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フレイ様人生劇場SSスレpart5〜黎明〜

1迷子のフレイたま:2004/03/02(火) 22:57
愛しのフレイ・アルスター先生のSSが読めるのはこのスレだけ!
|**** センセイ、          ・創作、予想等多種多様なジャンルをカバー。
|台@) シメキリガ・・・       ・本スレでは長すぎるSSもここではOK。
| 編 )    ヘヘ         ・エロ、グロ、801等の「他人を不快にするSS」は発禁処分。
|_)__)   /〃⌒⌒ヽオリャー     ライトH位なら許してあげる。
|       .〈〈.ノノ^ リ))    ・フレイ先生に信(中国では手紙をこう書く)を書こう。
        |ヽ|| `∀´||.      ・ここで950を踏んだ人は次スレ立てお願いね。
     _φ___⊂)__
   /旦/三/ /|     前スレ:フレイ様人生劇場SSスレpart4〜雪花〜
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|. |    http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/anime/154/1070633117/
   |オーブみかん|/    
              既刊作品は書庫にあるわ。
             ○フレイスレSS保存庫 ttp://oita.cool.ne.jp/fllay/ss.html

              こっちも新しい書庫よ。
             ○フレイたんSS置き場 ttp://fllaystory.s41.xrea.com/top.html

333過去の傷・116:2004/04/23(金) 08:59
「ラクスさん、なんでしょうか?」
とキラは尋ねた。
「アスラン・・・貴方に剣を託します」
「剣といいますと・・・?」
「はい、自由を・・・フリ−ダムを貴方に託します」
「ラクスさん、どういうことですか!?」
「キラ様、いえキラ・ヤマト!貴方にあれを託したのは間違いでした、はっきり言わせていただきます、貴方にフリ−ダムに乗る資格はありません!!!」
な!?なんだって・・・?
「そ、そんな・・・」
「キラ様・・・・・・ではもう用はありません、帰ってください、アスラン・・・あれをお願いします」

「大丈夫だ、ラクスに秘密で乗せてやる」
「アスラン・・・」
「や、やめて・・・」
「あんたなんか・・・あんたなんか!」
ふいに女同士の言い争いがあったので・・・キラはそちらに向かった。

「フレイ・・・ミリィ・・・」
ミリアリアに馬乗りになりフレイが頬を叩いていた。
お互い頬が腫れていたがミリアリアは酷く・・・痛そうだった。
「はあ・・・はあ・・・」
「・・・うう・・・」
「ミリアリア、分かったでしょ!?女の色気でも容姿でも喧嘩でもあんたは私には勝てないのよ!」
「・・・・・・」
その数時間後。
ミリアリアは食堂にいた。
「ミリィ、キラの様子は?」
「うん・・・大丈夫よ、いまは眠ってるわ・・・」
サイの声に私は答えた。
実はあの一時間後、キラが倒れたのだ・・・熱も下がんないし・・・。
「皆は来ないでね・・・私一人でついていたいの・・・」
カガリやアサギ、ジュリ、マユラにも聞こえるように言うと食堂を去ろうとする、そして赤毛の少女の隣を通り過ぎようとした、すると・・・消え去りそうなくらい小さな声だった・・・。
「キラを・・・頼むわね・・・」
ほんとに消え去りそうなくらい小さな声だ・・・フレイは私に顔を向けようとしない・・・。
「え・・・ええ・・・」
私はそう言うと逃げるように食堂を出た。
これは罪悪感?フレイからキラを私は奪った、それは事実。
「フレイ・・・ごめんなさい・・・」
いまさらだけど罪悪感が出てきた、ト−ルがいないという理由で私はフレイからキラを奪った、いえまだ奪おうとしている・・・。

334流離う翼たち・463:2004/04/23(金) 23:37
 コーディネイター並の反応速度を持つと言われたフレイは唖然としてしまった。馬鹿げている。ナチュラルでは及ばない能力を身に付けたのがコーディネイターである筈だ。そのコーディネイターの能力にただのナチュラルである自分が匹敵するなど、ありえる事ではない。
 だが、自分を見るセランの目がそれを否定させない。セランは興奮してキーボードを操作し、設定を次々に変えていく。そして、設定変更が終わったのかフレイに親指を立てて見せた。

「これで良いと思います。もう一度やってみて下さい。私は下で見ていますから、もう一度結果を教えてくださいね」
「ええ、分かった」

 セランが機体から飛び降り、ジープに戻ったのを確認したフレイは、早速機体を動かした。最初は簡単な機動、そこからだんだんとスピードを上げていき、フレイはダガーの応答速度が十分なレベルにまで引き上げられて居るのを確認して機体を止めた。そしてコクピットから体を出し、駆け寄ってくるセランに大きく頷いて見せた。

「大丈夫、これなら問題ないです!」
「そうですか、それは良かった!」

 セランが拳を握って喜んでいる。そのままダガーの足元にまで駆け寄り、フレイに手で格納庫の方を示している。

「少尉、あそこに練習用の模擬サーベルと模擬ライフルがあります。システムを訓練モードにしてあれを装備してください」
「えっと、どうして?」
「さっき少佐が言ってたじゃないですか。これから模擬戦なんです」
「ちょ、ちょっと待ってください。なんでいきなり!?」
「さあ、私も無茶だと言ったんですが、少佐がいいからやらせろと」

 困った顔になるセラン。フレイが急いでサブモニターに格納庫前の拡大画像を映し出し、アルフレットの姿を確認する。すると、思ったとおりそこには心底面白そうにニヤニヤと笑っているアルフレットの姿があった。

「・・・・・・なるほど、フラガ少佐やキースさんの上官だわ」

 アルフレットは2人に似て人が悪い。良い人なのだが状況を楽しむ癖がある。丁度フラガやキースが自分達をからかって遊ぶように、あの人もそういう人の悪さがあるのだ。

「・・・・・・良いわよ、やってやるわよ」

 暫し悩んでいたフレイはこのアルフレットの露骨な挑発に乗ることにした。何を考えているのかは知らないが、これでもデュエルに乗って総合撃墜スコア30機以上なのだ。フラガ少佐やキースさんに褒められるくらいの技量にはなっているし、誰が相手でもそう簡単に負けるつもりは無い。
 覚悟を決めたフレイは、セランに分かったと答えて訓連用の装備を取りに行った。

 フレイの返事を聞いたアルフレットは面白そうに鼻で笑うと、チラリと背後を振り返った。

「よし、とりあえずは1対1だ。お前ら、誰か行きな」
「それじゃあ俺が!」

 フレイと同じくらいの年の少年が名乗りを上げた。黒髪の東洋系の少年だ。アルフレットはその少年を見ると、ポンポンとその頭を叩いた。

「ようし、その意気だ。勝ったら何か頼み事を聞いてやろう」
「本当ですか!?」
「おお、俺に叶えられるなら何でも聞いてやるぞ。何なら明日一日休暇とかな」
「おおおおおおおおお!!」

 志願した少年は喝采を上げて自分のダガーに乗り込んでいく。それを見送った同年輩の少年達は羨ましそうにその後ろ姿を見送っていたが、彼らより年長のパイロット、多分隊長級のパイロットは不満顔でアルフレットに問いかけた。

「良いんですか隊長、あんな約束をして?」
「何、構やしねえさ。あのお嬢ちゃんに勝てたならそれくらいは安いもんだ」
「どういう事です?」
「まあ、黙って見てなって」

 不信そうに自分を見る部下に、アルフレットは不敵に笑うだけで何も答えはしなかった。

335流離う翼たち・作者:2004/04/23(金) 23:50
>> ミリアリア・あの子許せない
ミリィ、とうとう携帯を捨てちゃいましたか。ドラマのラストシーンですな
次からは再びフレイ様に戻られるようで、楽しみにしてます。

>> 過去の傷
喧嘩は終わったようですが、さてこれからどうなるやら
フレイ様はカガリに走るしかなくなったのか

336ザフト・赤毛の虜囚 49:2004/04/24(土) 07:32
9.母親(ママ) 1/8
[え、行くって、どこのことだっけ?]

私は、安らかな眠りについている。ここは、多分夢の中……

──「フレイ、迷惑をかけてごめん。なるべく早く終わらせるから、ちゃんと待っててくれ」
ビデオメールに残るキラの言葉。
初めて出会った合コンの写真。みんなとの食事の写真。にこやかに微笑むキラの写真。
キラのメモリチップに残る思い出。

そして、そこに眠る私の知らないキラに癒されている。
これで、また歩いて行けると思う。キラの求めるもののために。

「うふ、うふふ……」
思わず笑みがこぼれてしまう。こんな楽しい気持ち、本当に長い間、忘れていた。
ヘリオポリスの平和の中で。友達と、いろいろ、おしゃべりして、買い物して、
あの時以来のこと。

あら、あちらも、なんだか楽しそう。ちょっと行って来よう。

え、行くって、どこのことだっけ?

いいわ、キラも一緒だもの。どこにだって行ける。どこでも安心できる。私はキラに話しかける。
「一緒に行こう、キラ」

ふと、傍らを見ると、今にも泣き出しそうに顔をクシャクシャにしている子供がいる。見たことない子。
私の腰くらいしかない女の子。でも、私には、それが誰なのか分かる。私は、その子に酷いことを
言って追い返した。泣きそうな顔して必死に耐えている姿が記憶に残っている。

「ミコトでしょ。あなたも一緒に行かない」

小さいミコトは、おそるおそる手を伸ばす。その両手を私とキラがひとつずつ繋ぐ。

「一緒に行こう。キラ、ミコト」

二人でミコトの手を振って歩くうちに、少しずつ表情が和らいで来るのが分かる。
私は、キラと小さいミコトを暖かい気持ちで見つめる。

いつのまにか、キラの向こうには、ミコトよりも少し年上の金髪の男の子が手を繋いでいる。
キラは、あの食事の写真のような優しい微笑みを、その男の子に向ける。そして、ミコトにも、私にも……
私達は四人、微笑みながら歩いて行った。

え、行くって、どこのことだっけ?

337ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/24(土) 07:34
フレイSS新章です。前章の続きで、フレイは今だお休み中です。
ここで、しばらく、メルデルの方に話を移します。
メルデル編では、メインの一人である新キャラが登場します。
ただ、オリキャラでは無く、TV本編のオフィシャル・キャラです。

>>過去の傷
よく分からないけど、キラはフリーダム剥奪と、ミリィ・フレイ様の喧嘩を見て
ショックで寝込んだのでしょうか。キラが倒れるのを見て、ミリィ・フレイ様の
喧嘩は少し納まった?なんか、二人の意識が変化してますね。キラは、どんな
倒れ方をしたのでしょう。

>>流離う翼たち
展開引っ張りますね。フレイ様、自分に対する意識も思い込み一杯ですね。
こういうところがフレイ様らしいです。凄い力を持っている主人公の場合、
その力を本番のみとか発現に特定の条件を持たせて、一方で人柄的なところで、
味方に受け入れさせるようにしますが、今のフレイ様は、そのどれもしてません。
アルフさんは、フレイ様をどうするつもりなのでしょう。

338過去の傷・117:2004/04/24(土) 11:29
キラの側について看病している私。
キラの側にいられるだけで私は幸せ。
「うう・・・ト−ル・・・ごめん・・・」
「!」
キラはト−ルのことでまだ苦しんでるのね、そこまでト−ルを・・・。
「・・・・・・」(・・・・・・)
私は笑みを浮かべた、そう・・・苦しめばいい・・・私だって苦しいんだから・・・。
でもキラにとってはいいはず、私と付き合えるんだから、それに私もキラを好きになりかけてるから・・・ううん、好きよ、キラのことは好き。
「キラ?」
一人の少年が入ってきた。
この人って・・・。
「キラの様子は?」
と、アスランは言った。
「いえ、状態はそのままです」(この人がト−ルを・・・)

アスランが出て行く、残ったミリアリアは。
(気にしたって仕方ないわね、あの人はト−ルを殺そうとしたわけじゃないんだから、あの人はキラを殺そうとしたって・・・)
「・・・ミリィ・・・」
「あ、気がついた?」
キラが目を覚ます。
「ずっと眠ってたわよ」

通路を歩いたフレイ。
こんなときもキラになにもしてやれない自分が悔しかった、どうして?どうして・・・ミリアリアよりは容姿もなんでも勝ってる自身はあった。
それなのになんで?なんで・・・ミリアリアにキラを取られたんだろう?キラを責めてしまう、キラだって悪いのよ・・・なんでミリアリアに行ったのよ、分からない?あの子はほんとはキラのことなんか・・・。
そう思っているうちキラの部屋に向かっていた、明日はアストレイに乗る、でもいまはそれどころじゃない・・・キラには私が必要・・・私にもキラが必要・・・。

「ト−ルが・・・そう・・・」
「まだ、まだ苦しいんだ・・・ごめん、君のことを思うと」
「アスランって人が来たわよ」
キラの表情が変わり曇る。
「アスランが?そう・・・くう・・・アスランもト−ルも僕にとっては大切な友達なんだ・・・だから・・・うう」
泣きながら告げる。
「ごめん・・・ごめん・・・ミリィ、ごめん!」
「ト−ルのことはもういいの、終わったことよ、それよりもいまはキラが大切よ、大好き」
キラは震えながらミリアリアに顔を上げる。
私は微笑むと。
「大丈夫・・・大丈夫・・・私が・・・いるわ・・・キラには私が・・・」
「く・・・ト−ル、僕は無力!守れなかっ!」
力も剣もあるのに僕は守りたいものを呪いにでもかけられてるように守れない、あのシャトルの少女もト−ルも・・・僕には神様はいないのか?いや・・・ミリィがいる、それでも・・・。
「キラ、私を貴方に上げる・・・だから泣かないで・・・」
ミリアリアはキラの顔を上げされるとキスした、キラも戸惑いながらも目を閉じミリアリアの背中に手を回し唇を押し付けてきた。
そして二人はベッドに入って行く。

339『明日』と『終わり』の間に・2日目・午前:2004/04/24(土) 22:22
 料理がしたいというフレイの願いを叶えてやるため、私は病院にあいつの仮退院を願い出た。幸いにも一日だけという条件で認めてもらうことができ、その翌日私はフレイを自宅に招待した。そして今、私達はキッチンでカレー作りの真っ最中である。

「―――よーし、あとはじっくり煮込むだけだな。なっ、簡単だったろ?」
「・・・確かに簡単だったけど、材料切るのはカガリが全部やっちゃって、私ほとんど何もしてない気がするけど・・・」
「お前に任せてたらお前の指が何本あっても足らないだろ?切るどころか切り落としかねない勢いだったし、あんなの見てたら気が気じゃないぞ」

 ピ〜ンポ〜ン!

「!ン?誰か来たのか?今日は私達以外誰もいないし、ちょっと行って来るよ。その間鍋の中の様子見といてくれ」
「ええ、分かったわ」

 ピ〜ンポ〜ン!

「煩いなぁ、今行くよ。じゃ、頼むな」
「・・・・・・」


「は〜い、どちら様ですか?」
「あ、訪問販売の者です。商品の実演に来たんですけど・・・」

 ちっ、セールスマンか・・・。忙しい時に限ってこういうのが来るんだよなぁ。まぁいいや、適当に相手してやるか。・・・それにしても今の声、何処かで・・・?

「お嬢さん、包丁とかいかがですか?こいつがまたグゥレイトな奴で今なら抗菌まな板とセットでおまけにもう一本・・・って、ゲッ!?」
「・・・何やってんだ、ディ・・・!ディ〜・・・、ディディー?」
「・・・ディアッカな」
「そう、それ!・・・で、何してんだお前?」
「いや〜、大事な仕事トチってまた給料減らされたんだわ!それでそれだけじゃもう食っていけなくて、会社に内緒で色々とバイトを・・・。!!いっ、いやいや、あっしはただのしがねえセールスマン、ディアッカなんて名前じゃありやせんぜ?」
「・・・いや、一目でばれてるから。無理してキャラ変えなくていいぞ?」

 そうか、こいつ今オーブにいたんだった。でもこいつ、すっかり丸くなったなぁ。一応元ザフトの赤服だろ?・・・いいのかよ、こんなんで・・・。

「とにかく、ここであんたに会ったのも何かの縁だ。頼む、包丁買ってくれ!このままじゃ今月のノルマを達成出来ねーんだよ!」
「ここで会ったのもって、ここ私の家だぞ?それに別に包丁には困ってないしさ」
「そう言うなよ、知らない仲じゃないだろ?あ、そうか。ならこの包丁がどれだけ凄いか見せてやるよ!」

 ・・・まずいな、長くなりそうだ。早いとこ追っ払うか。

「例えばこの分厚い電話帳もこいつなら・・・、〜〜〜ッ、あれ?〜〜〜くっ!・・・おかしいな、何で切れねーんだ?」
「・・・無理しなくていいぞ。どうせ切れても買わないから。・・・なぁ、いい加減帰ってくれよ?今日は人が来てるんだ」
「んあ、人?・・・ハハ〜ン、分かったぜ。取り敢えず、アスランには内緒にしといてやるよ。・・・だからその代わり包丁買ってくれよ」
「・・・何を勘違いしてるか知らないけど、今すぐ失せないとその包丁の切れ味、お前で試すことになるぞ?」


 ―――くそ、あれから大分時間が掛かったな。初めから『警察呼ぶぞ!!』って言えば良かった。手間取らせやがって、ディ〜・・・、何だっけ?ま、いっか別に。それより、もうカレー出来上がってるんじゃないか?

「すまん遅くなって!」
「カガリ遅〜い!何やってたのよー!?」
「まぁ、色々とな・・・。それより鍋の方は大丈夫だったか?」
「うん。そろそろ出来たんじゃないかしら?」
「そうだな。どれどれ〜・・・?」

 ・・・・・・えっ!?

「・・・フレイ、私がいなかった間に何かしたか?」
「別に、ただ様子見てただけよ?」
「・・・そうか」

 ・・・変色してるな、”赤”く・・・。それになんかツ〜ンとする匂いもするし・・・。あいつ、何入れたんだ?・・・取り敢えず、盛付けしてみようか・・・。

340ザフト・赤毛の虜囚 50:2004/04/25(日) 07:12
9.母親(ママ) 2/8
[ユーレン・ヒビキだな。ちょっと、ご同行動向願おうか]

私は安らかな気持ちで目を覚ました。ここはホテルの部屋。

私はコロニー・メンデルのホテルを点々としていた。私は、彼を必要としている。
彼が私のところへ来るのを、ずっと待っている。ホテルのドアが、そっと叩かれる。

「誰?」私は問いかける。
「メルデル、僕だ」
「ユーレン!」

私は、喜んでユーレンを部屋に入れる。
「どう様子は? 研究所はどうなっているの? フラガは何もしていない?」
「とりあえずは大丈夫だ。ヴィアも、所長に言って、しばらく研究所に
 寝泊まりさせてもらっている」

「ヴィアは、なんて言っている」
「君が宇宙港に来なかったことで心配している。僕が最後に会ったことになっているから。
 食事に誘った時のこと。色々、聞かれているけど。途中で別れたと言ってある」

「ヴィア…… ごめんなさいユーレン、あなたにも嘘つかせて」
「構わないよ。君のためだ」

ユーレンは、私にキスをする。それで、私は、その気にさせられてしまう。

「メルデル、そろそろ、ここも引き払わないといけない」
「ユーレン、出て行く前に…… して」

「おい、そんなことしてる場合じゃ」
「ずっと待ってたの。してくれなくちゃ嫌」

「しょうが無い、お嬢様だな」
「誰のせいよ」

私はユーレンを手放すことができない。ヴィアに返したくない。ユーレンにヴィアの匂いが
付いていないか確かめたい。なんて醜い心の私。

* * *

私とユーレンは抱き合いながらホテルを出た。その時、私達二人を数人の集団が取り囲んだ。
私は青ざめた。ユーレンが私をしっかり抱き寄せる。私も、ユーレンの胸に隠れるように抱きついた。

「ユーレン・ヒビキだな。ちょっと、ご同行動向願おうか」
「ユーレンは見逃して。あなた達の目的は私でしょ」私は必死の声をあげる。

「誰だ? この女」

戸惑ったような声。おかしい、私を連れに来た、フラガの雇った者達じゃ無いの?

「お前など関係ない。我々が用事があるのはユーレン・ヒビキだ」
「だけど、この女も見逃せないわ。私達を見たんだから」

メンバーの中の、学生とも思えるような少女が言った。私が見ても美しい少女。髪は、
ややウェーブがかった細い髪質、それを後ろに簡単に結んでいる。その少女は、顔に
似合わない冷たい瞳で私を睨みつけた。そして、懐に忍ばせた手に拳銃をチラリと覗かせた。
私を殺すつもりだ。

「よせ、カリダ。無駄に血を流すな。一緒に連れて行くんだ」
「カリダ?」 私は呟いた。

「分かったわ」カリダと呼ばれた少女は拳銃に触れた手を放すと、他の男と一緒に私達を
近くに止めてあった車に乗せた。

「一体何者だ?」
ユーレンは車の後部座席で、隣に座る、さっきのカリダという少女に聞く。
「フラガの手のものじゃないの?」私も問いかける。

カリダは車の中で遠慮無く銃を抜いた。
「黙ってて、汚らわしい悪魔の使い。そこの女、フラガなんて知らないわ。
 私達はもっと崇高なものよ」

「カリダ、お前は過激すぎる。財団の理想を忘れたか」助手席の男がたしなめた。

カリダは、謝るように言葉を返した。
「済みません。この言葉に誓います。青き清浄なる世界のために」

「ブルーコスモス!」ユーレンが恐ろしいことを聞いたように呟いた。

私も聞いたことがあった。コーディネータ排斥を謳い、密かに暗殺までしていると
噂される圧力団体のことを。私はユーレンに体を寄せて震えた。

341ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/25(日) 07:13
>>過去の傷
ミリィは、アスランには、そっけない。逃げてる? キラは、相変わらずですな。

>>『明日』と『終わり』の間に
ディアッカが、なんというか…… マニアックなMSばかり作ってたせいでしょうか。
ネメシス・フレイ様、煮込むの見ていただけなのに何が…… 次も楽しみです。

342過去の傷・118:2004/04/25(日) 21:02
「ミリィ・・・」
「もう・・・こんなときくらい黙っててよ」
私はそう言うとキラを抱きしめる。
「ごめん」
「私と結婚するんでしょ、もっとしっかりして・・・ト−ルはまだしっかりしてたわよ」
「うん、そうだね、もっとしっかりしないと・・・」
そう言うとキラは立ち上がる。
「その調子よ」
ミリアリアも立ち上がる。
「ミリィ・・・君は僕が守る・・・」
「なら・・・私も一緒に戦うわ・・・キラの想いの分まで・・・」
そしてお互いキスを交わした。
これでキラは完全に私の虜・・・。

ミリアリアとキラは気づかなかった、フレイが殺意ともとれる険しい表情で二人のキスをドアの隙間から見ていたのを・・・この表情はあれより怖い、父を守れなかったキラに怒りをぶつけたときの・・・それくらい怖い表情でミリアリアとキラのキスを見ていた・・・。

キラ・・・こんなに憎しみを覚えたのはパパが死んだとき以来だわ、なんで・・・なんでミリアリアとキスしてんのよ・・・馬鹿。

「ミリアリアさんとお会いしたのですね?」
「はい」
ラクスの部屋というより指揮官の部屋にアスランは来ていた。
「それでどうでした?」
「私はどうすれば・・・」
そう思うのは当然であろう、あの子の恋人を意思がないとはいえ殺してしまったのだから・・・これは戦争だからといって許されるものではないのである、たしかにアスランも軍人だ、何度もあった、しかし・・・殺した相手の恋人と同じ艦にいるというのは・・・。
「どうすればというのは?ミリアリアさんに対してですか?」
「はい・・・私はあの時キラを殺すつもりでした、しかし・・・結果としてキラの友人を・・・私は・・・」
「でも敵だったのでしょう?お互い・・・なら仕方ないのではありませんか?戦争なんですもの・・・少なくとも私はそう思いますわ」
これはキラ様にも言ったことです。
「そう言ってくださいますと私としても・・・」

343流離う翼たち・464:2004/04/25(日) 23:26
 対戦相手のダガーを前にしたフレイは緊張していた。何しろ初めての連合MSとの対戦であり、模擬戦としては初めてキラ以外のパイロットと戦うのだ。今まで自分がキラに勝てたことは無い。キラは自分を「強くなった」と言っていたが、それがどれくらいのレベルなのかを実感として捉えられたことは無い。何しろ測る目安となる相手がキラしか居ないのだから。航空機のシミュレーターでは流石にフラガやキース相手では勝負にならない。というかキラでも2人には負ける。
 だからフレイは、目の前に立つダガーが少し怖かった。初めてのキラ以外の味方との対決。同じ機体、同じ武装、乗っているのは同年代のナチュラル。こんな条件で戦ったことは一度も無いのだから無理は無いのだから無理も無いだろう。
 些か緊張しているフレイの耳に、通信機からアルフレットの声が聞こえてきた。

「お嬢ちゃん、準備は良いか?」
「は、はい!」
「ようし、それじゃあ模擬戦開始だ!」

 アルフレットの合図と共に相手のダガーが突っ込んでくるが、それはフレイの意表をつく動きだった。

「えっと、どういう事かしら?」

 相手はドタドタと走ってくる。その動きはキラどころか、これまで相手にしてきたデュエルやバスターよりも遙かに劣る動きであった。通常のジンやシグーでもこれよりは速く動くだろう。余りにも遅いその動きにフレイがかえって何かの罠かと警戒してしまう。だが、隙だらけのその動きにフレイは訳が分からぬままにライフルの照準を合わせ、トリガーを退いた。実際に弾が出るわけではなく、コンピューターが命中判定を出すだけなのだが、そのコンピューターは一撃で判定撃破を出している。

「えっと?」

 余りにも弱すぎる相手にフレイは状況が理解できなくなっていた。このダガーは何しに出てきたのだろうか。呆然とするフレイの下にアルフレットからの通信が送られてくる。

「ご苦労さん。一瞬だったな」
「あの、さっきのストライクダガーは何しに出てきたんですか?」
「ああ、この基地の新米パイロットだ」
「ああ、訓練生だったんですか」

 それなら納得だ。幾らなんでもあんな動きでは前線に出ても死ぬだけだろう。あれではヨーロッパで初陣したときの自分よりもさらに性質が悪い。ジンを相手に次々と撃ち落される様が目に浮かんでしまうほどだ。
 アルフレットはそれには答えず、次の相手を前に出した。

「ようし、次行け。勝ったら嬢ちゃん連れてデートさせてやる!」
「ちょ、ちょっと待ってください、何とんでもない事言ってるんですか!?」

 自分をダシに部下を煽りだしたアルフレットにフレイが文句を言うが、アルフレットはニヤニヤ笑いを崩さぬままにフレイの文句に答えた。

「お嬢ちゃん、昔から一宿一飯の恩って言うだろ」
「うぐっ」
「まあ全勝すりゃ問題ないんだから頑張りな。ちなみにうちのガキどもは俄然やる気になってくれたぞ」
「しょ,少佐、貴方って人は〜〜〜」

 フレイは歯噛みしてこの上官の性格を呪ったが、それで事態が好転するわけでもない。暫しブツブツと文句を言っていたのだが、とうとう観念して気持ちを切り替えた。確かに勝てば良いのだ。

「もう良いわ、何人でも来なさい。全員返り討ちにしてやるから!」

344流離う翼たち・作者:2004/04/25(日) 23:37
>> ザフト・赤毛の虜囚
むうう、カリダさんがいきなりブルコスに参加しているとは
でも、カリダさんってキラの叔母さんじゃなかったでしたっけ?記憶違いかな
いずれにしても、ユーレンピンチw

>> 過去の傷
フレイ様までダークサイドに取り込まれてしまった
ラクスの言う事だけはずっと変化してませんね

>> 『明日』と『終わり』の間に
ディアッカ、なかなかに多芸な奴。とうとう訪問販売まで
しかし、このカレーは一体。フレイ様が何もしてないのなら、カガリの材料の問題か?

345ザフト・赤毛の虜囚 51:2004/04/26(月) 01:59
9.母親(ママ) 3/8
[我々を利用するつもりか?]

「手荒な真似をして済まなかった。だが、どうしても来ていただいて話をしたいと思っていた」

私の前にいる男は、まだ30歳前後と若そうながらも、丁寧でいて、かつ、威厳のある口調で話している。
私とユーレンは、広いテーブルについている。後ろには、私達をさらってきた者達が、
かしこまったように突っ立っている。その中には、あの少女カリダもいた。

「もっとも、そうは言っても容易には納得しないかもしれんが、そちらの、お嬢さんには
 危害を加えないことを約束しよう」
「自分でした約束をお忘れなきよう。それと、こちらはミセスです」ユーレンが話す。

そう、私はユーレンに抱かれた時、フラガの指輪を外して、そのままにしていた。

「これは失礼した。確か、そなたの奥様とは違うようだが」
「ミセス・フラガです。私との関係は、ご想像にお任せします」

「フン!」 カリダが軽蔑したように小さく声を漏らすのが聞こえた。

「フラガ……、ということは、あのアル・ダ・フラガか。若い妻をもらったと聞いたことがある。
 そう言えば、顔に覚えがある」

私は、事もなげに話す男に、睨むような暗い瞳を向ける。

「ところで、本題に入りたいところだが」
「その前に、もう一つ約束をしてもらいたいことがあります」

「ほう、この状況で、さらに要求するとは」
「私も馬鹿ではありません。あなた達ブルーコスモスが気づいていること、真に望んでいることが
 何なのか、私も知っているつもりです。それが、分かった上で、約束をお願いしたいのです」

「なんと! うむ、言ってみたまえ」
「私とミセス・フラガが、あなた達ブルーコスモスに拉致されていることを公表してください」

「なぜ、そんなことを?」
「私達二人と、彼女の夫、フラガ氏には、あるトラブルが起こっています。このまま二人が
 行方不明になれば、私の研究所にフラガ氏の圧力がかかります。
 私の妻に危害が加わる恐れがあります」

私は不安げにユーレンの顔を見た。ユーレンは真剣そのものの目付きだった。私の心はざわめいた。

「我々を利用するつもりか?」
「ありていに言えばそうです」

後ろに立っている男達が、どよめいた。カリダは、もう手を懐に忍ばせている。

「カリダ、やめい! まったく、お前は何度言ったら分かるのだ!」

男の一喝で、カリダの手が止まった。その後のカリダの顔は、さっきとは違う、まるで、
叱られた猫のように、しょぼんとしていた。

「いいだろう、聞いてやろう。それにしても、自分の立場さえ危ういというのに、この場に
 居ない妻の身を案じ、しかも、我々を利用することを公然言い放つとは……
 大した自信だ。変わった男だな」
男は関心したように呟いた。

「いえ、逆です。私の力など限られています。この場にいないからこそ、こうして、あなた方に
 妻を任せるのです。自分と、そして、ここにいる私の愛しい人は、自分自身で守ります」
ユーレンは、私の肩に、そっと手を置いた。

「ユーレン……」
私は肩に置かれたユーレンの手に、自分の手を重ね、ユーレンを見つめて言葉をかけた。
ヴィアのことだけを想っていると不安だった。私のこと、やっぱり……。

「よし、約束しよう。そなたの奥様の身は保証すると。このウズミ・ナラ・アスハの名にかけて」
「頼みます。ウズミ様」

ここは、オーブ。私達はL4コロニー・メンデルから連れ出され地球に降りた。
そして、オーブの、とある場所に監禁された。このウズミ・ナラ・アスハは、オーブの王族の血筋の人。
だけど、ブルーコスモスに密かに関っていた。何を目的にしているのか、私には分からない。
ただ、私には、自分とユーレンが、どうなるのかということだけが気がかりだった。
そして、その心配も今消えた。ユーレンは私を守ってくれる。

そして、もう一つ。ウズミの言葉の後、うって変わったように、おとなしくなり、切なげな瞳で
ウズミを見つめるカリダの姿が気になった。

(カリダって、ウズミのことが……)

346ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/26(月) 02:01
カリダは公式年表ではヴィアの妹ということになっていますが、クローン・フレイの
話を考えていった時は、それが明らかになる遥か前で、その時点で最初からカリダは
ブルーコスモス所属のつもりでした。その他、ストーリーの都合もあり、本SSでは、
妹設定は無視させてもらいます。他にも、色々都合があって、公式年表から改変を加えています。

>>過去の傷
ミリィも、そう言ってるんだから、キラしっかりしないと。で、フレイ様とは?
アスランは、直接ミリィと話しないんですね。結局、「星のはざまで」でも絡みませんでしたし。

>>流離う翼たち
なんかレベルが違う気が。フレイ様、後は全勝するという己自身のプレッシャーに勝てるかどうかですな。

347過去の傷・119:2004/04/26(月) 09:51
「あ、僕、少し出かけてくるよ」
そう言うとキラは出て行った。
その数分後。
キラ遅いな・・・どこ行ってるんだろ。
あ、来た。
「・・・キラ?・・・!!!」
入ってきたのは黒い髪の少年ではなく赤い髪の少女だった。
「フレイ・・・ちょっと勝手に入ってこないでよ」
しかしフレイはミリアリアの言葉には耳をかさずに強引に部屋に入ってきた、あきらかに怒りの表情を浮かべて。
「なによ」
「うるさい」
一言でミリアリアを黙らせると辺りを見渡す。
「この美容液も化粧水も私のじゃないんだけど、あんたのでしょ?部屋から出しなさいよね」
「どうして私がそんなことしなくちゃなんないのよ」
「ここの部屋は私とキラの部屋よ!ラクスの許可も取ってるの!」
苛立たしげに叫ぶフレイ。
たしかに・・・キラ・ヤマト、フレイ・アルスタ−専用個室となっている。
「早く出て行きなさいよね!・・・ちょっと・・・なにいつまでもなれなれしくキラのシ−ツかぶってんのよ!」
フレイはミリアリアのいる寝室まで来るとミリアリアのかぶっているシ−ツを強引に奪い取ろうとする。
「いや、やめて!」
ミリアリアも必死に抵抗する・・・。
女同士の奪い合いとなるが、フレイの方が若干、力が強いのかシ−ツを強引に奪い取る。
「・・・・・・」
「だいたいあんたなにやってるの?仕事しなさいよね、それでも軍人なの!?」
「それはあんただって・・・」
「私はモビルス−ツ操縦をカガリとやってるわ、あんたはなにしてんの?ここで」
「私は・・・CICはダコスタさんが・・・」
声が消え去りそうなくらい小さなミリアリアの声、しかしフレイは容赦ない。
「結局はその人に任せっきりなんじゃないの、モビルス−ツも歩くことすらできない、なんの役にも立ってないじゃない、情けない女だわ、はっきり言ってあんたア−クエンジェルにいた頃の私と同じだわ、さらにキラまで騙して利用しようとしてるなんてほんとあんたって救いようがない女だわ」
利用という言葉に反応した。
「違うわ、私・・・」
「なにが違うのよ!私が知らないとでも思ってるの!?」
「違う、最初は・・・でもいまは違うわ!だいたい・・・フレイになにが分かるのよ!ト−ルが死んで悲しい私の気持ちなんて・・・」
「他人でしょ?恋人といっても他人じゃない」
他人?この女は・・・。
「なんですって!?もういっぺん言ってみなさいよ!」
「ええ、何度でも言ってるやるわ、ト−ルは他人よ、肉親じゃないの!」
「!」
「私にはパパもママもいないわ、あんたにはいるじゃない!あんただけ寂しいなんて勝手に思わないでよ!!!いいかげんにしなさいよね!」
そしてキラが戻ってきた。
「キラの馬鹿!」
「フレイ!?」
「あんたミリアリアに騙されてるのよ!?」
終わったわ・・・。
「キラの嘘つき!あんたなに考えてるのよ!ええ!あんたは私が好きなんじゃないの!?」
フレイの迫力にキラも圧倒されてるみたい。
「あんたには私がいないと駄目なんだから!私がいないとなにも出来ないくせに!この馬鹿!!!キラ、黙ってないでなんとか言いなさいよね!私はあんたが好き!あんたはどうなの!?」

348キラ(♀)×フレイ(♂)・42−1:2004/04/26(月) 17:51
絶望と希望が、まるでコインの裏表のように目まぐるしく入れ替わった夜が明けた。
サドニス島二日目。爛々と輝く太陽は、東の海を赤く染めながらゆっくりと立ち昇る。
その太陽が穏やかに本島普天に鎮座した時分、安ホテルの出口から一組のカップルが
のそのそと姿を現した。キラとフレイである。
二人は互いに身体を寄せ合いながら、まるで徹夜明けのリーマンのような寝不足の
顔を覗かせている。今の時刻は正午過ぎ。一見、お寝坊さんの身分を詐称しながらも、
実は一晩中情事に明け暮れており、ほとんど一睡もしていなかったからだ。
前日の恐怖体験のトラウマを癒やすかのように、はじめてアークエンジェル以外の場所で
濃密な一夜を過ごした二人の共通の感想は、「部屋にシャワー室があるのって便利」である。
いやはや、フレイはともかくキラまでもが、随分と思考が廃れ始めたみたいだ。

集合時間までまだかなり間の合った二人は、思考をアンプラトニック(自堕落モード)
から、プラトニック(フレッシュモード)へと切り替え、アミューズメント・パーク
で時間を潰すことにした。



「わぁい。遊園地なんて何年ぶりかしら」
ホテルからバスを二つほど乗り継いで、二人はパークのゲート前に辿り着いた。
意外とお子様ランチなキラは、遠目からでも視認可能な大型観覧車の存在に瞳を
キラキラと輝かせていたが、それとは逆にフレイは退屈そうに欠伸を噛み殺した。
こんなご時世だから、客足もガタ落ちしているだろうし、採算が合わずに営業停止して
いるだろうと高を括っていたフレイだが、彼にとって不幸(キラにとって幸い)
なことに、悪魔の壁が開かれる前後の日付は、パークは臨時営業していたのだ。

「流石に中は空いてるわね。これなら待たずに済みそうだわ」
フリーパスを買い込んで、全乗り物制覇に浮かれて「ルンタッタ♪、ルンタッタ♪」
とワルツのダンスを踊りながら鼻歌を演奏するキラに、フレイは軽く肩を竦める。
「なんで、こうも極端なのかね…」
今のキラのドリィーミングな姿と、彼だけが知る彼女のアダルティックな
夜の顔とのギャップの激しさに、フレイも些か戸惑いを感じざるを得ない。
「早速乗り物に乗ろうよ」「その前に軽く腹ごしらえが先だろう」
と意見が真っ二つに分かれていた二人の前に、デート中のトール達カップルが姿を現した。


「あっ、ミリィ達も来ていたんだ………って、どうしたの二人とも?」
軽い笑顔で話しかけたキラとは打って変わって、二人は警戒心バリバリで、キラ達
…というよりはキラの隣にいるフレイを睨んでいる。彼氏の影にそそくさと隠れた
ミリアリアは小動物のように脅え、トールは身体全体から敵意を発散させている。
「それじゃ、僕は何か飲み物とフードを買ってくるよ」
脅怒の相反する二人の視線を軽く受け流したフレイは、この機を幸いにと自分の意見を
押し通すことにして、その場を離れていく。フレイを過剰に意識しているトール達とは
対照的に、フレイの方は二人に一瞥もくれることなく、彼女達の存在を無視していた。

くそっ!キラが関わらなければ、俺らのことは眼中に無しかよ!?
てっきり二人でいることを皮肉られて、嫌味の一つでも投げ掛けられるのでは
身構えていたトールは、シカトされた事に腹を立てて内心で歯軋りした。
フレイと天中殺に近い相性の悪さを誇るトールは、彼がどういう行動をとっても
負(マイナス)の感情しか刺激されないみたいだ。

349キラ(♀)×フレイ(♂)・42−2:2004/04/26(月) 17:51
本当に二人ともどうしたんだろう?
トールがフレイを嫌っているのは何時ものことだけど、どうしてミリィまで…。
そういえば、ミリィ達の格好が昨日と全く同じだけど、それと関係あるのかな。
キラは小首を傾げたが答えは出てこない。
営倉でのフレイと二人の確執を知らないキラにとっては、解けない謎だった。
それから、三人のいる空間(スペース)に間の悪い沈黙が続いた。
鈍感なキラにも、フレイとミリィ達の間に何かあったことぐらいは簡単に察せたが、
いくら何でも直接問うのは躊躇われた。
逆にトール達は、キラに対する一種の負い目のような感情に囚われてしまい、
その業が彼らを金縛りにして、この場から立ち去らせるのを躊躇させていた。
「やっぱり、皆ここに来ていたんだ」
この奇妙な三竦み状態を打破したのは、さらなる第三者グループの出現だった。


「カズイ、サイ……それに、カガリ?」
愛想笑いに近い笑顔を浮かべているカズイ。ポーカーフェイスを維持しているサイ。
何故か不貞腐れたような表情でソッポを向いているカガリ。キラが振り返った先には
私服姿の三人が三者三様のポーズで佇んでおり、あまり日常での接点を感じさせない
奇抜なトリオの発生にキラは驚きの声を上げる。
「ははっ…。こんな偶然もあるんだね。
これでフレイがいたらヘリオポリス組全員集合じゃないか?」
「フレイは今、場を外しているだけよ。もうすぐ戻ってくると思うけど」
なんとなく沈滞していた場の雰囲気を和らげようとしたカズイの一言は、逆効果みたいだ。
フレイの存在を確認した刹那、サイは態度を硬化させ、カガリは軽く舌打ちする。
これを契機として、停滞していた場は大きく乱れ始めた。


「キラ、行こうぜ」
「えっ!?ちょ…ちょっと、カガリ!?」
唖然とするキラや周りの様子には全く頓着せずに、カガリは大胆にもヘリオポリス組
環視の前でキラの腕を掴むと、強引にキラを引き摺り出した。
どうやら、鬼の居ぬ間に何とやらで、この好機にキラをフレイから掻っ攫う腹らしい。
「カズイ、行きましょう」
次に行動を起こしたのはサイだ。こんな場所でフレイと顔を合わせたくなかった彼女は、
極めて消去法的に道連れを選択すると、キラ達とは逆の方向へ姿を消していった。
「ねぇ、トール。これって?」
ミリアリア達が呆然としている間に、場は激変し、二人だけがこの場に取り残された。
さらには、極めて間の悪いタイミングで、買出しに出かけていたフレイが戻ってきて、
トール達にとって最悪のフォーメーションが組まれることになった。

「ねぇ、君たち。キラがどこに行ったか知らないかい?」
トレイ一杯に食料を抱えたフレイは、キョロキョロと辺りを見回してキラの不在を
確認すると、あたかもそれだけがミリアリア達の存在意義であるかのように、
初めて彼の方からトール達に声を掛けてきた。
そのフレイの傲慢さにカッとなったトールは彼の質問を無視しようとしたが、
「キラならカガリが連れて行ったわよ」
揉め事はゴメンとばかりに、ミリィがやや後ろめたそうな表情で、情報をリークする。
「ふ〜ん」
「ご…誤解しないでよね。本当にカガリが勝手にやったことで、私たちは関わっていない」
意味深な目付きでミリアリアを眺めるフレイに、ミリィは必死に弁解した。

350キラ(♀)×フレイ(♂)・42−3:2004/04/26(月) 17:52
「おい、ミリィ!」
先の彼女の言い草は、トールにとってあまり気持ちの良いモノではなかった。
妙な喩えだが、虐めっ子の魔の手から必死に逃れようとした気弱な級友の逃走先を
売り渡した(チクった)悪辣な女生徒の姿とダブってしまったからだ。
トールはミリアリアの態度を嗜めようとしたが、彼の腕を強く掴みながら、縋るような
瞳で自分を見上げるミリィの脅えた表情を見せられたら、何も言えなくなってしまう。
これが、あのミリィかよ…。
かつて、親友のキラの為に何が出来る…と共に語り合った彼女はもういない。
今のミリィから感じられるのは自己保身だけだ。あんな脅しを受けた後だから、
無理からぬことかも知れないが、トールは眩暈に似た苛立ちを覚えた。


「なるほどね」
トールの内心の葛藤などお構い無しに、フレイはキラ拉致事件をどう片付けるか思案する。
それから何を思ったのか、フレイは二人に近づくと、トールの掌の上に二人分の食料と
飲料の置かれたトレイを押し付けた。
「何のつもりだよ?」
「情報料だよ。キラに振られてしまった僕にはもう必要のないものだからね。
ここは大人しくパークから引き上げることにするよ」
元々遊園地でのお子様デートにさほど未練を抱いていなかったフレイは、トール達が
拍子抜けするぐらい、あっさりとカガリにキラとのデート権を譲渡することにした。
このフレイの余裕は、例のお姫様救出ミッションをクリアした件が大きかった。
単なるデートイベントと命懸けの救出イベント。世界が正しく出来ているのなら、
どちらがより多くヒロインの好感度を得られるかなど、比べるべくもない。
まあ実際は、逆にますますキラのフレイへの疑惑度が高まっていたのだが、
流石のフレイも読み違えていた。というか、悪魔的にキラの思考と心情を、
完璧に把握・操作していた初期の頃に比べれば、最近のフレイの言行は空回り
しているケースが多々見受けられる。
人間とは、己から遠く離れるほど客観的な判断が可能で、逆に自分に近づくほど、
情が混じって正確な判断が出来なくなるというが、それだけキラの存在がフレイ
の裡に深く浸透しているという証なのかも知れない。


「本当にこのまま黙って手を引くつもりなのか?」
「それじゃ何かい。君たちは僕がキラを追いかけて、パーク全体が注目するほどの
派手な修羅場をカガリ君と演じるのを期待しているわけかい?」
「そ…そんなわけじゃ」
トールは言葉を詰まらせる。彼は別にトラブルを望んでいるわけではなく、先の件で
フレイのキラへの異常な執着心を思い知らされていたので、キラ誘拐犯(カガリ)への
寛容さを不審に思っただけだ。そのトールの疑惑に感応したのかは不明だが、フレイは
彼が感じているキラの恋愛観(二股理論)について簡単に説明した。

「最近、何となく気付いたんだけどね。どうもキラは、僕とカガリ君をそれぞれ
別の役割に分けて、器用に両天秤を掛けているみたいなんだ。
強いて呼び方を定めるのなら、プラトニックとアンプラトニックってところかな?」
「プッ…プラトニックとアンプラトニック!?」
「どうやら、キラの中ではカガリ君はプラトニック担当らしい。つまり、こういうお子様
…もとい健全なデートをするなら、僕より彼の方が楽しめるってことだろう。
逆に僕はアンプラトニック担当さ。何がアンプラトニックかは想像にお任せするよ。
もしかすると、僕はキラに良いように身体だけ利用されているのかも知れないね」
そのフレイの物言いにトール達は絶句した。彼の言い分に全く理がないわけではないが、
本来なら到底、男子の側から主張されるような台詞ではない。

351キラ(♀)×フレイ(♂)・42−4:2004/04/26(月) 17:53
「おい、フレイ。何時も自分の立場だけ主張して、相手を一方的な加害者にしやがって。
言うに事欠いて「身体だけ利用されていた」だぁ!? それはテメエだろう!?
お前、今日までに何人の女の子を食い物にしてきたと思ってるんだよ!?」
ある意味、今のトールは自分の彼女(ミリィ)をフレイに人質に取られたようなもので、
キラに関して静観のスタンスを貫こうとしていたが、その誓いは、早くも破られた。
「だ…駄目よ、トール!」
沸騰してフレイに踊りかかろうとするトールをミリアリアは必死に宥めようとする。
ミリィはフレイを怖がっていたし、何よりも、どうせ最終的には、また例の口八丁手八丁
で言いくるめられるのが目に見えていたからだ。無論、トールとて馬鹿ではない。
彼女の予測している顛末ぐらい弁えていたが、それでも言わずにはいられなかったのだ。

「僕は今日まで一目惚れされたことはあっても、一度も一目惚れしたことはなくてね」
先の二人の期待(?)に応えてか、フレイがまた何やら珍妙な事を宣い始める。
「はあっ!?」「だから?」
ミリィは素っ頓狂な声を上げたが、トールは軽く眉を釣り上げただけで鉄面皮を守った。
流石にトールもいい加減フレイの遣り口に慣れてきたので、この後、話しがどう展開
するにしても、一々驚きのリアクションなど取ってはいられないということだろう。
「僕は超能力者ではないからね。その娘が自分に合うか否かは実際に付き合って
みなければ判らない。趣味や役割分担、一緒にいて楽しいか、さらには身体の相性
などを色々と試してみた結果、互いを不幸にすると判断したから別れたまでさ。
勿論、これは僕が大変に我儘なだけなので、彼女達には何の落ち度も責任もないけどね」

やっぱり、フレイは確信犯的なプレイボーイだわ。
彼の恋愛スタンスを聞かされたミリィは、今更ながらにフレイは悪辣だと思った。
確かに互いを知り合うのは大切な事だろう。けど、男の側の理論が勝ちすぎている。
男と女では失うモノの大きさが違うのだ。試される女の側としては溜まらない。
「それで、キラはお前の適正審査に合格したというわけか?」
その彼女の想いを代弁するかのように、トールが口を挟んだ。
「ああ、彼女は限りなく僕の理想に近いね。特に身体の相性は最高だよ」
再びミリアリアが絶句するぐらい、フレイはいっそ抜け抜けと男側の理(利)を主張する。
「それが納得いかないんだよ。許婚がいて、その上で、選り取り見取りの立場のお前が、
どうしてあれだけ嫌っていたコーディネイターのキラを選ぶんだよ!?そもそも…」
「おいおい、人を好きになるのに一々尤もらしい理由がないといけないわけかい?
それなら君は、ミリアリアを好きになった訳を原稿用紙800字以内で語ってみせろよ。
話の筋や思考に矛盾がないか、一つ一つネチネチと添削してあげるからさ」
トールが、前々から感じていた疑問をぶつけたが、反って茶化されてしまう。
暖簾に腕押しというか、フレイには何を言っても、霧散霧消されてしまうみたいだ。
「悪いけど、これで失礼させてもらうよ。君達だって僕と議論しても全然楽しくないだろ?
他人の色恋沙汰よりも、もっと自分達自身の幸福を追求した方が人生は楽しいと思うよ?」
フレイは再度、最後通告を突きつけると、二人を振り返ることなくパークから出て行った。


「ええい、くそ!」
トールはフレイから手渡されたトレイの中身を、勿体なくもゴミ箱の中に放り捨てる。
食べ物を粗末にするのは気が引けたが、「キラの件は観て見ぬ振りをしろ」とまるで
フレイに買収されたかのような嫌な錯覚を覚えたからだ。
トールは先のミリィの態度を苛めに喩えたが、それは彼自身にも適応可能な事象だ。
「苛めというのは、積極的に参加しなくても、ただ黙って見ている者もまた同罪である」
小さい頃から正義感が強く、竹を割ったように真っ直ぐな性格だったトールは、
そう信じて、加担はおろか、周りの虐めを見過ごした事さえも一度もない。
故にヘリオポリスの学園時代、単にコーディというだけで村八分状態だったキラを、
サイと共に自分達のゼミに招いて、彼女と交流を深めてきたのだ。

352キラ(♀)×フレイ(♂)・42−5:2004/04/26(月) 17:53
フレイがキラを害しようとする敵なら、トールは刺し違えてでもフレイと戦う覚悟を
持てただろう。けど、色々と腑に落ちない点はあるにしても、フレイは今の過酷なキラの
心に安らぎを与えている彼氏なのだ。客観的に見れば、その構図を揺さぶり無用な揉め事
を起こしている闖入者は自分達の方だろう。それもトールが踏み切れない理由の一つだ。
何よりも…。
トールはチラリと自分の片腕に抱きついている愛しい人(ミリィ)の姿を見下ろす。
「この件に深入りするつもりなら、君達自身の破滅を賭けて僕に挑んでくるんだね」
どうあっても、彼女を巻き込む訳にはいかない。もう他人同士ではない自分達なのだから。
けど、俺はそうやって理由を付けて、奴から逃げ、キラを見殺しているだけじゃないか?
今まで、矛盾や葛藤とはさほど無縁に生きてこられた少年は、人生で初めて抱える板挟み
の問題に、そう心を痛めて自問自答したが、この場で回答は得られなかった。



「ひいっ!?カガリぃ!で…出た、出た!!」
「落ち着けって、キラ。単なる作り物じゃないか」
トールとミリアリアの二人が、まるでカガリの尻拭いのようにフレイと相対していた頃、
その事態を招いた張本人達は、暢気にお化け屋敷でデートと洒落込んでいた。

「ちょ…ちょっと、カガリ、離してよ」
左手首を掴まれたキラは、両足で踏ん張ってその場に留まろうとしたが、ズルズルと
カガリに引き摺られていく。その様は、まだ遊び足りずに帰宅を嫌がって駄々を捏ねる
愛犬の手綱を必死に引っ張る飼い主との構図と似ていなくもなかった。
「いいから大人しく付いて来い、キラ。これはお前の為でもあるんだぜ」
「えっ!?」
キラはキョトンとした表情で、意表を突かれたかのように、カガリの顔を覗きこむ。
「カズイとか言ったけ?あいつ、どうやら優男に振られた許婚(サイ)に気があるらしい。
サイの姉ちゃんも元婚約者(フレイ)とは顔を会わせたくないだろうから、俺たちが
いなくなれば、二人だけでしけ込む公算は高いぜ」
「カズイがサイを?」
「多分な。俺は午前中、あいつらと一緒に行動していたから何となく判ったんだ。
二人がくっついてくれれば、お前にとっても有難い話じゃないのか、キラ?」
胡散臭そうな表情のキラに、カガリは再度、建前の口上を口にする。
カズイのサイへの恋慕に気付いたこと自体は嘘ではないが、本来ならカガリは他人の
色恋沙汰を影で応援してやるほど殊勝な性格ではない。欲しい物(者)は、他人から
与えられるのではなく、自分で奪い取るのが、彼の人生哲学だからだ。
今回だけ例外的に、キラを説き伏せるための方便として、相互利用するつもりだ。


カガリの提案を聞いたキラは、その場に足を止め思案顔で俯いた。
確かにサイが新しい幸せを見つけてくれれば、キラの罪悪感も幾分薄まるのではあるが…

カガリ、いくら何でもそれはチョト無理があるんじゃないの。
改めてカズイの姿を心の中に思い浮かべたキラは、内心でキツイ判定を下した。
もし、キラがトリビアの泉に出演していたら、へぇボタンを連打していただろう。
意中の高嶺の花に振られたヒロインが、身近にいる自分を慕っている平凡な男性と
くっつくというシチュもまた恋愛物の黄金の不文律ではあるが、現実としてどうだろう。
キラは、カズイを友人としてはともかく、異性としては全く評価していなかったので、
フレイの許婚だったサイが、いきなりカズイに転ぶとは思えなかった。
キラの男性基準は、物心ついた時から最も彼の身近にいた異性(アスラン)をベース
としていたので、理想が高くなってしまうのは仕方が無い傾向なのかも知れない。
ただ、アスランほど優秀で誠実な男性は極めてマレ(稀有)な存在であり、彼を測りに
して篩いにかけられたら、ほとんどの男性にとっては、堪ったものではないだろう。

353キラ(♀)×フレイ(♂)・42−6:2004/04/26(月) 17:54
「でも、そういう事なら仕方ないよね。サイには悪いことしちゃったしね」
内心でサイ・カズイカップルの不成立を予言したキラだったが、まあ、それはそれ…と
いうことで、カガリの提案に乗り、デート相手をアンプラトニックからプラトニックの
パートナーへの切り替える事にする。
キラは神妙そうな表情を取り繕うとしていたが、どうしてもニヤついてしまう。
カガリの強引な拉致行為自体は、恋人と逃避行…というシチュに密かに憧れていたキラ
は実はあまり悪い気はしていなかったし、フレイの予測通り、彼に疑惑を覚えて以後は、
ベッド以外の場所では、カガリの方が心が休まるのは確かな事実だ。
ただ、このままだと後(フレイ)が怖そうなので、一応の抵抗を見せていたキラだったが、
カガリの甘言を渡りに船とばかりに、一時の快楽の為に悪魔に魂を売り渡すことにした。


「うらめしやぁ〜!」
「ひいっ!?カガリぃ!で…出た、出た!!」
薄暗い館内の中で、お岩さんに扮した幽霊が、まるでクストーから打ち上げられるグーン
のように、井戸の中からピョーンと飛び出し、キラは涙目になってカガリに抱きついた。
「こらっ、くっつくな、キラ!…って、お前、本当に怖いのか、これが?」
自分に胸元に必死で取り縋るキラをカガリは呆れたような瞳で見つめる。
本物の戦場で生命の遣り取りを体験している者が、何でこんな作り物のお化けを
恐れるのか、カガリには理解不能だった。

お化け屋敷を出た二人は、次はジェット・コースター、絶叫マシンなど定番の乗り物
を次々と制覇していく。流石に今度はキラも怖がることはなかったが、キャーキャー
叫んで心底楽しんでいるようだ。
本当に、何でこんな物を楽しめるんだ?子供騙しも良いところじゃないか。
戦闘機での空戦経験のある彼にとっては確かにそうだろうが、それはキラにも言える
ことの筈なのに、キラはまるで飽きること無く、カガリの手を掴むと、逆にカガリを
引き摺って次の乗り物へと突進していく。
もしかして、俺はあの悪魔にキラのお守りを押し付けられただけなのか?
十個以上の乗り物を盥回しされたカガリは、自分からキラを拉致した分際で、
そんな自己中な被害妄想に陥るほど、心身共にヘトヘトに疲れ切ってしまった。


「はぁ、はぁ、やっとこれで終わりか」
二人が最後に辿り着いたのは、パーク目玉の大型観覧車だ。今現在の時刻は夕暮れ時。
この時間帯に、観覧車の頂点付近から見られる夕焼けは絶景で、恋人たちが甘い一時
を過ごす為のデートスポットとして定評がある。
観覧車は緩やかに上昇し、ここへ来てようやくカガリは一息つくことが出来た。
「ほら、海岸線が見えてきたぞ、キラ?」
カガリは窓の外を指差したが返事はない。先程までのパワルフさが嘘のように、
キラは押し黙ったまま、軽くカガリにもたれ掛かり、身体を預けてきた。
「おい、キラ……」
キラの身体を揺すりかけてカガリは言葉を飲み込んだ。ここに来るまでキャーキャー
騒ぎ続けて遊び疲れたのか、キラはカガリの肩に頭を乗せたまま熟睡していた。
「しょうがない奴だな、まったく…」
カガリは軽く苦笑する。こうしてキラのあどけない寝顔や、先までの子供のように
楽しそうにはしゃぐ姿を見ていると、自分の心労にも意味があるように思えてきた。
「でも…」
さっきから、キラのふくよかな肢体の感触がカガリの心を掴んで離さない。
彼女の豊かな胸の谷間や、ミニスカートから覗かせる白い太腿を至近で捉えたカガリは、
キラを妹ではなく性の対象として意識してしまいゴクリと生唾を飲み込んだ。
「どんなに幼そうな表情をしていても、こいつはもう女なんだ」

354キラ(♀)×フレイ(♂)・42−7:2004/04/26(月) 17:55
次の瞬間、ハッと我に返ったカガリはブンブンと頭を振って、煩悩を押しやった。
「いけない、いけない。何、考えてるんだ。こいつは俺の妹なんだぞ。それを…」
それでもカガリは想像する。
もし、メンデルを訪ねる事無く、あの忌まわしい出生の秘密を知らなければ、
自分達は今頃どうなっていただろう。
ひょっとすると、彼はキラを実の妹とは知らずに、異性として惹かれていたかも。
今現在も時たま妹である現実を忘れてしまいがちなので、十分に有り得る話しだ。
「何、やってるんだろうな。俺は…」
カガリは溜息を吐いた。こんな子供染みた真似をしてキラを拉致し、一時的にフレイ
から引き離したところで、単なる対処療法でしかなく、抜本的な解決にはならない。
最終的には、キラは自分ではなく、またあの悪魔の元へと戻っていってしまうのだから。
けど、他に方策が無いのもまた事実だ。現在の所、自分はキラに横恋慕していると
AA内では見られており、そんなカガリがフレイの危険性を訴えた所で、単なる痴話喧嘩
の延長としか思われないだろう。或いは自分がキラの兄である事実を打ち明けられれば、
キラも耳を傾けてくれるかも知れないが、それはキラ自身の為に暴露出来ない真実だった。
「何で、あの悪魔なんだ。本当にキラを大切に想ってくれている人間が、
キラを支えてくれたなら、俺が余計な心配をする必要性はなかったのに…」
カガリはキラの本当の想い人であり、今現在キラと対立しているアスラン・ザラの存在を、
この時はまだ把握していなかった。


「うっ…う〜ん」
突然、彼是悩んでいるカガリの隣にいるキラが僅かに身じろいだ。
「おっ…おい、どうした、キラ?」
キラは脂汗を掻きながら、ウーン、ウーンと苦しそうに唸っている。
もしかすると、昨夜、マイケルに襲われた時の悪夢を見ているのかも。
「だ…駄目。フレイ。……は、お尻は嫌だよぅ………」
「へっ?」
どうやら違ったみたいだ。カガリは、最初は羞恥で傷のない側の頬を赤く染め、
さらには怒りで顔全体を真っ赤に染めた。
「あの野郎、キラに一体何しやがった!?」
或いはカガリのフレイへの憎悪が殺意に転換されたのは、この瞬間だったかも知れない。
カガリ自身は特に意識していなかったが、彼はかなりのレベルのシスコンだった。

355キラ(♀)×フレイ(♂)・42−8:2004/04/26(月) 17:55
一方、その頃、ジブラルタル基地には、宇宙から降下したアスランとニコルが到着して、
クルーゼ隊の赤服チームが全員集結した。先着のイザーク、ディアッカコンビと
久しぶりの会合を果たしたアスラン達だが、場の雰囲気はあまりよろしくなかった。
原因は、彼らの隊長であるクルーゼが、イザークの直訴を受け入れて足付き討伐チーム
を編成した際に、そのリーダーにアスランを指定してしまったからだ。

「俺…いえ、私がですか?」
「そうだよ、この任務が勤まるのは君しかいないと私は思っている。
期待しているよ、アスラン」
クルーゼは仮面の下に、他者からは窺い知れないある種の笑いを浮かべると、
彼らの間に不和の種をばら撒いて、そのまま会議室から出て行った。
「大出世だな、アスラン。いや、今はザラ隊の隊長か」
クルーゼの撒いた種は早くも発芽し、早速イザークがアスランに絡んできて、
アスランは軽く舌打ちする。
「クルーゼ隊長の命令だから、仕方なくお前を隊長と敬ってやるが、隊長殿の失策は
隊全員の評価に関わってくるのでな。以前、独断でストライクを捕獲しようとして、
結局、取り逃がしてしまった時のような失態は見せてくれるなよ」
「イザーク!」「くっくっく…」
ニコルは大声を張り上げてイザークの非礼な態度を嗜めようとし、明らかに今の事態を
面白がっているディアッカは、瞳に陽気そうな色を浮かべて笑いを押し殺した。
クッ、コイツ。
イザークの慇懃無礼な態度に、アスランはうんざりした様な表情を啓かした。
彼は何時もそうだ。アカデミーの時から何かに付けてアスランに執拗に絡んできたのだ。
野心剥き出しで、自分に対抗意識を燃やすのも結構だが、その前に、少しはそれに
相応しい実績をあげてみせたらどうなのだ。
砂漠での戦闘で、彼らが何ら戦況に寄与することなく、反って味方の足を引っ張って
バルトフェルト隊の全滅に貢献したという基地内の噂はアスランの耳にも届いていた。
そういえば幼年学校時代も、今のイザークのように、妙に自分に敵対心を抱いている
上昇志向の強い級友がいたのをアスランは思い出しが、名前までは思い浮かばなかった。

結局、「善処する」と、まるで誠意のない政治家のようなコメントをイザークに返した
アスランは、心配そうに声を掛けるニコルを無視し、クルーゼに続いて会議室を後にする。
キラ…。
既に彼の心の中には、イザークへの苛立ちなど完全に消失している。
かつての級友…いや、大切な想い人への複雑な想いに満ち満ちていた。
キラ、俺は再びお前と戦わなくてはならないのか…。
「昨日の友は、今日は敵」というわけでもないだろうが、その運命の理不尽さに苦悩する。
自然、キラの良心を悪用し、兵器として利用しているとしか思えない足付きの軍人共や、
その非力さ故に、彼女を自分と敵対せざるを得ない事態にまで追い詰めた、キラの
「守るべき大切な友達」とやらに対してさえも、アスランは好意的ではいられなかった。


それから、数時間後。ジブラルタル基地から、三機のガンダムを乗せた輸送機が
カーペンタリア基地に向けて発進した。
イージスを搭載した輸送機は計器の故障が見つかり、離陸許可が下りなかったので、
アスランはしばらくの間、基地内での待機を命じられていた。
この些細な運命の悪戯が契機となって、キラの心に深く浸透している彼女の知人から、
現在のキラの近況を直接聞き出す機会を得られることになるなど、当然、今のアスラン
には想像もつかなかった。

356ザフト・赤毛の虜囚 52:2004/04/27(火) 06:32
9.母親(ママ) 4/8
[うふ、うふふ……]

「うふ、うふふ…… うふ」

私の表情は自然にほころんでいた。ユーレンが、私のことを『私の愛しい人』と呼んだことに
舞い上がっていた。

「さらわれた身のくせに、気持ち悪い笑い方してるんじゃ無いわよ」
私に与えられた部屋まで連行してきたカリダが、不快感を投げかける。

「いいじゃない。嬉しい時は笑わなきゃ。今まで笑うことさえできなかったんだから」
私はカリダに、自分でも馴れ馴れしいと思うような言葉使いで話しかける。

「アンタって変! 何考えてるの。自分の立場分かってるの?」
「分かってる。私は、あなた達ブルーコスモスに拉致された。囚われの身。
 だけどね、ここにはユーレンがいる。私を『愛しい人』と言って守ってくれる。
 だから、私は安心していられる。フラガのとことは大違い」

「まったく変なやつね。信じらんない。自分の夫のところより、私達にさらわれた方が嬉しいですって」
「そう、嬉しい。私とユーレンをさらってくれて、ありがとう」

カリダは、顔を真っ赤にした。懐に手を伸ばすけど、そこには銃は無い。
私の面倒を見る役目のため、取り上げられたのだ。私も、それを見ていた。

「あなたって、すぐ銃で人に言うことを聞かそうとするけど、そんなことじゃ、人の心は動かないわ」
「余計な、お世話よ」

「特に、あなたの愛しいウズミ様にはね」
「!?……」

カリダは、さらに顔を真っ赤にして、パニックになっていた。
私は、そんなカリダの様子をじっくり楽しんだ。

実は、この手のやりこめ方って、ヴィアに、よくやってたのよね。ヴィアは意思が強くて頑固だけど、
女らしい弱点突かれると、すぐに顔を真っ赤にして何も言えなくなるもの。この子ってヴィアと似てるわ。

「うるさいわよ。この不倫女!」
「そっちこそ、身分の違う道ならぬ恋に憧れて。切ないわね…… 人のこと言えないんじゃない?」

「冗談じゃない、アンタと一緒にしないでよ!! それに違うわよ、ウズミ様は、あんな擦れた男じゃないわ!」

カリダは、捨て台詞を残して奥へ引っ込んだ。

結果的に、この先制攻撃が功を奏して、私とカリダとの関係は、終始、私が優位に立てた。

ユーレンはウズミと話をして、何かブルーコスモスのための研究に手を貸しているらしい。
私は、それが何なのかは気にしない。夜にはユーレンが私のところに来てくれるから。
フラガとの虜囚生活とは大違い。私は、ここが幸せだわ。ユーレンを独り占め。

…… ごめんね、ヴィア。

357ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/27(火) 06:34
>>過去の傷
ラクス、キラとフレイ様の専用個室って、なんて札を付けてるんだ……
フレイ様、ミリィには、ちょっと言い過ぎ。肉親以外でも大切な人がいることを
自分で分かっているはずなのに。でも、そうであっても譲れない気持ちも分かります。

>>キラ(♀)×フレイ(♂)
ヘリオ組 1 の遊園地アバンチュール、良かったです。
ミリィとトールは、せっかくの思い出の日が、フレイ(♂)のせいで台無しに。
カズイは、それでも、サイ(♀)と、少しは、いい思いが出来たのかな。
キラ(♀)は、やっぱり、TV本編のフレイ様と合成されているのか、危ない魅力を発散してますね。
カガリ君(♂)も大変でしょう。で、次は運命の出会いですか。

358過去の傷・120:2004/04/27(火) 13:02
フレイは言ってた、心が読めるって・・・、心・・・そうよ、心の中では誰もどう思ってるのか分からない、フレイがそうだったように・・・。
あの男も・・・アスラン・ザラ、キラの前では言ってた、お前を殺そうとしたって・・・ディアッカと聞いたことがある、でも本当は違うのかもしれないわ、キラと喧嘩になるのがいやで、嫌なように見られるのが嫌でああ言ったのかもしれない・・・いえきっとそうよ・・・あの男はト−ルを殺したのよ、虫けらのように・・・許さない、絶対に許さない・・・。
「このままには・・・しないわ」
私は決心した・・・。
でも、どういうふうに?力では到底敵わない、相手はキラと同じコ−ディネイタ−、それに女の力では男に勝てないのも分かってる・・・でも女にも武器がある・・・色気・・・そして魅力・・・キラと同じように私の魅力で・・・婚約者がいても関係ない。
ミリアリアはもはやキラのことなど頭に片隅にもなかった。
だってキラのことはどうも思ってなかったから・・・。

次の日の朝。
「まだまだだな、君達はまだアストレイの性能を引き出せてない」
「「「だって〜!」」」
「よし昼からはカガリにアルスタ−二等兵も加えての練習だ、いいね?」
「「「は〜い!アスランさんと一緒なら私達どこまでもついていきます!」」」

パイロットロッカ−に来たアスランは。
「キラ・・・もしお前が・・・二コルと知り合っていたら・・・そのときは・・・!」
ふいに香水というか化粧水の香りがした。
「ラクス?いや・・・」
振り向くとそこには・・・。
「君は・・・」
「ミリアリア・ハウです」
あの少女だ。
いつみても可愛い。
ナチュラルでもフレイやミリアリアは飛び抜けているほどの美人だ。
アスランも可愛いとは思っていた。
ラクスに匹敵するほどの可愛さだろう、フレイ、ミリアリアは。
「すまない・・・」
「え・・・?」
「俺、いや私は君になんてことをしてしまったんだろう」
アスランはミリアリアに頭を下げる。
そのアスランをミリアリアは冷たく見下ろす。
「意思が無かったとはいえ君の大切な人を死に追いやってしまった・・・すまない」
卑怯な人、偽善ね、自分を助けたいだけなんだわ。
「いいんです・・・もう」
無理に笑顔を作りこの男を油断させる。
「終わったことですから・・・気にしないでください」
「しかし!」
「それが戦争です、分かってたことですから」
「君は・・・え!?」
突然ミリアリアに抱きつかれ戸惑うアスラン。
至近距離から可愛い少女にみつめられ、背中に暖かい腕の感覚を感じてドキンとする。
「私はどうすればいい・・・?」
「なにもしなくていいです・・・」
「いやしかし・・・だが私に出来ることは君を・・・君達を守ることだ、それが彼に対するせめてもの償いになればいい・・・」
そうだ、彼に対するせめてもの償いはしなくてはならない、この艦の人を、この少女も守りぬくことだ・・・。
「なら・・・私も一緒に戦います、貴方と共に・・・」
ミリアリアの体がさらに擦り寄ってきた。
そして自分の唇に彼女の唇が触れてくるのが分かる。
「私をあげる・・・」
そしてアスランは気づいた、彼女にキスされているのだと・・・そして彼女の唇と吐息につい酔って目を閉じてしまった、そして彼女の魅力の前にアスランは忘れた、婚約者であるプラントの歌姫のことを一瞬忘れてしまった、それくらい暖かかったのである。
(キラ・・・お前が地球軍の残った理由が少し分かった気がする・・・)

359私の想いが名無しを守るわ:2004/04/28(水) 02:42
>>過去の傷
ミリィは矛先をアスランに変えましたか。で、その武器で、どうするのでしょう。
まあ、方法はともかく、ミリィとアスランが直接向かい合うところは見てみたいです。
TV本編は、あれはあれでひとつの解決なのでしょうけど、やはり直接話をしなかったのは
残念でしたから。

360過去の傷・121:2004/04/28(水) 13:30
やっぱりこの子は可愛い、こんな可愛い子と・・・。
ミリアリアからの突然のキスに戸惑うアスラン。
なんてやわらかい唇なんだろう。
そして自然と二人は離れた。
「き、君は・・・」
「ミリィって呼んでください」
「あ・・・いや、ええと・・・」
戸惑ってるのね、やっぱりそうだわ、男なんてちょっとキスしてやれば思いのままだわ、この男も虜にしてあげる・・・男はキスに弱いんだから。
「私・・・信じてます、アスランさんが好きです・・・」
甘える声で言うと今度は頬に軽くキスする、そして唇にキスしようとするとアスランに離される。
「やめてくれないか・・・失礼する・・・すまない」
そう言うとアスランは慌てたように出て行った。
残ったミリアリアは口元に笑みを浮かべた。
好きでもない・・・ト−ルを殺した嫌いな男とキスした、でもいい・・・これであの男も・・・男なんてこんなもんだわ、少し誘惑すればこの通りだわ、思惑どうりね・・・ふふ。
そういえばあの男、ラクス・クラインさんと婚約者同士だったわよね・・・使えないかしら、アスランさん・・・これからも誘惑してあげる・・・。

通路を歩いていたアスランは呟いていた。
「キスは浮気じゃないよな・・・?さっきのあの子とは浮気になるのか?」
「アスラン、どうなさいましたの?」
「な!?ラクス・・・」
ラクスはきょとんとしている。
「アスラン・・・?」
「い、いえなんでもありません」
「めずらしいですわね、貴方が慌てているとは」

「フレイ、その・・・」
「なによ」
「まさか、ミリィに騙されてるなんて・・・僕は馬鹿だったよ」
「ほんとに馬鹿よね、キラは馬鹿よ」
「・・・・・・」
「まあそこがいいんだけどね」
「え・・・?」
「今日はカガリの部屋で寝るわ、まあ明日からなら・・・ここで寝るから」
そう言うとフレイは微笑んだ。

361流離う翼たち・465:2004/04/29(木) 00:31
 訓練生相手に本気になったフレイ。それを見たアルフレットは口笛を吹いてみせ、徐に後ろを見る。

「お前ら、どんどん行け、一度に掛かれば勝てるかもしれんぞ」

 何と多対1の勝負をさせるつもりらしい。言われて訓練生達が自分のダガーに乗り込んでフレイに挑んで行ったが、アルフレットの挑発ですっかり気が立っていたフレイは同時に5機ぐらいで襲い掛かられても不敵、というより何か壊れた笑みを浮かべているだけだった。

「素人は引っ込んでなさい!」

 ライフルを使って2機を続けて判定破壊するフレイ。コンピューターに強制停止されたダガーがその場に止まり、驚いた3機が左右に散ろうとするがさらに1機が直撃を受けてしまう。
 左右に散った2機を見てフレイは動きの悪い左に回った機体に目を付けた。ダガーを走らせてあっという間に距離を詰め、そのままシールドごと相手にぶつかって姿勢を崩して模擬サーベルを突き込む。それでこいつも停止し、残るは1機となった。
 最後の1機は仲間が全員倒されたのを見て怯えたように後ずさりしている。フレイには相手の怯えの感情がはっきりと伝わってきており、その経験の無さに憐憫さえ覚えた。そして最後の1機もまた、フレイの前に沈んだのである。

 一瞬で5機のダガーを撃破したフレイの強さに、格納庫の前に居たパイロットや整備兵は声を無くしていた。あんな女の子がダガーを平然と乗り回し、新兵が使ってるとはいえ5機のMSを1機で撃破してしまったのだ。俄かには信じられないことであり、言葉を失うのも無理は無い。
 フレイは訓練生と勘違いしていたが、彼らは新兵とはいえ一応正規のパイロットである。

「ア、 アルフレット少佐、彼女は、コーディネイターなんですか?」
「いや、ただのナチュラルだ」
「でも、あの強さは・・・・・・」

 声を無くしている部下にアルフレットは組んでいた腕を解くと、背後を振り返った。

「ボーマン、お前が行け」
「ええ、俺ですか?」

 20代前半の士官が自らを指差して驚いていたが、アルフレットが頷いたのを見て仕方なく自分の機体の方に歩いていく。その背中にアルフレットは声をかけた。

「油断するなよ。あのお嬢ちゃんは、お前が考えてるより強いぞ」
「どういう事です?」
「まあ、戦ってみりゃ分かるって」

 アルフレットは一度はぐらかすと何も教えてくれない。それを知っているボーマンはやれやれと自分のデュエルに乗り込んでいった。機体を起動し、格納庫の外へと出す。そしてダガーの前に立ち、じっとその機体を見据えた。

「あんな女の子がMSを使いこなすとはなあ。一体何処で訓練を積んだんだか」

 ボーマンはそんな事を考えながら、いきなり模擬ライフルでダガーを狙った。だが、撃とうとした時にはダガーは射線上にはおらず、急いで自分もデュエルを走らせる。フレイのダガーは彼の想像を超えて速く、しかも攻撃位置を掴ませない動きを見せている。その練達の動きにボーマンは舌を巻いていた。

「何だよあの娘は、経験があるどころじゃないぞ!?」

 アルフレットが自分が考えているより強いといった意味がようやく分かった。あのフレイという娘は確かに強いというレベルではない。こちらの動きを全て読みきっているかのような機動をしているし、射撃は正確そのものだ。
 だが、ボーマンは知らなかった。自分を振り回すほどの強さを見せる今の状態でさえ、フレイはまだ全力ではないということを。キラと戦った時のフレイは、今見せている動きを遙かに上回っていたのだ。

362流離う翼たち・作者:2004/04/29(木) 00:42
>> ザフト・赤毛の虜囚
ウズミまでブルコスキャラに!? 
しかし、ウズミは何をさせてるんでしょうねえ。まさかキラを作ってる?

>> 過去の傷
ああ、とうとうアスランまで巻き込まれだした
フレイ様はミリィと喧嘩してなんだか吹っ切れたかな
キラはさてどうするのやら

>> キラ(♀)×フレイ(♂)
遊園地・パニックですな。トールとミリィは大変そうですが
フレイは今回はあっさりと手を引いて、キラはカガリを振り回してたか
でもカガリ、君のシスコンは結構怖いぞ。w

363ザフト・赤毛の虜囚 53:2004/04/29(木) 08:18
9.母親(ママ) 5/8
[カリダも触ってごらんなさいよ]

「ねえ、ユーレン、動いてるの分かる?」
「ああ、分かるよ」

私はユーレンに甘い声で話しかける、一時は気分が滅入ったり、落ち込んだりしたけど、
今は、もう安定している。毎日が楽しくて堪らない。

「フン! なによ……」
カリダは、私を見ると、いつも面白く無さそうな顔をする。私は、その理由を既に知っているから、
カリダに優しい声をかける。

「カリダも触ってごらんなさいよ」
「いいわよ、ほっといて」

「遠慮しないで、さあ」
私はカリダの手を取って、無理矢理、私のお腹に手を当てさせる。

「感じるでしょ。動いているの。私の中にいるのよ、赤ちゃんが。ユーレンの子が……」
「や、離して」

カリダは、いやがりながらも、その感触に戸惑うように、そのままにしている。

私は、やっとナチュラルに子を授かった。ユーレンの子を産むことができる。
フラガの独り善がりな考えで、コーディネータを強いられることは無い。私は、幸せだ。

「動いてる…… メルデル」
カリダは、やがて感動したように、私の名を呼んだ。

* * *

私にナチュラルの子ができたと喜んでいるのを見て、最初、カリダは不審がった。

「アンタの不倫相手って、コーディネータを作るお医者さんでしょ。
 それだから、私達ブルーコスモスがマークしてたのに……
 なんで、そのアンタがナチュラル妊娠して喜んでいるのよ!」

「カリダ、私はね。フラガがコーディネータを欲しいために、本当に酷い目にあった。
 体を傷つけられた。それも、ユーレン自らの手で。だから、コーディネータは嫌い。
 私はナチュラルに子を授かって、ほんとに嬉しいの。二億分の一の奇跡を体験したのよ」

カリダは怒りの表情を、私に向けた。

「なによ、勝手に喜んで! アンタこそ残酷だわ。私がどんな想いでウズミ様を見ているのか
 知らないくせに。決して、結ばれること無い。報われること無い」
「そりゃ、年齢は離れているけど…… でも、フラガが私と結婚したくらいだし。世間体は……
 フラガと私は、そんないい関係じゃないけど……」

「違うわ、年なんかじゃ無い。そんなだったら、私の友達でも、もっと、おじさんと結ばれた子も
 いたわよ。違う、違うのよ。私……」
「カリダ、一体……」

「産めないの、赤ちゃん」
「え? 嘘!」

「奇形だって。セックスだって、きちんとできないの」
言ってしまって、カリダは、真っ赤になった。なんで、私に言ったのか戸惑っている様子だった。

「カリダ……」
私は、カリダを抱きしめた。カリダは涙を流して、私に抱かれるままになっていた。
ずっと辛い想いを隠してきたのだろう。それが、一気に吹き出していた。

カリダは、私がフラガにされたものの何倍もの仕打ちを、生まれつき背負っている。可哀想な子。
だから、世間では、今やファッションにまでなりつつあるコーディネータの出産を、
あんなに憎むようになって、こんな団体にまで入ってしまった。

「大丈夫よ、カリダ。いずれ、ユーレンがなんとかしてくれるわ」
「うん、分かった。えと…… 名前……」

「メルデルよ」
「うん、メルデル、メルデル、分かった……」

カリダは泣きながら、私の胸で頷いていた。

364ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/29(木) 08:23
>>過去の傷
ミリィ、ラクスに逆らって謹慎させられたこと忘れているような。仕事しないとヤバイぞ。
どうせなら、CICから意味ありげな通信送って悩殺するのが、管制官の正しい誘惑方法(?)金髪さんに負けるな。
フレイ様とキラは、よりを戻したの? キラ、良く助かりましたね。

>>流離う翼たち
フレイ様怒るとNT能力覚醒するようですね。相手の感情分かっても、おかまいなしですな。
アルフさんは、それが分かっているのかな。それにしても、ボーマンなんて懐かしい名が。
ガンダムAだと、レナ・イメリア搭乗機に、前に言ってたデュエルダガーとかバスターダガーとか本当にありました。
だけど、別の本のジャン・キャリー機はロングダガーとも書いてあったけど、設定混乱しているのか?
個人的にはフレイ様はルージュ+ガンバレル・ストライカーに乗って欲しい。これだと、弾数無限大でも許されそうだから。

365過去の傷・122:2004/04/29(木) 11:30
「昼からだって、実戦練習・・・なんか僕も呼ばれてる」
「キラも?・・・そう、でもキラが見ていてくれてるなら私、安心」
通路にて、キラとキラに寄り添い腕を組んだフレイが歩いている。
「アスランは安心していいよ、無口で冷たい印象あるけどほんとはとっても優しいから」
「ええ、キラがそう言うなら・・・」
そして、歩いてきたミリアリアと会う。
「熱々ね」
二人を見たミリアリアは冷ややかに告げる。「
「相変わらずね、ほんとお似合いのカップルだわ!」
「ミリィ・・・」
「私に裏切られたからフレイとよりを戻したわけ?いえ別れてもいなかったの間違えかしら!?」
ミリアリアは怒っているのか分からなかった。
「それで?昨日は一緒にベッドの中で慰め合ったのかしら?」
声を張り上げるミリアリア。
「ミリィ・・・全部芝居だったの・・・?慰めてくれたのも全て」
キラが呟く。
「・・・そうよ・・・ええそうよ!全部芝居よ!馬鹿じゃないの!?騙されちゃって!なんで私がキラを好きになるのよ!勘違いしちゃってほんと馬鹿みたい!本気だとでも思ったの!?」
「ミリィ・・・」
「ちょっとなれなれしくしないでよ!ただの友達でしょ!」
たまらずフレイが口を挿む。
「ミリアリア、そこまで言うことないじゃない」
キラを庇うフレイをミリアリアは睨みつけた。
「フレイ、あんたなに偉そうなこと言ってるのよ、昨日よく言ってくれたわね、救いようがない女なんて・・・ア−クエンジェルにいたときの大騒動を巻き起こした張本人のくせに!」
「!」
「救えない女はあんたの方じゃない!自分の行為を棚に上げてよく言うわね!」
「うるさいのよ・・・」
「キラ、よかったわね、今日からはまた貴方の大好きなフレイ・アルスタ−さんと寝れるんだから!こんなに幸せなことないんじゃない?どうせならこのまま結婚すれば!?」
「うるさいって言ってるでしょ!」
フレイが叫ぶがそれを無視するとそのままミリアリアは去って行った。

その一時間後。
パイロットロッカ−に来たフレイとキラは。
「キラも着替えるの?」
「一応ね・・・」
「そういえばさ・・・艦は違うけどここよね・・・私とキラが初めてキスした場所・・・」
ああ、恥ずかしい・・・でもほんとに・・・。
「うん・・・」
「でもあのときはキラのこと好きじゃなかったの、ただキラを信用させるために・・・女として貴方に近づくために私・・・」
「いいんだよ、もう・・・忘れよう、今の君自身を大切にしてくれ、それとも今もそうなのかな?」
「違うわ!違う!今はほんとに貴方のことが好き!大好きなの!」
フレイが無邪気な顔でそう言うとキラは微笑んだ。
「ありがとう・・・」
そして着替えた二人歩き出した、過去のあやまちを忘れるように・・・。
フレイは思った。
確かに間違ったかもしれないわ・・・でも間違ったならやり直せばいいの・・・キラと共に・・・。

366ザフト・赤毛の虜囚 54:2004/04/30(金) 07:53
9.母親(ママ) 6/8
[私がママよ]

「ハッ! ハッ!」
下腹部に痛みが走る。一杯で、はちきれそうなお腹。耐えられない。
私は唇を噛み締めて、体に力を入れようとする。

「まだ、駄目だメルデル。呼吸を整えて楽に」
「ハァーッ ハァーッ」

「まだ、先は長いんだメルデル。今は落ち着いて
「ハァーッ ハァーッ 分かったユーレン」

いよいよ、私とユーレンの子が生まれる。私はユーレンの手を握り、彼の言葉に自分を委ねる。
ユーレンは、産婦人科の専門、そして、私の子の父。私の愛しい人。これ以上に安心なことは無い。
私は心配そうに見ているカリダに目を向ける。
「大丈夫よ」

あれから何時間も過ぎた。痛みの周期が短くなってくる。モニタをチェックしているユーレンの
声が興奮を帯びて来る。

「いきんで、メルデル」
「ウゥーッ」

それを何度も繰り返す。手が分娩台のバーを握り締める。汗ビッショリになる。ユーレンは手を握らせて
くれない。万が一の場合にユーレンが動けなくなるから。私が、頑張らなきゃ。

「ウゥーッ!!」
「見えた。メルデル、もういい、後はまかせて」

「ハッ! ハッ! ハッ! ハッ! ハッ!」

「オギャア、オギャア」

痛みがスーッと引いていった。私は汗にまみれ、息も絶え絶えでユーレンを見つめる。
やがて、赤ちゃんを取り上げ、毛布にくるんだユーレンが、私に手渡してくれた。

「私の子、ユーレンの子」私はユーレンに微笑みかけた。
「よくやった。頑張ったねメルデル。男の子だよ」

私は涙ぐんで言った。
「うん、ありがとうユーレン」

カリダが近づいてきた。カリダも涙ぐんでいた。
「すごい、メルデル。すごかったよ。私も一緒に産んでるみたいだった。
 ありがとう見せてくれて。私、これだけでも充分よ」

カリダは、私の妊娠を、ずっと見ていて徐々に心を開いていた。そう、既にカリダは、私の親友だ。

「いや、君もいずれ子供を抱ける日がくるよ。君自身の子を。約束する」
ユーレンの言葉に、カリダはユーレンに抱きつくように涙をこぼした。

「カリダ、抱いてみる? 今は、私達の子だけど、自分の子のために」
「うん、抱かせて」

カリダは生まれたばかりの赤ちゃんを抱いた。まるで自分の子のように、大切なもののように。

「名前は、もう決まっているんだっけ?」
「うん」

「教えて」
「ムウ」

「ムウ?」
「そう、ムウよ。ムウ・ヒビキ」

私は、またカリダからムウを受け取った。そして、ムウの耳元で優しく囁いた。

「可愛いムウ、私がママよ」

367ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/30(金) 07:54
>>過去の傷
ミリィ、開き直って言いたい放題ですな。こんなんじゃ友達できないぞ。
フレイ様、キラとどうにか関係復活。だけど、カガリとラクスは? 次の傷は何?

368過去の傷・123:2004/04/30(金) 11:40
「君のお父さんのことだけど」
「それは言わないで・・・パパの話はしないでほしいの・・・」
フレイが青ざめたのでキラも下を向く。
「あ、ごめん・・・」
「また貴方を責めそうで怖いの、貴方にもうそんな感情抱きたくないから・・・それにパパが死んだのはキラのせいじゃないでしょ?ただ貴方にあたっただけなの・・・」
「フレイ・・・」
フレイは微笑んだ。
「もう!なんでこんな暗い話になるのよ!」
「あ、そうだねごめん」
やっとキラと歩み続けることができるわ・・・。
キラ、貴方となら私・・・。
ワガママで意地っ張りで自分勝手な私だけど、貴方の前なら素直でか弱い女になれるかな・・・?
フレイは頬を可愛く染めるとキラの腕にしがみついた。
「フレイ・・・?」
「なんでもない♪それより行くわよ、実戦」

ラクスの部屋の前に来ているミリアリア、中の様子を伺う。
「では行って参ります」
「アスラン、お気をつけて・・・貴方のご無事をいつも願ってます」
「ありがとうございます」
馬鹿じゃないの?なんで婚約者同士なのに敬語で話してるんだろう、頭おかしいんじゃないかしら?この二人。
そしてラクスの顔がアスランに近づいてくる、アスランが静かに目を閉じるとラクスはアスランの頬に軽くキスをした。
私は見せつけられたみたいで内心面白くなかった。
「では失礼します」
ミリアリアは慌てて隠れる。
アスランが出て行った。
なおも残ったミリアリアは・・・。
中のピンクの少女を見つめる。
ほんわりとした白い肌、ほっそりした細い腕、そして柔らかい綺麗なピンクの髪。
そして同じ女であるミリアリアは見とれるほど可愛い顔立ちである。
しかし目がきりっとしている、指揮官としての風格を感じさせる、そのためかピンクの髪の結んでいるのだ、それから衣装は羽織りだろうか?そんな衣装を着ている。
ミリアリアは・・・ラクス・クラインさん・・・貴女だけ幸せなんて・・・。
だいたい気にいらないのよ、なにもしないくせに私に偉そうに言う、だいたいなんでこの人だけこんないい部屋にいるのよ。
<ハロ!ハロ!>
「ネイビ−ちゃん、どうしました!?」
「きゃあ!」(しまった・・・ばれた?)
ハロに見つかってしまったミリアリア。
「誰かそこにいるのですか?」
「・・・・・・」
「さっきの声はミリアリアさんですね?出て来なさい」
「・・・・・・」
「この艦から降ろしましょうか?いいのですよ貴女がいなくてもCICはダコスタさんがやってくれますから、それにこのところ貴女仕事してないみたいですがどうしました?」
仕方なくラクスの部屋に入る。
「・・・失礼します・・・」
「ミリアリアさん・・・ここでなにをしてるのです?」
そうだ、ラクスさんを滅茶苦茶にしてやろうかしら・・・困らせてあげる、この女の驚く顔が目に浮かぶわ・・・。
「あの・・・アスランさんを知ってますよね?」
「・・・はい?アスランですか?アスラン・ザラは私の婚約者ですが・・・」
ミリアリアは突然笑い出した。
「ふふ・・・あはははは!!!」
「ど、どうなさいました・・・?」
ミリアリアはイタズラっぽく微笑み、挑発的に告げた。
「私、アスランさんと・・・キスしたんです」

369過去の傷・作者:2004/04/30(金) 14:28
>>翼たち
まあ当然か、力の差見せつけましたね、もう想像以上の強さですねフレイ様♪

>>ザフト・赤毛の捕囚
これはムウの・・・しかしこの人達のやり取り見てると妙に懐かしいですね。
フレイ様の感覚を感じさせてくれます。

370流離う翼たち・466:2004/04/30(金) 23:59
 結局懐に入られたボーマンの敗北でこの模擬戦は終わってしまった。まだ新兵は沢山いたのだが、小隊長であるボーマンが負けたことで皆すっかり萎縮してしまっている。アルフレットは挑戦者が出なくなったのを見てフレイに通信を入れた。

「よし、もう良いぞ。降りてこいお嬢ちゃん」
「分かりました」

 フレイはダガーを格納庫の前まで持ってきて膝を付かせ、コクピットから降りた。そして駆け寄ってきた整備兵に幾つか注文をつけてアルフレットの所まで行く。

「少佐、私をダシにしてとんでもない事しないで下さい!」
「う、す、すまねえ」

 怖い形相で怒っているフレイにアルフレットは気圧されていた。どうやらこいつも女に頭が上がらないタイプであるらしい。
 とりあえずアルフレットが謝った事でフレイは溜まった不満を押さえる事にした。フレイが落ち着いたのを見てか、アルフレットがフレイを全員に紹介する。

「まあ、さっき見た通り、このお嬢ちゃんはMS戦においては連合中探しても屈指の腕前だ。これから暫くお前らの模擬戦の相手をしてもらう事になるから、覚悟しておけよ」
「あの、その娘は誰なんです?」

 先ほどフレイに負けたボーマンがアルフレットに問い質す。アルフレットはチラリとフレイを見た後、少しだけもったいぶって答えた。

「何だボーマン、こんな有名人を知らねえのか?」
「有名人なんですか?」
「ああ、こいつがかの有名なアークエンジェル隊のエースパイロットの1人、真紅の戦乙女、フレイ・アルスター少尉だ。撃墜スコア30機以上という凄腕だぞ」

 アルフレットの紹介に、全員の視線がフレイに集中した。全員に見られたフレイは居心地が悪そうに身動ぎしたが、フレイに向けられる視線は驚きからすぐに好奇心へと変わっていった。

「す、凄いや、あの真紅の戦乙女!?」
「30機以上のスコアって、カスタフ作戦が初陣なのに、どうやって落としたんだよ?」
「ねえねえ、アークエンジェルってあの「エンディミオンの鷹」や「エメラルドの死神」が居るんだろ。どういう人か教えてよ!」
「あの、今日の夕食を一緒にどうでしょう?」
「あのクルーゼ隊と戦ったんだって?」

 たちまちフレイを揉みくちゃにする新兵たち。その全員がフレイと同年輩の少年少女たちだ。連合はこんな子供たちまで実戦に駆り出しているらしい。それがおかしいと感じないのは今の時代がそういう時代だからなのだろうか。

371『明日』と『終わり』の間に・2日目・お昼時:2004/05/01(土) 00:09
「しつこいわね!だから違うって言ってるじゃない!」
「嘘つくな!ただ見てただけでカレーが赤くなるか!!お前以外に誰がそんなこと出来るんだよ!?」
「知らないわよそんなの!キッチンに住んでる妖精が悪戯でもしたんじゃないの!?」
「妖精って・・・、今時子供でもしないよそんな言い訳!!」

 ―――この状態、一体何時まで続くんだ?正直に言えば許してやるつもりだったのに、何だかお互いやけにむきになってしまった。それにしても私も口喧嘩には自信があるんだが、こんな強敵は初めてだ。キラの奴も大変だったんだろうな・・・。よーし・・・。

「しかしこのカレー、マズそうだなぁ〜・・・」
「!食べても無いくせに、マズいですってぇ!?どーいうつもりよ!?」
「そんなの見れば分かるだろ!色も赤いし、よく見ると変なものが入ってるし、それに随分水っぽいし・・・。誰だってそう思うさ!これカレーじゃなくて血の池地獄じゃないのか?」
「何よ!ただ隠し味にと思って入れてみただけなのに、そこまで言われる筋合いは・・・って、あっ!」
「・・・やっぱり何かしたんだな・・・?」

 やっとボロを出したか。・・・何だかこの勝利、誇らしくすら思えるな。

「で、何でこんなことをしたんだよ?食べ物を粗末にしちゃ罰があたるぞ?」
「・・・嘘をついてたことは謝るわよ。・・・でも、別に悪気があったわけじゃないわ。ただ・・・」

 ん?どーいうことだ?

「・・・駄目だと思ったのよ。普通のカレーじゃ!」
「は?」
「だって、私はキラに満足してもらえる、私にしか作れないカレーが作りたいの!」
「・・・いや、別にいいだろ何事も普通で。何だその変なチャレンジ精神は・・・?」
「何言ってるのよカガリ!何時までも古い形に拘ってたら、新しい道は切り開けないわ!」
「・・・!」

 ・・・そうだ、私は、何て馬鹿だったんだ!そんな大事なことを忘れてたなんて・・・。今私やアスラン達は、ナチュラルとコーディネイターが仲良く共存できる世界を作らなきゃいけないんだ。それが今は亡きお父様の、そして私達の夢。そのためには、今あるしがらみを壊さなきゃならない。それなのに・・・、私がそれを否定してどうするんだよ?
 それにこのカレー(?)は、あいつが心をこめて(私に対してじゃないけど)作ったもの。それをマズいだなんて、あいつの想いを踏み躙るような真似までして・・・、私は最低じゃないか。すまんフレイ、許してくれ。

「・・・そうだったのか。ごめんなフレイ、お前の気持ちも知らないで、酷いこと言って・・・」
「いいのよカガリ。私だって悪かったんだし・・・。でも、そう思ってくれるのなら・・・」
「!何だ?」
「・・・これ、食べてみて!折角二人で作ったのに、捨てちゃったら勿体無いわ」

 ・・・えっ!?それってつまり・・・、実験台になれってことじゃ・・・?

「どーしたの?・・・やっぱり、イヤ?」
「!あっ、いや、別にそういう訳じゃ・・・」
「・・・そうよね。こんなんじゃきっと、美味しくないわよね・・・」

 うわっ、泣いちゃいそうだよ!何だか私が悪いみたいじゃないか!どっ、どーすればいいんだこんな時!?・・・えーい、こうなったらなるようになれだ!!

「たっ、食べる!食べるよフレイ!何だかよく見たら美味そうだし、それに赤いカレーってのもありなんじゃないか?」
「ホント?じゃあこれ、どうぞ召し上がれ」
「・・・い、いただきます・・・」

372流離う翼たち・作者:2004/05/01(土) 00:10
>> ザフト・赤毛の虜囚
ム、ムウって、ヒビキって・・・・・・兄貴もこれで不幸に!?
このあと兄貴は陰険オヤジに連れていかれるんでしょうなあ
たしか、ダガーの試作がデュエルダガーで、その後にダガーを強化兵用に再設計したのがロングダガーだったはずです。
だから両者は違う機体の筈です。
ガンバレル・ストライカーは出ますが、兄貴やフレイ様は乗らない予定です。兄貴には別機体がありますから

>> 過去の傷
ミ、ミリィさん!?
キラがフレイ様と話しているのも凄いけど、ミリィも凄い。ラクスに攻撃している
アスランに明日はあるのか?

373『明日』と『終わり』の間に・作者:2004/05/01(土) 00:23
 最近投稿が滞り気味で申し訳ないです。フレイ様がカレーに何を入れたかは次回で明かします。

》赤毛の虜囚
 ムウさんの誕生秘話ですね。以前フレイ様の夢に登場していた金髪の男の子とは彼のことだったんですね。ずっと気になっていましたので。
 
》流離う翼たち
 フレイ様、お見事な勝利でしたね。それにしてもアルフレット少佐の思惑は一体・・・?

》過去の傷
 ミリィが何をしたいのか分からなくなってきました。まさかキラの次にアスランに狙いを定めるなんて・・・。ラクスを挑発したりとまだまだ波乱が続きそうですね。

374私の想いが名無しを守るわ:2004/05/01(土) 07:04
>>『明日』と『終わり』の間に
カガリ一人称語りって、実はあまりなかったことに
今更ですが、気づきました。素直に反省して、食べて
しまうところがカガリらしいです。
>>流離う翼たち
フレイ様の人相と二つ名の認知度のギャップが、フ
レイ様の今の位置をよく表しているというところで
しょうか。なにげに新兵達も健気ですな。どさくさ
にまぎれて夕食誘っているヤツもいますね。
>>過去の傷
艦名が「エターナル」なだけに永遠に傷つけ合いそ
うで…特に㍉は何がしたいのか、私も知りたいところです。
トール喪失の傷はクライン派を内側から解体しそうな勢いですね。
>>ザフト・赤毛の虜囚
後年のカリダの人懐っこそうな部分と幸薄そうな部分
が同時に垣間見える章ですね。30代のウズミはカッコ
よさそうです。ブルコスメンバーなのにもびっくりしました。
>>キラ♀
フレイ様の策は、相変わらずズバズバヒットしますな。
カガリもトールもフレイ様の手のひらで踊らされていますね。
確かにこのフレイ様は遊園地って柄ではなさそうです。

375ザフト・赤毛の虜囚 55:2004/05/01(土) 08:30
9.母親(ママ) 7/8
[会いたかったよう…… ママぁ]

(私がママよ)

朝、私はここちよく目を覚ました。体に喜びが満ちあふれているようだった。
私は、自分のお腹に手を当てる。しっかりした充実感が感じられ、それ自体が喜んで
いるようだった。

私はフレイ・アルスター。…… そうよ、私が……
私はゆっくりベッドから体を起こし、しばし、その感覚を慈しむようにジッとしていた。

ドアのロックが開いて、コール音がした。そのまま入って来ない。おそらく、ミコトっていう子だろう。
私はドアを開けた。

ミコトは沈んだ顔をしていた。
「ママ、新しいの持ってきたよ。それと、お洗濯とか、入れ物とか……」

ミコトには、以前、きついことを言って追い返してしまったことがある。可哀想なことを
したという気持ちが残っている。私は、優しく答える。

「ええ、ありがとう。助かったわ。ちょっと待って、洗濯物取って来るから」
私は、ミコトの持ってきた新しい下着などを受け取ると、代わりに、どっさりある洗濯物などの袋を
持ってきた。それを受け取ったミコトは、私の顔色を伺うように、小さな声を出す。

「ママ、怒ってない?」
「ええ、怒ってないわよ。前は悪かったわ。ごめんね」

「ほんと、ママ? ほんとに怒ってない?」
「ほんとよ。怒ってない。ありがとうミコト」

さっき、自分のお腹に手を当てて、それを実感したせいだろうか。今の私は、ママと
呼ばれることが嫌じゃなかった。暖かい気持ちになっていた。

「ママ、大好き!」

ミコトは、洗濯物の袋を床に落とし、かがんで私の胸に顔を埋めた。以前、マリューさんが
教えてくれたママのすることを思い出した。私は思わずミコトの頭を抱え、髪を撫でていた。
自分の髪をいじっているのと同じ感じがする。本当に自分の娘の髪を撫でているような気がした。

「ミコト……」
私はミコトに優しい声をかけた。
それが合図のように、ミコトは切ない声で泣き出した。
「ママ、ママぁ…… 会いたかったよう…… ママぁ」

この間、私が追い返した時は泣きそうな顔をしながらも我慢していたのに、
私が許した今は、涙をポロポロこぼして泣いている。私はミコトの背中をさすりながら、
しばらくの間、じっと抱きしめていた。

私はミコトを受け入れていた。ミコトが大好きになった。

捕虜として捕まっているザフト。でも、その中の人達に私は少しずつ心を許している。
キラといて分かったこと。コーディネータとナチュラルも同じ。その心に変わりはない。
キラの望む戦争の無い世界。そのためにできることが、今の私にもあるんじゃないかと、
思い始めていた。

376ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/01(土) 08:36
>>過去の傷
フレイ様は、素直で、か弱いだけでなく、我が侭で意地っ張りでも魅力的ですよ。
ミリィ、ラクスと戦うには、まだ手駒不足だぞ。もうちょっと管制官特権を利用してからの方が……

>>流離う翼たち
二つ名は偉大ですね。これで新兵達には溶け込めたようです。整備兵には分かることですが、
メンテしたセランさんはアルフさんになにか聞かされているようですし、これで第一ステップはクリア?
でも、これだけでは無いですよね。
ムウの新機体はメビウス系統なのかな? 楽しみにしておきます。

>>『明日』と『終わり』の間に
ネメシス・フレイ様の普通じゃ満足できないという論理は、お約束で、分からないこともないけど、
カガリは、それにナチュラルとコーディネータの未来を重ねているのは予想外でした。
カガリはオーブの仕事に取り組み過ぎなのでは? そして、このまま被害者に?

377過去の傷・124:2004/05/01(土) 09:36
「そうだ、私とフレイは愛し合ってるんだからな!」
「でもカガリ様は女ですよね?」
「そんなの関係あるもんか!男同士だろうが女同士だろうがだ!恋愛にそんなのは不要だ!」
「限りなく関係あると思いますけど・・・」
マユラがそう言うがカガリは気にしてない様子だ。
「でもカガリ様、フレイさん、キラさんと腕を組んでますよ」
「なにぃ!?」
カガリの視線の先には完全に関係を戻した二人がいた。
カガリは慌てて駆け寄るとキラをフレイから強引と突き放す。
「キラ貴様!私のフレイになれなれしく触るな!」
「カガリ・・・君?」
「カガリ・・・貴女」
フレイとキラが戸惑うようにカガリの名を呼ぶ。
「キラ、姉に対しての気遣いをたまにはしろ」
「カガリ、ごめんね、私やっぱりキラが・・・貴女とは女同士だし・・・」
「そうか・・・誘ってきたのはお前だったのに・・・もういい・・・」
カガリがショックを受けた様子で青ざめる。
「皆、いるな・・・」
そしてアスランが来た。
皆が挨拶するなかフレイも・・・。
「お、おはようございます・・・今日はよろしくお願いします」
フレイも丁寧に挨拶した。
ザフトの捕虜の頃、クル−ゼにもこんな感じで挨拶していたのでなれてはいた・・・。
「うん、アルスタ−二等兵ちょっといいか?」
「あ、はい」
アスランに呼ばれ返事をしたフレイ。
「今日は君はこれに乗るんだ・・・」
「え?」
「プロヴィデンスX改だ、しかし普通にプロヴィデンスと呼んで構わない」
「これが・・・私の機体・・・?」
「そうだ、この機体で・・・君はカガリ達と手を組みキラと俺の二人の相手をしてもらう・・・」
フレイは突如怯える・・・。
「い・・・いや・・・これって・・・」

そんな頃ミリアリアは・・・。
「キス・・・?」
「はい、キスしました、ちょっとアスランさんを誘惑したら・・・」
「そんなはずはありません、アスランはそんな人ではありません・・・私はアスランを信じてますから」
「男なんてだれだって誘惑すれば思いのままです、アスランさんだって冷静そうに見えて私の色気の前では・・・」
「なにを馬鹿なことを言ってらっしゃるのです?そんなこと絶対にありませんわ」
「なんて・・・冗談ですよ!あはは!」

378流離う翼たち・467:2004/05/01(土) 23:47
 揉みくちゃにされて困っているフレイを見かねたのか、ボーマンが子供達を引き剥がしに掛かった。

「こらこら、アルスター少尉が困ってるぞ。お前達もいい加減にしておけ」

 ボーマンに言われて新兵たちは仕方なくフレイから離れる。ボーマンはフレイの前まで進むと、右手を差し出した。

「まさかああも簡単に負けるとは思わなかった。正直驚いたよ。俺はボーマン・オルセン中尉だ」
「いえ、ボーマン中尉も強かったです」

 フレイはその右手を握り返した。だが、ボーマンは何故か渋い顔になり、視線をフレイからずらした。

「まあ、何と言うかな。あれだけはっきり負けた後で言われると、少し凹むな」
「あ、それは、その・・・・・・」

 憮然とするボーマンしどろもどろになりながら必死にフォローの言葉を探している。だが、フレイが何か言うよりも早く、やってきたセランがボーマンの頭を持っているボードで叩いた。ドカンという音がしてボーマンが頭を押さえている。

「セ、セラン、手前、本気で殴りやがったな!」
「兄さんこそ、何少尉を苛めてるの。模擬戦で負けたくらいで大人気ない」
「ぬぐっ、別にそれを含んでるわけじゃないぞ」
「兄さんにその気がなくても、こっちから見ればそう見えるのよ」

 手でボーマンを追いやったセランがフレイの隣に立った。

「すいません少尉、うちの馬鹿兄が迷惑かけたようで」
「あ、兄って、お兄さんなの?」
「はい、あれが残念ながら私の不肖の兄、ボーマンです」

 セランは心の底から残念そうな声で兄を紹介する。それが余程気に入らなかったのか、ボーマンはこめかみに青筋浮かべてプルプルと体を震わせている。

「セラン、一度お前に兄の偉大さというものを分からせる必要がありそうだな」
「あら、やるつもり兄さん。これまでの5戦全敗の過去をもう忘れたのかしら」
「ふん、ならばこれが6度目の正直だ!」

 ボーマンが一切の躊躇無く繰り出してきた拳を、セランは腰に挿していたモンキレンチで迎撃した。ガギンという鈍い音を立てて両者が激突する。というか、さっきの音は絶対に人間の体が立てる音じゃない。よく見てみればボーマンは右拳にメリケンサックを付けているではないか。

「少尉、少し離れていてください。今からこの学習能力の無い貧弱な兄さんをぶちのめして自分の身の程というものを分からせてやりますから」
「え、ええと?」

 事態の急展開に付いていけず、頭がフリーズしてしまっているフレイの腕を新兵の1人が掴んで安全圏まで引っ張ってくる。それを合図に兄妹の壮絶なバトルが始まった。2人ともどういう体をしているのか、無茶苦茶な速さで動き、素人目にも分かるほどの強烈な一撃を叩き込み合っている。
 フレイはその動きを見ていて、何故かキラやアスランを思い出してしまった。

「凄い」
「ああ、そりゃ凄いさ。ボーマン中尉もセランもコーディネイターだからな」
「コーディネイター?」

 新兵のうちの1人がフレイの疑問に答えてくれたが、その答えにフレイは驚いてしまう。何故に大西洋連邦軍にコーディネイターが居るのだ。

「なんで、コーディネイターが大西洋連邦軍に居るの?」
「あの2人はマドラス生まれのマドラス育ちなんだよ。両親もコーディネイターだから第2世代って事になるか」
「地元出身のコーディネイターって、結構珍しいんじゃない?」
「まあ珍しいさ。でもまあ、地元の人たちはあの2人に好意的らしくて、コーディネイターにありがちな迫害ってのも少なかったらしい。ブルーコスモスに狙われた時も両親共々近所の人に匿って貰ったそうだし」

 その話にフレイは驚きを感じたが、一方で納得してしまう部分もある。世の中にはいろんな人が居るし、世界中の全てのナチュラルがコーディネイターを憎んでいるというわけでもない。ましてこの街で生まれ、この街で育ったと言うのなら、この街の住人ならば敵とは感じないだろう。
 だが、幾らこの街で生まれたといっても、よく同じコーディネイターを相手に殺し合いなどする気になったものだ。キラは同じコーディネイターを殺すことにかなりの抵抗を感じていたのに、2人はそういうものを感じることはないのだろうか。
 目の前でセランの持ち出したパイプレンチがボーマンを殴り飛ばしたのを見ながら、フレイはその辺りを聞いてみたいと思っていた。

379流離う翼たち・作者:2004/05/01(土) 23:54
>> 『明日』と『終わり』の間に
何かしていたのかフレイ様、でも、何入れたんでしょう。トマトとか?
とりあえずカガリ頑張れとしかいえません。

>> ザフト・赤毛の虜囚
ミコトが泣きついている。でも、ユーレンとの子供はフラガなわけで、この娘は何なんでしょうね、ちょっと分からなくなりました
そういえばミコトに相談されたイザークは何してるんでしょうw?

>> 過去の傷
プロヴィに乗れってのはちょっとトラウマになってると思うのですが
しかしカガリさん、マジだったんですかw!
一方でミリィはなにやら暗躍中ですな

380『明日』と『終わり』の間に・お昼過ぎ:2004/05/02(日) 01:04
 ―――駄目だ、スプーンが進まない。一体どーしてこんなことに・・・?ああ、ジッと見てるよあいつ。こうなったらちゃんと食べないといけないだろうし・・・、何であんなこと言っちゃったんだ、私?・・・このカレーは美味い、このカレーは美味い、美味い、美味いんだ・・・!よしっ、いくぞ!

 パクッ!

 !こ、この味は!?
 
 何だこの辛さは?違う、カレー粉やスパイスとかそんな類のものじゃない!カレーの中にもう一つの全く異なる辛さが隠れてる!何なんだこの味の正体は!?ハッ、この歯触りに独特の匂い、さては”キムチ”だな!?カレーにキムチを入れることでカレーの辛さを更に引き立てようとしているんだ!!
 それだけじゃない!この何処か不思議なまろやかさは何だ?この甘さは、果物・・・、苺・・・!そうか、”苺ジャム”だ!カレーにキムチ、そして苺ジャムを加えることによってこの絶妙のハーモニーが醸し出されてるのか!?
 それにこの喉ごしの良さ、これは”完熟トマト”か!?新鮮なトマトのみずみずしさがカレーにあっさりした風味を与えてるんだ!!

 ―――私は、この味をどう表現したらいいんだ?今まで味わったことの無いこの味を?・・・!あれ、何だか涙が出てきたな?どうしてだろう・・・?そんなの、決まってるじゃないか。さぁカガリ、あいつに言ってやるんだ。このカレー・・・。

「・・・マズいに決まってんだろーがぁぁぁーーーーっ!!!」

 言ってやった、言ってやったよ、私・・・。あっ、気が遠くなってく。アスラン、キラ、助けて・・・。御館様、ミツヒデ様が御謀反なされました。・・・って、なんだこの記憶?―――。

 ―――数十分後―――

「・・・ねぇ、カガリ・・・」
「・・・何だ、フレイ・・・?」
「・・・そんなに美味しくなかった?」
「・・・まぁな・・・」
「・・・やっぱり、苺ジャムじゃなくてブルーベリージャムにしとけば良かったかしら?」
「・・・そーいう問題かあれ?」

 ・・・これはもう、料理の才能が有る無いの問題じゃない。こいつ、料理というものが何なのかということ自体が分かってないんじゃ・・・?とにかく、まずそこから教えてやらなくちゃいけないな。久々に、本気を出すか・・・。

「・・・フレイ、今からだと少し時間が掛かるけど、昼ご飯は私の手料理をご馳走してやるよ。その間お前はトリィとでも遊んでろ!」
「カガリが?一人で大丈夫なの?」
「なぁに、心配するな。何たって私は、今までに何度もアスランに手料理を振舞ってるんだ」
「ハイハイ、その話は病院で何百回も聞いたから。いいわよ別に。でもお腹が減ったから、なるべく早くしてよね?」
「ああ、任せとけ!」

 ―――さらに数十分後―――

「わぁ、すっごぉーい!まるでレストランのフルコースじゃない!これ全部一人で作ったの?」
「ふふふ、私が少しでも本気を出せばこんなもんだ。さぁ、冷めないうちに早く食べろ」
「ええ。いただきまーす!」

 まぁ、ざっとこんなもんさ。これで少しぐらいはこいつも料理ってもんが分かるだろ?それにしても何だか懐かしいな。初めてアスランに手料理を食べてもらったあの日みたいで。あの時アスランの奴、残さず全部食べてくれたっけ。『血を吐くほど美味い』って言ってホントに吐いてたしな。あっ、そういえばあいつ、『これから俺以外の人間には誰にもご馳走しないでくれ!』って言ってたような・・・?ごめんなアスラン、妬かないでくれよ?

 ドサッ!

 ん、何の音だ?・・・ってフレイ、どーした?床の上で寝るなよ。・・・おーい、フレイー・・・!?

381ザフト・赤毛の虜囚 56:2004/05/02(日) 07:59
9.母親(ママ) 8/8
[ミコト〜 もう離れちゃやだよママ]

アタシ、ミコト・ヒイラギ。
今日また、クルーゼ隊長の部屋にいるママに会った。この前、ママは怒って、アタシに
どこかへ行っちゃえって言った。ミコト、なにか悪いことしたの? でも、ママは怒るだけだった。

でも、今日のママは違った。優しかった。怒ってないって聞いたら、

「ほんとよ。怒ってない。ありがとうミコト」

って言った。笑ってた。アタシ、ママ大好き。
アタシ、ママに抱きついた。ママ、アタシの髪を撫でてくれた。優しく撫でてくれた。

アタシ、そうしてたら、いつのまにか泣いてた。うれしいのに泣いてた。
ママ、ママ、会いたかったママ。いつも一人で寂しかった。会いたかったようママ。
もう離れちゃやだ。いつもいっしょ。もう離れちゃやだよママ。

クルーゼ隊長言ってた。アタシ達、基地についたらプラントに帰るって。
ママもいっしょだよ。ぜったい、ぜーったい、いっしょだよ。

パパ…… パパは、どうしたのかな。アラスカで声がしてたパパ。パパもいっしょに来て欲しい。

パパどこにいるのかな。ママ、今度教えてね。

382ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/02(日) 08:02
これで、7章「幼子(おさなご)」から9章「母親(ママ)」まで続いていたミコトとフレイの出会いの話は、
ひとまず終わります。次は、ちょっと、いろいろ展開の見直しを行うため、ひょっとしたら時間が空くかもしれません。
その間は、フレイの番外的な章を入れる予定です。ミリィSSの方、展開伸ばして済みません。
でも、おかげで、やっとフレイSSとの劇中時間差が埋まりつつあります。

>>過去の傷
ミリィの攻撃、ラクスに意外と効いている?
プロヴィデンスX改って、どこが、Xで、どこが改なのかも気になりますが、アスランが、どこから持ってきたのかも
気になります。

>>『明日』と『終わり』の間に
ううむ、想像するだに無気味な赤のカレーですな。しかし、カガリも負けず劣らずのようで……

>>流離う翼たち
なるほど、そう来ましたか。コーディネータと戦争とのあり方を、今一度考えさせられます。
どんな道を示してくれるのか、ずっと見えなかったのですが、やっと期待が持てるようになりました。
本題は、これからですが、小説内で明らかにされること気長に待っています。

セラン軍曹と呼ばれる理由は、ボーマン艦長、もといボーマン・オルセン中尉という、お兄さんが近くにいる
からなんですね。ところで、セランさん、パイプレンチは、充分、凶器になりますので気をつけましょう。

私のSSへの疑問の方ですが、ムウとミコトは、番外編でヴィアが話していたように、両親を同じくする、
一番まっとうな兄妹です。ただ、SS内独自年表だと10歳離れていることになります。ムウの年齢は、都合により、
TV本編より若い設定になっています。

383過去の傷・125:2004/05/02(日) 10:31
「フレイ!?」
キラが慌てて駆け寄る。
(やはりな・・・怯えている・・・)
「いや・・・これ・・・私を・・・私を殺そうとした・・・」
「アルスタ−二等兵、いいかよく聞け」
「アスラン!もういいだろ、この機体は彼女の心と体を傷つけた機体だ、これに彼女を乗せるなんて」
キラがフレイを庇おうとしたが。
「お前は黙ってろ、アルスタ−二等兵・・・君は何か勘違いしている」
フレイが顔を上げる。
「君を撃ったのはこの機体じゃない、隊長だ」
フレイがハッとする。
「機体にはなんの責任もない、恨むならクル−ゼ隊長を恨め、それに乗るのが嫌なら乗らなくても構わない」
そうだわ、私なにやってるんだろう・・・機体にはなんの関係もないじゃない・・・私って相変わらず馬鹿だわ、一人に振り回されて自分だけいつも回りが見えない・・・クル−ゼ隊長は私を生かしてくれた・・・もしかしたら芝居かもしれない、私に死んでもらったら困るからかもしれない、私を生かしたくて生かしたわけじゃないかもしれない、でもそれでも・・・生かしてくれたことには変わらない。
機体に怯えたら駄目、怯えて逃げるのは以前の私、もう以前の私は忘れるの・・・。
「あ、あの!アスランさん!」
フレイはアスランに叫びながら必死に声をかけた。
アスランが振り向く。
「アルスタ−二等兵、なにか言いたいことがあるなら言ってみろ・・・」
「あ、あの!私みたいな女に乗れるか分からないけど、私もう逃げない!私、プロヴィデンスに乗ります!いえ乗らせてください!」
とたんアスランが微笑んだ。
「そうか・・・よしなら褒美をやろう」
「褒美?」
「君はキラのフリ−ダムと手を組み、俺達と実戦練習だ、君もその・・・好きな男と一緒に戦いたいだろう・・・?」
フレイの顔が赤くなった。
「待て、アスラン!なんで私がお前と手を組んだよ!私はフレイを守って決めたんだ!私はフレイの援護をする!」
カガリが声を張り上げた。
「・・・勝手にしろ・・・カガリ・・・敵になるならお前でも容赦しない」

「ミリィ・・・?」
食堂で一人ジュ−スを飲んでいたサイのもとにミリアリアが笑みを浮かべながら歩み寄ってきた。
あのあとラクスにこっぴどく叱られ逃げてきたのだ・・・。
「ねえサイ・・・」
ミリアリアは色気ある目でサイの隣に座るとゆっくりとサイの手を握る。
「ミリィ・・・?どうした?」
「ううん・・・なんでもない・・・ふふ」
不審そうな目でサイはミリアリアを見る。
「ちょっと手伝ってほしいのよ、ラクスさん・・・ラクス・クラインとアスラン・ザラの仲を引き裂きたいのよ、上手くいったら私、サイの彼女になってあげてもいいわよ」
「興味ない・・・なんで俺がそんなことを・・・」
「ねえ・・・サイお願い・・・」
そう言うなりミリアリアはサイを振り向かせるとサイの首を両手をかけた、キョトンとしているサイに構わずサイの唇にキスした、軽くではなくじっくりと押し付けるキスだった。
「サイ・・・いいでしょ・・・?」
「やめてくれ!」
抱きつくミリアリアを突き放すとサイは慌てて食堂から出て行った。
残ったミリアリアは舌打ちをたてていた。
キスしてやったのになんなのよサイは・・・ほんと役立たずなんだから・・・。

384私の想いが名無しを守るわ:2004/05/02(日) 21:25
>>「明日」と「終わり」の間に〜
カガリが気を失う寸前の記憶は、某ゲームの声優ネタからですよね?
フレイ様に負けず劣らずカガリの料理も壊滅的でしたか(汗)。
血を吐きながらも全部食べたアスランは凄い!!

385流離う翼たち・468:2004/05/03(月) 00:23
 同時刻、マドラスの近くに上陸した者達が居た。ゴムボートを引き上げて海岸の窪地に隠し、目立たないよう私服に着替えていく。それはアスランとフィリス、エルフィの3人であった。

「さて、これからマドラス基地に潜入するわけだが、もう一度確認しておくぞ。俺たちの仕事はあくまで沿岸の防御設備の確認と、脚付きの居所だ。間違っても連合兵士と問題を起こさないように」
「それは分かってます」
「私たちより、隊長の方が心配なんですが」

 エルフィが頷き、フィリスが逆にツッコミを入れてくる。フィリスのツッコミを受けてアスランは些かの怯みを見せ、エルフィが困った顔でフィリスを見ている。

「あ、あの、フィリスさん、今回はザラ隊長の気分転換も兼ねてるんですから、余り追い詰めるような事は言わない方が良いと思うんですが」
「そ、そうでしたね、すいません」

 生来のツッコミ気質からついついアスランに言い返してしまったフィリスだったが、エルフィに窘められてすまなそうに頭を下げた。そう、今回の上陸はストレス性胃潰瘍を起こしかねない状態に陥っているアスランの、言うなれば気分転換を兼ねた任務なのである。その為に同行者も良識派の2人で固められ、アスランの負担を極力軽くするように配慮されているのだ。
 今回の偵察任務はエルフィが潜水艦隊司令のモラシム隊長に具申したものだった。当初はエルフィの意見具申を歯牙にもかけずに却下しようとしたモラシムだったが、エルフィが余りにも執拗に食い下がってくる為に仕方なく彼女の話しを聞くことにしたのだ。そしてエルフィの話を聞き終えたモラシム隊長は、何故か感動した表情でエルフィに頷き、持ってきた意見具申書にその場で承認を与えている。
 敵中に偵察に赴く方が精神的に楽、というアスランの悲惨極まりない現状に同情してしまったモラシム隊長は、アスランの体調を心配するエルフィの心遣いに打たれて今回の偵察任務を許可し、支援までしてくれたのである。
 エルフィが今後の予定表を持ち出してアスランとフィリスに確認を取る。

「それでは、今日の14:00に潜水艦隊から支援のミサイル攻撃がマドラスに向けて行われます。私たちはその後のゴタゴタに紛れてマドラスに潜入、情報収集を行う事になります。旅費の関係でこちらに留まれるのは1日だけ、1泊2日となります」
「エルフィ、1泊2日って、修学旅行じゃないんだから」
「う、そうですね。でもまあ、明日の14:00までにこの回収地点に来ないと死んだと思われて攻撃開始なんで、気を付けて下さい。モラシム隊長は待ってはくれませんよ」

 エルフィはアスランのツッコミに少したじろぎならがも通達事項を伝え終えた。フィリスは自分の手に持つを取り、マドラス市街を見やる。

「それじゃあ行きますか。一応あそこは敵地ですので、気を付ける事だけは忘れないで下さい」
「うう、イザークたち、また問題起こして無ければいいんだが」
「それは大丈夫でしょう。モラシム隊長が引き受けるといってましたから」
「なら、良いんだが」

 胃の辺りを押さえながら不安そうに答えるアスランに、エルフィとフィリスは小さく肩を落としてしまう。全く、この隊長はどうしてこうもっと余裕も持って生きられないのだろうか。
 ちなみにアスランの胃痛の原因たるイザークとディアッカはというと、実はもう既に、問題を起こしてモラシムに罰則を受けさせられていたりする。モップを手に格納甲板を掃除させられていたイザークは三角帽を被った姿で右手を握り締めて文句を言っていた。

「畜生、何でアスランが偵察任務に出れて、俺がこんな所でモップかけなくてはいかんのだ!?」
「イザークよお、流石にこれ以上騒動起こすのは不味くねえか。次やったらモラシム隊長がサメの餌にするとか言ってったぜ」
「はっ、やれるものならやってみろって言うんだ!」
「ほお、ならそうしてやろうか?」

386流離う翼たち・469:2004/05/03(月) 00:26
 いきなり背後から聞こえてきたその声に、イザークとディアッカはビクリと体を震わせて恐る恐る背後を振り返った。すると、そこには何とモラシム隊長が不機嫌そうな顔で腕を組んで立っているではないか。

「あ、あの、モラシム隊長、何時からそこに?」
「ジュールが拳を握り締めて文句を言ったあたりからだな」
「あ、あ、それは、ですねえ。ディ、ディアッカ、お前からも何か・・・・・・」

 イザークは言い訳の言葉さえも浮かばなくなって友人に助けを求めようとしたが、既にディアッカはその場にはおらず、離れた所で鼻歌を歌いながら楽しそうにモップがけをしていた。

「フンフンフン〜〜♪ 俺は愉快な掃除屋さ〜ん♪」
「ディ、ディアッカ――――――!!?」

 友に見捨てられた事を悟ったイザークは悲痛な声を上げたが、ディアッカはイザークの方を見る事さえなく、イザークはモラシムに首根っこを捕まえられて引き摺られていったのである。

「さあ、インド洋がお前を呼んでいるぞ」
「ま、待って、待ってくださいモラシム隊長!?」
「たまには海水浴もいいものだ。なあに、そう滅多にサメに襲われたりはせん」
「滅多にってことは、襲われる確立もあるってことでしょうがあ!」

 悲鳴を上げながら引き摺られていくイザークを、整備中の機体から顔を出したミゲルとニコル、ジャックが見送っていた。

「あ〜る〜はれた〜ひ〜る〜さがり〜、いちば〜へつづ〜くみち〜」
「なんですかミゲル、その変わった歌は?」
「ドナドナっていう、大昔に流行った流行歌だ」
「へえ。でも、何でいきなりそんな歌を?」
「・・・・・・いや。この歌はそのまま聴くとちょっとシュールなだけなんだが、実はある国が行っていた組織的な虐殺をテーマとした歌なのだ。丁度、イザークのように処刑場に連れて行かれる囚人の歌なんだ」
「・・・・・・・・・だからですか?」
「ああ、あのイザークはまさにこの歌が似合う、そう思ったからな」
「ジュール隊長も可哀想にと言いたいですが、まあ自業自得ですね」

 連れて行かれるイザークを見送った3人には一抹の同情もありはしない。残念だが、イザークは少し懲りた方がいいと考えていたのだ。ディアッカもイザーク同様に懲りた方が良いのだが、彼は引き際を心得ているので中々法の網に掛からない。肝心な所で抜けているイザークよりもはるかに厄介な相手なのだ。

「でも、大丈夫ですかねえ、ザラ隊長たち」
「まあ、フィリスとエルフィもついていってるし、大丈夫だろ」
「最近のアスランは顔色が悪かったですからね」

 一応敵地に潜入するという危険極まりない任務に行っているのだ。3人がアスランたちを心配するのも仕方が無いだろう。
 ちなみにイザークはというと、本当にモラシムに海に叩き込まれて30分ばかり泳ぎ続けていたらしい。途中でなにやらとても大きな魚影を見たモラシムに急いで引き上げられたそうだが、詳しい事をイザークは遂に最後まで語らなかった。ただ、その時の事を聞かれるとガタガタと震えだして逃げてしまうようになったとか。

387流離う翼たち・作者:2004/05/03(月) 00:36
>> 『明日』と『終わり』の間に
も、森蘭丸!? カガリの前世は一体・・・・・・
しかしカガリも似たような物か。という事はカレー事件の責任は誰に行くのやら
アスランにとりあえず敬礼!

>> ザフト・赤毛の虜囚
ミコトさんも一緒に宇宙へ。ゲイツにでも乗るのかな。一応赤服だし
回答ありがとうございます。なるほど、兄貴の妹ですか

>> 過去の傷
フレイ様がプロヴィに、なんか、イメージが・・・・・・
カガリとアスランは仲が悪そうだし
サイはミリィの手を逃れたようですな。感心感心

388ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/03(月) 02:50
今日は執筆が間に合わなかったので感想だけ書き込みます。

>>過去の傷
アスランは言葉使いも変わって隊長の風格というか、偉そうというか。
ミリィは、やはり、まだラクスには適いませんか。サイを味方に引き込むのは失敗したし、
次は誰を…… って、すっかり悪党の器ですな。でも、ちょっと気が短いかも。

>>流離う翼たち
いいところで場面転換ですね。また話が交差するのを待ちましょう。
いまさらですが、マドラスってインド半島の東側の都市で、ムックなどでは、中立よりの赤道連合に
属する場所ですが、ここでは、連合の拠点になんですね。連合のどんな拠点なのかは、あまり説明が
無いのですが、戦艦修理や、アズが居たり、アスランまで潜入したりと、すっかり、TV本編のオーブの
ような重要な位置付けになってますね。

ちなみに、ミコトは今の予定ではゲイツ改に乗せるつもりです。

389過去の傷・126:2004/05/03(月) 09:17
「この感じは・・・この機体・・・私使えるかもしれないわね」
(いい感覚ね、それより月光蝶システムってなにかしら・・・?武器かな・・・?それからこのドラグ−ンシステムって・・・?)
(それはいわゆる・・・Gビットみたいな感じです)
(ティファ・・・)
(フレイさん、こんにちは・・・あ!この世界に来るという話なんですけど・・・駄目でした、マイクウェ−ブ施設で・・・あ、そんなことより通信が)
<アルスタ−二等兵も発進するんだ、宇宙に出る>
アスランの声だ。
<あ、はい分かりました・・・フレイ・アルスタ−!プロヴィデンス出るわよ!>

<ミ−ティア装着完了!>(これくらいのハンデはないとな)
宇宙の出た四機の機体は・・・。
<アルスタ−二等兵、君はキラのフリ−ダム、カガリのストライク・ル−ジュと協力し、俺と戦うんだ>
<アスランさんと?そんな・・・>
<これは練習だ、気負いすることはない>
<は、はい分かりました!>
<いくぞ!練習開始!>

「じゃ、じゃあ行くわよ!」
(ええっと・・・キラに言われたとおり・・・ファンネル!いって!)
そしてプロヴィデンスから、無数の飛び道具系のビ−ムが飛び出した。

(さあて、どれを狙うか、キラが厄介だな・・・しかし・・・俺はプロヴィデンスとニュ−タイプと戦いたかったんだ・・・いくぞ、フレイ・アルスタ−!)
そしてジャスティス・ミ−ティアはプロヴィデンスの放ったドラグ−ンシステムをなんとか回避しながら突っ込んだ。
(やはりまだまだ素人だな・・・)

(フレイさん、モビルス−ツ接近!)
(え!?もう来たの!?)
<フレイ大丈夫だ!>
<カガリ!?>
そしてジャスティス・ミ−ティアが無数のビ−ムの前から突如姿を現した。
(ああ・・・来たわ・・・いや)
切りかかってきた敵機、しかしプロヴィデンスの前にストライク・ル−ジュが現れシ−ルドで防ごうとする。
<ここは・・・通さん!>
<カガリ!そんなもので防げるとでも思ってるのか!>
しかし、さすがに全ては防ぎきれなかったらしくル−ジュも多少だが損傷した。

その頃キラのフリ−ダムは・・・。
「くくく・・・皆殺しだ・・・」

そして同時刻。
「キラ・・・そろそろ薬が効いてきたころかしら・・・さあ・・・殺してねキラ」
とミリアリアが部屋で一人呟いていた、不気味な笑みを浮かべて。
「殺して、殺して・・・あははは!」
(ふふ・・・だいたい十五分ってとこかしら一つしかないんだ大事の使ってねキラ・・・ふふ・・・あはは!)

390『明日』と『終わり』の間に・作者:2004/05/03(月) 09:32
>>384
 その通りです。ガンダムと関係のない声優ネタだったので使うかどうか少し迷いましたが、分かってくださった方がいてくださって良かったです。

》流離う翼たち
 フィリスさんのツッコミ気質は生まれつきなんですねw。しかしアスランは本当に苦労しているみたいですね。
 それにしてもモラシム隊長、あんなこと言っておいていざという時に焦っちゃ駄目ですよ。イザ―クにまた新しいトラウマが出来ましたねw。

》過去の傷
 アスラン、何だか無理強いしてるみたいですね。フレイ様に対してここまで高圧的になる理由は何でしょう?それにプロヴィデンスX改は月光蝶システムまで装備しているとは。ひょっとして『SEED』も黒歴史の一部?
 それとミリィ、キラに何飲ませたんだい?凄いことになってるけど・・・。

》赤毛の虜囚
 ムウさんとミコトちゃんは兄妹なんですね。本編と年齢が異なるとありましたが、何歳になるんでしょうか?それと他にもそうした設定の違うキャラはおられますか?

391過去の傷・127:2004/05/03(月) 10:14
<なんか、キラの様子が変だ!>
<アスランさん!キラが!>
<キラがどうした・・・?>
一時止まった三機。
そしてフリ−ダムが駆けつけてきた。
<僕の邪魔をするなら・・・死ぬよ?皆・・・皆殺しだ>
(なにかにやられたな・・・薬か?それとも・・・おそらく十五分程度で切れるだろう・・・仕方がない)
<アルスタ−二等兵にカガリ!キラは薬にやられている、十五分程度と思うが・・・それまで粘るぞ!今日はこれで終わりだ!>
<分かりました、これも練習のつもりで・・・>

<そら・・・いくよ!>
フリ−ダムがプロヴィデンスに遅いかかってきた。
「キラ・・・」
ルプス・ビ−ムライフルを放ってきた。
しかし、Iフィ−ルドがそれを無効化する。
そしてすかさずドラグ−ン・システムを放つ。
そしてそのまま突っ込む。
無数のビ−ムを回避しているフリ−ダムにプロヴィデンスが斬りつける。
(キラって・・・たいしたことないわね)
いや、機体の性能のおかげだと思うが・・・。
そして・・・。
<フレイ・・・?僕は・・・>
<よかった、気づいたみたいね・・・もう十五分過ぎたころかしら>

機体から降りた四人は。
「気づいてないの?」
「うん、どうも意識がなくてさ」
「そう・・・」
フレイはキラを気遣っていた、そして背中を優しくさする。
「もう・・・心配かけないで」
「フレイ、ごめん・・・ありがとう・・・」
「もう・・・馬鹿」

一人でいたアスランは・・・。
「・・・・・!」
「アスランさん・・・」
「君・・・」
ミリアリアは歩み寄るとアスランの隣に座る。
なんだ、生きてたんだ・・・でも少しやりすぎたかしら。
「どうしてここに?」
「アスランさんがとっても心配で・・・」
「俺が・・・?」
ミリアリアはアスランを抱きしめた。
「な・・・君」
「言ったはずです、私も一緒に戦うって・・・貴方とともに・・・」
アスランは抵抗もせずされるがままになっていた。
「疲れたよ」
「なら・・・私の部屋に来ませんか?」
「いや、いい・・・」
「ならアスランさんの部屋に行ってもいいですか」
それにアスランは戸惑う。
「いや、しかし・・・」
「分かりました・・・」

392流離う翼たち・470:2004/05/03(月) 23:48
 基地の食堂でフレイはセランとボーマンの2人を加えて食事を摂っていた。セランは上官とはいえ経験の浅いフレイを何かと気にかけてくれており、フレイもそんなセランに随分気を許していたのだ。そしてボーマンもパイプレンチを食らった頭に止血を施して包帯を巻いてセランの隣に座っている。
 フレイはスパゲティを食べながらセランに自分の疑問をぶつけてみた。

「ねえセラン軍曹、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「はい、何ですか少尉?」

 セランは食べようとしていたハンバーグを止め、フレイの方を見る。フレイは少しだけ躊躇った後、その疑問を口にした。

「軍曹達は、どうして大西洋連邦軍にいるの?」
「は?」
「大西洋連邦はコーディネイターに優しい国じゃないわ。なのに、同じコーディネイターと戦ってまでどうして?」
「ああ、そういう事ですか」

 納得したのか、セランはおかしそうに笑っている。ボーマンの方も同様で、どうもこの2人はキラとは何かが違うらしい。

「私たちはこの町で生まれて、この街で育ったんですよ。その故郷を攻撃してきたプラントの連中なんかにどうして肩入れしなくちゃならないんです?」
「全くだな。同胞だか何だか知らんが、行った事も無いプラントや、顔も見たことも無い連中に義理なんぞ感じんよ」
「そういうものなの?」
「当り前ですよ。第1、同胞だから味方しろなんて冗談じゃないです。会ったことも無い遠くの親戚より、近所の人たちの方が大事です」

 セランの答えに、フレイは動揺を隠せない。キラは同じコーディネイターと戦う事にあれほど苦しんでいたのに、そのコーディネイターから全く違う意見を聞かされたのだ。2人とキラは生まれた場所も育った環境も違うというのは分かるのだが、こうも違うものだとは。
 考えこんでしまったフレイに、ボーマンが声をかけた。

「何でそんな事を聞くんだ?」
「・・・・・・アークエンジェルにも、コーディネイターがいるんです。かれは同じコーディネイターと殺しあう事に苦しんでました」
「なるほど、そういう事か」

 ボーマンは納得して頷いた。だが、セランは納得していなかったらしく、むしろ糾弾口調でそのコーディネイターに文句を付けた。

「そのコーディネイターは覚悟が足りないんですよ。そりゃ色々事情はあるんでしょうけど、一度こっちに付くって決めたんなら悩んでどうするんだか」
「でも、相手には友達も居るっていうことだし」
「それがどうだって言うんです。私たちの親戚だってプラントに居ますよ。会った事は無いですけどね」

 セランの反論にフレイはまた衝撃を受けた。何でそんなに簡単に言えてしまうのだ。戦争で敵同士だという事は、自分でその親戚を殺してしまうかもしれないというのに。

「なんで、そんな風に割り切れるの?」
「そんなの簡単です。さっきも言いましたが、私は会った事も無い親戚より、両親とこの街とそこに住んでる人の方が大事だからです。親戚が居るかもしれないから、何て考えてたらこの街も守れないですし、私たちも死んじゃいますよ」
「そういう事だな。そいつがどうかは知らないが、俺たちは身近な人たちを守りたいから軍に入った。それが全てだよ」
「でも、大西洋連邦軍だと、色々と問題も起きるんじゃないの。嫌がらせをされたりとか、ブルーコスモスに狙われたりとか」
「そういう事も確かにありますけど、それくらいは仕方ないですよ。それに隊の仲間達は良くしてくれますし、アルフレット少佐が色々と手を回してくれてからは嫌がらせも無くなりました。兄さんなんかは勲章も貰ってるんですよ」

 どうやら自分が考えていたより2人はずっと苦労していたらしい。だが、それを全く感じさせないのは、キラと違って1人ではなかったからだろうか。それにアルフレットみたいな上官も居たのが大きかったのだろう。

393流離う翼たち・作者:2004/05/03(月) 23:51
>> 過去の傷
月光蝶って・・・・・・なんでそんな物騒な物を。世界を滅ぼす気かアスランは?
しかし、キラって何使われたんでしょうね

394私の想いが名無しを守るわ:2004/05/04(火) 03:25
>>流離う翼たち
このSSの大西洋連合はまだアルフレッドの影響力が浸透すると
いう点でマシなというか、より勝利に貪欲な組織に見えますね。
ちょっと間の抜けたというか油断しっぱなしのザフトと対照的です。
>>過去の傷
「月光蝶である」のあれですね。私はダブルXとプロヴィデンス
のMIXを想像してました。アスランは、前の戦争だけでは戦い足
りないという感じですね。㍉の意図も見えてきた感じがします。
>> ザフト・赤毛の虜囚
フレイ様とミコトの関係が親密になればなるほど、ゲイツ改に
乗るという設定が不安を誘いますね。キラともぶつかることに
なるのでしょうか。じっと次の展開を待つことにしましょう。
>> 『明日』と『終わり』の間に・お昼過ぎ
カガリ成分がかなり強いらしいという噂はよく聞いてます。
「ごめんなアスラン、妬かないでくれよ」←調子に乗るカガリ
の顔が目に浮かぶ一言ですね。フレイ様大丈夫だったのかしら。

395ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/04(火) 08:50
用意していた番外的な新章。最終チェック中に、サイズ超過になって時間切れです。投下は今晩以降になります。
感想を聞いていると、「ヴィアとミコト」の番外は、9章「母親(ママ)」の後にすれば良かったですね。
間に、ミリィのミナシロ編挟んでしまいましたからね。

>>過去の傷
プロヴィデンスXのXって、あっちのXでしたか。ティファは、出て来れなくて残念です。
ミリィは一体何の薬を使ったんだ。キラを誘惑している時に一服盛ったとすると、かなり遅効性。
意外と、隠れた策略を用意しているみたいで、これからのミリィ vs アスラン・ラクス戦線に期待。

>>流離う翼たち
セランとボーマンの戦う理由、キラと同じなんですね。フレイ様は気づいていないようですが、
キラにとっての近しい人は、フレイ様を始めとするヘリオポリスの友人とともに、アスランがいるはずです。
それが、二人との考えが違うように見える理由なのでしょう。そのアスランもマドラスに潜入したようですし、
フレイ様、その辺に触れることができるのかな。そういえば、この世界ではトリィはいるのでしょうかね。

>>390
ムウは、24、5歳といったところです。当然、マリューさんやナタルも、それにつれて若干シフトする
ことになります。うちのSSの年齢設定で、一番、影響が大きいのはジョージ・アルスターでしょうね。
かなり老け込んでいることになっています。その他は、年齢がはっきりしないのを自分なりに
決めていっているぐらいです。ただ、設定は変えていないですが、フレイ達は、自分では、
大学生くらいのつもりでいます。

396過去の傷・128:2004/05/04(火) 12:15
「ちょっと・・・いいか?」
パイロットロッカ−でフレイはアスランに声をかけられたのだ。
ス−ツをまだ着ていたが仕方なく座る。
「君は・・・キラが好きか・・・?」
突然の質問に戸惑いながらフレイは頬を少し赤く染めると小さくうなずいた。
「はい・・・」
「そうか・・・あいつは・・・泣き虫で・・・甘ったれで・・・優秀なのにいいかげんな奴で・・・でも優しい奴で、ほっとけない奴だ」
「そうですよね・・・泣き虫で、でもそこが可愛いんですよ・・・私も何度か泣きつかれて慰めたことが」
「そうか、大変だったな」
「いえ、そんなことないです」
アスランは微笑んだ。
「あいつが地球軍にいた理由も残った理由も君がいたからかもしれないな・・・」
「え・・・?」
驚いたようにフレイはアスランを見た。
「いや・・・アルスタ−二等兵、君に頼みがある」
「え?はい、私に出来ることでしたら・・・」
「キラを見れば分かるが君はあいつにとっては世界の中で一番の女性だ・・・」
「え・・・?私が」
そしてアスランは地面を見ると告げた。
「だからあいつを・・・キラを頼む・・・」
フレイは微笑んだ。
「はい!」
この人にとってもキラは大切なのね・・・だから私はこの人のためにもキラを愛して本当の想いでキラを守るわ・・・。
「あの・・・アスランさん」
「アスランさんこんなところにいたんですか〜♪」
少女の声がしたので二人が振り向いくといつもより綺麗なミリアリアがいた。
「君・・・」
「う〜ん、やっぱり入浴後はいい気持ちね」
そうか・・・入浴後なのだ、それでいつもより色気があるのだろう・・・それから香水だろうか、いい香りがミリアリアからした、普通でも可愛いミリアリアがさらに可愛くみえた、アスランは美少女二人を目にして婚約者である歌姫のことなど頭の片隅にも置いてなかった。
アスランもついミリアリアに見とれてしまった、フレイには悪いがパイロットス−ツの彼女よりは今のミリアリアは色気や魅力があり、目がいってしまうのは当然だろう。
「アスランさん、探しちゃったわよ〜♪」
「あ、ああ・・・すまない・・・」
そしてアスランの手を取ると立たせてフレイに見せつけるようにどきまぎしているアスランを抱き寄せ腕を組み胸のふくらみをアスランに感じさせる。
「アスランさん♪」
「・・・・・・」
フレイというと・・・予想通りうんざりした様子でいちゃいちゃしている二人をあきれた目でため息をつきながら眺めている。
「ここ雰囲気ないわ、私の部屋にでも行きましょう?」
甘える声で言われ戸惑うアスラン。
フレイが立ち上がる。
「私行くわ・・・お邪魔みたいだから・・・」
そう呟くとフレイが立ち去る。
「あ、アルスタ−二等兵・・・」
アスランとしても面白くなかった、フレイとまだ話したかったし、ア−クエンジェル内でのキラの話もまだ聞きたかったのだが・・・とんだ邪魔をされた感じだ。
そしてアスランはぎょっとした・・・ミリアリアがフレイの後姿を敵意のような眼差しで・・・警戒するように睨みつけていたのだ。
「君は・・・彼女が」
「ええ、私・・・あの女が大嫌いなんです」
さっきまでの甘えた声や表情は完全に彼女からは消えていた。
全てフレイに見せつけるためだったのだ。

397散った花、実る果実40:2004/05/05(水) 02:27
「地球の人々と私たちは同胞です。コーディネイターは決して進化した違うものではないのです。婚姻工作を行ってもなお、生まれてこぬ子供達。
すでに未来をつくれぬ私たちの、どこが進化した種だというのでしょう」
スクリーンの中で切々と訴える彼女。その声と顔は覚えのあるものだった。
「愛する人々を失ってもなお、戦いつづけるその未来は、間違いなく待つものなのでしょうか。」
ナチュラルとコーディネイターの併合を説く彼女の演説に対して政治家の反論が入る。
「苦しくとも今を戦い、そして、平和で輝かしい・・・・・」
プツッと言う音を立ててスクリーンのスイッチが切られた。
ラクス・クライン。ザフトの歌姫。
初めて見たとき、なんて不快なコなんだろうって思った。
コーディネイターのくせに、ナチュラルの私たちの艦で馴れ馴れしく近づいてきて。
いかにもお嬢様といった振る舞いでイライラさせられた。
でも、スクリーンの彼女は違う人のように見える。
ぽやぽやして無神経なことを言うばかりだと思っていたけど・・・・このコ、こんな事考えていたのね。
『愛する人々を失ってもなお』・・・・・彼女は愛する誰かを失ったのだろうか。
私は、・・・・これからどうしようと言うのだろう。
今なら彼女と話せる気がした。
彼女は、あの時、あの爆発を見て、何を思っただろう。
あの激しい戦闘の中、静かに歌を歌いながら、何を考えていたんだろう。

「ラクス・クラインには、議長も大分手を焼いておいでのようだ。よもやそれで我等に帰国命令出たわけでもあるまいが。」
嘲笑うようにそう言った仮面の男はモニターのスイッチを切り、こちらを振り返った。
「しかし、私には信じられません。・・・彼女が反逆者などと。」
血気さかんな顔に傷のある少年がその言葉に反発する。
「そう思うものがいるからこそ、彼女を使うのだよ、クライン派は。君たちまで惑わされてどうするね。」
仮面の男はそれに動じることなく諭す様に続ける。それがまるで彼の演説であるかのように。
「様々な思惑がからみあうのが戦争だよ。何と戦わねばならないのか・・・・見誤るなよ」
そう言って去っていく彼の背中を、銀髪の少年はは睨みつけるようにいつまでも見つめていた。

398散った花、実る果実41:2004/05/05(水) 02:28
「あの・・・リスティア。ラクス・クラインって・・・・・」
私の質問に、なんでもない事のように彼女は答える。
「ああ・・・ザフトの歌姫。ちょっと前までは慰問団の中心というか・・・・追悼式で歌を歌ったり、私たちの平和のシンボルとして活躍していたのだけれど・・・・先日、戦艦を奪って離反したらしくてね。」
え・・・・・?
「離反て・・・・・どうして?」
「彼女は・・・・コーディネイターを特別な種だとは考えていないようね。コーディネイターとナチュラルは同じ人間だと・・・・・そう、主張しているわ」
なんで・・・・そう思えるのかしら・・・・・・コーディネイターであることに優越感を持たず?
「それを聞いて・・・・あなたはどう思う?」
「え・・・・どう思うって・・・・・」
リスティアは意外そうに問い返す。
「だって・・・ラクスは今まではむしろコーディネイターの象徴だったわけでしょ・・・?それが・・・・コーディネイターを否定する側にまわっている。それって・・・・コーディネイターの側からすればどう思うものなの?」
「・・・・そうね・・・・・・」
彼女は随分考え込んでいるようだった。
「コーディネイターとして・・・・っていうのはちょっと答えにくい面もあるわね。私個人の意見になっちゃうもの。ただ・・・・彼女の言うことが全部間違ってる、とは・・・思わない・・・・・・・」
「それって・・・・・・」
「誤解しないで、ナチュラルを認めたわけではないわ。でも・・・第二世代、第三世代とコーディネイトを重ねるに従って低下する出生率・・・・不安を覚えるのは確かだわ・・・・・だからこそ・・・皆彼女の言葉に動揺せずにはいられないのでしょうね・・・・・」
「コーディネイター自身も、自分達のありように不安を抱いている・・・・・?」
「ただ、彼女の言うことが全面的に正しい、とも思わないわ。出生率の問題に関しては、これからそれを解消するためのコーディネイトがきっと見つけ出されると思うし・・・・それに・・・・・」
「それに?」
促すと彼女は自分を励ますように一つ頷いて言葉を続けた。
「コーディネイターはやはり優れた種よ。みてごらんなさいよ、ナチュラルとコーディネイターの能力にいかに格差があるか。今更コーディネイターが間違ってました、だなんて・・・現実を見ていないにも程があるわ。」
確かにコーディネイターとナチュラルには歴然とした能力差がある。でもナチュラルにもコーディネイターと比べて能力に遜色のない者もいる。
ナチュラルとコーディネイターに違いがない、とは今の私にも思えない。でも、初めから違う種なのだと、共存できないのだ、と他者を排除しようとする今の戦争は・・・・・・

ラクス・クラインの演説は、やはりザフトの意識にも影響を与えているようだった。
最初の頃のピリピリした空気はなりをひそめ、私と話してナチュラルを知ろうとするものも少なくなかった。
「君、ナチュラルにしては美人だよね。コーディネイターの血は入ってないんだよね?」
「ナチュラルは遺伝子を操作せずに出産するけど、どうなの?例えば遺伝子異常があったりとか、極端に能力の低い子供が産まれて来たり、とか考えて怖くなったりしないの?」
その意見にははっきり言って失礼なものも多かったけど、人間扱いして私と向き合って話してくれる人がいる、というのはいいことに思えた。
「私はコーディネイターではないわ。だから捕虜としてここにいるの。地球軍にはほとんどナチュラルしかいないわよ。美人?ありがと。パパとママからの贈り物ね。私のママ、美人だったんだから。」
「ナチュラル能力が皆低いわけでもないわよ。遺伝子はいじらなければ確率の問題なんだから、コーディネイターより能力的に高い子供が産まれる確率だってあるわ。遺伝子異常は、考えられなくはないけど・・・でも、ナチュラルだって、遺伝子異常の検査はするし、遺伝子異常があって、それで遺伝子操作することまでは否定してないわよ。」
私は知った。コーディネイターとナチュラルの間には大きな誤解があることを。
コーディネイターを生み出した一世代目はどうだかわからない。
でも、2世代目、3世代目になると、ナチュラルに対する知識そのものに偏りがあり、コーディネイトによる能力付加がむしろ標準だと考えられている節があり、ナチュラルに出産するということは遺伝子上欠陥の生じる可能性が高かったり、能力が平均より劣る、というように捉えられているらしかった。

399散った花、実る果実/作者:2004/05/05(水) 02:49
お・・・お久しぶりです。すいません。
ちょっとばかし忙しかったのと鬱入ってたので投下控えてました。
未熟なもので、精神状態が話に影響出やすいのですねえ・・・・

>>過去の傷
み・・・ミリ・・・怖・・・・・・・
なんだかタンクトップフレイ様みたいになってますが・・・・・
しかしアスランにフレイ様が理解してもらえたみたいでよかった。これで嫁姑問題は解決ですねって、あれ?(笑)

>>流離う
セラン、えらい清々しい!ここまで言い切れる彼女は素晴らしい。
まあ、会ったことのない親戚と兄弟のように過ごしてきた親友と比べてしまうのはキラには酷な気もしますが。
放送中「キラ、どうするんだ、はっきりしろ!!」って思った事は確かに一度や二度じゃないですねえ・・・

>>赤毛の虜囚
ミ、ミコトちゃんが!えっらい可愛いんですけど!!!
もうキラとフレイとミコトちゃんで三人で仲良く暮らしましょうよ、そうしましょう。
・・・って血迷ってしまう位、ミコトちゃんに萌えてしまいました。(汗)
幸せになってもらいたいものですねー。

>>明日と終わりの間に
カガリ一人称、中々いいですね。感じ出てます。
いやー、しかし・・・・カガリもですか・・・・そうですか・・・・・(爆笑)
アスランの一言に愛を感じますね。アスランはそれでも食べるのですね。頑張れアスラン!!
>>Last War
キラの成長を感じました。
今までのキラだったら、アスランを止めることまではできず、また苦しんでいたことでしょう。
続きが気になりますね。

>>キラ♀フレイ♂
キラの不信感が育っていると思ったのでほのぼのデート(未遂だけど)は意外でした。
まあまだそこまで不信感を抱いているわけでもないのでしょうか。
しかしカガリのシスコンっぷりは・・・・犯罪に走らないように注意、でしょうか。w

>>へリオポリス
フレイ様はまだキラへの想いに目覚めてはいないのですね。
うーん、ちょっとつらそうな感じ。

>>リヴァオタ
いつもリンクしているイラストや写真はご自分で調達してるんでしょうか。
すごいですね・・・・・

400ザフト・赤毛の虜囚 57:2004/05/05(水) 08:55
10.親友 1/8
[ジェシカとミーシャ]

私の前に座っている二人、ジェシカとミーシャ、二人とも私の親友。

「フレイ、いい加減白状しなさいよ」
「何よ、ジェシカ。何のことよ?」

「とぼけるんじゃないわよ、アンタの彼氏、サイのこと。どこまでいったのよ。もう、したの?」
「ジェシカ、サイとは、そんなんじゃ無いんだから」

「でも、今日会うんでしょ。今夜はホテルかしら」
「ミーシャ、そうだけど、今日はパパのパーティだし、私、パパと泊まるから。サイだって両親来てるし」

「ホントかな、二人抜け出して……」
ジェシカとミーシャが声を揃えて言う言葉に、私は癇癪を起こす。

「いい加減にしてよ、二人とも!」
私は置いてあるパフェをひっくり返さんばかりにテーブルを叩きつける。

ここは、ミナシロ市ショッピングモールの、とある喫茶店。ヘリオポリスの工業カレッジに
在学しているサイが、二週間の休みでオーブに帰って来る。家族ぐるみ、兄妹のように頻繁に
会っていたのに、ヘリオポリスに行ってから、長期の休みにしか会えなくなったサイ。
メールやビデオレターのやりとりはしてるけど、直接、会うのはやっぱり違う。サイに会いたい。
サイの表情を間近で見たい。パパの仕事のパーティが、ここミナシロ市で開かれ、サイも両親と
パーティに来るということで、私はサイと事前に、ミナシロのショッピングモールで待ち合わせをしたのだ。

ところが、それをジェシカとミーシャに気づかれた。結局、朝から呼び出され、買い物に
付き合わされた上に、質問責めにあっている。

私はサイとの約束で、婚約を隠しとかなきゃいけないから、いろいろと突っ込んで来る二人を
かわすのに大わらわ。私とサイとのこと、あること無いこと想像して、もう、なんてやつらよ。

「まったく、のんびりしてるんだからフレイは。ぼやぼやしてると、他に取られるわよ」
「別に、それで一生決める訳じゃなし、他にも男いるんだから、堅苦しく考えないでさ」

「一線越えちゃえば、男なんて変わるから。思い切って、こっちから言っちゃいなよ」
「やってみて気に入らなかったって、平気だから、お試し期間だと思って」

「私の彼なんて、あの後、まるで手のひら返したように態度変えたわよ。今までの奥手は何だったのよ」
「男なんて、いっぱい居るし、フレイなら、ちょっと着飾れば、みんな寄って来るわよ」

「お試しって、人のこと、なんだと思ってるのよ……」
私はミーシャの言葉に、後ればせながら、ぼそっとツッコムけど、まるで気づかないように、
二人はハイペースで、話し続ける。

そりゃいいわよ、二人とも男の子と付き合い上手だし。ジェシカなんて、何度、彼氏の話を聞かされたか。
もう微に入り細に入り、私、顔を真っ赤にして、まともに聞けなかった。ミーシャは、そこまで
いかないけど、結構もてるって。特に、港にあるイベント場では、そうらしい。他人を見る目も特別。
あの人と、あの人はデキてるとか…… 二人とも男なんだけど……

ジェシカとミーシャ、二人との付き合いは長いけど、私はなんとなく距離を感じる。
サイのこと隠していることもあるけど、どうも二人のノリには付いて行けない。基本的に自分が
面白がれば、みんな喜ぶと思っているのよね。要するに自分勝手。私だって、まあ、そんなところあるけど。
人が困ってるの察して話を聞くとかいう訳でも無い。別に、ジェシカとミーシャが嫌いだって訳じゃないけど、
これで親友って言えるのかな。

「もう行くわよ。パーティの前に、パパと待ち合わせしてるし」
「パパとだなんて嘘ばっかり」
「ちょっと、フレイ逃げる気、ちゃんと答えてよ」

サイが待ってるんだから、もう早く行かせてよ、二人とも……

401ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/05(水) 08:59
フレイSSの番外的な新章開始します。テーマは親友。さて、うまく書けているでしょうか。

>>過去の傷
ミリィはアスランに標的を変えても、フレイ様への敵視は変わっていないみたい。
アスラン、戦闘訓練では偉そうでしたが、フレイ様を認めてるんですね。よかったです。

>>散った花、実る果実
お久しぶりです。カーペンタリアに着いてからの話ですね。
ザフトのフレイ様に対する接し方も変わって、随分、打ち解けた雰囲気になっていて微笑ましいです。
だけど、ミリアリア・リスティアのように、まだ、戦争の目までは捨て切れていないのでしょうね。

402過去の傷・129:2004/05/05(水) 13:07
「そうなのよ!すごいでしょ、私あのキラと互角だったんだから」
夜の食堂だ、フレイは当然、キラ、カガリ、アサギ、マユラ、そしてラクスがいた。
ジュリはサイの部屋にでもいるのだろう。
それを入り口からミリアリアが見ているのだ。
実戦練習のことを自慢しているフレイを見て、ミリアリアは正直面白くなかった。
ふんなによ、どうせ練習なんでしょ、馬鹿じゃないの?キラが本気で戦うわけないじゃない、手を抜いたに決まってるでしょ、それに機体の性能のおかげに決まってるわ、それなのになんなのよあの女は、そこまでして自慢したいのかしら、まあフレイの思いつくことだわね。
「でもフレイ、君にそんな才能があったなんて」
と、キラがフレイを褒める。
ああ、やだやだ、いやになるわね、恋人同士褒め合っていちゃいちゃしてるわ、このバカップル。
「すごいですわフレイさん」
「ふふ、ありがとうラクス」
今度はラクスだ。
駄目、私はあの中に入ってはいけない、どうせ私が行ってもしらけて暗くなるのは分かってるもの、そしてフレイと喧嘩になるのも。
そう・・・ミリアリアはいつのまにか皆と距離が離れていたのだ。
特に気に入らないのが、フレイが輪の中にいるということ、ア−クエンジェルの頃とは立場が逆になってしまった、あの女がなんで皆と溶け込んでいるのよ、おかしいわ、こんなことがあっていいの?いいわけないわ。
あの女は悪い女なのよ?なのに・・・そうよ、もうここはア−クエンジェルじゃない、ト−ルはいない、去年は楽しかった、もう艦長はマリュ−さんじゃない、歌姫のくせに規則にいちいちうざいくらいうるさいラクス・クライン。
キラだってそう、もうキラはまるで私のことは忘れたみたいにフレイといちゃいちゃしている、少し私に裏切られたからもう私のこと忘れるなんて私に対する気持ちなんてその程度のものだったのよ。
ああ、もうここにいるのもいやになるわ。
私はフレイの顔も見るのがいやで食堂の入り口を後にした。
あいつ等なんか皆いなくなればいいのに・・・。
ト−ルがいないのになんであいつ等がいるのよ・・・。
あ、アスランさんは・・・?
ミリアリアは笑みを浮かべた。

「プロヴィデンスに問題なしと・・・」
コンピュ−タ−を打ち込んでいるアスラン。
「しかし、彼女にあれだけの力があるとは・・・しかしあのキラにな・・・」
そんなとき誰かが入ってきた。
「アスランさん、いたんですか」
ミリアリア・ハウだった。
「あ、ああ・・・」
「お疲れ様でした、疲れたでしょう?」
ミリアリアは座ると微笑んだ。
「いや、そんなに」
「私が癒してあげます・・・」
そして抱きついてきた。
「私を抱いて・・・」

403過去の傷・作者:2004/05/05(水) 13:29
>>散った花 実る果実
ラクス嬢に対してのフレイ様ですね、真実の彼女を見たフレイ様の感想が良かったです、フレイ様も少し見直した感じですね。
嫁姑・・・笑ったです。
>>ザフト・赤毛の捕囚
フレイ様の必死が伝わってきます、これはサイとのことですね、しかし・・・女の子はこんな話題が好きですからね、この頃はフレイ様もサイが好きだったのかもしれませんね。
それから親友をテ−マにした新章も期待させていただきます、これからも頑張ってください。
それにしても作者様は女性同士の会話が上手なんですね。

404散った花、実る果実42:2004/05/05(水) 21:16
隊員のお茶を入れ、洗濯をし、クルーゼ隊長の帰りを待つ毎日。
帰還命令が出たとはいえ、地球での仕事の後始末や、色々片付けなくてはならないことが多く、すぐには宇宙に出発することはできないようだった。
ラクス・クラインの演説により多少軟化された兵士達の反応によって私は救われていた。(主にそれは男性兵士によるものだった。男って、男って・・・ナチュラルもコーディネイターも一緒よね!)
気持ちが落ち着いてくると、周囲に対する好奇心も芽生え、許される範囲で歩き回ったり、クルーゼ隊長のデスクの引出しを見たり・・・ついしてしまっていた。まあ、軍事機密がこんなところに残っているはずもないのだけれど。

この薬・・・・・・一体なんなのだろう。
一日に何度も、彼はこの薬を口に運ぶ。
何か持病でも持っているのだろうか。
遺伝子操作により頑健な体を持っているコーディネイターが、何故・・・・・?
普段は健康を害している様子は見られなかったけど・・・

405散った花、実る果実43:2004/05/05(水) 21:17
プシューッ
無機質な音をたて扉が開く。
私はトレーに薬を乗せ、水差しからコップへと水をうつす。
「・・・・・どうぞ・・・・・・」
クルーゼ隊長の薬の時間はもうすっかり覚えてしまった。
捕虜である私が大して重要な仕事を任せられているはずもないので、薬の時間にはなるべくこの部屋に戻って用意するよう、心がけていた。
「あの・・・・宇宙へは、いつ・・・・・私も一緒に行くのですよね・・・・」
「今すぐというわけにもいくまいよ・・・・私にも、隊にもまだ、片付けねばならない仕事がある・・・・・地球に残る隊に任せられればそれに越したことはないのだが、例のアラスカ戦で大分人数を減らされたからね・・・人手不足は否めない、と言ったところか・・・・・」
捕虜である私に詳細が明かされることはないが、地球である仕事を済ませたら宇宙へ上がるように、との命令が下っているらしかった。
それにしても彼は私に軍の事情をしゃべりすぎている気がする。
私の信用を買うため?それとも逃げられはしないという安心感から・・・・?
「ラクス・クラインの演説は・・・・・皆に不安を与えているようですね・・・・」
「おやおや・・・・この間のテレビ演説だけを見て言っているわけでもなさそうだね・・・・君にそんなことまで言っている兵士がいる、という事かね?」
彼の口調にかすかな不快感が混じる。
「いえ・・・・そういうわけでは・・・・お茶を運んだりした時に噂話を耳にしただけです」
「ほう・・・・そうかね。時に君はどう思うね?」
私は彼の意図が読めず、問い返した。
「どう・・・・とは?」
「ナチュラルとコーディネイターは同じ種なのか。完全に決別すべきか、和解すべきか。まあ、君の父上のことを考えると・・・・おのずと答えが出てくるという気もするが。」
「父のことを・・・・ご存知なのですか」
意外に思ったが、すぐに当然のことだと気がついた。私は名前、所属共に隠してはいないし・・・・事務次官である父の名は、コーディネイターにも知られて不自然でないものであったから。
「ああ・・・・ブルーコスモスの一員としても活躍していた、とか。君もそれで地球軍に志願したのかね?」
・・・ブルーコスモス・・・?
「あの・・・・それはどういう・・・・・?」
すると彼は意外そうに答えた。
「知らなかったのかね。君のお父上はブルーコスモスに所属して、それなりに名をあげた人物だ。」
そう・・・だったの。だから、パパのあれほどまでのコーディネイターへの嫌悪・・・・・
「コーディネイターなんか大嫌いだったわ・・・・皆死んじゃえばいいって思った・・・・・」
気がつくと口をついていた、誰にもいえなかった私の心。
「パパが死んで・・・・守るって言ったキラが、大丈夫だって言ったのに、パパが死んで・・・・・キラは、戦って、戦って、戦って・・・そうやって死んでいくことしか許せないってそう思った・・・・・」
何故だか止まらなかった。パパの知らない面を聞かされたからかもしれない。周りに味方のいないこの状況に疲れてしまったからかもしれない。
何故だか私は言葉を止めることができなかった。
「なのに・・・・キラは優しくて・・・・馬鹿よ、キラは・・・・・・私、キラを許せないのに・・・許しちゃいけないのに・・・・なのに・・・・」
思考がぐるぐるまわっている。私、とっくにキラを許していた。キラにひどいことをした。
「いっぱい傷つけて、泣きながらキラは戦って・・・・守るって、私の言葉なんて嘘なのに・・・・あんなに傷つけたのに笑って、『帰ってから』って・・・それきり・・・・・・・」
ふと気がつくとすぐ目の前に白い軍服があった。次から次へと流れる涙はしみ一つ無いその軍服に吸われて水の跡を作り・・・・私は背中に暖かい腕を感じていた。
「フレイは、パパが死んだから、その復讐で軍に入ったのかね?」
「そうよ・・・・パパが死んだから、コーディネイターのキラのせいでパパが死んだなんて、許せなかった!キラも苦しめばいいってそう思った!私のためにコーディネイターを殺せばいいって・・・・でも・・・・・・・」
「でも?」
やさしく髪をなでながらパパが言う。
「パパ・・・ごめんなさい、私何もできなかった!自分で戦うことも、キラを利用しきることも!何もできなかった!ザフトに連れてこられても結局、死ぬのが怖くてザフト兵一人手にかけることもできなかった。ごめんなさい!ごめんなさい!!」
私は子供のように泣きじゃくり叫んでいた。
思えば軍に志願してからこんな風に心をさらけ出すことはできなかったのだ。
この人は私のパパではない、そんな声が理性の片隅でしたけれども、人の体温と髪を撫でる優しい手つき、そして何より穏やかなパパの声で、すっかり私は緊張の糸が切れてしまっていたのだった。

406散った花、実る果実44:2004/05/05(水) 21:18
────フレイ・・・私の大切なフレイ・・・・
パパの声・・・・一番大好きだった・・・・・・・
────コーディネイターは、極めて不自然な種だ。彼等は人より優れた能力が欲しいがために、利己的な理由で遺伝子操作を繰り返しているのだよ。
でもパパ・・・・子供は自分の産まれ方を選ぶことはできないわ・・・・コーディネイターとして産まれた彼等は・・・・それが彼等自身の責任ではなくても・・・それでも忌避されねばならないものなのかしら・・・・・・
────フレイ、私のフレイ。おまえは騙されているのだよ。みてごらん、コーディネイター達のナチュラルへの蔑視を。そして自らの子供にコーディネイトを繰り返す親のなんと数多いことか。
でもパパ・・・それで苦しんでいる人もいるわ・・・・・
────フレイ・・・・可哀想に・・・・・お前は惑わされているんだよ。可哀想に、こんな所に連れてこられて疲れているのだろう・・・彼等のあの化け物じみた能力を見なさい。あれがなんと不自然な事か。
そんな風に言っちゃいけないわ・・・だって・・・彼等はただ、自分の子供達に能力を、あるいは美しい容姿を与えてあげたかっただけ・・・・彼等も最初から傲慢な思想や欲にまみれてコーディネイトをしているだけではないのよ・・・・・
────フレイ・・・・それでも現状はコーディネイターによるナチュラルへの蔑視に満ちている。あのような不自然な生物に人間の歴史を乗っ取られても良いと言うのかね?否!それは許されるべきことではない。
パパ・・・パパ、やめて。そんな風にどちらかを全否定してはいけない。それじゃこの戦争は終わらない。こんな悲しみを増やしていくのはもうたくさんよ。もう嫌なの。誰かが泣くのは、つらい思いをするのは、もう嫌なの。
────フレイ、何を言っているんだい?誰よりコーディネイターへの嫌悪感を持っていたのは君じゃなかったのかね。ほら・・・・・

────コーディネイターの癖に、馴れ馴れしくしないでっ!!!

「嫌あっ!!」
飛び起きると全身にぐっしょり汗をかいていた。
夢・・・・なんてリアルな夢だったんだろう。
今なら分かる、アークエンジェルにいた頃の私がどんなにひどい言葉をキラに投げかけていたのか。
それでもキラは、偽りの私の優しさにすがらずにはいられなかった。
何故ならどんなに誤魔化そうとしても、コーディネイターであるキラの能力への羨望、嫉妬、恐怖・・・それはアークエンジェルの皆に歴然として存在するものだったから。そして、それを認めまいと、隠そうとする心の動きゆえに、彼等は逆に心のうちをキラにさらけ出すことになった。
だから・・・・一番コーディネイターを嫌っていた私の、それでも優しくしてくれる、という偽りの毒に、キラは手を出さずにはいられなかったのだ・・・

407散った花、実る果実/作者:2004/05/05(水) 21:27
こま切れになってしまってすいません。まとめて投下できなかったもので。
もしかして、以前より投下できる容量少なくなってます?

まず一つ、謝らなければならないことがあります。
すいません、昨日投下した分、時間軸を間違えまして、ラクスがまだエターナル手に入れてないのに略奪したことになっちゃってます。
>>398のリスティアのセリフの「戦艦を奪って離反」というのを「機密を奪って離反」という事にしておいて下さい・・・

>>赤毛の虜囚
新章ですね。カレッジ時代のフレイを見るのはほほえましくていいですね。
フレイの男女交際に対しての初々しさがいいですね。

>>過去の傷
ミリィ、本当に一時期のフレイ様のようになってしまっています。
彼女、大丈夫なんでしょうか・・・・・

408流離う翼たち・471:2004/05/05(水) 22:27
 だけど、それでも、この2人は強いとフレイは思った。いつも後ろ向きだったキラ。人に手を引かれなければ歩くことさえ出来なかった自分に較べれば、この2人の強さはフレイには眩しくさえある。差別や迫害を覚悟して何かをするなんて事は、自分には出来ないことだ。

「なんか、2人が羨ましいです」
「はい、何がです?」
「だって、とっても強いじゃないですか。私は弱いから、羨ましいです」

 フレイの言葉にボーマンとセランは顔を見合わせた。そしてセランが兄を指差してフレイに問いかける。

「強いって、この兄さんは少尉にボロ負けしましたよ?」
「ボ、ボロ負けって・・・・・・」
「違います、そういうのじゃないです」

 なんだか楽しそうにクスクスと笑うフレイの2人は顔を見合わせて首を捻っている。きっと2人には分からないのだろう。いや、分かるはずが無いのだ。この2人のほうが普通なのであって、自分やキラのほうがおかしいのだから。
 フレイはどう伝えたらいいのか分からず、自分の語彙の少なさに悩みながらも必死に言葉を探している。だが、フレイが何か言うよりも早く、セランが凄い事を教えてくれた。

「そういえば知ってますか。アルフレット少佐の奥さんもコーディネイターなんですよ」
「ええっ!?」
「あはははは、やっぱり驚きましたね。私も知ったときは驚きましたけど」
「で、でも、どうしてそんな事に!?」
「何でも、プロポーズしたのは少佐だそうですよ。何度も振られたけどしつこく食い下がってOKして貰ったって。奥さんは大西洋連邦に住んでたそうで、今はオーブに移り住んでるそうです」
「そうなんですか。少佐も大変だったでしょうね」
「そうみたいですね。でも、少佐は当時から結構凄い人だったそうで、奥さんの立場を確保する為にブルーコスモスの支部にまで乗り込んで文句を付けたそうです。一時期は命も狙われた事もあったそうですけど、遂に最後まで折れなかったそうで、ブルーコスモスや軍の上官の方が根負けしたって話です。まあ、少佐は軍の優秀なテストパイロットだったそうで、手放したくない上層部が我侭を聞き入れたという事みたいですが。当時はまだ抗争も今ほど酷くは無かったからというのもあるでしょうけど」

 セランの話にフレイは持っているフォークを落としてしまった。何というか、そこまで豪快に我が道を行くような人だったとは。まあ、そんな人だからこそこの2人を庇ったりキースを立ち直らせたりしているのだろう。

「セラン、そういう事は余り言うことじゃないだろ。少佐の奥さんは例外みたいな物なんだからな」
「分かってるわよ。条件を飲まなきゃテストパイロットを降りるなんて言って上層部を脅して、それを上層部が飲んだなんて無茶な事、少佐くらいにしか出来ないって事でしょ」
「いや、それだけじゃあないんだが、まあそういう事だな」

 ボーマンは妹を嗜めると、フレイを見た。

「まあ少尉、こいつの言った事は余り周りには言いふらさないでくれ。少佐もこれに関しては余り喋らないんだ」
「はい、分かってます」
「そうか、なら良い」

 フレイの返事を聞いて、ボーマンは食後のコーヒーを啜った。この話はこれで終わりなのだという意志の表れだろう。
 フレイは、アルフレットが自分をこの2人と引き合わせた訳がやっと分かった。世の中にはこういう奴も居る、という事を私に教えたかったのだろう。いや、自分はお前の悩んでる事をとっくに乗り越えてるんだぞとも言いたかったのかもしれない。それを自分でではなく、この2人に言わせたのも、この2人に言わせた方が私に受け入れ易いと考えてのことに違いない。
 もっとも、自分の考えすぎと言う可能性もあるが。

 だが、2人と話した事で随分気持ちがすっきりしたのは事実であり、アルフレットの計らいにフレイは感謝するしかなかった。だが、フレイの知らない所でアルフレットは更にとんでもない事を進めていたのである。

409流離う翼たち・作者:2004/05/05(水) 22:45
>> 過去の傷
ミリィがどんどん悪人に・・・・・・アスランピンチ?
何気にサイは1人安全圏に居る

>> 散った花、実る果実
お久しぶりです。そろそろカーペンタリアから打ち上げですか。
しかし、男は何処でも一緒なのかw! ある意味正直だ
クルーゼはパパを知ってたんですねえ

>> ザフト・赤毛の虜囚
これは、ミリィの秘蔵の品を拾う前の話ですね
この後サイが心に深い傷を負うシーンが来るのですか

>>

410『明日』と『終わり』の間に・おやつの時間・1/2:2004/05/06(木) 00:17
 その頃宇宙、EYES所属のアークエンジェル級第9番艦セラフィム艦内食堂にて

「あら、美味しい」
「・・・うむ、悪くはないな・・・」
「本当ですね。まるでお店で売ってるやつみたい」
「本当ですか?良かったぁ〜、皆さんのお口にあって!」

 艦のメンバー達は、ユフィーの作ったチーズケーキを頬張りながらその味に舌鼓をうっていた。・・・あ、今回は展開上語り役のカガリさんにはお休みして頂いていますのでご了承下さい。

「それにしても、ユフィーさんにこんな才能があったなんて、知らなかったわ」
「私、コロニーで暮らしてた頃はこうしてよくケーキやお菓子を作ってたんです」
「まぁこいつ、これぐらいしか能がありませんから」
「・・・そう言うお兄ちゃんにはハイこれ。辛子とタバスコと山葵をたっぷり練りこませた特製ケーキを・・・」
「そんなもんよこしてお前は俺をどーするつもりだ!?・・・しっかし、俺達今こんなのんびりしてる暇あるんですかね?ラインザフトやらブルコスとかいるのに・・・」

 こらこらクリス君、今回は番外編だからそーした細かいことは気にしないように!

「・・・今誰か何か言いましたか?」
「・・・さぁ?気のせいじゃないの?それにしてもホントに美味しいわ。ねっ、隊長もそう思いませんか?」
「全くだ。シーナ、お前も武術ばかりしてないで少しは見習ったらどうだ?」
「・・・C.E75、○月×日。隊長のセクハラ発言プラス1。・・・これで三日連続ね。そろそろエザリア様に報告しようかしら?」
「!なっ何メモってんだ貴様ぁ!!というか貴様と母上は一体どーいう間柄だぁっ!?」

 『The Last War』で出番が未だにやってこない二人が何やらもめ始めた頃、マリュ―はあることに気が付いた。

「・・・そういえばザラ大尉、さっきからずっと黙ったままだけど、どうかしたの?」

 そう、実は先ほどから彼らと共にケーキを食べていたアスランだったが、一口食べたっきり下を俯いて一言も喋ろうとはしていなかった。

「・・・あのアスランさん。もしかして私のケーキ、美味しくありませんでしたか?」
「・・・・・・」
「おいアスラン!ユフィーが不安げにしてるぞ。せめて何か一言言ってやれ!・・・って貴様、震えてないか?」

 イザ―クの言葉通り、よく見るとアスランの体は小刻みに震えていた。そのことに気付いたクリスが声を上げた。

「・・・ハッ!まさかユフィーお前、間違えてアスランさんに例の特製ケーキを・・・?なんてことしたんだよ!!」
「そんなのホントに作るわけないでしょ!マタベー、お兄ちゃん噛んじゃって!!」
「ニャ―ッ!!」
「じゃあなんでアスランさんがこんなに震えてるんだよ!?・・・あ、痛い!すっごく痛い!ごめん、謝るから止めさせて!!」
「・・・艦長、これはもしや・・・」
「・・・ええ、まさかと思いたいけど・・・」
「?」

 アスランの様子、そしてその場にいた艦の古参メンバー達の表情に重苦しい雰囲気が漂い始めたことに、ヒースロー兄妹は疑問形で激しく進行中だった。その時、アスランが突然顔を上げた。そして次の瞬間・・・。


「・・・美味い・・・」

411『明日』と『終わり』の間に・おやつの時間・1/2:2004/05/06(木) 00:19
 その頃宇宙、EYES所属のアークエンジェル級第9番艦セラフィム艦内食堂にて

「あら、美味しい」
「・・・うむ、悪くはないな・・・」
「本当ですね。まるでお店で売ってるやつみたい」
「本当ですか?良かったぁ〜、皆さんのお口にあって!」

 艦のメンバー達は、ユフィーの作ったチーズケーキを頬張りながらその味に舌鼓をうっていた。・・・あ、今回は展開上語り役のカガリさんにはお休みして頂いていますのでご了承下さい。

「それにしても、ユフィーさんにこんな才能があったなんて、知らなかったわ」
「私、コロニーで暮らしてた頃はこうしてよくケーキやお菓子を作ってたんです」
「まぁこいつ、これぐらいしか能がありませんから」
「・・・そう言うお兄ちゃんにはハイこれ。辛子とタバスコと山葵をたっぷり練りこませた特製ケーキを・・・」
「そんなもんよこしてお前は俺をどーするつもりだ!?・・・しっかし、俺達今こんなのんびりしてる暇あるんですかね?ラインザフトやらブルコスとかいるのに・・・」

 こらこらクリス君、今回は番外編だからそーした細かいことは気にしないように!

「・・・今誰か何か言いましたか?」
「・・・さぁ?気のせいじゃないの?それにしてもホントに美味しいわ。ねっ、隊長もそう思いませんか?」
「全くだ。シーナ、お前も武術ばかりしてないで少しは見習ったらどうだ?」
「・・・C.E75、○月×日。隊長のセクハラ発言プラス1。・・・これで三日連続ね。そろそろエザリア様に報告しようかしら?」
「!なっ何メモってんだ貴様ぁ!!というか貴様と母上は一体どーいう間柄だぁっ!?」

 『The Last War』で出番が未だにやってこない二人が何やらもめ始めた頃、マリュ―はあることに気が付いた。

「・・・そういえばザラ大尉、さっきからずっと黙ったままだけど、どうかしたの?」

 そう、実は先ほどから彼らと共にケーキを食べていたアスランだったが、一口食べたっきり下を俯いて一言も喋ろうとはしていなかった。

「・・・あのアスランさん。もしかして私のケーキ、美味しくありませんでしたか?」
「・・・・・・」
「おいアスラン!ユフィーが不安げにしてるぞ。せめて何か一言言ってやれ!・・・って貴様、震えてないか?」

 イザ―クの言葉通り、よく見るとアスランの体は小刻みに震えていた。そのことに気付いたクリスが声を上げた。

「・・・ハッ!まさかユフィーお前、間違えてアスランさんに例の特製ケーキを・・・?なんてことしたんだよ!!」
「そんなのホントに作るわけないでしょ!マタベー、お兄ちゃん噛んじゃって!!」
「ニャ―ッ!!」
「じゃあなんでアスランさんがこんなに震えてるんだよ!?・・・あ、痛い!すっごく痛い!ごめん、謝るから止めさせて!!」
「・・・艦長、これはもしや・・・」
「・・・ええ、まさかと思いたいけど・・・」
「?」

 アスランの様子、そしてその場にいた艦の古参メンバー達の表情に重苦しい雰囲気が漂い始めたことに、ヒースロー兄妹は疑問形で激しく進行中だった。その時、アスランが突然顔を上げた。そして次の瞬間・・・。


「・・・美味い・・・」

412『明日』と『終わり』の間に・おやつの時間・2/2:2004/05/06(木) 00:19
「・・・アスランさんが・・・」
「・・・泣いてる・・・」
「・・・やはりな・・・」

 アスランは嗚咽を漏らし、目から涙を流しながらケーキに噛り付いていた。この時ヒースロー兄妹は自分達の思考回路が一瞬ストップしたことを確かに感じたという。そして再び機能が回復した時、二人はデータの解析が間に合わず混乱していた。

「・・・う、美味い。・・・美味い。・・・美味いぃ、うううっ・・・」
「・・・え?・・・えっ!?・・・ええーっ!?」
「これ何!?どーいうこと!?っていうよりもこの人本当にアスランさん!?」
「落ち着け。これはこいつの持病みたいなものだ・・・。シーナ、医務室から鎮静剤を貰って来い」
「了解です」

 明らかにキャラが変わってしまったアスランの様子に戸惑うこともなく、イザ―クは冷静でやけに場慣れしている様子だった。・・・というよりもその場にいた全員がそうだった。

「『持病』ぅ!?これ病気なんですか!?確かにいつものアスランさんじゃないことは見れば分かりますけど・・・」
「医師の診断によると、かなり特殊な味覚障害らしいの。分かりやすく説明するなら、食べ物を口にした際に脳が『美味しい!』と判断した瞬間に彼の理性のリミッタ―が外れるそうよ?」
「・・・はぁ、そうなんですか・・・?」

 説明を受けてもやはりポカーンとしている二人。目の前の現実は、彼らがこれまで築き上げてきたアスラン像をこなごなに破壊するには充分なものだっただけに、無理はない。

「・・・あの、もしかして昔からこうだったんですか?」
「いや、俺達がまだザフトに所属していた頃は、まだ大丈夫だった。だが、俺とシーナがEYESに出向してきた時には既にこうだったな・・・」
「そういえば、彼がこうなり始めたのは確か・・・。そうよ!彼が仕事でオーブに2週間ぐらい滞在して、帰ってきた頃にはもうこんな様子だったわ!」
(・・・いっ、一体その間に何が・・・?)

 その時アスランがどのような食生活を送ってきたかなど、二人には想像もつかなかった。ただ一つ分かることは、その時アスランにとって決して良かったとは言えないような出来事があったということだった。

「・・・だが、これでも随分マシになったほうだ。俺達がセラフィムに合流した頃には何を食わせてもこうなってたからな。だが、まさか再発するとは・・・、っておいアスラン!俺の食いかけを食うなぁ!!」
「!あ、あの!まだたくさんありますから!!」
「よっ、良かったら俺の分もどうぞ!!」
(・・・あの二人が哀れみの視線を送ってるわ。・・・ザラ大尉、貴方それでいいの・・・?)

 理想と現実の間にある冷たさを感じながら、幼い二人はまた一歩大人に近付いていった・・・。

413『明日』と『終わり』の間に・作者:2004/05/06(木) 00:41
 すいません、また不覚にも二重投稿を・・・。
 色々ありましたが、この番外編も次回でラストです。

》赤毛の虜囚
 ジェシカとミーシャ、思い返せばフレイ様はこの二人と一緒に登場したんですよね。何だか懐かしいです。フレイ様を加えた三人の仲の良さが伝わってきました。
 あれから彼女達はどうなったんでしょうか?脱出出来ずに死んじゃったとかいう噂を聞きましたが・・・。

》過去の傷
 ミリィが孤立し始めていますね。周りは全て敵だとか思ってそうです。そして続くアスランへの誘惑。君は負けるなアスラン!

》流離う翼たち
 大切な故郷を守りたいというセランさんとボーマンさんの気持ち、何だか共感できます。フレイ様も彼らから学ぶことは多いのでは?
 それとアルフレット少佐の奥さんはコーディネイターだったんですね。周りから奥さんを守り抜こうとした様子がカッコイイです。

》散った花、実る果実
 お久しぶりです。お待ちしていました。
 実はずっとフレイ様達は宇宙にいると思ってましたので、ラクスが演説していることでまだ地球にいることを知りました。すみません。
 コーディネイターとナチュラル、二つの種の考え方はこうも違うものなんですね。何だかもう一度考えさせられます。それにしてもクルーゼの台詞の表現がお上手ですね。雰囲気がよく出ていると思います。自分はこういった悪役の台詞を考えるのが苦手なもので・・・。

414ザフト・赤毛の虜囚 58:2004/05/06(木) 05:41
10.親友 2/8
[一体、どんな人なんだろう]

その時、喫茶店に、新しい客が入ってきた。私と同じくらいの歳の学生らしい女性。

「待ち合わせで、すぐ出るので、水だけでいいですか」
「そう言う訳には参りません。何か注文してください」

「一番安いのなんですか」
「ブレンドです」

「じゃ、それください」

ウエイトレスとの、やりとりを聞いて、ジェシカとミーシャは興味を示したように囁きだす。
私も、あまりいい気分はしなかったけど、陰口みたいに囁くのは、逆に悪いと思い、わざと
ジェシカとミーシャに話しかける。

「なんか、見てて、いやらしいわね。ああいう言い方」
「ビンボなんだから、悪いわよ。そういうの」とジェシカ。
「そもそも、こんなとこに来るのが悪いんじゃない」とミーシャ。

「まあ、そこまで言うことは無いけど。ちょっと、あまり好ましくないわね」

二人の興味が、この人に移って、私への追求は逃れられた。おかげで助かったのはいいけど、
明らかに悪意のある二人の言い方に、気がとがめて、ちょっと弁護するように話をする。
女性の後ろ姿は、私達の声が少しは聞こえているだろうに、わざと気が付かないかようにしている。

その様子に、私は、別の興味を惹かれていた。私なら、こんなこと言われてたら、すぐに
席を立って逃げて行くだろう。私は、小さい頃からパパに我が侭を聞いてもらって育ったせいか、
自分でも、堪え性が無いと思う。ちょっとでも、辛いことがあると、すぐに逃げ出してしまう。
なのに、この人は、私達の話が聞こえているはずなのに平気な素振りだ。この人って、強いのか。
それとも、単に、ずぶといだけなのか。

やがて、立ち上がろうとするジェシカとミーシャ。

「じゃ、行くわね、フレイ。パフェごちそうさん」
「んじゃ、私も、頼むねフレイ」
「ちょっと、ちょっと、二人とも。私、オゴるなんて一言も……」

「それじゃ、デートがんばってね」
「後で、ホテルの得点聞かせてね」
「ちょっと、そんなんじゃ無いって言ったでしょ。パパの仕事のパーティなんだから」

「分かった、分かった。じゃね」

二人は、誤魔化すように出て行った。あーあ、結局、また、私が払うことになるんだから。
まったく、人の気持ちも知らないで、茶化してばっか。これから会うサイに、どんなこと話そうか、
まだ、何も考えてないのに。どうすれば、サイに自分の気持ちを伝えられるか、相談できる人が
居ればいいのに……

私は、ぼんやりと、背中を向けているさっきの女性に目を向ける。セコイことを言っていたけど、
別に身なりが悪い訳では無い。ファッションセンスはダサいけど、酷いってほどでもない。
ヘアスタイルは、ふわっと広がった感じで、凝ったものでは無いけど、それなりに手入れされている。
男の子にも普通に、もてるだろう。いや、こういった素朴な子の方が、男の子の印象はいいかも
しれないし、自然な付き合い方をしているのかもしれない。

なんだか、その女性に話をしてみたくなる。サイとの付き合い方、サイに何を話したらいいのか、
相談してみたくなってくる。そして、彼女のことも聞きたくなってくる。なんで、わざわざ、
目立つことを言って、平然としていられるのか。何か、心に強いものを持っているのか。
一体、どんな人なんだろう。

415ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/06(木) 05:50
今回の話、前作「オーブ……」のころの懐かしい台詞も、ちょこっと入れてます。
連休も終わるというのに、この投下ラッシュに嬉しい悲鳴です。

>>過去の傷
ミリィとフレイ様の立場、あのトール初陣のころの食堂でのやりとりと逆転してますね。辛いです。
さて、ミリィ再びの色気攻撃、アスランに通じるんでしょうか。

>>散った花、実る果実
クルーゼのパパの声、クルーゼの話すパパのブルコスの話が、フレイ様にコーディネータについて、
キラとの関係について考え直させていますね。ドラマが格段に厚みを帯びてきていて凄いです。
私のSSも、後から同じ時点を通るので頑張らないと。

ラクスのこと、訂正了解しました。最初、意図的に順序入れ換えしたのかと思っていましたが、そう言えば変ですね。
私などは、自分の話の都合で、順序入れ換えを結構やっているので、読んでいる方はややこしいかもしれません。

投下量の件、私も一度、システム変更の時に、大きいサイズが書込めなくなって、したらばのサポートさんに直していただきました。
その時の話は避難所にも書込んでいます。1レスの最大量については、以前と変わっていないとは思うのですが、HTML化の部分も
変化があるのかもしれません。最近は、2ch で知った kie.exe というアウトライン・プロセッサで
1レスのサイズを計りながら書いています。

>>流離う翼たち
アルフさん、最初、フレイ様を見て突き放すような態度を見せたのは、こんな理由があったからなんですね。
心暖まる話ですが、オルセン兄弟が言うように、あまり、おおっぴらにできない話であるのも事実でしょう。
話してくれたのは、フレイ様が見せた力ゆえですかね。しかし、アルフさん、この上に、まだ奸計をはかっていますか。
フレイ様、自分で言っていますが、手を引かれるのを脱すべき時ですよ。

>>『明日』と『終わり』の間に
アスランの状態に何事かと思ったら、前の話と、そう繋がるのですか。笑いました。
セラフィムのメンバーの、ほのぼのぶりも良かったです。番外編ラストも期待しています。

416過去の傷・130:2004/05/06(木) 09:29
少し見とれるというよりこんな可愛い子に抱きつかれたら男なら誰でもだろうが(イザ−クは分からんが)幸せな気分だろう、しかし・・・(アスランが信じて戦うものはなんですか?軍の勲章ですか?お父様の命令ですか?)
(ラ、ラクス!?)ラクスを思い出し慌ててアスランはミリアリアを離す。
「君はおかしい、なんのつもりか知らないが・・・」
「アスランさん・・・?」
アスランは目を下に向けると告げた。
「俺は・・・君の大切な恋人を・・・知らなかったとはいえ殺した男だ、それなのに君は・・・」
「だからなんです」
「え!?」
アスランが驚いたようにミリアリアを見る。
「アスランさんはト−ルの為にも私を大切にしなきゃいけないと思います、それはアスランさんの義務ではないですか?、私はそう決めましただから・・・」
「義務・・・いやしかし俺には婚約者が!」
「アスランさんは殺した人の恋人を見捨てるんですか?そんなのは不公平だと思います、ラクスさんとは別れるべきです、ラクスさんとは縁を切ってください」
「!」
ミリアリアは笑みを浮かべた、苦しんでよね、そして・・・死んで、結婚して・・・幸せの絶頂のときに殺してあげるわ。
「それは・・・出来ない、ラクスとのことは親が決めたことだ・・・たしかに父上はお亡くなりになられた、しかし意思はそのままだ、だから・・・母上・・・それに俺はラクスが好きだ、愛している・・・だから・・・」
「お母さん?・・・構いません、でも・・・一緒に戦わせてください」
こいつマザコン?フレイはファザコンだけど・・・でもいいなにもかも、この男が苦しんでいるのを見るのは楽しい、私にとっては一番癒されるわ、私この男の涙を見たい。
「アスランさん・・・」
アスランを優しく抱きしめる。
アスランが驚いた顔でミリアリアを見上げる。
「戦うわ・・・」
「戦う・・・?」
「はい、心から・・・貴方と共に・・・私の想いも・・・」
そしてミリアリアの唇がアスランの顔に近づいた。
そしてアスランも無我夢中で、ミリアリアの色気の前に・・・アスランはミリアリアを押し倒した。
これでいいわ、この男に抱かれよう。

フレイはコ−ディネイタ−嫌いが解消しつつあるようだ。
ワガママお嬢様はあいかわらずだがフレイ自身も成長はしつつあるのだろう。
コ−ディネイタ−であるキラを好きになったというのが大きい、ラクスにも打ち解けてきた。
「ラクス♪」
「あ、あの・・・困ります」
「いいじゃない、私達の部屋も大部屋にしてよね、それからシャワ−室もっと大きくならない?それから今日泊まらせてもらうわよ」
キラが慌てる。
「フレイ!?ラクスさんの部屋に泊まるってどういう・・・そんな」
「朝言ったじゃない、私の部屋に戻るのは明日からだって、一日私がいないからって寂しがらないの」

417ザフト・赤毛の虜囚 59:2004/05/07(金) 06:23
10.親友 3/8
[親友なんてとんでもないわ]

ぼうっと考え事をしていた私は、ふと時計を見て、サイとの待ち合わせの時間が近づいて
いることに気がついた。慌てて日焼け対策の帽子とサングラスを掛けて席を立つ。
たくさんある買い物の紙袋を持って、その女性の脇を通り抜ける。
ちょっと、顔を覗きこもうと視線を女性に向ける。その時、……

紙袋がコーヒーカップに触れた。カップが跳ねる。隣の水の入ったコップが倒れる。

「や、何よ!」
コーヒーカップの跳ねた雫が、サイに見せようと着てきた、お気に入りの白い上着に跳ねた。

「ちょっと、上着にコーヒーの雫付いちゃったじゃない。どうしてくれんのよ」
私は、お気に入りを汚されて、ヒステリックに声を上げる。慌てて、ハンカチで雫をふき取ろうとする。

「冗談じゃ無いわよ。こっちこそ、水かけられて、いい迷惑だわ」

その、もの言いに、私は思わず言い返してしまう。
「これ高いのよ。染みになったら、どうすんのよ。ああ時間だ。まったく、何て災難かしら」

私は、女性の顔も見ずに、荷物を拾うと清算に向かった。

「こら、ちょっとくらい謝りなさいよ。ちょっと!!」
その女性は、私に向かって叫んでいる。私は無視して喫茶店を出た。

結局、染みのついた上着は、サイに見せられなくて、帽子とまとめて、コインロッカーに
放り込まざるをえなかった。おかげで、サイとの待ち合わせにも遅刻するし……
何よ! もうちょっと言い方あるじゃない。嫌な子。
サイのこと相談しようとも思ったけど、とんでもないわ。

でも、その子の酷さは、それだけじゃ無かった。間違って持ってきた、その子のものらしい紙袋。
手がかりになるかと思って、包みを開けてみた。その中身は……

いやらしいマンガの本。
まさか、ジェシカの言ってた彼氏とのあれやこれやって、こんなことするの……
ミーシャの言う、あの人と、あの人はデキてるって、こういうことなの?
わー わー わー!!

「フレイって、そういうの趣味だったんだ」
「ちょっとサイ、違うのよ。これは違うの。私、こんなの知らない」

そうなの、私は、もっともっと純粋に…… サイのことが……

「いや、いいんだよ。そういうのよくあるし。別に構わないよ。俺も、まさか、
 フレイがそうだとは思わなかったけど…… ちょっと見せてよ……
 へえ、凄いな…… フレイ、こんなので興奮するんだ」

カチン!!

「サイ〜、私のこと、そんな風に思ってた訳…… サイなんて嫌い!!」

パチン!!

嘘、嘘…… サイに怒っちゃった。喧嘩しちゃった。
もう、何よ、あの女。全部、アイツのせいよ。親友なんてとんでもないわ。嫌いよ嫌い!!
もう思い出したくも無いわ。

* * *

その数日後、ジェシカとミーシャに会ったときの会話。

「どう、フレイ? サイのどうだった。大きかった?」
「今度、港のイベント会場来ない。うちの男共紹介するから、彼氏持参でカラオケ・ハウスに
 篭って、アレコレ騒ごう」

「二人とも、ほっといてよ!」私は大声で怒鳴りちらす。

サイに謝るキッカケに人が悩んでいるのに、こいつらはもう!!
ああ、本当の親友が欲しい。なんでも、私のこと相談できる、本当の親友が……

418ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/07(金) 06:26
とりあえず、ミリィSSミナシロ編とのリンクは一段落。この後、もう一回くらい別の箇所をリンクして
使いまわす予定です。

>>過去の傷
ミリィ黒いぞ。そして、とうとうアスランも…… まさか、アスランも、誰かみたいに、マザコン呼ばわりされるとは。
フレイ様は、余裕が出てきてワガママぶりも復活。ラクスと仲が良いのはいいけど、カガリは、ほったらかし? かわいそ。

419過去の傷・131:2004/05/07(金) 10:59
アスランも自分自身が分からなかった、エリ−トだった、ザフトでもクル−ゼ隊に所属し、それなりに成果を上げてきたつもりだ、父上にラクス・クラインとの婚約の話も持ち出されこの17年間いい人生を歩んできた、キラのこと意外は。
それなのに自分は今・・・。
気がついたらミリアリアと寝ていた。
シ−ツの中に自分とミリアリアが二人でいることさえ気がつくのに時間がかかった。
なぜ?初めての体験だ・・・生まれて初めて、なぜ自分はこんなことをしているのか?自分は・・・なぜ?婚約者がいるのに自分はなんで・・・。
ミリアリアがそのアスランの様子を見て笑みを浮かべていることさえ気づかなかった。
成功だわ、この男と寝ることに・・・え!?
「すまない!」
アスランはベッドから起き上がるとミリアリアに頭を下げた。
「黙って出て行ってくれないか、ほんとにすまない!俺はどうかしてて・・・ほんとはキラとラクスとカガリとフレイ・アルスタ−、エザリア・ジュ−ル以外の人間には興味ないんだ」
ミリアリアは黙って起き上がると服を着始めた。
「アスランさん、やめてください・・・私いいかげんな気持ちでアスランさんと・・・だから・・・それにもう私達関係を持ったんですから今更それはないと思います・・・」
「分かるだろ!?ラクスに見つかったら俺だけじゃなく君もただではすまないんだぞ!」
「そんなことは関係ありません」
そう言うと抱きつく。
アスランは絶望する。

「キラ君、このあと予定ある?」
アサギに問われ。
「え・・・?フレイもいないし暇だけど」
「ねえねえ!なら・・・部屋に上がってもいい?」
「え!?それは・・・ひ!?」
答えようとして言葉につまる、フレイが物凄い形相でキラを見ているのだ。
「キラ、浮気は許さないわよ、て・・・なにこの子達となれなれしく話してるのよ!」
フレイの嫉妬深さはある意味異常である、キラが他の女の子と話してるだけですぐ怒り出す、カガリのときもそうだった。

「いままで意地悪したりしてごめんね」
「いえ、いいんです」
一時間後、ラクスの部屋に泊まることになったフレイだが・・・。
「あ、私ちょっとアスランに会いに行きます」
「アスランさん?」
「はい」

420散った花、実る果実45:2004/05/07(金) 22:18
私の悲しみとは別のところで、日々は風のように過ぎ去ってゆく。
「フレイ!あのね、私、今まで程あなたの面倒を見れないかもしれないの」
何故か嬉しそうにリスティアは言う。
「どうしたの?私の面倒見ないことがそんなに嬉しい?」
意地悪な気持ちも手伝ってそう問い返したけれど、今は彼女がそんな冷たい人間ではないということを知っていた。
彼女はナチュラルを知らないだけだ。・・・以前の私がコーディネイターを知らなかったように。
知らないことでナチュラルとコーディネイターへの溝は、なんと深く刻まれたことだろう。
なんて悲しい戦いが、そのせいで起こったのだろう。
「違うわよ!そうじゃなくて!私、実戦に出られることになったの!」
思ったとおり、私の問いを否定して、彼女は全身で喜びを表している、けど・・・実戦って・・・
「嫌だ・・・実戦って・・・危ないじゃないの・・・・・死んじゃったり・・・怪我でもしたらどうするのよ・・・・」
おびえた私に、リスティアは諭す様に続ける。
「いやあね、何言ってるの。コーディネイターである私が、ナチュラルになんて遅れをとるわけないじゃない。それにね、最初だし、そんなに危険な任務ってわけじゃないのよ?地球での小競り合いをある程度鎮めておかないと、宇宙に出るとき、邪魔になるでしょ?それで少し叩いておこう、ってわけ。大した戦闘じゃないのよ」
彼女はそういうけど・・・・・・『帰ってから』そう、何でもない事のように言ってそれきり帰らなかったキラの思い出が胸をつく。
戦場に出るからには確実に無事に帰ってこられる保証なんて誰にもできないのに。
「でも・・・・・・」
「それにね。私は軍人なの。プラントの皆のために戦えるってことを、とても誇りに思っているのよ。あなたはナチュラルだから共感はできないかもしれないけど・・・・でもこれが私の仕事なの」
リスティアは、もう自分のできることが何か、見つけたんだ。
私がまだ、見つけられずにいるもの。自分の存在意義。自分のなすべきこと。
「そう・・・・おめでとうって、言ってあげるべきなのかしらね」
「そうよ!だからあなたももうちょっとしっかりしてね。私が付いていなくても大丈夫なくらいに」
そう言って晴れがましく笑う彼女の顔は生き生きしていて、彼女を応援しなくちゃって、そう思った。
「怪我なんかして帰ってきたら笑ってやるからね。まして、もし帰ってこなかったりしたら、末代まで語ってやるから。だから無事に帰ってきなさいよ。あなたの分まで仕事とっといてあげるから」
そう言って、彼女の無事を祈る。今の私にはその程度のことしかできなかった。
でも彼女には、キラのようにいなくなって欲しくはなかった。どうか彼女に何事もありませんように・・・・

421散った花、実る果実46:2004/05/07(金) 22:19
リスティアを心配する私を気遣ってか、それともナチュラルの捕虜なんて大して意識もされていないのか、私はリスティアの戦闘の様子を時々見せてもらう事ができた。
彼女が「さして危険な戦闘ではない」と言ったのは偽りではないらしく、その多くは小さな小競り合い、といった風情だった。
「ナチュラルも馬鹿だよなあ・・・俺たちに敵うはずも無いのに」
戦闘を見ながら、おそらく私の見張り役を任されているのだろう男性兵士が言った。
目を向けると軽蔑もあらわに言葉を続ける。
「お嬢ちゃんもナチュラルだっけか?わかるだろう。ナチュラルがコーディネイターに敵う訳が無い。産まれ持った能力が違うんだから」
その言葉には反論の余地はなく、私は黙ってモニターへ視線を戻した。
「ミリアリアも隊長も甘い扱いをしているらしいが、これが俺たちの情けだって事を忘れないで貰いたいね。本当ならお前はこんなところで自由に過ごせる身分じゃないんだから。まあ隊長が何を考えているのか知らないが、俺たちはお前を認めたわけじゃないぜ」
反応しない私にかまわず彼はなおも続ける。
「ナチュラルなんか生かしておいても意味はないが、お前一人ここにいても何もできるはずがないからな、だから殺されないだけだ。お前はここにいるべき人間じゃない、そう思っている人間は少なくはないぜ。わかってるんだろう、それくらい」
「だから何よ」
思わず私はそう答えてしまっていた。
「生意気なんだよ、ナチュラル風情が。大きな顔して歩いてるんじゃないよ。少しばかり甘やかされたって、それで認められたと勘違いされたら敵わないからな。何しろナチュラルは馬鹿だから。」
むっとしたが、こんな男をまともに相手にするのも馬鹿馬鹿しいと思い、それ以上相手にする事をやめた。
ただ・・・・今でも私に敵意を持っている人が多いのは、確かにそうかもしれない。最近軟化してきた皆の態度や打ち解けてきたリスティアとのやりとりですっかり油断してしまっていたけれども・・・・・
でも、こうしていて、敵意のこもった視線を向けられることが少なくないのも確かだった。

それでも私の行動が制限されることはあまりなかったし、向けられる敵意も耐えられない程のものではなかった。
たまに話し掛けられてちょっとした会話をすることは私にも慰めになったし、リスティアの仕事ぶりを見ることはやはり励みになったから。
そう、頑張っているリスティアを見ることは楽しかった。
最初の頃の肩に入っていた力が抜けてきて、誇らしげに自分の仕事を語る様子には羨望を覚えた。
でも、プラントからの放送で、ラクス・クラインの叛意が自らの意思ではなく、ナチュラルに騙されてのものだ、という演説が始まってからは、私への視線も少しずつ厳しいものへと変わっていった。
そんな時だった、非常事態を知らせるベルが鳴り響き、リスティアの所属する部隊が帰ってきたのは。

「何があったんですか!?」
その辺にいるザフト兵を捕まえても忙しそうにするばかりで中々教えてもらえない。
「あの・・・・!」
とても仲良くはできそうにないが、いつも私の見張り役としてついていたあのザフト兵の顔を見つけ、私は必死に彼に訊いた。
「何があったの?今帰ってきたのはリスティアのいる部隊でしょう?今の非常ベルは何?」
「うるさいな!」
邪険に扱われたが、ここで頑張らないと事態を把握することができない。私はもう一度必死に彼に詰め寄った。
「お願い、教えて!どうなってるの!?」
「じゃあ教えてやるよ!今回の作戦は何があったのか大きな負傷者が出たんだ。それが誰だか教えてやろうか。お前の面倒を見ていたミリアリアだよ!」
ミリアリア・・・嘘・・・・・・
「まったく、あれだけナチュラルの面倒をみて、それでこんな怪我をして帰ってくるなんざ、ミリアリアもいい面の皮だな。恩をあだで返されるって言うのか・・・・おい!どこ行く気だよ!」
私は思わず駆け出していた。帰還したばかりだということは、きっとまだモビルスーツのデッキにいるか、医務室へと向かう途中に違いない。
ミリアリアの様子を、確かめなくちゃ・・・・・・・
────そうしてモビルスーツデッキへたどり着いた私の見たものは、コックピット周辺が異様に変形しているジンと、そこから運び出されたばかりのぐったりとして生気の無いミリアリアの姿だった。

422散った花、実る果実/作者:2004/05/07(金) 22:34
・・・ちょっととんでもない所で止めてしまったかも・・・・・
週末は外出してますので、週明けに続きを投下します。

>>流離う
アルフレット・・・素敵だ・・・・・・
フレイ様やキラにもこういう図太さがあったらもうちょっと人生楽なんだろうけど、やっぱり彼等はそういう器用な生き方はできないんだろうなあ・・・・

>>明日と終わりの間に
いやー、いいですね!こういうコメディー風の話。
作者さんのつっこみが絶妙で笑えました。
アスラン・・・哀れな・・・・・でもまあ、彼らしいと言えば彼らしいですかねー。

>>赤毛の虜囚
やはりミリィの同人誌を拾ったのはフレイ様だったのですね。
しかしサイ・・・・物には言い様が・・・・(笑)
フレイ様の彼に対する扱いも哀れと言えば哀れですが、まあ自業自得かな。

>>過去の傷
>ほんとはキラとラクスとカガリとフレイ・アルスタ−、エザリア・ジュ−ル以外の人間には興味ないんだ
・・・ええええーー??
ある意味ストライクゾーン広いような気もしますが・・・・アスラン・・・・どの道君は絶対絶命だよ・・・(文字通り)

423散った花、実る果実/作者:2004/05/07(金) 22:36
>>赤毛の虜囚
投下容量の件、ありがとうございました!
新規規格でどの程度か様子をみながら投下量を決めていこうとおもいます。

424流離う翼たち・472:2004/05/07(金) 22:52
 キラとカガリがナタルに呼び出されたのは、その日の昼頃であった。呼び出しを受けた2人はここ最近の行動を思い返し、何か落ち度があっただろうかと首を捻っている。何しろナタルに呼び出されるという事は、何らかのお説教を受けるという事だからだ。
 だが、2人の予想に反してナタルは2人を叱ったりはしなかった。ナタルの家のリビングには何故かキースもおり、入ってきた2人に右手を上げて挨拶してきた。

「よお、来たか2人とも」
「キースさん?」
「何の用なんだ、一体?」

 キラとカガリは良く分からないという顔を向かい合わせながら、勧められるままにナタルの部屋にある椅子に腰掛ける。そしてキースはいつもより少し暗めの表情でキラとカガリを見た。

「さてと、いきなりハードな話になるが、覚悟はいいか? まあ、決まって無くても言うけどな」
「「聞いた意味が無い!!」」

 キースの断りにキラとカガリが同時に突っ込みを入れた。そして言った後に何故かカガリとキースとナタルが驚いた顔でキラを見ている。キラは集まった視線に何だか居心地が悪そうに身動ぎした。

「あ、あの、何か?」
「いや、キラがツッコミ入れたの初めて見たからさ」
「お前にもそんな感性があったんだな。てっきり受け専門かと思ってた」
「いい傾向だ。このまま続けば良いのだが」

 何だかおもいっきりボロクソ言ってくれる3人。キラはキースの話を聞くまでも無くボロボロにされ、早くも肩を落として項垂れてしまっていた。
 キースはそんなキラを一瞥した後、コホンと咳払いを入れて話を切り出した。

「さてと、キラはもう知ってると思うが、アズラエルが言った通り、俺は最高のコーディネイターを殺す為に強化された調整体だ。今は強化人間とか言うらしいな」
「調整体って、何なんだよそれ?」

 カガリがキースに問いかける。彼女はその名に覚えがあった。前に立ち寄ったアティラウの街で、キースの実家で見つけた資料の中に確かにその名があったからだ。そこで見つけた資料から得た情報は自分には理解できなかったが、とんでもない代物だというのは何となく理解できている。

「調整体とは、ナチュラルがコーディネイターと戦うために生み出した戦闘個体だ。まあ、番犬みたいなものだな。ナチュラルの体に手を加えてコーディネイターと戦えるようにしたものだ。まあ、現実はそう都合よくいかなくて、俺たちは想定された敵ほどの能力を得られなかったわけだが」
「その、想定された敵っていうのは、何なんだよ?」

 カガリの問いに、キースは黙ってキラを見た。キースに見られたキラはビクリと肩を震わせ、慌てて顔を逸らせたが、キースはキラを見るのをやめなかった。そのキースの態度が何よりも雄弁に答えを伝えている。
 それに気付いたナタルとカガリは顔を青褪めさせてキースを見た。

「まさか、アズラエル氏の言っていた最高のコーディネイターというのは?」
「キラ、なのか?」

 2人の問いにキースは頷いた。それを見て2人はキラを見やる。確かにそう言われれば納得できない事も無い。これまで、キラはとてつもない強さを自分達に見せ付けてきた。ドゥシャンベで友軍と合流する前に敵と遭遇した時には、たった1機で並み居る敵機を蹴散らしていたし、あの砂漠の虎、バルトフェルドでさえ倒されている。自分達はそのキラの凄まじさに恐れを抱き、彼を避けたのだ。
 あの時感じた恐怖は、余りにも異質すぎる力を持つキラに対する恐れだったのだが、その力が最初からそのように考えて作られた力だとすれば、確かに納得できる。コーディネイターの中でも最強を目指したというのなら、それは確かに最強となりえるだろう。

425流離う翼たち・作者:2004/05/07(金) 23:19
ようやくフレイ様、成長ストーリーがほぼ完結。ここまでフレイ様はキース、マリュー、トール、ナタル、アスラン、カガリに手を引かれ、遂にアルフレットさんまで来ました
実はそれぞれが過ち、母、友情、厳しさ、鏡、絆ときて、最後のアルフレットが父を示してたりします。
一応、まだ最後にもう1つ残っていますが、それもいずれ出ます。
とりあえず次はキラの番、真実は劇薬なのです

>> 『明日』と『終わり』の間に・おやつの時間
シーナさん、貴女は閻魔帳まで付けていたのですか。既にイザークは完全に尻に敷かれてますね
しかしアスラン、お前は苦労したんだな。2週間ずっと食べたんだな。フレイ様は一口持たなかったのにw
ひょっとして、フレイ様もこうなる?

>> ザフト・赤毛の虜囚
ミリィの視点だった喫茶店のフレイ様バージョンですね。友達2人にたかられていたのか
この後ミリィから発したドタバタ劇が起こるのですね。っと思ってたら、その次であっさり見られてるw
これでサイは一生消えない傷を・・・・・・ジェシカとミーシャは普通の友達ですね

>> 過去の傷
ア、アスラン、君の好みの幅は一体? とりあえず1人に絞りたまえ。
なんかラクスがアスランに会いそうで、ちょっと不安です。

>> 散った花、実る果実
リスティアさん、張り切ってますねえ。まあ、出撃できなかった新兵なら仕方ないですが、戦局傾いた時の初陣は死亡率高いですよ
とか考えてたらいきなり負傷ですか。まあ、生きてただけ良かったですが
これでまたフレイ様と喧嘩、何て事にならなければいいけど。

426私の想いが名無しを守るわ:2004/05/08(土) 00:27
あんまりセックスネタはやめた方がいいと思う
ここがフレイ板でフレイ様はいい立場におかれているものの
他と兼任してる人もいるわけだしね
まあ、創作に余計なお世話だったら流してくれ。

427私の想いが名無しを守るわ:2004/05/08(土) 10:03
どこまでokかどうかが難しいところだよね。
創作の名を借りて他キャラがひどい目にあってるのも…自分はどうかと思う。
他所にも貼られることもあるんだしさ、フレイ板の住民でもここを見てる人は
少ないから誰も気付かないだけかもしれないけど。

428ザフト・赤毛の虜囚 60:2004/05/08(土) 10:42
10.親友 4/8
[ハーイ! ミリアリア]

本当の親友じゃないのかもしれない。だけど、それでもジェシカとミーシャは私の親友。
あれから二人はどうなったんだろう。

ヘリオポリスの襲撃で二人と離れ離れになって、アークエンジェルに乗り込んだ私は、親友どころか、
大好きだったサイとさえ関係を断って、ただ一人孤立した。復讐という暗い想いに囚われて。

私の心を打ち明けられるのは、憎いはずのキラの持つトリィだけだった。

<トリィ?>
「ねえ、トリィ聞いてくれる? 私のこと」
<トリィ……>
「私、キラにうまく話できているかな。また、キラに避けられたら、私、もう、どうしたら……」
<トリ、トリィ!>
「そうね、もう少しキラに優しくしてみる。キラの言うこと、すること、我慢してみる」

トリィは、言葉を話さないから、所詮は、私の独り言に過ぎない。だけど、それでも、トリィには
随分助けられた。

そして、アークエンジェルで旅を続けるうち、少しだけ私の心が他人に溢れた瞬間があった。
あの船酔いと腰痛で、自分の我が侭をキラにぶつけて、私が少し変わり始めた時のこと。

「ハーイ! ミリアリア」
「フレイ。久しぶりね。船酔いとか、腰とか、もういいの?」

「うん! もう大丈夫。これ洗っとくわね」
「どう、仕事」

「ちょっとサボってたんで、仕事たまってて大変。なんか、洗濯とか掃除とか、
 今まで、自分では、あまりやってなかったことだけど。
 私、こんなことくらいしかできないし。キラも、みんなも戦っているのにね」

キラへの復讐を少しだけ忘れて、ハイな気分のまま、なんだか、ミリアリアに昔からの
友達のように親しげに心境を語りかけた。ヘリオポリスの時でも、アークエンジェルに
乗ってからでも、あまり快く思ってなかった相手なのに……

私は、ミリアリアにキラのことを聞いてみる。

「キラは、どうしてる?」
「今、ザフトの機影は見つからないから、とりあえず待機中。
 モビルスーツデッキにいると思う。ストライクのメンテとか、スカイグラスパーとの
 連携シミュレーションとか、やってるんじゃないかな」

「ふうん」

部屋では、ずっと一緒にいるのに、キラが普段の仕事は何をしているのかさえ、よく知らなかった自分に、
今さらのように気がつく。それを教えてくれるミリアリアに親近感を感じる。
そして、ミリアリアに頼み事までしている自分がいる。

「私、夕方、早めに仕事上がるから、もし、話できたらキラに言っといてもらえるかしら」
「うん」

ミリアリアが、私の仕草を覗きこむ用意して聞く。

「どうしたの、まだ腰痛むの ?」
「ん! なんでも無いの。ちょっとね。きつくて…… あ、なんでも無い」

ミリアリアの私の素振りを心配したような言葉に、私は戸惑い、下半身に違和感を感じている、
いやらしい自分が恥ずかしくなった。

ジェシカやミーシャと、こんな話をしたことあったっけ?
自分の想いを話し、共通の人について話を聞き、そして、気づかいの言葉を掛けられる。
この瞬間、ミリアリアは私にとっては親友だったような気がする。
ミリアリアの方は、このとき、どんなことを思ったんだろう。

でも、もうミリアリアと、こんな話をすることなんてありえない。

「ミリアリア、あなたもキラが好きだったの……
 私もそうなの。そんなはず無かったのに、最初、そんなはず無かったのに。私、キラのことが……
 ミリアリア、あなたも同じなのね。私と同じなのね」
「違うわ、あなたがキラのことなんて…… コーディネータが嫌いなあなたが、そんな訳無い」

「変わったの私。変わってしまったの。キラが変わったように。キラと一緒に成長したのよ私……」
「違う! あなたなんか! あなたなんか!
 奪ってやる。キラのことなんか忘れさせてやる……」

* * *

物思いにふけっていた私は、ドアのロックが外れる音に我に返った。コール音が鳴る。
それで、私には誰が来たのか分かる。私は自分が捕虜として囚われている部屋のドアを開けた。

「ミコト……」
「ママ、また、お洗濯物」

「いつもありがとうミコト」
「ううん、こんなの、なんでもないよ。それにアタシ、ママに会えるの、うれしいもの。
 ママ、また髪撫でてちょうだい……」

「うん、いいわよ。泣き虫さん」
「嘘、違うって…… ママ」

はた目には、歳が近くて友達に見えるミコト。だけど、ミコトも、なにか親友とは違う気がする。
私の中に芽生え始めているものが、違うことを私に感じさせる。

親友って、私にできるんだろうか。心の内を少し相談できるだけでいい。本当の親友が……

429ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/08(土) 11:00
今回、まるでTV本編のような引用の羅列でした。すんません (汗)。
この時のミリィの心境は、ミリィSSの最初の方にあって、フレイの心境とは、まったくズレてるんですが、
だからこそ、私は面白いと思います。そして、現在の章のテーマと、今後の展開には必要な話でした。

>>過去の傷
アスラン我に返ると、キラよりずっとまともな反応を。しかし、エザリアはOKとは。カナーバは?
ミリィは、とりあえず目的達成だけど、これから、どうする。この話のラクスって、フレイ様以上に
嫉妬深かったような……

>>散った花、実る果実
ミリアリア・リスティアがなんてことに! MSに乗れることを喜んでいただけに、悲劇もひとしお。
フレイ様自身は、大分、ザフトでの身の振り方も身についてきたようですが、この事件に、
どんな想いを抱くのでしょうか。さらなる今後の展開も気になります。
ところで、リスティアが行ったのはビクトリア戦線じゃ無いですよね。

>>流離う翼たち
キースはクルーゼと違って、重大なこと、やけに明るいノリで伝えてますな。まあ、あの時は、
クルーゼもテンパってましたし、最高の…… の以前に、人工子宮がショックだったでしょうし。
後、TV本編も、これが不満だったんですが、最初に、二人がフレイ様を心配していることを、
なにげなく入れてくれると嬉しかったんですが。

フレイ様、成長ストーリーは完結というより、必要な出会いを経て、これから自分で考え、模索することが、
始まりではないかと思います。多分、作者さんも、そのつもりの言葉なのかもしれません。
これも個人的なワガママかもしれませんが、アルフさんが父だとすると、フレイ様の中で、ジョージ・パパとの
比較があると嬉しいです。
そう言えば、私の話でのジョージ・パパは、回想中では、慕いながらも、あまり、いい想いがありませんね。
なにせ、正体が、あの人なもので。

>>426-427
今後にも関係あり、考えさせてもらいます。しばらく小説を読んでいなかったので、もうちょっと、色々な分野の
小説を読んで、それに頼らないストーリー展開を勉強しないと……

430私の想いが名無しを守るわ:2004/05/08(土) 12:26
キャラの兼任もいることを配慮時して欲しい

431過去の傷・132:2004/05/08(土) 12:50
アスランはミリアリアに背を向けた。
今だ、この男がト−ルを・・・こいつが・・・。
ミリアリアはアスランの上着から護身用のナイフを取り出すとアスランを険しく睨みつける。
「ふうう!ふう・・・!」
「!」
「うわあああ!」
ミリアリアはアスランにナイフで襲い掛かった。
それをかわすアスラン、コ−ディネイタ−の反射神経のよさだ、しかしそれすら苛立たしく思える。
(やはりこういうことだったのか)
「馬鹿な真似はやめるんだ!」
馬鹿な真似?どこが馬鹿な真似よ?私をこんなふうにしたのは誰よ!?
「ト−ルの・・・ト−ルの仇!」
起き上がるとナイフを振り上げまた襲う。
「アスランどうしました!?騒がしいようですが」
「ラクス!」
ラクスが物音が聞こえたのかドアの前に立っていた、背後にはフレイも驚愕した表情を浮かべている。
「ミリアリアさん落ち着いてください」
ラクスがミリアリアを押さえつける。
「いやあ!離して!」
ミリアリアは押さえつけられながらも涙を浮かべながらアスランを凄い形相で睨みつける。
「あんたなんか・・・あんたなんか!なんでよ・・・なんでこんな奴が!ト−ルがいないのに・・・なんでこんな奴がいるのよ!ト−ルを返して・・・ト−ルを返してよ!」
ラクスも必死にミリアリアを押さえつけている。
ミリアリアも相当必死だったらしくラクスをなんとか突き放しラクスの衣装から銃を奪い取る。
「ミリアリアさんやめなさい!銃を返すのです!」
ラクスが叫ぶが無視すると銃をアスランに向ける。
「ふう・・・!コ−ディネイタ−なんか・・・皆死んじゃえばいいのよ!」
「駄目!!!」
瞬時にフレイがミリアリアに跳びつき銃声はこだましたが銃口はそらした。
「はあ・・・はあ・・・」
ミリアリアは今度はフレイを睨みつけた、その形相にフレイもたじろぐ。
「なによ・・・なにするのよ!なんで邪魔するのよ!なに正義感ぶってんのよ!あんただって憎かったじゃない!パパを殺したコ−ディネイタ−が!守れなかったキラが!あんただってキラを殺そうとしてたじゃない!それと同じよ!」
「違う・・・違う・・・」
「違わないわ!あんたも私と一緒!だいたいこの男はト−ルを殺しただけじゃなくキラも殺そうとしてたのよ!許せないわよ!こんな奴となんで同じ艦にいるのよ!」
「駄目、コ−ディネイタ−にもいい人いるわ、キラは好きだし、ラクスもアスランさんも・・・だから駄目、殺しちゃ駄目、大事な人達だから・・・」
そう駄目よ私気づいたの、だから駄目、殺しちゃいけないわ、駄目・・・。
「皆・・・どうしたの!?」
ドアの外にキラがいた、そして皆の様子に唖然としている。
「キラ・・・」
フレイはキラの胸に泣きながら飛び込んだ。
「フレイ・・・」
キラは恋人であるフレイを安心させるように抱きしめた。

432私の想いが名無しを守るわ:2004/05/08(土) 12:58
>430
自分も兼任だが、ここはフレイ板だしな。


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