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【創作SS】しろがねの流星 Lap.2-2
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(1話:
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ヘッズからの支援絵
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「さ、君の希望通り、勉強だ」
「シルバー・スターのことなんです。あれって、いったいどういう目的で」
白いズボンと赤いジャケット。この宇宙船にあったステラのお下がりの服で、スターに合う物はこれしかなかった。
駆動音の絶えないガレージでスターは床に座り込み、ステラに問う。一番の謎、シルバー・スターについて。
「これはね、……いくつだったかな、5年くらい前か。私はあの地球の、『枯れた技術』を掘り出していた。その副産物なんだ」
「『枯れた技術』……?」
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もう始まっている重点
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「君も見ただろ、あの地球を」
『枯れた技術』などと言われても、スターにはよくはわからない。だが、地球と言われた瞬間すぐにあの光景を思い出せた。
雲もかかっているかもしれない。だが、あの鋼の星は。もはやスターには枯れているようにしか映らなかった。ショックだったのだ。
あれを地球などと言うのだから、スターにとってその光景はもう目に焼き付いて離れない。
「ああなったのはね、もう3万年ほど前になるのか」
「3万年……」
気の遠くなるような数字だった。スターは一瞬数えたが、それまでだ。自らと比べることもおこがましい。
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「大規模な太陽フレアが発生したんだ、それまでに例を見たことがないほどの、特別なモノが」
「太陽フレア……?」
「爆発だよ。それで、そこからの電磁パルスがあらゆる電子機器を壊して、とんでもない被害を及ぼした。水星なんてひどいもんさ」
「ちょうどそんな時だったんだ、地球が高層大陸計画を進めていたのは。その頃は機械が建物を作る時代だった」
「住む場所もなくなってきたんで、空に機械仕掛けの大陸を作る。それも機械がやるから人を雇う必要もなくね。……それが電磁パルスでイカれて、暴走を始めた」
「結果、作り続けられる建物は地球から空を奪った。だから今、地球はあんな星なのさ。『地球機械浸食期』なんて言ったりもする」
……結局、理解が追いつかないことに変わりはなかった。今まで狭い世界で生きたスターにとっては、あまりにスケールの大きい話である。
だが、気付いてみればその話は本題から逸れている。シルバー・スターはなぜできたのか。それはすぐにステラが語った。
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もう始まってる!
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「衰退していく地球の中で、人類全体の反省とともに封じ込められた禁断の技術。私は、それを調べていたんだ。それが『枯れた技術』」
「そんなことをして、いいんですか?」
「よくなかった。だから追われてるんだ」
何でもないようにステラが言ってのける。どうやら、追われる理由はそこにあったようだった。
「情報変換融合もそうだ。非人道的だと言われて封印されたが、それは未完成だからだ。だからこうしてシルバー・スターに組み込んでいる」
「技術の投棄は愚かしい。だから私はこの宇宙船とシルバー・スターを作って、太陽系を逃げ続けているというわけだ」
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……ひとしきりステラの話を聞いて、スターはどこか恐ろしくなった。今度は、ステラと自分の今後に対してだ。
確かに自分は自由になれたかもしれない、けど。それは、一生命がけで逃げ回らなければならないということでもあるんじゃないか、と。
それこそ、あのオービタルリングの管理局よりももっと恐ろしくしつこいものから。
「ビビッてしまったかな」
「ビビッてません!……あ、いや」
ステラの挑発めいた言葉に、つい大声で返してしまうスター。これでは、自分でそうだと言っているようなものだ。
恥ずかしさで萎縮したスターに、またステラが声をかける。
「しょうがないさ。子供だもんな、ゆっくり考えるといい」
――子供だもんな。
その言葉は、今日一番深くスターに突き刺さったものだった。
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(ぼくは、子供か)
実際、そうだ。自分は12歳程度の子供なのだとスターは理解してはいる、のだが。
それでも、どこかで自分は大人なのだと思いたい節がある。ビークルを乗りこなせた自信などが、曖昧になり始めた自分にそうさせてしまうからだ。
それが、本来大人だという根拠になりえないものだとしてもである。
(大人って、なんだろう。ぼくは年をとって育つけど、それだけで大人になれるのか)
スターが思う大人とは、いろんなことをこなせる人。その程度のぼんやりとした認識しかない。
ステラはスターにとってちょうどそんなふうに映る。だが、ステラと自分とでは人間としての種類も、性別も違う。
どうしたら自分は大人だと言えるようになるのか。……考えるうちに、何もわからなくなる。
(……やめとこ)
『まだ子供だから、わからないんだ』と。思考をどこかに追いやった。――その考えの矛盾に、スターはまだ気づいていない。
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「で、だ。シルバー・スターのもっと細かい所に踏み込んでいこうか」
「あっ、はい」
その後、しばらく話は続いた。もっとも、ステラの話したすべての内容をスターが理解できたわけではない。
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(読み書きができるように勉強しろって、ステラさんは言うけど)
貸し与えられた情報端末で、ステラに言われた通り自室で学習プログラムに努めるスター。
だが、その内容はどこか見知ったものばかり。書けなくてもわかればいいんじゃないかと、スターはそう考える。
(別に、こんなことしなくたって生きてこれた。今はビークルだって動かせる、ステラさんはぼくをどう思ってるんだ?)
考えていると、やる気がどんどん削がれてゆく。ついにはそのまま床に置きっぱなしにしてベッドへ寝転がってしまう。
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(これができれば、ぼくは何か次に行けるっていうんだろうか。……次って、なにさ)
自分は自由になったはずだ、だのに、なぜ行き詰まったふうになっているのか。スターには、わからない。
なぜそうなっているか。目指すものがないからというのは明白のはずだが、思い込みというのは恐ろしいものである。
ビークルに乗りたいという目標をこんな形で果たしてしまったスターは、どこか自分が非の打ち所のないような人間に見えてしまっているのだ。
(わかんない……)
疲れさせた脳が眠りをもたらし、そのままスターはまどろみの中に落ちていく――
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それから2日後。『トップギア号』は、火星を目前にしていた。
宇宙船での3回目の起床を終えて、ブリッジに出たスターを出迎えたのは、赤土と緑青の広がる暁の新天地。
「地球時間、5時27分。まあこんなとこか」
「すごい!これが火星ですか?」
「そうだよ、テラフォーミングが最も成功した言わば第2の地球。見てごらん、大気も水も、緑さえもある」
「すごい……!」
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オービタルリングに始まる、『太陽系漸進時代』の最も初期に始まった火星開拓計画。それは人間の地下基地建設・移住から始まる。
始めは資源の採掘程度が注目されるに留まっていたが、やがて地球での技術革新により地表面テラフォーミングの目途が立つ。実に西暦約1万5000年時のことである。
地下基地および資源採掘基地を流用・拠点とし、極冠の温度を上げることで大気層を形成し始める。しかし、計画進行中に火星にもまた太陽フレアが襲う。
大気層が薄かったこともあり電磁パルスと荷電粒子は火星を直撃。大気は宇宙空間に散らされ、テラフォーミング用機材も過負荷による故障が多数。火星開拓民はまたも地下での生活を余儀なく強いられる。
しかしテラフォーミング計画は終わっていなかった。当時の技術を復元、新たに解析した技術を余りある資源をもって量産。大気層安定のための磁場を発生させる装置を作り上げる。
その後、メインストリームであった地球の機械浸食も相まって火星は今なお続く黄金期を迎える――
スターが無垢な瞳で見つめるこの星は、そんな偉大なる挑戦の積み重ねでもあると言えよう。
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「例えるなら、『太陽系漸進時代』の最高の輝きだろうね」
スターの眼にはそれが、まるでマーブル模様の宝石のように映っているのだ。太陽を浴びて差し込む輝きが、スターの視線を掴んで離さない。
その美しさは、まるで星から覗き返されてるような錯覚さえ覚えさせる。人を惑わす星、営惑の星。
(環がある……これもきれいだ)
かつて存在した2つの衛星を粉砕して形成された火星の氷環。現在ではこれも貴重な資源となっている。
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「でも、どこに降りるんですか?」
「陸地に決まってるよ、シルティスの隠れ港に降ろす。表だって普通の港に行く訳にいかないしね。さ、席に座ってベルトを締めるんだ」
ステラがそう言うように、スターはシートベルトをきっちりと締める。自動操縦の『トップギア号』は、やがてその姿を赤熱させる。
火星の大気圏へと突入を始めた証拠だ。先ほどまで見えていたブリッジからの景色は、シールドが閉まったことで何も見えなくなっている。
それゆえスターには何が起きているかわからない、ただ細かな振動が席を襲うのみ。
――再びシールドが開くころには、視界いっぱいに広がる青空がスターを出迎えた。
「……!」
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「下も見てみなよ」
もはや、驚きと感動が言葉にもならずスターの喉をつまらせる。
昼面の火星はきらめいていて、何もかもが鮮やかだった。降りてきた上を眺めて、次に地上へ視線を向ける。
遠くでわかりづらくとも、確かに感じる巨大な大地。火星のすべてがスターを誘っているのだ。
「……大きすぎます、ほんとに」
「そうか」
シートの上でもはや精魂尽き果てたかの如く脱力するスター。
これ以上の驚きはもう味わうことはないだろう、と。そう確信していた――
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◆原稿用紙10枚分◆ ◆今日はここまでな◆
なんだか情報量が凄まじいことになってきたようなアトモスフィアを感じる
>>14らへんとか重点な…
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乙シャス!
流石うまいっすね
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オツカレサマドスエ
いつも参考にさせてもらってます
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オツシャス!
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オツシャス!
普通に面白いし見入っちゃう
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たまには武蔵ゼEROジョイナススレも勃てて…
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年表だけでもまとめてみた(仮設定のレベルだが)
西暦(1年の基準は地球時間とする)
2000年代後半〜 宇宙開発開始、オービタルリング建造開始
3000年代〜 宇宙航行技術確立、『太陽系漸進時代』の始まり
3000年代後半〜 人類、火星圏での居住を始める
5000年代〜 金星・水星の内惑星開拓始まる
10000年代〜 火星以遠、外惑星開拓始まる。木星圏衛星イオにて開始
20000年代〜 太陽フレアが開拓圏全域を襲う。水星壊滅、地球機械浸食期開始
21000年代〜 地球完全機械化。人間の住めない環境とされる
25000年代〜 火星テラフォーミング再始動。
30000年代〜 火星テラフォーミング完了。第2の地球として太陽系の中心となる
40000年代〜 木星衛星並びに土星衛星テラフォーミング完了。
45000年代〜 内宇宙テラフォーミング完了。太陽熱をエネルギーに変換する計画が始動する
50000年代〜 現在。太陽系漸進時代の終焉とされる。
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>>24
こういう年表設定読むのすき
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