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オリロワF 第二層
1
:
◆vV5.jnbCYw
:2024/09/02(月) 21:38:49 ID:UyhJuJDY0
【この企画について】
オリジナルのキャラクターによるバトル・ロワイアル企画です。
ただし、どのような設定の参加者も、首輪が爆発したら必ず死亡します。
参加者名簿
>>2
地図
>>3
・本企画はリレー形式になっており、初心者から経験者まで誰でも歓迎。【この企画について】
オリジナルのキャラクターによるバトル・ロワイアル企画です。
ただし、どのような設定の参加者も、首輪が爆発したら必ず死亡します。
・本企画はリレー形式になっており、初心者から経験者まで誰でも歓迎。
【ルール】
参加者は爆弾付きの首輪を装着され、殺し合いに強制参加させられています。
タイムリミットは三日間、生存者が男女一組(2人)だけになれば終了です。
一定時間死者が出なかった場合、全員の首輪が爆発して死亡します。首輪を無理に外そうとしても爆発します。
なお、優勝者2人には何でも願いを叶える権利が与えられます。
【スタート時の持ち物について】
・参加者があらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収されています(義手など体と一体化している武器、装置は許可)
・参加者は主催側から以下のアイテムを支給されます。
・「デイパック」「地図」「コンパス」「照明器具」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランダムアイテム(個数は1〜3)」
「デイパック」…支給品一式が入っているデイパック。容量を無視して収納が可能ですが、余りにも大きすぎる物体は入りません。
「地図」…大まかな地形の印刷された地図。
「コンパス」…普通のコンパス。東西南北が把握できます。
「照明器具」…懐中電灯。替えの電池は付属していません。
「筆記用具」…普通の鉛筆とノート一冊。
「水と食料」…通常の飲料と食料。量は通常の成人男性で2〜3日分です。
「名簿」…全参加者の名前が記載されている参加者名簿。
「時計」…普通の時計。時刻が解る。参加者側が指定する時刻はこの時計で確認します。
「ランダムアイテム」…何かのアイテムが入っています。内容はランダム。参加者に縁のあるアイテムが支給してもOK(ただし備考欄等で詳細を書く事)
・意思持ち支給品について
オリジナルの意思を持ったアイテムや、一部の生物を支給品として出せます(限度はあります)。
そこまで厳しく制限することはありませんが、出すには下記の条件があります。
・意思持ち支給品の数は5体まで
既に一体出てきているため残り4体です。
・書き手様一人につき、意思持ち支給品を登場させられるのは1体だけ。
現在(2024/2/21)では51話にて1体目が登場したため、残り4体です。
・プロローグ及び本編の投下数が4本以上の方
勿論、これから投下数が4本以上になれば、それ以外の方も意思持ち支給品が登場する話を書けます。
なお、デイパックに入っていない物は、意思持ち支給品には含まれません。
・とんでもなく巨大だったり、とんでもなく強い力を持っているなど、ロワを破綻させたり、今後の本編執筆に支障をきたすような支給品は禁止
【放送と禁止エリアについて】
全生存者が一定の時間帯まで達すると、放送ssが投下されます。
内容は死者の読み上げと禁止エリアの設定です。
禁止エリアの設定後にそのエリアに留まり続けると、首輪から警告音が鳴り、その後首輪が爆発します。
【予約について】
『○○、○○、予約します』のように書き込んで下さい。
ゲリラ投下もアリです。
予約期限は一週間です。また、本編(24話以降の話)を1本でも書いた書き手様は、もう1週間延長できます。
【時間表記について】
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
【開始時刻について】
・開始時刻は朝の6時からです。
【まとめwiki】
オリロワFまとめWIKI
246
:
がれきの街の夜
◆vV5.jnbCYw
:2025/03/19(水) 22:51:21 ID:gjWtgJmA0
「分からないな。僕がどうしてなれたのか。」
ハインリヒの言葉は静かで、それでいて真剣だった。
アンゴルモアを捉えてじっと離さない視線が、雷霆の英雄が彼に向き合おうとしていると語っていた。
言葉では形容しがたい、されど壊せない空気が、瓦礫の町を包んでいた。
「英雄になろうなんて考えたことも無くて、生きるために修行と戦いを繰り返して、気が付けば英雄って持て囃されていた。」
アンゴルモアはずっと黙って聞いていた。
初めて出会えた彼は、生まれや年齢は違えど、真実(ちゅうに)の旗に集いし同志だと思っていた。
しかし、城での戦いで足手まといになった自分を見ると。
珠李を止めに行くために、自分を雪見儀一に預けたハインリヒを見ると。
自分を助けに来て、“テンシ”と戦った英雄を見ると。
否が応でも、自分とハインリヒは違う存在なのが、身に染みて分かって来る。
「でもさ、僕は思うんだよ。世の中は英雄ばっかりで回っているんじゃない。
だからアンゴルモアが何を思ってそんなことを言ったのか分からないけど、英雄にならなくても良いと思う。」
「それでも、ボクは、いや、我は同志として、別れの時まで隣で戦いたい。足手まといは嫌だ。」
「笑止千万との戦いでは、アンゴルモアがくれた薬のおかげで助かったよ。それじゃ不満かい?」
「……満足できるものか。あの場に英雄が2人いれば、雪見さんだって死ななかったかもしれない。
妄想ロッドを奪い返すことも出来たはずだ。」
アンゴルモアがあの戦いで出来たのは、たったそれだけだ。そのそれだけが戦況を変えた。
だが、彼自身はそれだけでは全く戦った気がしなかった。
女装していたからと言って、囚われのお姫様でありたい訳ではない。
「あ、これだけは言えるよ。思い通りにならなかった事実を、乗り越えることが出来るのが英雄だって。
僕が乗り越えているとは思えないけどね。」
始めて出会った時は伝わらなかったが、今のアンゴルモアなら分かる。
目の前にいるハインリヒは、あまりにも近くて遠い存在だと。
彼自身がそう言っても、本物の英雄はそんなことは無いと否定するだろう。それでも、アンゴルモアには近づける存在とは思えなかった。
247
:
がれきの街の夜
◆vV5.jnbCYw
:2025/03/19(水) 22:51:43 ID:gjWtgJmA0
「やっぱり、凄いな。ハインリヒは。厨二の皇帝(カイザー)だと思うよ。いや、女装も出来るからエンプレスにもなるか?」
「そこは女性名詞もドイツ語で統一させた方が良くないか?
いやちょっと待て、皇后ってドイツ語で何て言うんだ?ハイプリエステス…は女教皇だし……」
「な、何にせよ、ハインリヒは凄いと思うぞ!!……ボクは、そんなハインリヒと一緒にいたい。もう足手まといは嫌なんだ。」
たとえ何かの奇跡が起きて、自分だけ帰れる状況になっても
ハインリヒと一緒にいたいかと言われれば、帰りたいと答えてしまう。
それでも、笑止千万に騙されて、虎の子の武器まで奪われてしまったような醜態は、もう晒したくない。
妄想ロッドすらない今、どうすれば彼の仲間になれるか、同じような英雄になれるかは全く分からない。
「お前もすごいぞ。僕の同志よ。」
「お、お世辞は結構だぞ!」
「いや、本気で言ってるよ。あんな怖い思いをしたのに、ずっと一緒にいたいって言うなんてさ。冗談でも中々言えないよ。」
アンゴルモアは照れ臭そうに顔を背ける。
その顔は真っ赤になっていたので、暗い所で良かったと思った。
「戦うのが、失うのが怖いのは僕だって一緒だ。異世界にいた時、一度だけ逃げたことだってあったし、それより何度も逃げたいと思ったことはあった。
僕が死んだらどうなるんだ、仲間が死んだらどうなるんだって、ずっと怖がってた。」
「あの、同志…いや、ハインリヒ……さん。」
「どうしたんだ?」
「あ、いえ……何でもない、です……」
放送で呼ばれたハインリヒの仲間、桝谷珠李のことを聞いてみようとして、出来なかった。
彼の心の傷を抉るような真似になるかもしれないし、その先に何を言うかも考えられない。
「無理に話をしなくていいよ。気持ちは伝わった。だからこそ、自分を大切にしてほしい。」
「わ、分かっているぞ!同志よ。でも、それは同志も同じだ。一人で逃げるのは嫌だから、ボクが逃げたら一緒に逃げて欲しい。」
「お前ら、さっきからうるせえな。修学旅行の夜じゃねえんだぞ。寝るか黙るかしろよ。」
248
:
がれきの街の夜
◆vV5.jnbCYw
:2025/03/19(水) 22:52:01 ID:gjWtgJmA0
既に寝転がっているエイドリアンが、眉間にしわを寄せて、寝ぼけた声で言った。
「すまぬ、同志…じゃなかった、いや、エイドリアンみたいな名前をしてるなら、同志でいいのか?」
「俺の名前を厨二病の延長線上で扱ってんじゃねえよ……。コレは異常殲滅機関って所で付けられるコードネームで……」
「コードネームだと!!?」
アンゴルモアの目が輝く。
厨二病患者の心に特に響くカタカナ6文字だ。
彼自身も自分が考えたコードネームは、100種類ぐらいある。
「何という素晴らしい場所ではないか?異常殲滅機関という名前も魅力的だ!!特に殲滅と言う言葉を使うところが!!
是非、名づけた総帥閣下に会いたいものだ!!そして是非我にもコードネームを付けてもらおう」
「だから変な所で興奮してんじゃねえ!!あと絶対SNSに機関のこと書くなよ!?フリじゃないぞ?
俺もお前も消されるからな?警察なんかに逃げ込んでも変わらねえぞ?余計なこと言ってねえで寝ろよ。」
殺し合いの世界で、もっとやることはあるかもしれない。
それでも、今この時間だけは。
戦いも死も何もない、ただ静かで優しいものだけが包む世界であってほしい。
生まれも育ちも違う3人が、話をせずとも同じことを考えていた。
【C-5 市街地跡 夜中】
【アンゴルモア・デズデモン】
[状態]:健康(片足はまだ痛む) 後頭部にコブ 休憩中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム×0〜1(確認済み) 宝の地図
[思考・行動]
基本方針:とりあえずまともに歩けるようになるまで、雪見儀一の下にいる。殺し合いには乗る気は無い。
1:雪見さん…
2:宝の地図の示す場所に従って、起きたら図書館で見た物を話し、E-2へ向かう
3:同志と再会出来たのはうれしい。
4:なんで城で見た映像に、笑止千万がいるんだ?
5:アイツ(双葉玲央)から、どうにかして杖を取り返したい。
6:僕も少しだけ、強くなれたかな?
【ハインリヒ・フォン・ハッペ】
[状態]:ダメージ(中) 疲労(中) 悲しみ(大) 魔力(小)
[装備]:ドンナー・ゲヴェーア ドンナー・シュヴェルト
[道具]:基本支給品一式×2(自分、珠李) 桝谷珠李の首輪 折れた豪炎剣“爆炎”
[思考・行動]
基本方針:珠李の想いを継いで生きる
1:雪見さん…
2:失うのが怖い。それでも生きて戦う。
3:城で見たあの映像は何を伝えたかったんだ?フキが見たビジョンとも関係あるのか?
3:どうにかして首輪解除の手がかりを見つけたい
4:アイツ(双葉玲央)の顔、何処かで見た覚えが
5:僕がいなくなった後の異世界…どうなっているんだ?リックはどうしてこんな物(テンシ・プロトタイプ)を作った?
6:雪見儀一の言った言葉とは!?
7:彼女が首輪を解除した方法を、どうにかして応用できないだろうか。
【エイドリアン・ブランドン】
[状態]:疲労(小)、 精神的疲労(中)、休憩中
[装備]:テンシ兵装トリスタン 暗殺用ナイフ
[道具]:基本支給品一式×2 ペンキ(白)の缶、ランダムアイテム×0〜1(盛命の分) “テンシ”との連絡用インカム
[思考・行動]
基本方針:とりあえず生き残ってデスノを始末する
1:未来が滅ぶ?何を言っているんだ?
2:笑止千万を首輪解除に使う作戦は失敗か…
3:テンシとハインリヒのいた世界にはどういう関係があるんだ?
4:ハインリヒも大人しそうな顔して、大概ヤバい奴かよ。
5:ノエルのような類とは戦闘を避ける。
6:盛命……珠李……成仏しろよ
7:テンシ…壊れちまったか……まあ壊れたほうがマシかもしれないが……。
【備考】
※名前だけなら噂で笑止千万、ノエル、四苦八苦(の本名)、双葉玲央を知ってます。
他にも知ってる人はいるかもしれません。
暦は書類上のデータで細かく知ってます。
249
:
がれきの街の夜
◆vV5.jnbCYw
:2025/03/19(水) 22:52:12 ID:gjWtgJmA0
投下終了です
250
:
◆/dxfYHmcSQ
:2025/04/20(日) 15:05:24 ID:e85fARlU0
投下します
251
:
嫉妬
◆/dxfYHmcSQ
:2025/04/20(日) 15:08:52 ID:e85fARlU0
夜が更けた。
市街戦の様相を呈した街中で、なんとか残った一軒の家に押し入って、双葉真央は仮眠を取る事にした。
真央としては、「行くぞ。皆殺しだ」と行きたかったのだ。
だが、グレイシーに返り討ちにされ、不死身の化け物に襲われ、くるるを殺害し、血の化け物に嬲られ、汀子を殺し。
生涯で最も濃密な一日を過ごして、心身共に疲弊しきったのだ。
グレイシーとテンシの一戦の影響で、周囲は破壊され尽くしたなかで、休める場所を見つけられたのは僥倖だった。
家の中で服を物色し、ボロボロになった服の代わりを探し、白いパーカーを見つけて着込むと、ベッドに横たわり、同じく発見したお握りを口にする。
シャケは兎も角、白トリュフをたっぷりと振りかけたキャビアのお握りは何なのだろうか?
「豚汁欲しい……」
鬼わず漏れた呟きは、真央の心の声かホンモノスヒョン由来のミーム・汚染か。
一人で黙々と食事を取る事を、真央は何とも思わない。寂しいだとか哀しいだとか、そう言ったものにはもう慣れてしまったから。
真央の心は冷たく凍えて、もはや情動という熱を放つ事は無い。
汀子相手に見せたのが、最後の残滓だ。
食事を終えるとベッドに横たわる。
横になって、初めて自分の身体が、どれ程の疲労を覚えていたかを認識する。
全身の筋肉が、なるで水を吸った綿のように感じられる。
指一本動かすのも億劫だった。
「疲れた…。終わったら熱海行きたい………」
呟いて瞼を閉じ、3秒後に眼をクワッと見開いた。
「熱海…!?」
何故に熱海?思わず考え込むが答えは全く出てこない。
真央は知らない、血液生命体に襲われた時に、血液生命体の血を微小だが飲んでしまった事で、血液生命体の記憶を受け継いでしまった事を。
ホンモノスヒョンに由来する、血液生命体を蝕んだミーム・汚染に、真央も感染してしまった事を。
ホンモノスヒョンが某テレビ番組観て熱海に行く事を思いついて、有給申請したらスンナリOKされたものの、『熱海以外な』と言われて、『う…ウソでしょ以下略』した事を。
暫くウンウン唸っていた真央だが、疲労には勝てずに、やがて眠る事にした。
テンシが壊れていなければ、見張りを任せられるのにとは思うものの、無い物ねだりをしても仕方が無いので、戸締りをしてから眠る事にする。
まずは気力と体力を回復させる。その後で“アクマ兵装”の性能を確認して、残りの16人を皆殺しにする。
特に兄の玲央と、兄と一緒に行動しているメスブタは、自分の手でキッチリと殺しておきたいところだった。
人を二人も殺したというのに、不思議なくらい眠りに就ける事に、殺人鬼の片葉である事を改めて認識しつつ、真央の意識は薄れていった。
252
:
嫉妬
◆/dxfYHmcSQ
:2025/04/20(日) 15:09:41 ID:e85fARlU0
〜〜〜〜〜〜〜
見慣れた光景が有った。
父も母も、そして玲央も居なくなった家の中。
金鉱を掘り当てたゴールド・ラッシュならぬ、バズりに群がる“配信・ラッシュ”。
泣いて詫びを入れる被害者に、冷酷非情にカメラを向ける精神(メンタル)こそが“配信”と信じる野蛮人達のラッシュ・対象となっている筈だが、そんな気配は何処にも無い。
こんなにも冷たく広かったのだろうかと、そんな思いを抱きながら、一人で過ごしていた家だった。
真央は茫洋とした意識のまま、リビングへと通じる扉を開ける。
夢でしか無い光景が其処にはあった。
真央の眼の前で、両親と兄が、長い金髪の、一眼見たら生涯忘れられないくらいの、そこいらのアイドルなら裸足で逃げ出すレベルの美少女と一緒に、食卓を囲んでいた。
「な…な……」
何時も真央が座っていた場所に、当然の様に座って、両親と愉しげに語らい、玲央の肩に馴れ馴れしく頭を乗せる金髪美少女。
「う…うそでしょ。こ、こんなことが。こんなことが」
許されて良いわけが無い。
大体あの女は何なのか。
何処から湧いて出て、私の場所に座っているのか、この淫売は。
舐めてるんじゃ無い。ぽっと出のメスブタが、子宮の中にいる時から一緒だった私に取って変わる?変われる訳が無いだろうが。
許せなかった…玲央の隣に居るのが何処の馬の骨ともしれないメスブタだったなんて。
異常に言葉使いが悪いのは、取り込んだ血によるものだが、果たして血液生命体に依るものか、それとも本物スヒョンに依るものかは定かでは無い。
そんな事はどうでもいい。重要な事じゃない。
思わず真央は、台所に置いてあった醤油の一升瓶を手に取った。
「クソボケがーーーーーっ」
兄の隣に座す淫売の脳天目掛けて振り下ろされた一升瓶は、頭をカチ割る事なく空中で静止する。
「凶器はダメだろ」
真央の手首を、玲央がガッチリと掴んでいた、
気がつけば、玲央は元より両親の姿も無く、真央の視界にはメスブタ一匹。
「くるるさんや、汀子さんを殺しただけでは無く、私まで殺そうとするなんて、何故そんな事をするんですか?」
何かを言った気がするが、ハッキリとした言葉には成らなかった。
「嘘を吐いてはいけません。本当は玲央さんとファックしたいだけなんでしょう?」
清楚可憐と言っても良い顔立ちから出た、とんでもない下品な言葉に、思わず真央は絶句した。
そんな訳があるかと、私は兄にそんな欲情は抱いていないと、玲央だって私の事を大切に思っている。
そう叫んでも、メスブタは冷笑するだけだった。
「2時間も有れば服を脱ぐジャ◯プに愛情なんて抱く訳が無いでしょう」
冷静に考えれば明らかにおかしい状況と事態なのだが、真央にそんな余裕は無い。
「お…お兄ちゃんを誑かしておいて……良くもそんな事を!」
「私が玲央さんを誑かした?そのエビデンスは?」
「なにっ」
まさかの返しに硬直した真央へと、冷酷非情に追い討ちをかます精神(メンタル)。まるでメスブタだ。
「大体貴女が玲央さんの何を知っていると?
双葉玲央の正体見たり!!の様な事は無いと断言できるんですか?」
何も言い返せない真央に、メスブタは嫌味たっぷりの嘲笑を浴びせ、更に真央の心を抉る言葉を放つ。
「玲央さんの好きな体位はご存知ですか?何度射精すれば満足するかは?一週間に何度求められるか知っておられますか?」
「な……な………な……………」
メスブタは鼻で嗤って。
「教えて差し上げますよ。ええ、貴女は私の義妹になるのですから、お気になさらずに、同性もいけますから」
この女は本気だ。
俯せにされ、背中に覆い被されて、真央はメスブタの本気を悟った。
「フフフ…愛というものは、痛みを伴うものなんですよ」
メスブタが動き出す。
「やめてええええええええええ」
〜〜〜〜〜〜〜
253
:
嫉妬
◆/dxfYHmcSQ
:2025/04/20(日) 15:11:26 ID:e85fARlU0
「う あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ」
凄まじい勢いで跳ね起きた。
「何なのこのクソ展開………」
なんだか良くわからない、不快極まりない夢を見た。
血液生命体と本物スヒョンの記憶に、真央の精神状態が合わさった事によるトチ狂った夢だが、真央にそんな事は分かるはずもなく。
睡眠を取った事で、幾らかマシになった身体を起こし、”アクマ兵装”を手に取る。
夢で見たメスブタが、玲央と一緒にいるという、『とても綺麗なお嬢さん』だと、真央の本能が理解していた。
必ず殺さねばならない相手だった。
その為にも、“アクマ兵装”のチカラが要る、
メスブタを殺すという事は、メスブタに誑かされた玲央も殺すという事だ。
玲央に勝つ為には、“アクマ兵装”の力が必要不可欠なのだから。
日本刀の様な刀身を持つ、真紅の剣を手に取る。
重さと重心を確認して、振るう。
二度、三度…二十を超える数を振るい、手と身体に剣を馴染ませていく。
兄があのメスブタと、同じ屋根の下で夜を過ごしている。
その認識が僅かでも脳裏にあるだけで、眠る事など出来なかった。
夜が更けていく。
闇が深くなる様に、真央の心に芽生えたドス黒い“意志”は、濃さと密度を増していく。
【H–5→どこかの一軒家 夜中】
【双葉真央】
[状態]:疲労(極大)、 全身に打撲傷、ダメージ(特大)、両腕に軽い火傷、キム・スヒョンへの恐怖(大) メスブタ(ノエル)への嫉妬 血で汚れている ミーム・汚染(微小)
[装備]:アクマ兵装クリムゾン・クイーン
[道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム1(確認済み) 播岡くるるの支給品1〜2、壊れたAIバッジドロシー “テンシ”との連絡用インカム、ライター
[思考・行動]
基本方針:“テンシ”を使い優勝を目指す。
1:全部殺して、兄との生活を取り戻す。
※キム・スヒョンの血を飲んでしまった所為で、記憶と知識に本物スヒョンのものが混じりました。
思考や人格や精神には影響ありませんが、身に覚えのない変な言葉が出てきます。ミーム・汚染が近いです。
254
:
嫉妬
◆/dxfYHmcSQ
:2025/04/20(日) 15:12:20 ID:e85fARlU0
短いですが投下終了です
255
:
◆vV5.jnbCYw
:2025/04/30(水) 20:58:31 ID:xs1lwxls0
投下お疲れ様です
殺し合いに優勝する上では殺さなきゃいけない相手とは言え、割と理不尽に殺意を持たれるノエルかわいそ…
血液生命体で何やらおかしなことになってますが、景品で何を出来るのかが気になりますね。ここまで来ると残りの支給品や壊れたAIバッジがどうなるかも気になります。
最後に状態表に『基本方針:“テンシ”を使い優勝を目指す。』とありますが、これは私が90話で状態表を変えてなかったことによるミスです。
後で90話、今回の投下両方を修正しておきます。
不二、神、壥挧 彁暃、サンドラ、魔子予約します
256
:
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:04:48 ID:vUvRxycg0
投下します
257
:
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:07:48 ID:vUvRxycg0
「待っていたぞ……●※×▼○×……、いや、今は宮廻不二か………。」
「え?」
ひどく、おかしな空間だった。
辺りは真っ暗だと言うのに、目の前の老人と、自分の姿だけがはっきりと映っている。
まるでスポットライトでも当たっているかのようだ。
「あんた、誰だ?なぜ僕の名前を知っている?もしかして、デスノの仲間……」
彼が全ての疑問を吐き終わる前に、老人は姿を消した。
辺りには自分の姿だけが、妙に明るく映って見える。
自分はもしかして、こんな所に取り残されたままなのか?という恐怖を抱いてしまった。
光が再び集まる。
人の形になった瞬間、心臓が早鐘を打ち始めた。
「おまえは……!!」
彼の心臓を鷲掴みにした恐怖は、違う存在だった。
そこには、1000年以上前に捨てた、妻の姿があった。
既に彼女の顔を忘れてしまったと思っていたが、今この瞬間、はっきりと思いだした。
自分を怖いと言ったあの夜と、同じ姿をしていた。
「すまない!あの時…勝手にいなくなった僕が悪かった!!」
妻と子を捨てて悪いと思ったことは、一度もなかった。
彼女らがどうなったか考えたことはあれど、仕方のないことだと割り切っていた。
それでも、こうして目の前に現れると、謝ってしまう。
自分が思っていた以上に彼女のことを気にしていたのだと、今になって分かってしまう。
1000年以上が過ぎた今、全く変わらない姿をしているのを、おかしいと感じる暇など無かった。
「許して貰えるとは思わない!それでも……もう一度その顔を見せてくれ……。」
しかし、すぐに彼女は姿を消してしまった。
真っ暗な空間の中、またしても不二は取り残される。
「やはり、お前で間違えないようだな。」
今度聞こえたのは、先の老人の声だった。
あまりにも自分が置いてけぼりにされ過ぎていて、何がどうなっているのか分からなくなる。
少しは自分に合わせてくれよという気持ちで一杯だった。
質問したいことは山のようにあり、たった今ひとつ増えたが、ここまで多いと何から聞いていいのか分からなくなる。
258
:
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:08:15 ID:vUvRxycg0
「あんた…僕の何を知っているんだ?そもそもいつ、僕のことを聞いた?」
「お前のことは、この世界に来る前から聞いている。」
トレイシーの仲間か?と思ってしまった。
話が傾聴に値するものか、判断してからそれを聞いてもいいかと考える。
「改めて自己紹介しよう。私の名はアレクセイ・ノーゴルド。ある世界で王をやっていた。その時はノーゴルド13世と言われていたな。」
この世界で初めて、参加者ではない人物に出会い、困惑する不二。
反射的に、首輪を確認する。
参加者ではない人間に会った理由は、会場の外に出たから。
会場の外に出れば、ルールに違反したと判断され、首輪を爆破される。
そんな三段論法をもとに、首輪の異変を警戒した。
「色々と聞きたいことがあるはずだが、まずはこの場所が何処なのか話したい。」
★
「目が覚めましたか。」
「……ここは地獄ってワケじゃあ無えよな…」
「ええ、地獄とは少し違う場所ですね。」
場所は変わり、殺し合いの会場の中央部にあるショッピングモール。
キム・スヒョンとの戦いが終わって10数分の後、殺し屋の男は目を覚ました。
辺りには戦いの跡が広がっており、最早モールの入り口には思えない様相をしている。
身体は節々が痛むが、甚振るつもりで手加減されたのもあって、動くのに差し支えることは無いようだ。
「全員無事だったのは何よりだが…その髪の色は何だ?ムラサキが半分ムラサキじゃ無くなってるじゃねえか。」
モールの風景に次いで目に入ったのは、肉体を再生しているアレクサンドラの姿と、眠る加崎魔子の姿だ。
特徴的な紫色をしていた加崎魔子の髪の色は、アレクサンドラと同じ真っ白になっていた。
彼女の目は閉じられたままなので、瞳の色までは何色か分からないが、この分だとそちらも変わってそうだ。
259
:
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:08:47 ID:vUvRxycg0
「彼女は、生まれ変わったのよ。」
「生まれ変わっただあ?」
生まれ変わる。彼が特に嫌う言葉だ。
信じないものなど数多くあるが、信じないだけではなく嫌いな言葉だ。
暇な時間に読んだ小説で、生まれ変わりや転生などを扱った物語は齧ったぐらいはあるが、どれもしっくり来なかった。
死んだらそれで終わり。だからこそ生きることは大切であり、殺し屋は殺し続ける。
「ええ。吸血鬼としてね。」
「…死ぬよりゾッとしねえな。俺は人として生き続けてえよ。」
「その言葉、彼女が目を覚ましたら絶対に言わないでね。」
「………。」
アレクサンドラの表情が真剣なものだったので、思わず殺し屋は口ごもる。
彼女に秘めているのは言葉の圧だけではない。それは先の戦いで十分すぎるほど分かっている。
同業者やマフィア、政治家の用心棒以上の威圧感がそこにあった。
しばらくすると、ずっと閉じられていた魔子の瞳が、ぱちりと開かれた。
まるで記憶をなくしたかのように、焦点の合わない瞳で辺りを見渡している。
その瞳は、片方は変わらず、アメジストを彷彿とさせる紫。
もう片方はルビーのように真っ赤になっていた。
「……夜の一族の儀式は……成功したのか?」
微睡みから覚めたような声で問う。顔は少し青ざめているぐらいだ。
彼女の変化を、神は固唾を飲んで見守っていた。
「ええ。言葉を話せるなら、成功したようね。」
「……良かったな。嬢ちゃん。」
さっきまで理を逸した力を使っていた人間の少女が、死に瀕して人でないものになる。
そんな瞬間を目の当たりにしても、不思議と驚きはなかった。
あまりに超越的な出来事や、理屈では説明できない存在を見過ぎてしまい、この程度では驚かなくなったのか。
それとも、何か別の感情が優先したのか。
疑問と驚愕のタネは山のようにあるはずなのに、不思議と言葉に出す気は無かった。
「魔法は使えるのだろうか……。」
「おい、あんまり無理する……な!?」
試しに魔子が、炎魔法を使ってみる。
人など簡単に焼ける大きさの炎の玉が、神のすぐ近くを通り過ぎて行った。
彼女のそれまでを見た者ならば、魔法が暴走した、と考えてもおかしくない。
260
:
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:09:11 ID:vUvRxycg0
「!?」
焔の玉が壁にぶつかっても、まだ止まらない。壁の穴と煙の臭いを残して、モールの外に飛び出る。
その後すぐに、爆音が室内にまで響いた。どこかにぶつかって、爆発したのだと伝わってくる。
魔法を放った魔子が、一番その音に驚いて、耳を塞いでいた。
車掌は、その目を細めて壁の穴をじっと見つめている。
アレクサンドラは無表情を通しているが、これまた何を考えているか分からない。
明らかに威力の違う魔法だった。吸血鬼の血を貰ったからだと考えるのが妥当だろう。
「おい、ここから離れた方が良くねえか?今ので誰か寄ってきたらどうする?」
その中で神は、今の音と煙で誰かが寄ってこないのかと、一番先に警戒した。
ただでさえ夜も更けていく中、灯りのついた大きな建物は灯台代わりになりやすい。
ましてやそこから音や煙を出してしまえば、殺し合いに乗った誰かが寄って来ることも、十分考えられる。
いや、寄って来られるのなら、抵抗がしやすい分まだいい。
遠くから高火力の武器、あるいは超能力で建物ごと狙撃される可能性がある。
「心配はありません。魂が近づいてくる様子は無いので。」
車掌のその言葉に幾分か安堵するが、同時に殺意に対して気を配り続ける自分が、どうにも間抜けに思えた。
この世界でも、元の世界で仕事を全うするにも、殺意への敏感さが重要だったが、車掌の能力さえあれば、そんなものは必要ない。
「何だか人間探知機みてえだな。それ、戦争かなんかで使えねえか?」
「あまり疚しいことを考えないで欲しいですね。」
戦争も、殺人も。一般論で嫌っている訳ではない。
乗客になり得る存在が一人でも減ってしまう。電車と、それに関わる者を愛する故に嫌うことだ。
殺し屋である神には、ある種の興味を抱いているが、殺し屋そのものに対する見方が変わったわけではない。
「…軽はずみなことを言ってすまねえ。」
「構いません。それより考えた結果、一つだけ分かったことがあります。」
「何だそりゃあ?」
「まずは、私たちが今、どこにいるかと言うことです。」
その瞬間、車掌の表情が改まったものになった。
天地がひっくり返っても、嘘や冗談を言う表情には見えない。
自分たちが殺し合いをさせられているこの場所はどこなのか。
もし知ることが出来れば、脱出の道、ひいてはデスノへの反逆の道も現実的になって来るはずだ。
市街地の風景は、旅行で行った日本に似ているが、少なくとも日本のどこかとは思えない。
神はここがどこなのか考えたことも無かったし、表情からして後の2人も同じように見える。
「あの世とこの世の境界。」
261
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不当
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:09:41 ID:vUvRxycg0
★
場所は、明るいショッピングモールから殺し合い会場の地下に移る。
「生と死の世界の境界?」
宮廻不二は、奇しくも彼たちと同じ時間帯で、同じことを聞いた。
ここがあの世とこの世の境界線だと。
不死身である自分が、死者と関わる場所に行くなど、冗談にしてもけったいな話だ。
「そうだ。ここにいる者も含め、すべての生き物は死ねば、死の世界へ行く。
だが、その生と死の世界の間に、境界がある。」
「それが、この殺し合いの世界だと言うことか?」
一体どうしてデスノはそんな場所を、殺し合いの舞台に選んだのか。
どうやって行くのかさえ分からない場所を選ぶぐらいなら、どこかの離島なり、無人の学校なりを選べば良かったんじゃないか。
そんなことを考えるくらいには、老人の言葉は不二に届いていなかった。
「お前は何を言っているんだという顔をしているな。だが、この世界はそれでしか説明できない。
生者が本来、死しても来ることが出来ない場所なのだ。」
★
「……車掌さんが何を言ってるのか正直分からんが、どうしてそう思うに至った?」
「まず気になったのはこの世界に来てからのことです。」
――少し前に乗客が禁忌を冒してしまい、やむなく強制下車の処分を下したのですが、どういうわけか魂が消滅することなく、あろうことか再び肉体を得た気配を察知いたしまして。
「名簿に播岡くるるという名前がありますね?彼女はワタクシの列車の乗客でした。」
「幽霊だったのに、あんたみたいにこの世界にいたのはおかしいってことか?」
この世界に来た時、禁を犯して幽霊列車から追放された、播岡くるるの存在は感知していた。
感知していただけだ。その時はまだ、この世界のことをよく知らなかったので、断定には届かなかった。
最初は現世に降り立ったのかと思っていたが、今思えばこのような世界ならより納得が行く。
「私の疑問が深まったのは、この世界で歴史から消された存在を見てからでした。」
「思い出したぜ。最初の放送があってからすぐにレガリアって王国と、そこが出した宝石の話をしてたな。」
第一放送にて、デスノから3人殺した景品の剣を見せられた。
その剣の装飾に使われていた宝石が、この世のものではない宝石だったと、アレクサンドラが説明した。
さらに、その宝石の出所が、歴史の狭間に葬られた王国レガリアだったのではないかと、車掌が仮説を立てた。
「さらに先の戦いで分かったことですが、死した者の干渉が異様なほど起こることです。」
「俺が殺した嬢ちゃんが助けに来た…みたいなことか?」
「ハイ。本来ならば滅多に起こることは無く、生者への過剰な干渉を行うことは、幽霊のルールに違反します。」
262
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不当
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:10:02 ID:vUvRxycg0
確かに、口では説明できないが、何か辻褄が合わない所を感じた。
理屈では説明できぬ能力の持ち主がいたり、生物学上あり得ない生物がいたり、そんな物ではない。
参加者個々人の話ではなく、殺し合いそのものに、得体のしれぬ何かが存在する。
この殺し合いに強制参加させられ、いつからかそのようなことを感じていた。
「ああ、そういや一つヘンなことがあったな。この世界、どいつと話をしても、同じ言語を話してるように聞こえる。
名簿からして、明らかに国籍は違うと言うのにな。」
車掌も魔子も、サンドラも知らぬことだが、彼は8か国語を話すことが出来る。
超一流の殺し屋と言うのは、銃の腕さえよければ良いと言うものではない。
標的のアキレス腱を見つけるためには、情報を集めることが不可欠だ。
それらの要となるのは、標的の出身国の言語。新聞からネットの記事、標的について著した書籍、果てには噂話など、情報源はいくらでもある。
現に彼も、殺し屋として育てられる傍ら、慣れぬ言語学習を強いられることとなった。
だが、そのような語学に堪能な者でなくとも、言語間の壁があるようには見られない。
例えば加崎魔子は、髪や瞳の色こそ日本人らしくないが、国籍は日本だ。日本語以外の言語
など、学校の授業で英語を学んだぐらいだ。
だが、母国語が日本語で無い神やサンドラとも、コミュニケーションを取ることが出来る
「ええ、それもまた、ここが生者の住まう世界で無いのなら、説明がつきます。」
「いや…それは話のツゴウって奴じゃないのか?他にも、バベルの塔が倒壊しなかった世界線から来たのか…」
「魔子さんはバベルの塔の話をしましたが、あの世というのは、言語の壁がありません。」
「え?それって英語の勉強をしなくて良いってことか!?」
魔子が、何だか的を射てないようなことを話す。
生者にこそ知らぬことだが、あの世は言葉を話せる者ならば、誰にでも通じることが出来る。
少なくとも、幽霊列車の車掌が知り得る死後の世界は、そうなっている。
生者の国とは違い、国境の概念が無く、如何なる国の者も来ることになるからだろうか。
★
「まずは私のことから話させて欲しい。一度私は、殺されている。肉体はとうに滅び、思念だけが残っている状態だ。」
不二の怪訝な表情は、変わらなかった。
殺された人間なら、善人で信用できるという訳ではない。
『女子供10人ぽっち拷問しただけなのに殺された』なんてケースもある。
「僕と同じ、不死身……と言う訳じゃないのか?」
死因がどのようなものかは分からないが、死んでもこのようにして意思を持って話せるのなら、不死身と何ら変わりはないだろう。
死ぬ前に自分で立体映像とも考えられるが、そのようにも見えない。
それならば“思念”などと回りくどい言い方をする必要は無いだろう。
「君は歩けるし走れる。道具を握ることも、使うことも出来る。私はそのすべてが出来ぬ。
そしてなぜ、私の思念がなぜこのような形で残ったのか、そもそも何故この場にいるのか、見当もつかない。
恐らく、それが一番、“奴ら”にとって都合がいいのだろう。」
263
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不当
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:10:59 ID:vUvRxycg0
不二は黙って話を聞く。
“奴ら”というぼかされた言い方だったが、それがデスノ、ひいては彼の同胞のことだと伝わった。
話からして、この老人は殺し合いの参加者の味方なのではなく、デスノの協力者と考えた方が良い。
だが、この男は自分が知らないことを誰よりも知っているのも、不二には伝わっていた。
そのため、老人の話を聞くことにした。
「要は、情報は教えても、それ以上のサービスは出来ないと言うことか。」
「間違ってはいない。その情報も、どこまで教えられるかは不明だがな。」
誰かに盗聴されているのか?とも思ったが、それならそれで聞ける所まで聞きたいと不二は考えた。
故に、盗聴のことを聞くより、話の続きを聞こうとした。
「とりあえず、どうして死んだ…いや、殺されたのか教えて欲しい。」
「そうだな…どこから話すべきか難しいが……私が何をしていたかと言うことから話そう。私は生前、死者を蘇らせる実験を行っていた。」
「それはまた、恐ろしいことをやっていたな…」
生前、と言う言葉よりも、不二としては老人の研究内容の方が気がかりだった。
不死であることの恐ろしさは、彼自身、幾度となく考えたことがある。
だが、死んでから生き返ることもまた、恐ろしい話ではないかと思った。
過去に不二は、死んでも蘇る能力を持った超人が、敵として現れる物語を呼んだことがある。
その超人は最後は太陽に飛ばされ、焼かれては生き返り、また灰になるという末路を迎えたシーンを見た時は、しばらく気分が悪くなった。
「若くして亡くなった妻を、蘇らせようと考えたからだ。あの頃の私には、彼女しかいなかった。」
それは災難だ、と言う言葉しか、不二には浮かんでこない。
死者を生き返らせる研究に比べると、赤の他人の身内の不幸と言うのは、どうにも他人事のようにしか聞こえなかった。
264
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不当
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:11:26 ID:vUvRxycg0
「まさか、その研究の果てに、僕が生まれた訳って話じゃないよな?」
「お前ではない。そもそも、研究は終ぞ完成しなかった。」
「すまない。少し話を遮った。続けて欲しい。」
その言葉を聞くと、少しばかり安堵を覚えた。
自分の生まれた意味が、たかだか他人の喪失の埋め合わせだなんて、中々ぞっとしない話だからだ。
「話を戻そう。研究は何一つ進まなかった。国中の予算を集めても、異国から名うての学者や魔術師を集めても、何も変わらなかった。
そんな中、国が呼んだ東国の魔術師の一団に混ざって、ある男がやってきた。名は話さなかったが、片手にはある物が握られていた。」
昔話でも語るように言葉を話す老人だったが、その時だけは、昨日起こったことのような、神妙な顔つきをしていた。
不二もゴクリと唾をのんだ。ここからがこの話の山場だぞという雰囲気が、醸し出されていた。
「焼けただれた人間の手が入った、大きな瓶だった。」
その言葉だけで、老人が話す“男”が、異様な存在だとはっきり分かった。
曲がりなりにも王だった人間に、そんな物を渡すなど、頭がおかしいとしか思えない。
そんな怪しさしかない人間は追い返そうとしなかったのかと言葉を話す前に、老人は話をつづけた。
「奴は私に言った。これは、不死の男の手だと。」
その言葉を聞いて、右手の痛みが走ったような気がした。
過去に不二は、生身の人間が負えば、それだけで死に至るような怪我も経験してきた。
片腕の欠損もあった。戦争で空襲から逃げる最中に、気が付けば右手が無くなっていたことがある。
爆風と鉄片を受けて吹き飛ばされた右腕は、すぐに再生したから問題は無かった。無いと思っていた。
もし、それが何者かによって運ばれたのなら?もし、それが何者かによって、良からぬことに使われれば?
「いや、待てよ……」
そこまで考えて、ふと思い出した。
老人は“焼けただれた”人間の手と言った。
その話からして、斬り落とされた部分は、再生しないというアンサーが正解と思える。
「早速その手から細胞が抽出され、研究が始まった。」
「それで、どうなった?」
既にただの人間の腕と、変わらないはずのものだ。
それは目の前の男の話が、証明しているはずだ。
「死んだはずの老人が動きだした。」
一瞬、目の前の老人の姿に、靄がかかった。そんな感覚を覚えた。
何故かは分からないが、胃の中が逆流したような気分を覚えた。
いつかは、自分と同じ不死の人間と、永い時を共に過ごせばいいと思ったことがあった。
けれど、そんな形で不死になった者と共に生きるなど、ごめんだとしか言えない。
「動き出しただけだった。生前にあったはずの意志は持たず、ただ歩きまわるだけだった。
その身内を近くに呼んでも、反応が変わらなかった。」
だが、斬り落とされた腕の方は、再生することはない。再生することは無いはずだ。
そんな物を材料に使っても、芳しい成果が得られるとは思えない。
「それって……」
「ああ。生きてはいなかった。まるで精巧に作られた人形のように見えた。
それでも、私の目的まで大きく前進した。そう思っていた。」
265
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不当
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:11:59 ID:vUvRxycg0
★
再び、ショッピングモール。
「それで、だ。ここが何処なのか分かったのは良い。どうすりゃこっから出られる?」
神としては、この場所が分かったのは朗報だった。
だが、ここからの脱出方法が分からなければ、その情報も意味が無くなる。
あの世とこの世の狭間だと言うのなら、船や飛行機、自動車で出られるものではないだろう。
そんなことは、車掌以外の3人でも容易に分かることだ。
「車掌さんの力で出られないのかしら?」
サンドラの言葉でピンと来た。
幽霊列車の車掌と言うだけに、あの世と現世を行き来する力を持っているらしい。
「申し訳ありませんが、その可能性は極めて低いです。」
彼の表情が曇った。
まあ、そうだろうな、という考えが半分。どうしてダメなんだ、と言う考えがもう半分。
魔子も似たような表情を浮かべていた。
「サンドラ様には一度お話ししましたが、生者が幽霊列車に乗ることがあれば、心身に傷を負っていく可能性があります。
人の魂を持たぬサンドラ様ならまだしも、後の御二人はどうなるか分かりません。」
「おい、吸血鬼になった嬢ちゃん、何かこう、魔法でパーッと身を守ることは出来ねえのか?」
「そんな魔法は聞いたことないぞ。おまけに人の魂に干渉するのは禁呪の一つだ。」
アレやってもダメこれやってもダメ。
幽霊とか魔法って、もっとルールを無視していいモノじゃねえのかよ、と神は思った。
「案外、アリなのかもしれません。」
しばらく黙っていた車掌が、肯定の言葉を零したことで、他の3人は驚く。
「何がアリってことなんだ?」
「ワタクシが考えたこととして、人の魂を持つ者は、幽霊列車に“不正乗車”してもらうと言うことです。」
「車掌なのに不正乗車を勧めるのか……まあいい、それで、魔法とどういう関係があるんだ?」
「あなた方とは異なる世界で、死者を動かす魔法と言うのは、存在しています。」
★
「それで、どうなったんだ?」
不二は、それが老人の終わりの始まりだと言うことは分かった。
だが、その末路に至るまでの過程は、聞いておかねばならないと思った。
「研究は続いた。確実に妻を生き返らせるための、道を進んでいるという自信はあった。
実験用の死体は、いくらでも必要になった。最初は老人や病人から、配偶者に少しでも多く遺産を遺したくて志願した者、やがて重罪人、そして、隣国の者……。」
「たかが人一人生き返らせるために、そこまでしたと言うのか!?」
その声は、幾分か圧が籠っていた。
不老不死など恐ろしいことだというのに、それを行うために何人もの犠牲者を出したなど、彼にとっては吐き気催す行いだった。
死ぬ恐怖が無い彼でさえ、いや、彼だからこそ、何をやっているんだと言う気持ちに満たされた。
「もう引き返せなかった。事実、反対の意見を呈した者もいた。だが、その者は悉く行方不明になった。
実験を中止しようとした際に、必ずあの手を渡した男が現れ、順調に進んでいるという言葉だけを残してな。」
266
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不当
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:12:20 ID:vUvRxycg0
典型的な破滅するギャンブラーの思考だ。
赤字ではあるが、定期的に利子にもならぬ小当たりは出るので、いつかは大当たりが出る。そんな愚にもつかない自信をもとに、掛け金をベットし続けているようなものだ。
「死体はいくらあっても足らなかった。やがて、元から戦争をしていた、相手国の兵士を使うことになった。
戦争で役立ったのは、実験で失敗した、動く屍たちで結成された軍だった。」
不二としては、そのあたりの話はどうでもよかった。
ただの愚かな人間の愚かな振る舞いとしか思えなかった。
その国の人間ならば恐ろしいと感じたかもしれないが、どこまでも他人事だ。
――久し振りだねえ。最後に会ったのは、あの戦争以来? 2人で空襲から逃げたよね?
彼が気にしていたのは、トレイシー・J・コンウェイのことだ。
まさか自分の手を持って行ったのは、彼ではないか。そんな疑念が尽きなかった。
老人の話を遮って、その男の名前と姿はどんなものか聞こうかと思ったが、やめた。
あの男のことだから、名前も姿形も、自分が知っているものと異なっている可能性が極めて高い。
「それからしばらくして、男が再び顔を出した。私は本当にこれで正しいのかと聞いた。
男は、予想以上の成果を見せてくれた、ありがたいと感謝の言葉を残した。」
典型的な人を操る手段だ。
自分が順調に進んでいるか、疑問に思った瞬間に褒めたたえ、不安を払しょくする。
順調に進んでいる、自分は分かるんだ、才能ある君はそれを信じて進めばいい。
そんな調子の良いことを言って、相手が崖から落ちるまで待ち続けるようなものだ。
「そして男は言った。これから何が起こるのか見せると。彼が杖を掲げた瞬間、おぞましい光景がわたしの部屋の中に広がった。」
そんな物はガセネタに決まっているだろう、お前は何を信じているんだ。
不二はどうしても、そこまで言い放つことは出来なかった。
自分もデスノやトレイシーの、体のいい嘘に騙されている。そんな風に考えられてしまうからだ。
「人間たちが、得体のしれない化け物に殺されている光景だ。」
唾をごくりと呑んだ。
その男が嘘を言っているようには思えなかった。
間違っているのは自分の考えではないか。そんな風に感じるほどだった。
「大きいものや小さいもの。人のような姿をした者からそうでないもの。化け物がノーゴルドの王都を埋め尽くしていた。
我が国の兵士も必死で戦っていた。だが、奴らの甲殻や、武器を滑らせる体液により、全く歯が立たなかった。
作り物と言うには、あまりにリアルな光景だった。」
ここで不二は思った。ここに来る前に墓地で戦った二人組の片割れ。
あの金髪の少女もまた、得体の知れぬ力を持っていた。
彼女は何らかの形でこの老人の世界に現れた“侵略者”ではないか。
いや、デスノそのものが“侵略者”に該当するとも考えられた。
「遠からぬ未来で、生と死の世界の境界が曖昧になり、“アクマ”という歴史から忘れられたはずの怪物が、人類にキバを剥く。
不死の兵を作る実験は、この世界の未来を守るためにどうしても必要だった。
君は人類の未来に貢献した。ありがたい。だが、もう少し頑張ってくれ。君の妻に会えるまであと少しだ。そんなことを話した。」
267
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不当
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:12:58 ID:vUvRxycg0
当初、この老人も、“手”を渡した魔導士も、ただの悪だと思っていた。
しかし、これだけ考えていれば、どちらも何かを守るために戦っているように聞こえる。
ただ力の使いどころが誤っているだけだ。未知の未来を恐ろしく思う気持ちは、不二は痛いほど分かる。
世紀末に訪れる大魔王の襲来、富士山の噴火、国そのものが崩壊しかねない大地震、太陽に飲み込まれる地球。
他の者が遠い未来に起こるからと一笑に付す出来事でも、自身にとっては他人事に思えない。
そんな自分が怪しい宗教の虜にならなかったのは、偏に寺、引いては宗教に悪い思い出があるからに過ぎない。
「やがて、研究室の魔法が暴走した。原因は不明だ。
解明する前に私含めて全ての王国の人間が、生きる屍と化した。
その先のことは、今わの際まで覚えていない。
私は、他国から来た黒髪の剣士に討たれ、気づけばこの場所にいた。」
268
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不快
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:13:50 ID:vUvRxycg0
★
「こことも地球とも異なる世界の話。ある王国がありました。その王国は不死者を作ろうとして、魔法の研究を進めていました。」
「もしや…私の先祖がいた世界なのかもしれないな。」
加崎魔子は魔法が使えるとはいえ、地球生まれ地球育ちだ。
テレビでアイドルを見て、そのアイドルに憧れたし、スマホもパソコンも使える。
だが、彼女の先祖の中に、地球とは異なる世界からやって来た者がいると言う。
彼女の紫の瞳や、魔法が使えるのはその血によるものだとか。
「その研究は失敗に終わり、生きる屍を量産しただけでしたが。」
「ゾンビ映画みたいになっちまったって訳か。」
「ハイ。ですがワタクシとしては、あまりにも危険な賭けだと思います。
なるべくならばやって欲しくはありません。」
「まず第一に、我には出来ない魔法だな…仮にその魔法で幽霊列車に乗れたとして、我々は元に戻れるのか?」
「随分と弱気になっちまったな。血液に吸血鬼のホルモンが混ざって、陰気になっちまったか?」
「やっぱり、デリカシーが無いのね、あなたは。」
魔子には分かることだ。
魔法で魂を操ることは、炎や水を操ることと全く異なる。
何故そうなのか、答えることは出来ない。だが、そのような仕組みになっている。
仮に出来るとするなら、占い師にとっての水晶玉のように、何かしらの媒体が必要だ。
でもその媒体として、何が必要なのかは分からない。魔子が手っ取り早く思いついたのは、生きた人間だ。
だが、そんな物で魔法など使いたくないし、人の魂を操るためにそんなことをすれば、本末転倒も良い所だ。
「そうだ!一つ忘れていたことがあったが……下僕2号が言っていんだ。
“アルム石”という物があって、それを使えば、この世界から出られるらしい!!
おまけに、この世界のどこかにあるらしいんだ!!」
「で、どこかって何処にあるんだよ。」
「……分からん。でも、下僕2号の言ったことだから、きっと見つかるはずだ。」
「やはり、確実に乗車できる方法があるとするなら、『定期券』でしょう。」
269
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不快
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:14:09 ID:vUvRxycg0
車掌は魔子が憎くて、話の腰を折ったのではない。
既に彼は、アルム石の話は嘘だったと、フレデリックの魂から聞いているからだ。
死したからと言ってフレデリックのことを悪く言うつもりはない。だが、嘘の話を嘘のまま進めるつもりもない。
「また聞いたことの無い言葉が出てきたな……。大方、改札口で金を払って出て来るもんじゃねえんだろ?」
「浮かばれぬ死者には平等に『定期券』が与えられております。
乗車も下車も自由な証が与えられており、好きな時に列車に乗り、好きな場所で降りることが出来るのです。」
車掌は、この世界で新田目と会話した時と、同じことを話した。
「本来ならば亡者にしか渡されることはありませんが、生と死の境界が曖昧なこの世界ならば、貴方も使うことが可能でしょう。」
「車掌さんはコピー機みたく、出すことが出来るのか?」
「いえ、この場で出すことは不可能です。しかし、この世界のどこかにはある。私にはわかります。
朧気ではありますが、幽霊列車の残滓を感じます。それが“定期券”ではないかと考えます。」
ここで、疑わしいと言う者はいなかった。
そもそもこの場があの世とこの世の境でさえ、車掌以外の3人には断言できない。
超常的な現象を目の当たりにし過ぎて、その程度の不確定要素は、自ずと信じるしかない。
「要は一番シンプルなやり方は、この世界のどこかにあるって定期券を見つけることか。」
「ハイ。やはりワタクシとしても、乗客として幽霊列車を使っていただきたい。
あのように申し上げましたが、車掌から見ても、不正乗車などせぬに越したことがありません。」
★
「そして気が付けば、目の前にあったのはデスノ・ゲエムの顔だった。」
「大体わかった。自分たちは殺し合いを、あの世とこの世の境とかいうよく分からん世界で開きたいから、お前の知識を貸してくれ、協力してくれって話だろ?」
「話が早くて助かる。彼らに私の魔法の研究内容を教え、その後はずっとこの場に封印されていた。」
続いて老人の話は、彼の死後(というのは聊か不適切かもしれないが)に移った。
とは言っても、それからずっとこの場所に思念として監禁されており、ここより他の場所に行くことは出来なかったらしいが。
「参加者のことは、その時に全てでは無いが知っている。その中には君も含めてだ。
前置きが長くなったが、君がどんな人間か知っての上で、頼みがある。」
「一応、聞いておくよ。」
この男は、自分が殺し合いに乗っていることを知っているのか。
知っている上で聞いているのか、それとも自分を善良な人間だと勘違いして聞いているのかどうかは、少しばかり気になった。
「まずはデンク カヒという者と接触してほしい。彼は放送では呼ばれていないから、死んでいない。そうだと期待したい。」
ここで不二はしまったな、と思った。
彼は名簿も見ておらず、出会った相手の名前もトレイシー以外は知らない。
そんなカタカナなのか漢字なのか、口頭で言われても分からない相手のことをどう聞こうか悩んだ。
「その参加者を選んだ理由は?何者なんだそいつは?」
「彼は“幽霊列車”の車掌だ。」
「幽霊列車?」
まさかこのタイミングでそんな言葉を聞くとは思っておらず、オウム返しをしてしまう。
不二もテレビぐらいは見るし、食堂で食事を待っている間、そこに置いてある雑誌を読んだりする。
そこで何度か幽霊列車の話は聞いたことがあるが、それが何だと言うのだ。
幽霊列車など、命が短い者が考えた、よくある与太話に過ぎないと思っていた。
都市伝説の項目には、不死身の人間の話もあったが、『それは自分のこと知ってるわけじゃねーだろ』と、一蹴した覚えもある。
270
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不快
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:14:30 ID:vUvRxycg0
「ここで一度、話をあの世とこの世の境に戻す。幽霊文字と言うのは知っているか?」
「一応は聞いたことはある。だが、それとこの世界が、何の関係があるんだ?」
「何らかの原因であの世とこの世の境に追いやられた存在は、生者から一切認識されぬことになる。
だが偶然なのか必然なのか、それさえも分からぬ形で、人の世に現れたりする。幽霊文字はその代表例だ。」
「幽霊文字で名前を作られて、幽霊列車の車掌もやっているから、この世界と深く関わっていると?」
ここで不二は思い出した。
ショッピングモールで戦った男2人のうち、1人は車掌のような恰好をしていたなと。
「その通り。この世界と生者の世界の橋を作れる彼の力ならば、この世界からの脱出も可能なはずだ。」
老人はそれで終わりではなく、別の者の話を始めた。
「もう一人、接触してほしい者がいる。生前の私を討った者だ。名はハインリヒ・フォン・ハッペという。」
「復讐代行でもやってくれと言うのか?」
「逆だ。ハインリヒとは協力関係を築いてほしい。
怪物となった私にとどめを刺してくれた彼ならば、奴らの計画も壊せるはずだ。」
不二は黙って目を細めた。
ああしろこうしろと言われるのは別に嫌いではないが、今一つ信頼するに欠ける相手なのは、変わりはない。
奴らの計画と言うのは、デスノの殺し合いのこととは伝わったが、自分はその殺し合いに乗っている以上、それを壊すのもイマイチ乗り気がしない。
それに、もしそのハインリヒとやらに、自分が殺し合いに乗ったことが伝わっていれば。
彼は、自分をかつての老人を殺したように、殺そうとするのではないか。
無論、彼としても殺されるつもりは無い。それはそうとして、協力関係など築けるのは土台無理だろう。
「最初に君に会った時、思念となった私は、何も出来ぬと話した。だがそれには例外があった。
残された魔力を使い、先に話したハインリヒに、メッセージと魔法の槍を送った。」
「…何が出来るか出来ないかは置いておいて、なぜハインリヒという人間ピンポイントで渡せたんだ?」
「あの殺し合いの会場には、1つだけ私の思念が伝わりやすい場所があった。
誰がいるのかは分からなかったが、自分の知っている魔力を、朧げだが感知できた。」
ノーゴルド13世が言っている場所とは、殺し合い会場の【E-6】の地下。
会場の他の場所には、彼の力を転送することは出来ないが、何故かあの場所だけは出来た。
そして、人の気配を感知しやすい所だった。
加えて、彼がレガリア・聖槍と言葉を送る少し前。ハインリヒが首輪を解除しようと、強力な魔法を使った。
その強力な魔法を、知っている者が放ったそれだと、かつて自分を討ったものだと感知できたため、そこにいたのがハインリヒだと理解できた。
ここからはノーゴルド13世も知らぬことだが、一つ不慮の事態があった。
別の魔力を持った者が近くにいたということだ。
その名は蕗田芽映。彼女は魔法の世界とは無縁なクマだった。
しかし、トレイシー・J・コンウェイという魔導士から、人間になる魔法を受け、
さらにこの世界で、魔力を秘めた異界の魚を食い。彼女自身に、魔力が孕んであったのだ。
結果として、思念体だったのもあり、コントロールが乱れた彼は、誤ってフキに武器と言葉を送ってしまった。
271
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不快
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:14:48 ID:vUvRxycg0
「なるほど。要はデンクって奴と仲良くなって殺し合いの世界から脱出し、ハインリヒって奴の力でデスノ達をやっつければ万々歳だと。」
「間違いない。ここで君に出会えたのも何かの縁だ、私に協力してほしい。」
「………じゃあ、僕からもいくつかの質問に答えて欲しい。」
なおも老人を疑わしいと思った不二は、いくつか質問をすることにした。
「まずは何であんたは、僕やそのハインリヒって奴に味方をしようとする?
生前の話からして、自分を殺したハインリヒに復讐しようってのもあるだろ?」
「私が魔法の研究を進める理由として、未来を守るためと話したな?」
「ああ。」
「……この殺し合いに、魔導士に見せてもらった未来と同じ、怪物の姿があったからだ。
あの計画を始めたのも、元はと言えば奴から未来を守るためだ。」
その話を聞いても、不二は表情を変えることは無かった。
ただ、明日の天気を聞いた時のようなものと、何ら変わりのない表情を浮かべていた。
これもまた不二にもノーゴルド王にも知らぬことだが、この殺し合いが始まって最初の頃。ミカが播岡くるるに、デスノは“アクマ”とは異なると話した。
それは“テンシ”の何らかの間違いか。それとも、他の誰かが“アクマ”だということか。
「人のように二本足で立ちながら、人の出す気配では無い者がいた。私は確信した。奴こそが未来を滅ぼしにかかると。」
「分かった。もう一つ聞きたい。あんたは参加者のことを知っていると言ったな。
僕が何処で生まれて、何処から来たのか。なぜ不死身なのかは教えてくれるか?」
不二は別にトレイシーが好きで、彼の言うことを聞いた訳ではない。
自分の出生の理由を教えてくれるのなら、それがトレイシーであっても、目の前の老人であっても構わない。
納得できる答えが聞きたいのであって、誰が教えてくれるかは問題ではない。
そして彼は最初、自分ですら忘れかけていた、1000年以上前の妻の顔を見せてきた。
272
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不快
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:15:28 ID:vUvRxycg0
「悪いが…知らぬ。君が不死と言うことは知っているし、君のかつての妻のことや、星神の名の場所に監禁されていたまでデータにあった。
だが、いつから生きていたのか、そこまでは分からん。」
「本当に、そうなのか?」
不二はその時、少しばかり嘲るような色の籠った声で、念を押した。
「ああ。」
★
「その“定期券”って奴以外に、もう一つ考えがあるんだ。血清療法って知ってるだろ?」
「ハイ。ワタクシやサンドラ様には恐らく必要ないですが。」
「俺が考えたことなんだが、不死者の血液を抜いて、俺たちに注射すれば良いんじゃねえのか?
流石に不死身になることは無いと思うが、幽霊列車に乗ることぐらいは出来ると思う。」
標的が海の向こうにいる場合、言語の壁以外にも危惧すべきは、病気のことだ。
マラリアを始め、罹れば殺しに向かうはずが、自分が死にかねない病気などはざらにある。
その時は闇医者や偽装の保険証に頼って、予防接種を打ってもらった。
加崎魔子に吸血鬼の血を輸血し、彼女が生き延びたように、不死者の血を輸血することは出来るのではないか。
「いや…ちょっと待て…下僕3号の死体を、そんな風には……。」
「そっちじゃねえ。実は吸血鬼の嬢ちゃんが来る少し前、俺と車掌さんはある不死身の男と戦ったんだ。
当のソイツからは逃げられちまったが、不死身の人間の新鮮な血液を注射すれば、何とか幽霊列車に無賃乗車出来るんじゃないかと思うんだ。」
「……お言葉ですが、不死者になれたからと言って、幽霊列車で魂を削られぬかどうかは、ワタクシには不明です。」
車掌としては、そもそも『乗れないのではないか』という考えを抱いていた。
不死者など、幽霊列車にとっては最も無縁の存在。
生者は魂をすり減らすことを覚悟の上で、乗ることが出来る。
一方で、不死者はそもそも、幽霊列車に乗る必要が無い存在として、何等かの力で乗車拒否されるのではないかと考えた。
「そ、それにだ!注射器はどうするんだ?病院はもう閉鎖されてしまったし、血液型とかどうするんだ?
仮に下僕3号の血じゃなくても、不死者にだって血液型はあると思うぞ?」
「…いい考えだと思ったんだが、やっぱり“定期券”を探すのが無難かねえ…」
「悪い考えとは思わないけど、それは“定期券”が見つからなかった時の代替案に留めておきたいわね。」
「もう一つ残っている問題として、首輪の解除も重要です。」
車掌がもう一つ、残されている課題のことを話す。
「もし脱出できたとしても、この首輪を取れない限り、無事に帰れる保証はありません。」
「その…あの世とこの世の境って所にある素材じゃねえのか?」
「いえ、素材はただの合金にしか思えません。ですが、何か不可思議な力が籠っています。」
「不可思議な力?」
「ええ。まずは不死身の方よりも、それに詳しい者を探すことも重要でしょう。」
273
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不快
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:15:46 ID:vUvRxycg0
とりあえず4人は、定期券を探すことにした。
体力が回復すれば、ここを出て、どこかに向かうことにする。
それと並行して、血液生命体や、不死身男の捜索も行う。
そのような道筋を立てることにした。
【E–4 ショッピングモール 夜中】
【アレクサンドラ・ヴォロンツォヴァ】
[状態]: 全身に打撲と創傷(回復中) 内臓損傷(小) 疲労(小) 血液生命体に対する殺意を超えた殺意(極大) 若い姿
[装備]:日傘
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・行動]
基本方針:殺し合いから生還する。
1:この蛆虫は必ず殺す。もう私だけの話じゃ無い
2:車掌さん達には申し訳ないけれど、ゲオルギウは無くなってしまったわ
3:あの時無くした鉱石は、この世界には無いものなのかしら?
4:アクマ兵装を手に入れ、装飾となっている宝石を調べたい
【加崎魔子】
[状態]:精神的疲労(大)魔力消費(中) 決意 蛆虫(スヒョン)への怒り(極大) 吸血鬼化
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式 ランダム支給品0〜2(武器関係は無し) 滝脇祥真のメガネ
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを打破し、デスノを倒す
1:生きる。あの人達の為にも
2:まずは我が友(アンゴルモア)を探す
3:あの蛆虫(スヒョン)はいつか斃す
4:下僕2号のアイデアは悪いとは思わないんだがな…
【備考】
※名簿を確認済みです
※薬物の後遺症は吸血鬼化に伴い、回復しつつあります
※吸血鬼化しました。魔力と身体能力が上昇し、魔力体力の回復率が上昇しました。
【神】
[状態]:疲労(大) 腹部に打撲(中)
[装備]:ハンドガン弾丸無し) ドグラ・マグラ・スカーレット・コート 星神乃太刀
[道具]:基本支給品一式 ルイーゼのランダム支給品0〜1 ブーケ 護符×3
[思考・行動]
基本方針:殺し合いの打破。ただし危険人物は殺す
1.帰還し、一服する
2.殺し合いに乗った者を倒す。
3.あの不死身野郎(宮廻不二)は次こそ会ったら殺す
4.嬢ちゃん(加崎魔子)お抱えのヒットマンになってやるさ
5. この寄生虫(スヒョン)を殺す
6.どうすれば幽霊列車に乗れる?
7.不死者の血液を使うって考えは、悪いとは思わなかったんだがな…
【壥挧 彁暃】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品0〜2 フレデリック・ファルマン、滝脇祥真の魂
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを打破する。
1:神と共に、殺し合いに乗った者を撃退する。
2:なぜ彼女(四苦八苦)だけ、魂が見つからない?
3:この世界が亡国レガリアと関わって来るのなら、是非とも関係を突き止めたい
4:播岡くるるの魂は、何処へ行った?
5:血液生命体は私の在り方と完全に相いれません。必ず斃します
6:何故…彼等の魂は消えないのか。
7:この場から出るには、自分の力が必要なのだろうか。
274
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不快
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:16:06 ID:vUvRxycg0
「はっきり言うよ。お断りだ。」
「……!?な……なぜだ!?」
「あんたは言うことを聞くに値する人間じゃない。僕はそう思ったからだ。」
それは言葉よりも表情が語っていた。
老人の生前の話を聞いた時は、幾分か驚愕や怒りを表情に孕んでいた。
だが、それから先は、不二は無表情を通していた。
「恐らくだけど、僕はそのデンクと言う人と敵対している。そんな相手と、今更仲良くなれと?」
その言葉で、老人の白髭に覆われた表情が引き攣る。
この男が、殺し合いに乗っていたとは、想像もしていなかった。表情がそう語っていた。
「僕が殺し合いに乗っていたかどうかも、知らなかったのか?」
「……いや、たとえ敵対していたとしても……」
「それに僕は、叶えたい願いがあるんだ。あんたはそれを叶えてくれるというのか?」
不二は最低限の倫理観は持ち合わせているが、それをこの老人に使うつもりは無い。
自分の出生を知っているのかと言われて、そこまでは知らないと言われた時点で、彼への機体は薄れていた。
老人が自分の出生を知っており、教えてくれると言うのなら、まだ考えてもよかったが、彼は知らないと言った。
極論を言ってしまえば、出生の秘密を教えてくれるなら老人であれトレイシーであれ、デスノであれ構わない。
「それに、あんたは僕が最初の質問をしたとき、『あの計画を始めたのも、元はと言えば奴から未来を守るためだ。』って言ったよな?
不死身の人間を作りたかった理由は妻を蘇らせたかったからじゃなかったのか?」
不二は老人が生前にやったことは、恐ろしいことだと思うが、それでも理解はできる。
長い年月を通して、いつの世でも不死者でない人間の中に、不老不死を望む者がいたからだ。
それはただの無い物ねだりであって全く共感はできないが、理解は出来る。
死した伴侶に再び会いたいと言う気持ちも分からなくはないし、妻子を捨てた不二としては、そこまで想える相手は羨ましくも思える。
だが、老人はその目的さえも忘れてしまっていた。
「せめてあの時、死んだ妻のためにも協力してくれ、と言ったら考えたかもしれないのにね。
話を聞く限り、あんたは場の状況に合わせて意見を変えているようにしか思えない。」
275
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不快
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:16:28 ID:vUvRxycg0
まあ、コインの裏表だけでやることを決めてる自分も、そこまで言えた義理じゃないけどね
心の中で、そんな言葉を付けたす。
「ま、待ってくれ……まだ教えたいことがある……」
「聞きたいことは、どうすればここから出られるのかと言うことだけだよ。
ここに隠れていれば殺し合いが勝手に進んで、戦う回数も減るからそれもそれで良さそうだけどね。」
「最後に一つだけ聞いてくれ……首輪にかけられている力は■■■■■■■■■■■!!」
言葉の後半は良く聞こえなかった。
だが、不二は踵を返し、出口を探すことにした。
【??? 】
【宮廻不二】
[状態]:疲労(中)
[装備]:アクマ兵装『グレー・ジャック』
[道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム×1 玲央が通り魔として使ったナイフ
[思考・行動]
基本方針:裏が出たので優勝を目指す。
1:誰だ?この人?というかここはどこだ?
2:僕が不老不死の理由…
3:あの人(神)のおかげで、少しこれ(グレー・ジャック)の使い方が分かってきたかな?
4:願い、叶うといいなぁ。
5:名簿は…まあ見なくてもいいや。
6:放送か…とは言っても、やることは変わらないけどな
7:首輪の正体は■■■■■■■■■■
【備考】
※精神や魂など肉体を殺さずとも殺せる支給品があると考えてます。
※グレー・ジャックによって攻撃や脚力が常人を越えてます。ただし、体力の消耗量も増えています。
※名簿はまだ見てないのでもしかしたら知り合いがいるかもしれません
※残念ですが、もうノーゴルド13世からの話を聞くことは出来ませんよ。
「!?」
いつの間にか、そこには新たな人物の姿があった。
所々に真っ赤な装飾の付いた、白塗りの仮面を着けている。
不二にとっては、二度目の対面だが、その姿ははっきりと印象に残っていた。
「あなたが断ってくれて、助かりましたよ。ワタクシとしても、首輪を爆破する手間が省けて何より。」
「御託は良いから、早く元の場所に戻してほしいな。」
「ええ、ええ。分かってますとも!ワタクシ、殺し合いに素直に乗ってくれる方には優しいんですよ!!」
「待ってくれ!まだ……話が………!!!」
有無を言わさずデスノが指を鳴らすと、老人の姿は消えた。
もう一つ指を鳴らすと、宮廻不二の姿も消えた。
■
「何だか、僕だけ色んな所に飛ばされてるような気がするなあ。」
長い時を生きる彼でさえ、空間移動と言うものは経験したことが無かった。
それなのにここへ来てから、3回も経験している。
最初は殺し合いの開幕と共に、次はトレイシーに、そしてまたしてもデスノに飛ばされた。
276
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不快
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:17:10 ID:vUvRxycg0
辺りは真っ暗で、先ほどと同じ場所のように見える。だが、空気が先ほどより澄んでいた。
そのため、すぐに違う場所だと言うことに気付いた。
ここはどこかの地下で、加えて夜も更けたので、周囲が見えにくかったらしい。
目を凝らしてみれば、穴の開いた天井から、月光がわずかに差し込んでいる。
どことなく幻想的な風景に見えた。
「ここが、あの老人が言っていた、魔法を届けやすかった場所…なのかな。」
デスノがここに飛ばした。老人もテレパシーと道具をここにいた誰かに伝えた。
さしずめ、ここは他の場所に比べて、主催陣営と関わりの深い場所だと言うことだろう。
「まあ、どうでもいいことか。」
彼の道筋は、参加者を全員殺して、優勝することだ。
この世界からの脱出方法など、人を殺さずに生き残ろうとする者が考えればよい。
トレイシーからは出生の秘密を聞いた上で殺せばいい。
(ただ、ハインリヒという奴は…おそらく手ごわい敵になるだろうな。)
老人が発明しようとした魔法が、どこまで自分に近づけたのかは不明だ。
だが、不死者に近づいた者すら殺すことが出来た人間ならば、自分でさえも殺せるかもしれない。
老人から聞いた情報はどれも大した話では無かった。せめて、首輪さえ教えてくれれば、デスノが掌を返した時に役に立ったかもしれない。
あえて言うなら、ハインリヒと言う人物が特に強いことが判明したぐらいだ。
「えーと…地上は何処なんだろうか……」
一歩踏み出すと、足が何かを蹴った感触を覚えた。
足元を調べてみると、着替えが一式置いてあった。
そういや自分は、水道管を潜ったせいで、ずぶ濡れになっていたと今更ながら気づく。
「グレー・ジャックは特に異常は無いみたいだな……。」
濡れた服を脱ぎ捨て、デスノが周到に用意してくれた服に着替える。
少々時間を取られたが、まあそこまで問題ないかと、歩き始めた。
幽霊列車の車掌と、不死の男。
あの世とこの世の壁を越えて走る列車と、魂を守ることの出来る血液を持つ男。
ともすれば何か変化を起こす可能性を秘めていた。
だが、惜しむらくはどちらも、相手を不必要だとしていたことだ。
何度状況が変わっても、絶望的にかみ合わないのは、どの世界でも同じことなのだろう。
【E-6 地下 夜中】
【宮廻不二】
[状態]:疲労(中)
[装備]:アクマ兵装『グレー・ジャック』
[道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム×1 玲央が通り魔として使ったナイフ
[思考・行動]
基本方針:裏が出たので優勝を目指す。
1:時間を無駄にしただけで、あの老人は大した奴でも無かったな。
2:僕が不老不死の理由…
3:あの人(神)のおかげで、少しこれ(グレー・ジャック)の使い方が分かってきたかな?
4:願い、叶うといいなぁ。
5:名簿は…まあ見なくてもいいや。
6:あの車掌の格好の人…そんな役割を持ってたんだ…
7:ハインリヒか…誰かは分からないけど、手ごわい敵になりそうだな。
【備考】
※精神や魂など肉体を殺さずとも殺せる支給品があると考えてます。
※グレー・ジャックによって攻撃や脚力が常人を越えてます。ただし、体力の消耗量も増えています。
※名簿はまだ見てないのでもしかしたら知り合いがいるかもしれません
277
:
どうか永遠に、その日が来ないように 不快
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/03(土) 20:17:20 ID:vUvRxycg0
投下終了です
278
:
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/07(水) 23:09:24 ID:5XSxOzU20
キム・スヒョン予約します
279
:
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/10(土) 00:01:48 ID:LE9AjNRc0
投下します
280
:
藁にも縋る
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/10(土) 00:02:15 ID:LE9AjNRc0
ショッピングモールでの戦いを終えたキム・スヒョンは、まっすぐ南西に向かっていた。
そのスピードは、つむじ風を思わせるほどに早かった。
常人の視点からだと、現れたと思いきや、その場には鉄臭さしか残らないほどだ。
彼女にとって、ただ単にサンドラ達から逃げる以外の問題があった。
「くそ……参加者……この際死体でもいい!!血…血……血!!鉄分!塩分!タンパク質!!」
彼女がただ事ではないのは、思考が読めなくても、姿から伝わってくる。
ボロボロの姿はどうにか戻った。
だが元のキム・スヒョンに比べて、身長がとても低いのだ。
元の彼女を知っているなら、一目で分かるほど縦も横も縮んでいる。
頭身は変わらないのに、身長そのものが変わっているのは、何とも奇妙に見えた。
フィクションで、ス〇ールライトもリ〇ルフィートも無しに、キャラがなぜか縮むのは、まれに良くある話だ。
例えば、初登場時はコマに収まらないぐらい巨大だったキャラクターが、主人公と戦う時は少し大きいぐらいになっていたり。
例えば、初登場時にはキング・コングもかくやと言うほど巨大なゴリラが、話の転換と共に普通サイズのゴリラになったり。
ああそうそう。背が低いことが特徴の人物にやられた敵キャラが、後日登場した際に理由もなく縮んでいたりしたこともあったな。
だがスヒョンが小さくなっていた理由は、作者の人理由とか考えてないと思うよ、と真顔で言うようなものではない。
ただ単に、激しい戦いの末に、血を大量に失ってしまったからだ。
液体にも固体にもなれる血液生命体である以上、刺されてもマシンガンで蜂の巣にされても、死ぬことは無い。
だが、血をすべて失えば、当然死に至る。
(サンドラちゃんの血のおかげで、身体は問題なく動かすことは出来る!!マヌケが抵抗してきても戦って殺せばいい!!けど、量が問題なんだ!!)
いくら栄養満点の食事でも、小さじ一杯では栄養補給には至らない。
今のスヒョンを苛んでいるのはそれだ。
血液生命体がエンジンなら、血液はガソリン。生命活動を維持できる時間は、その量に比例する。
サンドラの血液は、車体を強化することが出来ても、満足な量が残って無い以上はガソリンにはなれないのだ。
「クソ…クソ……!!こんな所で誰にも知られないまま、死んでたまるかよボケッ!!」
誰も聞いてくれない悪態をつく。
彼女は、400年以上無傷で生きていたワケではない。
魔法使い、怪物ハンター、渡りの民の戦士、最近ならば異常殲滅機関の隊員。
人間を面白おかしく殺していく傍らで、そう言った奴らに追い詰められて、幾度となく死に瀕した。
そうなっても悪知恵を利かして、全力で逃げてきた。
(なんだアレ…森なのか?あんなものは無かったはずだが…地図ぐらいちゃんと書いとけよスッタコッ!!)
281
:
藁にも縋る
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/10(土) 00:02:32 ID:LE9AjNRc0
スヒョンの遠目に映ったのは、ハインリヒと笑止千万が戦った場所の跡地だった。
その場所は蕗田芽映が放った力で、巨大なフキの森林と化していた。
スヒョンにとって、あのような場所は近寄りたくなかった。
400年以上を生きて、様々な世界を回った彼女は知っている。自然の猛威と言うのは、人間の敵より恐ろしくなると。
ゴールド・ラッシュ期のアメリカで、馬鹿どもが際限なく掘ったせいで落盤に飲み込まれて、九死に一生を得たことは覚えている。腹いせに逃げ延びた採掘者を食い散らかしたことまで。
大雨からの大洪水で体を流され、水死体を食らって生きのびたこともあった。
ドイツの森林地帯で迷った時なんて最悪だった。動物さえ見つからず、延々と同じ場所を歩き回って、餓死する一歩手前まで行ったことがある。
ノコノコ近づいてきたマヌケな木こりを食い殺せたため、事なきを得たのだが。
何にせよ、彼女は自然が猛威を振るう場所は、あまり好きではないのだ。
迂闊に入り込めば、あの時のように迷って、今度こそ餓死しかねない。そんな恐れがあった。
もし入る選択肢を取れば、参加者を3人も見つけることが出来たのだが、それは結果論でしかない。
人間から漂ってくる血の匂いも、巨大蕗の青臭さにかき消されてしまっていた。
「ここ(警察署)にも誰もいない……なめてんじゃねえぞド畜生!!
こういう建物には人が集まって、カレーとか作って食べてるんじゃねえのかよ!!」
市街地の中で一際大きく佇んでいた建物の中にも、誰もおらずに落胆した。
中をくまなく見て回れば、参加者がどこにいるのか分かったのだが、人の匂いがしないと分かると、すぐに出てしまった。
再び、夜道を凄まじい速さで疾走する。しかしその表情は、言いようのない焦りが浮かんでいた。
折角吸血鬼の魔の手から逃れられたと言うのに、こんなバカの世界チャンピオンみたいな死に方で死ぬのは真っ平御免だった。
(そもそも、この手の話で餓死した奴っているのか?死因 餓死 殺害者 不明って書かれるのは嫌だぞ?
いや、大体そんな物に名前を載せられるのは勘弁してほしいことだが……)
282
:
藁にも縋る
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/10(土) 00:03:08 ID:LE9AjNRc0
またしても、スヒョンの背は縮んだ。視線の高さの違いから、それは彼女自身も分かった。
何だかキャ〇テン翼の登場人物から、星の〇―ビィの登場人物ぐらいの変わりようだ。
頭身こそは成人女性の者とは変わらないから、実際に見ると縮尺が狂っていると錯覚してしまいそうだ。
★
遊園地は、沈みかけの船を誘う港のように、煌々と光を放っていた。
雪見儀一と“テンシ”、そして桝谷朱李が戦いを繰り広げてから大分置き去りになっていた場所だが、その時と大分雰囲気は違っていた。
誰が灯りを付けたのか分からないが、朝とは違う顔をした遊園地が、彼女を迎え入れた。
(まさか…ここにもいない訳じゃないよな?それはシャレにならないぞ……。)
ジェットコースター、観覧車、コーヒーカップ、絶叫マシーン、びっくりハウス、イベントホール。
色とりどりのライトを纏ったアトラクションが、スヒョンを迎え入れる。
いくつかは朱李と儀一、そして“テンシ”の三つ巴の戦いで崩壊していたが、それでもアミューズメント施設特有の眩さを保っていた。
だが、客ですらないスヒョンは、そのどれにも目が行かなかった。
彼女はただひたすらに、血のみを求めているのだ。
(うあああああ!!!血だ!!人の血だ!!)
入ってしばらくすると、彼女の嗅覚が目当てのものをとらえた。
砂漠でオアシスを見つけた旅人のように、目を血走らせ、大口を開けてその場所へ走って行く。
背丈は大分縮んでしまったが、その勢いは、高速道路を疾走する高級車にも匹敵する。
あまりのスピードに、道中で【対アクマ用殲滅兵器のプロトタイプ展示中!!!】の掲示板が壊れたが、そんなことは彼女にとってはどうでもいい。
「ここかぁ!!」
イベントホールの扉を突き破る。扉を開ける動作も、一刻を争う彼女にとっては煩わしい行為だ。
だだっ広いエントランスが、スヒョンを迎え入れた。
だが、そこにはホールの大きさに似合ったものは既に無かった。
ここにあったはずの“テンシ”は既に持ち去られている。
残っていたのは身体を真っ二つにされた、人間の死体が一つ。ホールの真ん中で、血だまりに沈んでいた。
「助かった!いつ死んだバカなのかは知らないが……」
それが罠なのかどうか、そんなことを考える余裕はなかった。
右手を鋭利な触手に変え、フォークのような形にして、哀れな遺体を一突き。
血液生命体の食事の仕方は独特だ。ぱくんと口腔接種するのではなく、接触した右手から血液をポンプのようにギュッコンギュッコン吸い取る。
本来なら人の食事もマネ出来るし、病院で四苦八苦の血を摂った時のように様々な食べ方を実践してみたが、今はそんな余裕は無かった。
283
:
藁にも縋る
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/10(土) 00:03:22 ID:LE9AjNRc0
やがて、スヒョンの背丈は、本物の彼女と同じぐらいに戻って行く。
どこぞの赤帽子の配管工が、キノコを食べた時のような変わり具合だ。
「………足りねえんだよクソッタレ!!」
しかし、彼女の口から出たのは悪態。血が滾って、最高にハイって奴にはなれなかった。
スヒョンが食らった死体の名前は、碓井盛命。
人体の血液の量は、体重の8%に当たると言う。
盛命の体重は正確には不明だが、厚生労働省の調査によると、14歳の男子の平均体重が51キロだという。
盛命は同年代の男子に比べ、随分華奢な見た目なので、それより40キロ前後と見て良いだろう。
従って彼の血液の総量は3リットルはあり、スヒョンとしては多すぎるぐらいだ。
「全身真っ二つって、どんなバカみてえな死に方してんだよ!!
死ぬのはいい!!ゆっくり嬲り殺し、略してゆ嬲に出来ないのは残念だけど!!もっと血を残して死ね!!」
ただし、それは盛命が生きていた場合。
彼は“テンシ”のレーザーで両断された際に、多くの血を失っていた。
加えて、時間の経過も、血を少なくさせた要因になっていた。
彼が死んだのは、第一放送前。彼の死から半日近く経っている現在、出血した血の多くが、乾いてしまっている。
(ダメだ…もっと血をよこせ……)
当面の餓死は免れたが、会場の広さからして、殺し合いが終わるまではまだまだかかりそうだ。
二度目の放送の時点で、残りの参加者は20人。それから何人か死んだかもしれないが、それまでに新たな補給が無ければ、とても終わりまで持たない。
激しい怒りを露わにし、地団太を踏むスヒョン。
盛命の血は、鮮度が落ちていたとはいえ、まずいものではなかった。
だが、量が少ないのが問題だった。オードブルのみを食わされて、メインを出してもらえなかった怒りは、推して知るべしである。
「………!?」
突然、スヒョンの身体を、えも言われぬ違和感が襲った。
どのような感覚か説明しろと言われれば、どう説明するか困るような感覚だ。
全く感じたことの無いはずの気分なのに、どこか懐かしさを覚える。
相反する2つの感情が、スヒョンの中で渦巻いているような気持になった。
284
:
藁にも縋る
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/10(土) 00:03:38 ID:LE9AjNRc0
(おい…記憶が映るほど血を飲んだつもりは無いぞ…?むしろもう少し欲しいぐらいだが…)
半日前この場にいたエイドリアンを除いて、誰も知らない。
もちろん、スヒョンが知る由もない。
この場にいた“テンシ”が、碓井盛命から“アクマ”と関わる何かを感知し、彼に攻撃したことを。
――異質なエネルギーを感知。解析……解析不能。暫定的に“アクマ”と繋がるものと判断。排除
元々碓井盛命と言う少年は、戦いはおろか、外を出歩くことさえ難しい少年だった。
しかし何の技術かは不明だが、殺し合いに参加する際に、ナイフで斬りかかることが出来るぐらいにはなった。
当の彼は、その天啓を生かすどころか、それが原因となって死んでしまった。
だが、もしその不可解な“力”が残っていれば?不可解な“力”を承った彼を、何者かが捕食すれば?
“テンシ”が“アクマ”の力だと判別した力の正体は、未だ何かは不明だ。
(………何だ?これは……!?)
突如、スヒョンの脳内に溢れ出した。存在しないはずの記憶。
スヒョンの視界に、靄がかかったような何かが映る。
そこに映っていたのは、洋風の造りの家の中と、その中心にある巨大な大釜だった。
誰か、その窯の隣で、杖を持っていた。
視界が霞んでおり、その“誰か”が誰なのかは分からない。
辛うじて分かるのが、
杖が光ると、大釜の中の真っ赤な液体が、ボコボコと波打った。
そこまで見ると、視界は元の、盛命の死体しかないホールに戻った。
「今のは何だったんだ?もしかして、オレが、いや、僕が、間違えた。私が生まれた場所と言うことなのか?」
焦点の合わない瞳で、うわ言のように呟く。
キム・スヒョンは、否、彼が名前を持ってすらいない血液生命体は、生まれを知らない。
自分が428年前、禁術で血液から作られたことだけは知っているが、誰に作られたのか、なぜ作られたのかは全く知らない。
気が付けば彼女はそこにいて、好きなように殺し、気づけば他者がストイックに金と時間と労力をかけて積み上げてきたものをグッチャグチャに潰すのが好きなことに気付いた。
285
:
藁にも縋る
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/10(土) 00:03:58 ID:LE9AjNRc0
「なめるなっっ!!!汚らしいビチクソがっっっっ!!!!!」
恐ろしい何かを振り払うかのように、けたたましい怒声を発する。
元の長さに戻った腕をハンマーのようにして、地面に叩きつける。
ビシビシと音を立てて、蜘蛛の巣のような亀裂が、ホールの床に走った。
「え?こ……これは……まさか……」
サンドラから奪った力を、こんなしょうもないことで使うべきじゃなかった、と思うのもつかの間。
ガラガラガラと、ホールの床が崩れていく。
スヒョンがホールから脱出する前に、崩壊の方が早かった。
「ふざけるなよボケがああああああああああああ!!!!」
盛命の血を食らったことで見た幻覚のせいで、逃げるのに遅れてしまった。
そのまま真っ逆さまに、ホールの地下に落ちていく。
★
べちゃりと、人間が落下した時とは違う音が響いた。
ショッピングモールでも見せたことだが、血液生命体ならば、高所から落下しても死ぬことは無い。
精々身体を再構成するのにひと手間かかるぐらいだ。
ただ、上に登るのがこの上なく面倒くさい。空腹に憂いている今は猶更だ。
「ああクソ…もうこんな話飛ばせ!次の95話でも読んでろ!!」
お前は読者になんちゅうことを言ってるんだ、そもそもこれが今の所最新話だよという話はさておき、スヒョンは自分が今どこにいるかキョロキョロと見渡す。
このイベントホールには地下があり、何の目的で使われるか知らないが、ここはその地下通路だということは分かった。
(上には登れるか。もしこのまま出られずに餓死したら、何だよこのクソ展開って言葉でスレを埋めてやろうと思ったが、それはせずに済みそうだ…。)
ひとまず餓死は先送りに出来た。
しかし、空腹以上にどことなく煮え切らない気持ちが、スヒョンの心を占めていた。
ストレス発散に、ついでにおかわりは無いのかと、ホールの地下を探す。
「ん?何か光ってるな……。」
286
:
藁にも縋る
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/10(土) 00:04:23 ID:LE9AjNRc0
その光は、イベントホールの蛍光灯とは明らかに違う。
ルビーを彷彿とさせる真っ赤な光が、誘蛾灯のようにスヒョンを誘う。
まさかこれも、1つの幻覚か?と思いながら、光の方向に歩いて行く。
その先にあったのは、イベントホールの舞台だった。
誰もいないが、着ぐるみダンスを始めとするショーに適しているだろう。
しかし、そこには役者もダンサーも、誰一人いない。
代わりに子供の頭ぐらいある宝玉が、舞台に乗せられた展示台の上で、輝きを放っていた。
展示台には、その宝珠について説明がされていた。
『レガリア・宝珠』
魔獣を封じ込めた召喚石。
鉱石・レガリアは極めて魔法の飽和度が高い。
これを炎魔術や水魔術だけでなく、召喚魔法にも応用できないかという発想のもとに作られた
掲げると封印した魔獣を、1度だけ呼び出すことが出来る。
舞台の上に飛び乗り、宝珠を手に取る。
不思議と、スヒョンはそれが本物だということが分かった。
盛命の血液を食らった影響なのか分からないが、それが確かに使うことが出来ると分かった。
その上で、宝珠をまじまじと見つめる。よく見れば、中に黒い鱗と牙を持った、怪獣の姿があった。
「うーん、これを使ったとしても、ロリババアやガラクタやバカに敵うかなあ……真央ちゃんや眼鏡(新田目)、黒スーツ(神)なら普通になぶり殺しに出来るし……」
この殺し合いは、強カードの1つや2つで制することが出来るほど容易ではない。
それはスヒョン自身が良く知っていることだ。
自分は参加者をゆっくり嬲って殺すことが目的であって、皆殺しが目的ではない。
そのことを加味しても、未だ一人も殺せていない時点で、それはよく分かっている。
加えて1回しか使えない以上、意外と使える場所が限られていることは伝わってきた。
(いや、待てよ?誰も攻撃のために使えとは言って無いだろう?
この怪物を、巨大な血液サーバーとして取っておくのはどうだ?)
400年以上生きていると、どの血を飲んでも中々美味いと感じることは出来ない。
本物スヒョンの血は中々の良い味だったが、それまで理想の血を味わうのに10年ほどかかっていた。
だが、あの時飲んだサンドラの血は、そのスヒョンの血以上の至高のご馳走だった。
この怪物の血を飲めばどうなるか、量も質も、素晴らしいものだろう。
287
:
藁にも縋る
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/10(土) 00:04:38 ID:LE9AjNRc0
(けれど、飲み過ぎて優勝した時にこの怪物になっていたら、ちょっと嫌だな…なぶり殺しにしようとしたら、うっかり心臓を潰したりしてしまいそうだし……
彼女の血は自宅に家に保存しているけど、それを飲んでしまったら残ってないしなあ。
とりあえずコイツは保険にしておいて、別の獲物を探しに行くか。)
とりあえず、補給の面でも、戦いの面でも貴重な武器を手に入れた。
この怪物の血がクソマズの可能性もあるし、迂闊に飲み過ぎて本物スヒョンの血が薄まってしまっても困る。
確かに彼女と縁を切ることが出来れば、頭の中に流れる変なセリフや知識も捨てられるはずだ。
だが、そのメリットを考慮しても、彼女の姿は美女である以上、獲物を誘うのに適している。
この姿に拘りを持っているスヒョンは、ひとまず支給品袋に宝珠を入れた。
(ああくそ腹減った。実家の血液サーバーが恋しくなってきたね。
コイツ(本物スヒョン)の作品と違って、私は結構グルメなんだ。デスノの奴や他の参加者も、それをきちんと理解してほしいね。)
どうでもいい話だが、本物スヒョンはあまり食事に興味が無く、それは彼女の作品にも現れていた。
キャラクターの造形は特に定評のある彼女だったが、食事シーンは異様にマズそうだったり、そもそも食事描写が全くなかったりする。
彼女の同人作品では、マッチョな王様が銅板のような見た目のステーキを食っていたりするのだ。
帰りは落ちた穴を使うのではなく、通路の先にある非常階段を使う。
遊園地には死者すらいないのだと分かった以上、もうここには用は無い。
ホールを出ると、疾風の如き速さで走り出した。
【A-7 遊園地 夜中】
【キム・スヒョン】
[状態]:困惑(大) ミーム・汚染(手遅れ) 血液損失(中) 空腹
[装備]:無し
[道具]:フレデリックの支給品の地図 宝珠・レガリア
[思考・行動]
基本方針:優勝して気に入った子達を“持って帰る”
1:なるべく愉しんで殺す
2:面倒な奴は避ける、と言いたかったが、この面倒さは予想してたのと違う!!
3: 魔子ちゃんを嬲り殺して血を貰いたかったなぁ
4: 汀子ちゃんは死んでるだろうなぁ
5: コイツ(グレイシー・ラ・プラット)や汀子ちゃんを利用してサンドラちゃんを殺す……この計画(プラン)は破綻したよ
6: “ミカ”ちゃん(ノエル)は今は殺せそうにないなぁ
7:あのガキ(碓井盛命)の血、不味くはなかったけど量が少ないんだよ!!
8:此奴(本物スヒョン)とは早く縁切りしたい
9: 取り敢えずこの人を不幸にすることにおいては天才的っぽい
10:あのガキ(碓井盛命)……、何を仕込まれてたんだ?薬中の血とは全く違うぞ?
11:宝珠レガリアの怪物を召喚して、その血を食ったらどうなるんだ?怪獣の姿で生還するのは嫌だな……。
※主催者陣営から何らかの措置を施された碓井盛命の血を捕食したことで、何等かの影響が現れました。
288
:
藁にも縋る
◆vV5.jnbCYw
:2025/05/10(土) 00:04:49 ID:LE9AjNRc0
投下終了です
289
:
◆/dxfYHmcSQ
:2025/05/24(土) 21:50:12 ID:pQXHHIDE0
投下します
290
:
ヒトリノ夜
◆/dxfYHmcSQ
:2025/05/24(土) 21:51:38 ID:pQXHHIDE0
博物館で時間を潰した二人は、博物館の側にあった民家を、仮の宿とする事にし、夜明けまで休む事としたのだった。
博物館の側で仮宿を求めたのは、誰かがやってきても、目立つ博物館の方へと注意が向いて、二人のいる民家に気づく可能性が少なくなると踏んだ為だ。
玲央もノエルも、殺し合いに乗っている身ではあるが、同じ家で眠る事に不安は無い。
ノエルは玲央の語ったハインリヒを警戒し、玲央はノエルの語ったキム・スヒョンに備えなければならないからだ。
玲央がレガリアの脳力を駆使して繰り出した多彩な攻撃を、初見で悉く凌ぎ切り、あまつさえ玲央を追い払ったという雷の剣士。
特異体質を駆使したノエルの動きにも対応し、雷による的確な反撃を行うだろうハインリヒは、ノエル単独では勝ち得ない。
玲央は玲央で、身体能力が人間の域を遥かに超え、変幻自在に身体を変化させてくる血の怪物は、レガリアが有っても対抗するのは難しい。
玲央もノエルも、己の実力を正しく理解しているからこそ、互いを切る事は“現在のところ”は、冷徹な思考に基づいて、出来ないのだった。
二人が決裂するとすれば、自分達以外の全員の戦力を把握して、尚且つ生き残りの中に己を単独で下す者が居ないと確信した時。
未だに生き残りが多く残り、未知の者もいる以上、両者が決裂する事は有り得ない。
勝利を目指す者にも、脱出を模索するものにも、脅威となる同盟は、未だに固く結ばれている。
「それではお休みなさい」
「お休み」
支給品は温存する事とし、家の中で調達したトンカツとごはんと千切りキャベツと豚汁の食事を終え、短い挨拶を交わし、ノエルドゥ・ジュベールと双葉玲央は、それぞれ別々の部屋へと向かう。
なおトンカツと豚汁に使われていた豚は“メス”であるが、そんな事はどうでも良い。重要なことじゃ無い。
〜〜〜〜
291
:
ヒトリノ夜
◆/dxfYHmcSQ
:2025/05/24(土) 21:52:14 ID:pQXHHIDE0
ベッドの上に寝転がり、双葉玲央は思索に耽る。
玲央くらいの年頃の少年ならば、そこいらのモデルやアイドルが泣いて詫びを入れる程の美少女が、同じ屋根の下にいるとなれば、心は猿の様に、意は馬の如くと化し。
品行方正とはまるで無縁な態でノエルの部屋へと突撃して、ふぁ…ふぁいとオ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ。
としようとして、ノエルに惨殺されるだろうが。双葉玲央にはそんな情動も性欲も存在し無い。
『普通なら、アイツ(ノエル)に夜這いでも掛けるんだろうな』。などと思うだけである。
ノエルの事はどうでも良いので置いといて、博物館で見たものについて考える事にする。
────槍と珠。
王国レガリアで製作されたという器物。
レガリアについては確認する術が無いので放置するとして、問題なのは槍と珠だ。
ショッピングモールで見た地図に有った、召喚石とカイジンの力が宿った槍の事だろうか?
だとすれば、王笏に匹敵するものが、此処には後二つ有るという事になる。
誰かの手に渡れば、厄介というより他に無い。
城で交戦したハインリヒを思い出す。
────アイツが手に入れたら脅威だな。
ノエルと二人懸りでも、ハインリヒはそう簡単には倒せ無い。そこに王笏に匹敵する道具が有れば、玲央単独では勝利は覚束ない。
ノエルと手を切るとしても、その時は未だもう少し先になりそうだった。
────それにしても、此処は一体何なんだ?
フレデリック達を殺した時から、ずっと抱いていた疑問。
玲央の記憶にあるのと寸分変わらぬ公園。ノエルが産まれた場所だという病院。加崎魔子の過去について記録された映像。
集められた者達の、過去に纏わるものが、此処には無造作に転がっていた。
得体が知れない場所で有り、此処を作り出したデスノもまた、得体が知れない相手である。
解明したいとは思うものの、殺し合いという現実の打開には、当面役に立たなさそうなので、今の所は放っておく事にする。
重要なのは、『集められた者達の過去に纏わるものが有る』という事。
つまりは『幽霊列車の乗車券』などという代物にも、誰かしら関わる者が居るのだろう。
ひょっとしたら、幽霊列車そのものが、此処には有るのかも知れなかった。
────両親が乗っていたりしてな。
そんな事を思ったが、変わらず感情というものは生じない。
幽霊列車とやらが此処に有って、両親が乗っていたとして、自分は果たしてなにかを思うのだろうか。
そんな事を考えている内にも、夜は更けていく。
292
:
ヒトリノ夜
◆/dxfYHmcSQ
:2025/05/24(土) 21:53:16 ID:pQXHHIDE0
ベッドに腰掛け、ノエルは取り出したミカの頭部を解体していた。
くるるが死んでしまった以上、このオモチャ(ミカの頭部)に用は無い。
くるるで愉しむ為の道具である以上、くるるが死ねば只のガラクタ。
精々が、ノエルの好奇心を満たす為に役立って貰うくらいしか、使い道が無いのだった。
頬を削ぎ、歯を引き抜き、眼を取り出し、頭部を切り開いて中身を取り出す。
アクマの膂力や、特異な性質を利用した攻撃に耐えられるように、外見不相応の強度を誇り、大口径拳銃弾ですら弾くテンシの外皮も、ノエルの特異体質は熱したバターの様に斬り裂いた。
ノエルが指を動かす度に損壊されていくミカの頭部は、一切血を流すこと無く、内部の機械を露にしていく。
「本当に機械仕掛けの方でしたか」
掌に乗せたミカの右眼を見ながら、しみじみと呟く。
ノエルが掌の上で弄んでいるミカの右眼は、眼球を精巧に模してはいるが、明らかに機械仕掛けの眼だった。
切り開いた頭蓋の内には脳が無く、代わりに電脳が収まっている。
壊れる前のミカの言動や感情、戦闘時の動きを考えるに、ノエルの知るロボット工学で、ミカの製造は不可能だ。
一体何処で製造され、此処に捉われたのか。
「頭部の重さからすると、同じ背格好の人体よりも遥かに重いんですよね。
こんな重量の物体が、翼程度で飛行できるのでしょうか?得体の知れない推力のようなものは、発生していましたが」
モールでの一戦を思い出す。
高速で自在に宙を飛翔し、空を舞う、テンシの呼び名に相応しい姿を。
────こんな高度な技術は、存在し無い筈ですが。
ノエルの知る機械工学では、到底有りえない超技術。
感情や思考を司どるAIも、ノエルの知識からかけ離れたい性能だ。
持って帰って調べてみれば、世の中の為に役立てられるかも知れ無い。
これでまた、父母を喜ばせることが出来る。そう考えて、ミカの頭部をデイバッグに仕舞い込む。
次いで、胴体も持ってくれば良かった、などと思いながら、抉り出した眼球諸々も、室内で見つけたぬのに包んで仕舞い込んだ。
ベッドに横たわり、今日の出来事について思いを馳せる。
モールの内外で交戦した二体の怪物の内、外で交戦した怪物の名を訊かなかったのは失敗だった。
あれでは、死んだのかどうか判らない。放送で名を呼ばれても、名を識らないのでは、死亡の確認が出来ない。
あの化け物は、生きていると考えて行動するべきだろう。
血の怪物(キム・スヒョン)は、形を保てなくなる程に脂を浴びせ、残った血も、穴の底に廃棄してやったが、元より血の塊だ。
アレで死んだかと訊かれれば、ノエルは首を横に振る。
此方は名前が判っている。放送で生死が確認出来るだけ、外の化け物よりはマシだろう。
差し当たって、生き残りで警戒しなければならないのは、玲央、ハインリヒ、化け物、汀子,スヒョン。
293
:
ヒトリノ夜
◆/dxfYHmcSQ
:2025/05/24(土) 21:56:13 ID:pQXHHIDE0
第二回放送で呼ばれた20人が、全員生き残っているとして、少なくとも四分の一が警戒を要する相手だ。
この分では、他の生き残りの中にも、脅威となる存在が居るかも知れなかった。
3回目の放送で、何人の名が呼ばれる事になるのか、ハインリヒの様な強者が、死者の列に加わっていてくれれば良いのだが。
とは言え、汀子とスヒョン、ついでに新田目には、生きていて貰わなければならない。
この三人には、産まれてきた事を、今まで生きてきた事を、後悔するほどに苦しめて苦しめて苦しみ抜かせてから殺さなければならないのだから。
自分の関わらない所で死ぬことなどは、到底許される訳が無い。
死ぬにしても、せめて自分が与える苦しみの、無量大数分の一でも味わってから、死んで欲しかった。
スヒョンを、汀子を、新田目を、どう痛めつけ、どう辱め、心身共に苦しめ抜いて殺すか。
血と臓物に塗れた思考に耽る内に、嬲り殺したいと思っていた三人の事を思い出した。
────オリヴィアさんと、ミカさんと、くるるさんは、苦しみ無く亡くなられたのでしょうか?
くるるや新田目が知れば、驚愕する事は必至だが、ノエルにとっては別段おかしな事では無い。
『苦しめて殺さねばならない』と『嬲り殺しにしたい』の違いは明白だ。
新田目達を殺すのは義務であり責務だが、くるる達は権利であり遊びだ。
遊んで、愉しんで、嬲り殺したかったのに、誰かの手で殺されてしまった。
ただでさえ業腹なのに、苦しめられていたとなると、許す事など出来はしない。
あの三人を苦しめるのは、他の誰にも許されない、自分だけの権利なのだから。
「くるるさんは、新田目さん達と共に居たはず、殺す前にどの様に亡くなられたのか、訊いておきましょう」
答えないのならば、答えさせる。
陰惨な決定を下したノエルは更なる邪悪な思考に耽る。
────残る愉しみはあと二人。
双葉真央と、加崎魔子。
────真央さんは、未だに存命。玲央さんの目的は叶いそうですね。
玲央の目的である真央の殺害は、ノエルの愉しみである。
己が片葉が、己に対して何の感情も抱いておらず、無情のままに殺しに来る。
その時に真央がどの様な感情を抱くのか?どの様な表情を浮かべるのか?
考えただけで気が昂って眠れなくなる。
加崎魔子に対しては、薬物蝕まれて生きていくのは辛いだろうと、心から同情している。
デスノに蘇らせて貰う際に、魔子の身体を蝕む薬物は除去して貰おう。
殺し合いから救うだけでなく、薬物からも救わなければならばい。
つまりは加崎魔子の生命は、ノエルの手で確実に絶たれねばならない。
その上で、薬物を除去して蘇らせて貰う。
二つの苦しみから救うのだ。自分を愉しませてくれても良いだろう。
どうせ此処での出来事は記憶から消される事になるのだ。梓真がどの様に死んだのか、詳しく教えても、魔子の心に傷が残る事は無い。
「ああ…、そういえば」
愉しい愉しい映像が有る事を思い出して、タブレットを取り出す。
熱い息を吐きながら、タブレットを操作。ライブ映像を飛ばして、加崎魔子の破滅する瞬間を食い入る様に鑑賞する。
ノエルが邪悪な悦楽に浸る間にも、夜は更けていく。
294
:
ヒトリノ夜
◆/dxfYHmcSQ
:2025/05/24(土) 21:56:39 ID:pQXHHIDE0
F-3 博物館の近くの民家
【双葉玲央】
[状態]:全身の複数箇所に浅い傷 下腹部に打撲(小)疲労(小)精神的疲労(中) 服が焦げている。
[装備]:王杓レガリア テンシ兵装“イダテン”
[道具]:基本支給品一式、宝の地図 ランダムアイテム×0〜1(確認済み)首輪×2 軍用兵器の箱 金属バット フレデリック・ファルマンの支給品×0〜1(武器ではない) グルカナイフ 魔鳥の骨で造られた槍 幽霊列車の乗車券何枚か
[思考・行動]
基本方針:知り尽くし、壊し尽くし、優勝する
1:誰を殺しそびれた…?いや、まずは妹だ。
2:妹を探して殺し、その死に顔を拝む
3:灰色の鎧の男(不二)が言っていた神社方面へ向かう。
4:やはりガス管や水道管もあったのか。しかし何処へつながっているんだ?
5:一応脱出ルートも可能であれば探しておく
6:あの映像に映っていた病院。この地図に載っているのと同じかも知れない
7:取り敢えず三人殺して、特典を貰う
8:どうにかして、彼女から箱のカギを奪えないものか
9:20550630?何かが起こった年代か?
10.あまりテンシ兵装は使いたくない。
11.不死者…か……。いったい今までどんなことを思って来たんだろうな。
12:自分の正体は一体…?
【備考】
※加崎魔子のライブ映像を観ました
※彼が殺し合いに呼ばれた時期は、2025年6月30日だと確定しました。
どの暦なのかは不明です。
【ノエル・ドゥ・ジュベール】
[状態]:疲労(中) 怒り(中)『病院で出逢った男(新田目)に対しては極大』
[装備]:グルカナイフ “ブラック・プリンス”
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3(四苦八苦の分を含む) ノエルの制服(血塗れ) No.13の頭部 軍用兵器のカギ 滝脇祥真とスヒョンの支給品×0〜2 元々着ていた服(血まみれ) 幽霊列車の乗車券何枚か タブレット
[思考・行動]
基本方針:『遊んで』殺す
1:三人殺して特典を貰う
2:自分は…人間なのか?
3:双葉真央を探してショッピングモールに連れてくる
4:双葉玲央が双葉真央を殺すのを観る
5:自分の服や靴を汚した新田目、汀子は絶対に許さない
6:両親への愛を侮辱した男(新田目)は念入りに念入りに苦しめて殺す
7:ミカさんとオリヴィアやくるるさんで遊びたかった……。くるるの死がどの様なものか新田目達に訊いておきたい
8:加崎魔子はいずれ『救ってあげる』その前に愉しんでも良いでしょう
9:軍用兵器を使って、苦しむ者達を見たい
10:本当に不死者がいるとは驚き。
295
:
ヒトリノ夜
◆/dxfYHmcSQ
:2025/05/24(土) 21:57:21 ID:pQXHHIDE0
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