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【日常α】眠らない魔都・異能都市【その19】

1名も無き異能都市住民:2013/08/24(土) 22:30:52 ID:IRZRROfE0
≪ルールとか≫
・基本age進行で
・コテもコテ無しもどんどん来い
・レスの最初に自分のいる場所を明記してくれるとやりやすいです
・イベントを起こしたい場合は空いているイベントスレをお使い下さい
・多人数へのレスは可能な限り纏めて行うようにしましょう
・無意味な連投・一行投稿はできるだけ控えるよう心がけてください
・戦闘可能ですが、長引く場合や大規模戦闘に発展した場合はイベントスレへ移動してください
・戦闘が起きた場合、戦闘に参加したくない人を無理に巻き込むことはやめましょう
・次スレは>>950を踏んだ人にお願いします

前スレ
【日常α】残暑蹴散らす異能都市【第十八話】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12841/1345869891/

786アーリル:2023/11/12(日) 01:01:26 ID:ghE7.UrM0
>>785
「アカリさん、お疲れ様でした!次も私が頂いて行きますわ。」

機動力を削ぐのも武器を振るうための肩を壊そうとするのも戦士としての戦い。
騎士として正々堂々剣や槍の腕を競うのではなく、相手に勝つために壊す戦い。
どうして”勝ちたい”と思ったのだろう、アーリルは思いに耽るが、意外と簡単に結論が出た。
アカリはアーリルを”認めてくれているから”だ。
アーリルは生まれてこの方武力で認められなかった。でもアカリは認めてくれる。

「普通のものよりも長いものですからね、まず自身の体にぶつけないように取り回しができるようになるまで相当時間が掛かりました。」

アーリルの戦い方は一般的な槍よりも長いものだが、フィジカルに任せているところもあるし、特別な槍でもあるが、それに助けられているところも多々ある。
体格に関しては将来に期待といったところ。
アーリルの槍の取り回しの秘密は長槍をどの位置で握るか、だ。間合いを徹底しているといってもいい。
槍に限らず剣や他の武器を握ってもある程度の強さを発揮できるだろう。

「一日数時間地面を転がされ続けた結果ですので、技能について自信がありませんの。ですが腕を褒めていただいて嬉しいです。ありがとうございます。
 アカリさんが回転を始めたときはどのように切り抜けようか一番必死に考えましたよ。攻防一体の恐ろしい攻撃でした。」

あのときはたまたまどうにかなっただけで、別の方法からあの攻撃に繋げられたら槍一本で切り抜けるには難しいだろう。
あとは推力を生かす高速戦闘になれば、アーリルは恐らく防戦に寄る戦いになるだろう。

787アカリ:2023/11/15(水) 00:05:35 ID:5v6Z28Cc0
>>786

「今回は勝つ為とはいえ奇策に頼って失敗しましたが、次は異能も武技も鍛えて根本的なスペックを上げてから出直して来ますね!その時まで勝利の台詞は預けておきますから!」

好戦的な台詞を言いながらも、こんな軽口が叩ける事が楽しくて仕方ないのだろう、顔に浮かぶのは満面の笑み。
アーリルとは境遇が違うが賞金首を狩るとなれば一人前の働きが出来て当たり前と見做される、当然実力を褒められる事もないし腕と頭の足りていない奴から“辞めていく”だけの世界だ。
互いに実力を認め合い高め合うこの瞬間は何よりも尊く感じられるもので。

「やっぱり修行の賜物ですよね、でもその武は誇って良いと思います」
「何時間も転がされて血と汗と泥塗れになりながらアーリルさん自身の手で掴んだなにか、それは絶対にアーリルさんのものですから」

「と、そんな感じで自分を少し認めてあげても良いんじゃないでしょうか、無論慢心はダメですが、先週の自分に出来なかった事を今週の自分は出来る、それって凄く偉大なる事じゃないですか?」

788アーリル:2023/11/18(土) 00:40:15 ID:ghE7.UrM0
>>787

アーリルの実践相手は強さの物差しが違う。
アーリルがセンチ刻みの定規で強さを測るのならば、アーリルの相手はメートル単位の定規でしか強さを測れない。圧倒的な格上だけを相手に、上澄の中の上澄には相手にされず。
そんな環境の中で変わるがわる数人に1日の半分程度の時間を転がされ続けて10年と少し。
初陣を終え、何とか半人前に漕ぎ着けた。
基礎はつけた。あとは自分で考えて実戦で強さを練り上げていく。その過程の中だ。
かつての記憶を辿れば、血に塗れた自分がいた。
だから、アカリに承認されて、励まされて。
無駄ではなかったのだと、無理だからと諦めなくてよかったと。
そんな感情が溢れて、右目から涙が一筋流れた。

「いいえ、次も私がいただきますよ。
 今回は槍の出番が少なかったですから、次回は槍もレイピアも使って勝たせていただきます。」

アカリを見つめる顔は穏やかなもので。
アーリルとは戦いに身を投じる理由が違う。
それでも行く先は人並みの生では満足できない、ある種歪な生き方か死か。
生か死の中で磨かれる技術こそ、身を立てるのに必要なもの。

「……そうかもしれませんね。もう少し自分に優しくしてあげてもいいのかもしれません。」

自分に優しくできるかどうかといえばどうだろうか。
自分の目標となる人物の武勇に近づき追い越したい。
その先に何があるのかわからない。でも、それまでは止まれない。

789アカリ:2023/11/18(土) 21:50:26 ID:5v6Z28Cc0
>>788

アーリルの目から流れた涙には気付いてもそれに敢えて触れる事はしない。
それだけのものを彼女が抱えていた事は初対面でも容易に想像が付くし、だからこそそれを本人が開示しまいと強く振る舞う間はその意思を尊重したい。
ただ、彼女がそれに耐えかねて潰れてしまいそうな時には、その前に一人の友人として支えたいと思っている。

「では次も全力を尽くした死闘になるでしょうね、それまでに腕を磨いてより良い時間を過ごせるようにしますから、お互いに頑張りましょうね」

穏やかな微笑みを浮かべながら、アーリルの顔をしっかりと見る。
その視線は境遇も年齢も何もかも違うが一人の対等な人間を見るもの、アーリルをアーリル以外の何者とも認識していない、そういう眼だ。
奇遇か皮肉かそれとも因果か、それは彼女の成功体であるリイスがアイリスに向けたものと同質の物。
恵まれた境遇にある人間だからこそ持ち得る、金でも立場でも得られない『人間』の掛け替えのなさを知るが故の視線。
それを彼女はアーリルに向けていて。

790アーリル:2023/11/19(日) 02:06:39 ID:ghE7.UrM0
>>789

アーリルは才能がないと言われ続けた。
とにかく弱いと叩かれ続ける日々。
叩かれるのはまだしも支えられるのはほとんど無かった。

「そうですね、アカリさんの底はまだ見えませんし、見せておられないでしょう?」

アーリルもまた、同様だ。
当然、次も勝ちを頂いていくつもりでいる。
実力を出しきれていないし、まだ槍の腕を見せきっていない。

「…、アカリさん、ありがとう、ございます。」

アカリの視線は決して侮蔑の類の視線ではないとわかる。
落胆の視線でもなければ哀れみの視線でもない。
ただのアーリルとして見てくれて、ありがとうございます。
今更流れた涙に気づき、穏やかな笑顔を浮かべた。

791アカリ:2023/11/23(木) 03:03:26 ID:5v6Z28Cc0
>>790

「私が未熟なばかりに出し損ねた、というのが正確ですけれど、そうですね……使えなかった技はまだ沢山有ります」

これはアカリが猛省しなければならない部分だ。
浮遊する事で平然と戦えているように見せかけてはいたが序盤で足を潰されたのはかなりの痛手だった。

「何もしてませんよ、だってアーリルさんも同じように思ってくれているでしょう?」

微笑みに釣られるように微笑んで。
彼女にとってこれは“当たり前”の事。
礼など言われる事ではないし、そうでなくとも成り立つ関係を目指したい。
初対面でそう思ってしまうのは強欲なのかもしれないが、それだけアーリルという人間に好感を抱いているのだ。

792アーリル:2023/11/27(月) 12:43:37 ID:4GaSeYbI0
>>791
「私こそ出せなかったものはたくさんあります。
 槍の長所を引き出せているわけではありませんので。」

つまりはまだまだあるということ。
槍の長所もそうだが、握る場所を変えることによる間合いの調整もほとんどできていない。
今回は槍を使えていないという結論に達する。

「こういう時は、何と言えば良いのでしょう?」

可笑しいのか、口元は僅かに釣り上がり、目には見てわかるくらいの喜色。
この場にふさわしい言葉は幾つか察するも、この場において最も適切な言葉が見つからない。

793アカリ:2023/11/28(火) 23:28:47 ID:5v6Z28Cc0
>>792

「ならやはり次は激戦待ったなしですね、私も持てる手を使い切るつもりでぶつかりますから、アーリルさんも是非そうして下さい!」

どこまでも明るく陽光のような微笑みを零す。
彼女のとってアーリルは最も身近に出来た超えるべき目標であり切磋琢磨すべきライバルだ。
それと競い合い高め合える機会が今後もある事が嬉しくて仕方ないのだろう。

「無理に言葉にしなくてもいいんじゃないですかね、この気持ちが私達の間で通じ合えばそれで十分じゃないでしょうか?」

何も言葉にする事が全てとは限らない。
お互いに同じ気持ちを持っているのなら、無言の間に同意が成立するのならそれもある種の“会話”だ。

794アーリル:2023/12/02(土) 23:59:32 ID:ghE7.UrM0
>>793

おそらく次も異能は使えない。
もし使用できるのなら、使える手札が大きく増える。
純粋なフィジカルと自身が積み上げてきた戦闘技術から異能を織り交ぜた天地を焦がす戦い。
そんな戦いになるだろう。

「そう、ですね。アカリさんはこれからどうします?
 私は幾つか行くところがございまして。」

"兄様"を満足させるために兄様と合流して回って。
少しお腹が空いたので甘いものでも食べてから動き出すだろう。

795アカリ:2023/12/06(水) 22:58:46 ID:5v6Z28Cc0
>>794

「私の用事は特には……正直に言えばもう少しアーリルさんやそのお兄さんと親交を深めたい所なんですけれど、流石にこれ以上は迷惑ですよね?」

相変わらずの素直な返答。
アーリルともそのアーリルが兄と慕う人物とも関わってみたいのが本音だが、それで迷惑をかけては元も子もない。
アーリルとはこの短時間で親交を深められた気がするが、お兄さんとはほぼ面識無し、空気を台無しにしてしまうのは本意ではない。

796名も無き異能都市住民:2023/12/09(土) 21:52:38 ID:ghE7.UrM0
>>795
アカリに一言断りをいれて、アーリルはスマートフォンを取り出して操作を始める。
通話だろうか。コール音が二度、三度なる頃には相手が電話に出たようで、一言二言話し始めてから数分。

「ええ、わかりましたわ。”兄様”の周囲から察する限り、私達が行けば良いですね。」

ノイズキャンセリングされても貫いてくる怒声や罵声が聞こえても通話相手は健在のようで、笑い声まで聞こえてくる。
ドゴォ、バキィといった殴打する音や何かが固いものに突き刺さるような音の中、通話は滞りなく進んでいく。

「なるべく急ぎますわ。少し眩しくなると思いますけれど、お気になさらずに。」

アーリルは空を眺めた。
瞬く空ではあるが、アーリルが知る空に比べると濁って見えるそれを見て、目をつむり、祈った。

「”天の穹窿を横切り黄金の逆月を携え■■■■■を航行する君よ。御身の祝福を我が身に”。」

それは祈りの歌。
かの■■の力を借りるための聖句。

「アカリさん、”兄様”が不遜の者に襲われているようです。ご助力願えますか?」

常に空にあり、地上のすべてを見つめる■■■の力のほんの一部を借受け、軽く手足を動かす。
早く動くためには、街中はあまりにも機動性が落ちる。
近くに無いはずの乳香の香りと居ないはずの雄鶏の鳴き声が感覚を刺激する。

797アカリ:2023/12/10(日) 22:58:43 ID:5v6Z28Cc0
>>796

「喜んで、面倒なので単刀直入に聞きますが私の異能を使って“飛んで”いきますか?急ぎなら多少荒くはなりますが……速さは保証しますよ?」

賞金首狩りなどをしている以上場数は最低限踏んでいるのだろう、先程までののほほんとした空気は吹き飛び仕事をする人間のそれに変わる。
兄様が不審者を勢い余って木っ端微塵にしてしまうリスクがあるのか、兄様を苦戦させる猛者がいるのかはわからない。
後者なら助力は必須だし前者でも敵に対して加減を効かせられる自分達が向かった方が状況は良くなるだろう、なら、その為に異能を活用するのは惜しくない。

意識を集中して異能を起動、背には四枚の光翼を展開しアーリルの返事を待つ。

798アーリル:2023/12/11(月) 22:23:23 ID:ghE7.UrM0
>>797

「お願いします、アカリさん。
 私はどのような体勢でいればいいのでしょう?」

アーリルの心配はどちらかというと襲撃者側。
"兄様"は長身で筋肉ムキムキの体だが、動きが遅いわけではない。
怪物のようなフィジカルで襲撃者側がすり潰されていないかの方が心配である。

「"兄様"はここから北東の方角にいます。距離は分かりませんが、空から見るとおそらく見逃す可能性があります。
 加減はお願い致しますね?」

先の模擬戦で機動力の高さは分かっている。
とはいってもアーリルが今分かるのは薄ぼんやりとした方角だけ。
更に空から一人の人物を探し出すという困難な課題。

「ルーンが刻めたら早いのですが、あいにくと刻めるものがありません。アカリさんが頼りです。」

槍やレイピアはあるが、人々が歩く街中で使えるようなものはない。
石畳やアスファルトを壊せば調達できるが、この手段は使えそうにない。
だからアカリの異能が頼りだ。
だからだろうか。"乙女の秘密を守る魔法"をこっそりと2人分かけた。

799アカリ:2023/12/13(水) 20:54:52 ID:5v6Z28Cc0
>>798

「……お姫様抱っこと猫みたいに抱えられるの、どちらが好みです?」

どうやら具体的な運び方まで考えが到っていなかった様子。
異能の推力に任せて飛翔する以上アーリルの体重くらいなら問題なく運べる、気にするのは周囲から見てどう映るかだ。

「承知しました、北東ですね、地上の様子が確認出来るように高度は少し控えめで行きます!」

あの高い高いの方向を誤ってアーリルを砲弾のように吹き飛ばしていたお兄さんが戦っているなら上空からでも何かしら確認出来る戦闘の痕跡や余波があるだろう。
後は裏路地の奥など視認し難い場所にいない事を祈るばかりだ。

800アーリル:2023/12/13(水) 23:13:19 ID:ghE7.UrM0
>>799

お姫様抱っこか抱えられるのかどちらが好みか。
想像してみる。
猫のように首根っこを掴まれて空を飛ぶ…?
横抱きにされて幼い子供のようにアカリにヨシヨシされながら空を飛ぶ…?
それとも両脇に腕を通して手足を脱力し、タケ◯プターを使っている時のような姿勢で…?
お姫様抱っこなら私はアカリさんの首に手を回して…周囲の祝福のコンフェッティシャワーの中笑顔で見つめあって…?
アーリルの脳を駆け巡る存在しない記憶。
幾度となくした喧嘩、仲直りの模擬戦。他愛のないおしゃべりをしながらテーブルを囲い、お茶と菓子を楽しんだ。
多くの時間を共に過ごし、たくさん喧嘩をしてその分仲直りをして。
思った以上に自分は甘えん坊だったのを知り、今日この日を迎えた。
ハッとした顔のアーリルは頭を小さく振った。

「ええと、お姫様抱っこでお願いします。
 あまり脂肪はつけていないつもりですが、その、重いかもしれません……が、よろしくお願い致します。」

苦渋の決断を終えたような顔でありながら、顔は赤い。
子供扱いされたくないし、純粋に恥ずかしい思いと。
でも空の移動を選んだのは自分で。
両腕を広げて、半身をアカリに向けるように立った。
真正面から抱き付かなかったのがせめてもの抵抗だ。

「飛び跳ねるのは慣れているのですが、文字通り飛翔は慣れておりません。だから抱きつかせてください。」

少し恥ずかしそうに伏し目がちに答えた。

アーリルをお姫様抱っこしてみると、密度が高い筋肉に覆われた体ではなく、腰のくびれに対し、足はしっかりとしていたりと女性の体に近づきつつある様子がわかる。
どこがとは言わないが意外とあり、長物を振り回す体には到底思えない印象を与えるだろう。

801アカリ:2023/12/15(金) 23:26:30 ID:5v6Z28Cc0
>>800

アーリルの頭を過った存在しない記憶に気付ける筈なんてなく、何故赤面しているのだろうと頭の上にはてなマークを浮かべながら承諾する。

「じゃあお姫様抱っこで……アーリルさんの体格なら多分大丈夫ですよ!」

そういって手を伸ばしアーリルを抱え上げる。
想像通りその身体は軽い、というか間違いなくさっきのステーキハウスで食べていた総重量より軽い気がするのは気のせいではないだろう。

(あ、柔らかい、私より遥かに女の子してますね……ちょっと羨ましいです)

アカリの身体は良く言えばスリム、悪く言えば凹凸の少ない貧相な体型だ。
少なくとも胸部に関しては完敗している事を実感しながらも、今はそんな場合ではないと思考を切り替える。

「それじゃあ乗員はお一人様で!テイクオフです!」

言葉と同時に煌めく背の四枚の翼。
それから異能の力が推力に変換され吐き出され、アーリルを抱えたまま宙に少女の身体は舞う。
目指すは北東、ある程度の高度に達し次第、進路を其方に向けて前進を始めるだろう。

802アーリル:2023/12/16(土) 13:23:40 ID:ghE7.UrM0
>>801

まだ成長しきっていない体のために適度に脂肪を残した体は、ステーキハウスで食べた肉をすでにエネルギーに変換していた。
それで満腹感を与えているのは不可思議な体だ。
食べられる時にしっかりと食べる戦士だからか。

「本日は搭乗ありがとうございます。機長はアーリル・フォン・ルズィフィールです。」

ある程度の高さまでは余裕があるようで、その高さは普段から飛んで落ちている高さだからだ。
お姫様抱っこされながら意外な余裕を見せる。

「ただいま進路は北東に進んでおります。建物などから大きな音がしたら恐らく"兄様"がいらっしゃいます。」

眼下には都市のビル群をはじめとした建物ばかり。
しっかりとアカリの首に両手を回し、ベッタリとくっつきながら、あれこれと話し始める。

「この周辺でしたら、建物や重たい何かの動きがあるところに行ってください。」

アーリルのナビは"兄様"の戦い方は怪物じみたフィジカルに任せた野生的な戦い方に由来する。
並の怪物を縊り殺せるフィジカルモンスターである"兄様"が動く時は、"地上から車が飛んできた""人が建物の高さより高く飛んでいる"
など常識を捨てなければならない。
お姫様抱っこをされてみて分かるが、思いの外視界が狭い。首が回る限界を思い知らされる。

アカリたちが動き出して十数分が経った時だろうか。
地上では裏通りと呼ばれる場所で揺れているビルが目に入るだろう。
近づいてみれば、建物に大きなヒビが入っているのがわかる。

803アカリ:2023/12/17(日) 04:36:40 ID:5v6Z28Cc0
>>802

(うーん、不思議です、でもこの燃費を考えたらあの膂力も何となく納得出来るような……いや、あの力を振るって自壊しないあたりやはり素のスペックでは圧倒的なものがありますよね)

まあこれについて深く考えても仕方ないだろうと思考を打ち切る、どんな仕組みであれアーリルはアーリルだ。
いっぱい食べる娘とだけ記憶して、何か一緒に行動する時にはそれにだけ気を付ければ良いだけ。
難しい話でもなんでもない。

「なるほど機長、建物から大きな音がしたり動いたら……建物が動いたら?」

なにそれこわい、恐竜レベルの生き物が暴れても建物が動くってそうはないと思うのですけれど?
そんな発言をしたくなったが砲弾式高い高いを思い起こし考えを改める、愛情込めた高い高いでアーリルを地面に突き刺すかもみじおろしにするかの二択をうっかり迫ったあの人ならやりかねない。



「あ、機長……なんかビルが揺れてます、近くに緊急着陸してみますね?」

そう言いながら高度を下ろしてみれば見えるのはビルに走った大きなひび割れ、間違いなくこの周囲にお兄さんはいるだろう。
というかいないとなるとお兄さんレベルのゴリラがもう一体街で暴れている事になるので是非此処に居てほしい。

804アーリル:2023/12/17(日) 16:39:58 ID:ghE7.UrM0
>>803

アーリルは確かにカタログスペックでは非常に優れている。
フィジカルに優れ、回復力も優れている。
シンプルな肉体の強さとそれを使用する武器の使用。
また異能もキチンと認識させ、経験を積ませれば優れた戦士になるだろう。
そのために作られた。千年を超える超長期政権のための歯車。
そんな宿命は本人の預かり知らぬところであるのが救いか。

「あら、ビルが揺れちゃっているなら"兄様"がいるかもしれません。
 少し離れたところに降りて、それからは自分たちの足を使いましょう。」

グラグラと揺れるビル。燃え盛る乗用車や空を飛ぶ軽自動車。
ひっくり返っている乗用車、引きちぎられた街灯や道路標識。歪に凹む舗装路。
根元から引き抜かれた形跡がある電柱。
この光景だけ見れば災害に遭ったような光景だが、たった1人の生き物のパワーに引き起こされた。
この周囲に事務所を置く反社会組織がたった1人のために傘下の壁を越えてコラボレーションしていた。

アカリとアーリルの耳には人と車がぶつかったような衝撃音や舗装路を踏み砕く音と地面に伝わる揺れ。
アーリルは少し困った顔をしていた。

「あははは……兄様、少し気が立っているようですね
 兄様であって欲しいのですが。」

805アカリ:2023/12/17(日) 20:23:49 ID:5v6Z28Cc0
>>804

「そうですね、あまり近くだと思わぬ流れ弾に当たりかねないですし、そうしましょう」

ビルを揺らすくらいの力を持っている人間の側に不用意に近付いたら、悪意は無くとも瓦礫の破片などが飛んできそうで怖い。
この惨状を見る限りではかなりの人数と戦っていそうだし集中砲火を浴びている可能性もある、近くに突然現れるのはそちらの方面でも危険だろう。
アーリルの言葉に異議はなく、素直に少し離れた場所に着陸しお姫様抱っこをやめて地面にゆっくりと降ろす。

「そうですか、気が立ってるんですね……」

ちょっと遠い目。
この暴れっぷりの時点で何となく分かっていたが身内が言うなら確定だろう。
問題はこれからどうするか、お兄さんが止まらなかった場合には敵対している人達をお兄さんがあの世まで吹き飛ばしてしまう前に無力化、鎮圧する必要がある。
止まってくれた場合はそれはそれで問題だ、多分争っている相手は反社会的な人達、ここまで暴れて面子を潰してくれた相手を簡単に帰してくれるとは思えない。
となれば結局戦闘は続行、相手の無力化はどちらにせよ必須になる。

「あれ、アーリルさん、もしかしなくともこれって戦いが避けられないのでは?」

806アーリル:2023/12/18(月) 00:04:56 ID:ghE7.UrM0
>>805

「おそらく、すこーし気が立っているだけです。」

少し歩いた先にアカリとアーリルが目にしたものは。
長身の筋肉ムキムキのマッチョマンが軽自動車の助手席側のフレームを掴んで持ち上げ、尻餅をついた男に振り下ろそうとしていたところだった。
尻餅をついた男の顔の横に叩きつけられる自動車。
建物に突き刺さった軽自動車は大きな音を立て、部品を散らかしながら落ちた。

周囲には如何にもといった男たちが寝転がっており、血の海に沈んでいた。
死なない程度にはしている。
血の海に沈んでいたと言っても大男からすると少し小突いた程度なのだが。
車や電柱で軽く小突いてやり返したくらい。

『つまんねーな。あれだけ見栄張ってこのザマかよ。気合い足りてないんじゃねーの?』

大男はヴィルヘルムという名だ。
ヴィルヘルムはアイリスを探しながら散歩がてらに歩いていたが、反社会組織の輩に絡まれた。
だからボコボコにしただけなのだが。
股間を濡らした男の胸ぐらを掴んで鼻先がくっつきそうなくらい顔を近づけて。

『喧嘩売る相手くらい選べよ、お前ら。
 今日の俺の機嫌は良いからな、今日はこれくらいにしておいてやる。』

邪魔だ、と言い、漏らした男の顎先に人差し指を当て、そのまま路地裏に放り投げた。

『俺はヴィルヘルム。まだ喧嘩したいなら全員で来い。今度は後悔させてやるよ。』

そんな様子のヴィルヘルムこと"兄様"を見て、アーリルはほっと一息。

「アカリさん、大丈夫です。思っていた以上に被害は少ないです。」

何が大丈夫なのか分からないが、近隣の環境が激変しているのは変わらない。
スマホを操り、通話音。
一言二言話すと、スピーカーに切り替えて。
"ヴィル"
この一言で大男の首はギギギと油が切れたブリキ人形が首を回してアカリとアーリルを見た。

807アカリ:2023/12/19(火) 23:29:32 ID:5v6Z28Cc0
>>806

「うわぁ」

軽々と片手で自動車を持ち上げ男の側に叩き付ける光景に思わず驚いた声を出した後絶句、間違っても軽自動車は片手で持てるくらい軽い自動車という意味ではない。
詳しくはないが普通ではなく軽とはいえ600kg〜1t位の重量はある筈だ、持てて良い訳がない。

周囲を見渡せば死んではいないが正しくはないが屍山血河の大惨事、人を除いて周囲の建物の損壊具合だけで考えても数十億の金が飛ぶのではないだろうかと思われる、やっぱり大惨事。

「ああそれは良かった……って、これで被害が少ない方なんですか!?」

命を落とすレベルでの人的損害は出ていないが建物に対するダメージが特に酷い、動かされた建物なんて基礎からダメになっている可能性すらある。
そんな事を考えながらアーリルの様子を見ていると何やら何処かに電話をして、多分お兄さんの名前が呼ばれる。

そして、壊れかけの玩具のような動きを見て声の相手との上下関係が何となく理解出来てしまった。

808アーリルとヴィルヘルム:2023/12/20(水) 21:29:51 ID:ghE7.UrM0
>>807

"あとで話がある。逃げないように。"
この一言で通話は切れてしまった。
声の主はアイリスであり、アイリスとヴィルヘルムの力関係は明白だった。
この力関係はアカリが想像するものと同じだろう。
ヴィルヘルムの腕っぷしがどれだけ強くてもアイリスには敵わない。
もしこの二人が家庭を築く時でもこの関係性は続くと予想するのは簡単だ。

アーリルの手にはスマホが握られたままでアカリに話しかける。

「ビックリしますよね。本気で暴れたらこの辺り一帯はクレーターがいくつも出来て、災害の跡地のようになると思います。」

ね?被害は少ないでしょう?とアーリルは笑った。
建物が原型を留めてあるあたり有情といったところか。
アイリスの声を聞いて、ヴィルヘルムは冷静になったようで、どのようにアイリスの口撃を躱せるか思考に浸りそうになるが、アカリとアーリルの姿を認めると声を掛けてきた。

『ん?さっきのお嬢ちゃんとリルじゃないか。こんなところでどうした?
 リルは構わないが、お嬢ちゃんにとっては目の毒だ。何をするにしてももっと明るいところで話をしよう。』

ココは危ないから離れようか、と言いこの場から離れようとする。
この場の写真を撮られることで証拠を押さえられるのを嫌ったのだろう。
ヴィルヘルムの姿を見ると、砂埃で薄く汚れているくらいで体に出血を伴う負傷を負っているように見えない。
道徳的に見れば子供達を反社の人間が居着く場所に置いておくのは問題であるし、また風景も悪い。
後の話だが、自身が破壊した場所の修復費はアイリスが負担して後にヴィルヘルムの借金となる。
契約書なしの金利0%、ちょーやさしー。

809アカリ:2023/12/20(水) 23:47:54 ID:5v6Z28Cc0
>>808

アカリは声の主もヴィルヘルムの事も詳しく知らないが何となく関係性を察する事は出来る。
きっと恐らくだけれど、腕っぷしが幾ら良かろうが絶対に逆転出来ない弱点を電話の相手に対してヴィルヘルムは持っている。

(これは……お説教コースでは済まないタイプのやつですね、しっかりと時間を取って淡々と理詰めで追い込まれていくキツいやつになると見ました)

「流石にびっくりしました、でもクレーターまで出来ていたら復興には時間が掛かるでしょうし、そう考えるとかなり加減されていたんですね……」

でもこれ建物を結局一旦解体して立て直す必要ありそうだけど、いっそ完全に粉砕した方が手間が省けて逆に良かったのでは?
物騒な事を考えたが流石にそれはないかと苦笑い、そんなタイミングでヴィルヘルムから声を掛けられる。

「あ、お気遣いありがとうございます!こういう場も一応経験してはいますが好き好んで滞在するのはごめんですので、是非そうしましょう!」

パワー系に見えるけれどアーリルが兄様と呼ぶだけあり根は紳士なんだな、と改めて理解する。
だとしたらわざわざそんな人に喧嘩を売ったのだから此処で倒れている人間達は文字通り因果応報、己のやった事の報いを受けたのだから同情の予知は無さそうだ。

「……それにしても、これだけ長い間ビルが動くレベルで大暴れして治安維持局が動かないなんてあるんですかね、案外誰かが裏で止めていたり……なんて、考え過ぎですかね」

810アーリルとヴィルヘルム:2023/12/21(木) 20:38:12 ID:ghE7.UrM0
>>809

「(あっ、これは長いお説教です。淡々と話をしていき徐々に逃げ道を塞いでいって姉様が納得する落とし所に誘導されるやつです。)」

奇しくもアカリと同じ感想を抱いた。一定の具体性がある限りアーリルもお説教をされたのは一度や二度ではないのだろう。
だからアーリルは……

「アカリさん、たくさん証拠写真を撮りましょうね!私たちも慣れていますし、これくらいでは何とも思いませんし!」

とてつもなく綺麗な笑みだが悪魔のような顔をして笑っていた。
だからスマホを仕舞わずに握りしめていたのだ。

「流石に本気で暴れると姉様が来ますからね。
 そうなると只事では済まなくなります。怒ったら、怖いですから。誰だって怒られたくはないでしょう?」

普段怒らないタイプが怒ると怖いと言うが、アイリスの場合は怒りに蔑んだ目がついてくる。
ヒステリックに叫んだりはしない。だが、露骨に呆れられるのだ。

『リル、行こう。治安維持組織のことは聞いているが、好き好んでこんなところには来ようとは思わないだろう?ほら、寝転がってる奴らを見てみろよ。揃いも揃って"関わり合いになりたい奴の顔"をしてねぇ。そういうこったな。』

だからその薄いものをしまうんだ。俺たちは悪戯仲間、そうだろう?とアーリルが撮影しようとしているところにインターセプト。
ここからだと来た道を戻る方がいいのか、大男は繁華街に向けて歩き始めた。
と思えば繁華街にはガラの悪いお兄さんがワラワラといらっしゃるではありませんか。

『俺はヴィルヘルムってんだ。お嬢ちゃんは?』
「兄様、お迎えですよ。助けは必要ですか?」
『いらねえ。お兄さんに任せておきな。』

2mを超える長身に筋肉ムキムキのマッチョマン。
見た目だけなら金髪碧眼の短髪のスポーツマンに見えるがその中身は凶暴で。

811アカリ:2023/12/21(木) 23:17:52 ID:5v6Z28Cc0
>>810

「え、証拠写真を撮ってもお兄さんが後に不利になる、というかお叱りが増えるだけでは!?」

いや、ここまで暴れた以上もう情報が伝わるのが早いか遅いかの違いでしかない気がするのだが、それはそれとして既にお叱りを受けるのが確定済みのお兄さんにわざわざ追い討ちをするのは気が引ける。

「アーリルさんのお姉さんですか、先の電話口の人ですかね、だとしたら確かに怒らせたら怖いタイプの人の気がしますね……」

しかも激情に任せて吼えて満足してくれそうなタイプには声を聞く限り思えない。
具体的には分からないがとりあえず冷静なままに何か恐ろしい事が起こるのだろう。

ヴィルヘルムがアーリルを必死に懐柔しようとする様子を横目に周囲を見渡す。
確かに言う通り表の社会の住人では無さそうな人間しか周囲には倒れていない。
問題は倒れている人間の善悪ではなく周囲の建物等にも甚大な被害が出ている事な気がしてならないが……。

「ヴィルヘルムさんですね、私は白月アカリ、気軽にアカリと呼んで貰えると嬉しいです!」

そんな事を考えながら二人と一緒に歩いているとガラの悪い人達の熱烈なお出迎え。

「お兄さんに任せたら電話先の人からお叱りを受ける要素が増えてしまいますよ、繁華街だと被害額もより甚大になりますし……良かったら私にお任せ下さいな」

手の平に一つ、二つ、三つと光球を生み、それを束ねて一本の光輝く槍を創り出す。
その際にさり気無くアーリルに視線をやりウィンクを一つ、アカリは彼女を撃墜した“あれ”をより高出力で放つつもりなのだろう。

「光槍投擲──いきますよー!!」

わざと目立つように声を張り上げ、光の槍を投擲する、それは周囲の人間の目を嫌でも引く威圧感を備えていて。

「ヴィルヘルムさん!アーリルさん!目を閉じて!」

叫びと同時に槍が炸裂し周囲を光一色に染め上げる、これで目を焼かれたガラの悪いお兄さん方が悶え苦しんでいる間に突破するつもりのようだ。
上手くいかなかったなら……お兄さんに諦めて任せよう。

812アーリルとヴィルヘルム:2023/12/23(土) 01:24:46 ID:ghE7.UrM0
>>811

「今回、私には関係ありませんからね!」

ニシシ、と笑いながら、わかっていませんね、と笑うアーリル。
お説教されているヴィルヘルムを尻目に甘ーいチョコを楽しむのも乙なものだ。
とはいっても悪意は無い。
あとで怒られちゃったねーと話すのだ。

「このような時の姉様は怖いと言うより冷たいんですよね。
 淡々と書類仕事をするかのように問い詰められます。
 だから言い訳せずにちゃんと説明するのが一番いいんですよ。わからないところは全部追求されますからね。」

冷めた目で書類と向き合い、ついでとばかりに追求される。
話が分からないところはどんどん追求されていき、嘘を挟むとそこをつけ込まれる。
だからアーリルは冷たいと表現した。
本人は温情のつもりなどないだろうが、内容次第では尻拭いまでしてくれる時もあったりもする。

『アカリちゃんね。よろしく。
 ありゃ、アイツらのお友達か?バカだねぇ』

いくら数を集まったところでアカリ一人にも勝てない。
彼女らを相手にするのならば量より質を追求するべきで。
ヴィルヘルムがアイリスから怒られるのは確定している。
が、これから少し暴れるとさらに怒られる。

『じゃあ今回はアカリちゃんに甘えようかな?
 お手並み拝見っと。』

アーリルが笑みを浮かべてアカリの言う通り腕で目を瞑り、更に腕で抑えた。
ヴィルヘルムは目を瞑り、走り出す。
長身で筋骨隆々で走れるか不安な体つきをしているが、オリンピアン顔負けの俊敏さであった。
ガラの悪い男たちを掴んで放り投げ、他の男たちにぶつけるなど加減はしているようで。
アーリルは少し遅れてスタート。アーリルは体捌きで易々とガラの悪いお兄さんの間を抜けていく。
大きな体と小さな体を生かした通過方法だった。
ほとぼりが覚めるまでは近寄るのやめとこ、なんて呟きながら気軽に走り抜けていった。
ところ変わって繁華街。

『アカリちゃんもリルもお疲れ様。少し休んでいく?』

ふと目についたのは繁華街の中にひっそりと潜む純喫茶が目についた。

813アカリ:2023/12/23(土) 23:34:24 ID:5v6Z28Cc0
>>821

「“今回”は関係ないってそういう事ですか……」

話を聞いて苦笑い。
以前は一緒に怒られたような口ぶりからして歳の差こそあれ悪戯仲間のような関係なのだろう。
ならその関係に口を突っ込むのも野暮というもの。

(今までもあった事ならきっと問題なく上手くいくでしょう、多分、きっと……)

「本当に冷たいなら何も言ってきませんよ、多分多少呆れはしてるけれどちゃんと愛情を持って接してくれてる感じじゃないですか?」

初めて冒険者ギルドで賞金稼ぎとして働いた時の自分の親の怒りっぷりを思い出す。
冷たく怒ってはいたがその根底は自分への心配と愛情だった、家が違えど保護者の持つ考えというのは変わらないのではないか、そう思う。


光槍炸裂、周囲を閃光が染め上げる中。
目を塞いでいた自分達だけは自由に行動が出来る、アカリはヴィルヘルムとアーリルが無事に抜けられそうなのを確認すると光の翼を一対広げ大きく跳躍し飛翔、男達の頭上を飛び越えていく。

『私は大賛成ですけれどヴィルヘルムさんは大丈夫です?早く帰らないとお叱りを受ける量が増えたりしませんか?』

誠意って大事。
例え早く帰っても直接面会出来なかろうが、自分の非を認めて行動を改めた事に意味を見出してくれる人もいる。
電話口の人がどんな傾向の考え方をするのかは知らないが、早く帰った方がヴィルヘルムにとって良くないかと心配で。
彼を見る眼にもその心配は隠し切れず浮かんでいるだろう。

814アーリルとヴィルヘルム:2023/12/24(日) 01:40:27 ID:ghE7.UrM0
>>813

「(そういうものなのですか?)」

アーリルやヴィルヘルムに失望しているのなら何も言ってこない?
いつもアイリスは時に優しく、時に厳しく声をかけてくれる。
物理的な距離は離れていても、心の距離は離れていない?

「私は姉様より愛されているのですか?」

確かに愛情を感じる時はある。それでも確信が持てない。
誉められている時だけは愛されていると思う。
どこまでもアイリスは離れたところから見つめている人。そんな印象だった。
だが、アカリがいう、"愛情を持って接してくれている"という言葉。
ありきたりな言葉だろう。それでも今までを思い返せば、アカリの言う通り"愛されている"のだろう。

「私は姉様に怒られてばっかりなんです。
 もちろん誉められる時もあるんですけど…これでも愛されているのですか?」

お嬢様育ちのアカリ。
家なんて関係なく、やはり心配なのだろうか。

「姉様は一日外にいる予定です!ですので今日は何時に帰っても怒られませんよ!それに、兄様の用事があるので連絡さえ入れておけば問題ありません!」
『この後ひと休みした後衣類用意しねーといけねーから時間が掛かるんだわ。俺、この体だろ?全部オーダーになるからな。サイズ全部計り直して納得いく服を用意したいからな。大分遅くなるぜ。遅くなるのがマズイなら先に送るがどうする?』

コイツは俺が守るから大丈夫、と言い、ガハハと笑う。
改めると2mを超える長身に、アカリの太ももを優に超えるであろう上腕二頭筋と上腕三頭筋、アーリルが抱きついても腕が届かない腹筋。
サイズはお察し。上半身でこれならば、下半身は更にエグい筋肉になっている。
首なんてエグいサイズになる。
脱げばアニメキャラのようなバキバキの筋肉の鎧に覆われた体だ。
収める服も自ずと選ばなければならない。

「というわけです。実質保護者の兄様がいるので少し遅くなっても問題ありません!姉様には連絡を入れておきました!
 もしも問題があるならアカリさんのご家族に私から連絡入れておきましょうか?」

アーリルが連絡するとすぐに高級セダンがアカリを迎えに来るし、空という未開の通路があるアカリには無用な心配だろう。
それでもご家族という最後まで信じてくれる最後の砦に対して可能な限りの誠意を示すつもりだ。

815アカリ:2023/12/24(日) 21:10:06 ID:5v6Z28Cc0
>>814

「話を聞く限りでは間違いなく愛されてると思いますよ、そうですね……もしも私が悪い事をしたらアーリルさんは時間も労力も費やしてでも私を止めてくれるでしょう?」
「でも悪事を働くのが私ではなく先ほどのチンピラにすらなり損なったような連中だったなら、そこまで時間や労力を使いますか?適当に鎮圧するか無視するかで済ませてしまうのでは?」

その差が相手に対する愛情や友情というものなのではないか、そう言ってアーリルをぎゅっと抱き締めようとするだろう。

「怒るのだって叱るのだって、全部良くなって欲しいという気持ちの裏返しです、どうでもいいならそれこそそんな面倒臭い事はせず作り笑顔で流して終わりにしますよ」

そこまで話せば抱き締めた腕を離し、ヴィルヘルムの方に向け返事をするだろう。

「いえ、そういう事なら是非ご一緒させて頂きたいです!」

どうやら自分が心配していたような事はないようだ、なら折角のお誘いだ、そんな楽しそうな事を断るなんて勿体無い。
ヴィルヘルムの筋肉質な身体を見上げながら、そう返事をする。

816アーリルとヴィルヘルム:2023/12/24(日) 23:51:00 ID:ghE7.UrM0
>>815

アーリルは大人しくアカリに抱きしめられる。
それからゆっくりとアカリの体に腕を回した。
そんなアカリの耳元で囁くような声でアーリルは話し始める。

「アカリさんが悪事を働こうとした時は、動けなくなるまで戦って、もう悪いことなんてしようとは思わないくらいに叩きのめします。
 でも、先ほどのような方々は……どうしようもできません。」

騎士としてのアーリルならば、例えチンピラであろうとも無辜の民草である限り守らなければならない。
でも騎士ではないアーリルならば、守る必要はないのではないだろうか。
楽だからだとかではなく、悪さをしていないのならば、お互いすれ違うだけ。
だが悪さをしているのなら?
火の粉が自分に降りかかるのならば振り払うだけだ。
でも火の粉が自分に降り注がないのであれば?
例えばアカリに無用な火の粉が降りかかるなら共に振り払うし、ヴィルヘルムに火の粉が降りかかれば巻き添えにならないよう逃げる。
でも、それ以外の人に火の粉が降り注いでいれば。
若くして騎士に任命されたせいか、その手のことが目に入れば首を突っ込んでしまう。
だからだろう。無意識に異能/神格に判定を委ねているのは。

「良くなって欲しいから、注意をする。だからこの瞬間も私はアカリさんから愛されている、のでしょうか。」

一部しか知らないが、アーリルは生みの親と育ての親が違う。
育ての親からは愛を受け取っているが、生みの親から受け継いだものが受け取った愛を無為にしていく。
それがアーリルが戦闘狂の顔を覗かせる原因だ。
それらがごちゃ混ぜになり、時に心を引き裂き、心が混乱する。
情緒が育ちきっていない証左でもある。
アカリが腕を離したタイミングから少しズレて、アーリルもアカリの体から腕を離した。

『ならよかった。少し休んでから行動を開始しよう。最低でも今日は注文だけでもしておきたいんだ。』

了解を得ずに純喫茶の扉を開けて入っていく。
でも扉に頭をぶつけそうになり、屈みながら入っていくあたりこの都市での生活は少ししんどくなりそうだ。

817アカリ:2023/12/25(月) 22:13:47 ID:5v6Z28Cc0
>>816

「今日初めて出逢った私達ですが、もう私は貴女を得難い友人だと思ってますし大切に思っていますよ、だから良くなって欲しいと願う……」
「それを愛情や友情と呼ぶのは間違っていないと私は思っています、だから、そうですね、私はアーリルさんの事を一人の人間として愛してますよ」
「でも、私より長い間アーリルさんの事を見てきた人のそれと比べてしまえばこの気持ち……敢えて愛と呼びましょうか、それもまだまだ浅いものだと思います、例えばお姉さんのそれと、家族の絆と比べれば」

アカリはアーリルを軽視している訳ではない。
けれど共に過ごした時間だけが創り上げる深みというものも存在するものだ、家族の絆などまさにそれだろう。

アーリルの生い立ち等をアカリは知らない。
けれど掛けられる言葉がない訳ではない。
自分の考えを誠実に話す事、相手の言葉を真摯に受け止め考える事。
それを尽くすのが友人としての礼儀だとアカリは思っている。

「あ、はーい!!」

アーリルの腕が離れれば、一緒にヴィルヘルムを追い純喫茶の中に入るだろう。

818アーリルとヴィルヘルム:2023/12/26(火) 23:20:40 ID:ghE7.UrM0
>>817

同じく出会ったばかりの私達ですが、私もアカリさんが大好きになりました!」

肯定してくれるからじゃない。
温かい言葉を投げかけてくれるからじゃない。
共にあって、お互いを高め合える存在、アーリルを騎士団長として、姫としてではなく。
対等の友人として見てくれる。
ただそれだけが、たったそれだけのことがアーリルにとって心に響くことだ。
同年代の子女ですら恐る恐る話しかけてくるという日常。
同世代はもちろん、少女くらいの子を持つ親世代の大人ですら少女にヘコヘコする日常。
常人には理解されないであろうそれこそがアーリルの日常であった。
今まで壊れなかった友人という壁をあっさり壊したのはアカリだった。 

「友達、友達…えへへ。」

アーリルは人間換算で13歳ほどだ。
アカリと出会ってから年頃で不安定な思春期の少女になっていっている。
大きな手が不器用にアーリルの頭を撫でた。

『俺コーヒー…じゃなくてアールグレイ。二人とも好きなもの頼みな。』

四人掛けのテーブルで堂々と二席を独占。
大きい体だからか、それなりに広いテーブルが小さく見えてくる。
椅子に体が収まっていない。
せっかく純喫茶に来たのに紅茶とは勿体無い。コーヒー党なのだろうが、紅茶に切り替えて二人が落ち着くのを待つつもりだろうか。

819アカリ:2023/12/26(火) 23:49:39 ID:5v6Z28Cc0
>>818

「お互いに大好きだと思えるって幸せな事ですよね、すれ違ってしまうのって悲しいですから」

アーリル個人に対する敬意はある。
槍の技量や己の体質を生かした戦闘方法など自分では及ばない事が沢山有った、良い生まれだからか品も驚くくらい良い。
だが、それだけだ。
長所で語るなら自分も異能のコントロールには自信があるし高機動戦に限れば自分に有利が付くとすら思えている、色々自由にしていた経験から世間については自分の方がアーリルより詳しいだろう。
競う訳ではない、結局の所“みんな違ってみんないい”というだけの簡単な話、彼女に、アーリルに人としての敬意こそ持てど壁を作る理由になどならなかった。

「ええ、掛け替えのない大切な友達です!」

ヴィルヘルムに撫でられるアーリルを見て微笑みながら改めて思いを口にする。
アカリは人間換算で17歳くらい、赤子の成長を異能の有無が解るまで成長させて失敗作だと解り、それから今の親に引き取られたので実の年齢はそれより下になり自分でも把握出来ていない。
ただ、本人の明るいながらも冷静に物を見れる気性と性格、親からの無償の愛で健全に育った結果がこれだ。

「ではモカマタリで!ミルクもお願いしたいです!」
「アーリルさんは何にします?」

820アーリルとヴィルヘルム:2023/12/29(金) 01:00:45 ID:ghE7.UrM0
>>819

言葉が足りないだけで人はすれ違う。
たった一つ足りないだけですれ違う。
だからこそ足りないものは、他のことで補えることができる。

「もしすれ違うことがあるなら、これで語りましょう。
 私達には言葉以外に語り合う方法があります。」

ヴィルヘルをムとアカリが飲み物を決めた中、アーリルは何にしようかと思案する。
メニューを開いてケーキに目移りしていた。

「アカリさん、コーヒーは苦手なんですけど、何か飲みやすいものはありますか?」

まずはデザートをここからここまで、とヴィルヘルムの財布に甘える気満々で甘いものを頼む。
せっかく純喫茶に来たのだからコーヒーを楽しんでみたい。

『カフェオレにでもしておきな。』

ヴィルヘルム感覚ではカフェオレでも甘い。ケーキが並ぶのを想像して胃がもたれそうな気がしてきている。

821アカリ:2023/12/29(金) 07:44:42 ID:5v6Z28Cc0
>>821

「じゃあ私も真っ向からぶつかり合った時に対話が成立する前に潰れてしまわないように腕を磨いておかないといけませんね、ますます鍛える理由が出来てしまいました」

ふふ、と微笑んでアーリルがメニューを選ぶのを一緒に眺める。

「一般的に甘くて飲みやすいと言われるのはエチオピアやモカですね、癖が無いのは前者です」

822アカリ:2023/12/29(金) 07:51:59 ID:5v6Z28Cc0
【途中送信した上にレス番間違えました】

「もし良ければカフェオレを注文して私が頼んだコーヒーを味見してみませんか?口に合わなくてもそれなら問題ないですし、何よりシェア出来るのって楽しいですから」

微笑んだままヴィルヘルムの意見も取り入れてそう提案する。
せっかくの意見を無駄にしたくなくて言ったが便乗したみたいに思われていないか、ヴィルヘルムの方にも視線を送り確認。
もっともそんな事で気を害するような器の小さい人間には見えないし問題ないとは思っているが。

「ヴィルヘルムさん、ちょっと便乗させて貰っちゃいました、いいですよね?」

823:2023/12/30(土) 01:59:14 ID:ghE7.UrM0
>>822

「今は兄様もいますし、徒手空拳も鍛えられます。
 足捌きも含めて槍使いの腕ですからね。」

車を掴んで持ち上げる力を持つヴィルヘルムとの組み手はもちろん命懸けだ。
漫画や創作物である筋肉キャラとは体の作りから違う生き物であるヴィルヘルムに挑むのはそれこそ手足が千切れる覚悟で相対しなければならない。
だが命懸けでなければ鍛えられない。
この点に限ればアイリスは頼りにならない。
自身のためにアーリルは更に上のステージへと登ることを望んでいる。
アカリの言を受けてヴィルヘルムは静かに頷いた。

「でしたらカフェオレにしましょう!
 アカリさんもケーキ食べますよね?色々頼んでみますので、こちらもシェアしましょう!」

ヴィルヘルムはメニューを眺める二人を眺めて思案に暮れる。

『(俺にはアイツがいたが、リルには誰もいなかった。結果的に連れてきてよかったものかと疑ったが、良かったな。俺ではリルの友達にはなれない。)』

同世代とは決して相慣れないアーリルだが、ここでは足枷になる立場がない。
良い出会いをしたと思うヴィルヘルムだが、本人はアーリルが錐揉み回転しながらアカリに突っ込んだことはすっかりと頭から抜けているようだった。

824アカリ:2023/12/31(日) 01:45:54 ID:5v6Z28Cc0
>>823

「あ、それ良いですね、図々しいですけれどもしも箱庭で出逢えたら一戦交えて指南を受けてみたいものです」

屈託のない笑顔でアーリルとヴィルヘルムを見つめる、恐らくヴィルヘルムの心中など察せていないだろう“普通”の少女は朗らかな表情のままでいて。
アーリルと一緒にこのケーキが美味しそうだ、これが気になる、とはしゃぐ姿はただの友人であってそれ以上でも以下でもないだろう、今の所は。

「良いですね、でも今回は半分お代を出させて貰いますよー、毎回肩代わりして貰っていては私の面子が無いってものです!」

純喫茶、決して安くはないがステーキハウスの時と違い払えない額ではない。
もっともアカリが無理にお金を出そうとするとヴィルヘルムの男としての面子に傷が付くという可能性にまで至れていない辺り、根っこはアーリルと同じくまだまだ背伸びしたいだけの子供なのが見て取れるが。

「でもこの出逢いもヴィルヘルムさんがアーリルさんを失投してくれたからですね、何かと驚きましたが素敵な出逢いをありがとうございます!」

悪意なくあの時の事をぶり返してきました。

825名も無き異能都市住民:2024/01/06(土) 03:43:26 ID:ghE7.UrM0
>>824
「もしランダムでお会いでできるかもしれませんね。
 その時、近接戦闘時はお気をつけください。」

ふふっと笑みをこぼす。
捕まればそれは酷いことになる。実際に行動に移すかどうかは別だが、相対するとなれば
近接に限れば軽自動車を持ち上げる力がアカリという少女に向くのだから。

アーリルは好きなだけケーキを頼もうとしたが、ヴィルヘルムの様子を見てあっとなにかを察したようで。
ヴィルヘルムは甘いものが得意ではない。

「(甘い匂いだけで結構胃にダメージを負いそうな顔をしていますね)」

ヴィルヘルムは一切顔色を変化させていない。
キャッキャとはしゃぐ二人を眺めてヴィルヘルム薄く笑う。その笑みは親戚のおじさんと食事をしたときのようで、
穏やかな瞳と胃へのスリップダメージで内心がグチャグチャになっていた。

「うーん、どうしましょう兄様。」

ここはアカリの顔を立てるか、この場で最も年上で男性の兄様の顔を立てるか。
ケーキをアレだこれだと良いながら選びながらアーリルは思考していた。

「アカリさん、ここは兄様に出していただきませんか?こんな人でも一応一番年上で成人していますので。
 わざわざ幼い私達が財布を痛める必要も無いでしょう。あとで代金はお預かりいたしますから。」

アーリルは男性で一番年上であるヴィルヘルムが出して貰えばいいと思っていたが、こうなったアカリは意外と強情なのは承知している。
どうせ少額といってもアカリは気にするだろうから、ヴィルヘルムを立て、アカリも立てる方法はこれくらいしか思い浮かばなかった。
アーリルはアイリスやヴィルヘルムといった身近な人物と食事に行った際“ごちそうさまでした”というだけで財布を出したこともないのだから。

『気を遣ってもらってわりぃなアカリちゃん。だが気にするな。
 こんな時は年上が出すって相場は決まってるんだ。で、女性は笑顔を見せてくれるだけで良い。男にとってそれが最大のご褒美だ。』


『「――――」』

アーリルとヴィルヘルムは顔を見あせてあははと曖昧な笑みを漏らすことしかできなかった。
ヴィルヘルムは大きな声で笑い始めたが、アーリルはヴィルヘルムが大笑いするからか、恥ずかしくて小さく縮こまってしまった。

826アカリ:2024/01/21(日) 21:04:53 ID:5v6Z28Cc0
>>825

「それはあの裏路地の様子を見ればなんとなく解りますね……何であろうと直撃を貰ったら木っ端微塵になる自信があります」

アカリの耐久力は人並みだ。
アーリルに足を踏み抜かれた時にあっさりと骨が枯枝のように折れたり、槍の一撃を障壁で軽減して受けて尚左腕を砕かれたり、攻撃を受けてしまえばあっさりと倒れる程度の耐久力しかない。
そんな人間がヴィルヘルムの一撃をまともに受ければどう足掻いても即死は免れないだろう。

そして、残念な事に戦闘における洞察力は鍛えていても平常時の洞察力に関してアカリはごく普通のものしか備えていなかった。
穏やかな目をしているヴィルヘルムが色々堪えている事など気付く事はなく、あれだけの力があるのに紳士的な人だなと思うばかり。
故に甘い香りという名の地獄に救いの船は来ない。

「……そうですね、ではアーリルさん後でお願いしても良いですか?」

アーリルの予想通り。
借りを作りっぱなしだと思っているのか少女はここに来て初めて表情からでも解るような少し困った様子を見せる。
アカリの家は富裕層ではあるがアーリルのような超富裕層ではない。
経済感覚は一般的なものであるが故にこういった喫茶店での支払いにも気を遣ってしまう面がある。

「女性の笑顔がご褒美……むぅ、参りました、そこまで言わせてしまってまだ私が支払うと言い張るのも悪いですもんね」

だから素直になるのは少し後。
アーリルの言葉とヴィルヘルムの言葉、二人分の言葉を貰って尚個人的な意地を貫くのはただ頑迷なだけだと思い、漸く諦めた。

「ふふ、アーリルさんの治癒力を知った今となれば笑い話に……なっていいんですかね?本人は再生して無事でも衣服は擦り切れて大惨事になりませんでしたかね?」

苦笑い。
あの瞬間は女の子が錐揉み回転しながら吹き飛んできたので大慌てだったが、そう焦る事ではなかったのかと思い、別の事を考えて思い直す。
アーリル本人は無事でも果たして衣服はあの勢いで地面とキスをして無事なのだろうか、彼女の衣服とあれば魔力や加護で保護されており多少の事では傷など付かないのだろうが、ヴィルヘルムの腕力による大失投は多少の事ではない気がする。

827a-riru:2024/01/28(日) 01:31:39 ID:ghE7.UrM0
>>826
「あはは、あのレベルになると人も鉄も変わらないような気がしますね。」

当たれば一発で駄目なのはアーリルも同様だ。
形に残るか残らないかの話でしかないし、電車に轢かれたようなものだろう。

「はい、わかりました。あとでお預かりしますね。」

アイリスはアーリルに経済感覚を養う目的からある程度まとまったお金をお小遣いとして預けている。
いるが、アーリル自身外出も少なく家に帰れば生活するには問題ないことからお金を使う機会は少ない。
欲しい物があっても言えば用意してもらえる環境だから毎月余らせているため返そうとしても受け取って貰えず。
余らせているから浪費するわけでもなく、余るばかりのお金をどうするかといえば、大方を寄付に回した。
だから少しくらいだから気にしなくても良いとはいったものの、アカリの態度でそれは一般的に“あまり良くないこと”だと認識できた。
このように世間の常識を徐々に覚えていかせるのも教育だ。

『話はまとまったな。じゃあリル、後で頼む。さあ、頼んだものが来ている。
 アカリちゃんも遠慮すんな。』

ウェイターが注文したものを運んできた。
テーブルに並ぶ甘いものにうへぇという声が出そうになるが、一切内心は晒さないし表情も変わらない。
ヴィルヘルムはアカリとアーリルが甘い匂いを発するものを速やかに食べていくのを望んでいる。

『あれは手が滑っただけなんだ。決してリルを放り投げたわけじゃない。』
「本当ですか?」
『本当だ。本来ならリルは空の上に飛んでいるはずだったんだ。飛んで落ちてきたリルを俺が受け止める。
 たったそれだけの話だ。』
「おそらくアカリさんの予想通りになったのでは無いでしょうか。体は大丈夫でしょうけれど、衣類はだめだったでしょうね。
 仮にそうなっていても、アカリさんなら助けてくれたでしょう?」

あの時のように自身で人質の交換を望んでいたのだ。
同性で、更にアカリより幼い女の子の衣類が傷ついたのならば、アカリなら上着くらいは貸してくれたはずだ。

828アカリ:2024/02/13(火) 23:11:53 ID:5v6Z28Cc0
>>827

「確かにあの力の前では耐久力なんてあまり意味を成さない気はしますね、そう考えれば私はまだ影響が少ないのかも?」

どちらにせよ当たったら終わりという話ならば回避に重きを置いている自分の方が受けを中心として立ち回る人よりはまだ戦いになるだろう。
と言ってもただ避けているだけの相手を捕まえる事が出来ないような相手だとは思えない、まだ多少は攻防が成立するというだけの話であって不利な勝負なのは間違いない。

「はい、お願いしますね、ヴィルヘルムさんのご好意もありますし今は注文した物を頂いてしまいましょうか」

アーリルの家庭の事情は知らないがあの城のお嬢様というなら相応に大切に育てられてきたのは何となく見当が付く。
もっとも、重要なのはそんな事でなく本人の人格だ、友人関係を作るのにはそれだけあれば十分だしそれ以外は必要ないと思っているのでそれをわざわざ口にはしないが。

「はい、ありがとうございます、頂きますね!」

ヴィルヘルムに礼を言うとアーリルと話しながら、これが美味しいそれはどうだった等話を膨らませていくだろう。

「あはは、ヴィルヘルムさんがわざとアーリルさんを傷付けようとするのは想像出来ませんから事実でしょうね、ちょっと豪快だっただけで……」
「それはそうすると思いますよ、ただ突然あの勢いで人が飛び込んで来たら無残な事になってると思ってちょっと一瞬目を覆うとも思いますけれど」

常識的に考えれば挽肉になっておかしくない光景だ、アーリルがそれを耐えられるとは初見では思わず目を閉じてしまう可能性は極めて高いと自分では思う。

829アーリルとヴィルヘルム:2024/02/24(土) 03:31:43 ID:ghE7.UrM0
>>828
「頂きますね、兄様。」

頼んだケーキを小さく切り分け、一口食べる。甘くて美味しい。
甘いものは別腹というが、これくらいならばいくらでも食べられそうだ。

「私も回避を想定しましたけれど、例えばですよ?
 地面にめり込んだ手をそのまま振りかざせばそれだけで面攻撃になりますからね。」

そういえば、以前引っこ抜いた木をぶん投げてきたこともあったなぁ、なんて思い出しながら。
太陽神だとか、魔眼だとか。
そんなものを一蹴し、最終的に決まるのはフィジカルが強いやつが勝つとでも言いたげな、
面倒くさいものを一切合切無視するような文字通りの剛腕だ。
その気になれば、地面ごと持ち上げるような意味不明なこともできるのではないだろうか。
このような思い込みもあるのか、アーリルにはヴィルヘルムに対する勝ち筋が見えない。

『手が滑っただけだが、リルなら問題ないさ。あれくらいの飛び方ならいつもしていただろう?』
「……そういえば、そうでしたね。戦闘訓練の余波でよく飛んでいました。どうして忘れていたのでしょう?」

ここで良い時間を過ごせただからだろうな、と一言。
それからアーリルの頭をグシャリと大雑把に撫でた。

「普段は住宅等の建物がない広い場所で訓練しておりましたから建物に突っ込んだのは初めてですわ。
 私としてもまさか建物に突っ込むとも思っていませんでしたし、ましてやその中に人がいらっしゃるとは思いもしませんでしたわ。
 お互い、よく生きていましたね。」

思わず苦笑が漏れてしまうのは当然のこと。
町中で、ましてや子供扱いなのだ。もう済んだことでプリプリ怒っても仕方がないのだが、それでも子供扱いされていることを嫌がった。
ヴィルヘルムとしては、まだまだ子供だ。
背伸びして大人扱いしてもらいたいと思うのは、これくらいの年頃では当然なのだろうが、まだアーリルは素直な方だった。
アイリスとは片手で収まる程度の年齢差はあるが、やはりアーリルくらいの頃は素直ではなかったし、力に訴えることがない代わりに
口撃が強かった覚えがある。
アカリとアーリルの会話に混ざることなく黒子に徹するヴィルヘルムは甘い匂いの猛烈な匂いに鼻の機能を失いそうになりつつも、
穏やかな顔で二人のやり取りを見守るだけであった。

830アカリ:2024/03/17(日) 12:38:03 ID:5v6Z28Cc0
>>829

「うーん、本当に規格外のパワーですね、そういう広範囲な面での攻撃には弱いんですよね……銃弾程度なら障壁で弾いても良いんですけれど岩塊が飛んで来たらそうはいきませんし」

自画自賛するようであまり気が進まないが、スピードには自信があるし光を用いた搦手も何種類も用意しており半端な力技相手なら幾らでも相手に出来ると自負している。
ただヴィルヘルムほどのパワーになってしまえば話は別だ、攻撃の余波の一つ一つが致命傷となるなら此方も迂闊には動けない、目眩しをしたところで闇雲に振り回した腕が掠めただけでお空の星になってしまう。

「昔から戦闘訓練を一緒にしていたんですね、練習相手をしてくれるお兄さんがいるのはちょっと羨ましいです」

遺伝的な姉に当たる人間はいても実際の関わりは薄いアカリにとって血の繋がりが無くても本物の兄のように接してくれる相手がいるのは素直に言って羨ましい。

「アーリルさんも結構パワーがありますし、住宅地では十分に能力を発揮するのは難しい……というか危ないですもんね」
「多分誰にも想定出来ていなかった事故ですからね、まあ結果として誰にも被害が出なかったので良しと思っておきましょう、寧ろお陰で素敵な出逢いに恵まれた訳ですから」

流石にこれ以上この話を引っ張るのはヴィルヘルムに悪いかなと思い話題を変更。
と言っても嘘を吐く気は全くない、事故のお陰で素敵な出逢いに恵まれたと思うのは本心からだ。

831:2024/03/24(日) 00:03:58 ID:ghE7.UrM0
>>830

「力加減だとかの問題はありますから、日常生活を送る上で少し苦労もされているようです。
 私も面攻撃は捌ききれませんね。槍と体捌きではどうにもならないことです。
 大規模魔術でも使えれば良いんですけれども、魔術はからっきりですし。」

地面が文字通り迫ってくるなら長槍でもどうしようもない。
魔術が使えたら、という仮定であっても地面に対応できるかといえばまた別の話で。
だから"させない"ことそれ自体が対策になるのだが、至近距離で体を掠めただけで負傷する相手だからやりにくい。

「ある程度歳が離れているので色々やっても大らかでいてもらえますよ。」

男性に金的だとかのライン越えはしないが。
アカリならはっきりとした物言いをするだろうが、言い淀んでいた。
アカリの兄妹関係は複雑そうでいきなりは踏み込みにくい。
だからか兄、ヴィルヘルムについての話を打ち切るように切り上げた。

「そうですよね!まさかこうやって初日で打ち解けるような方と出会えるとは思いもしませんですもの!
 ところでアカリさん、良い仕立てをするお洋服のお店を知っていますか?」

話題の変更の流れを察して、アーリルもそれに乗っかった。
これからはお洋服の話。
アーリルはお店のスタッフを呼んで採寸させて、デザインだけはアーリルに選ばせた。
ほぼアイリス任せでお店なんて知るはずもなく、ここに来たのもごく最近の話で良いお店なんて知る由もない。
だからアカリからおすすめのお店があれば教えてもらいたいな、なんて考えて。
ヴィルヘルムのオーダーに紛れて自分の分もこっそり入れてしまおうかなんて考えていた。

『メンズもやってるところだとさらに良いな。』

ヴィルヘルムは体格から当然オーダーメイドになる。
肌が弱いだとかそんなことはないが、とにかく最大のネックが体格だからか既製品では体が収まらない。少し体を動かせば服が負ける。

832アカリ:2024/06/25(火) 00:46:12 ID:5v6Z28Cc0
>>831
「やっぱりそうですよね、柔よく剛を制すなんて言葉も有りますが、それは柔の力が剛を上回っていただけの事、剛が極まったなら生半可な柔なんて一振で木っ端微塵ですもん」

「良い仕立てをするお店……知らない訳ではないんですけれど……ええい、多分問題は無いでしょう、ちょっと待って下さいね!!」

緊張しきった顔で携帯電話を取り出して、電話帳を開き一つの名前をタップする。
コール音が鳴る度に呼吸が浅くなり、意識も遠くなっていく気がする。
『もしもし、リイスですよー、アカリちゃん突然電話なんて珍しいですね、どうしました?』
「あのですね、まだ街に慣れていない友人の……千夜城の子なんですけど、リイス姉さんの所で服を仕立てたり出来ないかな、って……」
『出来ますしやります、千夜城の子って事は私の友人の関係者ですから……直接出向きますね、時間が決まり次第教えて下さい』

「……あ、店、見付けられました……」
へなへな、と言葉を残して崩れ落ちる、よほど緊張していたのだろう。

833アーリルとヴィルヘルム:2024/06/30(日) 23:36:22 ID:ghE7.UrM0
>>832
電話口から聞こえる声、店内だからさほど大きな声ではないだろうが、それでもアカリの緊張感は伝わってくる。
その様子を見つめるアーリルもどこかハラハラしていた。
ヴィルヘルムは"俺があいつに電話する時も同じもの"として遠い目をしていた。
アカリの緊張と心身の疲労とともに得られた情報は、お店の情報だった。

『まぁ、その、なんだ。俺からはお疲れ様、としか言えん。ともあれ助かる。』
「お店、見つかったのですか?どういうところでしょう?私もわかるところでしょうか?」

この街にきて日が浅いこの二人にとって、特定のお店探しという難題に手が差し伸べられた救いの光。
この街の有名どころすらも抑えておらず、まずは衣類から。
食事は一番最後に回し、家具やテーブルを彩る花瓶や花もそうだが、衣類の問題は深刻だ。
同じものを何日も同じものを着続けるわけにはいかない。
だからこそ、衣類の問題は急務であった。

834アカリ:2024/12/29(日) 20:49:06 ID:5v6Z28Cc0
>>833

「だ、大丈夫です、多分……ちょっと無茶した事が既にバレていて後が怖いなー、なんて思ってはいますが、多分大丈夫……です」

説明というよりは自分に言い聞かせるように、かなり曖昧な返事をする。
もうダメっぽいのは本人も薄々察している事、ならば触れないのがせめてもの情けなのか、それとも現実を見せてやるのが優しさなのか、判断は二人に任される。

「あ、えーとシュルツ商会という場所で、私の親戚というか姉みたいなものというか……そんな人の関係のお店なんですけれど、その中に富裕層向けの店舗もあるのでそこに案内しようかなと思いまして」
「そこなら前もって話しておけば大体話は通りますし、品揃えも保証されてますから、それにオーダーメイドもやっているので先の事も見るならより確実かなと」

まあオーダーメイドは流石に即完成とはいかないが、それが完成するまでの繋ぎには問題ない品揃えはあるだろう。
正直に言えばアーリルはまだしも男性向けの特大サイズは一般の店舗には中々無いだろうし、本人の趣味嗜好にあったものを探すとなれば一苦労な筈だ。
リイスに電話して確認したところ、問題なくあるとの事だったが、お節介かもしれないが今後の事も考えるならば作るのも視野に入れていいと考えたのだ。

「問題なければ向かおうと思いますが、大丈夫でしょうか?」

835アーリルとヴィルヘルム:2025/02/16(日) 11:40:08 ID:qHh/KKjw0
>>834
アーリルはヴィルヘルムの顔を見て、頷く。

「行きましょう、兄様」
『そうだな、そうしよう』

シュルツ商会の品揃えなど、気になることはある。
アーリルも服を買い足したいと思っているし、ヴィルヘルムは衣類にあまり金を掛けない方だが、それでも日々過ごすための衣類は必須だ。
むしろ読書など大人しくしている方が稀なのだ。

「シュルツ商会、聞いたことがあります」

シュルツ商会は聞いたことがある。
様々な客層に合わせた品質が高い商品を提供している商会として有名で、様々なブランドを展開している。
誰もが耳にしたことがあるブランド名を始めとした、衣類を始めとした身の回りの全てにシュルツ商会の商品が絡んでいるのだとか。
街中に展開されているブランドの看板の一部は元を辿ればシュルツ商会のものだという話もある。
姉様ことアイリスもシュルツ商会に対して悪い印象を持っている様子でも無いし、どこかでシュルツ商会の商品を手にしている。
だから、実際に服だけでも見に行けるのは本当に楽しみだ。

『よし、行こうか』


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