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【場】『自由の場』 その1

288夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/23(土) 00:55:26
>>287

「くふっ」

「い〜ち、に〜い、さ〜ん――」

「ふふふふふ」

「――にじゅは〜ち、にじゅきゅ〜う、さ〜んじゅぅぅぅ」

「くくくっ」

サングラスをかけた少女が、口元に笑みを浮かべながら歩いていきた。
頭にはリボンのようにスカーフを巻いている。
その手の中には、封筒と、数枚の紙切れが握られていた。
両手の指には、ネイルアートの付け爪が見える。

「――あぁッ!?私のユキチ様が!待って!!」

刹那――急な風で少女の手から飛ばされてしまった一万円札が宙を舞う。
その数三十枚。
少女はあたふたとうろたえながら追いかけている。
位置的には、ちょうど弓削の目の前だ。
見ようによっては、ちょっとした見世物状態かもしれない。

289弓削 和華『アンタイトル・ワーズ』:2017/09/23(土) 01:17:17
>>288
「……大丈夫ですか?」

立ち上がって拾いに行く。
無論、大丈夫でないことは(金額的に)分かりきっている。
これはまぁ……コミュニケーションのとっかかりみたいなものだ。

290夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/23(土) 01:35:34
>>289

「私が体を張って稼いだユキチがぁぁぁぁぁ〜!」

少女は紙幣の群れを追いかけて右往左往している。

  ――と……。

      ドシュンッ
            シュババババッ

突如、少女の傍らに人型スタンドが現れ、素早く正確な動きで紙幣をかき集めていく。
それにより、宙を漂っていたもののほとんどが、少女の手に回収された。
あとは、弓削の足元に落ちている数枚が加われば、それで全てだろう。

「あっ、いやいやそんなそんなどーもどーも」

「ありがとーございます」

少女はスタンドを引っ込ませ、ぺこりと頭を下げて弓削に近付いてくる。

291弓削 和華『アンタイトル・ワーズ』:2017/09/23(土) 01:45:14
>>290
   「  」

真顔である。
数枚の諭吉さんを手に取った態勢のまま、弓削は無表情で夢見ヶ崎をガン見していた。
というのも無理はないだろう、彼女は自分以外のスタンドを見るのが初めてなのだった。
というかこの先スタンドを人前で使うつもりもなかったし他人もそうだと
思っていたのでスタンド使いを目の当たりにするという事態がイレギュラーだった。
無論、スタンドをガン見していたことは夢見ヶ崎にも分かるだろう。

「……」「いえ、大事ないようでよかったです」

          「イッツマイプレジャー」

何事もなかったかのようによく分からん事を言いつつ万札を手渡すリクルートスーツ女。
なお、表情は終始真顔のままだった。

292夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/23(土) 02:12:44
>>291

「あー、落ち着いた」

そう言いつつ近くにあったベンチに腰掛ける。
自分としても、そうそう頻繁に日常でスタンドを使っているわけではなかった。
たとえば、自分が動くのがメンドくさいからスタンドでリモコンを取るなんてことはしていない。
だが、たぶん必要だと思った時は使っている。
数えてみて、一枚足りないなんてことになっても困るし。

「えっと……お姉さんの名前なんだっけ?」

知り合いだっただろうかという考えが不意に浮かんだが、
あまり自信がなかったため、とりあえず名前を尋ねてみた。
当然ながら全くの初対面なのだが。
そして、このリクルートスーツの女性が何を思っているかも知るよしもない。

「あとさ――今なんか見えてた?私以外に」

「それとも、私の後ろの方に『超珍しくて不思議なイキモノ』でもいたとか……」

やや声を落とし、念のために問いかける。
このスーツ姿の女性――弓削の考えは分からない。
ただ、水も漏らさぬほどに凝視されていたのは見えていた。
だから、一応は感付いてはいた。
だけど、もしかしたら私の後ろにビッグフットとかチュパカブラとかいたのかもしれないし……。

293夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/23(土) 02:20:28
>>292

諭吉さんは受け取って、ちゃんとお礼を言った。
そして、上記の行動へ。

294弓削 和華『アンタイトル・ワーズ』:2017/09/23(土) 02:22:47
>>292
「弓削和華と申します」

ベンチに座る夢見ヶ崎の前に立ち、誰何に対し明確な一言。
すっと伸ばされた背筋はいかにもキャリアウーマンらしい。

「初めまして、ですね」「すみません、少々視線が不躾だったようで」

      「少し――」

そこで、弓削は少し間を置いた。
おそらく、あそこまであからさまな視線を向けられれば向こうも感づく。
その上で『スタンド使い』であることを明かすべきか、
あるいはしらばっくれるべきか決めかねていたのだ。が……。

        「『奇妙なもの』が見えましたので」

そう言って、親指を立てて自らの背後を指差してみせる。
背後に『寄り添い立つもの』――スタンド、というわけだ。
結局、しらばっくれるメリットもないので正直に明かすことにしたらしい。

   「どうやらご同輩かなと」「奇遇です」

なお、常に真顔のままだ。表情筋が死んでるのだろうか?

295夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/23(土) 17:54:05
>>294

  ……?

  心なしか表情が薄いような……。

   いや――薄いんじゃあない!
   これは、表情が『全くない』ッ!
   まるで人の形に切り出された無機質な彫像のように……!

……などと思ったかどうかは定かではない。
ともかく――。

「あっ、知らない人だった。どーりで見覚えがないワケだ」

「――ゴメンなさい」

「夢見ヶ崎明日美っていいます」

名乗られたからには名乗り返そう。
なんといっても、挨拶はタイジンカンケイの基本っていうし。
もっとも、こちらの挨拶は、それほど整ったものではなかったが。

「ゴドーハイですか。ふむふむ」

弓削の背後に目をやり、納得したように二、三度うなずく。
そして、弓削の全身を正面から隈なく観察する。

「お姉さん、ビシッとしててカッコいいね。できる女って感じ」

「あ、名前聞いたんだし名前で呼んだ方がいいよね。
 カズハさんって呼んでもいい?」

「――あとさ、できたら座って欲しいな。見上げたまんま喋るのも疲れるし」

296弓削 和華『アンタイトル・ワーズ』:2017/09/23(土) 22:12:16
>>295
「ええ、どうぞ。よろしくお願いします、夢見ヶ崎さん」

                                  「では、失礼します」

着席を促されると、弓削はあっさりと夢見ヶ崎の隣に腰を下ろした。
スタンド使いの邂逅――当然ながら、話はそこに収束する、

     「しかし災難でしたね」

かと思いきや、微妙に話題が逸れた。
関係はしているので全く別の話題でもないのだが。

  「あれほどの大金、もし風で飛ばされてはいたらと思うと……」

 「ぞっとします」 「お給料、無事でよかったですね」

『身体を張って稼いだ諭吉』、ということでお給料と解釈したようだ。

297夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/23(土) 22:49:57
>>296

「ホントホント。どっか行っちゃう前に戻ってきて良かったぁ。
 慌てすぎて思わず『アレ』使っちゃったよー」

アレというのは、言わずもがなスタンドのことだ。
さっきのは、スタンド持ってて良かったと思った瞬間ベスト10くらいには入るね、きっと。

「えっと、あー、うん」

夢見ヶ崎の年齢は16歳。
一概には言えないが、この年頃で貰う給料としては多い金額だろう。
実際のところは、給料ではない。
この町の片隅で偶然見つけたスタンド使い同士が闘う闘技場。
そこで得た賞金だった。

「いやー、あれはハードな仕事だったなー」

「血は出るし腕の骨は折れたし――」

「それでしばらく入院したりして――」

「キツかったぁー」

その時のことを思い出しながら喋る。
全て事実ではあるが、口に出してみると変な冗談にしか聞こえないのがたまにキズだ。

298弓削 和華『アンタイトル・ワーズ』:2017/09/24(日) 00:11:43
>>297
「………………」

弓削も馬鹿ではない。
30万という大金を(見た感じ)子どもな目の前の少女が持っていることに違和感はあった。
ただ、何らかの事情でバイトで貯めたお金を引き下ろしたとか、実は幼く見えるだけ
というような可能性も考慮していたのだ、が……

          「そう言った『業種』があるんですか?」

ズイ、と身を乗り出して一言。
相変わらず真顔だが、今日一番の食いつきだ。
それより怪我に触れるべき部分なのだが。

   「『能力』を利用することが求められる『業界』が……」

無表情の中心にある瞳に浮かぶのは、好奇心。
自分の知らない未知なる世界へのパイプ役を少女に期待する感情。
そこに少女が負傷の危険をおかしたことへの心配などはない。
何故か? それは彼女が現在失職中でそれどころではないからである。

299夢見ヶ崎明日美『』ドクター・ブラインド:2017/09/24(日) 11:43:49
>>298

「――???」

「……へぇ……」

予想以上の食いつきの良さを目の当たりにして、最初は不思議そうな表情を浮かべた。
しかし、それは心に生じた強い好奇心によって、瞬く間に塗り潰されていく。
この終始真顔で無表情を貫いている女性が、
自分の話に強い反応を示したことに対する好奇心だ。
サングラスの奥に隠された黒目がちの大きな瞳が、小さな星のようにキラリと輝いた。
やがて、口元に悪戯っぽい笑みが現れる。

「うん――『ある』みたいだよ」

「大きな声じゃ言えないけどさ――」

そう言いながら、こちらからも顔を近付ける。
お互いが近寄っているために、かなりの至近距離になるだろう。
そして、耳打ちする時と同じように開いた片手を口元に添え、声を潜める。

「――『アリーナ』っていう場所なんだ」

「スタンド使いの選手が対戦する地下のトーギジョー」

          ファイトマネー
「そこで勝ったら『 賞金 』が貰えるってワケ」

そこまで言うと、いったん言葉を切る。
弓削が関心を持っているかどうかを見るためだ。
それを確認してから、改めて話を続ける。

「カズハさん――もしかしてキョーミある?」

「私は飛び入りで参加したんだけど、そこのカンケーシャと連絡先交換してるんだよね」

「だから――もし良かったら、向こうに話を伝えてもいいんだけど……」

自分と連絡先を交換した男は、こう言っていた。
正式な選手になることを考えるか、参戦希望のスタンド使いを紹介してくれ、と。
あの時は、まさか本当に誰かを紹介することになるなんて思ってなかったけど――
返事次第ではそうなる、か、も。

300弓削 和華『アンタイトル・ワーズ』:2017/09/24(日) 12:44:48
>>299
「いえ」

急転直下。
……というと少し語弊があるが、弓削は先程までの前のめり具合とは
想像もつかないほどあっさりと、勧誘に対して一歩引いた態度をとった。

    「実は私、現在失職中でして」

そんな弓削から放たれたのは、唐突なニート宣言だった。
リクルートスーツを着たままブランコでギコギコやっていたのもそういうことらしい。

「それで今日も就職活動中だったのですが、……なかなかちょっと、という次第でして」

少し声色が沈んだ。

「『スタンド使い』……それそのものが必要な資格になる『業界』について
 ご存知ならば、詳しく伺いたいと思ったまでで……『選手』は特に」
                    「争いごとはあまり得意ではないですし」

弓削はそう言うと目を伏せて、

         「私は、『誰かのために』働きたいと思っています」

「それが『モチベーション』なのです」
「私自身が目立つのでなく……」「それだけが願い」

           「ただ」

「もしも『マネージャー』といった職種があるのでしたら、
 そちらの方にはとても興味を惹かれるのですが……」
「……その前に、『観戦』してみたいですね。どのような職場なのか見ておきたいですし」

「『観戦』は、どうすればできるでしょうか?」

要するに、『選手としてはそんなにだけど、もしマネージャー職があるなら興味がある』……
そして『何にせよどんな仕事なのか理解するために色々見ておきたい』ということらしい。
そんなもんあるのか? あったとして新規採用あるのか? というところからして非常に微妙な感じだが……。

あと、闘技場そのものの営みには全く疑問を差し挟んでなかった。
やはりどこかズレているのかもしれない。

301夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/24(日) 22:28:32
>>300

「……一度しか言わないから、よく聞いてて」

その言葉は、低く重い響きを持って発せられた。
顔からは笑みが消え失せ、神妙な表情に変わっている。
『あなたの余命は残り三日です』と宣言する医者のように、ひどく深刻な顔色だ。

「まず――『ウサギ』を探すの。時計を持ったあわてんぼうの白ウサギをね」

                ラビットホール         ワンダーランド
「そのウサギを追いかけて『ウサギ穴』を通れば、『未知の世界』へ行けるはずだよ」

そこまで言うと、固い表情が少しずつ崩れ、唐突に含み笑いを始める。
最後には、声を出して無邪気に笑い出した。
見る人に悪印象を抱かせるような笑い方ではなく、明るく屈託のない笑いだ。

「ふっふふふ、ゴメン。ただのジョークだよ」

「それで、なんだっけ?ああ、さっきの話の続きね」

「募集してるかどうかは分かんないなぁ。
 代わりに大体の場所を教えるよ」

「そこに行ってみたら、なんか分かるかも」

「さっきのはジョーダンだけど、私の時も似たような感じだったしさ」

言葉通り、自分の知っている場所――
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1454252126/562参照)を伝える。

とはいえ――それで弓削に何か大きな変化が起こるとは考えていない。
あくまで『大体』なので、分かるかもしれないし分からないかもしれない。
そもそも、何か特殊なきっかけでもなければ入れるような場所でもないだろう。

それでも教えたのは、彼女が何か大きな苦労を抱えていることを察したのと――。
この弓削和華という一風変わった女性に対して、興味を抱いたためだ。

302弓削 和華『アンタイトル・ワーズ』:2017/09/24(日) 23:20:34
>>301
「フム」

夢見ヶ崎の『ジョーク』も、眉一つ動かさずまじめ腐った顔でメモを取る弓削。
雰囲気だけなら『仕事の出来る女』のようだが……、

       「……ジョーク」
                   ビィーッ

……今の今まで書いていた部分に『ジョーク』と書き加える姿はいっそ滑稽だ。
何気にメモを取る速度は速い……が、異常というほどではないのでこれは技術だろう。
……気を取り直してメモを取り直し。

「……ありがとうございました。お陰様で、とても助かりました」

メモを取り終えると、弓削はそう言って頭を下げる。
礼をするのにきっかり四拍使って頭を上げると、

「こちら、私の連絡先です。ここで知り合ったのもスタンド使いの『縁』。
 もし何かお困りのことがありましたら、お気軽にご相談下さい。
 スタンド使いとしては若輩者ではありますが、出来る限り力になります」

      「では」「失礼します」ペコォー

そう言って名刺を手渡し――名前と携帯電話、メールアドレスが
書かれていた――、そのまま、会釈をしてその場から去って行った。
相変わらず終始真顔だったが――その後ろ姿からは、どことなく満足げな雰囲気が窺えた。

303夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/09/25(月) 21:42:01
>>302

「……へぇ〜……」

自分の放ったジョークをそのままメモする弓削を、物珍しそうな好奇の視線で観察する。
『マジメ』だ。
あまりにも『マジメすぎる』。
もし、彼女が冗談のつもりでやっているんだとしたら、自分の言ったジョークより面白いだろう。
たぶん――いや、きっと本気なんだろうけど。

「――ふむふむ」

名刺を受け取り、ざっと目を通す。
こちらには渡す名刺がないのが惜しいところだ。
その代わりに、明るく笑いかける。

「こっちこそ、なんか変なモノとか変わったコトとかあったら教えてねー」

「ネンジュームキュー24時間ボシューチューだから」

「私もスタンド使い若葉マークだけどさ、けっこう役に立つと思うよー」

彼女を通じて、まだ見たことのない何かに出会えたら嬉しい。
未知の世界や未知の存在との遭遇は、自分にとって何よりの報酬だから。
もちろん、スタンド使いの縁で知り合った弓削に対する気遣いもあるが。

「そんじゃ、またね〜」

模範的なお辞儀ではないが、こちらも軽く頭を下げ、立ち去っていく弓削を見送る。
その心には、ささやかな満足感があった。
あの弓削という女性は、今まで自分が出会ったことのないタイプだったからだ。
未知の人間との出会い。
それも自分にとっては、大きな喜びの一つなのだから。

304小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/01/04(木) 02:31:42

一月一日――元旦。

他の地域と同じように、ここ星見町の神社も、新年の初詣をする人々で賑わっていた。
その象徴であるかのように、境内は見目鮮やかな晴れ着姿で溢れている。

     ザッ……

色とりどりの雑踏の中で、墨のように黒い着物を纏った女が静々と歩いていた。
近くで見たならば、それが和装の喪服であることが分かるだろう。
最も格式の高い第一礼装であり、失った最愛の相手に特別な想いを伝えるための装いでもある。

  ――去年は一年、大きな事故や病気もなく、無事に終えることができました。

  ――どうか、今年も無事に過ごせるよう、私を見守っていて下さい。

  ――治生さん……。

自分なりの新年の装いに身を包み、心の中で静かに祈りを捧げる。
去年の一年間、彼との約束を守ることができたことに対する感謝を。
そして、今年の一年間も彼との約束を守り続けたいという願いを込めて。

305ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』:2018/01/12(金) 00:03:44
>>304

ふっふっふ。
自分は人の波を見ている。
自然の中に数式が潜むことは多かれど人の波は幾何学模様を描きはしないもの。
だけど自分は観察している。
この経験もきっとどこかでしてるはずだから。

「……さぁ実験をはじめよう」

自分は人を避けていく。
多分こうすれば大丈夫というルートが見えてる。

「あ……」

そうだ。ここで人を見つけるんだ。
喪服を着た女の人。きっと、いつか見た風景。

「ねぇ、あなたと自分って会ったことないよね?」

思い切って喪服のあの人に聞いてみる。

306小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/01/12(金) 00:52:14
>>305

ちょうど参拝を終えた時、知らない女性に呼びかけられた。
少なくとも、自分には見覚えがない。
もしかすると、向こうは自分を見たことがあるのかもしれない。
しかし、それは会ったことがあるとは言わないだろう。
少し考えたのち、口を開く。

  「……そうですね」

  「はい――会ったことはありません……」

  「あなたは……私をご存知ですか?」

失礼にならない程度に女性の容姿を確認しながら、質問を返す。
自分が忘れているだけで、本当はどこかで会っていただろうか。
もしそうだとしたら、申し訳なく思う。

307ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』:2018/01/13(土) 00:27:56
>>306

んっんー。やっぱりそうかそうか。
デジャヴかそうじゃないか、見切れたな。
うんうん。これは一つの進歩だね。

「そうー。自分も君の事は知らないかなー」

「あ、ああ、ごめんねー。怪しい者ではあってもぉ悪い人じゃない、と思ってくれていいよー?」

普通こーゆーのはヘンナヒトって感じだねぇ。
自分はそう言う目で見られるの慣れてるから別にいんだけどね。

「えぇっとーどうしよっかなー?」

「お姉さんは時間ある? お話しないー?」

308小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/01/13(土) 00:58:38
>>307

  「――はじめまして……」

軽い会釈と共に挨拶する。
どうやら自分が忘れているというわけではなかったらしい。
そのことに対して、ひとまず安心した。

  「ええ……私は構いません」

  「……あちらに行きましょうか」

そう言ってから、人の少ない一角に向かって歩き出す。
どちらかというと寂しがりな性格ということもあり、人と話すのは好きな方だ。
きっかけは突然ではあっても悪い気はしない。

  「私は小石川といいます」

  「よろしければ、お名前を聞かせていただけますか?」

309ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』:2018/01/13(土) 01:03:38
>>308

わーお。ちょっと安心ー的な?
これ、断られることも多いんだよねぇ。
ま、しょーがないけどねぇ。

「ありがとーお姉さん」

「ふふっ。ナンパみたいだねぇ」

「えっと、名前。ツクモ。それか、ゲルトかトゥルーデ」

名字とあだ名とあだ名ね。

「よろしくね。小石川のお姉さん」

310小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/01/13(土) 01:21:18
>>309

  「私も、誰かとお話するのは好きですから……」

  「それでは……ツクモさんとお呼びします」

目的の場所へ着き、歩みを止める。
境内には多くの人がいるが、二人の周りにいる人の数は少ない。
少なくとも、周囲の話し声で声が聞き取りにくいということはないだろう。

  「――先程、会ったことがないかとおっしゃいましたね……」

  「何か……訳があるのでしょうか?」

  「もし差し支えなければ、教えていただけませんか?」

気にならないといえば嘘になる。
ただ、どうしても聞かなければならないということでもない。
もし彼女の気に障るようなら、これ以上は立ち入るつもりはない。

311ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』:2018/01/13(土) 01:36:25
>>310

「訳。うん、あるよ」

そういって自分は右の耳を触る。
三つのピアス。
それが癖になっている。

「デジャブって知ってる? 見たことがない事を見たことがあるように思うっていうか」

「未経験をすでに経験したことと思うって事」

既視感ともいうその概念。
自分がずっと苛まれる病気でもある。

「自分はデジャブをよく起こすんだ」

「で、なんでかなぁって悩んでる。それと自分の行いが経験したことなのか未経験なのか曖昧になっちゃったの」

「だから、確認ーみたいな?」

交流しないと事実がどうなのか確認が出来ないんだなぁ。

「あ。自分からも聞いていい? お姉さんはなんで喪服?」

312小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/01/13(土) 01:56:42
>>311

  「――そんなことが……」

デジャブというものは知っている。
自分も、時々そういったものを感じることはある。
しかし、そう頻繁に体験するというわけではない。

  「不思議……ですね」

ピアスに目をやりながら呟く。
初めて会った者同士が、こうして会話をしていることも、第三者から見れば不思議なことかもしれない。
そう考えてみると、この出会いも何か不思議なもののように感じられた。

  「私は……」

  「大切な人に……伝えるためです」

  「いつも想っている、と……」

おもむろに両手を胸の前に上げて、軽く握る。
左手の薬指と右手の薬指。
その二ヶ所に、同じデザインの銀の指輪が光っていた。

313ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』:2018/01/14(日) 00:31:35
>>312

「不思議だよねぇ」

困ったところだよ。

「んー!」

あらら、想い人ときたかい。
予想外、いや考えたら思いつくのかなぁ。
左右一緒の指に指輪か。
自分も指輪してるけど両の小指だからねぇ。

「いいじゃんねーそういうのも」

314小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/01/14(日) 01:01:25
>>313

  「……ええ、そうです」

呟くように言葉を告げて、自分の指輪に愛おしげな視線を向ける。
左手の指輪は自分のもの、右手は彼の形見だ。
少しして、また静かに両手を下ろして目の前の相手に向き直った。

  「デジャブ……私とも、どこかで会ったように感じていらっしゃったのでしょうか……」

  「もしよければ、ツクモさんのことをもう少し教えていただけませんか?」

  「もしかすると……気付かない内に、どこかで会っていたのかもしれませんから」

町の通りで擦れ違ったとか、たまたま同じ店の中にいたというようなこともあるかもしれない。
ただ、特に解き明かさなければならない問題というわけでもない。
このツクモという不思議な女性のことを、もう少し知りたくなったというのが正直なところだった。

315ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』:2018/01/14(日) 01:33:38
>>314

「そう。どこかで会った気がした」

「というか、この人の波もどこかで見た覚えがあって、どう動けば誰がどう動くかある程度見当ついてたというかー」

勿論、予想の通りに進むとは限らないけどねぇ。
裏返せばある程度は分かったうえで出来るってことかな。

「自分の事? うん、お姉さんがいいなら」

「えっと、何から話そうかな。何かある?」

316小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/01/14(日) 01:53:28
>>315

  「そうですね……」

そっと目を伏せて、少し考える。
何がいいだろうか。
話しやすいものがいいが、あまり踏み込みすぎるのも失礼に当たる。

  「――ツクモさんは、何がお好きですか?」

考えた結果、趣味というところに行き着いた。
不思議な雰囲気を漂わせている彼女は、何が好きなのだろう。

  「私は……森林浴をするのが好きです」

  「それから、庭の花壇でラベンダーの栽培を少し……」

  「木の匂いやラベンダーの香りに包まれていると、気分を落ち着かせてくれるので……」

317ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』:2018/01/14(日) 22:57:20
>>316

「好き、好きかー」

「……お姉さん、森林浴するんだね」

自分はそういうことはしないけど。
まぁでもお姉さんはイメージに合ってるかな?
マッチしてるかな? ベストマッチ、かな?

「自分はー実験? と、昼寝と散歩とー」

「可愛い子? 可愛い系は好き? 好き好き。うん、ほんとほんと」

318小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/01/15(月) 00:56:24
>>317

  「散歩は私も好きです」

  「自然公園の辺りには、よく……」

自分と共通する部分を見つけて、微笑みを浮かべる。
全く違うタイプのようでいて、実際は気の合う部分もあるのかもしれない。
もちろん、少し会話をしただけだけで、相手の人となりが分かるとも思っていない。
ただ、同じような部分が見つかると、ささやかな喜びはある。
それもまた確かなことだ。

  「……実験――」

  「なんだか……難しいことをなさっているのですね……」

自分とは縁遠い単語だ。
どんなものなのか、なんとなく想像はできる。
しかし、実際にどんなことをするのかは予想できない。

  「可愛い、ですか……」

その言葉を聞いて、少し考える。
何か、そこに力が篭っているような印象を受けた。

  「誰か……そういった方が身の回りにいらっしゃるのですか?」

319ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』:2018/01/15(月) 01:33:13
>>318

「いいよねぇ散歩」

「刺激的すぎない刺激ー」

もっとも、自分の場合は今みたいな簡単な実験をするつもりで散歩してたりもするけどね?

「そー実験。昔は先生になりたかったんだぁ」

「ってー今もかな」

諦めきれないとかじゃあないんだけどね。
そうありたい姿ではあるんだよね。

「可愛い……うん。いるよ」

「自分は可愛いものを身の回りに置くのが好きだよ」

「ほら、好きなブランドと近いかな。人間だからブランドってことはないんだけど」

320小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/01/15(月) 02:12:39
>>319

  「ええ、お気持ちは分かります」

自分も、この指輪を肌身離さず身につけている。
この世に二つとない、大切な形見の品だからだ。
形は違えど、大事なものを傍に置きたいという意味では似通った部分もある。

  「先生ということは……科学の先生ということでしょうか?」

  「そういったことについては心得がないので、私には想像もつきませんが……」

  「志を持っておられることは、素敵なことだと思います」

自分には、彼女のように何かになりたいという目標はない。
しいて言うなら、この命を全うすることくらいだ。
自分にとっては大きな困難を伴う願い。
時折、心が折れてしまいそうになることもある。
ただ、それでも成就したいという思いも持ち続けている。

  「もし、よければ――」

  「少し歩きながら、お話しの続きをしませんか?」

  「お互いに散歩が好きな者同士として、一緒にお散歩をさせていただきたいと思うのですが……」

  「――いかがでしょうか?」

履いている草履の先を静かに神社の外に向けて、穏やかな微笑と共に誘いの言葉を掛ける。
彼女が承諾してくれたなら、話の続きは歩きながら聞くことになるだろう。

321ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』:2018/01/15(月) 23:35:22
>>320

「素敵って言われるとむずがゆいなー」

「ま、ありがっとー」

なれるかな。
なれちゃうのかな。自分。

「一緒にお散歩? いいよー」

「断る理由、ないしね」

うんうん。これもまた経験だ。
これは経験した覚えがないから、一つ未知の道をすすめたね。
自分との関わりの中でこの人も変化したのかな。
そして自分自身も変化出来たのかな?
ま、どっちでも大丈夫だね。

「じゃ、行こっかーお姉さん!」

322小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/18(日) 22:41:08

                 コッ コッ コッ ……

黒いキャペリンハットに洋装の喪服と黒いパンプスという普段着の上に、ラベンダーを思わせる紫色のコートを着て、
夕日に染まる街を歩いている。
いくつかの店を回って買い物を済ませ、やがて帰宅の途に就いた。
街中の賑やかさから離れ、人通りの少ない閑静な通りに足を踏み入れる。

            ……ィ

   ――……?

その時、何か動物の鳴き声が聞こえたような気がした。
思わず足を止めて、その場で振り返る。
しかし、そこには何もいなかった。
聞き間違いだったのだろうか。
そう思い、再び正面に向き直る。

           ……ミィ

その時、また鳴き声が聞こえた。
今度は、先程よりもはっきりと、耳に届いた。
鳴き声に応えるように、おもむろに自身の頭上を仰ぎ見る。

  「――あっ……」

背の高い一本の街路樹。
その枝の上で、一匹の猫が不安げな声で鳴いていた。
自分は、その猫に見覚えがあった。
以前、星見横丁で見かけたことがあったのだ。
その時に一緒にいた少年は、この猫を『あい』と呼んでいたことを覚えている。

おそらくは、木に登った後で下りられなくなってしまったのだろう。
どうすれば無事に下ろしてあげられるのだろう。
夕暮れに照らされた通りに一人佇み、胸中で思案しながら、木の上を見つめている。

323アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/18(日) 22:50:19
>>322
「おねーさんどうしたの?」

少し離れたところから声をかけたのは、金髪碧眼の少女。
清月学園の中等部の制服を身に纏っている。

少女は街路樹のネコに気付いていないらしく、
何やら街路樹の前で空を曲げている女性を怪訝に思ったようだ。

324小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/18(日) 23:27:13
>>323

少女の声を聞き、そちらに顔を向ける。
その表情には、少し困ったような微笑が浮かんでいた。
少女に向かって、軽く頭を下げて挨拶する。

  「あの上に……猫がいるんです……」

  「ただ――自力で下りられなくなっているようなのです」

  「怪我をしない内に、下ろしてあげたいのですが……」

街路樹に猫がいることと、その状況を少女に告げる。
自分だけでは、この猫を下ろしてあげることは難しいだろう。
しかし、この少女も、力では自分と大きな違いはなさそうに思える。

やはり、誰か他に力のありそうな人を呼んでくるべきだろうか。
そんなことを考えながら、猫の様子を見守る。
目の前にいながら、不安そうに鳴いている猫を助けられないことを歯痒く思っていた。

325アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/18(日) 23:43:39
>>324
「え? あっ! ほんとだ!」

目の前の女性の言葉に、金髪碧眼の少女──アンジェは得心する。
確かに、ネコが降りられなくなっている。これは大変だ。

「助けてあげないと……ちょっと待ってね〜……」

事態を認識したアンジェはそう言って、
猫のいる街路樹の下に駆け寄る。
どうやら、ここで助けるつもりらしい。
木でも登る気なのか、と思いきや──

          ズッ

と、少女の身体から乖離するように、
夕焼けのような輝きを秘めた
屈強な肉体を持つ羊角の人型が現れる。
強靭そうな肉体とは裏腹に、その恰好は燕尾服。
何かミスマッチなかみ合わせだった。

    『フゥッ……』  ズオオ

現れた人型スタンド──『シェパーズ・ディライト』は、
一跳びに跳躍すると、猫の腹を両手で挟んで捕獲する。
高速かつ精密な動き……メタ的に言うとス精BBくらいだった。

なお、アンジェはこの間両手を上げて『おいでおいで〜』とやっている。
おそらく、このままスタンドを戻して
『声に反応して降りたネコを抱きかかえました』というポーズにするつもりなのだろう。

326小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/19(月) 00:05:37
>>325

  「――……!」

まず、街路樹に駆け寄る少女を見た。
続いて、彼女が発現した、角を持つ屈強な人型スタンドを目視した。
予想していなかった光景を目の当たりにして、その表情に驚きの色が現れる。

  「……ありがとうございます」

深く頭を下げると共に、少女に感謝の言葉を述べる。
やがて、少女を見つめる視線が、その傍らに立つ少女のスタンドへ移る。
その様子を見れば、スタンドが見えていることは一目瞭然だろう。

  「――良かった……」

まもなく、小さな声で安堵の呟きを発しながら、少女のスタンドによって助けられた猫に視線を移した。
本当に無事で良かった。
思いがけずスタンドを目撃した驚きよりも、今は猫が無事だったことを喜ぶ気持ちの方が大きかった。

327アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/19(月) 00:15:50
>>326
アンジェはというと気づかれたとは毛頭思っていないようで、
スタンドから渡された猫を抱きかかえたまま、小石川の方へと向き直った。

「うん、ほんとによかったね!
 この子も怪我とかしてないみたいだし!」

破顔一笑して、それからアンジェは気付いた。
目の前の女性の視線が、自分ではなくスタンドに向けられていたことに。
その視線はすぐ助けられた猫の方へと映ったが、まぁ流石に分かる。

「えーと……」

『スタンド使いなんだ?』と聞きたい好奇心はもちろんあるが、
それより先に、まずは猫の方をどうにかせねばなるまい。
つたない頭脳でそう計算を弾き出したアンジェは、
傍らに立つ夕焼け色の屈強な戦士と一緒に小首を傾げた。

「このネコ、お姉さんのネコ?」

328小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/19(月) 00:36:27
>>327

  「いえ――私の猫ではありません……」

  「野良猫ですが、以前に見かけたことがあるんです」

  「その猫を私よりも前から知っていた私の知人は、『あい』と呼んでいました」

そう言って、少女に対して穏やかな微笑みを向ける。
そして、スタンドに抱き抱えられている猫を見つめた。
猫は、スタンドの腕の中で体を捩っていた。
もしかすると、下ろして欲しいのかもしれない。
木上から助けられた今、このまま離してしまっても問題はないだろう。

  「もう大丈夫なようですね」

  「――下ろしてみていただけますか?」

少女に猫の様子を伝え、猫を地上に下ろすように頼む。
その後は、おそらく自分の居場所へ帰っていくのだろう。
人間に居場所があるように、彼らにも居場所はあるのだろうから。

329アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/19(月) 00:43:24
>>328
「へぇー……」

野良猫、との言葉にぽけーと頷き、
それから猫を下してやる。
「あいちゃんじゃあねー」なんて言いつつ見送ると、

「──でも、わたしはびっくりしたよ!
 まさかこんなところでスタンド使いと会うなんて!」

言いながら、彼女の身体に溶け込むように、
『シェパーズ・ディライト』は消えていく。

ちなみにアンジェは以前の邂逅で
『ものを運ぶのが苦手なスタンド使いもいる』と
知ったので、目の前の女性もまぁそうなんだろうなと思っている。

330小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/19(月) 02:54:47
>>329

  「――さようなら……」

少女と同じように、立ち去ろうとする猫に別れの言葉を掛ける。
それらの呼び声に反応したのか、猫は一度だけ振り返り、小さな声で鳴いた。
そして、そのまま通りを歩いていく。
明るい夕焼けの中に、しなやかな猫のシルエットが浮かんでいる。
その姿は徐々に小さくなり、やがて見えなくなった。

  「私も驚きました」

  「それに、あんなにも力強いスタンドは見たことがなかったので……」

今しがた目にしたスタンド――『シェパーズ・ディライト』を思い出す。
自分も、それほど多くのスタンドを見てきたわけではない。
それでも、目の前にいる少女のスタンドからは、ほとんど出会ったことがないくらいの力強さを感じた。

  「私の『スーサイド・ライフ』では、あの猫を助けることはできなかったと思います」

  「この場に、あなたがいてくれたことは、本当に幸運でした」

『スーサイド・ライフ』は、自身の肉体を切り離すことによって遠隔操作を可能とするナイフのスタンド。
         パーツ
切り離された『部位』は非力であり、能力を持たない者にも視認できる。
猫をしっかりと捕まえられたかは分からないし、そもそも猫を驚かせてしまう。
助けるどころか、木から転落させてしまうことも考えられる。
そうしたことを考えると、自分のスタンド能力では木から下りられなくなった猫を助けることは難しかっただろう。

331アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/19(月) 23:31:37
>>330
「それほどでもある!」

小石川の言葉に、アンジェは衒った様子もなく素直に頷いた。
元より謙遜とか気遣いとかができるタイプではないのだ。

「ふふん。わたしの『シェパーズ・ディライト』は力持ちだし
 すばしっこいし起用だしでけっこうなんでもできるんだよね。
 できないことなんて遠くのリモコンを取って来るくらい……」

普段のスタンドの使い方がよく分かるセリフである。

「ただ、あの猫はけっこうギリギリだったかな……。
 距離的に、あと少し高いところにいたら届かなかったかも」

パワーとスピード、そして精密性の代償として、
『シェパーズ・ディライト』は射程がとても短い。
意外とギリギリの勝負だったらしい。

「ちなみに、そんなこと言うお姉さんのスタンド能力ってなんなのさ? 拳銃とか??」

知り合いに拳銃の能力を使うスタンド使い(蓮華)がいるのだ。
とはいえヴィジョンだけで、詳しい能力など知らないのだが――
アンジェにとっては自分以外に知っている唯一のスタンドなので印象が強い。

332小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/20(火) 00:24:43
>>331

  「私のスタンドは、遠くにあるものを持ってくるには、とても便利ですよ」

スタンドの活用について話す少女に対し、帽子の陰でくすりと笑いながら答える。
ただ、実際に遠くのものを持ってくるためだけにスタンドを使うことはしていない。
元々、普段の生活の中ではスタンドを使ってはいなかった。
日常で使う機会がないというのもあるが、できればあまり使いたくないとも思っている。
もし使うことがあるとすれば、それは必要に迫られた時だけだ。

  「――拳銃……ですか……?」

耳慣れない言葉を聞いて、思わず同じ言葉を繰り返してしまった。
普通は、テレビや映画の中くらいでしか目にすることのない道具だろう。
それでも、それがスタンドならば、そういった形のものがあっても不思議ではないと思い直した。

  「私のスタンドは――」

静かに左手を持ち上げて、胸元にかざす。
その手を軽く握り、見えない何かを持つような形を作った。
静かに目を閉じて、意識を集中する。

       スラァァァァァ――――z____

一瞬の間を置いて、先程まで空だった左手の内に、スタンドのヴィジョンが姿を現した。
それは、一振りの『ナイフ』だ。
まもなく、閉じていた目を再び開く。

  「『スーサイド・ライフ』――これが、私のスタンドです……」

燃えるような夕日が、『スーサイド・ライフ』を照らしている。
鋭利な刃は、金属質の鈍い輝きを放っていた。
その輝きからは、切れ味の鋭さが窺い知れるだろう。

333アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/20(火) 00:30:37
>>332
「わっ! きれい!」

突如小石川の手の中に現れたナイフに、アンジェは目を輝かせた。
夕日色を照り返すそれを見ながら、

「やっぱり『スタンド』って道具とか武器とかの方が
 多いのかな〜……? わたしのはなんで人なんだろう」

と、刃に映る自分とにらめっこをするみたいに
まじまじと『スーサイド・ライフ』を見つめていた。
その表情に、鋭利な刃物に対する警戒の色はない。
対抗できる──とかではなく、単純に思考が平和なのだろう。

「なんか、人によって色々な形があるって不思議だよねぇ」

334小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/20(火) 01:06:32
>>333

  「本来、スタンドというのは、人の形をしていることが多いようです」

  「私も、そんなに沢山のスタンドを見ているわけではないので、はっきりとは言えませんが……」

そう言った後で、手の中にある『スーサイド・ライフ』を解除する。
今は特に使う必要もない。
それに、スタンドとはいえ人前で刃物を持ったままでいるというのは礼儀に反する。

  「そうですね……」

  「人がそれぞれ違った姿をしているのと同じように、
   それぞれが違った心を持っているということなのでしょうか……」

  「たとえば――あなたと私がそうであるように……」

『スーサイド・ライフ』の能力は、本体の『自傷』によって発動する。
スタンドが精神の現れであるなら、これほど自分に相応しいものはないと感じる。
私自身が、自傷行為という鎮静剤なしでは生きられない人間なのだから。
ほんの一瞬、表情に暗い陰が入り交じる。
それでも、すぐに気を取り直し、再び口元に微笑を浮かべた。

  「私は、小石川文子という者です」

  「もしよろしければ……出会いの記念に、あなたのお名前を教えていただけませんか?」

335アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/20(火) 23:02:34
>>334
「なるほど……確かに、わたしとアナタは違うね……」

分かったんだか分かってないんだか、
とりあえず分かった気ではいそうな神妙な面持ちで頷くアンジェ。

「──よろしく文子! わたしはアンジェ!
 アンジェリカ・マームズベリーだよ!」

一瞬小石川に浮かんだ暗い色の表情には気づかず、
アンジェはにっこりと笑って手を差し出した。
握手がしたい……ということなのだろう。

控えめな小石川の態度に対し、アンジェの態度は
かなり遠慮を知らないグイグイっぷりである。
こういうお国柄なのかもしれないが。

336小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/21(水) 01:37:52
>>335

日本人だからという理由だけではなく、自分は元々あまり積極的ではない性格だった。
しかし、表情に困惑の色はない。
この異国の少女は、自分にはない明るさを持っている。
こうした無邪気な輝きに触れることは、自分にとっても好ましいことだと思う。
ふとしたきっかけで悲観的になってしまいがちな自分の心を励まし、勇気付けてもらえる気がするから。

  「アンジェリカさん……ですね」

  「――よろしくお願いします」

アンジェが右手を差し出したのなら右手を、左手を差し出していれば左手で握手に応じる。
どちらの場合でも、共通していることが一つあった。
薬指に光るものがある。
飾り気のないシンプルな銀の指輪だ。
それは通常であれば左手だけにはめられる類のものだが、その指輪は両手の薬指にはめられている。

  「アンジェリカさんは、清月学園に通っていらっしゃるんですか?」

  「その制服を着た生徒さん達を、何度か見かけたことがあったので……」

彼女が身に着けているのは清月学園の制服だ。
しかし、一般の生徒という感じには見えない。
見たところ、留学生なのだろうか。

337アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/22(木) 21:21:49
>>336
「アンジェでいいよ! みんなそう呼ぶし」

やはり全体的に距離感の近い少女である。
ちなみに、握手は左手でしていた。利き手が左なのかもしれない。

(あ……結婚してるんだ)

なので薬指の指輪を見てそう理解するが、
だからといって『既婚者なんですね!』と言うほどアンジェの距離感は近くはなかった。

「うん! あ、ちなみに。わたしは去年の九月から日本に来てね。
 清月学園にはその頃から通い始めたよ。『ムシャシュギョー』中なんだ」

よく分からない説明だが、おおよそ『留学生』という認識で間違いないだろう。
九月という『日本の基準』では中途半端な編入時期は──
おそらく、彼女の故国での新学期に合わせた、という形だと思われる。

「あ、『ムシャシュギョー』って言うのはね。わたしもともと
 ケンシキ? を広めるためにこっちに来たんだけど、
 日本ではそういうのを『ムシャシュギョー』って言うらしくってね〜」

聞かれてもいないことをぺらぺら話し始めた。

338小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/22(木) 22:31:20
>>337

  「分かりました。それでは、アンジェさんと呼ばせていただきます」

最初に断りを入れてから、少女に対する呼び方を訂正する。
それでも、控えめな態度は変わらない。
元々の気質であるので、こればかりは変えようがなかった。

  「――見識を……。それは、とても立派なことだと思います」

  「この国での――この町での、あなたの『武者修行』が実りあるものとなるよう、陰ながらお祈りしています」

  「アンジェさんのような行動力を、私も見習わなければいけませんね」

そう言って、くすりと笑う。
慎ましく、穏やかな微笑みだった。
その表情は、この出会いにささやかな喜びを感じていることを裏付けていた。

      スッ

ふと顔を上げると、夕日が沈みかけているのが目に入る。
思いの他、長く話していたようだ。
楽しい時間は早く過ぎるということかもしれない。

  「――ごめんなさい。すっかり話し込んでしまって……」

  「アンジェさん、またどこかでお会いしましょう」

丁寧に頭を下げ、別れの挨拶を告げてから、自宅に向かって通りを歩き始める。
誰にも帰る場所はある。
それは、このアンジェという少女にもあるだろうし、おそらく野良猫のあいにもあるのだろう。
そして、私にも帰るべき場所がある。
たとえ、そこに誰も待っていないとしても、それでもそこは私と『彼』の場所なのだから。

339美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/01(日) 23:47:39
      
               ――夕方 星見町内ラジオ局――

   「――さてさて、今日もこの時間がやって参りました!皆様いかがお過ごしでしょうか?」

     「いつものように、パーソナリティーはワタクシこと『美作くるみ』でお送りします」

   「今週のテーマは『ドキッとしたこと』!
    リスナーの皆さんからの『私のドキッとしたこと』をお待ちしてますッ。
    採用された方には、コンビニ各社で使える番組特製クオカードを差し上げちゃいまぁす」

   「ちなみに、くるみの『ドキッとしたこと』は――あれは二年くらい前になりますかねえ。
    買い物してたんですね。大きなスーパーで」

   「その時、一緒にいた男友達が、何も言わずに重い荷物を持ってくれたんですよ。
    で、私は『いや、自分で持つからいいよ』って言ったんです」

   「そしたら、『じゃ、お前はこれを持っとけ』って言われて、彼が手を握ってきたんですよ。
    うっわキザだなあと思ったんですけど、あの時は不覚にも『ドキッ』としちゃいましたねえ」

   「でも、ここからが肝心なんですけど、その『ドキッとした話』を、女友達にしたんですね。
    この前こんなことあったんだけどっていう軽い感じで。
    そしたら、その友達が『え、ちょっと待って。私も同じことされたんだけど』って言い出したんですよ!」

   「つまり、ただの『チャラ男』だったってことなんですよね。これはですね、『ときめき損』ですね。
    私の『ドキッ』を返せ!と声を大にして言いたい瞬間でした!」

   「――さて、私が男運の悪さを披露したところで、リスナーの方(>>340)と電話が繋がったようです。
    はいもしもし、こちら美作くるみでございます」

340鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/04/02(月) 00:12:30
>>339

「あ。え、えーっと鈴元涼いいますぅ」

「美作さん? で、ええんよね?」

京ことばのイントネーションが混じった若い男の声だ。

341美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/02(月) 00:40:18
>>340

   「――鈴元さん、ですねえ?こんにちは!」

   「もしかして、ご出身は京都の方でしょうか?
   私もあんまり詳しくないんですけど、話し方がそんな風だったので
   京都の言葉って上品で素敵ですよねえ」

   「京都は場所もいいですよね。
    私も何回か旅行したことあるんですけど、なんていうかそこだけ別世界って感じで、
    日常から離れるにはうってつけですよねえ」

   「っと、ごめんなさい。話が反れちゃいましたね。
    お電話してくださったということは、何か『ドキッとしたこと』があったということでしょうか?」

342鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/04/02(月) 01:35:07
>>341

「いや、上品やなんてそんな……」

照れているのか言葉が濁る。

「でもテレビとかラジオの人とかきれぇに話しはるやろ?」

「僕はそっちの方がすごいって思うんよ」

「で、えーっとそうなんよ。うちの学校で」

343美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/02(月) 01:57:31
>>342

自分は、こうして日々多くのリスナーと話している。
しかし、こういったタイプは、あまり出会ったことがなかった。
言葉には出さないが、心の中では新鮮さを感じていた。

   「いやあ、ありがとうございます。
    そう言ってもらえると、私もこうしてお喋りしてる甲斐がありますねえ」

   「――ねえ、ディレクター?今、向こうで笑ってますけども」

   「なるほど、学校で――?」

おそらくは京都方面の出身。
そして学校ということは学生だろう。
果たして、どんな話をしてくれるのだろうか?

344鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/04/02(月) 02:21:48
>>343

「ん? 笑ってはるの? 僕なんか変な事言うたやろか?」

「あ、えっと、それでな」

ちょっとの間。
少し思い出して頭の中で整理。

「僕散歩が好きなんよ。引っ越して京都離れてな、地元……今はこっちが地元みたいなもんやねんけど」

「そんで、その日はガッコを散歩しようと思って」

「ほら、ガッコって僕ら毎日のように通ってるけど、授業の関係で使わん教室とかあらはるやろ?」

「そういうの見てみようと思って……ほんで、散歩してたら見てもうて」

345美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/02(月) 02:48:35
>>344

   「そういう訳じゃなくってね、彼も喜んでるってこと。
    だから、ディレクターの分まで、私がお礼を言っておきます。どうもありがとう」

そう言いながら、軽く頭を下げる。
もちろん電話では伝わらないが、こういうのは気持ちの問題だ。
ブースの外側では、ディレクターが片手を上げて同意の意思表示をしている。

   「ああ、言われてみたら確かに。一回も入らないまま卒業しちゃう部屋とか結構あるものね。
    こういうの灯台下暗しっていうのかな」

   「鈴元さんは、そこへ行って何かを見ちゃったってわけね。
    それで、そこには何がいたのかしら?
    なんだか怪談みたいね」

喋っている内に、やや砕けた口調に変わっていく。
それが自分のいつものスタイルだ。
少年が見たものはなんなのだろう?
本当に幽霊か何かでも現れたのだろうか。
怖い話をテーマにするには、まだ早い時期だけど。

346鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/04/02(月) 23:08:30
>>345

「あぁそうなんや。よかった」

変な事を言ったわけではないという事に胸を撫でおろす。
電話の向こうの相手には分からないことだが、声色は安心した色だ。

「そうなんよ。別館っていうんやろか? 旧校舎……やったら怪談にぴったりやったかもしれんけど」

「ようは実験室とか視聴覚室。そういう教室って、普段使ってる教室にはあんまりないやろ?」

だから座学の場合でも理科の実験などは教室を移動する必要がある。
そういう棟は使う機会が少ないので行く回数も自ずと少なくなる。

「やから、そっちの方に言ったんよ」

「で、その……音楽室の近く行ったら吹奏楽部が練習してて……」

「そこを通り過ぎて音楽準備室……で、あれと遭遇して……」

「なんていうんやろ、カップル? や、アベック? に。遭遇って言っても僕は廊下、向こうさんは準備室の中やけど」

347美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/02(月) 23:39:04
>>346

   「ああ、なるほどね。そういう教室って行く機会が少ないものね。
    科学部とか、その教室に関係するような部活をやってれば行くかもしれないけど。
    特別教室って、変わった道具があったりして興味を引かれるわよねえ」

――部活動、か。
そういえば私は入ってなかったなあ。
中学高校時代はアイドルの活動が忙しかったから、学校の出席日数もギリギリだったっけ。
考えてみれば、普通の学校生活っていうのを謳歌できてなかったかもしれない。
改めて思い直すと、そういう生活が眩しく思えてくる。

   「あらら?つまりロマンスの現場に遭遇しちゃったわけね。
    もし気付かれちゃったりしたら気まずいわよねえ」
 
   「それで、鈴元さんはどうしたのかしら?
    私だったら、こっそり見ちゃいそうだけど」

学校での甘い一時――羨ましい話だ。
アイドルという立場上、自分は恋愛もできなかった。
そもそも、恋をする暇もなかった。
当時の私は周囲から見れば羨望の対象だったのかもしれない。
今になってそれが逆転するというのは皮肉な話だ。

348鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/04/02(月) 23:50:50
>>347

「そう。やから、そっちの方行ってもうて」

行ってしまったという表現になるのは無意識のうちにマイナス意識が働いているのだろうか。

「うん……ロマンス」

「あんまり、褒められたことやないんやけど……見ててん……そういうの、その、や、ちゃうの、えっと、やめとくわ……」

何か言おうとしてやめる。
顔から火が出そうだ。思い出すだけで心臓がどくどくと速くなる。

「あの、そんで……その二人の片方。クラスメイトやって。なんていうんやろ、あんまり目立たへんっていうかそういう感じの子」

「僕もそういう感じやからよう覚えとって……向こうさんはそう思ってへんとは思うけど」

「やから、なんか、すごい意識してもうて……」

歯切れが悪い。
一つ一つ確認する様に話していく。

「向こうさん、こっち気付いてへんくて。そらそうやんね。だって隣は吹奏楽部、練習してるし。音とかじゃ気付かへんし」

「……ほんなら何で盛り上がったんか、急に二人こう、ぎゅーってして……ちゅーしはってん……」

「僕見たアカンって思うたんやけど見てもうて……もう、ドキーってしてもうたんよ」

349美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/03(火) 00:26:25
>>348

何か言いかけたことに対しては突っ込まない。
大体の内容は想像できる。
それに、電話の向こうにいるリスナーを尊重するのがパーソナリティーというものだ。

   「大人しいようでいて、結構大胆な子だったってことかしら?
    それは意外な一面ねえ。
    誰にでもそういう部分はあるかもしれないけど、実際に目の前で見ちゃうと驚くわよねえ」

   「隣に人がいるのは分かってたわけだし、急にってことは、気分が盛り上がっちゃったのかしらね?
    うん、確かに私もそういうことがあるわ。
    といっても、私は男運が悪いから、ロマンスのことじゃないんだけど」

   「後で考えてみると、『なんでこんなものを買っちゃったんだろう』って思うものを買ってきちゃったりとか。
    衝動的にっていうか。感覚でいうと、そういうものに近いかもしれないわね」

この手の恋愛話には、自分も人並みの興味は持っている。
最近は仕事のことばかりで、そういった話とはご無沙汰だ。
私も抱き合ってキスできる恋人が欲しい――なあんてことを、ふと考えてしまう。

   「思いがけずに遭遇した校内のロマンス。
    ふふ、それが鈴元さんの『ドキッとしたこと』なわけね。
    どうも、ありがとう」

この辺りで話も終わりだろうか。
そう考えて、最後のまとめに入っていく。
何事もなければ、もうちょっとでこの通話を終えることになるだろう。

   「ところで、その後は二人に見つからずに無事にその場から離れられたのかしら?」

最後に一つの質問を投げかける。
これは、個人的な興味もあった。
仕事に私情を挟むのは良くないが、これくらいは許されるだろう。

350鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2018/04/03(火) 01:03:47
>>349

「ほんまに驚いて驚いて……はぁ……いま思い出しただけでもドキドキするわぁ」

ため息も出る。
心臓に悪い経験だったのだろう。

「うん。意外やった……失礼な言い方かもしれんけど、ほんまに」

「……あの、ラジオ聞いてる印象やけど美作さん、エエ人やから」

「きっと、エエ人見つかると思う。あ、その、これはナンパとかやなくて……あぁ、えっと……」

自分で言って自分で慌てて。
そういう独り相撲だ。

「……実ははよのかなと思ってそこから動こうとした時、目がおうてん」

「女の人の方。うっとこ、一貫校やねんけど高校生の人」

「こっち見て、笑って……ほんでなんか言ってん。もちろん、声には出してへんかったよ」

もし出していたら男子生徒に気付かれていただろうから。

「何言ったかは分からへん。僕、そのあとすぐ走って逃げたから」

「そういうお話でした……聞いてくれて。おおきにはばかりさん」

351美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/04/03(火) 02:02:30
>>350

   「ふふ、ありがとう。
    でも、そんなこと言われたら、調子に乗っちゃうわよ。
    この場を借りて、どこかにいい人がいないか募集でもしましょうかね?あ、ダメ?」

   「残念ながら番組の私物化はNGということで、ね。
    潔く自分で探すことにしましょうか。
    その代わり、ディレクターもいい人がいたら紹介してくださいよ?」

もちろん冗談だ。
まあ、全部が冗談かというと微妙なところだけど。
今のところそこまで飢えてはいないけど、いい人が見つかればいいなというのは本当だから。

   「ふむ、気になるわねえ。その子が何を言ったのか……。
    でも、笑ってたってことは、怒ってたわけじゃないみたいね。
    照れ隠しという感じでもないようだし……」

   「ロマンスは一種のミステリー。それにまつわる人達も謎のベールに包まれてるってところかしら。
    とても興味深いお話だったわ」

マイクを前にして、うんうんと頷く。
実際のところ、何を言ったのかは気になる。
しばらく頭の片隅に残りそうだ。

   「どうもありがとう。
    鈴元さんからいただいた『ドキッとしたこと』でした!
    聞いてる私も思わず『ドキッ』としちゃうようなお話でしたねえ」

   「お話してくださった鈴元さんには、番組特製クオカードを差し上げます!
    のちほど番組から折り返し電話させていただきますので、その際に送り先をお伝え下さい」

   「今日は本当にありがとうねえ、鈴元さん。またいつかお話しましょう!
    番組の方も引き続き応援よろしくね」

    「――それじゃ、またいつか!」

そう言って、通話を終了する。
『またいつか』というのは、自分の好きなフレーズだった。
一度だけの邂逅かもしれないが、もしかすると次もあるかもしれないからだ。
一人一人のリスナーを大事にしたいという思いが、自分の中にはある。
応援してくれる人を大切に思う気持ちは、アイドルだった時も、パーソナリティーである今も変わらない。

    ――後日、少年の下にコンビニ全店で使える番組特製クオカード(500円分)が届けられた。
       メッセージカードが同封されている。
       『いつかお互いに、いい人見つけようね!by美作くるみ』


鈴元 涼『ザ・ギャザリング』→『500円分クオカード』Get!!

352美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/05/28(月) 23:38:05

ラジオのスイッチを入れれば、その声が聞こえてくるだろう。
今この時、この町のどこかで、誰かがそれを聴いているはずだ。
それが誰なのかは分からない。
でも、聴いてくれる誰かのために、私は今日も声を届ける。

「今日も、あなたの隣に『電気カナリア』の囀りを――」

その言葉が、始まりの合図。
軽快だけど、派手になりすぎない音楽が鳴り始める。
今からが『私の時間』だ。

「『Electric Canary Garden』――
 パーソナリティーは、この私『カナリアボイス』こと『美作くるみ』がお送りしまぁす!」

「実を言うと、今朝ちょっとした事件が起きたの。
 起きたら、私のスマホがなくなってたのよ」

「あちこち探しても見つからなくて。
 で、ノド乾いたから何か飲もうと思って冷蔵庫を開けたのね」

「そしたら、なんと!冷蔵庫の中にスマホが置いてあったのよ!
 いい感じに冷えて、ヒンヤリしちゃってたわ。
 それを見て『え!?なんで!?』って思って、ちょっと考えたの」

「それで思い出したんだけど、昨日の夜、私ノド乾いちゃって一回起きてたの。
 今朝と同じように何か飲もうと思って、冷蔵庫を開けたのよ。
 片手には、ついでにチェックしてたスマホを持ったままでね」

「その時、私まだ半分くらい寝てる状態で。
 ねぼけながら飲み物を飲んで、それを冷蔵庫に戻す時、スマホも一緒に置いちゃってたのよねえ。
 それに気付かないまま、また寝ちゃってたってわけ」

「ホントに、ねぼけてる時って、とんでもないことしちゃうわよねえ。
 うっかり入れたのが『冷凍庫』の中じゃなくて良かったわぁ。
 みんなも気をつけようね!くるみとの約束よ!」

「――と、まあ私の恥をさらして場が和んだところで……今回のテーマは『私の失敗したこと』!
 『あー、やっちゃったわあ〜』っていう、あなたの体験談をお待ちしてまぁす!
 採用された方には、全国のコンビニで使える番組のロゴ入り特製クオカードを差し上げちゃいます!」

「おっと、早速リスナーの方(>>353)とお電話が繋がったようです。
 もしもし?こちらは『カナリアボイス』こと『美作くるみ』でございまぁす」

353溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2018/05/31(木) 00:09:33
>>352

       「――――あ、もしもしィ?」

            「これ通じてる?」

                「緊張するなァ」「ハハハ」

緊張するから電話が嫌いって人、いるよね。
普通は見えてるはずの相手の顔が見えていなくて、細かいニュアンスにも気をつけなきゃいけないからか……
……実際、僕の職場でも『怖くて電話を取りたくない』ってコがいるしねぇ。
職場の電話ともなると責任もついて回るし、不安ってのもまぁわからんでもない話だ。

    「いつもラジオ聞いてます、『TK』で〜す」

―――ま、僕は割と気にしないタイプで、だからこうして贔屓のラジオに電話かけてみたりしてるわけだけども。

354美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/05/31(木) 00:52:14
>>353

「はいはい、ちゃぁんと通じてますよぉ〜。
 お電話ありがとうございます!」

顔の見えない相手との会話。
電話というのは普通そういうもの。
最近ではテレビ電話というのもあるけれど、ラジオというのは声を届けるものだ。
だから、ここで交わされる会話も声だけのやり取り。
もっとも、私の顔は番組の公式サイトに掲載されているので、知っている人は知っているだろう。

「はぁい、『TK』さんですね!いつも聴いてくださってありがとうございまぁす!
 その言葉をいただけることが何よりも嬉しいことですからねぇ〜。
 
「この番組やってて良かった〜って思える瞬間ですねえ。
 これからも、どうぞ応援よろしくお願いしますっ!」

リスナーから貰える応援の言葉。
それは私にとって一番嬉しいものだ。
別の言い方をすると、『やり甲斐』と呼んでもいいだろう。
聴いてくれる人から私が元気を貰い、私の声でリスナーを少しでも元気にしたい。
大袈裟かもしれないけど、なんというか、そういう『良い循環』を作っていきたいと思っている。

「さてさて、今回は『私の失敗したこと』というテーマでお送りしています」

「早速ですが、『TK』さんの『失敗したこと』をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

355溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2018/05/31(木) 01:15:18
>>354

   「もちろん、これからも応援させてもらうよー」

実際のとこ、欠かさず聞いてるってほどではないんだけどね。
それでもまぁ、気付けば聞く程度には『お気に入り』だ。

    「で、うん」
           「『失敗談』ね、『失敗談』」

  「さっきのくるみさんの『スマホ冷蔵事件』ほど愉快な話じゃないんだけどサァ」

少し茶化すように言ってから、僕は本題を切り出した。

     「こないだね?」「『ソファ』買ったんだよ」

         「結構オシャレな奴……『デパート』でいいの見つけてさ」

       「思わず買っちゃったワケ」

356美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/05/31(木) 01:41:44
>>355

「アハハハ。いやぁ〜気をつけないといけませんねぇ〜。
 でも、これからの季節はヒンヤリしてるのも悪くないかもしれませんねぇ」

冗談めかして明るく笑う。
私の声は、大人っぽいというほどしっとりはしていない。
かといって、学生みたいに賑やかな声でもない。
丁度その中間辺りといった感じ。
実際のところ、年齢もその辺りなのだ。

「『ソファ』ですか。いいですねえ。
 私も輸入品の家具とか見るのが好きなんですよぉ」

「でも、結構お高いものが多くて、なかなか買うのは難しいですねえ。
 買おうとしたら、『ゼロ』が一つ多かったりとか……。
 最近は、見て満足しちゃうことも多かったり――」

「さてさて、ソファを買った『TK』さんの身に何が起こったのでしょうか?
 気になりますねぇ〜」

357溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2018/05/31(木) 02:04:16
>>356

          「そーなんだよね」

   「僕も輸入品好きでサァ」「『エスニック系』のソファだったんだけど」

      「たまたま安くてさ。気に入って買っちゃたワケ」

ああいうの、風情があっていいよね。
お金に余裕があったら、『トルコランプ』とかもつけてみたいとこだけど。

  「で……その日は『車』ってわけでもなかったし、『お届け』してもらうじゃん?」

       「『土曜朝指定』だったんだけど……結構遠かったんだよね、日付」

    「なんか運送屋の都合とかで。仕方ないんだけどさ」

         「それで僕すっかり忘れちゃってて、前日に『徹夜』しちゃったんだよ」

      「そろそろ寝よっかな、って頃に業者来ちゃってさー……」

   「もー受け取る時眠いのなんのって……受け取った直後に寝たね。新品のソファで」

自分が悪いとはいえ、あれはかなり堪えたね。
正直半分寝たたからね、僕。
その時の記憶、相当曖昧だからね。
―――――おっと、もちろん話はここで終わりじゃないぜ。
ここでオチだと、流石に弱すぎる。

358美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/05/31(木) 02:31:40
>>357

「はいはい、確かにありますよねよぇ、そういうコト。
 私も経験したことありますよぉ」

「自分で注文したものが忘れた頃にやって来て、『え?何?』って感じで。
 伝票見て『あぁ〜』って納得するんですよねえ。

「そういうのって『自分へのサプライズ』みたいなところがありますねえ。
 『自分へのご褒美』じゃないですけど」 

「でも、あんまり待ってる時間が長すぎると、
 『最初はワクワクしてたけど届く頃には冷静になっちゃってる』ってことも、たまにありますねぇ。
 衝動買いした時なんか、そのパターンになりがちですねえ」

「さて、受け取り直後に眠ってしまった『TK』さん。
 果たして、『TK』さんの失敗談も、くるみと同じ『ねぼけ系』なんでしょうか?
 これは、さすがの私も想像がつきませんねぇ」

話の流れからして、これで終わりとは思っていなかった。
この後に、何が起こったのだろうか?
実際のところ、予想がつかない。
元々、人の話に耳を傾けるのは好きなのだ。
パーソナリティーとして話を盛り上げるのは勿論だが、聞き手としても続きが気になっていた。

359溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2018/05/31(木) 03:44:03
>>358

    「ま、この時は嬉しいとか以前に『眠い』って気持ちがメチャクチャに強かったからねぇ」

  「正直なんも考えられなかったよ」「寝心地は良かったけどね」

いいソファ買ったなって、正直今でも思ってる。

     「んで、『寝ぼけ系』っちゃ『寝ぼけ系』なんだけど……」

        「夕方ぐらいに起きたらさ」


      「――――――――リビングのドアが『無い』の」


    「……実はソファが結構大きくて、部屋に入れる時に一回扉外したんだよね」

          「そしたら業者さんが間違えて持って帰っちゃったみたいでさぁ」

        「僕それ眠かったせいで全然気づかないでスルーしちゃったんだよ」

   「『リビングのドア』なんて無くてもそこまで困るもんじゃないんだけど、あれは焦ったね……」

物凄い絶妙な気持ち悪さがあるんだよね。
あるべき場所にあるべきものが無いっていうの、すごく気持ち悪いよあれ。

360美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/05/31(木) 17:28:42
>>353

「ワァオ、それはまた凄いお話ですねぇ。
 初めて聞きましたよ〜。『起きてみたらドアがなくなってた』なんて。
 『なんのドッキリか』って感じですよねえ」

「もう呆然としちゃうでしょうねえ。
 話の前の部分を聞いてなかったら、ドアが『自分から動いて出て行った』のかと思うところでしたよぉ〜。
 なにしろ『リビング(生きている)ドア』なんていうくらいですからねえ」

「『TK』さんのお話で思い出したんですけど、ソファ関連のトラブルは私も覚えがあって。
 『ここに置こう!』って決めてた場所があったんですよ。壁際なんですけど。
 でも、買ってきたら、その位置に収まらなくて」

「だからって他の家具の位置を変えると全体のコーディネートが崩れるから、
 仕方なく部屋の真ん中に置いてますね〜。
 でも、これが案外使い勝手が良くって……」

「おっとっとっ、話が逸れてしまいました。
 だけど、『TK』さんのお話のインパクトには適いませんねえ〜。
 なにせ、『ドアがない』んですからねぇ」

「さて、不幸なすれ違いで旅立ってしまった『リビングドアちゃん』。
その後、無事に『TK』さんの下に戻ってきてくれたんでしょうか?
 『今はお店に並んでる』――なぁんてことになってないといいんですが!」

361溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2018/05/31(木) 23:54:10
>>360

   「あっはっは!」

        「ドアが勝手に歩き出したら、それはそれで面白かったけど」

    「言う事聞いてくれればさらによし、だね」

自動ドアとかにね。なるからね。
寂しい時は話し相手にもなってくれる。

      「採寸もねぇ。間違えがちだよねぇ」

  「友達に、家に入らないから庭で使ってるって奴いたなぁ」

それはそれで風情が合ってよし、とか言ってたか。
……言ってられたのは、雨が降るまでだったけどね!


…………とまぁ、閑話休題。


         「はは、流石に売りに出されるってなこともなく」

    「慌てて電話して、返してもらうように頼んで……」

       「……でもさぁ。向こうも忙しい時期だったんだよ。さっきも言ったけど」

     「結局それから『二週間』……我が家のリビングは開け放たれたままでした、って話」

  「いやぁ、徹夜明けになにかするもんじゃないね!」

          「今、そのソファに座ってるんだけど、座る度にそのこと思い出すよ……」

362美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/01(金) 00:56:55
>>361

「アッハハ、いいですねえ〜。お庭でソファなんて、シャレてるじゃないですかぁ。
 なんか、こう……『リラックスホリデー』みたいな感じで」

「でも、やっぱり野外だと難しいですよねえ。色々と問題があって。
 使うたびに外に出すっていうのも手間ですしぃ。
 せめて屋根があれば……。ガレージみたいな場所で使うといいかもしれませんねえ」

「でも、無事に『リビングドアちゃん』と再会できたわけですから、ホントに良かったですね!
 これで普段は気にも留めない『リビングのドア』の大事さが確認できたってところでしょうか?」

「一度距離を置くことで大切さに気付く。うんうん、いいじゃないですか。
 人間だって、そうですからねえ」

「たとえば、倦怠期のカップルも一旦距離を置いてみれば、
 それまで以上に相手を思いやれるようになるんじゃないでしょうか?
 もっとも、距離を置いてみたら、『そのまま自然消滅』ってこともたまにはありますけれども……」

「いやいや、決して私のことじゃございませんよ!あくまでも『私の友達』の話ですからね!
 そもそも私には『距離を置く相手』がいませんからねぇ〜!アッハッハッ!!」

「ハァ〜……。いや〜、それも良いんだか悪いんだか……。
 ま、私の個人的な事情は脇に置いときまして……。
 今回お話して下さった『TK』さんには、僭越ながら、ワタクシくるみから、この言葉をお贈りいたしましょう!」

ここでブースの外側に向かって軽く片手を上げる。
それは、ディレクターへの合図。
音声に『エフェクト』を掛けてもらうためだ。

「――眠い時には変な事をしがちだから、今度から『外したドア』には注意しましょうね?
 くるみからのお・ね・が・い・よ」

耳元で囁くようなイメージで、先程よりも幾らか音程を下げた低めの声で囁きかける。
『大人の色気たっぷり』とまではいかないが、二十台半ばという実年齢の割には、
なかなか色っぽい声だという自負はある。
ちなみに、ディレクターが声に『エコー』を掛けてくれているので、声はよく響いて聞こえていた。

363溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』:2018/06/01(金) 01:51:41
>>362

    「ドアのないリビング、奇妙な違和感が凄まじかったからねぇ……」

  「それこそ、部屋が『死んだ』みたい、なんて」

ぽっかりと穴が開いたみたい……っていうか空いてたんだけど。

      「それこそ、『同棲中の恋人』が出てったりしたら、あんな感じなのかな」

         「別に僕も恋人と同棲したことないんだけどね」

めんどくさいじゃん。同棲。
僕、自分の時間大事にしたいほうだからさ……
幸い、今は同棲する恋人がそもそもいないんだけども。

なのでまぁ、こういう風に『囁かれる』のも、なんとなく悪くない気分なわけだ。
虚しさを感じるほど入れ込んでも無いしね。

   「おー」「ありがとうございまーす」「今後気をつけまーす」

      「くるみさんも、『距離の近い人』ができるといいねぇ」

         「遠く離れると寂しくなるくらいの」

     「あ、そっちは『冷蔵』しちゃダメだぜ?」「ハハハ」

364美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/01(金) 03:04:55
>>363

「『部屋が死んだ』って聞くと、どことなく詩的な香りがしますねぇ。
 『リビング』なのに『生きてない』とは、これいかに?
 でも、機械が壊れた時なんかも、『死んでる』なぁんて言ったりしますしねぇ。
 言われてみると、言いえて妙って感じのする言い回しですねぇ〜」

「いやぁ〜、アハハハ……。
 これは一本取られちゃいましたねぇ〜
 『恋人を冷蔵』だなんて、まるでサスペンスドラマ!
 これで、あなたはずっと私のもの……なぁんてことがあったら怖いですねぇ〜」

「勿論くるみは、そんなことしませんよ!むしろ温めてあげたいくらいですから!
 電子レンジに突っ込んじゃいますからね!
 え?入らないって?いや〜、『細かくすれば』入りますから……。
 こわっ!自分で言ってて怖くなってきましたよ〜。この手のネタは、もうちょっと季節が早かったですね!」

「いやいや、私もスマホなくなさないようにしなきゃいけませんからね〜。
 今後は『お互いに』気をつけましょう!」

話も一段落したところで、そろそろ締めの言葉に入っていくことにしよう。

「――さて、今回は『私の失敗したこと』というテーマでお送りしました!
 ソファにまつわる失敗談をお話して下さったのは、ラジオネーム『TK』さんでしたっ!
 『TK』さんには、当番組『Electric canary garden』特製のクオカードを差し上げます!」

「また是非お電話してきて下さいねぇ〜。
 それでは、この度はお電話ありがとうございましたっ!!」

「続きまして、イベント紹介のコーナー!
 今月末に、星見町の大通りでストリートミュージシャン達の生演奏が――」

後日、『TK』氏こと溝呂木氏の下に、一通の封書が届けられた。
中には、クオカードと共にメッセージカードが同封されていた。
カードの隅には、番組のイメージキャラクターである『電気コードの付いた小鳥』のイラストが手描きで描かれている。
そして、カードの中央には、丸みを帯びた文字で以下のように書かれてあった。

『これからも「Electric canary garden」と美作くるみをヨロシクお願いします!
 それから、「徹夜」にはご注意!』



溝呂木『レッドバッジ・オブ・カラッジ』⇒『500円分クオカード』Get!!

365美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/23(土) 21:05:32

星見町――。
この町のどこかで誰かが、このラジオを聞いている。
流れていた音楽が終わると、再びパーソナリティーの声が戻ってきた。

「お送りした曲(ttps://www.youtube.com/watch?v=ybg-T4jhcRI)は、
 『EliZe』の『Automatic』でした! 
 聴いてると元気が出てきて、
 何か新しいこと始めようって気持ちになってきますねえ。
 新しいことといえば、最近くるみは新しい趣味を始めたんですよぉ」 

「何かっていうと、『バードウォッチング』なんですねぇ。
 軽い気持ちで始めたら、これが結構ハマッちゃって。 
 今は8倍の双眼鏡を使ってるんですけど、
 12倍のやつが欲しいなぁ〜なぁんて思ってますねえ」

「少し前も、いい感じの観察スポット見つけたので、
 お休みの日に出かけたんですよ。
 野外なんで、ちゃんと天気予報も事前に確かめて。
 でも行ってみたら、急に雨が降り出しちゃったんですよねぇ〜」

「雨雲レーダーで確認したら、
 私がいるとこだけピンポイントで降ってるんですよ!
 しかも、全然やまなくて。
 しばらく粘ったんですけど、傘の用意をしてなかったので、
 すごすごと撤退することになったのでした!」

「でも、しとしと雨が降る中で野鳥観察っていうのも、
 なかなか風流でオツな感じがしますねえ。
 湿気を吸って毛が膨れてるムクドリの雛を見たんですけど、
 ペンギンの雛みたいで可愛かったんですよぉ〜。
 いやぁ〜、バードウォッチングは奥が深いですね!」

「というわけで、今回リスナーの皆様とトークするテーマは、
 『最近始めた趣味』です!
 何年か前に始めた『わりと最近の趣味』でも全然オッケーですよ〜。
 私こと『電気カナリア』くるみは、皆様のコールをお待ちしておりまぁす」

「いつものように、トークしていただいた方には、
 番組特製クオカードを差し上げます!
 おっと、早速リスナーの方からのコールをいただけました。
 もしもし。こちら『Electric canary garden』パーソナリティー、
 美作くるみでございまぁす!」

366城生 乗『一般人』:2018/06/24(日) 16:54:23
>>365

 「あっ こ、こんにちわっ。しろお のり
お城のしろに、生きるで、お。乗り物の乗りで
城生 乗(しろお のり)って言います」

 少し最初はつっかえつつも、丁寧に自己紹介する
声変わり時期の女性の声が電話口に上がる。

「清月の高校二年生です……美作さんっ
何時もラジオ楽しく聞かせて貰ってます!
 こうして、お話が出来て大変嬉しいです!」

  ナマラジオッスー!   クルミチャンノラジオダ―!


電話の声の主とは違う、周りにいる人の声らしきものが
美作くるみの名を唱えつつ騒ぐ声も聞こえる。
 シーッ! と、軽めに短く注意するノイズも届けられた。

367美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/24(日) 19:55:34
>>366

一人で喋ることも、私は嫌いじゃない。
だけど、こうしてリスナーと直に話をする時が、私は一番好きだ。
何というか、仕事をする上での『遣り甲斐』のようなものを強く感じる。

「こんにちは、城生さん。とっても可愛らしい声なのねえ。
 こちらこそ、いつも番組を聴いてくれてありがとう!
 お話できて、くるみもとっても嬉しいわ」

「一緒にいるのは、お友達かな?
 いいわねえ。青春してるって感じで。
 私にも、そんな時があったのよねえ……。何だか嫉妬しちゃいそう」

「なぁんてね――アハハハ!年は取りたくないものねぇ。
 さぁて、では城生さん!あなたの『最近始めた趣味』は何かな?
 くるみに教えてくれる?」

電話してきてくれたリスナーの周囲に、複数の人がいる。
そういうケースは初めてではないが、珍しいことは確かだ。
心なしか、普段とは少し違う新鮮さがあった。

368城生 乗『一般人』:2018/06/24(日) 23:02:02
>>367

 「すみませんっ。今は、自宅なんですけど
『Electric Canary Garden』で私が参加できる事を聞いたら
どうしても近くで、やりとりを聞きたいって騒ぎになって・・・・・・
今は、私のほかに三人友達がいます。みんな大切な親友です!」

 力強く自分の大切な仲間であると宣言する彼女の周りでは
私たちも同じ気持ちだぞーっ、遠目ながら賛同する声が響く。

 「か、可愛らしいですか? 有難うございます!
美作さんの声も素敵ですよっ。何時も勉強前に集中を
高めるのに利用させて貰ってます・・・・・・って、話が逸れちゃってますね」

 「『最近始めた趣味』なんですけど、沢山あるんですよねっ
以前は殆どしてなかったんですけど、友達の提案で最近では
『ボランティア』をしてます。町のゴミ拾いとか、リングプル回収とか・・・・・・
最近だと蒸し暑い日が続くんでレモネード売りとかも。
クラスの皆のちょっとした悩み相談とかも、ささやかですけど
聞いたりして。あ、でもこれって趣味に入るのかな・・・・・・
 えーっと、ボランティアがラジオのお題として不似合いでしたら
『不思議探し』って言うのも、最近はしてます」

369美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/24(日) 23:47:51
>>368

「いいわねえ、そういうの。
 親友なんて、なかなか言えない言葉だもんね。
 そう言えるってことは、すごく素敵なことだと思うわ」

実際、そんな言葉を言うには勇気がいる。
それを言える相手がいることは幸せなことだ。
だから、そんな友達に囲まれている彼女は幸せなのだろうと思う。

「そんな城生さんのお友達にも、くるみからのメッセージ!
 いつも聴いてくれてありがとう!
 まだ聴いたことないって子も、これから応援してね。
 いい?くるみとの約束よ!」

三人の友人達に向けて言葉を送る。
なぜなら、彼女達も、また私のリスナーなのだから。
支えてくれるリスナーは、私にとって何よりも大切なものだ。

「ボランティア!すごいわねぇ〜。立派なことじゃない。
 みんなでボランティアなんて、もう『ザ・青春』って感じよねえ。
 予想外の答えが返ってきたから、思わず感心しちゃったわぁ」

「いえいえ、それもちゃんと趣味の範疇よ。
 私が認定してるんだから間違いないわ。
 よければ、その『不思議探し』っていうのも教えてくれない?」

「『不思議を探す』っていうくらいだから、
 あまり見かけない珍しいものを見つけたりするのかしら?
 たとえば変わった場所とか、生き物とか……。
 そういうのって楽しいわよねぇ」

「私も小さい頃は、近所を探検とかしたっけなあ。
 道に落ちてるものとか、よく拾ってきてたのよねえ。
 綺麗な石とか、ピカピカ光る部品とか……」

「おっと、いけない!
 ついつい懐かしくなって、脱線しちゃったわね。
 さて、聴いてくれてるリスナーの皆も気になってるでしょうし、
 ミステリアスな『不思議探し』についてお聞きしましょうか?」

370城生 乗『一般人』:2018/06/25(月) 01:17:44
>>369(レス遅れ失礼しました)

美作の三人へのメッセージに対し、電話口から少し遠くながらも
賛同の声が沸きあがる。

 「三人とも、約束しますって言ってくれてます!
『不思議探し』について、ですね?
 星見町には、色々な都市伝説 おまじないなどがあると思いますけど
私たちの不思議探しも、そう言ったものが本当かどうか
それとなく、噂のある場所に赴いて調べたりする感じなんです。
 あっ、でも危ない事はしてないですよ? 最近だと、自然公園の
湖畔に住んでいると言われる、星の模様のウナギを探してみたり。
 展望桜塔のスポットの一つから目撃した流れ星に願い事をかけたら
願い事が叶うと言うのを試してみたりですね」

 楽しそうに、弾んだ声が電話口から流れる。

 「そう言えば、最近だと こう言う噂も聞きましたね。
夏は星見町に流星群が訪れて、その中には星の形をした隕石が
落ちてきたって話なんです。大体手のひらより小さいサイズの
 その、文字通り星を手に入れた人には大きな人生の変化が
約束されるって言う話なんです。何だかロマンがありますよね」

371美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/25(月) 04:50:48
>>370

「ああ、なるほどね!よく分かるわぁ〜。
 そういうのって、いくつになっても憧れるわよねぇ。
 私だって、そういう話を聞くと未だに胸がときめくもの」

電話を通して、少女の話に同意する声が届けられる。
何かしら思うところがあるような響きが込められていた。
事実、思い当たる節があったのだ。

「それを聞いて思い出したんだけど、私が子供の頃にも、
 そういう話があったのよねぇ。
 星型の光を放つ『不思議な蛍』が湖畔にいて、
 それを見てから好きな子に告白すると成功するっていう内容だったわ。
 実は私も小学生の時に探したのよね。その『星の蛍』を」

「当時、好きだった男の子に告白しようと思っててね。
 でも、探してる最中に、恋敵の女の子とバッタリ会っちゃったのよ!
 しかも、その子も例の蛍を探してて、
 どっちが見つけるかってお互い対抗心バリバリで競争になったわ」

「ようやく見つけて『やった!』って思ったら、それがごく普通の蛍でねぇ。
 結局、二人とも諦めて家に帰ったわ。
 次の日に告白したんだけど、結果は見事に玉砕。
 私だけじゃなくて、一緒に蛍を探した恋敵の子もね」

「でも、それがきっかけで、その女の子とは逆に仲良くなったのよねぇ。
 一緒に学校から帰る途中で湖畔に寄って、
 二人して湖で水切りしたのを覚えてるわ。
 『コノヤロー!』って感じでね。アッハハハ」

十数年前の失恋を曝け出しつつ、それを高らかに笑い飛ばす。
少女の話を受けて語られた、過去の『不思議』。
もっとも、その審議は定かではなかったようだ。

「城生さん達はどう?
 『不思議』は見つけられたのかしら?
 『ウナギ』も『流れ星』も面白いんだけど――
 くるみ的には三つ目の『隕石』の話なんかが特に素敵だと思うわ。
 夜空からの贈り物なんて、ロマンチックよねぇ〜」

372『ペイズリー・ハウス』:2018/06/26(火) 08:59:56
>>371

 「いいですね! 『星の蛍』!
私も、いつか好きな人が出来たら蛍を見つけたいって思います。
今は、友達と一緒に面白い事や不思議な事を探したり。
 学校での他愛ない事かも知れないけど、日常を送る事だけで
幸せなんですけどね……昔はちょっと出来なかった事だから」

 少ししみじみ、とい言った口調を最後に唱え。

 「『星の隕石』なんですけど……ちょっと笑っちゃう話と言うか
友達の失敗談になっちゃうと言うか……ぁ、サッちゃん話しても
問題ない? 良かった。あのですね、実は星の模様に良く似た
平べったい白い石みたいなのを友達が見つけたんです。
自然公園のある湖畔の場所を、湖の浅いところとか色々探索してる時に。
 大発見っスー! って、その時は私たちも、これは本物だって
結構騒いだんですけど。近くにいた物知りの方が騒いでるのを
聞きつけて調べて貰ったら。
 あぁ……これはスカシカシパン(ウニの一種)だね。って
拍子抜けと言うか、湖畔に海の生き物がいた事も結構不思議だったんですけど。
 まぁ、その星の石曰くウニの仲間は他の不思議探索をする傍ら
海に返そうかなーって話してたんですけど、もう一人いる友達が
湖畔でも生きていける海のそいつが興味深いから飼ってみる……って事で
今は友達の家の水槽に入っています。
 スカシカシパンって、餌にするものとか余り良く分かってないですけど
小魚のフンとかを栄養にしてるらしいので、飼ってる魚と一緒に」

 星の石を拾おうとしたら、実はウニの仲間を湖で拾った。

笑い話でもあり、考えてみると湖に海の生き物が平然と潜んでいたのも
奇妙な話だ。真相は、ペットの放棄をしてた人が海に行くのも面倒で
近くの湖に捨てたからかも知れないが。

373美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/26(火) 20:43:05
>>372

「湖って淡水よねえ?
 で、ウニって海水で暮らしてる生き物でしょう?
 それが淡水の中で生きてるって、なんかスゴいわねえ。
 ウニには詳しくないけど――『食べると美味しい』ってこと以外はね。
 最近食べてないのよねぇ〜。 
 おっとっと……それは置いといて――」

「確かに不思議な話よねえ。
 そんなとこにいるのも変だし、さっきも言ったけど、
 湖で生きてられるのも不思議だし……。
 あそこの湖って何かあるのかしらね?」

「科学的なことは分からないけど、実は『塩分濃度が高い』とか。
 それとも、実はそのウニは進化して淡水に適応した、
 『新種の生物』だったりするかもよ?
 なぁんて、アハハハ。まっさかねぇ〜」

「ところで――どこにでもあるんだけど、
 そのウニと同じくらい不思議なものを私は知ってるのよ。
 何だと思う?」

「それはね。『人と人の繋がり』よ。
 城生さんと友達が一緒にいて、そして私と城生さんが今お喋りしてる。
 考えてみたら、それって不思議なことだと思わない?」

「別々の道を生きてきた人と人が、何かのきっかけで、
 今こうして接点を持ってる。
 『運命』なんて言葉を使っちゃあ大袈裟だけど、ね」

そこまで言って、明朗快活な声で高らかに笑う。

「アッハハハッ、ちょっとカッコつけすぎたかしら?
 我ながら似合わないわねえ」

「でも、人との繋がりは大切にしたいわね。
 もちろん城生さんとの繋がりもね。
 お時間あれば、またコールしてくれると嬉しいわ。
 その時は、『新しい不思議』のお話を聞かせてちょうだいね」

今回のトークコーナーは、そろそろ終わりそうな気配だ。
何か言いたいことがあれば、まだ間に合う。

374城生 乗『一般人』:2018/06/26(火) 21:17:00
>>373(了解しました。レス遅れなど、不手際あってすみません
また別の機会で絡ませて頂ければ嬉しいです)

 「湖畔は、幻の生き物が住んでる話もあるし……やっぱり、何か
不思議が詰まってる感じですよね。星見町全体でも、そう言う奇妙な
噂や不思議な出来事に遭遇した人も珍しくない話だし。
 もしかしたら、この町全体が一つのミステリースポットなのかも!
となると、私たちも奇妙な住人達って事ですねっ。あははは」

 「――そうですね。『人と人との繋がり』
私も、いまこうして生きて。他の皆と楽しくお喋りして
学校に通って……平凡かも知れないけど、私にとっては
掛け替えのない日々なので、美作さんの言葉は
似合わないなんて思いませんよ! とっても恰好いいです!」

 「あ……もう、そろそろお時間ですねっ。
それじゃあ、最後に一つだけ美作さんに、お願いがっ!」

 「私の親友が飼いはじめた。
スカシカシパンのペットネーム!
 美作さんとの出会いの記念として、名付けて欲しいなーって思います!」

 最後にリスナーからのリクエストだ!

375美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/26(火) 22:06:07
>>374

「私が名前を?それは光栄だわ。もちろんオッケーよ。
 でも、これは私の『センス』が試されるわねぇ〜。
 ウニの名前を付けた経験ってないから、なかなかの難問ね」

電話の向こう側で、深く考え始める。

「うーん、白いのよね?
 そして、星型の模様がある……。『白』……『星』……」

やがて考えがまとまり、一つの名前が頭に浮かび上がる。

「――じゃあ、『白星』なんてどうかしら?」

「勝負に負けることを『黒星』、勝つことを『白星』って言うでしょう。
 『白星』がペットだなんて、すごく縁起がいいと思わない?
 なにせ『勝利のシンボル』なんだから」

「どうかな?気に入ってもらえたらいいんだけど。
 城生さんにも、ウニを飼ってる友達にもね。
 それと――その『ウニさん』にも、ね」

「でも、ちょっと渋すぎるかな?
 もうちょっとファンシーな名前が良かったかもね。
 アハハハハ……」

376美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/06/28(木) 17:24:22
>>375

「何の変哲もない、見慣れた普段の風景。
 そんな場所でも一つ横道に入れば、
 結構新鮮な気分になれたりするんですよねえ。
 『不思議』って言うと遠くにあると思いがちですが、
 案外私達の身近にも隠れてるのかもしれません」

「本日のお相手は、城生乗さんでしたぁ!
 素敵で楽しいお話を聞かせてくれて、どうもありがとう!
 城生さんには、『Electric Canary Garden』特製クオカードをお送りします!」

「ここで、くるみのイベント紹介!
 パーソナリティー美作くるみが、この街のホットな話題をお届けしちゃいまぁす!
 まず、星見駅前商店街では毎年恒例の七夕祭りが――」

後日、城生乗の下に一通の封書が届く。
番組のロゴ入りクオカードとメッセージカードが入っていた。
メッセージカードには、パーソナリティーからのメッセージと共に、
番組のイメージキャラクターである『電気カナリア』のイラストが添えられている。
通常のイラストとは異なり、『探検帽』のようなものを被っている。
カードに記されたメッセージの内容は、以下のようなものだった。

『いつも応援ありがとう!それ行け!星見町不思議探検隊!』


城生 乗『一般人』⇒『500円分クオカード』Get!!

377太刀川叶『スマザード』:2018/07/08(日) 00:39:01
「さて、どうしたもんか……」
 と、うちは誰に言うでもなく呟いた。
 今日、この場のこの街に到着し、ほんで―――超能力者、みたいなもんになっていることに気付き、ここにおる。
 来た道を戻って、今は駅前。
 戻ってきたんに特に深いわけはない。
 そこに嘘もない。
 ただ、そう、ほんまにただただ単純で、ありきたりな理由。
 ここのがすぐにタクシーを拾えそうやな、と思っただけやから。
「どこに行くか、やな」

378太刀川叶『スマザード』:2018/07/13(金) 17:19:49
咳をしても一人。
所詮そんなもんで、うちに声をかける親切な人っていうんは、この街にはおらんらしい。
まぁ、せやったらせやったで、商売がやりやすいって、考えた方がええかもな。
軽薄で希薄であればあるほど、孤独を埋めたくなるもんや。
ま、知らんけど。
「とりあえずホテルはどこかやな。ビジホ以外があるとええけど」

379斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/14(火) 23:05:13
「――わかるよ」

長い溜息を一回、寝ボケ眼を擦り
今日の空模様のような、何処までも青い釣竿を持ち直す

 「『辛抱』がさ、大事なんだ」

    「僕が目的とする、必要なスタンド使いを探すのも」

 「獲物が餌につられてかかる釣りも、『辛抱』が大事なんだってな」

          「――わかるわ」

喧騒から離れた砂浜に、1人、軽装に赤いスカーフを巻いた少年が、折りたたみ椅子に座っている
緩やかな風に吹かれた麦わら帽子を直し、欠伸を嚙み殺しつつ、キンキンに冷えたスプライトを口に運ぶ

 (人魚でなくても、何か飲まないと干からびてしまう……けど
  クーラーガンガンの室内もいいけど、これも贅沢だね、飲みごたえがある)

――三本目の影の腕が、飲み干したスプライトをクーラーボックスに戻す
見える人間にはスタンドだと、即座に理解できるだろう

傍に置かれた青いクーラーボックスの上には、小型のラジオが古い洋楽を流し
さらにその上には、ちょこんと赤い鳥のぬいぐるみが置かれていた。

「……もう8月……んん?」

台詞の最中に、ふと疑問が浮かんで首をひねる

「これ前もやった……事ないな うん」

……釣り糸の先に浮かぶ、ウキが波間に僅かに揺れていた。

380美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/08/14(火) 23:29:35

この町のどこかで、誰かが『ラジオ』を聞いている。
スピーカーから流れる声は良く通り、さながら『カナリアの囀り』を思わせる。
その番組の名は――『Electric Canary Garden』――。

「今日も、あなたの隣に『電気カナリア』の囀りを――」

「『Electric Canary Garden』――
 パーソナリティーは、この私『カナリアボイス』こと『美作くるみ』がお送りしまぁす!」

「いや〜〜〜『暑い』ですね!とにかく『暑い』!
 この季節になると、一番よく聞く言葉ですよねぇ」

「今年は特に酷暑みたいで、皆さんも日射病には気をつけて下さいねー。
 聞くところによると、まだまだ猛暑日が続くらしいですからねぇ〜。
 わたくしくるみも、水分補給にはいつも気を遣っておりますっ」

「さてさて――今回は『納涼企画』といたしまして、
 先週お知らせしました通り、リスナーの皆様から『怖い話』を募集しております〜。
 採用された方には、おなじみの番組特製クオカードと、くるみからのメッセージカードを差し上げますっ」

「ちなみに、くるみの『怖い話』はですねぇ……。
 あれはいつだったかなぁ?
 正確には覚えてないんですけど、古本屋さんで『本』を買ったんですよ」

「それ自体は、別に何てことない普通の本だったんですね。
 で、家に帰って、こうパラパラめくってたんです。
 そしたら、『あるもの』を発見してしまったんですよ……」

   ――デロデロデロデロ〜ン……。

話を区切り、ブースの外に向けて手で合図を送る。
担当のスタッフと決めておいた『SE』を入れてもらうためのものだ。
合図に応じて、いかにもおどろおどろしいホラー風の効果音が流れた。

「……ページとページの間に、『何か』が挟まってたんです。
 見てみると、それ『写真』だったんですね。
 どこかの古い家の中が写ってるんですよ」

「まさか、そんなものが挟まってるだなんて思わないじゃないですか。
 だから、それ見つけた時はビックリしましたねぇ〜。
 思わず固まっちゃいましたもん」

「で、もうちょっと続きがあって。
 その気はなかったんですけど、ついじぃっと眺めちゃったんですよ。
 そしたら、隅の方に人の影みたいなものが写ってることに気付いたんです」

「人は写ってないんですけど、影だけが見えてるんですよ。
 それが身長的に大人じゃなくて子供なんですね。
 多分、その家の子だと思うんですけど」

「いや、もしかしたら『座敷わらし』かな?
 そうだとしたら、もしかすると幸運のお守りになるかもしれないですけどね。
 でも、買った本の間にあったっていうのが不思議なんですよねぇ〜」

「その写真は今も家にあるんですけど、特に何も起きておりませんねえ。
 とりあえず悪いことが起きてないんならいいかなと、くるみは楽観的に考えておりますっ」
 
「はいっ!以上くるみの『怖い話』でしたっ!
 いやぁ〜、いまいちオチが弱くて申し訳ないですね〜。
 アッハハハッ――でも、こういうのもこれはこれで良くありません?
 こう、なんというか赴きというか風情があって……。
 『怖い話』っていうより『不思議な話』って言う方が合ってるかもしれませんねぇ〜」

「――っと、ここでリスナーの方(>>380)とお電話が繋がったようです。
 もしもし、こちら『Electric Canary Garden』の『美作くるみ』でございまぁす!」

381美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/08/14(火) 23:38:25
>>380

――と、いうような声がラジオから流れていたという……。

382斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/15(水) 16:27:32
>>379
>>381

「――おっ、美作さんだ」
(もうそんな時間か……)

「怖い話特集 ね 夏祭りの裏で、肝試し大会とかあったっけ」

釣りの最中、釣竿の保持をスタンドに任せ ひと時の間、目をつぶり
通っている『清月学園』での出来事を思い出す

「しかし、僕の怖い話と言えば……」
「さっきから釣り用の『練り餌』狙って、野良猫がちょっかい出すくらいだな……君の事だぜ、君の」

そう言う斑鳩の目線の先には、出した腕を引っ込める黒い猫の姿がある
足先は白く、靴下を履いているようにも見える、首輪を付けていないあたり、野良なのだろう

   ニャーン

「ニャーンじゃないよ、針に餌が無きゃ、釣れるもんも釣れないぞ ホント
 行儀よく待ってな、僕も待ってるんだぜ? 色々」

   シッ シッ

影の腕で追い払うと、猫はまるで、ここが定位置だという風にクーラーボックスの日陰で丸くなり
それを見て斑鳩は釣竿を再び自身の腕で保持し、釣りを再開する

――そうして美作くるみのラジオを聞きながら釣りを続けると、ふと一つの疑問が少年の頭によぎった

(――ん、あれ? この猫、僕の『影の腕』が『見えて』たんだろうか)
(まさかね……いるわけないか『動物のスタンド使い』なんて……)

383美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/08/16(木) 00:39:22
>>382

「――なるほど、『猫』のお話なんですね?」

「はい、つい一週間前のことなんですけど……」

ラジオからは、美作くるみと少年の通話が流れている。
彼女の紹介によると、彼は清月中等部の学生ということだった。
どうやら、少年が語ろうとしているのは『猫』にまつわる話らしい。

「俺、その日は部活で遅くなって。
 それで近道しようと思って、路地に入って……。
 そしたら、正面にワゴンが停まってたんです」

「そのワゴンの右端から、真っ黒い猫の顔が覗いてて。
 よく見たら、左端からは尻尾と足が出てたんですよ。
 足は白かったんです。まるで靴下を履いてるみたいで」

「うーん……車の後ろに猫が二匹いたのかな?
 それとも『超胴体が長い猫』が車の後ろに隠れてた――とか?
 想像すると、なんだか凄い光景ねぇ」

「俺も同じこと考えて、確かめようと思ったんです。
 車の裏側に回って、そこがどうなってるか見ようとしたんです」

「確かに気になるわよねえ。それで、どっちだった?
 ひょっとして、二匹どころじゃなく、もっと沢山いたんじゃない?」

美作くるみと少年の話は続いている。
足の白い黒猫。
もし、これが偶然だとすれば、相当な確率だろう。

384斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/16(木) 22:04:08
>>383

偶に竿を引き上げると餌が無くなっている
流石に水中までは眼が通るわけでも無い、経験で引くしかなさそうだ
練り餌を付け直し、再び海に放ると、暇つぶしにラジオの方に耳を傾ける

「おっ、誰か繋がった……ありゃ、僕と同じ所の学生かぁ
 中学だから、僕は会わないだろうけど すっごい偶然……」

ラジオからの雑音交じりの音声が
さざ波の音にかき消されずはっきりと聞こえる
『それ』を聞いて、僕が目を白黒させても、仕方ない情報と共に

 「…………」

ラジオに何があるわけでも無い
クーラーボックスの影で寝転ぶ猫にもそれは同じだが
馬鹿みたいに交互に視線を送ってしまった

「おいおい……ええ?
 これ、君の事かぁ?偶然って2連続おこるのぉ?」

 「偶然から超スゴイ偶然…って所か、おったまげたな」

            ニャン!       

 猫の目が光った瞬間
 練り餌を入れたプラ容器を、届かないところまで影の手が上昇させる

            ヒョイ

「いや、だからって練り餌はだめでしょ
 ほーれほれ、コレ、スタンド能力の悪用ね」

8月の気候に汗を流しながら竿を持ち直し
 意地の悪い笑みをうかべながら釣りを続ける

「しかし、胴体が超長い猫かあ……普通に考えれば、親指のトリックだよな
 手の裏に隠して、前からだと伸びてるように見える奴……どうなんだろう?」

385美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/08/17(金) 00:36:54
>>384

同じ学校に通う学生。
そして、同じような姿の猫。
単なる偶然かもしれないし――そうではないかもしれない。
いずれにせよ、少年の話は続いている。
釣りに興じる合間、猫と戯れる斑鳩翔の傍らから、その声が聞こえてくる。

「……それが、『何もいなかった』んですよ。
 不思議なんですけど、ワゴンの裏に回ると、猫は一匹も見当たらなかったんです」

「いなかった――『消えた』ってこと?」

「はい、そうなんですけど……。
 実は、他にも気になることがあって……」

「うん、何かしら?」

「近付いて分かったんですけど……
 その車、壁にピッタリ横付けされてて、隙間が全然なかったんです。
 だからその……猫が入る隙間もなかったってことで……」

「――へえ……」

話しながら、少年が声のボリュームを落とした。
心なしか、美作くるみの声も小さくなったように聞こえる。
何か『ゾクリ』としたものを感じたのかもしれない。

「最近暑いじゃないですか。
 その上、部活がキツくて疲れてたし。
 だから、意識が朦朧として幻覚みたいなのが見えただけかもしれませんけど」

「うんうん」

「その時は、なんかゾクッとして、急いで家に帰りましたねー。
 えっと……これが、俺の体験した『怖い話』です」

「いやぁ〜、ありがとう!
 とっても興味あるお話だったわ。
 確かに不思議なんだけど、
 何だか日常的っていうか、身近に感じられるリアルさのあるお話だったわねぇ。
 『猫のお化け』……『猫の姿をした何か』……『超薄型の猫』……。
 つい色々と想像しちゃうわねぇ〜」

「それじゃ『国枝』君、今日は電話してくれてありがとね〜。
 後日、番組特製クオカードとくるみのメッセージカード送っときます!
 お楽しみに〜!!」

「さて――ここで一曲お届けします!
 『Porcupine Tree』の『Sleep Together』
 (ttps://www.youtube.com/watch?v=OZuxErudMPc)
 ――Let’s Start!!」

美作くるみの明るい紹介の後に、怪奇ムードたっぷりのメロディーが流れ始める。
『納涼企画』に合わせた選曲らしい。
それはラジオを通して斑鳩少年にも届いている。
そして、少年の側にいる猫にも。
これによって、一人と一匹の間に怪奇的な雰囲気が演出されたかどうかは――
定かではない。

386斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/17(金) 16:49:11
>>385

「…………美作さんは聞き上手だなぁ、ほんとうに
 お陰でつい、聞き入ってしまった この話の中の……一つに」

斑鳩翔は考える、彼は幽霊や幻覚は勿論、経験上の一つとしては知っている
だが彼が知る、彼だけの一つの現象についての可能性だけは、彼の過去から常に離れない
常に、その可能性を考える…『スタンド』…の可能性を。

(怪談のせいにしたいが、背筋が冷えるっていうのはこういう感覚なのか?
 一度も味わった事のない感覚だ……むき出しの背骨を冷えた肉の塊で撫でられるような)

「ん……あれ」

(クーラーボックスの日陰にいた筈、寝転んでいた筈の…)

「『猫がいない』……!?」
 「……ハッ!?」


   ピチャ    ピチャ 
      ピチャ

視界の外、僕のスタンド、その影の左腕から…聞こえる
……水音? 何か舐めるような…。

「な…何で、何でプラ容器の中から『水音』がするのだ…?
 『猫』は何処に行ったのだ…?あの猫はッ!」

    シュン! シュン!   シュン!
         シュン!

「う…ううっ」
「し…『舌』だ…舌だけが容器の中にッ『移動している』!」

「この猫!『新手のスタンド使い』なのだッ!!」
 「――『動物のスタンド使い』!」

 ピチャ…    ピチャ…

「この際、僕の思い込みは捨てなければならない――あの、ラジオの話――車の後ろは『通っていない』のだ……この猫
 『自身を寸断させて瞬間移動する』能力なのだ!」

(猫の入る隙間もない車の背後にいたのも『自らを薄く寸断させれば』造作もない
 傍目から見れば消えたのも、最初からいなかったのではなく、『瞬間移動』したのだ…!
 こんな存在がいるとは!)


         シュン! シュン!   シュン!


「プラ容器も寸断されて消えていく…接触していれば持っていけるのか
 ……だが、お陰で移動した位置は解った『スタンドは1つの能力しかない』」


「――『ロスト・アイデンティティ』」


頭部に鎖が巻き付かれると同時に、自らその鎖を引き千切る
『影の頭部』が僕自身の頭部と重なって現れ、視覚と聴覚を二人分にする
僕のスタンドの能力……

「猫は『姿を消す能力』は持っていない、だから、僕の視界の通らない場所にいる…この場所での死角はそう多くは無い
 僕の視界の死角はクーラーボックス!その裏だッ!」


クーラーボックスを勢いよくどかした瞬間
『寸断された猫』が練り餌の入った容器を銜えた状態で後ろに飛び跳ねる!

            フーッ!

「……『速い』元々の猫の身体能力せいか?スタンドの能力も相まってこれでは捉えられない
 射程がどの程度か解らないが、少なくとも2m…それ以上は確実に有る…!」

(僕の射程距離ではひいき目に見ても5mが精々…影は僕から離れない
 パワーもスピードも近距離パワーの最低限である以上、捉えるには……)


単純に『スタンド』はこの事態の解決に最適とはなりえない、なら如何するか

……僕は、釣り上げた魚を一匹、猫の傍に放り投げた

その猫はまさしく猫撫で声をあげて其方にかぶりつき始めた
それを見て頷くと、ゆっくりと練り餌を取り戻して、釣りを再開する。

「……まあ、練り餌よか食いでのある物が有れば、そっちに行くよなぁ」
「多分、お腹すいてるだけだし」

「ラジオに因んで『スリープ・トゥギャザー』とでも名付けるか、ベッドに入るにも楽勝そうだしな、君の『スタンド』」

(しかし、『練り餌』を保存してあるクーラーボックスの中に入らなかった所を見ると
 『密閉された空間内』には移動できないのか……何にせよ、こういうスタンド使いもいるもんだな
 ……夏の怪談って、こういう事でいいのかぁ〜?『スタンドの夏』だよな…これじゃ)

釣竿を放ると、再び、鮮やかな色のウキが夏の海に浮かんだ。

387美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/08/17(金) 21:47:16
>>386

ある夏の日、ラジオで語られた奇怪な体験談。
それは『寸断』の能力を持つスタンドが引き起こした現象だった。
奇妙な邂逅を経た斑鳩少年によって、
そのスタンドは『スリープ・トゥギャザー』と名付けられる。

「――いかがでしたでしょうか?
 『怪奇特集』にピッタリの曲でしたね!
 さて、番組宛にメールが届いておりますので、読んでいきましょう!」

「えー、ラジオネーム・『ハルちゃん2号』さん!
 くるみさん、こんにちは。いつも楽しく聴いています。
 はぁ〜い、こんにちは!『ハルちゃん2号』さん、ありがと〜。
 『1号さん』もどこかにいらっしゃるのかしら?おっと、脱線脱線」

「早速ですが、私の怖い体験談をお話します。
 この前、友達と一緒に海へ行ったんです。
 海!いいわねぇ。私まだ今年は一度も海に行ってないのよ。
 誰か誘ってくれない?アハハ、な〜んて――公私混同はダメよ!メッ!」

「気を取り直して、お話に戻りましょう。
 砂浜を歩いている時に、ふと『誰かの声』が聞こえたんです。
 とても小さな声で、最初は風の音かと思ったんですけど、
 よく聞いてみると、それが人の声だってことに気付いたんです」

「耳を澄まして聞いてみると、なんて言ってるか分かりました。
 何かしらね?こういうのは、『うらめしや』なんてのが定番よねぇ。
 ちょっとセンスが古いかな?
 今だったら、『憎い……』って言った方がモダンかしらね」

「その声は、こう言ってたんです。
 ――『いらっしゃいませ』って」

     ヒュ〜ドロドロドロドロ〜……

「『いらっしゃいませ』ねぇ……。これはさすがに予想外だったわ。
 なんで『いらっしゃいませ』なのかしらね?うーん、謎だわねぇ〜」

「それっきり声は聞こえなくなりました。
 友達には聞こえていなかったみたいです。
 今でも、あれが何だったのか分かりません……」

「『ハルちゃん2号』さん、どうもありがとうッ!
 とにかくミステリアスなお話だったわねー。
 謎が謎を呼ぶ……ともかく、『ハルちゃん2号』さんには、
 番組特製クオカードとくるみからのメッセージカード送っときます!
 楽しみにしててね〜!
 あ――もし、この謎について何か知ってる方がいらっしゃれば、
 ぜひ当番組に御一報いただきたいところですねぇ〜」

      クイッ
          クイッ

『海』、『砂浜』――これも偶然だろうか?
……ともあれ、ウキが反応している。
どうやら、何かがかかったようだ。
引き上げてみれば、それが何かが分かる。
水面から上がってきたのは大体スイカぐらいの大きさで、形は丸い。

それは――人間の『頭部』だった。
とはいえ本物ではなく、美容師が練習用に使う『ヘッドマネキン』だ。
釣り針が髪に絡み付いて引っかかってしまったらしい。

388斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/17(金) 22:53:25
>>387

――肩の力を抜いて、クーラーボックスから氷に包まれてキンキンに冷えたコーラ瓶を取り出し
飲み終わったボトルを戻す、結露した瓶の蓋に鎖を巻き付けて、栓抜きのように開ける

どうやら今日のラジオは怪奇特集SP(スペシャル)らしい
続くお便りですらホラー系と来たものだ、僕にとっては初めての経験ばかりで新鮮ではあるが。

「成程……怪談っていうのは、こういう物か……物か?」

幾らなんでも偶然が連続すると、僕の語尾は疑問形になりだすらしい。

瓶を傾け、黒く泡立つ液体を流し込む
眩しい日差しに……喉が焼ける程冷たい!

お祖父ちゃんが言ってたっけ、最初が幸運、二度めは偶然、三度目はイカサマだって
何の事かと聞いたら、賭け事の事だと言っていたが……これで三度目

有り得るんだろうか?偶々ファンが聞いてる、ラジオの一番組からこうも
僕に近しい事が起こり続けるなんて……。

「なんて…海と砂浜って言ったって、夏の定番なんだし、海と怪談のセット何て
 スイカに塩入りの小瓶がついてくるくらい、当たり前のタッグだしなあ。 たぶん」

流石にこれでスタンド使いの仕業だ!等と言いだしたら
見える人間にも過剰反応と言われるだろう、第一、僕にそうする理由が無い。

(それに、スタンドにもスタンドのルールがある……パワーと射程が反比例するというルールが)

一応、知り合いの顔を思い浮かべて彼らのスタンドを思い出してみる
――だが、そもそも、そんな能力だと断定できるような知り合いはいない

(考えすぎだぞ、翔 上手く行っていないのは最初からの事だ……焦るのもイラつくのも今に始まる事じゃない
 失敗なら既に、し続けたではないか……。)

――ふと見ると、海面のウキが引いている

 「…やった!」

だが引いてみると、これが嫌に重い
明らかに魚の重さでは無いし、竿が振動したりもしない

 「…あっちゃー」

即座に僕の感情が歓喜から落胆に変わる、こういう場合、大抵は
海の底に針が引っかかる『根がかり』か、長靴とかの『ゴミ』だからだ
がっかりしながらリールを巻いてみると、するすると釣り糸が巻き戻ってくる
どうやら根がかりでは無いらしい。

(ゴミか、下手したら新しい針に変えないとかな)

そうして引き上げて見ると
それは――人間の『頭部』だった


「…………」


あり得ない物だとは解っているが
人間、予想外の物だと思い込むと思考が固まるようだ

遅れてそれが美容師が練習用に使う『ヘッドマネキン』だと気付いたのは
海水にもまれてボロボロになったソレとにらめっこをして十数秒たった後だった。

「な」
「なーんだ…ビックリさせてくれて!」
「全然こわく……えーっと、少し……有るけど」

傍にいる猫が呆れたような目線を投げかけてくるのをスルーして
取り合えず手元に引き寄せ針を外そうとする、このままじゃ釣りの成果はマネキンですと言わなくてはならない

(……そういえば、さっきの手紙『いらっしゃいませ』?だっけな
 普通に考えれば『海の家』とか…いや、聞くのはカメヨースーパーとかか?
 服を着せたマネキンとかは見た事が有るけど……)

「『物が覚えて喋る』なんて、有るんだろうか……。」

389美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/08/18(土) 18:49:40
>>388

釣り針が外され、浜に上がった『ヘッドマネキン』は何も言わない。
しかし、それは不思議ではないだろう。
普通、『作り物の首』が喋ることはないのだから。

  イラッシャイマセー

……何か声のようなものが聞こえる。
だが、それは『頭部』が発したものではなかった。
それが聞こえてくるのは、斑鳩少年の『頭上』からだ。

  イラッシャイマセー
           イラッシャイマセー

一羽の『オウム』が、斑鳩少年の近くを飛んでいた。
捨てられたペットが野生化したのか、
それとも飼われている家から飛び出してしまったのか。
理由は分からないが、先程の声の主は、このオウムのようだった。

      トスッ

人に慣れているらしく、斑鳩少年の傍らに舞い降りてきた。
『ハルちゃん2号』が聞いたのも、このオウムの声だったのだろうか。
あまりにも出来過ぎる程の偶然ではあるが、
これが謎の声の正体だったのかもしれない。

「――ここで、くるみの『Today’s Select』!
 このコーナーは、
 様々なジャンルの気になるお店を一軒ずつピックアップして、
 リスナーの皆様にご紹介しようという趣旨でございます!
 今回は、こちら!
 星見駅から徒歩5分、
 商店街の中にあるお肉屋さん『赤井精肉店』さんです!
 こちらの揚げ物は冷めても美味しいと評判で、
 ボリューミーで値段がお手頃なこともあって、
 買い物中の主婦から部活帰りの学生の方まで、
 幅広い層から支持されているお店です!
 特に、中はジューシーで衣はサクサクの『鶏の唐揚げ』が一番人気で、
 現在『10周年記念』として期間限定で更にお安く――」

……ラジオからは、『地元のお店紹介』が流れている。
『夏の恐怖特集』は一段落したようだ。

390斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2018/08/19(日) 23:28:01
>>389

イラッシャイマセー

頭上からの声に、身体を僅かに震わせる
恐る恐る帽子を取り、上を見上げると鮮やかな色をした羽が視界に入った

「――オウム?」

どうやら人に慣れているらしく、僕の傍らに舞い降りてきた
ラジオのリスナーが聞いたのも、このオウムの声だったんだろうか?

「そういえば…何時かのニュースで、
 ペットとして飼われていたインコが逃げ出して野生化している…というのを聞いた事があったっけ」

(プラスチックの画面には、集団で電線の上にとまるインコ達が映っていたけれど…
 この鳥も、そういう一羽だと見る事は出来るな)

  イラッシャイマセー

オウムが再び首をかしげながら鳴く
何処かの商店街で飼われていたのが逃げ出した…という想像はできるが
事実がどうかは僕にはわからない事だ。

「驚かせてくれるけど、危機感無いな……」

横目で猫の方を見る、丁度、魚を平らげたようで
満足げにクーラーボックスの影で丸くなって目を閉じ始めた

「ま、食う気しないか
 幽霊の正体見たり…って所だけど、思わぬ来客だった」

僅かに微笑んで、帽子を被り直し、針を糸に付け直して、再び海に放る
僅かに香る潮風の中で、僕の8月の夏はまだ、ほんの少しだけ続いているのだ。

391美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/08/21(火) 21:50:19
>>390

野に放たれたオウムの鸚鵡返し。
怪談の真相というのは、案外こんなものなのかもしれない。
遭遇した奇妙な出来事をを夏の思い出の一つとして、
斑鳩少年は本来の目的である釣りに戻る……。

   イラッシャイマセー

このオウムは、どこで『この言葉』を覚えたのだろうか。
飼われていた家でかもしれないし、町の中でかもしれない。
あるいは――もっと『別の所』からだったのかもしれない。

               「……いらっしゃいませ……」

斑鳩少年の耳に届くか届かないかの微かな声が風に乗る。
それは、『ヘッドマネキン』の辺りから聞こえてきたようだった。
そして、それきり同じ声が聞こえることはなかった。
あるいは、このオウムは、そこから『この言葉』を覚えたのかもしれない。
いずれにせよ――このささやかな小事件は、こうして静かに幕を下ろした。


斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』⇒『新手のスタンド』や『怪奇現象』に遭遇しつつ釣りを再開する。
黒と白の猫『スリープ・トゥギャザー』⇒斑鳩少年に自らの『スタンド』を名付けられる。
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』⇒当然ラジオの向こう側には気付かず普通に放送を続けた。
国枝&ハルちゃん2号⇒『番組特製クオカード』と『メッセージカード』Get!!

             ⇒To be continued……?

392美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/08/26(日) 00:35:40

「『一回くらい海に来よう』と思って来てみたはいいけど――」

「そこで何をするかなんて、全然考えてなかったわ……」

「ま、こうして散策してるだけでも『雰囲気』は十分よね」

夏の海――そこそこ人気のある砂浜を、一人の若い女が歩いている。
スポーティーなデザインのタンクトップとショートパンツ。
頭にキャップを被り、足元はビーチサンダルだ。

「欲を言うなら、隣に素敵な男の子でもいれば満点だけど……」

「『贅沢』は言えないわね」

「一人で海を眺めるっていうのも、それはそれで情緒があるし」

立ち止まり、波打ち際に腰を下ろす。
打ち寄せる波に両脚を沈めて、静かに海を見つめる。
ふと、近くに貝殻が落ちていることに気付き、それを拾い上げた。

「『貝殻を耳に当てると海の音がする』――なんて言ったっけ」

ぽつりと呟くと、白い巻き貝の貝殻を、おもむろに耳に当ててみる。
『波の音』が聞こえた。
もちろん貝殻からではなく、目の前にある海から聞こえる音だ。

「なぁーんて――海にいるんだから、海の音はするに決まってるじゃない」

軽く笑って肩を竦め、耳元から離した貝殻を手の中で弄ぶ。
そして、何気なく周囲を見渡してみる。
何か『トークのネタ』に使えるような、変わったものでもないだろうか?

393小林『リヴィング・イン・モーメント』:2018/09/04(火) 00:02:20
>>392

ガリガリシャッシャッガリガリ シャッキュルル

「日の出と共に、この歩くだけで靴底の痕を刻む更地は
時に銀色に、時に稲穂のような 変わり行く乙女心のように
様々な彩りを見せていく」

 学生服のブレザーを、羽織のように身に着けた青年が
筆記帳に、ペン先だけを小刻みに動かして音読と共に綴っている。

 ギャリギャリッ シャッ ガリガリ

「空の色合いと、海の色合いは青と蒼と 口にすれば同じにも
関わらず、その深みと 呑み込まれそうな透き通りに終着地点は
存在するのかと 波たちの囁き声を聞きながら葦は頭をもたげる」

 そこで、筆は止まり。美作のほうへと顔が向けられた

 「……こんにちは」

 何処か、達観としたような 静寂な笑みだ

394美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/09/04(火) 01:02:47
>>393

  ザザァァァ……

日差しを避けるために目深に被ったキャップの陰から、
女は青年の方向に視線を向けた。
手の中では、相変わらず白い巻貝を弄っている。
その動作を続けながら、無言で青年を見つめていた。

「こんにちは」

挨拶に応じて、女が口を開いた。
音程は高いが耳障りではなく、よく通る澄んだ声だ。
その響きは、さながらカナリアのさえずりを思わせる。

 ツツゥゥゥ……

女の指先が、ボブカットの髪を軽くかき上げた。
その指で、キャップのツバを持ち上げる。
女の両目が、日の光の下で露になった。

    ザザァァァ……

「――何をしているの?」

その当たり障りのない言葉には、これといった含みは感じられない。
少なくとも、表面的には。
白い巻貝は、まだ手の中にある。

395小林『リヴィング・イン・モーメント』:2018/09/04(火) 01:30:45
>>394

 海の産声が聞こえている。砂浜に腰掛けながら、手の甲で
ペンを回しつつ、じっと青を 空んどうな目の中へ入れていく

さざ波の全て、どれ一つとっても同じ音色には鳴り得ない。
 悲しみが心渦巻く時は、どれ程に暖かな感触すら忌避するように
心がただ静かな小風だけ吹くのならば。全ての五感を捉えられる。

「文を 編んでいました」

 「海は、良いですね。大海原の中には幾つもの側面が見えます
穏やかさも、荒々しさも」

 また、新たな側面が白と青の捲られたカーテンの中に見えてくる。

「ふと、自身の在り方がどうしてこのような出で立ちと形なすのかと
答えのない題に直面した時には。良く、こうして……私たちの母へ挨拶しに」

「未だに、納得できる回答は拾えませんが、それでも新たな発見は得られます。
ただ、目を閉じて浮世の鎖を一時外し この子守唄に身を任せるだけで……」

男性は、じっと暫し波音に耳を傾ける。

 「……小林 丈(たける) そう言う名の男です。貴方も何かしらの
心のしがらみを緩める為に、此処へ?」



 「

396美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/09/04(火) 02:19:16
>>395

女は黙って、語られる言葉に耳を傾けていた。
彼女は、いつもそうしていた。
そして、この瞬間も、それは変わらなかった。

「まぁ、そんな所ね」

一通り話しを聞いた後で、軽く笑って小さく頷く。
日光が、女のシルエットを鮮明に浮かび上がらせる。
艶かしさとは異なり、
ダンサーのように鍛えられた、しなやかで整った体つきだ。

「し残したことをやりに来た……。
 ちょっとした心の隙間を埋めに来たと言ってもいいかしら」

「私も『会いに来た』のよ」

「小林くん――君にね」

そう言って、女は茶目っ気たっぷりに片方の目を閉じて見せた。
立ち上がり、彼女は青年に歩み寄る。
まもなく、女は青年の隣に腰を下ろした。

「美作くるみ――」

「呼び方はお好きなように」

美作の腕が持ち上がる。
その先が、小林に差し出された。
白い巻貝が、手の平の上に乗っている。

「さっき、そこで拾ったの。なかなか綺麗でしょう?」

「――差し上げるわ。お近付きの印に」

397小林『リヴィング・イン・モーメント』:2018/09/04(火) 03:33:55
>>396

 「美作」

 「くるみ」

「ふむ……貴方は姫胡桃か。名の通りの知性豊かさが見てとられます」

貴方に会いに、との言葉にも特に顔つきを変える事も
目を揺さぶる事もなく。静かに名前を口の中で転がし、評価を唱える。

「有難う。素敵な貝殻ですね」
 
 渡された貝殻を、太陽に掲げ少し目を細めつつ見つめる。

 「クワガタイトカケだ」

 「人とは不思議です。何故、この貝にクワガタと名づけたのだろう。
また、そう名づけようと思った瞬間、何を考えていたのか……興味は
つきません。私には、さし当たって返せるものが有りませんが……」

 腰をあげ、海の波が寄る場所まで歩いて屈む。
その指の触れた部分の海から、数匹のブリキ金魚が現れ。透明な
水槽を築いていく。大小のビー玉サイズから大きいのではスーパーボール
サイズの水槽が、美作のほうへ飛び交っていく。

 
「宜しければ、飽きるまで見ていってください。
 珍しいシャボンでも」

398美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2018/09/04(火) 21:20:11
>>397

「へえ――」

「君は言葉が上手いだけじゃなく、珍しい特技を持ってるみたいね」

「――素敵よ。とても綺麗で」

感嘆した様子で、美作はシャボン玉を眺める。
夏の砂浜を舞う透明な球の群れ。
どこか幻想的で、郷愁を誘うような風情を持つ光景だった。

「こんな良いものを見せてもらったら、貝殻だけじゃあ割に合わないわね」

「そうね――」

美作は、唇に人差し指を当てた。
その視線は、浮かび上がるシャボン玉に注がれている。
しばらくして、何事かを思いついたらしい。

「僭越ながら、一曲ご披露するわ」

「自分で言うのも何だけど、私これでも歌には自信があるの」

「と言っても、『昔の話』だけどね」

過去を懐かしむように笑い、美作は歌い始める。
誰でも一度は耳にしたことのある童謡だ。
その澄んだ歌声は夏の海に染み渡ると同時に、
物寂しい響きも含まれていた。

    「――シャボン玉、飛んだ。

     屋根まで飛んだ。

     屋根まで飛んで、壊れて消えた」

    「シャボン玉、消えた。

     飛ばずに消えた。

     生まれてすぐに、壊れて消えた」

    「風、風、吹くな。

     シャボン玉、飛ばそ――」

399小林『リヴィング・イン・モーメント』:2018/09/04(火) 22:37:58
>>398(この辺りで〆させて頂きます。お付き合い有難う御座いました)

 黄金色のブリキの魚が、生きとしいける者たちの原初の羊水を
包み込んで、空を舞っていく。

 姫胡桃の声が、そのシャボン達の舞いを より一層と幻想的に
そして流れてくる風を優しいものにしていく


シャボン玉飛んだ  屋根まで飛んだ

 海は鳴いている

この散りばめられた潮の残骸の欠片の涙と共に 見送った魂達は
あの水平線の向こう側にたどり着いているのだろう

二人の男女は、暫く。海の輝きが落ち着くまで シャボンの螺旋と
歌の中に包まれていた

400宗像征爾『アヴィーチー』:2018/09/20(木) 22:41:31

年末年始には人で溢れ返っている神社も、今の時期は閑散としていた。
その中をセーフティーブーツの靴音が響く。
カーキ色の作業服を着た背の高い中年の男が、石畳の上を歩いている。

「ここは変わらないな」

おもむろに立ち止まり、何の気なしに周囲を見渡す。
今の所、自分以外の人間が訪れる気配は感じられない。
賑わいとは無縁の場所と呼んで差し支えないだろう。

「――時期外れだと静かなものだ」

やがて再び歩き出し、境内に立って社殿を見上げる。
ここに来たからといって、別に信心深い訳ではなかった。
暇を持て余していて、やる事を思い付かなかったからだ。

401春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2018/09/22(土) 19:30:04
>>400
『境内』を独り歩く『宗像』の視界に、人影が映り込む。
『灰色のコート』を纏った初老の男が、石垣の一角に腰掛けて
『煙草』らしきものを咥えている(『煙』は、ない)。

深い皺が刻まれた、『枯れ木』を思わせる男の顔の奥で、
暗灰色の瞳が鈍く、乾いた光をたたえていた。酷く『冷えた』眼だ。

「・・・・おや・・・・」

男は、『宗像』に視線を合わせ、『何かに気付いた』
ように呟き、声を掛ける。

「やあ、そこの人」
「こんな寂れたとこに人が来るなんて珍しいけど,
何か、『願掛け』でもしに来たのかい」

402宗像征爾『アヴィーチー』:2018/09/22(土) 23:53:59
>>401

見上げていた視線を下ろし、声の聞こえた方向に目を向ける。
他に人はいないと思っていたが、恐らく自分が見落としていたのだろう。
そのように考えながら、呼び掛けてきた男を見やった。
瞳に宿る『冷たさ』には気付いたが、その『理由』は知る由もない。
ただ、何か心に引っ掛かる物を感じたものの、
それが何であるかは分からなかった。

「生憎、祈る『願い』も立てる『誓い』も、俺には持ち合わせがない。
 足の向くままに歩いていたら、ここに着いた。それだけの話だ」

燃え尽きた後の『燃え滓』を思わせる虚無的な瞳で、淡々と言葉を続ける。
少なくとも今の俺には、『願い』も『誓い』も存在しない。
俺にとって、それらの全ては過ぎ去った過去だ。

「あるいは――知らず知らずの内に辿り着いたとすれば、
 自分では気付いていないだけで、
 心の奥底には何か願を掛けたい事でもあるのかもしれないな」

「もっとも、それが何なのか俺には見当もつかない」

そこまで言って、男が咥えている『煙草』らしき物に視線を移す。
この行動に深い意味はなく、単なる無意識な所作に過ぎなかった。
強いて言うなら、『煙が出ていない』事が気に掛かったという程度だろうか。

「――あんたも『願掛け』に来たようには見えないが」

石垣の男に向けて、同じ質問を返す。
この寂れた場所に人が来るのは、確かに珍しい事だろう。
それが『二人』となると、尚更そうだ。

403春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2018/09/23(日) 07:51:38
>>402

『宗像』が視線を合わせると、男は小さく会釈した。

「足の向くままに、ねえ・・・・もしかしたら、アンタの言うように、心のどこかで
何か――思うところがあるのかも知れないねえ」

そう言いながら、男は『宗像』の瞳を見る。何も映さないその瞳に、
その中にいまだにくすぶるものがあるのかどうか、探るように見る。

「アンタの言うとおり、あっしも『願掛け』に来たわけじゃない。
こういう場所は、俗世間とはちょいと離れてるからねえ・・・・落ち着くんだ。
ちょいと仕事に疲れちまったから、息抜きに来た。それだけさ」

肩をすくめ、苦笑しながら、男はうそぶく。
疲れたのは『本当』だが、その『仕事』は『殺し』のことだ。
『死穢』をまとって社に佇む、灰色のコート。

「あ、ちなみにこれは『シガレット』さ。アンタくらいの歳なら知ってるだろ?
『煙草』みたいな駄菓子でねえ。『禁煙中』なのさ」
「一本どうだい?」

『宗像』が『煙草?』に興味を示したのを察知したのか、男はそう言って
胸ポケットから『ココアシガレット』の箱を取り出し、一本薦めてくる。

404宗像征爾『アヴィーチー』:2018/09/23(日) 11:49:02
>>403

「あくまでも、『もしかすると』という話だが」

その身に『死』を纏う男――『春夏秋』は、作業服姿の男を観察する。
男の瞳には、やはり何も無かった。
しかし、かつて『激情的な何か』が存在した痕跡は見受けられた。
それは恐らく、人の全身を焼き尽くす程の激しい業火だったのだろう。
今では完全に消え失せ、残っているのは『焼け跡』だけだ。

「なるほど――確かに世俗的とは言い難い場所だ」

「あんたの言うように、気を落ち着けるには悪くないかもしれないな」

『春夏秋』の言葉を聞いて、作業服の男は納得した様子だった。
当然ながら、『殺し』が関わっている事に気付く筈も無い。
たとえ、それを行った事がある身であったとしても。

「そういえば、そんな物もあったか――」

「懐かしいな」

取り出された『ココアシガレット』の箱を見て、不意に思った。
この神社は、俺が『塀の中』に入る前から変わっていない。
その点では、この駄菓子にも同じ事が言える。

「俺は『禁煙中』では無いが、一つ頂こう」

そう言ってから、『春夏秋』に近付いていく。
『春夏秋』の『職業』を知らない為、警戒を払う事もしない。
静寂に支配されている寂れた境内で、似て非なる二人の男が向かい合う。

405春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2018/09/23(日) 16:43:06
>>404

(・・・・なるほどね、『個人的な理由』・・・・怨恨か、恩讐か、定かじゃあないが、
そういう理由で何かやらかした、ってェ眼だ。まあ・・・・)

表情には出さぬように心がけつつ、一人合点する。

(『同業者』じゃあないなら、『警戒』や『仕掛け』はいらないね)

自分が『殺し』に抵抗がないように、他人が『殺し』ていたとしても、
それが自分の利害と対立しない限りは気にも掛けない。
春夏秋 冬樹はそういう倫理観の持ち主だった。

「本当にねえ、懐かしいよ。あっしがガキの時分から、全然変わっちゃいない。
まだこいつが売られてるってのは、変な話だけど、嬉しいような気がするね」

『宗像』に『シガレット』を一本渡す。何の変哲もない、昔ながらの『駄菓子』だ。
受け取る際、『宗像』は、シガレットの箱に『タバコヤ 4Seasons』というシールが
貼られているのを目にするかもしれない。

「どうぞ。じっくり味わっとくれ。こういうのは噛み砕いちまうと『趣』ってものが
台無しになる部類の駄菓子だからねえ」
「・・・ま、あっしはこいつをバリボリ噛み砕くようなガキだったがね」

キヒヒ、と乾いた笑い声を上げ、口角を上げる。眼は笑っていなかった。

406宗像征爾『アヴィーチー』:2018/09/23(日) 19:37:11
>>405

「ああ、『俺も』だ。気付くと、よく噛んでしまっていた」

「あれは三十年――いや、もっと前か」

『ココアシガレット』を受け取り、同じように口に咥える。
その際、『煙草屋』らしきシールが貼られているのが目に入った。
『煙草屋』が『ココアシガレット』を扱っている事は知らなかった。

「『懐かしい』というのは『安心感』に近い部分があるのかもしれないな。
 世の中が大きく様変わりしても変わらない物が残っているというのは、
 一種の『安心』と呼べなくも無い」

『春夏秋』の隣に腰を下ろし、『ココアシガレット』と共に一抹の郷愁に浸る。
そのまま、幾らかの沈黙が続いた。
やがて、『宗像』は再び口を開く。

「――俺は『配管工』をやっている。
 『地面の下』に潜って、管の敷設と点検や修理をするのが主な『仕事』だ」

「あんた――『商売』は何を?」

自分の『職業』を話してから、出し抜けに問い掛ける。
世間話のような口調であり、素性を探るような雰囲気では無かった。
その視線は、隣の『春夏秋』ではなく、正面を向いたままだ。

407春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2018/09/23(日) 21:36:53
>>406

「『30年』か・・・・はは、一昔、って感じだねえ」

『30年前のガキ』が二人、並んでシガレットを食う。
お互い、どんな人生を歩んできたかはさておき、
ここに流れる時間は穏やかなものだ。

「『安心感』か。いい表現だね・・・・あっしもそう思うよ」
「配管工とは、文字通り『縁の下の力持ち』だねえ。気付かれない
かも知れないが、誰かの暮らしを支えてる仕事だと思うよ。
あっしは、今ひとつ世間に貢献してない『タバコ屋』だから、尚更ねえ」

『宗像』がぽつりと発した問いに、いつもの『嘘』で答える。
もっとも、全てが『嘘』でもなく、『稼業』の『隠れ蓑』、表向きの『職業』でもある。

「最近、タバコにかかる税率がまたぞろ上がってねえ。商売上がったりさ。
その『シガレット』はちょっとした『ジョーク』として仕入れてみたんだ、
お高い『タバコ』の『代用品』にどうですか、ってね」

ところがさっぱり売れなくてねえ、と苦笑しながら、シガレットをまったりと食う。

「・・・・ちと、冷えてきたね」

コートの裾を抱え、空を見上げる。秋風が、境内を吹きぬけた。

408宗像征爾『アヴィーチー』:2018/09/23(日) 23:01:49
>>407

(――妙な状況だな)

改めて考えてみると、そのように感じられる。
今ここを別の人間が訪れたとして、この光景を見たとすれば、
首を傾げるかもしれない。
神社を背景にした何とも言えない奇妙な風景が、そこには存在した。

(だが、たまには悪くない)

「最近では、自販機で煙草を買うにも『カード』が必要だったな。
 客と差し向かいの『煙草屋』なら、『カード』が不要という利点はありそうだ。
 無論、それだけでは何ともならないとは思うが」

『塀の中』は、外の世界とは隔絶されていた。
故に、『出所』してから知った事は多い。
煙草に関する事情の変化も、その一つだ。

「店の名前は『タバコヤ 4Seasons』か?
 あんたが良ければ、その『由来』を聞かせて貰いたい」

その時、過ぎ去っていく秋の風を感じた。
何かの合図を受けたように腰を上げ、静かに立ち上がる。
そして、『春夏秋』と同様に空を見上げた。

409春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2018/09/23(日) 23:37:32
>>408

「『店名の由来』かい? はは、そんな大したもんじゃないよ」

こちらも、立ち上がる。長居したことで冷えてきたのは本当だった。
ちょっと体を動かした方が良さそうだ……と考える。

「あっしの名前から取ったんだ。あっしは『春夏秋 冬樹(フユナシ フユキ)』・・・・
『四季』が名前に入ってるから『4 Seasons』ってことさ。
冗談みたいな名前だけど、他人にすぐ覚えてもらえるのが取り柄でねえ」

空に指で名前をなぞりながら、少し照れ臭そうに言う。

「・・・・さて、ちと冷えてきちまったしあっしはそろそろいくよ。
アンタは・・・・そういや、名前、聞いてなかったねえ。
ここで会ったのも何かの縁だ。聞かせちゃあくれないかい」

一言掛けて立ち去ろうとし――思い出したように、『宗像』に尋ねる。
必然性のない問いだが、『だからこそ』聞いておきたかった。
自分と『ある点』で重なり、しかし『決定的に異なる』部分をもつ相手だ。
だから、必要はなくとも、名前を知っておきたかった。

410宗像征爾『アヴィーチー』:2018/09/24(月) 00:42:11
>>409

「確かに、その通りだ。お陰で、俺も直ぐに覚えられた。
 恐らくは、今後も忘れないだろう」

こちらの質問に応じて貰った感謝の意を込めて、軽く頷いて見せる。
これでも義理堅い方だ。
相手の名前を聞いた以上、元々こちらも名乗り返すつもりだった。

「『宗像征爾(ムナカタセイジ)』――そういう名だ。
 生憎、あんたのような取り柄はない名前だが」

過去の『ある一時期』において、この名前は街の多くの人々が知っていた。
『二十年前』に起きた『殺人事件』の『加害者』の名前だ。
しかし、隠し立てしようとする意思は無かった。
情報の入手が容易な今の時代なら、少し調べただけで子供でも分かる。
何より、今更知られた所で気に掛けるような事でもない。

「俺は、もう少し見て回る事にしよう。不景気だろうが、達者でな」

そう言って、『春夏秋』とは反対方向に立ち去りかけた。
しかし、その途中で不意に足を止めた。
大して重要な事でもなく、単なる思い付きの為だ。

「俺は最初に言っていたな。
 『知らず知らずの内に辿り着いたとすれば何かあるのかもしれない』と」

「あるいは――それは、あんたとの『縁』が原因だったのかもしれないな」

「いや、ただの下らない思い付きだ。つまらない話をして悪かったな」

「では、俺は行かせて貰う」

背を向けて、境内の奥に向かって歩いていく。
その途中で、『春夏秋』の『瞳』に宿る『冷たさ』を思い出していた。
同時に、それを見た時に感じた心の『引っ掛かり』の理由を悟る。

『刑務所』の中には様々な人間がいた。
盗みを働いた者がいれば、人を騙して捕まった者もいた。
無論、『殺し』を行った人間も存在した。
多くの人間を殺めた者も、その中にはいた。
そして、その人間の瞳の奥には、『冷たい光』が宿っていた。

(――『時差ボケ』のようなものだ)

(長い間『塀の中』で生きていると、『外の世界』に出た時、
 感覚に『ズレ』が生じてくる)

(『恐らくは』――な)

降って湧いた『疑問』を、頭の中で打ち消した。
そして、一度も立ち止まる事なく歩き続ける。
まもなく、『宗像』の姿は社の奥へ消えていった。

411春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2018/09/24(月) 01:02:49
>>410

「『宗像』さんか、また会うかどうか分からないが・・・・大事に覚えとく。
それじゃあね。風邪ひかないように、気ィ付けなよ」

手を挙げて、『宗像』に言葉を送り、彼が立ち去るのを見送ってから
『鳥居』の方へと歩き始める。

「・・・・『縁』か」

歩きながら、別れ際に彼が呟いた言葉を繰り返す。

(確かに・・・・アンタとあっしにはある種の『縁』があるだろうね。
でも宗像さん・・・・アンタは『こちら側』じゃあないはずだ。
揺らめく炎があり、それに照らされる影がある。あっしは『影』だけど、
アンタは違う・・・・『炎の残滓』だ。そう、あっしは感じたよ)

ジジイにしちゃあキザな感傷だけどね、と独り笑う。

(そしてアンタが・・・・『こちら側』に踏み込まないことを、あっしは祈るよ。
いや、この『人殺し』に祈る相手なんていやしないが・・・・ああ)
(そいつを『願掛け』にすりゃあ、良かったかねえ)

『鳥居』を『くぐらないように』通り抜け、灰色のコートは街の中へと消えていく。
そして、『境内』は再び、静寂に包まれた。

412日沼 流月『サグ・パッション』:2018/10/08(月) 04:22:30

「それでそいつに言ってやったわけ。ね?
 『流月より良い点とってからにしろよ』って。
 ま〜〜ね、流月イメージに『反して』頭良いわけよ」

        プププッ

「いいよいいよ、今度教えたげる。
 あれくらいの問題ワンパンよワンパン。
 うん、ああ、もうそんな時間だっけ。
 話し込んじゃってごめ〜ん、また今度」

              pi

「…………」

そいつは通話を終えてスマホをポケットに入れる。
ここは古い『ボウリング場』。日沼流月は一人だ。

ここには『練習』に来ている。
だから人を誘わなかった。

        ズ
           ォ

               ゴロロロロッ

ボールを投じる手に重なる『黒衣』のヴィジョンは、
どうせ誰を連れてきたって、見えないものなのだから。

(やっぱり、自分で投げるよりもずっと雑になってる)

                       カコッ

                  ・・・記録は一本。

413日沼 流月『サグ・パッション』:2018/10/10(水) 00:49:57

流石にこう辺鄙な場所で人と会う事は無く、
一人きり投げ終えたので施設を出たのだった。

            ―> 『歓楽街 ―星見横丁― 』の>>447へ続く。

414三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2018/11/06(火) 22:11:01

海――そこに人影があった。
ブレザーにスラックスというキチッとした身なりをしている。
少年とも少女ともつかない中性的な顔立ち。
外見から分かる年齢は大雑把に言うと『子供』だが、具体的な年は判断しにくい。

季節外れの海には、他に誰もいない。
だから、歩きながら考え事をするには丁度よかった。

(『一番良い死に方』ってどんなのだろう……?)

(どうすれば、そんな死に方ができるんだろう……?)

こんなことを考えているからって、何も死のうと思ってる訳じゃない。
いつか来る時のために準備をしておきたいと思ってるだけだ。

「――こんにちは」

ふと、前方から来る人とすれ違い、足を止めて丁寧に挨拶する。
それから、また一人で歩いていく。
砂浜に腰を下ろし、海を眺める。
少なくとも、溺れて死ぬというのは自分の求める死に方じゃなさそうだ。
僕は、考えうる限り最も素晴らしい最期を迎えたいのだから。

(『君』が、その助けになってくれるといいんだけど……)

      ズォォォォォ……

その手にシャベルを携え、フードを被った墓堀人を思わせる不気味なスタンドが傍らに姿を現し、幽鬼のように佇んでいる。

415三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2018/11/16(金) 00:20:31
>>414

立ち上がり、また歩き出す。
その姿が小さくなっていき、やがて完全に見えなくなった。

416 坂下 佳侑希『レイルウェイ・チルドレン』:2018/12/29(土) 22:04:00


タタン
   タタン


            タタン
              タタン


すっかり寝入ってしまっていた私は、それでもなんとか目的駅の手前で目を覚ます。
普段からわりとこういうことってあって、なんでいい感じのタイミングで起きれるのかって、
ちょっと不思議だったりもするんだ。


    タタン
       タタン


          タタン
             タタン
 

なんだかずっと遠くに来たって気もするし、
それでもそんなに変わったところに来たわけじゃないんじゃないかって風にも思えて、
寝起きなことも手伝って、どうにも夢心地って感じではあるんだけど。



           タタン
             タタン
                     タタン
                        タタン



「『レイルウェイ・チルドレン』が、いるからね」
 
 
私は私の『手のひらサイズの未来予知』をそう呼んでいて、
知らない土地で、知らない人と、どうにもならないことになっても、
この子がどうにかしてくれるって知っているから。


           タタン
             タタン
                     タタン
                        タタン


だからきっと、これからここで起こるなにごとだって、
楽しんでいけるんだって思うんだ。

それに、あの日あの時出会ったっきりの、
もう一度会えたらいいなって思うあのひとたちに、たとえばもう一度会えるんだとしたら。


 タタン
   タタン
            タタン
                タタン

「それはきっと、いっとう楽しいことだって思うから」
 
 
言って私は、列車を降りる。
ずいぶん遠くまで来たような、それでも隣の街かのような、
なんとも言えない心持ちで駅のホームへ降り立った私は、
この街の空気を思い切り一息に吸い込んで、その代わりにひとつ、控えめに呟いてみたりして。
 
 
「うん。よろしくねえ」
 
 
 

坂下 佳侑希『レイルウェイ・チルドレン』 → 『移住』

417三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/07(月) 21:44:54

    テク テク

町のどこかを歩いています。
歩き続けています。

         ピタ

立ち止まりました。
そして気付きました。

「――知らない場所です」

どうやら迷ってしまったみたいです。
キョロキョロと辺りを見回します。

「すみません」

「ここはどこですか?」

近くにいる人(>>418)に聞いてみたいです。
教えてもらえたら嬉しいです。

418鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/01/07(月) 23:02:46
>>417

その辺りを歩いていたのは、竹刀袋を肩にかけた学生服姿の少年だった。
刀の切っ先のような前髪が、右目にかかっている。

「…おや?」

話しかけられ、足を止める。振り向けば、幼い少女がそこにいた。
質問の内容からして、迷子だろうか?保護者は近くにいるのか?と考えながらも、笑顔で答える。

「ここは町外れの神社の前だよ」「君は、初詣に来たわけじゃなさそうだね」

419三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/07(月) 23:32:33
>>418

鉄さんを呼び止めたのは、12歳くらいの子供でした。
体付きは細く、顔立ちは中性的です。
襟足が大きく跳ねていて、長い睫毛がクルンとカールしています。

「そうでしたか」

「ありがとうございます」

     ペコリ

お礼を言ってお辞儀します。
礼儀は大事です。

「――はい」

「一人で散歩してたら迷ってしまいました」

「お兄さんは何をしてるんですか?」

お兄さんに聞きながら、肩の袋に視線を向けました。
何か細長いものが入ってるみたいです。
あまり見かけないものなので、ちょっと気になりました。

420鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/01/07(月) 23:48:51
>>419

「どういたしまして」

しっかりとお辞儀をする子供に、微笑ましいものを感じつつ頷く。
少女かと思ったが、ひょっとしたら少年だったかもしれない。
どちらにせよ、あまり問題はないが。自分は女性は苦手だけれど、妹より年下(に見える)なら問題ない。
しかし礼儀正しい子だ。親の教育が行き届いているのだろうか。

「分かった、なら君が知ってる場所まで送ろうか」
「ただ、先にお参りをしてきてもいいかな」「すぐに終わるから」

『神社』を指差して、自分の目的を口にする。
と、そこまで少女に伝えたところで、その視線に気付いた。

「あぁ、これは部活の帰りだからね」
「オレは私立清月学園高等部の二年生、鉄 夕立(くろがね ゆうだち)」「『剣道部』なんだ」

421三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/08(火) 00:10:11
>>420

「――いいんですか?」

「ありがとうございます」

    ペコリ

優しい人です。
親切な人が近くにいてくれてよかったです。

「じゃあ、一緒にお参りしたいです」

   テク テク

「三枝千草です。三つの枝に千の草と書きます」

「中等部の一年生なので鉄先輩の後輩です」

「よろしくお願いします」

     ペコリ

「剣道部ですか――」

「大変そうです」

剣道部といったら、毎日厳しい練習をしてるんだと思います。
それを続けてる鉄さんは、きっと凄い人だと思います。

「――鉄先輩は、いつから剣道をしてるんですか?」

422鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/01/08(火) 00:24:08
>>421

「三枝さんか。よろしく」
『ペコリ』

こちらも三枝と同じくらい頭を下げて、互いに自己紹介を終える。
三枝千草。名前と名字で韻を踏んでいるのが面白い、覚えやすくいい名前を付けられたなぁ、と思った。

「おや、三枝さんも何か願い事があるのかな」

共に参詣する、という三枝にふと訊ねながらも歩き出す。
特に願い事がなくても、お参りする人間がいてもおかしくはないが。
三枝と年が近い自分の妹は、間違いなくそういうタイプではない。もっと己の欲望に忠実だ。

「小学四年生からだから…おおよそ8年くらいだな」「三枝さんは何か部活動に入っているのかい?」

他愛もない話をしつつ、軽く会釈をして鳥居をくぐった。境内に入る。

423三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/08(火) 00:56:26
>>422

「はい、一つあります」

「叶うかどうか分かりません」

「叶えられたら嬉しいです」

いつも考えているお願いが一つあります。
それは『将来の夢』です。
大げさですけど、『人生の目標』みたいなものかもしれません。

「8年もですか――」

「凄いです」

素直に感心した表情で、両方の目を少し見開きます。
やっぱり鉄先輩は凄い人でした。
見習いたいです。

「――いいえ」

「部活動には入ってないです」

「でも、時々生徒会のお手伝いをしてます」

「書記のようなことをしてます」

運動は得意ではないです。
体育の成績は、昔からずっと下の方です。

424鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/01/08(火) 01:10:39
>>423

「そうか」「努力すれば、きっと叶えられるよ」
「少なくとも、オレはそう信じて今まで続けてきたからね」

三枝が口にした、願い事。
気にならないといえばウソになるが、年頃の子供なら、秘密にしておきたい事の一つや二つはあるだろう。
今はただ、彼女が願ったことがやがて叶うことを祈るだけに留めておく。

「あぁ、いや…ありがとう」「昔から、地道に続けるのは得意な方なんだ」

少女の純粋な視線に思わず照れくさくなり、頬をかく。
自分はどちらかといえばセンスのある方ではないが、継続する事は苦ではない。

「そうか、生徒会のお手伝いを…立派だね」「三枝さんは礼儀正しいし、自立心もありそうだ」
「いずれは生徒会に立候補するのかい?」

生徒たちが自ら、学園の運営に携わる生徒会。
その手伝いをしているとは、確かにこの子なら納得できるかもしれない。
そんな事を考えながら、手水舎で手を清めた後、賽銭箱の前に辿り着いた。
財布から五円玉を取り出し、その中に入れる。

425三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/08(火) 01:42:20
>>424

「ありがとうございます」

    ペコリ

「叶えられるように頑張ります」

苦しまず見苦しくもない素敵な死に方をすること。
それが将来の夢で、人生の目標です。
それが本当になったら嬉しいです。

「鉄先輩のお願いも叶うように応援しています」

鉄先輩の願い事が叶ったら、千草の願い事も叶うでしょうか。
でも、そういうのは他力本願です。
自分の夢は自分の力で叶えないといけません。
だから頑張ります。

「でも、まだまだ見習いです」

「鉄先輩みたいに続けていきたいです」

まだお手伝いのレベルです。
いつか本当に立派になりたいです。

「できるかどうか、まだ分かりません」

「もし――できるならしてみたいです」

ほんの少し強い口調で、鉄先輩に答えます。
立派な人間になれたら、目標に近付ける気がします。
たくさんの人から慕われるような立派な人間になりたいのです。
そうしたら、人生の最後を安らかに迎えられると思います。

「――叶いますように」

鉄先輩と同じように手を清めて、小銭入れから五円を出しました。
賽銭箱に入れて、お参りをします。

426鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/01/08(火) 01:59:53
>>425

『ガランガラン』

邪気を払うと言われる鈴を鳴らし、二礼、二拍手。そして再度一礼。
三枝の、幼い見た目にあまりにそぐわない願いはつゆ知らず。鉄もまた、同様に願いを心に秘めて、目を瞑り祈る。

(─────どうか、アイツと仲直りできますように)

しばし、静寂。

そして目を開き、手を下ろした。隣の三枝に顔を向ける。

「ありがとう」
「もし三枝さんが立候補したら、その時はオレも応援させてもらうよ」
「君みたいなしっかりした子が生徒会なら、同じ中等部にいるウチの妹も安心だからな」『ニコリ』

そして、鳥居の下をまた潜った。二人揃って、『神社』の外へ出る。

「…さて、どの辺りなら分かるかな」

三枝に訊ねる。先程の言葉通り、彼女が知っている場所まで送っていくとしよう。
この街も安全とは限らないのは、つい先日身をもって体感したのだから。

427三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』:2019/01/08(火) 02:28:11
>>426

「こちらこそありがとうございます」

    ペコリ

「その時は頑張ります」

「その時のために、今は今を頑張ります」

千草は鉄先輩の願い事は分かりません。
鉄先輩も千草の願い事は分かりません。
だけど、願い事を叶えたいと思っていることは同じです。

「お手数をおかけします」

「知ってる場所まで、そんなに遠くないと思います」

「ここまで歩いてこられたので」

町の方を見つめて答えます。
あっちに学校があります。
家もあります。

「鉄先輩にお任せします」

「しばらく歩いていたら、分かる場所が見つかると思います」

     テク テク

ゆっくりとした足取りで歩き出します。
そして、鉄先輩の顔を見上げます。

「鉄先輩の妹さんのお話が聞きたいです」

「――してくれますか?」

お互いのことを知るために色々な話をするのが大事だと、
小銭を拾ってくれた宮田さんが教えてくれました。
それに、鉄先輩は立派な人です。
だから、立派な鉄先輩の妹さんの話は気になるのです。
他の人達から、見習えるところを見習いたいです。
そうして少しずつ積み重ねていけば、目標に近付いていけると思います。

428鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/01/08(火) 02:59:21
>>427

「分かった、学校の近くで目立つ建物にしようか」

道に迷ったといえど、流石に右も左も分からない状態ではないか。
おおよその方向は分かっているなら、後は自分がそちらへ向かう道を歩けばいいのだ。
しかし道すがらの話として提案されたのは、妹の話だ。
思わず、眉根を寄せてしまう。

「妹か…アイツは君と違って、あまり立派なヤツじゃないぞ」
「朝陽(あさひ)はワガママで感情的だし、すぐに手が出る方で…」

「…まぁ、しかし素直で裏表はないし、情にも厚いタイプだよ。友人も多いみたいだ。君の二個上だな、中等部三年生」
「特技はピアノ。身内へのひいき目かもしれないけど、結構上手いと思う」
「………今は、ちょっと腕をケガして演奏できないんだけどな」

竹刀袋を握る手に力がこもる。
自分があの店へと赴くことになった、その原因だからだ。とはいえ、彼女に話していたずらに怖がらせることもあるまい。

「君のことを話しておくよ。きっと立候補の際の支援者、その第2号になってくれるはず」
「もっとも、オレより先にもっといるのかもしれないけどな」『ハハハ』

そんな他愛もない話をしながら、のんびりと道を歩いていく。
鉄にとって守りたいものが、人が、また一つ増えた日だった。

429稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/01/15(火) 19:58:36

星見町で密かに熱を帯びるスポットといえば、
通りに根を張るように存在する『地下アーケード』。

アンティークグッズやジャンクショップ、
特殊な専門店、怪しげな異国料理屋など、
表通りや歓楽街ではあまり見かけないような、
どこか『マニアック』な店が並ぶ地帯で……

「…………」

        トコ トコ

恋姫のような『子ども』は、わりと目立つ事になる。

430降神志一『プラガーシュ』:2019/01/18(金) 01:48:10
>>429

しょぼくれた顔の男がいる。
目にかかるくらいの癖毛と、黒縁の眼鏡。
背中を丸めて俯き気味に歩いている。

「……」

(あれ、あの人どっかで見たかな……)

ふと、前から歩いてくる子供を見た。

431稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/01/18(金) 02:10:38
>>430

「………………??」

(なんだあいつ……僕の顔見てるな。
 見るからにオタクっぽいし…………
 ファンか……? ただのロリコンか……?)

         トコトコ
               …ピタ

距離が詰まり切る前に、
恋姫の方から脚を止めた。

「……」

(エンカは避けたいけど……
 この距離で、目ぇ合っちゃったし、
 ファンならスルーするのはヤバいよな……)

    (でもロリコンならもっとヤバいぜ……)

一仕事終えた帰りで、自意識が高まっていた。
あるいはこの場所特有の『アングラ』な空気が、
恋姫の中のそういう成分と反応したのかもしれない。

「……何、僕の顔になんかついてる?
 あー……僕の方から話しかけたから、
 『声かけ事案』にはならないわけだが……」

           「……気のせいなら、すまん」

結局、声を掛けることにしたのだった。

432降神志一『プラガーシュ』:2019/01/18(金) 23:10:01
>>431

「いや……」

(声かけられ事案だな。まぁ、多分、そっちが声かけられたって言えば警察は信じるけども)

アングラな空間であることはよく知っている。
なので、ここで何か起きると良からぬ考えをされることもある程度予測できる。

「どこかで見た顔だと思ってね」

「そういうことよく言われない?」

433稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/01/19(土) 00:23:51
>>432

「……ふぅん……じゃあ何で……え?」

    アンダーグラウンド
まさに『地下の世界』なこの商店街は、
当然、『水面下』の悪いウワサにも事欠かない。

恋姫としても、それは承知している。

「……え、やばぁ〜っ」

「それ……ナンパのテンプレトークじゃん。
 『マンガ』でしか聞いた事なかったわ」

           ニタァ

「流石にナンパされた経験はそんなにないぜ……
 『YESロリータ・NOタッチ』って言うじゃん。
 僕とか、常識的に考えて完全アウト…………えひ」

からかっているのかなんなのか、
陰気な笑みを浮かべて妙な事を口走る。

        「で、……どこで見たと思う?
         『夢で見た顔』とかはNGで」

逃げ出してもよかったのだが、
害意という物を感じない気がするし、
なにより――――自分も無力ではない。

いかにもひ弱そうな少女が妙に自信ありげに話す姿は、
奇異に映るかもしれないし、『イキってる』だけに見えるかもしれない。

434降神志一『プラガーシュ』:2019/01/19(土) 01:37:01
>>433

(やべぇ、何だこの人)

(リアルにこんな人なのか)

「ナンパじゃないよ……」

ちょっと眉をひそめて言葉を返した。
そういうことをするタイプではない。

「テレビとかで見たかな……現実の……」

435稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/01/19(土) 01:56:53
>>434

「えひ……違うならいいや。
 変な事言って悪かったな……」

(なんか……普通のやつっぽいな、こいつ。
 ファンってわけでもなさげだし……
 最近変なヤツのが多かったから麻痺してたか)

どこまで本気なのか分からないが、
妙な口調は完全に演技という風には見えなかった。

「テレビ………………テレビかぁ」

         「……お正月に見た?
          ……『地方ローカル局』で?」

    スッ

小さく手ぶりしたジェスチャーは、『餅つき』だ。
すぐにポケットの中に手を戻し、笑みを浮かべる。

「今のは、超イージーモードの特大ヒント。
 当たっても賞品とかは無いけど……えひっ」

そういえば――――そんな番組を、観たかもしれない。
地元のアイドル(らしい)少女たちが『神社』で餅をついていた。気がする。

                 ・・・この桜色の瞳も、そこにあった気もする。

436降神志一『プラガーシュ』:2019/01/19(土) 02:27:13
>>435

(まぁ、前にあったやつよりは全然普通……)

人に会うといいことも悪いことも起きる。
そういうのは面倒だがそういうことが人生に厚みを持たせる。
だから無下にしにくい。
まぁ、無下にするが。

「あぁ、見てたよ」

(その番組のエキストラ落ちちゃったけど……)

「稗田こいひめさんだろう? Veraisonの」

437稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/01/19(土) 02:51:45
>>436

「えひ、当たり……今日は、オフだけど……」

           「……ん?」

撮影現場で会った事もない。
顔も、見た記憶はない。

(先入観抜きで……普通にしゃべると、
 なんか……なんだ……引っかかるな……)

さっきまでは何も感じなかった。
それくらい『僅かな』印象だった。

「お前……あれ、なんか、喋った事ある?
  ……えひ、もちろんナンパじゃないけど」

「……なんだろ、まあいいや……?」

握手会とかで似た顔はいた気はするが、
流石に『知ってる顔』なら気づけるのに。

声も聴いた事はないのに。
『何かわずかに引っかかる』気分があった。

「……とりあえず……見てくれてありがとな。
 ……面と向かって言うのも……あー、照れるけど」

                 「……えひ、礼は言うぜ」

438降神志一『プラガーシュ』:2019/01/19(土) 03:06:44
>>437

「喋ったことはなくても、会ったことはありますよ」

「多分、覚えてないと思いますけど」

目を逸らし、少し硬い口調で答えた。
どこか投げやりな雰囲気があった。
多分本人にはそんなつもりは無いのだろうが。

「いえ、ファンなので」

(それが理由でこの世界に来たので)

(それだけじゃないけど)

間違いはないと思いたい。

「応援してますこれからも」

(一緒に仕事がしたいので)

439稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/01/19(土) 03:57:09
>>438

「あー…………」

「…………握手とか、した事あったっけか。
 ライブ来てたりとか…………あー……ごめん。
 ファンみんなの顔、覚えるくらいじゃないと、
 ……『みんなのお姫様』としては不合格だわな」

全てのファンの顔を覚えていられたら、
それが本当に理想的な偶像なんだと思う。

稗田こいひめは『ローカルアイドル』であり、
そんな狭い世界も、全てを理解してはいなかった。
投げやりな返しで、それを指摘されたように思えた。

「そんな僕でも……応援してくれるならさ……
 僕はそれに……期待に応えるよ。
 えひ、ちゃんと出来るか分からないけど」

「…………ありがとな」

            「……えひ、本気だぜ?」

だから、せめて、覚えておこうと思っていた。
この青年の言葉は……何か熱を感じるから。

「……今日オフだし、特別扱いは出来ないから、
 こいひめとしてサービスとかは出来ないけど」

           「僕は……稗田恋姫は、お前が……
            僕のファンだって事、ちゃんと覚えとく」

440降神志一『プラガーシュ』:2019/01/19(土) 19:18:15
>>439

「あーライブ入ったことある、かな」

「現場でも見た事あると思います」

(がっつり会ったのは今日が初めてかな)

この場合の現場とはライブ会場ではなく、仕事の現場で間違いない。
いつだったかすれ違っていたかもしれない。

「不合格なんてことはないです!」

不意に大きな声が出て、自分でも驚いた顔をした。
慌てた素振りを見せずに口を一旦閉じる。

「無理だし、全員覚えるのは。そういう心意気っていうのは大事だけど」

「いい事ばっかりじゃないし」

良いファンも悪いファンもいる。
良くも悪くも熱狂的だ。

「……覚えてくれてたら、ありがたいです」

「励みになる」

441稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2019/01/19(土) 23:11:44
>>440

「そっか……まあ、ライブ来るだけがファンじゃないし、
 …………ファンだって言ってくれるやつは、大切なファンだよ」

「えひ、またどっかで見かけたら……応援ヨロシクな」

『降神』の事は知らない。『現場』で見たかもしれないし、
いわゆる養成所に足を運んでレッスンを受けたこともあるが、
恋姫は『芸能人の卵の男』に、さほどの興味を持って接して来なかった。

なにせ自分達以外でアイドルといえば、
よほど親しい面々を除いてしまえば、あとは、
『スマホゲーム』のキャラクターというくらい。
まして『男性芸能人』に至っては『推し』を聴かれて、
思わず言葉に詰まってしまうほどに『遠い』存在だ。

「僕も応援しとく……何に励んでるかは聞かないけど」

           「……ファンのする事だからな。
            僕が応援してやれるなら、してやんよ」

恋姫は『華やかな天上界』でなく、『光輝ける舞台』として芸能界を見ていた。
そして、その輝きが自分の『ファン』たちの心を照らす太陽になるなら、とてもうれしくて。

「えひ」

・・・笑みが浮かぶのだ。

「…………それじゃ、僕はそろそろ買い物してくるよ。
 次会う時は……僕はステージの上かな。えひ、なるべくデカいステージがいいよな」

                 「なるべく、いい席で見てくれよな……んじゃ」

442降神志一『プラガーシュ』:2019/01/20(日) 01:06:35
>>441

「応援してます」

多分これからも応援する。
が、この距離が縮まることはないのかもしれない。
確率からいえばそちらの確率の方が高い。
悲しいことだが、現実は花開かぬものの方が多い。

「はは」

励む。
何に励む。

(当然、芸事)

迷いなし。

「はい。大きなステージじゃなくても行きますけど」

「……さようなら」

去っていく人の背中にそう告げた。

(次は舞台袖にいられたらいいな)

443美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/01/23(水) 20:48:54

ある晴れた日の午後。
この街の何処かで誰かが『ラジオ』を聴いている。
スピーカーから流れてくるのは、カナリアを思わせるような明るく澄んだ声だ。

「――――今日ご紹介するお店は、星見街道商店街南口から徒歩5分っ!
 口コミで人気上昇中のベーカリー『Milky Way』です!」

「こちらは『クリームパン専門店』なんですねぇ〜。
 定番のカスタードクリームやホイップクリームから始まって、
 チーズクリームやチョコレートクリーム、
 メープルクリームやコーヒークリームなどなど、
 豊富な種類のクリームパンが選べるお店となっていますっ」

「お店の奥にイートインスペースが併設されていますので、
 そこで焼き立てのパンを食べる事も出来ますよぉ。
 お好みのパンとセットでドリンクも頂けちゃいます!
 ちょっとした休憩場所として、カフェ代わりに立ち寄るのもいいですねぇ〜」

「中でも特に人気なのが、その名も『幻のクリームパン』ッ!
 厳選された素材を惜しみなく使った、オーナーこだわりの特製クリームパンで、
 こちらは一日限定20個なのですが、
 いつも販売と同時に完売してしまう大人気商品なのです!」

「さて――この『幻のクリームパン』なのですが……。
 なんと今日は、私くるみの手元に届いております!
 そういった訳で、この味をリスナーの皆様にレポートしたいと思いますッ!」
 
   「では、早速…………」

           ムシャッ

          「――はむ……おぅふ……」

「――まずですねぇ……口当たりは思ったよりも軽くて、とても食べやすいです。
 糸が一本ずつ解けていくような甘さと言いますか、
 ふわっと香るような甘さと言いますか……」

「だけど、その後に来る味わいは凄く濃厚ですね。
 こう『ドンッ!』と響く感じとは違って、徐々に染みてくるような……。
 それが頂点に達した瞬間に感じられる濃厚さ!いやぁ〜、絶品ですねぇ〜」

「常日頃から思っておりますが、味を『声』だけで皆さんにお伝えするのは、
 なかなかどうして『難問』なんですねえ。
 どう表現すれば、私が感じているものを上手いこと伝えられるのかと……。
 ああッ、なんとももどかしい!」

「さてさて、くるみの私情は放っておきまして、引き続きレポートをお送りしますっ!
 意外にも、後味はサッパリしていますねえ。
 しっかりとしたコクがあるのに、しつこさみたいなものがないんですよぉ」

「濃厚でありながら、口当たりや後味は爽やかで、
 相反する要素を見事に両立させた逸品ですねぇ。
 例えるなら、抑揚のある奥深い味わいが、
 口の中で『メロディー』を奏でているとでも言いましょうか……」

「評判なのも頷ける納得の美味しさです!私くるみも大満足ですねっ!
 ただ……一つだけ『欠点』がありまして……」

「一回食べるとハマっちゃって、毎日でも食べたくなっちゃうんです!
 だけど、一日限定20個ですからねぇ〜。
 毎日買いに行くのは、ちょっと大変かもですねっ!」

「ご紹介したクリームパン専門ベーカリー『Milky Way』さんは、
 星見街道商店街南口から徒歩5分。
 限定商品の他にも、様々な種類のクリームパンを取り揃えておりますッ。
 お近くにいらした際は、是非お立ち寄り下さいっ!」

「――――続きましては、このコーナー!
 リスナーの皆さんと私くるみがお届けする『ツーショット・トーク』ッ! 
 本日のテーマは『オススメのお店』ですっ!
 あなたのオススメショップを、是非ともくるみに教えて下さいねぇ〜」

       プルルルル プルルルル

「さぁ、リスナーの方(>>444)と電話が繋がったようです。
 では――――」

           ガチャ

「こんにちはぁ〜!!
 『Electric Canary Garden』パーソナリティーの『美作くるみ』です!!」

444美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/02/01(金) 17:35:56
>>443

「――――なるほど〜ッ」

「星見街道に店舗を構える老舗洋菓子店『黒猫』さん!
 『チョコレートケーキ』がオススメとの事ですッ。
 ラジオネーム『スウィート・ダーウィン』さんからでしたッ!」

「いいですねえ〜、私も食べたくなってきましたよお。
 今度はソレを頂けませんかね、ディレクター?
 あ、ダメですか?自分で買いに行けと。アハハハハ……」

「気を取り直して、ここで一曲参りましょう!
 今日のリクエスト曲は――――」


【撤退】

445御徒町『ホワイト・ワイルドネス』【29】:2019/02/03(日) 21:24:27
「なぁぁ〜〜〜んだぁぁぁ〜〜〜〜〜〜ッッ!?

 そこはねェ、『優先席』ではないかと!
 私は言ってるんですよ、それがお解りにならないかァ?

 私を無視して公衆の面前でシコシコシコシコ……
 ――――見られたものじゃあありませんよ!」

夕方、『星見町』方面へと向かう電車の中。
多少は混み合う車内、『優先席』に座った若者に対し、
唾を飛ばしながら激を飛ばす、いかにも頭の固そうな老人が一人。

    「私をねェ、誰だと思ってるんですか!?

     そうでなくても、老人を前にですねェ、
     シャンと立って、席の一つでも譲ろうかと、
     そういった『配慮』がスジってものじゃあないんですかァ!?」

『スマートフォン』でパズルゲームをしていた若者は、
面倒臭そうに睨みを利かせながら、目の前の老人をシカトしている。
言ってることはともかく、言う通りにするのは「シャク」だと言ったところか。

誰か一人、勇敢な乗客が仲裁してくれれば、上手く進みそうだが……

446御徒町『ホワイト・ワイルドネス』【29】:2019/02/04(月) 22:54:22
>>445
「よくもまぁ、ナメたマネをしてくれたなァ!

 アンタもねェ、私のゲームに出演させてやりますよ!」


         プシュゥゥ――――z_____


                 「ダァ、  シャァァリヤス」

不穏な捨て台詞を吐き、老人は忌々しげに乗客全員を睨み付け、
足早に駅のホームへと降りて行った。

447鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/08(金) 00:42:09
怪しげなショップ街こと『地下アーケード』。
その中の一つ、『骨董品店』の前にて一人の学生が立っていた。
竹刀袋を肩にかけたその青年は、物欲しそうにトランペットを見つめる黒人少年のような雰囲気で、ウィンドウを眺めている。

「・・・・・・・・・・」

448鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/02/08(金) 01:13:44
>>447

         ガラガラ

ドアが開いて。

              スタ
                スタ 

『エコバッグ』を持った女……少女?が出て来た。
金色の瞳と、左右で後ろ髪の長さの違う黒髪。
アンティーク趣味を思わせる白中心の服装。

・・・・・『骨董マニア』かなにかだろうか?

「…………? どうしたの?
 ドアなら見ての通り開いてるけど」

そして声を掛けて来た。鉄よりは、多少年上に見える。

449鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/08(金) 01:30:12
>>448

「ああ、いえ・・・」「───ッ!!」

ただのウィンドウショッピングです、という二の句を鉄は継ぐことができなかった。
店から出てきた女性の特徴的な容姿が珍しかった。それもある。
そもそも若い女性が、このような『骨董品店』に何の用があるのか?そんな疑問も出てきた。
だが、何よりも鉄の言葉を妨げるのは、この相手が『女性』だからだ。

「あっ」「あ」「ええと」『サッ』

その金色の瞳と目を合わせるも、すぐに逸らす。
質問をされたのだから返さなければと思いながらも、一日中砂漠を歩いたかのような、掠れた声しか出ない。
心臓の音がうるさくて、冷静な思考ができなくなる。
そんな鉄が声の代わりに取った行動は。

「・・・・・・・・・・」

『スッ』

震える指先で、店頭のディスプレイを指差すことだった。
そこにはいくつかの、『日本刀』が飾られていた。

450鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/02/08(金) 02:06:34
>>449

「??」   「……ああ」

鳥舟学文は首を傾げた。
が、すぐに笑みを浮かべた。

「なるほど、なるほどね。
 日本刀――――かっこいいよねえ」

         ススッ

「ボクは詳しい訳じゃあないんだけどさ」

鉄からやや距離を置いて、
ディスプレイに並んだ刀剣を見る。
視線を合わせたりは、しない事にした。

「ウィキペディアだったか本だったかで、
 作り方を読んだことがあったんだよ。
 現代ではもう再現できない技術だとか、
 それがつい最近再現出来るようになったとか。
 そういうのが、まあ、けっこう好きなんだよね」

このまま立ち去るのはかえって気まずいし、
『こちらから話に行く』という方向性を選んだのだ。

だから返答は求めていないし、笑みも曖昧なものだ。

451鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/08(金) 02:33:25
>>450

「・・・・・・・・・・」

鉄は内心、安堵の息を吐いた。
言葉ですらないこちらの挙動から意思を汲み取ってくれた、この女性の優しさに感謝する。
目を合わせないのも、距離を置いてくれるのも、とてもありがたい。
ほんの少しずつだが、心が落ち着いていく。

「・・・・・何度も折り返して、鉄から不純物を取り除く作業」
「好きなんです」「そういうのが」

横を見ないまま、独り言のように呟く鉄。
そうした地道な作業の繰り返しの先にできる、日本刀の美しさと強靭さ。
それに心を惹かれる、というような事が言いたかったようだが、ままならない。

(もっとも、鑑賞しに来ただけではないけれど)

「あ」「あの」

「あなたは、何を」

今度は、鉄の方から問い返す。言葉が足りなくて、やや不躾になってしまったかもしれない。

452鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/02/08(金) 03:11:06
>>451

「わかるよ、なんとなくだけど」

深い追及はしない。
言わんとする事全部は分からなくても、
なんとなく分かるし……そこに謎はない。

「ボク?」

「ボクはねえ、わりと『アンティーク』が好きなんだ。
 いや、マニア、ってわけじゃあないんだけどね」

               ゴソ

「こういう置き物なんて心を惹かれちゃうんだよ。
 ああ、下にあるのは『仕事』だから気にしないで」

エコバッグを軽く広げて中が見えるようにする。
土台のように入った『梱包』済の商品の上に、
いくつかの『動物』を模した『置物』が確かにあった。

「要は、仕事のお使いのついでに欲しい物を買ってたの」

                 「内緒だよ、これは」
     スッ

置物を差していた指を自分の口元に動かし、
『内緒』の意志を悪戯っぽいジェスチャーで示した。

453鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/08(金) 03:40:24
>>452

>「ボクはねえ、わりと『アンティーク』が好きなんだ。
> いや、マニア、ってわけじゃあないんだけどね」

「・・・・・意外、です」「お若いのに」

それを言ってしまえば鉄もなのだが、青年の感覚からすると
男が刀剣に憧れを抱くのは分かるが、この女性のような若い人が骨董品を好むのは、珍しいようだ。
彼女が『エコバッグ』を開けてくれたのを感じて、視線をそちらへと向ける。

(下の商品は仕事用…この女性が買いに来たのは、動物のような『置物』の方か)

なるほど。理解できたが、それにしても珍しい趣味だな、と鉄は思った。
動物が好きなのか、こういった和風の置物が好きなのか、あるいは両方だろうか。
と、そのバッグを指していた指が移り─────女性の口元で止まって、微かに笑った。

『ボッ』
「えあっ」「は」

「・・・・・・・・・・はい」

顔を真っ赤に染めた鉄は、思わず顔を背けて頷いた。消え入りそうな声が共に出る。
我ながら情けない、と心の中で自嘲する。何度か会話をしたことがあるクラスメイトなら多少はマシだが、
初対面の女性ともなると、いつもこんな風になってしまう。
例えばあの女性、『音仙』に聴いて頂いた時のように。他に緊張、あるいは集中するものでもあれば何とかなるが─────。

(…この女性との会話が終わった後でもいいが。あまり長居をして、不審に思われてしまうのも困るし)


突如、学生服の青年の腕に重なるように、スタンドの『ヴィジョン』が発現する。
そしてその腕は、ショーウィンドウのガラスへと手を伸ばした。

「お仕事…とは、その、古物商とか、ですか?」
「いえ、仕事用のものも、こちらで購入されていたなら、ですが」

454鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/02/08(金) 21:11:01
>>453

「スマホも持ってるし、ゲームとかもするよ。
 化粧っけだって見ての通りなくはないしさ。
 だから、あくまでの趣味の『一環』ってところかな。
 あんまり、普段人にアピる感じの奴ではないんだけど」

「ボクは夜にね、こういうのを持ってね、
 ちょっと考えたりするんだよ……
 『なんで嘴がへんな色なんだろう』とか、
 『なんで服を着せてみたんだろう』とかね。
 いまさら答え合わせできない問題をさ」

        「そういうロマンが好きなんだな」

赤面をからかうほど『子供』でもない。
相手も『思春期』なのだろうし――
女子と話すのが苦手な男子はいるものだ。

もちろん、『悪い気』もしない。

「……」

「ん、骨董品が仕事ってわけじゃないんだけどね。
 『新品のデジタル時計』を置いちゃうと、
 しまらないような職場にいるんだよね。『巫女』なんだ」

「うちの神社の時計が、落ちて壊れちゃってさ。
 代わりにいい感じに『古い』のを買いに来たわけ」

というと、口元にやっていた指を下ろして、
ショーウィンドウの硝子を緩やかに指さす。

「それで……そう。ボクは『巫女』さんなんだけど。
 そうだからか、ちょっとした『霊感』ってやつがあってね」

              クス…

      「そこに『落ち武者』がいるって言ったら、どうする?
        いや、武者……っていうよりは『騎士』なのかな」

その笑みは興味とも、挑発とも、緊張とも取れる。入り混じった笑みだ。

455鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/08(金) 22:30:45
>>454

「なるほど…」

流石に浮世離れしている、とまではいかないらしい。
自分もスマホを使うし現代人だと思うが、時代劇も見るし和菓子は好きだ。
しかしそのような哲学的な問いは、自分のような若輩者にはなかった。
答えの出ない問いを楽しむというのは、なんというか、大人な感じだ。

「─────『巫女』」
「確かに」「便利なのは分かりますが、神社に電子機器が置かれ過ぎるのはちょっと違和感がありますね」

光景を想像して、思わず破顔する。とはいえ、顔はショーウィンドウに向けたままだったが。
スタンドを扱うことに集中すれば、段々と普段のように話せてくる。
そしてガラスの中の『日本刀』に掌の照準を合わせたところだった。


>「それで……そう。ボクは『巫女』さんなんだけど。
> そうだからか、ちょっとした『霊感』ってやつがあってね」

「『霊感』…ですか?」

『ピタリ』

思わず『シヴァルリー』の手が止まり、巫女さんの足元へと視線を移す。
これが友人の言葉なら一笑に付すところだが、年上の女性の言葉だ。
改めて、目の前のガラスケースに目を移す。
だが、そこにやはり霊はいない。自分の目では見えないのだろうか?
そこにはただ、『シヴァルリー』がいるだけだ。そう、騎士のような外見の自分のスタンド─────。

「・・・・・」「まさか」
「いや、貴方はッ!」

「『スタンド使い』ッ?!」

金色の瞳を見ながら、思わず叫ぶ。

456鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/02/08(金) 22:52:04
>>455

「参拝客がガックリしちゃいそうだしねえ。
 『雰囲気』だけで食ってるわけじゃないけど、
 雰囲気を食いに来てる参拝者さんもいるしさ」

「ボクは最近毎朝スマホの目覚ましで起きてるけど、ね」

趣味が古いと思われたくないのか、
デジタル機器も使っているアピールだ。

ともかく――――指先は『シヴァルリー』の、
頭の先から足先までをゆっくりと焦点にしていく。

「あんまり見つめないでよ。照れちゃうぞ?」

そう言いつつ目は逸らさない。

         「……『スタンド』」

「『スタンド』ね……その言葉は、知ってる。
 ボクのそれが『ヴィルドジャルタ』って名前なのも、
 なんとなく――――『直観』というか『神託』というか」

             「わかる」

        ニィーーーッ

「ま、出し方は、分からないんだけどね。
 だから『スタンド使い』っていうのは買い被りだ」

「ただ『見えるだけ』のボクにはね」

困ったような笑みを浮かべた。
それからその瞳を、『騎士』の目に合わせる。

「こういうのを、ボクも出せるのかもしれない。
 そう思うとちょっとテンション上がっちゃうわけだよ。
 気合を入れて出してるの? それとも『道具』でもあるの?」

                   「気になるんだよね」

457鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/08(金) 23:22:16
>>456

『スタンド使い』。
その言葉の意味を知らないものには、それだけで何故ここまで驚愕しているのか理解できないだろう。
しかし、その意味を知るものならば。見えない力で不可能を可能にする者だと分かれば、この反応も納得だろう。

「・・・・・」

もちろん、それだけで目の前の女性が危険とは限らない。どんな力も扱う者の意思次第だ。
だから、それを見極めなければならないし、同じように彼女にも伝えなければならない。
自分に敵対する意思はないと。


>「ま、出し方は、分からないんだけどね。
> だから『スタンド使い』っていうのは買い被りだ」

「・・・・・え」

だから、そんな鉄の意気込みは空振りに終わってしまった。
そんな事例を聞くのは初めてだったが、そういう事もあるのだろうか?
『音仙』に色々と教えてもらった自分には、分からない。

「その…どういう経緯で目覚めたんですか?誰かに、目覚めさせてもらったとか…」
「出し方は…オレの場合なんで、参考になるかは分かりませんが」
「心に『覚悟』を決めて、しっかりと出す『意思』を露わにすれば、この『シヴァルリー』は出せます」

458鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/02/08(金) 23:58:43
>>457

「『誰かが目覚めさせてくれる』ものなの?
 ボクは――――いつの間にか目覚めてた。
 いや、忘れてるだけなのかも、しれないけどさ」

「『意思』……」

          ググ
                バッ

          「ハッ!」

手を強く握りしめて、掛け声と共に開いた。

「うーん、気合を入れたつもりなんだけどね。
 『覚悟』ってやつも、決めてるつもりなんだけど」

何も、出ていない。
見た目が小さいスタンドとかでもなく、『何もいない』。
ヴィジョンが無いのか、目に見えないのか、
それとも――――何か『条件』が揃っていないのか。

「どうにも、あまり『都合のいい』力じゃないらしいね」

そう語る声は、悲観の色はなかった。
エコバッグを持ち直して笑みをもう一度浮かべる。

「『ヴィルドジャルタ』の事……もうちょっと考えてみようかな。
 『出ない』なんてことは、きっとないんだろうからさ、
 まあ……寝て起きたら全部『神託』されてるかもしれないけど」

         「君のおかげで『目標』が一つできた。
          そういえば『名前』を聞いてなかったかな」

                            トリフネマアヤ
「ああ、先に言うよ。ボクは『烏兎ヶ池神社』の『鳥舟学文』。よろしくね」

459鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/09(土) 00:34:23
>>458

「そういうパターンもあるんですね…」
「オレの場合は、とある『女性』に力を貸して頂いたので」
「ひょっとしたら、彼女なら何かを知っているかもしれませんが…」

一応『音仙』の居場所を伝えておくべきだろうか。あるいは念のために、『同行』していくべきか?
しかし、未だに能力の分からないこちらの女性ならば、危険はないか。

「・・・・・『見えない』」
「いえ、あるいはそういう『能力』なのかもしれませんが…」
「あなたにも動かしている感覚がないとなると、何らかの『条件』が必要なのかもしれません」
「『見えるだけ』…そういうことはないと思います」

推測でしかないが、自分の意見を述べる。
特にヴィジョンが出ないことを悲しんでいる様子はないが、少しでも希望になってもらえたなら。

「鳥舟さん、ですね」
「オレは清月学園高等部二年生。鉄 夕立(くろがね ゆうだち)です」
「もしよろしければ、連絡先を交換させて頂ければ」
「能力を確かめるのに、他の『スタンド使い』が必要になるかもしれません」
「もちろん、『スマートフォン』で」

そういってスマホを取り出す。
LINEで『音仙』に関する情報も後で送っておくとしようか。

460鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/02/09(土) 01:23:35
>>459

「そういう人間もいるわけなんだね。
 世の中広いな……って思う事は多いけど、
 スタンドの世界は、もっと広いのかな。
 広ければいいってものでもないけど」

『スタンドを与える女』。
何が目的なのか、何者なのかは知らないが、
それに会えば『ヴィルドジャルタ』も分かるのだろうか?

「心当たりは多いに越した事ないわけだし、
 また色々教えてよ『夕立(ゆうだち)』くん。
 もちろん――――『LINE』で、ね」

             ニィッ

「ま、別にメールでもいいけど。
 『SMS』はあんまり見てないからそれ以外ならね。
 もちろん、話す方が早いなら電話でもいいよ。
 あ、かける前にラインで確認とかしなくていいからね」

「そういうことしろって、言うヤツがいるらしいからさあ」

シックなイルカ柄のカバーに飾られたスマホを差出し、
とりあえずの連絡先交換を意外なほど手早く済ませた。

躍る指先は、やはり『古くないぞ』と主張する意図を感じた。

「それじゃ、ボクはそろそろ帰ろうかな。
 ああ――――『刀』をどうする気だったのかは、
 次までに考えとくからさ。また今度教えてよ!」

            「『教会』の『懺悔室』じゃあないけど、
             悪いハナシでもヒいたりしないからさ」

空の色が変わるような時間ではないが、偶然の出会いにしては話し込んだ。

「またボクからも連絡するよ、それじゃあね。
 あ、もし気が向いたら参拝来てね! ……じゃ!」

幸いにして、話の続きは電波に乗せていくらでもできる……止めないなら、鳥舟は立ち去る。

461鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/02/09(土) 01:58:08
>>460

「力になれることがありましたら、喜んで」

(スゴいな…むしろオレよりも『今ドキ』なんじゃあないか?)

彼女、鳥船さんの言葉に頷きながら、内心思う。
自分は『LINE』はやってはいるが、『SMS』に関してはかなり疎い。
友人に言われてアカウントを作ってみたものの、基本的に見る専門だ。連絡手段として使ったことはない。
少し冗談を込めて『スマートフォン』で、と言ったが本当に彼女は『古くない』人間のようだ。

「ああ、いえ、もちろんです」
「親に対して恥じるようなことをするつもりはありません」
「今度お会いできた時に、お話させて頂きます」

軽く頭を下げる。
実際にこの場で見せてもいいが、自分の能力は少々剣呑だ。
直に見せるより、こんなことをしたと後日口頭で話す方が良いかもしれない。

…というか、今更思ったのだが、女の子ならともかく、いきなり『女性』に対して連絡先を交換を持ちかけたのは軽薄だったのでは?
『スタンド』の話に集中し過ぎていたが、冷静になっていくと、急に羞恥心が込み上げてきた。
また赤面しながら、その金色の瞳から目を外してしまう。もう少し手順というのを踏むべきでは?
手順なんてものは全く分からないが。いや待て、そもそもそういう目的ではなくて───。
などとテンパっている内に、彼女の姿がやや遠くなっている。

「あっ、えっと、その」

「………はい」

「また、是非とも」

小声で呟き、会釈をして、背中を向けた彼女を見送った。
実際、自分にはまだ参拝しても叶ってない願いがある(>>426)。
また願掛けにいくなら、今度は『烏兎ヶ池神社』へと行くのもいいだろう。
…もっとも、その場合はもう少し女性に対して慣れておいた方がいいかもしれない。
そんな事を思いながら、『シヴァルリー』を改めて『日本刀』へと向けた。






(『扱い』は申し分なし。『携帯性』も悪くはない)
(けれども『値段』と、見つかった時の『危険性』が問題だよな…)
(それを言ってしまえば、『包丁』や『ナイフ』でも同じだが)

『バキィンッ』

(…というか、これ片方ニセモノじゃないか)
(とりあえず、ここも『メモ』に書いておこう)

(お借りしました、ありがとうございました)『ペコリ』




そして数分後、鉄も『骨董屋』の前から去って行った。

462御徒町『ホワイト・ワイルドネス』【10】:2019/02/22(金) 21:41:36

    「あ゙ 、あ゙ぁぁ〜〜〜〜〜ッッ!?」


    「だからねェ、体調が悪いと、言ってるじゃあないですかァッ

     急に、ってねェェ〜〜〜ッッ
     私みたいな年寄りを捕まえてねェ、
     ナメたことヌカしてンじゃあないですよぉ!」

    「だからこうやって、連絡してやってるんじゃあないの! ん!?
     ガキ共と違って、わざわざ『電話』を寄こしてやってるんですよ!」

    「ちょっと連絡が遅れてからってねェ、
     鬼の首でも取ったかのように、よくもまぁ粋がってくれましたねェ!」

『駅』のロータリーの前、ガラケーを片手に、
デカい声でがなり立てる老人がいる。

    「ええッ!?  『チューター*1』風情がァ!
     電話で好き勝手言えるなら、直接来てみなさいよォ!」


             カァー      ベッ!


    「アンタみたいな無能がぁ、雑用の御用聞きでおまんま食えるのもねェ、
     私がッ!  『御徒町満志』が、ガキ共のケツをケリ上げてこそでしょう!

     その威光も忘れて、『次は早めに連絡をください』だァァ〜〜〜ッッ!?
     くれくれくれくれ、やかましいわァ!   切るぞォ!」


     PI!             「ぜぇぇー    はぁぁー ……」

衆目を集めながら、『体調不良』がウソかのような罵声をがなり立て、
電話を切った頃には、息を荒げながら、ヨロヨロと歩道へと踊りだし


                   ゴッ


>>463へと身体をぶつけた。


*1 御徒町の勤める専門学校での、『職員』の呼び方。
   『講師』では手の回らない業務に注力してくれる、縁の下の力持ち。
   当然、彼らがいないと学校運営自体が成り立たない。

463御徒町『ホワイト・ワイルドネス』【4】:2019/02/28(木) 23:08:54


           ヴォォォ  オオオオンンンッ


      『な、なんだ!?』

                      『おい、ジイさん!』


       「んあ、  」

                   「えっ」


        ドォォォ――――z________ンン!!!


突如、歩道へと乗り出すように疾駆する、一台のトラック。
銀色に光るボディに気付き、あわや避けようとするも時すでに遅し。


              ピーポー
                        ピーポー

                                  ピーポー


御徒町『ホワイト・ワイルドネス』⇒『???』

464美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/03/06(水) 22:14:48

この街の何処か。
誰かが『ラジオ』を聴いている。
スピーカーからは、『カナリア』の歌声を思わせる、よく通る澄んだ声が流れていた。

    「今日も貴方の隣に電気カナリアの囀りを――――」

           「皆様いかがお過ごしでしょうか?」

     「『Electric Canary Garden』」

         「パーソナリティー・美作くるみです」

    「今回は少し趣向を変えて、
     いつもよりしっとりした『大人のムード』でお送りしていきますよ?」

 「さて……本日はリスナーの方から、くるみへの質問を頂いております」

 「『くるみさんのマイブームは何ですか?』」

 「そうですねえ……。
  趣味は色々とあるんですが、最近ハマッてるのは『小物集め』でしょうか?
  特に『小鳥モチーフ』の小物を見つけると、つい手が出ちゃいますねえ」

 「小物に限らず、鳥関係の雑貨は割とよく買ってます。
  この前も、コマドリのペーパーウェイトとインコのマグカップを買ったばかりですしね。
  あ、マグカップは『ペア』ですよ。相手もいないのに。アハハハハ……」

 「おっと――今回は『しっとりした雰囲気』で進めるんでしたねえ。
  いやいやぁ〜、うっかり忘れちゃう所でしたよぉ〜!
  では、気を取り直して……コホン」

 「本日、リスナーの皆様とお話するテーマは――『あなたのマイブーム』です。
  皆様からのお電話を、くるみは心よりお待ちしております」

 「――――早速、リスナーの方(>>465)と電話が繋がったようですね。
  もしもし、こんにちは。こちらは美作くるみでございます」

465稲崎 充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2019/03/06(水) 22:33:38
>>464

「≪灼熱≫と≪冷気≫の双龍が畝りを上げ咆哮する日々。
更に、無限にも等しき杉の≪木霊≫の軍勢の猛攻。
哀れな≪凡夫≫共は≪蹂躙≫されぬ為に≪回復薬≫に頼る。
≪伝播者:美作≫…、汝、患いはないか?≫」


電話口から女性の声が聴こえてきた。


「我は≪伝播者:美作≫に≪電波≫を用いて≪対話≫するのは初めて故。
≪仮初≫の名を持たぬ≪愚者≫。
なので≪真名≫である≪稲崎≫を名乗らせて貰う。
≪製造日≫はあえて伏せておくが、
この≪世界線≫では≪生死≫を司る職に就いてる」

466美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/03/06(水) 23:25:32
>>465

(――なるほどね)

電話から聞こえたのは奇妙な語り口だった。
ある意味では放送事故とも呼ぶ事も出来るだろう。
頻繁にではないが、こういった事もたまにはある。

 「はい、『稲崎さん』ですねえ。お電話、ありがとうございます。
  幸い身体は昔から丈夫な方で、病気一つした事がないんですよぉ」
  
 「お気遣いいただきまして恐縮です。お医者さんでいらっしゃるんですか?
  それとも整体とか……。いや、何しろ素人なものでして」

 「どうも不勉強で申し訳ありませんねえ」

しかし、美作は取り乱さない。
何故なら『プロ』を名乗っているからだ。
スタッフも、それを理解して特に通話を切らせようなどとはしていない。

 「――さて、本日のテーマは『あなたのマイブーム』となっております。
  そんな訳で稲崎さんの『今ハマッているもの』について、お話いただけますでしょうか?」

467稲崎 充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2019/03/06(水) 23:52:54
>>466

「≪木霊の群勢≫、≪季節の群勢≫など見えなき≪疫病≫は勿論脅威だが、
この≪世界≫にはありとあらゆる≪悪≫が蔓延っている…。
我と同じ≪月≫の≪院≫に所属する≪骨の騎士≫も、
先日≪鉄の牛≫に突撃され、≪脚≫を砕かれ≪民の骨≫を守る職務からの離脱を余儀なくされた。
≪伝播者:美作≫もせいぜい気をつける事だなッ!ハハハ!」


電話の向こう側のラジオ局の様子など露知らず、楽しそうに話を続ける稲崎。


「既に≪伝播者:美作≫に看破されてしまったが、我は≪月≫の≪院≫の≪騎士≫だ。
守りし≪月≫については≪凡夫≫には理解できないだろうからあえて伏せておくがな。
クックック…!≪黒魔道≫…!

我の周囲での≪流行≫…!ああ!あるぞ!
ーーなんとッ!≪断罪≫の≪傍観≫だッ!
最初は他人の≪罪≫と≪罰≫が下る瞬間をデバガメするのを趣味とするのは、
些か下世話ではないかと躊躇していたのだが、
いざ出向いてみたらッ!中々に趣があるッ!

それにだッ!≪罪人≫を擁護する≪向日葵の騎士達≫がやはり弁が立ってだなッ!
あの達者な≪舌≫にはこちらも≪舌を巻く≫ッ!
加えて!≪断罪の場≫で見たとある若き≪向日葵の騎士≫は中々に男前でだッ!
最近では、≪断罪≫ではなくあの≪騎士≫目当てに通う日々だッ!ははは!」

468美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/03/07(木) 00:54:17
>>467

 「ああ〜、『交通事故』ですかぁ〜。それは、お気の毒で……。
  私も普段スクーターに乗ってるので、事故に遭うのは怖いですねえ。
  もちろん起こす側になるのも――ですけど」

 「私は声を届ける事しか出来ませんが、
  同僚の『整体師さん』の入院中の娯楽の一つになれたら幸いに思いますねえ。
  ――どうぞ、お大事に」

 「私は、まだ『整骨院』のお世話になった事はありませんけど、
  身体の調子が思わしくなくなったら、その時は是非お願いしたい所ですねえ〜。
  いざ悪くなる前に、一度見てもらうのも良いかもしれませんね。
  『治療よりも予防が大事』って聞きますからねぇ〜」

 「はい――なるほど、『裁判の傍聴』ですかぁ〜。
一風変わった感じがして新鮮ですねえ。
  ドラマで見た事はありますけど、実際に目にした経験は確かにないですねぇ〜。
  
 「何か、一種の『格闘技』のような雰囲気を感じますよねえ。
  『知恵と弁舌の格闘技』といった感じでしょうか?
  私も『舌』で仕事をしてますけど、『ジャンル』は全然違いますもんねぇ〜」

 「それで、カッコイイ『弁護士さん』を眺める事にハマッてらっしゃると。
  ありますよね、そういう事。
  何ていうか、いつの間にか目的と方法が入れ替わってるというか。
  私の場合は『逆』なんですけども。
  『新しい出会い』を求めて『ジム通い』してたら、
  何だか『鍛える方』に熱中しちゃってた事がありましたねぇ〜」

 「――――はいッ!『稲崎さんのマイブーム』でした!
  『裁判の傍聴』、なかなか見ない『マイブーム』が聴けましたねえ。
  皆さんも、今まで出掛けた事のなかった場所へ足を向けてみてはいかがでしょうか?
  新しい出会いが見つかるかもしれませんよぉ」

 「では、本日はお電話ありがとうございましたッ!
  お話して下さった稲崎さんには、『Electric Canary Gaeden』から、
  番組特製クオカードを差し上げます!」
 
稲崎 充希『ショッカー・イン・グルームタウン』⇒『500円分クオカード』Get!!

469美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/04/28(日) 00:55:13

この街のどこかで『ラジオ』が流れている。
飛び交う電波に乗って、高く澄んだ声が聞こえてくる。

「今日も、あなたの隣に『電気カナリア』の囀りを――――」

「世間では長いお休みに入りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
 お休みの方は、どうぞ良い休日を。お仕事の方は、お疲れ様です。
 皆さんご存知の通り、私は今日も仕事に励んでおります!」

「『Electric Canary Garden』――パーソナリティーは私、
 長いお休みを頂戴した方々が羨ましい『美作くるみ』がお送りしますッ!
 お休み中のあなた!くるみの声を聴いて、もっともっと楽しんで下さいッ!
 お仕事中のあなた!くるみと一緒に、この荒波を乗り切っていきましょうッ!」

「さて――先々週から予告した通り、今日からは『連休スペシャル』という事で、
 リスナーの皆さんと、ガンッガンお喋りしていきますよぉ〜!
 完全ノープラン!くるみへの質問、悩み相談、今ハマッてることなどなど、
 どんな話題でもウェルカムですので、皆様ドシドシお電話を!!
 くるみは皆様からの愛ある『コール』を、心よりお待ちしておりまぁす!」

「――――おっと、早速リスナーの方(>>470)と電話が繋がったようです。
 もしもし?こちらは『美作くるみ』でございます!」

470今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/05(日) 02:00:31
>>469

「もしもーしっ」「えーと」「本名とか言った方がいいんですかっ」

なんとなく部屋に置いてたラジカセを触ってたら、ラジオがつながったんだ。
そういえばラジオ付きだからラジカセって言うんだって思ってたよね。
それで・・・知ってる声だったから、枕元に置いてたスマホを取って、電話したんだ。

471美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/05(日) 21:54:29
>>470

(あぁ――)

電話越しに、聞いた事のある声だなと思った。
少しだけ考えて、その時の事を思い出した。
あれは確か、自然公園だったはず。

     クスッ

「どっちでも大丈夫ですよ。
 『ラジオネーム』でも『リアルネーム』でもね」

「さて!肩の力を抜いてお喋りしましょうか。
 そう、『お休みの日』に友達と話してるようなリラックスした気分で――」

「――って、私は『お仕事中』でしたねぇ〜。
 アハハハ……それじゃあ、改めてお名前をどうぞ!」

「そうそう……。
 もし名前が決まらなければ、くるみに任せて頂いてもいいですよぉ〜。
 その場合は、私くるみが『ラジオネーム』を考えて進呈する事になりますねぇ」
 
「あくまで私のセンスなので、気に入らない場合は『返品』も可能です!
 だけど、『使い回し』はしませんよ。アハハ」

『ラジオネーム』か『本名』か『くるみにお任せ』か。
選択肢は三つ。
どれを選ぶかは自由――そういう事らしい。

472今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/06(月) 00:37:32
>>471
              クルクル

マスキングテープをテーブルに置いて、ラジオの音量を少し上げた。

「あははは」「えーと、それじゃあですね」

お話、上手だなあ。
直接話したときよりそういう風に感じる。
これが『お仕事中』ってことなんだろうな。

「『ラジオネーム』」「考えてもらっていいですか!」
「せっかくなのでっ」

「自分で考えても、フツーすぎるのに、なっちゃいそうだし」

『アイ』。
先生の名前が頭に浮かんできた。
勝手に先生の名前使ったら、怒られるかな。

473美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/06(月) 01:42:57
>>472

「Okay!!『くるみにお任せ』ですね!では、張り切って行きますよぉ〜……!」

「うぅ〜ん……んッ!来た来た――来ましたよッ!」

咄嗟に思い浮かんだのは、以前出会った時に聞いた『スタンド』の名前だった。
『彼女』は『コール・イット・ラヴ』と名乗っていた。
『ラヴ』――つまり『愛』だ。

「――あなたの『ラジオネーム』はぁ〜……『チューリップ』さんに決定しました!!」

「ちょっとだけ説明させて頂くと、『優しそうな声だなぁ〜』と感じたんですね。
 そしたら、ふと『チューリップ』の『花言葉』を思い出したんです。
 『チューリップ』の『花言葉』って『博愛』とか『思いやり』なんですよ」

「それで『チューリップ』さんってワケなんですねぇ。
 こう『親しみやすそうな印象』もあったので、その辺りの雰囲気も加味した上で。
 お気に召して頂けたでしょうかッ?」

この少女の声が何となく親しみやすく、優しい声だと感じたのは本当の話。
だから、声の印象で決めたというのもウソじゃない。
『本体』と『スタンド』の両方を考慮したといったところだ。

474今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/06(月) 21:01:00
>>473

「チューリップ!」「ですか〜」

「思いやり…………」「あはっ」
「ありがとうございます、すっごく気に入りましたっ」

優しいとか、親しみやすいとか、フツーに嬉しいと思う。
実際にどうかとかじゃなくて印象がそうっていうのが。

博愛、っていうのはちょっと違うけど。
でも、ちょっと違うのが良い気がする。
全部当てられたら怖いと思うし。

「それじゃ、えーと」
「あらためまして、ラジオネーム『チューリップ』ですっ」
「よろしくお願いしまーす」

「それで」「私、じつはこの番組聞くの初めてで」
「どういう感じのお話をすればいいんでしょうか?」

なんでもいいよ、って言われそうだけどね。
一応フツーの時の雰囲気っていうか、そういうのは知っときたいかなって。

475美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/06(月) 22:29:55
>>474

     クスッ

「気に入って頂けたなら何よりです!
 くるみも頭を捻った甲斐がありますよぉ〜。
 それでは、改めましてよろしくお願いしますね!」

「――『チューリップ』さんは、ご新規のリスナーさんなんですね!
 どうもありがとうございます〜。
 よろしければ、今後も当番組をご贔屓に!」

「さて、お喋りする内容は色々あるんですけど、
 そうですね――じゃあ『お休みの過ごし方』について、お話しましょうか!」

「『チューリップ』さんは学生さんですか?
 学生さんなら、クラブ活動なんかがなければ連休はお休みですよねえ」

「『チューリップ』さんは、何か予定を立てたりしてますか?
 ちなみに、くるみはですねぇ……『温泉に行く予定』ですねぇ〜」

「風情のある旅館に泊まって、
 のんびりと湯に浸かって日頃の疲れを落として、
 地元の料理に舌鼓を打って……」

「ただし、あくまで『予定』ですけどね!
 『突然スケジュール変更が起きて急遽長いお休みを頂けたら』実現します!
 残念ながら、しばらくは『予定』のままになりそうですけどねぇ〜アハハハハ!」

「『チューリップ』さんはいかがですか?
 連休の事じゃなくて、普通の休日の過ごし方でもオッケーですよぉ」

476今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/06(月) 23:28:17
>>475

「あはは、贔屓にしますねっ」

壁に貼ったマスキングテープを見る。
花柄のはあった気がするけど、チューリップはあったかな。

「あっはい、学生ですっ」

「お休みは、友達と遊びに行きますねえ」
「私、今のところ部活はしてないし」
「『遊園地』とか」「『カラオケ』とか」「いろいろ」

「フツーのお休みとそんなに変わらないですけどねっ」

遠くまで旅行とか、ちょっと考えたけどね。
部活ある子はフツーに部活だし、ない子も塾とかあったりだし。

「それにしても、『温泉』かあ」
「私も行ってみたいな。友達とかと」
「お風呂と卓球しかイメージないですけど」

「なんで温泉とか銭湯とかって卓球のイメージなんでしょうねえ?」

477美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/07(火) 00:27:49
>>476

「『遊園地』に『カラオケ』――楽しそうじゃないですか!
 私も時間が空いたら、行きたいところですねぇ〜」

「普通に過ごす時間も、見方を変えれば『今だけの瞬間』だと思うんですよね。
 その瞬間の積み重ねが『一日』になり、その積み重ねが『一年』になって……。
 年を重ねると、『そういうの』が身に染みてくるなと感じる今日この頃ですね〜」
 
「な〜んて――こういう話をするから余計と老けてくるのかもしれませんね!
 アハハッ、くるみの分まで思いっきりめいっぱい楽しんできて下さい!」

学生だった時、『アイドル』として活動していた私は、毎日が忙しかった。
そのせいで、『学生としての普通の楽しみ』みたいなものは縁遠かった。
だから、少女の答えを聞いて、純粋に『羨ましいなぁ』と感じていた。

「あぁ、確かに〜!では、私くるみがお答えしましょう!
 それは、『旅館の中でバレーやバスケットは出来ないから』なんですねぇ〜。
 何せボールがあっちこっちに飛んで行っちゃって、エラい事になりますからね〜」

「さて、ジョークはこのくらいにして……もう少し真面目に考えてみましょうか。
 卓球って、あまり場所を取らない球技ですよね。
 物凄く激しいスポーツってワケでもないし……。
 『軽く汗を流すのに丁度いいから』かも?
 ほら、汗をかいた後にお風呂に入るのって気持ちいいでしょ?」

「ちょっと違いますけど、くるみもちょくちょく『ジョギング』してるんですね。
 その後に浴びるシャワーが気持ち良くって。
 さらに、その後の『一杯』がまた……」

「――おっとっとっ、だいぶ『脱線』しちゃいました!
 ところで、『温泉』っていうと『グルメ』もありますねぇ〜。
 『チューリップ』さんは、特に好きな『食べ物』はあったりしますか?」

478今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/07(火) 01:14:25
>>477

「楽しいと思いますよ。フツーに」
「いつもみんな楽しいって言ってますし!」
「こういうの、『青春』って言うんですかね」

「とりあえず」

「今のうちに楽しめるだけフツーに楽しんでおきますっ」

机の引き出しを開けて、テープを探す。
チューリップのテープ持ってた気がするんだけど。
何かで使い切っちゃったっけ?

「ふんふん、なるほど〜」
「確かに旅館でスポーツするなら、そうなりますねえ」
「……って、冗談ですかっ」

「あー、でも、そうですね。勝負もできて楽しいし」
「あと、たしか卓球台って折りたためますもんね」

美作さん、やっぱり頭いいんだろうなあ。
すごく勉強してるってことなんだろうな。

「食べ物ですか、そうですね〜」「うーん」
「『天むす』とか、フツーに好きかなあ」
「通学路におにぎり屋さんがあって。そこのが美味しいんですっ」

「いっときは毎日ってくらい買ってましたねえ」

カロリーが、さすがに気になるんだよね。

479美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/07(火) 02:03:57
>>478

「『天むす』!いやぁ、なかなか『ツウ』なお答えですねえ〜!
 おにぎりの中にエビの天ぷらが入ってるアレですね。
 しょっちゅうは食べませんけど、くるみも好きですよ〜」

「おにぎり屋さんのおにぎりって、こう……握り方が絶妙ですよね。
 柔らかすぎず固すぎない適度な握り具合っていうか。
 まるで『シフォンケーキ』みたいにフワッとしてて」

「自分で握ってみても、ああいう風にはいかないんですよねえ。
 くるみの場合は、大抵ギュギュッと固く握ってますねえ。
 食べる時に崩れるのが怖いんで。
 一度フワッとした仕上がりにしようとしたら、ご飯粒がポロポロ零れちゃって――」

「くるみも料理は好きな方なんですが、
 衝動買いして一度も使ってない調理器具があったり、
 ちょっと使っただけで余ってるスパイスが棚の奥に眠ってたり……。
 そういう事が結構よくあるんですよねえ〜」

        アハハハ

「ちなみに、その『チューリップ』さんの行き着けのおにぎり屋さんですが、
 なんというお店でしょうか?
 是非とも教えて頂きたいところですねぇ〜」

         クスッ

「もしかすると、今後『取材』させて頂く事になるかもしれませんからね!
 あ、勿論その時はお店に許可を取りますよ」

480今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/07(火) 03:43:36
>>479

「そうですね、N県のほうで名物の、あれですっ」
「自分でもよくわかんないんですけど、妙に好きなんですよね」

きもちはわからないけど、結果っていうか『好きな味』なのはわかる。

「あっ、確かに言われてみたらそうですねえ」
「なんで自分で作るとこうならないんだろって、思ってたけど」
「『握り方』がポイントなのかも」
「私、そこまで料理上手じゃないからアレだけど」

「お店の名前ですか? えーと、『結日(むすび)』だったかな」
「小さいお店だから、私が買う分が売り切れないくらいの宣伝でお願いしますねっ」

           ゴソゴソ

               コロン

あったあった、チューリップのマスキングテープ。
赤じゃなくって白だけど、私、白が好きだし、いいや。

それにしても。

「あっ。シフォンケーキで思い出しましたけど、甘いものも好きですよ」
「そのことも、お話ししたいかなって、思ったりするんですけど」

「まだお時間とか大丈夫ですかね」

けっこう長いこと私としゃべってくれてるけど、大丈夫なのかな。
大丈夫なら、話すことはまだちょっとは残ってるけど。無理に話すようなことでもないけど。

481美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/07(火) 11:19:18
>>480

「なるほど、『結日』さんですね!
 また一つ、素敵なお店を教えて頂きました!
 リスナーの皆さん、これは要チェックですよぉ〜」

ブースの外にいるディレクターに向けて、軽く目配せする。
後から下調べした上で、『取材』の申し込み候補に入れておこう。
そういった意味のサインだ。

「アハハハッ――
 穴場のお店が急に有名になっちゃって売り切れ続出!
 ……っていうのも、それはそれで困りますもんねえ。
 嬉しいんだけど何だかなぁっていう感じで。
 その気持ちは、よぉーく分かりますよぉ〜」

「実は、私も前から通ってる『キャラメル専門店』があるんですけど、
 そこの人気が最近になって急上昇してきてまして。
 ちょっと前まではのんびり選べたんですけど、今は人が多くって……」

「――あ、そのお店は我々が宣伝したワケじゃあないんですけどね」

   アハハハハ

「『チューリップ』さんも、甘いものお好きなんですね〜。
 美味しい御飯を食べた後は、やっぱりデザートも欲しくなりますもんねえ」

普段の放送なら、もう少し手前で締めくくっている所だった。
しかし、今日はリスナートーク拡大の『スペシャル版』なのだ。
だから、今もまだトークは続いていた。

「はいッ!大丈夫ですよ!
 それに、私も甘いものは大好きですから。
 そんな話を耳にしてしまったら、聞かずに終わるワケにはいかないでしょう!」

    チラ

ディレクターに、再びアイコンタクトを送る。
もう少し喋れる――というような意味の頷きが返ってきた。
丁度いい区切りだし、この話を聞いたら『締めくくり』に入ろう。

482今泉『コール・イット・ラヴ』:2019/05/07(火) 22:38:37
>>481

「キャラメル専門店!」
「いいですねえ。好きなんですよキャラメル」
「変な味のやつ以外は」

フツーの味のキャラメルは、フツーにおいしいから。
でもたまにあるよね。変な味の。なぜかキャラメルに多い気がする。

「やった。それじゃあ話すんですけど」
「…………」

言おうとしたんだけど。
あれこそ『隠れ家的』なお店だし、宣伝するの良くない気がしてきた。
これ、どういう気持ちなんだろう。
こういう気持ちってあんまりわかんないや。

・・・別のに、しようかな。

「えーっと」
「星見横丁のほうに、美味しいケーキ屋さんがありまして〜」

だからなんとなく無難っていうか、元から有名なお店の話をしちゃって。
それで、電話が切れるまでフツーに、楽しいなって気持ちで話すことにしたんだ。

483美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/05/08(水) 21:54:08
>>482

数日後、今泉家に一通の封筒が届けられる。
その中には『番組特製クオカード』が入っていた。
また、小さな『メッセージカード』が同封されていた。

【お電話ありがとうございました!
 耳寄りなショップ情報もご提供いただき、感謝感激です★
 これからも『Electric Canary Garden』をよろしくお願いします!】
 
【PS.個人的に『結日』さんに行ってきましたよ〜。
  天むすをスタッフに配ったら好評でした♪
  くるみ的に『まいたけ天むす』がヒット!】


今泉『コール・イット・ラヴ』⇒『500円分クオカード』Get!!

484宗像征爾『アヴィーチー』:2019/06/04(火) 23:44:45

堤防に腰を下ろした一人の男が海に向かって釣り糸を垂れている。
カーキ色の作業服を着た中年の男だ。

「やはり素人では見込みは薄いか」

不意に気配を感じて視線を向ける。
その先にいたのは一匹の野良猫だった。

「『アビシニアン』では無いな」

再び視線を水面に戻す。
野良猫は地面に置かれたバケツに近寄って来た。

「――まだ空だぞ」

バケツを覗き込んでいた野良猫は釣り糸の行方を眺める。
既に三時間が経過していたが釣れる気配は未だ無かった。

485蒜山帆奈『ホーム・インヴェンション』:2019/06/06(木) 20:47:59
>>484

「にゃあにゃあ」


ギャル風の出で立ちの女子高生がいつのまにか宗像の背後に立っていた。
片手に持っていたであろう『タピオカジュース』のカップを足元に置き、
宗像を眺めていた野良猫をひょいと抱え、その首元を撫ぜる。


「オジさーん、釣れてないの?
『ハンナ』的には『釣り』を楽しみたいのなら『釣り堀』に行けばいいと思うし、
新鮮な『魚介類』を味わいたいなら『お寿司屋』さんに行けばいいと思うワケ。
それにさー、『暇潰し』したいなら『スマホ』だってあるわけじゃん?
オジさんはどういう意図があって、こーんなきちゃなき海で釣りなんてしてるの?

断言しても良いけど、ここで美味しい魚なんて、
ずぇ〜〜〜ッたい釣れないヨ?」

486宗像征爾『アヴィーチー』:2019/06/06(木) 23:30:31
>>485

「――『理由』か?」

少女を一瞥してから再び視線を海に戻す。
長くも短くもない程度に幾らかの間が空いた。

「少なくとも人に聞かせる程の意図は無いな」

野良猫は暴れる事も無く大人しくしていた。
見た目より人に慣れているのかもしれない。

「強いて言うなら『そうしたかったから』だ」

話しながら手応えの無い釣竿を引き上げる。
当然だが魚は掛かっていない。

「――君の『理由』を聞いても構わないか?」

487宗像征爾『アヴィーチー』:2019/06/13(木) 00:22:36
>>486

一人の男と一人の少女が居合わせた。
彼らは他愛の無い会話を交わし、それぞれの場所に戻って行った。
それが今日この場で起こった事の全てだ。

488美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/06/22(土) 18:41:02

        タッ
              タッ

タンクトップとショートパンツで、初夏の海辺を走っている。
本格的な夏の到来に向けて、春頃から身体を絞ってきた。
秋冬で蓄えがちの『余計なもの』を、しっかりと落としておかなければいけない。

「ふぅッ――」

やがて立ち止まり、首に掛けたタオルで汗を拭う。
それから自販機の前に立ち、スポーツドリンクを購入した。
近場の堤防に腰を下ろし、ペットボトルを開ける。

         グイィッ

「――ぷはァ」

正面に広がる砂浜と海を眺めながら、スポーツドリンクを呷る。
頭に被っていたキャップを脱いで、団扇のようにパタパタと扇ぐ。
運動の甲斐あってか、今年も水着が着られそうなのは良い事だった。

489美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/06/27(木) 22:15:53
>>488

立ち上がり、空になったペットボトルをゴミ箱に入れる。
キャップを被り直して、その場で軽く伸びをした。

「――よしッ、もう一頑張りするとしますか」

         タッ
               タッ

やがて、その後ろ姿は徐々に海辺から遠ざかっていった。

490美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/07/27(土) 00:27:42

星見町――――この町の何処かで『ラジオ』が流れていた。

「今日も、あなたの隣に『電気カナリア』の囀りを――――」

「『Electric Canary Garden』――パーソナリティー・美作くるみがお送りしますッ」

「いやぁ〜、『夏』ですねッ!
 夏って、こう何というかエネルギーに溢れた季節ですよね〜。
 身も心も開放的になるといいますか……。
 とにかく色々な面で『刺激的なシーズン』」ですよねえ〜」

「皆さんは、『夏』というと何が思い浮かぶでしょうか?
 旅行やレジャーの予定を立てていらっしゃる方もいるでしょうし、
 忘れられない夏の思い出もあるかもしれません。
 暑くて疲れがちな夏を乗り切る方法なんてのもアリですねえ〜」

「――――というワケで、今日のテーマは『夏』!!です!
 私くるみと一緒に、夏にまつわる話題で楽しくトークしちゃいましょう!」

       pururururu…………

「さて!リスナーの方から『コール』を頂いたようですねッ。
 もしもし?お電話ありがとうございますッ!
 こちらは『Electric Canary garden』パーソナリティーの美作くるみでございますッ」

491美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/08/05(月) 04:35:21

「――――そうそう、くるみはですねぇ……。今は『海』に行きたいですかねえ〜。
            水着も、一応買ってあるんですよ。
 今年はスポーティーな感じでいこうと思って、割とシンプルめなヤツを用意したんですけど」

「海っていいますと、昔は結構みんなでワイワイ盛り上がったりするのが好きだったんですよ。
        やっぱり海っていうと、そういうイメージが強いじゃないですか。
  でも、最近は一人で静かに過ごすのも良いかなあ――なぁんて思ったりするんですよねえ」

「砂浜にパラソルを立てて、日陰のビーチチェアに寝転んで……
    太陽が少しずつ傾いていくのを眺めるなんてステキじゃないですか?
     一度、そんな贅沢な時間の使い方をしてみたいんですよねえ」

「もし隣にハンサムな男性がいてくれたら、もっとロマンチックに感じられるんでしょうねぇ〜。
 一人で過ごすのも良いですけど、二人で過ごすのもそれはそれで良いじゃないですか!   
          何ていうか、一つの理想ですよねえ」

「リスナーの方に、『プライベートビーチ所有の独身男性』はいらっしゃいませんか?
  今なら漏れなく、『夕暮れの海辺で美作くるみと語らう権利』を差し上げますッ!
    そこから先に関しましては、『相手の方次第』という事で…………フフフフフ」

「さて――そんなワケで、今日もお別れの時間がやってまいりました!
        また次回も、このチャンネルでお会い致しましょう。
     お相手は、『パーソナリティー・美作くるみ』でお送りしましたッ」

           「――――『See you next time』!!」

492斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/28(水) 21:20:38
――音、祭囃子、臓腑に響く太鼓、一喜一憂する喧騒、ポイを破る水音。

景色、優しく誘う提灯、並び立つ屋台、きらめく氷、色取り取りの容器。

鼻腔には菓子の甘い香りや、鉄板焼きの香ばしい香りが流れ込む
最後に両親と来たのは5年も前の事だ。

だが、覚えていない筈の景色に、不思議と懐かしさを感じてしまう。

夏の祭りは不思議な事に、あんなに暑かった日々を
誰もが惜しむようにはじめる物だ。


 「……よっし、抜けたぞおっさん! 換金してくれ。」


壮年の男性が顔の皺をさらに深くしながら 受け取った完成品を睨み
忌々しいというのを隠しもせずに舌打ちして 報酬を差し出す。


 「じゃ、来年またくるぜ おっさん。」

 「賞金と型、用意しとけよな!」


しわがれた怒号を背に『か た ぬ き』と書かれた屋台から一人、満面の笑みと共に、祭囃子の中へ歩き出す

彼、斑鳩は黒地に白い海飛沫をかたどった浴衣と赤い帯に身を包み
首にはいつも通りに赤いスカーフを巻いている

軍人風に短く整えた髪が、夜風に揺れた。

                       サ イ ノ ウ
 (これで軍資金は確保ッと……ま、『スタンド』の有効活用って事で。)

 「後は、どうするかな……待ってみるか?それとも探すか?」

493?????『?????』:2019/08/28(水) 22:27:55
>>492

遠く離れた位置から、そのやり取りを聴いていた。
普通なら、決して聴き取ることはできなかっただろう。
しかし、『彼女』には可能な芸当なのだ。

「エージェントからホンブへ。モクヒョウをカクニンした。これより『コンタクト』にはいる」

「リョーカイした。すみやかにミッションをスイコウせよ」

小声で独り言を言いながら、背後から近付く『何者か』の影。
足音を忍ばせながら、少しずつ距離を詰めて歩み寄っていく。
その背後には、両手に爪を持つ『盲目』のスタンド。

「――――またせたな、『フリーマン』。レイのブツは??」

       ポンッ

適当な距離まで近付いてから、彼の肩を軽く叩いて唐突に声を掛ける。
ところで『フリーマン』ってダレ??
わたしもしらない。

494斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/29(木) 01:11:36
>>493

肩への挨拶に振り返ると
見知ったスタンドの姿を視界に捉えた

「そういう君はトランプガール。」

人間、慣れる物である
後ろからの攻勢にも、落ち着いて

495斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/29(木) 01:29:42
>>493

肩への挨拶に背を向けたまま答える
最近はもう台詞回しだけで解る気がした

「そういう君はトランプガール。」

人間、慣れる物である
後ろからの攻勢にも、慣れた調子で肩をすくめる

「生憎、今持ってるのは笑顔くらいだけど。」

型抜き屋の親父から分捕ったのはノーカウントとする。
少し恥ずかしいから。

「それで?」
「『新しいドレス』はちゃんと着てきた?」

多少の期待を込めて、斑鳩は振り返った。

496夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/29(木) 01:51:31
>>495

「『エージェント・アリス』――――やくそくどおりに、ただいまサンジョー」

肩を叩いたのは予想通りの人物だった。
ただ普段と違っていたのは、その格好だ。
ブルーを基調とした爽やかな浴衣と、同系統のダイヤ柄の帯に身を包んでいる。

「どう??スマイルといっしょに『おほめのコトバ』くらいきたいしてもイイよねぇ??」

ニヤッと笑って、その場でクルリと一回転してみせる。
この日のために、『イズミン』に相談までしたのだ。
初デートということもあって、内心ドキドキする部分も正直あった。

「せっかくだから、イエまでむかえにきてくれてもよかったんだよ??
 『え!?あのコだれ!?』ってカンジで、アリスのパパとママにサプライズできたのに。
 いやぁ〜〜〜おしかったなぁ〜〜〜」

心の中を隠すため――というワケでもないが、至っていつも通りに振舞う。
『フツーに楽しめばいい』と、アドバイスをもらったからだ。
だから、思いっきり楽しもう。

「うわぁッ――――」

「ね、ね、ね!!コレすごくない??ホンットにキレイだよね〜〜〜ッ!!」

改めて――初めて目の当たりした『夏祭り』の光景に、興奮した様子で目を見張る。
『音』や『匂い』で感じたことはあったが、『目』で見たことはなかった。
サングラス越しの瞳が、祭りの灯りに勝るとも劣らない輝きを放つ。

497斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/29(木) 20:38:25
>>496

 「…………。」

浴衣姿の美しさに一瞬、言葉を失う

眼前の光景に、数週間前の自分へ盛大な称賛を送る
よくやったぞ 僕 君は最高の仕事をした。

……お陰で称賛を忘れかけていた。

 「普段もいいけど、今日の服装も一段と可愛いね、アリス。」

彼女がくるりと回ると、金色の髪が祭りの明かりを抱えて煌めく
和風にアレンジしたアリスが、絵本から出てくればこんな感じだろうか。

スマホを取り出して、祭囃子と屋台を背景に一枚
後でクラスメイト共に送ってやろう、倒れろ男子。

 「これもサプライズ、か」

肩を竦め、悪戯を思いついた児子のように口角を吊り上げる

 「んー、それは次の機会にしようかな」

実際は彼女の家を知らないだけだが、次の機会が有れば
彼女の両親のど肝を抜くのも悪くはない。

しかし、彼女のはしゃぎ様を見ると、本当に初めてのようであるらしい
その様子に親戚の小さい子が『神社が逃げる』という理由で急いでいたのを思い出した
何にせよ可愛らしい所作である。

頬が熱くなるのを無視して髪をかきあげ、視線をずらす
いけない事だ、きっと夏祭りの熱気のせいだろう、そう結論すると

 「そうだね、夏の最後だからかな ……行きたい所は有る?」


 「それとも僕がエスコートするべきかな? デートだし。」

柔らかに笑ってそう告げる。

彼女の眼の輝きの先に任せてもいいだろう
なにせアリスにとって、初めての事なのだ。

498夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/29(木) 21:53:36
>>497

「あ――――ありがと…………」

「そんなフウにいってもらえるなんて、なんかウレシイな」

「…………へへ」

実際は賞賛の言葉よりも、無言で見つめる表情の方が印象的だった。
そんな風に見られるのは珍しい経験だ。
ただ、イヤな気分ではなかった。
いつものように冗談の一つでも飛ばしてやろうと思っていたが、何となく茶化す気になれない。
だから、今は素直に感謝を示しておくことにした。

「『モデルだい』の30まんエンは、ベツりょうきんになりますので。
 イマのアリスは『チョーげんていレアバージョン』ですので、プラス10まんエンですね〜〜〜。
 『ぶんかつばらい』は2かいまでとなっております」

「はらえないなら――――こうだ!!」

           パシャッ

「――――トクベツにコレで『チャラ』にしてあげよう」

不意打ち気味にスマホを向けて、お返しとばかりに浴衣姿を撮影する。
よし、これはジューヨーなショーコだ。
あとでエージェント・イズミンにみせよう。
クチでセツメイするより、シャシンのほうがわかりやすいからな。
まぁ、ソレはソレとして――――。

「そんじゃ、きょうはイロイロとアンナイしてもらおっかな〜〜〜。
 わたしだけだと、わかんないコトもあるだろうし」

「それに、ホラ――――『アリス』には『シロウサギ』や『チェシャネコ』がヒツヨウでしょ??」

           ワンダーランド
「はやくいこう!!『おまつり』がおわっちゃうよ!!」

夜を彩る鮮やかな色と暖かい光。
それは、少し前まで『私がいた世界』にはないものだった。

                   アリス
『この世界』は本当に――――『私』にとっての『不思議の国』だ。

499斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/29(木) 22:22:58
>>498

フラッシュに目をしばたかせると
既に彼女は群衆の中へ行こうとしていた
その姿は楽しい事が有り過ぎて、待ちきれないようだ

 「あまり走って案内役を置いて行かないでくれよ?」
 「手を繋ぐことになってしまうぜ、僕。」

兎か猫か悩んでいる間に、主役に1人置いてかれてはたまらない
早々に彼女に歩調を合わせ、数ある屋台の内から一つを選んで歩いて行く

色とりどりの大衆をかき分けながら進んでいくと
ここが夢の中なのではないかと思える

斑鳩は、今だけは2人の事を思い出さない事にした。

 「じゃあ、まずは……ここかな」

2人が到着したのは『お面屋』だった
動物を模した物や、日曜にテレビでやっているヒーロー、ヒロインの物
神社に縁のある狐等、さまざまな顔が手に取られるのを待っている。

 (……あんまり早くわた菓子とかに行くと、手がベタベタになるしなあ。
  歯に青のり付けるのも論外、最初はこれかな、両手も空くし。)

周囲には店主から買ったのか、思い思いのお面をつけた子供たちが
笑顔と共に声をあげている。

 「アリスは何か、好きなのとか有る?」

縁日特有の光景を背景に、隣の少女を覗き込む。

500夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/29(木) 23:03:55
>>499

「――――はやくしないと『アリス』をみうしなっちゃうよ??」

「これじゃ、ドッチが『あんないやく』だかわかんないね」

    クスクス

迷子にならない自信はあるが、ここで一人になってしまっては意味がない。
だから、少し歩くスピードを落とすことにした。
まがりなりにも『デート』という名目で来ているということもある。

「ほほう!!イッパイあるもんだな〜〜〜!!」

             キョロ
                    キョロ

ズラリと並んだお面の群れを前にして、ウィンドウショッピングを楽しむように視線を泳がせる。
そして、その内の一つに指先を向けた。
ファンタジーの世界から出てきたような『白ウサギ』のお面だ。

「――――コレがイイ!!」

わたしは『アリス』だ。
『アリス』のぼうけんは『ウサギ』からはじまった。
まさに、この『フシギのくに』のはじまりにふさわしいといえるだろう。

「えっと、『おねだん』は…………なかなかリョーシンテキじゃないか!!」

値段を確認して、帯に結んである巾着袋に手を伸ばす。
浴衣に合わせるために購入しておいた。
今日は、その中に財布やらスマホやら入れてあるのだ。

501斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/29(木) 23:50:29
>>500

並んだお面をふたつ、ひょいと取ってみる 
プラスチック製のそれはチープだが、縁日の思い出は大抵そういう物だ。

 「じゃ、店員さん この兎のやつと僕のぶんでふたつ」
 「くださいな。」

代金を払って品を受け取ると
デフォルメされた意匠のうさぎを、夢見ヶ崎の頭に乗せ

自分も頭にかける、ニワトリのお面が祭りの明かりを遮って、視界に影を落とす
普段なら絶対につけないが、だからこそ祭りの夜ならではの楽しみだろう。

(まあ、飛べない鳥のほうが僕には丁度いいだろう。)
(僕の名前だと猫にくわれるしな。)

代金は先程の賞金から勝手に支払ってしまった
有難う、型抜き屋のオヤジ、来年も謹んで鴨にさせて頂く。

 「あら、粋な小物入れ」
 「……そんなに楽しみだった?それとも、友達と買いに行った?」

お面を乗せた彼女を見やると、手元の巾着袋に眼が行った
わざわざ合わせる辺りに、何かしらの想像も出来る物だ。

……先程から自分のスマホに通知がやたら来て震えているが
目の前の微笑ましい光景の前には気にしない事にした、さらばクラスの男子共。

 「それで、次は何処に行こうか、アリス
  ヨーヨー釣り、射的に輪投げ、綿あめ、水飴、金魚救い や チョコバナナ、まだまだ有りますよ?」

再び喧騒の中を歩きだす、花火の時間までは確か、まだ余裕有った筈だ ……斑鳩の勘違いでなければ。

502夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/30(金) 00:26:06
>>501

「なんだなんだ〜〜〜??
 こんやはズイブンとハブリがイイじゃないの??
 ウラヤマしいヤツめ!!」

そう言いながらも、ちゃっかり奢ってもらった。
もらえるモノはもらうのがポリシーだ。
いや、チョットちがったか。もらいたいモノはもらうのがポリシーだ。

「あ、『コレ』??『コレ』にめをつけるとはセンスがイイな!!イケてるでしょ??
 『コレ』がなかったら『100てん』、『コレ』があったら『150てん』だ!!
 このカッコウにリュックとかバッグとかだと、シックリこねーしな〜〜〜」

財布を取り出し損ねた手で、巾着袋を持ち上げてみせる。
それを言ったらサングラスやネイルも合わないかもしれない。
しかしサングラスは『生活必需品』だし、ネイルも――――まぁスキだから!!

「それにイチオー『はじめてのデート』なワケだし」

「ビシッとキメたいじゃん??」

ややマジメなトーンで、そう付け加えた。
今夜の『不思議の国』は、『夏祭り』だけじゃない。
『祭り』と『デート』の豪華二本立てだ。
どうせなら、その両方を思いっきり楽しみたい。
だからこそ、『デート』の方にも人並みには気を遣ってきたのだ。

「――――じゃあさぁ、アレやんない??」

指差した先にあるのは、『輪投げ』の屋台だった。
『輪投げ』は得意だ。
『輪投げ』なら、力を入れる必要もないし。

「ただやるだけじゃナンだし、せっかくだから『ショーブ』しようよ」

ニヤッと笑って、そんな提案を持ち出す。
『かたぬき屋』での一件は、途中からだが確認していた。
それも加味しての提案だ。

503斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/30(金) 22:08:49
>>502

『150点の用意』に口笛を一つ吹いて称賛する
彼女はこの祭りも楽しむことに本気らしい、自分ではこうはいくまい

浴衣の懐に、雑に財布とスマホを入れてる自分とはえらい違いである。

そんな夢見が次に楽しもうと言ってきたのは『輪投げ』だった
その名の通り、輪を投げて杭に入れれば得点になるゲーム。

 「そりゃあ、構わないけど」

ビニールテープをグルグル巻きにして作られた輪っかを手に取る
何時も使う鎖と違って、それは酷く軽い。

 「……勝った方は 何か頂けるのかな?」

ニヤリと笑う彼女に意地の悪い笑みを返す
『才能』が使えるなら、負けるつもりは全く無いし
勝負事なら手加減する方が失礼だろう

 「ただ勝っただけ、じゃあ、あまり面白くないけど。」

が お互いが『スタンド使い』なのだ
彼女が 自身の腕だけで挑んでくるのか
それとも スタンドを奇想天外に使うのか

興味が無いと言えば嘘になった。

504夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/30(金) 22:40:00
>>503

「――――『トーゼン』」

        フフン

報酬の話に対して、自信に満ちた表情で笑い返す。
当然、やるからには勝つつもりだ。
だからこそ、この提案に同意することには何の躊躇いもない。

「『まけたほうはかったほうのキボウをナンでもヒトツきく』ってのは??
 ようするに『バツゲーム』みたいなモン。
 ただし、ジョーシキのハンイで。『キスする』とかはナシだよ」

「――――『はじめてのデート』なワケだし」

         チラ

輪っかを手に取った腕に視線を向ける。
考えていることは、こちらも同じだった。
お互いに条件は似たようなものなのだから。

「じゃ、イカルガセンパイ??おさきにドーゾ。
 アリスは、ここでおてなみハイケンさせてもらうから」

                スッ

観戦するために、少し後ろに下がろう。
そして、じっと挑戦の様子を見つめる。
さて、ウデマエをみせてもらおっかなぁ〜〜〜??

505斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/30(金) 23:24:46
>>504

 (――先輩?)

二人称に妙な既視感を覚えたが、心の隅に追いやった
言われた事は無い……と斑鳩は思っているが。

 「乗った。」

 (ま、いいや)

 「それじゃ、遠慮なく。」

輪っかをみっつ、指にひっかけてくるくると回す
やった事は無いが、投擲の経験なら多少はあった。

その時の対象はチンピラだったが
アレも動かない杭も、特に変わりはしないだろう。

 (彼我の距離は約2m前後、障害物無し、風はこの距離なら無視できる)


                 ジジ……


 (見た所、背後の彼女が仕掛けてくる気配は無い……が、何もしないなら確実に入るだけだ)

斑鳩の胴に大小の鎖が蛇のように這いずり、そのまま肩を経由して右腕から手首までを覆う
――『ロスト・アイデンティティ』 斑鳩 翔の精密動作を達人の域まで跳ね上げる、鎖の鎧。

          サ イ ノ ウ
 (それが僕の『スタンド』なのだから。)

風を切る音すらなく、みっつの輪っかが一度に放られた
……それぞれが吸い込まれるように、杭に向かって飛んでいく。

506夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/31(土) 00:04:54
>>505

『イカルガセンパイ』――それを言った本人には、何の意図も存在しない。
しかし、斑鳩翔にとっては割と最近言われた言葉だ。
多分、学校かどこかで。
もちろん、夢見ヶ崎は知る由もない。
それは『斑鳩自身』も同様だ。

そして――――。

         カコンッ
               カコンッ
                     カコンッ

右手を離れた三つの輪は、小気味良い音を立てて見事に杭に収まった。
輪の内側が杭に触れることもなく、まさに『お手本』のような投擲だ。
『ボーラ』と『輪っか』という違いはあるが、大した差はないだろう。
『ロスト・アイデンティティ』の精度なら、何の問題もなく可能な芸当なのだから。

「ほほう!!やるじゃん??それでこそ、アリスのライバルにふさわしいな!!」

     パチパチパチパチ

後ろから、惜しみない拍手を送る。
そして一歩前に出よう。
同じように、三つの輪を手に取る。

「ツギは、わたしのばんだよねぇ??イイ??」

                スッ

そう言って、サングラスを外して胸元に引っ掛ける。
目を光から保護しなければならない自分にとって、サングラスは『生活必需品』だ。
それを外すということは、一時的に『視力を喪失する』ことを意味する。

507斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/31(土) 00:33:21
>>506

夢見ヶ崎の拍手と称賛に
左腕に重なるようにしていた『影』が、うやうやしく礼をする

 「それじゃあ、お手並み拝見。」

やるき120%の彼女の動きに合わせて一歩下がると
自身のスタンドを解除して後ろから見守る事にした。

 (……サングラスを外した?)

困惑の感情に眉をひそめる

斑鳩も彼女のサングラスが、如何なる物かという事くらいは知っている
それは彼女が『盲目』の状態で投擲する事に他ならない

 (勝負を捨てた、というわけではない筈。)

 (そのまま投げるのか、今のままではまず当たりやしない、が
  既に位置を完璧に記憶しているか、視覚以外の感覚が無ければ……視覚以外?)

斑鳩は、過去に彼女と会った時の記憶を回想する
夢見ヶ崎のスタンドは、確か――。

508夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/31(土) 01:06:19
>>507

     《L(エル)》
                   《I(アイ)》
           《G(ジー)》
   《H(エイチ)》         
                《T(ティー)》

『かたぬき屋』のやり取りを聴いたのは、『ドクター』の『超聴覚』だ。
そして、まだ『解除』はしていない。
だから、先程の『音の位置』は大体覚えている。

      ヒュッ
          ヒュッ
              ヒュッ

本体の手に重なるようにして、『ドクター』の手から輪が一つずつ放たれる。
『ドクター』の精度は『高度な外科手術』並みだ。
しかし、いくら精密な動きができたとしても、『盲目』の状態では易々と成功するものではない。

「『だけど』――――」

先行である斑鳩の投げた輪が落ちた時の『音』を、『ドクター』で聴き取っていた。
その『方向』と『距離』は、ほぼ完全に把握している。
さらに『ドクター』の精度が合わされば、輪の中に杭を通すことは難しくない。

「――――さて、『けっか』をごらんいただきましょう」

それを確かめるために、サングラスを掛け直す。
ただし、すぐに視力が回復するわけではない。
徐々に輪郭を取り戻し、少しずつ鮮明さを得ていく視界の中で、自身の結果を確認する。

509斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/31(土) 01:27:24
>>508

……かけなおされたグラスの向こうで、ぼやけた視界が重なり、輪郭をはっきりとさせる
背後から、四本の腕による拍手の音が鳴る。

三重になっていた輪っかは、いまや一つずつが正確に杭にかけられていた。


 「――やられた!」


背後から斑鳩の称賛と驚愕の入り混じった声がする

 「僕に先に投げさせたのかい?
  引き分けにさせて頂きたいのだけどね!」

 「君には、いつも驚かされるばかりだな。」

ニワトリのお面を帽子がわりに脱帽する

彼女のスタンドの優秀さを見事証明してのけたのだ
今の自身では称賛の語彙が足りない事が、斑鳩は少しだけ口惜しかった。

 「それで、次は如何しますか、お嬢さん。」
 「罰ゲーム?それとも次の屋台?」

自身の投てきはあくまで手本であり
曲芸としては向こうが上だろうと考える斑鳩は

ふたつの脳を回転させ、彼女の罰ゲームからどう逃げ出すかを考え始めた。

510夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/31(土) 01:56:09
>>509

「イィエェ〜〜〜スッ!!」

      グッ

喜びを表現するために、両拳を力強く握り締める。
確かな自信はあったが、実際に確認するまでは分からなかった。
成功できたのは幸いだ。

「フフン!!まだまだこんなもんじゃない!!アリスの『ワザ』は、あと『216コ』あるぞ!!」

堂々とハッタリをかましながら、得意げに胸を張る。
客観的に見れば『引き分け』だ。
実際、もし『お先にどうぞ』と言われていたら、このワザは成り立たなかった。

「じゃ、『バツゲーム&ツギのみせ』ってコトで。イイよねぇ〜〜〜??」

しかし、あえて『引き分けにしよう』とは口に出さない。
相手の考えをいいことに、その流れに便乗することにした。
『フシギのくに』をボウケンする『アリス』は、ときとして『コウカツ』でなければならないのだ。

「――――てをつないでくれる??『ツギのみせにつくまで』、ね」

       スゥッ

そう言って、おもむろに片手を差し出す。
冗談ではなく、本気だ。
表情には悪戯っぽさがあったが。

「『おまつり』をたのしむだけじゃなくて、すこしは『デート』らしいコトもしたいじゃん??
 ほら、ツギはアソコいこ!!」

視線を向けたのは『綿あめ』の屋台だった。
まだ、綿あめを生で見た経験はない。
あのファンタジックなヴィジュアルには、ヒジョーにキョーミをそそられるトコロだ。

511斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/31(土) 03:22:32
>>510

 「…………。」

罰ゲームに対して頭を掻く、目を白黒させるのも忘れずに

これは罰ゲームなんだろうか、落ち着け僕
これはデートなので何も不自然ではない、言い訳完了、覚悟未完了。

 「僕も男の子だからな、喜んで。」

なんでもないさと、簡単な事のように微笑んで、お姫様の手を取るように手を繋ぐ
自分が嘘つきで本当に良かった、さもなければ醜態を晒していただろうから。

それはそれとして、次の店の道までをエスコートする時間が
もう少しだけ長くなってくれと考えるのは悪い事だろうか?

次の屋台につくまでは、何故か太鼓が妙にうるさく聞こえた。
中央からは結構離れている筈なのだけれど。


 「綿あめ、わた飴……ザラメと割り箸しかないな?」


次の屋台には店主がいなかった

有るのは纏められた割りばし、容器に入れられたカラフルなザラメと言う名の砂糖の砂
そして中央にふんぞり返る、ドーナツの鋳型のようなマシンだった。

視界の隅に、(おそらく砂糖で)汚れた張り紙を見つけ、コインを取り出して
マシンに恐る恐る投入する

すると、低く唸り声をあげながら
マシンが熱を持ち始めた。

 「ザラメを穴に注いで、型の中に雲が張り出したら、はしを回す……と。」

       スゥッ

箸を回すたびに、溶けたザラメが蜘蛛の糸のように絡みつき
どんどんと大きくなっていく

数分して唸り声が止んだ時には
割りばしに突き刺さる真っ白な入道雲のようなわた飴の姿が合った。

 「へぇ〜〜 こういう風に作るんだな、魔法みたいにできる物だ。」

下手なスタンドよりファンタジックな光景である
子供たちが夢中になるのも無理はない……

 「ね、これ凄いなぁ〜 知ってた?」

……チラッと横目で夢見ヶ崎を見た。

512夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/31(土) 18:42:15
>>511

「ええ、イカルガさま。よろしくオネガイいたしますわ。それでは、まいりましょうか??」

   ガシッ

逃がさないように、しっかりと手を握り締めた。
お姫様らしからぬ豪快な掴み方だ。
自分から言い出したとはいえ、経験がないので適切なやり方が分かっていないのかもしれない。

「ほうほう、ジブンでつくるのか〜〜〜!!オモシロそーじゃん!!」

そして綿あめを作りながら、隣にいるはずの夢見ヶ崎に呼び掛ける。
しかし、返事がない。
横目で確かめると、その理由が分かった。

         ジィィィィィ…………

魔法のように綿あめが完成していく過程を、身じろぎ一つせずに見つめている。
サングラスの奥で、いっぱいに見開かれた両目がキラキラと輝いている。
夜空のような瞳の中に、無数の星が眩く瞬いていた。

「なにコレ〜〜〜!!フッシギィィィ〜〜〜ッ!!
 『モコモコ!!』ってふくらんでいって『クモ』みたいだ!!
 コレしってた??ね!?ね!?ね!?」

興奮した様子で、離した手の代わりに斑鳩の浴衣をグイグイ引っ張る。
『綿あめが出来る場面』は、今まで見たことがない全くの『未知』の存在。
『アリスにとっての不思議の国』のように、この世界は『夢見ヶ崎にとっての不思議の国』なのだ。

513斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/31(土) 20:18:51
>>512

 「……なんだ、随分と可愛いな、君?」

見たままの感想がするりと舌から滑った
成程、祭りとは彼女のこういう反応を引き出す事を言う物か
デートでこういう行事を選ぶ人間の理由が、多少分かった気もする

 (しかし袖が伸びる、伸びる……まあいいのか?夢見ヶ崎も喜んでいるし。)

横目にでも、彼女の瞳がグラス越しに輝いているのが解る
事実その通りなので、着物の袖が伸びて帯がずれるくらいは許容すべきだろう

後で直せばよろしいのだし、他では見れない反応というのも価値がある
どうせならもっと驚かせたい物だが


             ――ズルリ


そんな折に『影の頭部』が、独立した思考でイメージを伝えて来た
酷く珍しい事なので、一瞬首筋に妙な冷たさが走ったが、自分の事だ
ザラメは多々有るのだ、では試してみるのも一興だろう

 「えっと?緑とピンクのザラメ……は、有るな なら――」

ピンクと緑のザラメを8:2の割合で注ぎ、再び硬貨を入れてマシンを稼働させる

            ヴヴゥン……

再びマシンが唸りをあげて糸を吐き出し、それを割りばしで絡めとる
ピンク色の綿を中心に、その周囲を緑色の綿が覆う……

 「はい、どうぞアリス。 少しは薔薇に見えるかな?」

完成した『綿飴』はピンク色の花弁と緑の萼片を持った薔薇のようにできた
『不思議の国のアリス』としては赤と白が混ざったバラの方が良かったかもしれないが

デートなら此方でもいいと斑鳩は思った
なにせ花言葉と言うのは花弁の色で違う意味になるのだから。

 「手がベタベタにならない内にどうぞ?」

そういうと斑鳩は、自分の白い綿あめをぱくりと噛みつき
白い雲が歯形にかけた。

514夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/31(土) 21:00:06
>>513

「――――カワイイ??なにスカしたコトいってんだよ!!
 デートだからってカッコつけやがって!!」

普段と変わらない調子で返すが、頬に赤みが差している。
それは未知との接触によるものか、あるいは褒められたことによるものか。
もしくは、その両方かもしれない。

「おん??おおッ!?うおぉぉぉ〜〜〜ッ!!」

「コレはマボロシのショクブツとよばれる『バラクモソウ』ではないか!!
 『バラのようなウツクシさ』と『クモのようなヤワラカさ』をあわせもつチョーレアなヤツ!!
 ウワサにはきいていたが、こんなトコロでおめにかかれるとは…………」

         パクッ

「――――しかもウマい!!」

綿あめで出来た『バラの花』を受け取り、かじり付く。
夢見ヶ崎は花言葉など知らない。
しかし、『目で見える美しさ』は誰よりも敏感に感じ取れる。
それは『超感覚』ではなく、かつて『盲目』だった夢見ヶ崎自身に起因するものだ。
もちろん、『舌で感じる甘さ』も分かる。

「あッ!!コレもシャシンとっとこ。
 ココはかじっちゃったから、ベツのカクドから…………」

          パシャッ

巾着からスマホを取り出し、抜け目なく撮影も行っておく。
そうしていると、周りの人が徐々に移動し始めた。
どうやら、花火の時間が近付いてきているようだ。

515斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/31(土) 22:00:00
>>514

紅の刺した頬を見て(そういう風だから可愛いというのではないかな)などと考える
普通なら思っても言わぬかもしれないが、これはデートでもある。

 「そりゃ言うさ、デートだし、僕はエスパーじゃないし」
 「閉まっておくには勿体無い気持ちなら言うしかないだろ?」
 
 「それとも、普段から言ってほしい?」

とぼけた調子で綿飴に齧りつく
舌先で雲が甘くほどけた。

 「あまぁい」
 (こんなに甘かったっけかな?)

5年前の記憶では、現在より美しく脚色される物か
そんな事を考えながら、祭囃子の中を2人で歩いていると
人の波が急に変わり始めた。

周囲の人々は何かしらにそわそわしている様子で
ふと思い至って、腕時計を覗き込む

 「――おおっと」

手巻き式のそれは、花火の時刻が着た事を報せていた。
夢見ヶ崎の手を引いて、土手の方まで歩きだす

 「いけない、もう花火の時間だ
 それでデートも終わり、あと少しだけだぜアリス。」

 「驚く準備は良い?」

それだけ言うと、土手を上がった、この向こうで花火が上がる。

516夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/08/31(土) 22:47:18
>>515

「いってくれてもイイよ??いいたいんならね!!」

冗談めかした言葉を返す。
『デート』ってタノシイんだな――――ふと、そんなコトを思った。
だから、時間が経つのを忘れていたのかもしれない。

「――――『オワリ』??」

最初に浮かんだのは、キョトンとした表情だった。
それが次第に、寂しそうな色合いを帯びていく。
最後には、寂しさを残しながらも納得した表情に変わる。

「そっかそっか――」

「――ザンネンだなぁ」

楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
今の時間が、まさにソレだ。
本当に心から楽しめるデートだった。

「よし!!ウチらもいくよ!!はやくしないと、いいバショとられちゃうから!!」

    ニッ

一転して表情を笑顔に変えて、手を繋いだまま早足で歩き出す。
このデートは、まだ終わっていない。
最後の最後まで楽しまなきゃならないんだから。

517斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/09/01(日) 00:20:47
>>516

祭りの灯が、人影に遮られながらも横目に流れていく光景が
一瞬、何かの川のように見えた

つないだ手に温かさを感じながら、生温い風の吹く夜を
花火の場所へと駆けていく

『其処』につくと、屋台と人の波にに狭まっていた視界が開けた
祭囃子の太鼓の音も、もう遠くでかすかに流れるだけだ

そして、それが空を割くような音でかき消された
見上げると一筋の光が、今まさに空昇っていく所だった。

 「夢見ヶ崎。」

一瞬の後に、それは大輪の花を咲かせた
それを皮切りにして、様々な色の花びらが、空へと咲いては散っていく。

夏を懐かしむ人々が、今この時だけは
言葉にせずとも同じ様な事を考え、この光景を見上げている。

 「――楽しかった?」

自分の生きる理由について、今だけは考えないと決めていた
故に、斑鳩は『それ』を考えない事にした。

 「僕は、勿論。」

微笑みと自分の言葉が、空に咲く花が散る音にかき消されていく
ふと、息苦しさが無い事に気づいて。

その時の斑鳩の表情は、華の色にかき消された。

518夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/01(日) 00:59:49
>>517

口を利くことを失ってしまったかのように、ただ空を見上げていた。
『闇』を切り裂いて咲き誇る『光』の花々。
どんなに言葉を並べても表現できない程に美しい光景だった。
その美しさが、記憶の中に残る『ある光景』を思い起こさせる。          リンク
眼前に広がる『闇を照らす光』が、生まれて初めて『光ある世界』を見た瞬間と『同期』していく。

「そんなの――――」

問い掛けられて、斑鳩の方に視線を向けた。
その間も、花火は次々に空へ放たれる。
鮮やかな光が、二人の輪郭をシルエットとして浮かび上がらせた。

「たのしかったにきまってるじゃない」

夜空を彩る光によって、夢見ヶ崎の表情を窺い知ることは出来ない。
しかし、その返事が『本物』であることは間違いないだろう。
発せられた言葉の響きが、何よりも雄弁に『事実』を物語っていた。

「ね、さいごに『オネガイ』があるんだけど…………」

「…………えっと」

花火が終わりを迎えた時、おずおずと話を切り出す。
やや『躊躇い』が見られるものの、その表情は真剣だ。
少しの間だけ口ごもったが、やがて意を決したように口を開く。

「あの…………『め』をとじてほしいな」

「――――みられてると『ハズカシい』から、さ…………」

いつになくしおらしい態度で、上目遣いに斑鳩を見つめる。
これは『デート』であり、もうすぐ終わってしまう。
だからこそ、どうしても最後に『やっておきたいこと』があった。

519斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/09/01(日) 04:03:11
>>518

 「……。」

夢見ヶ崎の最後の願いに斑鳩は迷い、内心冷や汗をかいていた
からかい好きの夢見ヶ崎の事なので、十中八九いたずらだろうとは踏んでいた、が
残りの一が、『スタンドによる奇襲』だった場合、自分に取れる手段と勝ち目があまりにも少なかったからだ

自分が消えて無くなるのは、おおむね問題では無かった、好きで倒れたくはないが、まだ諦めがついた
しかし、自分が消えた後に、祖父母が悲しみにくれたり、両親が二度と目覚めないのは、斑鳩にとって耐えがたい事であった。

しかし目の前にはいつになくしおらしい様子で夢見ヶ崎が居る
何より最初に誘ったのは自分である、そういう覚悟を持てないと至らなかった自身の不覚であった
牛歩の如く鈍い思考で、自身の身と目の前の女を天秤にかけ……

納得できないまでも、諦める事にはした
ここで奇襲を受けて倒れ、両親が目覚めなかったとしても
まだ自分が間抜けで済むが、ここで拒絶するのは彼女にも自分にも失礼であると認めた。

自身より大事な両親を下に見たのではない
ただ、これが最後ならせめて両親に恥じないようにしようと愚考しただけである。

結論として斑鳩は何も言わず、『スタンド』もしまって目を瞑った
ここまでの影の頭との並列処理による思考経過時間 約0.02秒である。

これで終わりかもしれないと考えると恐ろしかったが
はじめての女性とのデートも、失敗を考えると大変恐ろしい物ではあったので、あまり変わらぬと1人ごちた。


――この思考結果、実際は『影の頭部』の第二人格が、俺は怒るばかりなのにお前何楽しんでるんだと
嫌がらせとばかりに『不安』と『まずありえないが、起こるかもしれない可能性』を第三人格の斑鳩に叩き込んだせいなのだが。
まったく難儀な奴である。

提灯の明かりが、祭囃子を伴いながら地を覆い
花火の花弁が惜しみながら、8月に手を振る夜の事であった。

520夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/01(日) 21:28:54
>>519

斑鳩の両目が閉じられた事を確認する。
もちろん、『影の頭部』もだ。
それが出ていると台無しにされてしまう。

「きょうはアリガトね」

『不意打ちを食らって再起不能にされる』という可能性は確かにある。
『今すぐ地球に巨大隕石が落下して全人類が死滅する確率』と同じくらいには。
結論から言うと――そうはならなかった。

「『コレ』はカンシャのシルシ」

背伸びをして、少しずつ顔を近付けていく。
その先にあるのは斑鳩の顔。
次の瞬間、『唇』と『唇』が軽く触れ合った。

        トスッ

「『シロウサギ』からアイをこめて」

        クスッ

片手に持った『ウサギのお面』を離し、悪戯っぽく笑う。
自分の代理として、『シロウサギ』にキスしてもらったというワケだ。
やはり、このまま『マジメな雰囲気』で終わるのが耐えられなかったらしい。

(ジツは『マジ』でやっちゃおうかとイッシュンだけおもったケド…………)

たとえば、『額のキス』なら『友情のキス』だし。
『そういうの』ならイイかなとも思った。
イカルガくんのコトはキライじゃないし。
しかし、いきなり初デートでやるのはハードルが高い。
だから、今回は見送るコトにしたのだ。

「――――とちゅうまでイッショにかえろうよ。
 なにせ、よるはブッソーだしさぁ〜〜〜
 『バール』もったヤツにイキナリうしろからなぐられるかもしれないし!!」

         ザッ

『斑鳩翔』と『夢見ヶ崎明日美』の『デート』は、夏祭りの終わりと共に幕を下ろす。
それは、『アリス』にとって一つの『冒険』の終幕だ。
明日からは、また新しい『未知』が『アリス』を待っているだろう。

521夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/18(水) 22:06:12

まだまだアツさキビシーまいにちですが、
みなさまいかがおすごしでしょうか??
ジブンとしては、いいカンジにナツをしめくくれたとおもってる。
だけど、こじんてきに『やりのこしたコト』があったのだ。

「――――よし!!いくか!!」

夜の闇を前にして、気合いを入れ直す。
いま、わたしは『でる』とウワサされている
『しんれいスポット』にきております!!
まだ『オバケ』ってみたコトないしイッカイくらいみておきたい。
そんなこんなで、いまからタンケンするコトにするぜ!!
ホラーのくにのアリス・
ウワサのバショでカノジョがモクゲキしたものとは!?

      カチッ

用意してきた懐中電灯のスイッチを入れて、人気のない道を歩き出す。
場所は分かってる。
色んな場所で、『ドクター』の『超人的聴覚』を使って聞き耳を立ててきた。
事前の情報収集はバッチリ。
『アリス』は、リューコーにビンカンなのだ。

「このヘンで『みた』って、さいきんウワサになってるらしいからな〜〜〜」

            ザッ ザッ ザッ

もちろん、『ドクター』は今も出している。
『超人的四感』を駆使して、怪しい気配を察知するためだ。
では、ココでモクゲキシャのインタビューをごらんいただこう…………。
あのトキはトモダチにさそわれてカルいキモチでいったんですが、
まさか『あんなコト』になるなんて……。(T.Yさん、だいがくせい)
きもだめしちゅうのワカモノたちにおきた、
みのけもよだつキョーフのエピソード…………つづきはCMのあとで!!

522リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2019/09/19(木) 22:07:43
>>521

君『夢見ヶ崎』が懐中電灯片手に向かう先は人通りも少ない
草むらが歩道もはみ出る場所だ。真夏なら薮蚊も舞いそうながら
今の季節だと既に飛んでる虫も程ほどと言うところだろう。

すると、ぼんやりと人魂のような光がぼんやり見えてくる・・・

「ヤブカンゾウ、それと芹か」 ガサガサ

近くへ行くと、その草むらの中を屈んで何かしている怪しい人影が
電灯の下に映った。幽霊と言う感じでは無さそうだ
腰に提げてるランタンタイプの懐中電灯が人魂らしき正体だ。

「んっ、なに? 眩しいな」

屈んだ人影が立ち上がる。17、8程度の女性だ。
眩しそうに懐中電灯より先の貴方に、目を細めよく見ようとしている。

523夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/19(木) 23:06:04
>>522

    ピクッ

「――――おん??」

草葉が揺れる物音を、『ドクター』の『超聴覚』が素早く捉える。
そこにダレかがいる。
コレは、ついに『でた』か!!

「ワレワレしゅざいはんがモクゲキしたモノとは!?
 いま、ウワサのショータイがあきらかになる!!」

               バッ

その方向に懐中電灯を向けた。
ユーレイにはみえない。
みえないっつっても、みたコトないんだけど。
ココは、たしかめてみるヒツヨウがあるな!!
すぐにあきらめてしまっては、『アリス』はつとまらないのだ。

「みたところ、おなじくらいのトシらしいぞ。
 はたして、『ウワサのユーレイ』はニンゲンだったのか??
 ワレワレは、さっそくカガクテキなケンショウをこころみた!!」

                       ザッ ザッ ザッ

『カガクテキなケンショウ』――つまり、『近付いて確かめる』というコト。
眩しそうにしているから、懐中電灯は下ろした。
そういうワケで、傍らに人型スタンドを連れた少女が歩いてくる。

524リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2019/09/19(木) 23:19:42
>>523

「やぁ、こんばんわ。・・・元気だなぁ」 フフ

ユーチューバーとか、そう言ったノリを彷彿とさせるけど
カメラは見当たらない。代わりに独特なものを隣に引きつけてる。
人によっては物騒に感じるだろうけど、殺気立った『餓え』は感じない。
どちらかと言えば、月夜に浮かれて散歩する中型犬と言う感じだね。

「そちらも、こんばんわ。私は尾月
尾月 李下と言う名前なんだ。けど、リカオンって呼んで欲しいな」

彼女の片割れ『ドクター・ブラインド』にも挨拶。そして

「そして、こちらは私の片割れ」  ズッ・・・

『アタランテ・オーバーチュア』を数秒程発現させて挨拶しておく。
彼女は啓蒙深いが、余り社交的では無いからね。ガールズトークが
出来るようなら私も願ったり叶ったりなんだけど。

「こんな夜更けに散歩かい? まぁ、その子がいれば安心だろうけど」

「私はルーチンワークの野草チェックで此処にいるんだけどね」

525夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/19(木) 23:47:33
>>524

「『リカオン』??じゃあ――――」

『リカちゃん』だな。
そう言おうかと思ったが、止めた。
何かコダワリがありそうだし、そういうキモチは分かる。

「まぁいいや。『リカオン』かぁ〜〜〜。
 わたしは『アリス』というモノ!!はじめまして、どうぞヨロシク」

「ほうほう!!『リカオン』も『スタンドつかい』なのかね。
 なんだかたのしくなってきた!!なかよくしようぜ!!」

『ミチ』とのファーストコンタクト。
アイサツは、しっかりしておく。
ダイイチインショウがダイジだからな!!

「いやいや、さんぽってほどじゃないな。
 このヘンでウワサされてる『ナゾのユーレイ』をしらべにきたのだ!!」

「そのショウタイは『リカオン』だった!!これはスクープだな!!」

     キョロ キョロ キョロ
                  キョロ キョロ キョロ

「――――で、ナンか『おもしろいショクブツ』とかはえてんの??
 『ウサギ』みたいなカタチしてるとか、『フランスこっき』みたいなイロしてるとか、
 『ブルーチーズ』みたいなニオイしてるとか??」

526リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2019/09/20(金) 00:10:08
>>525

「アリス、アリスね。スナーク狩り」 ヒュ〜ッ


「良い名だ」
口笛一つ。こんな夜更けに少々毛色の異なる少女が二人。
蛇もブージャムも誘われる事は無いだろうけど。

>『おもしろいショクブツ』とかはえてんの??

「生えていたら面白いけどね。ただ、私のしてる事は他の人には
酷く退屈に見える作業だよ。オオバコとか犬麦とか、ありふれた物が
何処に咲いてるか確認して地図に印すだけだから。
なんでそんな事するかって?
植物は、私達の支えだからね。タンポポだって根を乾燥して粉末状にして
飲めば快便開通 ウンの字もさっぱりっ! てね」

少々下品な話だったかなと、軽く笑いつつ告げる。

「昔はずっと山に祖父と入り浸って、茸なり何なり味見してたもんだよ。
今でも時間が許せば行くけど・・・・・・日常生活を送ると、どうしても
行く機会が少なくなって参っちゃうよ。だから、少しでも山の気配って言うのかな。
慣れ親しんだ自然を都会の中で見つけて憩いたいんだ」

変かも知れないけどねと呟きつつ微笑む。
けど、私は根っからの『狩り』に生きる者だから。
山と生きて山と共に死したいから。そこは譲りたくない。

「因みにアリスさんは、不思議とは縁があるのかい?」

幽霊を追い求めるアリス。中々斬新だ
鏡や不思議の国でも地下室でもない。

527夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/20(金) 00:33:12
>>526

「ほうほう。オモシロいな、『リカオン』は!!
 クサとかキノコとかさがしてるのか。『アリス』とにてるな!!
 『アリス』も、フダンから『フシギなモノ』をさがしてるからな〜〜〜」

まさか、こんなトコロでユカイなヤツにであえるとは。
ひょっとすると、ユーレイをみつけるよりもオモシロいかもしれない。
コレは、きゅうきょ『ばんぐみさしかえ』だな!!

「まぁな!!ソコソコけいけんしてるほうだとおもうぞ!!たぶん!!」

「えっと〜〜〜」

「『アンダーグラウンドなセカイ』でなぐりあったり、
 『ユメのセカイ』でイロイロやったり、
 『しろいホンをもったナゾのショーネン』をおいかけたり、
 『サイバーなセカイ』のテストにさんかしたり、
 コドモたちのセワしつつ『キョーボーなニワトリやワルモノ』とやりあったり??」

頭の中で思い出しながら、指を折って数える。
まだまだ物足りない。
なにしろ、この世には星の数ほどの『まだ見ぬ不思議』が溢れているのだから。

「あ!!あと、このまえはじめてオトコノコと『デート』したしな!!
 シャシンみる??」

スマホを取り出して、浴衣姿で写っている写真を見せた。
背景には屋台が並んでいる。
少し前にあった、夏祭りの様子らしい。

528リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2019/09/20(金) 01:03:57
>>527

「へ〜〜ぇ! いや、凄いな。そんなに良く色々経験出来るよ」

素直な感嘆と感想しか出ない。いや、実際よくそこまで色んな出来事に
巡り合える。そう言う女神に彼女は愛されてるのかも知れない。

「ほぅほぅ、デートねぇ。・・・・・・! こ、これは」

「まさか・・・・・・!」

「そ そんなぁ」

目を見開き、肩を震わせて。



「――全くの見ず知らずの他人だ」

うん、少しだけ溜めて法螺を吹いてみた。この娘なら
オーバーリアクションにも良い反応を返してくれそうと言う期待こめて。

「はは、御免。お詫びに私の彼氏の写真見る?」

そう、財布にお守り代わりに同封している写真を差し出す。
自然公園で撮ったものだ。余り写りは良くない 彼は写真嫌いなんだ。

因みにヴァージンも既にプレゼントはしている。
私の内緒の一つかな。

529夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/20(金) 01:18:53
>>528

「なんだよなんだよ〜〜〜、ミョーなキタイもたせやがって〜〜〜。
 てっきりリカオンのオトウトかとおもったぜ〜〜〜」

まぁ、いいや。
ショウくんがリカオンのオトウトなワケねーしな。
いや、たぶんだけど。
だって、いかにも『ひとりっこ』ってカンジだし。
アリスも『ひとりっこ』だから、そこらヘンはなんとなくわかる。

「せっかくだから、みてやろうじゃないか!!
 『くるものこばまず』が『アリス』のモットーだからな!!
 なんかオモシロイものでもうつってるかもしれないし!!」

素直に写真を覗き込む。
そのカレシがオモシロイってカノウセイもある。
カレシが『ニンゲン』だとはヒトコトもいってないしな。
もしかすると、かわったイキモノってコトもかんがえられる。
アレはいつだったか、『ミズウミ』でのチョウサでみつけられなかった『ほしみUMA』のサイライか!?

530リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2019/09/20(金) 18:29:26
>>529(次レスで〆させて頂きます)

>てっきりリカオンのオトウトかとおもったぜ

「……ぁ〜 うん」 ポリポリ

耳下腺のある場所の皮膚を小指の爪で掻きつつ、曖昧に同意する。

――おとうと か……。

「そうだったら、奇妙な面白さがあったかもね。
けど、現実はそこまで愉快じゃないかなぁ」

夢見ヶ崎が見た写真には、軽く手を振るリカオン 横向きで億劫そうな顔つきの
『ウツボカズラ』のヘアバンドをした大体成人なり立てか未満に見える男が居る。

「出会いはフッツ―なんだけどね。てきとーに今日見たいに野草探しして
てきとーに休んでる時に知り合って。誰かに迷惑なナンパされたのを助けられたとかの
ラブロマンスは一切無いから」

手を軽く振りつつ苦笑い。私が理想とする『群れ』とはズレている。

「けど、まあ傍にいても煩わしくないし。隣が寂しい時に居てくれると
しっくり来るんだ。アリスも、そー言う男を捕まえて囲まないとね」

それでも惚気は聞いて頂こう。これ位、奇妙に知り合った使い手に対し
ちょっと馴れ馴れしくしても罰当たらないだろう。
 それに恋バナ出来るスタンド仲間とか、結構希少な気がするし。

531夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/09/20(金) 22:12:34
>>530

「ほうほう、まぁなかなかイイんじゃない??
 ワルくないワルくない。リッパなもんだ」

自分から話を振ったワケだが、正直『顔の良し悪し』はよく分からない。
そういった価値観は、幼少期に養われる部分が大きいと思う。
自分は、ごく最近まで『見えない』人間だった。
だから、『その手の審美眼』が足りないというか欠けている。
そのせいで、どう返事していいものか困ったというのは事実だ。

「その『ヘアバンド』はイケてるな!!スゲーおもしろいセンスだ。
 うんうん、コレはイイな」

むしろ、顔よりもヘアバンドの方に興味を引かれた。
こんなのつけてるヤツみたコトない!!
コレ、どこにうってんの??

「でも、『わたしのカレシ』もイケてるんだけどね!!
 いつもいつも『ちがうカオ』をみせてくれるんだ!!
 ソレをみつけるのがサイコーにタノシイよ。
 『フシギのくに』っていうナマエのカレシでさぁ〜〜〜」

この世界は『見たことのないもの』で溢れている。
見えるようになった時から、私はそれに『恋』している。
だから、私の恋人は『この不思議な世界』そのものだ。

「イマは、『ヒトリのオトコ』にしばられてるヒマないんだよね。
 だって、わたしは『アリス』だから!!
 いろんな『フシギ』が、わたしのきをひこうとしてくるからさぁ〜〜〜。
 ソッチのあいてをするだけで、『ていっぱい』!!」

だから、カレシを作るとかいう気はない。
『見てみたいモノ』が『星の数ほど』あるから。
『アリス』は、いそがしいのだ。

532リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2019/09/21(土) 21:59:49
>>531

「『ちがう顔』・・・アリスは私に似てるね」

御山もそうだ。入る度に私の愛する場所は違うものを見せてくれる。
だからこそ『群れ』を作りたくなる。もっと違う獣と巡り合いたくなる。

『飢え』は未だない。『狩り』をするには何て穏やかな月光だろうか。

「私もこれから『色んなモノ』に出逢って、見て 感じて
出来ればそれを味わったりしたいんだ」 二ヤッ

「だからアリス。もし、その道中で再び会う時は私もご同伴させてよ。
リカオンは帽子屋程に盛り上げるのは上手くなくとも白の騎士程には
手助け出来る筈だからさ」

「それじゃあアリス また夜の散歩道や それ以外で」

(彼女は『群れ』には入らぬだろう)

(リカオンは女王に関心ない。多くの兵隊達も要らない。
ただ、心から寄り添える 手の指で数えられる程度の『群れ』があれば良い)

リカオンは月を見る
 何時かの晩に起き得るだろう『狩り』を想い

533美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/14(月) 21:57:54


                  〜〜〜♪

町のどこかで『ラジオ』が流れている……。

「――今日も、あなたの隣に『電気カナリア』の囀りを」

「『Electric Canary Garden』――
 この時間は、パーソナリティー・美作くるみがお送りしますッ!」

「最近ますます秋めいてきましたねえ。
 紅葉が見頃を迎えるのも遠くない感じですよねぇ〜」

「秋っていうと、チョットしんみりした雰囲気がありませんか?
 夏の次だからっていうのもあると思うんですけど。
 こう……しっとりした印象ですよね」
 
「それが良いと思うんですよ。『侘び寂び』っていうか。
 エネルギッシュな季節の後で、ホッと一息つかせてくれる感じで」

「秋というと、色々な言葉がありますよね。
 『芸術』・『食欲』・『スポーツ』……。
 『ハロウィン』なんてのもありますよねえ〜。
 リスナーの皆さんは、どんな『秋』がお好きでしょうか?
 本日は、このような話題で皆様とお喋りしていきますよぉ〜」

「っと――早速リスナーの方(>>534)から『コール』を頂けたようです。
 お電話ありがとうございます!こちらは美作くるみですッ!」

534蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/18(金) 23:40:08
>>533

「もしもーし」

「あれ、これ繋がってます?」

男性の声だった。

535美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/19(土) 00:03:58
>>534

「はい、もしもし!大丈夫ですよぉ〜。バッチリ繋がってますからッ!」

『カナリア』を思わせる高く澄んだ声で、電話に応じる。
この瞬間は、いつも胸がときめく。
どんな話が聴けるのだろうか。
しかし、ただ聞き役に徹するだけでは『パーソナリティー』は務まらない。
次の言葉を発しながら、頭の中で考えを巡らせる。

「早速ですが、お名前もしくは『ラジオネーム』を教えて頂けますか?」

性別や年齢や性格など、声から読み取れる事は意外に多い。
相手が男性である事は分かった。
次は、大体の年齢が分かればいいのだが。
話をする事と話を聴く事が、『パーソナリティー』の仕事だ。
相手の事が分かれば分かる程、それに合わせた会話をしやすくなる。

536蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/19(土) 01:22:06
>>535

「あぁ��よかった、こういうのよく分かんなくて」


丁寧だがどこかラフな印象の言葉遣いだった。

「名前……は長いからラジオネームであー……『マラドーナ』でいいや」

軽い雰囲気でそう告げる。
マラドーナのままで通すつもりらしい。

「秋の話すればいいんだっけ?」

537美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/19(土) 01:50:36
>>536

「――ありがとうございます!『マラドーナ』さんですね!」

(声の雰囲気から判断すると……年齢は私より少し上みたいね)

『名前が長い』という部分が気になってはいた。
だが、そこを突っ込んで聞くのは止めておいた。
状況によっては『話題作り』のために尋ねてもいいが、今はしない。

「はいッ!おっしゃる通り、今回のテーマは『秋』です!
 『秋』にまつわるエピソードや、『秋』と聞いて思い浮かぶ事など、
 『秋』に関する事なら何でもオーケーですよぉ〜」

第一印象から、既に興味を引かれた相手だ。
この放送を聴いている他のリスナーも、
同じような感想を抱いているだろう。
自分としても楽しみだし、『番組を盛り上げる』という意味でも有り難い。

538蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/19(土) 09:08:42
>>537

「そう、マラドーナ。ディエゴ・マラドーナ」

からからと笑う声が聞こえた。

「あぁ、秋の話だな。うん、分かってる分かってます」

ほんの一拍だけの間があって、再び話し始める。

「よく、何とかの秋って言うじゃないか。秋は過ごしやすい、みたいな話」

「それで、行楽シーズンとかも言うけど、おかしくないかと思って」

539美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/19(土) 20:30:09
>>538

「はいはいッ、この時期になると必ず耳にするフレーズですよねえ。
 『風物詩』といいますか『時事』といいますか……。
 ある意味では、『標語』みたいなものかもしれませんねぇ〜」

特に不思議な事だとは思っていなかった。
昔から何度も聞いてきた言葉だからだ。
だから、疑問など持つ事なく納得してきた。

「かくいう私も使ってますからねえ。
 というか――今さっき使っちゃいましたねッ!
 いやはや、アハハハハ…………」

思わぬ不意打ちを食らったが、番組の雰囲気を壊す訳にはいかない。
ここは、冗談交じりの苦笑いで場の空気を和らげる事にした。
確かに言われて見れば、昔から聞く言葉が正しいとは限らない。
彼は、どんな理由で『おかしい』と思うのだろうか?
自分としても、それは大いに興味を引かれる部分だ。

「『マラドーナ』さんは、どんな所に疑問を感じておられるんでしょうか?
 これは是非お聞きしたい所です!
 今まで、そんな人に出会った事がなかったですからねえ」

540蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/19(土) 23:36:22
>>539

「疑問というか、正直なところ美作くるみさん、あんただってそれを感じられると思う」

「その他の人も同じように」

そう言った。
なんて事ないように言葉を吐いている。
強調することも意地になる事もない。

「行楽シーズンでなくとも、皆出かけてるじゃないか」

「むしろ、イベントごとで言えば夏の方が多いでしょ?」

それが男の主張だった。

「過ごしやすい、出かけやすいなんて言いながら、皆クソ暑い夏にフェスに行ったり祭に行ったりする」

「あるいは、クソ寒い冬にイルミネーションを見に行ったりする」

「紅葉狩りだって、結局は花見をリフレインしてるだけじゃないか」

一つ一つ、言葉を繋いでいく。

「だから、秋を行楽シーズンっていうのは適切じゃないでしょって話」

541美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/20(日) 00:14:42
>>540

「はい……はい……なるほどぉ〜ッ!
 言われてみれば…………。鋭いご指摘ですねぇ。
 確かに、どんな季節でもやっている事ですもんね」

「私も真夏の野外フェスは好きですし、イルミネーションも……。
 うん、とても納得ですね。
 含蓄があって、すごく興味深いお話だと思います」

言葉と同時に、深く頷いた。
当然、音声だけを伝える『ラジオ』では届かない。
しかし、動作を入れる事によって声色の説得力が増す場合もある。

「『マラドーナ』さんは、
 ユニークな着眼点をお持ちでいらっしゃるんですねえ。
 あ、変な意味じゃないですよ。
 こう――独自の切り口を感じるというか」

「それじゃ、『いつでも行楽シーズン』って事ですねぇ〜!
 というよりは、
 それぞれの季節の良さを楽しんでいると言う方がいいでしょうか?
 『秋』だけ特別扱いじゃあ不公平ですもんね!」

身近な話のようで、なかなか考えさせられる内容だと思う。
それに、彼自身にも興味が湧いた。
彼の語り口からは、
周囲に流される事のない『強い意思』のようなものを感じたからだ。

「――――『秋』の話題からは外れるんですが、
 『マラドーナ』さんは、お好きな季節はおありですか?」

542蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/20(日) 00:32:12
>>541

「いつでも出歩いてる以上はどの季節も行楽シーズンだ」

「年がら年中ね」

美作の言葉を補強する様に言葉を復唱していた。

「好きな季節?」

「うーん……」

静寂、悩んでいる。
即答ではない。
その割には迷っている気配はない。

「どの季節もそこまで?」

「正直、どの季節っていうのがなくて、どれも好きで嫌いだな」

「美作さんは?」

543美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/20(日) 01:13:50
>>542

「アハハハッ――『マラドーナ』さんはトコトン平等な方なんですねえ。
 人でも何でも、見かけだけで判断しちゃあいけませんもんね!」

「――――私ですか?そうですねえ…………」

こう聞かれると、少しばかり悩んでしまう。
何しろ、彼の話に納得した後なのだ。
季節に対する考え方も、話を聞く前とは多少変わってくる。

「普段ならビシッと答えるんですけど、
 改めて考えてみると、
 『マラドーナ』さんと同じような気がしてきますねぇ〜」

「スキな所やイヤな所は、それぞれにありますもんね!
 そう思うと、なかなか決めるのは難しくなりますねぇ〜。
 自分で言い出しといて、こんなんじゃダメダメですね!」

「でも、一つだけ決めるとしたら『夏』ですかねぇ〜。
 派手というか賑やかというか、
 『夏』特有のエネルギッシュな雰囲気が好きなんですね。
 ヘンな言い方ですけど、暑さと張り合ってるみたいな感じで」

きっと自分は、明るく陽気な雰囲気が好きなのだろう。
だから、『夏』と答えた。
大きなイベントが多いのも理由の一つかもしれない。

「それで熱中症にでもなってたら大変ですけどねッ!
 そういう心配がないのは『秋』のイイ所だと思います!」

544蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/20(日) 02:09:03
>>543

「平等というか……まぁ、平等と言えば平等か」

頷いてみる、見えないけど。

「夏が好きなんだ。そうなんだ。なるほどな」

なにか納得した様子だった。
そんな雰囲気であるわ

「秋はね、熱中症にはならないけど」

「急に秋めくからな」

545美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/20(日) 02:50:54
>>544

「そうそう、そうなんですよねぇ〜。
 昨日まで残暑だったと思いきや、
 次の日には急に冷え込んだりしますからねえ」

「日によって気温がコロコロ変わっちゃうんですよね。
 昨日は夏物、翌日は秋物、その翌日はまた夏物!って感じで。
 こう、季節に翻弄されるというか。
 体調を崩しやすいですし、その辺りは『秋』の困る所ですよね!」

「ちなみに、くるみの困る所は『ドジ』をやる所ですかねぇ〜。
 イイ所は、それを気に病まない事ですねッ!
 いえ、もちろん反省はしますよ!」

一番いいのが失敗しない事なのは言うまでもないが、
最も良くないのは失敗を気にして前に進めない事だろう。
失敗しない事も大事だが、失敗にめげない事も大切だ。
だからこそ、どんな時でもポジティブに明るく振舞う事で自分を鼓舞する。
自分を一番応援してあげられるのは、他ならぬ自分自身なのだから。
それが、『美作くるみのスタイル』だった。

「くるみから見た『マラドーナ』さんのイイ所は…………
 『意思』がしっかりしていらっしゃる所でしょうか?
 あまり大きな事は言えないんですが、
 今回お話を伺ってみて、そんな風に感じましたねえ」

話の『纏め』に入るには、丁度いい頃合になってきた。
そのように考えて、通話を締めくくり始める。
もし何もなければ、そろそろ『生電話』もお開きに向かうだろう。

546蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』:2019/10/20(日) 23:19:42
>>545

「ありがたい」

「意志は大きい方がいい」

そう言ってまた笑う。
くっくと内に落とすような笑い方だった。

「あぁ、うん。そんなことを言いたかっただけだ」

これ以上彼からも言う事はないのだろう。
だったが、ぽとりと一言。

「あ、切る前に落としたいことがあって。もちろん、これを言ったら切るんですけど」

「秋だけ、英語での表現が二通りあるのはなんでなんだろうねってこと」

そう言い切ってから、じゃあね、と言う。
もう通話を終えるつもりらしい。

547美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/10/21(月) 01:03:16
>>546

「『秋』というと……『autumn』と『fall』ですよねえ。
 ああッ、確かにぃ〜ッ!」

「何でしょうね?
 『アメリカ英語』と『イギリス英語』の違いでしょうか?
 『subway』はアメリカでは『地下鉄』の事ですけど、
 イギリスでは『地下道』を指すそうですし――」

「これは気になりますね!
 次回の放送までに調べておきたいと思います!」

「『マラドーナ』さん――
 今日はお電話いただき、どうもありがとうございましたッ!!
 是非、この後も放送をお楽しみ下さい!」

「後日、『番組特製クオカード』をお送りしますので、
 そちらの方もお楽しみに!
 それでは、いつかまたお話いたしましょう」

「――――『See you again !!』」

挨拶を述べて、通話を切る。
ユニークで個性的な相手だったと感じた。
こういう出会いは、自分にとって『プラス』になる。

「さて、次のコーナーに入る前に一曲お届けしましょう。
 ハロウィンにもピッタリな『Shakira』の『She Wolf』です!!
(ttps://m.youtube.com/watch?v=booKP974B0k)」

後日、『マラドーナ』に一通の封書が送られてきた。
中身は『Electric Canary Garden特製クオカード』だ。
それと一緒に、『メッセージカード』が同封されている。

『先日は、お電話ありがとうございました!
 今まで考えた事もなかった話題で、すごく考えさせられました。
 とっても興味深かったです。
 よろしければ、またお気軽に電話してきて下さいね!
 待ってます!』



蝶名林ルロイ紗英『ボブモ』⇒『番組特製クオカード(500円分)』Get!!

548斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/12/29(日) 21:28:18
年の瀬と言うのは忙しいものであるが
それとは関係のない話。

 ――カキィン!

 「いやー……」

半身を開いて体を山のように動かさず
ヒッコリーのバットを構え、見様見真似で振る。

 ――カキィン!

甲高い音と共に白球が空を舞う 
目指せ今日だけべーブルース

 ――カキィン!

『バッティングセンター』甲高い音と共にボールを飛ばす爽快感は何事にも代えがたい快感が有る
ストレス解消には最適である。

 「僕のバット当たらないんですけどぉ!なぁ隣のオッサン打ちすぎじゃない?元プロ?」

……あたれば。
 
 「違う?腰が引けてる?」

 「ちゃうわい飛んでくるボールの腰が引けてるんだよ(?)」
 「見てろ元プロ次はかっ飛ばすからな!」

すぐ傍の装置でボールの軌道を変更できる事を
彼は知らなかった。

549斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/01/01(水) 16:53:39
>>548

カキィン

 「シャオラ!当たったぜ見たか!」

ピーヒョロ〜

 「……うっわ、すっげぇしょっぱいファンファーレ。」

(まあ、勝手に期待して勝手に裏切られるのは、未だに変わらぬ人間の悪癖だよなァ)

 「だからだろうな、あまり良い事には思えないのは」

バットを元に戻して背を向ける
まだ、見つからない。

550百目鬼小百合『ライトパス』:2020/02/07(金) 00:22:48

『地下アーケード』――その場所は、何処かアングラな匂いが漂う。
何気ない視線をショーウィンドウに送りながら、女が歩いている。
外見は四十台程であり、決して若くはないが、
軽快な足取りは年齢を感じさせない。
白いパンツスーツ、ベリーショートの黒髪。
口元にホクロがあり、
両方の耳には『白百合』を象ったイヤリングが揺れていた。

「相変わらず愉快な場所だねえ」

「――『この辺』は」

かつて、ここに出店していた違法な店に、
『警察』として踏み込んだ事があった。
もっとも、今は違う。
そういった店は見える範囲には見当たらないし、
今の自分は『警官』でもない。
しかし、身に付いた癖というべきか。
特に欲しい物がある訳ではなくとも、
つい無意識に『探るような視線』を向けてしまう。

551鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/02/10(月) 21:42:49
>>550

        ギィ ・・・ ――――

重いドアが開く、独特の軋んだ音が聞こえた。
看板の出ていない店から出てきたのは少女か、
女性というべきか、曖昧な背格好の女だった。

「…………?」

「ええと」

その女と、目が合った。

「何かお探しですか? それともその、失礼なんですけどね、
 ボクってもう、お姉さんとはお知り合いなんでしたっけ―――――?」

探るような視線の意図を、そう捉えていた。
レトロな意匠のコートに合わせたマフラーが、傾げた首に合わせて揺れた。

552百目鬼小百合『ライトパス』:2020/02/11(火) 00:03:24
>>551

若く見られてはいても、『お姉さん』と呼ばれる年齢は越している。
そういう言い回しがポンと出てくるという事は客商売か。
『何かお探し』と言ったのなら、客ではなく従業員かもしれない。

「ん?ああ、いや――赤の他人だよ」

「そこの店、看板が出てないだろ?
 『どんな物』を扱ってるのか気になってねえ」

「出入りする人間を見てれば、
 何かしら分かるんじゃないかと思ったのさ」

目の前の女から怪しい気配は感じなかった。
単に変わった店というだけか。
そう思いながら、やはり気にはなる。

「分かったからって、別にどうって事は無いんだけどねえ。
 もし気分を悪くさせちまったんなら謝るよ。
 すまないね」

「――――もののついでに聞くんだけど、そこは『何屋』なんだい?」

だから直接尋ねる。
女が客か店側の人間かも分かるだろう。
それから入ってみればいい。

553鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/02/11(火) 00:30:06
>>552

「でしたねぇ。覚えは無かったんですケド、
 もしそうだったら申し訳ないな――――と」

         フ…

鳥舟は微笑を浮かべ、振り向く。
今出てきた扉にも、『表札』等はない。

「気を悪くなんてとてもとても。
 こちらこそ、急に話しかけてすみません。
 視線を感じたもので――――と、まあ、
 自意識過剰だったみたいですケド。
 ふふふ、お恥ずかしい限りで……」

「それでええと、このお店は――――」

        ガサッ

「『骨董品店』っていうんですかね、アンティークショップ?
 何かの『専門』ってわけでもないんですが、色々売ってますね。
 アンティークはお好きですか? ボクは、結構好きなんですケド」

袋の中身を見せる。
・・・『木箱』にしか見えないが、中身は『食器』だ。

「それにしても……なんだか、『張り込み』みたいですねえ。
 ホラ、刑事ドラマとか、探偵モノとかの。
 ……まぁーでも、確かに、この店は『何屋』か分かりづらいですよね!」

           「看板もないし、ネットにも出てないし」

554百目鬼小百合『ライトパス』:2020/02/11(火) 00:53:20
>>553

「なるほど、『知る人ぞ知る』ってヤツだねえ。
 世の中には珍しい店もあるもんだ」

「お陰様で疑問が解けたよ。ありがとねえ」

顔を近付けて木箱の中身を覗いた。
確かに食器だ。
『食器の形をした何か』って訳でもあるまい。
もっとも、本気で仕込もうと思えば何にだって仕込める。
そうはいっても、そこまで疑う理由も別にないのだ。

「ハハッ、『張り込み』ねえ。そんな風に見えたかい?
 でも生憎だけど、アタシは『刑事』でも『探偵』でもないね」

「まあ、体を張る仕事ではあるけどねえ」

今の職業は『警備員』。
近くはないが、そこまで遠くもない。
少なくとも、体力を使うという点では同じだ。

「嫌いじゃあないけど、詳しくはないよ。
 その、アンティークってのはね」

「アタシが持ってるもので、『それらしいの』って言ったら……」

    ゴソ

「――これくらいだね」

スーツの内ポケットから、『オイルライター』を取り出して見せる。
かなり年季が入っていて、あちこち傷が付いていた。
数十年は使われていそうだ。

555鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/02/11(火) 01:44:43
>>554

「そうですね、隠れ家的っていうのかな。
 骨董屋は別にもあるんですけど、
 隠れてるだけあってこっちも面白いのが多くって」

木箱の蓋の中は、本当にこのこじんまりとした『食器』でしかない。

「歴史的価値があるかは、まぁ怪しいとは思うんですがね」

いつの時代の物かもあいまいだが、
間違いなくただの、実用品としての食器だ。

「ただ、そのライターもですけど……いや。
 そのライターの方がずっと『そう』だと思うんです。
 つまり、『歴史』があるっていうのは、その分『ロマン』がある。
 そういうところが、アンティークってやつの、好きなところですね」

「例えば、どうして傷がついたのか、とか。
 どうしてこういう模様にしたんだろう、とか。
 分からない事ですし、暴きたいわけでもないんですけどね。
 そういうのを考えるのが、ボクは好きなんですよねえ」

       ニコ・・・

「とまあ、自分語りをしちゃいましたけどね。ふふふ……」

そこまで言い終えてから、箱のふたを閉じた。
箱の中の食器にも、そのようなロマンを感じていた。

「それにしても、良いライターですねえ。もうずっと……使われてるんです?
 ボク、アンティークは好きなンですけど……『鑑定眼』がお恥ずかしながら今一つでして」

556百目鬼小百合『ライトパス』:2020/02/11(火) 02:11:15
>>555

「ははあ、素敵な話だねえ。
 何十年も何百年もかけて、
 人から人へ渡っている物だってあるだろうしさ。
 そんな風に考えた事なんて、あんまり無かったよ」

「アタシは『キチンと使えるかどうか』っていう方を気にするタチでね。
 そういう細やかな感性にまでは気が回らないんだ」

「『全部が全部』――って訳でも無いんだけどねえ」

    カキンッ

親指を滑らせると、金属の蓋が勢いよく跳ね上がる。
同時に、耳に心地良い音が手の中で響く。
数十年の間、慣れ親しんだ音だ。

「これはね、『昔の仲間』に貰った物さ。
 部品を交換したり点検したりしないと、よくヘソを曲げるんだ。
 いい加減で買い換えてもいいんだけど、
 なかなか手放す気になれなくてねえ」

          フッ

「ただ、そんな大層なロマンはありゃしないよ。
 ずっと使ってるからガタが来てるだけだし、
 傷が付いてるのはアタシの使い方が荒いからさ」

「『コレを胸ポケットに入れていたお陰で弾を防げた』――
 なんて話の一つでもあれば面白かったんだけどねえ」

557鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/02/11(火) 02:33:28
>>556

「参考になったなら、光栄ですね。
 マアでもボクも全部が全部、
 『ロマン』を求めてるわけでもないんですよね。
 連絡手段とかは、実用性重視してますし!」

「使い方も、実用品ならまあ、荒くはなっちゃいますねえ」

ライターを眺める。
使い、古されている。

人に歴史あり……歴史は人が紡ぐものだから。
全部が全部、紐解かなければならないものではない。
『昔の仲間』の物語も、暴くつもりはない。

「それにしても――――『弾』とはまた。
 や、確かに映画なんかじゃお約束ですケド。
 現実中々、『撃たれる』シチュエーションもありませんからねぇ」

「それこそ、『刑事』や『探偵』でもなくっちゃあ」

弾という言葉に、どこか真実味を感じた。
それが何を意味するのかも――――
今ここで暴き立てるのは、あるいは危険かもしれない、とも。

「……そうなると、お姉さんがこのあたりに来たのも、
 ライターの替えのパーツを買いに来た、とかなんです?」

          「どこで売ってるかは、見たことは無いですケド」

558百目鬼小百合『ライトパス』:2020/02/11(火) 22:00:11
>>557

「それもあるけどね。
 ちょっとブラブラしてみたくなったのさ」

「この辺りは、昔はちょくちょく来てたんだけどね。
 最近は、あんまり来る機会が無くてねえ」
 
「だから久しぶりに来てみたんだよ。
 相変わらず見ていて飽きない場所だね」

    パチン

軽く笑いながら、ライターの蓋を指で閉じる。
それから周囲に視線を走らせた。
どこか怪しさの漂う空間。
歓楽街の周辺とは、また毛色が異なる。
もしかすると、『良くない輩』が潜んでいないとも限らない。

「おっと、随分と話し込んじまったね。
 これ以上お邪魔をしちゃあ悪いし、アタシは行くよ」

「アンタのお陰で興味が出てきたからね。
 『アンティーク』ってヤツに」

向けた視線の先には、『看板のない店』があった。
骨董品に関心が湧いたというのはウソでは無い。
本当に真っ当な店かどうか確かめておきたいというのもあるが。

「それじゃあね、親切なお嬢さん。
 色々と教えてくれて助かったよ。ありがとねえ」

          ザッ

「――ああ、そうだ。最後に一つだけいいかい?」

559鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/02/12(水) 19:09:57
>>558

「そうですねえ、表通りや歓楽街には無い雰囲気ですよね。
 よくわかんない店もあるんだけど、それも楽しいっていうか」

「あ、いや。お邪魔なんてとんでもない。
 お話しできて楽しかったですよ。
 アンティークにハマってくれたら嬉しいです」

             ニコ…

「ここ以外にもその手のお店は、
 事欠かないですんでね、アーケード街なら」

屈託のない笑みを浮かべた。
同好の士が欲しいという訳ではないが、
自分の話で興味を持たれるのは気分が良い。

同じく店に視線を向ける。
その意味合いが異なるのには気づいていない。

       クル

足音に振り向く。
立ち去るなら呼び止める気はない、が。

「――――ん、なんですか?
 ボクに答えられる事でしたら、なんでもどうぞ」

その前に質問に応じる事にした。道案内か何かだろうか――――

560百目鬼小百合『ライトパス』:2020/02/12(水) 23:14:28
>>559

「いや、大した事じゃあないよ。
 アンタの言う通り、ここらは変わった雰囲気があるからねえ。
 もしかしたら、中には『妙なの』も混じってるかもしれない」

「――なんて思ったのさ
 昔、そういう『噂』を聞いた事があったもんでね。
 本当かどうかは知らないんだけど」

「もしも『妙な場面』にでも出くわした時は、
 『ケーサツ』に知らせた方がいいかもねえ」

    フッ

そこまで言って、口元に笑みを浮かべる。
表面的には、あくまで冗談めいた言い方だった。
しかし、目の奥には何処か真剣さもあった。

「ま、それだけだよ。世の中には迷惑な連中もいるからね、
 こういう所でお嬢さんの一人歩きを見ると、
 つい余計なお節介を焼きたくなっちまうのさ」

「――――それじゃあねえ」

ひらひらと小さく手を振って、ゆっくりと店の中に入っていく。
さて、『アンティーク』とやらを拝ませて貰うとしよう。
他意が全くないとまでは言わないが、別に疑ってはいない。
ただ、こういう場所にはいてもおかしくないだろう。
この辺りは、『そういう事』には事欠かないのだから。

561鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/02/13(木) 03:46:31
>>560

「――? そうですねぇ、妙な場面。
 ひったくりとかが出たってハナシは聞きますから、
 被害に遭ったら、泣き寝入りはしないようにしときます」

「勿論見かけたら、それは通報しますしね」

言葉の真意は掴みかねたが、否定するような内容ではない。
そう、真意だ。何かが裏に秘められた、そんな言い方に感じる。

(やっぱり『何かを調べてる』ように見える。
 まァ、ボクに関係のある事じゃないんだけども、
 『何となくぶらぶらしてるだけ』にしては……
 『何か』の確信がある、そんな感じが、するんだよね)

「ええ、それじゃあまた!
 骨董にハマったらぜひ情報交換とかしましょう」

           「ボクはこの辺に、よく来ますんでね」

が、いずれにしても深入りの必要は感じなかった。
重厚な背景を辿るのはロマンがあるが、
見知ったばかりの生の人間する事でもない。

店の中に入った背中が扉に遮られる頃には、その場を去った。

562美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/03/02(月) 22:31:38

ある日――――。
星見町の何処かで『ラジオ』が流れていた。
この町の誰かが、それを聞いている。

         〜〜〜♪

    「今日も貴方の隣に『電気カナリア』の囀りを」

         「『Electric Canary Garden』」

  「『パーソナリティー・美作くるみ』がお送りしまぁ〜すッ!」

「少し前の放送では、『バレンタイン直前企画』として、
 『恋のお悩み相談室』をお送り致しましたッ!
 リスナー様の恋の悩みを、
 私くるみが解決しようという企画でございます!
 皆様、『今年の結果』は如何でしたでしょうか?」

「以前の放送で相談をお寄せ頂いたリスナーの方々から、
 番組宛に沢山のメッセージを頂戴しておりますッ。
 皆様、ありがとうございましたぁ〜ッ!」

「ちなみに、私は誰に差し上げたかと申しますと……。
 いえいえ、これはちょっと言えませんねぇ〜。
 かなり『プライベート』な内容になってしまいますので……」

「でも、せっかくなので、思い切って言っちゃいましょう!
 ハイッ!『スタッフ一同』でございますッ!
 日頃の感謝を込めまして、
 『それなりに良いお値段の品』を配らせて頂きました!」

「そろそろ私も『本命』を渡す相手が欲しい所ですが、
 そこは気にせずにッ。
 一度気にし始めるとキリがないですからねぇ〜。
 あはははは……。
 しっかりと『未来』を見据えて、
 『次』に向かって邁進していきましょう!」

「バレンタインが終われば、次はホワイトデー。
 先日たまたま買い物に行った時に、
 『ちょっと面白いもの』を見かけまして。
 バレタインの後だったんですが、
 もうホワイトデーの売り場が出来てたんですよ」
 
「それで、何気なく一つ手に取ってみたんですね。
 そしたら、『妙な事』に気が付いた訳です。
 何故か分からないんですが、
 その商品に『見覚え』があったんですよ」

「『どこで見たんだろう?』と思って、少し考えまして。
 そしたらピンと来て、その答えが分かっちゃいました」

「実はそれ、『バレンタイン商品の再利用』だったんですよ!
 私も同じ店で買いましたからね。
 だから見覚えがあったんですねぇ〜」

「『バレンタインの売れ残り』を安売りしてなかった訳も、
 これで分かりました!
 いやぁ〜、上手い事やってるもんですねえ。
 もらった側としては、ちょ〜っと『複雑』かもしれませんが……。
 バレンタインを通じて、
 『世の中の仕組み』が少し分かったような気がしましたねぇ〜」

「さてさてッ――
 ここでリスナーの方(>>563)と電話が繋がったようです。
 『バレンタイン』・『ホワイトデー』・『恋愛』・『未来の目標』・
 『意外な場所で分かった意外な真実』などなど、
 今日はこのようなテーマでお話していきたいと思います!」

              pi

    「もしもし、お電話ありがとうございます!
     こちらは美作くるみでございます!」

563美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/03/11(水) 20:57:29
>>562

「――はいッ、ラジオネーム『ハルちゃん二号』さんでしたぁ〜!
 いやぁ〜、とっても興味深いお話でしたねえ。
 まさか『間違って渡したバレンタインチョコ』が、
 そんな事になるなんて……。
 この世の中、本当に何が起こるか分かりませんね!
 さてさてッ、それでは次のコーナーに参りましょうッ!」

「ここからは、私くるみが町のホットな情報をお届けしていきます!
 まず最初にご紹介するのは『地下アーケード』!
 ちょっとアングラというかマニアックな場所なんですが、
 中には意外な掘り出し物もあるようで……。
 表通りとは違った刺激を求める方にもオススメです!
 特に、くるみのイチオシなのは――」

564花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/03/24(火) 22:13:32

打ち捨てられた廃工場の中で人影が動いた。
全身を『レザーファッション』で統一した男が歩いている。
髪の色は鮮やかな赤色だ。

  コツ コツ コツ

コンクリートで固められた床に、革靴の音が響く。
当然だが、他には誰もいない。
その筈だった。

         ズギュンッ

男の右手に、一丁の『拳銃』が現れる。
回転式拳銃――『リボルバー』。
両腕を構え、狙いを定める。
銃口の先には、幾つかの空き缶が並べられていた。
射撃用の『ダミーターゲット』だ。

           ガタッ

「――――ッ!」

不意に物音が聞こえ、拳銃を手にしたまま反射的に振り返る。
そこには一匹の『野良猫』がいた。
ここを住処にしているのか、たまたま入り込んだか。

「脅かしやがって……」

「だがまぁ、なかなか悪くねえ『スリル』だったぜ」

「……いや、待てよ」

ダミーに向き直ろうとした時、『一つの考え』が浮かんだ。
おもむろに右手を上げ、銃口の先を猫に向ける。
野良猫は、積み上げられたガラクタに興味を移していた。

「動かない的より、『こっち』の方が良いかもしれねえなァ」

               ――――チャッ

呟くように言いながら、猫に照準を合わせる。
指は引き金に掛かっている。
ほんの少し力を込めれば、『銃弾』が発射されるだろう。

565リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2020/03/24(火) 22:30:00
>>564

 多分、彼は先客だったのだろう。
私も偶には、人知れず狩の欲求や腕を錆び付かせない為に
狙撃の訓練は行う。そう言う私と同質の輩が一人か二人いても不思議でない。

ただ、彼が次にとるであろう所業は私には『禁忌』だ。

   ヒュッ……タンッ パララッ

猫と彼(花菱)の間に割り込むように、スリングショットで使用される
ラバーボールを彼女(アタランテ・オーバーチュア)に発現して貰い
投擲する。乱雑な軌道で跳ねるゴム製のボールに、猫も驚いて見えぬ方角に
逃げていくだろう。
 それで良い、少なくとも悪戯に的となって良い生き物など存在しないのだから。

「こんにちは、と言って良い時刻かな?」

スタンドを傍らに出しつつ、愛想のよい口調は醸しつつ邪魔をしたばかりの
彼へと声をかける。ただ、目元まで楽の感情を形成する自信はもてない。

「……で、見ず知らずの方の遊びを邪魔しては悪いんだが」

「――今、君は何を撃とうとして。そして何故撃とうとした?」

質問を投げ掛ける口調には冷ややかさが多分に含まれている。

566花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/03/24(火) 23:14:09
>>565

唐突に転がってきたボールに視線を向ける。
リカオンの思惑通り、野良猫は逃げていったようだ。
それを見て拳銃を下ろし、何もせずに猫を見送る。

「なに、構わねえさ。別に俺の家って訳でもねえしな。
 もしアンタの家だったら悪かったけどよォ」

「こんな寂れた場所に、
 俺以外の人間がいるとは思わなかったぜ」

「――しかも『スタンド使い』と来たもんだ」

         ザ ッ

人型スタンドを従えた女に向き合う。
右手には相変わらず拳銃が握られている。
リカオンには、それがスタンドである事が分かるだろう。

「順番に答えるぜ。一つ目の質問の答えは『猫』だな」

「そこに空き缶が置いてあるだろ?
 それを使ってたんだが、ふと思ったのさ。
 『これだと上達しないんじゃないか』ってよ」

「そいつが『二つ目の答え』になるだろうなァ」

冷ややかな口調に、緊迫感を覚えた。
同時に、胸の内に『心地良さ』を感じる。
一種の『スリル』と呼んでもいいだろう。

「――丁度その時に、アンタが来たって訳だ」

目を逸らす事なく女を見つめる。
『スウィート・ダーウィン』に心を読む能力はないが、
女の言わんとしている事は大方の予想がついた。
だが、それを敢えて口に出す事はしなかった。

567リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2020/03/24(火) 23:32:38
>>566

「あぁ、私の家で無い。それに、私は動物愛護団体とかでないし
どちらかと言えば真逆の方面に立つ側の人間だ」

彼の手に握られている拳銃がスタンドである事は理解出来る。
だからと私の態度は変わらない、変えれもしない。

言葉には真実があると思った。浮付いているような口調に眉が片方
自分自身が上がるのを感じつつ、次の言葉は流れ出るように紡がれていた。

「そうか、君の答えはわかった。
なら、次に聞く事は重要だが。君は、先程逃げた猫を私が邪魔せず
見事に撃ち仕留めたとして、だ」

「――君は、その猫を食そうと決めてたか?」


「もし、そう思っていたのなら。私は君の『狩り』を邪魔したのを詫びる
だが、私の常識に当て嵌めるなら。猫を撃って食そうと言う悪食をなそうと
する人間には今まで巡り会った事はない。
 なら、君は私の世界観では悪戯半分に生き物を殺生する人物だと捉えられる」

もしかすれば、君が初めて出会うその人物かも知れないが。と言葉を続ける。

彼の腕を磨くと言う発言には、首を傾げかねた。

「……射撃を磨きたいのは、何故なんだ?
それは一分一秒でも長く、糧となる生き物の苦しみを少しでも短くさせると
言うような理由か?」

568花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/03/25(水) 00:08:33
>>567

「俺も、猫を食うようなヤツは今まで見た事がねえ。
 『俺自身』も含めてな」

「さっきの猫が俺の撃ったタマで死んだとして、だ。
 俺はソイツを食おうとはしなかったろうなァ」

もし邪魔が入らなかったなら、猫は撃たれていたかもしれない。
しかし、そうだとしても『死ぬ』事はなかった。
装填されていたのは『偽死弾』だ。
それは、『偽りの死』を齎す能力を持つ弾丸。
だが、傍から見れば撃ち殺そうとしたようにしか見えないし、
安全である事を差し引いても、
生き物に狙いを付けていた事には変わりない。

「言い訳になっちまうが、『殺す気』はなかったぜ。
 まァ……『生き物に銃を向けた』ってのは本当だからな。
 客観的に見て、アンタの言い分は正論だ」

『命』に対する相手の意見は筋が通っている。
ただ口先だけではなく、
経験に裏打ちされた『根拠』のようなものを感じた。
『動物愛護と真逆の立場』という言葉からも、
それが察せられる。

「『何故』――か。その質問は、ちっと難しいな。
 言ってみりゃあ、より『スリル』を味わうためか」

「研ぎ澄まされた強さを持ってるヤツ程、
 『そういう機会』にぶつかる回数ってのが、
 多くなるんじゃねえかと思ってよ。
 そのために腕を磨いてるって所か」

「少なくとも――
 『アンタの理由』とは全く違うって事だけは分かるぜ」

569リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2020/03/25(水) 00:53:57
>>568

「あー……そう言う手合いか」

頬を掻く。多分だが『わかりあえない』のが目の前の相手だ。

世の中には色々な思想の人物がいる。
命を尊び、生き永らえる為に奪う命に対して礼と謝を重んじる者もいれば
ただただ、その奪い合う事に対しての興奮に囚われる者もいる。

彼は圧倒的な後者で、私はその真逆に位置する前者だ。

別に私はその事に対し非難をする気は無い。釈明でもなく、これは確かだ。
 狩人として、私は山の掟に従い生きていく事を決心した事と。
目の前の彼が『スリル』の為に危ない場所に歩みを入れてる事に対して
何の関連性もないのだから。

 ふーっと細くも長い溜息を吐く。

「…………別に長く会話してる訳では無いが。君と私では恐らく
どちらの主義思想主張をぶつけても、相互理解は難しそうだな」

「少なくとも、結果的に命を奪うか奪わなかったとしても。君がしようと
した行為は私にとって『禁忌』に当てはまる出来事だったし。
 私の願いや祈りといったものは、君の望むものにかけ離れてるだろう」

「……アタランテ ――私達の『信義(能力)』を見せよう」

彼自身が『銃(スタンド)』を見せているのなら。私も既に
アタランテは姿を現してるものの、彼に自身の意思を見せるべきだと思った。

 ――キィン

 アタランテの手元に『村田銃』が発現され、それを私が受け取り
垂直に銃口が天井に向かうように構えて持つ。決して彼に対し向けるような
愚かな真似はしないし、アタランテも許しはしない。
 祖父が、倒れ伏すまで愛用していたものだった。

「これが、私。いや、私達の意志だ。死するまで、この先奪うであろう命に
詫びて感謝し、私の血肉とする為に扱う」

「……君の向かう道と、私の進もうとする道は。
多分交わらない。だけど、知って欲しくて見せた」

ただ、ただ言葉で訴えるよりも。これが一番彼に伝わると思い
能力を、アタランテ・オーバーチュアを見せた。

570花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/03/25(水) 01:29:06
>>569

「――だろうなァ。お互いに分かり合える部分があるとすりゃあ、
 『意見が合わない』って所だけだろうよ」

目の前の相手は、自分とは全く違うタイプの人間だ。
短いやり取りの中で、そのように感じた。
一つの命が別の命を生かす。
それが、この女の考えなのだろう。
『猟師』か何か――勿論そこまでは知らない。

「……コイツは驚いたな。いや、マジに予想外だったぜ。
 こんな辺鄙な場所でスタンド使いに出くわしただけじゃあなく、
 『銃』まで持ってるとはよォ」

「そいつぁ……『ライフル』か?『本物』なんざ初めて見たぜ。
 それを『本物』と呼んでいいのかどうかは分からねえけどな」

発現された『村田銃』をまじまじと見つめる。
『拳銃』と『小銃』――型は違うが『銃器』には違いない。
それらが同じ場に存在しているという事実がある。
そのせいか、何処か奇妙な親近感を覚えた。
もっとも、さっき言われた通り、『歩む道』は真逆なのだろうが。

「なるほどな……。何となく分かったような気がするぜ。
 『銃』に対するアンタの価値観ってヤツがよ」

  スッ

心の中で納得し、視線を『ダミー』に移す。
おもむろに拳銃を持ち上げ、空き缶の一つに狙いを定めた。
そのまま引き金を引く。

      ガァァァァァ――――ンッ!

発射された弾丸が、勢い良く『ダミー』を弾き飛ばす。
床に転がった空き缶には、穴が穿たれていた。
それを見下ろして、銃口を下ろした。

「ちっと狙いがズレたか?まだ『練習』が足りねえなァ」

「ところでアンタ、ここに何しに来たんだ?
 俺も人の事は言えねえけどな」

「散歩しに来たって訳じゃあねえんだろ。
 見て楽しいようなもんは何もない場所だからな。
 だが、『練習』するには丁度いい場所だ」

「――そう思わねえか?」

571リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2020/03/25(水) 18:04:30
>>570(寝落ち失礼しました。宜しければ次レスで〆ればと)

>ところでアンタ、ここに何しに来たんだ?

「理由は違えど、多分君と似たものだろうな。
欲求を晴らしたいから、此処に君はいて。
私は逆に欲を抑えたくて人目につかない場所に行く事にした」

もっとも、君が居た事で破綻したけど。と呟き廃屋の窓から
射す月光に目を向ける。

こう、淡くも強い光が照らす夜空の時は。無性に体の奥底が
何かを狩れと訴えかける。獣であれ、人であれ何であれと無差別な咆哮を。
 そう言う時は、静かに誰も寄り付かない孤独だと実感出来る場所に
ただ一人で居たくなる。

今は小さいし、聞く耳をもたぬ事も出来る。けど、いずれ日増しに
増える心の中の獣を満たすには。何かを狩る事でしか鎮める術は無いのだろう。

「……思えるか思えないかで言えば、理性では頷きがたいけど
本能では首を縦に振っても可笑しくない。
 確かに、君と同じで表に出さないようにする我欲がある。
それを私は抑え込んでるし。君は程良く吐き出しているんだろう」

だが……と、発現した小銃を消して手を銃の形で彼に向けて言葉を紡ぐ。

「忠告するまでもないと思うが……君が進む方向には
切り立った崖が聳え立っている。私の進むべき場所に立つ崖とも異なる
危うい傾斜を作る、いつ転落しても可笑しくない山道だよ、その道は」

「こうして、出逢えたのも奇縁であり山の計らいなのかも知れない。
釈迦に説法では無いが……くれぐれも、使い方を見誤らないでくれ」

軽はずみに、あの猫に銃を向けた横顔に。確かに私は暗い笑みが覗いたと
廃屋の暗がりの中で視たのだ。

彼の言う『スリル』が、今よりも深い暗がりの中を求めれば
その胸に飼っている獣の為に、いずれ彼は喰われるだろう。

「私は尾月 李下
そして別称はリカオンだ。山と生きて死する事を誓った者だ
狩人の担う物を、用途は異なれど持つ君に
その目指す道が明るい事を私は望もう」

572花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/03/25(水) 20:29:31
>>571

「へえ?てっきり俺はアンタも『撃ち』に来たのかと思ったぜ。
 こんな場所でやる事なんて、他になさそうだからよォ」

「だがまぁ、言われてみりゃあ一人になるには絶好の場所かもな。
 俺のせいで台無しになっちまった訳だがよ」

さっき猫に銃を向けた時は、俺の方が邪魔されちまった。
そして、俺自身もアイツの邪魔になってたって訳だ。
俺達は『同じ得物』を持ってる。
それなのに、お互いに邪魔し合うってのは妙な話だが、
何となく納得も出来る。
どうやら徹底的に『ウマが合わない』って事らしいなァ。

「『花菱蓮華』ってのが俺の名前だ。
 似合わない名前だって言われる事もあるがよォ。
 自分じゃあ悪くないと思ってるぜ」

「花みてえにパッと咲いてパッと散る。
 『刺激的』ってのは、大抵そういうもんだからな。
 そして、そういうヤツほど『早死に』する」

「だが、死んじまったら意味がない。
 『スリル』は生きてる間しか味わえねえからよ。
 アンタとは違うが、
 俺にも『越えちゃあいけないライン』ってのはある」

『危険』に近付く程に興奮が増す。
だからこそ、自ら『デッドライン』に歩み寄ろうとする。
しかし、そのラインを越えてはならない。
『デッドラインギリギリ』のスリル。
それこそが、花菱蓮華の追い求めるものだ。

「『練習』してるのは、そのためでもあるなァ。
 いざ危険に踏み込んだ時に、うっかり死なねえようにな」

         ――――チャッ

己の精神の象徴である『スウィート・ダーウィン』を両手で構える。
そして、再び『ダミー』に照準を合わせた。
『5m』なら外さない自信があるが、
それ以上の距離になると『動かない的』でも不確定になる。

「忠告は有り難く受け取っておくぜ。
 尾月――アンタも、抑えすぎて暴発しねえようにな。
 銃は『メンテナンス』が大事だからよ」

「ま、それこそ『釈迦に説法』かもしれねえなァ」

       ガァァァァァ――――ンッ!

軽く笑い、引き金を引くと同時に銃声が響いた。
転がる空き缶には、先程と同じように穴が開いている。
今度は『ド真ん中』だった。

573リカオン『アタランテ・オーバーチュア』:2020/03/25(水) 21:24:42
>>572

ガァァァァァ――――ンッ!

背後で銃声が鳴る。もう話す必要が無いと理解すれば、自然と軽い別れの
言葉を除いて会話はいらない。
 慣れ親しんだ音を背後に、罅割れた建物から出て道なりに足を前に出す。

「蓮華……か」

随分と奇妙な巡りあわせだ。泥のような中で美しく咲き誇る花の名を持つ男子
李下瓜田といわれるように、疑われるような所業するなかれと言う語句を含む
スモモ(李)の名を冠する自分と彼が出逢い、そして似た力も備えてた事。

「月が……今日の月は、随分と妖しく輝いてるな」

彼の蓮の華は、微温湯のような生を突出する極限の中でしか咲かないのだろうか?
 実は彼の向けてる先を、少しだけ上向きになれば。また違った美しい花が
頭上に咲いていると気付けるのではないのだろうか?

フゥー……。

「なぁ、アタランテ。私は間違ってるのかな」

「……いや、間違いや正しさで区別できるものでは、そもそも無いんだろうな。
彼も、私も……同じ命だ」

574斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/04/13(月) 20:06:57
――鋼の心臓が狼の遠吠えのような唸り声をあげて時速150km以上で疾走する
眼前の光景はまるで黒いピラミッド、すぐ下のタコメーターはついている針をせわしなく降り続ける

 「――ハッ」

バイクの上には漆黒の体躯を持った髑髏が一つ
ハンドルを握り締め、その体からバイクまでもを大量の『鎖』が枷のように締め付けているソレは
その眼窩から『炎』を撒き散らしながら疾走していく

 「ハハハハハ!ハハハハハ!ハッハハハーッ!!」

後に残る轍が炎の線を刻み、次の瞬間儚く消える
まるで悪夢のように、アスファルト上に残されたのは火傷しそうな熱のみだ。

 キキィーッ
               VvOoo…… ガチン

鋼の馬が人気のない夜の側道にて足を止める
髑髏が銀色に輝く歯の隙間から吐息を漏らすと、懐から携帯を取り出して耳に当て、喋り始めた

 「――おい、どうだよオトモダチ、『ゴーストライダー』になった気分は。」
 「ああ?この町をグルグル回るのが必要か?俺達にはとっても必要な事さ、オトモダチ。」

 「又聞きだが……人の出会いは『重力』だとよ、『運命』って呼び変えてもいい」
 「スタンド使いっていうのはその『重力』が他人より大きいんだ、故にお互いが引かれ合う」
 
 「本来なら飛んでいく筈のお月様を、周辺に回して留めて置くみたいにな……自覚した奴ァ、更にそれが大きくなる」
 「良い物も悪い物も全ては『重力』!どちらも相応に引っ張ってくるが、なあに、『たかがその程度のリスク』だ」
 「俺達にはその『重力』が必要だ、当たり引くまで少しでも確率を上げるためなら何でもするべき理由があるッ!」

 「――……で、なんだった? おお、そうそう この町の外周をグルグル『ゴーストライダーごっこ』してる理由だろ?」

 「『回転』だよオトモダチ、すべては『回転』だ」
 「月、地球、太陽、太陽系、銀河……大きな『重力』を持ちながら、全ては『回転』の中にある。」
 
 「俺達はスタンド使いだ、俺達にも重力があるが、人間一人じゃちっぽけなもんさ」
 「だが……この町を、この町に住んでいるスタンド使い全てを『星に見立てて周囲を回ってみたらどうだ?』」
 「本来なら遠くの運命が、俺達の重力に引っかかるかもしれねぇ……そのままここに来るコースに入るかもしれねぇ」

 「丁度、大気圏で燃え尽きずに突入する隕石みてーにな……星をみあげるばかりじゃ掴めない物だってあらぁよ。」
 
 「だ か ら スタンドのパワー全開にして走り回ってんじゃねーか」
 「ついでにチンピラ共がビビッてこの辺り静かになるしなァ!安心安眠!カッハハハーッ!」

鋼の骸骨が笑い声をあげ
漏れ出すそれは本物の炎として、今が実に愉快だと言うかのように燃え上がる。

 「あ?……そっちも解ってるよ『切り裂き魔』だろ? ……そっちはほぼ収穫がねえ、既に倒されたって話も聞いたが……」
 「それじゃ犯人が違う……勘だがな ずっと追い続けて未だに尻尾がつかめない だいぶ用意周到なのか、天性の勘なのか。」

 「――それよりオトモダチ、お前アレだよ、ガッコーの『ウェーブ』はどうすんだ?仕込み終わったんだろ?」
 「『人が争うには理由は要らぬ、ただ線を一本引けばいい』よく言ったもんだぜぇ……?」

 ズッ
            …………
 
 (――ふん?咄嗟にケータイ仕舞っちまったが……気のせいか?誰か近づいてんのか?)

575斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/04/15(水) 23:46:28
>>574

  「――っていう夢を見たんだけど、どう思う『スリープ・トゥギャザー』。」

 ナーオ(何言ってんだこいつ)

 「やはり問題あるだろうか?ちょっとあの理科の講師を後押しして、他者を排斥しながら成長するファシズム体制を作り上げ」
 「学園に不和の種をまいて其処のスタンド使いに試練与えて成長させようという試みなんだけど。」

 マーオ(え、何で出来ると思ってるの?バレるよ?)

 「だってPTAの書類にOBの親だけに通達する様に一部書き換えたり、寮生と通学生というだけでもいじめが起こるし」
 「気弱で授業に集中させる事の出来ない教師が試行錯誤して、勝手にそれに扇動された生徒たちがファシズムを広げる分には…」
 「――誰も僕が起点だなんて、思わないだろ?」

 「スタンド能力なんざなにひとつ使わない、ただ背中を押すだけで、かつて現実に引き起こされた事件を再現できる。」
 「そしていじめや排斥の対象になる子が、『スタンド使い』ならなお良い、ってか、そう誘導するし それが『ウェーブ』なんだ。」

 「『信頼』がいい、『まさかそんな、あの人が』そう言わせながら信頼はヒトの眼を曇らせる。」
 「『信頼』は『犯罪』の隠れ蓑に素晴らしい道具なのさ。」

 「……その誘導の為の証拠品がまさかゴミごと跡形無く消されると思ってなかったけどね、あんな子いたんだなー。」 コワーイ

  ムキムキ  
      モムモム

 「ところで、こたつでみかん食べてると、みかんの白い筋とか気にならない?どう思う?」

 ナーオ(近づけないでね下僕。その匂い嫌いだから。)

576花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/05/05(火) 14:22:54

閉鎖された廃工場に人影があった。
全身を『レザーファッション』で固めた『赤毛』の男だ。
積み上げられたガラクタを椅子代わりにして、男が腰を下ろす。
男の右手には『拳銃』が握られていた。
回転式拳銃――『リボルバー』。

             カラララララララララララァァァァァァァァァァ――――ッ

『シリンダー』が勢い良く回る音が、無人の廃墟に響く。
徐々に回転は弱まっていき、やがてシリンダーが停止した。
それを見届けてから、おもむろに男が右腕を持ち上げる。

  ガァァァァァァァァァァ――――――ンッ!!

           ――――ド サ ッ

引き金が引かれると同時に、銃口から飛び出した『弾丸』が、
男の側頭部に命中した。
大きく傾いた男の体が、スローモーションのように、
ゆっくりと後ろ向きに倒れていく。
そのまま地面に倒れ込んだ男は、ピクリとも動かない。

577花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/05/11(月) 20:14:58
>>576

「――――ハハッ」

「ハハハッ、いつもながらブッ飛んじまうぜ。
 コレだから『コイツ』はやめられねェな」

「最高に『スウィート』だ」

         ム ク ッ

『死の淵』から帰還し、何事もなかったかのように起き上がる。
そして、自らの精神の象徴である『拳銃』を見下ろした。
『スウィート・ダーウィン』――『ロシアンルーレット』のスタンド。
回転するシリンダーに装填されているのは、
『偽りの死』をもたらす五発の『偽死弾』と、
『死』をもたらす一発の『実弾』だ。
ついさっき、自分の頭を打ち抜いたのは、
当然『偽死弾』だった。

「しかし、何だなァ――」

「この頭に『実弾』ブチ込んだら、
 もっとスカッとするのかもしれねェよな?」

時々、そういう誘惑に駆られる事がある。
だが、その度に踏み止まっていた。
何故なら、死んだら二度と『スリル』を味わえなくなるからだ。

           ザッ

「危うく、もうちょいで試しちまう所だった」

「あぶねえあぶねえ」

               ――――ザッ ザッ ザッ

578美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/05/11(月) 22:14:06

         〜〜〜♪
   p i

「はいっ、『お電話』ありがとうございます!
 『Electric Canary Garden』――――
 パーソナリティーの『美作くるみ』ですっ!」

『番組』の収録中、いつものように、
『リスナーから掛かってきた電話』を受け取った。
番組側で『トークテーマ』を用意している場合もあるが、
より気軽に話せる『雑談』的なフリーメッセージも、
随時受け付けている。
さて――今日は、どんな話を聞かせてもらえるのだろうか?

579美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/05/19(火) 19:20:15
>>578

「――――そういうのって、スゴく素敵な事だと思いますねえ。
 部活動に打ち込むっていうのは、
 学生の間しか出来ない訳ですから」

「『シルク』さんの目標を、
 私くるみも全力で応援させて頂きますね!
 今日は、お電話ありがとうございましたっ!」

「次のコーナーに入る前に、ここで一曲。
 本日のナンバーは――――」

580今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/25(月) 01:54:17

アーケード街に来てるんだ。
家具を買いに来たから……じゃなくって。

「……」

           トコッ   トコッ

『カメラ』を、買いに来たんだよね。
写真たてなんか、持ってしまったから。
スマホの写真じゃ、もてあましそうで。

そういう専門道具って、ここにあるって聞いたんだ。だから歩いてる。

581鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/26(火) 00:43:55
>>580

『骨董品屋』の前にて、竹刀袋を肩にかけた学生服姿の少年が佇んでいた。
顎に手を当て、ショーウィンドウを眺めている。
ふと何かを思い立って辺りを見回すと、そこで見知った女性の姿を見つけた。

「おーい」「こんにちは、今泉さん」

声をかけながら、近付いていく。

582今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/26(火) 01:16:15
>>581

「あっ」「鉄センパ〜イ」
  
        トトトッ

先輩だ。
こっちからも、近付いた。
けっこう自然な笑顔で、だと思う。

「学校の外で会うの、珍しいですねっ」
「何かお店見てたんです?」「当てていいですか?」

「うーん」
「剣道道具! って推理はフツーすぎますかね。あはは」

実際剣道道具ってどこで売ってるんだろうね。
この『専門店』街なら、売ってそうかなって思ったんだ。

583鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/26(火) 01:33:47
>>582

>「剣道道具! って推理はフツーすぎますかね。あはは」

「はは、惜しいな」
「確かにこの『専門店』街には武道具屋があって、スポーツ用品店にはない品もあるんだ」

今泉さんの笑顔を見て、いつものように安心し、少し目線を逸らす。
何か少し違和感があったような気もするが、まあ気のせいだろう。

「ただ今日は別の用事でな」
「…いや、用事というほど大したものではないか。そこに並んでいる『刀剣類』を見ていたんだ」

「今泉さんは、そうだな…専門店、化粧品とか、美容の品だろうか?」

女の子の買い物イコール、そういうイメージが勝手にある。
自分の女性の知識などあまりに少ないので、貧困な想像だが。

584今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/26(火) 01:57:53
>>583

いつも通り目線を逸らす先輩に、私は笑う。

「なるほどっ、刀ですか!」
「お侍さんですもんねえ、鉄センパイは」

刀。ここにはそんなのも売ってるんだ。
美術品ってやつなのかな。聞いたことはあるよ。

「でも、そういうのってお高いんでしょっ?」
「前に友達が、調べてびっくりしてました」
「何万円もするんだ〜って」

剣道やってるの、剣が好きだからなのかな。
やっぱりサムライに、憧れたりするのかな。

「コスメ!」「あは、センパイもハズレです!」
「そういうのは私、ドラッグストアで買ってますね〜」
「あとはちょっと高いけど、モールの百貨店とか」

「そんなにお化粧はしない方ですけどねっ」

全くしないわけじゃないけどね。
フツーにしかしないってこと。

「今日はですねえ」「カメラを探してるんですっ」
「ですけど、お店を探すのに迷ってまして〜」

「鉄センパイは、この辺ってよく来るんです?」
「さっきの言い方的に」「どんなお店があるか、詳しいんですかっ?」

585鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/26(火) 02:17:36
>>584

「うむ、その通りである。武士たるもの、やはり己が刀には憧れを抱くものよ」

仰々しい言い方をしつつ、自分の胸を拳で軽く叩く。
まぁ実際、自分がこのスタンド、『シヴァルリー』に目覚める前から刀剣類には興味があったのだ。
そもそも、刀剣に興味がない男などいるだろうか?いや、いない(反語)。

「まぁ、気軽に手が出せる金額じゃあないな…」
「オレの『スタンド』、『シヴァルリー』は周囲に刃物があるほど戦闘力が上がる」
「だから、手元に置いておきたい気持ちもあったが…まぁどちらにせよ、持ち歩いていたら捕まるしな」

そう言って小さく笑う。
まぁ仮に警察に見つかったとしても、能力を使って切れ味を落とし、演劇に使う模造刀ですと言い張る事もできなくもない。
とはいえ、あまり後ろめたいことはしたくはない。

「ふむ、普通はそういう場所で化粧品を買うんだな…」
「しかし、『カメラ』は予想外だったな。最近はスマホで写真を撮る機会も多いから」

勉強になった。いつ活きる機会が来るのかは知らない。

「ああ、大体ならどこにどういうものがあるか分かるぞ」「それなら、ひとまず歩こうか」
「しかし『カメラ』はどういった種類のを探しているんだ?」

歩き出しながら、今泉さんに訊ねる。

586今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/26(火) 02:40:19
>>585

「あはは、やっぱりそういうものなんですねっ!」

その友達は、剣道部じゃないけどね。
侍のキャラクターが好きなんだって。
いや侍のキャラじゃないのかな、刀のキャラ?

「へえ〜っ。スタンドも『侍』なんですねえ」
「それとも騎士?」「かっこよさそうです」

「『シヴァルリー』……」
「『銀』とかそういう感じの意味なんですかね?」

戦闘力、って言った。
鉄先輩は、なんで『戦闘力』が欲しいんだろう。
ユメミンみたいに、『戦う』事があるから?

「……あ」

あ。そういえば。スタンドとユメミンで思い出した。
鉄先輩がスタンド使いだって、教えちゃったことを。
でも、これって……謝った方が、いいのかな。
だってユメミンがスタンド使いなの先輩は知らないよね?
ユメミンなら、教えていいって言いそうだけど。

ちょっと一旦置いとこう。

「あ、えーと!」
「そうですね〜。ドラッグストアで買う子多いですよ」
「私の周りは、ってだけですけどっ」
「100均で揃えてる子とかもいますしね」

もっとオシャレなグループの子達は違うのかもね。

「それでですね」「カメラなんですけど〜」
「写真たてが一つ空いてるので」「それに入れる写真が撮りたいんですよねっ」
「『スマホ』の写真をプリントして入れても、なんだか収まり悪いですし」

「まあ、フツーのインスタントカメラとかでもいいんですけど」
「それでせっかくなら、かわいい感じのカメラがいいかな〜とか」

「たとえば……こういうのとか?」

スマホを出して、ちょっと立ち止まってネットのページを見せる。
ttps://www.expansys.jp/sjcam-funcam-2-lcd-1080p-kids-camera-white-318532/

「『カメラ かわいい』って調べたら出てきたんですけど」

587鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/26(火) 03:05:13
>>586

「見た目は『騎士』に近いかな」
「『シヴァルリー』・・・・・そのまま直訳するなら『騎士道』らしいが、
 『音仙』さんは、他を守り武を担うもの・・・とも言っていた」

そう言って、『シヴァルリー』を発現する。
自分はその名を背負うにはまだあまりに未熟だが、それでも精進するだけだ。
一応他の『スタンド使い』の目も気になるので、すぐに解除しておく。

「なんと、『百均』にも化粧品があるのか…!」
「色々なものが安く揃うのは知っていたが、化粧品すらも取り扱っているとは」
「ふーむ、恐るべしだな」

腕を組んで頷く。
当然自分も『百均』を利用したことはあるが、用のある場所以外はほとんど見ていなかった。
恐らくその分質もそれなりなのだろうが、あまり拘りのない女性には有用なのだろう。
しかし、これでかなり女性の知識に詳しくなった気がする。帰ったら妹に自慢しよう。

「『写真立て』か、なるほどな」

頷きながら、ちょっと距離を置きつつ今泉さんのスマホの画面を見る。
確かにかわいいデザインだ。角張過ぎない、小さくて丸いフォルムが優しい雰囲気を受ける。
彼女らしいセレクトとも言えるだろう。

「やはり一眼レフとかではない、普通のデジカメだな」「承知した」

頷き、とある『家電量販店』を目指す。
あそこの店は、フロアの大部分をカメラが占めている階がある。恐らくそこなら見つかるだろう。

「ところで、どんな写真を入れるかは決めてあるのか?」

588今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/27(水) 00:40:41
>>587

「あっほんとだ、完全に騎士さんですねっ!」
「先生とは全然違う感じ」「当たり前ですけども」

『シヴァルリー』を眺める。
そうだ、『銀』はシルバーだ。関係ない。
シヴァルリー……『騎士道』、かあ。

「『武を担う』」「『他を守る』」
「戦えない人のために戦う、って事かな」
「それって、かっこいいですね!」

鉄先輩の『こころ』が、そうって事なのかな。
だとしたら、それってやっぱり、かっこいいと思う。

「百均、なんでもありますよね〜っ」
「マスキングテープも、色んな種類が置いてますし」
「たまに行ったらつい色々買っちゃいます」
「この前も、小さいお皿とか何枚も」

話しながら、先輩に着いて歩き始める。

「一眼レフ!って言葉だけは聞いたことありますねっ」
「ほんとフツーに写真が撮れたら、それでよくて」
「特別な機能とかは、考えてないんですよね」
「フツーが一番です!」

一枚撮って終わりじゃ、無いとは思うけどね。
難しい機能とかよりは使いやすいのがいいと思う。

「どんな……」「うーん」
「フツーに、友達と一緒に撮った写真がいいかな〜とか」
「なんとなく」「そんな感じで……」

「具体的にこれって決めてるとかは、ないですね〜」

589鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/27(水) 00:56:50
>>588

>「戦えない人のために戦う、って事かな」
「・・・・・」

今泉さんの言葉に、ゆっくりと頷く。

「自ら争いを引き起こした人間が、それで傷付くのは仕方ないと思っている」
「けれど、そんな事を考えたようなこともない人間が。あるいは戦う力を持たない人間が。
 一方的な力の犠牲になって、その夢や命を失ってしまうのは、あまりに理不尽だ」
「だから、オレはそういった人達を守り、戦いたい」

「…人に言うのは初めてだけど、オレは今『警察官』になろうと思っていてね」
「そういった生き方が、自分には合っている気がするんだ」

そう言って、隣の少女に笑いかける。目を合わせられて1、2秒だが。

「確かに、あると便利だな…と思うものをつい買ってしまうな。所詮百円…というのも買う理由になってしまう」
「しかし、『マスキングテープ』…?今泉さんは、『DIY』とかやるのか?」

ふと疑問に思って訊ねてみる。最近流行しているらしいが、今泉さんも工作をするのだろうか。

「ああ、友人と共にとった写真というのもかけがえの無いものだな」
「オレも部活の仲間たちと一緒に撮った写真は、大切なフォルダに入れてある」
「後は、家族と撮った写真も入ってるな。そういうのも良いんじゃあないか?」

などと喋っている間に到着した。
かなり大きな五階建ての『家電量販店』だ。そのまま中に入っていく。

「ここの三階は、半分以上カメラに関連するものが置いてあるんだ」
「恐らく、キミが探しているようなのもあると思う」

590鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/27(水) 00:57:19
>>588

591今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/27(水) 01:50:06
>>589

「………………」

「『夢』があって」「それがみんなのためになるもので」
「フツーに憧れます、そういうの」

「鉄センパイは、すごく立派ですっ」

目を合わせてくれた先輩をまっすぐ見て、そう言った。

私には夢が無い。
『今』を考えるのでせいいっぱいだから。
そうじゃなくても、無いかもしれないけど。

「あ、えーと」「ディーワイアイ?っていうか」
「私『マスキングテープ』を集めるのが好きでして〜」
「かわいくないですか? 『マスキングテープ』」
「お家にたくさん、置いてあります」

買ったのを全部使ってるわけじゃないよね。

「ものをデコったりとか〜」
「まあフツーに、テープ代わりにも使いますしね」
「良いですよ、マスキングテープ!」

スマホの裏面を見せる。
無地のカバーに、テープを貼って飾っている。
マスキングテープが好きなんだ。私は。

そうこうしていると、それっぽいお店に来た。というか電気屋さんだ。
そっか、カメラってフツーに電化製品だった。

「……」「そうですねっ」
「そういう写真も、あれば、いいかもしれませんね」

私は笑う。それがフツーだ。

「いや〜、ご案内ありがとうございますっ鉄センパイ!」
「一人で探してたら、ずっとさまよってるところでした」

                     ペコ

鉄先輩は、凄くいいヒトだ。人にやさしいし、もっと広い、世界にも優しい。

「それで」「あのー」「じつは、私センパイに謝る事がありまして……」

だから切り出す事にした。黙ってるのは、なんだか、不義理だと思うから。
ユメミンにもちゃんと後で謝っとかないと。そうするのが、フツーだと思うから。

592鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/27(水) 21:47:14
>>591

チラリと目を合わせた今泉さんから、真っ直ぐな視線を返されて、思わず口に出る。

「・・・まぁ、こうも大層な事を口にしていても、オレもまだまだ未熟なんだけどな」
「以前、共に戦った仲間の人に言われたよ。オレには『暴力性』があると」
「確かにオレは、やると決めたら冷静さを失って、一線を超えかねない所があるみたいなんだ」
「人を守るという大義名分で、敵を必要以上に傷付けてしまわないよう、気をつけなきゃな・・・」

これは今後の課題だ。
初めて『シヴァルリー』を発現した時は、その能力の危険性に少し恐れを抱いたものだが。
いざ実戦となると、自分は躊躇なく刃を振りかざしたていた。自らの力に溺れないようにしなければ。
そして、今泉さんに差し出されたスマホを見た。

「・・・・・・・・・・ふむ」
「なるほど、これが『オシャレ』か」

『マスキングテープ』をスマホに貼っている彼女を見て頷く。この『カワイイ』という感覚は難しいが、
本来作業などに使うマスキングテープをスマホに貼るのが、こう、なんか、『ギャップ』があっていいのかもしれない。
また一つ、女性の心理に詳しくなってしまった。今日で相当レベル(何のかはよく分からない)が上がってしまったかもしれない。

「いや、この程度などお安い御用だ」

頭を下げる今泉さんに対し、こちらも軽く会釈をする。礼儀正しい子だ。
友人に対してこれくらい、当たり前だと自分は思っている。そしてカメラコーナーへ歩いていく。
が、その後に切り出されたのは予想外の言葉だ。そんな彼女が、自分に謝罪しなければならない事などあるのだろうか?

「ん?一体、何だろうか」

593今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/27(水) 23:15:51
>>592

「『暴力性』……ですかっ?」「へー……」
「先輩にぜんぜんそういうイメージは無いですけど」「うーん」
「普段怒らない人だから怒ると怖い、みたいなことなのかな」

「難しいですねっ。『こころ』の問題って」

鉄先輩はむしろ『優しい』印象だ。
気弱とか、暗いとかじゃないけど、激しい感じはしない。
でも、『戦う』ってなると、そうなっちゃうのかな。
先輩にも難しい話なら、私には深い所は分からない。

「あは、おしゃれですよ〜」
「普通のシールとか貼ってる子もいますけどね」
「元からかわいいデザインのケースも多いですけど」

こういうのが『かわいい』事は分かるけどね。
人によって、違うらしいけど、近い所はあると思うんだ。

・・・やっぱり先輩はやさしくて、良い人だと思う。

「じつは」「私の友達にスタンド使いの子がいてですね」
「…………」「その子に、お話の流れで」
「先輩がスタンド使いなの、勝手に教えちゃいまして」

「ごめんなさいっ、もし教えるなら、先輩に確認してからにすべきでしたよね」

594鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/28(木) 00:11:29
>>593

「ああ、難しいな」「今泉さんには、そういう『こころ』の問題はないのか?」

人当たりが良くて友人も多い今泉さんに、そういうのはあまり無縁かもしれない。
だが、一応訊ねておきたい。
もっとも有ったとしても、悩みに対して解決策をすぱっと言えないかもしれないが。

「…ああ、そういう事か。構わない」
「今泉さんが話していいと思ったのなら、別に隠す必要はないよ」
「ちなみにその子は、なんていう名前なんだ?」

会ったことのない『スタンド使い』か。同い年なのだろうか。今泉さんの友人なら、やはり女性なのか。
…挨拶しておくべきだろうか。少し気が重い。

「お、この『カメラ』じゃあないか?」

彼女にスマホで見せてもらったものと、同じものを手に取って見る。

595今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/28(木) 01:07:19
>>594

「あは」「私は、ごくごく、フツーですよ〜」

私は笑う。

  ┌─────────────────┐
  │   今泉 未来の『笑み』は『ぎこちない』  │ 
  └─────────────────┘

「それで、えーと」「その」
「その子って言うのが、センパイとも知り合いで」
 
             チラ

スマホを見る。

「……明日美ちゃん」
「『夢見ヶ崎 明日美』ちゃん、ってわかります?」

ユメミンは『誰にも言うな』とは言ってない。
鉄先輩とはフツーに仲良いみたいだし、言っていい、とは思う。

「あの子と話してる時に、つい……ほんと、ごめんなさい」
「あ」「ただ、ユメミン……」「明日美ちゃんは私、『話していい相手』だとは思います!」
「言っちゃったのは、間違えてですけど」「言ったらまずい相手だとかは、無いです」

「そこは、ご安心くださいっ」

ただ、あとでちゃんと連絡はしておこう。
鉄先輩が『知ってる』ってことは伝えとかないと。

ユメミンが『話していい』と思える相手だってことも、ちゃんと伝えておく。

「……あっ! ほんとだ」「鉄センパイ、これですこれ」「写真通りっ」

それから、鉄先輩の持ったカメラを覗き込む。『白』は私の『好きな色』だ。

596鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/28(木) 01:24:20
>>595

「─────」

先程も垣間見た、彼女にしては少しぎこちない笑み。思わず今泉さんの瞳をじっと見てしまう。
アレは見間違いや気のせいではなかったのだ。
だが、ここで踏み込むことはできない。自分は今泉さんの友人だと思っているが、
だからと言って何でも話してくれるとは思わない。年上で、異性でもある。

「…すまない。詮索が過ぎた」
「オレは確実にキミの力になれるとは言えない。だが、力になりたいと思っている」
「それだけ、言わせてくれ」

彼女と『食堂』で会った時に、とある質問に、ほんの少し変な反応を見せた。
それに関することなら、あまりに繊細な事案だ。手元のカメラに、改めて視線を戻した。

「知り合い?・・・・・『夢見ヶ崎 明日美』・・・」「ああ、『アリス』か」

脳裏に、あの華やかで元気な少女が思い浮かんだ。

「・・・・・・・・・・いや、何となくそんな気はしていた。彼女なら驚かないな」
「しかし、やはりというか…今となっては都合が良いか…ただ、心配でもあるな…」

うーん、と顎に手を当てて唸る。
彼女はオレの行動に協力してくれている。だから、『スタンド使い』である方が
万が一危険に巻き込まれた時でも安心かもしれない。ただ、力があるからこそ危険に飛び込んでしまう可能性もある。
『生兵法は怪我の元』というヤツだ。

「ああいや、大丈夫だ。オレも彼女のことは信頼…いや、信用している」
「何も問題はない、むしろ遅かれ早かれ互いに気付いていたかもしれない」

カメラを覗き込む今泉さんに、そっとそれを手渡す。
今泉さんの方に視線を向けなければ、この程度は容易いものだ。
それに、何回か会えば少しずつ慣れてくるというもの。

「どうぞ。写真も試し撮りできるみたいだな」

597今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/28(木) 01:55:35
>>596

「なにも」「なにもないですよ、鉄センパイ」
「私は『フツー』、それだけなんですよ」
「信じてください」「本当に、なにもないんです」

私は笑う。
・・・笑う。

┌───────┐
│ 自然な笑いだ。 │
└───────┘

「でも、そうですねっ」
「何かフツーじゃない事が起きたら〜」
「その時は、センパイにも頼らせてくださいっ」

そうすることが私にとって一番いい。
フツーじゃないなんてことは無い。

「そう、『アリス』みたいな恰好の」「あの明日美ちゃん」

都合?心配?そのあたりはよくわからない。
鉄先輩とユメミンの間でも、何かがあるんだろうな。

「ああ、ならよかったです」「良くはないけども」
「でも気を付けますね」
「ヒミツにしてることとか言っちゃわないように」

今回は偶然、ユメミンを鉄先輩が信用してただけ。
あんまり仲良くない組み合わせとかもあってもおかしくない。
フツーにを気を付けよう、と思った。

「試しどり! いいですね」「ちょっと貸してください!」
「ボタン、ここか〜」「レンズ伸びたりするかな?」

先輩から受け取ったカメラを、ひっくり返してみる。
レンズが自分側を向く。カメラってここが伸びるんだよね。

                       スッ
           『パシャッ』

「あっ」
「撮れちゃいました」「あは、ツーショットですよ先輩」

画面を見る。ちょうど先輩も端っこに入っちゃった。
ツーショットとして見るには、ちょっとアンバランスな感じだ。

598鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/28(木) 02:13:10
>>597

「ああ、よろしく頼むよ」「オレにとって、『将来の夢』の練習にもなるからな」

そう言って、この話題を終わらせる。
少なくとも今は、これが互いにとって一番望ましい形だろう。
ここから先は、『アリス』にも少し話を聞いてみたい。それは今度彼女に出会ってからだ。

「まぁ、アリスに対して特に隠すべき事もないが…」
「いや、もし彼女が『スタンド使い』でなかったら、『スタンド』の事は隠したかったな」
「性格的に、そんな面白そうなモノを耳にしたら、興味津々で突っ込んでいきそうじゃないか?」

今泉さんに同意を求めることで、話題を切り替える。
アリスに対して秘密にしていたわけではないが、面白い出来事を探している彼女に
『スタンド』のことを話さなかったのは、色々と危険かもしれないと思ったからだ。
好奇心を抱いたあの子を止める術を、まだ自分は知らない。


>           『パシャッ』

「…む。ツーショットは少し恥ずかしいな」
「いや、まぁ、そもそも家族以外の女性とのツーショット、人生初めてなんだが…」

カメラの方を見ていたため、意図せずカメラ目線になってしまっていた。
まぁ端っことはいえ、女性とツーショットの写真を撮ったのだ。家族と友人に自慢しよう。自分の手元にはないが。

599今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/28(木) 02:43:40
>>598

「あはは、そうですねっ」「鉄センパイの夢、応援します」
「って、もちろん何も起きないのが一番ですけども」

不思議でも危なくないなら、いいんだけどね。
あの『白い町』の件みたいに。

「そうですね〜、ユメミンって何にでもチャレンジしますし」
「危ないこととかにも」「飛び込んで行っちゃいますし」
「ほんと、『アリス』みたいに」
「不思議の世界に入って行っちゃう」

私なら喋る兎を追いかけるかは分からない。
追いかけても、トンネルに入るかは分からない。

「でも、そこが良い所だとも思うんですよね」

私はユメミンが、ちゃんと戻って来れる先になれたらいい。
『フツーじゃないこと』を『フツーにできる』のがユメミンなんだ。
『不思議の国のアリス』は、『フツーに帰る』までが物語。

「あはっ。そうだったんですか!」
「ごめんなさいセンパイ、記念すべき初ツーショットを〜」
「事故ですし……ノーカウントにしてくださっても、良いですよ」

画面を眺めてたけど、それをやめてカメラを下ろす。

「どっちにしても、このカメラを持って帰るわけじゃないですしね〜」
「買ったら、今度はもっとちゃんとしたの撮りますかっ?」「あはは」

そして買うための、見本じゃない商品を手に取る。よし、これを買おう。

600鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/28(木) 03:04:18
>>599

「…そうだな。彼女は色々な物事に目を輝かせて、楽しんでいる。
 その姿を見ていると、こちらも何だか幸せな気持ちになってくる」
「だから、その結末までも楽しいものじゃなくちゃあな。
 『ハートの女王』が現れるなら、オレや今泉さんも協力して、追い返してやろう」

アリスの良いところ、という今泉さんに同意する。
三人寄れば文殊の知恵と言うが、この場合は三人もの『スタンド使い』だ。
仮に彼女がどんなトラブルに巻き込まれようと、無事に日常へと帰ってこれるはずだ。

「いや、折角だし自慢しよう」「妹も、これでオレを見る目が変わってくるかもしれない」

己の女性が苦手である点に関して、妹はしっかりと理解している。
だが、学校での友人とツーショット写真を撮ったとなればいつものように馬鹿にはできまい。
ましてや今日は、『百均』で化粧品が売っているという知見も得た。もはや昨日までの自分ではない。

「ああ、そうだな。どうせならアリスも誘って、三人で撮るのもいいかもしれない」
「そうしたら、後でオレにもデータを送ってくれ」

その頃には、問題なく女性と写真を撮れるくらいには強くなっているはずだ。…根拠はないが。
そして今泉さんがお会計を終わらせるのを見届ける。

601今泉『コール・イット・ラヴ』:2020/05/28(木) 03:32:40
>>600

「はいっ。そうしましょう! その時は私頑張ります」
「何も危ない事がないとは、言えないですしね」

ユメミンは現に危険な目にもあってる。
いつか頼られることがあれば、その時は。
それは友達としてフツーのことだ。

「あは」「良いですね、妹さんを見返してやりましょう」
「私、そっちも協力していいですよ!」

鉄先輩の妹さん。どんな子なんだろう。
実は直接話したことはないんだよね。

「ユメミンと私とスリーショットなら、もっと見返せそうですね」
「ぜひ撮りましょう」「このカメラで!」
「写真立てに飾る写真にも、いいかもしれません」

いつになるかは分からないけど、きっと楽しいと思う。
だから私はカメラをレジに持っていくんだ。

                クルッ

「鉄先輩、ほんと今日は着いて来てくれてありがとうございましたっ」

振り返ってお礼を言って、それからお会計に入った。
明日からいろんな写真を撮ってみよう。きっとそれも、『楽しい』んだと思う。

602鉄 夕立『シヴァルリー』:2020/05/28(木) 03:36:03
>>601

603ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/29(金) 01:14:00

    ザザァァァ……

本格的に海水浴が始まる前の初夏の海。
海岸から少し離れた海面に『何か』が浮いている。
毛むくじゃらの塊のようなものだ。

          プ カ ァ

それは一頭の『ラッコ』だった。
『海獣』――海に適応した『水棲哺乳類』。
そして、霊長類以外の哺乳類の中で、
唯一『道具』を用いる生物としても知られている。

                   ゴソ

脇の『ポケット』から、『石』を取り出す。
ラッコは『お気に入りの石』を持っており、
ずっと同じ石を使い続ける習性がある。
お腹の上に石を乗せたラッコは、
持っていた『貝』を振り上げた。

         ガ ツ ン ッ !

勢いよく貝を石に叩き付けると、
割れた所から器用に『中身』を取り出す。
最近この町で、『野生のラッコ』の『目撃例』が、
チラホラあるらしい。
しかし、そんな事実を『彼』は知らない――。

604氷山『エド・サンズ』:2020/05/29(金) 19:40:37
>>603

  ヒュンッ・・・

    チャプン!  チャプン! チャプン! チャポン・・・・

『ラッコ』・・・が浮かぶ海面の近く
海辺に座りながら、一人の少女が石を投げている
石は何度かの跳躍を行った後に水面に沈む・・・・・『石切り』である

『オイオイ・・・イイ加減ニ元気出ソウゼェ〜〜〜あきはちゃんヨォォ』
「はぁ・・・・そんなに簡単にはいきませんよ、『さんずさん』
結局私は・・・あなたをちゃんと活躍させられなかったんですから
『さんずさん』の力をちゃんと発揮出来ていれば、もっと面白いものが見れたのに・・・」
                ヴィジョン
よく見ると少女の隣には半透明の『 像 』が佇んでいる
―――『スタンド』である

『ハァァァ〜〜〜〜コリャカナリ重症ダナ
・・・・・・・オッ? オイ見テミロヨ アリャア何ダ? 
石ヲ持ッタ変ナ「かわうそ」ガイルゼ?』

「石を持った『かわうそ』?
はは・・・それじゃあまるで『ラッコ』じゃないですか・・・・」


      ジ―――――――・・・

「――――『ラッコ』だ
すごい!あれラッコですよ!」

    ウキウキ
             ウキウキ

突然海面に見えたラッコの姿にうきうきとしながら近づく
はしゃいでいるのだ

605ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/29(金) 20:58:25
>>604

そういえば、最近この辺りで、
『ラッコを見た』という噂があるとかなんとか。
普通『ラッコ』は何処にでもいる生き物ではないが、
目の前にいるのは『ラッコ』にしか見えない。
少なくとも、十人中十人が『ラッコ』と答えるくらいには。

       ムシャッ
              ムシャァッ

『彼』にとって、この辺りが住みやすかったのは意外だった。
食事には困らないし、強力な敵もいない。
波も穏やかだ。

                 …………ピクッ

貝を平らげたラッコは、つぶらな瞳で周りを見渡した。
急に『人の声』が聞こえてきたからだ。
それも『二人分』。

    グルッ
                ――――ザボンッ

『二人』の姿を認めたラッコが、不意に体勢を変えた。
水の中に自ら頭を突っ込み、そのまま『潜水』していく。
瞬く間に、その姿が見えなくなる。

          ザバァッ

数秒後、ラッコが再び姿を現した。
『人間とスタンド』の2mほど近くに。
見かけによらず、意外と肝が据わっているのかもしれない。
それとも、単に警戒心が薄いだけか。
とにかくラッコは、
『あきはちゃん』と『さんずさん』に興味を抱いたようだ。

606氷山『エド・サンズ』:2020/05/29(金) 21:17:38
>>605
>    グルッ
>               ――――ザボンッ

「あっ!潜っていきました! 驚かせちゃったのかも」
『ア〜〜・・・・惜シイナ逃ゲラレタカ?』

>          ザバァッ

「と思ったらこっち来ましたよ!凄い人懐っこい!」

一瞬、波打ち際近くまで来たラッコに驚くが
次の瞬間には喜色をあらわにする 動物は好きだからである

「ラッコといえば近年では絶滅危惧種に指定されるくらい数を減らした希少動物ですよ
ペットとして飼うなんてありえないし、水族館にいた子が逃げ出したなんて話も聞かないし
北の方から流れ着いたんですかね」

『・・・・・・詳シイナ』

もう少し近づいたら触れそうな距離だ
靴と靴下を脱いでちょっとずつ海に入っていく

「冷たっ」

607ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/29(金) 21:48:24
>>606

通常、ラッコは冷たい海で暮らしているにも関わらず、
他の海獣と比べて皮下脂肪が少ない。
その秘密は『体毛の密度』にある。
毛の間に空気を保持する機能が高く、
これによって『保温』と『浮力』を維持しているのだ。
一説によると、『ラッコの毛皮』は、
『ミンク』よりも上質だとされている。
そのせいで『狩猟対象』となった事が、
世界的に数を減らした一因でもあった。

         ジィッ…………

だが、彼にとっては関係ない事だ。
今まで人間と近くで遭遇した事がなかった彼にとって、
『あきはちゃん』は非常に珍しい存在だった。
もちろん『ハッピー・スタッフ』以外のスタンドも見た事はない。

         ミャー
                 ミャー

ラッコが鳴いた。
『声』を掛ける事で、
どういう相手か探ろうとしているのかもしれない。
そして、その鳴き声は『猫』に似ていた。
姿を見ていなければ、猫だと思ったかもしれない。
しかし、紛れもなく『ラッコ』だ。

             ミャー

徐々に近付いてくる『あきはちゃん』を見上げる。
逃げ出そうとする気配はない。
手を伸ばしたら触れそうだ。

608氷山『エド・サンズ』:2020/05/29(金) 21:59:45
>>607
「・・・・・ゴクリ」

手を伸ばせば届くところまで来てしまった
上質なラッコの毛皮はかつては高級品としてもてはやされた程だ
その触り心地・・・・如何程のものか

「で、でも、ラッコの毛皮は体温保持・浮力維持の点でも重要な存在で
かつて石油タンカー事故の際には毛が油で汚染されて凍死した子が何匹もいるとか!
そんな大切なものに面白半分で手を出すわけには!
人間社会と野生動物がうかつに関わると双方にとっても悪影響が出るとか言いますし!」

  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・

「あははは〜〜〜ラッコちゃんだ〜〜〜〜!」

数分の葛藤の後!
そこには理性とか野生動物への配慮とかそういうのをすべて頭からフッ飛ばした氷山の姿が!
ふわふわの毛皮に手を伸ばす!

609ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/29(金) 22:26:59
>>608

『あきはちゃん』の心には、真摯な葛藤があった。
種族の垣根を越えて、お互いを尊重しようとする精神は、
とても尊いものだ。
そんな考えを理解しているとは思えない表情で、
『あきはちゃん』を見上げるラッコ。

    ソッ…………

伸ばされた手が毛皮に触れた。
その瞬間、『高級絨毯』を撫でているような感覚が、
指先を通して伝わる。
『ミンク以上』と称された手触りは――――
まさしく『至高』のものだった。

           ミャー

ラッコにとって、毛皮を清潔に保つ事は『死活問題』。
ゆえに、入念な『グルーミング』は欠かせない。
とはいえ、それは自分の手で行う事であって、
こんな風に他人の手に触れられる機会は少なかった。
まだ『幼獣』だった頃は、
『母親』に『毛繕い』して貰っていたものだ。
昔の事を思い出して、
何となく『懐かしい』ような気持ちになってきた。

                  チラッ

そうこうしていると、ラッコの視線が、おもむろに動く。
その先には『さんずさん』がいた。
もしや、『見えている』のだろうか?

610氷山『エド・サンズ』:2020/05/29(金) 22:40:33
>>609

   ふわっ さぁ・・・

「あぁ!」

ラッコの毛皮には1平方cmあたり10万本以上の毛が含まれている
哺乳類の中でも破格の密度を誇るこの体毛は至高のふわっふわっ感を持つとともに
中心部では空気を蓄え、断熱効果を生む


  じわっ・・・・


ゆっくりと手を沈ませると、中心部から細かい空気の泡が滲み出る
それらはラッコの体温で程よく温められ、撫でる氷山の手から多幸感を伝わらせた!


>                  チラッ

『ン? ナア、あきは、サッキカラコイツ俺の事ヲ見テルミタイダガ・・・
「見えて」ルンジャネエカァ?コイツ』
「ん〜〜〜〜〜〜〜・・・? 何かいいましたぁ〜〜〜〜・・・?」

最高の毛皮の質感に目を細める氷山を横目に
さっ さっ と『エド・サンズ』はちらちらと左右に反復横跳びをする
ラッコの視線の方向が気になるのだ

611ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/29(金) 23:04:44
>>610

ラッコは『地球上で最も毛むくじゃらな生物』とされている。
その全身を覆うのは、二種類の体毛だ。
硬い『ガードヘアー』と柔らかい『アンダーファー』。
前者は身を守るために役立ち、
後者は体温維持や浮力維持において重要な役割を果たす。
そして――今は『あきはちゃん』に極上の手触りを与えている。

          チラッ チラッ

横跳びする『さんずさん』を目で追うラッコ。
『人型スタンド』だ。
それも『意思』を持っている。
『ハッピー・スタッフ』と同じように。
内心そのように思いながら、ラッコは触られ続けている。

            ゴソ

ふと、ラッコが再び『石』を取り出した。
ラッコの脇には『ポケット』があり、とても便利なのだ。
もう片方の手には、
一緒に『ポケット』に入れてあった『貝殻』が握られていた。

612氷山『エド・サンズ』:2020/05/29(金) 23:17:17
>>611
『ヤッパリダゼ・・・・サッキカラ俺の事ガ見エテルミテェダゼ
ソウイエバ、コノ前ノ「喧嘩場」ノ時モ動物のスタンド使いガイタ・・・
マサカ・・・・・コイツモ・・・・「スタンド使い」ナノカ!?』

「へぁ〜〜〜〜何か言いましたぁ〜〜〜?」

>            ゴソ

『!?』
『オイ!何ヲ取リ出ソウトシテヤガルンダァ―――ッ!?』

動物のスタンド使いと勘づいて警戒心を露わにする『エド・サンズ』
それと対照的に氷山はラッコの毛皮の手触り感に骨抜きにされている!

石を取り出そうとするラッコに思わず声をあげる『エド・サンズ』だったが――――

「もう!この子の前で大きな声を出さないでくださいよ!
ラッコの脇にはぷるぷるにたるんだ皮膚があって、間に物が入れられるんですよ!
それに『石』だってどうでもいいわけじゃないのに・・・・驚いて落としちゃったらどうするんですか!?」

『・・・・・スマン』

613ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/29(金) 23:39:33
>>612

ラッコにとって、『石』は『最重要アイテム』だ。
うっかり『お気に入りの石』をなくしたラッコは、
とても落ち込んで物凄く悲しい気分になってしまう。
そうならなかったのは幸運だった。

「――――?」

『あきはちゃん』と『さんずさん』を交互に見つめるラッコ。
少し驚いたようだが、
どちらかというと不思議そうな顔をしていた。
やがて、その手に持った『石』と『貝殻』を、
『拍子木』のように打ち合わせる。

       カツンッ 
               カツンッ

軽い『音』が響き、一瞬の静寂があった。
続いて、ラッコの後方に『大きな何か』が出現する。
ラッコの体と比べると、その全容は『かなり巨大』だ。

    ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…………

現れたのは一隻の『ミニボート』だった。
海であれば特に違和感もない代物。
しかし、それは普通のボートではなかった。
船内には『人型スタンド』が乗っている。
『ボートのスタンド』だ。

614氷山『エド・サンズ』:2020/05/29(金) 23:53:16
>>613
「はぁ〜〜〜 私、野生のラッコの食事風景初めて見ましたよ〜〜」
『ソ、ソウカ・・・ヨカッタジャネエカ・・・』

ラッコが手に持った石で貝を叩くあまりにも有名な1シーン
本物の食事風景を見て、氷山は幸福そうに目を細める

>    ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…………

『ナ・・・・コレハ・・・・・オイ、コイツ・・・・・「スタンド」ヲ出シヤガッタ!
オイ、お前! マサカあきはヲ攻撃スルタメニワザト近ヅケタンジャ・・・・!?
「何者」ダ、お前―――――――ッ!』

突然、出現したスタンドに再び警戒心を掻き立てられる『エド・サンズ』!
一方、氷山の方はラッコの食事風景を眺めるのに忙しく、『ボートのスタンド』は一瞥するだけだ!

   ブゥゥン・・・

いつの間にか『エド・サンズ』の手には
時代劇で見るような(もっともラッコは時代劇など見ないだろうが)『捕獲縄』が握られていた
何かを縛るわけではないが、両手に握ったまま『ボートのスタンド』を睨みつけている!

615ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/30(土) 00:12:45
>>614

『さんずさん』の対応は至極当然だろう。
『見知らぬラッコ』が『見知らぬスタンド』を出したのだ。
警戒するには十分すぎる光景と言っていい。

               ブォォォォォォォォォォ…………

          ブォォォォォォォォォォ…………

    ブォォォォォォォォォォ…………

しかし、『攻撃の兆し』は一向に見えてこない。
出現した『ボート』は、
本体であるラッコと近くにいる『あきはちゃん』の周りを、
ただグルグルと旋回し続けている。
乗っている『人型スタンド』は、
『さんずさん』の方には全く注意を払っておらず、
ラッコと『あきはちゃん』の触れ合いを見守っている。
その様子は、まるで『水族館の飼育係』か何かのようだ。
この瞬間――海辺は『ふれあい水族館』と化していた。

           ミャー

向こうが出していたから、『こちらも出してみた』。
ラッコとしては、それだけの考えに過ぎなかったらしい。
本体とは異なる自我を持つ『さんずさん』に、
『自分のスタンド』と似たものを感じたというのもある。

616氷山『エド・サンズ』:2020/05/30(土) 17:24:17
>>615
『オ、オウ!?来ルノカ!? 仕掛ケテクルカ、ココデ!』

息を巻いて『ボートのスタンド』を威嚇する『エド・サンズ』
怪しすぎるやつだ!

               ブォォォォォォォォォォ…………

          ブォォォォォォォォォォ…………

    ブォォォォォォォォォォ…………

しかし、予想とは異なり一向に近づいてくる様子がない
中心部では氷山とラッコのふれあいが続いている・・・・

『ドウイウ事ダ、テメェ!
黙ッテナイデ何トカ言ッタラドウナンダ!?』

相手が攻撃してこない以上、こちらも敵対するわけにはいかない
しかし、とてつもなく怪しい!
ひとまず誰何してみる事とした もっとも、普通はスタンドに話しかけたところで意味はないのだが・・・

617ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/30(土) 18:27:48
>>616

《『サンズサン』――――》

《モウスコシ オシズカニ オネガイシマス》

《ビックリ シテシマイマスカラ》

《――――『ラッコサン』ガ》

            ブォォォォォォォォォォ…………

『さんずさん』の怒鳴り声に対して、
『人型スタンド』が不意に反応を見せた。
一方、本体は『捕獲縄』に注目していた。
ラッコは『時代劇』を見た事はなかった。
そもそも『テレビ』を見た事がない。
さらに言うと、テレビという言葉が、
『何を意味するか』も知らなかった。

         ブォォォォォォォォォォ…………

《ミンナデ 『ラッコサン』ヲ ミマモリマショウ》

《モット チカクデ ゴランニナッテハ イカガデスカ?》

《『ラッコサン』ハ コワクナイデスヨ》

    ブォォォォォォォォォォ…………

『飼育員』さながらの丁寧な口調で、
『人型スタンド』が語り掛けてくる。
その話しぶりからは、『攻撃の意思』は感じられない。
ただ、片手に『銛』を携えていたが。

618氷山『エド・サンズ』:2020/05/30(土) 21:00:38
>>617
『何・・・ダ・・・・コイツ・・・・・喋ッタゼ・・・!?

 ・・・・
「俺ト同ジ」・・・・「意思を持ったスタンド」カ!?

オイ、あきは!コイツ、不気味ダゼ・・・・・!』

>《ミンナデ 『ラッコサン』ヲ ミマモリマショウ》
「そうです みんなで『ラッコさん』を見守りましょう」

>《モット チカクデ ゴランニナッテハ イカガデスカ?》
「『ラッコさん』の動きが愛くるしくて、近くで見るともっとかわいいですよ?」

>《『ラッコサン』ハ コワクナイデスヨ》
「『ラッコ』さんは 怖くないですよぉ・・」
「うふふふ・・・・あはははははは・・・・・」



       ゾ・・ゾォォ〜〜〜〜〜〜ッ!

『あきは・・・お前、ヤバイゼ!
マサカこの「ボートのスタンド」に頭ヲヤラレタンジャネェダロウナ・・・・』

『ハッピー・スタッフ』とともにラッコの愛くるしさにやられ頭がトリップする氷山
・・・・・それを見て、顔色を青くする『エド・サンズ』(もっともスタンドに顔色などないが)
この状況においてはそれも無理もないことか


不意に『銛』を携えた『ハッピー・スタッフ』を見る

『オ、オイ、お前! その「銛」ヲドウスル気ダゼ!?』

619ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/30(土) 22:12:16
>>618

『意思』を持つスタンド――決して多くはないタイプだ。
『ボート』に乗った『人型』は、
間違いなく『さんずさん』と同じく『自我』を備えている。
他者の精神に影響を及ぼすような能力を、
このスタンドが持っているかは定かではないが。

《――――『コレ』デスカ?》

《『モリ』ノ ツカイカタハ 『ヒトツ』シカ アリマセン》

         カツンッ
                カツンッ

その時、ラッコが『石』と『貝』を打ち合わせた。
響く『音』が合図であるかのように、
『スタンド』――『ハッピー・スタッフ』が腕を持ち上げる。
腕の先には、鈍く光る『銛』が握られている。

               ――――――ドスゥッ!

素早く精密な動きで、
『ハッピー・スタッフ』が水面に『銛』を突き立てる。
やがて引き上げられた先端部には、
『何か』が突き刺さっていた。
どうやら、小さな『イカ』らしい。

    ポォォォ――――ンッ

             ザバァッ
                   ――――パシッ

『ハッピー・スタッフ』が銛を振り、イカをラッコめがけて放る。
大きく伸びをしたラッコが、
投じられたイカを器用に両手でキャッチした。
当然のように、そのまま食べ始める。

《――――コレガ 『モリ』ノ 『ツカイカタ』デス》

銛を下ろした『ハッピー・スタッフ』は、そのように締めくくった。
ラッコは美味しそうにイカを食べている。
『あきはちゃん』と戯れながら。

620氷山『エド・サンズ』:2020/05/30(土) 22:27:22
>>619
『ソノ「銛」ダゼ! ギラリと尖ッタ穂先・・・俺達ヲ攻撃スルツモリジャ・・・・
何ィィィイイイ――――――――ッ!』

おもむろに『銛』を突き立てる『ハッピー・スタッフ』
その先端に突き刺さった『イカ』を注視する

『餌ヤリ・・・・・ノヨーニ見エルナ・・・・』

余りにも平穏な『銛』の使い方に拍子抜けする
こいつ・・・・・本当に攻撃する気はないのか? 警戒心が少しずつ薄れていく

「妙ですね・・・・・
ラッコは1日に体重の30%も食事を取る動物であり、貝類以外にもイカや海藻なんかも食べるかわいい動物です
でもこんな浅瀬であれほど新鮮なイカが取れるなんて・・・・・まさか!」


   ゴゴゴゴゴ・・・・



「でもかわいいからいっか〜〜っ!」


もはや人間と野生動物の境界とか、遠慮とかそういうのがどうでもよくなった
ラッコを抱きかかえて もっふ と両手でホールド

621ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/30(土) 22:49:53
>>620

ここは海だ。
しかし、こんな海岸近くで『イカ』は採れない。
そう、『普通』なら。

    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………

あらゆる『水面』から、『水棲生物の死骸』を得る。
それが『ハッピー・スタッフ』の能力だった。
本体であるラッコは、
『食事に便利な力』程度にしか認識していないが。

          モ フ ッ

ラッコは、いとも簡単に抱き締められた。
『極上の毛皮』の感覚が、『あきはちゃん』に伝わる。
ラッコを抱っこした経験のある人間は、きっと少ないだろう。
ラッコにとっても、人間に抱きかかえられるのは、
初めての体験だった。
でも、まぁ悪くはないかな。しょっちゅうは困るけど――
そんな風に、ラッコは思った。

《ソウ 『エサヤリ』デス》

《コレハ『ヤリ』デハナク 『モリ』デスガ》

一人と一頭を見守りつつ、『ハッピー・スタッフ』が喋る。
『ジョーク』のつもりらしい。
…………今日も、海は至って『平和』だ。

622氷山『エド・サンズ』:2020/05/30(土) 23:05:27
>>621
>《ソウ 『エサヤリ』デス》
>《コレハ『ヤリ』デハナク 『モリ』デスガ》
『アァ・・・・ソウネ・・・・ウン、ナカナカ面白カッタ、カナリ大爆笑』

『平和』でふわふわした時間が流れる中、
唯一張りつめていた『エド・サンズ』の精神もゆるふわに堕ちていく

「あははははははは!」
『ハハハハハハハハ!』

そうして、一人と一体のスタンド使いは
日が暮れるまでラッコと遊んで心が癒されたとさ


めでたし   めでたし




氷山あきは『エド・サンズ』⇒落ち込む事もあったけどラッコと遊んで元気が出た
              『再起可能』!

623ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/05/30(土) 23:14:08
>>622

624白町 千律『ハード・タイムス』:2020/06/05(金) 02:52:49

アーケード街に、その少女がいた。
短く、流れるように跳ね気味でいて、
頭頂でアンテナのように一層跳ねる黒髪と、
見開いたような印象を受ける、大きな目。

「……………」

       スタッスタッ

清月の『風紀委員』としての活動は、無い。
まず服装自体、制服ではない。私服だ。
今日は休日だからだ…‥では、何を?

歩く彼女の目的地は、どこなのだろう?
どこかメルヘン調の服装は、何を意味するのだろう?

625白町 千律『ハード・タイムス』:2020/06/07(日) 16:57:32
>>624

          ガチャ

やがて『ドール専門店』の戸を開き、その中に消えた・・・

626美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/06/07(日) 21:15:55

    ザザァァァ……

           ザザァァァァァ……

初夏の海。
砂浜に立てられたパラソルの下に、
水着姿の女が仰向けに寝そべっている。
スポーティーな雰囲気が漂うセパレートタイプの水着だ。
その上から、前を開いたパーカーを羽織っていた。
しばらくして被っているキャップを持ち上げ、辺りを軽く見渡す。

「……まだあんまり人、いない感じね」

人の姿は『まばら』だった。
休日ではあるが、本格的なシーズン到来には少し早いようだ。
軽く溜息をつきながら、体勢をうつ伏せに変えて海を眺める。

「せっかく新しい水着用意してきたのになぁ」

「――うーん、『残念』」

627稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2020/06/07(日) 21:45:33
>>626

「【水無月】であるわけだが、我は【水場】にいる。
 【泳人】の姿はあまり見受けられない」

   リョコウ
「【悠久への旅路】は我々【働き蟻】に与えられた愉悦ではあるが、

【葉月】や【弥生】は【種】(コドモ)を連れた【防人】(オヤ)が多過ぎる。
やはり、【ウツツを抜かす】には、【時期】を外した【閑散期】の【水無月】が良い」


美作の横に白衣を着た黒髪の女が立っていた。



「【汝】も、そう思って【星見】に来た【外界】からの【来訪者】か?」

628美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/06/07(日) 22:20:47
>>627

不意に頭上から降ってきた『声』に反応し、そちらに顔を向ける。
『白』というのは熱を吸収しにくい色だ。
それだけなら、夏の海辺に合っているかもしれない。
だが、『白衣』を着てビーチに来る人間は普通いない。
少なくとも、『目の前の相手』を除いては。

「あー…………そうね」

「うん、まぁ――『そんな感じ』よ」

まるで『暗号』のような言い回しには、流石に意表を突かれた。
『理解不能』とまでは言わないが、相当『理解困難』な部類だろう。
だが、すぐに気を取り直して話を合わせた。
職業柄、『そういう人間』の相手をするのは慣れている。
『宇宙人』とコミュニケーションを取るよりは楽だ――多分。

「えっと……もし良かったら、ここ入らない?」

「そこ、暑いでしょ?」

パラソルの下にはレジャーシートが敷かれている。
少し横にズレて、スペースを空けた。
そうしながら、頭の中で『ある記憶』が浮上していた。
いつだったか、『難解な言葉を使うリスナー』と話した事がある。
その相手は、確か『こんな喋り方』だったような……。

629稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2020/06/07(日) 22:45:58
>>628

奇怪な喋り方をする『白衣の女』、
首元には『ストラップ』がかかっておりその先に繋がったIDカードを裏返しにし胸ポケットに突っ込んでる。


「【把握】はしてくれたと言う事を【理解】した。
 【我】の【呪詛】(シャベリカタ)について【汝】が気に病む必要は無い。
 【見えざる闇】に【呪詛】を強いられているわけではない。
 【世界】ではなく【我】自身の選択なのだから。クククッ」


敷かれたレジャーシートの上の砂を軽く払い、
横に座ると美作に向き直る。


「【水無月】とは言え、【陽の力】(ヒザシ)はだいぶ強まってきた。
 【密室】の【者】(インドア派)にはだいぶ毒だ。
 【汝】の【翼】(ココロヅカイ)非常に有難い

 --ひょっとして【汝】、【伝播者:美作】か?」

630美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/06/07(日) 23:28:17
>>629

「あはは――それはどうも」

「どうぞどうぞ、ご遠慮なく」

彼女の話し方は『奇怪』そのものだ。
でも、中身は案外まともなのかもしれない。
そんな事を思いながら隣に座る。

「…………よくお分かりになりましたね」

「ええ、そうですよ。『美作くるみ』です」

『やはり』というべきか、想像した通りだったようだ。
世の中には『そっくりな人間が三人いる』と聞いた事がある。
しかし、彼女と『同じような人間』が、
『同じ町』に何人もいるとは最初から考えていなかった。

「『稲崎さん』――――ですよね?」

「こうして『実際に』お会いしたのは始めてですけど……」

確か、彼女は『医療関係者』だった。
前に『電話』で話をした時、そんな事を聞いた覚えがある。
今の格好を見ると確かに納得できたが、
『それで海に来る』理由は、よく分かっていなかった。

631稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2020/06/07(日) 23:56:54
>>630


「キャア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!
 やはり【我】の【確信】は【偽りの翼】ではなかったぁ〜〜ッ!
 【網で身を縛らずに崖から闇へ身を投じ】(オモイキッテ)、【声明】を発し【僥倖】ォォ〜〜!」


『美作』が自らの名前を告げた瞬間、黄色い悲鳴を上げる『白衣』の女。
その表情には『驚き』と『喜び』が混じっている。


「【我】が以前【綱で身を縛らず闇へ身を投じ】、
 【伝播者:美作】の【盲目劇】(ラジオ)で【対話】したのを、【脳】に刻んでるのかッ!?
 クッハッハッ!【歓喜の雨】が我が街に降り注いでいるぞッ!(ウレシイ)」

「【我】は【伝播者:美作】が古の時代、
 【偶像】の【戯天使】(アイドル)として【謳歌】していた頃から、【汝】の【狂信者】(ファン)だッた!
 もちろん、【汝】の『盲目劇】も毎回【黒雷】(拝聴)している!ハーハッハ!!

 【伝播者:美作】ッ!我との【儀式】を!」


纏っている白衣の袖で手を拭い、そのまま差し出す。
要するに『ファンなので握手おねがいします』という事らしい…,

632美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/06/08(月) 00:23:55
>>631

「………………」

考えもしなかったリアクションを目の当たりにして、
思わず一瞬呆気に取られてしまった。
自分の職業には本来あるまじき事だが、
今日は『オフ』という事もあって、
気が緩んでいたのかもしれない。
だが、『パーソナリティ』であり『元アイドル』である経歴が、
瞬時に意識を現実に引き戻す。

「そう――――なんですね」

「『嬉しい』です。そんな風に思ってもらえるなんて」

    ニコッ

「『稲崎さん』――どうも、ありがとうございます」

          スッ

差し出された手を笑顔で握り、『儀式』もとい『握手』を行う。
『パーソナリティ』としての人気は、それなりにある。
その関係で、たまに握手を求められる事はあった。

「これからも精一杯頑張っていきますので、
 応援よろしくお願いしますね」

ただ、『昔の姿』を知る者は少ない。
世間からは既に忘れられて久しいからだ。
だから、余計に嬉しかったのだと思う。

633稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2020/06/08(月) 00:51:08
>>632

「か」

    「き」

「ぎ」


「【僥倖】ゥゥ〜〜〜〜ッ!

 クッ、クッ、まさか【伝播者:美作】と【契約】を交わせるとはな。
 【我】が【忙殺】の日々に姿を現した一匹の【虹色の龍】(ハッピー)!
 契約に応じた結果、我は【髑髏を垂れる】(アリガトウ)
 ……我の【仮面】(カオ)…【血の朱色】が混じっておらんか?(テレテル)」


握り返された手を両手でギュッと握り、照れで顔が赤らんでないか尋ねる。
そして、名残惜しそうにゆっくりゆっくり握った手を放し、立ち上がったを


「非常に、名残惜しいが【我】はまだ【蟻の身】(キンムチュウ)。
 【時】を使い果たした【補給】の【翼】(キュウケイ)もそろそろ【朽ちる】(オワリ)。
 【戦場】(カイシャ)へ【帰還】せねばならぬ。

 【伝播者:美作】よ。今日の【邂逅の翼】を【神】に感謝する。
 【水無月】の【無影】(ヒトノスクナイ)の【七割】(ウミ)で戯れていればいい。ククク」

634美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/06/08(月) 01:12:37
>>633

「ええ、大丈夫です」

「とっても『素敵』なお顔をされていますよ」

笑顔で言って、ゆっくりと手を離した。
それから一緒に立ち上がる。
『オフ』とはいえ、座ったまま『ファン』を見送るというのは失礼だ。

「あ、そうなんですね。この近くにお勤めなんですか?」
 
「――お仕事ご苦労様です」

労いの意を込めて、お辞儀をする。
言葉を交わす内に、独特の言い回しにも少しずつ慣れてきた。
『翻訳』を仕事にしている人達も、こんな気分なのかもしれない。

「良かったら、また『電話』してきて下さいね」

「お時間のある時に、お休みの時にでも」

           ニコッ

「――『電気カナリア』も楽しみにしてますから」

635稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2020/06/08(月) 01:28:56
>>634

「クッ、クッ、クッ!!
 【伝播者:美作】いや、改め【電気愛玩鳥】(カナリア)の激励を受けるとは、非常【愉悦】ッ!
 残り【数刻】の【混沌幻魔時間】(キンムジカン)を戦い抜く活力となるッ!!」


「うむ、【汝】の【盲目劇】は【我】の【楽園の神々】(タノシミノヒトツ)だ。
 いずれ【汝】の【戦場】に、【雷獣】の【咆哮】(デンワ)を響かせよう。
 ではーーー【暗黒の風と共に】(サヨウナラ)」


同じく立ち上がり、美作へと頭を下げ砂浜を後にした。

636美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2020/06/08(月) 02:07:25
>>635

「アハハ、そう言って貰えると私も嬉しいですよ」

「ええ、では『また』」

最後にそう言って、遠ざかっていく後姿を見送る。
『嵐』のように現れ、また『嵐』のように過ぎ去っていく。
『稲崎』に対して、心の中でそんな印象を抱いた。
ただ、決して悪い人じゃない。
言い回しは分かりにくいけど、きっと根は良い人なんだろう。

     ザザァァァ…………

                ザザァァァァァ…………

「――――ふぅ」

再びシートに寝そべり、一人で海を眺める。
生憎、『水着を見てくれる相手』は見つからなかった。
その代わり、『応援してくれる人』と顔を合わせる事が出来た。

「なぁんだ――『上々』じゃない」

「それに、こうして静かに海と向き合うのも悪くないしね」

目を閉じると、波の音が聞こえてくる。
穏やかで優しい音色。
ただ、ほんの少し『物足りない』。

「でも、まぁ折角だし――――」

              バッ

「この水着は『海』に見て貰いましょうか」

パーカーを脱ぎ去り、パラソルから出て波打ち際に歩いていく。
この『魅力』で、『海を虜に出来るか』試してみるのも一興。
ただ、やり過ぎて『荒れてしまっては困る』けど。

637日下部『アット・セブンティーン』:2020/06/12(金) 02:11:02

ここはどこだっただろうか。
待ち合わせ場所を指定したのは、>>638だった。


      「お待たせぇ〜」


>>638と日下部虹子は『知り合い』だ。
そして、>>638の『用』にこの少女を呼んだ形になる。
 
             ・・・何の用、だったか。

638<削除>:<削除>
<削除>

639日下部『アット・セブンティーン』:2020/06/12(金) 19:27:54

>>638は人違いだった……>>640が『知り合い』だ。

640日下部『アット・セブンティーン』:2020/06/13(土) 02:39:07
>>639
その後、待ち人と合流して1日中遊んだのだった。

641小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/14(日) 20:49:43

    ザァッ……

雨が降っていた。
急に振り出した通り雨。
傘の持ち合わせはなく、軒先で雨が過ぎるのを待っている――。

              ザァァァ……

642小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/17(水) 20:07:24
>>641

やがて雨が止み、その姿は街の中に消えていった――。

643関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/21(日) 02:26:59

エプロンを付け、黒髪をお団子にした少女。
温和そうな顔立ちで、水面を眺めていた。

        ザザーー ・・・

『夕暮の海』で何をしているのか、と言えば……『釣り』だ。
趣味でもあったが、実益も兼ねる。『コスパが良かった』。
こちらの方に来る用があったのも、ますます無駄がない。
すでにしばらく経っており、クーラーボックスには釣果がある。

「ふう〜……」

                  スッ…
 
次を座って待ちながら、『スマホ』で『ポイントアプリ』を起動する。
水の揺らぎを楽しんでもいいのだろうが……『小遣い稼ぎ』も、大事だ。

644三刀屋 路行『一般人』:2020/06/21(日) 18:24:50
>>643
「あー・・・お節介を焼くようで悪いんだけどさ」

関が『ポイントアプリ』に夢中になっていると、横から男の声が聞こえた
釣りをする関の隣にいつの間にか壮年の男が座っていた
シャツとジャケットをカジュアルに崩し、手にはB4サイズ程度の封筒を抱えている

   ギギギィ・・・・


「君・・・引いてるよ? 魚の影を見るに結構な大物かもね」

手元を見れば気が付くだろう
釣り糸がゆっくりと水面に引かれ、釣り竿がずり落ちそうになっていることに

645関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/21(日) 19:27:41
>>644

「あらっ、ご親切にありがとうございます!」

スマホを座った横に置き、
延べ竿を竿受けから手に取った。

            グググ…

「ほんとっ大きい! それに重たいですねえ〜っ」

そして、釣り上げにかかる……
特別『上手い』という風ではないようだが、
釣果が示す通り、それなりに慣れてはいるようだ。

        グイーッ
              バシャバシャ

「これは、期待出来ますようっ……!!」

喜色を見せつつ、暴れる魚と戦う。そろそろ上がりそうだ。

646三刀屋 路行『一般人』:2020/06/21(日) 19:57:18
>>645
「おっ、と いいねぇ、この感じ
僕も昔、ちょぉ〜〜〜っとだけ釣りをやってた時期があるんだけどさぁ
この引き方は『大物』・・・なんじゃないかな? たぶん」

手に持った封筒を地面に置き、近くにあった手網を取る
岸に近づく魚影はそれなりの大きさだ

「よっ と」

  バシャバシャバシャ!

網を使って魚を掬ってみよう
さて・・・・・『釣果』は・・・・・ッ!?

647関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/21(日) 20:34:36
>>646

そうして網で上がった魚は――――

「あら〜っ、また、ご親切に。
 これは…………『スズキ』ですかねえ!
 『ムニエル』なんかにすると美味しいんですよう」

恐らくその通り、『スズキ』だろう。
開けたクーラーボックスに横たわる『アジ』より、
一回りか、二回りほど大きい魚だった。

「いやあ、大きいですねえ〜」

「あなたが網をしてくれなかったら、
 このサイズ……逃してたかもしれませんね。
 本当にありがとうございます〜。ええと……」

網の中の魚を取ろうとしつつ、笑みを向ける。
言い淀んだのは、恐らく『呼び名』に困ったのだろう。

648三刀屋 路行『一般人』:2020/06/21(日) 20:48:03
>>647
「へぇ〜この魚は『スズキ』って言うんだねぇ
 昔、同僚に付き合わされた時に何度か釣れたやつだよ
いいねぇ、映(バ)えるねぇ〜この魚」

 カシャリッ

手に取ったスマホで自撮りをする
自分の顔と釣れた『スズキ』が映るように
プライバシーを考慮して関の顔は写さないようにする

「この写真、SNSにあげちゃっていいかな?」

「あぁ、僕の名前は三刀屋 路行(みとや みちゆき)って言うんだよ
 出版社でサラリーマンをやっていてね
 ここへは・・・・まっ、仕事をサボりに来たって感じかな」

にやりとした表情を浮かべて口元に人差し指を立てる

「内緒だよ?」

「それにしても君みたいな若い女の子がこんなところで釣りって珍しいね」

釣り人というよりも、もっと家庭的なエプロン姿を見ながら言う

「流行ってるの?」

649関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/22(月) 00:57:03
>>648

「『スポーツフィッシング』でも、
 人気があるお魚だそうですよ。
 大きくて、『釣った感』がありますもんねえ」

                スッ

写真を撮り終えたのを見計らい、
口から針を外したそれをクーラーボックスへ。

「ふふふ、どうぞどうぞ〜。SNSでも、ラインでも。
 『三刀屋さん』が獲った事にしちゃってくださいよう」

          ニコ

「自己紹介、ご丁寧にありがとうございます。
 私は『関 寿々芽(せき すずめ)』といいます。
 三刀屋さん、これからよろしくお願いしますねえ」

笑みを称える少女――関は、『内緒』にも頷く。

「あら……『さぼり』だなんて、いけませんよう。
 でも、ふふ。働いてたら、そういう日もありますよねえ。
 もちろん言いふらしませんよ。安心してください、内緒にしますから」

柔和な笑みだった。いけない、とは言うが、『本気』ではないだろう。
そして釣竿を一旦竿受けに置く……『話す』のに集中する為だった。

「流行り……ではないと思います、あまり見ないですし。同年代。
 私も『趣味』と『実益』を兼ねて、ちょっと前から始めたばかりですけど〜」

「実益っていうか、まあ、食べるんですけどねえ……」

『実益』――――エプロンもだが、どこか所帯じみた色を帯びる。

650三刀屋 路行『一般人』:2020/06/22(月) 17:10:17
>>649
「それじゃあ、お言葉に甘えて・・・・いや、今アップしたら仕事をサボってるのがバレるね」

途中まで打ちかけた文面を削除していく
やばいやばいと苦笑交じりに呟いた

「『実益』ねぇ どうやら僕みたいないい加減なおじさんと違って
 関さんは『しっかり者』みたいだね」

「お金の管理だって、何となく給料が入って、何となく使って
 何に使ったのかもよく覚えてないくらいだからね

最近じゃあ、財政管理用の家計簿アプリなんかもあるらしいけど・・・
ま、三日坊主ってところだったね」

ダメなおじさんオーラ全開で砕けた話を続ける

651関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/22(月) 19:48:53
>>650

「あら、そっかあ、それもそうですねえ〜!
 ごめんなさい私ったら、引っ掛けるみたいな事」

          クス

「許してくださあい」

口元に手を添え、微笑する。

「ふふ……口ではこんなこと言ってますけど、実践はできてるかどうか。
 この餌だって買ったあとから、もっと安いのを見つけたんです」

        スッ

その手を下げ、いわゆる『アミエビ』を指し示す。
見るからに廉価品のようだったが……

「やりすぎると『悪かろう安かろう』……
 でも、安く上げられるところは安くしたいんですよね」

「まあ、しっかりというか……ふふ、ケチなだけですよう」 

さらに、そのアミエビを糸の先の『かご』に詰めていく。
特に関から言うことはないが、『さびき釣り』だった。

「そういえば〜……その『封筒』は、三刀屋さんのお仕事道具ですか?」

置かれた封筒に、目線が動いた。
乾いたコンクリだが、『水場』だ。中身次第では『心配』もあった。

652三刀屋 路行『一般人』:2020/06/22(月) 21:10:30
>>651
「やれやれ、最近はコンプライアンス的にうるさいからね
ネットのあれこれには気を付けないといけないよ くわばらくわばら・・・」

>「そういえば〜……その『封筒』は、三刀屋さんのお仕事道具ですか?」

「封筒・・・? あぁッ! いけないいけない 忘れるところだった」

目線につられて自分で地面に置いた『封筒』を再び手に取る
波しぶきの上がる堤防であったがギリギリ水には濡れていない

「まあ、仕事道具といえば仕事道具だね
さっきも言ったように僕って出版社に勤めてるんだけどさ?
預かり物の大事な原稿がこの中に入ってるんだよ

やばい やばい 本気でコンプライアンス的にアウトを喰らうところだった」

涼しい顔をしながらも冷や汗がたらりと流れている
表情はあまり困ったようには見えないが、マジでひやりとしているようだ

653関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/22(月) 21:30:47
>>652

「まあ原稿なんて……大変じゃないですか三刀屋さん!
 入れておく袋とか、持ってない〜、です?
 裸でこんな水気の多いところに置いちゃ危ないですよう」

「サボりとかコンプライアンスどころか、
 もっと直接的に怒られちゃいますよ〜?」

        ゴソ…

「あの、もしよければこれ、お貸ししましょうか?」

小さな鞄から、もっと小さな袋を出した。
買い物袋有料化……当然『エコバッグ』は購入済みだ。

「網を手伝ってくれた『お礼』……だと思ってくれれば〜」

すずめの柄が描かれている辺り、自分の名前が好きなのだろう。

654三刀屋 路行『一般人』:2020/06/22(月) 21:45:47
>>653
「ははは・・・危うくいろんな人の人生を巻き込んで爆発四散するところだったよ
関さんには何から何まで本当にお世話になるねぇ」

ありがたく、『エコバック』に原稿を入れさせていただく

「不味いねぇ・・・未来ある子にこんないい加減な大人の姿を見せてしまってさ
大人に対して幻滅させてしまった・・・か、な?
君みたいなしっかりした子はこんな大人にならないように気を付けなよ〜」

すずめの絵柄をじっと見つめる 可愛らしい絵柄だ
思わず微笑んでしまう

655関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/22(月) 22:13:39
>>644

「良いんですよう、困ったときはお互いさま……
 それに、いくら大人の人だからって、
 ずっとしっかりしてなきゃなんて事ないですよ」

          ニコ〜

「それに……私が何も言わないのに、
 すすんで助けてくださった、親切な方に……」

           ス…  

「幻滅だなんて。そんなこと、しませんよう」

柔和な笑みを浮かべ、エコバッグを渡した。
倹約するのは『必要な時に出せるように』。

「袋は……またいつかお会いした時に、
 もし覚えてたら返していただければ。……っと」

         ひゅんっ

そう言うとまた、釣竿を水面に向けて振るった・・・

656三刀屋 路行『一般人』:2020/06/22(月) 22:27:26
>>655
「君は・・・本当に『いい子』なんだなぁ
僕が君くらいの時なんて『大人達はみんなクソ』とか言ってイキりまくってたというのに
でもまあ 流石にこれは返すことにするよ」

『エコバッグ』から封筒を取り出して、返す

「幸いにも、予報では今日は雨が降らないみたいだしね
僕もそろそろ会社に戻らないといけないし、さ」

『封筒』を手に抱えて言う

「君みたいな『いい子』に会えて今日は本当にいい日だったよ、ありがとう
機会があったらまた会おうじゃないか」

と、言いながら手を振り その場から離れていった

657関 寿々芽『ペイデイ』:2020/06/22(月) 22:46:39
>>656

「ふふ、いい子だなんて。
 それこそ、幻滅させちゃいそうです」

          スッ

「ああ、お戻りになるなら必要ないですかねえ」

エコバッグを受け取る。

「ええ、またどこかでお会いしましょう。
 お仕事頑張ってくださいねえ、三刀屋さん〜」

手を振り返し、また釣りとポイントアプリに熱中する・・・

658シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/06/24(水) 23:35:20

     「はッ」
                 「はッ」
           「はッ」

                タッ タッ タッ タッ タッ

一人の少女が海沿いの道をジョギングしていた。
半袖のシャツにハーフパンツ、首にタオルを巻いている。
黒葛純白――『ワタシ』は『シルク』と呼んでいる。

          タッ タッ タッ タッ タッ

シルクは合唱部に所属している。
そして、『音感』や『歌唱力』なるものとは『無縁』だ。
当然の帰結として、彼女は『歌う事』に向いていない。

    タッ タッ タッ タッ タッ

しかし、幸か不幸か『運動神経』は人並み以上だった。
未だに『運動部』から声が掛かるが、彼女は断り続けている。
承知した方が『世界のため』になる筈だと、
『ワタシ』は信じているが。

659シルク『トワイライト・トーン』&『トワイライト・ゾーン』:2020/06/27(土) 20:37:11
>>658

その日、シルクは一日運動に励んだ。
 ワ    タ    シ
『トワイライト・ゾーン』も久方振りに平穏な時間を過ごす事が出来た。
願わくば、これが永遠に続いて欲しいと思うが――――『運命』は残酷だ。

660三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/02(木) 20:33:29
「うーん・・・あの『奇妙な部屋』で見つけた原稿を試しにトレスしてみたけど・・・」

夕暮れ時の海辺・・・・堤防に座りながらスーツ姿の壮年男性が『紙の束』を見つめている
後ろから見るとその紙が何かの『漫画の原稿』だという事がわかるだろう

「まったくダメだね
『あの能力』で線は正確に引けているけど『元原稿』の迫力が全然ない
ははは・・・・僕じゃあゴーストライターにはなれないってわけだね」

その男性はそれらの『原稿』を眺めながら独り言を呟いている

661三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/02(木) 23:38:00
>>660
「ま、地道に探してみるしかないかな
幸い『超能力』のおかげでタンスの裏の狭い隙間とかも楽に探せるからね」

そういいながら、男は去っていった
『原稿』はいまだ見つからない

662両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/03(金) 00:05:28
ここはBar『黒猫堂』。
星見町の『夜の顔』の一つであり、お客様が一時の安らぎを得るためのスペースでもある。
そこで僕、両角はバーテンダーを営んでいる。

キュッ……キュッ……カウンターでグラスを磨きながら考える。

今日のお客様はどんな方だろう?……と。

663ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/03(金) 21:06:53
>>662

    ガチャッ

一人の『客』がやって来た。
若い女だ。
白・青・紫のトリコロールカラーのポンパドールヘア。
そして、古代ギリシャの装束である『キトン』を身に纏っている。
足元はサンダルだった。

「――――こんばんは」

女が礼儀正しく会釈をする。
その両腕は『羽毛』で覆われ、背中には『翼』が生えていた。
踵には『蹴爪』が備わっている。
いずれも、本物と見紛う程に『リアル』な作りだ。
普通に考えれば、『本物』であるはずはないが。

664両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/03(金) 21:28:37
>>663
おや、不思議なお客様だ。
仮装だろうか。コスプレだろうか。

「こんばんは、いらっしゃいませ。」
だが、一度バーの扉をくぐれば、それはお客様だ。
バーテンダーとしてもてなすべきであろう。

「今晩は空いております。お好きなお席にどうぞ。」
幸か不幸か、ブリタニカの他に客はいない。
好きなカウンターの席に座れそうだ。

665ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/03(金) 21:56:11
>>664

「どうぞ、よろしくお願い致します」

何処か『ズレた感』のある言葉と共に、
バーテンダーの前の席に腰を下ろした。
座っていても、『翼』は目立つ。
同時に、女から『不思議な香り』が漂ってきた。
晴れた日に干した布団のような、焼きたてのクッキーのような、
あるは柑橘系の果物のような……。
悪い匂いではないが、何とも『形容しがたい香り』だ。

「こちらでは何を頂けるのでございましょう?」

女が顔を上げて尋ねる。
こういった場所には詳しくないようだ。
とはいえ、成人は過ぎているようなので、
法的な問題はなさそうだった。

666両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/03(金) 22:18:17
>>665
どうやら初見のお客様のようだ。
しかも、不思議な香水を使っている。あまり嗅いだことのない銘柄の香水だ。

「承知しました、お客様。
どうやらバーをご利用するのが初めてのご様子ですね。私の方から、おおまかにお教えしましょう。」

にこやかにブリタニカの質問に答えていく。

「バーは『酒場』とも『止まり木』とも訳されまして、『一時の安らぎ』を提供する場です。」

「具体的には、ゆっくりとした時間の中で、ご歓談や軽食や飲料を味わっていただき、
 お客様の心に安らぎをもたらすのが、目的でございます。」

「飲み物、食べ物のリクエストはご自由におっしゃってください。
 小さなバーではありますが、一通り、揃えておりますので。」

「総じて、大まかな予算としては……
 1.チャージ (ナッツなど)
 2..2〜3杯のアルコールやカクテルなど
 3.サービス料
などで、3000〜5000円を見て頂ければ結構です。」

「つまりは、飲食歓談により、『一時の安らぎ』を提供するのが、
この『バーという場所』なのですが……ご理解いただけましたでしょうか?」
少し話しすぎたので、ここでいったん話を切る。

667ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/03(金) 22:48:22
>>666

「なるほど、『止まり木』ですか」

「『止まり木』――――」

      クス

「私、ここが気に入ってきたようです」

興味深そうに説明を聞き、謎めいた笑みを浮かべる。
『ニンゲンの世界』にも『止まり木』があるとは知らなかった。
これは、『我々』を進歩させる『鍵』になるかもしれない。

「『ヒエ』・『アワ』・『キビ』などは御座いますか?」

「『ナッツ』や『ドライフルーツ』でも構いません」

「『その他』は、お任せ致します」

床の上には、手荷物である古ぼけた鞄が置かれていた。
口が少しだけ開いていて、中身が僅かに覗いている。
『鳥用シード』だ。

668両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/03(金) 23:03:39
>>667
「ええ、バーは『止まり木』です。
町と言う、自由な空に疲れた『人』がほんの少し休みに来る場所です。」

「食べ物ですが……『ナッツ』や『ドライフルーツ』ならございますね。」
『チャージ』として、『ナッツ』と『ドライフルーツ』の入った皿をブリタニカの前に出す。

「さて、お飲み物ですが……少々お好みをお聞きしたいですね。
 ①普段飲んでいるお酒などはありますでしょうか?そもそもお酒が苦手だったりするでしょうか?
 ②強めのお酒と、弱めのお酒のどちらが好きでしょうか?
 ③甘いお酒と、さっぱりとしたお酒のどちらが好きでしょうか?」

「この3つを答えて頂ければ、お飲み物をお出しし易くなります。」

669ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/03(金) 23:16:41
>>668

「面白い『接点』で御座いますね。
 私、大変に興味が沸いて参りました」

出された皿を見下ろす。
その中から一つを摘んで、目の前に持っていった。
しばし観察したのち、それを口の中に運ぶ。

「『お酒』ですか。私は飲んだ事が御座いません」

「どの程度の反応が起こるか未知数ですので、
 『弱いもの』を頂戴したく思います」

「味付けは『甘いもの』を――――」

『ニンゲンの飲食物』を、自らが調査する。
それも、いずれ『制空権』を握るための『研究』の一部だ。
この成果をフィードバックし、より『高度』に至る糧とする。

670両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/03(金) 23:32:44
>>669
「承知いたしました。
まずは一杯目……度数が弱めで甘い味付けとなりますと……」

   カラン……

グラスに氷とクリーム・ド・カシス、オレンジジュースを入れ、軽くステアする。

   サラサラサラ……

「『カシス・オレンジ』でございます。」
爽やかな香りが香るオレンジ色のカクテルを、ブリタニカの前に差し出す。

「こちら、度数の低さと、爽やかさから、女性を中心に人気の高い最もポピュラーなカクテルとなります。」

671ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/03(金) 23:52:38
>>670

  「『カシス』――――」

          グ リ ィ ン ッ

           「――――『オレンジ』ですか」

オーバーな動作で大きく首を傾げ、カクテルを見つめる。
まず、その色を確かめる。
それからグラスに手を伸ばし、一口目を口に含む。

「なるほど、確かに『これ』はオレンジで御座いますね」

「色といい香りといい味といい、まさしく『オレンジ』です」

「そして、緩やかに浮上するような感覚。
 これが『お酒』というものですか」

感想を述べつつ、グラスを傾ける。
『空を飛ぶ時』とは異なる奇妙な浮遊感を覚えた。
やがて、空になったグラスをカウンターに置く。

「これは『女性(メス)に人気が高い』と伺いましたが、
 『男性(オス)』に支持されているのは、
 どのような種類なのでしょうか?」
 
「次は、それを頂きたく思います」

『調査』において重要なのは、多角的な視点からの観察。
出来る限り多くの情報を収集しなければならない。
ここを訪れたのも未知の場所だったからだ。

672両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/04(土) 00:09:54
>>671
(不思議なお客様だな……)
「はい、基本がオレンジジュースですからね。飲みすぎてしまう方も時々いらっしゃいます。」

「男性の場合、かなり好みが分かれますが……『ジン・フィズ』などはいかがでしょう。」

「度数があまり高くありませんし、シェイクが見られるので頼まれるお客様は多めです。」

ドライ・ジン、レモン・ジュース、砂糖、氷をシェイカーに入れ、シェイクする。

    シャカシャカシャカシャカ……

手慣れたシェイクだ。そして、シェイクした中身にソーダ水を加え、ステアする。

「こちら、『ジン・フィズ』になります。」
レモンの風味を炭酸が飛ばす爽やかさと香ばしさの入り混じったカクテルを、ブリタニカの前に差し出す。

673ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/04(土) 00:34:40
>>672

「美しい動作で御座いますね。
 『攪拌』するための行動を、
 芸術的な『演舞』に昇華していらっしゃいます」

       ジッ…………

「私も『エンターテイナー』をやっておりますので、
 僭越ながら『親近感』を覚えてしまいます」

手捌きを見つめながら、感想を漏らす。
もっとも、彼は『エンターテイメント』がメインではないだろう。
このブリタニカも、『パフォーマー』としての顔は、
あくまでも『隠れ蓑』なのだ。

    グッ

「『レモン』の色と香り、そして酸味――――」

             グッ

「そして、『カシス・オレンジ』よりも、やや強い『浮遊感』」

                     グッ

「――――興味深い味わいで御座いました」

              コト

          「ウフフ」

分析しながら、カクテルを口に流し込む。
先程よりも早いペースで、グラスは空になっていく。
何だか、少し『気持ち良くなってきた』ような気がする。
無意識の内に、体が左右に揺れる。
慣れないアルコール摂取によって、
『本来の習性』が表に出始めていた。

674両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/04(土) 00:47:40
>>673
「シェイクをお褒めにあずかり光栄です。」
軽く礼をする。

「エンターテイナーをやっていらっしゃるんですか。
 なるほど、不思議な衣装はそのためですか。」

「……お客様? 少々揺れているようですが、大丈夫ですか?」

「そうなると、最後の一杯は落ち着けるための、『ノンアルコールカクテル』にしてみてはどうでしょうか?」

675ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/04(土) 00:59:45
>>674

「申し遅れました。
 私、『ハーピー』と名乗っております。
 『ストリートパフォーマンス』を生業としている者で御座います」

「この街の各所で『バード・ショー』をやっております。
 どうぞ、お見知りおき下さいませ」

      「――――ウフフフ」

ユラユラと揺れながら、上機嫌で語る。
心なしか、入店時より声のトーンが高い。
これも『鳥の本性』の一端だった。

「ええ、お任せ致します。
 私、少々『気分』が良くなって参りました」

           「ウフフ」

皿からドライフルーツを摘みながら、『最後の一杯』を待つ。
地上にいるにも関わらず、
まるで空を飛んでいるような感覚がある。
『奇妙』だが――――悪くはなかった。

676両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/04(土) 01:14:30
>>675
「ハーピーさんですか。」
(芸名かな……?)

「僕は両角 晶(もろずみ あきら)と言います。
 このバー『黒猫堂』でバーテンダーをやらせてもらってます。」

「気分良くなっていただいたならこちらも本望ですよ。」

「それでは『最後の一杯』は……こちらになります。」

オレンジジュース、レモンジュース、パイナップルジュースを混ぜてシェイクする。

    シャカシャカシャカシャカ……

手慣れたシェイクだ。そして、氷の入ったグラスに中身を注ぎ込む。
最後に、パイン・オレンジ・レモンのスライスで飾り立てる。

「こちらは……ノンアルコールカクテルの『シンデレラ』になります。
 『シンデレラ』……24時までのお姫様にして、成功のカクテルです。」

3種の果物で飾られた華やかなカクテルがブリタニカの前に差し出された。

677ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/04(土) 01:40:21
>>676

「『シンデレラ』――その名前は聞いた事が御座います」

「恵まれない境遇に置かれていた女性(メス)が、
 『魔法使い』の助けを借りて、
 最終的に幸福を手に入れる童話ですね」

          「ウフフ」

『魔法』ではないが、『奇跡の力』ならば覚えがある。
『ハロー・ストレンジャー』――『ニンゲンに擬態するスタンド』。
それは、シンデレラが身に纏う美しいドレスのようなものだ。

「そうした話を『シンデレラストーリー』などと形容するそうで」

シンデレラは『舞踏会』に向かい、『王子の心』を手に入れた。
ブリタニカは『人間界』に溶け込み、『種族の進歩』を目指す。
『成功』のための『変身』という意味で、
両者には奇妙な『共通点』があった。

「『洗練された選択』をして頂けた事に感謝を申し上げます」

            「ウフ」

    クイッ

最後の一杯――『シンデレラ』を飲み干す。
オレンジの爽やかさとレモンの酸味、パインの甘味が調和し、
口の中に広がる。
満足した表情で、グラスをカウンターに戻した。

「お蔭様で、とても有意義な時間を過ごす事が出来ました。
 これでお暇させて頂きます」

             ドサッ

     「お会計をお願い致します」

            「ウフフフ」

笑いながら、古ぼけた鞄をカウンターに置く。

678両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/04(土) 02:10:47
>>677
「ええ、シンデレラの如く成功を掴めると、よいですね。」

「有意義な時間となって幸いです。」

「会計は……税込で3000円になります。」

ガチャガチャチーン……

679ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/07/04(土) 02:22:55
>>678

「『成功』――私も常々『そう在りたい』と思っております」

    ゴソ ゴソ

「生憎『細かいもの』が多いですが、
 お差支えは御座いませんか?」

            ジャラララララァッ

鞄の中から『裸の小銭』を掴み出し、カウンターの上に置く。
五百円玉も混じっているが、百円玉や十円玉が多い。
合計金額は『三千円』だ。

「先程も申し上げましたが、
 私は街の様々な場所で仕事をしております。
 お時間のある際は、両角さんも是非ご覧下さいませ」

「――――それでは、失礼致します」

            「ウフフフフ」

                       ガチャッ…………

ドアを開け、店の外へ出て行く。
若干左右に揺れながら、夜の街を歩いていった。
『酒』――癖にならないかどうかが、ほんの少し心配だった。

680両角 晶『アモン・デュール』@Bar黒猫堂:2020/07/04(土) 02:26:39
>>679
「はい。
 お金に貴賤はありませんので、ありがたく頂戴します。」

「あなたの『止まり木』、バー『黒猫堂』。」

「またのお越しをお待ちしております。」

681関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/15(水) 18:28:09

駅前広場に時々、『露店』が出ている事がある。
いや、露店というのは『美化』した言い方だ。
実際は『違法』であり、勝手に売っているだけ。

「…………」

それを遠巻きに眺めている少女がいた。
黒髪を前は目の上で切り揃え、後ろはおだんごに。
服の上には、無地の『エプロン』を付けている。

        じーーーー  ・ ・ ・

欲しいトランペットを眺めている、という風でもなく、
手には『スマホ』を持って、時々何かを打ち込んでいる。

682小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/07/15(水) 23:38:00
>>681

チョン チョンッ

そんなスマホを覗き込み、文章か何かを打ち込む貴方の肩を
指先で小突くようにする感触が後ろから。

「あー、すまねぇ。此処らのものを買うのは良いとしてもさ
インスタか何か知らんけど勝手に写真とか撮ってんなら
悪いけど止めて欲しいんだが……」

貴方より背丈が大きい、髪型は染めていてファッションもどちらかと
言えば不良めいた人物が少し困り気に頭を掻きつつ告げている。

「まぁ、此処ら辺の店も許可は取ってないでしょうけど。
それでも、生活の為ですしね」

少し遅れて、学生服をバンカラマント風に着こなす高等部らしき
人物も、貴方のほうより奥の店に視線を投げ掛けつつ。声を掛けてきた
不良と同じ位置へ歩みを寄せた。

683関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/15(水) 23:55:39
>>682

「……っ!」

     トッ …

『突然触れられた』事に軽く跳ね、
背後からの見知らぬ男の声に、さらに驚く。
ここはさほど、『治安』が良くない。

       クルッ

「あ、あちらのお店の……『関係者』の方ですか〜?」

まして『店の違法性』を指摘するより先に、
それを観察する人間を指摘するという事は、
彼らは前者の関係者の可能性が高い。
つまり、『無法』側の人間の可能性が、高い。
不良風の装いは、関の警戒レベルをより高める。

「あのう……」

          スッ

「私、ただ、アクセサリーの値段を調べてたんです。
 市販品より、高いのか、安いのか……
 安いならここで買う方が『節約』になりますから」

示すのはスマホの画面だ。

「……ですから、『生活のため』ですよう」

なるほど、『写真』を撮ってはいないようだった。
メモがびっしりと書かれた『メモ帳』が開かれている。

「メモをしただけで、写真は撮ってません。
 アルバムを見せてもいいですけど……今日の分だけなら」

温和な声色は事を荒立てないよう……ではなく生来の物だ。
が、事を荒立てたくない気持ちはある。まして闇の人間相手に。

684小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/07/16(木) 00:17:27
>>683

ヤジ「関係者……まぁ、何軒か顔見せたら知り合い居るかも知れないし
関係者で良いけどな」

僅かに眉間に皺を寄せて、考える顔付きになりつつ。貴方に声をかけたほうの
闇側と思える人物は、そうあっさりと告げる。

ヤジ「あー、節約な。そりゃ、勘違いして悪かった。
たまに隠し撮りしてネットに上げるとか、そう言った奴等もいてよ」

少々神経質になってたわ。と、申し訳なさそうな表情を浮かべる。

小林「私には理解しかねますが、何故撮るんですかね? 意味も無いのに」

ヤジ「ジョー、そいつ等には意味があんのさ。撮って相手が気分よくないのが
楽しいだとかさ。理由なんて掃いて捨てるぐらい作れんだろ。
アクセサリーか……そういや、蛍石だっけ? まだ今日も持ってんの?」

小林「えぇ、勿論」

ジョー、と呼ばれた青年が。制服の内側から手の平に煌くフローライトの
石を取り出す。お守りなのだろうか? 
彼はそれを手で弄りつつ呟く。

小林「私も、これを加工してアクセサリーでも作って貰えれば良いんですが」

ヤジ「職人の伝手は無いからな……」

     ボソッ「そう言うスタンド使いも知らんし……」

不良らしき見た目の青年は、そう独り言のように小さく呟く。
貴方に聞こえるかどうかは不明だが……。

ヤジ「んっ。あー悪かったな嬢ちゃん 
もう、特に俺達は用件ないから行ってくれて構わないぜ」

685関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/16(木) 00:33:04
>>684

「隠し撮り……私見ですけど〜、『悪い事をしてる』からですよう。
 ほんのちょっとの悪い事でも、見逃せない人って、いるんです。
 そういうのを撮って広めると、『いいことをした』気分になれるんです」

「お店を出すくらい、別にいいと思うんですけどねえ」

         ニコ〜

もちろん『良くない』のは理解している。
店を出す、というその行為だけでなく、
彼らの『背後』に暗い部分があるし、
場所によっては単純に『邪魔』にもなる。
周囲の『正規の許可を取った店』にも、
彼らの存在は『百害あって一利なし』だ。

が、それは口に出さず、『通報』などもしない。なあなあにする。

「きれいな石ですねえ…………」

             じ ・ ・ ・

蛍石を眺める。眺めているのは事実だ。
そして『話を聴いている』。
ほとんど独り言に聞こえるが、
そこから重要なワードを拾う事が出来た。

「…………『スタンド使い』?
 あのう……『スタンド使い』って、いま、おっしゃりましたかあ?」

用件は『できた』。場合によっては、そうはならないかもしれないが。

686小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/07/16(木) 00:44:37
>>685

小林「知人……いや、言い方に語弊があるが。謎を好む同士からの
贈呈品でして ――貴方も?」

『スタンド使い』の言葉に、少し瞠った目で最後の部分で強調するように告げる。

ヤジ「……こんな場所でもが。学園でも未だ覚醒してなさそうだったけど
出会うし。最近よく会うのは、ジョーの引力の所為かね」 フゥ・・・

軽い溜息のあと、金魚の玩具のような小さなスタンドに包まれたビー玉。
そんな形の『スタンド』をヤジが取り出す。少しだけ指で弾いたソレは
宙に1、2秒静止して。ゆっくり彼の手の平の中に下降した。

ヤジ「そんで、君は能力は自覚してる感じ? 音仙って人の知り合いなら
話はすげー早くなるんだけど」




親友が少女と話すのを眺めつつ、小林は手元の蛍石を手の中で遊ばせつつ思う。

この街のスタンド使いの中の黄金の意思を確かめる。
 彼は、何時かの時にそう宣言した。
何故か? と問いかければ、決まってるだろ と笑いつつ告げた。

それが『ジョジョ』なんだ。ジョジョなら誰だってそうする。

……私には、まだその真意が掴み切れていない。

687関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/16(木) 01:11:42
>>686

「はあ〜、『同士』さんからのですか……」

美しい石を見つめる視線を、
そのまま『バンカラ』の男の目に向ける。

「腹の探り合いは、無しですねえ。
 はい〜。私も『スタンド使い』で」

           『ズギュン』

「これ。特別な『帳簿』なんですよう」

          「名前は、『ペイデイ』」

「ジョーさんのは、石と同じくらい……
 『きれい』なスタンド、なんですねえ〜。
 ふふ、私のはプライバシーの塊ですので、
 じっくりとは見せられませんけど……」

            パラララララララ 

「とっても便利で、お気に入りです〜」

表紙を見せ、ページをぱらぱらめくる。
書かれているのは無数の『収入』と『支出』だ。
それが書かれているページをめくり続ける。

「『オンセン』さんのことは、存じませんけど……
 ええと……その人はお二人の『上司』か何かですか?」

688小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/07/16(木) 09:30:59
>>687(レス遅れ失礼しました)

ヤジ「いや、ジョーの力を引き出してくれた人。
……あぁ、因みに俺は今は柴田 甲と名乗ってる。
みんなからはヤジって呼ばれてるから、そう呼んでくれりゃいい」

あと、俺はスタンド使いじゃないんだ。ジョーだけでさ。
とヤジが少し一歩下がり、小林は前に進み出た。

小林「名乗り遅れましたが、小林 丈(たける)
彼からは愛称でジョーと呼ばれてますが、小林でもジョーでも
どちらでも構いませんよ。
 ……ノートの形をした、スタンド ですか」

ヤジ「器具型、それでいて一般人にも見えるタイプは中々珍しいな」

ノートを一瞥する二人だが、覗き込む程に馴れ馴れしい真似はしない。

ヤジ「まっ、特にそっちが危険とかじゃない限り。俺達だって何か
手出ししようとか、そう言う気はないから心配しないでくれよ。
異能専門の自治団体めいた行動してるだけだし」

小林「君、いい加減にスタンドが見えるかどうかの道具ぐらい
貸し受けるように、上司でも誰でもいいですから頼んだらどうです?
見てて危なっかしいですよ」

ヤジ「誰でもスタンドが見えるようにするアイテムなんて、俺の雀の涙
見たいな給料で借りようとしたら、3ヶ月はもやしだけで生活しなきゃ
ならねぇよ。買うなんて、考えるだけでおっそろしい」

そんな風に、貴方の目の前の二人は好き勝手に話している。
特に何かしでかすようでもないし、特に悪人でも無い感じだが……。

ヤジ「そう言えば、君の知り合いとかに居ないか?
 そう言った、何かスタンドが見えるように便利にするような」

30万程度なら、何とか工面して借りれる準備は出来るんだけど、と。
ヤジは悩む色も表情に含んで貴方に尋ねた。

689関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/16(木) 11:04:06
>>688

「ヤジさんと、ジョーさんですねえ。
 私、関 寿々芽(せき すずめ)って言います〜
 同じ星見町民同士、よろしくお願いしますね」

      ペコ

「まあ、自治団体。そういうのもあるんですねえ。
 心配どころか、安心ですよう。
 人を傷付ける『悪い人』も、いる所にはいますもんね」

どうやら、強い警戒は受けていないようだ。

異能専門の自治団体。
上司、が存在する組織体系。
特殊な道具の『貸与制度』がある程の規模。

もちろん彼らにとって『話して良い』秘密なのだろうが、
関寿々芽にとっては、十分な『収入』となる情報だった。

「ううん、『質のいい道具』のツテならありますけど、
 そういう『特殊な道具』は、心当たりがありませんね。
 と〜っても目に効きそうなブルーベリーとかでしたら、
 格安で、ご都合させていただく事も可能ですけど……」

            パタン

「そういうのじゃあ、ないですよねえ。
 そのう、『オンセン』さんが持ってたりとかは……?」

帳簿を閉じながら、ヤジに話を返す。
商売についてチラつかせつつ、『音仙』について掘り下げる。

690小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/07/16(木) 11:18:05
>>689

関 寿々芽(せき すずめ)の思惑を知らぬまま、ヤジは
気さくな感じで対応を続けていく。

ヤジ「音仙さん? あの人は『供与』専門で、人の心の音の
育み具合とか、そう言った事以外で手助けはしないと思うぜ」

小林「彼女は、そうでしょうね……専門の事のみ相談してくれますが
この街の大事小事の騒動に手を出す事はないでしょう」

ヤジ「未覚醒の、素質ある人達を引き出すってのはなぁ……。
俺は色々事情あるから、スタンド使いにはなれないし なる気も将来
ないから、あんまあの人と縁が深くはなれねぇな」ハハ……

何やら自虐めいた小さな笑いをヤジは放つ。
 多分、色々と彼等にも背景はあるのだろう。『話して良い』秘密があるように
決して口外出来ない内容も。

ヤジ「『質の良い道具』……んで異能は絡んでない、か。
もしかして、そのノートで記帳したものを自由に取り出せるとか?」

小林「親友、御法度でしょ。人の能力を詮索するのは」

ヤジ「まぁまぁ。想像して勝手に独り言として話す分にはいいじゃん。
関ちゃんにも、黙秘権はあるんだし。
……俺からも質問だが、関ちゃんは誰かからスタンド能力を
開花して貰った感じかい?」

691関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/16(木) 23:28:44
>>690

音仙、については気になりはするが、
今のところ深く考えるべき存在でも無さそうだ。

「ふふ、企業秘密ですけど……
 そんなに便利な能力ではありませんよう。
 ただ、購入のツテがある、っていうだけの話です」

笑みを浮かべる。
『ペイデイ』の秘密は明かすつもりはない。
彼らの深層と同じだ……明かせる秘密とそうでない秘密。

「はぁい、私も『目覚めさせてもらった』クチです。
 オンセンさん、とは別の方なんですけどね。
 名前を言って良いのかは、わかりませんけど……」

「あ、ツテって言うのはその人ではないですよ」

彼ら自身はごくごく気の良い人達に思えるが、
背後にあるらしい『組織』もそうとは限らない。
仮に組織まで『完全に善性』だとしても、
彼らと『妖甘』の関係性までは分からない。

「お返し……じゃあないですけど、
 私からも質問、させてもらっていいですかあ?」

「スタンド使いの『組織』があるだなんて、
 私ったら全然知らなかったので…………
 もしよかったらですけど、色々聞いてみたいです〜」

692小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/07/17(金) 22:22:55
>>691

ヤジ「別に名前言いたかなけりゃ構わないって。
うん? 属してる組織の名前は『アリーナ』だよ。
主に、俺が行く所は地下闘技場とか開催する施設だが。派閥が
違う所だと、港の倉庫街とかにも確かあるな」

小林「スタンド使いにしか見えない張り紙で、闘技者を募集する
ような部署もありますし。謂わば、異能でのエンターテインメントで
収益を得たり、この街でスタンドの悪事の鎮圧などにも関わってますね」

言い渋る様子もなく、彼等にとっては極秘でもないらしい
『アリーナ』と言う組織について開示する。

ヤジ「……それと、気を付けときな関ちゃん。『エクリプス』って言う
単語に反応して、何かしら根掘り葉掘り聞き出そうとする
危なさそうな奴が居たら、人目を憚らず逃げたほうがいい」

アリーナについて話す時より、明るさを陰らせヤジは真顔で告げる。
小林は、口添えする様子は見せず貴方と相棒らしい彼を静観している。

ヤジ「この街で、大体の悪事に関与してた組織だからな。
人が想像する最悪な悪事の大体をやり遂げてきたと言って過言でない。
 もし、見かけたり。そんな感じの奴が居たら何時でも俺達に
連絡してくれれば、何かしら助けにはなれるからさ」

スマホを出しつつ、彼はそう力強く言い切った。
 電話番号を交換するのも良いかも知れない。少なくとも、貴方の
連絡先を悪用するような輩ではないだろうから。

693関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/17(金) 23:55:29
>>692

「『アリーナ』…………」

    ギュ

      「…………『エクリプス』」

「私ったら……そんなの、どっちも初めて聞きました!」

口元を『ペイデイ』で抑え、目を見開く。
……噛み締めるように、その二つの名を復唱する。

「この町に……そんな事があったんですねえ。
 でも……………………ふふ。安心ですよう。
 お二人みたいな人達が、私達みたいな、
 何も知らない人の事もちゃーんと守ってくれてるなら」

       スッ

「安心して、暮らせますよう」

スマホを取り出した。連絡先は、交換しておく。
彼らとの繋がりはきっと大きな意味がある。

「それで、あの、さっきちょっとだけ言いましたけど、
 私……『ちょっと質の良い道具』のツテがあるんです」

         『シュン』

スタンドを解除して、スマホの操作に手を空ける。
顔はヤジの目を見て、温和な笑みをさらに深めた。

「守っていただくお礼……ってわけでもないですけど、
 困ったことがあった時はお互い様、ということで……
 もし都合してほしいものがあったら……連絡して下さいねえ」

694小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/07/18(土) 22:37:27
>>693(長らく、お付き合い有難う御座いました。
次レスで〆させて頂ければと)

>『ちょっと質の良い道具』のツテがあるんです

ヤジ「へぇ、それじゃあ。期待ってわけじゃないけど
楽しみにしておくぜ、『また』会う時にな」

小林「親友、そろそろ次の場所の見回りがありますから」

ヤジ「わかってるって。可愛い女の子と話す時は
ちょいとぐらい、時間を消費するのを気にするなんて野暮だって事
ジョーも覚えとくべきだぜ」

軽口を交えつつ、ヤジと小林は貴方に暗に別れを告げる。
 
ヤジ「そっちも、エクリプスなり。奇妙な事件が身近で起きたら
直ぐに連絡してくれよ。何時でも力になるからな」

小林「えぇ、私達の役目ですので」

彼等は別の場所へと向かう。まだ、何か言いたい事があれば今の内だ

695関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/18(土) 23:28:20
>>694

「かわいいだなんて……照れちゃいます。
 ええ、ぜひ『また』……ふふ。
 見回り、お疲れさまです。頑張って下さあい」

           スッ

言葉通り朱が差す頬で、笑みを浮かべた。

スマホをエプロンのポケットに入れ、
小さく手を振ってその姿を見送る。


「あ、それと……!
 暑いので、水分補給にはお気を付けてえ!
 ジュースじゃなくてお水がいいですよう〜!」

遅れて、それだけ付け足した。

『収入』は大きい。
『アリーナ』について、多くを知る事が出来た。
そして繋がりさえ作れた……これは、大いに意味がある。

「……ふふ。
 『ペイデイ』……無駄遣いは、しませんからね」

この規模に隠れ蓑は恐らく通じない。
むしろ……『後ろ盾』にするつもりで行く。
そこにはやましいことなどなにもない、ちょっとした『副業』に過ぎないのだから。

696関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/23(木) 22:02:13

休日、真昼間の海岸にその少女がいた。
目にかからない程度に伸びた前髪と、
きっちりとおだんごにまとめた後髪。
温和気な顔立ちで、左目の下には泣き黒子。
服の上に着けた苔色のエプロンには、
胸元に真新しい『らっこ』のピンバッジ。

         ザザァーーー

寄せて返す波を見つめ、水面に釣り糸を垂らす。

「…………」

この少女は『釣り』を純粋に趣味の一つとしている。
だから、別の物を待つとしても、釣りは手段に上がった。

697氷山『エド・サンズ』:2020/07/23(木) 22:30:06
>>696
「ん・・・・・?」

昼間の海岸沿い、普段の『見回り』コースからは外れるが
なんとなく、今日は海な気分だったため、散歩に来た

ふと見ると海岸線には釣りをする女の子の姿が見える
その子本人に見覚えはなかったのだが・・・・

「あれ?」

胸元につけたピンバッジが気になった
あの絵柄は・・・・

      トコトコ  トコトコ・・・

「こんにちわ 釣れますか?」

関に話しかけたのは高校生くらいの少女であった
休日なのに清月学園の制服を着ていて、地味な印象だ

698関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/23(木) 22:39:39
>>697

「こんにちは。良いお天気ですね〜」

年の頃は、近いようだった。
顔立ち以上に温和な笑みを浮かべ、
体ごとそちらへと向き直る。

「今日はですねえ、たくさん釣れますよう。
 おかげさまで晩ご飯に困らないどころか、
 無駄にしない献立を考えるのに困っちゃいます」

       ニコ〜

なるほど、釣果は上々なようだった。
だが、少女の笑みは『今』一段と深まる。

「あなたも、釣りをされにきた…………
 わけでは、なさそうですね。
 ふふ……この海岸は、散歩道にも良いですよねえ」

699氷山『エド・サンズ』:2020/07/23(木) 22:50:35
>>698
「へぇ〜、こういうトコロでも結構釣れるものなんですねぇ」

温和な表情や柔らかい物腰にほっとする
急に話しかけて嫌がられないかな〜、と心配だったが杞憂だったようだ


      ジロジロジロ

氷山の視線はじろじろと『ラッコのピンバッジ』に向いている
気になるけど、どう話を切り出したものか・・・

>あなたも、釣りをされにきた…………
>わけでは、なさそうですね。

「あ〜・・・ そうなんですよねー
実は私、最近この辺で『ラッコ』と遊んだことがあるんですけど・・・・
もしかして、お土産屋さんとかで『グッズ』が売ってたりします?」

ちょいちょい、と『ピンバッジ』を指さしながら言う
好奇心が表情からあふれている

700関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/23(木) 23:31:34
>>699

「ふふ……こうして根気よく座っていれば、
 いつかは、ちゃーんと釣れるものなんですよお。
 時間の無駄になる事も、無いわけじゃないですけど」

「今日は大漁で……これで、プラマイゼロです〜」

           パタン

クーラーボックスの蓋を閉じ、
顔を上げる……と、目が合った。

「あら……? ええ、と」

胸元に露骨な視線を感じ、一瞬戸惑うが……

「……………あぁ〜っ! このバッジですかあ?」

エプロンについたバッジをつまみ、強調する。

ラッコの、ピンバッジ。
無地のエプロンに調和する、よく言えばシンプル、
悪く言うならば、あまり工夫のないデザイン。

「これは、スカイモールに売ってたんですよ。
 ほら、三階にある、安いアクセサリーのお店……
 ふふ、お安い割にはかわいいのが多くって…………!」

         「……」

「あのう……それより。
 ラッコと遊んだ、って。本当ですか?」

            ジッ ・・・

今度は逆に、その好奇心に満ちた顔を見つめる。

「もし、よかったらですけどお……
 そのお話……私に、詳しく聞かせてくれませんか?」

701氷山『エド・サンズ』:2020/07/23(木) 23:52:57
>>700
   ジロ〜〜〜〜〜・・・・

        ブンブン!  ブンッ!

つままれたバッジを注視しながら無言の首肯
ちょっとした期待感を感じながら言葉を続ける

「そうです! それですよ!
もしかしたら・・・・観光名所みたいにグッズが作られてるのかなぁって思ったんですけど・・・
あっ でも、凄いかわいいピンバッジですよね なるほど、三階の・・・」

少し、期待とは違った事に多少落胆しながらもすぐに表情を変え、
良い事聞いたな〜、というグッドニュースに口元を緩める


「あ〜・・・ やっぱり気になりますよね〜?
そうですねぇ、みんなに話しても『うっそぉ〜』とか『どうせ見間違いでしょ』とか言われるんですけど・・・
あれは確実に『ラッコ』でした、まあ・・・・信じてもらえないかもしれないですけど」

好奇心に満ちた顔に押されて、少しずつ話し始める

702関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/24(金) 00:36:09
>>701

「……北の方には、野生のラッコもいるんだとか。
 そこから、ここまで流れて来たのかも……
 ちょっと昔、ほら、『アザラシ』とか……
 ラッコと同じ寒〜い海の生き物が川に来たとか、
 そんなニュースもあったそうじゃないですか?」

        ニコ ニコ

「ならラッコだって、いてもおかしくないですよね。
 もし見つかったら『ホシちゃん』なんて名付けられて、
 『住民票』が発行されたりするんですよう。ふふ……」

眉唾物のラッコ目撃談を、全肯定する。
もちろん、関自身も見たからだ。
が、『言いふらして』良いのかどうかは悩ましかった。

    「……あのう」
 
「ラッコに会ったときのお話……私、もっと聞きたいです。
 ……横、座ります? 立ち話も疲れるでしょうし。
 敷き物してあるから、お尻は冷たくないですし……」

               ズッ

         「……狭かったらごめんなさいねえ」

地面に敷かれたシートは、詰めた今は十分座れる広さだ。
   
                ポス

体をずらした関の膝から、ラムネの袋が敷物に転がる。

袋の中で数粒ずつ小分け包装されたそれらは、
しかし高級感や華やかさと言うよりは、所帯じみた彩り。

703氷山『エド・サンズ』:2020/07/24(金) 01:09:09
>>702
「『アザラシ』・・・・・?
そういえば、結構昔に東京の川にアザラシがいたらしいですね、確か名前は・・・『タマちゃん』?
千島海流とか・・・・そういうのに乗ってはるばるとやって来たんですかねー」

よくよく考えるとこんな場所までとても長い旅路だ
可愛らしい『ラッコ』だったけど、思いの外苦労をしていたのかも、と
ラッコに対してちょっとした同情の念を覚えてしまう

「いいですね!『ホシちゃん』!
当人(当獣?)にとってはありがた迷惑かもですけど、あの可愛らしさは皆に広めたいです!」

両手を上向きに構え、『もふっ』とした触感を指先でゆっくりと表現しながら言う
記憶の中の毛皮の感触を想起しながら、目を細め、遠い方を見る

「あっ これはどうも」

    ヒョイ

転がったラムネの袋をひょいと持ち上げ、さっと関の手元に返す
同時にちょっと詰めてもらった敷物に身を縮ませながら腰掛ける


「あれは私がこの辺の海岸で黄昏れてた時なんですけどねー
にゃーにゃーっていう猫みたいな鳴き声が海から聞こえて・・・・ふと鳴き声の方を見たんですよ
そしたら流線型のぼでぃをした・・・・ふわっふわの『ラッコ』がそこにいて・・・・・!
・・・・・・・『カワウソ』じゃないですよ? あれは本当に『ラッコ』でした」

体育座りをしながらぽつりとラッコの話を始めた

704関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/24(金) 22:29:49
>>703

「あぁ〜、『川の名前』がそのまま名前になったんでしたっけ。
 うちの町の川ぁ〜……といえば『鵺鳴川』ですから、
 ホシちゃんじゃなく、『ヌエちゃん』ってことになるんでしょうねえ」
 
「もしくは……あ、いえ」

湖の名前を出しかけたが、
やはり目撃情報をやたらと広めるのはためらわれる。

「ヌエ……あんまり、かわいらしい響きじゃあないですねえ。ふふ。
 それなら『ホシちゃん』の方が、きっと本人も、気に入りますよう」

誤魔化しつつ……

「まあっ、どうもご親切に〜。
 ありがとうございます……あのう。
 ……おひとついかがですか? ラムネ。
 お礼というほどでも無いですけど」

ラムネの袋を受け取り、『個包装』を1つ、取り出す。
受け取ってもらえるかに問わず、話には笑顔で耳を傾ける。

「うふふ……疑ったりなんて、しませんよう。
 カワウソと見間違えるには、かわいすぎますし。
 毛皮がモフモフで、ぬいぐるみみたいで〜……」

「あっ……カワウソが可愛くないっていうんじゃあ、ないですけど〜」

705氷山『エド・サンズ』:2020/07/24(金) 23:16:04
>>704
「『ヌエちゃん』・・・ 『湖の名前』・・・ うーん・・・・」

妙に耳に残るような、語感のいい名前ではあるけれど別の意味が含まれそうな名前と
よくよく考えると誰も正式名称を知らない『湖の名前』を比較・・・

「『ホシミン』・・・ 『ホッシー』・・・ 『ホシちゃん』・・・
うん。 やっぱり『ホシちゃん』が一番かわいい響きですねー
あんまり外野がはしゃぐのもよくないですけど、こっそりと呼ぶ分には・・・まあ」

「あ、どうも」

ラムネの袋は遠慮なくいただき・・・口の中に放り込む
清涼感のある甘さが口中で拡散していく  アンマァ〜イ


「そうなんですよねー! 
知っています? 『ラッコの毛皮』は水中で空気の泡を蓄えるために緻密で繊細な毛がもふっと生えていて・・・
触ると手がこう・・・! 沈み込むように・・・・! えぇっ 
結構人懐っこい感じでゆっくりと優しく近づけば触らせてくれたんですよね!」

語る 語る
今まで誰も信じてくれなかった鬱憤が溜まっていたのか
堰を切るように、『あの体験』を語りだす 早口で

706関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/24(金) 23:38:26
>>705

「ふふ……もし『記念グッズ』を作るとしても、
 せっかくなら星見町にちなんだ名前の方が、
 町のイメージアップにもなって一石二鳥ですよねえ」

            ジュゥ ゥゥ ゥ

「同じ町の仲間、っていう感じもしますし……」

『清涼感のある甘さ』――――――『その通り』だ。
だが、これは『何』なのだろうか?
ラムネなのは間違いない。口どけも味の系統も、
ラムネという食べ物を超越するものではない。
だが、好みなどは抜きにして言えば……

              ハイクオリティ
その『味』が、あまりに『美味しすぎる』。

「まあっ、あのふわふわさにそんな秘密が……!
 ラッコのこと詳しいんですねえ、ええと……
 ああ、お名前……まだ聞いてませんでしたし」

「私ったら、自己紹介もしてませんでした」

       ニコ〜〜〜

「私、関 寿々芽(せき すずめ)って言います〜。
 苗字でも、名前でも、お好きに呼んでくださいよう。
 あなたのことは……なんて、お呼びしたらいいでしょう?」

関の方からラムネについて触れる事はない。ラッコトークに、笑みを浮かべるだけだ。

707氷山『エド・サンズ』:2020/07/24(金) 23:53:03
>>706
「・・・・・・!?」


            ジュゥ ゥゥ ゥ

何気なく口に放り込んだ『ただのラムネ』・・・・そのはずだった。
だが、この『甘味』はなんなのだろう?
氷山自身、ラムネはそれなりに好きな方だ、スーパーやコンビニで買い食いした事も多い
世の中に出回っているラムネの味についてはわかっている・・・・それほど大差はない事を

でもこれは・・・・・!?


「そ、そうですねー・・・ 『町の人気者』になって欲しいですよね」

疑問符が大量に頭の中に浮かびながらも、会話に答えていく
これは一体どこで売られているラムネだろうか・・・・などと考えながら


「あー・・・そういえばまだでしたね
私は氷山(ひやま)あきはって言います 高校一年です
あの〜〜・・・ところで」

       チョイチョイ    と、自分の口を指さしながら

「凄く美味しいラムネですけど、どこで売ってるんですか?
『ゴディバ』とか・・・ 『フォション』とか・・・ そういう『ブランド品』だったり、して?」

スイーツにはあまり詳しくはないが、思いついた『ブランド名』を言ってみる
本当に『ブランド品』だったら遠慮なく食べちゃって悪いな〜といった感じに、
申し訳なさそうに眉尻を下げながら・・・

708関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/25(土) 00:18:21
>>707

「あきはさん、ですね。
 ふふ、同じ町民同士、よろしくお願いします〜」

        ニコ〜

清月学園……そういえば『関』は同年代に見えるが、
学内でこの少女を見かける事は、あまり無いかもしれない。

「ああ……この『ラムネ』! 気になりますかあ?
 ふふ、市場には出回ってない品なんですよう。
 といっても、そんなに貴重な品ではないんですけど〜」

            ガサ…

ラッコのピンバッジも、持ち上げた袋に隠れる。
シンプルなデザイン。海外のメーカーだろうか?

「ちょったした『極秘ルート』がありまして……!」

やや不穏当な単語だが……笑みに暗さはない。
元々垂れ気味の目尻を下げた、穏やかな表情だった。

「そこから『通販』してもらってるんです。
 味がしっかりしてて、おいしいでしょう〜?
 普通のラムネよりはちょっとお値段しますけど……」

「ふふ……『無駄にお高い』わけじゃあないと、思いませんかあ?」

709氷山『エド・サンズ』:2020/07/25(土) 00:39:59
>>708
「ああ! やっぱり『特別な品』なんですね!
なるほど、なるほど〜 どうりで美味しいわけです」

ふと思う 同年代くらいに見えるけど学校ではあまり見ないなぁ、と
違う学校に通っているのかな? それとも何か事情が? 頭の中にいくつかの『答え』が浮かび上がる

「(まあ、あの学校凄く広いし、全然見たことがない人も結構いますし、ね)」

そう・・・・自分を納得させようとしていた、が・・・・

>「ちょったした『極秘ルート』がありまして……!」

「・・・・・・!? へ、へぇ〜、『極秘・・・・・・ルート』ですかぁ・・・」

何か・・・・凄く不穏な気配の漂う言葉が出てきた
『極秘ルート』・・・・・『白い粉状のモノ』・・・・・ 昨晩、父と一緒に見た『海外ドラマ』を想起する
あれは確か・・・・『麻薬密売』をネタにしたギャング物だった・・・・が・・・

「な、なるほど〜・・・・ 『ツウハン』でご、ご購入されたのですね
た、確かに、お値段に見合った価値がありますねぇ〜・・・」

ただの『妄想』でしかない、とフツーに考えればわかる
しかし・・・・不穏な単語と少女の持つ独特の『凄み』、そして先ほどの『疑念』
それらのちょっとした『要素』達が、頭の中で『ありえない妄想』を加速させていく・・・・っ!

モシカシテ・・・・    モシカシタラ・・・・・
                   ヒョットシテ・・・・・!


「あっ あー! そうでした、そろそろ帰らないと!
関さん、今日は美味しい『ラ・・・・ムネ』をご馳走していただきありがとうございます
『ホシちゃん(仮名)』が出たら教えてくださいね・・・・! では!」

そう、一息に言い放つと連絡先を聞くこともなく、
足早にこの場から去ってしまった

710関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/25(土) 01:34:58
>>709

「はあい、とっても特別で、
 価値に見合った…………あっ」

「そっ、そうですねえ、出没情報を共有しましょう〜。
 あきはさんも、もし見かけたら私にも教えてくださいねえ」

          「それでは〜」

                  「…………ふう」

去っていく足の速さを見て、ラムネの袋を閉じ直す。
ちょうど釣り竿に魚がかかった。が、逃した魚は大きい。

「ううん……怪しまれちゃいましたかねえ。
 『すぐ食べられる』『材料がシンプル』『単価が安い』」

「『宣伝』には良いかと思いましたけど〜。
 ……私の『言い方』のせいでしょうか?
 なんにしても……無駄にはしたくないですから」

         グググッ
                    ヒュッ!

「根気よくいけば、きっと……『お客さま』もキャッチ出来ますよう」

          パシッ

                      「……まぁっ! 『ながぐつ』……」

その後は、釣りを続けた。期待は少ししていたが……ラッコは、出てこなかった。

         『本日の支出』→『ラムネ菓子』購入に『500円』。定価は『100円』。

711夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/09(日) 00:47:29

穏やかな夏の昼下がり。

海辺に整備されたプロムナード。
道に沿って等間隔に並んだ街路樹。
その近くに倒れている『アリス風』の少女。

穏やかな昼下がり――――。

712三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/13(木) 21:01:06
>>711
「・・・・・・!?」

道を歩いていたらとんでもない光景が目に飛び込んできた
穏やかな昼下がり・・・・太陽はサンサンと照り付けり、道端ではアスファルトでセミが焼けている
これは・・・・・・危険な光景では?

「君・・・・!大丈夫かい?」

流石に見捨ててはいけない
倒れた少女に駆け寄り、抱きかかえようとする

713夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/14(金) 02:00:19
>>712

         ジュワァァァァァ…………

真夏のアスファルトは、さながら熱せられた鉄板のようだ。
転がっているセミも、いい感じに焼けている。
多分、『ミディアムレア』くらいだろうか?
少女はうつ伏せに倒れており、ピクリとも動かない。
こちらも似たような焼け具合になっていそうだ。

    「………………」

動かない少女の体を抱き起こす。
『アリス』を思わせる奇抜な格好をした金髪の少女。
両手の爪には『ネイルアート』が施され、
青い『サングラス』を掛けている。

                 「………………う」

微かな声で少女が呻いた。
これは――――『熱中症』だ。
何はともあれ、とりあえず生きてはいるらしい。

714三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/14(金) 17:07:01
>>713
   ミィーン ミンミンミンミーン

           ミィーン ミンミンミンミーン

起こしてみるとなかなかにエキセントリックな服装だ
最近の女の子にはこんな服装が流行ってるのかな、などと悠長な事を一瞬考え

「いやいやいやいや、ヤバいでしょ、これは
 ええっとぉ・・・・まずは水分を、いや救急車の方が先だったかな?
 ええい、ままよ! 『ブラック・アンド・ホワイト』!」

            ズギャンッ!

                    ヴィジョン
慌てふためいた様子の男・・・・その体から『人型の像』が発現する!
            ス タ ン ド
倒れる少女を前にして、『超常の能力』で何をしようというのか・・・・!?

     ジャララララララ!!

          ガトンッ  ゴトンッ  ゴタッ!

スタンドに『財布』を持たせ・・・自販機まで走らせる!
そして購入しているのだ・・・・『ポカリスエット』を! 
遠くの物を取りたいときスタンドがあると便利だよね!

「あー・・・もしもし、救急ですか?
 道端に女の子が倒れてましてね・・・はい
 多分『熱中症』だと思うのですが・・・・」

本体は悠々と『119番』に電話をしている

715夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/14(金) 21:42:45
>>714

意外ッ!!それは『飲み物購入』!!
まさしく予想の斜め上を行く超絶的トリック!!
ついでに救急車も呼んでおくという抜け目のなさ!!

    「う………………」

だが、同時に『落とし穴』も存在した。
電話を掛けるために、
一瞬だけ意識が少女から外れてしまったのだ!!
『予想の斜め上を行く事態』は、その間に起こっていたッ!!

              ドドドドドドドドドドドドドドドド

いつの間にか、少女の後ろに『人型スタンド』が立っていた。
両目は存在するが、何故か固く閉じられている。
その両手には、医者が使う『メス』の如き『爪』が備わっていた。
スタンドが音もなく腕を振り上げる。
そして、鋭利な『爪』を少女めがけて振り下ろさんとしている!!

716三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/14(金) 22:11:10
>>715
「はい・・・・・それではよろしくお願いします」

   ドドドドドドドド・・・!

「これ・・・・・は・・・・・!?」

電話で救急車を呼びながら自販機でポカリを買う『マルチタスク』
三刀屋の脳内キャパシティ的には結構辛い!
そのため・・・・・『突如として起きた事態』に今の今まで気が付かなかった!


「・・・・・・!? な、何ィィ―――――――ッ!」

『人型スタンド』の蛮行!
その行動を止める事は・・・・できない! 間に合わないのだ!
『ポカリ』を抱えた『ブラック・アンド・ホワイト』が慌てて駆け戻る!

717夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/14(金) 22:41:56
>>716

『ブラック・アンド・ホワイト』が『人型スタンド』に接近する!!
しかし、敵の動きは『速かった』!!
次の瞬間、人間以上のスピードで『爪』が振るわれるッ!!

        シ ュ
              バ ァ ッ 
                      ! !

だが――――意外にも、傷は『浅い』。
というより、傷自体『ほぼない』と言った方が良かった。
肉眼で確認するのが難しい程に、
『小さな傷』を付けただけのようだ。
外科手術を思わせるような精密さだ。
このスタンドは、
『ブラック・アンド・ホワイト』と同等の精度を持っている。

    「う…………ん…………」

『ドクター・ブラインド』の『能力』。
本体に『超人的聴覚』を移植した。
意識が朦朧としていて声が聞き取りづらかったせいだ。
『視覚以外の感覚』は繋がっているので、
本来は出すだけでいい。
ただ、より『クリア』に聴くためには、
こうした方が都合が良かったのだ。

                「…………ミ…………ズ」
          バ タ ッ

小さく呟いた少女の体が、前のめりに傾ぐ。
そして、そのまま倒れ込んでしまった。
とりあえず、『ポカリ』を飲ませた方がいいかもしれない……。

718三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/14(金) 22:58:29
>>717
大慌てで駆け戻る『ブラック・アンド・ホワイト』
その目の前で、無情にも『謎の人型スタンド』の『爪』が振り下ろされる!
あなや!『少女』は無残にも惨殺されてしまうのか!?

「――――――浅い!?」


正確無比な爪捌き、薄皮一枚も傷つけず撫でるようなその動き!
あれぇ〜ひょっとしてコイツって『敵』じゃない? と、三刀屋が思うや否や!

>「…………ミ…………ズ」

『熱中症アリス』の呻くような呟きが聞こえた
思わず勢いで『謎の人型スタンド』を殴ってしまいそうになっっていたが、
これは・・・・・もしかして、この娘のスタンドかな? という発想に至る

「そうだ!ねぇ、君、水分はちゃんと取らないと駄目だよ」

      パッシィィ!

              グイィィ!

『ブラック・アンド・ホワイト』から『ポカリ』を受け取る!
そして、目の前の少女に飲ませようとする!
あぁ、残りのポカリはまだ冷たいから腋の下とか冷やすのに使っておこう

719夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/14(金) 23:28:37
>>718

『人型スタンド』はそれっきり何もせず、無言で佇んでいる。
おそらく、三刀屋の予想は当たっているのだろう。
もし殴っていたら、その一撃によって、
『トドメ』を刺す結果になっていたかもしれない……!!

    グビグビグビグビグビィ

ほどよく冷えた『ポカリ』が少女の喉を通るッ!!
それと同時に、少女の顔色が少しずつ正常に戻っていく。
腋の下も冷やせて一石二鳥!!

     「お」

           「おおお」

                   「おおおおおッ」

            ガバァッ!!

  「 い き か え っ た ! ! 」

                   「――――ぞ!!」

唐突に、『熱中症アリス』が勢い良く立ち上がった。
どうやら『復活』したようだ。
三刀屋の勇気ある行動が、『一つの命』を救ったのだ!!

720三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/14(金) 23:46:49
>>719
     ゴゴゴゴ・・・

無言で佇む『人型スタンド』・・・ギラギラとした爪に威圧感を感じる
とくに何もしてこないということは・・・・やはりこの『熱中症アリス』のスタンドなのだろうか

>  「 い き か え っ た ! ! 」


「ふっ、復活した!
 あ〜ほらほら、急に立ち上がると立ち眩みとか危ないから物陰で休んでいなよぉ
 それにしても凄いね、君の回復力
 ハハハ、僕があんな状況だったら2-3日は寝たきりだったよ」

ちょい、ちょい、と少女に肩を貸しながら物陰への移動を促す
あ、でもやっぱり人と密着すると暑苦しいのでスタンドで肩を貸す

「やっぱり、若さってヤツかな?
 格闘漫画の『復活ッッ!』シーンもかくやって感じの起き上がりだったよ」

721夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/15(土) 00:11:56
>>720

             「おっとっとっ」

       グラッ

不意に、少女の体が揺れる。
やはり、まだ完全には復調していなかった。
『ブラック・アンド・ホワイト』に肩を貸され、
大人しく木陰に運ばれていく。

    「いいや――――」

            「――――『アリス』だからだ!!」

自称アリスは、『謎の根拠』を語る。
少なくとも、外見はアリスらしく見える。
やや『パンキッシュ』な方向にアレンジされているが。

「『いろんなセカイ』をわたりあるいてきたからな〜〜〜」

「『アレ』とか『コレ』とか」

「あ!!『ソレ』もあったか!!」

スタンドと共に頷きながら、少女は一人で納得している。
暑さのせいで、頭の芯が茹っているのだろうか?
だが、その口調からは『妙な自信』が窺えた。

722三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/15(土) 00:28:00
>>721
>「――――『アリス』だからだ!!」

「―――――ッ!? ・・・・なるほどねぇ」

なかなか奇想天外な格好をした女の子だけど
この暑さのせいか頭がイカれてしまったようだ。かわいそうに
とはいえ、救急車が到着するまで暇だ
流石に放っておくわけにもいかないし、世間話でもしてみようか
それに・・・・こういう荒唐無稽な妄想が何かの『ネタ』に繋がるかもしれないし

「それじゃあ君はまるで『異世界転生モノ』の主人公みたいに
『別のセカイ』を股にかけて冒険してきたというのかい?
 それじゃあさあ、君が一番『面白い』と思ったセカイはどこかな?」

よっこらしょ、っと木陰にアリスを座らせながら、聞く

723夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/15(土) 01:08:13
>>722

「『イチバン』〜〜〜??そりゃムズカシイぞ。
 だって、きめらんないし」

「まぁ、イロイロあったけど。
 チカの『ヒミツトウギジョウ』にサンカしたり、
 『サイバーくうかん』にゴショウタイされたり、
 『しろいホンをもったナゾのショウネン』をおいかけたり」

「コモリのバイトしたら『ボウレイ』とたたかうコトになったり、
 『ユメのセカイ』で『マシンガン』ぶっぱなしたコトもあるし」

少女は自らの『体験』を口にする。
夢見がちな少女の妄想と片付けてしまう事も出来るだろう。
だが、この少女が『スタンド使い』である事は事実なのだ。

「あ!!『イセカイなんたら』っていうのは、
 どっかできいたコトあったな〜〜〜。
 ソレと『にたようなコト』があったっけ??」

「ミチあるいてたら、『バール』でアタマなぐられてしんだ。
 めがさめたら、ショクドウみたいなトコにいてさぁ」

「『さっきのはユメだけど、『ヤッたヤツ』をツブさないと、
 『マジでしぬ』っていわれたから、ソイツをツブしにいった。
 『ナントカおうこく』みたいなセカイで、『バシャ』にのって」

「『ナイフ』できられたときはイタかったな〜〜〜。
 『ユビ』が4ほんまとめてフッとんだし!!
 『トウギジョウ』で、
 かたてがバキバキにおられたときよりイタかった!!」

思い出したかのように、
少女は自らの片手を軽く振ってみせた。
彼女の話しぶりは、スラスラとしていて淀みがない。
これが全て頭の中で作り上げたでっち上げなら、
かなり『想像力』が豊かと言える。

724三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/15(土) 01:23:50
>>723
「ほうほう、ふむふむ、なるほど」

思った以上に『持ちネタ』が豊富だなぁ、この子
とか思っていたが、スラスラとした、とても流暢な話しぶりに段々と心証が変わっていく

うわ言のような妄想であればもっと単発的な話し方になるだろう
作家のように想像力豊かな人間というだけなら話に一貫性があるはずだ
しかし、この少女の話に一貫性はまったくない、支離滅裂だ
で、あるにも関わらず、話が破綻しているわけではない

まるで・・・・本当に目も眩むような大冒険をしたかのような・・・・

「うーん・・・この子が『想像力豊かな女の子』で今の話が全部『フィクション』だったら話は楽なのにね
 もしそうなら、僕はこの子を漫画の原作者としてスカウトしていたのだけれど・・・・」

と、小声でつぶやく
普通は聞こえないはずの小声だが・・・『超聴力』があれば聞こえてしまうだろう


「凄いねキミ その・・・ジャンルの幅が広すぎる
 それじゃあ、こんなところで倒れていたのも、何か・・・強敵とのバトルとかがあったわけかなぁ?」

725夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/15(土) 09:06:21
>>724

「アリスをスカウトするなら、
 ギャラは『100フレミッシュジャイアント』で」

『フレミッシュジャイアント』とは『世界一デカいウサギ』である。
要するに、『それくらいビッグなネタ』を、
『100個』提供して欲しいという意味だ。
なぜウサギか??
アリスはウサギをおうモノ。
そして、わたしはアリスだからな!!

「あぁ、そのとおりさ……。『ヤツ』はツヨかった。
 フカクにもユダンしていて、
 きづかないあいだにやられてしまっていたんだ……」

「『ナツだからウミがみたい』とおもってココまできて、
 たのしくなってついはしりまわっていたら、
 きゅうに『たちくらみ』が……!!」

「まさか、こんな『コウカツなワナ』をしかけていたとは……。
 わたしがココにくるコトまでケイサンにいれて……!!」

           グッ

「――――『ナツのタイヨウ』はツヨかった!!」

『ハルのタイヨウ』とはレベルがちがう。
ホンキになった『ヤツのチカラ』がこれほどとは、
ソウテイガイだった……。
だが、『にどめ』はない。
『ギャクテンのサク』はスデにできている!!
ツギは『ポカリ』もってこよう。

726三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/15(土) 11:02:39
>>725

「耳がいいねぇ」

相当小さな声で呟いたのに聞かれてしまった、これが若さか
高い音がそろそろ聴こえ難くなってきた自分の耳に哀愁を覚える

「へぇ〜、『立ち眩み』をねぇ
 ただでさえ今年の夏は暑いからねぇ、はしゃいでるとすぐに脱水になるよ」

どうも『スペクタクルな大冒険』の末に倒れたとかそういうわけではなさそうだ
如何に強大な『スタンド使い』といえども『夏の暑さ』には勝てない

・・・・・いや、勝てる能力とかもあるのかな?

    ピーポーピーポー


そうこうしているうちにサイレンの音が近づいてきた
三刀屋が呼んだ救急車だろうか?

727夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2020/08/15(土) 12:40:29
>>726

「フフフフフ、おうさまのミミはロバのミミ。
 アリスのミミは『ウサギのミミ』だ!!」

「おまけに『ハナもきく』し、しかも『グルメ』でもある!!」

    グビグビグビィ

自信満々に胸を張り、残っていたポカリを一気に飲み干す。
遠くからは、サイレンの音が近付いてくる。
とはいえ、まだ『遠い』。
普通の人間には聞き取れない距離だ。
『ドクター・ブラインド』の『超人的聴覚』だからこそ、
『それ』をキャッチ出来た。

          「………………」

「さて!!そろそろかえるか!!
 ひさびさに『しおんちゃん』のトコでもよってこうかな〜〜〜。
 たすけてくれてサンキュー!!」

「――――――そんじゃ!!」

                   タタタタタッ

挨拶を済ませると、そそくさとその場を離れていく。
救急車が来る前に逃げ出そうという算段だ!!
あとはまかせた!!

728立花『キャッチ・マイフォール』:2020/08/15(土) 21:13:42
雷雨。雷を伴うスコール。
にわかにざわめく住宅街、コンクリートのにおい。

雨雲を見上げ、不敵に笑う男が一人。
ラバースーツの上にスーツを着込んだ出で立ち。

「クク、もう…貴様らの好きにはさせん」

      ーーーズギャン!

男はスタンドを発現する!その人型スタンドは針…
否、槍とも呼べる凶器じみた得物を構えている!

729三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/08/15(土) 22:34:38
>>727
「あ、逃げた・・・・」

   ピーポーピーポー

救急車が来るから、と呼び止める間もなく夢見ヶ崎は去っていく
・・・・遅れて救急車のサイレンが近づいてきた

「困ったね・・・・これは僕が説明する流れになりそうだけども・・・逃げるか」

非道! こちらも逃げた!
後からこの場所に来た救急隊員はとても誰もいない路上を前にとても困ることになるだろう!
こういうヤツがいるから救急車の適正利用について問題提起されるのだ!

よいこのみんなはきをつけよう!

730花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/08/19(水) 21:02:19
>>728

「…………何だァ〜?」

雨宿りの最中に、その光景を目撃した。
あからさまに怪しい男が『スタンド』を発現している。
警戒心を抱いたとしても無理はないだろう。

「この前も自販機の前でイカれた野郎に出くわしたしよォ。
 どうも暑くなると、妙な連中が湧いてきやがるぜ……」

        ズギュンッ

万一に備えて、手の中に『スウィート・ダーウィン』を発現する。
客観的には、
『レザーファッション』で固めた赤毛の男が立っているだけだ。
だが『スタンド使い』には、
男が『拳銃』を握っているのが分かるだろう。

731花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/08/22(土) 20:48:05
>>730

「…………何だったんだ、ありゃあ?」

しばらく男の様子を観察し、雨が上がるのを待って、
その場から立ち去った。
とりあえず危険はなかったものの、解けない謎が残る。
こういう気分の時には、
頭に一発ブチ込んで『スッキリ』するのが一番だ。

732俵藤 道標『ボディ・アンド・ソウル』:2020/08/23(日) 13:08:55

  ミ――――ンミンミン…ジジジジジジジ…

真夏の路上…
陽炎立つアスファルトの向こうでダンスする人影どもは、
熱せられた空気に歪められた景色なのか、
暑さでおかしくなっちまった奴がマジに踊ってるのか、
それともあれは…おかしくなっちまったオレ自身の影なのか…

フラッ     …ビリ  
         ボトボトトーッ…

「…」「…ずぎゃぁァァ!」

白髪の男が、路上に手荷物をブチ撒けている。

733花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/08/23(日) 14:22:18
>>732

(オイオイ、どっかで見たツラだと思ったら……)

(この前のイカレ野郎じゃねえか……!)

偶然その場を通りかかり、思わず足を止める。
いきなり車で突っ込んできた上に、
自販機に話しかけていたようなヤツだ。
あまり関わり合いになりたくはない。

              ザッ ザッ ザッ…………

気付かれる前に後ずさり、そこから離れようとする。
だが、ブチまけられた荷物の一部は、
こっちにも転がってきていた。
俵藤の方に注意が行っていたせいで、
それを足で蹴っ飛ばしてしまう。

             ザリッ

「…………チッ」

734俵藤 道標『ボディ・アンド・ソウル』:2020/08/23(日) 15:05:24
>>733

> ザリッ

 コロコロ…

花菱が蹴っ飛ばしてしまったのは……『スゴイカップ チョコミント味』。
カップに入ったアイスだ。円筒形だからよく転がる…

…思わず地面に意識が向いて、周りに落ちている物が見えた……
『氷』、『めっちゃチョコミントバー』、『ざるそば』、『チョコミントフラッペ』、『コーラ』…
清涼感溢れるラインナップ…はやく拾わないと温まっちゃうやつ…



>「…………チッ」


  チラッ
    「…」

イカレ野郎は君の足元から転がってくる『スゴイカップ』を見て…



      
「……『チョコミント』が足蹴にされたァァーーッ!!」


「あっゴメンゴメン『チョコミント』だったのかぁ☆
 土みてーな味するから地面だと思って間違って蹴っちゃったぁ☆
              …とでも言いたいんだろ えーッ!?」

「チクショーあっちいし!『袋』は破れるし!」
「『チョコミント』は世間から理不尽な迫害を受けているし!」


  「…ぬぐああああッ!」

            バッッ!

なにやら宙に向かって吠えだした…ひとまずは、怒りは花菱のほうを向いていないようだ。
単純に認識してないのかもしれない…今のところは。

イカレ野郎は前と似たような格好だ…白Tにジーンズ、サンダル。『マイハンドル』を腕に引っ掛け…
…白Tに紛れて見えにくいが…携えているのは『破れたビニール袋』か?

735花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/08/23(日) 17:42:33
>>734

(コ、コイツ……!
 分かっちゃいたが、
 相変わらず『斜め上』の方向にブッ飛んでやがる……!)

(どうも『暑さ』のせいだけじゃない気がするけどよォ……)

「………………」

      ズギュンッ

少しの間、無言で狂乱する姿を見つめる。
そして、右手に『スウィート・ダーウィン』を発現した。
以前に出くわした時に見せた『回転式拳銃のスタンド』だ。

       ガァァァァァ――――――ンッ!!

腕を上げ、躊躇する事なく『発砲』する。
狙いは野郎の『足元』。
放ったのは『実弾』ではないため『無害』とはいえ、
流石に当てる気はない。
『銃声』で威嚇して、とりあえず静かにさせようという魂胆だ。
前回の仕返しという意味もあるが。

「オイ、落ち着けよ……。
 そうやって目の前で騒がれると、
 余計に暑苦しくなっちまうからよォ……」

「……心底どうでもいいんだけどよ、
 やたらと『チョコミント』ばっか買ってやがんなァ」

そう言いながら、『スゴイカップ チョコミント味』を拾う。
辺りを見渡すと、
『捨てられたビニール袋』が落ちていたので、
それに入れておく。
残りのヤツもさっさと助けてやらないと、
あっという間に原型を留めない姿に変わり果てるだろう。
放っておきたい所だが、既に関わってしまった。
『成り行き』上、他のも拾ってやる事にする。

736俵藤 道標『ボディ・アンド・ソウル』:2020/08/23(日) 20:09:44
>>735


 >      ガァァァァァ――――――ンッ!!


  ビクゥッッッッッッッッッ


…突如響いた銃声と、地面に刻まれた弾痕に硬直。


「…………」
 「…あっお久しぶりです…」


…気付いた。

「いやァー…暑苦しいトコお見せしちゃって…
 あっアザッス…手間もかけさせちゃってすんません…
 …あ 転がってる缶コーヒーもそうです あのガードレールの裏の奴 
 そうそうソレソレ……(…チャカ持ちに近づくの怖い…)」


イカレ野郎は花菱から微妙に距離を取っている…



>「……心底どうでもいいんだけどよ、
  やたらと『チョコミント』ばっか買ってやがんなァ」

「ハハハ俺用の訳ないじゃないですか
 こんな沢山食べたら口ん中歯磨き粉になっちゃうっすよ気分悪い…」

「差し入れ用っす チョコミント」
「『何かアイス買ってきて』ってお得意先に言われて…
 とりあえず布教すっかなって…チョコミント。」


「って理由で…こんのホットな中で荷物抱えて歩いてる訳です
 っっってのにさぁ――――…」


 ミチミチミチ…
   ベリベリベリベリ

「…それもっこれもっ」
「この『ビニール袋』の野郎がァッ」
「金ェ出して買ってるのにッ破れやがるからッッ」

まだ微妙に怒りが残っているようで、手元の破れたビニール袋を更に引き千切っている…


というか…小さい…
…いやヒトとしての器の話じゃなくて…そりゃ俵藤の器はSサイズだろうが…
…『破れたビニール袋』が…モノの量に対して明らかにSサイズ…

737花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/08/23(日) 21:09:57
>>736

「オメー、そりゃアレだろ……『袋のサイズ』が……」

言いかけて止めた。
わざわざ口出しする事でもない。
そもそも、言っても無駄なような気もする。

「……ま、いいか。
 ビニール袋が信用できねえってんなら、
 『エコバッグ』でも使ったらどうだ?」

「いやいや、そうじゃねえな。
 イラついてる気持ちは分かるけどよ、
 さっさと『残り』を拾った方がいいんじゃねえか?」

「こうしてる間にも、
 サウナに入ってるみてえにジリジリ焼かれてんだからよォ。
 差し入れる前に溶けてなくなっちまうぜ」

「――ホレ、コレでいいだろ」

片手に『拳銃』を持ったまま俵藤に近付き、
商品を詰めた袋を差し出す。
残っているのは、俵藤の後ろに転がっているものだけだ。
地面からの熱を考えると、恐らく早く助けた方がいいだろう。

738俵藤 道標『ボディ・アンド・ソウル』:2020/08/23(日) 22:50:51
>>737

>『エコバッグ』でも使ったらどうだ?

「え…嫌だ…」
「手荷物増えたら体が『重く』なるじゃないですか…」
「重くなったら遅くなるんですよ?1グラムであろーと妥協したくないんで…」

       ヒョイ
後方のざるそばを後ろ手で拾う…
目の前のチャカ持ちさんが未だにチャカ持ってるし…なんとなく目は離さないようにしとこう…
…暴発とか怖いしな…


>「――ホレ、コレでいいだろ」

「あざっす…」

      ガサ…

手を伸ばしに伸ばして、指先で引っ掛けるように受け取る…
ざるそばをきったねえ袋に突っ込みつつ…

「…あのォ…その『拳銃』…しまってくれません?怖いんで…」

「なんで『拳銃』そんなブラブラさせてるんです…?…現代日本で拳銃必要な状況あります…?」
「突然誰かが襲ってくるわけでもあるまいに…ましてや俺が…こんなにひ弱そうなのに…」

  ゴソゴソ…

「ウーン…まいっか…命乞いというか、お礼というか、お詫びというか…これあげます」

        ベチャァ…

差し出されたのは『チョコミントバー』…何となく曲がっている…元気のないシルエット…

739花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/08/23(日) 23:34:26
>>738

「好きにすりゃいいさ。
 人様に迷惑掛けてなきゃ問題ねえからよ」

「――――あぁ、『コレ』か?わりィな。忘れてたぜ」

(『襲ってくる訳でもない』だァ?
 車で突っ込んでくるヤツの言うセリフかよ……)

             フ ッ

次の瞬間、『拳銃のスタンド』は煙のように消え去った。
俵藤の言動に気を取られて解除するのを忘れていたようだ。

「『使い道』ってのは色々あるもんだ。
 目の前に『イカれた野郎が現れた時』なんかには役に立つ」

『誰』とは言わないが。
もっとも、『スウィート・ダーウィン』の最大の用途は、
自分の頭をブチ抜く事にある。
それを考えれば、案外コイツと同類なのかもしれない。

「ありがとよ――って、オイ……。
 コレ、だいぶ形が崩れてねえか?」

「まぁ…………『一応』受け取っとくけどよォ…………」

微妙な気分で、元気のない『チョコミントバー』を受け取った。
あまり食いたいとは思えないが、
このまま無駄にしてしまうのも勿体無い。

「そういや『差し入れ』に行く途中なんだろ?
 早いトコ行った方がいいぜ」

俵藤が向かっていた方向に視線を動かす。
渡された『チョコミントバー』が溶けてしまう懸念もあるが、
このクソ暑い中で立ち話を続けるのもキツイものがある。

740俵藤 道標『ボディ・アンド・ソウル』:2020/08/24(月) 01:48:28
>>739

「まぁこのあっちい中…突然暴れだす奴もいますよね…」
「この前自販機に当たってたアンタみたいに…フフフッ」

俵藤のスタンド、『ボディ・アンド・ソウル』は、
『尽きず、余らず、パワフルで軽い、完全な燃料』を俵藤が『道具屋』に求めた結果の力だ…

こいつの『拳銃』のヴィジョンも…
普通に頑張ってても手に入んない『なんか』を求めた結果なんだろうか…

割と興味があるが…正直今はそんな空気じゃないよな…あっちい。


>「そういや『差し入れ』に行く途中なんだろ?
  早いトコ行った方がいいぜ」

「ウス アザス」
「…あと…」

    ズイッ

花菱に近寄り、耳打ち…

      ヒソヒソ… 

 「なんかいつもアンタ変なことしてますよね
  …今日も突然地面を撃ってたし…ビックリしましたよオレぇ」
 「…お節介ながら…そういう目立つことするのやめた方がいいっすよ…変な奴に絡まれちゃう…」


純粋なお節介…花菱の周りにイカレた野郎が寄って来る理由ってそういうトコなんじゃないか?

 ザッ 
  「じゃッ」

「…あっちいわ…もういいやその辺の車で帰ろ…」
そこにあった路駐してる車に『ボディ・アンド・ソウル』を憑依させ、そいつを操縦して去る。
路駐禁止の道に停めとくヤツが悪い。

741花菱蓮華『スウィート・ダーウィン』:2020/08/24(月) 20:25:29
>>740

「ハハハッ、そりゃあ悪かったな。
 『自分の事』ってのは意外と気付きにくいもんでよォ」

(オメー、人に説教できる立場かァ?)

(……『分かってねえ』ってのは恐ろしいもんだぜ)

色々と思う所はあったが、口には出さなかった。
これから立ち去るのだろうし、わざわざ引き止める事もない。
何しろ、ただ立っているだけでも、
体力を削られるような暑さなのだ。

「『その辺の車』って、お前…………」

いくら『路駐』とはいえ、
人の車を堂々とパクッて行く姿には呆気に取られた。
普通に考えれば『犯罪』だが、
そもそも駐車している側も『犯罪』だ。
それを考えれば『どっちもどっち』――なのか?

「ま、俺も他人に説教できるような人間でもねえしよ……。
 何よりメンドくせェ……」

             ザッ

「しっかし――――
 最後の最後まで『とんでもない野郎』だったぜ……」
 
「マジにブッ飛んでやがる」

『チョコミントバー』が完全に溶けきる前に、その場を去る。
結局の所、俺がイカれてるから、
あんなのと出くわしちまったのか。
そんな事を考えかけたが――――途中で止めた。

742ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/08/24(月) 22:01:45

「ふん!」

どちらかというと湖に近い、自然が多い道端で。
金髪の女の子が飛び跳ねていた。

「うーむ……難しいのう」

743ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/08/25(火) 23:23:10
>>742

「疲れたのう……帰るか……
 骨折り損の……骨折り損のくたびれ……なんじゃったか……」

とぼとぼ去って行った。

744関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/26(水) 19:16:17

「…………」

小規模な『フリーマーケット』の一角に、
エプロンを付けた少女が席を取っている。
前髪は目の上で揃え、後ろでお団子を作った髪には、
草花を加工したようなアクセサリーが幾つか付いていた。

出品はそれと同じようなアクセサリーがいくつかと、
古着が入ったケース、料理本、調理器具など。
後ろにダンボールが数個あるが、それが在庫だろうか?


『他にも日用品あります 値段応相談』


少なくとも、『他』が充実している様子はないが…………

745百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/26(水) 19:48:38
>>744

    ザッ

しばらくして、一人の女が足を止めた。
白いパンツスーツを着た背の高い中年の女だ。
煙草を咥えているが、火は付いていない。

「古着にアクセサリー……それと料理の本に料理道具」

「フフ――何だか『家庭的』って感じがするねえ」

腰を落とし、並べられている品物を見下ろす。
少女の前で立ち止まったのは、
特に理由があっての事ではなかった。
強いて言うなら、『勘』のようなものだ。

「そっちのダンボールには『日用品』が入ってるのかい?」

ダンボール箱に視線を向けながら、少女に尋ねる。
多分、別に何でもない事なんだろう。
ただ、何となく『気になった』。

746関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/26(水) 20:03:42
>>745

「はぁい、いらっしゃいませえ」

        ペコ……

座ったままだが、頭を下げる。
かしこまり過ぎていない、とも言えるだろう。

「ふふ、どれも家庭で使ってたものですので〜。
 古くなったり、使わなくなったので売りますけど、
 まだまだ捨てるのは勿体ない物ばかりですよう」

タバコに一瞬だけ視線が移ったが、
火もつけていないなら注意する理由もないからか、
すぐに笑みを称えた目を、目に合わせた。

「あ、その箱はそうですね〜。
 ここに無いものは、そこにありますよ。
 ええと〜、何か……お探しのものとかありますか?」

「あ、無理にというわけではありませんけど〜。
 こう見えて……品揃えには自信があるんですよう」

箱の大きさは常識的なレベルだが、
果たしてどれほど『揃えられる』ものだろうか?

ともかく、少女の温和な笑みに『ウソ』はまだ無い……

747百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/26(水) 20:45:05
>>746

「いい事だと思うよ。
 使わなくなった物でも、必要な人の手に渡っていくと、
 その品物にとっても幸せなんじゃないかねぇ」

煙草を咥えているのは、ただの気休めだった。
本当なら、火を付けて煙を味わいたい所だ。
しかし、近頃は喫煙に対する風当たりが強い。
そうでなくとも、こうした場で歩き煙草は『モラル』に反する。
自分から反面教師になるつもりはない。

「いや、何か探し物があるって訳じゃあないんだけどね。
 ただ、こういう場所は掘り出し物があったりするもんだから」

「それで、こうしてブラブラ歩いてるのさ。
 『何かないか』と思ってね」

「面倒かけて悪いんだけど、
 その『箱の中』見せて貰ってもいいかい?」

「もしかすると、アタシの欲しい物があるかもしれないからさ」

少女の後ろに置かれた箱を指差す。
普通、宣伝文句というのは大きくするのが自然だ。
だが、少女は『自信がある』と言い切った。
この小さなフリーマーケットで、
そこまでの品揃えを実現出来るとは考えにくい。
彼女の掲げる『宣伝文句』がどれ程のものか、
確かめてみたくなった。

748関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/26(水) 22:18:57
>>747

「ふふ……そうかもしれませんねえ。
 少なくとも売った私と、
 買った人は幸せなのは間違いないですし」

         ニコ 〜

「それだけでも十分ですのに。
 物も幸せなら、もっといいですね〜」

そう言いながら、指差した先を振り返る。
話題の中心になりつつある『段ボール箱』だ。
過剰に膨らんでいるといった、風でもないが。

「あ、あ〜。これの中をですか?
 あのう……これはお店で言えば『倉庫』で、
 お客さまに探してもらうところじゃないんですよう」

       スッ

小さく手を出して、指先からそれを遮る。
しかしそれは自信の『虚偽』ではなく。

「期待に添えられなくてごめんなさぁい。
 『物』が何か決まってれば、探せるんですけど〜」

「例えば……『ライター』なんかも、
 とっても幅広く、扱ってますけどお……?」

品揃えの自信自体は、嘘ではないようだった……『何』だ?

749百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/26(水) 23:06:19
>>748

「ああ、気にしないでいいよ。無理にとは言わないからね」

「『ライター』も間に合ってるんだ。だから、今は結構」

軽く手を振って、少女の言葉に応じる。
『出してない』のだから、
それを見せないのも不思議ではないのかもしれない。
だが、持ってきているという事は、
『売るつもり』があるという事だ。
そうでなければ持ってこない。
はっきりとは言えないが――何か『奇妙』だった。

「さっきも言ったけどねえ、
 特に『目当ての品』ってのは無いんだよ。
 こういう場所ってのは、
 『気になる物を見かけたら買う』ってのが多いだろ?
 来る前から欲しい物が決まってるってのは、
 あんまりないんじゃないかねぇ」

「いや、別にお嬢ちゃんを責めてる訳じゃないんだよ。
 ただ、『中身』を見せて貰って、
 何か良さそうなのがあったら買おうかと思ってたもんでね」

「もし迷惑じゃなかったら、
 『どんな物が入ってるか』だけ教えてもらえないかい?
 それでピンと来るって事があるかもしれないからねえ」

口元に薄く笑みを浮かべながら、更に問い掛ける。
箱の大きさは、常識的なサイズだ。
そんなに沢山の品物が詰まっているようには見えない。
だから、『決まっていれば探せる』という言い方が気になった。
探すのに苦労するとは思えないからだ。

750関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/27(木) 09:25:50
>>749

「……『どんな物』ですか、そうですね。
 あの、ちょっと待ってくださいねえ。
 品物を揃えたのは私、自分でじゃないので」

「ええと、今日はぁ……」

細かい嘘を混ぜながら、
立ち上がって箱の中を見る。
そして漁るように手を動かすが。

「『調理器具』……が、揃ってますね〜」

百目鬼ほどの『目の効く』人間なら、
それが『手振りだけ』と見抜けるかもしれない。

「ここに置いてるもの以外でも、
 『調理器具』でしたら色々ありますよ。
 刃物は危ないので扱ってませんけど……
 ピーラーとか、ちょっとしたミキサーとか」

少なくとも『ミキサー』のような、
それなりのサイズのものが詰まっているとは思えない。

「ミキサー、便利ですよ。もうお持ちですか?
 余ったお野菜でジュースが作れて、
 おいしくてヘルシー、と〜っても経済的ですよう」

にも関わらず勧める。関には、『手段』があるからだ。

751百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/27(木) 15:01:31
>>750

「『調理器具』――――」

『倉庫』といっても、『通信販売の倉庫』ではない。
簡単に中身が分かるなら、
直接見せても大して差はないだろう。
むしろ、客に見せた選んで貰った方が、
手っ取り早く売り上げに繋げられる。
値段は『応相談』と書いてあるし、
見せない理由が見当たらない。
無茶な内容ならともかく、
『客の要望』を拒否するのは余程の事だ。

「そうだねえ……」

腕を組み、思案するように箱と少女を交互に見つめる。
買い物に悩んでいるかのようなポーズ。
だが、実際は『売り子の少女』について考えていた。
本当に調べているのか、それとも形だけかの区別はつく。
そして、これは『後者の方』だ。

「じゃあ、その『ミキサー』を見せてもらうよ」
 
「家にはなかったからね」

『嘘』だった。
いつだったか買ったのが家に置いてある。
結局あまり使う事がなく、しまったままになっているが。

「『保存容器』はあるかい?
 出来るだけ『大容量』で『ガラス製』のヤツが欲しいんだよ」

「最近、『ジュースサーバー』なんてのがあるだろ?
 『ミキサーで作ったジュース』を入れといたら、
 洒落てると思ってね」

思いついたように要望を一つ追加する。
調理器具とは少し違うが、かけ離れてもいないだろう。
『ない』と言われるかもしれないが、それはそれで構わない。
少女の動きを目で追い、一挙手一投足を観察する。
百目鬼小百合は、『白黒ハッキリしている』のが好きだ。

752関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/27(木) 21:20:45
>>751

「『ミキサー』と『容器』ですねえ!
 もちろん、どちらも『在庫』はありますよ。
 それで……おいくらくらいで買いたいですか?」

笑みを浮かべながら、『値段の相談』を持ちかける。

      ゴソ ゴソ

「実は、『何種類か』在庫があるんです〜」

箱を探る腕の動き――
ランダムではない、規則性がある。

「欲しいお値段で、それに合った品質。
 ふふ。それが一番、無駄のない買い物ですよう。
 ミキサーでしたら『2000円』〜『5000円』」
  
            ゴソ

「あ、それに追加で……
 容器の方は、『100円』からありますねえ。
 値段が決まったらお見せできますけど……」

百目鬼小百合なら観察できるだろう。
箱の中で『なにかを書いている』?

「それで……どうしますか〜?
 もちろん、買わなければタダ。
 それが一番、倹約にはなるんですけどねえ」

既に察せるはずだ。
この少女の『販売品』は……『今ここに無い』。

つまり『買うことができない』……『店ごっこ』なのか?

753百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/27(木) 22:08:06
>>752

「なるほど――――『看板通り』だ」

「随分と『品揃え』がいいんだねえ」

        フッ

少女の言葉を聞いて、笑みを浮かべる。
もし自分に娘がいたとしたら、
それ以上に年が離れているであろう少女を慈しむような表情。
その瞳の奥に、真剣さを帯びた『光』があった。

「ただねぇ、『一つだけ』いいかい?」

          ――――ドンッ

傍らに『ライトパス』を発現する。
『白百合の紋章』を肩に持つ人型のスタンド。
右手に持った『警棒』の先端で、
左手の掌を二度三度と軽く叩く。

「アタシは『品物を見ない買い物はしない』主義でね」

       シ ュ
             バ ァ
                   ッ ! !

目にも留まらぬ『超高速』でスタンドを飛ばし、
左手でダンボール箱の縁を掴んで、静かに傾ける。
こちら側に、箱の『中身』が見えるようにだ。
『ガサ入れ』って訳じゃあないが、
買う前に『商品』を見せて貰ったとしても、
バチは当たらないだろう。

754関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/27(木) 22:38:20
>>753

「はあい、大抵のニーズには応えられますよう。
 ただ、高級品……ぜいたく品については、
 デパートとかで買うのが良いと思うますけどねえ」

           ニコ〜


「……? なんでしょう〜?
 他に何か、ご入用な道具でも」

温和な笑みを浮かべて語る少女には、
悪意こそ感じられないが『何か』がある。
百目鬼がそう判断するのは、当然のこと。

「……………わっ!?」

            『パサ』

箱を傾けると、中にあった『それ』が見えた。
ノート……『帳簿』だろうか?
それから、ボールペン。
手元を照らすためか、スマートフォンも。

…………どれも、『実体』はあるようだ。
だが少女の視線は間違いなく、『ライトパス』を追った。

そして、それ以外の実体は何もない。
ミキサーも、容器も、調理器具など何もない。

「……………………あ、あのう」

          チラ

バツが悪そうに、百目鬼の様子を伺う。
それが神速のスタンドを前に遅れて来た行動。

「み、見せられはしないんですよう。
 だってその商品は、ここには『まだ』無いので……」

そして……『申し開き』にしては稚拙な、言葉が続いた。

755百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/27(木) 23:10:48
>>754

「おやおや――――」

       クッ クッ クッ

含み笑いを漏らしながら、箱の中を見た。
案の定だが『商品』はない。
客観的に見ると、
現物もなしに値段の話を持ち掛けた事になる。

「年を取ったせいか、目が悪くなったかねぇ」

    トン

「アタシの見間違いじゃなけりゃあ、
 『帳簿』と『ペン』と『電話』しかないように見えるもんでね」

       トン

「それとも、お嬢ちゃんの扱ってる品ってのは特別あつらえで、
 普通の人間には見えないような代物なのかい?」

           トン

「ところで、『まだ無い』ってのを詳しく聞きたいねえ」

               トン

「――――『いつ』来るんだい?」

                   トン

ライトパスを傍らに戻し、少女に問う。
右手の『警棒』が左手の掌を軽く叩く。
拍子を取るような動作。
悪意のなさそうな少女だが、
人は見かけだけでは判断できない。
例えば、『詐欺』に類するような可能性を疑っていた。

756関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/28(金) 00:18:36
>>755

「…………わ、私が扱ってるのは『普通の品』です。
 品揃えが豊富なだけで、市販品と同じような物で。
 やましいものを売ったりは、私、してませんよう……!」

拍を取るような動きに関しては、
さほど気にはならなかった。
ここは『人がいない』訳ではないし、
自分の前に立っている人は、一人だけだ。
スタンドによる攻撃はもちろん警戒すべきだが、
攻撃が会話の前提にはならない……そう考えられる。

「……あなたが買うなら、
 今すぐここに『出します』けど」

         スッ

「でも、仮に出すだけ出して『買ってくれない』と、
 それはもったいない……そういう『能力』なんです!」

制されないならペンと帳簿を手に取る。

「つまり、そのう、察せるかもしれませんけど、
 『在庫』は、私のスタンドで確保できるんですよ」
 
「あなたの『それ』と違って、
 こういう商売ごとにしか使えない、
 ささやかな『能力』なんですけどねえ……」

ほとんど嘘は言っていない。
関寿々芽の『ペイデイ』は無限の在庫を持ち、
商売にのみ特化している……『買う側』として。
出す、のではなく『仕入れる』……そこだけは嘘だ。

それと、『ささやか』というのは『謙遜』に過ぎない。
実際には『ペイデイ』は『絶対的』なスタンドと言える。

「だからこそ、私、こういう場所で、
 せっかくの能力を役立てようと思いましてえ……
 ほら、買った美容グッズとかを使わないままずっと、
 埃被らせてるのとか……もったいないじゃないですか」

「それと同じで……もちろん、
 人に迷惑をかけるよつな使い方もしてませんよう」

757百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/28(金) 01:10:14
>>756

「驚かして悪かったね。でもねぇ、お嬢ちゃん」

一時も目を逸らさず、少女の言葉に耳を傾ける。
それを聞き終えると、『ライトパス』が右手を持ち上げた。
『警棒』の先端で、『問題のダンボール箱』を指し示す。

「『そっちのダンボールには日用品が入ってるのかい?』って聞いたね」

「『そうですね。ここに無いものは、そこにありますよ』」

「アタシは、そう聞いたと思ったんだけどねえ」

「ま…………アンタの『能力』で出すんなら、
 『そこにある』と言えるかもしれないけどねぇ」

「だけどね、お嬢ちゃん――
 アタシは『ハッキリしてる』のが好きなんだ。
 だから、確かめさせて貰ったのさ」

「――――アタシの『この目』でね」

百目鬼小百合は『曖昧』を嫌う。
この世に存在する全てが、
『善』と『悪』の二つで割り切れると信じるほど、若くはない。
だが、『白黒つけられるに越した事はない』とも考えている。

「『人に迷惑を掛けるような遣い方はしてない』って言葉。
 それを聴けて、心底安心したよ」

『ライトパス』が消える。
実の所、完全に疑いを捨てた訳ではなかった。
『スタンドで取り寄せる商品』。
それがどんな代物かは定かではない。
しかし、内心の考えを態度には出さない。
昔であれば表れていたかもしれない。
だが、それを自然に隠せる程度には年を取っている。

「じゃ、せっかくだから何か買わせてもらうよ」

「――――この『アクセサリー』は幾らだい?」

視線を向けたのは、
料理本や調理器具と一緒に並んでいる『アクセサリー』だった。

758関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/28(金) 20:24:22
>>757

「…………いえいえ〜。
 私の方こそごめんなさい。
 騙すわけじゃないにしたって、
 怪しまれるような事をしちゃいまして」

「私、『誠実』じゃなかったかもしれないです〜」

      ペコリ

「……安心してもらえて良かったです。
 あのう……これからは、気をつけますね」

頭を下げる。
関は百目鬼より何回りも『未熟』だが、
内心と言動のギャップを隠すのは、苦手ではない。

「アクセサリーですねえ。
 これはしっかりここにありますから、
 いくら見ていただいても構いませんよう」

それに、改めて客になった相手でもあった。
献身をもって接さない理由は、どこにもない。

「市販品の中古もありますけど……
 私が自分で作ったのもあるんです〜。
 ふふ、手先に自信があるわけじゃないですけど……」

「どれでも一つ『300円』です。いかがですか〜?」

言葉通りプラ製の市販品らしきものもあったが、
多くはやはり草花を加工したような、ハンドメイド品だ。

759百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/28(金) 22:22:12
>>758

「ハハハ、謙遜しなくてもいいさ。
 アタシなんて、とにかく不器用なタチでね」

「こういう細々した手仕事は苦手なんだ。
 昔から人よりガサツなもんでねえ」

自分が、この少女と同じ年頃だった時を思い出す。
父一人子一人だったため、物心ついた時から、
一通りの家事は行っていた。
男手一つで育てられたせいか、
『大雑把』なのは今の今まで直らなかったが。

「そのアタシから見れば、十分に立派な出来だよ」

        スッ

「――――なら、『これ』を一つ頂こうかねぇ」

「『デスクの飾り』にでもさせてもらうよ。
 これっぽっちも洒落っ気のない職場でね」

「アタシが『三十年』若けりゃ、自分に使う所なんだけどねえ」

ハンドメイドらしい品を指差し、財布から『千円札』を取り出す。
それを、アクセサリーの隣に置いた。

「ちょうど細かいのがなくてね。釣り銭はあるかい?」

千円札を手に取ってみれば分かるだろう。
その下に一枚の紙がある。
『名刺』だ。

【大門総合警備保障 主任指導官 百目鬼小百合】

そのように記されていた――――。

760関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/29(土) 11:23:09
>>759

「今でも、きっとお似合いですよう!
 派手なデザインじゃないですし……
 気が向いたら、着けてもみてくださいね」

飾りだけで終わらせるのは、『もったいない』。
口に出しはしないがそのような思いはあった。

「七百円ですね、ありますよ。
 …………!
 ええと、これ、お返ししますね」

       スッ

「ふふ……お返しできる名刺も、持ってませんので〜」

名刺を先にゆっくりと返す。
この女性の名なのかは関には判断しかねたが、
警備保障・主任指導という肩書は『納得』がいく。
関からはとても遠い位置にいる、強い存在。

「お袋、紙袋でいいですか〜?
 ビニール袋もありますけど、
 これ一つ入れるには大きすぎまして……」

         ゴソ

「はあい、これ……
 できたら、長く持っててあげてくださいね〜」

小さな紙袋にそれを入れて、そっと百目鬼に手渡す。

「お買い上げ、ありがとうございました。
 またどこかでお会いしたら、よろしくお願いします〜」

                ペコ〜

お金を受け取り、品を渡す。『買い物』はおしまいだ。
関の目論見は、真の意味では果たせなかったが……これも、悪くはない。

761百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/29(土) 17:09:51
>>760

「『ソレ』はアタシのだよ」

「アタシがアンタに渡したんだ」

「貰っといておくれ」

差し出された名刺を一瞥し、紙袋と釣り銭を受け取る。
少女は、『人に迷惑を掛ける使い方はしない』と言った。
しかし、それが今後も続くとは限らない。
何らかの事情で、いつか破られてしまう可能性もある。
万一そうなった場合に、
『踏み止まる一助』にするために出したのだ。
何の意味もなく出したのではない。
だから、『受け取らない』。

「ハハハ――商売と同じで、褒めるのが上手だね」

「それじゃ、着けて帰る事にするよ」

買ったばかりの『草花のアクセサリー』を襟に付ける。
耳には、スタンドの紋章を思わせる『白百合のイヤリング』。
そちらは凛とした印象であり、
購入した品とは雰囲気が大きく異なる。

       ザッ

「――――ありがとう、お嬢ちゃん」

踵を返し、『売り場』から立ち去る。
百目鬼小百合の信条は、世の『不正』を正す事。
それが起こらなければ、『更に良い』。

762関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/29(土) 23:14:40
>>761

「あ……そうだったんですねえ。
 それじゃあお言葉に甘えて、
 大切に取っておかせていただきます〜」

           スル

『関寿々芽』は一般的に善良な部類の人間だ。
他への献身、慈愛を是とし、
小さな悪事を見逃す事はあっても、
自ら悪事を勧めるようなことはしない。

「ふふふ、やっぱりよ〜くお似合いですよう。
 お耳飾りもお似合いですし、
 きっと『モデル』が良いからなんでしょうね」

             ニコ〜

「どういたしましてえ。ではまたどこかで、お姉さん〜」

それでも――――生きる中で『ままならない』事はある。
それが訪れるとしたなら、百目鬼の姿は、足を止める理由になるだろう。

763百目鬼小百合『ライトパス』:2020/10/03(土) 21:30:09

一人、『地下アーケード』を歩いている。
大通りなどと比べると、
少々いわくありげな店が軒を連ねる事で知られていた。
そのせいか、全体的に、
いわゆる『玄人好み』の趣が強い雰囲気に包まれている。
特に何か目当ての品があったという訳ではない。
強いて言えば、定期的な『見回り』のようなものだ。

(『何もない』のが一番だけど――――)

             カキンッ
       
       シボッ

やがて立ち止まり、適当な壁に背中を預ける。
年季の入ったライターを取り出して、
咥えている煙草に火を付けた。
煙を深く吸い込みながら、それとなく近くの店を眺める。

(――――『何かない』とは限らない)

764百目鬼小百合『ライトパス』:2020/10/05(月) 20:12:51
>>763

「『便りがないのは元気な証拠』…………か」

緩やかに立ち昇る紫煙に包まれながら、
雑然とした地下街に佇む。
目の前に広がるのは、普段と何ら変わらない世界だった。
何事も起こらなければ、それが一番だ。

「そうだといいけどねえ」

しかし、『何もない』とは言い切れない。
今この瞬間にも、何処か人目につかない所で、
『何か』が起こっているのかもしれない。
それは、表面を見ただけでは分からない事だった。
この煙のように、簡単に掴む事は出来ない。
だからこそ厄介だ。

「――――ま、地道にやっていくさ」

            ザッ ザッ ザッ

765空井イエリ『ソラリス』:2020/10/09(金) 00:26:07

             ギィ…

古い『動物病院』から、少女が出てきたところだ。

「…………」

低い背丈、丸く大きいが、眠たげな目――
その右目はほぼ隠れてしまう長い前髪に、
二つ結びにした後ろ髪と、大きな毛玉の耳飾り。
ほとんど地味と言っていい容姿だったが、
澄んだ空色の瞳は周囲の目を引くものだろう。

が、それ以上に物珍しいのは手に持った『ケース』だ。
青いペット運搬用ケースの窓には、『とかげ』が顔を貼りつけていた。

766小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/10/09(金) 17:47:49
>>765

ピンっ バシッ。

ヤジ「しかし、ジョーも奮発するねぇ。5千円もして、謎比べした猫に
自動水素水生成器なんてプレゼントしようなんて。
 俺だったら鰹節でも贈るだけで済ますけどな」

「ですが、彼は色々と貴重な知識を有してます。良い作品のネタと
なるでしょうから、私としては今後の付き合いも兼ねて。
前払いと言うものですよ」

180近い背丈の、学生服を身に着けた二人の男が前から歩いてくる。
一人は茶髪で制服を着崩し、如何にも不良と言う感じに見えて
もう一人は学生服をバンカラ風に身に着け、耳には硝子玉の
アクセサリーを垂らしたピアスをしている。

茶髪の不良のほうは、硝子玉らしきものを指で真上に弾き受け止める。
 そんな遊びをしており、貴方と通り過ぎようとする間にも
そのビー玉らしきものを指で弾いて空に上がり、重力に従い下降する。
 バンカラ風に着こなす青年や、不良めいたファッションの方も
ペットにしては珍しい『とかげ』を一瞥するものの、当たり前だが
見知らぬ人物である貴方に声をかける事はなく通り過ぎようとする。
空色の瞳に関しても、不良が下心ない下手な干渉もしない。

 ズルッ

ヤジ「っ ちぃっ」

特に転ぶような段差など無かったが、不良は靴か滑ったのか『とかげ』を
見た事で足元の何かを見落としたのか体勢を軽く崩した。
手元で受け止めようとするのを失敗する。
 だが、不思議な事に『地面に落ちる事なく、ビー玉は一瞬だけ宙で停止する』
そんな奇妙な光景を視認出来たと思ったが、不良は舌打ちと共に素早く
手の平の中に硝子玉を掴み。何事もなかったかのように歩き出す

「大丈夫で?」

ヤジ「あぁ。あぶねー、あぶねー……なんも無いのに体勢崩すとか
運がないぜ」

特に、その一瞬だけ奇妙な出来事を。連れの男性も、取りこぼした不良も
気にする事なく歩みを続け貴方から離れようとする……。

767空井イエリ『ソラリス』:2020/10/09(金) 23:21:38
>>766

「……」

見上げざるを得ない長身の二人を、
一瞥する事はあってもそれ以上は無い。

「おい――――」

が、足を滑らせたのを見て手を伸ばす。
当然届かないが――――

          『ズギュ』

助ける思いが力を起こす。
『マント』を纏った人型の『ヴィジョン』が、併せて手を伸ばし。

「……」

          スッ

どうやら事なきを得たのを見て、その手は宙をさまよった。

(『なんも無い』わけじゃあない。
 『毛』だ。『犬の毛』が落ちてやがる……
 これで滑ったのか、つまずいたのかは知らねーが)

          (なんだとしても、こけなくてよかった)

何となく下げた視線に、地面に散った『抜け毛』が映った。
病院に罹りに来たペットの物だろう。意外に滑りやすくなるものだ。

768小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/10/09(金) 23:34:29
>>767

>おい――――

「え?」

ヤジ「んっ、どうしたジョー。
……って、その視線から見ると。はぁ、成程な」

バンカラマントの高校生は、貴方の『スタンド』を見て顔をしっかり
そちらへ向ける。遅れて、もう一人の不良は彼の表情や仕草から
合点がいったとばかりに頭を掻いて貴方に向き直った。

ヤジ「この街、本当多すぎるぜ。供与者の音仙さんや
他の人等も加減してくれねぇと『スタンド使い』で飽和しちまうよ」

苦々しそうに呟く不良のほうは、スタンドは見えてないようだが
スタンド使いと発する口振りから、その知識があるらしい。

「すいません、私の親友を助けてくれようと動いてくれたんですよね。
有り難う御座います。
 私は小林 丈と言います」

俺はヤジって綽名が通称ですよ、と片手を軽く上げて不良青年も
自己紹介を行った。少しだけ渇いた目をした小林と名乗る方は
軽く微笑を模って、おじきしつつ丁寧に話しかける。

「可愛らしい『ペット(とかげ)』を連れてますね。
私達の寮では、余り大きな生き物は飼えませんので、羨ましい限りです」

ヤジ「まっ、学部長さん(ディーン)が紛れ込む事もあったしな。
たまに、中等部だか知らんが自分の家のペット連れて入り込む奴も
いるし、触れ合いには困らないが」

そう、雑談を交えつつ小林は少し首を傾げ聞く。

「しかし、動物病院から出てきたとなると。余り具合が宜しくないので?
……良ければ、何か力添えを致しますが」

769空井イエリ『ソラリス』:2020/10/10(土) 00:36:53
>>768

「人が目の前でこけたらいやなことだろ? それだけさ」
       
「ご丁寧にどうも、『空井イエリ』だ。
 呼び方は好きにしていい。なんでもいい。
 それとコイツは『ファフニール』 酒類は『ヨロイトカゲ』」

             スッ

「悪いが、コイツには『ふれあい』は期待するなよ」

ゆっくりと『運搬ケース』を持ち上げる。
小さくは無いが、『竜』を冠するには手ごろなサイズだ。

「それと、心配もご無用。
 『風邪』を引いていただけらしい。
 注射を打ってもらって、随分楽になったみたいだ。
 オレにはこいつの苦しみは分からないけどさ……」

ケースの窓を少しだけ覗き込む。
それから、抱きこむようにして手元に戻した。

「それより――――今の口ぶり、
 『ソラリス』が見えるやつは初めて会った」

                   スッ

「『霊感』のある子にも、まるで見えなかったんだ。
 今までは、適当言ってたのかな? だとしたら、それも、いやなことだぜ」

770空井イエリ『ソラリス』:2020/10/10(土) 15:05:39
>>769(誤字)
>それとコイツは『ファフニール』 酒類は『ヨロイトカゲ』
×酒類
〇種類

771小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/10/10(土) 20:34:04
>>769(レス遅れ失礼しました)

「『ファフニール』……なるほど、エッダやヴォルスンガ サガですが」

ヤジ「何の伝説の話よ?」

「北欧神話ですよ。そして、『ソラリス』
SF小説の題ですかね? 映画にも同じ名前がありますが。
 私は、その霊感のある知人を知りませんので確証ありませんが。
貴方や私の発現しているのはスタンドで、精神の具現化などですから
霊的なものとは異なりますし。その知人が嘘八百を並べ立ててると
考えるのも早計かも知れませんがね」

ヤジ「霊、ね。俺にはスタンドも見えないし霊的な現象も
まだ立ち会った事は無いから。霊感とか霊障って言うのは
あんまり強く否定も肯定も出来ないな。
あっ、ジョーの能力がどう言ったのか知りたそうだろ?
 こいつさ」 ピンッ

不良のヤジと名乗るほうが、先程掴み損ねていた『硝子玉』を
貴方へ弾く。受け止めるまでもなく、それは『宙で静止する』

小林「『リヴィング・イン・モーメント』と名付けられています。
液体の中にブリキの金魚が見えると思いますが、それが私のスタンドの
真の姿でして。能力は液体をこう言う風に丸い形で包ませて
市販で購入可能なドローン程度に動かせる」

まぁ、そんな秘密裏に偵察などに便利な。非力な力ですよと微笑む。

772空井イエリ『ソラリス』:2020/10/10(土) 22:18:53
>>771

「見ず知らずのおれの友達を庇ってくれるのか?
 おまえはきっと、すっげーいいやつなんだな」

口元を僅かに上げるようにして、笑みを浮かべた。

「それに、『詳しい』じゃねーか。
 そう、『北欧神話』から取った名前だよ。 
 もちろん『ワーグナー』の方じゃねー」
 
「あいにく、おれはSFは畑違いだし、
 そっちを名付けたのはおれじゃねーけど」

どちらかといえば『小林』に興味を惹かれた。
知性と教養、そして『ファンタジー』を持つ人間。
その『儚い』力を聞き、ごく小さく頷く。

「なるほどね、水属性ってわけだ。
 おれの『ソラリス』ともかなり違う。おもしれーな。
 ぱねーファンタジックで、すげーロマンチックだ。
 それに……おまえたちは、口ぶりからするにこの、
 スタンド、っていうのに詳しいんじゃねーか?」

「『飽和』すると言ってた。
 相当『踏み込んだ』とこまで知ってるんだ。
 おれはうれしいよ、『異世界転生』した気分だ。
 親切ないいやつで、事情通に、いきなり会えるなんて」

鈴の鳴るような声に、どこかぶっきらぼうな口調。 
不思議な取り合わせで所感を述べつつ、話を催促する。

773小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/10/10(土) 22:29:08
>>772

「まぁ、色々と経験はしたと思いますね。
例えば・・・」

ヤジ「あー、ちょっと待ってや姐さん」

親友? と首を向ける小林に。ヤジは別に敵意など無くも
少しばかり眉を眉間に寄らせる調子で呟く。

ヤジ「別に無償で話すのも良いんだが。
俺達が今まで経験してきたもんってさ、ただで雑談の中で
消費させるのも可笑しなもんだと思わないか? ジョー」

「何がおっしゃりたいのか、少し理解が追い付きませんが……」

ヤジ「大した事じゃねぇよ。イエリさんだったか?
別に話しはしてもいいけどさ。ちょいとはそっちの事も聞かせてくれよ。
例えば、だ」

その『ソラリス』って奴が何が出来るかとかさ。

小林の相方は、そう提案をする。
自分達の『スタンド』に対する情報を提供するのは吝かでは無いが
その代わりに貴方の能力など出来れば交換で教えてくれと……。

774空井イエリ『ソラリス』:2020/10/10(土) 23:43:28
>>773

「なるほど、完全に妥当だぜ。
 『スタンド』の世界も、人間社会なんだな」

       スゥ ―――

「いやになるよ。でも、すっげー当たり前のことだとも思う」

                『キュイン』

ゆっくりと動く手が、『マント』に潜る。
文字通り、海に手を沈めるように。
そこから拾い上げるのは、『小瓶』だ。

「『ソラリス』は、『小瓶』を出せる。
 といってもおまえには見えねーだろうが、
 あとで親友から教えて貰ってくれ」

            クル

「『いいやつ』に免じてもうちょっと種明かしをしとくぜ」

瓶をひっくり返すが、『蓋』がある。
透明の中身は偏りはしても、こぼれはしない。

「この小瓶の中身は『エーテル』だ。
 はんぱねーくらいさっさと『揮発』しちまう、                          
 『天に還ろうとする物質』――――だから『エーテル』」

「ちょーエモいネーミングセンスだぜ。『科学者』もロマンチストだよな」

と、そこで話を止める。『対価』は支払った――――と言わんばかりに。

775小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/10/11(日) 00:02:50
>>774

「……『エーテル』」

その瞬間、小林は目を細めた。
 別に、その能力が何か過去の仇敵なるスタンド使いを想起したとかで無い。
ただ『液体』のスタンド使い。それも、能力で産み出した『液体』となると
普通に交流するのとは叉、少し違って来る。

(……瓶から零せば、話の通り直ぐ揮発するであろうスタンドの液体。
ただし『リヴィング・イン・モーメント』で『水槽』に収めれば
暫くは保つだろう。
――果たして、私の『能力』だと、何処まで他者のスタンドの液体に作用するんだ?)

今までスタンドの液体を操るスタンド使いと巡り会った事は無い。
アリーナで戦った『エクサーツ』は、海水を放出するスタンド使いだったが。
あれはスタンドのヴィジョンの口と、現実に存在する深海をリンクさせる
能力だからして、スタンドで形成された液体では無い。

「成程、ご説明有り難う御座います。
それでは、私は自身が体験した……『怪盗団』の話をしますか」

「それじゃあ、俺は『この街にいた犯罪組織と自治組織』についてな」

小林は『パストラーレの収穫者』(※【ミ】『コメットテイル幸福奇譚』)
で起きた、実名は伏せつつ温泉旅館での怪盗団とアイドルの首飾りを
巡っての対決を語る……。

そしてヤジは『アリーナ』と『エクリプス』についての簡易的な説明を
イエリに対して行った。

「空井さん、ほんの短い時間で悪用は決してしないと誓います。
その『エーテル』ですが、私の『リヴィング・イン・モーメント』だと
恐らく『水槽』の中に入れられると思います。
多分、そちらは人型だし能力の産物はそれ程長い距離で発現出来ないと
思いますが。私の『水槽』なら、その能力の射程外でも存在させる事が
可能かも知れないんです。
 そう言った実験に協力出来ないでしょうか?」

話の区切りが良い時、親友(ヤジ)が話し始めて少し自分が自由に
行動出来る時間のタイミングで、そう切り出す。

(※『エーテル』を『リヴィング・イン・モーメント』で発現する
許可を下ろして頂けましたら、その実験の結果は音仙氏に質疑応答を
してから、こちらに投下させて頂きたいと思います)

776空井イエリ『ソラリス』:2020/10/11(日) 01:06:48
>>775

「なるほど……すげー情報量で噛み砕けない。
 『個人的体験』の方が興味はあるけど、
 『世界観』が掴めたのが、おれはうれしいよ」

話の内容はあまりに『多い』。
エビで鯛を釣ったような心地だ。
『怪盗団』の話については、
伏せられた部分が多く『有用』でないが、
『興味の湧くファンタジー』ではあった。

「つまりその『アリーナ』がいる以上、
 ちょー強い魔法が使えても、
 その魔法使いの天下にはならないんだ。
 『エクリプス』ってやつらがそうなったように、
 『そいつらの天下』を揺るがせないから」

「つまんねーけどさ、そういうのが無いと、ぜってー困るんだ」

『魔法の世界』さえ『秩序』が勝っている、という事だ。
『現実』と変わらない……『いやになる』が、『そうでないと回らない』。

「それでさ」

「悪いと思うんだけど、実験に付き合う気はしない。
 おれがおまえを嫌いなんじゃなくって、
『ファフニール』が家に帰りたい、餌が食べたいって」
 
          カサッ カサッ

              「おれも、お昼まだ食べてないんだ」
 
ケースの中には『病身』のペットがいる。
彼らと話すのは有意義だが、そろそろ家に、帰る必要があった。

777小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/10/11(日) 18:32:53
>>776

ヤジ「そんじゃあ、俺達と連絡先だけでも交換してくださいよっ
美人の姐さんと何時でも話せるだけでも役得ってね!」

「茶化したノリは君の悪い癖ですよ。親友
・・・・・・ま、実際。強い魔法も使い手次第なんですがね。
小指程度の針を自在に操れるだけでも、恐ろしい暗殺の手段になる」

少なくとも、小林はそう言った手合いの使い手には幸運にも
出会った事はない。

・・・・・・いや、もしかすれば記憶の欠落の中にはあるのかも知れないが。

「それでは   また」

連絡を交換したかどうかは、イエリ次第だ。
 二人の星を追う『ジョジョ』は貴方と逆の道のりを歩いていく・・・。

778空井イエリ『ソラリス』:2020/10/11(日) 21:46:27
>>777

「いいぜ、マジに願ったりだ。
 ひまなときなら『実験』に付き合ってもかまわねー。
 本の話をするのも、すげーいいかもしれねーしな」

              スッ

「じゃあ、また。
 足元には気を付けて、無事に帰ってくれ」

その場を立ち去る。
『魔法』のある世界へ踏み出し、歩いていく一歩目を。

779ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/10/23(金) 22:10:39
自然公園と商店街の間。
街はずれの、雑木林に面した道路。

「ふ〜ん」

金髪の子供が地面にしゃがみこんでいた。

780ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2020/10/24(土) 14:43:18
>>779

「いっぱい採れたのう」

両手にどんぐりを抱えて帰って行った。

781龍美丹『チーロン』:2020/12/03(木) 21:33:00
海、その日は晴れていた。
空は高く、どこまでも青い。
海の色を空に移したのか、空の色を海に移したのか。
一人、背の高い少女が立つ。

「うう……さぶ」

ぶるり、と背を震わせているものの立ち去る様子はなく。
むしろ、その足はゆっくりと海の方に向かって進んでいた。

「海、広いよなぁ」

ざくり、ざくり。
一歩一歩海に向かう。

782龍美丹『チーロン』:2020/12/06(日) 20:34:55
>>781

ちゃぷん

ぱちゃ、ぱちゃ、ぱちゃ

ぱちゃ、ぱちゃ

ぱちゃ

…………………………とぷん

783百目鬼小百合『ライトパス』:2020/12/13(日) 18:14:48

「さて、と…………久しぶりにやるとするか」

カラオケ・ゲームセンター・ボウリング場などが入った、
『総合アミューズメント施設』。
その中にある『ビリヤード場』でキューを握り、
テーブルの前に立つ。
白いキューボールに狙いを定め、
その奥にある九つのボールに向かって、
『ブレイクショット』を行う。

     ガコンッ
            
             ――――バラバラバラァッ

最初の一発で、テーブル上にカラーボールが散らばる。
その配置を目で確かめ、
白球越しに『一番のボール』を狙い打つ。
常に正確なショットを行わなければならないビリヤードは、
大きな集中力を必要とする競技だ。
ボールを上手くポケットに落とすだけではなく、
その次のショットを行う際に、
『どの位置に白球があれば都合がいいか』まで、
考えに入れなければならない。
だからこそ、『精神力の鍛錬』にも向いている。

          カコンッ

突かれた白球が転がり、
一番ボールをポケットに落とし入れる。
次だ。
テーブルの周りを歩き、
『二番のボール』を狙いやすい位置を探す。

「………………」

               カコンッ

やがて立ち止まり、二度目のショットを行う。
しかし、狙いが外れた。
白球は二番ボールに命中したものの、
ポケットに収まるまでには至らなかった。

「――――ははぁ、やっぱりナマってるねぇ」

784百目鬼小百合『ライトパス』:2020/12/17(木) 16:42:58
>>783

「さてと…………ここが肝心要の勝負所だ」

      スッ
            
            カコンッ

呼吸を整え、最後のショットを行う。
キューの先が白球を突き、白球が九番ボールを突く。
九番ボールはテーブルを転がり、
吸い込まれるようにポケットに落ちていった。

「――――ま、こんなもんかねぇ」

785甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/24(木) 16:20:03
「クリスマスが今年もやってくる(絶望)
 楽しかった出来事を消し去る様に」

ハイライトの無い目でクリスマスソングを歌う

今年もやってきたクリスマスだが…
今年は例の病気の影響で悉く中止だ
この状況下で多数が集まって騒ごうものなら非難は避けられないだろう

ところで…
ここは一体どこ…?私は何故こんな所に?私は一体何をやっているのか…?

786度会一生『一般人』:2020/12/24(木) 18:32:05
>>785

ここは『夜の公園』だ。
辺りには人はおらず、静まり返っている。
何故ここにいるのかは、甘城本人が知っている事だろう。

        コツッ

「――――君、大丈夫か?」

死んだ魚のような目をした少女に、一人の男が声を掛けた。
フードを被っており、暗さゆえに顔はよく見えないが、
年齢は二十台程らしい。
片手には、銀の握りが付いた『杖』を持っている。

「見た所、顔色が良くないようだが……」

どうやら、生気のない様子を心配して呼び掛けたようだ。

787甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/24(木) 18:48:47
>>786
「あ…」

人がいるとは思っていなかった
独り言を聞かれているとは恥ずかしい

「どうも、別に大丈夫です…」

そう言いながら、その目は死んでいる

暗い夜の公園に見知らぬ男性
心配して声をかけてくれたとはいえ、やや警戒の姿勢をとる

788度会一生『一般人』:2020/12/24(木) 19:40:14
>>787

「なら、いいんだ。急に声を掛けて悪かった」

男の声は落ち着いていた。
二人の間には数メートルの距離がある。
すぐに何かされるような事は無いだろうし、
もしされたとしても対応できるだろう。

「そういえば、今は『あの時期』か。
 さっき君が歌っていたんで思い出したんだ」

「もっとも、予定が無い人間にとっては単なる『平日』。
 僕なんかもそうさ」

       コツッ

「だから、ほんのちょっと憂鬱ではあるかな」

「――君ほどじゃあないが」

先程までの雰囲気から、大体の予想はついた。
気持ちは分からないでもない。

789甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/24(木) 20:13:13
>>788
「あぁ、貴方もですか…」

自分と同じ『ぼっち』か…
勝手にそう解釈した
もっとも、今日の甘城は呼ばれていたのだ、パーティに、珍しく
しかし土壇場になってパーティは中止、その帰りで今ここにいるわけだ

「……よかったらこれ、食べます…?」

甘城の手に持っている袋に入ったクッキー、パーティの手土産に持っていくつもりだったのだろう
今会ったばかりの男にあげるとはどういう気まぐれだろうか

790度会一生『一般人』:2020/12/24(木) 20:30:11
>>789

「はは――――まぁ、そんな所かな」

特別な予定は無かった。
『いつも通り』の平日だ。
今も、普段利用しているコンビニに向かう途中だったのだ。

「見ず知らずの相手から、
 お菓子を頂戴するとは思わなかった」

      コツッ

「なら、一緒に齧ろうじゃないか。
 一人で食べるのも寂しくてね。
 今夜、こんな場所に居合わせたのも、
 何かの縁かもしれない」

           コツッ

「君が嫌じゃなければ、だけど」

黒檀製の杖をつきながら、少女に歩み寄る。
一緒に食べる事を提案したのは、『念の為』でもあった。
まさかとは思うが、何か入って無いとも限らない。
少女とはいえ、見知らぬ相手を警戒する意識は、
こちらにもある。
子供でも年寄りでも、何かしようと思えば出来るからだ。

791甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/24(木) 20:39:45
>>790
「じゃあ一緒に…」

袋を開け、初対面の相手にクッキーを渡す
人の姿を象ったジンジャークッキーという奴だ
中々上手に出来ているが手作り感が感じられる

「いただきます」

パクッとクッキーを齧る甘城
その顔には何の感情も見られず、暗くてよく見えないのもあって
美味いのか不味いのか判断し辛い

792度会一生『一般人』:2020/12/24(木) 20:51:42
>>791

「……これは君が作ったのかな。
 僕は素人だけど、なかなか上手く出来てると思うよ」

「もし『市販』だったら、
 今の台詞は聞かなかった事にして欲しい」

      スッ

「恥ずかしいからね」

クッキーを受け取るために、空いている方の手を差し出す。
近くで見ると、その手に『傷』が目立つ事が分かった。
杖を握っている手にも、やはり傷が多い。
それらは新しいものではなく、古いものらしかった。
治ってはいるが、『跡』が残っているようだ。

「――じゃあ、ご馳走になるよ」

        ガリッ

少女がクッキーを齧るのを確認してから、
クッキーを口に入れる。
美味いのか、それとも不味いのか。
『味』は自分の舌で確かめるしかないだろう。

793甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/24(木) 21:06:09
>>792
「…ありがとうございます
 『見た目』だけは自信ありますから…」

その言葉から、甘城の手作りで間違いなさそうだという事が分かる
『見た目』だけという言葉が引っかかるが

その痛々しい傷跡を見て、一瞬顔を顰めるが、何も言わない
何かあったであろう事は容易に想像はつくが
一々それを訪ねるのが失礼だろう

ガリッとクッキーを齧り味を確認
食感は良し、サックリとした普通の食感
甘さは、どこにでもある普通の素朴なクッキー
仄かなショウガの味がアクセントになり
そして……それら全てを掻き消す強烈な辛さ
辛い!とてつもなく辛い!!思わずむせ返る尋常ではない辛さ!!!
これは……唐辛子だ!それもこの世で最も辛いとされる、ブート・ジョロキア…!

794度会一生『一般人』:2020/12/25(金) 12:55:10
>>793

(『見た目』は至って普通だが、『味』も特には…………)

「――――ゲホッ!ゲホッ!」

不意に訪れた猛烈な辛さに、思わず大きく咳き込んだ。
少女の反応を確かめてから口にしたのだが、
作った本人ならば、舌が慣れていてもおかしくは無い。
あるいは、『味見』をしていないのかもしれないが。

「…………いや、失礼。
 見た目と味がだいぶ違ってたんで、不意を突かれたんだ」

「でも、お陰で体は温まってきたよ」

真冬だというのに、額から汗が滲む。
おもむろに上着のフードを取り、手の甲で額を拭うと、
男の素顔が露わになる。
顔の作り自体は人が良さそうで、表情も穏やかだが、
手と同じように幾つもの『傷跡』が刻まれていた。

「ええと……これは『ジンジャークッキー』でいいのかな?
 何というか、僕の知ってるものとは、
 かなり違う味だったんだ」

食べかけのクッキーを摘んだ手を持ち上げて尋ねる。
『これ』をどうするかは、ちょっとした問題だった。
流石に食べる気にはならないが、
今更いらないとも言えないし、捨てるのは失礼だ。

「もし違ってたら、訂正して欲しくてね」

『処分の仕方』を考えていた時、『仲間』の事を思い出した。
全体が真っ赤になるまでタバスコを掛けたカルボナーラを、
平気な顔で食う奴だ。
あいつなら気に入るかもしれない。

795甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/25(金) 14:50:59
>>794
「あぁ、やっぱり」

モグモグとクッキーを食べながら言う
『やっぱり』

「『ジンジャークッキー』で間違いないですよ
 まぁその、何か余計な物入れてしまった気がするけど…」

決して料理の腕が悪いわけではない、余計な物を入れてしまう癖があるようだが

「無理して食べなくていいですよ、私が食べますから…」

食べかけのクッキーを寄越せというように手を差し出す

796度会一生『一般人』:2020/12/25(金) 19:12:15
>>795

『やっぱり』という事は自覚があるのか。
それを人に食わせるのはどうかと思うが、
もらった物に文句を付けるのも憚られる。
考えた結果、敢えて口出しはしない事にした。

「いや、せっかくだしもらっておくよ。
 差し支えなければ、その袋ごと」

「辛い物が好きな知り合いがいてね。
 そいつが気に入るかもしれない」

逆に、袋ごとクッキーを受け取ろうと手を伸ばす。
もしかすると、自分のように誰かが食べてしまう可能性もある。
だから、ここで回収して、
『犠牲者』を少なくしようという意図もあった。

797甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/25(金) 19:28:50
>>796
「はぁ、そちらが宜しいんなら…」

伸ばされた手にクッキーの袋が手渡される
これで犠牲者は最小限に済むだろう、英雄的行動だ

「あっ、そうだ(唐突)
 よかったら口直しにでもどうぞ」

そう言うと、甘城の手にいつの間にかあった一切れのアップルパイを度会に差し出す
どうでもいい豆知識だが、アメリカのクリスマスはフロンティアスピリッツを思い出すためにアップルパイを食するという

「これはまぁ、私が作ったものじゃないので…」

大丈夫だろうか?

798度会一生『一般人』:2020/12/25(金) 19:59:50
>>797

「…………これは?」

暗いとはいえ、品物を手渡せる距離だ。
何か持っていれば気付くだろう。
途中で取り出したなら尚更だ。
しかし、この場合は、そのどちらにも該当しない。
何も持ってはおらず、途中で出した訳でも無い。

「ははは、それを聞いて安心したよ」

(…………『スタンド』)

「いや、冗談さ。ただ、君のお手製は『刺激』が強くてね」

(『スタンド使い』――――『ある意味危険』だが、
 『料理が下手な能力』というのも考えにくい)

「ありがとう。後で食べるよ」

(『能力の産物』らしい物を口にする気にはならないが)

アップルパイを受け取り、袋の中に入れる。
いくらフロンティアスピリッツの象徴とはいえ、
露骨に得体の知れない物を食べるつもりは無い。
『本体』から離れた後も残っていれば、
後から調べてみるのもいいだろう。

「さて、そろそろ行くよ。夜は物騒だから、君も気を付けて」

フードを被り直し、別れの挨拶を告げる。
この夜の一幕は、そろそろ終わりになりそうだ。

799甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2020/12/25(金) 20:14:52
>>798
受け取ったアップルパイを袋の中に入れる度会
『ビター・スウィート・シンフォニー』の作り出すスイーツは5分以内に食べなければ消滅する
本体から遠く離れても消滅する
そのスイーツは、プロのパティシエが作った物と同等の非常に美味いスイーツであり、デメリットは体重が5㎏増量するだけだ
警戒して食べなかったのは正解か、惜しい事をしたのか

「じゃあ、私もこれで…」

度会に背を向け、その場を後にする甘城

「Look to the sky, way up on high
There in the night stars are now right」

何やら鼻歌を歌いながら帰っていった

800度会一生『一般人』:2020/12/26(土) 14:34:33
>>799

(………………)

コンビニを出て袋の中を確認すると、
『アップルパイ』が消失していた。
『射程外』になったせいか『解除』されたかは分からないが、
やはり『スタンド』が生み出した代物だったようだ。
調べる事は出来なかったが、
あの少女が『スタンド使い』である事は確定した。

(『アップルパイを出す能力』――
 いや、それだと範囲が狭すぎる……)

(『菓子類全般』…………か?)

       スッ

スマホを取り出し、LINEを起動する。
グループトークだ。
含まれている参加者は『御影憂』・『桐谷研吾』。

【一人見つけた】

           コツッ

杖をつきながら、夜の道を歩き出す。

801甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/01/05(火) 16:07:22
映画館

スマホ『という事があって、今日は来れなくなっちゃった
    またね、チャオ♪』

アナウンス「まもなく、みなごろしバッヂの上映が始まります」

「…はぁ…」

というわけで、タイトルから地雷臭の漂う映画を一人で見るハメになってしまった

802甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/01/05(火) 20:32:24
「何だか凄い映画だったなぁ…
 主演のエメラルドゴキブリバチの熱演が特に凄かった」

おわり

803斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2021/01/30(土) 01:09:50
冬の巷に釣竿を持った少年が1人。

 「……いや寒っ 偶にくる潮風クソ寒いっていうか『痛い』!」

三毛とキジ虎を膝にハチワレ猫を懐炉代わりにジャケットの内側に入れて
凪いだ海面に釣り糸を垂らす、成果は今の所ボウズだ。

それでも3匹程一緒にいるとほんのり温かい、首元の赤いスカーフを揺らしながら
脚の痺れと引き換えに、古いラジオ放送を聞き、乾いた青空の下でのんびりと過ごす。

 「…………。」

うつらうつらとしていると、釣竿の先が微かに動き始めた……

804斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2021/01/31(日) 00:36:59
>>803

 「……おっと?」

引き上げた針の先はぷっつり切れて無くなっていた
 
 「釣りってまあ、こういうのだよな……。」

猫を懐やら脚やらから降ろして
釣り用具をしまい、立ち上がる。

 「お前たちも来るか?コンビニで肉まん買って帰ろうぜ。」

尻尾をぴんと立たせた猫達を連れてその場を去った。

805『Welcome to the Party』:2021/02/01(月) 19:57:17

『警察官』の『桐谷研吾』は『歓楽街』で『杖の男』に出会った。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1607077443/24
これは、それから『数日後』の出来事だった。

その日、『桐谷研吾』は『Luna-Polis』を訪れていた。
『Luna-Polis』は閑静な住宅街の一角に佇む、
オートロック式のマンションだった。
エントランスを抜けた桐谷は、エレベーターに乗り込んだ。
ポケットから『紙片』を取り出し、部屋の番号を確認する。
数日前に、『杖を持った男』から渡されたものだ。

「…………『ここ』か」

エレベーターを降りた桐谷は、目的の部屋の前に立った。
ドアの上にはカメラが取り付けられている。
それを確認してから、桐谷はインターホンを鳴らした。

    ――――ガチャッ

まもなく開錠され、ドアが開いた。
しかし、そこには誰もいない。
ただ『薄暗い空間』があるだけだ。
警戒しながら、桐谷は部屋の中に足を踏み入れた。
昼間だというのに分厚いカーテンが閉め切られ、
間接照明の仄かな明かりだけが室内を照らしている。

「――――ようこそ、『桐谷巡査』」

部屋の奥から、男の声が聞こえた。
歓楽街で出会った『杖の男』の声だ。
そちら側へ歩いていくと、椅子に座っている男の姿が見えた。
机の上には、数台のパソコンが設置されている。
壁に掛かったコルクボードには、『星見町の地図』が貼られ、
何かの位置を示すらしい『ピン』が幾つも刺さっていた。

「私は『度会一生』。そう呼んでくれ」

「それで、なぜ僕を?」

「単刀直入に言おう。
 今、我々は『協力者』を必要としている。
 ただし、誰でもいい訳では無い。『条件』がある」

「第一に『スタンド使いではない人間』である事。
 そして、『スタンドに立ち向かう意思を持つ』事だ。
 君は、その『条件』に合致すると判断した。
 だから、ここに来てもらった」

「……『スタンド』?」

「君の言う『超能力』は『スタンド』と呼ばれている。
 それを扱える者を『スタンド使い』と呼ぶ。
 他にも教える事は多いが、一度に話しても混乱するだろう」

「あなたは?『スタンド使い』なのか?」

「いいや……『私は違う』」

        ズズズズズ………………

度会が静かに片手を上げると、闇の中から『人影』が現れた。
白いワンピースを着た髪の長い女だ。
前髪が顔の大部分を覆っており、
僅かな隙間から片目だけが覗いている。

「こいつの名は『御影憂』。『スタンド使い』だ。
 『闇に潜む力』を持っている」

            「…………よろしく」

                 ボソッ

度会の隣に立つ御影は、軽く頭を下げた。
おそらくは、先程ドアを開けたのも御影だったのだろう。
驚きながらも、桐谷は直感で理解していた。

「さて――これで『顔合わせ』は済んだ。
 以前に言ったように、我々は君の手助けをする。
 その代わり、君も我々に手を貸してもらいたい」

「……何か『目的』があるんじゃないのか?
 それを聞かない内は、返事は出来ないな」

「当然だ。『協力者』である以上、こちらの事情は明かす。
 では、話そう。我々の『目的』について――――」

806『二人の傷跡』:2021/02/11(木) 21:20:31

『御影憂』は『遊園地』で『事件』に遭遇した。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1606787541/328
これは、それから『一時間後』の事である。

「――――まぁ…………大体『こんな感じ』…………」

薄暗い部屋の中で、『御影憂』は一通りの話を終えた。
『遊園地』で遭遇した『一連の出来事』についての報告だ。
肘掛け椅子に座る『度会一生』が、それを聞いていた。

「『スタンド』を用いた犯罪――
 思い上がった『クズ』が遊んでいた訳か。
 どこの派閥か知らないが、『アリーナ』も出張っていた。
 ご苦労な事だ」

「もっとも、『残りカス共』が関与しているとなれば、
 当然の対応と言えるな」

両方の目を細め、度会は憎々しげに吐き捨てた。
彼の身体には、未だ消えない『傷跡』が残っている。
それは、『過去の事件』によって出来たものだ。
同じ事件によって、度会は『体』に傷を負い、
御影は『心』に傷を負った。
それらの『傷』が、二人にとって大きな『転機』となっていた。

「『外部のスタンド使い』が解決に寄与した……。
 一人は分かっている。
 『円谷世良楽』――殺傷力の高い能力を持つが、
 当人の性質は至って善性。
 しかし、敵に対する攻撃を躊躇する程のお人好しでも無い」

『円谷』に関しては、御影から『接触』の報告を受けていた。
『スタンド能力』である『リトル・スウィング』も含めて。
『危険な人物では無い』というのが、
現時点における『度会一派』の共通した認識だ。

「で…………どうする?」

「これまで通りだ。お前は引き続き『情報』を集めろ。
 それと――――『これ』を持っていけ」

           スッ

「…………何これ?」

度会が御影に一枚の紙を差し出す。
それは一枚の『チラシ』だった。
裏面には、何とも言えない『奇妙な絵』が描かれている。

「前に話した『妙な子供』から渡された絵だ。
 何かの参考になるかもしれない。
 お前が持っていろ」

「分かった…………」

「あぁ、それから――――」

「…………?」

「『ライフワーク』は程々にしておけ。
 あまり派手にやると『アリーナ』に目を付けられる……」

「…………オッケー」

              ――――バタン

御影がマンションから出て行くと、
度会は再びパソコンに向かい合った。
少し前に、『ホームページ製作』の依頼を受注したのだ。
『活動』を続けていく為には、『表の仕事』も重要だ。

807風歌 鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/18(木) 17:30:00

現、社会性汚物であり、『アリーナ』に纏わる揉め事をきっかけに。多少なりとも汚物から這い出そうとし始めた風歌鈴音の趣味は入浴である、H湖での水浴びではない、風呂への入浴だ。
というわけであり、風歌は銭湯に向かった。
星見湯。星見町に幾つかある銭湯施設の一つであり、その中でも最もおおらかな銭湯である。
最低限のマナー以外に強いるものはない、浸かれば湯の色を変えそうなホームレスであろうが刺青を背負っていようが、人間ですら無くとも、番頭に300円を渡せば誰でも身体を洗うことが出来る。
石鹸とシャンプーは使い放題、手ぬぐいと洗体タオルは無料レンタルといたれり尽くせりの楽園が、風歌が人間らしい悦びを味わえる数少ない場所。
加えて――今日のシャンプーは自前である。スタンド使いの事を教えてくれた少女から貰った、久しぶり過ぎる贈り物。残りはすっかり少なくなったが、最後まで大事に使う予定である
入り口をくぐった鈴音は、迫る湯悦と、普段の使い放題の安シャンプーではない洗髪を行う予感に、汚い笑みを浮かべた。
比較的に臭わない、つまりまァ多少は臭う服ををロッカーにねじ込んで鍵を掛け、鍵付きのゴムバンドを手首に巻いて、風歌はガラリと女湯に入る。
そして、掛け湯を浴びるとたっぷりと時間を掛けて身体を洗い、髪を清めた。
どうせ、直ぐに臭い服に身体を再び包む事にはなるのではあるが、風歌にとって入浴と洗体は衛生行為ではなく純粋な娯楽である、今、この瞬間が気持ちいいだけで良い行為なのだ。
他の客の迷惑にならない程度に垢を落とした後、風歌は、熱い湯に浸かり、『ダストデビル・ドライヴ』を出し、湯の中で自分に向けて『噴射』を行う。セルフジェットバスである。

「あ〜〜〜〜」

うら若き乙女が上げるべきではない声は、どこか爺臭かった。

808関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/18(木) 17:49:43
>>807

「ふふ。こういう銭湯って、いいですよねえ〜」

と、伸びやかな声が掛かった。
どうやら人が話しかけて来たようだ。

見れば、髪を頭の上で一つにまとめた、
泣き黒子のある穏和そうな顔立ちの少女がいる。
歳の頃は、おそらく風歌と同じか、すこし上だろう。
あまりこの銭湯に似つかわしい客層には見えないが、
郷に従うように、騒ぐ事もなく、むしろ馴染んでいる。

「あ……ごめんなさあい。
 つい声をかけちゃいました〜。
 ここで同じくらいの子を見るのって、珍しくて」

      「それに……」

と、何か含むような様子で風歌を……
いや。『ダストデビル・ドライヴ』を見ているのか?

809風歌 鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/18(木) 18:16:43
>>808
物珍しい、相手である。銭湯に来る女は基本的に年配であって、風歌やその同年代は滅多に見れるものではない。
だから、彼女の言葉を風歌は素直に信じた、銭湯が社交場であった時代もあると言うし、温もりは硬い口をも緩ませるというものだ。
だが――彼女の見る『先』にあるものを見て、風歌はしくじったと反射的に思い――次いで、思い直す

(別に、初対面の相手にバレた所でな……見えるってことは、持ってるってことだろうし)

ホームレスとしての防衛本能として、僅かながらの警戒を懐きながら、風歌は軽く笑った。

「ああ、いい湯だよ……それで、あんたも……『持ってる』くちかい?」

問いに合わせて『ダストデビル・ドライヴ』の腕を組ませて、首を傾げさせる。見えているのならば、この問いの意味を理解しないはずはないだろう。

810関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/18(木) 18:38:46
>>809

昨今の『サウナブーム』などの影響もあり、
銭湯に若者が触れる可能性は依然残ってはいるが、
いずれにせよ、珍しい存在なのは間違いない。

「ええ、見えてますし、持ってますよう。
 『人型』じゃなくて『物』の形なので、
 ここで出せるものではありませんけど……
 私も『そういう能力』を持ってる人間です〜」

ましてや、双方が『スタンド使い』となると――だ。
寿々芽は浴槽の段差に腰掛けたまま、ゆっくり頷く。

「……あ、そのう、別に出したらダメとか、
 能力を使うのをやめろとか、
 そういうことは言うつもりはないですからねえ」

自分の態度が『注意』と取れると思い至り、
一応、言葉にしてそれを否定しておく。
 
「ただ、便利そうだなあ、って思っただけで……
 『ジェットバス』が無いんですよねえ、この銭湯」

「経済的ですし……いいお湯だから、好きなんですけど〜」

安さと、寛容さ。
引き換えに『スーパー銭湯』のような『彩り』は欠ける。

811風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/18(木) 18:56:56
>>810
「まぁなぁ」

風歌はうむと頷いた。

「安かろうは必ずしも悪かろうには繋がらねえが、大抵の安モンは高いもんにあるなんかがねぇから安いんだ」

とはいえ、その『ない』が齎すものは決してマイナスばかりではない、特に風歌にとってはそうだ。
普通の銭湯ならばある刺青入浴禁止も、この風呂にはなく、湯の色を変えかねない汚物めいたホームレスの入浴も断る事はない。
来るもの拒まず、この暗黙の許しが有り難い人間も、世にはいるのである。
この様な場であるからこそ、風歌も珍しく『施す』気持ちになった。

「良ければだが……アタシのジェットバス、体験してみるかい?」

812関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/18(木) 19:49:04
>>811

「『安さ』も『良さ』ではあるんですけど、
 使い道の『多さ』はどうしても……
 高いものの方に、譲っちゃいますよねえ」

自他とも認める倹約家の寿々芽は、
『安かろう悪かろう』を全肯定しない姿勢を喜ぶ。

「でも、安いものには安いものの良さもありますよね。
 お菓子なんかは、安い方が味が分かりやすかったり、
 ここみたいに……気を張らずにお風呂に入れたり」

『関寿々芽』にも、事情がある。
特別触れ回るような話でもないし、
根底は風歌のそれとは大きく違うが、
ある意味で、通じるところはあるのかもしれない。

「まあっ! ホントですか〜?
 ふふ、なんだか私ったら催促したみたいで。
 でも、もしよければ受けてみたいですねえ」

           ススー…

「お礼と言ってはなんですけど、
 『フルーツ牛乳』でも後でご馳走しますよう」

ゆっくり少しだけ風歌に近づく。口元の笑みは隠せない。

813風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/18(木) 20:04:12
>>812

「よーし、それじゃあ行くぜ……」

風歌は、『ダストデビル・ドライヴ』の手をわななかせながら、風を生む両手を湯に沈め――彼女の背に、押し当てる。
そして――突風。けっして、『攻撃』の時ほどの圧は持たせず、ジェットバス程度の『圧』にとどまる威力で、彼女の背に風圧ならぬ『水圧』を与える。
その最中に、微妙に風の『細さ』や『勢い』を微調整し――手の位置を変えて、風の命中点を変え続ける。

「一番いい場所があったら教えてくれよ、そこでしばらく止めるからさ」

814関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/18(木) 21:31:15
>>813

「はあい、お手柔らかにお願いしますねえ〜」

寿々芽の背中には傷の一つもなく、
少なくとも『路上生活者』のそれとは違う。
が、人以上に疲れのある人生を送ってはいる。
ゆえにこの『ジェットバス』は――――

「…………!!」「これっ……」

        「あぁ〜っ」

     グワン

至近の水圧に押されて体が多少揺れるが、
そんなことは気にならない。

「す、すっごいです、ねぇえ〜〜〜…………っ」

   「あ、そこでお願いします〜。
     そのぉっ、『肩甲骨』の間のあたり……で」


――『てきめん』に効く。

スタンドの使い方はまさしく『応用次第』。
ゴミだけでなく、『疲れ』を吹き飛ばす事にも抜群だ。

815風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/18(木) 22:09:04
>>814
「おうよ、任せとけ」

風歌は彼女のリクエストに答え、求められた箇所を集中的に行う。
ながらも、適度に他の場所――風歌の経験上に於いて、『疲れを飛ばせる場所』を適度に刺激していく。
一日中さまよう事もあるホームレスは疲労のプロであり、また回復のプロでなければやってはいけない。
若さだけではどうにもならない肉体の消耗を、銭湯でのセルフジェットバス刺激で癒せるからこそ、風歌は最近の過酷を送れているのだ。
気を付け、刺激し、癒やし、良くないものを吹き散らす――風歌は、自分の力が誰かの役に立っていることが、嬉しかった。
しかし、いつまでも、という訳にもいくまい。何事にも、頃合いはある。

「そろそろ、いいんじゃねえか? やりすぎると逆に来るぜ?」

816関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/18(木) 23:07:31
>>816

「そっ……う、ですねえ〜っ。
 これ以上は……後で痛くなっちゃいそうです。
 それだけ『効いてる』って事ですけど〜」

   「あぁぁ」

     「ありがとうございました、
      このあたりでっ、大丈夫ですよう」

風歌の勧めに従い、この辺りで止めてもらおう。
単純に長湯になりすぎるのも良くないし、
この『施術』については未知数だ。
具合はとても良いが……後が怖い分もある。

「いやあ……このための能力じゃあないんでしょうけど、
 とっても気持ちよかったです。素敵な使い方ですねえ」

湯が飛沫を立てない程度に肩を軽く回し、
調子の良さのほどを確認する。
自分の『ペイデイ』も極めて便利だが、
こうした使い道のあるスタンドもあったとは。

「あのう、私はそろそろ上がりますけど〜。
 脱衣所で待ってますので……
 上がってきたらジュースでも飲みましょう〜」

脱衣所には『自販機』があった。
牛乳やコーヒー牛乳やフルーツ牛乳が並ぶ、アレだ。

言葉通りに湯船からゆっくりと這い出し、湯の外へ去っていく……

817風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/19(金) 19:21:24

>>816

「素敵な使い方、か」

そう言われたのも、そう思ったのも初めての事であった。
風歌にとっての『ダストデビル・ドライヴ』は日常の補助や自衛に使う事が多い、いわば自転車と同じ様な便利な才能であり、なんとなしに使いはしても泥臭い使い方だと思っていたのだ。
それを、他人に施しただけで、素敵と言われる――いや、他人に施した行いこそが、素敵7日も知れない。

「ありがとうよ――」

礼と共に彼女を見送った風歌は、ホンの少しだけ言葉の余韻に酔い――湯から上がった。
身も心も、いい具合に火照った。後は、約束どおりにフルーツ牛乳を奢って貰うとしよう。
いい気分のままに、風歌は彼女が待つであろう脱衣場へと向かった。

818関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/20(土) 00:38:18
>>817

脱衣所に上がると、寿々芽は髪を乾かしていた。
服もすでに着ているようだったが、
物珍しいのは『エプロン』を着けている事くらいだ。

「あ、どうも〜。良いお湯でしたねえ、いつも以上に」

           スッ

「ふふ、あなたのおかげですよう」

ドライヤーを止めて立ち上がり、微笑む。

決して上等なブランド等ではなさそうだが、
『裸の付き合い』ではないと『見えてしまう』。
少なくとも彼女の服は、『汚れていない』。

「ジュース、先に飲みます〜?
 それとも、着替えてからゆっくり飲みますか?」

そう言いつつ、近付いてくる。手には『小銭』が二人分。

819風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/20(土) 10:07:26
>>818

「いや、このまま飲むよ。開放感があるからな」

風歌の着ている服が作業着ならば、相手も仕事上がりと解釈して汚れと匂いに納得する可能性もあるが、風歌の服はどう見ても私服だ。
一般的なホームレスよりはマシであろうが、洗濯などろくにしていない汚い服――風歌の背景を直に察するかも知れない。
軽蔑と侮蔑には慣れきっている風歌であるが、わざわざホームレスと同じ湯に浸かったと言う不快感を与える相手に必要もないだろうと思う。

(奢ってもらったら、なんか適当に理由つけて二度風呂にすっか)

自身を弁える風歌は、小銭を受け取るために手を差し出した。

820関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/20(土) 11:39:55
>>819

「ああ〜っ。確かにそうですねえ。
 銭湯じゃないと、中々しづらいですし」

自宅でも出来なくはないだろうが、
家族の目が気になる、という事だろう。

「はい、それじゃあどうぞ〜」

        ポム

「外に置いてある自販機(※1)と違って、
 どれも『100円』だから経済的ですよねえ」

差し出された手を上下から包むようにして、
風歌の手のひらに『100円』を乗せる。
ちょうど『フルーツ牛乳』が買える額だ。

「この『中で動いてるのが見える自販機』〜。
 銭湯だけの物って感じで、ちょっと好きです。
 まあ、どうでもいいんですけどねえ〜。ふふ」

先の『ジェットバス』のおかげか、上機嫌らしい。
穏和で、嬉しそうな声色で自販機の前に行く。
小銭を入れずに風歌の顔を見ているのは、
言葉にはしないが、『お先にどうぞ』という意。

和やかなムードも、風歌が『弁えている』からこそ……か?
それともこの少女なら風歌の『背景』を気にしないのか。

※1……『コーラの会社』の自販機。最安でも130円から。

821風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/20(土) 13:10:12
>>820

「おう、ありがとうよ」

小銭を受け取った風歌は、フルーツ牛乳を購入――手にとって蓋を外すと、腰に手を当てて一気に飲む。子供らしいとも思うが、風呂上がりの飲み方は風歌からしたらコレに限るのだ。

「ぶはーっ!」

一息で飲み干し、口元を拭う風歌は、奢ってくれた彼女の雰囲気を見る。
和やかであり、どこか善性を感じる……錯覚だとしても、少なくとも、風歌は悪性を感じない。
その様な相手を、『騙す』事が気遣いになるんのか――風歌は、微かに自問する。
これから二度目の風呂に入れば、彼女とは何を感じることもなく別れるだろう。
しかし、彼女はこの湯に来るのである――延々とに、騙すようなやり取りを続けるのか?
それは、不誠実であると、風歌は思う。

(アタシがホームレスだって伝える必要はねぇにしろ……変に隠しだてするのも、アレだな)

風歌は、一つの覚悟を決めた。

「ごっそさん、うまかったよ。アタシは着替えるから、あんたも飲みな」

空き瓶を処理した風歌は、己の着替えが入ったロッカーを開く――明らかに清潔ではない服が、顕になる。
コレを見て、どう思うかは自由であるし、『察するか』も解らない。
しかし、察したのであれば――その上で嫌悪を抱くのであれば、次に顔を合わせた時に避けるか、帰るかなどで要らぬ事態を避ける事は出来よう。
伝えぬ誠意と、騙さぬ誠意。後者を選んだ風歌は、服を着ながら彼女の反応を待った。

822関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/20(土) 18:22:56
>>821

「ふふっ、いい飲みっぷりですねえ〜……………」

       「……」

自分に『事情』があるように、
彼女にも『事情』があるのだろう。

「はぁい、いただきます〜!
 あ。乾杯とかしたほうが良かったですかね〜?
 まあ、何に、っていうわけでもないですけど」

つまり寿々芽は 『反応をしない』事にした。
『反応がない』ではなく、しない、だ。
『察してはいる』のが、相対する風歌にはよく分かる。
よく言えば慮り……悪く言えばナアナアにしたのだ。

    「んぐ」

           「んぐ」

フルーツ牛乳を購入し、ゆっくりと飲み干していく。

「っはー……やっぱり、銭湯で飲むのが一番ですね。
 よそで飲んでも、こんなに美味しいとは思いませんよ」

笑みは穏和で、嘘をつくのは、苦手ではない。
笑みは真実である事とも、両立させる事ができる。

823風歌鈴音『ダストデビル・ドライブ』:2021/02/20(土) 19:11:42
>>822

「全くな、牛乳は風呂上がりに限るってもんだ」

そう言って笑いながら、風歌はしばし考える。
風歌には、彼女がどこまで自分に『気付いた』かは解らない。しかし、何も思わない程無神経ではないだろう。
しかしながら、相手は『不快』を表に出さなかった。風歌にとって、それは喜ばしい事だ。
これからも風歌はこの銭湯に通うだろうし、顔を合わせても社交辞令程度の会話は交わせるだろう。

(悪くない、ってことなんかねぇ……)

何れにしても、初対面のスタンド使いと悪くない……少なくとも、最悪ではない関係を初められたのは、僥倖と呼ぶ出来であろう。

「またこの風呂で会ったなら……そっちがして欲しけりゃ、ジェットバスをしてやるよ」

出口に向かいながら、風歌は彼女にそう言った。

824関 寿々芽『ペイデイ』:2021/02/20(土) 23:14:48
>>823

「まあっ! ここに来る楽しみが増えました〜。
 ふふ……じゃあ、私からのお礼も返さなきゃ。
 次は、コーヒー牛乳をご馳走しますねえ」

         ニコ〜ッ

「あ、私……『寿々芽(すずめ)』って言います。
 またここでも、よそでも、
 どこかでお会いしたらよろしくお願いします」

      「それじゃあ……お元気で〜」

小さく頭を下げて、手を振って背を見送る。
スタンド使い同士は『組む』事でより『引き立つ』。
今後も『よろしい』関係を繋ぎたいものだ。

       ・・・

          ・ ・ ・

             ・・・

…………………脱衣所から、そして建物から出ると、
入口の近くに『黒塗りの車』が止まっていた。
特に風歌に何かを言ってくる様子もないが、
やはりこの銭湯は『訳あり』の者も多いという事だろう。

だが、だからこそ生まれる出会いもある……
それが風歌にどれだけの価値を生むかは、これからの話だ。

825風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/21(日) 00:44:15
>>824

「『寿々芽(すずめ)』か……」

去った彼女の名を、噛み締める様に呟いた風歌は、彼女の言葉を思い返す。
どこかでお会いしたら――

(こちらこそ、だな)

『ダストデビル・ドライヴ』は風のスタンド。単独では器用貧乏としか言えぬ力であるが、誰かと組めば幅は広がり――背中を押す事も出来る。
そして、今日、風歌はジェットバスにて誰かを喜ばせる事もできた。ゴミである風歌の才能は、決してゴミではないのだ。
いつかどこかで――力を合わせる事があれば、追い風の一つも吹かせてやろうと、風歌は思う。

(さて)

そうして、銭湯から出る時、風歌は露骨な『ヤの字』とすれ違う。墨を背負った人間に厳しい世間から逃れるように、筋者もまたこの湯に多く訪れる。
あり方は違えど、社会のゴミ同士――互いに、相手が何であるかには気付いたろうが、互いに何も言わずに去っていった。
袖すり合うも他生の縁、すり合わせぬも一つの礼儀。
だが――擦り合って生まれた縁は、大事にしたい。

(いつか、また、な)

この町で出会った、新たなるスタンド使いの名を心に刻みながら、風歌は帰路に付いた。

826『白と黒の間で』:2021/02/23(火) 03:32:06

マンション『Luna-Polis』。
その一室に、『三人の人間』が集まっていた。
間接照明のみに照らされた室内は薄暗い。

「前にも説明した通り、僕は『彼』に一度会っているんだ。
 その時は、『スタンド』について少し教えてもらった」

「だから考えたくはないけど、『あれ』をやったのは恐らく……」

最初に口を開いたのは、『警察』の制服を着た若い男だった。
名前は『桐谷研吾』。
星見町の交番に勤務する『地域課巡査』だ。

「『一般人』を『スタンド』で『半殺し』…………」

        ボソッ

「…………『危ないヤツ』」

呟くように答えたのは、前髪が異様に長い不気味な女だった。
『私立清月学園大学部』で『心理学』を専攻する『大学生』だ。
名前は『御影憂』。

「『情報』が少ない。
 だが、『やり口』を見る限りでは、
 『最も典型的なタイプ』と言える」

「『スタンド使い』と呼ばれる人種の中ではな」

最後に喋ったのは、肘掛け椅子に座る男だ。
その顔には、幾つもの『傷跡』が刻まれている。
彼は『度会一生』と名乗っていた。

「…………どうする?」

「憂――聞かなくとも分かっている筈だ。
 何も変更は無い。
 今まで通り『表には出ない』。
 実際の解決は『アリーナ』の犬にでもやらせておけばいい」

「桐谷――警察は『手掛かり』を掴んでいないんだったな?」

「あぁ……『あの事件』は『僕以外の目撃者』もいない。
 手掛かりといえば、
 『体内から傷付けられてる』っていう『異常性』くらいだよ」

「なら、いい。今後もし警察が何か掴んだら教えろ」

「分かった。そうする」

「『学生』なら…………『清月』に在籍してるかも…………」

「可能性はあるな。この辺りの学生は大半が入学している。
 いたとしても不思議は無い」

御影の言葉を聞いた度会は、
『杖』の握り部分に両手を重ねて置いた。
そこには、繊細な銀の彫刻が施されている。
鋭い視力で万事を見通すと称される『鷲の彫像』だ。

「憂は『学園』に気を配れ。一応、念の為だ」

「了解…………」

「僕は、そろそろパトロールに戻るよ。
 また何か『スタンド』に関わりそうな話があったら連絡する」

             ――――――バタン

「…………『夜』まで、ここで寝ててもいい?」

「好きにしろ」

827風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/23(火) 19:15:49

あらゆるものには行き着く先がある、ゴミはゴミ箱に、死体は墓場に。
そして、引き取り手の無い死体は処理される様に弔われた後、公的なゴミ箱とも呼べる『無縁塚』に埋められるのが日本国である
星見町にも当然に無縁塚はあり、今のままでは其処に収まる事になるだろうホームレス、風歌鈴音は弔いの品と掃除用具を両手に、寄る辺なき者たちの墓標へと参っていた。
個人の名が掘られることもなく、十把一絡げに葬られた者たちは数え切れない程にいる。塵も積もれば山となるの言葉通り、これまで埋められた骨やら灰を重ねれば間違いなく山が出来るだろうと風歌は思う。
その山の中に、風歌が弔うべき者たちはいる。先んじて苦界より去ったホームレス達。本名とも知れぬ名前と顔の思い出だけを残して、静かに冷たくなった愚かで頼れた先人達。
新参者に暖かくもなかったが、冷たくもなかった彼らがいてこそ、風歌はどうにかキャンプ場でホームレスをやってこれた。僅かな余裕が出来た今、手を合わせに来る程度の義理は風歌にはあった。

(あんたらが死んでからも色々あったし、大丈夫じゃねえが……どうにかはなってるぜ)

風歌は心中で彼らへの思いを告げると、線香代わりのタバコを咥え、火を付けてから無縁塚に煙を吐くと、手にしたカップ酒の蓋を明けて浴びせかける。掃除用具は、この始末の為の物であった。
そして、屈み込んで手を合わせる――ふと、折角だから、見せてやるかと思い立つ。
『ダストデビル・ドライヴ』のヴィジョンが風歌の背後に現れ、本体の動きに合わせるように風を生む掌を合わせた。
出会いが呼び起こした『才能』と共に、『身』も『心』が一緒になった合掌を、風歌は行った。

828八瀬『マウンテン・ライフ・ワーシップ』:2021/02/23(火) 21:00:51
>>827

「なんや、珍しいなぁ、こんなトコに若い子が来るなんて」

風歌の背後から声をかける
振り返ると、そこには30代程度の女性の姿がある
老人でもないのにその髪は蜘蛛の糸のように白く、長袍と呼ばれる異様な服装をしている

その手の中では、小振りな花々が数本、紐で束ねられていた


「ま、ええか、ちょっと隣失礼するで」

女は一瞬だけ『ダストデビル・ドライブ』に視線を向けると、
風歌の隣に滑り込むように移動し、花を献花台に置いた

829風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/23(火) 21:32:26
>>828
献花台に花を置いた女の装いは、着物を普段着に着る程度には奇っ怪な装いであったが、ここ暫くで『奇妙』に慣れた風歌は、無礼な視線を送らずに済んだ。
それよりも気になったのは、若白髪という言葉ではありえぬ白髪。これは流石に目を引き、思わず凝視をしてしまう。

(何やってんだアタシは……)

見下してきた訳でもない相手に対する非礼な眼差し――自らを恥じた風歌は、それを誤魔化すように話しかけた。

「若いって事は、その分見送る回数が多いって事なんでね。ま、『こんなトコ』に来る知り合いばっかなのは、ろくな事じゃねえのかも知れねえがな……」

誤魔化そうという意識は、風歌の舌を回させる。あるいは、舌禍とも呼ぶべき領域にまで。

「あんただって、こういう所に来るには珍しい類に思えるぜ。こう言っちゃぁ何だが、あんたはアタシと違って墓を持ってる知り合いが多そうに見えるが」

相当に非礼な言葉を勢いで口にしてしまった風歌は、即座に悔いるが吐いた唾は戻らない。
どうか、あまり不快にはさせていませんようにと願いながら、風歌は反応を持った。

830八瀬『マウンテン・ライフ・ワーシップ』:2021/02/23(火) 21:45:35
>>829

「ふっ・・・・! ククク・・・・ 確かになぁ、『ここ』に居るんは碌でもない人間ばかりや
 そんな所にわざわざ花を手向けようなんていう私もそうとうな変わり者に見えるんやろなぁ」

失言、または舌禍ともいうような風歌の発言を受けて
目の前の女は笑い始める、不謹慎ではあるが、言葉の棘を気にしている感じではない

「・・・・・はぁ」

一通り笑って満足したのか、女は表情を消し僅かに視線を落とす

「知らない人にこんな話をするのもなんやけどな
 ついこないだまで湖畔の方でうろうろしとった爺様が居ったんやけど
 ・・・・・まあ、ここ最近の寒さにやられとったみたいでなぁ・・・・」

手の平を合わせ、合掌

831風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/23(火) 21:57:27
>>830
「そうかい……」

風歌は、心底から失言を悔いた。
この女性は、自分と似たような誰かを悔いに、訪れたのだ。
迎えに来る誰かも入るべき場所も失った誰かが、最後にたどり着ける唯一の場所に辿り着いてしまった誰かを。そうでなければ、訪れる様な場所ではない。

「アタシも、まぁ、『見ての通り』で、そのじっちゃんとは『ご同類』でな」

風歌は決して小綺麗な装いをしているわけではなく、はっきり言って薄汚い。
一般的な浮浪者の類よりは多少マシでも、それでも、こう言われたら察していなくても理解するだろう。

「そのじっちゃんとアタシが知り合いだったは解らねぇ。顔は多分知ってるんだろうが、灰になっちまったら確かめられねえけどな……」

けど――そう前置いて、風歌は彼女を、真摯に見つめる。

「それでも、アタシらみてえなのは、最後に壺に収まった後、誰かが来てくれるなんて考えねえもんだ。そういう風に、生きてるからなぁ……だから、きっと、そのじっちゃんはアンタが来て喜んでると思うし……」

そして、風歌は彼女に頭を下げた。

「だから、アタシはそのじっちゃんの代わりに礼を言うよ。アタシらみたいなもんの為に来てくれて、ありがとうよ」

832八瀬『マウンテン・ライフ・ワーシップ』:2021/02/23(火) 22:12:12
>>831

「・・・・・・なるほどなぁ」

女は風歌の様相を一瞥する
服に染み込んだ汚れや、全体的に擦り切れた風味から風歌がどんな生活をしているか察した

「家族も・・・・ 家族からも離れとったみたいやからなぁ
 個人的な付き合いのある連中くらいしか来ないか」

「ああ、お礼なんて言わんでいいよ
 私も社会の枠から外れたっていう意味では、爺様と同類みたいなもんやから」

そう言うと女は持っていた袋の中からむんずと『何か』を取り出す

・・・・それは『土くれ』であった
黒い、土の塊を無造作に素手で握りしめ、袋から取り出している

833風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/23(火) 22:33:17
>>832
「ここには入る奴も来るやつも、ハグレモノばっかりか」

皮肉げに笑った風歌の目の前で、女は袋から土塊を取り出した。
弔いの品としては、どうにも奇っ怪である。土を喜ぶ死人がいるのだろうか。

「随分と変わったモンだな……」

疑問を思わず口にした風歌は、しげと眺めつつも、それ以上は何もしようとしない。
少しの会話で解るが、彼女は変人ではあっても馬鹿ではない。無為な死者の侮辱はしないだろう。
風歌の眼は、じっと、彼女の次の挙動に注がれている。

834八瀬『マウンテン・ライフ・ワーシップ』:2021/02/23(火) 22:55:17
>>833

「ああ、ちょっとな・・・・・」
「私だけやなく、うちのトコロの『神様』も会いたがっとったからなぁ・・・・」

そう呟くや否や、女が手で握りしめた『土くれ』が変化を起こす
『土くれ』の一部が重力を無視するかのように蠢き、徐々に肥大化していく
帯状に、瘤状に、変形したそれらは徐々に一つの形を作っていく・・・・

  【ギィ・・・・・】

『それ』は『犬』の形をしていた
土で出来た『犬の人形』がガシッと四足で大地を踏み、
ギッと摩擦音を鳴らしながら、頭を動かし、『塚』を見上げる

                        ・・・・
「安心したわ、ここに居ったんが、あんたみたいな『使える人』で
 ふつーの人だったら説明するのにひと苦労やからなぁ」

835風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/23(火) 23:02:10
>>834
土塊の『変化』――普通、ならば有り得ない事象。それを引き起こす力の名を、風歌は知っている。

「あんた、スタンド使いか。奇妙な縁もあったもんだな……」

目覚めてから、出会い続ける『才能』の使い手達――スタンドと言う運命で結ばれた様だと、風歌は微かに思う。
だが、それ以上、この能力に付いて思案を巡らす事はない。スタンドは『才能』であり、『有り様』である。戦うならばまた違うだろうが、そうでなければ掘り下げて考え抜こうとは思わない。
この場で大切なのは、その力でどうするかだ。

「色々なスタンド使いを見てきたが、そいつで『供養』をやるってのは初めて見る――力の説明はいらねえが、何をするかの見物はさせてもらうぜ」

そして、土が変わった犬を、風歌はじっと見つめた。

836八瀬『マウンテン・ライフ・ワーシップ』:2021/02/23(火) 23:12:57
>>835

「スタンド使い・・・・ そうそう、藤原さん達はそう呼んどったな
 この手の『術』の事を『スタンド』って」

風歌は『犬の土人形』を見つめるが、何かをする様子はない
風歌が期待するような出来事は特に起きず、『犬』はまるで『ただの人形』のように立ち竦んでいる

「『供養』・・・・なんて大層な事をするつもりはないわ   ・・・・・・
 私はただな、頼まれただけや、『山の神様』からここに『連れて行って』欲しいってな?」

「さあ、あんたなら信じるか?
『山の神様』なんていう戯言を・・・・」

837風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/23(火) 23:25:09
>>836

「神、ね」

風歌は笑った。嘲笑ではない、少しだけおかしそうな笑いだ。

「『死後』に墓参りに来てもらえば、死人が安らぐって考える程度には『そういうの』を信じててね」」

有り得ない物を見てきた風歌は、有り得ない物を信じる誰かを笑わない。
女性の言う『山の神様』がいるのかは『知らない』が、それは『いない』という事を意味しないだろう。

「……死んだら人は仏にもなるかも知れねえし、何者にも神様が宿るかも知れねえ。墓に手を合わせれば、逝った誰かが救われるのかも知れねえ。それを信じるアタシが、『山の神様』を笑うもんか」

そして、笑みの質をにこやかなものに帰る。

「それに、例えば湖畔近くの山だと、あそこ、山菜とかも取れるしなァ。山の神様の恵みってやつだろ、そういうのも」

838八瀬『マウンテン・ライフ・ワーシップ』:2021/02/23(火) 23:34:54
>>837

「柔軟な発想やなぁ
 まあ、そうでもなきゃあ一人でこんなトコには来ないか」

    【ギ・・・・・】

やがて、何かが『済んだ』のか『山犬』が振り返り、女の足元へと歩いていく
ギリギリと摩擦音を鳴らしながら、おすわりのような姿勢となった

「・・・・・湖畔のところの山
『狗郎ヶ岳』って名前の山なんやけどな、私はそこに住んどる
『八瀬 ふしみ』や、よろしく」

そういうと八瀬は風歌に対して右手を伸ばす

839風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/23(火) 23:44:26

ホームレスである風歌は、手を差し出される事に慣れていない。先にミゾレを断ったのも、それに起因する。
だが――そこから踏み出そうとしている今、風歌の行動に躊躇いはなかった。

「風歌――風歌鈴音だ」

自らの名を名乗り、風歌は『八瀬ふしみ』の手を柔く握った。

「湖畔に住んでる根無し草の一本さ。とはいえ、そこから抜け出そうとはし始めたんだがな」

そして、風歌はにこやかな笑みを浮かべる。

「『狗郎ヶ岳』にゃあ、特に春には世話になってる……そこの神様と縁を持ってるあんたの世話にもなってるって、事なんだろう」

だから、そう前置いて、風歌は告げた。

「ここで遭ったのも一つの縁だ。あんたの言う『術』で面倒が起きたら、湖畔で若い女のホームレスを探すといいや。今ん所、アタシしかいねえ……山菜の借りを、返せたら返すよ」

840八瀬『マウンテン・ライフ・ワーシップ』:2021/02/24(水) 00:01:04
>>839

「風歌さん、か
 ああ、覚えたわ」

風歌の手を軽く握り返し、応える

「借りとか、貸しとかは、なしでええわ
 別に山の物を私一人が独占してるわけやないし、ちょっとくらいなら取ってええよ」

人と会う機会が少ないためか、ぎこちない仕草で笑みを返す

「まあ、生えとるもんを根こそぎ取ろうていうんなら、痛い目に会ってもらってたけど、
 あんたはちゃんとしてそうやから大丈夫やろ」

「じゃっ、春を楽しみにしとるわ」

          【ギギギ・・・・】
               【ギ・・】 ペコリ
                    【ギギギギ・・・・・】

それだけ言い残すと八瀬は山の方へと歩き去って行った
後を追うように『山犬』が動く、途中で一度風歌の方に振り返り、軽いお辞儀をすると
八瀬の後を追うように歩いて行った

841風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/24(水) 00:07:38
>>840

山に去りゆく八瀬を見送った風歌は、無縁塚に向かってもう一度手を合わせ、微笑みを浮かべた。

「あんたら、幸せだぜ? アタシはともかく、ああ言ういい女に来てもらえるんだ。死んだ甲斐があったろう?」

アタシも、誰かにココに来てもらえる様に生きてみてぇもんだ……そう、心から願った風歌は、振りかけた酒の『後始末』を始める。

(冷てぇ……)

そして、濡れた雑巾の肌寒さに――彼女の言葉を、思い返す。

「まったく、春が……あったけえ春が、楽しみだぜ」

寒さを誤魔化すために、春にまつわる鼻歌を歌いながら、風歌は掃除を済ませた……

842『遊歩のS』:2021/02/24(水) 21:34:26

二月の『海辺』――今日は幾らか気温が高い。
空は晴れ渡り、波も穏やかだ。
適当な場所に腰を下ろしていると、『何者かの声』が聞こえた。

《誰もが座る事が出来るが、自分だけは座る事が出来ない》

《――――それは何処か?》

『スタンドを持つ者』には分かる。
これは『スタンドを通した声』だ。
『声』は背後から聞こえてきたらしい。

(※先着一名のみ)

843『遊歩のS』:2021/02/26(金) 04:15:29
>>842

《ふむ…………『聞こえない』か》

    スッ

《『スタンド使い』の間には、
 ある種の『引力』が存在すると聞くが――――》

《『相手を探す』というのも、中々どうして楽では無いのだよ》

                       トッ トッ トッ

844烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2021/03/05(金) 21:31:49
「…………」

放課後、夕日も沈みかかる頃、中学校の制服を着た少女が
街の一角にある『工事現場』の前で、何をするでもなく佇んでいる。
視線は工事現場……『工場の跡地』に向いているが、工事現場には動くものはなにもない。

845小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/03/05(金) 21:43:33
>>844

     コッ コッ コッ……

『喪服』を着た女が通りがかった。
つばの広い黒のキャペリンハットを被っている。
ふと、少女の視線の先が気になり、
足を止めて同じ方向を見つめる。

  「……?」

しかし、目立つものは何もなさそうに見えた。
『工場』を見ると、思い出す記憶がある。
場所は違うが、初めて『スタンド』を使ったのも『工場』だった。

846烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2021/03/05(金) 21:56:33
>>845
『小石川』が立ち止まった後にも、暫くはその存在に気づかず、
心ここにあらずといった風体で工場を眺めていたが、ふと顔をそちらに向けた。
伸び過ぎたような長髪が揺れて、何かを堪えているような、悲痛な面持ちが見えた。

「あ………」

「失礼……いや、別に、何もないんだ。
ええと、私も、何かを見ていたわけじゃあなくて……」

はっとしたように『小石川』の姿を見とめた後、
我に返ってもごもごと言い訳のような、照れ隠しのような言葉を口にする。

847小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/03/05(金) 22:15:00
>>846

悲しみに彩られた表情。
それを目にした時、少女の気持ちを悟った。
詳しい事情など何も知らない。
それでも、気持ちの一端に触れたような気がした。
だから、きっと今の自分も、
彼女と同じような顔つきになっていたのだと思う。

  「いえ……こちらこそ失礼しました」

          スッ

微笑を浮かべて少女に会釈する。
夕日に染まる表情は、穏やかで柔らかい。
ただ、どこか仄暗さを湛えた顔でもあった。

  「少し気になったものですから……」

そう言って、再び『工場』に視線を向ける。
今は何もないなら、以前は何かがあったのだろうか。
そのような考えが脳裏を過ぎった。

848烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2021/03/05(金) 22:42:17
>>847
「いや、そんな風に言われると困るな……。
本当に……おかしなヤツだった。私が。
こんな往来で、ぼーっとしているべきじゃあない……本当」

どこか寂し気な『小石川』の表情に慌てたように取り繕うが、
微笑を浮かべる様子を見て、安堵したようにため息をつく。
そして、間を埋めるようにぽつぽつと話し出す。

「……ここの『廃工場』には『いわく』があったんだ。
取り壊そうとすると『祟られる』……ってね。
そうして、実際に良くない事が色々と起こったりもした。
けが人が出たりね」

「私は、正直に言って、そういうのは全然信じていなかった。
『たたり』とか、『あの世』とか……。
あなたはどうかな、そういうのって……本当に、あると思うかな」

849小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/03/05(金) 23:12:42
>>848

  「『いわく』……ですか?」

外見では、やはり特に変わった所は見えない。
しかし、目に見えないものというのは存在する。
特定の人間しか見えないという意味では、
『スタンド』も共通する部分があるのだろう。

  「以前、不思議な『工場』に行った事があります……。
   こことは違う場所ですが……」

『あの時』の事を思い出す。
偶然から一人の記者と出会い、『工場』の中に迷い込んだ。
そして――。

  「そこで、出会いました……」

  「……『会えなくなった人』と」

無意識に視線を落とし、右手の『指輪』を見つめる。
それは薬指に嵌っていた。
夕日を受けて、小さく光っている。
また、左手の薬指にも『指輪』があった。
それらは、同じデザインだった。

850烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2021/03/05(金) 23:33:11
>>849
「不思議な『工場』……?」

あの暑い日に、この『廃工場』で経験した出来事を思い出す。
それも『不思議な工場』……と言えば、その通りだ。
其処で経験したのは、夢幻のはざまのような、過去に『なかった』出来事。
そして……。

「それは………」

『私と同じだ』、と言おうとして、その言葉を飲み込んで続ける。

「……それは、あなたにとっては『善い事』だったの……かな。
『会えなくなった人』に『会う』……だなんて、『正しくない』。
会うべきじゃあない……そうじゃあなかったのかな、本当は……」

伏し目がちに、まるで自らに言い聞かせるようにして問いかける。

851小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/03/05(金) 23:57:41
>>850

  「……おっしゃる事は、よく分かります」

          コク……

少女の言葉に深く頷き、『同意』を示す。
その表情には、躊躇いや迷いはない。
『心からの同意』である事が窺えた。

  「私には『迷い』がありました。今も、そうです」

  「けれど、今は『決心』がつきました。
   いつか『本当に会いに行く』と……」

  「――この命を『最後まで全うした後』で」

  「何十年先になるかは分かりません。
   でも……『その時』が、
   私が『彼と会える時』だと信じています」

今すぐにでも『会いに行きたい』という気持ちは否定できない。
しかし、『彼の分まで生きる』という『約束』がある。
『約束』を守り通した時こそ、胸を張って『彼に会いに行ける』。
『未来への希望』が、生きるための『心の支え』になってくれる。
そのために、私は今を生きている。

852烏丸香奈枝『シュリンガラ』:2021/03/06(土) 00:28:51
>>851
「命を全うした後で……」

同じような『境遇』でありながら、
どこか吹っ切れたようなその言葉に、息を飲む。

「……確かに、そうだ。私にも、『この世』でやる事がある。
自らの命を、過去に囚われて浪費している場合ではない。
私にできる事を全うしなければならない……」

「……何か、話し込んでしまったな。
ありがとう、興味深い話を聞くことができたよ。
私は、烏丸香奈枝という。
あなたとは、何か……また、どこかで出会うような気がするな」

そういって会釈をして、工場の方を振り返らずに真っすぐに帰路についた。

853小石川文子『スーサイド・ライフ』:2021/03/06(土) 04:30:56
>>852

  「……小石川文子と申します」

  「烏丸さん――もしよろしければ、また何処かで……」

丁寧に頭を下げ、立ち去る少女を見送る。
初対面ではあったものの、他人のような気がしなかった。
その理由は分からないが、
何か『通じる部分』を感じたように思う。

  「――……」

夕日の中に佇み、少女に代わって『工場跡地』を見やる。
同時に、記憶の断片が頭の中を過ぎ去っていく。
自分の中に眠っていた『自傷の刃』を自覚した時から、
それは始まった。
不思議な工場、スタンド使いの一派との争い、奇妙な集まり、
追う者と追われる者、幻の町。
それらを経て『不殺の刃』の存在を意識し、今に至った。

                     コッ コッ コッ……

やがて目を伏せると、踵を返して静かに歩き出した――。

854御影憂『ナハトワハト』:2021/03/06(土) 21:08:56

そこそこ大きいペットショップ。
『爬虫類コーナー』に一人の女がいた。
異様に長い前髪が、顔の大部分を覆い隠している。

    スタ スタ スタ スタ スタ
                  ――――ピタッ

店内を徘徊する途中、一つのケージの前で足を止め、
そこに入れられている生き物を眺める。
真っ白い『蛇』だ。
プレートには『サウザンパインスネーク』とある。

(『ずっと探してた子』…………こんな所にいた…………)

(芸術品のような『鱗感』…………)

(しかも『理想のサイズ』…………)

          ジィッ……

ケージを這う姿にうっとりしつつ、『値段』を見る。
高いが、頑張れば出せなくはない値段。
しかし、『お迎え』してしまうと今月は厳しい……。
だが、『出会い』は一期一会。
ここで見送ってしまえば、
次に来た時にはいなくなっているかもしれない……。

(どうしよう…………)

そこに張り付いたまま、頭を悩ませ始める。
元々この店に来たのは、餌の『冷凍マウス』を買うためだった。
ついでにブラブラしていたのが間違いだったのかもしれない。

855御影憂『ナハトワハト』:2021/03/10(水) 00:12:20
>>854

「…………『買っちゃった』」

小一時間悩んだ末に、結局『お迎え』する事にした。
痛い出費だが、この『出会い』には変えられない。
当初の目的だった『冷凍マウス』も忘れずに購入済みだ。

(しばらく『一生』に、ご飯奢ってもらお…………)

856『アンダーカバー・エージェント』:2021/03/10(水) 00:29:32

『御影憂』は、『度会一生』の指示により、『音仙』と接触した。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1463235536/357
これは、その『三日前』の出来事である。

――――――――――――――――――――――――――

その部屋は分厚いカーテンが締め切られ、昼間でも薄暗い。
間接照明の明かりだけが、室内を仄かに照らしている。
肘掛け椅子に座っていた『度会一生』は、
『来訪者』に気付いて顔を上げた。
部屋に入ってきた『御影憂』は、
壁に面したソファーに腰を下ろす。
御影は度会に呼び出され、彼の自室を訪れていた。

「――――――『音仙』と接触しろ」

「………………いいの?」

御影と向かい合った度会は、『その名前』を口にした。
それを聞いた御影は、怪訝な表情を浮かべる。
存在自体は既に知っていた。
以前、度会から聞かされた事があったからだ。
しかし、『会いに行け』とは言われていなかった。

「穴倉に篭っていても『情報』は得られない。
 奴は『スタンド使い』を増やしている人間だ。
 何を考えているか分かったものじゃあない。
 『アリーナ』や『エクリプス』と同じように、
 警戒しておく必要がある」

「分かった…………近い内に行って来る…………」

度会の指示を聞き、御影は頷いた。
御影は度会を信頼しており、度会も御影を信頼していた。
彼らの間には、『特別な結び付き』が存在していた。

「言うまでも無い事だが、決して油断するな。
 『意図』を悟られないように、十分に注意しておけ」

「『任務了解』…………」

        ボソッ

「…………なんちゃって」

――――――――――――――――――――――――――

    スタ スタ スタ…………

それから『三日後』、
御影憂は『音仙』と接触する為に『現場』に向かっていた。
これは、いわば『潜入調査』だ。
『正体』を知られないように、慎重に立ち回る必要があった。

(バレないようにしなきゃいけないから…………)

(あ…………『いい事』思い付いた…………)

(ちょっと『口調』とか変えてみよっかな…………)

857ソラ『ステインド・スカイ』:2021/03/13(土) 10:38:45
住宅街での出来事

自分のスタンドである杖をクラブに、ゴルフに興じている

「ちょっと打ちにくいな…」

ボールをちょっと小突き、能力で眼前まで浮上させる
ボールは雲に覆われその場に固定される

「よし」

杖をバットのようにして野球のようにフルスイング!

カキィィィン!

ガシャァァァン!

不味い!荒木さんのお宅に入ってしまった!
荒木さんはソラが知る限り、この世で最も恐ろしい存在だ…
捕まったら四肢をバラバラにされ、臓器を売られてしまう!

ソラに与えられた選択肢は3つ
1素直に謝る
2さっさと逃げる
3通りかかった>>858に罪を着せる

858石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2021/03/13(土) 11:34:06
>>857(ソラ)
巻き込まれた。

「おっ、なんだなんだ?」

「なんか割れた音がしたぞ?」
シャチの背ビレみてーな逆立った頭をしたガタイがよくて目つきの悪い清月学園中等部三年生(15歳)が通りがかりましたよ。(説明セリフ)

859ソラ『ステインド・スカイ』:2021/03/13(土) 11:52:08
>>858
何だか目つきが悪いし、こいつならいいか…
いや、よくない!
何の罪も無い人を生贄にするなんてよくないよ

ソラは素直に謝りに行く事にした


ピンポーン

中からスキンヘッドで筋肉隆々
肉切り包丁を持った肉屋(ブッチャー)の荒木さん(本日休日)が現れた!

「ご、ごめんなさい…」

荒木さん「素直に謝れて偉い!今度からこんな事しちゃ駄目だぞ」

「ゆ、許していただけるんですか?」

荒木さん「とでも言うと思ったか!?
     慰謝料5000万円払ってもらおう!」

「5000万円!?そんなに払えないよ!」

全面的に悪いのはこちらだが、そんなに払えるわけがない!

荒木さん「無ければ肝臓を売れ!」


何やらもめているようだ
助けてやるのもいいし、このまま見物するのも一興だろう

860石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2021/03/13(土) 13:28:34
>>859(ソラ)
(クサリをはずしてやるか)
 →(このままながめてるのもいいか)

石動のおはだのつやが3上がった!

861ソラ『ステインド・スカイ』:2021/03/13(土) 14:10:51
>>860
荒木さん「俺様が直々に解体してやろう!」

肉切り包丁がソラに振り下ろされる!

ガキィィィン!

しかし鋼鉄並みの強度を持つ杖で防いだ!

「うおおおおおおお!解体されてたまるか!」

荒木さん「小癪なああああああああああああああああああああああああああああああ!」

ソラは一目散に逃げ出した!

荒木さん「逃がすかぼけえええええええええええええええええええええええええええ!」

荒木さんはソラを追いかけて行った!

その後、ソラが無事逃げられたかは定かではない

862石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2021/03/13(土) 14:26:48
>>861
「今日も星見町は平和だなー」
何事もなかったかのように立ち去った。

けいけんちを1919ポイントかくとく!(いみがない)

863『幕間』:2021/03/22(月) 18:48:32

「………………なんで」

      ボソッ

『Luna-Polis』に戻るなり、『御影憂』は恨めしそうに呟いた。
『度会一生』は椅子に腰を下ろし、御影を見つめ返す。
歓楽街の『多国籍料理店』が、違法行為で摘発された。
その前で、二人は『円谷世良楽』と出くわしたのだ。
御影の不満は、そこでのやり取りにあった。

「『円谷世良楽』は使える」

「『友達』は大事にしろ」

御影も度会の意図は理解していた。
しかし、円谷は御影が最も苦手とするタイプの人間だ。
正直な所、どうにも近寄りにくいのは否めない。

「『あの事』だけど…………」

「例の『ホームレス』の件か?」

気を取り直した御影が口にしたのは、
『烏兎ヶ池神社』で目撃したスタンド使いの事だ。
人目を避けて、『スタンドの訓練』を行っていたようだった。
その事実を度会に報告したのは数日前だ。

「奴に関しては、まだ情報が少ない。
 だが、ああいった連中が住み着いている場所には、
 大よその検討がつく。
 少し前に警察の『手入れ』があったと桐谷が言っていた」

「そいつに対する『評定』だが、
 今の所『警戒』までは行っていない。
 せいぜい『注意』止まりだ」

「勿論、『現段階では』の話だが」

「…………もし見かけたら?」

「それとなく近付いて話を聞き出せ。
 どういう人間なのか掴みたい」

「まぁ…………いいけど…………」

長い前髪を垂らしながら、御影が頷く。
その時、度会のスマホが振動した。
発信者は『桐谷研吾』。

「――――分かった。後は、こちらで対応する」

         ピッ

「『見つけた』そうだ。出掛けるぞ」

864風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 19:03:02
欲しい物を頼む場所といえば基本は通販サイトであるが、通販を待つ暇もない時は、どこに向かうべきか?
その答えは様々であるが、日用品にジャンルを限るのであれば『ホームセンター』になるだろう。
そして、『アリーナ』での試合を明日に控えた風歌鈴音は、警備員に追い出されない程度には臭わない服装をして、銭湯に入った上で『持ち込む』ための物品を買いに来ていた。

(前回は『打ち合わせ』があったが、今度は『試合』に直行だ……『持ってかねえと、持ち込めねぇ』)

『ダストデビル・ドライヴ』の性質上、モノを持ち込めると持ち込めないとでは、戦いの幅に大きな差が出てくる。突風と浮遊だけでは、『決め手』に欠ける。
何かしら使えるモノを持ち込むのは、当然の判断だった。

(……『持ち込み禁止』とか、服も『試合用のコスチューム』とか、『その場』で告げられたらどうしょうもねえが、準備はしといて損はねぇだろ)

無為に終わる可能性が高い『準備』であるが、諦めて何もしないのは生き様としての『ゴミ』である。そこから逃げ出す風歌が、それを為す訳には行かなかった。
既に、『買うもの』のリストアップは済ませていた。

(『カップ酒』は途中で買うとして……『画鋲』、一箱。『一味唐辛子』、一袋、えっと、『カラビナ』ってのは……あったあった)

次々と欲しい物を探していく風歌は、最後の本命を探し始め――見つけた。

「あった」

――『鎖』である。
様々な太さの鎖が、『メートル売り』で売られている中で、風歌は、手から垂らした『ステンレス』の鎖を――己の手に重ねるようにして具現化した『ダストデビル・ドライヴ』の手でも触れ、重さと硬さを確かめる。

(買うのは。1m。『チェーンベルト』って形で持ち込めたらいいんだが……アタシの腹は薄いからな……不自然だからやめろって言われたらそれまでか)

それでも、備えない理由はない。無駄になるかはさておき『やれる事はやる』のが、今の風歌の生き方である。

(よし、『1m』)

『ダストデビル・ドライヴ』を顕現させながら『1m』を測った風歌は、周囲の店員を探し始めた。

865御影憂『ナハトワハト』:2021/03/22(月) 20:06:35
>>433

たまたまタイミングが合わなかったのか、
近くに店員らしき人間は見当たらない。

                ――――――と。

      「………………」

やや離れた所にいた女と目が合った。
とはいえ、正確には少し違ったが。
その女は異様に前髪が長く、
辛うじて片方の目が見える程度だったのだから。
風歌は、どこかで見たような気がするかもしれない。
ごく最近――――『遊園地』か何処かで…………。

866風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 20:27:04
>>865
『自分』に向けられた視線――風歌は一瞬、『ホームレス』に対する不快な眼差しかとも思ったが、違う。
どうにも、『測る』ような視線である。
そして――あの、『遊園地』で、確か……『セララ』と少し話している姿を、ちらりと見たような気がする。あの時、自分の今後が怖くて一瞬見ただけであったが。
それが、見間違いでないのなら、あの状況、あの場所で『話していた』……そして、今、自分を『見ている』
ならば、それは。

「あんた……遊園地で『セララ』と話していた……もしかして、アンタも『持ってる』クチかい?」

『ダストデビル・ドライヴ』を微かに前に出しながら、風歌は静かに問うた。
前に出た『スタンド』が見えているのであれば、『何を』持っているかは、解るだろう。

867御影憂『ナハトワハト』:2021/03/22(月) 20:37:46
>>866

白いワンピースを着た異様に前髪の長い女。
その佇まいは、差し詰め『ジャパニーズホラー』のようだ。
こんな目立つ格好の人間は、そうはいないだろう。

「あぁ………………」

    ボソッ

「………………『あの時の』」

現れた人型スタンドを一瞥し、ぽつりと呟く。
その言葉には、『二重の意味』が含まれていた。
『遊園地』という意味と、『神社』という意味だ。
もっとも、それを知らない相手には『片方』しか分かるまい。

「『友達』………………」

      ボソ ボソ

「………………だけど」

御影にとって、『世良楽』は苦手な相手だ。
しかし、ここは利用させてもらおう。
実際、彼女は御影を『友達』だと思っている。
『デタラメ』にはならない。

868風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 20:52:58
>>867
「友達、か」

口からでまかせかとも思ったが、あの時のセララの態度を思い返すに嘘ではあるまい。
そして、風歌の見た限りは能天気な馬鹿にも見えたが、『戦闘』における動きを見た所決して感働きと嗅覚はむしろ獣の如くに冴えている。目の前の女に悪意があれば距離を取る程度の察知力はあるだろう。

「それで、アタシになんか用か?『出すもの』はまぁ、『出してるんだが』。これは単に鎖の手触りを確かめてるだけだぜ?」

入店拒否を受けるほどではないが、清潔な風体とは言えないのが風歌である。『スタンド』を用いた万引と思われたのかも知れない。足下の買い物籠に入っている『一味』と『画鋲』『カラビナ』の品々の珍妙さも、意識を引いたのかとも風歌は思うが、まず疑ったのは万引扱いであった。

869御影憂『ナハトワハト』:2021/03/22(月) 21:16:04
>>868

「別に…………用って程じゃないけど…………」

        ジッ

「『どこかで見た事がある』と思ったから…………」

       スタ スタ スタ

そのまま近付いていく。
話をするためでもあり、籠の中身を確認する目的もあった。
見えた商品は記憶に留めておこう。
用途は知らないが、スタンドに関わるものかもしれない。
神社での『訓練』を見るに、その可能性は十分にある。

「………………『御影憂』」

「この前は…………『お疲れ様』…………」

        ボソ ボソ

この前というのは、『遊園地の一件』の事だ。
もっとも、別の場所にいた御影は、
風歌や世良楽が具体的に何をしていたかは知らない。
それでも、ろくでもない目に遭っていた事ぐらいは想像がつく。

870風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 21:29:42
>>869
お疲れ様――その言葉に、風歌は顔を緩めた。

「全く、大変だったよ。『持って』から初めての揉め事で、何をどうしたらいいかも手探りで……」

戦いも、駆け引きも『運』と『スタンドの性能』に頼り切った様な無様である。
挙げ句、自爆じみたやり方で社会的にも死にかけた――まさしく、社会のゴミに相応しい有り様であった。

「ま、どうにかはなったし。『足りねーモノ』も見えてきたからな」

しかし、得たものもある。経験を得て、己に足りぬものを知った。
出会いも経た。そこから導かれた、戦いも得た。

「だから、似たような事があっても、もう少しはマシに動けるし、動く為の『買い物』をしてんのさ」

暗に、万引ではなく買い物であると強調する風歌は、自分の能力を把握されている事と『使い道』に付いて推測されるリスクを全く把握していなかった。

871御影憂『ナハトワハト』:2021/03/22(月) 21:46:44
>>870

「………………分かる」

          コク…………

(やっぱり…………『なった』のは最近…………)

頭の中で、『神社で見た光景』と重ね合わせる。
想像はしていたが、推測は概ね当たっていたようだ。
そして、同じ時に『能力』は『見ている』。
『風』を生む能力と、これらの物品。
おそらくは、組み合わせて何かする気なのだろう。

「そういうの…………大事だと思う…………」

「私も…………そんなに経ってないから…………」

これには『嘘』が混じっていた。
御影がスタンド使いになったのは、ずっと前の事だ。
そして、世良楽に対しても、同じように言ってあった。

「――――『アリーナ』って知ってる?」

「…………そういう所があるんだって」

「世良楽から聞いた…………」

『アリーナ』の名前を出したのは、
どこまで知っているのか探りを入れるためだった。
ちょっと見ただけだったが、
『アリーナ』のスタンド使いと組んでいた様子だった。
その辺りを知っておこうという意図だ。

872風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 22:01:16
>>871
「『アリーナ』?」

風歌は、どのように答えたものかを迷う。
スタンド使いであれば『誰も』が知っているような組織ではないだろうし、『かつて敵対していた組織』が存在するのならば、『違う組織』もあるだろう。
もしや、その類かとも風歌は思うが、『アリーナで試合をした』自分の事を知らないということは、アリーナに対する知識が無いか薄いとも考えられる。
……どこからも『完全な他言無用』を命じられている訳ではない。探る意味も込めて、風歌はアリーナに対する率直な印象を口にした。

「『所』は、よく知らねーが。アタシの知る限りでは、『スタンド使いのヤクザ』って感じだな。『テッペン』のねぇ、二次団体だけのヤクザって感じだ」

873御影憂『ナハトワハト』:2021/03/22(月) 22:18:26
>>872

「へぇー………………」

そもそもが『なりたて』のスタンド使い。
『アリーナ』について詳しいとも思えない。
それを踏まえた上での問い掛けだったが、
やはり繋がりは薄いような気がする。
少なくとも、『遊園地以前』から、
何らかの繋がりがあったようには見えない。

「ちょっとだけ聞いたから…………。
 どんなのか気になってた…………」

「『知らない』んなら…………それでいい…………」

『アリーナ』がどういう組織か。
それは既に知っている。
『アリーナと敵対する者達』がいる事も。
御影の一派にとっては、どちらも警戒すべき相手だ。

「『スタンド使い同士』は出会いやすいんだって…………」

「…………『連絡先交換』しない?」

         スッ

「『遊園地仲間』って事で…………」

そう言って、おもむろに『スマホ』を取り出す。
『スマホを持っているか』を確かめる意味もある。
別に持っていなくても構わないが、
もし持っていたなら『儲けもの』だ。

874風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 22:26:23
>>873


「ああ、いいぜ。袖振り合うも多生の縁ってな」

スタンド使いの世界について全く解らぬ風歌であるが、『同類』との連絡ルートは増やしておいて損はないだろう。
『アリーナ』とて、複数の派閥がある。そして、いろいろな所から見る事で見えてくる物もある。
新たな『縁』がなにか、『新しいもの』を風歌に運ぶかも知れないのだ。

「ほらよ」

風歌はスマホを取り出した。

「『アプリ』は分かんねーから。『番号』でいいか?」

875御影憂『ナハトワハト』:2021/03/22(月) 22:38:06
>>874

    ススッ

「『これ』…………私の番号…………」

「掛けてくれたら…………登録するから…………」

『電話番号』を表示させた画面を見せる。
こちらに掛けてもらえば着信履歴が残る。
あとは、それを登録しておけばいい。

「『名前』…………」

「名前…………聞いたっけ…………?」

「『登録』しなきゃいけないから…………」

ついでに『名前』も聞き出しておこう。
『番号登録』という名目があれば、それも自然になる。
もっとも、この程度なら普通に尋ねたとしても、
さほど不自然にはならないと思うが。

876風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 22:44:49
>>875
「アタシの名前は風歌鈴音。風の歌に、鈴の音だ」

自らの名を名乗った風歌は、早速『言われた番号』を打ち始める。登録名は、もちろん名乗られた通りの『御影憂』だ。
そして、番号を打ち終えた風歌は、掛けた。

877御影憂『ナハトワハト』:2021/03/22(月) 23:05:58
>>876

「ありがと…………」

      ピッ

「『風歌鈴音』…………」

            「…………『登録完了』」

『名前』と『連絡先』を得た。
十分な収穫だ。
そろそろ引き上げてもいいだろう。

「じゃ…………買い物があるから…………」

         スッ

              「『また』…………」

                      スタ スタ スタ…………

スマホをしまい、別れの挨拶を告げる。
そして、その姿が棚の後ろに消えていった。
おそらく、別の売り場に向かったのだろう。

878風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/03/22(月) 23:20:11
>>877
「ああ、またな」

新たな出会いを、手を振って送った風歌――『いい』収穫である。
人付き合いが増えるのは、ホームレスである風歌にとって良いことだ。新しい何かは、常に新しい何かしらを生むのだから。
そして、明日。風歌を新たな戦いが待つ。

「さて、と」

買うべきものは、全て見繕った。後は鎖を切ってもらわねばならない。
風歌は、店員を待つのをやめ、探しにその場を離れた。

879『ラッコを探そう』:2021/03/23(火) 19:57:20

『桐谷』の報告を受けて、『度会』と『御影』は『海』を訪れた。
まだシーズンオフという事もあって、他の人間はいない。
一枚の『チラシ』を手にした度会が、海面の一点を指差す。

「――――――『あれ』だ」

          プカプカ

そこには、『毛むくじゃらの生物』が浮かんでいた。
海棲哺乳類――『ラッコ』だ。
最近になって、街の各所で時折その姿が目撃されている。
まさか複数いるとも思えない。
おそらくは、『チラシの裏に描かれた絵』と同一の存在だ。

「…………『舟』が見える」

      バァァァァァァァァァァ――――――ッ

御影には、ラッコの周囲を航行する『ボート』が見えていた。
それが『スタンド』である事に疑いの余地は無い。
『本体』がラッコであろうという事も。

「呼び掛けてみろ。
 『スタンド使い同士』なら意思の疎通が行えるかもしれない」

「………………『ラッコ』と?」

「いいから試せ」

「…………分かった」

    ズズズ……

御影は、渋々『ナハトワハト』を発現した。
『闇色の外套と帽子』を身に纏った御影が、
海に浮かぶラッコを見据える。
しばらくの間、無言の時が流れた。

  スィィィ――――――ッ

      「あ…………こっち来た…………」

                         ザザァッ

波間を漂っていたラッコが砂浜に上がる。
『ボート』は消えていたが、『万一』の場合を考えて、
御影は度会の前に出た。
二人を見つめる『つぶらな瞳』からは、
何を考えているのかは窺い知れない。

「通じたか?」

「さぁ…………だって『ラッコ』だし…………」

やがて、ラッコは人間達に背を向け、
のんびりと浜辺を歩き始める。
『乱獲された歴史』を持つ動物にしては、
あまりにも無防備な姿だった。
何かあっても対処できる用意があるのか、
それとも何も考えていないだけか。

「……まぁ、いい。
 存在を確認する事は出来た。
 手懐ければ『使える』かと思ったが、
 それには時間が掛かるだろうな」

            パシャッ

スマホを構えた御影が、ラッコの姿を撮影した。
被写体となったラッコは、砂浜に落ちていた貝殻を弄っている。
果てしなく『平和な光景』だった。

「――――帰るぞ」

「…………了解」

880円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/03/26(金) 01:25:13

「うーん、いないですねーっ『ラッコ』なんて」

881円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/03/26(金) 01:27:07

砂浜、波打ち際。
冬は終わりつつあるとはいえ、
海水浴にはまだまだ早いのだが。

「うーん、いないですねーっ『ラッコ』なんて!」

黒いキャップを被り、
パーカーを羽織った少女が歩いている。

「あーあー、目撃情報の噂あったんだけどなー」

話しかけているのは、
通話でもしているのか、それとも>>882に対してなのか――――

882宗像征爾『アヴィーチー』:2021/03/27(土) 11:13:20
>>881

やや離れた砂浜に人影が見える。
カーキ色の作業服を着た男だ。
男は何をするでも無く、海の方に視線を向けていた。

その先の海面に『何か』が漂っているようだ。
ただ、今の位置からは見えづらい。
もう少し近付いてみれば正体が分かるだろう。

883円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/03/27(土) 18:05:31
>>882

耳に付けた『ワイヤレスイヤホン』に触れつつ、
周囲を見渡していると、その光景が目に入った。

「あ! ちょっと待ってー。
 なんか知ってそうな人いたんで!
 その人に聞いてみまーす」

     「はーい! あとでまたかけ直すネ」
 
            ピ

なんか知ってそうな人、とは宗像だ。
他には人っ子一人いないのだから。

「あのあのーっもしもーしすみませーん!
 ちょっと聞きたい事あるんだけど、良いですかーっ?」

        ザッ
           ザッ

そして、海に浮かぶ何かを横目に見つつ、
セララは宗像の方へと歩いていく。

作業服を『仕事着』と捉え、
今『仕事中』――即ち海に詳しい人だと考えているのだ。

884宗像征爾『アヴィーチー』:2021/03/27(土) 18:40:57
>>883

いつの間にか、俺は『海』に立っていた。
覚えている限り、これといった理由は無い筈だ。
ただ足の向くままに歩き続け、気付けば海に来ていた。
あるいは、無意識に引き寄せられる『何か』が、
ここにあったのかもしれない。
だが、それが何であるかは分からなかった。

「あぁ――」

「別に構わない」

聞こえてきた声に反応し、おもむろに振り返る。
最初、自分が呼び掛けられているとは思わなかった。
しかし、それらしい人間が他にいない以上、
自分が応じるべきなのだろう。

「俺に分かる事なら答える」

「何を聞きたいのか知らないが」

海に浮かんでいたのは、どうやら『流木』だったらしい。
どうという事の無い漂流物だ。
波間に揺られており、特に変化が起こる気配も見られない。

885円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/03/27(土) 23:39:34
>>884

「ほんとですかー! すごいすごーい!
 分かったらいいなー、じゃあ聞きますね。
 あのあのー、おじさんって、
 この辺の『海』とかって詳しいですかー?」

「特に、ほらほら! あーゆー海の生き物とかー。あ!」

        ピッ

流木を指差してから、
それが生き物ではないと気付く。

「あはーっ、あれは『木』みたいだけどー!」

      「そーゆーの詳しかったりしますー?」

何がそんなに楽しいのかといえば、
何もなくても、話すのは楽しいものなのだ。

『海に詳しそうな人』の返答を待って、
猫のように目を輝かせて、その顔を見上げている。

886宗像征爾『アヴィーチー』:2021/03/28(日) 00:54:45
>>885

指で指された方向を視線で追う。
遠目から見ると、何かの生き物に思えたとしても、
不思議は無いだろう。
事実、一瞬それが生きているように見えたのは確かだ。

「いや――詳しいとは言えない」

「俺が知っているのは、せいぜい常識的な範囲ぐらいだ」

『塀の中』にいる間に、世の中は絶えず変化し続けていた。
そこが知っていた場所であっても、
大きく様相を変えていた事は珍しく無い。
しかし、『自然』というのは、
社会と比べれば変わりにくいものだ。
幾らかの変化はあるだろうが、目で見る限りでは、
『二十年前』と同じ風景に見える。
今のように海を目の前にしていると、
それを『実感』として強く感じた。

「それでも良ければ話を聞こう」

『役に立てるか』と言われると、肯定は出来ない。
だが、何かの足し程度にはなるかもしれない。
いずれにせよ、『答える』と返した以上は、
答えなければならない。

887円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/03/28(日) 22:10:11
>>886

「えー、詳しそうなのにー。
 でもでも、おじさん大人だし、
 多分あたしよりは詳しいですよねー!」

「あたし、常識知らないってたまに言われるしー」

       「ひどいですよねーっ!」

別に大人でなくても、
セララよりは知っているものだ。
極端に常識知らずというわけでもないが……

「それで、聞いたいことなんですけど、
 この辺ってラッコとかいるんですかー?
 似てる動物とかじゃなくて、本物の!」

「寒いとこにしかいないと思ってたんだけどさー。
 なんか、ウワサでこの辺にいるらしいって聞いたんです」

しかし質問は常識外れのものだ。
『普通に考えれば』だが、
こんなところにいるはずはない。

……もっとも、普通じゃない事はたくさんあるものだが。

888宗像征爾『アヴィーチー』:2021/03/28(日) 22:50:22
>>887

「いや――見覚えは無い」

「その話を聞いたのも今が初めてだ」

俺の知る限り、それは海の動物だった筈だ。
この場所は確かに海だが、ここにいるとは思えなかった。
あるいは、『自然は変わりにくい』と考えたのが、
そもそも間違いだったのか。

「見た事は無いが、来たのは最近だろうな」

「少なくとも、昔はいなかった」

眼前に広がる海は、昔と何ら変わっていないように見えた。
だが、そうでも無かったのかもしれない。
変わっていないように見えても、
変化というのは何処かで起こっているようだ。

「俺も世間の流れには疎い方だ」

「『これ』の使い方も、未だに慣れない」

胸ポケットからスマートフォンを取り出す。
こういった精密機器は、変化の中でも特に大きなものだ。
恐らく、今後も慣れる事は無いだろう。

889円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/03/29(月) 15:26:00
>>888

「えー! なーんだ、ざんねーん。
 まー、しょーがないですよねー。
 噂は噂だし、ほんとか分かんないしー」

「あーあ、見つけたら写真撮りたかったのになー」

セララは諦めが早い。
というより、物事にこだわらない。
楽しくならないと思っているからだ。

「え! それってもしかして、スマートフォン?
 スマホ自体が慣れないってこと?
 どれかのアプリが分かんないとか、
 機種変についてけないー、とかじゃなくて?」

「うそー、せっかく持ってるのにもったいなーい」

取り出したるスマホを眺め、
不思議そうに首を傾げたが……

「おじさん、だったらあたしが教えたげますよ!
 ここにラッコがいないって教えてくれたわけだしさー」

      「教えてくれなかったらあたし、
       何時間もここでウロウロしてたかもー」

思いついたように、満面の笑みでそのような提案をする。
手に持ったスマホは最新機種、カバーはパンダ模様だ。

890宗像征爾『アヴィーチー』:2021/03/29(月) 17:27:09
>>889

男のスマートフォンには、カバーが使われていなかった。
保護フィルムも貼られていない。
そのせいか、至る所に幾つも傷が付いている。

「これが主流だと言われて契約したが、
 最初は操作の仕方が分からなかった」

「昔と比べると、かなり変わったようだ」

初めて見た時は、
それが携帯電話である事さえ気付かなかった。
俺が知っていたのは、
携帯電話が普及し始めた時期の型だ。
それすらも詳しかった訳では無い。

「電話の受け答え程度しか使っていないが、
 持っていなければ仕事に支障が出る」

「今は公衆電話の数も少ない」

街を歩いていて気付いた事の一つは、
公衆電話が無い事だった。
非常時に備えて一定数は残されているらしいが、
随分と減っている。
需要の低下を考えれば当然の事なのだろう。

「君は『これ』に詳しそうだな」

「よければ説明してもらおう」

少女の手元を一瞥する。
飲み込めるかどうかは分からないが、
聞いておいてもいいだろう。
あるいは、その為に必要な時間は、
ラッコを探すのと同じぐらいになるかもしれないが。

891円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/03/29(月) 21:26:32
>>890

「へー、あたしはこれが普通だからなー。
 昔のって『ガラケー』ですかー?
 あたし、それと比べては説明できないかも」

「じゃーいろいろ教えたげますけどー
 よくわかんなかったらごめんなさーい」

        「何回でも聞き返してネ」

セララは特に教えるのが上手いわけではない。
『前提』を知らない宗像相手なら、なおさらだろう。

「じゃあまずー、
 何からがいいだろ。
 えーと、電話のかけ方ー?」

「あはーっ! それは分かるか!
 てゆーかあたし、電話ってあんま使わないしなー。
 でもねでもね、じゃん! 見てみてー。
 このアプリあれば電話要らずなんですよーっ」

         「相手もアプリ入れてたらですけどー」

やたらと『チャットアプリ』を入れるべきだと主張するが、
ともかく――――互いのためになる交流になった、かもしれない。

892ソラ『ステインド・スカイ』:2021/04/03(土) 09:24:09
白い髪の少女の柔らかそうなお腹を

ドゴォッ!

>>893の足が思い切り蹴り上げるッ!
ここがどこで、何故こうなったのかは>>893が詳しく説明してくれるだろう

893稲崎 充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/04/03(土) 10:04:11
>>892

     ドゴッ‼︎


「【渾沌】(ええッ!?)ーーッ!」


人気のない夜の『児童公園』にいた『ソラ』。
不意に腹部に鋭い痛みを感じ、その正体を確かめる為に顔を上げると
視線の先には『黒髪』『黒い白衣』の女性が立っていた。
明らかに狼狽えている様子の女、その背後では漕いでいたであろうブランコがギシギシと揺れている。


「【謝罪】ッ(ごめんなさい)ッ!
 ええと…【加護の水晶】(眼鏡)【加護の水晶】(眼鏡)…。
 【少女】よ、怪我はないだろうか?」


女は『黒色の白衣』から取り出した眼鏡を掛け、
恐らく『ブランコからのキック』を受け倒れてるであろう『ソラ』に駆け寄る。

894ソラ『ステインド・スカイ』:2021/04/03(土) 10:31:15
>>893
勢いのついた『ブランコキック』を受けて、血を吐き散らして吹っ飛ぶ

「う…あ……」

突然の出来事に対処出来ず、仰向けに倒れ
痛みで返事も出来ず、口から血を垂れ流しピクピクと痙攣している
重症そうだ

895稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/04/03(土) 11:30:51
>>894

   「嗚呼ッ!【少女】ッ!【月は欠けて】(怪我)いないかッ!
    ……【蟹】の様相を呈している(泡を吹いている)。

    【如何】、このままでは【新月の襲来】(危ない)ッ!
    ええい【生命鉄牛】(救急車)を急いで【召喚】(呼ぶ)べきだが」

黒い白衣のポケットを弄りスマホを取り出そうとするが、
指先には布の感触しかない。


   「こんな時に限って【依存の板】(スマホ)を【隠れ家】に【置き去り】(忘れた)。
    此のままでは【少女】の亡骸を抱え【世界の中心で愛を叫ぶ】(大変な事になる)のは必至ッ!
    だ、誰か【死殺者】(お医者さん)を呼んでくれェーーッ!
    ッて、【死の殺戮者】(医者)は【我】(私)だ!!  …!!」



ズギュンッ  ズギュンッ



   「【混濁街より産まれし闇を切り裂く天使と光を呑み込む悪魔】
    (『ショッカー・イン・グルームタウン』)」


自らの両手に二対の刃渡り50cm程の『刀』のスタンド、
『ショッカー・イン・グルームタウン』を発現。
(右手に握った『刀』は真っ黒に、逆に左手の『刀』は真白に染まっている)


   「【漆黒丸】!【光輪丸】!」

                     ザスザスッ!

両手の『双剣』を『ソラ』の腹部に突き刺し、『電流化』。
『電流』と化した『双剣』は対象と接している間は、
一切の痛みを与える事なく『電気療法』の要領で患部の痛みを抑え疲労を癒す。
おそらくこれで、目を覚ますはず。

896ソラ『ステインド・スカイ』:2021/04/03(土) 11:49:15
>>895
「う、うぅ…」

『電気療法』が効いたおかげか、
目を覚まして、ゆっくりと体を起こした

「ここはどこ…?
 私は誰…?貴方は…?」

ショックで記憶を失っている…!?

897稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/04/03(土) 13:20:03
>>896


「【善】(良かった)ッ!
 【漆黒丸】(『ショッカー・イン・グルームタウンA』)、
 【光輪丸】(『ショッカー・イン・グルームタウンB』)よ、
 【混沌の双剣】よ【我】が【鞘】に納まるがいい…」


『ソラ』が意識を取り戻したのを確認したのならば、
『ショッカー・イン・グルームタウン』を解除し、
目を覚ました『ソラ』が体を起こすのを手伝う。


「【少女】よ、自我を取り戻したか?
 【我】(私)の【真名】(名前)は『稲崎充希』」


「【残党狩り】(残業)からの解放感と、
 明日からの【鎖の休戦】(連休)で、正直浮かれていてな…。
 【隠れ家】(自宅)で【密造】せし【般若湯】(自家製果実酒)を嗜んでいたのが、
 【デュオニュソス】に誑かされ(酔っちゃって)我が【隠れ家】から近し、
 此処の【児戯の箱庭】(児童公園)に【犬の奴隷ごっこ】(お散歩)をしに来た。

 そこで見つけし、あの【鞦韆】(ブランコ)で戯れていたら、
 【手綱】(鎖)の操作を誤り、そこにいた【少女】(あなた)を巻き込んでしまった。
 【埃をかぶった葡萄酒】(いい歳)なのに本当に恥ずかしい限りだ……」

         スッ


『ソラ』の後頭部をそっと撫でてコブができていないか確認する。


「……【少女】の意識に混濁が見受けられるな。
 【汝】、自らの【存在】をゆっくりと思い出され。
 まずは『深呼吸』だ。そして自らの手を眺めよ。

 【ブラックボックス】(後頭部)は打っていないとは思うが、
 【月の院】(病院)で【X線CT】を受けておいた方がいい。
 勿論、【CT】の【召喚】に必要な【金血】(費用)は【我】が支払う。
 誠に、誠に申し訳ない事をした…!」       深々と頭を下げた。

898ソラ『ステインド・スカイ』:2021/04/03(土) 13:52:52
>>897
「?????????」

頭を触ってみても、これといった外傷は無いようだったが
稲崎の難解過ぎる言語を理解出来ず頭が混乱する

「ちょっと何言ってんのか分かんないっす…」

しかし「深呼吸をしてゆっくりと思い出せ」と言われた事くらいは何とか理解した

スゥーハァースゥーハァー

「ああ!
 『ソラ』・・『藤原ソラ』だ


 ・・あとは忘れちまった」

どうやら名前を思い出したようだ

ほかにもあるのですが


・・あとは忘れちまった

899稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/04/03(土) 14:34:15
>>898


  「……【滅びし恐龍】(あんぐり)」


あせっ あせっ


自らが『記憶喪失』だとあっけらかんと告げる『藤原ソラ』、
それに対し額からジワリと汗を垂らし動揺する『稲崎充希』。
その感情を悟られまいと前髪を弄ったり、
メガネのブリッジの位置を指の背で直したりするが――『挙動不審』だ。



「な、なあ…【少女:藤原ソラ】、
 やはり【汝】は【ブラックボックス】(後頭部)を打っていたようだ。
 【真】(マジ)に【汝の船】が【難破】(記憶喪失)とはッ!!
 嗚呼っ!【我】は【老人に託されし種籾を墓標に蒔く世紀末救世主】(バカなこと)を!

 端的に述べて今、【汝】は【黄と赤の境界】(危険)に立っているのかもしれない。
 今すぐにっ!【生命鉄牛】を【召喚】してくれッ!
 【汝】、【依存の板】(スマホ)を所有してるかッ?」


片手を自らの耳元に運ぶ『ジェスチャー』をする『稲崎』。
どうやら『スマホ』で救急車を呼んでください、と言っているようだが…

900ソラ『ステインド・スカイ』:2021/04/03(土) 15:22:49
>>899
「わからん!さっぱり、わからん!」

やはり言葉の意味を理解出来ずお手上げ状態
何とか解読しようと頭をフル回転させるも

「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

脳がオーバーヒートを起こしてしまい再び倒れてしまった

「思い…出した!」

そのショックで思い出した事がある
稲崎とは関係無く、元から記憶喪失だったという事だ

「稲崎さん、ありがとう!
 あなたのおかげで覚えていないという事を思い出したよ!
 おかげですっきりした!」

記憶喪失に記憶喪失を重ね掛かけしたのは蹴り飛ばした稲崎のせいなのだが
そんな事は知らないソラは稲崎に感謝の握手を送る

ちなみにだが、文無しのソラはスマホなんて高価な物を持ち合わせているわけがなかった

901稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/04/04(日) 00:18:36
>>900

     「【応】…?(ええ)」


頭に疑問符を浮かべたまま、ソラの握手に応じる。

「【残酷な天使と人造人間】(よくわからない)だが……
 とにかく【汝】が【満月】(無事)ならば安堵で狂い悶える【世界線】だ。
 【背筋を鉄の如く正し】(気を付けて)【隠れ家】(家)まで帰ってくれ…」

902ソラ『ステインド・スカイ』:2021/04/04(日) 08:09:15
>>901
「何言ってるのか分かんないけど、そっちも気を付けてね」

用事を済ませて、公園から帰る事にしたソラくんだったが

「…そもそも何しにこんな所に来たんだっけ…?
 うっ、思い出せない…!」

終わり

903円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/07(水) 19:17:51

黒いキャップをかぶり、
パンダのような色のパーカーを着た、
モカブラウンの髪の少女が、
ベンチに腰掛けアイスを食べている。

「〜♪」

『冬』が終わったから、アイスはより美味しくなる。
なお、現在は待ち合わせの最中。これから遊びに行く予定だ。

904七篠 譲葉『リルトランク』:2021/04/07(水) 19:18:28
>>903

「あ! 円谷さん!」

 七篠は星見駅に面した街道をきょろきょろと辺りを見回しながら歩いていた。
 ベンチに腰をかけている同級生、円谷を見つけ手を振りながら近付いていく。

「ごめんなさい、円谷さんを待たせてしまって。
 アイス食べ終わるまで待つので焦らないで大丈夫ですので。」

 そう言って自分も持ってきた水筒から水を飲み、一息つく。

「あ、今日は歓楽街で遊びますか? それとも、北に行ってショッピングにしますか?
 どちらでも楽しそうですよね。」

905円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/07(水) 19:19:06
>>904

「あ!! ユズちゃんユズちゃーん、こっちこっちー」

気安く呼び掛けて、
同級生の『七篠』と合流する。

「あはーっ、待ってない待ってない。
 あたしが早く来すぎただけだしネ」

         ジャクッ

「ユズちゃんと遊べると思って、
 あたし張り切っちゃいました」

チョコミントのアイスクリームを齧り、
コーンを包んでいた紙は丸めた。
張り切っているのは本当だ。
全力とか、そういうのは無いが。

「うーん、じゃあじゃあ大通りに買い物行こーよ!
 横丁よりあっちの方が店多くて楽しいと思いまーす」

「スカイモールのバスはちょっと先だしー」

ここで言う『店』というのは、
セララが好きな店という意味。
店の数自体が多いかどうかは、セララは当然知らない。

906七篠 譲葉『リルトランク』:2021/04/07(水) 19:19:37
>>905

「しばらく春休みで予定とか合わなかったですもんね。
 こうして遊ぶの、なんだか本当に久しぶりな感じがします。今日はたくさん楽しみましょうね!」

 そう言いながら大通りの方に向き、並んで歩き始める。
 束の間の帰省から戻ってきた学生も多いようで、大通りはいつもより賑わっているように見えた。

 そんな中でも、人混みーー特に女子生徒が多く集まっている店が目に付いた。

「『ぬいぐるみショップ』……?
 あれ? 新しくできたお店でしょうか?
 円谷さん、知ってます?」

 記憶が確かなら、円谷は『甘いもの』や『ぬいぐるみ』が好きだったはずだ。
 もしかしたら知っているかもしれない。

ーー私の部屋にもこんな感じのぬいぐるみがあったら可愛いだろうな…。

907円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/07(水) 19:20:12
>>906

「やったやったー! ユズちゃんやる気MAXだー」

歩調を合わせる。
それくらいはする。

「え! ぬいぐるみショップー!?
 そんなのあるの、あたし知らなかったー。
 ファンシーショップならあったと思うけど、
 ぬいぐるみ専門店だなんてスゴーい!」

  「見つけたユズちゃんもえらーい」

人だかりを眺め、声を上げる。

「ユズちゃんぬい好きなんだっけ?
 あたしは、まあまあ好きでーす。
 とりあえずあそこ入ろ入ろ!
 あ、でもでも並んでなければだけどネ」

ぬいぐるみは『好き』だ。間違いなく。
セララは好きな物がとにかく多い。
熱く燃えるような感情ではなくとも、
その一つ一つが本当に好きなのだ。

「てゆーかねえねえ、円谷さーんじゃなくて、
 『セララちゃん』って呼んでよー。
 あたしの方が偉いみたいで、なんかやですよ」

「まーユズちゃんは前からそうだし、別に良いけどー」

このやり取りは初めてでは無い。
特別に親友とかではないし、
苗字呼びはむしろ『自然』ではある。
単に、円谷世良楽という人間が『なれなれしい』だけだ。

話しながら、『ぬいぐるみショップ』へと向かっていく。

908七篠 譲葉『リルトランク』:2021/04/07(水) 19:20:48
>>907

「私も知らなかったです! もしかして最近できたのかも?
 ぬいぐるみの専門店って確かにあまり聞かないですし、ちょっと楽しみ…!」

 店内を眺めると、ブーケがいくらか置かれている。どうやら開店祝いの花のようだった。
 円谷の言葉に頷きながら店内へと歩みを進める。
 犬や猫、クマなどの定番どころから、パンダのような動物園の周辺でなければなかなか見つけられないものや、トカゲなどの爬虫類のようななかなか珍しいものまで。専門店と謳うのも納得の品揃えだ。

「なんだか、普段名字で呼ぶことが多いから名前で呼ぶのって気恥ずかしくって……。
 …セララちゃ……やっぱり恥ずかしいです…!
 あ、この猫さん、セ…円谷さんに似てる……。」

 七篠は顔を赤くしながら、『猫のぬいぐるみ』を手に取る。
 焦げ茶の毛並みに黒くくりくりとした目が可愛らしいぬいぐるみだ。

909円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/07(水) 19:21:30
>>908

「ねー! スカイモールにもこんなの無いよね!
 あたしも見るの楽しみー。
 おっきいパンダのぬいぐるみとか、あるかなー」

       ウィーン…

自動ドアを潜って店内へ。
珍しいぬいぐるみに視線を巡らせ、
それから『七篠』の方を見る。

「んー? 恥ずかしいなら別にいいよー。
 友達として呼んでくれてるならネ」

      ゴソ

「え! それ、あたしに似てるー? 本当かな。
 でも、ってことはかわいいってコトですね!
 じゃあじゃあ、それ買っちゃいなよユズちゃん!」

手に取ったぬいぐるみを見て屈託なく笑う。
確かに似てる、かもしれない。

「あたしはどれ買おうかなー。
 ユズちゃんに似てるのどれだろ! このチワワ?
 こっちの芝? あはーっ、パグは違うよねー!」

「あ! ボルゾイもある! 見て見て! ちょっと大き過ぎ?」

それから、自分のぬいぐるみも探し始める。 

「やばーい! 今日お金あるからどれでも買えちゃう!!」

       「一個にしなきゃだなーっ。
        この後もお店行くし! ね!
        行くでしょユズちゃーん?」

『お金』については――セララの家はデカい。
そして七篠と違い、家に一切の悪感情は無いらしかった。

910七篠 譲葉『リルトランク』:2021/04/07(水) 19:23:27
>>909

「も、もちろん、円谷さんは大切なお友達です!」

 先ほどの名前を呼ぼうとした一件を引きずり、頬が赤いまま七篠は言葉を返した。
 大切なお友達だから、自分のことを親がつけた『譲葉』ではなく『ユズ』と呼んでくれる友人だから期待に応えたかった。
 だが、そう簡単に習慣は変えられなかった。

 ちらと円谷を見ると、彼女の持つぬいぐるみたちはどれも『犬のぬいぐるみ』で、七篠が犬が好きなのを意識してるのだろうと感じる。

ーー嬉しい。円谷さんは私を見てくれてる。
ーーいつか、『円谷さん』ではなく『セララちゃん』と、彼女の望む呼び名で呼べるように練習しよう。

「円谷さんに似た『猫さん』買ってきちゃいますね。
 帰ったら机に飾ろうかな?」

 そして、会計を済まし、未だに複数のぬいぐるみたちを手に悩んでいる円谷の声に応える。

「はい! ぜひ!
 このあとも遊ぶんですから、荷物はほどほどにしとかないと大変ですよ?」

911円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/07(水) 19:23:58
>>910

「だよねーっ! あたしもユズちゃんの事、
 友達だと思ってるもん! あたし達おんなじだ」

セララは純粋な笑みを浮かべる。

「だから一個にするなら、この犬にしよーっと。
 これが一番ユズちゃんに似てる気がするしー。
 パンダは、また今度でいーや」

茶色い犬のぬいぐるみを手に取る。
家にある他の物に並ぶだけの価値は、間違いなくある。

「買ってきたよ、おまたせー。
 ユズちゃん、これさー、
 ユズちゃんだと思って大事にするネ」
 
「……あはははは! なんてねー!
 うそうそ! そーゆーのは重い重ーい」

会計を済ませて来るや否や、そんなことを言い出す。
声色に、本気の色は一切ない。完全なる軽口だ。

「まー大事にはしますけどー。
 ね、ね、それで、次どうするー?
 ユズちゃーん、なにか買いたいものとかある?
 お洋服とかー、あとなんだろ、アクセ? コスメ?」

    「あーでも、甘い物食べに行くとかもありかなー?
      あーあどーしよー! 全部楽しそう過ぎて決めらんない」

路地にはいくらでも、たいていの店はある。セララは何でも楽しめる。

912七篠 譲葉『リルトランク』:2021/04/07(水) 19:24:36
>>911

ーーなんだか、また顔が赤くなった気がする。

 円谷の持つビニール袋の中には、彼女が"七篠に似ている"と評したぬいぐるみが入っている。
 七篠自身も"円谷に似ている"ということで猫のぬいぐるみを購入したのでやっていることは同じはずなのだが。
 大切な友人が好きなパンダを置いて、自分に似たものを選んでくれたというのが嬉しかったのかもしれない。
 七篠はにこりと笑って少しおどけた口調で返した。

「ふふ、私も円谷さんだと思って大切にしますよ、なんて。」

「んと、ちょっと文房具を見に行きたいんです。お付き合いいただいてもいいですか?」

 新学期の準備に不足があった、そう匂わせながら『リルトランク』に必要な『植物製品』を見に行きたいと考える。
 強粘着で大きめの付箋であれば壁に貼って、ラベンダーを枕元に生やすこともできるし、解除して何度も使うことができる。
 『リルトランク』との付き合いの中で、『木の枝』をどう生やすかに悩んだ末の提案だった。

913円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/07(水) 23:07:34
>>912

「えー! どうしよどうしよ、
 ユズちゃんも重い子になっちゃったー!」

セララの口から出る言葉に、
それこそ重みはなかった。
悪いことなのかどうかは分からない。

「文房具? 付き合うよー。
 あ! あたしも今シャー芯切れてたかも!
 ちょうどいいや、行こ行こー」

近場には『文具店』も勿論ある。
セララはこだわりが無いので、
足が向く先は『文具チェーン店』だ。

「……でさでさ、ユズちゃん何買うのー?
 いい匂いする消しゴム? キラキラするノリとか?」

「それともちょっと良いシャーペンとか? 先が回るやつ」

七篠の『お目当て』は知らないし、
知ったとして、その『用途』は分かりようもない。

「あ! 見てみて、新生活フェアだって! フレッシュー!」

新生活――『スタンドを得た』時期には、
セララもまた練習などをしていたのだが、
動かせるようになってからは、必死にはやらなくなった。

914七篠 譲葉『リルトランク』:2021/04/07(水) 23:57:11
>>913
「ふふ、友達が大好きすぎて重たい、悪い子ですよー? 大変ですよー?」

 おどけた調子のまま、円谷の言葉に乗る。
 確かに自分自身、人に向ける感情が重たいことは自覚している。家族との仲がすこし冷たい分、外に求めている部分はあるのだろう。

 円谷の先導のまま、『文具チェーン店』に入る。
 店内は広く、学校で必要になる文房具はまず揃いそうな品揃えだ。

「えと、今日は『付箋』と『ルーズリーフ』がほしいんです。
 新学期でノートを取るときに色が違う付箋とか使い分けられたら便利だなって思いまして。
 今ならまだノートもそんなに取ってないから写せますし。」

 きょろきょろと見渡していると、円谷の声で『新生活フェア』と書かれた場所が目に入る
 どうやら学生が使いそうな筆記具の他、家計簿や印鑑、春を思わせる桜の便箋などをまとめて置いているようだ。

「あ、『新生活フェア』でまとまってますね!
 探さずに済みました! こっちにペンとか『シャー芯』もありますよ。」

 そう円谷に声をかけながら、求める品を探す。

ーーあった。

 『強粘着付箋』と銘打たれた付箋は正方形をしていて、しっかりとメモしたいときに使えるぐらいの大きめのものだ。
 寮の壁に貼ることを考え、どの色がいいか悩んだ末に薄茶と白を。そして実際にノートに貼るために赤・青・黄のパステルカラーのものを買うことに決めた。
 『ルーズリーフ』は白だと照り返しが目によくないと聞いたことがある為、薄茶のものを選んだ。

ーー家に帰ったらこれでいろいろ試してみよう。

 まだまだ『スタンド』については無知だが、せっかく得た才能なのだからきちんと使ってあげたい。
 美味しい柑橘類を食べるだけでなく、ラベンダーで安眠、クローゼットにクチナシを生やして服に香りを移して香水代わりと想像は膨らむ七篠だった。

 会計を済まし戻ってくると、どうやら円谷も一通り見終わったように見えた。

「私の方は買い終わりました。んと、円谷さんは他に買うものとかありますか?
 別のお店にも行きますか?」

915円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/08(木) 23:48:03
>>914

「うそー! やだなやだな、重いのこわーい。
 でも、あたしってよく軽いって言われるしー、
 凸凹の方が良いっていうから、ちょーどいーかもネ」

言葉はまさしく軽かった。
だが、本音と重さは必ずしも両立しない。
羽のように軽い言葉の中に、真実はある。

「え! 写すって、書き写すってコト!?
 すごーい、まっじめー。
 あたしなら切って糊で貼っちゃうか、
 コピーしてそれを貼っちゃうよー」

「じゃ、あたしシャーペン見てるから!
 ユズちゃんゆっくり見てていーよー」

と、実際シャーペン売り場を見ていた。
そしてルーズリーフを買う頃に『先が回るペン』と、
シャー芯を買ってレジに並び、待たせない。
そういう社交性は持ち合わせていた。

「あたしも今終わったとこ!
 見てこれ見てこれ、じゃん!
 先が回って折れにくいペンー! クルクルクルクル!」

たいして珍しいものではないが……
ともかく、お目当ては見つかった。お互いに。

「ここでは他はいいかなー、文房具切らしてないし!
 ねえねえユズちゃん、あたしお腹空いてきたかも!」

       「何か食べに行こーよー。
        お店でも、屋台とかでもあたしいーよ」

だが……どうやらこの『遊び』はまだまだ続きそうだ。
友達と休みの日に会えば、ずっと遊んでいたいものだから。

916七篠 譲葉『リルトランク』:2021/04/09(金) 00:01:49
>>915
 円谷も会計が終わっていたようだった。
 彼女の持つペンは書くごとに芯が回転し、尖った状態を維持する上に折れにくいため書きやすいと評判のシャーペンだ。

「わ、よかったですね!
 それすごく書きやすいんですよね。今度使った感想聞きたいです!」

 互いに求めるものが見つかり、円谷が空腹を覚えたこともあり、二人で店を後にした。
 食べたいものを話しながら、ふらふらと通りを進んでいく。

「この時間だとお茶とかいいですよね。
 パンケーキとか、蜂蜜たっぷり!」

 どうやら気の向くまま、足の向くまま、二人の休日はまだまだ続いていくようだった。

917円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/04/09(金) 00:32:17
>>916

転がる石には苔が生えぬ――――
回り続ける物は、案外劣化しないものなのだ。

「あはーっ、いいでしょいいでしょ!
 え、感想? いーよいーよ。
 むしろ聞いてほしいくらいだし―。
 あ! でもでも、代わりにお返しちょーだい!
 『ノート』出来たら、それ見せてほしいんだー」

「それでね、ノートとるコツとかも教えて欲しいでーす」

全然釣り合っていない交換を提案しつつ、
店を出ながら周囲を見渡す。

「あーあ……今、きっとあたしたちが一番楽しーよね!」

大通りの往来には、人が溢れかえる。

「アフタヌーンティーねー!
 あたしもパンケーキ好きでーす。
 ワッフルとかフレンチトーストも好き!
 やばーい、全部好きかもー!」
 
               スタ  スタ

「あとはねー、この辺のお店って何があったっけ?
 あ! なんかねなんかね、面白い外人さんのカレー屋があってさー」

            「そこのガパオが美味しいんだって!
              気になるー。ユズちゃん知ってるー!?」

                          スタ  スタ  ・・・

918甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/04/17(土) 08:49:59
星見動物霊園

「今年も来たわよ」

今日は、ペットのコーギーの命日だ
まずは、墓の掃除から始めよう
丁寧に丁寧に丁寧に

919大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/04/17(土) 19:35:27
>>918
「おやおや?」 (↓ハスキーボイス↓)
おやおや?

黄色いリボンのついたシルクハットを被った、
緑髪に右目が青で左目が赤で、
清月学園の黒い制服(改造済)に身を包んだ
男装少年(16歳女子)が通りがかった。

「これはこれは」 (↓ハスキーボイス↓)

「ボク以外の人を見るのは久しぶりだ」 (↓ハスキーボイス↓)

「ぺこり」 (↓ハスキーボイス↓)    ぺこり

シルクハットを取って甘城に軽く会釈をした。

920甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/04/17(土) 19:53:09
>>919
「…どうも」

奇妙な出で立ちの少年(女子)に、妙な事言われてしまい
うわぁ…これは変な人出会ってしまったぞ…
と、いうような顔になってしまう甘城

動物霊園にいるという事は、この少年(女子)も墓参りにでも来たのだろうか?

「貴方も…、ペットの墓参りにでも?」

掃除してる間、世間話くらいしてみてもいいか
そう思い、墓に水をかけながら問いかけてみる

921大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/04/17(土) 20:01:14
>>920
「なんだい、変な顔して」(↓ハスキーボイス↓)
顔の意図には気付かないぞ。

「うん。なってったって、ボクは手品が趣味だからね。」(↓ハスキーボイス↓)

「結構、ペットとの別れを経験しちゃってるのさ。
 どちらかというと、ペットと言うより、『手品の相棒』、『手品の助手』だね。
 手品を手伝ってくれた『ハトのポッポくん』とか、『ハムスターのはーちゃん』とか。」(↓ハスキーボイス↓)

「ああ、ボクがあんなことを考えなければ、キミたちは……よよよ」  (↓ハスキーボイス↓)
ちなみに『嘘泣き』だぞ。

922甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/04/17(土) 20:26:14
>>921
「そう…
 貴方が、その子達に何をしたのかは聞かないけど、辛いわね
 けど、一番辛かったのは、その子達でしょうね…」

その言い方から察するに
この少年が何か余計な事をしてしまったせいで亡くなってしまったのか…?
そう思い少しキツイ事を言う

「他にも動物を飼っているなら、命をもっと大切にしてちょうだいね
 人間の勝手な都合で殺されたんじゃ、たまったものじゃないでしょう」

「それにしても、それだけ別れ経験してよく精神が保てるわね
 私なんか、コーギー一匹で1年くらいは塞ぎ込んでたわ…
 辛過ぎてもう飼う気になれないわ…」

話していたら、あの子の最期の瞬間を思い出してしまった

923大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/04/17(土) 20:40:45
>>922
大神「それもそうだ」 (↓ハスキーボイス↓)

大神「ちょっと聞いてみよう」

大神「『二代目ポッポくん』、『二代目はーちゃん』、そのあたりどうなんだい?」

少年(16歳♀)のポケットから『ハト』と『ハムスター』が顔を出した。

    『二代目ポッポくん』  ポッポー

    『二代目はーちゃん』 ハムハムハム

大神「うーん……ふむふむ……
    何を言いたいのだろう……
    食べたいのは、レタス?キャベツ?ニンジン?」

どうもその子孫たちは、ほのぼのやっているようだ。

大神「そうか、コーギーが……それは、悲しいことだね。
    名前は?」

924甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/04/17(土) 20:52:45
>>923
「…」

『ハムスター』はともかく、ポケットに『ハト』を入れてるのか…
少し面食らってしまった
流石、手品師(?)というべきか

「まぁ、その子達が元気そうで何よりね…」

何にせよ今、その子孫達と仲良くそれでいいだろう

>名前は?
タオルで墓を拭いている手が止まり、思い出す…
あの名前を

「『ジャム』…
 『ジャム・ザ・ハウスネイル』よ」

925大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/04/17(土) 20:57:33
>>924
>「『ジャム』…
> 『ジャム・ザ・ハウスネイル』よ」
「んんっ?」 (↑ハスキーボイス↑)

「ハイセンスを感じるね。ジャム君か」(↓ハスキーボイス↓)

「ジャム君とは、どんな思い出が?」(↓ハスキーボイス↓)

「あと、ボクもジャム君のお墓を拭いていいかい?
 どうも手伝いたい気分なんだ。」
手伝おう。

926甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/04/18(日) 07:39:10
>>925
「そうね…、手伝ってくれるっていうんならありがたいわ」

1年間来ていなかったからか、墓には結構な汚れが溜まっている
これは掃除のし甲斐がありそうだ

>「ジャム君とは、どんな思い出が?」

「私が小さい頃に、貰われて来て、子供の頃からずっと一緒だったわ
 やんちゃで、構ってほしがりの寂しがり屋で…
 でも、私が大きくなってから、あまり構ってあげられなくなって…
 もっと構ってやればよかったわ…」

927大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/04/18(日) 10:10:29
>>926(甘城)
「そっか、手伝うよ」(↓ハスキーボイス↓)
そう言って、甘城とは反対側を掃除し始める。

「そっか。
 ジャム君は君のことを信頼してたんだね。
 だから、構ってほしかったのかもね。」



「……キミとさっぱり関係ない、ボクの身の上話をするとさ。ボクの一族はなんというか手品好きでね。」(↓ハスキーボイス↓)

「お父様は特に手品好きだった。本当に色んな動物を連れて手品してた。」(↓ハスキーボイス↓)

「だから、お父様の飼っていた動物も含めると、ボクはかなりの子たちと別れちゃってるわけ。」(↓ハスキーボイス↓)

「正直な所、その全ての子達と、ちゃんと付き合えてたかは分からない。
 もしかすると、手品嫌いの子もいたかもしれない。
 もしかすると、ボクのイタズラが原因で、ビックリして寿命が縮んじゃった子もいたかもしれない。」(↓ハスキーボイス↓)

「ただ、ボクから見ると、
 あの子達はみんな友達で、優しくて、進んで、楽しそうに、手品を手伝ってくれたように見えた。」(↓ハスキーボイス↓)

「だから、ボクはあの子達との日々を、後悔してない。
 ボクにはそう見えたし、ボクにとっては、楽しくて、優しくて、いい思い出だ。
 ボクはそう思ってるし、ボクがそう思ってる。」

「そこには、ボクのエゴ・ワガママ・偏見・不理解が、あるかもしれない。でも、その上でそう思ってる。」(↓ハスキーボイス↓)

「まぁ、ボクにはこの子達もいるしね。」

    『二代目ポッポくん』  ポッポー

    『二代目はーちゃん』 ハムハムハム

「それを背負って、それを胸に抱いて、この子達と生きるよ。それだけの話。」(↓ハスキーボイス↓)

「いやー、ごめんね。長話しちゃって。」(↓ハスキーボイス↓)

928甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/04/18(日) 10:45:27
>>927
「そうね…
 その動物達が何を考えているかなんて、こっちには分からないし
 こっちで勝手に想像するしかないけど…
 私はあの子と一緒にいられて楽しかったし、あの子も幸せだったと、勝手に思うことにするわ」

「まぁ、こんなところかしらね」

二人がかりで掃除していたために大分捗った
墓もすっかりピカピカだ

「手伝ってくれてありがとう、おかげで早めに終わったわ」

そういうと、お墓にジャム・ザ・ハウスネイルの好物だった物を供え始める

ビーフジャーキー、ササミジャーキー、サツマイモジャーキー、煮干し
etc…etc…

ちょっと供え過ぎでは?

「サービスよ」

人型のスタンドが、墓前に触れると、今度は犬用ケーキが墓前に現れる
何とも豪勢なお供え物だ

(久しぶりにスタンド使った気がする…)

929大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/04/18(日) 11:07:44
>>928
「ボクはね。そんなキミでいいと思うよ。
 世界の誰がなんと言っても、ボクはそう思うよ。」 (↓この時点では余裕のあるハスキーボイス↓)

「うーん、すっかりキレイになったね!ジャム君きっと喜んでるよ!」 (↓この時点では余裕のあるハスキーボイス↓)


>ビーフジャーキー、ササミジャーキー、サツマイモジャーキー、煮干し

「ちょっ……ポッポくん!はーちゃん!」 (ちょっとだけ高さを隠せない声↑)

ああっ!ハトとハムスターが大神さんのポケットから飛び出して、お供え物に飛びかかった!

    『二代目ポッポくん』  ポッポー (お供えを無心に食らう

    『二代目はーちゃん』 ハムハムハム (お供えを無心に食らう

「ダメだってば、これはジャムくんの……」 (余裕がなくなって、高さを隠せなくなってきた声↑↑)

   はっ……

>人型のスタンドが、墓前に触れると、今度は犬用ケーキが墓前に現れる

「きゃあっ!」 (16歳少女特有の明らかに甲高い声↑↑↑)

      ぽんっ!!!

猫耳フードを被った人狼型スタンドが大神の体から、魔法のように飛び出した!

930甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/04/18(日) 11:34:44
>>929
>ああっ!ハトとハムスターが大神さんのポケットから飛び出して、お供え物に飛びかかった!

「はぁ〜……」

供えた傍から早速物色をされて、頭を抱えて溜息をついてしまう

「まぁ、いつまでも置いておいても仕方ないし
 どうせ持って帰るつもりだったけど…」

>猫耳フードを被った人狼型スタンドが大神の体から、魔法のように飛び出した!

「ん?」

こいつもスタンド使いだったのか
しかし、スタンドとは、驚いた拍子で出て来るものなのだろうか?

「驚かしたみたいで悪かったわね、何か出ちゃったみたいだけど…」

お線香をあげ、合掌しながら言う

「じゃあ、私はそろそろ帰るわ
 また来年ね」

これは大神ではなく、ジャム・ザ・ハウスネイルに言っている
甘城は霊の存在を信じているわけではないが、もし、魂という物が存在しているとしたら
それは墓には宿っていないだろう、魂は既にあの世に旅立っているはずだ
では何故、毎年欠かさず墓参りをするのか
それはそうする事で死者を忘れないため、弔いをする事で安心を得たいからだった

931大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/04/18(日) 11:52:36
>>930
「ご、ごめんね、ボクの子たちが……」 (↓ちょっとドキドキを隠せないハスキーボイス↓)

「ば、ばいばーい」 (↓ちょっとドキドキを隠せないハスキーボイス↓)

   bye-bye!! (手をふる猫耳フードを被った人狼型スタンド

「あー、ビックリしたー。
 まさか『キミ』と同じような子がいるなんて思わなかったよ」 (16歳少女のデフォルトの地の声)

   yes-yes!! (うなづく猫耳フードを被った人狼型スタンド

「もー、手品師がビックリするなんて、ビックリなこともあるもんだねー。」 (16歳少女のデフォルトの地の声)

立ち去る。

932『その夜の翌日』:2021/04/19(月) 04:35:17

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647686/994
『その夜』の翌日――――――。

「全く大変な夜だった。本当に参ったよ」

『Luna-Polis』の一室を訪れた『桐谷研吾』は、
疲れ切った表情で口を開いた。
分厚いカーテンが引かれた室内を照らすのは、
間接照明の明かりだけであり、昼間でも薄暗い。
外界から隔絶された部屋の中で、
キーボードをタイプする音が響いている。

「あぁ…………『あれ』ね…………」

ソファーに座っていた『御影憂』が、スマホから顔を上げた。

「最初に見つけたのが僕だったんだ。
 『異臭がする』っていう通報があって、
 近くの交番に警邏命令が出されてね。
 嫌な予感はしてたんだけど、現場に行ってみたら……」

「………………『ご対面』」

御影の言葉で『その時』の光景を思い出し、
桐谷は無意識に頭を振った。

「――――『詳細』は?」

パソコンのモニターから目を離さず、
途切れる事なくタイピングを続けながら、
『度会一生』が尋ねた。

「名前は『デルデルデ・ソエ・キュイス・ザラマーン』。
 年齢は『24歳』。『移動販売のカレー屋』を経営。
 『中東』からの出稼ぎだったらしいけど、
 アパートの管理人によると日本語は流暢だったとか」

「ただ、『就労ビザ』が期限切れだったし、
 公共料金も滞納してた。
 住んでいた場所といい、
 暮らし向きは相当厳しかったんだろうと思うよ。
 売り上げはどうあれ、『あんな契約』じゃあ、
 それも当然かもしれないけど」

この世の中に、
『法に触れない犯罪』というのは確かに存在する。
それは、何も『スタンド』に限った話ではない。
悪知恵の働く人間が、
立場の弱い者を虐げて搾取するというのは、よく聞く話だ。
厄介なのは、それらが『法で認められている』事にある。
その意味では、『スタンドよりもタチが悪い』と言えるだろう。

933『その夜の翌日』:2021/04/19(月) 04:36:56
>>932

        ――――スッ

桐谷の話が一段落するのを待って、
御影がスマホを持ち上げた。

「………………『アカウント』見つけた」

「これ…………露骨に『キャラ作ってる』…………」

御影が表示させた画面を見て、桐谷が頷く。

「それも原因の一つだったのかもしれないね。
 亡くなった人が何を考えていたかなんて、
 知りようがない事だけど……」

御影は、『リーダー』である度会に視線を向けた。
彼は振り返る事なく、
パソコンに向かってタイプを続けている。
モニターには、
複雑なプログラムらしきものが表示されていた。

「『ただの自殺』を調べる価値は無い。
 やるべき事は他に腐る程ある」

         グルッ

モニターに背を向け、度会が桐谷を見やった。

「前に聞いた『空井イエリ』についてだが、
 『コンクリートの破片が浮かんでいた』というのは、
 『人型で持ち上げた』可能性が高いようには思うが、
 ヴィジョンを目撃した訳でも無い以上、断言は出来ない」

それから、度会は御影に視線を移す。
 
「空井は、お前と同じ『大学部二年生』だったな。
 『趣味』という繋がりもあるなら、より話しやすい筈だ。
 次に顔を合わせた時には、
 『能力』について探りを入れてこい」

「場合によっては、
 『スタンド使い』である事を知られても構わない。
 俺達の繋がりさえ知られなければ、何も問題は無い」

「――――『上手くやれ』」

話を終えると、度会は再びキーボードを叩き始めた。

934美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/04/20(火) 23:12:00

星見町――その何処かで『ラジオ』が流れている。

「――――今日も、あなたの隣に『電気カナリア』の囀りを」

          〜〜〜〜〜♪♪♪

「『Electric Canary Garden』――
 パーソナリティー『美作くるみ』がお送りします!」

「『春』ですねッ!
 桜の季節はちょっと過ぎちゃいましたけど、
 皆さん桜は見に行かれましたか?
 くるみはですねぇ、
 お休みの日に自然公園の桜を見に行きました!
 テイクアウトのお店で買った『バインミー』を持って。
 『バインミー』っていうのは、ベトナムのサンドイッチですね」

「やっぱり桜っていいですねぇ〜。
 華やかでありながら上品で、
 それでいて儚い雰囲気もあって……。
 『咲く姿』と同じくらい『散る姿』も美しくて、
 色んな姿で楽しませてくれるお花ですよね。
 『引き出し』の多さは、私も是非とも見習いたい所です」

「桜って明るい時に見るのも勿論いいんですけど、
 暗い時に見るのもステキだと思います!
 何となく『艶っぽい』といいますか……
 昼とは違った趣を感じるんですよね」

「仕事の帰りに通る道にも、桜の木があるんですよ。
 街灯が近くに立ってて、
 ちょうど照明が当たってる感じになってるんです。
 そこの夜桜がキレイだったんですよね〜!」

「春は『始まり』の季節……。
 新しく始めた事、これから始めようと思っている事、
 いつか始めようと思ってる事……。
 今日の『Electric Canary Garden』は、
 そんなエピソードを大募集!!
 『あなたの始まり』を、
 美作くるみが全力で応援しちゃいます!!
 もちろん、それ以外の雑談・相談・質問も大歓迎!!
 皆様からの愛あるメッセージを随時!受付中です!!」

「おっと――早速リスナーの方(>>935)から、
 お電話を頂けたようです。
 もしもし?こちらは美作くるみです!
 『お名前』か『ラジオネーム』をどうぞ〜!!」

935小翠『タキシードムーン』:2021/04/20(火) 23:46:52
>>934

星見町のどこかに大きな屋敷があった
他の家族は早くに寝てしまい、彼の自室も明かりは消している
掛け布団を頭まで被り、ラジオとスマホだけを小さな両手に持ちながら、『彼』は話をする

「え、えっと・・・・ こみどり・・・ち、違くて、ラジオネーム『ホタルオトコ』です
 こんにちわ! あ、いや、こんばんわだったっけ・・・・?」

通話先から子供に特有の高い声がする
口調やトーンを聞く限りでは少年の声の様に聞こえるだろう
彼はたどたどしい口調ながら美作に挨拶を返した

936美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/04/21(水) 00:16:24
>>935

「『ホタルオトコ』さんですね!こんにちは!
 あはは、『こんばんは』でもオッケーですよ〜」

「今日の『Electric Canary Garden』は『始まり』がテーマです。
 『これからしようと思っている事』や、
 『したいと思っている事』などなどを、
 私くるみが応援しちゃおうという企画でございます!

「『それ以外のお話』でも大丈夫ですよ〜。
 一緒に楽しくお喋りしましょうね!」

『Electric Canary Garden』は、
主に若い世代を中心に幅広いリスナーがいる。
ただ、年少のリスナーは珍しい。
予想される相手の年齢を考慮して、
普段より柔らかい口調を意識する。

「『ホタルオトコ』さんは、
 『これから始めようと思っている事』はありますか?
 くるみはですねぇ、
 ベランダで『ハーブ』を育てようかなぁ〜って思ってます!
 緑色があると落ち着きますし、
 お料理に摘み立てのハーブを使えて、
 とっても便利なんですよ〜」

937小翠『タキシードムーン』:2021/04/21(水) 00:47:55
>>936

「う、うん・・・・いつもこの番組を聞いてるから知ってます・・・・
 あっ いつも、ごかつやくを応援してます!」

自分の声がラジオから流れてくる状況に戸惑っているのか、
それとも、有名人と直接話をしている事に緊張しているのか、
所々で言葉をとちったり、思い出したかのように言葉を重ねながら、話を続けている

「へぇ〜、『ハーブ』を育ててるん・・・ですね
 うちのお母さんもよく庭でガーデニングをやってるからわかる
 女の人ってみんな植物を育てるのが好きなのかな」

美作の話を聞き、多少なりとも共感したおかげか
少しずつ、緊張感が取れたようなリラックスした話し方になってきた

「あ、そうだ、俺の話
『これからしたい事』・・・少しだけ違うかも、だけど聞いてください」

「この前、俺はすっげー悪そうなやつとケンカしたんです
 そいつは、よくわかんないけど、弱い奴をいじめてるみたいで・・・・
 それで、そいつの事がすごく許せなくなってケンカを挑んだんです」

「そしたら、俺の・・・・俺のせいでいじめられてた奴が余計に傷ついて!
 俺はどうしたら良かったのか・・・・ 何をしたらいいのかがわからなくて・・・・」

学校のともだちの話なのだろうか
少年の口からぽつぽつと『いじめ』や『ケンカ』を連想させられる話が出てくる
ずずっ、と鼻をすするような音が聞こえる

938美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/04/21(水) 01:33:50
>>937

「そうですねぇ…………」

頭の中で、慎重に考えを纏める。
話を聞く限りでは、かなりデリケートな話題のようだ。
『年齢』の事もあるし、『先生』にでもなったような気分だった。

「『ホタルオトコ』さんは、
 その人がどうして人を傷付けたのか、
 よく分からなかったんですね?」

「まずは、それを『知る』事が第一歩じゃないかと思いますよ。
 焦らなくても大丈夫。
 『何かをする』のは、それからでも遅くないの」

「それにね――分からなくなった時、
 『自分だけで考えなくちゃいけない決まり』はないんですよ。
 一人で考えても分からない事は、
 『他の人に相談する』のが近道だから」

「ほら、今も私に『相談』してくれてるでしょう?」

「友達でも家族でも誰でもいいの。
 『あなたならどう思うか』聞いてみて。
 出来るだけ『沢山の意見』を集めて、
 最後に『自分の考え』を決めればいいんだから」

「――――ね?」

通話越しに涙ぐむ相手を落ち着かせるように、
緩やかな声色で一言ずつ話す。
おそらく、彼は一人で抱え込んでしまっているのだろう。
しかし、こうして電話してきてくれたという事は、
心の中では『誰かに打ち明けたい気持ち』があるはずだ。
だから、その気持ちを肯定する事で、優しく背中を押す。
彼には、『悩みを共感してくれる人間』が必要に感じた。

939小翠『タキシードムーン』:2021/04/21(水) 20:44:09
>>938

「それは・・・・」

『あの時』の事を思い返してみる
弱い者いじめをしていた『鎖の男』の事を・・・
そういえば、あの時は立ち向かう事に必死でアイツが何を考えていたのかわからなかった
意地の悪い男だったけど、何か事情があったのかも

「わからない・・・・、です
 アイツが何でそんな事をしていたのか・・・・俺は聞こうとも思わなかった
『相談』しようなんて考えも・・・・」

『タキシードムーン』を得たせいだろうか
『憧れの人』になれるチカラがあるから、誰かに相談するなんて事は思いもしなかった
だって・・・・『おじいちゃん』はそんな姿を見せた事もないから

「でも、俺は『おじいちゃん』じゃあない、か」

ぽつりと、小声で独り言を呟く

心が落ち着くと、ラジオが繋がっているのに泣いてしまってはみっともないという思いが強くなった
布団の中でごそごそと動き、袖で涙を拭うと、努めて元気な声で電話を返す

「わかった・・・・わかったよ! おねえさん!」

「俺は・・・・もっと人と話す事にする!」

940美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/04/21(水) 22:32:01
>>939

「うん!元気な声ね!もう大丈夫!」

その声を聞き、電話の向こう側で笑顔を浮かべる。

「よかったら、また電話してきて。
 『ホタルオトコ』さんが泣いてる時は私も悲しいし、
 ホタルオトコさんが喜んでると、
 私も嬉しい気持ちになれるから」

パーソナリティーは、リスナーに共感する存在だ。
だから、彼が相談を持ち掛けてくれた事を嬉しく感じた。
自分が『それに値する存在』である証明になるのだから。
言い方を変えれば、
『パーソナリティーとしての評価』という事でもある。
今日、彼が相談してくれた事で、
また一つ自信に繋げられた気がした。

(…………『おじいちゃん』?)

ふと耳に届いた言葉に、目を細める。
事情は知らないが、
何となく『憧れの人』なんだろうという予想は出来た。
『目標』があるのは素晴らしい事だ。

「ねぇ、『ホタルオトコ』さん。
 私にも夢があるの。
 この番組を、もっともっと盛り上げていく事!!」

「お互いに、叶えられるように頑張りましょうね」

「それから――お姉さんの名前は『美作くるみ』」

             フフッ
 
     「『次』の時は、そう呼んでね?」

話の最後に付け加えられたのは、冗談めかした声色だった。

941小翠『タキシードムーン』:2021/04/21(水) 23:40:47
>>940

「・・・・・・・うん!」

一際、大きな声で返事を返す
声があまりにも大きかったせいか、遠くで家族の足音が聞こえた
こんな夜中に、小翠が大声を出したことに不審がっているのだろう

「ありがとう、おねえさん、俺の話をまともに聞いてくれて」

>「ねぇ、『ホタルオトコ』さん。
> 私にも夢があるの。
> この番組を、もっともっと盛り上げていく事!!」

「きっとできるよ! だっておねえさんは凄いから!
 だから・・・・俺も頑張るよ、頑張って、理想の自分になってみせる!」

「だから・・・・『くるみおねえさん』も頑張って!」

少年から、一際大きな声で応援の意思が届く


     ドスドスドスドス!

一方、その頃、小翠の部屋に向かって足音が近づいてくる
恐らくお母さんだろう 夜更かしをしてラジオを聞いている事を怒られるかもしれない

942美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/04/22(木) 00:14:13
>>941

「ふふッ、ありがとう!
 そんな風に励ましてもらえると、やる気が湧いてくるわ。
 その言葉があるから、私は頑張れるの」

「私も『ホタルオトコ』さんを応援するから、
 『ホタルオトコ』さんも、これからも私の応援よろしくね!」

その時、電話の向こう側から足音が聞こえてきた。
それを聞いて、おおよその状況を察した。
『ハプニング』を捌く自信がない訳ではないが、
そろそろ『締め』にした方が良さそうだ。

「おっとっとっ……それじゃ、またいつかお喋りしましょう!
 今回のお相手は、
 ラジオネーム『ホタルオトコ』さんでした!!」
 
     「――――『See you again』!!」

後日、小翠家に一通の封書が届いた。
中身は『Electric Canary Gardenオリジナルクオカード』だ。
また、一枚の『メッセージカード』が同封されていた。

【くるみお姉さんは、あなたを応援してるよ。
 悩んだ時、嬉しい事があった時、いつでも電話してきてね。
 『理想の自分』を目指してファイト!】


小翠『タキシードムーン』⇒『番組特製クオカード(500円分)』Get!!

943小翠『タキシードムーン』:2021/04/22(木) 00:37:50
>>942

   ドタドタドタドタ

「う、うん、応援する、だから・・・・『しーゆーあげいん』!」

最後に一言、応援の意思を伝えて通話を切った
その直後、部屋に入ってきた家族に言い訳を試みるも、布団の中に隠したラジオを見つけられ、失敗
夜更かしの罰としてしばらくラジオを没収されてしまうのであった



「あれ? これは・・・・」

後日、小翠家に『メッセージカード』付のクオカードが届けられた
メッセージの文面は比較的短いながらも、『くるみおねえさん』からの直筆の言葉は彼を勇気づけた
そして再び歩みを進める・・・・・『理想の自分』、おじいちゃんのような凄い男になるために!


小翠『タキシードムーン』⇒『番組特製クオカード(500円分)』Get!!

944『水面下』:2021/04/27(火) 14:34:35

「――――『情報』が必要だ」

『Luna-Polis』の一室で、『度会一生』は『御影憂』に言った。

「それって………………」

        ボソッ

「………………『集め方』が悪いって言いたい?」

御影は恨めしそうに呟きを返す。

「そうは言っていない。
 仮に『そうだった』としても、お前だけを責める気は無い。
 現状の人手で出来る事は限られている」

「しかし、迂闊に人数を増やす訳にもいかない。
 『信用に値しない者』を入れるのは何よりも危険だ」

『一派』に加える人間には三つの『条件』が定められていた。
第一に『スタンド』を持たない事。
第二に『アリーナ』や『エクリプス』と関わりを持たない事。
第三に『スタンドに立ち向かう意思』を備えた人間である事。
そんな人間は、そう多くは無い。
『ただのスタンド使い』を探すよりも困難だろう。
ゆえに、『一派』は少数で活動する事を余儀なくされている。

「………………『あれ』は?」

御影が言及したのは、海で見つけた『ラッコ』の事だった。
『スタンド使いのラッコ』。
『人間のスタンド使い』と違って、
情報をベラベラ喋る事は無い。
秘密を漏らさないという点では安全だと思われた。
しかし、動物には人間とは違う問題もある。

「『制御の方法』に問題が残る。
 状況によっては使える可能性はあるが、
 あくまでも『保険』程度だ」

「お前程は役に立たないし、信用も出来ない」

「フッ………………」

度会の言葉を聞いた御影は、前髪の下でせせら笑った。

「『褒めて』………………色々やらせようとしてる?」

「たまには出掛けるか。
 自分の目で街の様子を確かめておくとしよう」

「あ………………『誤魔化した』………………」

945『Luna-Polis』:2021/04/29(木) 10:17:45

御影憂は、大通りで『飯田咲良』と出会った。
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1586906856/522-538)
それから一時間後。

「………………ただいま」

『Luna-Polis』に戻った御影憂は、
肘掛け椅子に座る度会一生に呼び掛けた。

「『収穫』はあったか?」

「『スタンド使い』が………………『二人』………………」

御影の報告を聞いた度会は、
コルクボードに新たなピンを刺していく。

「飯田は現時点で『青』。もう片方は『赤』だ。
 『清月館』の方は、桐谷にも調べさせる。
 お前も、そこに入居している学生には注意しておけ」

顔を上げた御影は、立てかけられたコルクボードを眺める。
そこには大量のメモ用紙が留められていた。
これまでの『調査』で得られた『スタンド使い達の情報』だ。

946『Luna-Polis』:2021/04/29(木) 10:20:44
>>945

――――――――――――――――――――――

         円谷世良楽(安全)
       清月学園高等部一年生
        人付き合いが上手い
        物事を深く考えない
     スタンド名は『リトル・スウィング』
       ヴィジョンは『飛行する輪』
         能力は『氷の散弾』

       高校生らしき少女(保留)
           料理が下手
       『菓子類』に関する能力?
           素性は不明

        高校生らしき少年(危険)
           赤いマフラー
  一般人に命に関わりかねない危害を加える
       体内を破壊可能な能力を持つ
           目的は不明
       『危険人物』の疑いが強い

          金髪の男(保留)
      マフラーの少年と対峙していた
      恐らくスタンド使いだと思われる
         素性・能力共に不明

          飯田咲良(安全)
       清月学園中等部二年生
          清月館に入居
    家庭内に問題を抱えている可能性あり
        スタンド名は『シスター』
         ヴィジョンは『人型』
          パワーは平均的

         不法侵入者(危険)
           清月館で目撃
        室内に不法侵入を行った
     『ぬいぐるみ』に関する能力を持つ
       『危険人物』の可能性あり

         白髪の少女(保留)
          歓楽街で発見
       スタンド使いの可能性あり
            詳細不明

          風歌鈴音(注意)
            ホームレス
        『アリーナ』と関わりあり
  烏兎ヶ池神社でスタンドの訓練を行っていた
         ヴィジョンは『人型』
      能力は『手から風を生む』事
    指定箇所に『渦』を作り出す事も可能

         挙動不審な男(注意)
     スカイモールのレストランで発見
     『半自立型の人型スタンド』を持つ
  スタンド名は『ウェア・ディド・ウィ・ゴー・ライト』
          能力は『戻す』事?
     何らかの組織に属している可能性あり

          空井イエリ(安全)
       清月学園大学部二年生
   スタンドでコンクリートの破片を持ち上げた
        『ヨロイトカゲ』を飼育
     桐谷にスタンドの存在を示唆した

         西洋人の少年(保留)
       遊園地の事件に居合わせた
          推定スタンド使い
         素性・能力共に不明

        高校生らしき少女(保留)
         夜の歓楽街で発見
     『半自立型の人型スタンド』を持つ
     こちらの動きを警戒していた気配あり

          金髪の少女(保留)
    スカイモール近辺で絵を描いていた
       スタンド使いの可能性あり
             素性不明

――――――――――――――――――――――

「現状、『赤』は二名だ。
 そいつらに対しては、特に警戒しなければならない。
 もし今後『何か』あれば――――」

           グルッ

「――――『手を打つ』事も考える」

それだけ言うと、度会は御影に背を向け、
パソコンのモニターに向かい合った。

947『Luna-Polis』:2021/04/29(木) 10:41:23

「――――――………………」

           スッ

御影は、『剥がれ落ちていたメモ』を拾い上げ、
ピンで留め直した。

――――――――――――――――――――――

         勤め人風の男(保留)
           歓楽街で発見
       出版関係の人間と思われる
   御影の姿を撮られたがデータは消去済み
       出版関係の人間と思われる
          ヴィジョンは『人型』
            能力は不明

――――――――――――――――――――――

948龍美丹『チーロン』:2021/05/02(日) 23:51:59
海、一人の少女がそこにいた。
別に潜ったりする訳でもなく、砂浜でシャドーボクシングのような動きをしている。
……ボクシングに蹴りはないのでシャドーファイトと言った雰囲気だが。

「ふん……は……っ」

少し暑い日だ、動き続けて顔に汗が浮いている。
ぐらり、と少し体勢が傾いて転びそうになる。

949関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/03(月) 00:43:45
>>948

通信制コースも学校は休み。
家族も遊びに出たり、仕事をしてたりで、
家事をあらかた終えた関は海に来ていた。
関は余暇時間も『倹約』に使いがちだ。
もっとも、今は、厳密には『仕事中』だが、
いつまでか分からない時間、『オン』ではいられない。

「ふう……」

≪……っと、人がいますねえ。           『私ハ追従者ニ ツイテイク』
  『フニクラ』は大人しくしてて下さいよう≫       『邪魔ハ シナイ』
                              『血サエ 集マレバ ソレデイイ』
『仕事仲間』であり、
『クライアント』でもある、
『リュック』に入れた存在に語り掛けつつ、
『釣り具』を手にして歩いていく……と、いうところで。

「………………あっ! 大丈夫ですか〜?」

                      ザッザッ

転びそうなのを目にして、『龍』の方へと歩いていく。
支えるとかは流石に間に合わないが、助け起こしたり、介抱するために。

『あなたの血が必要とされています!』
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1617983099/70

950龍美丹『チーロン』:2021/05/03(月) 01:50:34
>>949

「よっと」

ぱっと手をついて砂浜を蹴る。
足が浮き上がればそのまま空を切りながら砂浜へと落ちてくる。
絶妙なバランスだった。
体が砂浜に着くことはなく、奇妙な体勢ではあったがなんとかこらえている状態である。

「……ふぃー」

「……なんか、声がしたような」

立ち上がりつつ、声のした方をむいて……

「おや、いつかのお嬢さんじゃないか」

951関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/03(月) 02:04:05
>>950

「わっ……」

倒れ――――なかった。
内心胸をなでおろしつつ、
歩く速度を少し遅くする。

「ええ、お久しぶりです〜。
 あの後顔を出せてなくて……
 なんだか、すみませんけれど。
 夏でもないのに海で会うなんて、
 なんだか奇遇ですねえ」  

思わぬ再会と、
覚えられていたことに、
温和な笑みが浮かんだ。
店に行けてないのは色々あるが、
特別何かがあるというわけでもない。

「今のは……トレーニングか何かですか〜?
 ダイエットの運動には、見えませんでしたけど」

                 『釣リヲ シナイノカ』
                  『時間ヲ有効ニ』 
               『持ツノハ シバラクダケ』

「……あ、ちなみに私は、見ての通りですよう」    

……関の声以外の何かが『背中』の方から聞こえる。

952龍美丹『チーロン』:2021/05/03(月) 02:23:06
>>951

「いやまぁ別に構わないさ。ボクの何かに影響がある訳じゃないからね」

「あぁ……そんなところかな」

うんうんと納得したように首を振る。
納得したの相手が自分か。

「……ん?」

なにか声がする。
その主が見えないから気になる。

「キミ、なんか音がしなかったかい?」

「スマホの着信……じゃないな。そういうのじゃなくて声っぽい……」

「リュックサックにつめた子猫でも鳴いてるんじゃないか?」

953関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/03(月) 02:47:14
>>952

「そう言ってもらえると……え。
 あ、あぁ〜。『聞こえる』んですねえ」

        スッ

「子猫なら、かわいいんですけど〜」

驚きはするが、比較的『慣れた』し、
今は内心『探して』もいるのだった。

リュックをゆっくり下ろす。
すると――

        『私ハ フニクラ』

なんだこれは?
ボール……バレーボールほどの『赤い球』だ。

「はい、まあ、自己紹介もありましたけど、
 この子は『フニクラ』って言いまして〜
 ……あ、いえ、その前に」

「寿々芽(すずめ)――
 私の名前、言ってませんでしたから。
 自己紹介しておきますね。よろしくお願いします〜」

ボールだけに自己紹介させるのは変だと思い、
自分の名前も伝えた上で、小さく頭を下げた。

「…………それで確認なんですけど。『見えてます』よね?」

そして、念のために、浮かぶ『ボール』を手のひらで示した。

954龍美丹『チーロン』:2021/05/03(月) 10:15:13
>>953

「『フニクラ』……?」

「なん……いや、えっと……」

「あぁ、スズメというんだねキミは」

喋る珠に困惑しつつ言葉を返す。
なるほど、こういうこともあるのかというふうだ。

「あぁ、見えてるよ」

記憶の中から検索する。
たしか彼女は『音仙』と呼ばれていた。
その人物から教わったことは何だったか。
あれの名前は。

「スタンド、そうスタンドだ! そうだろう?」

「他人のを見るのはそうないんだ……あぁ」

言葉を区切り舞台のように大仰に礼をする。

「龍美丹(ロン・メイダァン)だ、よろしく」

955関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/03(月) 20:15:58
>>954

「はあい、私は寿々芽(すずめ)……
 その『スタンド』を使えるスタンド使いの、
 関 寿々芽(せき すずめ)といいます」

苗字も込みの自己紹介に対し、
自分も後からそれを付け加えた。

「見えてる人に会えて、よかったです!
 お互いスタンド使いとして……
 仲良くしましょうねえ、メイダァンさん」

一応の打算はあるが、本音でもある。
笑みを浮かべて――

「……あ! 一応言っておくと、
 お返しに能力を見せてくれたりとかは、
 しなくっていいですよう」

そう言いながら、『ボール』から手を引く。
難しい顔をせざるを得ない話題だが…………

               ・・・・
「『フニクラ』は『私のスタンドじゃない』ので。
 ややこしい話には、なってくるんですけど〜」

         『寿々芽ハ 追従者』
       『追従者ニハ ツイテイクダケ』
         『本体ハ 別ニイル』
        
「……本当にややこしくて、難しい話なんですけどねえ」

龍にとっては、いきなりの『特例』だ。
ややこしさは倍増。ゆえに一気に全てを話しは、しない。

956龍美丹『チーロン』:2021/05/03(月) 20:55:35
>>955

「あぁ、よろしく頼むよ」

ニコニコ笑っている、のだが。
その顔の雰囲気も変わってくる。

「ちょっと待ちたまえよ」

ぱっ、と開いた手が関の顔の前。
この女、手足が長い。

「キミのスタンドじゃないだって?」

「なに、そんな他人の自転車借りるみたいな感覚で連れてきてるのかい……?」

「それはどういう……」

話を聞く姿勢だ。

957龍美丹『チーロン』:2021/05/03(月) 23:10:43
>>956

「……キミとその球はどういう関係なのかな?」

958関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/04(火) 02:50:27
>>956-957

関はどちらかといえばスラっとした体形ではない。
太っている、という訳では決してないのだが、
長く伸びた手足には、内心憧れも感じつつ――――

「やっぱり、驚きますよねえ。
 私もこんなスタンドって、初めてで。
 関係――――」

            『寿々芽ハ 追従者』
            『本体ハ 別ニイル』

「それじゃあ説明になってないですよう、『フニクラ』。
 ……メイダァンさんになら、隠す理由もないですね」

笑みから、真剣な表情に変わっていた。
意識したわけではない。『フニクラ』を取り巻く事情は『真剣』だ。

「関係を言うなら――『仕事仲間』、になるんでしょうか〜?」

        ス

「『この球』――――
 『フニクラ』の本体から、
 本当に『貸してもらって』いるんです。
 やるべきこと……『お願い事』と、いっしょに」

『フニクラ』に手を伸ばし、特に意味は無いが、なでる。
危険なものではない、と暗に示したかったのかもしれない。

「……『フニクラ』は、本体の人が『制御出来てない』んですよう」

なぜなら、言おうとした事実が『危険性』を想起させるものだから。

959龍美丹『チーロン』:2021/05/04(火) 22:03:04
>>958

「うーん……」

「正直、怪しいといえば怪しいしキミを取り巻く環境が心配にもなるが」

「信じよう」

『フニクラ』についても、スタンドについて無知であることを自覚している。
なので、それを信じるしかない。
疑うのもアリなのかもしれないが少なくとも龍の天秤はそちらに傾いた。

「制御できてない?」

思わずそいつは何をしているんだと言いたくなった。
龍のスタンド『チーロン』はそういうタイプではないし、自分の制御下にあると思っているがそんなことがあるのか。

「……かなり面倒なことになってないかい? なにか会ったなら相談してくれよ?」

「そいつ、決められた言葉を繰り返してるだけみたいだし本体にボクたちの話は伝わってないんだろう?」

店頭のペッパーくんみたいなものだと言いつつ言葉を続ける。

「仕事仲間ってなんの仕事?」

960関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/04(火) 22:36:17
>>959

まず小さく頭を下げる。ほとんど反射的に。

「ああ、ええ、ほんと怪しい話ですよね……
 メイダァンさん、お気遣いありがとうございます。
 ………………私の環境は、平気なんです。
 ただですねえ、平気じゃなくって、
 それに『面倒』な事になってるのは……
 この『フニクラ』の本体の人の環境なんです」

          『…………』

「仕事の内容にも、関わるんですけど――」

こんな時だけ何も言わないのは、
このボールにも罪悪感はあるのか、
単なる偶然の結果なのか。

「私も全部分かってるわけじゃないんですけど、
 この『フニクラ』…………
 他のスタンドから『血をもらう』ことで、
 何かをする、っていう能力みたいなんですよう」

     『血ガ……マダマダ』『足リナイ』

「でもそれが制御出来てないのか、何か理由があるのか、
 本体の人はずうっと、『貧血』に悩まされてまして……
 それで路地で倒れてる時に、私が偶然通りがかって」

           スゥ――

「『介抱』と……『血をあげた』のが、始まりなんです」

『フニクラ』に手を伸ばす――すると。

             グィィィーーーー ・・・

      『貴方ノ血ガ』
      『必要トサレテイマス』

「色々飛ばして答えちゃいますけど、
 仕事っていうのは――『血液提供者』を、探す事です」

献血じみた文句を口走りながら、
その全体から『ウニ』のように! 『注射器』が迫り出す。

961龍美丹『チーロン』:2021/05/04(火) 23:19:16
>>960

「血を貰う……」

復唱、なにか意図があった訳では無い。
その言葉で想起するものがあり、そちらに意識が向いてしまったからだ。

「貧血か……それは……つらいね……」

相手を慮る言葉が出てくる。
その時だった。

「!」

龍の背に汗。
衝突間際で乗っていた自転車が止まったとか、部屋ではしゃいでいるところを親に見られたとか。
そういう時に起こりうる現象、毛穴が開いて冷や汗が吹き出てくる。
そんなことが体に起こったのだ。

「おいおいおいおい!」

瞬時、体に浮かぶ赤い龍。
刺青めいて服の下からそれが覗き、それを関が認識した頃には後ろに下がっていた(スB)
手で注射器を受け流すような動きをしつつ、手のひらでウニを視界内から隠していた。

「びっくりした……」

「一旦それをしまってくれるかなお嬢さん?」

「……真剣な話だ、キミのお仕事に協力するのはやぶさかじゃないからね」

962関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/04(火) 23:51:30
>>961

「ええ、本当に…………あっ! また勝手に……!
 もう、駄目ですよ〜『フニクラ』。一旦しまって」

     ズズ

一瞬何が起きたのか分からなかったが――

         『ズットハ持タナイ』
        『合理的ニ 血ヲ 集メマス』

注射器が『出ている』事に、関も一拍遅れで気づいた。

「それはそうですけど……
 そんな風じゃ、『協力者』は集まりませんよう」

注射器はヴィジョンの中に消えていく。
集合体恐怖症というやつだろうか、
あるいは注射器自体へのトラウマか。
いずれにせよ、これは『良くない』。
『フニクラ』の前に回るようにして、
その存在自体も『美丹』の視界から隠す。

「すみません〜、驚かせてしまいまして……!
 ……そのう、『今の』を使うんです。
 『スタンドの血を集める』っていう、仕事に」

と、そこまで言ってようやく、
『美丹』本人の動作ではなく、
その体に浮かぶ『龍』に気付いた。

「『ペイデイ』」

             ズギュン

「これの表紙……は、もう治っちゃってますね。 
 『スタンド』からその、『採る』んです。
 エネルギー?みたいなものを、『血』の代わりに」

『お返し』ではないが自身のスタンドを見せつつ、
注射器、というワードを避けながら、『美丹』に説明を続ける。

963龍美丹『チーロン』:2021/05/05(水) 00:49:41
>>962

「悪いね、先端恐怖症なんだ」

「……スタンドからか」

そう呟く。

「ボクのスタンドは『チーロン』」

「僕と一体化してて、ボクの血に影響を与える」

自らのスタンドについて口にする。
見た目の変化が本質ではない。

「ボクの出血をね、龍にするんだ」

だから今この場でそれを見せることは出来ない。
正しくは、しない。

「本来これは血の龍を使って輸血をする前をなす力。血を渡すのはボクの運命だろう……その『フニクラ』越しなのは少々想定外だけどね」

964関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/05(水) 01:05:36
>>964

「いえ……恐怖症じゃあなくっても、
 急に見せたのは良くなかったです。
 『フニクラ』にも、ちゃんと言っておきますので」

          『…………』

言ってどうにかなるのか?
分からないが……
知性らしき物はなくもない。
環境が与える影響は、あると思いたい。

「まあっ、『チーロン』……!
 『輸血のスタンド』だなんて、
 こんな奇遇って、あるものなんですねえ……」

       「……でも」

「……あのう、説明しないのはズルいと思うので、
 これはちゃんと、言っておくんですけど」

            ス

「私の『ペイデイ』には……ほら、本ですから!
 叩いたりしても、私に伝わる感覚はないんですよ。
 だから注射をしたって、痛くも痒くもなかった」

それは結果論だ。
痛い可能性はあった。だが、そんな事は言わない。

「でも、メイダァンさんのスタンドの場合は……
 もしかしたら、痛い思いをさせちゃうかもしれません。
 人助けのためにも、やってる仕事ではありますけど、
 『貧血』と『恐怖』は……同じくらい辛いと思います」

「ですので……運命でも、強要というか、
 やらなきゃいけないわけではないと思います。
 やってくれるなら……それは。
 あなたが、良い人だから…………運命だけじゃ、ないですよう」

偽善かもしれないが、それくらいのことは、言っておきたかった。

965龍美丹『チーロン』:2021/05/05(水) 01:46:31
>>964

「うん、そうしてくれるとありがたいかな」

(それは、危ないからね)

汗が引いてきた。
ふぅ、と息を吐いて伸びをする。
海風の独特の感触が肌を撫でていく。

「……」

腰に手を置いて黙り込む。
それから。

「あっはっは!」

大きく笑った。

「そんなこと、些細なことさ!」

貧血もなにもかも龍美丹は気にしない。
そんなことよりも人に血を与えることを考える。

「それにしても……真了不起(素晴らしい)!」

「キミは実に良き人だ」

「だからボクも全幅の信頼をもってして血を分けよう」

袖を捲りあげる。

「血を摂るときは言ってくれよ? 目を逸らしておくからね」

966関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/05(水) 02:02:34
>>965

「――――――……ふふ。
 メイダァンさん、ありがとうございます」

             スッ

「『フニクラ』。――――お願いします」

           『血ヲ 集メル』
         『ソノタメニ ツイテイク』
           『コレデ一人目』

体で隠したまま、
『フニクラ』から注射器を取る。
大きな注射器――――それを後ろ手に、振り向く。

「メイダァンさん、目をつむって下さい。
 それと、『チーロン』は発動したままで!
 すぐ済ませますけど――――」

           ザッ

美丹がしっかりと目を閉じたのを確認したら、
浮かぶ『龍』に手早く針を突き立て――――『スタンドエネルギー』を貰う!

            『貴方ノ血ハ』

「ちょっと、チクッとするかも、しれませんよう」

    『必要ト サレテイマス』

『本体がスタンドになるタイプ』である『チーロン』なら、
絵面はともかく可能な筈だ。『チクッと』は、実際に『する』事となる。

967龍美丹『チーロン』:2021/05/05(水) 02:34:37
>>966

目を閉じて、痛みがやってきて。
息を止める。
だがそれは一切問題じゃない。
実現する意志のみが龍の中。

「ふぅ……」

ぼんやりと考え事をして気を紛らわせながら。

「ところで」

「見返りというか報酬とか求めてもいいのかな?」

968関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/05(水) 02:50:06
>>967

血を採った『注射器』は、『フニクラ』に戻す。
これで――――『1人目』だ。
ストックは後で届けに行こう。

「……お疲れ様です〜。
 痛かったですよねえ、ありがとうございます。
 これできっと、本体の人が助かりますよう」

          『血ハ マダマダ』
        『モット 集メル必要ガアル』

「まあ、そうなんですけど……」

『フニクラ』は元の状態に戻った。
『美丹』にも、不愉快な見た目ではないだろう。

「献血をしたときって、
 お菓子やジュースを貰えますよね〜。
 ――――私の『ペイデイ』は、それを出せますけど」

笑みを浮かべる。

「それとももう少し、『まごころ』のあるお返しがいいですか?」

美丹が何を求めるかにもよるが、多少のお礼はしてやりたい。

969龍美丹『チーロン』:2021/05/05(水) 03:14:01
>>968

「うーん、特に貧血とかもないかなボクは」

刺すところは見られないが抜いたところは見ておけばよかったかな、と思う。
おそらく注射器に血龍が吸い込まれているということは無いだろうが。

「そうだね……」

思案する振り。
顎に手を当てて考えてるポーズだけ。
それから、いたずらっぽく笑って。

「デートでもするかい?」

970円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/05/05(水) 22:38:43
>>969

「ああ、よかったです。
 私……『協力者』の人から採るのは、
 これで初めてでしたので〜」

エネルギーの消耗は若干のフラつきを生んでも、
致命的な……そうでなくとも『症状』の域には達すまい。
そして、『見返り』だが。

「まあっ! それは……………ふふ、素敵です」

「いいですよう、『デート』」

温和な笑みは自然に浮かんでいた。

「でも私、あんまり経験がありませんので……
 メイダァンさんが、エスコートしてくれますか〜?」

献血の見返りのお菓子ほど、
甘い時間にはならないかもしれないが……
同年代と見える相手と遊びに行くのは、十分嬉しい事だ。

971関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/05(水) 22:39:11
>>970(名前欄ミス)

972龍美丹『チーロン』:2021/05/05(水) 22:49:59
>>970-971

(ふうむ、からかったつもりだっけどなかなかどうして……)

ふふ、と口元に笑み。
それからウンウンと頷いた。

「じゃあ行こうか」

「デートスポットは気にしないでいい」

君は釣りをしに来たんだろう? と釣具を指さした。

「少し話し相手になってもらえればいいさ」

973関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/05(水) 23:23:32
>>972

「そうですねえ、どこに――
 ――――ああ、助かります。
 せっかく釣り具を持ってきてたので」

            ザッ

「私の方こそ、お話相手が欲しかったんです。
 それじゃあ『デート』、楽しく過ごしましょう〜」

『仕事』を終えて黙り込む『フニクラ』をカバンに収め、
『釣り具』を持って、場所へと向かう。

ポイントアプリで時間を潰すのも良いが、
今日の釣りは、『当たり』以外の時間も色よい物になりそうだ。

974『Luna-Polis』:2021/05/06(木) 11:08:33

マンション『Luna-Polis』――
薄暗い室内に三人の人間が集まっていた。
ロングコートのフードを目深に被った男。
長い前髪が顔の大部分を覆った女。
警官の制服と制帽を着用した男。
それぞれの庇が顔に陰を作り、
明確に容貌が見える者は一人もいない。

「例の『不審者』について色々と分かったよ。
 名前は『ツネハラ』。
 筋骨隆々とした体格で、ええと…………」

「…………『女装』しているらしい」

制帽の男――『桐谷研吾』が言った。

「『掃除しに来た』とか………………」

「あと………………『料理も作ってる』………………」

「………………らしい」

長髪の女――『御影憂』が続けた。

「それから『飯田さん』が言うには、
 他にも同じようなのがいるらしい。
 でも、さすがにないんじゃないかな……。
 多分、『ツネハラ』と同一人物だと考えていいと思う」

「もしかしたら………………
 ホントに二人いるのかも………………」

         ボソッ

「いや………………やっぱ『絶対ない』………………」

フードの男――『度会一生』は、
無言で二人の報告を聞いていた。
その手には『杖』が握られている。
優れた視力を持ち、遥か彼方の獲物も捉える、
『鷲』の彫刻が施された黒檀製の杖。

「――――『ツネハラ』の評定は『注意』に落とす。
 『危険ではない』という意味じゃあ無い。
 『検討の必要がある』という意味だ」

一人の相手に対して割ける労力は限られている。
その為に、『一派』は『優先順位』を設定した。
それは同時に、
対象の『危険レベル』を可視化する狙いも含んでいた。

「案外、お前と似ているのかもしれないな」

「え………………やだ………………」

度会に話を振られた御影は、露骨に嫌そうな表情をする。
御影にしてみれば当然の反応だった。
いくら同じ『スタンド使い』といっても、
『不法侵入の女装男』の同類にされたくは無い。

「『ツネハラ』は不法侵入を働いているが、危害は加えない。
 お前は人を脅かして回っているが、危害は加えない。
 一種の『共通点』がある」

「そう言われてみれば、確かに…………」

度会の言葉に桐谷が『同意』の意を示す。

「『絶対ない』………………」

       ボソッ

「………………『絶対』」

一方、御影は頑なに『否定』を続けていた。

975関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/13(木) 20:49:59

通信制コースにも時折登校日はあり、
今日の関は、その帰りだった。

「昨日見た再放送で言ってましたけど、
 ウニにキャベツを食べさせると良いんですって」

        『私ハ ウニ デハナイ』
        『私は フニクラ』

小さな公園のベンチに座り、
近場のパン屋で買った『サンドイッチ』を食べていた。

        『ソモソモ私モ 横デ 見テイタ』

「それもそうでしたっけ。食べたくなりませんか〜?」

いつものエプロンはリュックにしまい、
珍しく『清月学園』の制服を着た彼女の、
その傍らに――『赤い玉』のようなものが置いてある。

        『欲シイノハ 血 ダケ』 
        『合理的ニ 集メルベキ』

「ううん、そうは言っても、
 スタンド使いを探すのって大変なんですよう」

(『アリーナ』に頼んだりしたら、
 加宮さんに迷惑がかかる可能性が高すぎますし…………)

そして、その玉も、そもそも彼女の声すら、
一般人には見えず聞こえない――『スタンド存在とのスタンド会話』。

※『あなたの血が必要とされています!』参照
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1617983099/70

976朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/13(木) 21:13:16
>>975
本当にたまたまであった

ただちょっと家路への近道をしようと公園を通り抜けようとしただけなのである。

だが…

(…ありゃなんだ…)
同じく『清月学園』の制服を着た少女がその光景を目撃し
思わず近くの木へ身を隠してしまった。

(あれは何だ?腹話術の練習?
 それとも…アレなのか?)
少しビビりながら木の陰から覗き込む。

スタンド使いである彼女には腹話術意外に考えられることが確かにある。

977関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/13(木) 21:22:10
>>976
    
       『私ヲ 連レテ 歩キ回ル』
       『スタンド使イ 集マッテクル』

「私もあなたも『戦わない』じゃあないですか。
 集まってきても、襲われたりしたら大変ですよ」

少なくとも隠れた『朱鷺宮』に、
何かをしてくるような存在ではないらしい。

「今だって、どこかから見られてたりして」

       『ナラ好都合』

       『血 モット必要 ナルベク早ク』

「メイダァンさんは知り合いで良い人でしたけど……
 初対面のスタンド使いから血を貰うなら、
 急ぐだけじゃなくって、相手のことも考えないと」

   「慌てるこじきはもらいが少ない、ですよう」

何やら恐ろしいことを言ってるが……
お団子頭の少女は、朱鷺宮よりは少し年上に見えた。

          ヒュオ 
              オ

「きゃっ」

と、その時風が吹く。

「あっ……ゴミが飛んでっちゃいました」

          『放ッテオケバイイ』

「ダメです、そうはいきませんよう」

パンの包み紙が風に煽られ、木の陰へと飛んで行く。

        ……朱鷺宮からすると、飛んで来る。

978朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/13(木) 21:46:06
>>977
(今の言葉…スタンド使い?!って聞こえたような…
 じゃあやっぱり…)
なんとなく確信できるような話である。
そして

「っ…!!」
見られていたり、という言葉を聞いて思わずビクッとした。

(よくわかんないけど、なんかヤバそうな話だわ…
 ここはおとなしく去ったほうが…)
スタンドを持っているとはいえ、得体のしれない相手と対するのは避けたい。
と思ったところで。

「おっ…あっ…」
パンの包み紙は風に煽られて

ポスッ

っと涙音のみぞおちあたりへと飛んでいった。
まるで吸引されるかのように。

979関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/13(木) 21:50:39
>>978

    トトト

「あっ!」

ゴミを追った関は、朱鷺宮を発見して驚く。
そして、背後からついてくる『フニクラ』も。

      フヨフヨ

           『見ラレテイタ』
           『ツイテキテイタ?』

怪訝そうに……なのか? 少し揺れていた。

《分かりませんよう、何か気になっただけかも。
 少なくとも、私の知り合いではないですし〜》

「すみませぇん、私のゴミがご迷惑を。
 お洋服とか、汚れたりしてませんか〜?」

        ペコ

頭を下げ、しゃがみ、鳩尾からずり落ちたビニール袋を拾う。

980朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/13(木) 22:14:38
>>979
「あっ…と」
ちょうどよく関と目があったことによって
一瞬動きが固まる。

「えーっと…いえ、大丈夫ですよ。
 見ての通り。汚れたわけでもないですし。」
慌てて手を振った。

「なんかこっちも覗き見しちゃってたみたいで…」
視線が少し関よりも後ろに行ってしまっている。

「なにかお話…してたんでしょうかね?」
疑問に思ったことが思わず口に出てしまった。

981関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/13(木) 22:22:49
>>980

「ああっ、ならよかった……
 いえいえ、公園はみんなのものですから。
 どこに立っていたって、自由ですよう」

        『視ラレレイル』
        『追従者』
        『スタンド使イ ダ』

赤い玉が声を出す。
『朱鷺宮』の視線に気付いているのだ。

≪わかりませんよう、決め付けるのは早いです。
 もしそうだとしても、焦って説明したって、
 『協力』して貰えるとは限りませんから≫

        『ソノ方ガ 合理的ナラ』
        『スタンド使イカ 確カメルベキ』

≪……もしそうなら、
  この会話は聞こえてるんでしょうけど≫

「ええと、お話……ですか?
 『私一人だけでしてた』って言う事ですか〜?」

「それとも――――」

              チラ

少し後ろを見る。探る必要があるかは分からないが。
いずれにせよ、今すぐに要件を切り出すのは間違いに感じた。

982朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/13(木) 22:42:19
>>981
「まぁ、たしかにそうですね。」
少し焦りながら答える。

(やっぱり何か…)
赤い玉から声が聞こえる。
そう思ったため、どうしても気になる。

「えーっと…その。
 お話…そうですね。その…」
どうやら何か気になっているようだ。

「腹話術の練習…とか?でしょうかね。」
取り敢えず、スタンド使いではない可能性を考えてみる。
しかし、スタンド使いにしか聞こえない声ならば
ほとんど自分がスタンド使いと言っているようなものだろう。

983関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/13(木) 23:33:23
>>982

「……」

(私がスタンド使いなのを気付いてないのか、
 それとも気づかなかったことにしたいのか。
 普通に考えると、後者ですかね……
 つまりこの子自身も、『隠したがってる』)

そうなると難しい。
スタンド使いなのを明かさせた上に、
さらに献血の協力をお願いしなければならない。


「腹話術……」        『血ガ 求メラレテイマス』
「ええと」          『私ハフニクラ』
「腹話術では、ないですねえ」 『人形デハナイ』

とりあえず――腹話術の線はまず無いだろう。
関としても、それで通す線は断たれた。
フニクラとしては、さっさとやりたいのだろうが。

「……………………」

「……あのう、先に言っておきます。
 この子はさっきから血がどうこう言ってますし、
 私も、『血を探してる』のは本当です」

           『血ガ無イト』
           『制御ガ 出来ナイ』
           『シバラクシカ 待テナイ』

「でも、無理矢理とったりとかは、しませんから。
 危ない事をしようとしてるわけじゃないんですよ」

スタンド云々の前に、
不安がられているなら、それを説明しておく事にした。
どうせフニクラが喋るのを止められはしないわけだし。

984朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/13(木) 23:38:33
>>983
「同時に喋って…ますね。」
同時に声が聞こえてきたのを見て、可能性は考えられなくなった。


「血を探している…というと、
 輸血が必要ってことなのでしょうか…?」
彼女の様子を見て少し考える。

「先程から話しているあの赤い玉…
 血がほしいというのはどのような事情があるのでしょうか?」
どうやら関の様子を見て少し緊張がとけたようだ。

985関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/14(金) 00:04:42
>>984

「ええ、私が喋らせてるんでも無いんです。
 これは今からする『説明』にも絡みますけど、
 この『フニクラ』は――――」

          フヨ

「私の『スタンド能力』でも、ないので。
 勝手に喋ったり、ついて来たりするんです。
 私自身の能力は――」

    ポン

「この本。『ペイデイ』の方ですからね」

まず、見せておくことにした。
木に隠れて様子を見ていたあたり、
この相手は『豪胆』とか『鈍感』とかは無い。
慎重で、繊細なタイプと想像できる。

「それで……『フニクラ』はなんなのかと言いますと」

          『私ハ フニクラ』
          『本体ハ 別ニイル』

「……という、わけなんですねえ!
 この子の本体の人に、『血が必要』なんです。
 ……ああっ、そうは言っても普通の血じゃないんですよ」

「『スタンドから取れる血』……
 『精神エネルギー』が、必要なんですって」

ゆえに、不安なワードの後には安心できる話題に繋ぐ。
最悪、敵だと思われなければマイナスにはならない…………

986朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/14(金) 00:26:28
>>985
「やっぱり…スタンドなんですね。
 あなたの能力ではないということは…」

「あなたのスタンドは…なるほど、本の形…ですか。
 能力は…まぁ大丈夫です。」
頷いてから木の陰から取り敢えず完全に姿を見せた。

「スタンドから採れる血…
 スタンドに血液ってあるんですねぇ。」
スタンド血液ということばをきいて少し首を傾げたが

「そうですか…
 精神エネルギーが…」
少し考える。

「血液が必要な理由がきになりますね…
 あと吸われたら私、どうなるんでしょうか…」
取り敢えず詳しく知りたいことを聞いてみた。
すぐにどうぞ。ともいい難くはあるのだ。

987関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/14(金) 00:39:35
>>986

姿を見せた朱鷺宮に、改めて小さく頭を下げる。

「色々急に話して、驚かせちゃってすみません〜。
 でも、その人には本当に必要な事なんですよう。
 なんで必要か、と言えば……」

           『…………』

「この子を、本体の人が制御出来てないんです。
 私にはそういう経験はないので、
 どういう気持ちなのかは分からないんですけど……」

       スゥー ・・・

息を吸って間をあける。
実際それは、重たい事実だからだ。

「そのせいで、その人は『ずっと貧血のまま暮らしてます』」

「それを治して、このスタンドを制御する為に、
 スタンドから、能力で、『血を取る』……
 それをされると、貴女はちょっとだけ痛くて、
 あとは献血をした後みたいに……疲れると思いますよう」

        「他に……聞きたい事はありますか〜?」

説明を求められた以上は、全てを詳らかに話しておく。
興味を持ってくれた相手なら、それが最も信用を得られるような気がする。

988朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/14(金) 20:11:13
>>987
「スタンドを制御できてない…
 だから今離れて行動していると…」
赤い玉の方を見ながら答える。

「そのスタンドは『血を取る』のが能力というわけですか…
 とはいえずっと貧血なのは確かに辛いですね」
それどころか…とも思う。

「聞きたいこと…
 血を取られること自体はきっと私のスタンドには恒久的に影響を及ぼさない…
 とは思いますが。」

「やっぱり…このまま放置していたらいつか
 『血』が失われて…」
そう言って少し沈黙する。
聞くのがちょっと怖いとも言えるが

「…『死んで』しまうことになる…というわけですか?」
聞きたいこと。というので特に思いつくのがそれだ。

989関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/14(金) 23:32:35
>>998

「恒久的……ずっとは、影響はないはずです。
 私のスタンドはほら、『本』なので、
 動くスタンドがどうなるかは分かりませんけど」

?をつく事に抵抗は無いが……
普通に説明して済むならそれが一番いい。

「このスタンドは――――」

        スッ

      『私ハ 血ヲ溜メル』
      『溜メテ 本体ニ 渡ス』

手をかざすと――――

      『採ルノハ 追従者ノ 仕事』

「この……『お注射』で、『血を採って』、貯め込む能力なんです」

ボールから、無数の『注射器』が突き出した――――
ただし針の方がボールに刺さった状態で、持ちやすくなっている。

「私はお医者さんではないので、絶対とは言えません。
 『家庭の医学』は、読みましたけど……
 ただ、死んじゃうという感じではなかったです」

そこも、嘘はつかない。
嘘をつかなくても十分『問題がある状態』なのは伝わっているし、
それに、人の生き死にで嘘をつくというのは、
なにかお金や時間より大事なものを失う気がする。

「ですので……あなたが協力しなくっても、大変な事になったりはしないですよう。
 普通に考えて、『あやしい』話ですし……強要なんて、出来るわけもありませんから」

          「――――たいしたお礼も、出来ませんしね」

990朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/15(土) 00:08:03
>>989
「…確かに、そう見えますね。」
まだ少し疑わしそうではある。

「血を溜め込む能力…っと。
 注射器とはわかりやすいですね。」
突き出された注射器を見て少しびっくりしたようだ。
だが、すぐに落ち着きを取り戻した。

「…なるほど…
 ですがその様子だと、困ってはいる。ということでしょうね。」
腕を組みながら少し考える。

「……」
目を閉じて少し考える。

(デメリットがあるわけでもない…相手も特に死ぬようなわけではない…と思うけど…
 やっぱりそれでも…)
彼女の様子を見れば

「そうだね。」
困っていることは確かだろう。

「このまま突っぱねてもちょっと後味悪そうだし。」
そう言って頷いた。

「私にできることなら、協力しますよ。」
どうやら涙音は、了承をするつもりのようだ。

991関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/15(土) 01:08:03
>>990

「まあっ、本当ですか!
 ありがとうございます……助かりますよう」

「死にはしなくっても、本当に、困ってはいて。
 できる事でしたら助けてあげたいんです。
 ……それが、私のためにもなりますので」

ぱあっ、と顔色を明るくして、頭を下げる。

             シュッ

             『血ガ必要デス』
             『少シデモ合理的ニ』

注射器を抜き取る。
――――明らかに『デカい』が、
スタンドエネルギーを吸うならこういう物なのか?

「それじゃあ、準備が出来たら、『スタンド』を出してくださいね〜。
 あっ……目立つ所で出すのはイヤでしたら、
 そこの木に隠れながらでも、大丈夫ですよ」

取った注射器はすぐに下に下げ、
針を朱鷺宮には向けないようにする。

「あと……お礼は『献血』らしく、
 お菓子とジュースくらいは出しますけど、
 何か好きなものとかって、ありますか?」

                ニコ ・・・

温和な笑みを浮かべ、泣き黒子のある目を細める。
お菓子を『出す』――――そう言いながら、『ペイデイ』を片手で抱いている。

992朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/15(土) 01:50:37
>>991
「まぁどういたしまして。
 こちらとしても困ってる人がいるってのはちょっと…
 見て見ぬ振りはできないですし。」
完全な善意とは言えないが
それでも誰かのためになったと言うだけで機嫌は良くなるものだ。

「注射器…その、結構でかいですね。
 まぁ…刺されても大丈夫だとは思うけど…」
現れた注射器は結構針もでかそうに見える。

「まぁ、あなたにはスタンドを出してもらったみたいですし
 この場所でもいいですけどねー。」

「お菓子…お菓子は…
 そうだなぁー…」
ちらりとスタンドを見ながら答える。

「私はロールケーキ…とかが食べたいですね。
 駅前の大人気で…なかなか手に入らないタイプのやつが」
やや欲張りな気がすると自分で思ったが…
(まぁ、これくらい欲張っちゃってもいいよね。)

993関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/15(土) 02:07:41
>>992

「見ず知らずの人のために血をくれるのは……
 きっと、あなたが良い人だからだと思いますよ。
 お世辞じゃなくて……本当にそう思ってますからねえ」

こればかりは、嘘なんて一つもない。
多少自分が気持ち良くなるためでも、
それは、『善行』と言っていいだろう。

「確かに大きいですよねえ〜…………
 刺すところはどこでも大丈夫ですから、
 どこか痛くなさそうなところに刺しますか?
 それと、苦しかったりしたらすぐ止めますからね。
 それでもお礼は……渡しますので」

途中で止められるのかは知らない。
だが、引き抜けない理由もないだろうし、
そもそも苦しいようなものではないだろう。

「ふふ、ロールケーキですねえ、いいですよ。
 できたら『お店の名前』とか、教えてくれますか?」

注射器をページに挟むようにしつつ、
帳簿を開く――白紙のページを。

「私の『ペイデイ』は……
 お金で買えるものだったら、
 たいていのものは『買える』ので〜」

          「感謝の印で、贈りますよ」

能力の片鱗も開示しておく。
信用を得られれば――それはそれだけ嬉しいのだ。

994朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2021/05/15(土) 12:23:53
>>993
「そ、そうですかね?
 正直いい人って言うのは私自身は…
 そういう自覚は、ないかなー。」
どこか照れくさそうだ。
自分をたまに『性格が悪い』と思っているだけに、善意をぶつけられると
急に照れくさくなってしまう。

「…うーん、まぁ…
 どこに刺しても同じかも…
 まぁ急所以外ならどこでもいいかな。」
少し笑いながら、その針の様子を見る。

「お店の名前…えーっと、確か」
スマホを取り出し、店名を検索する。

「ああ、ありました。
 『リルカリルド』。ロールケーキがメインのケーキ屋さんです。」
そう言って店のクチコミサイトを見せる。

「それじゃあ、早速私もスタンドを出しますね。」
そう言うと、彼女は少し目を閉じてから

『フォートレス・アンダー・シージ』

   ドギュン!!

自分のスタンドを出現させる。
見た目はいかにも屈強そうな女性の兵士のような人型のスタンドだ。

「どうでしょうか。これが私のスタンドです。
 人型なので、注射感覚は普通で良さそうだと思いますけど…」

995関 寿々芽『ペイデイ』@『フニクラ』:2021/05/15(土) 20:45:28
>>994

「ふふ、それじゃあ今日からは覚えておいて下さいね。
 あなたは良い人だって言った人と、
 あなたのくれる血で、助かった人がいるってこと……」

照れる顔を見ても、褒めを自重はしない。
献身の姿勢は、自虐的な人間に強く反応する。
良いことをしたのだ、認められるべきだ――と。

「『リルカリルド』……ですね、
 はあい、分かりましたよう。
 終わったらすぐ、渡しますからね」

      『血ノ 対価ガアルノハ 合理的』

「まあっ、フニクラもそう思いますか?
 私もそう思いますよ。
 少しくらい、いい目を見なくっちゃ……ねえ」

クチコミサイトの写真を見ておき、
どのようなロールケーキがあったか覚える。
初めて聞く店だが、きっと名店なのだろう。
良い目を見たら――『20万円』を得たら、
その時は自分の分だって、買ってもいいだろう。

「とっても『強そう』なスタンドですね〜。
 これならきっと、『良い血』が採れるはずです。
 それじゃあ……『利き腕じゃない腕』を。
 すみません、前に出してもらってもいいですか〜?」

大きな注射器を構え、『スタンド』の腕を待ち構える。

果たして何が起きるのか。続きは――

【場】『自由の場』 その2
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1621051851/2-

               ――にて。

996一口怪文書『花の気持ち』:2021/06/02(水) 21:00:12
ある一輪の花は人間に憧れた
人間は自由に歩き回り、考える、物を創る、言葉を交わし心を通わせ、時に諍う
そんな人間が愛おしいと思った

ある人間の少女は花に憧れた
花は同じ花をいじめたりはしない、ただその場に綺麗に咲いているだけだ

             「わたしは人間になりたい」
              「うちは花になりたい」


               ――ポエム好きの少女の落書き帳4ページより抜粋


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