパス』が消える。
実の所、完全に疑いを捨てた訳ではなかった。
『スタンドで取り寄せる商品』。
それがどんな代物かは定かではない。
しかし、内心の考えを態度には出さない。
昔であれば表れていたかもしれない。
だが、それを自然に隠せる程度には年を取っている。

「じゃ、せっかくだから何か買わせてもらうよ」

「――――この『アクセサリー』は幾らだい?」

視線を向けたのは、
料理本や調理器具と一緒に並んでいる『アクセサリー』だった。

758関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/28(金) 20:24:22
>>757

「…………いえいえ〜。
 私の方こそごめんなさい。
 騙すわけじゃないにしたって、
 怪しまれるような事をしちゃいまして」

「私、『誠実』じゃなかったかもしれないです〜」

      ペコリ

「……安心してもらえて良かったです。
 あのう……これからは、気をつけますね」

頭を下げる。
関は百目鬼より何回りも『未熟』だが、
内心と言動のギャップを隠すのは、苦手ではない。

「アクセサリーですねえ。
 これはしっかりここにありますから、
 いくら見ていただいても構いませんよう」

それに、改めて客になった相手でもあった。
献身をもって接さない理由は、どこにもない。

「市販品の中古もありますけど……
 私が自分で作ったのもあるんです〜。
 ふふ、手先に自信があるわけじゃないですけど……」

「どれでも一つ『300円』です。いかがですか〜?」

言葉通りプラ製の市販品らしきものもあったが、
多くはやはり草花を加工したような、ハンドメイド品だ。

759百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/28(金) 22:22:12
>>758

「ハハハ、謙遜しなくてもいいさ。
 アタシなんて、とにかく不器用なタチでね」

「こういう細々した手仕事は苦手なんだ。
 昔から人よりガサツなもんでねえ」

自分が、この少女と同じ年頃だった時を思い出す。
父一人子一人だったため、物心ついた時から、
一通りの家事は行っていた。
男手一つで育てられたせいか、
『大雑把』なのは今の今まで直らなかったが。

「そのアタシから見れば、十分に立派な出来だよ」

        スッ

「――――なら、『これ』を一つ頂こうかねぇ」

「『デスクの飾り』にでもさせてもらうよ。
 これっぽっちも洒落っ気のない職場でね」

「アタシが『三十年』若けりゃ、自分に使う所なんだけどねえ」

ハンドメイドらしい品を指差し、財布から『千円札』を取り出す。
それを、アクセサリーの隣に置いた。

「ちょうど細かいのがなくてね。釣り銭はあるかい?」

千円札を手に取ってみれば分かるだろう。
その下に一枚の紙がある。
『名刺』だ。

【大門総合警備保障 主任指導官 百目鬼小百合】

そのように記されていた――――。

760関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/29(土) 11:23:09
>>759

「今でも、きっとお似合いですよう!
 派手なデザインじゃないですし……
 気が向いたら、着けてもみてくださいね」

飾りだけで終わらせるのは、『もったいない』。
口に出しはしないがそのような思いはあった。

「七百円ですね、ありますよ。
 …………!
 ええと、これ、お返ししますね」

       スッ

「ふふ……お返しできる名刺も、持ってませんので〜」

名刺を先にゆっくりと返す。
この女性の名なのかは関には判断しかねたが、
警備保障・主任指導という肩書は『納得』がいく。
関からはとても遠い位置にいる、強い存在。

「お袋、紙袋でいいですか〜?
 ビニール袋もありますけど、
 これ一つ入れるには大きすぎまして……」

         ゴソ

「はあい、これ……
 できたら、長く持っててあげてくださいね〜」

小さな紙袋にそれを入れて、そっと百目鬼に手渡す。

「お買い上げ、ありがとうございました。
 またどこかでお会いしたら、よろしくお願いします〜」

                ペコ〜

お金を受け取り、品を渡す。『買い物』はおしまいだ。
関の目論見は、真の意味では果たせなかったが……これも、悪くはない。

761百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/29(土) 17:09:51
>>760

「『ソレ』はアタシのだよ」

「アタシがアンタに渡したんだ」

「貰っといておくれ」

差し出された名刺を一瞥し、紙袋と釣り銭を受け取る。
少女は、『人に迷惑を掛ける使い方はしない』と言った。
しかし、それが今後も続くとは限らない。
何らかの事情で、いつか破られてしまう可能性もある。
万一そうなった場合に、
『踏み止まる一助』にするために出したのだ。
何の意味もなく出したのではない。
だから、『受け取らない』。

「ハハハ――商売と同じで、褒めるのが上手だね」

「それじゃ、着けて帰る事にするよ」

買ったばかりの『草花のアクセサリー』を襟に付ける。
耳には、スタンドの紋章を思わせる『白百合のイヤリング』。
そちらは凛とした印象であり、
購入した品とは雰囲気が大きく異なる。

       ザッ

「――――ありがとう、お嬢ちゃん」

踵を返し、『売り場』から立ち去る。
百目鬼小百合の信条は、世の『不正』を正す事。
それが起こらなければ、『更に良い』。

762関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/29(土) 23:14:40
>>761

「あ……そうだったんですねえ。
 それじゃあお言葉に甘えて、
 大切に取っておかせていただきます〜」

           スル

『関寿々芽』は一般的に善良な部類の人間だ。
他への献身、慈愛を是とし、
小さな悪事を見逃す事はあっても、
自ら悪事を勧めるようなことはしない。

「ふふふ、やっぱりよ〜くお似合いですよう。
 お耳飾りもお似合いですし、
 きっと『モデル』が良いからなんでしょうね」

             ニコ〜

「どういたしましてえ。ではまたどこかで、お姉さん〜」

それでも――――生きる中で『ままならない』事はある。
それが訪れるとしたなら、百目鬼の姿は、足を止める理由になるだろう。

763百目鬼小百合『ライトパス』:2020/10/03(土) 21:30:09

一人、『地下アーケード』を歩いている。
大通りなどと比べると、
少々いわくありげな店が軒を連ねる事で知られていた。
そのせいか、全体的に、
いわゆる『玄人好み』の趣が強い雰囲気に包まれている。
特に何か目当ての品があったという訳ではない。
強いて言えば、定期的な『見回り』のようなものだ。

(『何もない』のが一番だけど――――)

             カキンッ
       
       シボッ

やがて立ち止まり、適当な壁に背中を預ける。
年季の入ったライターを取り出して、
咥えている煙草に火を付けた。
煙を深く吸い込みながら、それとなく近くの店を眺める。

(――――『何かない』とは限らない)

764百目鬼小百合『ライトパス』:2020/10/05(月) 20:12:51
>>763

「『便りがないのは元気な証拠』…………か」

緩やかに立ち昇る紫煙に包まれながら、
雑然とした地下街に佇む。
目の前に広がるのは、普段と何ら変わらない世界だった。
何事も起こらなければ、それが一番だ。

「そうだといいけどねえ」

しかし、『何もない』とは言い切れない。
今この瞬間にも、何処か人目につかない所で、
『何か』が起こっているのかもしれない。
それは、表面を見ただけでは分からない事だった。
この煙のように、簡単に掴む事は出来ない。
だからこそ厄介だ。

「――――ま、地道にやっていくさ」

            ザッ ザッ ザッ

765空井イエリ『ソラリス』:2020/10/09(金) 00:26:07

             ギィ…

古い『動物病院』から、少女が出てきたところだ。

「…………」

低い背丈、丸く大きいが、眠たげな目――
その右目はほぼ隠れてしまう長い前髪に、
二つ結びにした後ろ髪と、大きな毛玉の耳飾り。
ほとんど地味と言っていい容姿だったが、
澄んだ空色の瞳は周囲の目を引くものだろう。

が、それ以上に物珍しいのは手に持った『ケース』だ。
青いペット運搬用ケースの窓には、『とかげ』が顔を貼りつけていた。

766小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/10/09(金) 17:47:49
>>765

ピンっ バシッ。

ヤジ「しかし、ジョーも奮発するねぇ。5千円もして、謎比べした猫に
自動水素水生成器なんてプレゼントしようなんて。
 俺だったら鰹節でも贈るだけで済ますけどな」

「ですが、彼は色々と貴重な知識を有してます。良い作品のネタと
なるでしょうから、私としては今後の付き合いも兼ねて。
前払いと言うものですよ」

180近い背丈の、学生服を身に着けた二人の男が前から歩いてくる。
一人は茶髪で制服を着崩し、如何にも不良と言う感じに見えて
もう一人は学生服をバンカラ風に身に着け、耳には硝子玉の
アクセサリーを垂らしたピアスをしている。

茶髪の不良のほうは、硝子玉らしきものを指で真上に弾き受け止める。
 そんな遊びをしており、貴方と通り過ぎようとする間にも
そのビー玉らしきものを指で弾いて空に上がり、重力に従い下降する。
 バンカラ風に着こなす青年や、不良めいたファッションの方も
ペットにしては珍しい『とかげ』を一瞥するものの、当たり前だが
見知らぬ人物である貴方に声をかける事はなく通り過ぎようとする。
空色の瞳に関しても、不良が下心ない下手な干渉もしない。

 ズルッ

ヤジ「っ ちぃっ」

特に転ぶような段差など無かったが、不良は靴か滑ったのか『とかげ』を
見た事で足元の何かを見落としたのか体勢を軽く崩した。
手元で受け止めようとするのを失敗する。
 だが、不思議な事に『地面に落ちる事なく、ビー玉は一瞬だけ宙で停止する』
そんな奇妙な光景を視認出来たと思ったが、不良は舌打ちと共に素早く
手の平の中に硝子玉を掴み。何事もなかったかのように歩き出す

「大丈夫で?」

ヤジ「あぁ。あぶねー、あぶねー……なんも無いのに体勢崩すとか
運がないぜ」

特に、その一瞬だけ奇妙な出来事を。連れの男性も、取りこぼした不良も
気にする事なく歩みを続け貴方から離れようとする……。

767空井イエリ『ソラリス』:2020/10/09(金) 23:21:38
>>766

「……」

見上げざるを得ない長身の二人を、
一瞥する事はあってもそれ以上は無い。

「おい――――」

が、足を滑らせたのを見て手を伸ばす。
当然届かないが――――

          『ズギュ』

助ける思いが力を起こす。
『マント』を纏った人型の『ヴィジョン』が、併せて手を伸ばし。

「……」

          スッ

どうやら事なきを得たのを見て、その手は宙をさまよった。

(『なんも無い』わけじゃあない。
 『毛』だ。『犬の毛』が落ちてやがる……
 これで滑ったのか、つまずいたのかは知らねーが)

          (なんだとしても、こけなくてよかった)

何となく下げた視線に、地面に散った『抜け毛』が映った。
病院に罹りに来たペットの物だろう。意外に滑りやすくなるものだ。

768小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/10/09(金) 23:34:29
>>767

>おい――――

「え?」

ヤジ「んっ、どうしたジョー。
……って、その視線から見ると。はぁ、成程な」

バンカラマントの高校生は、貴方の『スタンド』を見て顔をしっかり
そちらへ向ける。遅れて、もう一人の不良は彼の表情や仕草から
合点がいったとばかりに頭を掻いて貴方に向き直った。

ヤジ「この街、本当多すぎるぜ。供与者の音仙さんや
他の人等も加減してくれねぇと『スタンド使い』で飽和しちまうよ」

苦々しそうに呟く不良のほうは、スタンドは見えてないようだが
スタンド使いと発する口振りから、その知識があるらしい。

「すいません、私の親友を助けてくれようと動いてくれたんですよね。
有り難う御座います。
 私は小林 丈と言います」

俺はヤジって綽名が通称ですよ、と片手を軽く上げて不良青年も
自己紹介を行った。少しだけ渇いた目をした小林と名乗る方は
軽く微笑を模って、おじきしつつ丁寧に話しかける。

「可愛らしい『ペット(とかげ)』を連れてますね。
私達の寮では、余り大きな生き物は飼えませんので、羨ましい限りです」

ヤジ「まっ、学部長さん(ディーン)が紛れ込む事もあったしな。
たまに、中等部だか知らんが自分の家のペット連れて入り込む奴も
いるし、触れ合いには困らないが」

そう、雑談を交えつつ小林は少し首を傾げ聞く。

「しかし、動物病院から出てきたとなると。余り具合が宜しくないので?
……良ければ、何か力添えを致しますが」

769空井イエリ『ソラリス』:2020/10/10(土) 00:36:53
>>768

「人が目の前でこけたらいやなことだろ? それだけさ」
       
「ご丁寧にどうも、『空井イエリ』だ。
 呼び方は好きにしていい。なんでもいい。
 それとコイツは『ファフニール』 酒類は『ヨロイトカゲ』」

             スッ

「悪いが、コイツには『ふれあい』は期待するなよ」

ゆっくりと『運搬ケース』を持ち上げる。
小さくは無いが、『竜』を冠するには手ごろなサイズだ。

「それと、心配もご無用。
 『風邪』を引いていただけらしい。
 注射を打ってもらって、随分楽になったみたいだ。
 オレにはこいつの苦しみは分からないけどさ……」

ケースの窓を少しだけ覗き込む。
それから、抱きこむようにして手元に戻した。

「それより――――今の口ぶり、
 『ソラリス』が見えるやつは初めて会った」

                   スッ

「『霊感』のある子にも、まるで見えなかったんだ。
 今までは、適当言ってたのかな? だとしたら、それも、いやなことだぜ」

770空井イエリ『ソラリス』:2020/10/10(土) 15:05:39
>>769(誤字)
>それとコイツは『ファフニール』 酒類は『ヨロイトカゲ』
×酒類
〇種類

771小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/10/10(土) 20:34:04
>>769(レス遅れ失礼しました)

「『ファフニール』……なるほど、エッダやヴォルスンガ サガですが」

ヤジ「何の伝説の話よ?」

「北欧神話ですよ。そして、『ソラリス』
SF小説の題ですかね? 映画にも同じ名前がありますが。
 私は、その霊感のある知人を知りませんので確証ありませんが。
貴方や私の発現しているのはスタンドで、精神の具現化などですから
霊的なものとは異なりますし。その知人が嘘八百を並べ立ててると
考えるのも早計かも知れませんがね」

ヤジ「霊、ね。俺にはスタンドも見えないし霊的な現象も
まだ立ち会った事は無いから。霊感とか霊障って言うのは
あんまり強く否定も肯定も出来ないな。
あっ、ジョーの能力がどう言ったのか知りたそうだろ?
 こいつさ」 ピンッ

不良のヤジと名乗るほうが、先程掴み損ねていた『硝子玉』を
貴方へ弾く。受け止めるまでもなく、それは『宙で静止する』

小林「『リヴィング・イン・モーメント』と名付けられています。
液体の中にブリキの金魚が見えると思いますが、それが私のスタンドの
真の姿でして。能力は液体をこう言う風に丸い形で包ませて
市販で購入可能なドローン程度に動かせる」

まぁ、そんな秘密裏に偵察などに便利な。非力な力ですよと微笑む。

772空井イエリ『ソラリス』:2020/10/10(土) 22:18:53
>>771

「見ず知らずのおれの友達を庇ってくれるのか?
 おまえはきっと、すっげーいいやつなんだな」

口元を僅かに上げるようにして、笑みを浮かべた。

「それに、『詳しい』じゃねーか。
 そう、『北欧神話』から取った名前だよ。 
 もちろん『ワーグナー』の方じゃねー」
 
「あいにく、おれはSFは畑違いだし、
 そっちを名付けたのはおれじゃねーけど」

どちらかといえば『小林』に興味を惹かれた。
知性と教養、そして『ファンタジー』を持つ人間。
その『儚い』力を聞き、ごく小さく頷く。

「なるほどね、水属性ってわけだ。
 おれの『ソラリス』ともかなり違う。おもしれーな。
 ぱねーファンタジックで、すげーロマンチックだ。
 それに……おまえたちは、口ぶりからするにこの、
 スタンド、っていうのに詳しいんじゃねーか?」

「『飽和』すると言ってた。
 相当『踏み込んだ』とこまで知ってるんだ。
 おれはうれしいよ、『異世界転生』した気分だ。
 親切ないいやつで、事情通に、いきなり会えるなんて」

鈴の鳴るような声に、どこかぶっきらぼうな口調。 
不思議な取り合わせで所感を述べつつ、話を催促する。

773小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/10/10(土) 22:29:08
>>772

「まぁ、色々と経験はしたと思いますね。
例えば・・・」

ヤジ「あー、ちょっと待ってや姐さん」

親友? と首を向ける小林に。ヤジは別に敵意など無くも
少しばかり眉を眉間に寄らせる調子で呟く。

ヤジ「別に無償で話すのも良いんだが。
俺達が今まで経験してきたもんってさ、ただで雑談の中で
消費させるのも可笑しなもんだと思わないか? ジョー」

「何がおっしゃりたいのか、少し理解が追い付きませんが……」

ヤジ「大した事じゃねぇよ。イエリさんだったか?
別に話しはしてもいいけどさ。ちょいとはそっちの事も聞かせてくれよ。
例えば、だ」

その『ソラリス』って奴が何が出来るかとかさ。

小林の相方は、そう提案をする。
自分達の『スタンド』に対する情報を提供するのは吝かでは無いが
その代わりに貴方の能力など出来れば交換で教えてくれと……。

774空井イエリ『ソラリス』:2020/10/10(土) 23:43:28
>>773

「なるほど、完全に妥当だぜ。
 『スタンド』の世界も、人間社会なんだな」

       スゥ ―――

「いやになるよ。でも、すっげー当たり前のことだとも思う」

                『キュイン』

ゆっくりと動く手が、『マント』に潜る。
文字通り、海に手を沈めるように。
そこから拾い上げるのは、『小瓶』だ。

「『ソラリス』は、『小瓶』を出せる。
 といってもおまえには見えねーだろうが、
 あとで親友から教えて貰ってくれ」

            クル

「『いいやつ』に免じてもうちょっと種明かしをしとくぜ」

瓶をひっくり返すが、『蓋』がある。
透明の中身は偏りはしても、こぼれはしない。

「この小瓶の中身は『エーテル』だ。
 はんぱねーくらいさっさと『揮発』しちまう、                          
 『天に還ろうとする物質』――――だから『エーテル』」

「ちょーエモいネーミングセンスだぜ。『科学者』もロマンチストだよな」

と、そこで話を止める。『対価』は支払った――――と言わんばかりに。

775小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/10/11(日) 00:02:50
>>774

「……『エーテル』」

その瞬間、小林は目を細めた。
 別に、その能力が何か過去の仇敵なるスタンド使いを想起したとかで無い。
ただ『液体』のスタンド使い。それも、能力で産み出した『液体』となると
普通に交流するのとは叉、少し違って来る。

(……瓶から零せば、話の通り直ぐ揮発するであろうスタンドの液体。
ただし『リヴィング・イン・モーメント』で『水槽』に収めれば
暫くは保つだろう。
――果たして、私の『能力』だと、何処まで他者のスタンドの液体に作用するんだ?)

今までスタンドの液体を操るスタンド使いと巡り会った事は無い。
アリーナで戦った『エクサーツ』は、海水を放出するスタンド使いだったが。
あれはスタンドのヴィジョンの口と、現実に存在する深海をリンクさせる
能力だからして、スタンドで形成された液体では無い。

「成程、ご説明有り難う御座います。
それでは、私は自身が体験した……『怪盗団』の話をしますか」

「それじゃあ、俺は『この街にいた犯罪組織と自治組織』についてな」

小林は『パストラーレの収穫者』(※【ミ】『コメットテイル幸福奇譚』)
で起きた、実名は伏せつつ温泉旅館での怪盗団とアイドルの首飾りを
巡っての対決を語る……。

そしてヤジは『アリーナ』と『エクリプス』についての簡易的な説明を
イエリに対して行った。

「空井さん、ほんの短い時間で悪用は決してしないと誓います。
その『エーテル』ですが、私の『リヴィング・イン・モーメント』だと
恐らく『水槽』の中に入れられると思います。
多分、そちらは人型だし能力の産物はそれ程長い距離で発現出来ないと
思いますが。私の『水槽』なら、その能力の射程外でも存在させる事が
可能かも知れないんです。
 そう言った実験に協力出来ないでしょうか?」

話の区切りが良い時、親友(ヤジ)が話し始めて少し自分が自由に
行動出来る時間のタイミングで、そう切り出す。

(※『エーテル』を『リヴィング・イン・モーメント』で発現する
許可を下ろして頂けましたら、その実験の結果は音仙氏に質疑応答を
してから、こちらに投下させて頂きたいと思います)

776空井イエリ『ソラリス』:2020/10/11(日) 01:06:48
>>775

「なるほど……すげー情報量で噛み砕けない。
 『個人的体験』の方が興味はあるけど、
 『世界観』が掴めたのが、おれはうれしいよ」

話の内容はあまりに『多い』。
エビで鯛を釣ったような心地だ。
『怪盗団』の話については、
伏せられた部分が多く『有用』でないが、
『興味の湧くファンタジー』ではあった。

「つまりその『アリーナ』がいる以上、
 ちょー強い魔法が使えても、
 その魔法使いの天下にはならないんだ。
 『エクリプス』ってやつらがそうなったように、
 『そいつらの天下』を揺るがせないから」

「つまんねーけどさ、そういうのが無いと、ぜってー困るんだ」

『魔法の世界』さえ『秩序』が勝っている、という事だ。
『現実』と変わらない……『いやになる』が、『そうでないと回らない』。

「それでさ」

「悪いと思うんだけど、実験に付き合う気はしない。
 おれがおまえを嫌いなんじゃなくって、
『ファフニール』が家に帰りたい、餌が食べたいって」
 
          カサッ カサッ

              「おれも、お昼まだ食べてないんだ」
 
ケースの中には『病身』のペットがいる。
彼らと話すのは有意義だが、そろそろ家に、帰る必要があった。

777小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/10/11(日) 18:32:53
>>776

ヤジ「そんじゃあ、俺達と連絡先だけでも交換してくださいよっ
美人の姐さんと何時でも話せるだけでも役得ってね!」

「茶化したノリは君の悪い癖ですよ。親友
・・・・・・ま、実際。強い魔法も使い手次第なんですがね。
小指程度の針を自在に操れるだけでも、恐ろしい暗殺の手段になる」

少なくとも、小林はそう言った手合いの使い手には幸運にも
出会った事はない。

・・・・・・いや、もしかすれば記憶の欠落の中にはあるのかも知れないが。

「それでは   また」

連絡を交換したかどうかは、イエリ次第だ。
 二人の星を追う『ジョジョ』は貴方と逆の道のりを歩いていく・・・。

778空井イエリ『ソラリス』:2020/10/11(日) 21:46:27
>>777

「いいぜ、マジに願ったりだ。
 ひまなときなら『実験』に付き合ってもかまわねー。
 本の話をするのも、すげーいいかもしれねーしな」

              スッ

「じゃあ、また。
 足元には気を付けて、無事に帰ってくれ」

その場を立ち去る。
『魔法』のある世界へ踏み出し、歩いていく一歩目を。

779ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/10/23(金) 22:10:39
自然公園と商店街の間。
街はずれの、雑木林に面した道路。

「ふ〜ん」

金髪の子供が地面にしゃがみこんでいた。

780ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/10/24(土) 14:43:18
>>779

「いっぱい採れたのう」

両手にどんぐりを抱えて帰って行った。

781龍美丹『チーロン』:2020/12/03(木) 21:33:00
海、その日は晴れていた。
空は高く、どこまでも青い。
海の色を空に移したのか、空の色を海に移したのか。
一人、背の高い少女が立つ。

「うう……さぶ」

ぶるり、と背を震わせているものの立ち去る様子はなく。
むしろ、その足はゆっくりと海の方に向かって進んでいた。

「海、広いよなぁ」

ざくり、ざくり。
一歩一歩海に向かう。

782龍美丹『チーロン』:2020/12/06(日) 20:34:55
>>781

ちゃぷん

ぱちゃ、ぱちゃ、ぱちゃ

ぱちゃ、ぱちゃ

ぱちゃ

…………………………とぷん

783百目鬼小百合『ライトパス』:2020/12/13(日) 18:14:48

「さて、と…………久しぶりにやるとするか」

カラオケ・ゲームセンター・ボウリング場などが入った、
『総合アミューズメント施設』。
その中にある『ビリヤード場』でキューを握り、
テーブルの前に立つ。
白いキューボールに狙いを定め、
その奥にある九つのボールに向かって、
『ブレイクショット』を行う。

     ガコンッ
            
             ――――バラバラバラァッ

最初の一発で、テーブル上にカラーボールが散らばる。
その配置を目で確かめ、
白球越しに『一番のボール』を狙い打つ。
常に正確なショットを行わなければならないビリヤードは、
大きな集中力を必要とする競技だ。
ボールを上手くポケットに落とすだけではなく、
その次のショットを行う際に、
『どの位置に白球があれば都合がいいか』まで、
考えに入れなければならない。
だからこそ、『精神力の鍛錬』にも向いている。

          カコンッ

突かれた白球が転がり、
一番ボールをポケットに落とし入れる。
次だ。
テーブルの周りを歩き、
『二番のボール』を狙いやすい位置を探す。

「………………」

               カコンッ

やがて立ち止まり、二度目のショットを行う。
しかし、狙いが外れた。
白球は二番ボールに命中したものの、
ポケットに収まるまでには至らなかった。

「――――ははぁ、やっぱりナマってるねぇ」

784百目鬼小百合『ライトパス』:2020/12/17(木) 16:42:58
>>783

「さてと…………ここが肝心要の勝負所だ」

      スッ
            
            カコンッ

呼吸を整え、最後のショットを行う。
キューの先が白球を突き、白球が九番ボールを突く。
九番ボールはテーブルを転がり、
吸い込まれるようにポケットに落ちていった。

「――――ま、こんなもんかねぇ」

785甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/24(木) 16:20:03
「クリスマスが今年もやってくる(絶望)
 楽しかった出来事を消し去る様に」

ハイライトの無い目でクリスマスソングを歌う

今年もやってきたクリスマスだが…
今年は例の病気の影響で悉く中止だ
この状況下で多数が集まって騒ごうものなら非難は避けられないだろう

ところで…
ここは一体どこ…?私は何故こんな所に?私は一体何をやっているのか…?

786度会一生『一般人』:2020/12/24(木) 18:32:05
>>785

ここは『夜の公園』だ。
辺りには人はおらず、静まり返っている。
何故ここにいるのかは、甘城本人が知っている事だろう。

        コツッ

「――――君、大丈夫か?」

死んだ魚のような目をした少女に、一人の男が声を掛けた。
フードを被っており、暗さゆえに顔はよく見えないが、
年齢は二十台程らしい。
片手には、銀の握りが付いた『杖』を持っている。

「見た所、顔色が良くないようだが……」

どうやら、生気のない様子を心配して呼び掛けたようだ。

787甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/24(木) 18:48:47
>>786
「あ…」

人がいるとは思っていなかった
独り言を聞かれているとは恥ずかしい

「どうも、別に大丈夫です…」

そう言いながら、その目は死んでいる

暗い夜の公園に見知らぬ男性
心配して声をかけてくれたとはいえ、やや警戒の姿勢をとる

788度会一生『一般人』:2020/12/24(木) 19:40:14
>>787

「なら、いいんだ。急に声を掛けて悪かった」

男の声は落ち着いていた。
二人の間には数メートルの距離がある。
すぐに何かされるような事は無いだろうし、
もしされたとしても対応できるだろう。

「そういえば、今は『あの時期』か。
 さっき君が歌っていたんで思い出したんだ」

「もっとも、予定が無い人間にとっては単なる『平日』。
 僕なんかもそうさ」

       コツッ

「だから、ほんのちょっと憂鬱ではあるかな」

「――君ほどじゃあないが」

先程までの雰囲気から、大体の予想はついた。
気持ちは分からないでもない。

789甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/24(木) 20:13:13
>>788
「あぁ、貴方もですか…」

自分と同じ『ぼっち』か…
勝手にそう解釈した
もっとも、今日の甘城は呼ばれていたのだ、パーティに、珍しく
しかし土壇場になってパーティは中止、その帰りで今ここにいるわけだ

「……よかったらこれ、食べます…?」

甘城の手に持っている袋に入ったクッキー、パーティの手土産に持っていくつもりだったのだろう
今会ったばかりの男にあげるとはどういう気まぐれだろうか

790度会一生『一般人』:2020/12/24(木) 20:30:11
>>789

「はは――――まぁ、そんな所かな」

特別な予定は無かった。
『いつも通り』の平日だ。
今も、普段利用しているコンビニに向かう途中だったのだ。

「見ず知らずの相手から、
 お菓子を頂戴するとは思わなかった」

      コツッ

「なら、一緒に齧ろうじゃないか。
 一人で食べるのも寂しくてね。
 今夜、こんな場所に居合わせたのも、
 何かの縁かもしれない」

           コツッ

「君が嫌じゃなければ、だけど」

黒檀製の杖をつきながら、少女に歩み寄る。
一緒に食べる事を提案したのは、『念の為』でもあった。
まさかとは思うが、何か入って無いとも限らない。
少女とはいえ、見知らぬ相手を警戒する意識は、
こちらにもある。
子供でも年寄りでも、何かしようと思えば出来るからだ。

791甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/24(木) 20:39:45
>>790
「じゃあ一緒に…」

袋を開け、初対面の相手にクッキーを渡す
人の姿を象ったジンジャークッキーという奴だ
中々上手に出来ているが手作り感が感じられる

「いただきます」

パクッとクッキーを齧る甘城
その顔には何の感情も見られず、暗くてよく見えないのもあって
美味いのか不味いのか判断し辛い

792度会一生『一般人』:2020/12/24(木) 20:51:42
>>791

「……これは君が作ったのかな。
 僕は素人だけど、なかなか上手く出来てると思うよ」

「もし『市販』だったら、
 今の台詞は聞かなかった事にして欲しい」

      スッ

「恥ずかしいからね」

クッキーを受け取るために、空いている方の手を差し出す。
近くで見ると、その手に『傷』が目立つ事が分かった。
杖を握っている手にも、やはり傷が多い。
それらは新しいものではなく、古いものらしかった。
治ってはいるが、『跡』が残っているようだ。

「――じゃあ、ご馳走になるよ」

        ガリッ

少女がクッキーを齧るのを確認してから、
クッキーを口に入れる。
美味いのか、それとも不味いのか。
『味』は自分の舌で確かめるしかないだろう。

793甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/24(木) 21:06:09
>>792
「…ありがとうございます
 『見た目』だけは自信ありますから…」

その言葉から、甘城の手作りで間違いなさそうだという事が分かる
『見た目』だけという言葉が引っかかるが

その痛々しい傷跡を見て、一瞬顔を顰めるが、何も言わない
何かあったであろう事は容易に想像はつくが
一々それを訪ねるのが失礼だろう

ガリッとクッキーを齧り味を確認
食感は良し、サックリとした普通の食感
甘さは、どこにでもある普通の素朴なクッキー
仄かなショウガの味がアクセントになり
そして……それら全てを掻き消す強烈な辛さ
辛い!とてつもなく辛い!!思わずむせ返る尋常ではない辛さ!!!
これは……唐辛子だ!それもこの世で最も辛いとされる、ブート・ジョロキア…!

794度会一生『一般人』:2020/12/25(金) 12:55:10
>>793

(『見た目』は至って普通だが、『味』も特には…………)

「――――ゲホッ!ゲホッ!」

不意に訪れた猛烈な辛さに、思わず大きく咳き込んだ。
少女の反応を確かめてから口にしたのだが、
作った本人ならば、舌が慣れていてもおかしくは無い。
あるいは、『味見』をしていないのかもしれないが。

「…………いや、失礼。
 見た目と味がだいぶ違ってたんで、不意を突かれたんだ」

「でも、お陰で体は温まってきたよ」

真冬だというのに、額から汗が滲む。
おもむろに上着のフードを取り、手の甲で額を拭うと、
男の素顔が露わになる。
顔の作り自体は人が良さそうで、表情も穏やかだが、
手と同じように幾つもの『傷跡』が刻まれていた。

「ええと……これは『ジンジャークッキー』でいいのかな?
 何というか、僕の知ってるものとは、
 かなり違う味だったんだ」

食べかけのクッキーを摘んだ手を持ち上げて尋ねる。
『これ』をどうするかは、ちょっとした問題だった。
流石に食べる気にはならないが、
今更いらないとも言えないし、捨てるのは失礼だ。

「もし違ってたら、訂正して欲しくてね」

『処分の仕方』を考えていた時、『仲間』の事を思い出した。
全体が真っ赤になるまでタバスコを掛けたカルボナーラを、
平気な顔で食う奴だ。
あいつなら気に入るかもしれない。

795甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/25(金) 14:50:59
>>794
「あぁ、やっぱり」

モグモグとクッキーを食べながら言う
『やっぱり』

「『ジンジャークッキー』で間違いないですよ
 まぁその、何か余計な物入れてしまった気がするけど…」

決して料理の腕が悪いわけではない、余計な物を入れてしまう癖があるようだが

「無理して食べなくていいですよ、私が食べますから…」

食べかけのクッキーを寄越せというように手を差し出す

796度会一生『一般人』:2020/12/25(金) 19:12:15
>>795

『やっぱり』という事は自覚があるのか。
それを人に食わせるのはどうかと思うが、
もらった物に文句を付けるのも憚られる。
考えた結果、敢えて口出しはしない事にした。

「いや、せっかくだしもらっておくよ。
 差し支えなければ、その袋ごと」

「辛い物が好きな知り合いがいてね。
 そいつが気に入るかもしれない」

逆に、袋ごとクッキーを受け取ろうと手を伸ばす。
もしかすると、自分のように誰かが食べてしまう可能性もある。
だから、ここで回収して、
『犠牲者』を少なくしようという意図もあった。

797甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/25(金) 19:28:50
>>796
「はぁ、そちらが宜しいんなら…」

伸ばされた手にクッキーの袋が手渡される
これで犠牲者は最小限に済むだろう、英雄的行動だ

「あっ、そうだ(唐突)
 よかったら口直しにでもどうぞ」

そう言うと、甘城の手にいつの間にかあった一切れのアップルパイを度会に差し出す
どうでもいい豆知識だが、アメリカのクリスマスはフロンティアスピリッツを思い出すためにアップルパイを食するという

「これはまぁ、私が作ったものじゃないので…」

大丈夫だろうか?

798度会一生『一般人』:2020/12/25(金) 19:59:50
>>797

「…………これは?」

暗いとはいえ、品物を手渡せる距離だ。
何か持っていれば気付くだろう。
途中で取り出したなら尚更だ。
しかし、この場合は、そのどちらにも該当しない。
何も持ってはおらず、途中で出した訳でも無い。

「ははは、それを聞いて安心したよ」

(…………『スタンド』)

「いや、冗談さ。ただ、君のお手製は『刺激』が強くてね」

(『スタンド使い』――――『ある意味危険』だが、
 『料理が下手な能力』というのも考えにくい)

「ありがとう。後で食べるよ」

(『能力の産物』らしい物を口にする気にはならないが)

アップルパイを受け取り、袋の中に入れる。
いくらフロンティアスピリッツの象徴とはいえ、
露骨に得体の知れない物を食べるつもりは無い。
『本体』から離れた後も残っていれば、
後から調べてみるのもいいだろう。

「さて、そろそろ行くよ。夜は物騒だから、君も気を付けて」

フードを被り直し、別れの挨拶を告げる。
この夜の一幕は、そろそろ終わりになりそうだ。

799甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/25(金) 20:14:52
>>798
受け取ったアップルパイを袋の中に入れる度会
『ビター・スウィート・シンフォニー』の作り出すスイーツは5分以内に食べなければ消滅する
本体から遠く離れても消滅する
そのスイーツは、プロのパティシエが作った物と同等の非常に美味いスイーツであり、デメリットは体重が5㎏増量するだけだ
警戒して食べなかったのは正解か、惜しい事をしたのか

「じゃあ、私もこれで…」

度会に背を向け、その場を後にする甘城

「Look to the sky, way up on high
There in the night stars are now right」

何やら鼻歌を歌いながら帰っていった

800度会一生『一般人』:2020/12/26(土) 14:34:33
>>799

(………………)

コンビニを出て袋の中を確認すると、
『アップルパイ』が消失していた。
『射程外』になったせいか『解除』されたかは分からないが、
やはり『スタンド』が生み出した代物だったようだ。
調べる事は出来なかったが、
あの少女が『スタンド使い』である事は確定した。

(『アップルパイを出す能力』――
 いや、それだと範囲が狭すぎる……)

(『菓子類全般』…………か?)

       スッ

スマホを取り出し、LINEを起動する。
グループトークだ。
含まれている参加者は『御影憂』・『桐谷研吾』。

【一人見つけた】

           コツッ

杖をつきながら、夜の道を歩き出す。

801甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/01/05(火) 16:07:22
映画館

スマホ『という事があって、今日は来れなくなっちゃった
    またね、チャオ♪』

アナウンス「まもなく、みなごろしバッヂの上映が始まります」

「…はぁ…」

というわけで、タイトルから地雷臭の漂う映画を一人で見るハメになってしまった

802甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/01/05(火) 20:32:24
「何だか凄い映画だったなぁ…
 主演のエメラルドゴキブリバチの熱演が特に凄かった」

おわり

803斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2021/01/30(土) 01:09:50
冬の巷に釣竿を持った少年が1人。

 「……いや寒っ 偶にくる潮風クソ寒いっていうか『痛い』!」

三毛とキジ虎を膝にハチワレ猫を懐炉代わりにジャケットの内側に入れて
凪いだ海面に釣り糸を垂らす、成果は今の所ボウズだ。

それでも3匹程一緒にいるとほんのり温かい、首元の赤いスカーフを揺らしながら
脚の痺れと引き換えに、古いラジオ放送を聞き、乾いた青空の下でのんびりと過ごす。

 「…………。」

うつらうつらとしていると、釣竿の先が微かに動き始めた……

804斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2021/01/31(日) 00:36:59
>>803

 「……おっと?」

引き上げた針の先はぷっつり切れて無くなっていた
 
 「釣りってまあ、こういうのだよな……。」

猫を懐やら脚やらから降ろして
釣り用具をしまい、立ち上がる。

 「お前たちも来るか?コンビニで肉まん買って帰ろうぜ。」

尻尾をぴんと立たせた猫達を連れてその場を去った。

805『Welcome to the Party』:2021/02/01(月) 19:57:17

『警察官』の『桐谷研吾』は『歓楽街』で『杖の男』に出会った。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1607077443/24
これは、それから『数日後』の出来事だった。

その日、『桐谷研吾』は『Luna-Polis』を訪れていた。
『Luna-Polis』は閑静な住宅街の一角に佇む、
オートロック式のマンションだった。
エントランスを抜けた桐谷は、エレベーターに乗り込んだ。
ポケットから『紙片』を取り出し、部屋の番号を確認する。
数日前に、『杖を持った男』から渡されたものだ。

「…………『ここ』か」

エレベーターを降りた桐谷は、目的の部屋の前に立った。
ドアの上にはカメラが取り付けられている。
それを確認してから、桐谷はインターホンを鳴らした。

    ――――ガチャッ

まもなく開錠され、ドアが開いた。
しかし、そこには誰もいない。
ただ『薄暗い空間』があるだけだ。
警戒しながら、桐谷は部屋の中に足を踏み入れた。
昼間だというのに分厚いカーテンが閉め切られ、
間接照明の仄かな明かりだけが室内を照らしている。

「――――ようこそ、『桐谷巡査』」

部屋の奥から、男の声が聞こえた。
歓楽街で出会った『杖の男』の声だ。
そちら側へ歩いていくと、椅子に座っている男の姿が見えた。
机の上には、数台のパソコンが設置されている。
壁に掛かったコルクボードには、『星見町の地図』が貼られ、
何かの位置を示すらしい『ピン』が幾つも刺さっていた。

「私は『度会一生』。そう呼んでくれ」

「それで、なぜ僕を?」

「単刀直入に言おう。
 今、我々は『協力者』を必要としている。
 ただし、誰でもいい訳では無い。『条件』がある」

「第一に『スタンド使いではない人間』である事。
 そして、『スタンドに立ち向かう意思を持つ』事だ。
 君は、その『条件』に合致すると判断した。
 だから、ここに来てもらった」

「……『スタンド』?」

「君の言う『超能力』は『スタンド』と呼ばれている。
 それを扱える者を『スタンド使い』と呼ぶ。
 他にも教える事は多いが、一度に話しても混乱するだろう」

「あなたは?『スタンド使い』なのか?」

「いいや……『私は違う』」

        ズズズズズ………………

度会が静かに片手を上げると、闇の中から『人影』が現れた。
白いワンピースを着た髪の長い女だ。
前髪が顔の大部分を覆っており、
僅かな隙間から片目だけが覗いている。

「こいつの名は『御影憂』。『スタンド使い』だ。
 『闇に潜む力』を持っている」

            「…………よろしく」

                 ボソッ

度会の隣に立つ御影は、軽く頭を下げた。
おそらくは、先程ドアを開けたのも御影だったのだろう。
驚きながらも、桐谷は直感で理解していた。

「さて――これで『顔合わせ』は済んだ。
 以前に言ったように、我々は君の手助けをする。
 その代わり、君も我々に手を貸してもらいたい」

「……何か『目的』があるんじゃないのか?
 それを聞かない内は、返事は出来ないな」

「当然だ。『協力者』である以上、こちらの事情は明かす。
 では、話そう。我々の『目的』について――――」

806『二人の傷跡』:2021/02/11(木) 21:20:31

『御影憂』は『遊園地』で『事件』に遭遇した。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1606787541/328
これは、それから『一時間後』の事である。

「――――まぁ…………大体『こんな感じ』…………」

薄暗い部屋の中で、『御影憂』は一通りの話を終えた。
『遊園地』で遭遇した『一連の出来事』についての報告だ。
肘掛け椅子に座る『度会一生』が、それを聞いていた。

「『スタンド』を用いた犯罪――
 思い上がった『クズ』が遊んでいた訳か。
 どこの派閥か知らないが、『アリーナ』も出張っていた。
 ご苦労な事だ」

「もっとも、『残りカス共』が関与しているとなれば、
 当然の対応と言えるな」

両方の目を細め、度会は憎々しげに吐き捨てた。
彼の身体には、未だ消えない『傷跡』が残っている。
それは、『過去の事件』によって出来たものだ。
同じ事件によって、度会は『体』に傷を負い、
御影は『心』に傷を負った。
それらの『傷』が、二人にとって大きな『転機』となっていた。

「『外部のスタンド使い』が解決に寄与した……。
 一人は分かっている。
 『円谷世良楽』――殺傷力の高い能力を持つが、
 当人の性質は至って善性。
 しかし、敵に対する攻撃を躊躇する程のお人好しでも無い」

『円谷』に関しては、御影から『接触』の報告を受けていた。
『スタンド能力』である『リトル・スウィング』も含めて。
『危険な人物では無い』というのが、
現時点における『度会一派』の共通した認識だ。

「で…………どうする?」

「これまで通りだ。お前は引き続き『情報』を集めろ。
 それと――――『これ』を持っていけ」

           スッ

「…………何これ?」

度会が御影に一枚の紙を差し出す。
それは一枚の『チラシ』だった。
裏面には、何とも言えない『奇妙な絵』が描かれている。

「前に話した『妙な子供』から渡された絵だ。
 何かの参考になるかもしれない。
 お前が持っていろ」

「分かった…………」

「あぁ、それから――――」

「…………?」

「『ライフワーク』は程々にしておけ。
 あまり派手にやると『アリーナ』に目を付けられる……」

「…………オッケー」

              ――――バタン

御影がマンションから出て行くと、
度会は再びパソコンに向かい合った。
少し前に、『ホームページ製作』の依頼を受注したのだ。
『活動』を続けていく為には、『表の仕事』も重要だ。

807風歌 鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/18(木) 17:30:00

現、社会性汚物であり、『アリーナ』に纏わる揉め事をきっかけに。多少なりとも汚物から這い出そうとし始めた風歌鈴音の趣味は入浴である、H湖での水浴びではない、風呂への入浴だ。
というわけであり、風歌は銭湯に向かった。
星見湯。星見町に幾つかある銭湯施設の一つであり、その中でも最もおおらかな銭湯である。
最低限のマナー以外に強いるものはない、浸かれば湯の色を変えそうなホームレスであろうが刺青を背負っていようが、人間ですら無くとも、番頭に300円を渡せば誰でも身体を洗うことが出来る。
石鹸とシャンプーは使い放題、手ぬぐいと洗体タオルは無料レンタルといたれり尽くせりの楽園が、風歌が人間らしい悦びを味わえる数少ない場所。
加えて――今日のシャンプーは自前である。スタンド使いの事を教えてくれた少女から貰った、久しぶり過ぎる贈り物。残りはすっかり少なくなったが、最後まで大事に使う予定である
入り口をくぐった鈴音は、迫る湯悦と、普段の使い放題の安シャンプーではない洗髪を行う予感に、汚い笑みを浮かべた。
比較的に臭わない、つまりまァ多少は臭う服ををロッカーにねじ込んで鍵を掛け、鍵付きのゴムバンドを手首に巻いて、風歌はガラリと女湯に入る。
そして、掛け湯を浴びるとたっぷりと時間を掛けて身体を洗い、髪を清めた。
どうせ、直ぐに臭い服に身体を再び包む事にはなるのではあるが、風歌にとって入浴と洗体は衛生行為ではなく純粋な娯楽である、今、この瞬間が気持ちいいだけで良い行為なのだ。
他の客の迷惑にならない程度に垢を落とした後、風歌は、熱い湯に浸かり、『ダストデビル・ドライヴ』を出し、湯の中で自分に向けて『噴射』を行う。セルフジェットバスである。

「あ〜〜〜〜」

うら若き乙女が上げるべきではない声は、どこか爺臭かった。

808関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/18(木) 17:49:43
>>807

「ふふ。こういう銭湯って、いいですよねえ〜」

と、伸びやかな声が掛かった。
どうやら人が話しかけて来たようだ。

見れば、髪を頭の上で一つにまとめた、
泣き黒子のある穏和そうな顔立ちの少女がいる。
歳の頃は、おそらく風歌と同じか、すこし上だろう。
あまりこの銭湯に似つかわしい客層には見えないが、
郷に従うように、騒ぐ事もなく、むしろ馴染んでいる。

「あ……ごめんなさあい。
 つい声をかけちゃいました〜。
 ここで同じくらいの子を見るのって、珍しくて」

      「それに……」

と、何か含むような様子で風歌を……
いや。『ダストデビル・ドライヴ』を見ているのか?

809風歌 鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/18(木) 18:16:43
>>808
物珍しい、相手である。銭湯に来る女は基本的に年配であって、風歌やその同年代は滅多に見れるものではない。
だから、彼女の言葉を風歌は素直に信じた、銭湯が社交場であった時代もあると言うし、温もりは硬い口をも緩ませるというものだ。
だが――彼女の見る『先』にあるものを見て、風歌はしくじったと反射的に思い――次いで、思い直す

(別に、初対面の相手にバレた所でな……見えるってことは、持ってるってことだろうし)

ホームレスとしての防衛本能として、僅かながらの警戒を懐きながら、風歌は軽く笑った。

「ああ、いい湯だよ……それで、あんたも……『持ってる』くちかい?」

問いに合わせて『ダストデビル・ドライヴ』の腕を組ませて、首を傾げさせる。見えているのならば、この問いの意味を理解しないはずはないだろう。

810関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/18(木) 18:38:46
>>809

昨今の『サウナブーム』などの影響もあり、
銭湯に若者が触れる可能性は依然残ってはいるが、
いずれにせよ、珍しい存在なのは間違いない。

「ええ、見えてますし、持ってますよう。
 『人型』じゃなくて『物』の形なので、
 ここで出せるものではありませんけど……
 私も『そういう能力』を持ってる人間です〜」

ましてや、双方が『スタンド使い』となると――だ。
寿々芽は浴槽の段差に腰掛けたまま、ゆっくり頷く。

「……あ、そのう、別に出したらダメとか、
 能力を使うのをやめろとか、
 そういうことは言うつもりはないですからねえ」

自分の態度が『注意』と取れると思い至り、
一応、言葉にしてそれを否定しておく。
 
「ただ、便利そうだなあ、って思っただけで……
 『ジェットバス』が無いんですよねえ、この銭湯」

「経済的ですし……いいお湯だから、好きなんですけど〜」

安さと、寛容さ。
引き換えに『スーパー銭湯』のような『彩り』は欠ける。

811風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/18(木) 18:56:56
>>810
「まぁなぁ」

風歌はうむと頷いた。

「安かろうは必ずしも悪かろうには繋がらねえが、大抵の安モンは高いもんにあるなんかがねぇから安いんだ」

とはいえ、その『ない』が齎すものは決してマイナスばかりではない、特に風歌にとってはそうだ。
普通の銭湯ならばある刺青入浴禁止も、この風呂にはなく、湯の色を変えかねない汚物めいたホームレスの入浴も断る事はない。
来るもの拒まず、この暗黙の許しが有り難い人間も、世にはいるのである。
この様な場であるからこそ、風歌も珍しく『施す』気持ちになった。

「良ければだが……アタシのジェットバス、体験してみるかい?」

812関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/18(木) 19:49:04
>>811

「『安さ』も『良さ』ではあるんですけど、
 使い道の『多さ』はどうしても……
 高いものの方に、譲っちゃいますよねえ」

自他とも認める倹約家の寿々芽は、
『安かろう悪かろう』を全肯定しない姿勢を喜ぶ。

「でも、安いものには安いものの良さもありますよね。
 お菓子なんかは、安い方が味が分かりやすかったり、
 ここみたいに……気を張らずにお風呂に入れたり」

『関寿々芽』にも、事情がある。
特別触れ回るような話でもないし、
根底は風歌のそれとは大きく違うが、
ある意味で、通じるところはあるのかもしれない。

「まあっ! ホントですか〜?
 ふふ、なんだか私ったら催促したみたいで。
 でも、もしよければ受けてみたいですねえ」

           ススー…

「お礼と言ってはなんですけど、
 『フルーツ牛乳』でも後でご馳走しますよう」

ゆっくり少しだけ風歌に近づく。口元の笑みは隠せない。

813風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/18(木) 20:04:12
>>812

「よーし、それじゃあ行くぜ……」

風歌は、『ダストデビル・ドライヴ』の手をわななかせながら、風を生む両手を湯に沈め――彼女の背に、押し当てる。
そして――突風。けっして、『攻撃』の時ほどの圧は持たせず、ジェットバス程度の『圧』にとどまる威力で、彼女の背に風圧ならぬ『水圧』を与える。
その最中に、微妙に風の『細さ』や『勢い』を微調整し――手の位置を変えて、風の命中点を変え続ける。

「一番いい場所があったら教えてくれよ、そこでしばらく止めるからさ」

814関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/18(木) 21:31:15
>>813

「はあい、お手柔らかにお願いしますねえ〜」

寿々芽の背中には傷の一つもなく、
少なくとも『路上生活者』のそれとは違う。
が、人以上に疲れのある人生を送ってはいる。
ゆえにこの『ジェットバス』は――――

「…………!!」「これっ……」

        「あぁ〜っ」

     グワン

至近の水圧に押されて体が多少揺れるが、
そんなことは気にならない。

「す、すっごいです、ねぇえ〜〜〜…………っ」

   「あ、そこでお願いします〜。
     そのぉっ、『肩甲骨』の間のあたり……で」


――『てきめん』に効く。

スタンドの使い方はまさしく『応用次第』。
ゴミだけでなく、『疲れ』を吹き飛ばす事にも抜群だ。

815風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/18(木) 22:09:04
>>814
「おうよ、任せとけ」

風歌は彼女のリクエストに答え、求められた箇所を集中的に行う。
ながらも、適度に他の場所――風歌の経験上に於いて、『疲れを飛ばせる場所』を適度に刺激していく。
一日中さまよう事もあるホームレスは疲労のプロであり、また回復のプロでなければやってはいけない。
若さだけではどうにもならない肉体の消耗を、銭湯でのセルフジェットバス刺激で癒せるからこそ、風歌は最近の過酷を送れているのだ。
気を付け、刺激し、癒やし、良くないものを吹き散らす――風歌は、自分の力が誰かの役に立っていることが、嬉しかった。
しかし、いつまでも、という訳にもいくまい。何事にも、頃合いはある。

「そろそろ、いいんじゃねえか? やりすぎると逆に来るぜ?」

816関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/18(木) 23:07:31
>>816

「そっ……う、ですねえ〜っ。
 これ以上は……後で痛くなっちゃいそうです。
 それだけ『効いてる』って事ですけど〜」

   「あぁぁ」

     「ありがとうございました、
      このあたりでっ、大丈夫ですよう」

風歌の勧めに従い、この辺りで止めてもらおう。
単純に長湯になりすぎるのも良くないし、
この『施術』については未知数だ。
具合はとても良いが……後が怖い分もある。

「いやあ……このための能力じゃあないんでしょうけど、
 とっても気持ちよかったです。素敵な使い方ですねえ」

湯が飛沫を立てない程度に肩を軽く回し、
調子の良さのほどを確認する。
自分の『ペイデイ』も極めて便利だが、
こうした使い道のあるスタンドもあったとは。

「あのう、私はそろそろ上がりますけど〜。
 脱衣所で待ってますので……
 上がってきたらジュースでも飲みましょう〜」

脱衣所には『自販機』があった。
牛乳やコーヒー牛乳やフルーツ牛乳が並ぶ、アレだ。

言葉通りに湯船からゆっくりと這い出し、湯の外へ去っていく……

817風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/19(金) 19:21:24

>>816

「素敵な使い方、か」

そう言われたのも、そう思ったのも初めての事であった。
風歌にとっての『ダストデビル・ドライヴ』は日常の補助や自衛に使う事が多い、いわば自転車と同じ様な便利な才能であり、なんとなしに使いはしても泥臭い使い方だと思っていたのだ。
それを、他人に施しただけで、素敵と言われる――いや、他人に施した行いこそが、素敵7日も知れない。

「ありがとうよ――」

礼と共に彼女を見送った風歌は、ホンの少しだけ言葉の余韻に酔い――湯から上がった。
身も心も、いい具合に火照った。後は、約束どおりにフルーツ牛乳を奢って貰うとしよう。
いい気分のままに、風歌は彼女が待つであろう脱衣場へと向かった。

818関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/20(土) 00:38:18
>>817

脱衣所に上がると、寿々芽は髪を乾かしていた。
服もすでに着ているようだったが、
物珍しいのは『エプロン』を着けている事くらいだ。

「あ、どうも〜。良いお湯でしたねえ、いつも以上に」

           スッ

「ふふ、あなたのおかげですよう」

ドライヤーを止めて立ち上がり、微笑む。

決して上等なブランド等ではなさそうだが、
『裸の付き合い』ではないと『見えてしまう』。
少なくとも彼女の服は、『汚れていない』。

「ジュース、先に飲みます〜?
 それとも、着替えてからゆっくり飲みますか?」

そう言いつつ、近付いてくる。手には『小銭』が二人分。

819風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/20(土) 10:07:26
>>818

「いや、このまま飲むよ。開放感があるからな」

風歌の着ている服が作業着ならば、相手も仕事上がりと解釈して汚れと匂いに納得する可能性もあるが、風歌の服はどう見ても私服だ。
一般的なホームレスよりはマシであろうが、洗濯などろくにしていない汚い服――風歌の背景を直に察するかも知れない。
軽蔑と侮蔑には慣れきっている風歌であるが、わざわざホームレスと同じ湯に浸かったと言う不快感を与える相手に必要もないだろうと思う。

(奢ってもらったら、なんか適当に理由つけて二度風呂にすっか)

自身を弁える風歌は、小銭を受け取るために手を差し出した。

820関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/20(土) 11:39:55
>>819

「ああ〜っ。確かにそうですねえ。
 銭湯じゃないと、中々しづらいですし」

自宅でも出来なくはないだろうが、
家族の目が気になる、という事だろう。

「はい、それじゃあどうぞ〜」

        ポム

「外に置いてある自販機(※1)と違って、
 どれも『100円』だから経済的ですよねえ」

差し出された手を上下から包むようにして、
風歌の手のひらに『100円』を乗せる。
ちょうど『フルーツ牛乳』が買える額だ。

「この『中で動いてるのが見える自販機』〜。
 銭湯だけの物って感じで、ちょっと好きです。
 まあ、どうでもいいんですけどねえ〜。ふふ」

先の『ジェットバス』のおかげか、上機嫌らしい。
穏和で、嬉しそうな声色で自販機の前に行く。
小銭を入れずに風歌の顔を見ているのは、
言葉にはしないが、『お先にどうぞ』という意。

和やかなムードも、風歌が『弁えている』からこそ……か?
それともこの少女なら風歌の『背景』を気にしないのか。

※1……『コーラの会社』の自販機。最安でも130円から。

821風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/20(土) 13:10:12
>>820

「おう、ありがとうよ」

小銭を受け取った風歌は、フルーツ牛乳を購入――手にとって蓋を外すと、腰に手を当てて一気に飲む。子供らしいとも思うが、風呂上がりの飲み方は風歌からしたらコレに限るのだ。

「ぶはーっ!」

一息で飲み干し、口元を拭う風歌は、奢ってくれた彼女の雰囲気を見る。
和やかであり、どこか善性を感じる……錯覚だとしても、少なくとも、風歌は悪性を感じない。
その様な相手を、『騙す』事が気遣いになるんのか――風歌は、微かに自問する。
これから二度目の風呂に入れば、彼女とは何を感じることもなく別れるだろう。
しかし、彼女はこの湯に来るのである――延々とに、騙すようなやり取りを続けるのか?
それは、不誠実であると、風歌は思う。

(アタシがホームレスだって伝える必要はねぇにしろ……変に隠しだてするのも、アレだな)

風歌は、一つの覚悟を決めた。

「ごっそさん、うまかったよ。アタシは着替えるから、あんたも飲みな」

空き瓶を処理した風歌は、己の着替えが入ったロッカーを開く――明らかに清潔ではない服が、顕になる。
コレを見て、どう思うかは自由であるし、『察するか』も解らない。
しかし、察したのであれば――その上で嫌悪を抱くのであれば、次に顔を合わせた時に避けるか、帰るかなどで要らぬ事態を避ける事は出来よう。
伝えぬ誠意と、騙さぬ誠意。後者を選んだ風歌は、服を着ながら彼女の反応を待った。

822関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/20(土) 18:22:56
>>821

「ふふっ、いい飲みっぷりですねえ〜……………」

       「……」

自分に『事情』があるように、
彼女にも『事情』があるのだろう。

「はぁい、いただきます〜!
 あ。乾杯とかしたほうが良かったですかね〜?
 まあ、何に、っていうわけでもないですけど」

つまり寿々芽は 『反応をしない』事にした。
『反応がない』ではなく、しない、だ。
『察してはいる』のが、相対する風歌にはよく分かる。
よく言えば慮り……悪く言えばナアナアにしたのだ。

    「んぐ」

           「んぐ」

フルーツ牛乳を購入し、ゆっくりと飲み干していく。

「っはー……やっぱり、銭湯で飲むのが一番ですね。
 よそで飲んでも、こんなに美味しいとは思いませんよ」

笑みは穏和で、嘘をつくのは、苦手ではない。
笑みは真実である事とも、両立させる事ができる。

823風歌鈴音『ダストデビル・ドライブ』:2021/02/20(土) 19:11:42
>>822

「全くな、牛乳は風呂上がりに限るってもんだ」

そう言って笑いながら、風歌はしばし考える。
風歌には、彼女がどこまで自分に『気付いた』かは解らない。しかし、何も思わない程無神経ではないだろう。
しかしながら、相手は『不快』を表に出さなかった。風歌にとって、それは喜ばしい事だ。
これからも風歌はこの銭湯に通うだろうし、顔を合わせても社交辞令程度の会話は交わせるだろう。

(悪くない、ってことなんかねぇ……)

何れにしても、初対面のスタンド使いと悪くない……少なくとも、最悪ではない関係を初められたのは、僥倖と呼ぶ出来であろう。

「またこの風呂で会ったなら……そっちがして欲しけりゃ、ジェットバスをしてやるよ」

出口に向かいながら、風歌は彼女にそう言った。

824関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/20(土) 23:14:48
>>823

「まあっ! ここに来る楽しみが増えました〜。
 ふふ……じゃあ、私からのお礼も返さなきゃ。
 次は、コーヒー牛乳をご馳走しますねえ」

         ニコ〜ッ

「あ、私……『寿々芽(すずめ)』って言います。
 またここでも、よそでも、
 どこかでお会いしたらよろしくお願いします」

      「それじゃあ……お元気で〜」

小さく頭を下げて、手を振って背を見送る。
スタンド使い同士は『組む』事でより『引き立つ』。
今後も『よろしい』関係を繋ぎたいものだ。

       ・・・

          ・ ・ ・

             ・・・

…………………脱衣所から、そして建物から出ると、
入口の近くに『黒塗りの車』が止まっていた。
特に風歌に何かを言ってくる様子もないが、
やはりこの銭湯は『訳あり』の者も多いという事だろう。

だが、だからこそ生まれる出会いもある……
それが風歌にどれだけの価値を生むかは、これからの話だ。

825風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/21(日) 00:44:15
>>824

「『寿々芽(すずめ)』か……」

去った彼女の名を、噛み締める様に呟いた風歌は、彼女の言葉を思い返す。
どこかでお会いしたら――

(こちらこそ、だな)

『ダストデビル・ドライヴ』は風のスタンド。単独では器用貧乏としか言えぬ力であるが、誰かと組めば幅は広がり――背中を押す事も出来る。
そして、今日、風歌はジェットバスにて誰かを喜ばせる事もできた。ゴミである風歌の才能は、決してゴミではないのだ。
いつかどこかで――力を合わせる事があれば、追い風の一つも吹かせてやろうと、風歌は思う。

(さて)

そうして、銭湯から出る時、風歌は露骨な『ヤの字』とすれ違う。墨を背負った人間に厳しい世間から逃れるように、筋者もまたこの湯に多く訪れる。
あり方は違えど、社会のゴミ同士――互いに、相手が何であるかには気付いたろうが、互いに何も言わずに去っていった。
袖すり合うも他生の縁、すり合わせぬも一つの礼儀。
だが――擦り合って生まれた縁は、大事にしたい。

(いつか、また、な)

この町で出会った、新たなるスタンド使いの名を心に刻みながら、風歌は帰路に付いた。

826『白と黒の間で』:2021/02/23(火) 03:32:06

マンション『Luna-Polis』。
その一室に、『三人の人間』が集まっていた。
間接照明のみに照らされた室内は薄暗い。

「前にも説明した通り、僕は『彼』に一度会っているんだ。
 その時は、『スタンド』について少し教えてもらった」

「だから考えたくはないけど、『あれ』をやったのは恐らく……」

最初に口を開いたのは、『警察』の制服を着た若い男だった。
名前は『桐谷研吾』。
星見町の交番に勤務する『地域課巡査』だ。

「『一般人』を『スタンド』で『半殺し』…………」

        ボソッ

「…………『危ないヤツ』」

呟くように答えたのは、前髪が異様に長い不気味な女だった。
『私立清月学園大学部』で『心理学』を専攻する『大学生』だ。
名前は『御影憂』。

「『情報』が少ない。
 だが、『やり口』を見る限りでは、
 『最も典型的なタイプ』と言える」

「『スタンド使い』と呼ばれる人種の中ではな」

最後に喋ったのは、肘掛け椅子に座る男だ。
その顔には、幾つもの『傷跡』が刻まれている。
彼は『度会一生』と名乗っていた。

「…………どうする?」

「憂――聞かなくとも分かっている筈だ。
 何も変更は無い。
 今まで通り『表には出ない』。
 実際の解決は『アリーナ』の犬にでもやらせておけばいい」

「桐谷――警察は『手掛かり』を掴んでいないんだったな?」

「あぁ……『あの事件』は『僕以外の目撃者』もいない。
 手掛かりといえば、
 『体内から傷付けられてる』っていう『異常性』くらいだよ」

「なら、いい。今後もし警察が何か掴んだら教えろ」

「分かった。そうする」

「『学生』なら…………『清月』に在籍してるかも…………」

「可能性はあるな。この辺りの学生は大半が入学している。
 いたとしても不思議は無い」

御影の言葉を聞いた度会は、
『杖』の握り部分に両手を重ねて置いた。
そこには、繊細な銀の彫刻が施されている。
鋭い視力で万事を見通すと称される『鷲の彫像』だ。

「憂は『学園』に気を配れ。一応、念の為だ」

「了解…………」

「僕は、そろそろパトロールに戻るよ。
 また何か『スタンド』に関わりそうな話があったら連絡する」

             ――――――バタン

「…………『夜』まで、ここで寝ててもいい?」

「好きにしろ」

827風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/23(火) 19:15:49

あらゆるものには行き着く先がある、ゴミはゴミ箱に、死体は墓場に。
そして、引き取り手の無い死体は処理される様に弔われた後、公的なゴミ箱とも呼べる『無縁塚』に埋められるのが日本国である
星見町にも当然に無縁塚はあり、今のままでは其処に収まる事になるだろうホームレス、風歌鈴音は弔いの品と掃除用具を両手に、寄る辺なき者たちの墓標へと参っていた。
個人の名が掘られることもなく、十把一絡げに葬られた者たちは数え切れない程にいる。塵も積もれば山となるの言葉通り、これまで埋められた骨やら灰を重ねれば間違いなく山が出来るだろうと風歌は思う。
その山の中に、風歌が弔うべき者たちはいる。先んじて苦界より去ったホームレス達。本名とも知れぬ名前と顔の思い出だけを残して、静かに冷たくなった愚かで頼れた先人達。
新参者に暖かくもなかったが、冷たくもなかった彼らがいてこそ、風歌はどうにかキャンプ場でホームレスをやってこれた。僅かな余裕が出来た今、手を合わせに来る程度の義理は風歌にはあった。

(あんたらが死んでからも色々あったし、大丈夫じゃねえが……どうにかはなってるぜ)

風歌は心中で彼らへの思いを告げると、線香代わりのタバコを咥え、火を付けてから無縁塚に煙を吐くと、手にしたカップ酒の蓋を明けて浴びせかける。掃除用具は、この始末の為の物であった。
そして、屈み込んで手を合わせる――ふと、折角だから、見せてやるかと思い立つ。
『ダストデビル・ドライヴ』のヴィジョンが風歌の背後に現れ、本体の動きに合わせるように風を生む掌を合わせた。
出会いが呼び起こした『才能』と共に、『身』も『心』が一緒になった合掌を、風歌は行った。

828八瀬『マウンテン・ライフ・ワーシップ』:2021/02/23(火) 21:00:51
>>827

「なんや、珍しいなぁ、こんなトコに若い子が来るなんて」

風歌の背後から声をかける
振り返ると、そこには30代程度の女性の姿がある
老人でもないのにその髪は蜘蛛の糸のように白く、長袍と呼ばれる異様な服装をしている

その手の中では、小振りな花々が数本、紐で束ねられていた


「ま、ええか、ちょっと隣失礼するで」

女は一瞬だけ『ダストデビル・ドライブ』に視線を向けると、
風歌の隣に滑り込むように移動し、花を献花台に置いた

829風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/23(火) 21:32:26
>>828
献花台に花を置いた女の装いは、着物を普段着に着る程度には奇っ怪な装いであったが、ここ暫くで『奇妙』に慣れた風歌は、無礼な視線を送らずに済んだ。
それよりも気になったのは、若白髪という言葉ではありえぬ白髪。これは流石に目を引き、思わず凝視をしてしまう。

(何やってんだアタシは……)

見下してきた訳でもない相手に対する非礼な眼差し――自らを恥じた風歌は、それを誤魔化すように話しかけた。

「若いって事は、その分見送る回数が多いって事なんでね。ま、『こんなトコ』に来る知り合いばっかなのは、ろくな事じゃねえのかも知れねえがな……」

誤魔化そうという意識は、風歌の舌を回させる。あるいは、舌禍とも呼ぶべき領域にまで。

「あんただって、こういう所に来るには珍しい類に思えるぜ。こう言っちゃぁ何だが、あんたはアタシと違って墓を持ってる知り合いが多そうに見えるが」

相当に非礼な言葉を勢いで口にしてしまった風歌は、即座に悔いるが吐いた唾は戻らない。
どうか、あまり不快にはさせていませんようにと願いながら、風歌は反応を持った。

830八瀬『マウンテン・ライフ・ワーシップ』:2021/02/23(火) 21:45:35
>>829

「ふっ・・・・! ククク・・・・ 確かになぁ、『ここ』に居るんは碌でもない人間ばかりや
 そんな所にわざわざ花を手向けようなんていう私もそうとうな変わり者に見えるんやろなぁ」

失言、または舌禍ともいうような風歌の発言を受けて
目の前の女は笑い始める、不謹慎ではあるが、言葉の棘を気にしている感じではない

「・・・・・はぁ」

一通り笑って満足したのか、女は表情を消し僅かに視線を落とす

「知らない人にこんな話をするのもなんやけどな
 ついこないだまで湖畔の方でうろうろしとった爺様が居ったんやけど
 ・・・・・まあ、ここ最近の寒さにやられとったみたいでなぁ・・・・」

手の平を合わせ、合掌

831風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/23(火) 21:57:27
>>830
「そうかい……」

風歌は、心底から失言を悔いた。
この女性は、自分と似たような誰かを悔いに、訪れたのだ。
迎えに来る誰かも入るべき場所も失った誰かが、最後にたどり着ける唯一の場所に辿り着いてしまった誰かを。そうでなければ、訪れる様な場所ではない。

「アタシも、まぁ、『見ての通り』で、そのじっちゃんとは『ご同類』でな」

風歌は決して小綺麗な装いをしているわけではなく、はっきり言って薄汚い。
一般的な浮浪者の類よりは多少マシでも、それでも、こう言われたら察していなくても理解するだろう。

「そのじっちゃんとアタシが知り合いだったは解らねぇ。顔は多分知ってるんだろうが、灰になっちまったら確かめられねえけどな……」

けど――そう前置いて、風歌は彼女を、真摯に見つめる。

「それでも、アタシらみてえなのは、最後に壺に収まった後、誰かが来てくれるなんて考えねえもんだ。そういう風に、生きてるからなぁ……だから、きっと、そのじっちゃんはアンタが来て喜んでると思うし……」

そして、風歌は彼女に頭を下げた。

「だから、アタシはそのじっちゃんの代わりに礼を言うよ。アタシらみたいなもんの為に来てくれて、ありがとうよ」

832八瀬『マウンテン・ライフ・ワーシップ』:2021/02/23(火) 22:12:12
>>831

「・・・・・・なるほどなぁ」

女は風歌の様相を一瞥する
服に染み込んだ汚れや、全体的に擦り切れた風味から風歌がどんな生活をしているか察した

「家族も・・・・ 家族からも離れとったみたいやからなぁ
 個人的な付き合いのある連中くらいしか来ないか」

「ああ、お礼なんて言わんでいいよ
 私も社会の枠から外れたっていう意味では、爺様と同類みたいなもんやから」

そう言うと女は持っていた袋の中からむんずと『何か』を取り出す

・・・・それは『土くれ』であった
黒い、土の塊を無造作に素手で握りしめ、袋から取り出している

833風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/23(火) 22:33:17
>>832
「ここには入る奴も来るやつも、ハグレモノばっかりか」

皮肉げに笑った風歌の目の前で、女は袋から土塊を取り出した。
弔いの品としては、どうにも奇っ怪である。土を喜ぶ死人がいるのだろうか。

「随分と変わったモンだな……」

疑問を思わず口にした風歌は、しげと眺めつつも、それ以上は何もしようとしない。
少しの会話で解るが、彼女は変人ではあっても馬鹿ではない。無為な死者の侮辱はしないだろう。
風歌の眼は、じっと、彼女の次の挙動に注がれている。

834八瀬『マウンテン・ライフ・ワーシップ』:2021/02/23(火) 22:55:17
>>833

「ああ、ちょっとな・・・・・」
「私だけやなく、うちのトコロの『神様』も会いたがっとったからなぁ・・・・」

そう呟くや否や、女が手で握りしめた『土くれ』が変化を起こす
『土くれ』の一部が重力を無視するかのように蠢き、徐々に肥大化していく
帯状に、瘤状に、変形したそれらは徐々に一つの形を作っていく・・・・

  【ギィ・・・・・】

『それ』は『犬』の形をしていた
土で出来た『犬の人形』がガシッと四足で大地を踏み、
ギッと摩擦音を鳴らしながら、頭を動かし、『塚』を見上げる

                        ・・・・
「安心したわ、ここに居ったんが、あんたみたいな『使える人』で
 ふつーの人だったら説明するのにひと苦労やからなぁ」

835風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/23(火) 23:02:10
>>834
土塊の『変化』――普通、ならば有り得ない事象。それを引き起こす力の名を、風歌は知っている。

「あんた、スタンド使いか。奇妙な縁もあったもんだな……」

目覚めてから、出会い続ける『才能』の使い手達――スタンドと言う運命で結ばれた様だと、風歌は微かに思う。
だが、それ以上、この能力に付いて思案を巡らす事はない。スタンドは『才能』であり、『有り様』である。戦うならばまた違うだろうが、そうでなければ掘り下げて考え抜こうとは思わない。
この場で大切なのは、その力でどうするかだ。

「色々なスタンド使いを見てきたが、そいつで『供養』をやるってのは初めて見る――力の説明はいらねえが、何をするかの見物はさせてもらうぜ」

そして、土が変わった犬を、風歌はじっと見つめた。

836八瀬『マウンテン・ライフ・ワーシップ』:2021/02/23(火) 23:12:57
>>835

「スタンド使い・・・・ そうそう、藤原さん達はそう呼んどったな
 この手の『術』の事を『スタンド』って」

風歌は『犬の土人形』を見つめるが、何かをする様子はない
風歌が期待するような出来事は特に起きず、『犬』はまるで『ただの人形』のように立ち竦んでいる

「『供養』・・・・なんて大層な事をするつもりはないわ   ・・・・・・
 私はただな、頼まれただけや、『山の神様』からここに『連れて行って』欲しいってな?」

「さあ、あんたなら信じるか?
『山の神様』なんていう戯言を・・・・」

837風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/23(火) 23:25:09
>>836

「神、ね」

風歌は笑った。嘲笑ではない、少しだけおかしそうな笑いだ。

「『死後』に墓参りに来てもらえば、死人が安らぐって考える程度には『そういうの』を信じててね」」

有り得ない物を見てきた風歌は、有り得ない物を信じる誰かを笑わない。
女性の言う『山の神様』がいるのかは『知らない』が、それは『いない』という事を意味しないだろう。

「……死んだら人は仏にもなるかも知れねえし、何者にも神様が宿るかも知れねえ。墓に手を合わせれば、逝った誰かが救われるのかも知れねえ。それを信じるアタシが、『山の神様』を笑うもんか」

そして、笑みの質をにこやかなものに帰る。

「それに、例えば湖畔近くの山だと、あそこ、山菜とかも取れるしなァ。山の神様の恵みってやつだろ、そういうのも」

838八瀬『マウンテン・ライフ・ワーシップ』:2021/02/23(火) 23:34:54
>>837

「柔軟な発想やなぁ
 まあ、そうでもなきゃあ一人でこんなトコには来ないか」

    【ギ・・・・・】

やがて、何かが『済んだ』のか『山犬』が振り返り、女の足元へと歩いていく
ギリギリと摩擦音を鳴らしながら、おすわりのような姿勢となった

「・・・・・湖畔のところの山
『狗郎ヶ岳』って名前の山なんやけどな、私はそこに住んどる
『八瀬 ふしみ』や、よろしく」

そういうと八瀬は風歌に対して右手を伸ばす

839風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/23(火) 23:44:26

ホームレスである風歌は、手を差し出される事に慣れていない。先にミゾレを断ったのも、それに起因する。
だが――そこから踏み出そうとしている今、風歌の行動に躊躇いはなかった。

「風歌――風歌鈴音だ」

自らの名を名乗り、風歌は『八瀬ふしみ』の手を柔く握った。

「湖畔に住んでる根無し草の一本さ。とはいえ、そこから抜け出そうとはし始めたんだがな」

そして、風歌はにこやかな笑みを浮かべる。

「『狗郎ヶ岳』にゃあ、特に春には世話になってる……そこの神様と縁を持ってるあんたの世話にもなってるって、事なんだろう」

だから、そう前置いて、風歌は告げた。

「ここで遭ったのも一つの縁だ。あんたの言う『術』で面倒が起きたら、湖畔で若い女のホームレスを探すといいや。今ん所、アタシしかいねえ……山菜の借りを、返せたら返すよ」

840八瀬『マウンテン・ライフ・ワーシップ』:2021/02/24(水) 00:01:04
>>839

「風歌さん、か
 ああ、覚えたわ」

風歌の手を軽く握り返し、応える

「借りとか、貸しとかは、なしでええわ
 別に山の物を私一人が独占してるわけやないし、ちょっとくらいなら取ってええよ」

人と会う機会が少ないためか、ぎこちない仕草で笑みを返す

「まあ、生えとるもんを根こそぎ取ろうていうんなら、痛い目に会ってもらってたけど、
 あんたはちゃんとしてそうやから大丈夫やろ」

「じゃっ、春を楽しみにしとるわ」

          【ギギギ・・・・】
               【ギ・・】 ペコリ
                    【ギギギギ・・・・・】

それだけ言い残すと八瀬は山の方へと歩き去って行った
後を追うように『山犬』が動く、途中で一度風歌の方に振り返り、軽いお辞儀をすると
八瀬の後を追うように歩いて行った

841風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/24(水) 00:07:38
>>840

山に去りゆく八瀬を見送った風歌は、無縁塚に向かってもう一度手を合わせ、微笑みを浮かべた。

「あんたら、幸せだぜ? アタシはともかく、ああ言ういい女に来てもらえるんだ。死んだ甲斐があったろう?」

アタシも、誰かにココに来てもらえる様に生きてみてぇもんだ……そう、心から願った風歌は、振りかけた酒の『後始末』を始める。

(冷てぇ……)

そして、濡れた雑巾の肌寒さに――彼女の言葉を、思い返す。

「まったく、春が……あったけえ春が、楽しみだぜ」

寒さを誤魔化すために、春にまつわる鼻歌を歌いながら、風歌は掃除を済ませた……

842『遊歩のS』:2021/02/24(水) 21:34:26

二月の『海辺』――今日は幾らか気温が高い。
空は晴れ渡り、波も穏やかだ。
適当な場所に腰を下ろしていると、『何者かの声』が聞こえた。

《誰もが座る事が出来るが、自分だけは座る事が出来ない》

《――――それは何処か?》

『スタンドを持つ者』には分かる。
これは『スタンドを通した声』だ。
『声』は背後から聞こえてきたらしい。

(※先着一名のみ)

843『遊歩のS』:2021/02/26(金) 04:15:29
>>842

《ふむ…………『聞こえない』か》

    スッ

《『スタンド使い』の間には、
 ある種の『引力』が存在すると聞くが――――》

《『相手を探す』というのも、中々どうして楽では無いのだよ》

                       トッ トッ トッ

844烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2021/03/05(金) 21:31:49
「…………」

放課後、夕日も沈みかかる頃、中学校の制服を着た少女が
街の一角にある『工事現場』の前で、何をするでもなく佇んでいる。
視線は工事現場……『工場の跡地』に向いているが、工事現場には動くものはなにもない。

845小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/03/05(金) 21:43:33
>>844

     コッ コッ コッ……

『喪服』を着た女が通りがかった。
つばの広い黒のキャペリンハットを被っている。
ふと、少女の視線の先が気になり、
足を止めて同じ方向を見つめる。

  「……?」

しかし、目立つものは何もなさそうに見えた。
『工場』を見ると、思い出す記憶がある。
場所は違うが、初めて『スタンド』を使ったのも『工場』だった。

846烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2021/03/05(金) 21:56:33
>>845
『小石川』が立ち止まった後にも、暫くはその存在に気づかず、
心ここにあらずといった風体で工場を眺めていたが、ふと顔をそちらに向けた。
伸び過ぎたような長髪が揺れて、何かを堪えているような、悲痛な面持ちが見えた。

「あ………」

「失礼……いや、別に、何もないんだ。
ええと、私も、何かを見ていたわけじゃあなくて……」

はっとしたように『小石川』の姿を見とめた後、
我に返ってもごもごと言い訳のような、照れ隠しのような言葉を口にする。

847小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/03/05(金) 22:15:00
>>846

悲しみに彩られた表情。
それを目にした時、少女の気持ちを悟った。
詳しい事情など何も知らない。
それでも、気持ちの一端に触れたような気がした。
だから、きっと今の自分も、
彼女と同じような顔つきになっていたのだと思う。

  「いえ……こちらこそ失礼しました」

          スッ

微笑を浮かべて少女に会釈する。
夕日に染まる表情は、穏やかで柔らかい。
ただ、どこか仄暗さを湛えた顔でもあった。

  「少し気になったものですから……」

そう言って、再び『工場』に視線を向ける。
今は何もないなら、以前は何かがあったのだろうか。
そのような考えが脳裏を過ぎった。

848烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2021/03/05(金) 22:42:17
>>847
「いや、そんな風に言われると困るな……。
本当に……おかしなヤツだった。私が。
こんな往来で、ぼーっとしているべきじゃあない……本当」

どこか寂し気な『小石川』の表情に慌てたように取り繕うが、
微笑を浮かべる様子を見て、安堵したようにため息をつく。
そして、間を埋めるようにぽつぽつと話し出す。

「……ここの『廃工場』には『いわく』があったんだ。
取り壊そうとすると『祟られる』……ってね。
そうして、実際に良くない事が色々と起こったりもした。
けが人が出たりね」

「私は、正直に言って、そういうのは全然信じていなかった。
『たたり』とか、『あの世』とか……。
あなたはどうかな、そういうのって……本当に、あると思うかな」

849小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/03/05(金) 23:12:42
>>848

  「『いわく』……ですか?」

外見では、やはり特に変わった所は見えない。
しかし、目に見えないものというのは存在する。
特定の人間しか見えないという意味では、
『スタンド』も共通する部分があるのだろう。

  「以前、不思議な『工場』に行った事があります……。
   こことは違う場所ですが……」

『あの時』の事を思い出す。
偶然から一人の記者と出会い、『工場』の中に迷い込んだ。
そして――。

  「そこで、出会いました……」

  「……『会えなくなった人』と」

無意識に視線を落とし、右手の『指輪』を見つめる。
それは薬指に嵌っていた。
夕日を受けて、小さく光っている。
また、左手の薬指にも『指輪』があった。
それらは、同じデザインだった。

850烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2021/03/05(金) 23:33:11
>>849
「不思議な『工場』……?」

あの暑い日に、この『廃工場』で経験した出来事を思い出す。
それも『不思議な工場』……と言えば、その通りだ。
其処で経験したのは、夢幻のはざまのような、過去に『なかった』出来事。
そして……。

「それは………」

『私と同じだ』、と言おうとして、その言葉を飲み込んで続ける。

「……それは、あなたにとっては『善い事』だったの……かな。
『会えなくなった人』に『会う』……だなんて、『正しくない』。
会うべきじゃあない……そうじゃあなかったのかな、本当は……」

伏し目がちに、まるで自らに言い聞かせるようにして問いかける。

851小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/03/05(金) 23:57:41
>>850

  「……おっしゃる事は、よく分かります」

          コク……

少女の言葉に深く頷き、『同意』を示す。
その表情には、躊躇いや迷いはない。
『心からの同意』である事が窺えた。

  「私には『迷い』がありました。今も、そうです」

  「けれど、今は『決心』がつきました。
   いつか『本当に会いに行く』と……」

  「――この命を『最後まで全うした後』で」

  「何十年先になるかは分かりません。
   でも……『その時』が、
   私が『彼と会える時』だと信じています」

今すぐにでも『会いに行きたい』という気持ちは否定できない。
しかし、『彼の分まで生きる』という『約束』がある。
『約束』を守り通した時こそ、胸を張って『彼に会いに行ける』。
『未来への希望』が、生きるための『心の支え』になってくれる。
そのために、私は今を生きている。

852烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2021/03/06(土) 00:28:51
>>851
「命を全うした後で……」

同じような『境遇』でありながら、
どこか吹っ切れたようなその言葉に、息を飲む。

「……確かに、そうだ。私にも、『この世』でやる事がある。
自らの命を、過去に囚われて浪費している場合ではない。
私にできる事を全うしなければならない……」

「……何か、話し込んでしまったな。
ありがとう、興味深い話を聞くことができたよ。
私は、烏丸香奈枝という。
あなたとは、何か……また、どこかで出会うような気がするな」

そういって会釈をして、工場の方を振り返らずに真っすぐに帰路についた。

853小石川文子『スーサイド・ライフ』:2021/03/06(土) 04:30:56
>>852

  「……小石川文子と申します」

  「烏丸さん――もしよろしければ、また何処かで……」

丁寧に頭を下げ、立ち去る少女を見送る。
初対面ではあったものの、他人のような気がしなかった。
その理由は分からないが、
何か『通じる部分』を感じたように思う。

  「――……」

夕日の中に佇み、少女に代わって『工場跡地』を見やる。
同時に、記憶の断片が頭の中を過ぎ去っていく。
自分の中に眠っていた『自傷の刃』を自覚した時から、
それは始まった。
不思議な工場、スタンド使いの一派との争い、奇妙な集まり、
追う者と追われる者、幻の町。
それらを経て『不殺の刃』の存在を意識し、今に至った。

                     コッ コッ コッ……

やがて目を伏せると、踵を返して静かに歩き出した――。

854御影憂『ナハトワハト』:2021/03/06(土) 21:08:56

そこそこ大きいペットショップ。
『爬虫類コーナー』に一人の女がいた。
異様に長い前髪が、顔の大部分を覆い隠している。

    スタ スタ スタ スタ スタ
                  ――――ピタッ

店内を徘徊する途中、一つのケージの前で足を止め、
そこに入れられている生き物を眺める。
真っ白い『蛇』だ。
プレートには『サウザンパインスネーク』とある。

(『ずっと探してた子』…………こんな所にいた…………)

(芸術品のような『鱗感』…………)

(しかも『理想のサイズ』…………)

          ジィッ……

ケージを這う姿にうっとりしつつ、『値段』を見る。
高いが、頑張れば出せなくはない値段。
しかし、『お迎え』してしまうと今月は厳しい……。
だが、『出会い』は一期一会。
ここで見送ってしまえば、
次に来た時にはいなくなっているかもしれない……。

(どうしよう…………)

そこに張り付いたまま、頭を悩ませ始める。
元々この店に来たのは、餌の『冷凍マウス』を買うためだった。
ついでにブラブラしていたのが間違いだったのかもしれない。

855御影憂『ナハトワハト』:2021/03/10(水) 00:12:20
>>854

「…………『買っちゃった』」

小一時間悩んだ末に、結局『お迎え』する事にした。
痛い出費だが、この『出会い』には変えられない。
当初の目的だった『冷凍マウス』も忘れずに購入済みだ。

(しばらく『一生』に、ご飯奢ってもらお…………)

856『アンダーカバー・エージェント』:2021/03/10(水) 00:29:32

『御影憂』は、『度会一生』の指示により、『音仙』と接触した。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1463235536/357
これは、その『三日前』の出来事である。

――――――――――――――――――――――――――

その部屋は分厚いカーテンが締め切られ、昼間でも薄暗い。
間接照明の明かりだけが、室内を仄かに照らしている。
肘掛け椅子に座っていた『度会一生』は、
『来訪者』に気付いて顔を上げた。
部屋に入ってきた『御影憂』は、
壁に面したソファーに腰を下ろす。
御影は度会に呼び出され、彼の自室を訪れていた。

「――――――『音仙』と接触しろ」

「………………いいの?」

御影と向かい合った度会は、『その名前』を口にした。
それを聞いた御影は、怪訝な表情を浮かべる。
存在自体は既に知っていた。
以前、度会から聞かされた事があったからだ。
しかし、『会いに行け』とは言われていなかった。

「穴倉に篭っていても『情報』は得られない。
 奴は『スタンド使い』を増やしている人間だ。
 何を考えているか分かったものじゃあない。
 『アリーナ』や『エクリプス』と同じように、
 警戒しておく必要がある」

「分かった…………近い内に行って来る…………」

度会の指示を聞き、御影は頷いた。
御影は度会を信頼しており、度会も御影を信頼していた。
彼らの間には、『特別な結び付き』が存在していた。

「言うまでも無い事だが、決して油断するな。
 『意図』を悟られないように、十分に注意しておけ」

「『任務了解』…………」

        ボソッ

「…………なんちゃって」

――――――――――――――――――――――――――

    スタ スタ スタ…………

それから『三日後』、
御影憂は『音仙』と接触する為に『現場』に向かっていた。
これは、いわば『潜入調査』だ。
『正体』を知られないように、慎重に立ち回る必要があった。

(バレないようにしなきゃいけないから…………)

(あ…………『いい事』思い付いた…………)

(ちょっと『口調』とか変えてみよっかな…………)

857ソラ『ステインド・スカイ』:2021/03/13(土) 10:38:45
住宅街での出来事

自分のスタンドである杖をクラブに、ゴルフに興じている

「ちょっと打ちにくいな…」

ボールをちょっと小突き、能力で眼前まで浮上させる
ボールは雲に覆われその場に固定される

「よし」

杖をバットのようにして野球のようにフルスイング!

カキィィィン!

ガシャァァァン!

不味い!荒木さんのお宅に入ってしまった!
荒木さんはソラが知る限り、この世で最も恐ろしい存在だ…
捕まったら四肢をバラバラにされ、臓器を売られてしまう!

ソラに与えられた選択肢は3つ
1素直に謝る
2さっさと逃げる
3通りかかった>>858に罪を着せる

858石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2021/03/13(土) 11:34:06
>>857(ソラ)
巻き込まれた。

「おっ、なんだなんだ?」

「なんか割れた音がしたぞ?」
シャチの背ビレみてーな逆立った頭をしたガタイがよくて目つきの悪い清月学園中等部三年生(15歳)が通りがかりましたよ。(説明セリフ)

859ソラ『ステインド・スカイ』:2021/03/13(土) 11:52:08
>>858
何だか目つきが悪いし、こいつならいいか…
いや、よくない!
何の罪も無い人を生贄にするなんてよくないよ

ソラは素直に謝りに行く事にした


ピンポーン

中からスキンヘッドで筋肉隆々
肉切り包丁を持った肉屋(ブッチャー)の荒木さん(本日休日)が現れた!

「ご、ごめんなさい…」

荒木さん「素直に謝れて偉い!今度からこんな事しちゃ駄目だぞ」

「ゆ、許していただけるんですか?」

荒木さん「とでも言うと思ったか!?
     慰謝料5000万円払ってもらおう!」

「5000万円!?そんなに払えないよ!」

全面的に悪いのはこちらだが、そんなに払えるわけがない!

荒木さん「無ければ肝臓を売れ!」


何やらもめているようだ
助けてやるのもいいし、このまま見物するのも一興だろう

860石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2021/03/13(土) 13:28:34
>>859(ソラ)
(クサリをはずしてやるか)
 →(このままながめてるのもいいか)

石動のおはだのつやが3上がった!

861ソラ『ステインド・スカイ』:2021/03/13(土) 14:10:51
>>860
荒木さん「俺様が直々に解体してやろう!」

肉切り包丁がソラに振り下ろされる!

ガキィィィン!

しかし鋼鉄並みの強度を持つ杖で防いだ!

「うおおおおおおお!解体されてたまるか!」

荒木さん「小癪なああああああああああああああああああああああああああああああ!」

ソラは一目散に逃げ出した!

荒木さん「逃がすかぼけえええええええええええええええええええええええええええ!」

荒木さんはソラを追いかけて行った!

その後、ソラが無事逃げられたかは定かではない

862石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2021/03/13(土) 14:26:48
>>861
「今日も星見町は平和だなー」
何事もなかったかのように立ち去った。

けいけんちを1919ポイントかくとく!(いみがない)

863『幕間』:2021/03/22(月) 18:48:32

「………………なんで」

      ボソッ

『Luna-Polis』に戻るなり、『御影憂』は恨めしそうに呟いた。
『度会一生』は椅子に腰を下ろし、御影を見つめ返す。
歓楽街の『多国籍料理店』が、違法行為で摘発された。
その前で、二人は『円谷世良楽』と出くわしたのだ。
御影の不満は、そこでのやり取りにあった。

「『円谷世良楽』は使える」

「『友達』は大事にしろ」

御影も度会の意図は理解していた。
しかし、円谷は御影が最も苦手とするタイプの人間だ。
正直な所、どうにも近寄りにくいのは否めない。

「『あの事』だけど…………」

「例の『ホームレス』の件か?」

気を取り直した御影が口にしたのは、
『烏兎ヶ池神社』で目撃したスタンド使いの事だ。
人目を避けて、『スタンドの訓練』を行っていたようだった。
その事実を度会に報告したのは数日前だ。

「奴に関しては、まだ情報が少ない。
 だが、ああいった連中が住み着いている場所には、
 大よその検討がつく。
 少し前に警察の『手入れ』があったと桐谷が言っていた」

「そいつに対する『評定』だが、
 今の所『警戒』までは行っていない。
 せいぜい『注意』止まりだ」

「勿論、『現段階では』の話だが」

「…………もし見かけたら?」

「それとなく近付いて話を聞き出せ。
 どういう人間なのか掴みたい」

「まぁ…………いいけど…………」

長い前髪を垂らしながら、御影が頷く。
その時、度会のスマホが振動した。
発信者は『桐谷研吾』。

「――――分かった。後は、こちらで対応する」

         ピッ

「『見つけた』そうだ。出掛けるぞ」

864風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 19:03:02
欲しい物を頼む場所といえば基本は通販サイトであるが、通販を待つ暇もない時は、どこに向かうべきか?
その答えは様々であるが、日用品にジャンルを限るのであれば『ホームセンター』になるだろう。
そして、『アリーナ』での試合を明日に控えた風歌鈴音は、警備員に追い出されない程度には臭わない服装をして、銭湯に入った上で『持ち込む』ための物品を買いに来ていた。

(前回は『打ち合わせ』があったが、今度は『試合』に直行だ……『持ってかねえと、持ち込めねぇ』)

『ダストデビル・ドライヴ』の性質上、モノを持ち込めると持ち込めないとでは、戦いの幅に大きな差が出てくる。突風と浮遊だけでは、『決め手』に欠ける。
何かしら使えるモノを持ち込むのは、当然の判断だった。

(……『持ち込み禁止』とか、服も『試合用のコスチューム』とか、『その場』で告げられたらどうしょうもねえが、準備はしといて損はねぇだろ)

無為に終わる可能性が高い『準備』であるが、諦めて何もしないのは生き様としての『ゴミ』である。そこから逃げ出す風歌が、それを為す訳には行かなかった。
既に、『買うもの』のリストアップは済ませていた。

(『カップ酒』は途中で買うとして……『画鋲』、一箱。『一味唐辛子』、一袋、えっと、『カラビナ』ってのは……あったあった)

次々と欲しい物を探していく風歌は、最後の本命を探し始め――見つけた。

「あった」

――『鎖』である。
様々な太さの鎖が、『メートル売り』で売られている中で、風歌は、手から垂らした『ステンレス』の鎖を――己の手に重ねるようにして具現化した『ダストデビル・ドライヴ』の手でも触れ、重さと硬さを確かめる。

(買うのは。1m。『チェーンベルト』って形で持ち込めたらいいんだが……アタシの腹は薄いからな……不自然だからやめろって言われたらそれまでか)

それでも、備えない理由はない。無駄になるかはさておき『やれる事はやる』のが、今の風歌の生き方である。

(よし、『1m』)

『ダストデビル・ドライヴ』を顕現させながら『1m』を測った風歌は、周囲の店員を探し始めた。

865御影憂『ナハトワハト』:2021/03/22(月) 20:06:35
>>433

たまたまタイミングが合わなかったのか、
近くに店員らしき人間は見当たらない。

                ――――――と。

      「………………」

やや離れた所にいた女と目が合った。
とはいえ、正確には少し違ったが。
その女は異様に前髪が長く、
辛うじて片方の目が見える程度だったのだから。
風歌は、どこかで見たような気がするかもしれない。
ごく最近――――『遊園地』か何処かで…………。

866風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 20:27:04
>>865
『自分』に向けられた視線――風歌は一瞬、『ホームレス』に対する不快な眼差しかとも思ったが、違う。
どうにも、『測る』ような視線である。
そして――あの、『遊園地』で、確か……『セララ』と少し話している姿を、ちらりと見たような気がする。あの時、自分の今後が怖くて一瞬見ただけであったが。
それが、見間違いでないのなら、あの状況、あの場所で『話していた』……そして、今、自分を『見ている』
ならば、それは。

「あんた……遊園地で『セララ』と話していた……もしかして、アンタも『持ってる』クチかい?」

『ダストデビル・ドライヴ』を微かに前に出しながら、風歌は静かに問うた。
前に出た『スタンド』が見えているのであれば、『何を』持っているかは、解るだろう。

867御影憂『ナハトワハト』:2021/03/22(月) 20:37:46
>>866

白いワンピースを着た異様に前髪の長い女。
その佇まいは、差し詰め『ジャパニーズホラー』のようだ。
こんな目立つ格好の人間は、そうはいないだろう。

「あぁ………………」

    ボソッ

「………………『あの時の』」

現れた人型スタンドを一瞥し、ぽつりと呟く。
その言葉には、『二重の意味』が含まれていた。
『遊園地』という意味と、『神社』という意味だ。
もっとも、それを知らない相手には『片方』しか分かるまい。

「『友達』………………」

      ボソ ボソ

「………………だけど」

御影にとって、『世良楽』は苦手な相手だ。
しかし、ここは利用させてもらおう。
実際、彼女は御影を『友達』だと思っている。
『デタラメ』にはならない。

868風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 20:52:58
>>867
「友達、か」

口からでまかせかとも思ったが、あの時のセララの態度を思い返すに嘘ではあるまい。
そして、風歌の見た限りは能天気な馬鹿にも見えたが、『戦闘』における動きを見た所決して感働きと嗅覚はむしろ獣の如くに冴えている。目の前の女に悪意があれば距離を取る程度の察知力はあるだろう。

「それで、アタシになんか用か?『出すもの』はまぁ、『出してるんだが』。これは単に鎖の手触りを確かめてるだけだぜ?」

入店拒否を受けるほどではないが、清潔な風体とは言えないのが風歌である。『スタンド』を用いた万引と思われたのかも知れない。足下の買い物籠に入っている『一味』と『画鋲』『カラビナ』の品々の珍妙さも、意識を引いたのかとも風歌は思うが、まず疑ったのは万引扱いであった。

869御影憂『ナハトワハト』:2021/03/22(月) 21:16:04
>>868

「別に…………用って程じゃないけど…………」

        ジッ

「『どこかで見た事がある』と思ったから…………」

       スタ スタ スタ

そのまま近付いていく。
話をするためでもあり、籠の中身を確認する目的もあった。
見えた商品は記憶に留めておこう。
用途は知らないが、スタンドに関わるものかもしれない。
神社での『訓練』を見るに、その可能性は十分にある。

「………………『御影憂』」

「この前は…………『お疲れ様』…………」

        ボソ ボソ

この前というのは、『遊園地の一件』の事だ。
もっとも、別の場所にいた御影は、
風歌や世良楽が具体的に何をしていたかは知らない。
それでも、ろくでもない目に遭っていた事ぐらいは想像がつく。

870風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 21:29:42
>>869
お疲れ様――その言葉に、風歌は顔を緩めた。

「全く、大変だったよ。『持って』から初めての揉め事で、何をどうしたらいいかも手探りで……」

戦いも、駆け引きも『運』と『スタンドの性能』に頼り切った様な無様である。
挙げ句、自爆じみたやり方で社会的にも死にかけた――まさしく、社会のゴミに相応しい有り様であった。

「ま、どうにかはなったし。『足りねーモノ』も見えてきたからな」

しかし、得たものもある。経験を得て、己に足りぬものを知った。
出会いも経た。そこから導かれた、戦いも得た。

「だから、似たような事があっても、もう少しはマシに動けるし、動く為の『買い物』をしてんのさ」

暗に、万引ではなく買い物であると強調する風歌は、自分の能力を把握されている事と『使い道』に付いて推測されるリスクを全く把握していなかった。

871御影憂『ナハトワハト』:2021/03/22(月) 21:46:44
>>870

「………………分かる」

          コク…………

(やっぱり…………『なった』のは最近…………)

頭の中で、『神社で見た光景』と重ね合わせる。
想像はしていたが、推測は概ね当たっていたようだ。
そして、同じ時に『能力』は『見ている』。
『風』を生む能力と、これらの物品。
おそらくは、組み合わせて何かする気なのだろう。

「そういうの…………大事だと思う…………」

「私も…………そんなに経ってないから…………」

これには『嘘』が混じっていた。
御影がスタンド使いになったのは、ずっと前の事だ。
そして、世良楽に対しても、同じように言ってあった。

「――――『アリーナ』って知ってる?」

「…………そういう所があるんだって」

「世良楽から聞いた…………」

『アリーナ』の名前を出したのは、
どこまで知っているのか探りを入れるためだった。
ちょっと見ただけだったが、
『アリーナ』のスタンド使いと組んでいた様子だった。
その辺りを知っておこうという意図だ。

872風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 22:01:16
>>871
「『アリーナ』?」

風歌は、どのように答えたものかを迷う。
スタンド使いであれば『誰も』が知っているような組織ではないだろうし、『かつて敵対していた組織』が存在するのならば、『違う組織』もあるだろう。
もしや、その類かとも風歌は思うが、『アリーナで試合をした』自分の事を知らないということは、アリーナに対する知識が無いか薄いとも考えられる。
……どこからも『完全な他言無用』を命じられている訳ではない。探る意味も込めて、風歌はアリーナに対する率直な印象を口にした。

「『所』は、よく知らねーが。アタシの知る限りでは、『スタンド使いのヤクザ』って感じだな。『テッペン』のねぇ、二次団体だけのヤクザって感じだ」

873御影憂『ナハトワハト』:2021/03/22(月) 22:18:26
>>872

「へぇー………………」

そもそもが『なりたて』のスタンド使い。
『アリーナ』について詳しいとも思えない。
それを踏まえた上での問い掛けだったが、
やはり繋がりは薄いような気がする。
少なくとも、『遊園地以前』から、
何らかの繋がりがあったようには見えない。

「ちょっとだけ聞いたから…………。
 どんなのか気になってた…………」

「『知らない』んなら…………それでいい…………」

『アリーナ』がどういう組織か。
それは既に知っている。
『アリーナと敵対する者達』がいる事も。
御影の一派にとっては、どちらも警戒すべき相手だ。

「『スタンド使い同士』は出会いやすいんだって…………」

「…………『連絡先交換』しない?」

         スッ

「『遊園地仲間』って事で…………」

そう言って、おもむろに『スマホ』を取り出す。
『スマホを持っているか』を確かめる意味もある。
別に持っていなくても構わないが、
もし持っていたなら『儲けもの』だ。

874風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 22:26:23
>>873


「ああ、いいぜ。袖振り合うも多生の縁ってな」

スタンド使いの世界について全く解らぬ風歌であるが、『同類』との連絡ルートは増やしておいて損はないだろう。
『アリーナ』とて、複数の派閥がある。そして、いろいろな所から見る事で見えてくる物もある。
新たな『縁』がなにか、『新しいもの』を風歌に運ぶかも知れないのだ。

「ほらよ」

風歌はスマホを取り出した。

「『アプリ』は分かんねーから。『番号』でいいか?」

875御影憂『ナハトワハト』:2021/03/22(月) 22:38:06
>>874

    ススッ

「『これ』…………私の番号…………」

「掛けてくれたら…………登録するから…………」

『電話番号』を表示させた画面を見せる。
こちらに掛けてもらえば着信履歴が残る。
あとは、それを登録しておけばいい。

「『名前』…………」

「名前…………聞いたっけ…………?」

「『登録』しなきゃいけないから…………」

ついでに『名前』も聞き出しておこう。
『番号登録』という名目があれば、それも自然になる。
もっとも、この程度なら普通に尋ねたとしても、
さほど不自然にはならないと思うが。

876風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 22:44:49
>>875
「アタシの名前は風歌鈴音。風の歌に、鈴の音だ」

自らの名を名乗った風歌は、早速『言われた番号』を打ち始める。登録名は、もちろん名乗られた通りの『御影憂』だ。
そして、番号を打ち終えた風歌は、掛けた。

877御影憂『ナハトワハト』:2021/03/22(月) 23:05:58
>>876

「ありがと…………」

      ピッ

「『風歌鈴音』…………」

            「…………『登録完了』」

『名前』と『連絡先』を得た。
十分な収穫だ。
そろそろ引き上げてもいいだろう。

「じゃ…………買い物があるから…………」

         スッ

              「『また』…………」

                      スタ スタ スタ…………

スマホをしまい、別れの挨拶を告げる。
そして、その姿が棚の後ろに消えていった。
おそらく、別の売り場に向かったのだろう。

878風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 23:20:11
>>877
「ああ、またな」

新たな出会いを、手を振って送った風歌――『いい』収穫である。
人付き合いが増えるのは、ホームレスである風歌にとって良いことだ。新しい何かは、常に新しい何かしらを生むのだから。
そして、明日。風歌を新たな戦いが待つ。

「さて、と」

買うべきものは、全て見繕った。後は鎖を切ってもらわねばならない。
風歌は、店員を待つのをやめ、探しにその場を離れた。

879『ラッコを探そう』:2021/03/23(火) 19:57:20

『桐谷』の報告を受けて、『度会』と『御影』は『海』を訪れた。
まだシーズンオフという事もあって、他の人間はいない。
一枚の『チラシ』を手にした度会が、海面の一点を指差す。

「――――――『あれ』だ」

          プカプカ

そこには、『毛むくじゃらの生物』が浮かんでいた。
海棲哺乳類――『ラッコ』だ。
最近になって、街の各所で時折その姿が目撃されている。
まさか複数いるとも思えない。
おそらくは、『チラシの裏に描かれた絵』と同一の存在だ。

「…………『舟』が見える」

      バァァァァァァァァァァ――――――ッ

御影には、ラッコの周囲を航行する『ボート』が見えていた。
それが『スタンド』である事に疑いの余地は無い。
『本体』がラッコであろうという事も。

「呼び掛けてみろ。
 『スタンド使い同士』なら意思の疎通が行えるかもしれない」

「………………『ラッコ』と?」

「いいから試せ」

「…………分かった」

    ズズズ……

御影は、渋々『ナハトワハト』を発現した。
『闇色の外套と帽子』を身に纏った御影が、
海に浮かぶラッコを見据える。
しばらくの間、無言の時が流れた。

  スィィィ――――――ッ

      「あ…………こっち来た…………」

                         ザザァッ

波間を漂っていたラッコが砂浜に上がる。
『ボート』は消えていたが、『万一』の場合を考えて、
御影は度会の前に出た。
二人を見つめる『つぶらな瞳』からは、
何を考えているのかは窺い知れない。

「通じたか?」

「さぁ…………だって『ラッコ』だし…………」

やがて、ラッコは人間達に背を向け、
のんびりと浜辺を歩き始める。
『乱獲された歴史』を持つ動物にしては、
あまりにも無防備な姿だった。
何かあっても対処できる用意があるのか、
それとも何も考えていないだけか。

「……まぁ、いい。
 存在を確認する事は出来た。
 手懐ければ『使える』かと思ったが、
 それには時間が掛かるだろうな」

            パシャッ

スマホを構えた御影が、ラッコの姿を撮影した。
被写体となったラッコは、砂浜に落ちていた貝殻を弄っている。
果てしなく『平和な光景』だった。

「――――帰るぞ」

「…………了解」

880円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/03/26(金) 01:25:13

「うーん、いないですねーっ『ラッコ』なんて」

881円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/03/26(金) 01:27:07

砂浜、波打ち際。
冬は終わりつつあるとはいえ、
海水浴にはまだまだ早いのだが。

「うーん、いないですねーっ『ラッコ』なんて!」

黒いキャップを被り、
パーカーを羽織った少女が歩いている。

「あーあー、目撃情報の噂あったんだけどなー」

話しかけているのは、
通話でもしているのか、それとも>>882に対してなのか――――

882宗像征爾『アヴィーチー』:2021/03/27(土) 11:13:20
>>881

やや離れた砂浜に人影が見える。
カーキ色の作業服を着た男だ。
男は何をするでも無く、海の方に視線を向けていた。

その先の海面に『何か』が漂っているようだ。
ただ、今の位置からは見えづらい。
もう少し近付いてみれば正体が分かるだろう。

883円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/03/27(土) 18:05:31
>>882

耳に付けた『ワイヤレスイヤホン』に触れつつ、
周囲を見渡していると、その光景が目に入った。

「あ! ちょっと待ってー。
 なんか知ってそうな人いたんで!
 その人に聞いてみまーす」

     「はーい! あとでまたかけ直すネ」
 
            ピ

なんか知ってそうな人、とは宗像だ。
他には人っ子一人いないのだから。

「あのあのーっもしもーしすみませーん!
 ちょっと聞きたい事あるんだけど、良いですかーっ?」

        ザッ
           ザッ

そして、海に浮かぶ何かを横目に見つつ、
セララは宗像の方へと歩いていく。

作業服を『仕事着』と捉え、
今『仕事中』――即ち海に詳しい人だと考えているのだ。

884宗像征爾『アヴィーチー』:2021/03/27(土) 18:40:57
>>883

いつの間にか、俺は『海』に立っていた。
覚えている限り、これといった理由は無い筈だ。
ただ足の向くままに歩き続け、気付けば海に来ていた。
あるいは、無意識に引き寄せられる『何か』が、
ここにあったのかもしれない。
だが、それが何であるかは分からなかった。

「あぁ――」

「別に構わない」

聞こえてきた声に反応し、おもむろに振り返る。
最初、自分が呼び掛けられているとは思わなかった。
しかし、それらしい人間が他にいない以上、
自分が応じるべきなのだろう。

「俺に分かる事なら答える」

「何を聞きたいのか知らないが」

海に浮かんでいたのは、どうやら『流木』だったらしい。
どうという事の無い漂流物だ。
波間に揺られており、特に変化が起こる気配も見られない。

885円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/03/27(土) 23:39:34
>>884

「ほんとですかー! すごいすごーい!
 分かったらいいなー、じゃあ聞きますね。
 あのあのー、おじさんって、
 この辺の『海』とかって詳しいですかー?」

「特に、ほらほら! あーゆー海の生き物とかー。あ!」

        ピッ

流木を指差してから、
それが生き物ではないと気付く。

「あはーっ、あれは『木』みたいだけどー!」

      「そーゆーの詳しかったりしますー?」

何がそんなに楽しいのかといえば、
何もなくても、話すのは楽しいものなのだ。

『海に詳しそうな人』の返答を待って、
猫のように目を輝かせて、その顔を見上げている。

886宗像征爾『アヴィーチー』:2021/03/28(日) 00:54:45
>>885

指で指された方向を視線で追う。
遠目から見ると、何かの生き物に思えたとしても、
不思議は無いだろう。
事実、一瞬それが生きているように見えたのは確かだ。

「いや――詳しいとは言えない」

「俺が知っているのは、せいぜい常識的な範囲ぐらいだ」

『塀の中』にいる間に、世の中は絶えず変化し続けていた。
そこが知っていた場所であっても、
大きく様相を変えていた事は珍しく無い。
しかし、『自然』というのは、
社会と比べれば変わりにくいものだ。
幾らかの変化はあるだろうが、目で見る限りでは、
『二十年前』と同じ風景に見える。
今のように海を目の前にしていると、
それを『実感』として強く感じた。

「それでも良ければ話を聞こう」

『役に立てるか』と言われると、肯定は出来ない。
だが、何かの足し程度にはなるかもしれない。
いずれにせよ、『答える』と返した以上は、
答えなければならない。

887円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/03/28(日) 22:10:11
>>886

「えー、詳しそうなのにー。
 でもでも、おじさん大人だし、
 多分あたしよりは詳しいですよねー!」

「あたし、常識知らないってたまに言われるしー」

       「ひどいですよねーっ!」

別に大人でなくても、
セララよりは知っているものだ。
極端に常識知らずというわけでもないが……

「それで、聞いたいことなんですけど、
 この辺ってラッコとかいるんですかー?
 似てる動物とかじゃなくて、本物の!」

「寒いとこにしかいないと思ってたんだけどさー。
 なんか、ウワサでこの辺にいるらしいって聞いたんです」

しかし質問は常識外れのものだ。
『普通に考えれば』だが、
こんなところにいるはずはない。

……もっとも、普通じゃない事はたくさんあるものだが。

888宗像征爾『アヴィーチー』:2021/03/28(日) 22:50:22
>>887

「いや――見覚えは無い」

「その話を聞いたのも今が初めてだ」

俺の知る限り、それは海の動物だった筈だ。
この場所は確かに海だが、ここにいるとは思えなかった。
あるいは、『自然は変わりにくい』と考えたのが、
そもそも間違いだったのか。

「見た事は無いが、来たのは最近だろうな」

「少なくとも、昔はいなかった」

眼前に広がる海は、昔と何ら変わっていないように見えた。
だが、そうでも無かったのかもしれない。
変わっていないように見えても、
変化というのは何処かで起こっているようだ。

「俺も世間の流れには疎い方だ」

「『これ』の使い方も、未だに慣れない」

胸ポケットからスマートフォンを取り出す。
こういった精密機器は、変化の中でも特に大きなものだ。
恐らく、今後も慣れる事は無いだろう。

889円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/03/29(月) 15:26:00
>>888

「えー! なーんだ、ざんねーん。
 まー、しょーがないですよねー。
 噂は噂だし、ほんとか分かんないしー」

「あーあ、見つけたら写真撮りたかったのになー」

セララは諦めが早い。
というより、物事にこだわらない。
楽しくならないと思っているからだ。

「え! それってもしかして、スマートフォン?
 スマホ自体が慣れないってこと?
 どれかのアプリが分かんないとか、
 機種変についてけないー、とかじゃなくて?」

「うそー、せっかく持ってるのにもったいなーい」

取り出したるスマホを眺め、
不思議そうに首を傾げたが……

「おじさん、だったらあたしが教えたげますよ!
 ここにラッコがいないって教えてくれたわけだしさー」

      「教えてくれなかったらあたし、
       何時間もここでウロウロしてたかもー」

思いついたように、満面の笑みでそのような提案をする。
手に持ったスマホは最新機種、カバーはパンダ模様だ。

890宗像征爾『アヴィーチー』:2021/03/29(月) 17:27:09
>>889

男のスマートフォンには、カバーが使われていなかった。
保護フィルムも貼られていない。
そのせいか、至る所に幾つも傷が付いている。

「これが主流だと言われて契約したが、
 最初は操作の仕方が分からなかった」

「昔と比べると、かなり変わったようだ」

初めて見た時は、
それが携帯電話である事さえ気付かなかった。
俺が知っていたのは、
携帯電話が普及し始めた時期の型だ。
それすらも詳しかった訳では無い。

「電話の受け答え程度しか使っていないが、
 持っていなければ仕事に支障が出る」

「今は公衆電話の数も少ない」

街を歩いていて気付いた事の一つは、
公衆電話が無い事だった。
非常時に備えて一定数は残されているらしいが、
随分と減っている。
需要の低下を考えれば当然の事なのだろう。

「君は『これ』に詳しそうだな」

「よければ説明してもらおう」

少女の手元を一瞥する。
飲み込めるかどうかは分からないが、
聞いておいてもいいだろう。
あるいは、その為に必要な時間は、
ラッコを探すのと同じぐらいになるかもしれないが。

891円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/03/29(月) 21:26:32
>>890

「へー、あたしはこれが普通だからなー。
 昔のって『ガラケー』ですかー?
 あたし、それと比べては説明できないかも」

「じゃーいろいろ教えたげますけどー
 よくわかんなかったらごめんなさーい」

        「何回でも聞き返してネ」

セララは特に教えるのが上手いわけではない。
『前提』を知らない宗像相手なら、なおさらだろう。

「じゃあまずー、
 何からがいいだろ。
 えーと、電話のかけ方ー?」

「あはーっ! それは分かるか!
 てゆーかあたし、電話ってあんま使わないしなー。
 でもねでもね、じゃん! 見てみてー。
 このアプリあれば電話要らずなんですよーっ」

         「相手もアプリ入れてたらですけどー」

やたらと『チャットアプリ』を入れるべきだと主張するが、
ともかく――――互いのためになる交流になった、かもしれない。

892ソラ『ステインド・スカイ』:2021/04/03(土) 09:24:09
白い髪の少女の柔らかそうなお腹を

ドゴォッ!

>>893の足が思い切り蹴り上げるッ!
ここがどこで、何故こうなったのかは>>893が詳しく説明してくれるだろう

893稲崎 充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/04/03(土) 10:04:11
>>892

     ドゴッ‼︎


「【渾沌】(ええッ!?)ーーッ!」


人気のない夜の『児童公園』にいた『ソラ』。
不意に腹部に鋭い痛みを感じ、その正体を確かめる為に顔を上げると
視線の先には『黒髪』『黒い白衣』の女性が立っていた。
明らかに狼狽えている様子の女、その背後では漕いでいたであろうブランコがギシギシと揺れている。


「【謝罪】ッ(ごめんなさい)ッ!
 ええと…【加護の水晶】(眼鏡)【加護の水晶】(眼鏡)…。
 【少女】よ、怪我はないだろうか?」


女は『黒色の白衣』から取り出した眼鏡を掛け、
恐らく『ブランコからのキック』を受け倒れてるであろう『ソラ』に駆け寄る。

894ソラ『ステインド・スカイ』:2021/04/03(土) 10:31:15
>>893
勢いのついた『ブランコキック』を受けて、血を吐き散らして吹っ飛ぶ

「う…あ……」

突然の出来事に対処出来ず、仰向けに倒れ
痛みで返事も出来ず、口から血を垂れ流しピクピクと痙攣している
重症そうだ

895稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/04/03(土) 11:30:51
>>894

   「嗚呼ッ!【少女】ッ!【月は欠けて】(怪我)いないかッ!
    ……【蟹】の様相を呈している(泡を吹いている)。

    【如何】、このままでは【新月の襲来】(危ない)ッ!
    ええい【生命鉄牛】(救急車)を急いで【召喚】(呼ぶ)べきだが」

黒い白衣のポケットを弄りスマホを取り出そうとするが、
指先には布の感触しかない。


   「こんな時に限って【依存の板】(スマホ)を【隠れ家】に【置き去り】(忘れた)。
    此のままでは【少女】の亡骸を抱え【世界の中心で愛を叫ぶ】(大変な事になる)のは必至ッ!
    だ、誰か【死殺者】(お医者さん)を呼んでくれェーーッ!
    ッて、【死の殺戮者】(医者)は【我】(私)だ!!  …!!」



ズギュンッ  ズギュンッ



   「【混濁街より産まれし闇を切り裂く天使と光を呑み込む悪魔】
    (『ショッカー・イン・グルームタウン』)」


自らの両手に二対の刃渡り50cm程の『刀』のスタンド、
『ショッカー・イン・グルームタウン』を発現。
(右手に握った『刀』は真っ黒に、逆に左手の『刀』は真白に染まっている)


   「【漆黒丸】!【光輪丸】!」

                     ザスザスッ!

両手の『双剣』を『ソラ』の腹部に突き刺し、『電流化』。
『電流』と化した『双剣』は対象と接している間は、
一切の痛みを与える事なく『電気療法』の要領で患部の痛みを抑え疲労を癒す。
おそらくこれで、目を覚ますはず。

896ソラ『ステインド・スカイ』:2021/04/03(土) 11:49:15
>>895
「う、うぅ…」

『電気療法』が効いたおかげか、
目を覚まして、ゆっくりと体を起こした

「ここはどこ…?
 私は誰…?貴方は…?」

ショックで記憶を失っている…!?

897稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/04/03(土) 13:20:03
>>896


「【善】(良かった)ッ!
 【漆黒丸】(『ショッカー・イン・グルームタウンA』)、
 【光輪丸】(『ショッカー・イン・グルームタウンB』)よ、
 【混沌の双剣】よ【我】が【鞘】に納まるがいい…」


『ソラ』が意識を取り戻したのを確認したのならば、
『ショッカー・イン・グルームタウン』を解除し、
目を覚ました『ソラ』が体を起こすのを手伝う。


「【少女】よ、自我を取り戻したか?
 【我】(私)の【真名】(名前)は『稲崎充希』」


「【残党狩り】(残業)からの解放感と、
 明日からの【鎖の休戦】(連休)で、正直浮かれていてな…。
 【隠れ家】(自宅)で【密造】せし【般若湯】(自家製果実酒)を嗜んでいたのが、
 【デュオニュソス】に誑かされ(酔っちゃって)我が【隠れ家】から近し、
 此処の【児戯の箱庭】(児童公園)に【犬の奴隷ごっこ】(お散歩)をしに来た。

 そこで見つけし、あの【鞦韆】(ブランコ)で戯れていたら、
 【手綱】(鎖)の操作を誤り、そこにいた【少女】(あなた)を巻き込んでしまった。
 【埃をかぶった葡萄酒】(いい歳)なのに本当に恥ずかしい限りだ……」

         スッ


『ソラ』の後頭部をそっと撫でてコブができていないか確認する。


「……【少女】の意識に混濁が見受けられるな。
 【汝】、自らの【存在】をゆっくりと思い出され。
 まずは『深呼吸』だ。そして自らの手を眺めよ。

 【ブラックボックス】(後頭部)は打っていないとは思うが、
 【月の院】(病院)で【X線CT】を受けておいた方がいい。
 勿論、【CT】の【召喚】に必要な【金血】(費用)は【我】が支払う。
 誠に、誠に申し訳ない事をした…!」       深々と頭を下げた。

898ソラ『ステインド・スカイ』:2021/04/03(土) 13:52:52
>>897
「?????????」

頭を触ってみても、これといった外傷は無いようだったが
稲崎の難解過ぎる言語を理解出来ず頭が混乱する

「ちょっと何言ってんのか分かんないっす…」

しかし「深呼吸をしてゆっくりと思い出せ」と言われた事くらいは何とか理解した

スゥーハァースゥーハァー

「ああ!
 『ソラ』・・『藤原ソラ』だ


 ・・あとは忘れちまった」

どうやら名前を思い出したようだ

ほかにもあるのですが


・・あとは忘れちまった

899稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/04/03(土) 14:34:15
>>898


  「……【滅びし恐龍】(あんぐり)」


あせっ あせっ


自らが『記憶喪失』だとあっけらかんと告げる『藤原ソラ』、
それに対し額からジワリと汗を垂らし動揺する『稲崎充希』。
その感情を悟られまいと前髪を弄ったり、
メガネのブリッジの位置を指の背で直したりするが――『挙動不審』だ。



「な、なあ…【少女:藤原ソラ】、
 やはり【汝】は【ブラックボックス】(後頭部)を打っていたようだ。
 【真】(マジ)に【汝の船】が【難破】(記憶喪失)とはッ!!
 嗚呼っ!【我】は【老人に託されし種籾を墓標に蒔く世紀末救世主】(バカなこと)を!

 端的に述べて今、【汝】は【黄と赤の境界】(危険)に立っているのかもしれない。
 今すぐにっ!【生命鉄牛】を【召喚】してくれッ!
 【汝】、【依存の板】(スマホ)を所有してるかッ?」


片手を自らの耳元に運ぶ『ジェスチャー』をする『稲崎』。
どうやら『スマホ』で救急車を呼んでください、と言っているようだが…

900ソラ『ステインド・スカイ』:2021/04/03(土) 15:22:49
>>899
「わからん!さっぱり、わからん!」

やはり言葉の意味を理解出来ずお手上げ状態
何とか解読しようと頭をフル回転させるも

「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

脳がオーバーヒートを起こしてしまい再び倒れてしまった

「思い…出した!」

そのショックで思い出した事がある
稲崎とは関係無く、元から記憶喪失だったという事だ

「稲崎さん、ありがとう!
 あなたのおかげで覚えていないという事を思い出したよ!
 おかげですっきりした!」

記憶喪失に記憶喪失を重ね掛かけしたのは蹴り飛ばした稲崎のせいなのだが
そんな事は知らないソラは稲崎に感謝の握手を送る

ちなみにだが、文無しのソラはスマホなんて高価な物を持ち合わせているわけがなかった

901稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/04/04(日) 00:18:36
>>900

     「【応】…?(ええ)」


頭に疑問符を浮かべたまま、ソラの握手に応じる。

「【残酷な天使と人造人間】(よくわからない)だが……
 とにかく【汝】が【満月】(無事)ならば安堵で狂い悶える【世界線】だ。
 【背筋を鉄の如く正し】(気を付けて)【隠れ家】(家)まで帰ってくれ…」

902ソラ『ステインド・スカイ』:2021/04/04(日) 08:09:15
>>901
「何言ってるのか分かんないけど、そっちも気を付けてね」

用事を済ませて、公園から帰る事にしたソラくんだったが

「…そもそも何しにこんな所に来たんだっけ…?
 うっ、思い出せない…!」

終わり

903円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/07(水) 19:17:51

黒いキャップをかぶり、
パンダのような色のパーカーを着た、
モカブラウンの髪の少女が、
ベンチに腰掛けアイスを食べている。

「〜♪」

『冬』が終わったから、アイスはより美味しくなる。
なお、現在は待ち合わせの最中。これから遊びに行く予定だ。

904七篠 譲葉『リルトランク』:2021/04/07(水) 19:18:28
>>903

「あ! 円谷さん!」

 七篠は星見駅に面した街道をきょろきょろと辺りを見回しながら歩いていた。
 ベンチに腰をかけている同級生、円谷を見つけ手を振りながら近付いていく。

「ごめんなさい、円谷さんを待たせてしまって。
 アイス食べ終わるまで待つので焦らないで大丈夫ですので。」

 そう言って自分も持ってきた水筒から水を飲み、一息つく。

「あ、今日は歓楽街で遊びますか? それとも、北に行ってショッピングにしますか?
 どちらでも楽しそうですよね。」

905円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/07(水) 19:19:06
>>904

「あ!! ユズちゃんユズちゃーん、こっちこっちー」

気安く呼び掛けて、
同級生の『七篠』と合流する。

「あはーっ、待ってない待ってない。
 あたしが早く来すぎただけだしネ」

         ジャクッ

「ユズちゃんと遊べると思って、
 あたし張り切っちゃいました」

チョコミントのアイスクリームを齧り、
コーンを包んでいた紙は丸めた。
張り切っているのは本当だ。
全力とか、そういうのは無いが。

「うーん、じゃあじゃあ大通りに買い物行こーよ!
 横丁よりあっちの方が店多くて楽しいと思いまーす」

「スカイモールのバスはちょっと先だしー」

ここで言う『店』というのは、
セララが好きな店という意味。
店の数自体が多いかどうかは、セララは当然知らない。

906七篠 譲葉『リルトランク』:2021/04/07(水) 19:19:37
>>905

「しばらく春休みで予定とか合わなかったですもんね。
 こうして遊ぶの、なんだか本当に久しぶりな感じがします。今日はたくさん楽しみましょうね!」

 そう言いながら大通りの方に向き、並んで歩き始める。
 束の間の帰省から戻ってきた学生も多いようで、大通りはいつもより賑わっているように見えた。

 そんな中でも、人混みーー特に女子生徒が多く集まっている店が目に付いた。

「『ぬいぐるみショップ』……?
 あれ? 新しくできたお店でしょうか?
 円谷さん、知ってます?」

 記憶が確かなら、円谷は『甘いもの』や『ぬいぐるみ』が好きだったはずだ。
 もしかしたら知っているかもしれない。

ーー私の部屋にもこんな感じのぬいぐるみがあったら可愛いだろうな…。

907円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/07(水) 19:20:12
>>906

「やったやったー! ユズちゃんやる気MAXだー」

歩調を合わせる。
それくらいはする。

「え! ぬいぐるみショップー!?
 そんなのあるの、あたし知らなかったー。
 ファンシーショップならあったと思うけど、
 ぬいぐるみ専門店だなんてスゴーい!」

  「見つけたユズちゃんもえらーい」

人だかりを眺め、声を上げる。

「ユズちゃんぬい好きなんだっけ?
 あたしは、まあまあ好きでーす。
 とりあえずあそこ入ろ入ろ!
 あ、でもでも並んでなければだけどネ」

ぬいぐるみは『好き』だ。間違いなく。
セララは好きな物がとにかく多い。
熱く燃えるような感情ではなくとも、
その一つ一つが本当に好きなのだ。

「てゆーかねえねえ、円谷さーんじゃなくて、
 『セララちゃん』って呼んでよー。
 あたしの方が偉いみたいで、なんかやですよ」

「まーユズちゃんは前からそうだし、別に良いけどー」

このやり取りは初めてでは無い。
特別に親友とかではないし、
苗字呼びはむしろ『自然』ではある。
単に、円谷世良楽という人間が『なれなれしい』だけだ。

話しながら、『ぬいぐるみショップ』へと向かっていく。

908七篠 譲葉『リルトランク』:2021/04/07(水) 19:20:48
>>907

「私も知らなかったです! もしかして最近できたのかも?
 ぬいぐるみの専門店って確かにあまり聞かないですし、ちょっと楽しみ…!」

 店内を眺めると、ブーケがいくらか置かれている。どうやら開店祝いの花のようだった。
 円谷の言葉に頷きながら店内へと歩みを進める。
 犬や猫、クマなどの定番どころから、パンダのような動物園の周辺でなければなかなか見つけられないものや、トカゲなどの爬虫類のようななかなか珍しいものまで。専門店と謳うのも納得の品揃えだ。

「なんだか、普段名字で呼ぶことが多いから名前で呼ぶのって気恥ずかしくって……。
 …セララちゃ……やっぱり恥ずかしいです…!
 あ、この猫さん、セ…円谷さんに似てる……。」

 七篠は顔を赤くしながら、『猫のぬいぐるみ』を手に取る。
 焦げ茶の毛並みに黒くくりくりとした目が可愛らしいぬいぐるみだ。

909円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/07(水) 19:21:30
>>908

「ねー! スカイモールにもこんなの無いよね!
 あたしも見るの楽しみー。
 おっきいパンダのぬいぐるみとか、あるかなー」

       ウィーン…

自動ドアを潜って店内へ。
珍しいぬいぐるみに視線を巡らせ、
それから『七篠』の方を見る。

「んー? 恥ずかしいなら別にいいよー。
 友達として呼んでくれてるならネ」

      ゴソ

「え! それ、あたしに似てるー? 本当かな。
 でも、ってことはかわいいってコトですね!
 じゃあじゃあ、それ買っちゃいなよユズちゃん!」

手に取ったぬいぐるみを見て屈託なく笑う。
確かに似てる、かもしれない。

「あたしはどれ買おうかなー。
 ユズちゃんに似てるのどれだろ! このチワワ?
 こっちの芝? あはーっ、パグは違うよねー!」

「あ! ボルゾイもある! 見て見て! ちょっと大き過ぎ?」

それから、自分のぬいぐるみも探し始める。 

「やばーい! 今日お金あるからどれでも買えちゃう!!」

       「一個にしなきゃだなーっ。
        この後もお店行くし! ね!
        行くでしょユズちゃーん?」

『お金』については――セララの家はデカい。
そして七篠と違い、家に一切の悪感情は無いらしかった。

910七篠 譲葉『リルトランク』:2021/04/07(水) 19:23:27
>>909

「も、もちろん、円谷さんは大切なお友達です!」

 先ほどの名前を呼ぼうとした一件を引きずり、頬が赤いまま七篠は言葉を返した。
 大切なお友達だから、自分のことを親がつけた『譲葉』ではなく『ユズ』と呼んでくれる友人だから期待に応えたかった。
 だが、そう簡単に習慣は変えられなかった。

 ちらと円谷を見ると、彼女の持つぬいぐるみたちはどれも『犬のぬいぐるみ』で、七篠が犬が好きなのを意識してるのだろうと感じる。

ーー嬉しい。円谷さんは私を見てくれてる。
ーーいつか、『円谷さん』ではなく『セララちゃん』と、彼女の望む呼び名で呼べるように練習しよう。

「円谷さんに似た『猫さん』買ってきちゃいますね。
 帰ったら机に飾ろうかな?」

 そして、会計を済まし、未だに複数のぬいぐるみたちを手に悩んでいる円谷の声に応える。

「はい! ぜひ!
 このあとも遊ぶんですから、荷物はほどほどにしとかないと大変ですよ?」

911円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/07(水) 19:23:58
>>910

「だよねーっ! あたしもユズちゃんの事、
 友達だと思ってるもん! あたし達おんなじだ」

セララは純粋な笑みを浮かべる。

「だから一個にするなら、この犬にしよーっと。
 これが一番ユズちゃんに似てる気がするしー。
 パンダは、また今度でいーや」

茶色い犬のぬいぐるみを手に取る。
家にある他の物に並ぶだけの価値は、間違いなくある。

「買ってきたよ、おまたせー。
 ユズちゃん、これさー、
 ユズちゃんだと思って大事にするネ」
 
「……あはははは! なんてねー!
 うそうそ! そーゆーのは重い重ーい」

会計を済ませて来るや否や、そんなことを言い出す。
声色に、本気の色は一切ない。完全なる軽口だ。

「まー大事にはしますけどー。
 ね、ね、それで、次どうするー?
 ユズちゃーん、なにか買いたいものとかある?
 お洋服とかー、あとなんだろ、アクセ? コスメ?」

    「あーでも、甘い物食べに行くとかもありかなー?
      あーあどーしよー! 全部楽しそう過ぎて決めらんない」

路地にはいくらでも、たいていの店はある。セララは何でも楽しめる。

912七篠 譲葉『リルトランク』:2021/04/07(水) 19:24:36
>>911

ーーなんだか、また顔が赤くなった気がする。

 円谷の持つビニール袋の中には、彼女が"七篠に似ている"と評したぬいぐるみが入っている。
 七篠自身も"円谷に似ている"ということで猫のぬいぐるみを購入したのでやっていることは同じはずなのだが。
 大切な友人が好きなパンダを置いて、自分に似たものを選んでくれたというのが嬉しかったのかもしれない。
 七篠はにこりと笑って少しおどけた口調で返した。

「ふふ、私も円谷さんだと思って大切にしますよ、なんて。」

「んと、ちょっと文房具を見に行きたいんです。お付き合いいただいてもいいですか?」

 新学期の準備に不足があった、そう匂わせながら『リルトランク』に必要な『植物製品』を見に行きたいと考える。
 強粘着で大きめの付箋であれば壁に貼って、ラベンダーを枕元に生やすこともできるし、解除して何度も使うことができる。
 『リルトランク』との付き合いの中で、『木の枝』をどう生やすかに悩んだ末の提案だった。

913円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/07(水) 23:07:34
>>912

「えー! どうしよどうしよ、
 ユズちゃんも重い子になっちゃったー!」

セララの口から出る言葉に、
それこそ重みはなかった。
悪いことなのかどうかは分からない。

「文房具? 付き合うよー。
 あ! あたしも今シャー芯切れてたかも!
 ちょうどいいや、行こ行こー」

近場には『文具店』も勿論ある。
セララはこだわりが無いので、
足が向く先は『文具チェーン店』だ。

「……でさでさ、ユズちゃん何買うのー?
 いい匂いする消しゴム? キラキラするノリとか?」

「それともちょっと良いシャーペンとか? 先が回るやつ」

七篠の『お目当て』は知らないし、
知ったとして、その『用途』は分かりようもない。

「あ! 見てみて、新生活フェアだって! フレッシュー!」

新生活――『スタンドを得た』時期には、
セララもまた練習などをしていたのだが、
動かせるようになってからは、必死にはやらなくなった。

914七篠 譲葉『リルトランク』:2021/04/07(水) 23:57:11
>>913
「ふふ、友達が大好きすぎて重たい、悪い子ですよー? 大変ですよー?」

 おどけた調子のまま、円谷の言葉に乗る。
 確かに自分自身、人に向ける感情が重たいことは自覚している。家族との仲がすこし冷たい分、外に求めている部分はあるのだろう。

 円谷の先導のまま、『文具チェーン店』に入る。
 店内は広く、学校で必要になる文房具はまず揃いそうな品揃えだ。

「えと、今日は『付箋』と『ルーズリーフ』がほしいんです。
 新学期でノートを取るときに色が違う付箋とか使い分けられたら便利だなって思いまして。
 今ならまだノートもそんなに取ってないから写せますし。」

 きょろきょろと見渡していると、円谷の声で『新生活フェア』と書かれた場所が目に入る
 どうやら学生が使いそうな筆記具の他、家計簿や印鑑、春を思わせる桜の便箋などをまとめて置いているようだ。

「あ、『新生活フェア』でまとまってますね!
 探さずに済みました! こっちにペンとか『シャー芯』もありますよ。」

 そう円谷に声をかけながら、求める品を探す。

ーーあった。

 『強粘着付箋』と銘打たれた付箋は正方形をしていて、しっかりとメモしたいときに使えるぐらいの大きめのものだ。
 寮の壁に貼ることを考え、どの色がいいか悩んだ末に薄茶と白を。そして実際にノートに貼るために赤・青・黄のパステルカラーのものを買うことに決めた。
 『ルーズリーフ』は白だと照り返しが目によくないと聞いたことがある為、薄茶のものを選んだ。

ーー家に帰ったらこれでいろいろ試してみよう。

 まだまだ『スタンド』については無知だが、せっかく得た才能なのだからきちんと使ってあげたい。
 美味しい柑橘類を食べるだけでなく、ラベンダーで安眠、クローゼットにクチナシを生やして服に香りを移して香水代わりと想像は膨らむ七篠だった。

 会計を済まし戻ってくると、どうやら円谷も一通り見終わったように見えた。

「私の方は買い終わりました。んと、円谷さんは他に買うものとかありますか?
 別のお店にも行きますか?」

915円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/08(木) 23:48:03
>>914

「うそー! やだなやだな、重いのこわーい。
 でも、あたしってよく軽いって言われるしー、
 凸凹の方が良いっていうから、ちょーどいーかもネ」

言葉はまさしく軽かった。
だが、本音と重さは必ずしも両立しない。
羽のように軽い言葉の中に、真実はある。

「え! 写すって、書き写すってコト!?
 すごーい、まっじめー。
 あたしなら切って糊で貼っちゃうか、
 コピーしてそれを貼っちゃうよー」

「じゃ、あたしシャーペン見てるから!
 ユズちゃんゆっくり見てていーよー」

と、実際シャーペン売り場を見ていた。
そしてルーズリーフを買う頃に『先が回るペン』と、
シャー芯を買ってレジに並び、待たせない。
そういう社交性は持ち合わせていた。

「あたしも今終わったとこ!
 見てこれ見てこれ、じゃん!
 先が回って折れにくいペンー! クルクルクルクル!」

たいして珍しいものではないが……
ともかく、お目当ては見つかった。お互いに。

「ここでは他はいいかなー、文房具切らしてないし!
 ねえねえユズちゃん、あたしお腹空いてきたかも!」

       「何か食べに行こーよー。
        お店でも、屋台とかでもあたしいーよ」

だが……どうやらこの『遊び』はまだまだ続きそうだ。
友達と休みの日に会えば、ずっと遊んでいたいものだから。

916七篠 譲葉『リルトランク』:2021/04/09(金) 00:01:49
>>915
 円谷も会計が終わっていたようだった。
 彼女の持つペンは書くごとに芯が回転し、尖った状態を維持する上に折れにくいため書きやすいと評判のシャーペンだ。

「わ、よかったですね!
 それすごく書きやすいんですよね。今度使った感想聞きたいです!」

 互いに求めるものが見つかり、円谷が空腹を覚えたこともあり、二人で店を後にした。
 食べたいものを話しながら、ふらふらと通りを進んでいく。

「この時間だとお茶とかいいですよね。
 パンケーキとか、蜂蜜たっぷり!」

 どうやら気の向くまま、足の向くまま、二人の休日はまだまだ続いていくようだった。

917円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/09(金) 00:32:17
>>916

転がる石には苔が生えぬ――――
回り続ける物は、案外劣化しないものなのだ。

「あはーっ、いいでしょいいでしょ!
 え、感想? いーよいーよ。
 むしろ聞いてほしいくらいだし―。
 あ! でもでも、代わりにお返しちょーだい!
 『ノート』出来たら、それ見せてほしいんだー」

「それでね、ノートとるコツとかも教えて欲しいでーす」

全然釣り合っていない交換を提案しつつ、
店を出ながら周囲を見渡す。

「あーあ……今、きっとあたしたちが一番楽しーよね!」

大通りの往来には、人が溢れかえる。

「アフタヌーンティーねー!
 あたしもパンケーキ好きでーす。
 ワッフルとかフレンチトーストも好き!
 やばーい、全部好きかもー!」
 
               スタ  スタ

「あとはねー、この辺のお店って何があったっけ?
 あ! なんかねなんかね、面白い外人さんのカレー屋があってさー」

            「そこのガパオが美味しいんだって!
              気になるー。ユズちゃん知ってるー!?」

                          スタ  スタ  ・・・

918甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/04/17(土) 08:49:59
星見動物霊園

「今年も来たわよ」

今日は、ペットのコーギーの命日だ
まずは、墓の掃除から始めよう
丁寧に丁寧に丁寧に

919大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/04/17(土) 19:35:27
>>918
「おやおや?」 (↓ハスキーボイス↓)
おやおや?

黄色いリボンのついたシルクハットを被った、
緑髪に右目が青で左目が赤で、
清月学園の黒い制服(改造済)に身を包んだ
男装少年(16歳女子)が通りがかった。

「これはこれは」 (↓ハスキーボイス↓)

「ボク以外の人を見るのは久しぶりだ」 (↓ハスキーボイス↓)

「ぺこり」 (↓ハスキーボイス↓)    ぺこり

シルクハットを取って甘城に軽く会釈をした。

920甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/04/17(土) 19:53:09
>>919
「…どうも」

奇妙な出で立ちの少年(女子)に、妙な事言われてしまい
うわぁ…これは変な人出会ってしまったぞ…
と、いうような顔になってしまう甘城

動物霊園にいるという事は、この少年(女子)も墓参りにでも来たのだろうか?

「貴方も…、ペットの墓参りにでも?」

掃除してる間、世間話くらいしてみてもいいか
そう思い、墓に水をかけながら問いかけてみる

921大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/04/17(土) 20:01:14
>>920
「なんだい、変な顔して」(↓ハスキーボイス↓)
顔の意図には気付かないぞ。

「うん。なってったって、ボクは手品が趣味だからね。」(↓ハスキーボイス↓)

「結構、ペットとの別れを経験しちゃってるのさ。
 どちらかというと、ペットと言うより、『手品の相棒』、『手品の助手』だね。
 手品を手伝ってくれた『ハトのポッポくん』とか、『ハムスターのはーちゃん』とか。」(↓ハスキーボイス↓)

「ああ、ボクがあんなことを考えなければ、キミたちは……よよよ」  (↓ハスキーボイス↓)
ちなみに『嘘泣き』だぞ。

922甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/04/17(土) 20:26:14
>>921
「そう…
 貴方が、その子達に何をしたのかは聞かないけど、辛いわね
 けど、一番辛かったのは、その子達でしょうね…」

その言い方から察するに
この少年が何か余計な事をしてしまったせいで亡くなってしまったのか…?
そう思い少しキツイ事を言う

「他にも動物を飼っているなら、命をもっと大切にしてちょうだいね
 人間の勝手な都合で殺されたんじゃ、たまったものじゃないでしょう」

「それにしても、それだけ別れ経験してよく精神が保てるわね
 私なんか、コーギー一匹で1年くらいは塞ぎ込んでたわ…
 辛過ぎてもう飼う気になれないわ…」

話していたら、あの子の最期の瞬間を思い出してしまった

923大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/04/17(土) 20:40:45
>>922
大神「それもそうだ」 (↓ハスキーボイス↓)

大神「ちょっと聞いてみよう」

大神「『二代目ポッポくん』、『二代目はーちゃん』、そのあたりどうなんだい?」

少年(16歳♀)のポケットから『ハト』と『ハムスター』が顔を出した。

    『二代目ポッポくん』  ポッポー

    『二代目はーちゃん』 ハムハムハム

大神「うーん……ふむふむ……
    何を言いたいのだろう……
    食べたいのは、レタス?キャベツ?ニンジン?」

どうもその子孫たちは、ほのぼのやっているようだ。

大神「そうか、コーギーが……それは、悲しいことだね。
    名前は?」

924甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/04/17(土) 20:52:45
>>923
「…」

『ハムスター』はともかく、ポケットに『ハト』を入れてるのか…
少し面食らってしまった
流石、手品師(?)というべきか

「まぁ、その子達が元気そうで何よりね…」

何にせよ今、その子孫達と仲良くそれでいいだろう

>名前は?
タオルで墓を拭いている手が止まり、思い出す…
あの名前を

「『ジャム』…
 『ジャム・ザ・ハウスネイル』よ」

925大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/04/17(土) 20:57:33
>>924
>「『ジャム』…
> 『ジャム・ザ・ハウスネイル』よ」
「んんっ?」 (↑ハスキーボイス↑)

「ハイセンスを感じるね。ジャム君か」(↓ハスキーボイス↓)

「ジャム君とは、どんな思い出が?」(↓ハスキーボイス↓)

「あと、ボクもジャム君のお墓を拭いていいかい?
 どうも手伝いたい気分なんだ。」
手伝おう。

926甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/04/18(日) 07:39:10
>>925
「そうね…、手伝ってくれるっていうんならありがたいわ」

1年間来ていなかったからか、墓には結構な汚れが溜まっている
これは掃除のし甲斐がありそうだ

>「ジャム君とは、どんな思い出が?」

「私が小さい頃に、貰われて来て、子供の頃からずっと一緒だったわ
 やんちゃで、構ってほしがりの寂しがり屋で…
 でも、私が大きくなってから、あまり構ってあげられなくなって…
 もっと構ってやればよかったわ…」

927大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/04/18(日) 10:10:29
>>926(甘城)
「そっか、手伝うよ」(↓ハスキーボイス↓)
そう言って、甘城とは反対側を掃除し始める。

「そっか。
 ジャム君は君のことを信頼してたんだね。
 だから、構ってほしかったのかもね。」



「……キミとさっぱり関係ない、ボクの身の上話をするとさ。ボクの一族はなんというか手品好きでね。」(↓ハスキーボイス↓)

「お父様は特に手品好きだった。本当に色んな動物を連れて手品してた。」(↓ハスキーボイス↓)

「だから、お父様の飼っていた動物も含めると、ボクはかなりの子たちと別れちゃってるわけ。」(↓ハスキーボイス↓)

「正直な所、その全ての子達と、ちゃんと付き合えてたかは分からない。
 もしかすると、手品嫌いの子もいたかもしれない。
 もしかすると、ボクのイタズラが原因で、ビックリして寿命が縮んじゃった子もいたかもしれない。」(↓ハスキーボイス↓)

「ただ、ボクから見ると、
 あの子達はみんな友達で、優しくて、進んで、楽しそうに、手品を手伝ってくれたように見えた。」(↓ハスキーボイス↓)

「だから、ボクはあの子達との日々を、後悔してない。
 ボクにはそう見えたし、ボクにとっては、楽しくて、優しくて、いい思い出だ。
 ボクはそう思ってるし、ボクがそう思ってる。」

「そこには、ボクのエゴ・ワガママ・偏見・不理解が、あるかもしれない。でも、その上でそう思ってる。」(↓ハスキーボイス↓)

「まぁ、ボクにはこの子達もいるしね。」

    『二代目ポッポくん』  ポッポー

    『二代目はーちゃん』 ハムハムハム

「それを背負って、それを胸に抱いて、この子達と生きるよ。それだけの話。」(↓ハスキーボイス↓)

「いやー、ごめんね。長話しちゃって。」(↓ハスキーボイス↓)

928甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/04/18(日) 10:45:27
>>927
「そうね…
 その動物達が何を考えているかなんて、こっちには分からないし
 こっちで勝手に想像するしかないけど…
 私はあの子と一緒にいられて楽しかったし、あの子も幸せだったと、勝手に思うことにするわ」

「まぁ、こんなところかしらね」

二人がかりで掃除していたために大分捗った
墓もすっかりピカピカだ

「手伝ってくれてありがとう、おかげで早めに終わったわ」

そういうと、お墓にジャム・ザ・ハウスネイルの好物だった物を供え始める

ビーフジャーキー、ササミジャーキー、サツマイモジャーキー、煮干し
etc…etc…

ちょっと供え過ぎでは?

「サービスよ」

人型のスタンドが、墓前に触れると、今度は犬用ケーキが墓前に現れる
何とも豪勢なお供え物だ

(久しぶりにスタンド使った気がする…)

929大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/04/18(日) 11:07:44
>>928
「ボクはね。そんなキミでいいと思うよ。
 世界の誰がなんと言っても、ボクはそう思うよ。」 (↓この時点では余裕のあるハスキーボイス↓)

「うーん、すっかりキレイになったね!ジャム君きっと喜んでるよ!」 (↓この時点では余裕のあるハスキーボイス↓)


>ビーフジャーキー、ササミジャーキー、サツマイモジャーキー、煮干し

「ちょっ……ポッポくん!はーちゃん!」 (ちょっとだけ高さを隠せない声↑)

ああっ!ハトとハムスターが大神さんのポケットから飛び出して、お供え物に飛びかかった!

    『二代目ポッポくん』  ポッポー (お供えを無心に食らう

    『二代目はーちゃん』 ハムハムハム (お供えを無心に食らう

「ダメだってば、これはジャムくんの……」 (余裕がなくなって、高さを隠せなくなってきた声↑↑)

   はっ……

>人型のスタンドが、墓前に触れると、今度は犬用ケーキが墓前に現れる

「きゃあっ!」 (16歳少女特有の明らかに甲高い声↑↑↑)

      ぽんっ!!!

猫耳フードを被った人狼型スタンドが大神の体から、魔法のように飛び出した!

930甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/04/18(日) 11:34:44
>>929
>ああっ!ハトとハムスターが大神さんのポケットから飛び出して、お供え物に飛びかかった!

「はぁ〜……」

供えた傍から早速物色をされて、頭を抱えて溜息をついてしまう

「まぁ、いつまでも置いておいても仕方ないし
 どうせ持って帰るつもりだったけど…」

>猫耳フードを被った人狼型スタンドが大神の体から、魔法のように飛び出した!

「ん?」

こいつもスタンド使いだったのか
しかし、スタンドとは、驚いた拍子で出て来るものなのだろうか?

「驚かしたみたいで悪かったわね、何か出ちゃったみたいだけど…」

お線香をあげ、合掌しながら言う

「じゃあ、私はそろそろ帰るわ
 また来年ね」

これは大神ではなく、ジャム・ザ・ハウスネイルに言っている
甘城は霊の存在を信じているわけではないが、もし、魂という物が存在しているとしたら
それは墓には宿っていないだろう、魂は既にあの世に旅立っているはずだ
では何故、毎年欠かさず墓参りをするのか
それはそうする事で死者を忘れないため、弔いをする事で安心を得たいからだった

931大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/04/18(日) 11:52:36
>>930
「ご、ごめんね、ボクの子たちが……」 (↓ちょっとドキドキを隠せないハスキーボイス↓)

「ば、ばいばーい」 (↓ちょっとドキドキを隠せないハスキーボイス↓)

   bye-bye!! (手をふる猫耳フードを被った人狼型スタンド

「あー、ビックリしたー。
 まさか『キミ』と同じような子がいるなんて思わなかったよ」 (16歳少女のデフォルトの地の声)

   yes-yes!! (うなづく猫耳フードを被った人狼型スタンド

「もー、手品師がビックリするなんて、ビックリなこともあるもんだねー。」 (16歳少女のデフォルトの地の声)

立ち去る。

932『その夜の翌日』:2021/04/19(月) 04:35:17

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647686/994
『その夜』の翌日――――――。

「全く大変な夜だった。本当に参ったよ」

『Luna-Polis』の一室を訪れた『桐谷研吾』は、
疲れ切った表情で口を開いた。
分厚いカーテンが引かれた室内を照らすのは、
間接照明の明かりだけであり、昼間でも薄暗い。
外界から隔絶された部屋の中で、
キーボードをタイプする音が響いている。

「あぁ…………『あれ』ね…………」

ソファーに座っていた『御影憂』が、スマホから顔を上げた。

「最初に見つけたのが僕だったんだ。
 『異臭がする』っていう通報があって、
 近くの交番に警邏命令が出されてね。
 嫌な予感はしてたんだけど、現場に行ってみたら……」

「………………『ご対面』」

御影の言葉で『その時』の光景を思い出し、
桐谷は無意識に頭を振った。

「――――『詳細』は?」

パソコンのモニターから目を離さず、
途切れる事なくタイピングを続けながら、
『度会一生』が尋ねた。

「名前は『デルデルデ・ソエ・キュイス・ザラマーン』。
 年齢は『24歳』。『移動販売のカレー屋』を経営。
 『中東』からの出稼ぎだったらしいけど、
 アパートの管理人によると日本語は流暢だったとか」

「ただ、『就労ビザ』が期限切れだったし、
 公共料金も滞納してた。
 住んでいた場所といい、
 暮らし向きは相当厳しかったんだろうと思うよ。
 売り上げはどうあれ、『あんな契約』じゃあ、
 それも当然かもしれないけど」

この世の中に、
『法に触れない犯罪』というのは確かに存在する。
それは、何も『スタンド』に限った話ではない。
悪知恵の働く人間が、
立場の弱い者を虐げて搾取するというのは、よく聞く話だ。
厄介なのは、それらが『法で認められている』事にある。
その意味では、『スタンドよりもタチが悪い』と言えるだろう。

933『その夜の翌日』:2021/04/19(月) 04:36:56
>>932

        ――――スッ

桐谷の話が一段落するのを待って、
御影がスマホを持ち上げた。

「………………『アカウント』見つけた」

「これ…………露骨に『キャラ作ってる』…………」

御影が表示させた画面を見て、桐谷が頷く。

「それも原因の一つだったのかもしれないね。
 亡くなった人が何を考えていたかなんて、
 知りようがない事だけど……」

御影は、『リーダー』である度会に視線を向けた。
彼は振り返る事なく、
パソコンに向かってタイプを続けている。
モニターには、
複雑なプログラムらしきものが表示されていた。

「『ただの自殺』を調べる価値は無い。
 やるべき事は他に腐る程ある」

         グルッ

モニターに背を向け、度会が桐谷を見やった。

「前に聞いた『空井イエリ』についてだが、
 『コンクリートの破片が浮かんでいた』というのは、
 『人型で持ち上げた』可能性が高いようには思うが、
 ヴィジョンを目撃した訳でも無い以上、断言は出来ない」

それから、度会は御影に視線を移す。
 
「空井は、お前と同じ『大学部二年生』だったな。
 『趣味』という繋がりもあるなら、より話しやすい筈だ。
 次に顔を合わせた時には、
 『能力』について探りを入れてこい」

「場合によっては、
 『スタンド使い』である事を知られても構わない。
 俺達の繋がりさえ知られなければ、何も問題は無い」

「――――『上手くやれ』」

話を終えると、度会は再びキーボードを叩き始めた。

934美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/04/20(火) 23:12:00

星見町――その何処かで『ラジオ』が流れている。

「――――今日も、あなたの隣に『電気カナリア』の囀りを」

          〜〜〜〜〜♪♪♪

「『Electric Canary Garden』――
 パーソナリティー『美作くるみ』がお送りします!」

「『春』ですねッ!
 桜の季節はちょっと過ぎちゃいましたけど、
 皆さん桜は見に行かれましたか?
 くるみはですねぇ、
 お休みの日に自然公園の桜を見に行きました!
 テイクアウトのお店で買った『バインミー』を持って。
 『バインミー』っていうのは、ベトナムのサンドイッチですね」

「やっぱり桜っていいですねぇ〜。
 華やかでありながら上品で、
 それでいて儚い雰囲気もあって……。
 『咲く姿』と同じくらい『散る姿』も美しくて、
 色んな姿で楽しませてくれるお花ですよね。
 『引き出し』の多さは、私も是非とも見習いたい所です」

「桜って明るい時に見るのも勿論いいんですけど、
 暗い時に見るのもステキだと思います!
 何となく『艶っぽい』といいますか……
 昼とは違った趣を感じるんですよね」

「仕事の帰りに通る道にも、桜の木があるんですよ。
 街灯が近くに立ってて、
 ちょうど照明が当たってる感じになってるんです。
 そこの夜桜がキレイだったんですよね〜!」

「春は『始まり』の季節……。
 新しく始めた事、これから始めようと思っている事、
 いつか始めようと思ってる事……。
 今日の『Electric Canary Garden』は、
 そんなエピソードを大募集!!
 『あなたの始まり』を、
 美作くるみが全力で応援しちゃいます!!
 もちろん、それ以外の雑談・相談・質問も大歓迎!!
 皆様からの愛あるメッセージを随時!受付中です!!」

「おっと――早速リスナーの方(>>935)から、
 お電話を頂けたようです。
 もしもし?こちらは美作くるみです!
 『お名前』か『ラジオネーム』をどうぞ〜!!」

935小翠『タキシードムーン』:2021/04/20(火) 23:46:52
>>934

星見町のどこかに大きな屋敷があった
他の家族は早くに寝てしまい、彼の自室も明かりは消している
掛け布団を頭まで被り、ラジオとスマホだけを小さな両手に持ちながら、『彼』は話をする

「え、えっと・・・・ こみどり・・・ち、違くて、ラジオネーム『ホタルオトコ』です
 こんにちわ! あ、いや、こんばんわだったっけ・・・・?」

通話先から子供に特有の高い声がする
口調やトーンを聞く限りでは少年の声の様に聞こえるだろう
彼はたどたどしい口調ながら美作に挨拶を返した

936美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/04/21(水) 00:16:24
>>935

「『ホタルオトコ』さんですね!こんにちは!
 あはは、『こんばんは』でもオッケーですよ〜」

「今日の『Electric Canary Garden』は『始まり』がテーマです。
 『これからしようと思っている事』や、
 『したいと思っている事』などなどを、
 私くるみが応援しちゃおうという企画でございます!

「『それ以外のお話』でも大丈夫ですよ〜。
 一緒に楽しくお喋りしましょうね!」

『Electric Canary Garden』は、
主に若い世代を中心に幅広いリスナーがいる。
ただ、年少のリスナーは珍しい。
予想される相手の年齢を考慮して、
普段より柔らかい口調を意識する。

「『ホタルオトコ』さんは、
 『これから始めようと思っている事』はありますか?
 くるみはですねぇ、
 ベランダで『ハーブ』を育てようかなぁ〜って思ってます!
 緑色があると落ち着きますし、
 お料理に摘み立てのハーブを使えて、
 とっても便利なんですよ〜」

937小翠『タキシードムーン』:2021/04/21(水) 00:47:55
>>936

「う、うん・・・・いつもこの番組を聞いてるから知ってます・・・・
 あっ いつも、ごかつやくを応援してます!」

自分の声がラジオから流れてくる状況に戸惑っているのか、
それとも、有名人と直接話をしている事に緊張しているのか、
所々で言葉をとちったり、思い出したかのように言葉を重ねながら、話を続けている

「へぇ〜、『ハーブ』を育ててるん・・・ですね
 うちのお母さんもよく庭でガーデニングをやってるからわかる
 女の人ってみんな植物を育てるのが好きなのかな」

美作の話を聞き、多少なりとも共感したおかげか
少しずつ、緊張感が取れたようなリラックスした話し方になってきた

「あ、そうだ、俺の話
『これからしたい事』・・・少しだけ違うかも、だけど聞いてください」

「この前、俺はすっげー悪そうなやつとケンカしたんです
 そいつは、よくわかんないけど、弱い奴をいじめてるみたいで・・・・
 それで、そいつの事がすごく許せなくなってケンカを挑んだんです」

「そしたら、俺の・・・・俺のせいでいじめられてた奴が余計に傷ついて!
 俺はどうしたら良かったのか・・・・ 何をしたらいいのかがわからなくて・・・・」

学校のともだちの話なのだろうか
少年の口からぽつぽつと『いじめ』や『ケンカ』を連想させられる話が出てくる
ずずっ、と鼻をすするような音が聞こえる

938美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/04/21(水) 01:33:50
>>937

「そうですねぇ…………」

頭の中で、慎重に考えを纏める。
話を聞く限りでは、かなりデリケートな話題のようだ。
『年齢』の事もあるし、『先生』にでもなったような気分だった。

「『ホタルオトコ』さんは、
 その人がどうして人を傷付けたのか、
 よく分からなかったんですね?」

「まずは、それを『知る』事が第一歩じゃないかと思いますよ。
 焦らなくても大丈夫。
 『何かをする』のは、それからでも遅くないの」

「それにね――分からなくなった時、
 『自分だけで考えなくちゃいけない決まり』はないんですよ。
 一人で考えても分からない事は、
 『他の人に相談する』のが近道だから」

「ほら、今も私に『相談』してくれてるでしょう?」

「友達でも家族でも誰でもいいの。
 『あなたならどう思うか』聞いてみて。
 出来るだけ『沢山の意見』を集めて、
 最後に『自分の考え』を決めればいいんだから」

「――――ね?」

通話越しに涙ぐむ相手を落ち着かせるように、
緩やかな声色で一言ずつ話す。
おそらく、彼は一人で抱え込んでしまっているのだろう。
しかし、こうして電話してきてくれたという事は、
心の中では『誰かに打ち明けたい気持ち』があるはずだ。
だから、その気持ちを肯定する事で、優しく背中を押す。
彼には、『悩みを共感してくれる人間』が必要に感じた。

939小翠『タキシードムーン』:2021/04/21(水) 20:44:09
>>938

「それは・・・・」

『あの時』の事を思い返してみる
弱い者いじめをしていた『鎖の男』の事を・・・
そういえば、あの時は立ち向かう事に必死でアイツが何を考えていたのかわからなかった
意地の悪い男だったけど、何か事情があったのかも

「わからない・・・・、です
 アイツが何でそんな事をしていたのか・・・・俺は聞こうとも思わなかった
『相談』しようなんて考えも・・・・」

『タキシードムーン』を得たせいだろうか
『憧れの人』になれるチカラがあるから、誰かに相談するなんて事は思いもしなかった
だって・・・・『おじいちゃん』はそんな姿を見せた事もないから

「でも、俺は『おじいちゃん』じゃあない、か」

ぽつりと、小声で独り言を呟く

心が落ち着くと、ラジオが繋がっているのに泣いてしまってはみっともないという思いが強くなった
布団の中でごそごそと動き、袖で涙を拭うと、努めて元気な声で電話を返す

「わかった・・・・わかったよ! おねえさん!」

「俺は・・・・もっと人と話す事にする!」

940美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/04/21(水) 22:32:01
>>939

「うん!元気な声ね!もう大丈夫!」

その声を聞き、電話の向こう側で笑顔を浮かべる。

「よかったら、また電話してきて。
 『ホタルオトコ』さんが泣いてる時は私も悲しいし、
 ホタルオトコさんが喜んでると、
 私も嬉しい気持ちになれるから」

パーソナリティーは、リスナーに共感する存在だ。
だから、彼が相談を持ち掛けてくれた事を嬉しく感じた。
自分が『それに値する存在』である証明になるのだから。
言い方を変えれば、
『パーソナリティーとしての評価』という事でもある。
今日、彼が相談してくれた事で、
また一つ自信に繋げられた気がした。

(…………『おじいちゃん』?)

ふと耳に届いた言葉に、目を細める。
事情は知らないが、
何となく『憧れの人』なんだろうという予想は出来た。
『目標』があるのは素晴らしい事だ。

「ねぇ、『ホタルオトコ』さん。
 私にも夢があるの。
 この番組を、もっともっと盛り上げていく事!!」

「お互いに、叶えられるように頑張りましょうね」

「それから――お姉さんの名前は『美作くるみ』」

             フフッ
 
     「『次』の時は、そう呼んでね?」

話の最後に付け加えられたのは、冗談めかした声色だった。

941小翠『タキシードムーン』:2021/04/21(水) 23:40:47
>>940

「・・・・・・・うん!」

一際、大きな声で返事を返す
声があまりにも大きかったせいか、遠くで家族の足音が聞こえた
こんな夜中に、小翠が大声を出したことに不審がっているのだろう

「ありがとう、おねえさん、俺の話をまともに聞いてくれて」

>「ねぇ、『ホタルオトコ』さん。
> 私にも夢があるの。
> この番組を、もっともっと盛り上げていく事!!」

「きっとできるよ! だっておねえさんは凄いから!
 だから・・・・俺も頑張るよ、頑張って、理想の自分になってみせる!」

「だから・・・・『くるみおねえさん』も頑張って!」

少年から、一際大きな声で応援の意思が届く


     ドスドスドスドス!

一方、その頃、小翠の部屋に向かって足音が近づいてくる
恐らくお母さんだろう 夜更かしをしてラジオを聞いている事を怒られるかもしれない

942美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/04/22(木) 00:14:13
>>941

「ふふッ、ありがとう!
 そんな風に励ましてもらえると、やる気が湧いてくるわ。
 その言葉があるから、私は頑張れるの」

「私も『ホタルオトコ』さんを応援するから、
 『ホタルオトコ』さんも、これからも私の応援よろしくね!」

その時、電話の向こう側から足音が聞こえてきた。
それを聞いて、おおよその状況を察した。
『ハプニング』を捌く自信がない訳ではないが、
そろそろ『締め』にした方が良さそうだ。

「おっとっとっ……それじゃ、またいつかお喋りしましょう!
 今回のお相手は、
 ラジオネーム『ホタルオトコ』さんでした!!」
 
     「――――『See you again』!!」

後日、小翠家に一通の封書が届いた。
中身は『Electric Canary Gardenオリジナルクオカード』だ。
また、一枚の『メッセージカード』が同封されていた。

【くるみお姉さんは、あなたを応援してるよ。
 悩んだ時、嬉しい事があった時、いつでも電話してきてね。
 『理想の自分』を目指してファイト!】


小翠『タキシードムーン』⇒『番組特製クオカード(500円分)』Get!!

943小翠『タキシードムーン』:2021/04/22(木) 00:37:50
>>942

   ドタドタドタドタ

「う、うん、応援する、だから・・・・『しーゆーあげいん』!」

最後に一言、応援の意思を伝えて通話を切った
その直後、部屋に入ってきた家族に言い訳を試みるも、布団の中に隠したラジオを見つけられ、失敗
夜更かしの罰としてしばらくラジオを没収されてしまうのであった



「あれ? これは・・・・」

後日、小翠家に『メッセージカード』付のクオカードが届けられた
メッセージの文面は比較的短いながらも、『くるみおねえさん』からの直筆の言葉は彼を勇気づけた
そして再び歩みを進める・・・・・『理想の自分』、おじいちゃんのような凄い男になるために!


小翠『タキシードムーン』⇒『番組特製クオカード(500円分)』Get!!

944『水面下』:2021/04/27(火) 14:34:35

「――――『情報』が必要だ」

『Luna-Polis』の一室で、『度会一生』は『御影憂』に言った。

「それって………………」

        ボソッ

「………………『集め方』が悪いって言いたい?」

御影は恨めしそうに呟きを返す。

「そうは言っていない。
 仮に『そうだった』としても、お前だけを責める気は無い。
 現状の人手で出来る事は限られている」

「しかし、迂闊に人数を増やす訳にもいかない。
 『信用に値しない者』を入れるのは何よりも危険だ」

『一派』に加える人間には三つの『条件』が定められていた。
第一に『スタンド』を持たない事。
第二に『アリーナ』や『エクリプス』と関わりを持たない事。
第三に『スタンドに立ち向かう意思』を備えた人間である事。
そんな人間は、そう多くは無い。
『ただのスタンド使い』を探すよりも困難だろう。
ゆえに、『一派』は少数で活動する事を余儀なくされている。

「………………『あれ』は?」

御影が言及したのは、海で見つけた『ラッコ』の事だった。
『スタンド使いのラッコ』。
『人間のスタンド使い』と違って、
情報をベラベラ喋る事は無い。
秘密を漏らさないという点では安全だと思われた。
しかし、動物には人間とは違う問題もある。

「『制御の方法』に問題が残る。
 状況によっては使える可能性はあるが、
 あくまでも『保険』程度だ」

「お前程は役に立たないし、信用も出来ない」

「フッ………………」

度会の言葉を聞いた御影は、前髪の下でせせら笑った。

「『褒めて』………………色々やらせようとしてる?」

「たまには出掛けるか。
 自分の目で街の様子を確かめておくとしよう」

「あ………………『誤魔化した』………………」

945『Luna-Polis』:2021/04/29(木) 10:17:45

御影憂は、大通りで『飯田咲良』と出会った。
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1586906856/522-538)
それから一時間後。

「………………ただいま」

『Luna-Polis』に戻った御影憂は、
肘掛け椅子に座る度会一生に呼び掛けた。

「『収穫』はあったか?」

「『スタンド使い』が………………『二人』………………」

御影の報告を聞いた度会は、
コルクボードに新たなピンを刺していく。

「飯田は現時点で『青』。もう片方は『赤』だ。
 『清月館』の方は、桐谷にも調べさせる。
 お前も、そこに入居している学生には注意しておけ」

顔を上げた御影は、立てかけられたコルクボードを眺める。
そこには大量のメモ用紙が留められていた。
これまでの『調査』で得られた『スタンド使い達の情報』だ。

946『Luna-Polis』:2021/04/29(木) 10:20:44
>>945

――――――――――――――――――――――

         円谷世良楽(安全)
       清月学園高等部一年生
        人付き合いが上手い
        物事を深く考えない
     スタンド名は『リトル・スウィング』
       ヴィジョンは『飛行する輪』
         能力は『氷の散弾』

       高校生らしき少女(保留)
           料理が下手
       『菓子類』に関する能力?
           素性は不明

        高校生らしき少年(危険)
           赤いマフラー
  一般人に命に関わりかねない危害を加える
       体内を破壊可能な能力を持つ
           目的は不明
       『危険人物』の疑いが強い

          金髪の男(保留)
      マフラーの少年と対峙していた
      恐らくスタンド使いだと思われる
         素性・能力共に不明

          飯田咲良(安全)
       清月学園中等部二年生
          清月館に入居
    家庭内に問題を抱えている可能性あり
        スタンド名は『シスター』
         ヴィジョンは『人型』
          パワーは平均的

         不法侵入者(危険)
           清月館で目撃
        室内に不法侵入を行った
     『ぬいぐるみ』に関する能力を持つ
       『危険人物』の可能性あり

         白髪の少女(保留)
          歓楽街で発見
       スタンド使いの可能性あり
            詳細不明

          風歌鈴音(注意)
            ホームレス
        『アリーナ』と関わりあり
  烏兎ヶ池神社でスタンドの訓練を行っていた
         ヴィジョンは『人型』
      能力は『手から風を生む』事
    指定箇所に『渦』を作り出す事も可能

         挙動不審な男(注意)
     スカイモールのレストランで発見
     『半自立型の人型スタンド』を持つ
  スタンド名は『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』
          能力は『戻す』事?
     何らかの組織に属している可能性あり

          空井イエリ(安全)
       清月学園大学部二年生
   スタンドでコンクリートの破片を持ち上げた
        『ヨロイトカゲ』を飼育
     桐谷にスタンドの存在を示唆した

         西洋人の少年(保留)
       遊園地の事件に居合わせた
          推定スタンド使い
         素性・能力共に不明

        高校生らしき少女(保留)
         夜の歓楽街で発見
     『半自立型の人型スタンド』を持つ
     こちらの動きを警戒していた気配あり

          金髪の少女(保留)
    スカイモール近辺で絵を描いていた
       スタンド使いの可能性あり
             素性不明

――――――――――――――――――――――

「現状、『赤』は二名だ。
 そいつらに対しては、特に警戒しなければならない。
 もし今後『何か』あれば――――」

           グルッ

「――――『手を打つ』事も考える」

それだけ言うと、度会は御影に背を向け、
パソコンのモニターに向かい合った。

947『Luna-Polis』:2021/04/29(木) 10:41:23

「――――――………………」

           スッ

御影は、『剥がれ落ちていたメモ』を拾い上げ、
ピンで留め直した。

――――――――――――――――――――――

         勤め人風の男(保留)
           歓楽街で発見
       出版関係の人間と思われる
   御影の姿を撮られたがデータは消去済み
       出版関係の人間と思われる
          ヴィジョンは『人型』
            能力は不明

――――――――――――――――――――――

948龍美丹『チーロン』:2021/05/02(日) 23:51:59
海、一人の少女がそこにいた。
別に潜ったりする訳でもなく、砂浜でシャドーボクシングのような動きをしている。
……ボクシングに蹴りはないのでシャドーファイトと言った雰囲気だが。

「ふん……は……っ」

少し暑い日だ、動き続けて顔に汗が浮いている。
ぐらり、と少し体勢が傾いて転びそうになる。

949関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/03(月) 00:43:45
>>948

通信制コースも学校は休み。
家族も遊びに出たり、仕事をしてたりで、
家事をあらかた終えた関は海に来ていた。
関は余暇時間も『倹約』に使いがちだ。
もっとも、今は、厳密には『仕事中』だが、
いつまでか分からない時間、『オン』ではいられない。

「ふう……」

≪……っと、人がいますねえ。           『私ハ追従者ニ ツイテイク』
  『フニクラ』は大人しくしてて下さいよう≫       『邪魔ハ シナイ』
                              『血サエ 集マレバ ソレデイイ』
『仕事仲間』であり、
『クライアント』でもある、
『リュック』に入れた存在に語り掛けつつ、
『釣り具』を手にして歩いていく……と、いうところで。

「………………あっ! 大丈夫ですか〜?」

                      ザッザッ

転びそうなのを目にして、『龍』の方へと歩いていく。
支えるとかは流石に間に合わないが、助け起こしたり、介抱するために。

『あなたの血が必要とされています!』
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1617983099/70

950龍美丹『チーロン』:2021/05/03(月) 01:50:34
>>949

「よっと」

ぱっと手をついて砂浜を蹴る。
足が浮き上がればそのまま空を切りながら砂浜へと落ちてくる。
絶妙なバランスだった。
体が砂浜に着くことはなく、奇妙な体勢ではあったがなんとかこらえている状態である。

「……ふぃー」

「……なんか、声がしたような」

立ち上がりつつ、声のした方をむいて……

「おや、いつかのお嬢さんじゃないか」

951関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/03(月) 02:04:05
>>950

「わっ……」

倒れ――――なかった。
内心胸をなでおろしつつ、
歩く速度を少し遅くする。

「ええ、お久しぶりです〜。
 あの後顔を出せてなくて……
 なんだか、すみませんけれど。
 夏でもないのに海で会うなんて、
 なんだか奇遇ですねえ」  

思わぬ再会と、
覚えられていたことに、
温和な笑みが浮かんだ。
店に行けてないのは色々あるが、
特別何かがあるというわけでもない。

「今のは……トレーニングか何かですか〜?
 ダイエットの運動には、見えませんでしたけど」

                 『釣リヲ シナイノカ』
                  『時間ヲ有効ニ』 
               『持ツノハ シバラクダケ』

「……あ、ちなみに私は、見ての通りですよう」    

……関の声以外の何かが『背中』の方から聞こえる。

952龍美丹『チーロン』:2021/05/03(月) 02:23:06
>>951

「いやまぁ別に構わないさ。ボクの何かに影響がある訳じゃないからね」

「あぁ……そんなところかな」

うんうんと納得したように首を振る。
納得したの相手が自分か。

「……ん?」

なにか声がする。
その主が見えないから気になる。

「キミ、なんか音がしなかったかい?」

「スマホの着信……じゃないな。そういうのじゃなくて声っぽい……」

「リュックサックにつめた子猫でも鳴いてるんじゃないか?」

953関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/03(月) 02:47:14
>>952

「そう言ってもらえると……え。
 あ、あぁ〜。『聞こえる』んですねえ」

        スッ

「子猫なら、かわいいんですけど〜」

驚きはするが、比較的『慣れた』し、
今は内心『探して』もいるのだった。

リュックをゆっくり下ろす。
すると――

        『私ハ フニクラ』

なんだこれは?
ボール……バレーボールほどの『赤い球』だ。

「はい、まあ、自己紹介もありましたけど、
 この子は『フニクラ』って言いまして〜
 ……あ、いえ、その前に」

「寿々芽(すずめ)――
 私の名前、言ってませんでしたから。
 自己紹介しておきますね。よろしくお願いします〜」

ボールだけに自己紹介させるのは変だと思い、
自分の名前も伝えた上で、小さく頭を下げた。

「…………それで確認なんですけど。『見えてます』よね?」

そして、念のために、浮かぶ『ボール』を手のひらで示した。

954龍美丹『チーロン』:2021/05/03(月) 10:15:13
>>953

「『フニクラ』……?」

「なん……いや、えっと……」

「あぁ、スズメというんだねキミは」

喋る珠に困惑しつつ言葉を返す。
なるほど、こういうこともあるのかというふうだ。

「あぁ、見えてるよ」

記憶の中から検索する。
たしか彼女は『音仙』と呼ばれていた。
その人物から教わったことは何だったか。
あれの名前は。

「スタンド、そうスタンドだ! そうだろう?」

「他人のを見るのはそうないんだ……あぁ」

言葉を区切り舞台のように大仰に礼をする。

「龍美丹(ロン・メイダァン)だ、よろしく」

955関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/03(月) 20:15:58
>>954

「はあい、私は寿々芽(すずめ)……
 その『スタンド』を使えるスタンド使いの、
 関 寿々芽(せき すずめ)といいます」

苗字も込みの自己紹介に対し、
自分も後からそれを付け加えた。

「見えてる人に会えて、よかったです!
 お互いスタンド使いとして……
 仲良くしましょうねえ、メイダァンさん」

一応の打算はあるが、本音でもある。
笑みを浮かべて――

「……あ! 一応言っておくと、
 お返しに能力を見せてくれたりとかは、
 しなくっていいですよう」

そう言いながら、『ボール』から手を引く。
難しい顔をせざるを得ない話題だが…………

               ・・・・
「『フニクラ』は『私のスタンドじゃない』ので。
 ややこしい話には、なってくるんですけど〜」

         『寿々芽ハ 追従者』
       『追従者ニハ ツイテイクダケ』
         『本体ハ 別ニイル』
        
「……本当にややこしくて、難しい話なんですけどねえ」

龍にとっては、いきなりの『特例』だ。
ややこしさは倍増。ゆえに一気に全てを話しは、しない。

956龍美丹『チーロン』:2021/05/03(月) 20:55:35
>>955

「あぁ、よろしく頼むよ」

ニコニコ笑っている、のだが。
その顔の雰囲気も変わってくる。

「ちょっと待ちたまえよ」

ぱっ、と開いた手が関の顔の前。
この女、手足が長い。

「キミのスタンドじゃないだって?」

「なに、そんな他人の自転車借りるみたいな感覚で連れてきてるのかい……?」

「それはどういう……」

話を聞く姿勢だ。

957龍美丹『チーロン』:2021/05/03(月) 23:10:43
>>956

「……キミとその球はどういう関係なのかな?」

958関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/04(火) 02:50:27
>>956-957

関はどちらかといえばスラっとした体形ではない。
太っている、という訳では決してないのだが、
長く伸びた手足には、内心憧れも感じつつ――――

「やっぱり、驚きますよねえ。
 私もこんなスタンドって、初めてで。
 関係――――」

            『寿々芽ハ 追従者』
            『本体ハ 別ニイル』

「それじゃあ説明になってないですよう、『フニクラ』。
 ……メイダァンさんになら、隠す理由もないですね」

笑みから、真剣な表情に変わっていた。
意識したわけではない。『フニクラ』を取り巻く事情は『真剣』だ。

「関係を言うなら――『仕事仲間』、になるんでしょうか〜?」

        ス

「『この球』――――
 『フニクラ』の本体から、
 本当に『貸してもらって』いるんです。
 やるべきこと……『お願い事』と、いっしょに」

『フニクラ』に手を伸ばし、特に意味は無いが、なでる。
危険なものではない、と暗に示したかったのかもしれない。

「……『フニクラ』は、本体の人が『制御出来てない』んですよう」

なぜなら、言おうとした事実が『危険性』を想起させるものだから。

959龍美丹『チーロン』:2021/05/04(火) 22:03:04
>>958

「うーん……」

「正直、怪しいといえば怪しいしキミを取り巻く環境が心配にもなるが」

「信じよう」

『フニクラ』についても、スタンドについて無知であることを自覚している。
なので、それを信じるしかない。
疑うのもアリなのかもしれないが少なくとも龍の天秤はそちらに傾いた。

「制御できてない?」

思わずそいつは何をしているんだと言いたくなった。
龍のスタンド『チーロン』はそういうタイプではないし、自分の制御下にあると思っているがそんなことがあるのか。

「……かなり面倒なことになってないかい? なにか会ったなら相談してくれよ?」

「そいつ、決められた言葉を繰り返してるだけみたいだし本体にボクたちの話は伝わってないんだろう?」

店頭のペッパーくんみたいなものだと言いつつ言葉を続ける。

「仕事仲間ってなんの仕事?」

960関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/04(火) 22:36:17
>>959

まず小さく頭を下げる。ほとんど反射的に。

「ああ、ええ、ほんと怪しい話ですよね……
 メイダァンさん、お気遣いありがとうございます。
 ………………私の環境は、平気なんです。
 ただですねえ、平気じゃなくって、
 それに『面倒』な事になってるのは……
 この『フニクラ』の本体の人の環境なんです」

          『…………』

「仕事の内容にも、関わるんですけど――」

こんな時だけ何も言わないのは、
このボールにも罪悪感はあるのか、
単なる偶然の結果なのか。

「私も全部分かってるわけじゃないんですけど、
 この『フニクラ』…………
 他のスタンドから『血をもらう』ことで、
 何かをする、っていう能力みたいなんですよう」

     『血ガ……マダマダ』『足リナイ』

「でもそれが制御出来てないのか、何か理由があるのか、
 本体の人はずうっと、『貧血』に悩まされてまして……
 それで路地で倒れてる時に、私が偶然通りがかって」

           スゥ――

「『介抱』と……『血をあげた』のが、始まりなんです」

『フニクラ』に手を伸ばす――すると。

             グィィィーーーー ・・・

      『貴方ノ血ガ』
      『必要トサレテイマス』

「色々飛ばして答えちゃいますけど、
 仕事っていうのは――『血液提供者』を、探す事です」

献血じみた文句を口走りながら、
その全体から『ウニ』のように! 『注射器』が迫り出す。

961龍美丹『チーロン』:2021/05/04(火) 23:19:16
>>960

「血を貰う……」

復唱、なにか意図があった訳では無い。
その言葉で想起するものがあり、そちらに意識が向いてしまったからだ。

「貧血か……それは……つらいね……」

相手を慮る言葉が出てくる。
その時だった。

「!」

龍の背に汗。
衝突間際で乗っていた自転車が止まったとか、部屋ではしゃいでいるところを親に見られたとか。
そういう時に起こりうる現象、毛穴が開いて冷や汗が吹き出てくる。
そんなことが体に起こったのだ。

「おいおいおいおい!」

瞬時、体に浮かぶ赤い龍。
刺青めいて服の下からそれが覗き、それを関が認識した頃には後ろに下がっていた(スB)
手で注射器を受け流すような動きをしつつ、手のひらでウニを視界内から隠していた。

「びっくりした……」

「一旦それをしまってくれるかなお嬢さん?」

「……真剣な話だ、キミのお仕事に協力するのはやぶさかじゃないからね」

962関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/04(火) 23:51:30
>>961

「ええ、本当に…………あっ! また勝手に……!
 もう、駄目ですよ〜『フニクラ』。一旦しまって」

     ズズ

一瞬何が起きたのか分からなかったが――

         『ズットハ持タナイ』
        『合理的ニ 血ヲ 集メマス』

注射器が『出ている』事に、関も一拍遅れで気づいた。

「それはそうですけど……
 そんな風じゃ、『協力者』は集まりませんよう」

注射器はヴィジョンの中に消えていく。
集合体恐怖症というやつだろうか、
あるいは注射器自体へのトラウマか。
いずれにせよ、これは『良くない』。
『フニクラ』の前に回るようにして、
その存在自体も『美丹』の視界から隠す。

「すみません〜、驚かせてしまいまして……!
 ……そのう、『今の』を使うんです。
 『スタンドの血を集める』っていう、仕事に」

と、そこまで言ってようやく、
『美丹』本人の動作ではなく、
その体に浮かぶ『龍』に気付いた。

「『ペイデイ』」

             ズギュン

「これの表紙……は、もう治っちゃってますね。 
 『スタンド』からその、『採る』んです。
 エネルギー?みたいなものを、『血』の代わりに」

『お返し』ではないが自身のスタンドを見せつつ、
注射器、というワードを避けながら、『美丹』に説明を続ける。

963龍美丹『チーロン』:2021/05/05(水) 00:49:41
>>962

「悪いね、先端恐怖症なんだ」

「……スタンドからか」

そう呟く。

「ボクのスタンドは『チーロン』」

「僕と一体化してて、ボクの血に影響を与える」

自らのスタンドについて口にする。
見た目の変化が本質ではない。

「ボクの出血をね、龍にするんだ」

だから今この場でそれを見せることは出来ない。
正しくは、しない。

「本来これは血の龍を使って輸血をする前をなす力。血を渡すのはボクの運命だろう……その『フニクラ』越しなのは少々想定外だけどね」

964関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/05(水) 01:05:36
>>964

「いえ……恐怖症じゃあなくっても、
 急に見せたのは良くなかったです。
 『フニクラ』にも、ちゃんと言っておきますので」

          『…………』

言ってどうにかなるのか?
分からないが……
知性らしき物はなくもない。
環境が与える影響は、あると思いたい。

「まあっ、『チーロン』……!
 『輸血のスタンド』だなんて、
 こんな奇遇って、あるものなんですねえ……」

       「……でも」

「……あのう、説明しないのはズルいと思うので、
 これはちゃんと、言っておくんですけど」

            ス

「私の『ペイデイ』には……ほら、本ですから!
 叩いたりしても、私に伝わる感覚はないんですよ。
 だから注射をしたって、痛くも痒くもなかった」

それは結果論だ。
痛い可能性はあった。だが、そんな事は言わない。

「でも、メイダァンさんのスタンドの場合は……
 もしかしたら、痛い思いをさせちゃうかもしれません。
 人助けのためにも、やってる仕事ではありますけど、
 『貧血』と『恐怖』は……同じくらい辛いと思います」

「ですので……運命でも、強要というか、
 やらなきゃいけないわけではないと思います。
 やってくれるなら……それは。
 あなたが、良い人だから…………運命だけじゃ、ないですよう」

偽善かもしれないが、それくらいのことは、言っておきたかった。

965龍美丹『チーロン』:2021/05/05(水) 01:46:31
>>964

「うん、そうしてくれるとありがたいかな」

(それは、危ないからね)

汗が引いてきた。
ふぅ、と息を吐いて伸びをする。
海風の独特の感触が肌を撫でていく。

「……」

腰に手を置いて黙り込む。
それから。

「あっはっは!」

大きく笑った。

「そんなこと、些細なことさ!」

貧血もなにもかも龍美丹は気にしない。
そんなことよりも人に血を与えることを考える。

「それにしても……真了不起(素晴らしい)!」

「キミは実に良き人だ」

「だからボクも全幅の信頼をもってして血を分けよう」

袖を捲りあげる。

「血を摂るときは言ってくれよ? 目を逸らしておくからね」

966関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/05(水) 02:02:34
>>965

「――――――……ふふ。
 メイダァンさん、ありがとうございます」

             スッ

「『フニクラ』。――――お願いします」

           『血ヲ 集メル』
         『ソノタメニ ツイテイク』
           『コレデ一人目』

体で隠したまま、
『フニクラ』から注射器を取る。
大きな注射器――――それを後ろ手に、振り向く。

「メイダァンさん、目をつむって下さい。
 それと、『チーロン』は発動したままで!
 すぐ済ませますけど――――」

           ザッ

美丹がしっかりと目を閉じたのを確認したら、
浮かぶ『龍』に手早く針を突き立て――――『スタンドエネルギー』を貰う!

            『貴方ノ血ハ』

「ちょっと、チクッとするかも、しれませんよう」

    『必要ト サレテイマス』

『本体がスタンドになるタイプ』である『チーロン』なら、
絵面はともかく可能な筈だ。『チクッと』は、実際に『する』事となる。

967龍美丹『チーロン』:2021/05/05(水) 02:34:37
>>966

目を閉じて、痛みがやってきて。
息を止める。
だがそれは一切問題じゃない。
実現する意志のみが龍の中。

「ふぅ……」

ぼんやりと考え事をして気を紛らわせながら。

「ところで」

「見返りというか報酬とか求めてもいいのかな?」

968関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/05(水) 02:50:06
>>967

血を採った『注射器』は、『フニクラ』に戻す。
これで――――『1人目』だ。
ストックは後で届けに行こう。

「……お疲れ様です〜。
 痛かったですよねえ、ありがとうございます。
 これできっと、本体の人が助かりますよう」

          『血ハ マダマダ』
        『モット 集メル必要ガアル』

「まあ、そうなんですけど……」

『フニクラ』は元の状態に戻った。
『美丹』にも、不愉快な見た目ではないだろう。

「献血をしたときって、
 お菓子やジュースを貰えますよね〜。
 ――――私の『ペイデイ』は、それを出せますけど」

笑みを浮かべる。

「それとももう少し、『まごころ』のあるお返しがいいですか?」

美丹が何を求めるかにもよるが、多少のお礼はしてやりたい。

969龍美丹『チーロン』:2021/05/05(水) 03:14:01
>>968

「うーん、特に貧血とかもないかなボクは」

刺すところは見られないが抜いたところは見ておけばよかったかな、と思う。
おそらく注射器に血龍が吸い込まれているということは無いだろうが。

「そうだね……」

思案する振り。
顎に手を当てて考えてるポーズだけ。
それから、いたずらっぽく笑って。

「デートでもするかい?」

970円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/05/05(水) 22:38:43
>>969

「ああ、よかったです。
 私……『協力者』の人から採るのは、
 これで初めてでしたので〜」

エネルギーの消耗は若干のフラつきを生んでも、
致命的な……そうでなくとも『症状』の域には達すまい。
そして、『見返り』だが。

「まあっ! それは……………ふふ、素敵です」

「いいですよう、『デート』」

温和な笑みは自然に浮かんでいた。

「でも私、あんまり経験がありませんので……
 メイダァンさんが、エスコートしてくれますか〜?」

献血の見返りのお菓子ほど、
甘い時間にはならないかもしれないが……
同年代と見える相手と遊びに行くのは、十分嬉しい事だ。

971関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/05(水) 22:39:11
>>970(名前欄ミス)

972龍美丹『チーロン』:2021/05/05(水) 22:49:59
>>970-971

(ふうむ、からかったつもりだっけどなかなかどうして……)

ふふ、と口元に笑み。
それからウンウンと頷いた。

「じゃあ行こうか」

「デートスポットは気にしないでいい」

君は釣りをしに来たんだろう? と釣具を指さした。

「少し話し相手になってもらえればいいさ」

973関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/05(水) 23:23:32
>>972

「そうですねえ、どこに――
 ――――ああ、助かります。
 せっかく釣り具を持ってきてたので」

            ザッ

「私の方こそ、お話相手が欲しかったんです。
 それじゃあ『デート』、楽しく過ごしましょう〜」

『仕事』を終えて黙り込む『フニクラ』をカバンに収め、
『釣り具』を持って、場所へと向かう。

ポイントアプリで時間を潰すのも良いが、
今日の釣りは、『当たり』以外の時間も色よい物になりそうだ。

974『Luna-Polis』:2021/05/06(木) 11:08:33

マンション『Luna-Polis』――
薄暗い室内に三人の人間が集まっていた。
ロングコートのフードを目深に被った男。
長い前髪が顔の大部分を覆った女。
警官の制服と制帽を着用した男。
それぞれの庇が顔に陰を作り、
明確に容貌が見える者は一人もいない。

「例の『不審者』について色々と分かったよ。
 名前は『ツネハラ』。
 筋骨隆々とした体格で、ええと…………」

「…………『女装』しているらしい」

制帽の男――『桐谷研吾』が言った。

「『掃除しに来た』とか………………」

「あと………………『料理も作ってる』………………」

「………………らしい」

長髪の女――『御影憂』が続けた。

「それから『飯田さん』が言うには、
 他にも同じようなのがいるらしい。
 でも、さすがにないんじゃないかな……。
 多分、『ツネハラ』と同一人物だと考えていいと思う」

「もしかしたら………………
 ホントに二人いるのかも………………」

         ボソッ

「いや………………やっぱ『絶対ない』………………」

フードの男――『度会一生』は、
無言で二人の報告を聞いていた。
その手には『杖』が握られている。
優れた視力を持ち、遥か彼方の獲物も捉える、
『鷲』の彫刻が施された黒檀製の杖。

「――――『ツネハラ』の評定は『注意』に落とす。
 『危険ではない』という意味じゃあ無い。
 『検討の必要がある』という意味だ」

一人の相手に対して割ける労力は限られている。
その為に、『一派』は『優先順位』を設定した。
それは同時に、
対象の『危険レベル』を可視化する狙いも含んでいた。

「案外、お前と似ているのかもしれないな」

「え………………やだ………………」

度会に話を振られた御影は、露骨に嫌そうな表情をする。
御影にしてみれば当然の反応だった。
いくら同じ『スタンド使い』といっても、
『不法侵入の女装男』の同類にされたくは無い。

「『ツネハラ』は不法侵入を働いているが、危害は加えない。
 お前は人を脅かして回っているが、危害は加えない。
 一種の『共通点』がある」

「そう言われてみれば、確かに…………」

度会の言葉に桐谷が『同意』の意を示す。

「『絶対ない』………………」

       ボソッ

「………………『絶対』」

一方、御影は頑なに『否定』を続けていた。

975関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/13(木) 20:49:59

通信制コースにも時折登校日はあり、
今日の関は、その帰りだった。

「昨日見た再放送で言ってましたけど、
 ウニにキャベツを食べさせると良いんですって」

        『私ハ ウニ デハナイ』
        『私は フニクラ』

小さな公園のベンチに座り、
近場のパン屋で買った『サンドイッチ』を食べていた。

        『ソモソモ私モ 横デ 見テイタ』

「それもそうでしたっけ。食べたくなりませんか〜?」

いつものエプロンはリュックにしまい、
珍しく『清月学園』の制服を着た彼女の、
その傍らに――『赤い玉』のようなものが置いてある。

        『欲シイノハ 血 ダケ』 
        『合理的ニ 集メルベキ』

「ううん、そうは言っても、
 スタンド使いを探すのって大変なんですよう」

(『アリーナ』に頼んだりしたら、
 加宮さんに迷惑がかかる可能性が高すぎますし…………)

そして、その玉も、そもそも彼女の声すら、
一般人には見えず聞こえない――『スタンド存在とのスタンド会話』。

※『あなたの血が必要とされています!』参照
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1617983099/70

976朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/13(木) 21:13:16
>>975
本当にたまたまであった

ただちょっと家路への近道をしようと公園を通り抜けようとしただけなのである。

だが…

(…ありゃなんだ…)
同じく『清月学園』の制服を着た少女がその光景を目撃し
思わず近くの木へ身を隠してしまった。

(あれは何だ?腹話術の練習?
 それとも…アレなのか?)
少しビビりながら木の陰から覗き込む。

スタンド使いである彼女には腹話術意外に考えられることが確かにある。

977関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/13(木) 21:22:10
>>976
    
       『私ヲ 連レテ 歩キ回ル』
       『スタンド使イ 集マッテクル』

「私もあなたも『戦わない』じゃあないですか。
 集まってきても、襲われたりしたら大変ですよ」

少なくとも隠れた『朱鷺宮』に、
何かをしてくるような存在ではないらしい。

「今だって、どこかから見られてたりして」

       『ナラ好都合』

       『血 モット必要 ナルベク早ク』

「メイダァンさんは知り合いで良い人でしたけど……
 初対面のスタンド使いから血を貰うなら、
 急ぐだけじゃなくって、相手のことも考えないと」

   「慌てるこじきはもらいが少ない、ですよう」

何やら恐ろしいことを言ってるが……
お団子頭の少女は、朱鷺宮よりは少し年上に見えた。

          ヒュオ 
              オ

「きゃっ」

と、その時風が吹く。

「あっ……ゴミが飛んでっちゃいました」

          『放ッテオケバイイ』

「ダメです、そうはいきませんよう」

パンの包み紙が風に煽られ、木の陰へと飛んで行く。

        ……朱鷺宮からすると、飛んで来る。

978朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/13(木) 21:46:06
>>977
(今の言葉…スタンド使い?!って聞こえたような…
 じゃあやっぱり…)
なんとなく確信できるような話である。
そして

「っ…!!」
見られていたり、という言葉を聞いて思わずビクッとした。

(よくわかんないけど、なんかヤバそうな話だわ…
 ここはおとなしく去ったほうが…)
スタンドを持っているとはいえ、得体のしれない相手と対するのは避けたい。
と思ったところで。

「おっ…あっ…」
パンの包み紙は風に煽られて

ポスッ

っと涙音のみぞおちあたりへと飛んでいった。
まるで吸引されるかのように。

979関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/13(木) 21:50:39
>>978

    トトト

「あっ!」

ゴミを追った関は、朱鷺宮を発見して驚く。
そして、背後からついてくる『フニクラ』も。

      フヨフヨ

           『見ラレテイタ』
           『ツイテキテイタ?』

怪訝そうに……なのか? 少し揺れていた。

《分かりませんよう、何か気になっただけかも。
 少なくとも、私の知り合いではないですし〜》

「すみませぇん、私のゴミがご迷惑を。
 お洋服とか、汚れたりしてませんか〜?」

        ペコ

頭を下げ、しゃがみ、鳩尾からずり落ちたビニール袋を拾う。

980朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/13(木) 22:14:38
>>979
「あっ…と」
ちょうどよく関と目があったことによって
一瞬動きが固まる。

「えーっと…いえ、大丈夫ですよ。
 見ての通り。汚れたわけでもないですし。」
慌てて手を振った。

「なんかこっちも覗き見しちゃってたみたいで…」
視線が少し関よりも後ろに行ってしまっている。

「なにかお話…してたんでしょうかね?」
疑問に思ったことが思わず口に出てしまった。

981関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/13(木) 22:22:49
>>980

「ああっ、ならよかった……
 いえいえ、公園はみんなのものですから。
 どこに立っていたって、自由ですよう」

        『視ラレレイル』
        『追従者』
        『スタンド使イ ダ』

赤い玉が声を出す。
『朱鷺宮』の視線に気付いているのだ。

≪わかりませんよう、決め付けるのは早いです。
 もしそうだとしても、焦って説明したって、
 『協力』して貰えるとは限りませんから≫

        『ソノ方ガ 合理的ナラ』
        『スタンド使イカ 確カメルベキ』

≪……もしそうなら、
  この会話は聞こえてるんでしょうけど≫

「ええと、お話……ですか?
 『私一人だけでしてた』って言う事ですか〜?」

「それとも――――」

              チラ

少し後ろを見る。探る必要があるかは分からないが。
いずれにせよ、今すぐに要件を切り出すのは間違いに感じた。

982朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/13(木) 22:42:19
>>981
「まぁ、たしかにそうですね。」
少し焦りながら答える。

(やっぱり何か…)
赤い玉から声が聞こえる。
そう思ったため、どうしても気になる。

「えーっと…その。
 お話…そうですね。その…」
どうやら何か気になっているようだ。

「腹話術の練習…とか?でしょうかね。」
取り敢えず、スタンド使いではない可能性を考えてみる。
しかし、スタンド使いにしか聞こえない声ならば
ほとんど自分がスタンド使いと言っているようなものだろう。

983関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/13(木) 23:33:23
>>982

「……」

(私がスタンド使いなのを気付いてないのか、
 それとも気づかなかったことにしたいのか。
 普通に考えると、後者ですかね……
 つまりこの子自身も、『隠したがってる』)

そうなると難しい。
スタンド使いなのを明かさせた上に、
さらに献血の協力をお願いしなければならない。


「腹話術……」        『血ガ 求メラレテイマス』
「ええと」          『私ハフニクラ』
「腹話術では、ないですねえ」 『人形デハナイ』

とりあえず――腹話術の線はまず無いだろう。
関としても、それで通す線は断たれた。
フニクラとしては、さっさとやりたいのだろうが。

「……………………」

「……あのう、先に言っておきます。
 この子はさっきから血がどうこう言ってますし、
 私も、『血を探してる』のは本当です」

           『血ガ無イト』
           『制御ガ 出来ナイ』
           『シバラクシカ 待テナイ』

「でも、無理矢理とったりとかは、しませんから。
 危ない事をしようとしてるわけじゃないんですよ」

スタンド云々の前に、
不安がられているなら、それを説明しておく事にした。
どうせフニクラが喋るのを止められはしないわけだし。

984朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/13(木) 23:38:33
>>983
「同時に喋って…ますね。」
同時に声が聞こえてきたのを見て、可能性は考えられなくなった。


「血を探している…というと、
 輸血が必要ってことなのでしょうか…?」
彼女の様子を見て少し考える。

「先程から話しているあの赤い玉…
 血がほしいというのはどのような事情があるのでしょうか?」
どうやら関の様子を見て少し緊張がとけたようだ。

985関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/14(金) 00:04:42
>>984

「ええ、私が喋らせてるんでも無いんです。
 これは今からする『説明』にも絡みますけど、
 この『フニクラ』は――――」

          フヨ

「私の『スタンド能力』でも、ないので。
 勝手に喋ったり、ついて来たりするんです。
 私自身の能力は――」

    ポン

「この本。『ペイデイ』の方ですからね」

まず、見せておくことにした。
木に隠れて様子を見ていたあたり、
この相手は『豪胆』とか『鈍感』とかは無い。
慎重で、繊細なタイプと想像できる。

「それで……『フニクラ』はなんなのかと言いますと」

          『私ハ フニクラ』
          『本体ハ 別ニイル』

「……という、わけなんですねえ!
 この子の本体の人に、『血が必要』なんです。
 ……ああっ、そうは言っても普通の血じゃないんですよ」

「『スタンドから取れる血』……
 『精神エネルギー』が、必要なんですって」

ゆえに、不安なワードの後には安心できる話題に繋ぐ。
最悪、敵だと思われなければマイナスにはならない…………

986朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/14(金) 00:26:28
>>985
「やっぱり…スタンドなんですね。
 あなたの能力ではないということは…」

「あなたのスタンドは…なるほど、本の形…ですか。
 能力は…まぁ大丈夫です。」
頷いてから木の陰から取り敢えず完全に姿を見せた。

「スタンドから採れる血…
 スタンドに血液ってあるんですねぇ。」
スタンド血液ということばをきいて少し首を傾げたが

「そうですか…
 精神エネルギーが…」
少し考える。

「血液が必要な理由がきになりますね…
 あと吸われたら私、どうなるんでしょうか…」
取り敢えず詳しく知りたいことを聞いてみた。
すぐにどうぞ。ともいい難くはあるのだ。

987関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/14(金) 00:39:35
>>986

姿を見せた朱鷺宮に、改めて小さく頭を下げる。

「色々急に話して、驚かせちゃってすみません〜。
 でも、その人には本当に必要な事なんですよう。
 なんで必要か、と言えば……」

           『…………』

「この子を、本体の人が制御出来てないんです。
 私にはそういう経験はないので、
 どういう気持ちなのかは分からないんですけど……」

       スゥー ・・・

息を吸って間をあける。
実際それは、重たい事実だからだ。

「そのせいで、その人は『ずっと貧血のまま暮らしてます』」

「それを治して、このスタンドを制御する為に、
 スタンドから、能力で、『血を取る』……
 それをされると、貴女はちょっとだけ痛くて、
 あとは献血をした後みたいに……疲れると思いますよう」

        「他に……聞きたい事はありますか〜?」

説明を求められた以上は、全てを詳らかに話しておく。
興味を持ってくれた相手なら、それが最も信用を得られるような気がする。

988朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/14(金) 20:11:13
>>987
「スタンドを制御できてない…
 だから今離れて行動していると…」
赤い玉の方を見ながら答える。

「そのスタンドは『血を取る』のが能力というわけですか…
 とはいえずっと貧血なのは確かに辛いですね」
それどころか…とも思う。

「聞きたいこと…
 血を取られること自体はきっと私のスタンドには恒久的に影響を及ぼさない…
 とは思いますが。」

「やっぱり…このまま放置していたらいつか
 『血』が失われて…」
そう言って少し沈黙する。
聞くのがちょっと怖いとも言えるが

「…『死んで』しまうことになる…というわけですか?」
聞きたいこと。というので特に思いつくのがそれだ。

989関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/14(金) 23:32:35
>>998

「恒久的……ずっとは、影響はないはずです。
 私のスタンドはほら、『本』なので、
 動くスタンドがどうなるかは分かりませんけど」

?をつく事に抵抗は無いが……
普通に説明して済むならそれが一番いい。

「このスタンドは――――」

        スッ

      『私ハ 血ヲ溜メル』
      『溜メテ 本体ニ 渡ス』

手をかざすと――――

      『採ルノハ 追従者ノ 仕事』

「この……『お注射』で、『血を採って』、貯め込む能力なんです」

ボールから、無数の『注射器』が突き出した――――
ただし針の方がボールに刺さった状態で、持ちやすくなっている。

「私はお医者さんではないので、絶対とは言えません。
 『家庭の医学』は、読みましたけど……
 ただ、死んじゃうという感じではなかったです」

そこも、嘘はつかない。
嘘をつかなくても十分『問題がある状態』なのは伝わっているし、
それに、人の生き死にで嘘をつくというのは、
なにかお金や時間より大事なものを失う気がする。

「ですので……あなたが協力しなくっても、大変な事になったりはしないですよう。
 普通に考えて、『あやしい』話ですし……強要なんて、出来るわけもありませんから」

          「――――たいしたお礼も、出来ませんしね」

990朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/15(土) 00:08:03
>>989
「…確かに、そう見えますね。」
まだ少し疑わしそうではある。

「血を溜め込む能力…っと。
 注射器とはわかりやすいですね。」
突き出された注射器を見て少しびっくりしたようだ。
だが、すぐに落ち着きを取り戻した。

「…なるほど…
 ですがその様子だと、困ってはいる。ということでしょうね。」
腕を組みながら少し考える。

「……」
目を閉じて少し考える。

(デメリットがあるわけでもない…相手も特に死ぬようなわけではない…と思うけど…
 やっぱりそれでも…)
彼女の様子を見れば

「そうだね。」
困っていることは確かだろう。

「このまま突っぱねてもちょっと後味悪そうだし。」
そう言って頷いた。

「私にできることなら、協力しますよ。」
どうやら涙音は、了承をするつもりのようだ。

991関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/15(土) 01:08:03
>>990

「まあっ、本当ですか!
 ありがとうございます……助かりますよう」

「死にはしなくっても、本当に、困ってはいて。
 できる事でしたら助けてあげたいんです。
 ……それが、私のためにもなりますので」

ぱあっ、と顔色を明るくして、頭を下げる。

             シュッ

             『血ガ必要デス』
             『少シデモ合理的ニ』

注射器を抜き取る。
――――明らかに『デカい』が、
スタンドエネルギーを吸うならこういう物なのか?

「それじゃあ、準備が出来たら、『スタンド』を出してくださいね〜。
 あっ……目立つ所で出すのはイヤでしたら、
 そこの木に隠れながらでも、大丈夫ですよ」

取った注射器はすぐに下に下げ、
針を朱鷺宮には向けないようにする。

「あと……お礼は『献血』らしく、
 お菓子とジュースくらいは出しますけど、
 何か好きなものとかって、ありますか?」

                ニコ ・・・

温和な笑みを浮かべ、泣き黒子のある目を細める。
お菓子を『出す』――――そう言いながら、『ペイデイ』を片手で抱いている。

992朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/15(土) 01:50:37
>>991
「まぁどういたしまして。
 こちらとしても困ってる人がいるってのはちょっと…
 見て見ぬ振りはできないですし。」
完全な善意とは言えないが
それでも誰かのためになったと言うだけで機嫌は良くなるものだ。

「注射器…その、結構でかいですね。
 まぁ…刺されても大丈夫だとは思うけど…」
現れた注射器は結構針もでかそうに見える。

「まぁ、あなたにはスタンドを出してもらったみたいですし
 この場所でもいいですけどねー。」

「お菓子…お菓子は…
 そうだなぁー…」
ちらりとスタンドを見ながら答える。

「私はロールケーキ…とかが食べたいですね。
 駅前の大人気で…なかなか手に入らないタイプのやつが」
やや欲張りな気がすると自分で思ったが…
(まぁ、これくらい欲張っちゃってもいいよね。)

993関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/15(土) 02:07:41
>>992

「見ず知らずの人のために血をくれるのは……
 きっと、あなたが良い人だからだと思いますよ。
 お世辞じゃなくて……本当にそう思ってますからねえ」

こればかりは、嘘なんて一つもない。
多少自分が気持ち良くなるためでも、
それは、『善行』と言っていいだろう。

「確かに大きいですよねえ〜…………
 刺すところはどこでも大丈夫ですから、
 どこか痛くなさそうなところに刺しますか?
 それと、苦しかったりしたらすぐ止めますからね。
 それでもお礼は……渡しますので」

途中で止められるのかは知らない。
だが、引き抜けない理由もないだろうし、
そもそも苦しいようなものではないだろう。

「ふふ、ロールケーキですねえ、いいですよ。
 できたら『お店の名前』とか、教えてくれますか?」

注射器をページに挟むようにしつつ、
帳簿を開く――白紙のページを。

「私の『ペイデイ』は……
 お金で買えるものだったら、
 たいていのものは『買える』ので〜」

          「感謝の印で、贈りますよ」

能力の片鱗も開示しておく。
信用を得られれば――それはそれだけ嬉しいのだ。

994朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/15(土) 12:23:53
>>993
「そ、そうですかね?
 正直いい人って言うのは私自身は…
 そういう自覚は、ないかなー。」
どこか照れくさそうだ。
自分をたまに『性格が悪い』と思っているだけに、善意をぶつけられると
急に照れくさくなってしまう。

「…うーん、まぁ…
 どこに刺しても同じかも…
 まぁ急所以外ならどこでもいいかな。」
少し笑いながら、その針の様子を見る。

「お店の名前…えーっと、確か」
スマホを取り出し、店名を検索する。

「ああ、ありました。
 『リルカリルド』。ロールケーキがメインのケーキ屋さんです。」
そう言って店のクチコミサイトを見せる。

「それじゃあ、早速私もスタンドを出しますね。」
そう言うと、彼女は少し目を閉じてから

『フォートレス・アンダー・シージ』

   ドギュン!!

自分のスタンドを出現させる。
見た目はいかにも屈強そうな女性の兵士のような人型のスタンドだ。

「どうでしょうか。これが私のスタンドです。
 人型なので、注射感覚は普通で良さそうだと思いますけど…」

995関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/15(土) 20:45:28
>>994

「ふふ、それじゃあ今日からは覚えておいて下さいね。
 あなたは良い人だって言った人と、
 あなたのくれる血で、助かった人がいるってこと……」

照れる顔を見ても、褒めを自重はしない。
献身の姿勢は、自虐的な人間に強く反応する。
良いことをしたのだ、認められるべきだ――と。

「『リルカリルド』……ですね、
 はあい、分かりましたよう。
 終わったらすぐ、渡しますからね」

      『血ノ 対価ガアルノハ 合理的』

「まあっ、フニクラもそう思いますか?
 私もそう思いますよ。
 少しくらい、いい目を見なくっちゃ……ねえ」

クチコミサイトの写真を見ておき、
どのようなロールケーキがあったか覚える。
初めて聞く店だが、きっと名店なのだろう。
良い目を見たら――『20万円』を得たら、
その時は自分の分だって、買ってもいいだろう。

「とっても『強そう』なスタンドですね〜。
 これならきっと、『良い血』が採れるはずです。
 それじゃあ……『利き腕じゃない腕』を。
 すみません、前に出してもらってもいいですか〜?」

大きな注射器を構え、『スタンド』の腕を待ち構える。

果たして何が起きるのか。続きは――

【場】『自由の場』 その2
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1621051851/2-

               ――にて。

996一口怪文書『花の気持ち』:2021/06/02(水) 21:00:12
ある一輪の花は人間に憧れた
人間は自由に歩き回り、考える、物を創る、言葉を交わし心を通わせ、時に諍う
そんな人間が愛おしいと思った

ある人間の少女は花に憧れた
花は同じ花をいじめたりはしない、ただその場に綺麗に咲いているだけだ

             「わたしは人間になりたい」
              「うちは花になりたい」


               ――ポエム好きの少女の落書き帳4ページより抜粋


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