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【日常α】眠らない魔都・異能都市【その19】

709アリス=ベリー・ベリーストロベリー・ショートケーキ:2019/12/07(土) 02:46:15 ID:tsda7neQ0
>>708

アイリスが話し始める素振りを見て、目を輝かせて聞く準備。
向かい合わせに抱えた黒猫が鼻を舐めようとしているのに気づくと微笑み、顔を寄せる。
今は言葉を理解できないが、言わんとすることはなんとなくわかるのだ。
くりくりの真っ赤な目に低い鼻、丸みを帯びた輪郭。可愛らしい少女のそれだ。

「アイリス・フォン・ルズィフィール……とってもむずかしい名前をしているのね」
復唱して僅かに顔をしかめた。少女を現すのに必要なのはたったの三言。その差が気になった。
今度は心の中でもう一回。真っ赤なメリージェーンでタンタンタンと一音ごとにリズムを刻む。11回。
「今あなた、月の子って言わなかった!?
 お月さまに行ったことあるの? あそこはどんな場所なのかしら!?」
名前を確しっかりと覚えたところで興味はすぐに次へ移る。
「この子はキルリスっていうのね。使い魔ってことは……あなたとお友達ってことね!」
さらに次へ。
口元からは今日も甘ったるい匂いを残すアリスが黒猫と再び顔を見合わせる。
「っていうことは、ただの黒猫じゃないのかしら?
 なにかしら? ……あなたに聞いたら教えてくれる?」
見ている限りはただの黒猫。右目と左目のそれぞれが別々の色をしていることが特徴的な。
いまはわからない。だから、今度直接聞いてみよう。黒猫の秘密が気になって、また笑う。

「まあ、とっても素敵。
 小さいころからのお友達と結婚できるなんて素晴らしいことだわ」
アリスがよく読む本の中でも、幼馴染との結婚は物語のとてもハッピーなエンドの一つだ。
ぱちぱちぱち。と手を慣らし一足早く祝福する。

アリスにとって、女の子になるとうれしいこと。
その説明を求めると僅かにうつむいて、口ごもった。それから、たどたどしく語りだす。
「私って、女王さまよね。
 だから、男の子に好きって言っちゃダメなの。
 でも、女の子どうしなら、たくさんいい放題だって気づいたの」
黒猫のうなじに顔を埋めて顔を俯かせる。けれども、目線はアイリスへ一直線。
こういう想いを曝け出したことは無い。こんなにも恥ずかしいものだったんだと思いながら。
「あなた、いろんなことを知っていて、やさしいもの。私、あなたが大好きよ!」

湧きおこる気恥ずかしさから黒猫をぽいっと投げ飛ばしてアイリスの前から逃げていく。
残るルゥちゃんの元へ視線を映し、身体も向けて。膝を折って。
「そう、あなたはルゥっていうのね。私はアリス。よろしくね」
ルゥにしか見えないのか、或いは、ルゥにも見えていないのか。
どちらにしても、アリスには見えていない。けれども、見えないわんわんを追うことはアリスの得意分野でもある。
「ルゥのわんわんはどんな色をしているの? 私も触ってもいいかしら?」


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