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「あなたは昔から男の子だよ?」√しずく
1
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/06/29(火) 01:17:26 ID:PnTHZ.Y.
春。
出会いと別れの季節、春。
それはここ、虹ヶ咲学園にも当然訪れる。
三年生は卒業して、新入生が新たに加わる。
それは今までもあったことだし、今更戸惑うこともない。
たった一つだけ、あることを除けば。
歩夢「──どうしたの? 今日は朝からなんだか調子が悪そうだけど……」
侑「あ、あぁ……いや、なんでもないよ、歩夢」
歩夢「ならいいんだけど……何か困ってることとか、悩みごとがあったら、なんでも相談してね!」
幼馴染みの上原歩夢。
自分で言うのもなんだけど、可愛い女の子だと思う。そんな子が幼馴染みだと……羨ましがられるんだ。
そう──特に、今は。
歩夢「そういえば、今日は身体測定があるんだって。『女子』は更衣室使うみたいだけど、間違って入っちゃだめだよ〜」
自分が──女の子から、男の子に変わってしまっている今は。
☆☆☆
侑「はぁ〜〜〜なにがなんだか……」
まさか眠りから覚めたら男の子になっちゃってるなんて……いや、わけわかんないよ。
わけわかんないけど、仕方ないから順応する。
わかっていることは、歩夢とは変わらず幼馴染みであること、自分のことは僕と呼ぶ事、そして一番驚いたのは、ここではスクールアイドル同好会が存在しないこと。
スクールアイドルという文化自体はあるようだけど……。
先生「はい、身長169センチ、体重は57キロね」
侑「ご、57……」
先生「ん? どうしたの?」
侑「いえ……」
女の子の体のときを、かんがえるとちょっとショックだったけど、別にこれくらいが普通、というかちょっと軽いらしい。
むしろ身長はもう少し欲しいくらいだね、なんて言われた。
(むしろ、視線が高くなって変な感じ)
まさか歩夢を見下ろす日が来るとは思わなかった。
(でも、なにはともあれ、だよね)
どんな理屈、ファンタジーで私が男の子になってしまったのかはわからないけど、普通に日常を送らないと。
もしかしたら、そのうち元に戻れるかも……しれないし。
「え〜と、となると気を付けないといけないことは……」
うっかり女子トイレにはいらない、男子のちんちん見えても動揺しない、僕っていうこと、男の子っぽく過ごすこと。
18
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/02(金) 00:19:38 ID:vmsj13FE
しずく「実は、先輩に演劇部の助っ人をお願いしたいんです」
侑「演劇? 僕が?」
しずく「ものすごーく面倒くさい問題がありまして……これはおそらくですが、先輩にしかお願いできなくて……」
私にしかお願いできないって……一体どんな理由なんだろう?
侑「それって、どういう……」
しずく「説明するよりも、実際に『なってもらう』ほうがいいかもしれません──先輩、こちらに」
★★★
しばらくして……。
しずく「わぁ……想像以上です!」
歩夢「ゆ、侑くん……可愛い……」
鏡に写った自分の姿は……ある意味、よく見慣れたものだった。
侑「……え?」
言ってしまえば、これが本来の私の姿だ──
しずく「先輩、その格好で劇に出てください」
侑「へぇ!?」
19
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/02(金) 00:22:58 ID:vmsj13FE
侑「そ、それはどういう……」
しずく「かくかくしかじかで……」
そこで私は、しずくちゃんの事情を知った。
侑「な、なるほど……要は、その役をできるような男子が、僕しかいないと」
しずく「はい。脚本を書いた先輩がどうしてもリアル男の娘じゃないと嫌だというので……」
侑「オトコノコ?」
しずく「私もよく知りません。ただ……」
「最高! 完璧じゃん、もう君しかいない!」
侑「……」
しずく「……と。物すごく気に入っていまして……」
侑「なるほどね……」
20
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/02(金) 00:25:51 ID:vmsj13FE
しずく「お願いします先輩……」
侑「う……」
上目遣いのお願い。
……あざとい。だけど、それを断るにはかなりの勇気がいるだろう。
侑「……わかった、協力するよ」
しずく「ありがとうございます先輩!」
しずく「私も、困ったことがあったらお手伝いさせてもらいます。演技とか、わからないことがあったら何でも聞いくださいね!」
21
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/02(金) 00:26:08 ID:vmsj13FE
今回はここまで。
また明日に。
22
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/02(金) 00:27:07 ID:vmsj13FE
わずかではありますが演劇経験があるので今回の話に組み込めたらなと思います。
23
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/02(金) 01:13:34 ID:pKaN2jjc
演劇の舞台裏とか全く知らない世界だから楽しみ。歩夢もそこで喜んでるだけだからずっとだめなんだろうな…
24
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/02(金) 01:19:30 ID:lzyM0LOY
アニメと同じツインテールになってるん?
25
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/02(金) 10:00:14 ID:Wfg6d8Ds
歩夢さん7回分の人生なにやってたんですか…?
26
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/02(金) 23:48:15 ID:bYRukHVw
ラブライブサンシャインのルビィルート以来の男の娘要素か…続きが楽しみです。
27
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 00:09:03 ID:rHamMytU
まだか
28
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 00:55:12 ID:Rnq7WPVs
更新が遅くなっても、失踪なんてことはありえないので大丈夫です。止まった時は、私が死んだ時です。
明日再開。
29
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 00:58:57 ID:OoWC3A6E
いや、そこまで心配してない
30
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 01:14:48 ID:Rnq7WPVs
★★★
歩夢「ねぇ侑くん」
侑「ん?」
帰り道、歩夢は一言。
歩夢「演劇、やってみるって事だけど……」
侑「あぁ、でもちょっと面白そうじゃない? 僕演劇ってよく知らなかったし」
そもそも演劇に大会? があることも詳しく知らなかった。
31
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 01:16:56 ID:Rnq7WPVs
侑「というか、まさか女装することになるとは思わなかったけど」
歩夢「ふふ、よく似合ってたよ」
侑「うーん、それは喜んでいいのかな……?」
わざわざツインテールまでウィッグでつけられたし。
侑(……というか絶対にクラスのみんなにバレたくないなこれ)
絶対にネタにされる。
32
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 01:20:17 ID:Rnq7WPVs
歩夢「あ。じゃあ、また明日ね、侑くん」
侑「うん、また明日」
★★★
翌日。
かすみ「へ〜、じゃあこれ侑先輩なんだ」
璃奈「すごい、全然男の人ってわからない」
栞子「こうも可愛いと、なんだか複雑な気持ちになりますが……」
しずく「声もね。すごかったよ、ちょっと作ってもらったら女の子みたいな声で」
かすみ「もうそういうので生きていけるんじゃ……」
璃奈「配信者とか」
栞子「高咲さんをどこへ向かわせるつもりなんですか……」
33
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 01:33:01 ID:Rnq7WPVs
かすみ「でもしず子、紹介した私達が言うのもなんだけど……よく侑先輩に声かけたね」
しずく「え? どうして?」
かすみ「なんか前に、ちょっとチャラい、とか言ってなかった?」
しずく「あ〜……確かに。言った……けど」
しずく「なんだか、割と大人しくメイクされていく先輩を見てたら、案外そういうタイプでもないのかもって思って」
璃奈「もともと、侑先輩はそういうタイプじゃないよ」
栞子「少々お調子者ではありますが、ね」
かすみ「まぁなにはともあれ、そういう事なら結果オーライっことで〜。劇はいつやるの?」
しずく「10月だよ。3日間あるから……土日が挟まってたら、観に来てくれる?」
かすみ「もちろん!」
34
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 01:38:28 ID:Rnq7WPVs
★★★
演劇の練習というと、何が思いつくだろうか。
発声練習とか、腹式呼吸とか。
侑「ふっ、ふっ、ふ……」
「あと2週〜」
理外のランニングだった。
しずく「──いきなり走るなんて、びっくりしました?」
侑「いやっ、まぁ、運動部っ、みたいな練習だなっ、って……」
しずく「舞台の上で、観客席に声を届けるのは体力も必要ですから。あとなるべく喋ってください」
侑「えっ、な、なんっ、で……?」
しずく「そのほうが、きついですから」
確かにしずくちゃんは走りながらも、話す口調に乱れはない。
それに比べて私はひぃひぃ言っている。
侑「し、しずくちゃん……体力あるんだね」
しずく「これも練習の賜物です」
35
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 01:41:54 ID:Rnq7WPVs
★★★
ランニングを終えると、今度は筋トレが始まる。
腹筋20回、スクワット20回、腕立て伏せ20回、背筋20回。これを2セット。
侑(あれ、私演劇部に来たんだよね……?)
しずく「ふっ……」
汗を流しながら、黙々と腹筋をしているしずくちゃん。
この暑い時期だ、皆汗がだらだらだ。
「じゃあ一旦シャワー浴びてきていいよ。終わったら発声練習だよー」
★★★
36
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 01:45:27 ID:Rnq7WPVs
発声練習と一口に言っても様々だ。
アメンボの歌から、なんだかながくてよく分からない歌と、はや口言葉。
それらを挟むと、腹式呼吸。
これが結構難しい。
意識的にお腹を凹ませる、膨らませるというのは存外にも。
しずく「先輩、タイミングが違いますよ」
侑「う、うん」
しずくちゃんに指摘されながら、私はなんとか腹式呼吸を行う。
「じゃあ、次は一回今回の台本を通しで読むだけ読んでみようか。確認も兼ねてねー」
37
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 01:48:32 ID:Rnq7WPVs
台本の内容はこれだ。
とある事情で妹の代わりに兄が女子校へと通うことになり、そこで様々なトラブルが起きるハプニングコメディ……というかラブコメか。
侑「めちゃくちゃカジュアルな内容というか、こういうのもアリなんだっていうか」
しずく「1時間ひたすら麻雀してるだけの劇ありましたよ」
侑「えぇ……?」
38
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 01:52:38 ID:Rnq7WPVs
しずく「入部してすぐに観に行った公演にありました。他にも、超巨大卵から人サイズのにわとりが孵ったりとか」
侑「結構自由だね?!」
しずく「ふふ……でも、そこが高校演劇の、いいところなのかもって」
侑「いいところ?」
しずく「なんでもあり、なんです。そういう意味では、発想力が試されますよね。脚本賞もありますから。書く人の腕も試されます」
「任せておいて、全米が泣くから」
いや、これは全米はさすがに泣きは……。
39
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 01:55:36 ID:Rnq7WPVs
★★★
侑「ゔぇえぇ〜……」
しずく「号泣!?」
侑「泣ける……」
「でしょう!?」
様々な困難を乗り越えてからの……っていうの大好き。
「ひとまず、いまのが今回行かせてもらう内容……なにか、違和感あったところとかある?」
「はい。この、11ページの……」
★★★
「よし、今日はこのあたりにしようか」
40
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 01:56:14 ID:Rnq7WPVs
明日再開。
41
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 08:50:20 ID:Rnq7WPVs
今日の練習が終わる。
想像していたよりもずっとハードな練習内容に少しホッとしてしまった。
しずく「お疲れ様でした、先輩」
侑「お疲れ様」
しずく「どうでした? 今日一日演劇部にいて」
侑「結構疲れたね……」
私は正直にそう答えた。
侑「しずくちゃんはすごいね。腹筋とかも軽々としてたし」
しずく「はい……幼い頃からしていたので」
42
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 08:59:16 ID:Rnq7WPVs
侑「そうなんだ。努力の賜物ってことだね」
しずく「そのおかげか、きれいなお腹してますよ」
しずくちゃんは自分のお腹に手を当てて、そう誇らしそうにしていた。
しずく「私、将来は女優になりたいんです」
43
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 11:03:07 ID:lz33oavI
歩夢は何してんの?
44
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 21:32:38 ID:/YtODrE.
うわっ、何こいつと思われるかもしれないけど
しずくルートでのエッチがとても楽しみで、SMプレイとかあったら嬉しいなとか思ってる
侑先輩にとことんいじめられて欲しいという願望がめっちゃある
45
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 22:08:32 ID:Td0oXUD.
俺はそういうのだと逆にSなしずくがみたいな
でも主が考えたのならなんでも楽しみ
46
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 22:42:45 ID:KF1yeDMs
>>44
わかる
47
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 23:34:33 ID:qVKc7gSA
>>34
誤字だと思うんですが?、理外の所本当は
意外と書きたかったのではないでしょうか?
48
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 23:39:39 ID:qVKc7gSA
>>41
想像していたよりもハードな練習内容で少しホッとしたとありますが、
この部分間違えてますよ。
49
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/03(土) 23:54:17 ID:Rnq7WPVs
普通に誤字誤用ですね。すみません。
50
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/04(日) 01:10:45 ID:pjKb9kos
人は前後の文章があれば誤字脱字も勝手に補正されるからそんなに気にしなくても大丈夫やで
51
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/04(日) 01:35:21 ID:seK3O7jE
あ
52
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/04(日) 01:36:37 ID:seK3O7jE
この後しず子のお腹の中に大量の精液が流し込まれるかと思うと興奮する
53
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/04(日) 02:45:45 ID:CaYnKfug
だからそのための努力も惜しまない、ということか。
しずく「だから先輩も、今のうちに私のサインをもらっておいたほうがいいですよ?」
侑「はは、それもそうなのかもしれないね」
案外、冗談も言う子なんだなと思った。
★★★
歩夢「侑くん、お疲れ様」
侑「ありがとう、歩夢」
歩夢は表舞台に立つ役者ではなく……裏方絡みのお手伝いをしているようだ。
54
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/04(日) 02:53:13 ID:CaYnKfug
侑「そっちはどう?」
歩夢「いろいろあるね……あそこにある木製のベンチとか、引き戸とか。全部自分たちで作るんだって」
しっかりとした頑丈さもあり、4人くらいなら平気で座れそうなベンチを指差す。
歩夢「ノコギリなんて、私初めて触った」
55
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/04(日) 07:34:07 ID:kVOr.8XA
歩夢大道具係なんだ…、アニメの演劇部部長は
凄く演技に全力を注いでいるし自分のセンスを
重要視しているから、歩夢も侑を追って入部したものの部長の琴線に触れなかったんだな
でも好きな人のために同じ部活に入るのは
恋愛だと王道だよね。
56
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/04(日) 07:36:03 ID:kVOr.8XA
しずくルートなので今回も涙を飲むことになって不憫過ぎるけど…、歩夢は健気だよね。
57
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/04(日) 11:18:11 ID:CaYnKfug
手のひらを見せてくる。
慣れないことをしたからなのか、少しだけマメになりかけの物ができていた。
侑「あっ! 気をつけないと……せっかく綺麗な手してるのに」
歩夢「あっ……そ、そうだね! 次からは、気をつけるね……!」
★★★
侑「……というか、ふと思ったことだし、皆が何も思わないならそれはそれで……いや、ちょっと切ないし、複雑なんだけどさ」
しずく「はい?」
58
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/04(日) 12:05:01 ID:CaYnKfug
侑「僕めちゃくちゃ小悪魔的な女の子っぽくやんなきゃいけないけど……これ大丈夫? みんな引いてない?」
しずく「そういうお芝居ですから! むしろすごいなぁって思いますよ」
侑「そうなの……?」
しずく「それに先輩、初めての演技なのに上手ですよ!」
素直に褒められるとなんだか嬉しくなってしまった。
侑「そっか……へへ、ありがとう」
59
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/04(日) 22:52:03 ID:CaYnKfug
侑「しずくちゃんもすごいよね、演技してるときの、いつもと違うしずくちゃんで」
しずく「私もいつもよりも気合満々です。今回のヒロインですから」
そう、しずくちゃんは今回の物語のヒロイン。
女装して──言い方に難がある──通学する主人公の内情を唯一知っている、という立ち位置だ。
60
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/05(月) 01:33:01 ID:qgWk5PI.
しずく「でも、ちょっとわからない事もあるんですよね」
侑「なになに? 僕でも大丈夫なら、相談に乗るよ」
しずく「いえ、作中でこの二人は、デートをするじゃないですか」
侑「うん」
しずく「私、男の人と二人で出掛けたことがありませんから……その感情表現が難しくて」
しずく「はしゃぐものなのか、それとも案外落ち着いているのか……」
61
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/05(月) 01:34:12 ID:qgWk5PI.
アニメの演劇部部長は今回はお留守番です。
また明日に。
62
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/05(月) 23:10:38 ID:qgWk5PI.
しずく「それらしいドラマや漫画も観たり読んだりもしましたけど、どうにも……」
しずく「先輩は、誰か女の子と二人で出掛けたりしたことはありますか?」
侑「僕は……うん。歩夢と何度かあるよ」
しずく「ほほう、それなら……」
★★★
歩夢「……相談?」
しずく「はい! せんぱ……上原先輩は高咲先輩と出掛けるときどんな感じなのかなって」
歩夢「え、えぇ?」
63
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/05(月) 23:18:07 ID:qgWk5PI.
歩夢(どんな感じ、って……)
……。
本当は飛び跳ねたいくらい嬉しいけど……。
平然を装っている気がする。
幼馴染みとして……。
歩夢「もしも……」
しずく「?」
歩夢「もしも、侑くんと恋人なら……反応は変わるかもね」
しずく「上原先輩は、高咲先輩の事、好きなんですか?」
歩夢「ええっ!?」
64
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/05(月) 23:23:07 ID:qgWk5PI.
歩夢「そ、それは……」
しずく「……」
歩夢「う……」
歩夢「……うん。……好き」
しずく「わぁお……」
歩夢「ぜ、絶対侑くんには内緒だよ!?」
しずく「もちろんですよ…、ふふ。応援してますね、上原先輩」
65
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/05(月) 23:25:43 ID:qgWk5PI.
今回はここまで。
しずく√は、よくある好きになっちゃダメなのに系ですね。
また明日に。
66
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/06(火) 00:51:39 ID:hXZASS7s
うおおこれは…。書きながら歩夢ちゃんの心をへし折るのが楽しくなってそう。いい意味で
67
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/06(火) 02:47:45 ID:ZawbijcQ
きっついなあ……
歩夢ちゃん早く幸せになって
68
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/08(木) 00:34:13 ID:1dD.y5ek
★★★
気付けば蝉が鳴き出す季節だ。
侑「なんか、蝉って気付いたらいるよね」
それまでは意識なんてしないのに。
しずく「夏といえば、というところですからね。違和感がないのは、そういうことなんじゃないですか?」
侑「いるのが当たり前ってことね」
他愛もない話。
今、私達はバスに揺られていた。
69
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/08(木) 23:20:52 ID:1dD.y5ek
夏合宿というものだ。
一つの高校に集まって、交流会のようなものらしい。
ちなみに一泊二日だ。
しずく「まずはこれから向かう高校に集合して、その後近くのホールに集まります。そこで……まぁ、そんなにガッチリしたことはしませんよ。どちらかというと、交流を深めることに意味があります」
侑「いいね。……そういうことなら、歩夢も来られたら良かったなぁ」
歩夢は運悪く夏風邪を引いてしまって、今回は不参加だ。
70
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/08(木) 23:29:51 ID:1dD.y5ek
しずく「そうですね……きっと来たかったはずです」
しずく(なんてたって……きょうは夜には肝試し)
しずく(二人がいい感じになるには……お誂え向きなイベント)
侑「……お、ついたかな?」
★★★
今回、虹ヶ咲学園以外に集まったのは五校。
含めて六校の演劇部部員が集まって、なかなかの人数だ。
「はい、みなさんお疲れ様です。今年も夏合宿の時期がやってきました」
毎回あるのだろう注意事項と、これからやることを説明される。
まず、グループ分け。
A、B、C、D……と分けて、私としずくちゃんは同じA班になった。
71
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/08(木) 23:35:06 ID:1dD.y5ek
「では、それぞれのグループはこの箱から一つくじを引いてください」
各グループの仮リーダーがくじを引く。
そこに書いてあったものは。
『遊園地』
『廃病棟』
『修羅場』
『空港』
の文字。
「合宿の最終日に、いま引いた紙に書いてあるものを題材にして、15分程度のエチュードをしてもらいます」
侑「……エチュードってなに?」
しずく「簡単に言うと、即興劇……台本のない、アドリブだけの演劇です」
72
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/08(木) 23:40:38 ID:1dD.y5ek
「それぞれの役割のみ、当日の10分前に伝えます。……さて、最後の課題はこれくらいとして。まずはお互いの自己紹介がてら、自由時間とします」
★★★
侑「う〜ん」
しずく「先輩? どうしたんですか?」
グループの人たちとの自己紹介も終えて、フリータイム。
他の人にも相談したことなんだけど……。
侑「僕達の題材って、修羅場でしょ? なんだか結構難しい気もするなぁ……って」
しずく「確かにそうですね。でも深く考えても仕方ないですよ、こういうのは本当に流れと、度胸次第ですから」
73
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/08(木) 23:45:12 ID:1dD.y5ek
しずく「例えば、先輩が誰かと付き合ってて、それなのに他の人と浮気してたら……そしてそれが他の誰かにバレたら……これも修羅場です」
侑「あはは、確かにね」
しずく「まぁ、先輩は浮気なんてするような人じゃないでしょうから、想像はしにくいかもしれないですけど」
侑「はは──」
浮気なんて絶対しないよ。
なぜかその言葉を口に出すことが、憚られた。
しずく「私の独断だと、かすみさんとかもしそうにないなぁ、一途そうだし──って、まぁ話がそれちゃいましたけど」
74
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/08(木) 23:45:34 ID:1dD.y5ek
また明日に。
75
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/08(木) 23:54:28 ID:l/yA.62s
記憶はないけどやっちゃってるからな。浮気っていうか本気だったけど
76
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/10(土) 00:27:15 ID:rNn2fvpo
しずく「とりあえず、この後のレクリエーションにも参加して慣れていきましょう。10月の大会にも顔を合わせることになりますし」
★★★
しずくちゃんの言うとおり、私は色んな人と話をした。
2年生からの参加だったりということもあってか、話のネタには困らなかった。
どんなことが大変なのかとか、やっていて楽しい瞬間とか。
侑「緊張とかしないの?」
「ん〜、緊張はするね。でも……なんだろう、あの照明を浴びたらさ」
「そういうの、なくなっちゃうんだよね」
77
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/11(日) 00:50:13 ID:u7nrDIoo
話してくれる人みんな、そう答えた。
本当に楽しいんだろう、演劇が。
正直に言ってしまうと、私はまだその域ではない。
まだ、それほど理解を深められていないからとも言える。
それを今回の合宿を通じて知ることが出来ればいいんだけど……。
「10月の大会には出るの?」
侑「うん、一応、役者で」
「そっか。いい体験になるといいね」
「例えそれがどんな内容であれ、ね」
78
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/11(日) 01:11:19 ID:u7nrDIoo
★★★
昼から夕方にかけての合同練習を終えて、全員の夕食が済んだ後にその話が流れてきた。
「では入浴の前に……毎年恒例の肝試しといきましょうか!」
侑「肝試し?」
しずく「はい、私も演劇界の先輩から聞いてたんですけど、結構本気で驚かせに来るみたいです……」
聞くと、どうやら毎年リタイアする人が現れるレベルらしい。
「はい、それじゃあペア決めをしまーす。順番にくじを引いていってねー」
★★★
先にスタートしたペアの悲鳴が聞こえてくる。
それがもう何度目か、わからない。
侑「すごいね……ガチ悲鳴じゃん」
しずく「……」
侑「しずくちゃん?」
しずく「あ、はい」
侑「……もしかして、結構怖い?」
しずく「い、いえそんな! だってこれは、もう関係者の人たちが驚かせに、『くる』ってわかってるんですよ?」
侑「うん」
しずく「だから驚きはしても、怖いということは……」
なんか知らないけど、必死に言い訳している姿がなんだか可愛かった。
侑「ふふ。……まぁでも、そんなに長くないみたいだし、ちゃっちゃと戻ってしまおうか」
今回は、肝試しによくある、目的地についたらそこに置いてあるものを持って帰る……というやつだ。
79
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/11(日) 22:34:18 ID:u7nrDIoo
★★★
先に行った人たちを見送っていると、ついに私達の出番になった。
向かうは森の中。ちゃんと人が歩くための人工的な道だけれど、薄暗い照明のせいでかなり心もとない。
虫の鳴き声がリンリンと響いて、落ち着く様な、そうでもないような。
侑「しずくちゃん、怖くない?」
しずく「だ、大丈夫ですよ? 特に、なにもないですしっ!?」
しずくちゃんの肩が跳ねる。
私達の背後から、何かがペチャリ! と落ちるような音がしたからだ。
私達は二人して振り返った。
しずく「な、なんですかこれ? こんにゃく?」
侑「というより、なんだろうスライム? ……あせったあ」
80
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/11(日) 22:43:43 ID:u7nrDIoo
しずく「……ま、まぁ。これくらいなら全然平気ですね」
侑「結構ビックゥなってたけど」
しずく「そんなことないですよ、さぁ早く行きましょうっ、先輩!」
そう言いしずくちゃんは振り返った。
しずく「ぴっ」
そこには。
侑「えっ、ぅわっ!?」
一体いつの間にいたのか……そこにはゾンビがいた。
もちろん、それが驚かせ役の人だということはわかっている。
でもすごいメイクだ、本当に全身に鳥肌がたった。
そして、一切の音も立てず気配を消してやってきて……かなり本気というのは本当らしい。
81
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/11(日) 22:49:49 ID:u7nrDIoo
ゾンビ役「ぅ゛ぉ……」
しずく「ひゃぁぁぁっ!?」
侑「あ」
ゾンビ役「あ」
何か言おうとしてさらに驚かせようとしたその矢先……しずくちゃんはものすごいスピードで逃げ出した!
もう見えない!
侑「……」
ゾンビ役「……」
気まずっ。
ゾンビ役「……あっ、えっと。追いかけてあげて、この先まだまだこんなのあるから、多分あの子……」
と完全にオフの状態で心配されている間にも、奥から「きゃぁぁぁ!?」としずくちゃんの悲鳴が聞こえてきた。
侑「ですね。……じ、じゃあ僕はこれで」
★★★
82
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/11(日) 22:59:28 ID:u7nrDIoo
★★★
ゾンビ役2「ゔぉおおっ!!」
しずく「いやぁぁぁ!」
もうどれだけ叫んだかわからない。
虚勢を張っていた自分を叩きつけたい。
作り物や演出だとわかっていても怖いものは怖い。
しずく「はぁ、はぁ、はぁ……」
わけもわからないまま闇雲に走り回っていた。
先輩ともはぐれた。
しずく「も、戻らないと……」
今来た道を……。
真っ暗な……。
しずく「う……」
83
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/11(日) 23:04:19 ID:u7nrDIoo
「……ーぃ」
しずく「!」
侑「おーーーい、しずくちゃーん!」
しずく(先輩……!)
侑「あぁよかった、いたいた。大丈夫?」
しずく「……も、もちろん平気です」
……そんなわけないのに。
侑「ふふ、そっか。……お、それってさ」
しずく「え?」
先輩が指差すのは、折り返し地点ともなる、持ち帰るべき古びたコインのようなもの。
侑「ちょうどここだったんだね。よし、じゃあこれを持って帰ればオッケーだね」
84
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/11(日) 23:09:35 ID:u7nrDIoo
侑「よし、しずくちゃん。それじゃあ戻ろうか」
しずく「……」
なんだか、すっきりとしない。
しずく「……」
だから、先輩の服の袖を指で掴んだ。
侑「しずくちゃん?」
しずく「……ごめんなさい。本当は、怖いです」
侑「……」
しずく「だから……戻るまでは、こうしていて良いですか?」
見方によれば、意地を張ったくせに……と思われそうだ。
でも先輩は、そんなことはまったくおもってないようで……。
侑「うん、もちろん」
今はその笑顔が、とても私を落ち着かせてくれた。
★★★
85
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/11(日) 23:16:56 ID:u7nrDIoo
★★★
肝試しも終わり、入浴を済ませて今日はこれで就寝を残すのみとなった。
男女は別れて、広間に布団を並べて眠った……とは終わらない。
こんな状況で素直に寝る、という人も少ないだろう。
「なぁなぁ、結構可愛い子いるよな」
「一年な、いいよな〜」
そういう、恋バナみたいなものだ。
あまり面識がないからこそ、何も考えずに好みの女の子の話がしやすいのかもしれない。
★★★
「ねぇねぇ、虹ヶ咲のあの男子、みた?」
「ねー、めっちゃイケメンじゃない? カッコいい系っていうより、カワイイ〜系の」
「わかる〜」
しずく(先輩の話……?)
86
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/11(日) 23:19:13 ID:u7nrDIoo
今回はここまで。
しずく√、栞子√くらい丁寧になりそうです。
あとしずく√のSとかMとか。それは最初からどっちもやりたいなぁとは思っていました。
また明日に。
87
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/12(月) 00:00:02 ID:q7lRvZaw
しずくはどっちにもなれそうだしな。そして肝心なところで風邪をひく歩夢
88
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/12(月) 00:36:27 ID:KH58XipM
パワプロの紫杏みたいなりそうだな
89
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/12(月) 01:44:19 ID:QiQbAqHE
言いたいことはわかるけど紫杏としずくちゃんは本質が違いすぎて
90
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/12(月) 23:53:21 ID:cZZgr0mo
「去年はいなかったよね? 途中からはいったのかな」
「虹ヶ咲……あ、ねぇねぇ」
そこで私がよばれていることに気付いた。
しずく「あっ、はい。なんですか?」
「あのニジガクの男の子、2年生から入ってきたの?」
しずく「はい。というより、私がお願いしたから巻き込んでしまったようなものなんですけど……」
「えっ、そうなの? いやいや、ナイス」
「でもなんで今さらお願いしたの?」
「いやそんなの決まってんじゃん、イケメン先輩といたいからじゃん」
しずく「えっ、ちが……!」
とんでもない誤解。
そう言うつもりじゃないのに!
91
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/12(月) 23:58:09 ID:cZZgr0mo
しずく「私はただ、先輩にしか出来ない役柄を……」
言い訳なのか、訂正なのか。
とにかく私は、たくさん口を動かすのだった……。
★★★
「あの一年の子ケツでかくね?」
「な、清楚な感じなのにめっちゃエロいわそれ」
侑(……)
しずくちゃんか……?
「普通に胸もあるしな」
「完璧じゃん、顔も可愛いし」
「さくらざかだっけ?」
しずくちゃんだ。
侑(間違えられてるっー!)
92
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/13(火) 12:23:14 ID:/6Lju0zM
しずくちゃん可愛い
93
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/13(火) 18:47:29 ID:p6bClGtE
キモオタが勝手にでかいって言っているようだが、同じ同好会内にその上位互換が5人もいるんだけどな
94
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/13(火) 23:38:07 ID:UbA1Nm/o
「彼氏とかいんのかな〜」
「処女っぽいわ」
「お前夢見すぎ。むしろああいうタイプはヤりまくってた方がエロいわ」
侑(すごい勝手を言われてるな……)
ただの男子の雑談なのに、少しムッとしてしまった。
「マン毛とかも処理してねー方が……」
侑(あぁもう、寝よう……)
ちょっと、嫌な気分。
男子ってそんな話ばっかりなのかな……そう思いながら、耳をふさぎながら眠った。
★★★
95
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/14(水) 06:41:12 ID:mHfKJF92
二日目の朝、朝食の後。
しずく「先輩、おはようございます」
侑「おはよう、しずくちゃん」
ジャージ姿のしずくちゃん。
これから私達のグループはランニングだ。
しずく「よく眠れましたか?」
侑「ん、それなりにね」
96
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/14(水) 06:48:00 ID:mHfKJF92
そろそろ多めに。
97
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/14(水) 16:52:05 ID:uTK3thrQ
清楚系が濃いといいのは同意
98
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/14(水) 23:46:52 ID:mHfKJF92
本当はあんまりだったけれど。
しずく「よし、それじゃあ今日も頑張りましょう、先輩!」
振り返り先に向かうしずくちゃん。
不意に、視線が下へ向いてしまって。
『あの一年の子ケツでかくね?』
侑(ケツか……)
──確かにしずくちゃんのお尻は大きいかもしれない。
だけどあくまで、総合的に見た結果、目立ってしまっているというところだろう。
大きさだけなら、エマさんや果林さんのほうが大きい。
侑(……あれ、なんでそんなこと知ってるんだ)
まぁそれはともかく。
99
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/14(水) 23:58:07 ID:mHfKJF92
上から順番に見ていくと、最後のヒップで(あれ、この子ケツでっか……)となるのだろう。
そしてしずくちゃん自身の清楚なイメージがそれを更に強くしている。
……うん、何を冷静に分析してるんだろ。
侑(いかん、私まで頭の中がお猿さんになってしまう)
しずく「せんぱーい、いきますよー」
侑「うーん! 今行く!」
★★★
ランニングはしばらく続いた。
朝の日差しを浴びながら走るのは、結構いい気分だ。
その分、汗もかくけど。
汗をかくのは気持ちがいい。運動して出てきた汗なら、そこまで気持ち悪くはない。
むしろ気持ちいいかもしれない。
しずく「ふぅ……」
しずくちゃんは代謝が良いのか、人一倍汗をかいている。
タオルあげよう。
侑「しずくちゃん、これ……」
しずく「うわぁぁ!?」
侑「えっ!? なになに、どうしたの」
しずく「えっ、あ、先輩……どうしました?」
侑「い、いや汗いっぱいかいてたから、タオル渡そうかと……」
100
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/15(木) 00:05:42 ID:ZKXH.gU.
しずく「あ、あぁ、そうだったんですね。ありがとうございます」
★★★
私はよく汗をかく。
しずく(臭わないかな……)
ふだんからよく汗をかく人の汗は臭いにくい、とは言うけど、やっぱり気になるものは気になる。
汗臭いって思われたら、ちょっと嫌だし……。
しずく(先輩に、臭いと思われたりしたら……)
侑『えっ、汗くさ……』
しずく(……)
無いだろうけど。
万が一があるから。
しずく(というか、何を意識してるんだろ……)
誰にだって思われたら嫌なのに。
101
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/15(木) 00:14:14 ID:ZKXH.gU.
しずく(これも全部、昨日の夜の……)
散々質問責めされた挙げ句、結論は『私が先輩に片想いをしているヒロイン』みたいなことになっていた。
しずく(飛躍しすぎだよ……)
もちろん先輩のことは好きです。
でも、それはLOVEじゃなくてLIKE。
しずく(先輩に、片想い……ね)
余計な言葉が頭の中で転がり続ける。
やめよう、この話題!
しずく(さっ、切り替えていこ!)
102
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/15(木) 00:22:08 ID:ZKXH.gU.
★★★
今日のメインイベント。
昨日伝えられた題材を元にエチュードをするというもの。
私達は、修羅場。
役者の人数は7人。
男子3人、女子4人。
「では、みんなそれぞれここから紙を一つとってください」
中には、絶対に言わないといけないセリフが書かれた紙がはいっていて、それにあって状況にどうやって持っていくが重要らしいが……。
「いやっ、終わったこれ!」
「それもうお前、最後に出てこないとインパクト無くなるな」
103
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/15(木) 00:23:56 ID:ZKXH.gU.
侑「何引いたの……あっ、あ〜……そういうね」
「そういうことじゃん?」
「お前は?」
侑「僕ね、『浮気なんてするんじゃなかった〜!』だって」
「オチじゃん」
侑「ある意味楽かもね」
104
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/15(木) 00:32:43 ID:ZKXH.gU.
そんなこんなで、エチュードが始まる。
★★★
物語は、至ってシンプル。
私は、六股をかけた浮気男。
一人目の女の子とデートの約束をして、待ち合わせをしていたら……。
しずく「ちょっと、誰よその女!」
二人目の女の子を演じるしずくちゃんがやってきて、浮気現場を目撃!当然、このセリフが飛び出す。
しかしここから、その黄金テンプレのようなセリフ以外にとっさに何も出てこなかったのか、残りの二人の女の子も。
「ちょっと誰よその女!」
「ちょっと誰よその女!」
と被った。だけどそれが展開が見えた天丼のようで逆にウケていた。
そして問題は。
「ちょっとぉぉ! 誰よその女ァァ!」
よりにもよってそのセリフが絶対に言わないといけない言葉だった男子が飛び出してきたことによってめちゃくちゃなことになる。
結果はまあそこから警官役のもうひとりの男子が「現行犯逮捕だ!」とかもう勢いだけの展開で、逮捕された私が。
侑「浮気なんてするんじゃなかった〜!」
で、終わり。なんだこれ!
でも、なんだか面白かった。
105
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/15(木) 00:37:12 ID:ZKXH.gU.
★★★
しずく「ふふふ、は〜面白かった……」
侑「しずくちゃん、笑いすぎ」
しずく「だって、先輩途中で慌てふためくところが迫真過ぎて……ふふ」
合宿が終わり、帰りのバスの中。
思い出話に花を咲かせていた。
「二人は仲がよいねぇ」
前の座席の三年生の先輩がそういじってきた。
「写真をとってあげよう」
スマートフォンのカメラを向けられる。
「はい、チーズ」
私達は二人してピースをして写真を撮ってもらった。
「後でみんなの写真もグループにあげとくねー」
106
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/15(木) 00:41:45 ID:ZKXH.gU.
ポコポコと、携帯が震える。
侑「おお、いつの間にこんなに写真を……」
しずく「先輩たち、練習より写真とってる時間のほうが多かったんじゃないですか?」
「ふふ〜、まぁまぁ。これも大切なことだよ」
★★★
歩夢ママ「歩夢、もう熱は大丈夫?」
歩夢「うん、もう大丈夫だよ……ん?」
演劇部のグループに、たくさんの写真が並ぶ。
歩夢「楽しそう……私もいければよかったなぁ」
歩夢(……あ。侑くんのピンショット……♡)
こっそり、保存。
誰にもバレずに侑くんの写真を手に入れる。
棚からぼたもち……かな?
107
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/15(木) 00:44:13 ID:ZKXH.gU.
……でも。
歩夢「……」
ある一枚の写真。
あの、桜坂しずくちゃんとのツーショット。
仲良くピースまでして。
歩夢「……」
大丈夫……この子は……しすくちゃんは、私のことを応援してくれてる。
だから……大丈夫。
歩夢(これくらいで不安になっちゃだめ。……でも、私ももっと、頑張らないと)
★★★
108
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/15(木) 00:44:34 ID:ZKXH.gU.
今回はここまで。
また明日に。
109
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/15(木) 00:58:30 ID:CIVuq5q.
写真一枚で喜んでるのいじらしくて可愛いけどそんなだからなかなか勝てないんだろうな
110
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/15(木) 01:20:41 ID:WZW4GQV6
歩夢ちゃん…
111
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/15(木) 01:46:15 ID:PeAjr8DI
1年生組√が歩夢に対して容赦ないな
112
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/16(金) 00:10:45 ID:4F/jUE92
★★★
夏合宿はおわったけれど、まだまだ夏休みは続いている。
「よーし、一回通しでやってみようか」
通しというのは、途中で演技を辞めることなく、本番のように進めていくことだ。
もちろん台本も持たないし、時間も測る。
★★★
「──はい、ストップ。うん、57分。ちゃんと60分以内だね」
審査にあたっての条件があり、上映時間は60分以内という決まりがある。
113
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/16(金) 13:58:14 ID:WIGPYHtU
通しってそういう意味だったんだ、
中断せずに最後までやるって事は台詞間違えてもそのまま続行か…、演劇って大変なんだな。
114
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/16(金) 23:59:15 ID:4F/jUE92
もうみんなの前で演じることにも慣れてきた。だけど問題は、これが舞台の上でできるか、だ。
場面転換の暗転、音響、それらのタイミングを合わせることもとても重要だ。
だからこそ演劇は練習すればするほど連携を高めることができる。
同じ演技の仕方だけじゃなく、少し変えてみればそのほうが良かったりと、様々な気付きや改善点。
通しでやる事のメリットはそこだろう。デメリットは、やっぱり時間がかかること。
115
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/17(土) 00:04:56 ID:xt5Fu0aU
「やっぱりいいねぇ〜、こんなにぴったりな子がいるなんてあの時は思わなかったよ!」
侑「なら良かったです。でも、前の人はなんで急にやめちゃったんですか?」
「転校しちゃったんだよ。あーあ、澁谷くん。光るものがあったのになぁ」
まぁそういうことなら仕方ない。その澁谷って人にも、事情があるんだ。
しずく「先輩、ちょっといいですか?」
侑「うん、なに?」
116
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/17(土) 00:12:28 ID:xt5Fu0aU
しずく「最後の、ヒロインと主人公のキスシーンなんですけど……」
そう、しずくちゃんの言う通り。
今回の脚本は、最後に私としずくちゃんのキスシーンで〆ている。
当然本当にしたりはしない。触れる、というところで暗転して誤魔化すのだ。
しずく「ちょっと先輩、遠すぎるかなぁって」
侑「え、えぇ? 結構近いと思うけど」
「まぁ高咲くん、照れがはいってるからね〜」
そりゃあ照れもする。
演技、するフリとは言えひどく緊張する。
歩夢「……」
しずく「先輩、これはあくまでお芝居なんです。本当にするわけではないですし、どれだけ顔が近くても私は嫌がったりしませんから」
侑「そ、そう? ……それなら、次は……そうするよ」
歩夢「……」
117
:
名無しさん@転載は禁止
:2021/07/17(土) 00:21:37 ID:xt5Fu0aU
★★★
歩夢「侑くん、デレデレしてる」
侑「え?」
帰り道、突然そんな事を言われた。
歩夢「可愛い後輩の女の子とたくさん触れ合えてデレデレしてる」
侑「いやぁ、でもあれは……部活動だし」
先を歩く歩夢の背中から、なんだか冷ややかなオーラが浮かんで見える。
歩夢「ふーん……」
歩夢「……いきなり可愛い子たちに囲まれて、楽しいだろうね」
侑「いきなりって。歩夢だって可愛いじゃん」
歩夢「へっ?」
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