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Key Of The Twilight
1
:
イスラ
◆Hbcmdmj4dM
:2014/07/01(火) 19:01:24
移動してきました。
現在、参加者の募集はしておりません。
242
:
メイヤ
◆.q9WieYUok
:2014/11/06(木) 18:22:13
【飛行艇】
ナディアの答えよると、彼女の弟は未だ意識を取り戻さないらしい。
だが、それを悲観的に捉えないのが彼女の強さだろう。
「地獄の閻魔か、案外仲良くなって戻って来るかもな?
それまで時間が掛かるから、まだ目覚めないのかも知れないし。」
ナディアの口調に合わせ、メイヤは軽目の答えを、しかし彼女の気を害さない程度の答えを返す。
そして、バロンやレックスの動向と、復興祭と闘技大会の旨を伝えた上で、再び問うた。
「ナディア達はこれからどうするんだ?」
243
:
リマ
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/11/07(金) 13:06:03
うぉーっ かなりの亀レスになってて申し訳ないです!
本当は現在のジルの心情とか、リトが目覚める為のある人との絡みとか、同時進行したいサブストーリー温めてるのに全く書けずにいる!!
ヤツキ>>
つい先日、PCがおかしくなって初期化しなきゃいけなくなりーの、使ってたお絵かきソフト消えーの、またダウンロードしなきゃいけないけど一番重要な透過フィルタ何処でダウンロードしたか覚えてなくて軽くピンチーの、解凍ソフトもダウンロードしなきゃいけないから面倒くさいーので、最悪。iPadで良い感じの透過アプリあれば良いのに。
イスラ>>
本当、衣装のデザイン性憧れますよね。よく思いつくなぁと。自分、まったく才能なしなので羨ましくて羨ましくて…> <
言われて見れば確かに…最近の女子は化粧で目が二倍になるし、変わりゃしませんね!←
え、何故ww
アイドルはアイドルでもアイドルぶってる奴ってなんか好きになれないんですよねー。なので芸人枠は褒め言葉です(笑)
正論…!でも街中で見かける甘ロリってるオバハンって実害はありませんが気持ち的になんか嫌だな←
何ででしょうね?不思議だ(笑)
そう言えば自分、乙女ゲームはやりませんがワンドオブフォーチュン?とか言うゲームのエストという子に一時期はまってました。恋愛感情ではないのでプレイはせず、友人のデータでフォト漁ってるだけでしたが。容姿がシエルにそっくりなのです。
そこまで言われるとなんか否定したくなってきました←
シエル好きの頂点に立ちたい←
しかし私にはそんな資格はない…今やってる映画を一人で観に行く勇気が持てず未だに観れていない大バカ野郎ですもの(グスン
まぁ邪魔ですけどね(笑)
自分の心に素直になりましょうよ←
シエルは何しても赦されるのです、可愛いから!←
てかこの幼女、シエルよりも年下だからか、一緒にいるとシエルが男の子として映えるんです。だからシエルのお嫁さんにしたい。←
因みに今の白龍こんな感じです
imepic.jp/20141107/463780
ナディアは死ぬまで自由に生きるんだろうな(笑)
一応いるんですけどねー。多分。
ホモォ…ww残念ながらこっちの方ですね(笑)
ヴェントは変なのに好かれやすいのです、きっと。←
PC死ぬ前に作った線画の色塗ったので貼り逃げ。
フェミルのつもりだったけどなんか違う…
まぁ折角なので。
imepic.jp/20141107/470030
244
:
ヤツキ
◆.q9WieYUok
:2014/11/09(日) 19:25:52
【イスラ》後、コピックも案外初期費用高かったりwwww
久々に水彩色鉛筆触ったけど、アナログの方が肌に合う気がしてヤヴァイww
リマ》弱り目に祟り目過ぎる……
リマの絵は絵柄的に色鉛筆とかでふんわり塗ってみるのも良いかも!
添付は三年振り位に水彩色鉛筆使った絵。
imepic.jp/20141109/694630
245
:
ナディア
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/11/10(月) 15:06:21
【飛行艇】
「有り得る」
メイヤの返しにナディアは笑う。
うちの弟は愛想もくそもないから、相手と親しくなるためには相当時間がかかるだろう。
そう考えると待つのも仕方が無いなどと思える。
そして、続くメイヤの話をひとしきり聞いたあと、ナディアは唸る。
「これからどうするかって?んー…取り敢えず一度邸に帰るしかないかな。リトもあんなだし、親父のことも片付けなきゃだし…」
言ったところでナディアの視線は別の方へ。
メイヤやサンディよりも遠く、此方に向かってくる人影を捉える。
「セナ、何処行くの?」
人影はセナだった。
セナはナディアの問いに応えることなく、一同を横切り部屋の中へ入って行った。
あの部屋はリトの部屋だ。
「リトのお見舞いか…?珍しい」
会ってそれほど経ってはいないが、取り敢えずセナが他人に興味を持つ性格でないことは分かった。
そんな彼がリトに何の用があるのだろう。
ナディアは独り言のようにメイヤ達へ言った。
「ビックリだよね、うちの弟とあの子、似てるどころじゃないよ。同んなじ顔。リマって子は私と全然似てないのにさ。」
ヤツキ>>
【取り敢えず今はちょっと忙しいから来週以降暇になったらペイントソフトダウンロードし直そうと思ってる〜
iTunesもダウンロードし直さなきゃなんだけど、あれダウンロードすると色んなスパムファイルがもれなく付いてくるから削除するの面倒なんだよね…
ワタシカゲツケルノニガテダカラアナログムリナノヨー
PCだと誤魔化せる(笑)
水彩色鉛筆良いなーめっちゃ憧れるー!】
246
:
リト
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/11/10(月) 15:07:14
【過去】
お金?
屋敷から出たことのないリトがそんなものを持っているわけもなく、そもそも金とは何なのかと言った具合に、リトはアブセルの言葉を理解出来ていない様子で彼の顔を見た。
「……」
そう言えば、以前姉のナディアが何か言っていた。
”いいか、リト。ここにいれば警備的にまず有り得ないとは思うけど、もし変な人に連れて行かれた時はそいつに金目の物を渡せば助かる。自分の身は自分で守らなきゃね。金は惜しいけど仕方ない。”
リトは自分の身の回りを探る。
金目の物、たしか光る物だとナディアは言っていた。
光る物…見つけた。
リトは腕に付けていた金のブレスレットを外し、アブセルに渡す。
247
:
アブセル
◆Hbcmdmj4dM
:2014/11/10(月) 22:48:15
【過去】
「……は?」
お金を持っているかと尋ねたら、金のブレスレットを差し出された。
初めアブセルはその意図が分からずにポカンとリトを見るが、直ぐにハッと顔色を変えた。
そう、彼は知っていたのだ。
それが母や街の女たちが身につけているちんけなアクセサリーとは違う、本物の、価値のあるものだということを。
もちろん、どれほどの価値があって幾ら位の値がつくかなど正確なことは分からないが、とかくクレープ二つ分の料金よりも遥かに高価なものであることは明らかだろう。
不意に視線を感じ目を動かすと、クレープ屋の店員の怪訝な顔と出会った。
アブセルは急いで自分のポケットを探りなけなしのお小遣いを支払えば、クレープを両手に、リトを押してそそくさとその場を離れた。
そして…
「ばッッッかじゃねーの!?
こういうものを他人にホイホイ渡すんじゃねーよ!」
噴水広場まで来たところで、アブセルは足を止めリトに向けて声を張った。
しかし案の定と言うか…リトの顔を見るに彼は言葉の意味を理解していない様である。
何だか怒るのも馬鹿らしくなり、大きな溜め息と共に肩を落とす。
…猫もお金も知らないなんて世間知らずにも程がある。どこのお坊ちゃんもこういうものなのだろうか。
(なんかコイツを一人にするの心配になってきた…)
ともかく、とアブセルは先程のブレスレットをクレープと一緒にリトに返す。
そして自分は広場のベンチに腰掛け、リトに隣に座るよう促した。
「…今日は特別だからな。奢ってやる。
ありがたく食べろよ」
248
:
イスラ
◆Hbcmdmj4dM
:2014/11/10(月) 22:49:11
リマ》大丈夫ですよ〜、ゆっくりで良いのでサブイベやってください!楽しみにしてるので!^^
本当羨ましい限りです…(>_<)
でしょう?化粧の魔力怖い(笑)
気にしないで下さいw
うーん、なるほど(笑)
分かります、何か微妙な気持ちになると言うか…(笑)それと三十路のボクっ娘って全然萌えませんね(経験談)←
それ結局のところシエルが好きなだけじゃ…いえ何でもないです(笑)
否定してももう遅いです。自分の中でリマさんは変な人でドジっ子で確定済みですから←
おぉ…すごい、けど…何か無駄にしか感じないその向上心(笑)
そんな…w友達でも無理やり誘って行けばいいじゃないですか(笑)
昔UFOキャッチャーの中に入って縫いぐるみ埋もれて寝たいと思ったことならあります←
可愛いは正義ですもんねw
その幼女って最新巻の表紙のあの女の子ですか?てかシエルって既に許嫁いるんじゃなかったっけ?w
え、どちら様?ww人格が180度変わってるんですが(笑)ん〜…これはちょっと好きになれないかなぁw何か腹立つww
ナディアらしいw
そうなんですか?今いるキャラの中ではない?
あ、そっちでしたか…(笑)まぁそんな感じはしますw
あの、この子どこでなら売ってます?家に持って帰りたいんですけど←
いやはやありがとうございます!目の保養になりました〜^^フェミルの誕生日がバレンタインならジルの誕生日はホワイトデーですね(予想)
ヤツキ》お、セクシーなお姉さん素晴らしい!誰か気なるけど…(笑)
もういっそアナログを極めちゃいましょうよ(笑)
でもヤツキさん以前デジタルで色塗ってましたよね?あれ止めちゃったんですか?
249
:
メイヤ/フィア
◆.q9WieYUok
:2014/11/11(火) 22:55:17
【飛行艇】
「生まれ変わりか、意図的に似せたのかもな。
イタズラな輪廻転生の神サンがさ。」
ナディアの声にも、自分達三人の誰にも反応せずに通り過ぎて行くセナ。
その姿が部屋に消えて行くのを見送りながら、メイヤは自身の内で蠢く闇を抑え付ける。
この世で最も上質で、高純度で、しかし混沌とした闇を孕む王子。
それを喰らえば悪神は……
「……そうか、わかった。
四神の護衛は終わったけれど、俺は暫く此処に留まると思う。
暫しの別れか今生の別れかどちらになるか分からないけど、気をつけてな。」
どうやらナディア達は一旦実家の方へ戻るらしい。
彼女達と会うのが最後になるかは分からないが、メイヤはアッサリとだが別れの言葉を口にした。
アグルもそうだが、四神達とは長い付き合いになりそうな気がする。
だから、別れの言葉はこれ位で良いだろう。
じゃあ、と短く会釈をした後、メイヤはサンディの手を引き歩き出した。
ーーーーー
確かに、他の派閥の面子を把握しているかと言われれば、フィア自身もそうでは無い。
それに、彼が参謀長をやって居たのは大分昔の話だった。
「まぁ、そこまで表立って動いてはいなかったし、覚えてなくてもおかしくは無いわ。」
全く逆の反応を見せるシャムとDDを見ながら、フィアは件の人物の事を思い出す。
しかしそれも僅かの事、了承を得たフィアは空間を跳躍。
飛行艇を、騒がしい街中を抜け、目的地へと向かった。
ーーーーー
第801空挺師団が有する飛行艇の基本型は、航海用の帆船に可動式の両翼と、特殊な鉱石を核としたエンジンを積んだ物である。
四神達に与えられた飛行艇が停泊する港とはまた別の、世界政府軍専用の巨港にその船、イオリ率いる者達の軍艦はあった。
漆黒の巨体と、禍々しくも艶やかな色合いを見せる紅と金の差し色。
船体から伸びる両翼には鳳凰を模した装飾が取り付けられ、メインマストに浮かび上がるは絡み合う大蛇と迦楼羅の姿。
「暴の派閥の頭が足りない頭と、長老屈指の色物サンを引き連れて何か用ですか?」
波に揺れる甲板の上、並ぶ三人の長老に決して気圧される事も無く、寧ろ煽りながらその男、クロッソは口を開く。
ーークロッソ・シーダ
澪の派閥の参謀長であり、第二世代、フィア直系の吸血鬼。
とある事件の後、派閥を破門されたクロッソは今、七つの大罪を名乗る傭兵団の一員として、イオリの下に就いていた。
「貴女自身の手で破門した私に今更用があるとは思えませんがねぇ?」
銀髪紅瞳、フィアに似通った面持ちでありながらも、口の端に人を見下した様な笑みを浮かべるクロッソ。
その問いに答えながら、フィアはクロッソの後方、樽に腰掛ける男二人を一瞥した。
「特に用も無く、近くに来たから会いに来ただけ。
……と、答えたかったけれどそうもいかなくなったわ。」
クロッソの後方、二人の男は物珍しそうにフィア達を見つめている。
そして、その二人はゆっくりと、しかし確実に此方へと歩み寄って来るも、それを無視しフィアは問うた。
「レオの仇である、あの男の下に貴方が居るなら、色々と聞きたい話が出来たわ。
オリジンが纏っていたとされる魔装、それと同質の物を何故、あの男が所持しているのか。
そして、貴方も感じている筈の異質な気配の正体を。」
250
:
ジュノス他
◆Hbcmdmj4dM
:2014/11/14(金) 22:19:36
【飛行艇】
フィアの言う時空間の歪みとは、やはり過去からの時間移動というこの世界の概念を狂わせたことによるものの影響だろうか。
しかし気をつけろと言われても対処のしようがある様にも思えない。
何にせよ、この時代にいられる時間ももうあまり残されてはいないのかもしれない。
フィアやノワールと別れ一人甲板に出たジュノスは、外の風に当たりながら思案気に目を細める。
…と、そこへ。
「…もし、そこの方…」
不意に何者かに声を掛けられた。
見ればすぐ側の埠頭に礼服を装った老爺が立っていた。
―――…
ナディアにも色々とやるべきことがある様だ。
何か力になれればとは思うのだが…、彼女の抱える家の問題に自分ごときが役に立てるとは到底思えない。また、ナディア自身もそれを望んではいない筈だ。
「姉御、また逢えるよね?それまで元気でね!」
メイヤに手を引かれながら、サンディもまた手を振りナディアに別れを告げる。
彼女は強い。きっと直ぐに問題事を解決して、再びまた自分たちの前に顔を見せに来てくれることだろう。
そうして二人が立ち去ったちょうどその時、入れ違うようにして今度はジュノスがやってきた。
どうやらナディアを探していたらしい。
「ナディアさん…。外にお迎えの方々がお越しになっているのですが…」
どうするんだ…とでも尋ねる体でジュノスは言う。
先程の老爺はナディア達の屋敷に遣える者であり、またアブセルの祖父だと名乗った。
恐らくアブセルが事前に連絡を入れていたのだろう。
251
:
シャム他
◆Hbcmdmj4dM
:2014/11/14(金) 22:20:17
【バルクウェイ】
長老三人を前にしても全く物怖じせず、事もなげな態度のクロッソと、それに相対するフィア。
そんな二人の傍ら、シャムは眉を潜め隣のDDに小さく疑問を投げる。
「おい…、今俺バカにされなかったか?」
「馬鹿ね、聞くまでもなくされてたわよ」
それを聞くや、「なに」と彼の顔が一層険しくなる。
一歩前に出たかと思えば、そこらのチンピラよろしく肩をいからせ、クロッソに向けて威圧的な眼光を飛ばした。
「おぅコラ、このすかし野郎っ、何でもいいから知ってること全部吐きやがれ!!」
252
:
ヤツキ
◆.q9WieYUok
:2014/11/15(土) 15:25:02
【リマ》ソノキモチワカルワー!影付けとか解らんから、デジタルで塗った方が綺麗に見えるのはあるよなww
イスラ》モデルは好きなゲームのキャラですな、前チラッと言ってたアケゲーの……
デジタルのはパソ死んだ臭いのと、レイヤーが全然理解出来ない+ソフト無いから断念ww
あれからちょろちょろっと描いたりしてるけど、アナログのが落ち着きそうだww
253
:
ヤツキ
◆.q9WieYUok
:2014/11/15(土) 15:27:50
【添付忘れたww取り敢えず塗ってみたイオリン、派手っつーかチャラいimepic.jp/20141115/550200
254
:
イスラ
◆Hbcmdmj4dM
:2014/11/18(火) 23:02:39
ヤツキ》あぁ、lovですね。
なんとwデジタルの要のパソが死んだらもうどうしようもない(笑)
レイヤーは一度覚えちゃえば結構単純ですけどね^^
おぉう、安定の格好良さ!!やっぱいおりん好きだわー^^
255
:
メイヤ/フィア
◆.q9WieYUok
:2014/11/19(水) 00:30:33
【バルクウェイ】
以前よりも確実に人が増した街中を、メイヤはサンディの手を引き、歩く。
手を握り続ける理由も無いが、別段放す理由も無かった。
遅目の昼食を屋台の汁蕎麦で済ませ、賑わう露天を観て回る。
復興祭と言うだけあって、かなりの賑わい様だ。
時折、軍服を着込んだ者達の姿も見受けられるが、空挺師団の団員だろう。
「凄いな、街全体が活気づいてると言うか……暑い。」
一通り露天を回った後、比較的人気の少ない公園で休憩を取りながら、メイヤは口を開く。
つい一週間前、街は崩壊の危機に瀕していたのがまるで嘘だったかの様に、バルクウェイは騒がしい。
もとより世界政府のお膝元であった為に人口は多かった筈だが、小国家並みの人員を有する空挺師団を併せる事により、人口密度は元の倍以上となっていた。
「ここまで人が多いと、逆に動き辛いな。
あぁサンディ、アイスクリームが溶けて来てるぞ、服に零れないよう気をつけないと。」
ーーーーー
「威圧的に声を掛けるなんて、まるでチンピラですね。
あぁでも、暴の派閥のトップなのだから間違っては無いのでしょうか。」
煽れば面白い位に反応するシャムの様子に、クロッソは笑みを浮かべる。
どうやら彼は思った以上に単純らしい。
「人に物を乞う時は、それ相応の態度を取るべきだと思いますよ?
例えばそうですね、ドゲザにセップクとかはどうですか?」
肩を怒らせ声を上げるシャムをクロッソは更に煽るも、それ以上は続けない、否、続かなかった。
「貴方、あれから余計に性格が悪くなった様ね。」
何故なら、一連のやり取りの間無言だったフィアが、氷のナイフをクロッソへと投擲したからだ。
「……逆に貴女は人間臭くなりましたね、それはそれで面白いですが。」
眉間を狙って放たれた氷刃を二本の指で受け取り、クロッソは紅の瞳を細める。
「まぁ、現存する吸血鬼達にとっては神にも等しい長老方のお頼みですし、お答えしましょうか。
……ただし、条件付きで。」
そして、どこからともなく取り出した書類を眺めながら、続けた。
「今晩開かれる闘技大会、それに出場し、見事優勝出来たのなら、知りうる事全てを話しましょう。
既に参加者は決まっている様ですが、乱入でもして適当に入れ替わって下さい。
こう言うのは暴力が取り柄の長老サンに向いてると思いますし、簡単だと思いますよ?」
256
:
アリア
◆Hbcmdmj4dM
:2014/11/20(木) 10:56:29
【バルクウェイ】
「見事なものですね…。一週間でもうこんなに街が修繕されて…」
かつて深淵が開いたその広場にアリアはいた。
車椅子に腰掛け、そこから見える街の景色を眺め感嘆のため息をつく。
そしてそんな彼女の後ろにもう一人。
いつもとは対照的の白いワンピースを身に纏い、流した黒髪を風になびかせる少女…ゼツが車椅子を引きながら気遣わし気に口を開く。
「アリア…そろそろ行こう?風が身体に障るよ」
あの日、アリアはディンゴの治癒によって一命を取り止めた。
しかし彼の異能では損傷した部位を完全に癒すまでには至らなかったらしい。
アリアはもう二度と自分の足で立ち上がることも、子供を産むことさえも出来ぬ身体になってしまったのだった。
だが、これも今まで多くの者を殺めてきた罰だと、彼女はそれを甘んじて受け入れた。
アリアは柔らかい声でゼツに言葉を返す。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。
これでこの街も見納めかもしれないから、もう少しだけ…」
故郷よりも長い年月を此処で過ごしてきた。第二の故郷とも呼べるその街の風景を目に焼き付ける。
そうして満足したのか、暫くしてからアリアはつと視線を動かし言った。
「貴方にも…色々と難儀をかけましたね」
視線の先にはヴァイトの姿がある。アリアは続け口を開く。
「先程も言いましたが、私たちはバルクウェイを離れ様と思います。暫くはどこか静かな所で療養できればと思って…
貴方はどうするのですか?」
先の戦いで命を落とした同胞達の弔いも済んだ。
一件に関わっていた上層部の者達もどう言う訳だか皆一様に絶命し、指令を下す者もいなくなった。
本来ならば責任を問われる立場なのだろうが、空挺師団の団長と名乗る男は政府の汚職を公にするどころか、アリア達を拘束することもなかった。
今後どう生きていくかは自分で考えて決めろと言うことらしい。
257
:
サンディ
◆Hbcmdmj4dM
:2014/11/20(木) 10:57:12
【バルクウェイ】
…どうして手を繋いでいるんだっけか。
何となく照れくさい様な気もするが、離すタイミングを完璧に見失ってしまったと言うか何と言うか。
いや、別段嫌というワケではないのだ。
ただ、一緒に食事して、露店を見てまわって…これではまるでアレではないか。
そうアレ。恋人的な。そんなニュアンスの。
一度そんなことを考えてしまえば更に意識してしまい。一体周りからはどんな風に見られているのだろう、とか気にしてしまう。
と、その時。不意にメイヤの声が耳に入った。
「え…?わわ…!」
見れば、今にも氷菓の雫が垂れ落ちそうだ。
サンディは急いでアイスクリームにかぶりついた。
しかし、それにしても…。
「なんだかこんなにのんびり過ごすの久しぶりな気がするよ。ずっとこうだったら良いのにね」
人は多いが、賑やかなのが今は逆に心地がいい。今までの戦いづくの日々に比べれば断然平和に思える。
258
:
ヴァイト
◆.q9WieYUok
:2014/11/23(日) 00:06:17
【バルクウェイ】
「どうするか、って言われてもやる事ねーんだよなぁ」
緩やかな風が喧騒を引き連れ、吹き抜ける広場。
上司の初めてみる穏やかな表情とその後ろ、ワンピースを着た同僚。
以前の二人を知る者からすれば、色々
ツッコミを入れたくなるだろうその姿に驚いたのも少し前の事。
一週間振りの再会を果たしたヴァイトは、アリアの問いにのんびりとした口調で応えた。
「所属してた組織所か政府も消え、科学者達を率いてたあの胡散臭いジジイも行方知れず。
空挺師団?から入隊の誘いは来てっけど、断っちまったしな。」
バルクウェイでの戦いから一週間。
崩壊した街と政府を空挺師団が取り纏め、ヴァイトはその師団から入隊勧誘と共に色々な情報を聞いた。
戦いの行方も、組織の人間の処遇も、空挺師団が掲げる目標も。
「世界を救う戦いとか言われてもピンと来ねーし、俺のキャラでも無いし。
何より、折角助かった命を無駄遣いしちゃあ、オッサンにどやされるからな。
今までなかった平和で普通の生活ってヤツを楽しませて貰う事にするさ。」
だが、聞いた所でヴァイトは戦いに身を投じる気にはならなかった。
ゼツと戦い、彼女と差し違い、彼女を救った後。
確かに聞いたディンゴの声と、彼が繋いでくれたこの命。
ヴァイトは決めたのだ。
精一杯、この命にしがみついて生きてやると。
「……アンタらと一緒にな。
女二人じゃ色々不便だろ?力仕事位しか出来ねーけど、着いて行くさ。
ついでに言うと、ゼツには宇治金時をご馳走にならないといけねーからなぁ?」
そして、自分と同じくディンゴが救った2つの命を、守り続けるのだと。
「つー訳で、これからよろしくお頼み申し上げます、ってな。」
259
:
DD
◆Hbcmdmj4dM
:2014/11/23(日) 09:01:31
【バルクウェイ】
「あぁ?ザケんなッ、なんで俺らがンな訳分かんねーことしなきゃなんねーんだよッ!」
クロッソの提示した条件に、当然の如くシャムは異議を申し立てる。
力ずくで吐かせた方が手っ取り早いとばかりに、指の関節を鳴らしながら荒々しく彼へと近づいて行く。
が、しかし…。
「もういいでしょ?アタシ、ギスギスするのは嫌いよぉ」
その時、DDがシャムの肩を掴み彼を引き止めた。
そして、続けてクロッソへ目をやる。
「いいわ、そのお遊び付き合ってあげる。…もちろん、シャムがね。
その代わり、こっちも条件出していいかしら?」
かと思えばクロッソの後方に控える者達の存在にも構わず、DDは彼に近寄ると、背中からその首に両腕を絡ませ言った。
「もしシャムがその闘技大会に優勝した場合、アナタは知っていることの全てを話した上でアタシ達の露払い役として共に来ること…なんてどう?
…連れにイイ男がいないとテンション上がんないのよねぇ」
260
:
メイヤ
◆.q9WieYUok
:2014/11/24(月) 21:25:12
【バルクウェイ】
「そうだな、少なくとも俺が四神の護衛に着いて以来じゃないか?
記憶の図書館と弥都でも少しは休めたけれど、結局は争い事が起きてしまったしな。」
氷菓に被りつくサンディの隣で、メイヤは彼女の声に応える。
確かにそうだ、自分が彼女に出会ってから今まで、戦いの日々が続いていた。
サンディ達がそうなる事を見越して、イオリは自分を派遣したのだろうが……
「多分きっと、黄龍とやらを倒すまでサンディや猫男爵の戦いは続くんだろう。
だけど、偶にはこんな穏やかな日があっても良いと思う。
それに、サンディ達四神が世界の命運を全て背負う事も無いさ。」
打倒黄龍を掲げる空挺師団、その勢力は小国家並だと言う。
そんな軍団と合流出来たなら、戦う負担は大幅に軽減されるだろう。
「聞く話によると、師団長はかなりのヤリ手らしい。
確かに30代手前で師団長を務める位だから相当だろうな。
だからさ、協力しあえれば、そう遠く無い内に平和な世界が来るんじゃないかな?」
人々の喧騒も平和の内か、人混みを見詰めながらメイヤは続け、立ち上がる。
「さて、次はどこを廻ろうか?
少し早いけど、闘技場に向かっても良さそうかな?向こうにも露店は出てるだろうしさ。」
261
:
クロッソ
◆.q9WieYUok
:2014/11/24(月) 22:40:38
【バルクウェイ軍用港】
艶やかな動きで背後に回り、首筋に両腕を絡めて来るDD。
彼は言った、条件は呑むが、此方の条件も呑めと。
「残念ながら、私の一存では首を縦に振る事は出来ませんねぇ。」
しかし、提示されたその条件を呑む事は出来ない。
「こう見えても今は雇われの身、雇い主を勝手に変える訳にはいきませんので。」
だが、クロッソは悪戯めいた笑みを浮かべて続けた。
「しかしながら、たまには冒険してみるのも良いでしょう。
アナタが提示したその条件、呑みましょう。」
シャムが闘技大会で優勝すれば、クロッソは知りうる限りの情報を開示し尚且つ、フィア達に着いて行く。
シャムが優勝すれば、彼等は現段階で望む全てを手に入れれる訳だ。
……しかしそれは優勝すれば、の話。
彼等はまだ知らないだろうし、公式にアナウンスはされていないが、闘技大会には空挺師団長自らも出場するのだ。
(空挺師団長、レオール・ランブリッシュ。
東方最強の暗殺者であるイオリが唯一、暗殺し損ねた男。)
四霊と並ぶイオリをも超える程の実力を持つ彼が出場するのだ、少なくともシャム一人ではレオールに打ち勝つ可能性は低いと見ても良いだろう。
つまり、レオールが出る以上闘技大会は出来レースな訳だ。
(自分達に分が有る事を前提に話をするアナタが、躓いた時に見せるであろう苦い表情を楽しみにしておきますよ……)
そして。
闘技大会が無事に終わる可能性も決して高くは無いのだ。
寧ろ、あの者達によって空挺師団は今夜、壊滅するだろう。
「さぁ、互いに条件は呑みましたし今日の所はお開きにしませんか?
あまり長居すると、血の気の多い野郎が絡み出しますからね?」
浮かべる笑みを深め、クロッソは話は終わりだとばかりに声を掛けた。
262
:
リト、ナディア
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/11/24(月) 23:20:47
【過去】
何だかアブセルは腹を立てているようで。
そこまでは分かったものの、何に対して怒っているのか、アブセルの言葉の意味を理解出来ないリトは黙ったまま彼を見つめていた。
そんなリトの態度にアブセルの方が諦めたようで、買ってきたクレープを食べるよう促す。
「…」
リトは言われるままアブセルの横に腰を下ろし、小さな口でクレープを囓る。
ケーキなどデザートは沢山与えられるけれど、今まで食べたお菓子とは何か違う。
何と言うか…
食べにくい。
食べる際に強く握ったせいでクリームやら中身が外に漏れ出してしまい、手元がぐちゃぐちゃになってしまった。
【飛行艇】
「おー」
サンディの言葉を受け、ナディアは笑顔で手を振り返す。
と、そこへ入れ替わってジュノスが現れた。
しかし彼から出されたのは嬉しい報告ではなく。
「あー…」
アブセルめ、余計な事をしやがって。
屋敷に戻る決意はしたものの、このタイミングで屋敷のものに会いたくはない。
しかし、来てしまったものは仕方ないし…。
「仕方ない、案内して」
言いかけたところでナディアはふと思いつく。
彼女はなるべく面倒ごとを増やしたくない質だ。
ナディアの父親、ヨハンが死んだと言う知らせは屋敷の者達にとって打撃が強いだろう。その上リトまであんな状態になっていると知らせたら…
「あのさ、えーっと、ジュノス、だっけ?」
リトの事を恐れるくせに、リトの力に縋っている都合の良い奴ら。闇が蔓延し出した今、闇を従わせる者がいないと知れば、混乱を招きかねない。
「あのさ、似てるってのを利用して、セナをリトとして連れて帰りたいんだけど…駄目?」
263
:
キール
◆.q9WieYUok
:2014/11/25(火) 01:13:36
【虚空城】
現世と交わる事の無い、位相空間に浮かぶその城は、虚空の中にあれど圧倒的な存在感を示している。
世界を監理し、監視し、世界の中枢である存在、黄龍。
その居城は今、不気味に蠢いていた。
ーーーーー
「で、傷は全治したのかしら?」
イオリとシデンの戦いは、両者痛み分けの結果に終わった。
血塗れのシデンを虚空城へ連れ帰り、黄龍への報告を済ませてから一週間。
発令された新たなる指令を伝える為、一週間振りに顔を合わせる事となったのだが……
「その表情を見るに、かなり不満がある様だけど?」
虚空城の大広間に現れたシデンへ、キールは普段よりもやや、呆れた声色で声を掛ける。
「貴方の言いたい事は伺い知れるけれど、あの時の撤退はしょうがなかったのよ。
それとも何?あの男との決着を着けるまで動かない、何て言う訳じゃないでしょう?」
プライドの高い彼の事だ、四霊では無かったただの人間が、自分とほぼ互角の戦いを戦いを繰り広げ、更には決着が着かなかった事に苛立っているのだろう。
しかし、それに構っている暇は無い。
声を掛けながらもその返事を待たず、キールは指令内容の説明を始める。
「新たな指令は、バルクウェイへ駐留する空挺師団の壊滅及び、空挺師団旗艦の動力炉の奪取よ。
打倒黄龍様を掲げる空挺師団の戦力は、決して無視出来ない。
師団長はあの男、イオリをも超える実力者であり、その側近達は四神並。
今はまだ、虚空城へ攻め入る手段を持たないとしても明らかな驚異よ。
今回の作戦は敵陣の真っ只中に飛び込む事になるけれど、今までと違い多少の援護があるわ。」
崩壊する世界政府から逃げ出した科学者達と、彼等が有する技術と実験体。
新たなる人類の礎に、と調整されたそれらを基に、虚空城のデータを用いて生み出された兵士。
「急造な為に簡単な命令しか聞かないけれど、頑健かつ驚異的な再生治癒力が備わった人造人間が多数。
それと、内通者が一人。
後はイレギュラーだけど、四凶の面々。
彼等を囮にすれば、師団長やその側近と正面からぶつからずに済む筈よ。
不意打ちで良いわ、師団長を討ち、旗艦の動力炉を奪取する事。
それが、今回の作戦内容よ。」
264
:
サンディ
◆Hbcmdmj4dM
:2014/11/27(木) 02:52:02
【バルクウェイ】
「そっか…、うん、そうだよね。そうだと良いな…」
メイヤの言葉を聞き、サンディは頷く。
世界の平穏の為に動いているのは決して自分たちだけではない。
一人だけでは微々たるこの力も、多くの者と合わせればきっと更に強大なものになる。
そう思うと胸に抱えるこの重責も大分と軽くなった。
サンディはぴょんとベンチから飛び降りると、メイヤの後をついて歩いた。
「あ、そう言えば闘技大会でるんだっけ?今の内に下見しとくのも悪くないかもね。
そんでガッツリ賞金ゲットだぜ!…て、あれ?賞金って出るんだっけ?」
――――…
「あら、話の解るイイ男。お姉さん胸キュンしちゃいそうだわぁ」
条件を呑んだクロッソに向け、DDはお返しとばかりにその頬に軽く唇を当てる。
そうしてそっと彼から身を離すと、今度は後ろを振り返りシャムに向けて言った。
「と言うわけで、頑張ってねシャム!アタシ期待してる!」
気のせいか、その目は炎が燃えたぎっているようにも見える。
「ちっ…、めんどクセぇ…」
対しシャムは付き合い切れないとばかりに、ダルそうに頭を掻く。
そうは言っても、ルドラを引き取った件といい案外彼は人が良いようで、なんだかんだ今回も割を食ってあげるのだろう。
話はすんだ。シャムは、もういい帰ろうとフィアに目を向けた。
265
:
ジュノス他
◆Hbcmdmj4dM
:2014/11/27(木) 03:26:50
【バルクウェイ】
「え゛ッ!?」
思いもよらぬナディアの返事にジュノスは上擦った声をあげる。
それはつまりセナをリトの替え玉にすると言うことか。
確かに彼等の容姿は瓜二つ。こっそり入れ替わるのも可能だろうが…。
「セ…セナ様がご承諾なさるのなら…」
しかし内面は全く異なる二人。
分かる人には分かってしまいそうな気もするが、最終的にジュノスはナディアの願いを聞き入れた。
「しかしこう言ってはなんですが、セナ様にリッちゃんの振りが出来るのかどうか…。
それにその間リッちゃんはどうなさるのですか?」
続けて、ジュノスは迎えの者達の元にナディアを案内すべく歩きながら彼女に問うた。
【過去】
…なんてドンくさい奴…。
クリームまみれで悲惨な状態のリトの手元を目に、アブセルは呆れて言葉を失っていた。
もしかしてクレープも食べたことがないのか…?いや、だとしてもこれは酷い。
「あ〜も〜…何やってんだよ、グチャグチャじゃん」
アブセルはポケットからハンカチを取り出すと、それでリトの手を拭いてやる。
良かった、祖父にハンカチを持たされてて。
「ほんと、世話の焼ける奴…」
って、あれ…?なんかさっきからリトに振り回されてる気がするんだが、気のせいだろうか。
そんなことを思いながらも、アブセルは自分の持っているクレープをリトに差し伸べる。
「これは軟らかいから優しく持ってやんなきゃ駄目なの。
ほら、口開けろよ。食べさせてやるから」
しかし、だ。
クレープを人に食べさせるのって案外難しい。
口元に運ぶ筈が、勢い余って彼の顔面に押し付けてしまった。
「…あ」
態とじゃない。決して態とじゃないんだ。だけど…、
「ぷっ…くくッ…、へっ…変な顔…!」
べったりとクリームのついたリトの顔を見て、アブセルは思わず吹き出してしまう。
彼の顔を指差しケラケラと笑うのだった。
266
:
アリア
◆Hbcmdmj4dM
:2014/11/30(日) 02:43:49
【バルクウェイ】
宇治金時の話しを持ち出すヴェントに対し、ゼツは小さく舌を打つ。
「なんだ、覚えてたんだ。忘れてくれて構わなかったのに」
かと思えば、今度は彼に向けてズイッと人差し指を突きつけ、続けるように言った。
「あと、女扱いして欲しくないのが僕。この格好はアリアが勧めるから仕方なくやってるだけで…ゴニョゴニョ。
とにかく、君なんか来なくたって別に困らないんだから」
どうも彼女の着ているこのワンピース、もう戦う必要もないからとアリアが見繕ったものらしい。
以前よりもイキイキと憎まれ口を叩くゼツも、側で穏やかに笑うアリアも、見様によってはまるで憑き物が落ちたかのようである。
正直アリアにいたっては、最初の内は目も当てられぬほどだったと言う。
無理もない。心から信頼…いや、愛していた者には利用された挙句、裏切られ。今まで正義だと信じて行ってきたことが飛んだ過ちだったのだ。
彼女の失意は計り知れない。
しかし、そんな彼女も見舞いに来てくれた部下達からの励ましの声あってか、今は大分落ち着きを取り戻した様だ。
それに被害者面が許される立場でもないのだ。
アリアはゼツに宥める様に声をかけた後、ヴァイトに向けて言った。
「ありがとう、荷物を持って貰えると助かります」
そう、今まで奪ってきた命や殉職した部下達の為にも、必死に生きて罪を償わなければならない。それが人一倍責任感の強い彼女が出した答え。
「じゃあ…、そろそろ行きましょうか」
そう言ってアリアは二人に微笑みかけた。
267
:
シデン
◆Hbcmdmj4dM
:2014/11/30(日) 02:44:48
【虚空城】
淀みなく言葉を綴るキールの視線の先。
そこには革張りのソファに足を組んで座るシデンの姿があった。
「…全快していない、…と言えば(任務を)降りても良いのか?」
キールの方へは目もくれず、シデンはネイルファイルで爪を磨きながら憮然とした態度で言う。
負傷した傷は既に完治した様だが、どうも気分が乗らないらしい。
どこか気怠そうにしながら更に続ける。
「手の空いている者なら俺の他にもう一人いるだろう。
…応龍の奴が」
268
:
メイヤ
◆.q9WieYUok
:2014/12/05(金) 21:35:52
【バルクウェイ】
「確か賞金も出るみたいだぞ、金額は見てないけれど……」
公園は闘技場へ歩を進めながらメイヤはサンディの問いに答える。
途中、何人かの知った顔……処刑人の剣の面々とすれ違うも、目を合わせるだけで特に声を掛ける事もなかった。
以前対峙した時とは全く違った雰囲気、柔らかな表情や様子を見るに、彼等も新たな人生を歩んで行くのだろう。
車椅子に乗る女性と、それを押す少女。
二人に付き添い荷物を持つ青年の姿を見送り、メイヤもまた、彼等とは別の方向へと歩いて行く。
ーーーーー
闘技大会自体は夕刻からなのだが、闘技場周辺は既に観客達の威勢の良い声……怒号に包まれていた。
彼等の声を聴くからに、どうやら運営公認のトトカルチョがある様だ。
誰が優勝するのか、誰が大穴か、などを話す男達の間をすり抜け、メイヤは大きく貼られたトーナメント表に目をやった。
(そう言えば、初戦はアグルとだったか。
あの時俺を置いて逃げたお礼をしないとな。)
丁度その時だった、隣に並び立つ男……空挺師団長の側近がメイヤとサンディに気付いたのは。
「……お前は確か……シンライジの弟か。
隣のちっこい赤毛はアレか、四神の天照だな。」
メイヤの黒髪とはまた違った色合いの黒髪と赤い瞳のその男、マルトは丁度良かったと前置きをし、挨拶もそこそこに話し始める。
「飛行艇でお前達の仲間に話しそびれたんだが、ここ数日異能を持った人間が何者かに襲撃されているのは知ってるか?
目撃情報はあまり無いんだが、どうやら襲撃者はかなりの実力者らしい。
二人一組で片方は変な訛り癖があるようで、もう片方は白髪のガキとも聞く。
空挺師団の方でも捜査してるんだが、お前達も気をつけろよ?
件の二人組は異能者を実際に喰う、らしいからな。
……まぁ、異能抜きにしても、若いカップルは変なヤツらに絡まれない様気をつけろよ。」
【鈍亀レス申し訳無い、新婚旅行行ってて板を全く見てなかった……】
269
:
フィア
◆.q9WieYUok
:2014/12/06(土) 18:40:26
【バルクウェイ】
敵地の真ん中とも言えるこの場所では強引に聞き出す訳にもいかず、しかし提示された条件を鵜呑みにするのも気が引ける。
だが、双方共に話が纏まりつつある今、フィアは無言で頷くしかなかった。
ーーーーー
暑苦しいまでの人混みと、喧騒に包まれる闘技場。
既に観客席は開放されており、多くの観客がひしめき合っている。
その最上階、ドーナツ型に建設された闘技場の最端部にフィア達は居た。
「で、問題はどうやって出場するかね。
今の所欠員は出てなさそうよ、出場者を適当に一人捕まえて入れ替わるのが無難かしら?」
配布してあるトーナメント表に目を通しながら、フィアはDDとシャムに声を掛ける。
「まさか乱入する訳にも行かないでしょう?」
270
:
ナディア
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/12/07(日) 20:08:55
【飛行艇】
セナにリトのフリが出来るか。
間違いなく、無理だろう。
「まぁ顔があんだけ似てるんだし、双子じゃないのに同じ顔がこの世に二つあるわけないんだし、周りはリトが大人しくなった〜くらいにしか思わないんじゃない?」
多分、これが逆、感情が表に出やすいリトにセナのフリをしろと言えば難があるだろうと思う。セナがリトをやる分には問題ないだろう。
「リトは人目を避けて部屋に眠らせておく。ただ、セナも其処で過ごしてもらうことになるからちょっと不自由させるけど…」
それからナディアはふとジュノスを見る
「あんた、人を見る目とかある?」
--------
【過去】
顔に付いたクリームを拭いながら、リトはアブセルを見る。
アブセルはこちらをみて笑っていた。
「……」
その顔が何とも気に入らない。
リトは自分の握るクレープをアブセルの顔になすりつけた。
271
:
リマ
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/12/07(日) 22:03:00
ヤツキ>>
新婚旅行おかえりー!
イスラ>>
三十路のボクっ子って実在してるんですか(笑)
変な人でドジっ子って何キャラww
向上心はあってなんぼです!←
友達は大事な試験前だったもので…っと思ってたら抜け駆けして前編見終わってたので悔しいから後編だけ一緒に見てきました←
ぬいぐるみに埋れたいwwたしかに気持ち良さそうですね(笑)
そうそう正義!
はい、まさしくその幼女です。
あー許嫁ねー…エリザベスはもう未亡人でいいよ←
凄いですよねw巷では二重人格とか言われてます(笑)腹立つとか酷い!!w
因みに白龍さん、いますごく大変な事に…
→imepic.jp/20141207/793001
この二人親子ェ……
でも最近ナディアのキャラ見失ってきてます←
非売品ですww手に入れようものならもれなくジルが付いてきます←←
あぁ、ジルはホワイトデーか、成る程!←
272
:
イスラ
◆jH0158NXZ6
:2014/12/09(火) 20:23:01
【ヤツキ》おかえりなさい^^新婚旅行はどこに行ったんですか?
あと今更なんですがゼロってどういった存在なんでしょう?
自分的には…世界(惑星?)の意志=ゼロの人格を形成しているもの
つまりは世界自身が己の終焉と再生を望んでる…みたいな感じに勝手に認識してたんですけど(笑)
実際ところどうなんでしょう?
リマ》頃合いの良いところでポセイドン邸への場面転換お願いしてもいいですか?もしくはこっちがします
それが実在するんです(笑)
後編だけw友達のがガチでしたね(笑)
あの幼女かわいいと思ってました^^
どう言うことwエリザベス嫌いなんですかw
おい、ママン何してんすかww
あ、そうなんですか?
自分はサンディのキャラ最初からずっと見失ってますよ←
っち…非売品か…←てか、もれなくジルが付いてきても全然構いませんよ←】
273
:
サンディ
◆Hbcmdmj4dM
:2014/12/09(火) 20:49:05
【闘技場】
会場は予想以上の賑わい様だ。
血気盛んな男達の姿や場の様子を目に、サンディは物珍しそうに視線を巡らす。
張り出されたトーナメント表を見るに、どうやら一回戦は仲間内での対決になるらしい。
(うーん…こう言う場合どっちを応援すれば良いんだろう…)
そう思案していたところ、横にいた空挺師団員マルトが二人に注意を呼び掛ける。
…怖い人達もいたものだ。
でもまさかこの近くにはいないだろう、とサンディは呑気に話を聞き流すも…。
彼の最後の一言だけは何故だかしっかりと耳に入ってきた。
「……へ…?」
カ…カップルって…。
「全っ然!そんなんじゃないからッ!」
真っ赤になりながらも、サンディは慌てた様にぶんぶんと頭を振った。
274
:
ジュノス
◆Hbcmdmj4dM
:2014/12/09(火) 21:08:39
【飛行挺】
まあリトの姉である彼女がそう言うのだ。心配することはないのかもしれない。
それに、その辺はナディアや自分でフォローをすれば大丈夫だろう。
…と、一応は納得しかけたジュノスの横で、今度は不意をついた問いが投げ掛けられる。
「さあ…どうでしょう?
ないことはない…かもしれません」
セナやリマのことを慕っている辺り、ある程度の眼識はあると自負している。
しかしその問いの意味するところが解らない、とジュノスは小首を傾げた。
【過去】
「ぶフッ…」
まさかやり返されるとは思ってもいなかった。
アブセルは初め驚いた風に目をぱちくりとさせていたが、直ぐに我に返りキッと眉をつり上げた。
「やったなっ!!」
お返しとばかりにクレープを振り上げ、リトに掴みかかる。
…が、またもや力加減を誤ったのか、それともリトがひ弱過ぎたのか。アブセルがリトを押し倒す形で、二人はベンチの上から転げ落ちてしまった。
「…ッて〜…」
…少しふざけすぎたか。
食べ物で遊ぶと祖父に叱られてしまうんだった。
せっかく買ったクレープも地面に落ちて食べられなくなってしまったし、服も顔もベタベタだ。
「ごめん、怪我しなかった?」
流石に悪いと思ったのか、アブセルは身体を起こしリトを気遣い見る。
先程の衝撃で僅かに捲れ上がったシャツの隙間から、リトの白い肌が覗いていた。
「あ…ここ、アザになってる」
そこでアブセルは彼の脇腹辺りに青黒い斑紋があるのに気がついた。
落っこちた際にぶつけてしまったのか?
いや…それにしては…。
「あれ?ここにも…こっちもだ」
アブセルは更にシャツを捲り上げる。
リトの身体の痣は一つどころか数ヶ所に及んでいた。肌の色が白い分、それは際立って痛々しく見える。
また、痣の色的にもついさっきついた様な感じではなかった。
275
:
キール
◆.q9WieYUok
:2014/12/13(土) 18:10:31
【虚空城】
「嫌いなのよ、あの子。
捨て犬だか捨て猫だか拾って来た挙げ句、その獣に牙を剥かれてたし。
……何より、応龍は黄龍様に忠誠を誓ってないのよ。」
普段ならば率先して任務に着くであろうシデンの、予想外の言動にキールは小さく溜め息を吐いた。
「乗り気じゃないならいいわ、今回は私がやる。
お子様の面倒見も、偏屈頭のフォローもしなくて良いのは気が楽だからね。」
裏切り者の鳳凰と、気分屋の応龍。
あの二人よりは、麒麟であるこの男の方が相方としては好ましい。
しかし、今回は動く気が無いようだ。
気怠げに爪を磨くシデンへと二度目の溜め息を吐き、キールは彼に背を向ける。
「もし私が帰らなければ、後は頼むわよ。」
そして、普段よりもトーンを落とした声で声を投げ掛け、次なる戦地へ……バルクウェイへと向かった。
【ただいまですわー、北海道で美味い物食べ過ぎて太ったwwww
イスラ》その認識で合ってるよー、世界中枢であるゼロを撃破=世界崩壊、的な。】
276
:
ジル他
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/12/14(日) 20:37:51
【ポセイドン邸】
薄暗い月明かりの中、ジルはその気配なくある一室に姿を見せる。
主不在の屋敷は警備が脆い。一般的な侵入者は防げても、彼のような能力者であれば警備を抜けるのは容易い。
「……」
部屋の主は眠っていた。
明朝受け入れがたい現実が訪れることなど露も知らず、安らかな寝息を立てて。
「ごめんね…」
その寝顔を見つめ、ジルは呟いた。
歳を重ねても色褪せない…今となっては朧げな記憶ではあるものの、想い出の彼女とほとんど相違ない。
ずっと会いたかった人。
「どうしても赦せなかったんだ」
大好きなミレリア。だけど、貴女の夫は憎かった。
自分から、何もかも奪って行ったあの男が。
あの男を…ヨハンを殺したのは黄龍の指示があったからだけじゃない。指示がなくてもいつか殺していただろう。その時期がただ早まっただけだ。
「もう会えない。僕はあなたの仇だから…」
ジルは呟き、ミレリアの髪を撫でる。
「誰?」
その声にジルはハッとして手を離した。
眠っていたはずのミレリアと目が合う。
起こしてしまった。
「おば…さま」
「…トーマ?」
どう取り繕えばいいのか。ジルは珍しく動揺を見せるが、その必要は無かったようだ。
ミレリアが別の名前を呼んだから。
自分の面影に父の姿を重ね、彼女は嬉しそうに微笑みかける。
「トーマ、やっと会いに来てくれた…ずっと待っていたのに。」
言ってミレリアはジルの頬に手を触れる。
「貴方は昔と変わらないのね。私はこんなにオバサンになってしまった。今では貴方より歳もずっと上よ、不思議ね。」
昔を懐かしむように目を細める。自分を子供扱いして、拗ねる自分を笑いながら優しく撫でる姿を今でも覚えてる。
「トーマ、貴方に謝らなきゃ…謝ることが沢山あるの。貴方を愛していたのに、私の手を離した貴方が赦せなかった。私を諦めておきながら、私を奪ったヨハン様と変わらず接している貴方が憎かった。でも貴方の子供は可愛くて…貴方に似たあの子を初めて見た時、貴方との縁が切れずにいたらなんて、考える自分がいたわ。そんな自分が赦せなくて、貴方の奥さんに申し訳なくて、余計に…貴方を恨んでしまった。」
でも…
「貴方をこんなに愛しているのに、貴方を諦められずにいながら、ヨハン様のことも愛していた。あの方は私を必要としてくれたもの。私の心が貴方のところにあると知っていても変わらず私を求めるあの人が不憫で…いつの間にかあの人のことも、愛していた。」
277
:
ジル他
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/12/14(日) 20:38:25
そして、それが始まりだった。
「私が悪いの。ヨハン様だけを愛する事が出来たなら、…いいえ、もっと早く、ヨハン様だけを愛する事が出来ていたなら…」
ヨハンは知っていた、結婚しても尚、ミレリアの心にトーマの姿が残っていることを。
ジルを可愛がるミレリアの心の内を、彼は気付いていた。
そしてミレリアも、そんな自分を見るヨハンの心情に気付いていた。申し訳なくて、でもどうしようもなくて…
「知ってる?私ね、ヨノの下にもう一人身籠ったの。また子供を生ませてくれるって聞いて、とても嬉しかったのよ。ヨハン様が私を赦してくれた。だからもあの子が生まれたら今度こそ貴方を忘れて、ヨハン様だけの為に生きようって決めたの。」
しかし、上手くいかなかった。
「私の希望の子は…無事に生まれて来てはくれなかった。神様が私を赦してくれなかったのかな。ヨハン様の気持ちに応えようとしたのに…あの子がいなければ私の気持ちを信じては貰えない…。結局、あの人は耐えられなかった…」
涙を浮かべるミレリアに、ジルはどうしようもない気持ちになる。
彼女が求めていたと言う子は、ちゃんと生まれてる。
彼女の言葉を借りるなら、ヨハンは初めから彼女を赦す気などなかったんだ。
「知っていたの?」
ジルは渦巻く感情を飲み込み、ただ一言、問いかける。
ミレリアは頷いて見せた。
「貴方を死なせたのは私。ヨハン様を傷つけたから…私が報いるべき業を、貴方が被ってしまったの。ごめんなさい…貴方の幸せを奪ってしまった。貴方の子供達も見つからないの…」
幼い子供達から両親を奪ってしまった。
せめて子供達に償いをしなければ…そう考え動いた時には、すでに彼の二人の子供の消息は掴めなくなっていた。
278
:
ジル他
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/12/14(日) 20:39:03
-----
「……」
先程までいた部屋を背にして、ジルは無言で佇む。
泣きながら何度も謝り続けるミレリアに、結局何も返せず出て来てしまった。
把握していない事実まで出て来たものだから、頭がついていけず混乱している。
整理するのも面倒だ。
「…あなた…」
そんな彼に、新たな声がふりかかる。
顔をあげればそこにはミレリアの娘、ヨノの姿があった。
「…」
本当、何もかもが面倒。
何か取り繕うこともせず、ヨノの声を無視してジルはその場を去ろうとする。
「ジル…?」
しかし続く彼女の言葉に、ジルはその足を止める。
今、何て…?
彼の動きを肯定ととったのか、ヨノは更に言葉を繋げた。
「ジル…ジルでしょ?あなた…」
何故こんな所にいるのかは別として、目の前にいる男の子を、ヨノは知っている。
成長した彼の姿に幼い頃の面影を見た。
「…」
観念して振り向いたジルへ、ヨノは駆け寄る。
「今まで何処にいたの?お母様が貴方をずっと探して…」
言いかけたところで、ヨノはハッとした。
「…泣いているの?」
彼の顔に滲むそれを、ヨノはそっと指で拭った。
何だこの娘は。いきなり現れた男に警戒することもせず、むしろ気にかけるなんて。
「…不思議だ…」
頬に触れる彼女の手を取り、ジルはその顔に笑みを浮かべた。
「ナディアお姉さんは覚えてなかったのに…」
本当、調子が狂う。
思えば彼女は昔からそうだった。いつも何処か抜けていて…
今ではもう遠い日。”遊びに行くんじゃないよ”と困り顔を浮かべる父親に無理を言って、仕事で行く先々にくっついて回っていた。その中でも頻繁に訪れていた大きなお屋敷に住んでいた、二人の可愛らしいお嬢様。奥様のミレリアはとても優しい人で、勝手に付いてきただけの自分を気遣い、退屈しないようにと、お嬢様と会わせてくれて、一緒に遊んでくれた。
自分は覚えてる。あの時が一番楽しかったから。
彼女が覚えてるとは思ってなかったけど。
「ヨノ、一つお願い聞いてもらえる?」
「何?」
抱きしめてもいい?
その言葉を言う前に、ジルは彼女の体を抱き寄せていた。
あの時は彼女の方が背が高くて、いつか追い抜いてやるんだって、むくれていたっけ。
今では頭一つ分くらい小さい彼女、一瞬硬直したものの、すぐに受け入れてくれた。
「会えて嬉しい。だけどもうサヨナラだ。」
「どうして?また以前のように皆で遊びましょう?」
「もう遊ぶ歳じゃないよ。」
「それもそうね、でも私は貴方に此れからも会いたいわ」
ジルはヨノの体を離す。
自分を見上げる彼女の顎に手を添え、そっと顔を近づける。
しかしその唇に触れることなく、ジルは顔を離した。
綺麗になった。記憶の中にいた彼女よりずっと…
「ヨノ」
自分は何を期待していたのだろう。
彼の呼びかけに何もなかったと悟ったヨノは、反射的に目を閉じてしまったのが恥ずかしくなって顔を赤らめる。
そんな彼女の仕草にジルはクスリと笑った。
「お願いを聞いてくれたから、調子に乗ってもう一つ。
僕の名前を呼んで。」
「ジル?」
「今じゃないよ。
もし仮にまた再会出来たなら、その時はもう一度、僕の名前を呼んで欲しい。僕が僕でいられるように、僕が僕でなくなってしまっていたなら、元の僕に戻れるように、君だけは、僕を忘れないで」
その時まで、さようなら。
279
:
ナディア、リト
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/12/14(日) 22:30:46
【飛行艇】
「よし、じゃあ任せた」
ジュノスの返しに満足し、ナディアはニッと笑ってみせた。
「今回の首謀者がまさかの父親。あまりに近い人なもんだから、若干人間不信的な?まぁそれは半分冗談だけど、取り敢えずそろそろ屋敷の人間を敵か味方か振り分ける必要があるかなって思うんだよね。」
そしてポンっとジュノスの肩を叩く。
「手始めに今から会う爺さんを宜しく。」
------
【過去】
痣を見つけたアブセル。
途端、リトは彼の腹を思い切り蹴り飛ばして急いで身体を隠す。
「……ケホっ」
一瞬の動揺が引き金となったのか。
突如リトの口から咳が漏れる。
「ゲホっゴホっ」
それは次第に酷くなり、リトは苦しそうに踞った。
280
:
リマ
:2014/12/14(日) 22:54:45
ヤツキ>>
いいなーっ北海道!!
人生で一番楽しかった高校時代に修学旅行で行った思い出の場所!!また行きたいなー> <
イスラ>>
ようやく書きたかった奴の一つ、ジルとの絡みが書きあがりましたーっ
時間軸めちゃくちゃだけど( p_q)
了解です!もしかしたらお願いしちゃうかもしれません(。。;)
うわー…なんか恐怖を感じます←
前編は結局見れなかったのでDVDで我慢します(≡ω≡;)可愛いシエルは前編の方が多かったんだけどなー…まさか抜け駆けさせるとは(笑)
友達の方は「実習中で大変だと思って誘えなかった」だそうです(笑)お互いの思いやりがすれ違いを呼んだ(笑)
いえ、友達は一番くじの件で私には勝てないと認識してるようですw
てか別の友人に久しぶりに再会した時ラストワン手に入れたこと言ったら「あんたならやり兼ねないと思ってた」って言われた…あれ(**)?
可愛いですよーっシエルにお似合いですp(´∇`)q
嫌いではないけど、あんだけシエル好き好き言ってる割には気付かないんだなぁって思うとなんだかなぁって。
ビックリですよねw自分学校で読んじゃったもんだから「えぇ!?」って声出しちゃいましたよ←
因みに白龍ちゃんは次の週にママに噛みつきました。何この親子ww
最初からww
もっとサバサバしてる子にしたかったのに、意外に思い悩んでる感じになってしまってるんですよねー…
ジルが付いてくると面倒ですよ?(笑)
281
:
メイヤ
◆.q9WieYUok
:2014/12/16(火) 00:30:00
【バルクウェイ闘技場】
異能者を狙う二人組みの話を聞き、メイヤは記憶を辿る。
(そう言えば、弥都でそんな奴と戦ったような……)
しかし、続く言葉とサンディの慌てふためく声が思案するのを妨げる。
「なっ……いや、俺達はそう言うのじゃない。
四神は護衛対象だったし、その。」
……確かにそうだ。
今は手を繋いでいないが、つい先程まではしかと手を繋いで街中を歩いていた。
マルトがそれを見ていた事は無いだろうが、連れ立って歩く自分達二人の姿は“そう”見えてもおかしくない。
見れば隣のサンディは顔を赤らめている。
しかし、マルトの言葉……その単語を否定的するのも何故か気が進まない。
「ハハ、お前達初々しくて面白いな。
団長が見たら酒の肴に一晩どころか3日は弄られるぞ?」
どう返すかを考える内にマルトは笑いだし、“そろそろ控え室が開くから集まっておけよ”と言い残してその場を立ち去って行く。
その背が人混みに消えたのを確認し、メイヤはサンディに声を掛けた。
「……その、悪い気はしないけど何だかもぞもぞするな、うん。」
【リマ》俺も高校の時以来だわww社会人なると、業種にもよるけど中々まとまった休みが取れんからねー。
学生の内に旅行するべきやね!】
282
:
サンディ他
◆Hbcmdmj4dM
:2014/12/17(水) 19:24:27
【闘技場】
言いたいことを言えば、マルトは笑いながらその場を去っていく。
どうやらただ単にからかわれただけの様だ。
(全く…いきなり変なこと言うからビックリしちゃうじゃん…)
サンディはむくれっ面でマルトの背を見送るが、そこで不意にメイヤの声が耳に入ってきた。
「そうそう、悪い気はしないけどー……って、…ぅええ…っ!?」
それって一体どういう意味だ。
驚きのあまり思わず変なポーズで仰け反ってしまうサンディであったが。直後、そんな二人の間を割る形で、突然一人の男が倒れ込んできた。
―――…
熱気と喧騒に包まれる闘技場。そこかしこから感じる剥き出しの闘志。
そんな会場の雰囲気に、シャムの血も徐々にたぎってきた様だ。
「恐喝か…それとも力ずくで行くべきか…、それが問題だ…」
どうやって出場するかを問うフィアの声を背に、シャムはキョロキョロと目ぼしい人物を探しながら屋内から外に出る。
と、丁度その時だ。
「ちょっと…!?どうしたの!?」
娘のものと思しき大きな声が飛び込んできた。
見れば先ほど飛行挺の中ですれ違った赤毛と黒髪。
その二人に挟まれる様に、地にくずおれた男が一人…。
「…アグルに大会のことを聞いたんで此所まで来てみたんだが…、何か途中で寒気がし出して…頭くらくらして…」
地に伏していた男の正体はイスラだった。
どうやら熱があるらしい。それもかなりの。
イスラの額に手を当てていたサンディは呆れた風に言う。
「病み上がりなのに無理な稽古続けるからだよ…。
この分じゃ出場は無理だね。医務室とかで休ませて貰った方が良いよ」
「え…、嫌だ。出る…」
「めっ、です!」
そんな目の前の光景を見据え、シャムはニヤリと口の端を歪めた。
「…どうやら面倒なことをする必要もねーみてぇだな」
283
:
ジュノス他
◆Hbcmdmj4dM
:2014/12/17(水) 19:29:03
【飛行挺】
なるほど、例えるのなら良い豆の中からそうじゃない豆を選別し取り除く。それと同じことをしろと言う訳か…。
結果いかんでは、彼女は屋敷の人間を一新させる気なのかもしれない。
……って。
どうしてそこでそんな重大な役目に自分を起用しようと考えた!?
彼女の家の事情に関しては全くの無知。
言うなれば余所者、部外者、第三者。
しかもさっきの爺さんと言えばアブセルの祖父で…同種の闇の気を感じたことから、恐らく自分との血の繋がりもあるのだろう。
向こうも何かを感じ取ったのか、先ほど顔を合わせた際、怪訝な顔をされた為、あまり会いたくはないのたが…。
…何だか断れる雰囲気ではない。て言うか断っても多分ムダっぽい。
「…………」
ジュノスは何も言わず、ただ彼女への返事の変わりに、顔に引きつった笑みを浮かべるだけだった。
――…
「ご当主様…!」
船から降りてくるナディアとジュノス。
その姿を見つけるや、老翁はハッとし、彼女に駆け寄った。
「今まで一体どちらに行っておられたのですか!?爺めは心配致しましたぞ!」
仕事の場面ではいつも物静かで寡黙な彼ではあるが、今日は珍しく声を荒げている。
しかしそんな自分に気がついたのか、老翁は直ぐに態度を改め、小さく頭を下げた。
「ああ…いえ…、誠に失礼いたしました。
ご当主様にはまず初めに御悔やみのお言葉を申し上げるべきでした」
言って、彼は哀悼の意を表す。
ナディアの父親に何が起きたのか…アブセルからの話しではまるで意味が解らなかった。
もっと詳しい説明を求めたいところではあるが、それは一先ず屋敷に戻ってからにした方が良いだろう。
「旦那様の御遺体は棺と共に既にお車の方へ移しております。戻ったら直ぐにご葬儀の準備に取り掛かって…」
そこまで言って、老翁はふと何かに気がついた。顔を上げ、辺りを見渡した。
「そう言えば…リトお坊ちゃんのお姿が見えませんね…?
此方にご一緒していらっしゃるとお聞きしたのですが…」
284
:
アブセル
◆Hbcmdmj4dM
:2014/12/17(水) 19:59:53
【過去】
「いった…!何すんだ馬鹿ッ!」
リトに蹴られ地面に尻餅をついたアブセルは、いきなり何をするんだと怒り、声を上げる。
しかし腹を立てるのもそこまで。
苦しそうに踞るリトの様子に気がつくと、不思議そうに目を瞬かせてその姿を見た。
「……どうしたの?」
しかし返事は返って来ず、リトの咳も一向に止まる気配がない。それどころか症状は酷くなる一方で…。
まさか病気だろうか?
そう言えば彼は身体が弱いらしいし、ナディアも出掛ける前に身体を動かす遊びを禁じていた。
「…お…おい…?もしかしてお前……、しっ…死なないよな…?」
アブセルは何だか怖くなる。おろおろと狼狽え、リトに、周囲に目を走らせた。
…どうしよう。
とにかく早く帰って皆に知らせないと。
胸の内に動揺を抱えたまま、アブセルはリトの側にしゃがみ、背中を向けて言った。
「乗れ!直ぐ邸に戻るぞっ!」
285
:
イスラ
◆Hbcmdmj4dM
:2014/12/17(水) 21:41:36
【ヤツキ》北海道ですか!いいですね!
まぁ冬だし、多少太ってもしょうがないってことにしときましょう(笑)
なるほど、そう言う仕組みですか。了解しました^^
リマ》ひゃ〜(/ω\*)、ジルとヨノのやり取りにドキドキ…!←
以前書いてたミレリアの過去話はあれで終わりですか?
了解です^^
てかアブセルの爺ちゃん、屋敷のあれこれにどこまで関わってることにしよう…
執事のくせにリト父の悪事とか全く知らない、じゃ何かアレだし…
ミレリアにリトのことを拒絶する暗示(闇の力で)とか掛けてた位した方が良いのかな…とか思うけど
そこまでいくとアブセルが爺ちゃんのこと超絶嫌いになっちゃうしなぁ(笑)どうしたらいいと思います?←
しかも私服はゴスパンク
年相応に振る舞うって大切なことなんだと改めて思いました(笑)
見事なすれ違いっぷり(笑)友達にそこまで言わしめるとは流石w
なるほど…、エリザベスって金髪ロリなのに何かときめけないんですよね…
怪しい人だ…(笑)
荒れた家庭ですねwてか白龍ちゃん相変わらずママ嫌いなんだw
何か自分が当初考えてたのとは大分違う感じになっちゃいましたw
まぁたまには良いんじゃないでしょうか?そっちのが好感度あがるし(笑)
確かに…兄妹に部屋占領されて自分隅っこに追いやられそう(笑)そして仕舞いには家から追い出されるんだ…←】
286
:
メイヤ
◆.q9WieYUok
:2014/12/18(木) 22:58:14
【バルクウェイ闘技場】
自分は何か変な事を言ったのだろうか?
謎のポージングで仰け反るサンディの姿に、メイヤは口を開くも続く言葉は出なかった。
「なっ……」
何故なら、サンディとの間を割る様に、赤毛の男……イスラが倒れて来たからだ。
どうやら彼は無理して稽古に励んでいたらしい。
彼が何故、そうまでして剣を振り続けたのかは想像が着くが……
「取り敢えず、サンディの言う通り医務室へ行こう。
大会出場者と言えばすぐ案内してくれるだろうし、闘技場に必ずある筈だ。」
メイヤはイスラに肩を貸し、彼をおぶって立ち上がった。
そして、闘技場へと向かおうとしたその時。
「アンタ……飛行艇で会ったチンピ……客人じゃないか。」
此方を見つめ、ニヤリと笑う眼帯の男を見つけ、思わず声を掛けてしまった。
【イスラ》まぁ太った所で適性体重なんでそんなに気にならないのは、あるんだけどww
また何かあれば聞いてくだせぇー!】
287
:
ナディア、リト
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/12/20(土) 20:15:32
【飛行艇】
「え、リト?」
過剰に心配していた旨を告げてくる老人を軽くあしらっていたナディアであるが、彼からリトの名が出た途端上擦った声を上げる。
こんなに早く話が出てくるとは思っていなかった。
「あー、リトね!今は部屋で休んでるよ。後で合流する。…てゆーか、爺、あんた知らないの?」
今に至るまでの経緯を全てアブセルから聞いた。
リトは一時屋敷に戻り、父親の手によってこの場所へ連れ出された。
屋敷の重役であるこの老人が把握していないと言うのか。
「うちのバカ親父、リトを殺そうとしたんだ」
----------
【過去】
苦しい。
咳が止まらず息が出来ない。
「…っ」
向けられた背に手を伸ばすも、それ以上力が入らない。
症状も酷くなるばかりで、とうとう地に倒れこんだ。
288
:
リマ
:2014/12/21(日) 12:34:10
メイヤ>>
だよねー> <
遠出とかしなくて良いからディズニーランドとかシー行きたい!
大学の友達そうゆうの好きじゃないから全然遊びにいけない(T ^ T)
高校の友達は社会人だからディズニー行く余裕ないし!!
イスラ>>
ドキドキですか?(笑)
自分は書いてて「うわ〜…(蕁麻疹)」ってなりました← 真夜中の不法侵入で明らかに怪しい男に警戒心ゼロな女ってどうなの!←
ナディアとジルは歳離れてるけどヨノだったら2、3歳違うだけなのでまだ許容範囲かなぁ。この先恋愛に発展するか分からないけど!!
しかし手の早いジルがヨノにチューすらしなかったのは凄い!彼はきっと好きな子に対しては傷つけたくないから慎重になる派です(笑)ヨノは初恋の相手だったり?←
ミレリアの過去はまだまだ続く予定です!結末をすでに考えてあるせいか、そこに辿り着くまでどう持っていくか、ネタが思いつかず進んでません(;-ω-)ゞ
てかミレリアって何かどうしようもない子に見えて来ました…トーマが本命だけどヨハンも好き!って何やねん!!
聞かれたw
暗示のアイデア、自分的に凄く惹かれました(´∀`人)
でもアブセルに嫌われちゃうの可哀想だから、お爺ちゃんはお爺ちゃんなりにご主人達の幸せと自分の正義の為に動いてたって感じでしょうか(-ω- ?)どっちにしろその為にリトを犠牲にしたのは変わらないのですが…(笑)
うわぁ…恐ろしすぎる…あ、でも顔が若く見えるとか…!!←
自分も最近可愛い系の服が怖くて着れなくなってきました…。華の20代前半がもうすぐ半ばになってしまうのです。自分、30超える自信がない…オバサンになりたくないよー(泣)
全くもってビックリです(笑)
その友達は私がシエル命なのを知っていますからね〜(笑)
エリザベスってロリっぽくないですよねー
大人になろうと背伸びしてるシエルの為にワザと子供っぽく振舞ってるって知った時は見直しましたけど、でも何だかなぁ…
てか今月のシエルに思わず吹いた→imepic.jp/20141221/436180
こんなに可愛くない男の娘初めてみたかも…てか目的の為ならドレス着るの平気なのか(笑)多分今回、自分の意思で着てるんですよね、たしかその場にセバスいなかったし。駒鳥の時はあんなに恥ずかしがっていたのに…嗚呼ノリノリ……
だって、親子が…(笑)まさかこんなことになるとは予想もしなかったし(笑)…これからは誰もいないところで読もう(笑)
白龍は今後もママを赦すことはないでしょうねー
どんどん壊れていく彼がお姉さんとっても心配です。
あれ、自分は当初感じたサンディとなんら変わりありませんけど?←
どんな子にする予定だったんです??
自分のつくるキャラって何故か色々と思い悩む子になってしまう(笑)
何それ怖いww
ジルがいると家乗っ取られるのかww
289
:
イスラ他
◆Hbcmdmj4dM
:2014/12/23(火) 22:45:33
【闘技場】
「よぉ、ニィちゃん。つらそうだなァ?」
向こうから声を掛けられれば、シャムはその笑みを更に深めて言った。
「ものは相談なんだけどよ、アンタの名前を一つ貸しちゃァくれねーか?」
彼の視線は今、メイヤに支えられる様にして立つイスラの元に向けられていた。
シャムは相手の返事を待たずして更に言葉を続ける。
「実は訳あってこの大会に出場しなきゃなんねんだけどよォ、聞けば既にエントリーは締め切ってるって言うじゃねえか…。
どうしようかと途方に暮れてたところ、床にぶっ倒れてるアンタを見つけたって訳だ」
見知らぬ人物からの突然の要求にイスラは初めポカンとした表情をしていたが、直ぐに彼の言わんとしていることを察した。彼の目を見返し言葉を返す。
「…困っているのか?」
「あぁ、ちょー困ってる。困り過ぎて困ってる」
「そうか…」と、イスラは呟き暫し思案する。
正直、大会に出場したいと言う気持ちはある。しかし、今の状態では満足に闘えないのも確かだ。
そしてなにより、彼は困ってる人を放ってはおけない性分であった。
「…分かった。俺の選手ナンバーは19番だ。
この枠で良ければ貴方に譲ろう」
シャムはトーナメント表と言われた番号を照らし合わせる。
「19…、イスラ・フォードか…。了解、了解。恩に着るぜぇ、ニィちゃん」
290
:
ジュノス他
◆Hbcmdmj4dM
:2014/12/23(火) 22:48:55
【飛行挺】
「…旦那様が坊っちゃんを…?
…いえ…、まさかそんな…」
ナディアの発言に老翁は信じ難いと言った面持ちを見せる。
しかし、そうは言っても何か思うところがあるのは確かな様だ。
彼の表情や目の動き、声の調子の僅かな変化をジュノスは見逃さなかった。
別段惚けている風ではないが、何かを隠している。そんな感じだ。
老翁は言った。
「ともかく…この場ではゆっくりお話をすることも出来ません。
一度お屋敷に帰ってからに致しましょう」
そして――…
「セィちゃんさん…、もうすぐ出番だよ。
リトは可愛くて格好良くてクールでそれでいて優しくて思わずギュッとしちゃくなっちゃう様なツンデレが売りなキャラだから、よろしく頼んだよ」
送迎用のリムジン内部、アブセルはセナに小声で囁いた。
今、ナディアを筆頭にした一同は、棺を載せたものとはまた別の御料車で屋敷へと向かっている途中である。
ナディアからセナをリトの替え玉にすると聞いた時は驚いたが、それに対しアブセルは特に反対を示すことはなかった。
因みに、リトのことは今別で動いているジュノスが後でこっそり部屋に連れてくる手筈だ。
「あ」
不意にアブセルは目を移し声を上げる。
目的地が見えてきた様だ。
291
:
アブセル
◆Hbcmdmj4dM
:2014/12/26(金) 03:22:25
【過去】
「え……」
伸ばされた手は背に触れることはなかった。
目の前で、ふっと糸が切れた様にリトの身体が地に崩れた。
「…リト…?」
アブセルは彼の名を呼ぶ。
反応はなかった。
途端、頭の中が真っ白になった。
「え…そんな…、嘘だ……。
だって俺…そんなつもりじゃ…」
そうだ、ちょっと意地悪してやろうと思っただけだ。
こんなことは望んでいなかった。
「ねぇ…、さっきのこと怒ってんの?
なら謝るからさ…。起きてよ…。帰ろうよリト…、ねぇってば…」
喉から出た声は震えていた。
いくら身を揺すっても彼は起きなかった。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
自分のせいだ。
いつかの日のことが脳裏に甦る。
傷つき地に伏している少年達の姿を思い出す。消えてしまった友達のことを思い出す。
「…ぅ…くッ、…ひっく…ッ」
アブセルの口から嗚咽が洩れた。
大粒の涙が眼から零れ、地を濡らした。
「……俺…っ、リトを…死なせッ…、ちゃった…」
とんでもないことをしてしまったと思った。
また捨てられてしまう。また住み処を追い出されてしまう。
今度こそ本当に行く場所なんてない。
アブセルは声を上げて泣き出した。
292
:
イスラ
◆Hbcmdmj4dM
:2014/12/26(金) 03:27:51
【ヤツキ》はい、ありがとうございます^^
リマ》何か強引ですがナディア達の方、場面移しました;
それ分かります(笑)自分も日々「寒い!痒い!ハズい!((((;゜Д゜)))」…と戦いながら文章作ってますw
でも人の読むのは好きです!もっとやって下さい!
あれがジルじゃなかったらヨノ危なかったね(笑)
初恋かぁ…ジルったら案外ピュアピュアではないですか←
そうなんですか?ネタかぁ…何か力になれれば良いんですけどねー…
確かに…ミレリアが確りどちらか一人を選んでいたら今の悲劇は起きてなかったかも…←なんて言っては駄目ですよねw
あ、惹かれました?じゃあ暗示の方向でいきましょうか(笑)
そうですねー…、事実を歪曲して聞かされてて主人達のことを思ってやったか、
もしくは過去に何かやらかしてて(ミレリアの父を誤って殺っちまったとか←ミレリアの母と不倫してたとか←)をヨハンにバレて逆らえない状況になってたか…かなー、…爺ちゃんとんでもない奴だな←
顔が可愛くて若く見えるんなら自分はこの話題してなかったと思います(笑)
自分も最近誕生日を迎えるのが怖くなってきました…;でも気づいたら30越えてるんだろうなぁ…
でもエリザベスは大人になったら良い嫁になりそう
てかシエルww何があったしww
それがいいですw
どんどん壊れていっても白龍好きは変わらないんですか?(笑)
当初から上手いことキャラ動かせてませんでしたから(笑)
やりたかったのは京騒戯画ってアニメのコトみたいな感じです、簡単に言えば銀魂の神楽から毒を抜いた感じかな?(笑)
いいじゃないですか〜、自分なんて思い悩まそうとしても思い悩ませれないですからねw
「ちょっと邪魔だから出てってくれないかな」とか言われそう←
ジルに歯向かえる勇気ないですし(笑)】
293
:
リト他
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/12/26(金) 22:32:17
【過去】
泣き叫ぶアブセルの声は気を失っているリトの耳には届かない。
そこへ、そんな二人の元へ小さな女の子が近づいて来た。
「…」
女の子は泣いているアブセルと倒れたまま動かないリトの姿を交互に見るかと思えば、また何処かへ駆けていく。
そして今度はアブセルと同じ年頃かと思われる男の子の手を引いて戻ってきた。
「フェミル、いくら子猫を見つけてもウチでは飼えないから探しちゃ駄目だよって何度も…」
その少年は少女の行動を何か勘違いしているようで、何やら呆れ気味に少女へ言い聞かせていたが、アブセルとリトの姿を見るや言葉を止める。
「フェミル、お父様を連れて来て。」
------
「もう大丈夫だよ」
そう言って男性は対面のソファに腰掛けたアブセルへ笑いかけた。
彼はまだ動揺しているようで震えている。
気を落ち着かせようと、男性はホットミルクを用意させ飲むように勧める。
「念のためウチの医者にも診せているから、安心して」
現在、アブセルがいるのはとある屋敷の応接間。
先程通りかかった少年と少女の家。
あの時、少年は少女に父親を呼びに行かせ、自分は近くの医院へと走った。
その咄嗟の判断が功を奏したか、リトは大事に至らず済んだ。
リトを医者に診せていたところ、少女に連れられ二人の父親と思しきこや男性が遅れてやってきた。そしてリトの保護者として必要や手続きをして彼を引き取り、「すこし休ませた方が良いだろう」と言って屋敷へ招いてくれたのだ。
これは勿論リトの身も案じての事だが、アブセルの方にも休息が必要だと思われたからでもある。
294
:
リト他
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/12/26(金) 22:32:41
「喘息の発作が出たみたい。突然の事だったから驚いちゃったみたいだね」
医者の話によると、リトは喘息を患っているようだった。
これまでも発作は起きていた筈だが、アブセルは知らないのだろうか?
発作の際はすぐに薬を吸入させ抑えるため、その場面に遭遇したことがなかったのかもしれない。
本来なら携帯するべき薬も、子供には理解出来ていないだろう。
男性はアブセルを責めることはしなかった。アブセルも怖かったはずだ。事情を知らない人間が下手に口を出すべき事でもない。
「今日みたいな事があった時に使うお薬があるんだけど、お父さんやお母さんが持ってる筈だから聞いてごらん?今度から二人で出掛ける時は持たせてもらってね。」
代わりにアドバイスだけ伝える。
どうやら男性はアブセルとリトを兄弟だと思っているようだ。リトは同年代の子よりはるかに体の成長が遅れているため歳下にみえても致し方ないが。
「弟くん、目を覚ましたみたいだから行こっか?」
ホットミルクを飲んでいたアブセルが大分落ち着いたのを確認し、男性は立ち上がる。
そしてアブセルをリトのいる部屋へ案内した。
「あーんしてごらん?あーん」
部屋に入ると其処にはリトの他に先程の少年と少女がいた。
少年の方は食事の入った器を持っていて、それを掬ったスプーンをリトの口元に持っていっている。
「兄さま、フェミルもやりたい」
「駄目、オママゴトじゃないんだから」
横で真似をしたがる妹を制しながら、少年は慣れた手付きでリトに食事を摂らせていた。
不思議な事に、普段は食べるのを拒否するリトも少年の誘導を聞き入れている。
「そう、いい子だね。ほら、もう一口。」
その光景に男性は笑みを浮かべた。
「医者が胃の中が空っぽだって言っていたものだからね。何か食べさせた方がいいと思って勝手だけど食事を作らせてもらったよ。君も食べる?あの子の為に作ったものだから、食べ応えのあるものではないけど」
295
:
メイヤ
◆.q9WieYUok
:2014/12/28(日) 19:59:58
【バルクウェイ闘技場】
突然の申し出に、僅かながら考える様子を見せるイスラ。
しかし、彼は特に拒む事も無く首を縦に振った。
正直な所、イスラと手合わせしたい所だったが……
「話は纏まった様だし、取り敢えず動こう。」
しょうがないと言えばしょうがない、如何せん動けないものは動けないのだ。
イスラを背負うメイヤはシャムに“じゃあ……”と会釈を投げ、足早に闘技場内へ、医務室を探し歩いて行く。
ーーーーー
どうやらシャムは無事に出場出来た様だ。
闘技場の真ん中、整列する選手達の中に見慣れたその姿を見つけたのは一時間程前。
「どんな手を使ったかは知らないけど、零回戦敗退にならなくて良かったわ。」
予想外に派手な開会式から続く一回戦も既に折り返し、そろそろシャムの出番だろうか。
観客席の最上段で、フィアは選手入場口から出て来る人影へと目を凝らす。
(まぁ、負ける事は無いと思うけど心配ね……)
ーーーーー
止むことの無い怒号の様な歓声を耳に、メイヤは登場口から闘技場へと歩み出す。
一回戦も残る所後二試合、観客達もヒートアップしている様だ。
「……飛行艇で俺を見捨てた怨み、晴らさせてもらうぞ。」
闘技場の丁度真ん中に立つ審判、マルトのルール説明を耳にしながら、メイヤは対戦相手……アグルへと恨めしそうな声を投げる。
そして、試合開始を告げる旗が振られると同時に、メイヤは飛び出す。
(ルールは簡単、相手を戦闘不能にするか降参と言わせるかの二つ。
得物は自由、それだけか!)
前方へと倒れ込む様な独特の踏み込みから続く急加速は、5メートルに設定されている相手との距離を一瞬で詰め。
地を這う蛇の如き動きから放たれるのは、下方からの逆袈裟斬り。
抜き放たれた真白の刃は、閃光の如き速度でアグルへと襲い掛かった。
「喰らえ!」
296
:
アブセル
◆Hbcmdmj4dM
:2014/12/29(月) 00:15:58
【過去】
リトが倒れどうしようもなくなっていた時に出逢ったのが、二人の兄妹とその父親だった。
彼等がリトを助け様としてくれているのは分かったが、その間アブセルはずっとぐずぐずと啜り泣き続けていた。
親子の家に招かれた時には流石にもう涙は枯れていたが、彼は知らない家に連れて来られた猫の様に終始萎縮し、
男性の顔も見れずに、ただ彼の言葉にコクコクと首を動かすだけだった。
そして、やがてリトとの面会が許される。
通された部屋には先程の少年と少女、二人に囲まれ食事を摂るリトの姿があった。
「リト……」
収まった筈の涙がジワリと目元に浮かび上がった。
そして、それはとめどもなく流れ落ち、再び彼の頬を濡らした。
けれどもその涙は先程の不安と恐怖を募らせたものは違う、極度の緊張状態から解放された時に流す安堵の涙だった。
アブセルは男性の声も聞かず駆け出す。
腕を伸ばしリトに抱きついた。
「りどぉ…!ごべンなさ…ッ、ごべンなざぃ…!」
鼻の詰まった声で何度も何度も謝った。
そして―…
一頻り泣いた後、アブセルはやっと落ち着いた。
手の甲で目元を拭いながら改めて親子を見つめ、小さく頭を下げた。
「あの…、ありがとう…ございました」
297
:
ナディア他
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/12/29(月) 00:24:59
【→ポセイドン邸】
「…」
小声だろうとアブセルが何を言っているのか予想はつく。
リトはどんな人物か。セナに難題を押し付けているのだろう。
セナは一応話を聞いてはいるようだが、その表情を見るに、何一つ理解していないだろう。
ナディアはその様子を眺め、溜息一つ。
セナはいいとして、地味にアブセルが面倒臭い。
リトをやるからには完全に成り切って貰おうと考えているのか。いや、アブセルの主観は最早リトではない。
「セィちゃん」
あと気になる点がもう一つ。リマだ。
リマは手を伸ばしてセナの髪に触れると残念そうな表情を浮かべる。
「髪、短くなっちゃったね。」
セナとリトは髪の長さが違う。
少しでも違和感を無くす為、セナの髪をリトの長さに揃えてもらったのだが…
「これだともう編めないな…」
セナは片方の髪のサイドを編み込んでいたが、どうやらリマがやっていたようだ。そんなに悲しそうな顔をされると申し訳なくなるじゃないか。
と言うか二人の距離が近すぎる。
屋敷に着いたらセナはリトとして暮らして貰うわけだが、その”リト”にベッタリなリマをどう理由付けようか。
ついでにリトとアブセルが連れていたらしい子供(ノワール)は先程からリマとセナを睨みながら不機嫌そうにしているし、何だか先が思いやられる。
そして、ナディアの考えは結局纏まらぬまま、屋敷に到着した。
車の到着と共に出迎えの者達がゾロゾロと出てくる。
時間の無駄に思える行動。何度経験しても慣れない。
「お姉様!」
屋敷の者達の挨拶を適当にあしらっているとヨノが現れた。
「おかえりなさいませ」
そして深々とナディアに頭を下げると、続いて車から出てくるセナの姿を見つけニコリと微笑む。
「リト。」
「私の妹でリトの姉。つまり今はあんたの姉」
横からナディアはセナへ耳打ちする。
「おかえりなさい。」
優しく出迎えるヨノの言葉を受け、リマはセナに何やら伝えた。
するとセナはヨノへ視線を向け、そして
「…ただいま、姉さま」
笑いかけた。
見たことのない弟の笑顔。
不意打ちをくらい、ヨノは顔を赤らめる。
そして満足気なリマの顔。
(終わった…)
そしてナディアは頭を抱えた。
298
:
ナディア他
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/12/29(月) 00:25:17
「ビックリしちゃったぁ…」
所変わって大広間。
事の真相を全て聞き、ヨノは苦笑いを浮かべる。
「思わずドキっとしちゃったものだから…自分の弟に対してドキっだなんておかしいでしょ?」
身内に対して妙な感情を抱いたのかと焦った。
別人だった、良かった。
「まぁ…アレだ。あまり難しく考えないで協力してよ。リトと同じように接すればいいから。」
本当はヨノにも秘密にしておきたかったが、どう考えてもセナの態度は不自然だ。
いや、普通の姉弟の関係であればアレでいいのかもしれない。リマの考えは間違いじゃない。けど、リトはあんな態度はとらない。そもそも笑わない。
黙っていたとしてもすぐにバレていただろう。
「リトは…大丈夫なのよね?」
「うん」
ヨノはこの屋敷の内情を知らない。
父親がリトに何をしたのかも、説明したところで理解出来ないだろう。
また、知らずにいられるのならそれでいいとも思う。だから教えることもしない。
だから今回の件は父とリトが務めを果たしている際に事故にあったことにした。
リトの件以外は他の者達にも同じように伝えるつもりだ。母親にも。
「ヨノは母様をお願い。私はやることこなさないとな。まずは親父の葬儀。ちょっと爺と話してくる。」
言ってナディアは席を立つ。
向かうは自室。
アブセルの祖父に、屋敷に戻ったら部屋へ来るよう伝えておいたのだ。
「…」
彼は部屋の前に立ち待っていた。
ナディアは部屋の中へ入るよう促す。
そして椅子に腰掛け、話を切り出した。
「さっきの続きだ。親父がやろうとしてたこと、知らないとは言わせないよ?包み隠さず教えな。」
299
:
リト他
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/12/31(水) 01:41:29
【過去】
頭を下げてくるアブセルに、男性は変わらず優しげな笑みを浮かべる。
「旦那様…」
が、其処へ、リトを診させていた医師が深刻そうな面持ちで男性に声をかけた。
何やら耳打ちすると、男性からも笑みが消える。
そして医師を連れて部屋を出て行った。
「後でお家に送ってあげる。暫くうちの子達とゆっくりしておいで。」
出て行き様に笑顔でそう言い残して行ったが、何かあった事は予想できる。
ジルは気づいたが、しかし敢えて触れる事はしなかった。
「ねぇ、君の名前は?」
そして再びリトヘ意識を向けた。
しかし対するリトは相変わらず問いかけに応じない。
言葉が話せないのかとアブセルを見るが、アブセルからはそんなことはないと首を振る素振りをされた。
「僕の名前はジル。君の名前を知りたいな」
「…」
「フェミル、このお兄ちゃんに挨拶して」
「私はフェミルってお名前。お兄ちゃんは?」
「……」
無反応。
今までと同じ種類の人物であったなら、此処で腹を立てるか呆れるか、反応は様々でもこの時点でリトの言葉を諦めただろう。
しかしジルは違った。
「話すのが怖い…?」
リトが話さない理由を考えた。
何だか上手く説明は出来ないけれど、何と無く、リトは言葉を封印することで、何かから自分を護ろうとしているように見えた。
先程もそう。出した食事も中々摂ってくれなかった。警戒し、誰も信用していない。ただ、怯えている。
「大丈夫だよ」
ジルは手を延ばし、リトの頭を撫でる。
不思議そうに此方へ目を向けるリトヘ、明るい笑顔を作ってみせた。
「僕は君を何と呼べばいい?仲良くなりたいだけなんだ。君より小さなフェミルだって自分の名前を言えるんだよ?君も勿論言えるよね。」
本当は名前なんてもう知ってる。さっきアブセルが泣きながら叫んでいたから。
しかしジルは、リトの声でちゃんと聞きたいのだ。
「君の声、聞きたいな」
リトの目を真っ直ぐに見る瞳はとても優しげで。
今まで関わってきた人は…実の姉でさえ、ここまでリトと向き合っては来なかった。
「…り…」
やがてリトは、躊躇いがちながらも口を開く。
「…リト…」
それは消え入りそうな声だったが、確かに聞こえた。”リト”と。
「そう、リトって言うんだね。宜しくね。」
ジルは満足気に笑顔を浮かべれば、よく出来ましたとばかりにリトの頭をワシワシと撫でる。
「…で。」
リトのことは良し。
今度は…とジルは半ば蚊帳の外となっていたアブセルへ振り向く。
「君は何て名前なの?泣き虫さん」
おかしい。
彼の笑顔は変わらないはずなのに、何か、何と無くリトに向けられていた優しいものとは違う、意地悪なものと化している。
「君はこの子のお兄さん?お友達かな?”ごめ〜ん”って泣いてたけど、この子にちょっと意地悪しようとして大事になっちゃいましたって感じ?」
何かバレてるし。
300
:
リマ
◆Q4V5yCHNJ.
:2014/12/31(水) 13:10:23
イスラ>>
場面変更有難うございました>ω<
お仲間でしたか(笑)
自分も人様のつくったものを読むのは好きです!イスラさんもジャンジャンやってください←
世間一般の女子にとっては普通の不審者よりもジルの方がある意味危ない気もしますが、ヨノはジルにとって例外なようです(笑)
ジルはもともとは純粋で凄く優しい子なのです、環境が彼の性格を捻じ曲げた(笑)ってか勝手ながらアブセル達の過去話にジル達ねじ込んじゃいました(つω`*)テヘ
リトの父ちゃん嫉妬だけでジルパパ殺してるとかいくらなんでも「小せぇ男だな!!」って感じなので、今回の一件で父ちゃんの計画を知っちゃったことにします。つまりは口封じ、フフフ…
設定は出来てるんですけどねぇ。
ヨハンとトーマ→もともとは友人。(トーマが一方的に絡んでくるけどヨハンも満更でもない)
ミレリア→ずっとヨハンに憧れてきたけど、だんだんトーマに惹かれていく
ヨハン→ミレリアに想いを寄せているが上手く行動に移せない。いつの間にかトーマに先を越されてて激おこ!
ってな具合に。
ミレリアめ、なんとまぁ罪な女よ←
爺ちゃんとんでもねぇ奴だなww
不倫関係で言うとヨハンは実は爺ちゃんの秘蔵っ子だった!ってのが面白そーってふと思ったんですが、それだとアブセルとリトが従兄弟になっちゃいますね(笑)
ですよねー…(笑)
気づいたら30…怖すぎる(泣)
ついこの前、研究室の後輩に「どんどんババァになっていく。そろそろ可愛い服着るの怖くなってきた。でも私からミニスカートをとったら何が残るのか」って愚痴っちゃいました(笑)
夫をたてる良い妻になるとは思います。しかし何か好きになれない。何故だろー
最近シエルがよく分からない方向に突っ走っている(笑)初期の方で「笑い方などとうに忘れた」とか厨二発言してたくせに普通に笑ってるし。
はい、どっちかって言うと苦しむ白龍は大好物なので←
にしても白龍がどうも金色のガッシュのキャンチョメと被って見えてしまってですね…
成る程!毒を抜いた神楽!!(笑)
たしかに何かサンディとは違いますね(笑)
銀魂と言えば、銀魂のアニメ新シリーズの話がこの前出て、皆から「総悟好きそう」って言われたんです。まぁ好きですけどね?
そしたらその理由が「顔が良いの好きだろうから」ですって!だから言ってやったんです、神威も好きだと!そしたら「やっぱ顔じゃん」って返されてしまった!あれ??
何それw
でも、ほら、イスラ辺りなら悩めるかも?←
言いそうww
いや、自分の家なんですから頑張って歯向かってください(笑)
301
:
ヤツキ
◆.q9WieYUok
:2014/12/31(水) 20:09:41
【もう年の瀬とか信じられねーww
今年もお世話になりやした、来年もよろしくお頼み申し上げます!
んだらばお二方も良いお年をー!】
302
:
アグル
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/02(金) 10:07:07
【闘技場】
「さあ?何のことだか」
恨めしそうなメイヤの声に対し、アグルはそう嘯く。
そして見た。
(当然…、初手は"それ"だよな)
蛇の如く低い姿勢から放たれる迅速の白刃。
アグルはそれを無理に受け止める様なことはせず、槍の柄を斜めに刃を受け流す。
そして、その流れの勢いのままメイヤの左方へと身を滑らせた。
「シンライジ邸の稽古では嫌ってほど打ち負かされたからな…」
流石に目も慣れたものだ。
メイヤに対し最も注意したい点はその動きの敏捷性だろうか。
まずは機動力を削ぎたいところ。
よって…、
(足を狙う…!)
アグルは槍の柄を長く持ち、腕を回す。
振り回された槍は風切り音を放ちながらメイヤの足元目掛けて駆け抜けていった。
303
:
老翁
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/02(金) 10:24:25
【ポセイドン邸】
問い詰める様なナディアの視線に老翁は短く応える。
等々この日が来たとばかりに。
観念とも覚悟とも取れる面持ちでナディアを見つめ、
「こちらを…」と、数冊の冊子を彼女の前に差し出した。
「旦那様の手記で御座います。
勝手とは思いましたが、書斎からお借りして参りました。
お目を通して下さいませ。あの方の大体においてのお考えが分かる筈です」
それから、と老翁は言う。一つ言っておくことがあると前置き、言葉を続けた。
「私は…、私と旦那様は、同じ血を分けた……そうですね…、有り体に言えば実の親子にあたる間柄と言うことになるのです」
【過去】
泣き虫…と、そして図星を言い当てられたアブセルはかぁっと顔を赤くさせる。
小馬鹿にされた様な気がして恥ずかしかった。
そんな表情を見られるのが嫌で顔を下に向けるが、その気持ちさえジルには見透かされていたかもしれない。
「……アブセル」
程無くして、アブセルは視線を足元に向けたまま小さな声で名を口にする。
それと、
「別に兄でも友達でもない…。
リトはお屋敷の子供で…。俺は、俺の爺ちゃんがそこで働いてるから、それで…」
せめてもの悪あがきに、それをぶっきらぼうな口調にして返すのが精一杯だった。
304
:
イスラ
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/02(金) 10:26:31
【二人ともあけおめです!
今年も宜しくお願いします(^^)
リマ》
やりたいのは山々なんですがー…なかなか思いつかず…(笑)
ジルの境遇を考えると、そりゃあ性格も変わっちゃいますよね;
もしかしたら出てくるかなと期待していました(笑)
なるほど…口封じとはいえ友人を始末しちゃうなんて…ヨハンの心境は一体…
おぉ!いい三角関係ですね!
でもこれ三人の心がすれ違い始め…トーマが没するまでやるとなるとかなりの長編になりそうですね(笑)
なんて素敵なアイディア!爺ちゃんがヨハンの肩を持ってるいい根拠にもなるし…ってことでいただきました!←ありがとうございます(笑)
ヨハンは忘れられない人との間に出来た子で〜(不倫ですが)とか色々着想が浮かびます^^
しかしその場合ナディア達も孫になる訳で…実の息子にも遣えてて…爺ちゃんどんな気持ちなんだろう(笑)
リマさんのアイデンティティーはミニスカなのか(笑)でもほら、森ガール的な長いスカートだって可愛いですよ←
理由もなく好きになれないとか一番可哀想な気がするw
そこは突っ込まないであげてw
やだ、このコ恐い←
ガッシュ懐かしい(笑)軽くアニメとか見てた気がするけど殆ど覚えてない…
キャンチョメってアヒルみたいなやつでしたっけ?どのへんが被ってるんですか?
自分もリマさんは顔がいいキャラが好きなんだと思ってました(笑)
イスラかー…彼の悩みって、どうやったら人を救えるかとか、どうやったら世界が平和になるか…みたいな答えのない漠然としたものばっかなんでやりづらい←
頑張って歯向かっても勝てる気がしません(笑)】
305
:
メイヤ
◆.q9WieYUok
:2015/01/02(金) 21:37:42
【闘技場】
全身全霊の打ち込み、とまではいかないものの、速度、威力共に十二分の初撃だった。
しかしそれは難無く去なされ、反撃の一手、下段の薙払いが放たれる。
その一連の動きは、此方の初動を読んでいた……否、読んだものであり、その事に気付いたメイヤは僅かに苦い表情を浮かべる。
(そうか、弥都で再会するまでイオリに鍛えられていたんだったな……)
そう、闇の巣で行方不明になった二人を救出し、更には修行に付き合っていたのはシンライジ当主であるイオリなのだ。
ならば、此方の手の内は殆ど知られているだろう。
アグルの放つ足下を狙った斬撃は速く、得物は槍の為にリーチも長い。
更に、逆袈裟を放った状態で動きを止めた今、回避の為の踏み込む間も無い。
(退く暇も無い、なら!)
ならば、今この場で攻撃を防ぐしかない。
風切り音を耳に、メイヤは斬撃を放った勢いを使い、その場で180度水平回転。
同時に、逆袈裟に振り切った刃を回転の勢いそのまま振り降ろす。
捻りの動作を加えられた白刃は、初撃と変わらぬ速度で大きな円弧を描いて槍の穂先へと叩き付けられ、無理矢理だが槍の一撃を防いだ。
それと同時に、右手に握る白刃の柄を放してメイヤは跳躍。
未だ残る水平回転の動きと勢いを利用し、左の逆手で抜き放った短刀で、上方よりの斬撃を放った。
306
:
ナディア
◆Q4V5yCHNJ.
:2015/01/03(土) 03:28:57
【ポセイドン邸】
亡き父の手記。
これを読めば、彼がこの十数年やってきた事、その真相が分かるかもしれない。
ナディアは早速目を通そうと冊子へと手を伸ばす。
しかし、続いて耳に届いた言葉に、反射的にその手を止めた。
「…は?」
今何て言った?
「あの人と親子?あんたが?」
とうとうボケが始まったのか。
冗談にしては笑えなさすぎる。
父方の祖父母はちゃんと…
「ちょっと待って、頭整理する」
老翁の突拍子もない言葉に、混乱しながらもナディアは額に手を当て必死に記憶を辿る。
ヨハンの父が老翁と言うのなら、彼はナディアの祖父ということになる。なら記憶にある祖父は誰なのか。父方にも確かに祖父はいた筈だ。
しかし考えてみればその祖父は祖母より一回り以上年齢が離れていた。当時はどの家庭も自分の意思で伴侶を選ぶのが難しい時代であったとは言え、年頃の男子がいなかったわけではないし、たしかに不自然ではある。ポセイドンの家系とは言っても本家とは遠い筋の家で、血筋に拘る必要も無かったはずだ。
考えたくはないが、可能性としてはあり得ない話ではない。
「ごめん、ちょっと私の頭では収拾つかなかった。説明してもらえる?」
【お二人とも、昨年は大変お世話になりました!
今年も宜しくお願いします!!】
307
:
リト
◆Q4V5yCHNJ.
:2015/01/04(日) 02:46:33
【過去】
ぶっきら棒に答えるアブセルを見て、ジルは面白そうにクスリと笑った。
どうやら自分は彼の図星をついてしまったようだ。
「リトってお屋敷の子だったんだね。アブセル、君のお祖父さんがこの子のお屋敷で仕えてるなら、君もお仕えの身分なんじゃない?お屋敷の子を勝手に連れ出して、助かったとは言え危険な目にも合わせちゃって、バレたら大変だと思うなぁ。」
上手く抜け出して来たのかもしれないが、今頃はリトがいなくなっていることも知られ騒ぎになっているのではないだろうか。
恐らくは父が話を通してくれるだろうが、アブセルの反応が面白そうなので敢えて言わない。
「今のうちに言い訳でも考えておきなよ。」
----
先程退室した屋敷の主人、トーマは難しい表情を浮かべて書斎にいた。
思い返すは助けた少年リトの顔。
(あの子は…)
リトと良く似た顔を彼は知っていた。
しかし「あの家」に男児が生まれたなどは聞いていない。
先程医師に伝え聞いた事がどうも気になる。
リトを診察した際に、身体に複数の痣や傷を見つけたそうだ。栄養状態も思わしくないと。あれは明かに……
「…」
トーマは呼び鈴を鳴らした。
音を聞きつけて執事が入室してくる。
「先程連れてきた子供について調べろ。」
嫌な予感がする。
出来れば自分の推測が間違いであってほしい。
308
:
リマ
◆Q4V5yCHNJ.
:2015/01/04(日) 13:04:18
イスラ>>
アブ祖父のラブストーリー←
ちょっと意地悪なのは変わりないですけど(笑)
にしても仲良くしてた子と敵対するってどんな気分なんだろー。ナディアは忘れてるからいいけどジルは最初から知ってましたし(笑)
ヨハンは完全気が狂っちゃってるので特に何も感じてなかったかと←
彼はポセイドンの家系とは言え分家中の分家で立ち位置的には苦しく、出世街道からズレてるトコの生まれなのです。その為現在の位置まで登りつめる為にガムシャラに生きて来ました〜
ですね(笑)飛ばし飛ばしやらねば…(笑)
採用されてビックリです(笑)此方こそありがとうございます!(笑)
ヨハンのお母さんは先天的に言葉の話せないお嬢様で、なんか知らんがアブ祖父と恋愛し、ヨハンを身籠ったが、お嬢様は父親が誰か言わない為、「このままでは未婚の母に!世間の目が!!」と慌てた両親によって独身なおじさん(両親何方かの血縁でもいい)のもとに無理矢理嫁がされた〜って設定にしちゃいました←
そんでヨハンは母親の為にガムシャラに生きてた事にします←←
そして息子を護る為に孫(リト)を一人犠牲にするお祖父ちゃんの心境はいかに←
長いスカートってほら、躓いて転んじゃうじゃない←経験済
きっと第一印象が悪かった。物凄く(笑)
これは突っ込まずにはいられないw
エー、コワクナイヨー
ですです。
自分もよく知らないのですが、キャンチョメって物凄く臆病で、最初の頃は戦いに逃げてばかりいたんですけど、実は潜在能力が凄くて最終的にメッチャ強くなったとの噂が。
泣き叫ぶ白龍を見てた時に「こいつ、いつかメチャクチャ強くなりそう」って思って、実際最近強くなって来たので、あーやっぱこいつキャンチョメだなって。←
そんな!誤解です!!
顔が良くて性格に難ある未成年が好きなんです!!←
うわぁー凄い主人公タイプ(笑)
そして悩みがなんか面倒くさい(笑)
もしかしたら運良く勝てるかも…!
309
:
ヤツキ
◆.q9WieYUok
:2015/01/05(月) 10:53:46
【リマさんリマさん、時間があればでいいんでリマセナから続く家系図お願いします!】
310
:
アグル
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/05(月) 21:47:05
【闘技場】
流石シンライジの血族。機転、瞬発力ともに動きが人間のそれじゃない。
水平回転より降り下ろされた刃により槍は弾かれ、僅かにしなる。続く上方からの刃を防ぐには槍を使ったんじゃ間に合わない。
アグルは踏み込んだ足の爪先に体重を乗せ、斜めに飛び退く。左耳のスレスレのところを刃が通過していった。
(そう易々とはいかないか…)
取り合えず一旦相手との距離を取り、一呼吸つく。
先程から観客席の方から聞こえる、例のオネエらしき一際目立つ声援が耳障りだ。
「…熱狂的なファンがいるみたいだな、全くもって羨ましい限りだ」
そうメイヤに皮肉を投げかけつつ、アグルは再び槍を構える。
そして地を蹴り、相手との距離を一詰めれば連続の刺突を放った。
311
:
アブセル
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/05(月) 21:49:54
【過去】
…そうだった。そう言えばすっかり忘れていたが、屋敷を抜け出して来たんだった。
もしかしたら出かけて行ったナディア達だって、もう既に戻っている頃かもしれない。
「だ…だって…、本当にビョーキだなんて知らなかったし…」
赤く染まったアブセルの顔が今度はみるみるうちに蒼ざめていく。
初めはリトや屋敷の皆を困らせてやろうと考えてのただの悪戯の筈だった。しかし今はもうそれどころの話ではなくなってしまった。
怒られるどころか、最悪やっぱり屋敷を追い出されてしまうかも。もしくは悪い人達が入れられると言う牢獄に連れていかれるか…。
…と、そこでアブセルはハッと気づいた。
ジルが笑っている。楽しそうに。
先程から妙に不安を煽ってくると思ったら、こちらの反応を見て楽しんでいたのだ。
そんな彼にアブセルは何だかムカムカとしてくる。ジルを睨み付けて言ってやった。
「…って言うかお前には関係ないだろ!何なんだよさっきからっ」
312
:
アブセル
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/05(月) 21:53:35
【リマ》自分にラブストーリーが書けるわけないじゃないですかーww…って鼻で笑おうと思ったけど…、ヨハン母の設定を見てちょっと書いてみたくなりました。彼女の名前はなんていうんですか?
ね、意地悪ですね(笑)
まともな神経の持ち主ならやっぱり辛いもんなんじゃないですかねぇ…
ヨハン…(´;ω;`)彼も可哀想な人ですよね…
てか素晴らしい設定の数々にもう感動してしまいました!
色々アイディアを戴いてるに、こっちは何もお返しできないで申し訳ないです;
爺も心苦しかったと思いますよ。両親から拒絶されているリトを見るのは彼にとっても断腸の想いだったことでしょう。
幽閉されてた頃ならまだしも、リトが人並みの感情を持ってからは心痛も増したんじゃないでしょうか
え、転ぶもんなんですか!?何で!?(笑)
何があったww
まぁそこはシエルの成長どころだと思って素直に喜びましょうよ(笑)
でもキャンチョメは確かいい方向に強くなったけど、白龍は悪い方向に強くなってるから、一緒にしたらキャンチョメが可哀想ですよ!←
あぁ、なるほど。ただの美形好きではないと(笑)てかリマさんの趣味も大概変わってますよねw
主人公タイプですが自分がその系統のキャラを上手こと動かせないので日陰に追いやられています(笑)
え、ないない←】
313
:
メイヤ
◆.q9WieYUok
:2015/01/07(水) 21:23:33
【闘技場】
槍を相手にするに当たって一番注意すべきなのは、間合いの長さである。
刀剣に比べて圧倒的なリーチを誇る槍を前にして、距離を取るのは悪手。
かと言って、考え無しの前進は無謀なだけだ。
だが、一度その間合いの中、刃圏の内側へ入り込む事が出来れば槍は意外な程に脆い。
だからこその初手だったのだが……
「……地獄からの呼び声だ。
悪夢の頬擦りの刑に叩き込んでやるから、大人しく棒立ちしてくれれば助かるんだけど。」
一連の攻防で、メイヤは改めてアグルの実力の高さを認識した。
(高い身長故のリーチの長さと相まって、槍の間合いは驚異的。
間合いを詰めても案外冷静に対処して来る上に、反撃も速い。
何より、手の内を知られているのが一番痛いな……)
正直な所、予想以上だ。
繰り出される刺突の連撃も速く、鋭い。
イオリならば刀で捌ききるだろうが、自分にそこまでの技量は無い。
ならば。
(強引に突破するのみ!)
繰り出される刺突に対し、メイヤは剣を逆手に握る。
そして、剣の腹を盾にし前進。
致命傷だけを受けぬ様に刀身で刺突を防ぎ、強引に距離を詰めて行く。
魔狼の牙から削り出されたとされる真白の刃は、幅広の二等辺三角形に近い形をしており、半身になれば身体の半分程は隠せるのだ。
たが、如何に幅広の刀身と言えど全て防ぎ切る事は出来ず、隠しきれない部分に次々と裂傷が生まれていく。
しかし、多少の傷は覚悟の上だ。
刺突の嵐を突き進んだ先、刃圏の内側。
アグルの正面よりやや左へと進んだメイヤは真白の剣を投げ捨て、上半身を捻りながら踏み込む。
そして、渾身の右ストレートを放った。
314
:
ベルッチオ(老翁)
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/10(土) 19:25:04
【ポセイドン邸】
「お嬢様のお耳に入れるのも浅ましい話では御座いますが…」
言って老翁は僅かに目を伏せる。
そして五十年ほど経った今でもありありと思い出せる、昔の、あの人との記憶を語りだした。
…歳は18の時だった。
当事、ポセイドン本家に仕えていた母の勧めで、とある傍系の家に勤めることになった。
そこで、出逢ったのだ。
可憐で、そしてどこか儚げで、声をなくした美しい女性に。
――…
老翁は話した。己の過去を。ヨハンの出生に至るまでの経緯を。
「結局、私達が結ばれることはありませんでした。
ですが、お互い違う家庭を築いた後になっても、私はあの方のことを忘れることが出来なかったのです」
先代の旦那様…ミレリアの父が、仕事のパートナーにヨハンを選び、屋敷に招いた時は本当に驚いた。
今までヨハンについては、社交の場でまだ少年だった彼の姿を、一、二度と目にしたり。家督を継いだとか、事業の業績を伸ばしたとかを風の噂で耳にする程度だった。
だがその彼が、今や立派な青年となって目の前にいる。
どんな形であれ、老翁はあの人との間にできた我が子に見えたことを歓喜し、そして申し訳ない気持ちになったのだった。
315
:
アグル
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/10(土) 19:27:01
【闘技場】
メイヤの拳がアグルの頬を捉える。
その渾身の一撃を食らい、彼の身はグラリと傾いた。
予想外だ。
まさか武器を捨てて突っ込んで来るとは。
(いや…馬鹿だろ…!)
そう、先のメイヤの行動はアグルにとっては考えられぬものだった。
まず第一に、武器を捨てたことだ。
例え今この時一泡ふかせることに成功したとしても、今後の試合の展開を考えれば、それは大きなハンデとなるだろう。
そして二つ目、先程の一撃で勝負を決めれなかったこと。
メイヤはもっと堅実な戦法を取る人間だと思っていたが…。
(なに考えてんだ…よっ!)
アグルは足をふんばり、ぐんっと上体を持ち上げる。
もちろん、わざわざ武器を拾う間を与えることもない。
槍を手の中で回し、周囲一体を凪ぎ払うかの如く振り回した。
316
:
メイヤ
◆.q9WieYUok
:2015/01/13(火) 23:33:16
【闘技場】
頬を打ち貫く渾身の右ストレートは、確実にアグルへとダメージを届けた筈だ。
拳に伝わる確かな感触とアグルの表情に、メイヤは心の中で頷く。
弥都での修行の成果だろう、今のアグルの実力は自分とそう変わらない程だ。
得物にしても、槍と剣では間合いを考えるに剣の方が不利。
強引に間合いを詰めた所でアグルは冷静に対処してくる。
ならば、取るべき手は一つ。
相手の虚を突く事。
それはシンライジ一族の対人技術に置いても基本的な事でもある。
(武器を捨てた捨て身の一撃に後は無い、そして、今の一撃で倒せなかった俺の負けだろう。
当然、アグルはそう思うし槍の一撃を手ぶらの俺が防げる訳も無い。)
そして、虚を突くからには確実に仕留めなければならない。
だが。
今の一撃でアグルは倒れなかった。
反れた上体を戻し、手で槍を回すアグルの瞳には、怒りが見て取れる。
きっと彼は、自分が馬鹿な手を取ったと憤っているのだろう。
その憤りの反面で、こちらが武器を持たない事を確認し、すかさず一撃を加えて来るだろう。
その一撃は次の手を考え無いトドメの一撃の筈だ。
何しろ相手は武器を投げ捨て、防ぐ事も攻める事も出来ないのだから。
しかし。
それこそがメイヤの狙い目。
右ストレートへの反撃、薙払いの一撃を放つアグルへ黒瞳を向け、メイヤは一歩踏み出す。
更に、既に振り切った右腕は左腰へ添えられていた。
(剣も短刀も投げ捨てた、拾う間も無い。
だけど。
刃が無ければ創れば良い!)
その構えは迅速の抜刀を可能にするもの。
風切り音を耳に、迫る槍を視界に映し。
メイヤは自身に宿る“闇”で形成した柄を握る。
「ーー……居合い、神斬り!」
そして、漆黒の闇刃が抜き放たれ、一拍遅れて怒号の様な歓声が二人へと降り注いだ。
【決着はどっちでもイケる様に振ったんで、後はイスラさんよろしくお頼み申し上げます!】
317
:
アグル
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/18(日) 23:18:07
【闘技場】
試合の決着を証明するかの様に、割れんばかりの歓声が場内に沸き上がる。
中央フィールドを見やれば、刃を構えたまま静止する二人の姿があった。
その中で先に体勢を崩したのはアグルの方だった。
あーあ、と気の抜けた声を吐き、軽く肩をすくめてみせる。
「あまり手の内を曝したくはなかったんだけどなー…。
てかこれもしかして反則になんの?なんないよな?異能を使うな、なんて一言も言われなかったし」
彼の言葉が示す通り、そこには異様な光景が広がっていた。
メイヤを取り巻く様に、彼の足元から地面を突き破って無数の刃が伸びていたのだ。その様は剣山を連想させる。
足の爪の先から耳の裏側にいたるまで、いたる所をすれすれで刃が突き抜け、メイヤの動作を抑止している。
所々刃がかすり血が滲んではいるものの、致命傷に及ぶような傷は一つもなく、むしろよく居合いの動きを途中で止められたものだと感心する。
あのまま振り切っていたら腕が飛んでいたことだろう。
「降参…してくれると嬉しいんだけど」
アグルは手に持つ槍の刃をメイヤの喉元に押し当てたまま、眉一つ動かさず淡々とした口調で言った。
【ありがとうございます^^ではこの勝負、アグルの勝利にさせて頂きます】
318
:
メイヤ/レックス
◆.q9WieYUok
:2015/01/20(火) 21:58:55
【闘技場】
必殺の居合いは抜き放たれるも、勝ちを得るには届かず。
闇刃を振り切る手前で動きを停めたまま、メイヤはゆっくりと息を吐いた。
「いや、異能が禁止なら先に俺の方が失格になっている筈。」
そして、自分の周囲を囲む刃の群れに目をやりながら、素直に参ったの言葉を口にする。
しかし、それに続いて苦笑いを浮かべつつ、嫌がらせの声を掛ける事は忘れない。
「俺の負けだよ、流石だな。
これであのオネェ系もアグルを追い掛けるだろう、強いオトコが好みらしいしさ。」
どうやら今回はアグルの方が一枚上手だった様だ。
突如現れた刃が何か解らないが、アレはほぼ回避不可能の必殺だろう。
(雷を操るに、砂鉄の刃か……?)
審判の試合終了を告げる声と共に消える刃群を横目に、メイヤもまた、投げ捨てた白刃を拾う。
取り敢えず、自分の出番は終わった。
イスラも回復した頃だろうし、後は歓声を上げる客側になって試合を見よう。
闘技場に溢れんばかりの歓声を背に、メイヤはその場を後にする。
ーーーーー
メイヤとアグルの試合が終わった後。
闘技場の簡単な整備が終わり、再び辺りに歓声が沸き上がる。
しかしその中心、闘技場に立つ眼鏡を掛けた青年、レックスは歓声など聞こえないとばかりに目を閉じていた。
「……で、貴方はどこのどちら様でしょうか。
開幕セレモニーの時にも居ましたが、僕の対戦相手であるイスラではないですよね。」
試合開始の旗は既に振られているものの、レックスは未だ動かない。
よくよく聞けば、歓声はヤジに変わりつつある。
「しかし、ですね。
試合は既に始まっている、と言う事は。
全力でやらせて頂きますよ、僕は今大分苛立っていますので……」
怒号の様なヤジを背に、レックスは三叉鑓を握る。
眼前には眼帯の男。
知った顔では無い、ならば。
「すみませんが、手加減はしません。
八つ当たり、させて頂きます!」
手にする鑓は、風の刃。
一薙で烈風を、二薙で竜巻を。
レックスは烈迫の気合いを込めて三叉鑓を左右に薙払い、生み出した竜巻を眼帯の男……シャムへと容赦無く放つ。
319
:
シャム
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/22(木) 01:49:26
【闘技場】
何やら知らないが、闘う前から相手の青年は立腹しているようだ。
彼の態度からするに本物の方のイスラ・フォードとも面識があるのだろう。
しかし、そのどちらもシャムとっては関係のないこと。
「ごちゃごちゃ言ってねえでさっさと来いよ。
こっちは暴れたくて暴れたくてウズウズしてんだからよぉ」
最初は面倒臭がっていた彼も今ではすっかりスイッチが入ってしまったようだ。
クロッソとの取り引きの話も覚えているのか、いないのか。
持ち前の強面を更に凶悪なものにし、シャムはおもむろに前に左手を翳す。
左腕に寄生した大顎が口を開け、迫る竜巻を全て吸い込んだ。
「お返しだオラァッ!」
かと思えば、次にそれは重火器の砲身の如く細長い円筒に形を変え、砲口から次々と榴弾を吐き出した。
320
:
レックス
◆.q9WieYUok
:2015/01/23(金) 16:28:45
【闘技場】
竜巻を喰らい、榴弾を吐き出す。
それは左手と言えばあまりに奇怪、だが、客受けはかなり良いらしい。
前の試合とはうって変わって、派手な攻防に観客はヤジを歓声に変える。
その事が更にレックスを苛立たせるも、冷静さは欠かさない。
吐き出される榴弾を後方へと下がって回避し、榴弾が爆裂し巻き起こる土煙を隠れ蓑に再び竜巻を放つ。
(攻防一体の左手、面倒ですが……)
それと同時に左手、シャムの右側へと回り込む様に疾走。
竜巻が土煙を吹き飛ばし、シャムの視界が開けたであろう瞬間を見計らい、更なる加速。
大気を操り、背面へと集めていた圧縮空気を解放。
加速に継ぐ急加速で一気に距離を詰め、三叉鑓による勢いに乗った刺突……刃先に乱気流を纏わせた一撃を放った。
「狙うならば、右側がセオリーでしょう!」
321
:
ジル他
◆Q4V5yCHNJ.
:2015/01/25(日) 16:12:08
【過去】
「酷いなぁ、心配してあげてるのに。…あ、リト、食べてすぐ寝っ転がっちゃダメだよ。もう少し起きてようか。」
アブセルをからかいながらもリトの動きには敏感で、横になろうとしていたのを止める。そして代わりに腰の辺りにクッションを敷くなどしてなるべく楽な態勢を取らせてやった。
アブセルに放った「心配」は嘘っぽいが、実際面倒見はいいようだ。
「……」
何処かのお屋敷の子供。
人を雇う程なら裕福であるはずで、生活面においても問題はないはず。
しかし、そのわりにリトは痩せ細っているし、いくら病気だからと言って顔色が不自然に悪過ぎる。先程医者に様子を聞いたら貧血もあると言っていたけど…
それに、
「リト、寒くない?」
ジルの問いかけにリトは小さく頷く。
「ちゃんと口で教えて」
「…寒くない…」
この口数の少なさが気になる。
…他人のこと、加えて今日初めて会った人物の心配をしたところでどうにもならないが。
ジルは不意にリトの頭を撫でる。
一瞬彼の身体がビクリと動いた。とても緊張している。
「…アブセル。」
リトが怯えているのが分かるが、それでもジルは手を止めない。悪意のない接触に慣れた方が良いと思ったからだ。
そしてリトを撫でたまま意識はアブセルへ。
「リトに興味があるんでしょ?ならさ、虐めるんじゃなくて気遣ってあげなよ。そっちの方がリトにとっても、君にとっても良いと思うな。」
322
:
ナディア
◆Q4V5yCHNJ.
:2015/01/25(日) 16:12:50
【ポセイドン邸】
父が嫌いだった。
本当はリトが生まれる前から、ずっと。
ポセイドンの血を引き、その力まで継いだ自分を、父は特別目にかけていた。
ポセイドンの当主としての英才教育、謂わば帝王学なるものを強要したが、自分は格式ばったものが大嫌い。自由奔放に振る舞い、父の言うことなど微塵も聞こうとしなかった。
父からは何処か野望めいたものを感じていたから、子供ながらに警戒していたのだろう。
「…そうか。」
老人の話を聞いて、今まで引っかかっていた謎が解けた気がした。
本家に婿入りし、ヨハンはポセイドンの家系を継ぐ者の父となった。だが彼はそれでは満足出来なかった。優位な肩書き、立場だけではなく、自身が一族の頂点に立ち、実権を握りたかったのだ。
自身の出生について彼が知っていたかは不明だが、それを抜きにしても自身の育った環境が決して恵まれたものではなかったから。最下層の身分を払拭しようともがくあまり、どこかで道を間違えてしまった。
彼は娘を利用して自分の力を確かなものにしようとしたものの、どれだけ試みてもナディアは彼の思い通りにはならなかった。
そしていつしかナディアへの干渉はなくなっていったが…それをただ”諦めた”と思っていたのが甘かった。
自分は救いようのない馬鹿だと思う。父の野望が、もっと恐ろしいものに変化していたことに気づかなかったなんて。
彼はただ方法を変えただけ。”その対象”を、自分からリトに変えただけだった。
(リトがあんな目にあったのは私も一因ってことか…)
嫌なことに気づいてしまった。
ナディアは自嘲気味な笑みを浮かべた。
それにしても、
「今までずっと黙ってた事を、何で今更話すの?」
50年以上も親子である事を隠し、20年以上実の息子、そして孫に仕えてきた。
これほど沈黙を貫いていたにも関わらず、何故今になって事実を打ち明けるのか。
「父さんは不遇な人生を歩んで来たから、同情して許してやれと?降って湧いた祖父に免じろとでも?悪いけど、打ち明けられたところであんたを祖父として接する気はないよ。」
あぁ、言われてみればヨハンと老人は似ているところがある。
血の繋がりをもろともしない冷酷な面がそっくりだ。
「要するにあんたにとって大事なのは”旦那様”だけだもんね?孫であるはずのリトが苦しめられても見て見ぬ振り…違うな、あんたは寧ろ助長してた。私やヨノのことは過保護にするくせに、リトには冷たかったもんね。」
323
:
リマ
◆Q4V5yCHNJ.
:2015/01/25(日) 16:40:30
長らく更新出来ずスミマセン> < 学会の準備でずっとバタバタしてました(;-ω-)ゞ
ヤツキ>>
【お待たせしました、家系図ですっ
imepic.jp/20150125/584890
だいたいこんな感じ?
見えづらいけど> <】
イスラ>>
【わーい←
ヨハン母の名前はレイシーって事にします(^0^
ジル、根本は変わらないのか…
ジルは多分、のび太に優しく、ジャイアンやスネ夫に意地悪するタイプだと思います←←
んー、まともな神経じゃないですからねぇ…(???)
可哀想ですかね?←
設定だけ思いついて膨らますことが出来ないんですよね(笑)
いえいえ、寧ろイスラさんが自分の思いつきを素晴らしく改良してくださるのでとっても嬉しいです(笑)
爺も可哀想に…( p_q)和解できると良いですね(;-ω-)
スカートの裾を踏んでしまったり、スカートに足が絡まったり、ロングスカートはとっても危険です←
シエルにもとうとう女装癖が…(違
シエルも大人になったのねー(棒読み)
キャンチョメが可哀想なんですかww
いやいや、白龍だってジュダルにとっては良い方向に成長してますよ!
「お前の為に俺頑張る!」って具合に白龍の尻に敷かれてる感じが可愛い可愛い← 白龍のお願い(と言う名の無茶振り)にとっても弱いし!
はい、奥が深いのですよ←
えーそんなことないですよー(棒読み)
いやいや、十分使いこなしてますって!!
ジルの弱みを握れば…←】
324
:
シャム
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/27(火) 10:51:17
【闘技場】
土煙で何も見えない。…が、正確性よりも「数撃ちゃ当たる」戦法を好むシャムが、砲撃の手を休めることはない。
相手の戦意喪失を確認するのは、手当たり次第に乱射した後でいい。彼がその間に死亡してしまう可能性もあるが、そこはまあ仕方のない話だ。
そう考えていた矢先、不意に強い風が吹き荒び周囲の土煙をなぎ払った。
視界が開け、右目の端を何かが掠める。
「…あぁ?」
そして次の瞬間、シャムの身体は宙に吹き飛ばされた。
壁に激突し、地面に落下する。
右半身に違和感を覚え見てみれば、回転するスクリューに巻き込まれたかの如く右手はぐちゃぐちゃ。右胸の肉は抉れ肋が剥き出している有り様だ。
瞬く間に会場は騒然となった。この状況でもなお歓声を上げる血の気の多い者もいるが、みな血溜まりの中に沈み動かないシャムを凝視していた。
「…くッ…、くははははははッ!」
しかしそんな中、突如として大きな高笑いが場に響いた。
声の発信源は他でもないシャム自身だ。
恐らく彼のことを知らない観客の殆んどが、気が触れてしまったのでは…と思ったに違いない。
呆然とする会場の空気を置き去りに、彼は一頻り笑い続ける。そして一つ大きく息を吸い込み…
「いッてえなゴラァッ!!」
…急にキレた。
普通の人間なら痛いで済む話ではないが、しかし血痕こそ残れ彼の傷はもうそこに存在してはいなかった。
だがそれに反しシャムの怒りは収まらない。
憤然と立ち上がる彼の左腕が大きく蠢いた。
寄生生物の融合範囲が左腕から背中、右肩まで広がり、あるものに形を為していく。
そしてまるで翼を拡げるかの如く、シャムの背後から四挺の口径30mm機関砲、二機の多連装ロケット砲が展開。
それぞれの兵器が一斉に火を吹き、闘技フィールドまでならず、観客席にまで嵐の様な弾幕が蹂躙した。
325
:
アブセル
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/27(火) 10:53:45
【過去】
ジルの言葉に対し、アブセルは返事に窮した。
「別に興味なんて…」
ない、と含んだ言いかたをするものの…やはりそれは本心からのものではないらしい。
その証拠にアブセルはちらりとリトを見やる。
ふいに彼と目が合うと、目の下をほのかに赤らめ、ぷいっと直ぐに顔を背けてしまった。
「…気遣ってあげるって…どうやったらいいか分からない…」
いじわる…は、もうしないと思う。…多分。
今回のことで懲りたから。
だが人に優しくするという行為は、今のアブセルにとっては少々ハードルの高いものでもあった。
そもそも彼は、今まで子供同士の交流の場において、気遣いなるものの配慮をされた経験がない。
いや、そもそもそれを交流と呼んでいいのかどうかもいささか疑問ではあるが。
いずれにせよ彼の場合、他の子との接触といえば、謗られるか、石やボールを投げつけられるか、倉庫に閉じ込められるか…など。おおよそ笑い者にされ、嫌な思いをするものでしかなかった。
そんな中にいれば、当然アブセルの対人意識も捻くれてしまう訳で。
唯一の味方だった母に見捨てられたことも相成ってか、彼は自分の周囲に壁を作るようになってしまった。
他人に心を許すことを極端に恐れ、それどころか人を寄せ付けないため、自ら嫌われる様なことをする節さえあった。
拒絶されて傷つくのが怖かったのだ。
ずいぶん後ろ向きな考え方ではあるが、それが彼なりの身を護る術だったのだろう。
「本当は仲良くしたい」しかし「人と深く関わるのが怖い」そんな異なる感情が共存しているせいで、アブセルは他人とのコミュニケーションが上手く取れずにいたのだった。
326
:
レックス+etc
◆.q9WieYUok
:2015/01/28(水) 15:15:34
【闘技場】
確かな手応えは、あった。
乱気流を纏った鑓の矛先はさながらスクリューの様なモノ。
直撃すれば唯では済まない。
しかし。
あまりの威力に外壁まで吹き飛び、血溜まりに沈む対戦相手は哄笑を上げる。
そして更に、一通り笑い終えると同時に怒号。
それを合図に対戦相手、シャムの左手から肩、背中に掛けてが蠢き、様々な重火器が姿を現した。
「……人外の方、ですか。」
そして、その砲口は一斉に火を噴いた。
その威力は凄まじく、闘技場のみならず観客席にまで弾幕が降り注いでいく。
流石の観客達も歓声を悲鳴に変えて逃げ回り、周囲は大惨事だ。
しかし、それでも尚審判のマルトは試合中止の声を掛けず、涼しい顔……何らかの異能を使い、弾幕を防ぎながら試合を見ていた。
それを視界の端に映しながら、レックスは疾走。
超高密度まで圧縮した大気分子の小盾を構え、弾幕の嵐を進んで行く。
(銃弾の軌道は基本的に直線のみ、ロケット砲にだけ気をつければ何とかなります!)
しかし、嵐の様な弾幕全てをかいくぐるのは不可能であり、進む事に銃創が増えて行く。
だが、近付かなければ勝気は無い。
(異能による遠距離攻撃は左手によって無効化されますが、近接攻撃なら通じます。
それに、あの“奥の手”を確実に当てるには近付くしか……!)
レックスは破壊の権化と言っても過言では無いシャムへ、鑓と盾を構え確実に、距離を詰めて行く。
ーーーーー
「凄い騒ぎだな……でもアレじゃあしょうがないか。」
逃げ惑う観客達が入り乱れる観客席で、メイヤは呆れた様な、苦笑いの様な声を漏らす。
アグルとの試合を終え、簡単な怪我の治療をした後に、待ち合わせていたサンディと観客席で試合を観戦していたのだが……
何でもアリとは言え、暴れ回るシャムは如何なモノか。
観客にも既に負傷者が出て居り、それがより一層観客達の恐怖症を煽っている様だ。
何より、そろそろ自分達も避難した方が良さそうだ。
比較的人の出が少ない出入り口を探し、メイヤは立ち上がる。
「サンディ、俺達も避難しよう。
流石に観戦してるだけで怪我するのはいただけない。」
そして、サンディの手を引き、歩き始めた瞬間。
不意に現れた人影……二人組の男、黒髪に面の男と白髪の少年がその進路を塞ぐ。
「行かせないよ、折角周りの目を気にしなくて良さそうなんだから。
喰わせて貰うよ、僕達“四凶”が。
ねぇオンクー、一番弱そうな天照大神から喰らって行けば、順当に“神格”を上げれるよねぇ?」
327
:
ヤツキ
◆.q9WieYUok
:2015/01/28(水) 22:07:55
【おぉー!リマさんありがとうございやす!】
328
:
ベルッチオ
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/29(木) 22:26:43
【ポセイドン邸】
なぜ今さら真実を打ち明ける気になったのか…。
正直な所それは老翁にも分からなかった。
ただそれがヨハンの死に起因することは確かだったが…しかし、それだけだった。
ナディアの言う通り、厚かましくも情けを請い、許してやって欲しいと考えてのことだったのか。
それとも、ヨハンの娘である彼女に、彼のことを知って貰いたかっただけなのか。
または、その事実を自分一人の胸に抱え続けることに疲れ、懺悔をしているつもりにでもなっていたのか。
いずれにしても自分本位なものに違いはないが。しかし、ともすれば、まだ懺悔は終わっていない。
重ねた罪は全て、最後まで告白しなければならないのだ…。
「…リト坊っちゃんに対しても、大変申し訳ないことをしてしまったと思っています…」
苦々しい口調で老翁は口を開いた。
そして少し間を置いて、次にこうも続けた。
「奥様の心のご病気…、お嬢様はどう思っていらっしゃいますか?」
繋がりを考えれば、何の脈絡もない様に思えるその言葉。いきなり話が飛び、ナディアからすれば訳が分からなかったことだろう。
しかし彼は気にしていなかった。
「不自然とはお思いになりませんでしたか?
奥様が坊っちゃんの誕生を特に心待ちにしていたのは周知の事実ですが…。
あの方はもともと気の強い方でいらっしゃいます。どんな理由があろうと、あそこまで豹変なさるのは少し考えにくいものではないでしょうか」
そして彼はナディアを見つめ、はっきりとこう告げた。
「あれは私の暗示によるものです」
329
:
ベルッチオ
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/29(木) 22:28:33
ナディアは言った。あんたはリトに冷たかった、と。
確かにそうだったと思う。
リトに対しては、一線どころか二線も三線も引いて接していたから。
それは"情が移らないように"とか、"彼の行く末を知る者としてのけじめ"とか、そう自分自身に言い聞かせていたが。
正直な気持ちを言うと、自分は心のどこかで彼のことを恨んでいたのかもしれない。
もともとヨハン達家族の関係にはどこか危ういものがあった。
ヨハンとミレリアの間には少なからず蟠りがあったし、娘…主にナディアも父親に対して不満を抱いている様だった。
それがリトが産まれたことで、より顕著な形となって表面化しようとは誰が予想しただろう。
リトを巡って家族間の溝は深まり、修復不可能なまでに軋轢が生じた。
勿論それはリトのせいではないが。しかし結果として家庭内に新たな確執を生み、ヨハンを更に狂わせる原因となった彼を、たぶん自分は許せなかったのだと思う。
「坊っちゃんや奥様のことだけではありません。
私はトーマ様ご家族の事件を含め様々な汚行に関わり、旦那様に手をお貸ししてきました」
更に老翁は吐露し続けた。
ヨハンの権力志向は老翁も危惧しているところがあったが、その異常性は次第に目に余るようになった。
我欲の為には時に強引とも思える行為…賄賂や暴力に訴えることも屡々であった。
止める機会はいくらでもあった筈だった。
いや、実際に口を出すこともあったが、最終的に自分は彼の指示に従い続けた。
こんなことを続ければ、いずれ破滅するのは目に見えているのに…だ。
彼の望みを叶えることが、自分が彼にしてあげられる唯一の罪滅ぼしだとでも思ったのだろうか。どんな形であれ、彼に頼られることが嬉しかったのだろうか。
…本当に、自分という人間はどこまで愚かなのだろう。
「ご当主様…」
ふいに老翁は床に膝まずいた。
深く身を屈め、ナディアの足元に叩頭した。
「誠に申し訳ございませんでした。
弁解の余地もございません。ご当主様の判断の元、然るべき処分を所望いたします」
330
:
イスラ
◆Hbcmdmj4dM
:2015/01/29(木) 22:41:17
リマ》ありがとうございます^^いつ完成するか分かりませんが、頑張ってラブストーリーなるものを書いてみます
ああ、っぽい(笑)ちょっとしたドラえもんですね←
普通じゃないのか…(笑)
可哀想ですよ!ミレリア達の三角関係が今も続いていたなら、自分はトーマよりヨハンを応援してたでしょうね←
そうですかね?何か勝手に色々改良しちゃってすみません;
もう別に和解しなくてもいいかも(笑)爺だってもう引退の年齢だし、屋敷から追い出しても構いませんよ←
マジか、そんなリスクを抱えながらも皆さん頑張って履いてるんですねw
ジュダルが尻に引かれてるんだ…!
まさか彼がそんな萌えキャラになろうとは…(笑)
ジルの弱みは…妹ですかね?
じゃあ妹を人質にとって…ってそんな卑怯なこと出来ませんよ←
331
:
シャム他
◆Hbcmdmj4dM
:2015/02/02(月) 19:45:26
【闘技場】
「死ッね、おるァアアァァアッ!!」
無数の砲弾にも臆さず、こちらへと疾走してくるレックスに対し、負けじとシャムも砲火で迎え撃つ。
しかし、その時である。何の前降れもなく、脳天に何かが直撃してきた。
不意の一撃にたまらず横転しそうになる。
その傍ら、彼の頭に蹴りを浴びせた張本人…DDは、宙返りをして華麗に地に着地してみせると、素早くシャムの頬を両手で挟み、その口に唇をあてがった。
「ぶッ…!?」
彼の口づけにはエナジードレイン的な効果でもあるのだろうか。
初めの内は大暴れしていたシャムも、終いには力が抜けたようになり、へなへなとその場に崩れ落ちてしまった。
「テッメ…ッ何しやがる、このクソカマ…!」
不快感を露に服の袖で口を拭い抗議の音を上げる彼に対し、DDは意にも介さない様子で言葉を返した。
「いくらなんでもやり過ぎよぉ。その熱くなると直ぐ周りが見えなくなるの、悪いクセよ。
あ、ごめんなさいね坊や。迷惑かけちゃって」
そうしてレックスに軽く声をかけた後、DDは審判に棄権の旨を告げる。
そして起き上がれないでいるシャムの襟首を無造作に掴んだ。
「あ〜あ…これで取引の話はパアね。
ま、貴方を人選したこっちのミスでもあるから、あまり強くは言えないけどー」
傍目からすればシャムを止めに来た様に見えるその行為だが…、捉え方を変えれば、レックスの"何か"から彼を庇った様にも見える。
まあ、そこは本人のみぞ知ると言ったところだろうが、当のDDはシャムを引き摺りながら、溜め息まじりにフィールド内を後にした。
そして――…
シャムが棄権し、危難が去ったかの様に思われた中、今度は耳をつんざくような咆哮が会場中にこだました。
六つの脚に六つの翼。
大犬に姿を変えたオンクーが、そこにいた。
大きく裂けた口からだらしなく舌と涎を垂らし、唸り声の様な不快な音を発する。
「…じゃあクロス、天照はお前にあげるよ。
ワタシは…」
言って、彼はちらりとメイヤを見た。
いや、正確には言えばこの場合、見るという表現は正しくなかったかもしれない。何しろそれには眼が存在しなかったのだから。
それでも彼はしっかりとメイヤを射竦め、殺意を孕んだ牙を剥き出しに、相手に飛びかかった。
「こっちの"狗"に借りがあるね!」
【クロスとオンクーは今回で(物語上から)リタイヤする流れですか?】
332
:
レックス+etc
◆.q9WieYUok
:2015/02/04(水) 17:57:48
【闘技場】
突然の乱入者によって無力化される対戦相手。
二人は顔見知りの様で、審判へ棄権の旨を告げ、闘技場を後にした。
その姿を見送り、レックスもまた、歩きだそうとするが……
(なん、ですか?アレは……!?)
突如として響き渡る、雷鳴の様な咆哮に足を止めた。
音のする方を見れば、三対の翼と脚持つ異形の影が観客席で暴れているではないか。
更に、よくよく見れば暴れまわっているのは異形だけではない様だ。
仮面を付けた青髪の男達が観客へと襲い掛かっているのが見える。
それも、数十人と数も多い。
「これは、不味いですね……!!」
試合も中途半端に終わり、苛立ちは募る一方だ。
しかし、今は観客達を助けるべきだろう。
審判のマルトへと視線を投げ、共に頷くと同時にレックスは駆け出す。
しかし。
レックスが観客席へと辿り着く事は叶わず。
どこからともなく現れた人影が放った、絶対零度の吹雪が無慈悲なまでに吹き荒れ、闘技場を蹂躙していく。
ーーーーー
「全く、DDが止めに入らなければどうなっていた事やら……」
シャムを引きずり闘技場の出入り口へと歩いて来るDDへ、フィアは労いの声を掛けた。
シャムが負ける事はないが、あのまま戦えば周りだけでなく、本人も決して浅くは無い傷を追っていただろう。
そう思える程に、あの眼鏡の青年の実力は高い。
「まぁ、怪我しなかっただけ良しとしましょう。
クロッソとの取引はおじゃんだけどね……」
闘技場から続く選手用の通路を歩きながら、フィアはため息を吐いた。
それと同時に。
闘技場を揺るがす咆哮と、それに続いて凍える様な冷気が通路内を吹き抜けていく。
「……何、この強大な“氣”は。」
更に、膨れ上がる強大な二つの“氣”を感じ、フィアは思わず呻いた。
「この感じ、十字界で戦った者に似てるけれど……まさか!!」
ーーーーー
咆哮に続き吹き荒れる猛吹雪。
一瞬にして視界を埋め尽くす真白のそれは、レックスの身体を軽々と吹き飛ばし、闘技場の壁へと叩きつけた。
「か、は……」
突然の衝撃と、壁へ叩き付けられたダメージは重く、レックスは直ぐには動けない。
十数秒の間を置き、鑓を支えにゆっくりと立ち上る。
吹雪により視界はすこぶる悪いが、何者かがマルトと戦っている様だ。
「いったい何が起こっているのでしょうか……!?」
333
:
メイヤ+etc
◆.q9WieYUok
:2015/02/04(水) 18:05:22
【闘技場】
そう言えば、闘技会の開幕セレモニーにてその姿を見た気はする。
更に思い出して見れば、弥都で刃を交えた事もあった。
「巷で噂されてるらしい異能者狙いの二人組は、お前達だったんだな。」
行く手を阻む二人組へ、メイヤは固い声を返す。
どうやら彼等の狙いは自分達だった様だ。
逃がすつもりは無いと言った様子の二人を視界に収めながら、メイヤは闘技場へと目を向ける。
(あっちは終わりか……)
何やら乱入者が現れたらしく、試合は終わった様だ。
これで避難する理由は無くなったが、今は戦うしかないらしい。
雷鳴の如き咆哮を上げながら、異形の大犬へと姿を変えたオンクーへ、メイヤは刃を抜き放つ。
そして、飛び掛かりの一撃を刃で斬り払い、後方へ跳躍。
着地と同時に闇の鎧を身に纏い、左手を前へ。
「犬に狗呼ばわりされるなんてな、大人しく犬小屋へ帰ってくれたら助かるんだが。
来いよ、躾てやる。」
指をクイクイっと動かし、メイヤはオンクーを煽った。
ーーーーー
あの姿になったオンクーはそう簡単には止まらない。
周囲を見渡せば、観客席では暴動が、闘技場では猛吹雪が。
どうやら色々と事が重なったらしい。
たが、今はそれもまた好機。
大犬へと姿を変えたオンクーから視線を変え、クロスは眼前の少女へと目を向ける。
「弥都とこの街でたらふく異能者を喰ったからね、“咎落ち”の心配も無い。
さぁ、喰わせてもらうよ……天照大神!」
変装用の面を投げ捨て、クロスは薙刀を振り上げる。
そして、小柄な身体からは想像もつかない程の速度と重量の乗った一撃を繰り出した。
更に、それと同時に大気中の水分子を操作し、作り出した二本の水の槍でサンディへと挟撃を放つ。
【そうですねー、四凶決着といきませう!】
334
:
アグル他か
:2015/02/09(月) 21:44:54
【闘技場】
突如として襲撃を謀る謎の男達と、会場中に吹き荒れる猛吹雪。
所所方方で大混乱が巻き起こる中、飛び掛かってきた男の一人を蹴り飛ばし、アグルは観客席からレックスの傍らに降り立った。
「大丈夫か、委員長」
この緊迫した雰囲気にも関わらず、彼の態度はいつもと差異がない。どこか気怠気なものだ。
「逃げるんなら肩貸すけど」
そして眼前で繰り広げられる戦いに目を向けたまま、レックスに言った。
――…
闇の鎧を纏った相手を見据え、オンクーは口の端を吊り上げる。堪える気もない笑いが息として洩れた。
「勘違いして貰っちゃ困るよ。
ワタシが用があるのは、お前じゃなくてその"中身"ね」
弥都で対峙した折、窮地に追いこまれた筈の彼の態度が、突如として豹変したのをオンクーは見ている。
それはまるで人格そのものが変わってしまったかの様な。
どんな仕掛けかは知らないが、あれは喰いがいがありそうだった。
「その化けの皮、さっさっと剥がしてみせるがよろしいよ」
オンクーは首をもたげ、大顎を開く。
呪を宿した黒々とした業火を吐き出し、周囲一体を火の海に化す。そしてその場から跳び上がり、己の巨躯をメイヤに叩きつけるべく襲いかかった。
――…
少年の放つ挟撃がサンディに襲い掛かる。
しかし、その瞬間。彼女を中心に目映いばかりの光が膨れ上がった。
二振りの水槍は一瞬のうちに蒸発し、薙刀の刃先はどこからか現れた勾玉によって止められる。
彼女の身代りとなり粉々に砕け散った硝子片が周囲の光を拾い、ちらちらと輝きを見せる中。
額に日輪の印を宿し、薄紅色の羽根を背に広げたサンディはその手を鞘へ。
「まったくもう…。私達に用があるんなら、なにも他の関係ない人達を巻き込むことないじゃない!」
立て続けに事が起こりすぎて何がなにやら分からないが、取り合えず今が危機的状況だということは分かる。
力の出し惜しみをする必要はない。最初から全力だ。
腰を落とした姿勢から刃を一気に引き抜く。炎を纏った抜き身が大気を焦がし、一直線にクロスへと迫っていった。
【了解です!】
335
:
レックス+キール
◆.q9WieYUok
:2015/02/09(月) 23:51:23
【闘技場】
「大丈夫です、一人で立てますから。」
三叉鑓を支えになんとか立ち上がるレックスの隣。
観客席から飛び出して来たアグルは何時もと変わらない。
肩を貸そうかとの声も聞き慣れた気怠げなモノだ。
その声と、この場から抜けようとする問い掛けにレックスは憤りを感じるも、深く息を吐き心身を落ち着かせる。
「助けに来てくれたのは嬉しいですが、逃げる訳には行きません。
誰が、何の為に襲撃を掛けたのかはわかりませんが……ここで止めないと街に被害が出ますから。」
そう、今はまだ闘技場内だけだが、このままでは必ず街へ戦火は広がるだろう。
見れば観客席でも戦闘が繰り広げられている。
如何に闘技場が巨大だとしても、激闘が続けば崩壊は免れない筈だ。
刺す様な冷気を吸い込み、吐き出し。
レックスは鑓を構え、眼前を見据える。
そして、飛び出そうとしたその時。
吹雪を突き破るかの勢いでマルトが吹き飛ばされ、数刻前のレックスと同じ様に闘技場の壁へと叩き付けられる。
レックスと違うのは、辛うじて受け身を取り、支えもなしにしかと立ち上がった所か。
だが、よく見ればその姿はボロボロで、額からは鮮血が溢れている。
「……お前達、避難してなかったのか。」
しかし、ダメージを感じさせない動作で剣を構え、マルトはレックスとアグルの二人へ声を掛けた。
「本当なら、逃げろと言いたい所だが、手伝ってくれ。
団長が来るまで奴を止める。
正直俺一人じゃあ無理だが、四神が二人居れば何とかなる筈だ。」
その問い掛けにレックスは無言で頷き、チラリとアグルへ黒瞳を向ける。
しかしすぐさま視線を前に戻し、来た。
圧倒的なプレッシャーを放ち、吹き荒れる猛吹雪の中を進む一人の女性。
視界を埋める真白の中、黒のスーツを着こなす四霊が一人。
「合い見えるのは初めてね、四神のフレイヤとトール。
私は四霊、霊亀のキール。
初対面で悪いけれど、アナタ達。」
吹雪に髪を靡かせ、キールは氷点下の声で囁く。
「ここで皆殺しよ。」
そして、その姿が互いに視認出来る距離まで近付いたと同時に。
キールは絶対零度の波濤をマルトを含む三人へと放った。
336
:
メイヤ
◆.q9WieYUok
:2015/02/10(火) 15:15:36
【闘技場】
異形の大犬が洩らす笑い声に、メイヤは眉を細める。
しかし、続く言葉で彼が何を言っているかを理解し、応えた。
「……俺は俺だ。
それに、化けの皮を剥がされるのはそっちの方だろう!」
そして、吐き出される黒火に臆する事無くメイヤは駆け出し、疾走。
黒火の海を駆け抜けながら、巨大な闇刃を生成。
襲い来る巨躯へ狙いを定め、刃を横薙に一閃……するも、オンクーの一撃は予想以上に重く、振り切る事は叶わず刃は砕け散って行く。
更に、刃が砕けバランスを崩した所にオンクーの巨躯が飛来。
避ける事は叶わず、辛うじて左腕でそれを防ぐもメイヤは吹き飛ばされ、観客席へと叩き付けられた。
ーーー……
弥都で対峙した時は、此方の完敗だった。
首筋へと突き刺さる牙と、溢れ出す血の感触を最後に、自分は意識を失った。
そして、次に目覚めた時には屋敷の中で、傷も消えていた。
あの時は、誰かに助けて貰ったのだろうかと思っていたが……
ーーー……
燃え盛る黒火に囲まれながら、メイヤはゆっくり立ち上がる。
防御の為に構えた左腕は、肩口まで鎧が砕けているものの、折れてはいない。
(封じられし“悪神”……奴の狙いはソレか。
そして、以前戦った時に俺を助けた、いや、“器”としての俺を守る為に顕現したんだろう。)
弥都でオンクーを退けたのは自身に宿る力であり、自身を蝕む力。
それは強大な意思を持ち、常に自分へ囁き掛けている。
“闇を喰らい、身体を渡せと”
だが。
バルクウェイでの戦いの後始末として、深淵から溢れ出す闇を喰らい尽くした以降。
“悪神”は以前よりも成りを潜め、反比例して扱える闇の総量は増えた。
「闇を喰らい尽くす“悪神”。
俺がアンタを喰らってやるよ……!」
弥都では敗北を喫したが、今は負ける気がしない。
立ち上がり、メイヤは再び刃を生成。
右手に長刀、左逆手に短刀を。
破損した鎧も修復し、再度駆け出す。
その速度は先程よりも数段速く、漆黒の影は瞬く間に大犬との距離を詰め、刃を二閃、三閃、四閃、五閃。
勢いの乗った回転斬りは、増殖し続ける闇の小刃を纏い、竜巻の如く膨れ上がる。
そして、全てを切り刻む嵐と成り、オンクーの巨躯へと襲い掛かった。
337
:
クロス
◆.q9WieYUok
:2015/02/12(木) 15:54:43
【闘技場】
水槍は蒸発し、薙刀の刃は勾玉により防がれ。
光舞う中現れしは、天照大神。
額に日輪、背には薄紅の羽を背負うその姿を見、クロスは驚きの表情を浮かべる。
「まさかその姿になる程、力を使いこなせているとはね……
正直見くびっていたよ、君の事を。」
しかし、その表情は直ぐ様歓喜の笑みへと変わる。
それと同時に、サンディが放つ炎の斬撃を水盾で防ぎ、爆発。
水蒸気爆発により巻き起こる烈風が吹き荒れ、それに乗って濃霧が周囲に広がっていく。
「でも。
今の君は四神の中で一番脂がのって美味そうだね。」
そして、濃霧を突き破ってクロスは飛び出す。
しかしその姿は、先程までの少年の形を成さず。
「この世は弱肉強食だよ、そして僕達四凶は全てを喰らう者。」
白髪頭からは二本の巻角が、小柄だった上半身は筋骨隆々に。
下半身は四つ脚、真白の綿毛に包まれた馬脚へ変化。
右手の薙刀は消え失せ、氷の突撃槍を。
逆の左には氷の大盾を持ち、蝙蝠の翼をはためかせ、現れしは異形のケンタウルスか。
異形の巨躯へ変化しつつも、表情だけは幼い少年のまま、クロスは力を解放させたサンディへ突撃。
「見せてあげよう、 饕餮の力を!」
勢いの乗った、鋭くも強烈な刺突を繰り出した。
338
:
アグル、サンディ
◆Hbcmdmj4dM
:2015/02/15(日) 20:57:58
【闘技場】
飛行艇で初めてマルト達を見たとき、直感的に自分との力の優劣差を感じ取った。当然、劣っているのはこっち…という形でだ。
しかしその彼が今、自分とレックスに加勢を求めている。
彼の表情から察しても、どうらやら相手はよほどの化物らしい。
アグルは何も答えず、無言で視線を動かす。
見えるは圧倒的なプレッシャーを放つ黒スーツの女に、迫る絶対零度の波濤。
全てが凍りつく前に、地に槍を突き、アグルは強力な電磁波を周囲に発生させる。
あらゆる原子の運動を停止させる絶対零度の攻撃に対し、こちらは反対にそれらの振動を増幅させる。
彼方と此方で二分に分たれた空間。
しかしその境界線は徐々にだが、じりじりと押されている。
「……ッ」
このままでは長くは持たない。
アグルの瞳に僅かながら焦燥の色が滲んだ。
――…
濃霧を破って、異形の怪物が飛び出してくる。その姿を見るやサンディは大きく目を見開いた。
しかし驚いている暇などなかった。
突撃槍はもう目の前だ。
とっさに刀を構え障壁をはるも、それは薄氷の如く易々と破られ、サンディの身体は三階の特別席まで吹き飛ばされる。
「いたた…」
強く身体をぶつけた様だが、背中の羽の加護か怪我は大したことはない。
どうやら槍の先も上手く外れた様だ。
それらを一瞬で確認するとサンディは直ぐさま起き上がり、攻めに転じる。
手すり壁に立って手を翳すと、周囲に浮かぶ無数の勾玉が数珠のように一括りになった。
それを一振りすれば勾玉はひとりでにしなり、変則的な線を描いてクロスの身を縛り捕らえた。
「"紅蓮華"!」
それを好機と見て、サンディは更に巨大な火柱を掲げる。それは大きな渦となりクロスを呑み込まんと襲いかかった。
339
:
ジル他
◆Q4V5yCHNJ.
:2015/02/17(火) 22:20:00
【過去】
「分からないって…」
まさかそんな言葉が返ってくるとは思わなかった。
しかしたしかに、”気遣うとはどうすることか”を具体的に言葉で表現するのは難しい。
「……」
アブセルに一本取られた?なんか悔しい。
こうなったら何としても言葉を見つけなければ。
などと考え出したジルより先に、フェミルが動いた。
フェミルは不意に立ち上がったかと思えばアブセルのもとへ。そしてその手を引きリトの側まで連れてきた。
「おともだち」
言ってフェミルはアブセルの手をリトの手に重ねる。
その様子にジルは笑みを浮かべる。
「うん、そうだね」
フェミルの頭を撫でながらジルは続けた。
「難しく考えなくていい。友達として、ただ側にいてあげればいいんじゃないかな?そうすれば、今は見えないことも自ずと見えてくると思うよ。」
そして、
「何と無く心配だけど…今日会ったばかりの僕には分からないし。勝手に抜け出して来たならあまり長居させられないよね。リトが動けるようになったら帰った方がいいかも。」
340
:
オンクー
◆Hbcmdmj4dM
:2015/02/18(水) 00:57:56
【闘技場】
「…面白くない奴ね」
あくまでも自分は自分だと主張する相手に対し、オンクーは心底つまらなそうな顔をする。
そして竜巻の如く迫る刃の嵐を一瞥するや、地を蹴り、その中に自ら飛び込んでいった。
「チュンツァイ!引っ込んでろよっ!」
六つの脚を使い、文字通り嵐を爪で引き裂く。
そしてその勢いのままメイヤへと突っ込み、相手の胴に牙を突きたてた。
オンクーは彼を捉えたまま、そのまま前方の壁に激突する。
下顎を壁に押し付け、にやにやと喉から音を鳴らした。
「ほらほら、どうしたね?このまま引き千切っちゃうよ?」
今はまだじゃれついている程度だと言わんばかりだ。
オンクーは相手の苦しがる様を面白がるように、メイヤをくわえた顎にゆっくりと力を落としていく。
341
:
メイヤ
◆.q9WieYUok
:2015/02/22(日) 21:56:56
【闘技場】
全てを切り裂く闇の刃嵐を前に、臆する事無いオンクー。
三対の強靭な脚と尖爪を使い、刃の嵐の中を文字通り引き裂き、進んで行く。
そして、嵐の中心であるメイヤを間合いに捉えた大犬は大口を開き突進。
鋭い牙でメイヤを串刺しにし、そのまま前方へ。
メイヤの身体を壁へ縫い付ける様に叩き付け、ニヤリと笑った。
「……グイズ、タマーダビー。」
しかし、腹部を貫かれたメイヤもまた、苦痛に顔を歪めながらも笑みを浮かべる。
「向こうののスラングなら、返してやるよ。」
それは口腔から溢れる朱に染まる、凄絶なる笑み。
大陸の悪態を返し、メイヤは空いた両手で大犬の顎を掴み、ゆっくりと引き剥がして行く。
更に、いつの間にか朱から黒へと色を変えた血が泡立ち、異常なまでの剛力により開かれた大犬の口腔内へと殺到。
「オマケ付きでな!」
黒血とも呼べるそれは、瞬く間にオンクーの体内へと侵入し、侵蝕、増殖。
秒刻みで増えるそれは、オンクーの生命力とも呼べるエネルギーを喰らい尽くさんとばかりに激しく蠕動。
そして、闇に蝕まれていくオンクーを引き剥がし、メイヤは大犬の巨躯を蹴り飛ばす。
更に、蹴り飛ばした相手へ闇の小刃の群れを放ち、自身に宿る闇の力を全解放。
溢れ出す闇を纏い、漆黒の獣……黒狗へと姿を変え、雄叫びを上げた。
「オォォォォォォッ!」
【スマホ修理出すのに全データ消去とか憤死ですわ……
遅レス申し訳ない。
そしてイスラさん根回し的な対応ありがとうございます!】
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