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代理投稿だッ!

1名無しさん:2010/08/25(水) 00:39:47
代理投稿とはッ!やけっぱちの投下のことじゃあないッ!

            . . . . . . .. .. ... .
代理投稿とはッ!暗闇のスレに道を切り開くことだッ!

2佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/08/29(日) 01:14:05
代行おねがいします

【名前欄】佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s
【メール欄】sage
【本文】
大アルカナⅨ『WHEEL of FORTUNE』『運命の輪』は時間の回りを螺旋状に回転する因果律を顕す。
同時に形而上と形而下、精神世界と物質世界の境界を象徴するカードである。
そのカード…『運命の輪』を象徴するスタンドの攻撃を皮切りに回り始めた運命は
もはや現実的な因果律を無視した偶然の連鎖を巻き込んで大きく回転し続けている。

運命の中心は交差点から徳井がマイソンを捕らえた路地裏に移動している。

人気のない路地裏、上空に向かいそそり立つ円柱。
目を凝らせば能力を持たない人間にも視認できる筈だが
遮蔽物の多い小さな路地に立つ半透明の水の柱に気づける者がどれだけいただろうか。


液体で満たされた円柱の中…佐藤ひとみは不幸を齎すスタンドの持ち主マイソン・デフューの
胸にナイフのように硬化し尖らせた触手を突きつけている。

ひとみは既に彼のスタンドの"不幸の靄"に憑り付かれている。
マイソンのスタンド『オンリー・ロンリー・フォーリン』は本体の支配を受けない暴走したスタンドだが
本体が死亡していても活動できるアンテロスと違い、その"存在"は本体に依存している。
本体が死ねばスタンドも消滅するだろう。
彼に直接恨みがある訳ではないが"死を齎すほどの不幸"から逃れるにはマイソンを殺すしかない。
ひとみは記憶が流れ込まないよう精神のガードを高め、彼の心臓を狙い触手ナイフを振り上げた。


――刹那、ひとみの耳に突き刺さる絶叫。
反射的に攻撃を止め、叫び声のする方向に視線を向けると…

自分達の居場所から数メートル離れたゴミ置き場で灰島がのた打ち回っている。
ゴミ置き場の壁に立てかけられたダンボールの前に神条時人が蹲っている。
少し離れた位置には片腕を失った少女の姿。
欠損した腕が負傷で失ったものではないことは出血が無く切り口が不自然なまでに整っていることから推察できた。


「こ…これは……スタンド攻撃ッ……?」

もう一度ゴミ置き場に視線を戻し目を凝らす。
神条はダンボールの"前に"居るのではなく表面に張り付いているではないか……。


ひとみは攻撃を中断し新手のスタンド使いの情報を捕捉しようと試みた。
触手ナイフをマイソンの胸に向けたまま、手元にスタンドシートを出現させる。
半透明のシートに幾何学的な光の線が浮かび上がりやがて地図の体を成す。

そこには射程距離を顕す色域と本体、及びスタンドを表す赤いマーカーが表示されていた。
灰島達を襲っているスタンドの射程距離はおよそ100m。

3佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/08/29(日) 01:20:03
【続きです】

それにしても奇妙だ……。
本体とスタンドのマーカーは灰島達のごく近くに表示されているというのに姿を見ることができない。
能力により姿を消しているのか?隠れているのか?
もう少し探知の範囲を狭めれば突き止められるかも知れないが……。


この状況でマイソンに止めを刺すのは危険だ。
よねの作り出した慣性バリアの空間は基本的に非生物を対象に効果を発揮する。つまり人間やスタンドは対象外。
近くにスタンドの存在を認知している以上警戒を怠る訳にはいかない。


こういう時盾になるべき男はというと―――
因縁をつけてきたインド人にぶち切れて、殴り合い掴み合いの見苦しい喧嘩の真っ最中だ。
よねを【よねクン】などと呼んでいたインド人。彼の知り合いだろうがどうせまともな人物ではないだろう。
大体【】←こんな吹き出しで喋る人物が常識人である訳がない。
ひとみはインド人とバカギャング…2人の戦いを傍観している、よねに向かって声をかけた。


「よね君……今時小学生でもやらないような下らないケンカしてる2人のことだけど…
いい加減止めたらどうなの?
あのインド人あんたの知り合いなんでしょう?
全く…しょうもない殴り合いをする奴もする奴だけど、ノリノリで解説するあんたも相当なもんね。」


心底呆れた調子でよねに2人の仲裁を依頼するひとみ。
争いの現場にチラと目を向けると徳井はインド人を羽交い絞めし後ろに放り投げようとしている。

「徳井君!一つだけ言っておくわ。
ジャーマンはフォールを取るための技!
ぶっこ貫いて!ヘソで投げて!背中でアーチを描き!スリーカウントを取る!
投げっぱなしジャーマンなんてジャーマンとは認めないわよ!」


私見に溢れるジャーマン論を交え徳井を怒鳴りつけた直後……ひとみは小さな違和感を感じた。
マイソン胸に触れている触手ナイフを通じて感じた小さな変化……
彼を取り巻く諦めと倦怠のだらけの空気感が僅かに変わったことを……


【マイソン君の処刑を保留し灰島さん達のなりゆきを見てます。ついでに徳井さんのジャーマンに駄目出し】

4吉野きらら◇HQs.P3ZAvn.F:2010/08/30(月) 19:52:53
>「『俺の幸せを奪う』……そう言ったな」
>「いいだろう!奪ってみるがいい!! ――ただし俺はお花畑な脳味噌を標準搭載していることで有名だ。
> どんな些細なことにだって幸せを感じ、その一つ一つを大事に心のなかに保存して生きていくことができる!」

>「さあ!君のそのちっぽけで矮小な『幸福のキャパシティ』は!俺の超絶多幸人生を奪い切れるかな!?
> ヘビは満腹になりすぎると動けなくなって死ぬと言う!君は如何に幸せに飢えていようとも!当方にフルコースの用意あり!!」

御前等の宣言に、吉野きららは溜息を零す。

「馬鹿らしい。幸せとは貪る物ではありません。確かに私の『幸福の花』は幸せを養分としますが、それはそれ。
 本来幸せとは積み上げる物なのです。ならば私が飽食に陥るなど、あり得ない事ですわ」

もっとも彼女は、周りを貶める事で相対的に自分を高みとしている。
それは彼女の過去、彼女にスタンドの発露が訪れた契機に関係あるのだが――やはり、それは今言及すべき事ではない。
嘆息を一つ零し、吉野は猛然と迫る『アンバーワールド』のラッシュに向き直った。

>「『鏡の中の俺は今日もハンサム』!『学校行くまでに三回ウンコ踏んだ』!『四年も高校に通える幸せ』!『目玉焼きが双子だった』!
> 『同級生にも先輩と敬われる』!『ドラクエのカジノで大金持ち』!『体育の後の教室の臭い』!!『近所のTSUTAYAがセール中』!!!」

(パワーは……向こうの方が上ですね。真っ向勝負は不利と。ですが花をあちらの腕に咲かせて軌道を逸らす事は容易ですわね。
 腕をねじ曲げて逸らし、がら空きになった懐に潜り込み、花の刃で首を刈る……と言った所でしょうか)

吉野はおよそ常軌を逸した幸福論を持っているが、同時に論理的な思考も持ち合わせている。
最小の対価で最大の成果を発揮すべく、彼女は思考し、画策した。
そして迫る拳を見極め、その腕に花を咲かせ――『アンバーワールド』の拳は一切ブレず、吉野の澄まし顔を捉えた。

「なッ――!?」

殴り飛ばされ、派手に地面を跳ねて、揺れる頭で彼女は必死に思考する。

(馬鹿なッ!? 一体何が……! 『メメント・モリ』の花は確かに咲いた筈……!)

震える腕で何とか地を捉えて、吉野上体を起こした。
視界に映った道路標識に向けて手を伸ばし、花を咲かせる。
花はまだ小さな蕾の状態だが、既に標識は僅かに曲がっている。
花を消せば標識は元の直立に戻り、逆に一気に開花させれば勢い良く曲がるだろう。
御前等が距離を詰めてきた時への対策だ。

(……能力はちゃんと機能している。だったら何故……)

更に思考を巡らせて、吉野はふと思い出した。
いつぞの九頭龍戦、幸せを養分として成長する『幸せの花』は彼に通用しなかった。
あの時は地面などの非生物に咲かせるただの花で代用を利かせたが、

(つまりはこの男もそう言う事ッ! この男の幸せは量ばかりで『薄っぺら』過ぎるッ!
 そのせいで『メメント・モリ』の花はブクブクと太るばかりで、肝心の機能を発揮できなかったッ!)

つまる所例えるならば『幸せの花』は人間で言うところの『胸やけ』や『悪酔い』に陥り、
そして御前等は
『テストの小問で思いっきり間違った公式を使ってるんだけど何故か答えだけは正解してしまった』ような
途方も無いラッキーで吉野をぶん殴れたのだ。

そしてそれは、御前等の幸運によって吉野の幸運が削り取られたとも言える。
吉野にとっては許容しがたい出来事だった。

5吉野きらら◇HQs.P3ZAvn.F:2010/08/30(月) 19:53:50
(……今すぐにでも奪い返してやりたい所ですが……正直、今の私のコンディションは最悪です。
 さっきの一撃で頬は内側に炎が灯ったようですし、頭の中では警鐘が意識を見失わんばかりに響いてます。
 あぁ、それにしてもよくも私の顔を! 女を殴るなんてなどと抜かすつもりはありませんが、
 腫れた顔面を見られて憐憫の視線を向けられる事は我慢出来ませんわ……!)

一瞬御前等への怒りが再燃するが、吉野はすぐに自制する。
能力の矛先は御前等ではなく道端の電信柱。
根元に花を咲かせ、自分と御前等の隔てとなるように倒す。

「……ここは退かせて頂きます。ですがこの屈辱、痛み、忘れませんわ。
 いずれ雪辱を果たしますので、そのつもりで。……それでは」

雪辱を果たす、再挑戦の宣言。
それはつまり、吉野と御前等の立場の逆転を意味していた。
御前等裕介は今をもって、吉野きららに対しての『世界の中心』となったのだ。

怨嗟の眼差しで御前等を貫く吉野は、最後に目眩ましの花弁の嵐を残して遁走した。

【逃走開始。追うか追わざるかはお任せです】

6佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/08/31(火) 00:10:25
代行おねがいします

【名前欄】佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s
【メール欄】sage
【本文】
路地裏はついさっきまでの騒動が嘘のように静けさを取り戻し
円柱を満たす透明の液体は僅かに揺らいでいる。

水の底に横たわる少年。フルムーンは彼の胸に触手のナイフを突きつけたまま。
佐藤ひとみは意識を失った少年を見下ろす。
いつの間に近寄ってきていたのか、水の外から神条時人の声が聞こえる。

>「この人は…変な人を追い払ってくれたんだよ」

「知ってるわ、見てたから。」
ひとみは素っ気無く答える。

――水の外で大騒動が繰り広げられていても至近距離であれだけの大声を出されれば嫌でも聞こえる。
マイソンが咆哮を上げ立ち上がった瞬間、ひとみは異変を目にしていた。
自分の体に纏わりついていた灰色の靄が突如揺らぎ…崩れ出し…小さな蝶の群れに変わっていく様を。
膨れ上がるように散り散りに飛散し水の柱を抜けて空高く舞い上がる蝶―――

ひとみは視線を自らの手足に戻し、自分が既に"不幸の靄"の呪いを外れたことに思い至る。


>91
>「…意識はありません。どうします?確かに最後はその少年…神条君を助けた様ですが…」
>「もうPhase2は必要ないでしょう。解除します」

同じくマイソンの動向を伺っていたよねも事情を察しているようだ。
よねが能力を解除すると水の柱は消滅し、内部に居たひとみ、よね、マイソン…ずぶぬれの3人が残された。


>102
>「いやァーー良くやったな(見てないけど……)お前は自分の意思でやり遂げたんだぜ(よく知らんけど…)
>そういうのは人生において重要な経験なんじゃねえのかな、うん」

>「えーーーと、能力がコントロールできるならわざわざ始末する必要はなくないか?
>情報は聞き出せたんだろ?誰にも迷惑かけない奴の為に手を汚さなきゃならない道理はねー」

腰を手で押さえて這い寄るヨレヨレの徳井がその場に居る一同の顔を見回しマイソンの処遇について口を挟む。
ひとみはその問いには答えず、暫し四つん這いの徳井を凝視していた。


「『腰椎捻挫』…椎間板の靭帯損傷…いわゆるギックリ腰ね……3、4日立てないわよそれ?
ブリッジもできない素人が見よう見真似でなんちゃってジャーマンを繰り出すからよ。
治して欲しかったら今後バカバカしいプロレスごっこは慎むことね。」


徳井を半睨みしつつフルムーンの目線を通じて負傷部位のスキャン画像を得ていたひとみは彼に釘を刺す。
とはいえ後で治療するつもりはあった。
フルムーンの触手を腰椎付近まで侵入させ触手と粘液で切れた靭帯を補強してやればいい。
ただ極細の触手を麻酔無しで患部まで突き刺す必要がある為かなり痛いだろうが。

7佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/08/31(火) 00:15:58
【続きです】

「良く見てもいない癖に相変わらず鋭いわね、徳井君。目端が利くというか勘が良すぎるというか…?
"スタンドは成長する"――らしいけど…
この男、逆切れの弾みでスタンドの支配権を得たみたいね。
さっきまで纏わりついていた"不幸を運ぶ靄"は消えた…私達はこのスタンドの攻撃対象から外れたわ。

元々敵意は無かったみたいだし、スタンドも無害化された…
あんた達が言うように今すぐこいつを殺す必要はなくなったわね。
さっきのスタンドコントロールが1回こっきりのマグレだったとしても彼が失神してる間スタンドは発動しないし
この男は暫くここに転がしておけばいいわ。」

今一度見ようによっては充実した表情で地面に伏す少年に視線を落とし、ひとみは話を続ける。


「そんなことより話すべきことは別にあるでしょう?
こいつから得た情報のことよ。
私が何のためにこの男を尋問したと思ってんの?ちゃんと聞いてたんでしょうね?

――『私達を襲ってきたのは何者か?目的は何か?』――

結論を言うと襲ってきた連中は『ワースト』って言う死刑囚。
目的は『悪魔の手のひら』……。

と言っても肝心の『悪魔の手のひら』が何なのか全然わからないんだけど。
あの男が関係していたなんて驚いたわ!

"ボブ・バンソン"…○日の常連外人レスラーよ!知らないの?
思い出した…!私一度この街で見かけたことがあるわ。…確かデパートで…そうよ!アンテロスに襲われた時!」


徳井とハマの脱線戦闘にツッコミを入れたくせに、自らも話を脱線させていく佐藤ひとみであった。


【会話続行中。次の会話ディスクやワースト達の情報を整理していきます(予定)
米良さん、灰島さんは現場に居るつもりで話を進めていますが
居場所や動きは限定していませんので自由に動いてください】

8佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/09/04(土) 02:21:17
【名前欄】佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s
【メール欄】sage
【本文】
>「佐藤さん…この人って呪術とかで操られているってことはないのかな?
>僕にはどうしても、この人が悪い人には見えないんだ…。助けられたからって言ってるわけじゃないよ…」

ひとみの饒舌を堰き止めたのは神条時人だった。
取り留めないお喋りを邪魔されたひとみは片眉を吊上げて不満を示しつつ、おずおず問いかける神条に向き直る。


「『良い』『悪い』なんて損得の方向次第で幾らでも変わるし大した意味ないわ。
ついさっきまでその男は確実に『悪い』奴だったの。少なくとも私にとってはね!
バナナに躓いて死ぬような運命押し付けられちゃたまらないわ!

操られてる…ねぇ…?
交差点で私達を襲ってきたカラスの死骸から出てきたディスクみたいなもの…君も見たでしょう?
あのディスク…『スタンド能力』や『記憶』を封じ込めて形にしたものらしいわ…
……『スタンドを蓄積する能力』……」


言葉尻を呟きに変え、ひとみは徳井とよねの顔を見回し話を続ける。


「私達…数ヶ月前に、この街で"ある男"と否応無く関係したんだけど……
……その男も同じタイプの能力を持っていたわ。
その男は自分のスタンドに本体ごとスタンド使いを取り込むことで能力を自分のものにしていた。

一方ボブ・バンソンは『能力』を『ディスク』に変えて奪うことが出来た。
『ディスク』なんて、かさばらないモノに変化させられる分蓄積は容易だけど
問題はその『ディスク』が元の持ち主と何らかの共通項を持つ人間…
つまりかなり相性のいい体を持つ適合者でないと使えないみたいなのね。

時期は分からないけどボブ・バンソンは『シンシン刑務所』に収監されていた超極悪死刑囚軍団、
通称『ワースト』って呼ばれてた連中の能力をディスクにして奪った。
『ワースト』を自分の目的を叶える為の兵士に仕立てる為か…?
あるいは『ワースト』に他の使い道があるのか…?


ボブ・バンソンは数ヶ月前に誰かに殺されて…どういう理屈かわからないけど
亡骸からNEWDIVIDEって名乗る骸骨が現れて今はソイツが仕切ってるみたい。
とどのつまりNEWDIVIDEが『ワースト』に適合する『肉体』を与えてこの街に解き放った。
目的は【悪魔の手のひら】…とか言うものの完成?
【悪魔の手のひら】の完成には少なくとも22人のスタンド使いを生贄にする必要があるらしいわ。

そこに転がってる男は『【悪魔の手のひら】が何なのか』までは知らされてないみたい。
使えない奴ってどこの組織にでもいるものだけどコイツもその類だったのかもね。
この男が死刑囚になってた理由…?大方あの能力のせいでテロリストか何かと誤解されて逮捕されたんじゃない?」

9佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/09/04(土) 02:23:15
【続きです】

女というのもは災難に遭った後ほど饒舌になるものだ。
神条に口を挟む余裕も与えず滔々と言葉を垂れ流すひとみ。
話はマイソンの印象から服やバッグをずぶ濡れにしてくれたよねへの罵倒、そして徳井の繰り出した
ジャーマン・スープレックスのしょっぱさに飛び、ひとしきり気の済むまで喋り倒した後でようやく要点を纏めにかかる。


「もう面倒臭いから簡単にまとめると…
NEWDIVIDEっていう骨男が【悪魔の手のひら】を完成させる為のエネルギー確保だかの目的で
スタンド使いを片っ端から狩り漁ってるってこと!
私達、また訳のわかんない"スタンド使い狩り"に巻き込まれたみたいね。」


ひとみは溜息を吐きながら振り返り、背後のゴミ置き場付近にいる灰島と女子中学生に視線を送る。


「灰島さん…やけに大げさな悲鳴を上げてたけど大丈夫?
それと右腕を盗られてたその子も。
聞いてたでしょ?今の話。さっきあんた達を襲った男も『ワースト』の一員。
一度関わっちゃった以上面倒から逃げられないかも知れないわ。覚悟しとくことね。」


【長〜台詞で状況確認と灰島さんと布良さんの安否確認
マイソン君への尋問で得たワースト、ディスク、NEWDIVIDE等の情報を面々に伝えています
会話はもう少し続行予定です(長くてスイマセン)】

10佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/09/09(木) 22:34:45
代行おねがいします

【名前欄】佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s
【メール欄】sage
【本文
>28
痛めた腰を庇い四つんばいの体勢で長話に口を挟む徳井。

>「オーーッ、ノォーーーッ!俺達って本当運がねーな……
>ま、俺はどっちにしてもやる気まんまんなんだがね……で、悪魔の手のひらってなんだ?
>お前は俺の手のひらの上で踊ってるにすぎないとかの手のひらじゃあねーよな。
>新手の宗教か?前も言ったが俺は無神論者なんだ」

ギックリ腰の痛みを堪え土蜘蛛のような体勢で這いずる徳井を見下ろし、ひとみは口を開く。


「『無神論者』って声高に主張する人間に限って『神』の存在に捕らわれてるのよねぇ〜どうでもいいけど。
大抵の日本人にとって神の存在なんておまじない程度の意味しかないのに。
あんたがイタリアに住んでるせいかしらね?
あ…あと更にどうでもいい事だけど…
二十過ぎのイタリアやくざが童貞?それ何かのジョークよね?
あんたのモノの使用頻度なんて無駄な情報誰も聞いてないけど?
未使用だとしたら確実にその思考回路が原因ね。買い物は買うことより過程が大事なの!
ほんっとにどうでもいい話題に手間食っちゃったわ。ああ無駄無駄…。」


徳井の軽口に釣られ、本題から外れた雑言を垂れ流すひとみ。
自ら進んで答えた癖にそれを「無駄」の一言で片付けると
真顔に戻り本題の【悪魔の手のひら】についての考察に取り掛かる。


「『悪魔の手のひら』って随分オカルトチックな名前よねぇ…
しかもソレの完成に『生け贄』が必要なんて所も…
黒魔術系のオカルト宗教っぽい臭いがプンプン漂うわ。
黒魔術に生け贄…まるきり安っぽいホラー映画たわ。馬鹿馬鹿しい!」


地面に倒れ臥したままのマイソンを指差し、ひとみは口調に更なる棘を加えて語り続ける。


「さっきも言った通りその男は『悪魔の手のひら』の正体を知らされてないの!
いくら尋問しても知らない事を答えさせるのは不可能!
つまり今のところ私達に『悪魔の手のひら』が何か知る術はないの。材料が足りないわ。
煉瓦が無ければ壁を建てられないでしょう?
それ位理解できるわよね?分かるわね…?未使用君?」


明らかに偽と知れる優しさを交えた諭し口調はセッカチな徳井に対する当て付け。
マンホールに嵌り無様な体勢を笑われたことを、ひとみは未だ深く根に持っているのだ。
徳井の目に写る女はさぞ憎たらしい顔をしているだろう。
意趣返しを済ませ少々溜飲を下げたひとみは、徳井の返事を待つことなく本題に戻り話しを続ける。

11佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/09/09(木) 22:35:58
【続きです】
「『悪魔の手のひら』より問題にすべきことがあるでしょ?相手の正体よ。
『22体の生贄を捧げることで完成するモノ』…ホラー映画か恐怖漫画じゃあるまいし。
本当にそんなものが存在するのかしら?
求心力を失った末期の宗教団体が教祖の妄想込みのエセハルマゲドンを創作して殺人集団に変質するのは良くあること。
『悪魔の手のひら』も案外その類いの実体のない妄想の産物かも知れないわ。
どっちにしても材料の無い『悪魔の手のひら』の正体を云々言い合っても仕方ないでしょう?

知るべきなのは、この馬鹿げた殺人とスタンド使い狩りを繰り広げてる集団の規模と正体。
そう思わない?

首謀者のニューディバイドがどれ程の統率力を持っているのか…?それと22人いるいうワーストの実力。
小規模で自己崩壊寸前のツブれかけカルト団体なら放っておいても差し支えないし。
奴らが本当に大勢のスタンド使いを『狩り集める』程の力を持っているのか?
調べるとしたらその辺りになりそうね。

あ〜面倒!本当にツイてない!
一年のうちに何度もスタンド使いの集団と追いかけっこなんてそんなこと在り得る?」

>34
ひとみは肩をすくめ溜息を吐きながら神条少年に向き直った。


「神条君、さっき『引っ越す』って選択肢挙げたわね?あれ、案外的を射てるかもよ?
君は『このタイミングで引っ越すのは不自然』って言ってたけど、むしろごく自然じゃないの?
あんな殺戮現場見せられたらスタンド使いだろうと一般人だろうと街から出ようと思うのは当前よ。
街から引っ越す数多の人間をいちいち虱潰しでスタンド使いかどうか調べるなんて手間のかかることするかしら?
奴らの中に『スタンド使いを自動認識する』能力を持つ者がいれば別だけど。
面倒が嫌なら当分…どこか遠くへ…この街から離れる手のひとつかも……」

12佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/09/09(木) 22:36:34
【続きその2】
そこまで話して・・・ひとみは急に口篭り言葉を濁す。

「しまった」とばかり、浮かべた表情を悟られまいと水浸しの髪を手櫛で整えるフリをする。
長話に乗せ要らぬことまで口を滑らせてしまったかも知れない。
九頭の時と違って今回は逃亡を阻害されてはいない。それはある意味救い…と言うべきものではあるが。
かと言って徳井達が「じゃあ逃げる」とばかりにこの街を出て行ったら自分はどうなるのか?

ひとみ自身は…と言えば「面倒を避けるために街を離れればよい」と口に出しておきながら
その選択を積極的に選ぶ気になれない自身に少し戸惑っていた。
それは未だ整理のつかないあの男への"想い"故か…。
九頭の墓標とも言えるこの地を、この街を…果たして離れることが出来るのだろうか?


"想い"を頭から振り払い、ひとみは失策を取り繕うようにスタンドシートを出現させ会話の流れを変えた。


「まあ、暫くの間様子を見ながら奴らの動向を調べるしかないわね。
これ、手がかりになるかと思って出してみたんだけど……」

―――シートにはある"建物"が映し出されている。
入り口の広い階段。正面入り口に突き出す円形のテラス。
公的施設を思わせるシンプルなデザインの3、4階建てと思しき建築物。


「そこで寝てる男の記憶から読み取ったものよ。首謀者の骨男はここに潜んでるみたい。
場所までは分からないけど北条市の中であることは間違いないみたい。
各自心当たりをあたってみる?」


映像をその場の全員に見せシートを仕舞うと、ひとみは思い出したように口を開いた。

「ああ忘れてた!徳井君!あんたに別の件で選択肢をあげるわ。
そのギックリ腰を『今治す』か『自然治癒に任せる』か…さあどっち?
言っておくけど治療はかなり痛いわよ?患部まで触手を突き刺さなきゃならないから。
一週間ほど四つんばいのまま湿布を貼って過ごすか?
…それとも一分ほど痛みを我慢してスッキリサッパリ腰の痛みとオサラバするか?
30秒ほど時間あげるからさっさと考えてね。」



【とてつもない長台詞ですが要点は『悪魔の手のひら』はおいといて
『NDとワーストの正体』を探ろうと提案しただけです。
マイソン君の記憶から読んだ『市民会館』の映像を面々に見せる。
『逃げられること』を前提に各人の『戦う動機』に今後焦点を当てたりできるかとw
オマケ:徳井さんに究極の選択】

13佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/09/14(火) 01:57:54
代行おねがいします
【名前欄】佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s
【メール欄】sage
【本文】

徳井に『二つの選択肢』を与えておきながら自由に選ばせる気は毛頭無い佐藤ひとみ。
眼球を収めるケースの隙間から次々と触手が伸びシュルシュル徳井の手足に巻き付いていく。
30秒経過する頃には完全に手足を拘束され、うつ伏せ状態で地面に転がる徳井の姿があった。

「面倒が起こりそうな非常事態だもの!当然1週間四つんばいで過ごす選択なんて有り得ないわよねぇ〜!」

抗議の声は無視され、数本の細く長い触手の針が徳井の腰を襲う!
本当は脳内麻薬を使った麻酔が可能なのだが、執念深いひとみのこと。
1分程度の治療効果つき拷問は痴態を見られた復讐のダメ押しだ。

――暫し現場には男の悲鳴がこだまする。


呻き声を上げる徳井を尻目にひとみは一同を見回し口を開いた。


「取り合えずこの騒動について、解っている情報を纏めておくわ。

・この街を拠点に『悪魔の手のひら』なるものの完成を目指して活動する一団がいる。
・奴らの中心人物は『NEWDIVIDE』なる謎の男。そいつは『スタンド』と『記憶』をディスク化する能力を持っている。
・『悪魔の手のひら』の完成には少なくと22体の『スタンドの生贄』が必要であり
 奴らは手当たりに次第にスタンド使いを襲い、犠牲者の『ディスク』を集めている。
・スタンド使いを襲う兵隊として通称『ワースト』という超長期服役囚が街に放たれている。
・『ワースト』はかつて『NEWDIVIDE』にディスクを抜かれ身体を失い、この街で新たに身体を与えられている。
・奴らの現在の活動の拠点はこの写真の建物。

……こんなところかしら?

で、この事態に対して私達はどうすべきか?
…ことがスタンド絡みである以上警察沙汰にも出来ないし…自分の身は自分で守るしかないわ。
救いは"あの時"と違って奴らが『私達だけに狙いを絞っている訳ではない』ことね。」


―――"あの時"とは、もちろん九頭龍一のゲーム…狩る者と狩られる者の戦い。
狩る者に狙われ逃げ惑ったあの事態を指している。

14佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/09/14(火) 02:01:03
【続きです】

「身を守る選択肢として考えられるのは二つ。
『こちらから攻める』もしくは、襲ってきた者を『迎撃する』

危険を押して『攻める』には相手の規模、力量、それに目的等の情報が足りなさ過ぎるわ。
今のところ『迎撃』しながらを奴ら情報を集めること…
『攻める』にしてももう少し情報を得てからの方が賢いような気がするけど。どうかしら?」


…場合によっては……まず無いとは思うが…相手が"あの男"並みの実力の持ち主だったら…?
その場合は『逃亡』という選択も視野に入れるべきだろう。
―――が、その思いをひとみは口に出さない。
自分以外の面子に積極的に『逃亡』を選ばせたくない…という理由もあったが、
ひとみはあれ以来、九頭龍一の名を口にすることを半ば無意識的に避けていた。


刹那の沈黙を挟み、ひとみは気を失ったままのマイソンに歩み寄る。
彼の横にしゃがみ顔を覗き込むと、襟首を掴んで乱暴に揺すった。


「いつまでも寝てないでさっさと起きたらどうなの?!
どういう成り行きか心境の変化か知らないけど
あんたのしたことは奴らにとって『裏切り』以外の何物でもないわよね?
つまり今後は追われる身、あんたは『こちら側』の人間になった訳。

私達にあんたを殺す理由は無くなったわ。
だから逃げてもいいわよ?っていうか早く逃げた方がいいんじゃない?
ただその前に情報は貰うわ。

この『写真の建物』の場所を教えなさい!

あんたにとって私達に情報を漏らすことは最早マイナスにならないはずよ。」


【徳井さんをふんじばって治療。
マイソン君を起こして市民会館の場所を聞いています。
情報をどこまで伝えるか、もしくは伝えないか…マイソン君におまかせです】

15佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/09/18(土) 23:01:41
【名前欄】NEWDIVIDEと影貫行方◆tGLUbl280s
【メール欄】sage
【本文】

薄暗い部屋。蝋燭の灯す暖色の光が僅かに震え、壁に映った男女の影を揺らす。
男女――と言っても、男の方は黒い襤褸切れのようなマントを纏った骨の塊。
低い声音と大柄な骨格が、纏っていた肉体が強固な男のものであったろうと想起させるのみであった。

「随分舐められたものね…」

冷ややかな女の声。
常と同じ陶器の人形を思わせる青白い顔、無機質な表情。
しかし口調には明らかな不信と批難が込められている。

グリードのスタンド『ハングドハント』の拳を受け、
一度崩れさったNEWDIVIDの骨格はカチャカチャと音を立てて組みあがっていく。

「好きにするがいいさ……
あいつらも束の間の自由を手に入れてはしゃぎたかろうて。
連中がどう振る舞おうと、所詮は釈迦の掌の上の孫悟空…あるいは虫カゴの中の虫。
おっと…ワーストの中に食道楽が居たな、あの下衆好みの言い回しを使うならば
『鍋』の中の『材料』…とでも言うべきかな。
機が熟せば『鍋』ごと煮込んでしまえば、それでいい。」


NWEDIVIDEは『材料』と『鍋』に妙な抑揚をつけて話す。
『材料』は勿論ワーストを指している…しかし『鍋』とは……?


余裕綽々の言い様は敗者の色を微塵も見せない。
攻撃をうけた後にノイズ交じりの不協和音を奏でていた声音も、いつの間にか常の調子を取り戻していた。
影貫が目を向けると、NEWDIVIDEを構成する鉄筋の如き骨の端々に入っていたひび割れが跡形もなく消えている。


「奴らなら好きに泳がせておけばいい。本能と嗜好に任せて犠牲者の山を築けばいいのだ。
歩くように平然と死体をこさえる者どもだ。血の海と恐慌の渦は我らの望むところ。
――ディスクだけでなく、それも貴重な『材料』の一つなのだからな。
なに…問題は無かろう。
奴らはディスクに刻み込んだ『契約』と『情報』に縛られている。
…確か北条市と言ったか・・・奴らはこの街から出ることも出来んのさ。」

16佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/09/18(土) 23:02:18
NEWDIVIVEは集めた肉体にディスクを投入する前に、下準備として施した加工を回想する。
能力によってディスク化したスタンドは、相性さえ合えば彼自身が使用することも可能だ。
何と言う皮肉――!
数分前、NEWDIVIDEに叛旗を宣言した男――
『グリード・アヴァリティア』のスタンド『ハングドハント』がその加工に使用されていたのである。


NEWDIVIDEはディスクに情報を貼り付けた。
その為に北条市に住む男に残酷極まりない拷問すら働いて。

すなわち…その男から
『北条市を出る』という情報と
『巨大なミキサーで足の先から磨り潰される【痛み】と【恐怖】』

この二つの情報を剥ぎ取り……組み合わせてディスクに貼り付けたのだ。
ワーストの中に挿入したディスクを取り出せる者はNEWDIVIDEのみ。
『ハングドハント』の持ち主、グリードにも手が出せない。


ワーストの面々が北条市を脱出しようと試みれば、忽ちその【痛み】と【恐怖】に襲われるだろう。
――それは人を死に至らしめるに充分なものだ。

彼等が『痛みの情報』から逃れ、真の意味での自由を手にするには
NDとの『契約』…合わせて『22枚の上質なスタンドディスク』を差し出す他は無い。
この『契約』はワースト達に伝えられている。

『契約』を果たしても彼らが晴れて自由の身になれる可能性は低いだろう。
ディスクが揃ってしまえば、彼らには『材料』としての運命が待ち受けているのだから。
しかし、このどう転んでも不利益な情報は当然彼らに知らされている筈もない。


『契約』はNEWDIVIDEが死ぬか、あるいは彼の能力を何らかの方法で奪い取るまで消して解除されない。
NEWDIVIDEはほぼ不死身の骨男。
いかな攻撃を受けようと折れた骨はパズルのように組み合わされ元の形を成す。
塵にでも変えられない限り命を奪うことは出来ないだろう。



【ワースト達に肉体を与える際の『契約』について言及。ワースト達は『契約』のことは知らされてます。
自分達が『材料』であることは知らない筈ですが、自ら気づいても良し】

17佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/09/18(土) 23:03:12
>26
>ぺた…ぺた…ぺた…ぺた…。…ピタ。
>くちゃ…くちゃ…ぺちゃ。

沈黙のまま向かい合う影貫とNEWDIVIDEは部屋の外から聞こえる水っぽい異音に聞き耳を立てる。

乱暴な音を上げて扉が開く。

>「…ぁ…あ〜〜」

ドアの前には黒い肌の大男が這いつくばっている。
2m近い巨体には不似合いの、つるりとした肌。浮かべる表情は明らかな白痴。
口の周りを地に染めた大男は影貫に向かって這い寄る。

>「まぁまぁ〜…」
影貫は柳眉を顰め汚いものを見る表情で、その赤ん坊と中年大男の混合物を見下ろす。

「ああ…忘れていたよ。ディスクの保管用に作ったプロトタイプだ。
…肉体を失ったワースト用にな。
ディスクに適合する肉体を捜すのはなかなか骨が折れるからな。
作ったはいいが使い勝手が悪いので閉じ込めて置いたんだがな…逃げ出してしまったか。
どうやら試作品の奴、退屈らしい。
しばらく相手してやってくれないか?」

声質にいたずらっ子の喜色を潜め、NEWDIVIDEは骸骨の嵌った水晶の眼球をくるりと一回転させた。
黒い襤褸を翻し影貫の横をすり抜けるNEWDIVID。
その巨体は白い煙となって拡散して消えた。
姿が消える前のほんの一瞬、ボブもどきの赤子も目を凝らしていれば気づいたかも知れない。
壁から現れた、ほの白い腕がNEWDIVIDEのマントを掴んでいたことに。


ひとり取り残された影貫は美しい顔に嫌悪の情を浮かべ、男の形をした肉塊と対峙する。
肉塊は耳の辺りに開いた大きな穴に張られたピンク色の弁膜を震わせて音を奏で出した。
ノイズを交えた音は次第に人声に変化していく。

>「ガラスのコップにアルモノを入れたらトリ出せなくナクなりました。アルモノとは何でしょうカ?」

影貫は顰めた眉を僅かに緩める。
知性の欠片も無いと予想していた肉塊の発した人語…その意外さに興味を引かれたのだ。
黒い巨躯の赤子を見据えながら、薄く紅を差した赤い唇を開く。


「人もモノも自らに付いた傷を払い落とすことは出来ない……
すなわちガラスの水面に巣食う細いクモの巣……」


低く静かな女の声。その文言が謎の答えを孕んでいることに、ボブもどきは気づくだろうか。

18生天目 ◆gX9qkq7FNo:2010/10/30(土) 23:16:38
「あっつ〜ぃ〜」
梅雨の存在などすっかり忘れたように快晴が続き季節は夏本番を迎える。
キャミワンピの裾を煽って風を入れても蒸した熱気が肌にへばりつくだけで効果がない。

生天目有葵は市民会館の前に立っていた。
蒸されたアスファルトの熱気がサンダルを通して足の裏に伝わる。

「へー…ここが例の事件があったオバケ屋敷ね。心霊写真、撮れるかなー?」

パシャッ。まずは建物の全景をとってみた。時刻は10時45分。
生天目はオカルト雑誌に応募する心霊写真を撮るために市民会館に来ていたのだが
奇しくもその日は佐藤たちが市民会館に集合を約束した某日と合致していた。
これもスタンド使い同士は引き合うという法則がそうさせたのだろう。

「〜♪〜♪」
こんなふうに適当に遊んでいたら、今年もそのうちに夏がすぎるんだろうということを、
そのときの生天目は疑っていなかった。

19生天目 ◆gX9qkq7FNo:2010/10/30(土) 23:19:07
>>18は文章置き場とまちがいました。だいり投稿しなくていいです。

20佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2010/10/31(日) 15:16:05
その日も相変わらずの暑さだった。
まだ午前中だというのに、分厚く白い雲が空に聳え、耳障りな蝉の鳴き声が熱気を帯びた大気に充満している。
強烈な日射しの作る影は不吉な程に濃く黒い。
ただ以前よりも僅かに薄くなった空の色が、盛夏も折り返しを過ぎたことを告げていた。


あたりは整然と舗装された道路。
歩道の脇には、最近植えられたばかりの街路樹がお仕着せのように等間隔に並んでいる。
建設途中の新興住宅地…といった所だろうか。周りはやたらに更地と休耕田が多い。
数件の民家がまばらに立っている他は車も人気もまばらで、ガランとしていた。


白い日傘の影がアスファルトに落ちる。日傘の作る影の中には髪の長い女が一人。
佐藤ひとみは人気の無い道路を歩いていた。
淡い水色のシフォン素材のブラウス、膝丈の白いタイトスカート、細いエナメルのベルト。華奢なヒールのサンダル。
決して活動的とは言えない出で立ちは、これから起こる狂騒とは不釣合いなものだ。


開けた視界の向こうに、空洞のようなこの場所に不似合いな大きさの建物が見える。
四方をケヤキ並樹に囲まれた鉄筋コンクリート造の建物。
外観からして3〜4階建てか。外壁は煉瓦風タイル加工の壁材で覆われている。
正面から見てて向かって右側の壁が大きく湾曲し円形に張り出していた。
全体の印象としてちょっと凝った造りの公的施設といった感じである。中々立派で洒落た造りだ。



ひとみは正門の前に立ち建物を見上げる。

―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――


重苦しいほどの青空を背景に聳え立つ建物は、遠近感が強調されたエル・グレコの絵画のように歪んで見え、
一種異様な存在感を放っていた。
壁のところどころに走るひび割れ、長年の風雨に晒された汚れ。
間近で見る建物は、遠目には写らなかった経年による劣化が見て取れた。

21佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2010/10/31(日) 15:17:05
―――この建物は、通称『市民会館』。
スタンド使いを狩るために街に放たれていた"ワースト"の一員、マイソン・デフューの記憶から読み取った
ご本尊の本拠地らしき場所だ。
正門は、鉄の門扉に堅く閉ざされている。
門扉の格子の隙間を覘くと、劣化したアスファルトにちらほら雑草の生えた駐車場が見える。



腕時計に目を落とす。時刻は午前10時55分。
周囲に人気はない。

「あいつら信じられない!女を待たせるなんて。
待ち合わせ場所には15分前にスタンバイしとくのが常識ってもんでしょ…」

日傘を閉じ、街路樹の日陰になっているガードレールをベンチ変わりに腰を下ろし、ひとみは呟く。
最寄のバス停から暫く歩かねばならない辺鄙な場所だったので、到着時間の目測を誤った。
女は待ち合わせの時間通りに到着してはならない。安く見られるからだ。10分は遅れるべきだったのだ。

待ち合わせの面子を待つ間、ひとみはスタンドシートを出現させ、周囲100mの"スタンド能力者探知"を試みた。
反応は無い…が、どうもすっきりしない。
建物の中のスタンド使いの反応は建物内に入って確認するのが一番確かなのだが…。
こんな役所じみた建物が、本当に『悪魔の手のひら』なるオカルトじみた存在を狙う者たちの本拠地なのだろうか。
マイソンの記憶違いか思い込み…ということも考えられる。
記憶というものは主観のフィルターを通すことで歪められる。読み取った記憶が必ずしも正確なものとは限らないのだ。



ふと正門に視線を移すと、いつの間に近寄ってきていたのか、門扉の向こう側に男が立っている。
警備員の服装をした愚鈍そうな大男だ。
スタンド能力者ではない。シートには反応が出ていない。


「見学希望の人?今日は会員限定のセミナーだよ。」
眠そうな顔の警備員はひとみに問いかける。

「は?」
出し抜けに声をかけられたひとみは、思わず返答にならない一言を漏らす。


「見学希望の人?今日は会員限定のセミナーだよ。」
警備員は同じ言葉を繰り返した。


【待ち合わせ場所、市民会館の前でぐだぐだやってます。合流するもよし、後から参加も可能です】

22佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/11/16(火) 22:09:22
代行おねがいします
【名前欄】佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s
【メール欄】sage
【本文】
>>44
ひとみが話し続けている間、床に這いつくばっていた男――御前等祐介が突然顔を上げ口を開いた。

>「しかし佐藤さん、アンタなかなかにイケイケな武闘派なんだな。『スタンド』に対抗しうるのは『スタンド』でしかないとは言え、
> こんな敵の懐に自分達だけで乗り込もうなんて。熱いじゃないか。――いいぜ、そういうのは大歓迎だ」

「…何馬鹿なこと言ってんの?別に乗り込みに来たわけじゃないわ。ちょっと偵察に来ただけよ。
 ことがスタンド絡みである以上警察沙汰にするわけにもいかないし…
 逃げるにしろ放置するにしろ、相手の規模や目的がわからなきゃ……」


言いかけた言葉を、御前等はまるで聞いていない。ひとみは小さな溜め息を零し口を噤んだ。
連中の狙いである『悪魔の手のひら』が何なのか?それさえ未だ分からないのだ。
カルト教祖の妄想の産物……実体の無い空想物である可能性だって大いに在り得る。
オカルトフリークのスタンド使いを畏れて、生活も仕事も投げ棄てて街を出るなんて馬鹿げている。
教祖がたまたまスタンド使いというだけのイカれた潰れ掛けのカルト団体ならば、案外簡単に対処できるかも知れない。
…その程度の腹積もりでこんな所まで出張ってきて、結果まんまと罠に嵌ったのである。
―――奴らは本気で生贄を集めている。
一度『獲物』と見なしたひとみ達を、飽く迄も『狩る』ために網を張っていたのだ。
敵を甘く見ていた自分の浅慮が腹立たしい。ひとみは今一度大きく溜め息を吐いた。



>「――たった今からここが『世界の中心』だ!」

ひとみの態度などそっちのけで勝手に盛り上がっている御前等が、全身をくねらせた"奇妙な"ポーズを決めている。
少年漫画の読みすぎとしか思えない思考回路。
ひとみはますます呆れたが、イザという時の戦力はその気にさせておく限る。


「『正義の戦いに体を張る』なんて、まるでヒーローね!
か弱い女性を守るのもヒーローの仕事でしょう?
 何が起こるかわからないこんな場所で、女に扉を開けさせたりしないわよね?
 順路は私が指示するから、あんたが先頭を歩いてね。ホールまでエスコートして。」

意味有りげな流し目をくれて、ひとみは御前等に語りかけた。

***********************************************

23佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/11/16(火) 22:12:06

閉ざされたホールの扉を開く。(もちろん自分で開かずに御前等に開かせる)
講演会や小規模の演劇等をこなせる円形の小劇場、中は薄暗く静まり返っている。
座席が上ったままの作り付けの椅子が数百脚、奥の舞台に向けてなだらかな下り坂を成して整然と並んでいる。
出しっぱなしのスタンドシートが放つ仄かな光がひとみの顔を下から照らす。
半透明のスタンドシートに青い蛍光ラインで描かれた建物1F平面図が浮かび上がる。
平面図上のホール内に5つの光点が表示されている。ひとみ達の現在地だ。


「やっぱりダメ!私達以外の反応が出ない!
 本当に誰もいないのか?それとも何かが私の能力に干渉して反応をマスクしてるのか…」
眉根を寄せてひとみは声を上げる。手元には4枚に分離したスタンドシート、全ての階の平面図が表示されている。


ひとみの言葉の終わりを待たずに、突然――舞台にスポットライトが灯った。
暗い客席に照らされた舞台……今しも舞台開幕といった様相。
騒々しい電子音のファンファーレが鳴り響く。

出入り口が開き、飛び込んできたのは白い矢印――!
空を舞う龍のように縦横にホール内を飛び回る。
ある時は竜巻のように渦を巻き、ある時は二叉に分かれ縺れながら―――見ようによっては酷く滑稽な動きで。
おちょくるように何度もひとみ達の脇をすり抜け、最後には舞台の上で絞り上げた雑巾の如く捻じくれて動きを止めた。
矢印の輪郭がぶれ始める。
数秒ほど輪郭をモヤモヤさせていた矢印は白い霧に変化し、次の瞬間にはもう新しい形を成していた。


『ハーイ!みんなお集まりだね♪』

鼻をつまんで出したような甲高い声。
壇上に立って手を広げているのは、誰もが見たことのある有名キャラクターを模していた。
大きな丸い顔に大きな目……頭上にくっついた丸い大きな耳、大きな手袋、大きな靴……
末尾に『シー』とか『ランド』のつく場所に生息するあの巨大なネズミ……
既知のそれと違うのは色が白一色であること。さながら塗り絵の原画の如きキャラクターが壇上に立っていた。


『やあ!みんな♪僕のプレイランドにようこそ!!
 みんなが契約してくれたおかげで僕のプレイランドができたよ♪ありがとう♪
 自己紹介がまだだったね♪
 僕はの名前は【ザ・ファンタジア】!天才アニメーター【エイドリアン・リム】のスタンドさ♪』

スポットライトの下、満面の笑顔を浮かべた『あのネズミ』は小首を傾げて靴をタンと鳴らした。

24佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/11/17(水) 23:16:16
代行おねがいします
【名前欄】佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s
【メール欄】sage
【本文】

「今日、皆に集まってもらったのは他でもない♪僕と楽しい"ゲーム"をしてもらうためさ♪
 僕は皆のことがだ〜〜い好きだけど、僕のボスは君達に死んで欲しいらしいんだ♪
 何でも、クトウ殺しに関わってる奴らはキケンだとか…関係ない奴らも"材料"として使えるからってね♪ 
 でも君達のことがだ〜い好きな僕としては、即殺っちゃうのは不本意だから、君達に生き残るチャンスをあげるよ♪
 ゲームのルールは一度しか言わないから、よ〜〜く聞いてね♪
 
題して……
 『追いつ追われつ カクれんボ』〜〜〜♪
                "鬼ごっこ"するもの寄っといで〜〜♪」

『あのネズミ』は得意満面の笑顔で手を叩いている。
笑い転げながら輪郭をモヤつかせ、霧になって拡散し姿を消した。
直後、ひとみ達の間に霧が流れ込み巨大な白い手が現れた。丸っこい手は人差し指をピンと立てている。

数秒後、霧に変化した手は壇上に流れ、再び『あのネズミ』の姿を取った。
ネズミは一つ咳払いをして話を続ける。

「僕の能力は【『契約』と引き換えに『場』を作り出す】こと♪『場』の支配権は僕にある♪ゲームマスターは僕さ♪
 契約は平等である必要はないけれど、双方に利が無いと成り立たないよね♪
 この場合、君達の『利』は生きてここを出られること!生き残りのチャンス!
 ゲームクリアの条件は、僕の本体を見つけることだよ♪
 クリアできれば、この『場』からの退出を許可するよ♪
 あ、ちなみに僕の許可を得ないで外に出たら君達!霧になって空気に溶けて、あぼーんだから♪」


体の左半分を霧に変えて右手でハンカチを振り、わざとらしく涙を流すネズミ。
ハンカチで涙を拭うと、一転してまた笑顔。つくづく癪に障るネズミだ。


「アハハ♪もう知ってた?スデにお試し済みかな?
 それと!この『プレイランド』は2時間経つと自動的に消滅するから♪もちろん中にいる君達も一緒にね♪
 君達が2時間以内に脱出できるように祈ってるよ♪」


***********************************************

25佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/11/17(水) 23:16:59

壇上に立つ『あのネズミ』の姿をしたスタンドは、大袈裟な身振り手振りを交えて喋り続ける。
イベントの前説でもしているかのような軽妙な口調で流暢に―――彼の言う"鬼ごっこ"のルールを。


------------------------【ゲームの概要、ルール】--------------------------------

『鬼ごっこ』+『かくれんぼ』+『しっぽ鬼』  3つ合わせたようなゲーム
 
追跡する敵スタンド『ザ・ファンタジア』から逃走あるいは撃退しながら
市民会館内のどこかに潜む本体『エイドリアン・リム』を見つけ出し、彼にタッチすればゲームクリア→外に出られる
本体は、一度隠れた場所から動くことが出来ない。(それが"契約"条件であるため)

追いかける側→鬼
逃げる側  →子 と表記

・敵スタンド『ザ・ファンタジア』は常に鬼
・『ザ・ファンタジア』の掌(掌だけ黒い)に触れられた子は精神を支配され、鬼の仲間となる
・鬼になった者は敵スタンドと意識が同調し、子を探し捕らえる為に動いてしまう
 (鬼になっても性格や嗜好は元のまま、スタンド能力も使えます)
・鬼になった子には尻尾が生える(○ッキーマウスのような細くて黒いヤツ)
・鬼になった子の掌はスタンドと同じく黒くなる。黒い部分で触れられた子は鬼化する
・子が鬼(敵スタンドを除く)の尻尾を切れば、その鬼は子に戻る
・鬼化している者のビーコンは一時機能停止状態、鬼が子に戻ると再び機能する
・『場』が消滅するタイムリミット、2時間を待たずに全員が鬼化したばあいはゲームオーバー
 (全員ディスクを抜かれ死亡確定)

鬼が子に与えるヒント
・子の首にはビーコン付きの首輪がはまる
・鬼が子の3m以内に近づくとビーコンから音楽が流れる(曲はエレクトリカル・パレード)
・鬼が『もーいいかい』と尋ねると、一番近くの子のビーコンから『もーいいよ』という声が流れる(3m以上離れていても)

攻撃について
※ザ・ファンタジアは実体化している状態であれば攻撃を当てることが出来ます(霧化時は攻撃無効)
 ただし撃退は出来てもダメージを与えることは出来ません
 ダメージを受けても一度霧化すると再生します

------------------------------------------------------------------------------------

『フー…説明も楽じゃないなァ〜♪』
ひとしきり説明を終えたザ・ファンタジアは霧でハンカチを作り出し汗を拭く仕草。

客席で話を聞く一同は気づくだろう。いつの間にか自分の首に鉄の首輪がはめられていることに。
首輪の正面には、簡略化したネズミの顔型(丸の上に丸二つくっつけた形)の装置が付けられている。
これが鬼ごっこ用ビーコンである。


『君達の様なおバカさんに一回で理解しろって言うのもカワイソーだから、契約書にルールを書いておくね♪』
面々の手には契約書が握らされている。
ロビーで見たものと同じ書類だが、ゲームの"ルール"が箇条書きで追記されていた。


『じゃあそろそろいいかナ〜〜♪"鬼ごっこ"を始めるよ〜〜♪
 まずは僕が追いかけるから、10数える間に逃げてね〜〜♪
 い〜ち♪に〜い♪さ〜ん♪しーい♪………』

真っ白なネズミは掌で大きな目を覆い、節をつけて数を数え始めた。
それは狂ったゲームへのカウントダウン……!!


【鬼ごっこを始めます。ルールなどで、分かりづらい所があれば避難所で質問を受け付けます
 敵スタンドが十数えている間の行動は、逃げるも良し、攻撃を当ててみるも良しw】

26佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/11/18(木) 01:08:06
【本体】
名前:エイドリアン・リム
性別:男
年齢:33
身長/体重: 158/55
容姿の特徴: いつも意味無く笑顔、愚鈍そう。子供に警戒感を与えない印象。
人物概要:ロリペド野郎。著作権に異様に厳しい某アニメ会社のアニメーターだった。
     キャラクターの絵などを餌に子供を遊びに誘い出し弄った後に殺害する手口が定番の猟奇殺人犯。
懲役年数: 125年
被害者推定: 15才以下の小児数十人を殺害。


【スタンド】
名前:ザ・ファンタジア
タイプ/特徴:白っぽい霧。自在に霧散、集合し形を変化させる。

能力詳細: 『契約』を結ぶことで『場』を創造する能力。
      一度作り出した『場』に入り込んだ者は強制的に『契約』に縛られる。
     
アルカナ/ 魔術師(正位置)

破壊力-B スピード-B 射程距離- B
持続力-契約期間内において∞ 精密動作性-C 成長性- E


A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

27佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/11/18(木) 01:12:04
【本体】
名前:エイドリアン・リム
性別:男
年齢:33
身長/体重: 158/55
容姿の特徴: いつも意味無く笑顔、愚鈍そう。子供に警戒感を与えない印象。
人物概要:ロリペド野郎。著作権に異様に厳しい某アニメ会社のアニメーターだった。
     キャラクターの絵などを餌に子供を遊びに誘い出し弄った後に殺害する手口が定番の猟奇殺人犯。
懲役年数: 125年
被害者推定: 15才以下の小児数十人を殺害。


【スタンド】
名前:ザ・ファンタジア
タイプ/特徴:白っぽい霧。自在に霧散、集合し形を変化させる。

能力詳細: 『契約』を結ぶことで『場』を創造する能力。
      一度作り出した『場』に入り込んだ者は強制的に『契約』に縛られる。
     
アルカナ/ 魔術師(正位置)

破壊力-B スピード-B 射程距離-『場』の中において∞
持続力-D 精密動作性-C 成長性- E


A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

28佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/11/20(土) 01:33:05
代行おねがいします
【名前欄】佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s
【メール欄】sage
【本文】
『10数える間に逃げてね〜〜♪い〜ち♪に〜い♪さ〜ん♪し〜い♪…』
後ろ向きになって顔を隠し、数を数え出す『あのネズミ』。

>「だが断る。その法に触れそうな顔を合法レベルにまで整形してやるゥーッ!!」
ネズミに歩み寄る御前等。

「ちょっと不用意なことは止めなさいよ!ゲームのルールが本当なら、あんたが鬼になる可能性も…」
ひとみの制止など耳に入っていない様子で、御前等は更にネズミの背後に近づく。

>「俺と貴様のどちらがよりウザいか!格の違いを魅せつけてやるぜッ!!」


御前等の腕から剥離したスタンド――アンバーワールドの拳がネズミに迫る―――!
今しも拳が叩き込まれる…という刹那、ネズミの後頭部がバクリと口を開いた。
ネズミの顔の裏に出来たもう一つの顔……
カトゥーンアニメを思わせる漫画チックで巨大なオオカミの口が、アンバーワールドの腕を呑み込んだ。
拳が牙の生え揃った白い口腔内に捕えられた途端、オオカミの口はガチリと噛み合わせられた。
輪郭をモヤつかせていたネズミの後頭部から、千切れるように、牙を立てたままのオオカミの顔が分離する。


『ぎゃははははッ♪ヤッテヤッタぁーー♪不意打ちのつもり?ザンネンでしたァーーッ♪
 そんなに殺気を撒き散らしてたんじゃあ不意打ちもクソもないジャン♪
 てか僕はモトモト霧だよ?この目は飾りダヨぉ〜♪じゃあ何で目隠ししてたかって?遊びには気分が大事ジャン♪』

アンバーワールドへの対処を分離したオオカミに任せ、御前等から3mほど距離を取ったネズミは、
腹を抱えて笑い転げている。

『僕と君のどっちがウザいかって?そりゃ君に決まってるよ♪僕は背後の文と会話したりしないからね♪
 背後+君……単純に見積もってウザさ二倍だモーーン♪
 ウザさでもトップを取りたい君の負けず嫌いを称えて、【ウザキング】の称号を君に贈るよ♪
 ウザキング君!君がルールを破ったから、10数えるのはナシね♪
 たった今から鬼ごっこ開始ぃ〜〜♪』


アンバーワールドの腕に食らいついているオオカミの顔の根元から、ほの白い腕が2本、萌芽し伸張する。
御前等を掴まんと迫る腕―――掌の部分だけ他と対照的に真っ黒である。


時を同じくして、ネズミ…もといザ・ファンタジアの体表が陽炎のように揺らぐ。
直後、ネズミの纏っていた服はタキシードから魔法使いのような長いローブと三角帽子に変っていた。
ザ・ファンタジアは口から吐き出した霧で四本の竹ホウキを作り出し、宙に放り投げた。
空を回転する白いホウキ…柄の部分から細長い腕が伸びる。御前等に噛み付いているオオカミ同様、掌だけが真っ黒だ。
着地したホウキは穂を足代わりに歩き出し、それぞれが細い腕を揺らめかせ、ひとみ達に向かって駆け寄って来る。

4本のホウキのうち2本が目標を失い、ホール内を右往左往している。
『チェッ♪ふたり逃げられてたかァーー♪まあいいや♪ゲームは時間一杯楽しまないとね♪
 何だか冷えてきたなァー♪冷房の効かせ過ぎは良くないんだゾッ♪』


【御前等さんに分離したオオカミ顔で噛み付き攻撃。まだホールに残っている生天目さん&佐藤に竹ボウキ攻撃
 黒い掌に3秒間触れられ続けると鬼化します
 逃げちゃった人たちはもうちょっと待って〜】

29佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/11/23(火) 19:58:32
【名前欄】佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s
【メール欄】sage
【本文】
>>85-87
後ろ向きになった『あのネズミ』に迫るアンバーワールドの拳――!策も覚悟も無い思いつきだけの特攻。
結果―――こちら側の利になることは、何一つ起こらなかった。

『ウザキング君!君がルールを破ったから、10数えるのはナシね♪たった今から鬼ごっこ開始ぃ〜〜♪』
忌々しいほど楽し気なネズミの声が、ゲーム開幕を告げる。

御前等はスタンドを、ネズミから分離したカトゥーンオオカミに食い付かれ
未だホールに居残っていた有葵とひとみは、霧製のホウキに追い回されるハメになった。
混乱と狂騒――ネズミの高笑いと、ひとみ達の首輪から流れ出すアホみたいに能天気な電子音のメロディ、
それに怒号と悲鳴が混じり合いホール中を反響している。

「だから止めろって言ったのにッ!いっつもロクなことしないんだから!このクズッ!!」

ひとみは迫り来るホウキの手をかい潜り、座席の間を逃げ回りながら怒声を上げた。

霧オオカミは、ジャレ付くアホ犬の如きしつこさで、アンバーワールドの腕に食らい付き振り回している。
御前等のスタンドは徳井と同じ近距離パワー型。射程距離はせいぜい2m程度だ。
スタンドは本体から一定以上離れることは出来ない。また逆もしかり。スタンドが動きを封じられれば本体も動けない。
スタンドを捕えられた御前等は、逃走も闘争も不可能で、ただスタンドの側で棒立ちになるより他ない。
オオカミの生首から生えたひょろひょろの腕が、御前等に向かって真っ直ぐに伸びる――!
事の重大さを認識していないのか、御前等は大した抵抗もせず、アッサリと黒い掌に腕を捕まれた。


>「えっと、この腕に掴まれ続けたらどうなるんだっけ」
>「佐藤さーん、俺あのネズミの説明全部聞き流してたんだけど、こいつは一体どうすればいいんだ?」
>「おっと、そうだそうだ。ネズミがくれた紙があったじゃないか。――って、腕掴まれてたら読めねえ!?」ドギャーン
能天気男の自問自答。

「馬鹿ッ…!何でもいいからさっさとその手をッ!振り払いなさいッ!!」
逃走の間隙を縫って御前等に視線を移し、金切り声を上げるひとみ。

―――が、時既に遅し。

オオカミの掌から転移した黒に全身を侵食され、蹲る御前等。一瞬真っ黒に染まる身体。
……数秒を置いて、立ち上がった男の瞳からは光が消え完全に瞳孔が開ききっていた。唇は強張った薄笑いを浮かべている。


『ハ〜〜イ♪鬼のいっちょあがりぃ〜〜〜〜♪よ〜しよし♪プ○ート♪噛み付き攻撃ヤーーーメぇ♪』

ネズミはケタケタ笑い、オオカミの攻撃を制した。
オオカミ…もとい出来の悪いネズミの飼い犬は、スタンドの腕にぶら下がったまま大人しくなった。


>「合法的に痴漢しまくるチャーーーーーーーーーンス!!」

狂気の男は、尾骨辺りに生え揃った黒ミミズの如き尻尾を揺らめかせ、人外のスピードで有葵に飛び掛る。
ホウキをご都合主義な『実』の力で一蹴し、真っ黒な掌を突き出し息を荒げて有葵に迫る!
まさに少女を襲う変質者を地で行っている。

30佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/11/23(火) 19:59:44

以前、白い竹ボウキとの追いかけっこを続けているひとみ。
逃走の経路で軽くジャンプ――足元には、通路の床上20cmの位置に触手製のワイヤーが予め張り巡らされていた。
ひとみを追いかけていたホウキは、触手ワイヤーに躓いて空に投げ出され数秒の滞空の後、カランと音を立てて床に落ちた。
座席の隙間に身を潜めていたフルムーンがホウキの側に姿を現す。
機を逃さず、足代わりの穂を触手でぐるぐる巻きに固定し、ホウキの動きを奪う。

床に転がるホウキを尻目に、ひとみは走る。
御前等の猛追を前に、呆然と立つ有葵の手首を掴み――ホールの出口に向かって駆け出した。
ひとみと有葵――二人の頭上に浮遊するフルムーンから、触手を繋ぎ合せた薄い皮膜が降りて来て、その姿を包み込む。

インビジブル発動―――
皮膜に覆われた二人は、空気に溶けるように姿を消した。
透明化によってザ・ファンタジアと御前等の目を眩ませた二人は、ホールを抜けて
一気に南ロビーの階段を上がり、二階廊下、医務室前あたりまで移動した。


「バラバラに手分けして本体を探す…なんて冗談じゃないわ!
 敵スタンドに襲われた時、私達の非力なスタンドで、一人きりで対処できると思ってるのッ?
 あのスタンド、分離したホウキのパワーは大したこと無かったけど、ネズミ自体の攻撃力は完全に私達より上よ。
 それにあの馬鹿男まで鬼になったんじゃ、もう…!」

透明化を解いたひとみは、有葵に向かってボヤくような口調で語りかけた。
手元のシートには竹ボウキに接触した時に得たスタンドデータが表示されている。

*********************************************
>>83
一方、一階守衛室に移動した、よね。
狭い部屋の中は無人だ。数台の事務用机と椅子が雑然とした部屋に詰め込まれているのみ。
壁一面に設置された十数台のモニターは生きていて、各部屋の監視カメラの映像が映し出されていた。
すべてのモニターに写る映像を逐一チェックしていくのは一仕事だが…
よねは気づくだろうか?
モニターに映る4Fライブラリ…蔵書や映像を保管する、ちょっとした図書館のようなこの部屋。
ライブラリの隅に置かれた大画面TVの前で、何やら食べながら寛ぐ男の姿がチラリと映った事に……。


**********************************************
場面はまたホールに戻る。
ひとみ達に逃げられ、取り残された『鬼二人』――ザ・ファンタジアと御前等。

『ウザキング君…!鬼になってくれてうれしいよ♪仲良くしようね♪
 さっきは背後とニコイチ扱いしてゴメンね♪君一人でも充分過ぎるほどウザイって♪
 僕のペットが君に懐いちゃってるみたいだけど、とりあえず返してもらうよ♪』

ザ・ファンタジアが唇を尖らせスゥーーーーっと息を吸う。
アンバーワールドの腕にぶら下がっていた駄犬は、霧となってネズミの口に吸い込まれていった。

『さて、外に出て手分けして哀れな子羊を追い詰めようか♪何かこの部屋妙に寒いしね…』
スタンドは全身を震わせて、クシュンと一つくしゃみをした。
『…と言っても僕、霧だから別に寒さは感じないんだけどね♪…ってかそもそもスタンドって寒さ感じるの?』

しょうもない戯言を垂れ流しながらホールを後にする一人と一匹であった。
どちらが一人でどちらが一匹かは、ご想像にお任せする。


【佐藤と生天目さんの現在地は2F廊下、医務室前あたり】
【よねさん、守衛室のモニターに謎の男が映ってます(4Fライブラリ内)今行ってみても誰もいないかも】
【御前等さんの今後の行動はお任せ。ちょっとの間誰かを追っかけてくれるとうれしいな】
【天野さんの現在地って今どこ?】

31佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/11/23(火) 20:00:27

二部用wiki
http://www44.atwiki.jp/jojo2nd/pages/1.html

現在開催中の鬼ごっこのルール、舞台はこちら
http://www44.atwiki.jp/jojo2nd/pages/39.html

新規希望者の方へ
http://www44.atwiki.jp/jojo2nd/pages/36.html

スタンド作成時のヒント
http://www44.atwiki.jp/jojo2nd/pages/33.html

32佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/11/28(日) 21:50:36
【時間軸:御前等さんがよねさんに襲い掛かる数分前(戦闘中の御前等さん、よねさんとは時間軸がズレてます)】

医務室の扉を細く開けて中を覗く。
簡易ベッド、医療器具を乗せた棚に丸椅子。こういった部屋につきものの設備が置かれているだけで特に異変はない。
医務室は逆Lの字型廊下の角に位置し、それぞれの廊下に面した入口がある。
片方の扉から"鬼"に侵入されても、別の扉から脱出できる為、最悪な袋の鼠状態は避けられる。
ひとみは有葵を促し周囲を警戒しながら部屋の中に入った。

>話は変わっちゃうけど、ひとみんたちってワーストたちにまんまといっぱい食わされっちゃったね。
>ワーストたちが意図してたのか意図してなかったのかはわかんないけど、
>調査も何もここってスタンドホイホイだったわけじゃん。地雷原にでんぐり返し
>で転がっていったようなものだもの。
>流石のひとみんも知恵くらべで斜め上を行かれちゃったか…」

有葵は相変わらず口も態度も忙しない。その上、能天気な口調で痛いところを突かれて、ひとみはとうとう声を荒らげた。


「だから!さっきから何度も"嵌められた"って言ってるでしょッ!!人の話聞いてないんだから!あんたはッ!!
 シートにスタンド使いの反応が出れば、私だって無防備にこんな所に入り込むようなマネしなかったわよ!!
 大体この状況において、その緊張感の無さは何ッ?あんたはいつも真剣味が足りないのよ!
 あの時だって……!」

…言いかけて、ハッとして喉元まで出かかった悪態を引っ込める。
腹を立ててもプラスになることは何も無い。寧ろ冷静さを損なうだけ生き残りの道は険しくなる。
ひとみは、湧き上がる苛立ちを強引に呑み込み、深い溜息に変えて吐き出した。


「ランチの心配は生きてここを出られてから、ゆっくりすることね……
 今はこの下らない"鬼ごっこ"のことを考えましょう。
 あんたは『虱潰しに本体を探せば楽勝』なんて言ったけど…そりゃ、あのネズミが居なきゃそれで楽勝でしょうけどね。
 ネズミが何もせずに、虱潰しに探させてくれると思ってるの?
 あのネズミは"追跡者"…"鬼の元締め"なのよ。アイツに触れられたら私たちだって"鬼"になる。

 問題は【追っかけてくる"鬼"を撃退しながら、本体を探さなきゃならない】ってことよ。

 私達のスタンドは、あのネズミよりパワーもスピードも下。狙われたら一人では対処できない。
 オマケに、ホールで鬼になった馬鹿も私達を探して追いかけてくる筈だわ。
 撃退しながら探索するには、最低二人で行動する方が利口だと思わない?」
 

苛立ちを押さえ、潜めた声で噛んで含むように有葵に語りかけるひとみ。

「これも、さっきから言ってることだけと…もう一度確認しておくわ。私の探知能力はアテにしないで。
 建物内で反応が出るのは私達のものだけ。あのネズミと本体の反応が出ないのよ。
 『場』には私の能力を狂わせる何かが働いてる。
 …あのネズミも言っていたことだけど、『場』は『ゲームのルール』に基づいて創造されている。
 恐らくゲームそのものを不成立する能力には制限が掛けられてるのかも……。
 どっちみち、"鬼"の手を逃れながら、虱潰しに本体を探すしかないわね…」

33佐藤 ◆tGLUbl280s:2010/11/28(日) 21:51:02
言いながら、ひとみはレイヤーを剥がすようにスタンドシートを分離した。
4枚の分離シートにはそれぞれの階の平面図が表示されている。
 
「幸い、私達鬼ごっこ参加者の位置はマーカーで表示できるわ。これは利用しなきゃね。
 天野君の現在地は3F調理室付近……よね君と馬鹿男は4Fにいる…
 馬鹿男がだんだんよね君に近づいていってる…
 "鬼"になった馬鹿男……どうやらよね君を見つけて、彼にターゲットを絞ったみたいね。
 これって一種のチャンスだわ。鬼の数は少ないに越したことはない。
 馬鹿男がよね君を狙ってる隙に、姿を隠して背後から近づいて、私達がアイツの尻尾を切り落としてしまいましょう。
 あんたのステレオポニーでも、尻尾を切り落とすくらいのパワーは……」


言葉尻に被せるように電子音のメロディが鳴り響く。音の発信源は自らの首に嵌められた首輪――!
―――すなわち、鬼の接近を告げる警告音!
コンコン――コンコン――…
電子音に混じり、広い方の廊下に面した扉をノックする音がする。

『ここかなぁ〜♪この部屋の中かなぁ〜♪聞こえる…聞こえるぞぉ〜…レディーの声がするぞぉ〜♪
 ウザキング君には悪いけど、僕がお先に痴漢しちゃおうかなぁ〜♪』

聞こえてくるのは独特の甲高い声―――
フルムーンで扉の向こう側スキャンすると、
案の定、扉の前には『あのネズミ』が○ィズニーキャラクターとは思えぬ悪辣な笑みを浮かべて立っている。


「クソッ!突き止めるのが早すぎるわッ!有葵!あっちの扉から脱出するわよ!!」
ひとみはもう一方の扉を指差し、駆け寄った。
同時にワイヤー程度の固さにした触手で、ドアノブが回らないように雁字搦めに固定し、触手を切り離す。

「ほら早く!!」
有葵を促し、もう一方の扉のドアノブに手をかけ、回そうとする――が、
ノブはガチャガチャ音を立てるばかりでビクとも動かない。フルムーンの『眼』で動かない鍵穴を覘くと――
鍵穴の中には白い固形物がギッシリ詰まっていて、ドアの開閉を阻止していた。
ホウキを作った時同様、あのネズミが分離した霧で『鍵』を作り、逃げ道を塞いでいたのだ。


「やれらた――!閉じ込められたわ!!」
開かぬ扉の前で無駄な足掻きを続けているひとみ達の背後…ノック音の続く扉から、モヤモヤした霧が染み通るように侵入してくる。
ひとみと有葵が振り返った時――部屋の中央には既に『あのネズミ』が立っていた。
ネズミの大きな耳はパラボラアンテナをつけた集音機の形状を模している。
この霧製集音機でひとみ達の話し声を探知し、居所を突き止めたのだろうか。


『僕は志向的に幼女崇拝派なんだなぁ〜♪幼女の裸ほど美しいものはないよ♪女なんて13歳過ぎたらオバサンだからね♪
 どっちもババアだけど狙うならコッチかなぁ〜〜〜♪』

真っ白なザ・ファンタジアの顔に、邪悪な笑みが刻んだ皺が灰色の影を落としている。
白い体表を蠕動させたザ・ファンタジアは、右手を鎌首を擡げるコブラに変化させ、有葵に向かってけし掛けた!
シャアァアアアーーー!威嚇音を漏らし、有葵に襲い掛かる白コブラの口の中は真っ黒だった。


【冒頭でも書きましたがこの出来事は、御前等さんvsよねさんの戦闘とは時間軸が違います。】
【1ターン後には追いつきますので、もう少し待って〜。】
【天野さん合流歓迎ですが、次ターン以降にお願いします。お待たせしてすいません。】
【生天目さん、ザ・ファンタジアは霧化していない時は普通に殴ったりして撃退できます。】

34佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2010/12/01(水) 01:34:07
扉が開かない―――!
鍵穴の中に触手を突っ込んで白い霧の塊を除去しようとするも、塊は鍵穴に隙間なく入り込み
ガチガチに固まっていて埒が明かない。こうなったら建具の金具を外すしかない。
硬質化したフルムーンの触手で疑似工具を作り出し、蝶番のボルトに差しこみ緩めようと試みていたその時――

―――ゴウンッ…衝撃音と共に扉が傾いた。
重量物の齎す風圧がひとみの前髪を煽る。寸手の所で身を捩り、体勢を崩しながらも一歩体を引く。
扉はひとみの半身を掠めるように倒れ、転がり込む消火器と共に、床に叩きつけられて派手な音を立てた。


自分達の逃走を阻む障害が倒壊したというのに、ひとみはその場から動けない。
扉を失った開口部に立つ人影に釘付けになっていた。

……あの女だ……!
フラッシュバックする映像と声……『魔』たる球体を臨む、あの場所での二人きりの邂逅――
九頭は『魔』の正体と『留流家』の来し方を闇に投影して見せた。
そして九頭が最後に見せたヴィジョンは、他ならぬこの少女の姿であった。

――――『彼女は見事に階段を登り、私が認め得る存在となった。』
――――『私は彼女の誕生を心から祝福し、次に残す事にしたのだよ。』

九頭龍一の口から発せられた少女への賛美と称賛。
あの時感じた屈辱、嫉妬、怨嗟が、生々しい感情の渦となってと蘇る……。


>「……あら、ごめんなさい。先客がいましたか」

凛とした少女の声が回想を打ち破った。
ひとみの中で何重にも黒い感情が渦巻いていた時間は、まばたき数回ほどの一瞬でしかなかったのだ。
我に返ったひとみは、現在の至上命題である、この部屋からの脱出に意識を向け直した。

>「……私はですね。貴女達を殺すつもりで付けてきました。お陰でこんなゲームに巻き込まれてしまいましたが」
>「正直言って、ここで貴女達を殺すのは簡単ですわ。少しばかりここを通せんぼしてやれば、それでいい」


「何馬鹿なこと言ってんのよッ?さっさとそこから退きなさい!
 でないと、その男受けだけは良さそうな小奇麗な顔に傷が付くことになるわよ!!」

少女の向ける静かな――しかし確固とした敵意を打ち返し、ひとみは彼女を威嚇する。
振り上げた触手の鞭を、少女に向けて振り下ろさんとした刹那――――


『にぎゃぁぁあああああああ!!!シャレにならないよ♪♪!!痛い!!痛い!!痛いよぉおおおおお!!!!!!』

搾り出すような絶叫を耳にして、ひとみは思わず振り返った。
部屋の中央部で、ステレオポニーと『あのネズミ』―――ザ・ファンタジアが互いの腕を交差させている
蛇を模したザ・ファンタジアの右手に食いつかれたステレオポニーの肩にはヒビ割れ、
しかし、その小さな手でザ・ファンタジアの手首をしっかと掴んでいた。
ステレオポニーの拳によって増幅された超音波振動を受けたザ・ファンタジア
右腕から胸部にかけて、連鎖的に細かいヒビ割れが走り――バリンッ―――!と瀬戸物が砕けるような音を立てて砕け散った。
白い破片が部屋中に飛び散り、下半身だけ取り残されたスタンドも煙になって消失していく。

35佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2010/12/01(水) 01:35:03
敵の気配の消えた医務室に取り残された三人の女。
>「ちょとお!ドアが開いてるんだったら教えてよー!馬鹿みたいじゃない!あとひとみんは私の右手治してね!」
流血しながらも有葵の声はどこか能天気だ。

「治せるからって救急箱扱いは止めてよね。治療だって疲れるのよ。」
ボヤきながらも有葵の肩の傷をフルムーンの触手で縫い合わせていく。

「まったくもう…急用でイタリアに帰ったどっかの馬鹿みたいに全力で負傷するのは止めなさいよね…」
更に小言を付け加えようとして、ひとみは背後に違和感を感じて口を噤んだ。


『―――♪呼ばれて飛び出てジャジャジャジャ〜〜ン♪なんてね♪
 お呼びでない?お呼びでない?コリャマッタ失礼シマシタぁ〜〜〜っ♪……キャラが違うって?
 ジャパーンの古典アニメもグッだよね♪アニメじゃないのも混じってるけど♪
 ぎゃはははっ!びっくりした?僕は霧だから不死身なんだよ〜ん♪』

声と共に再び鳴り響く電子音のマーチ。
ひとみの背後にぴったりと寄り添うように、何時の間に現れたのか、にこやかな笑顔の『あのネズミ』が立っていた。

『今度は大年増つーかまーーーーえたーーーー♪!!!』

ひとみは両肩をザ・ファンタジアの丸っこい手に掴まれていた。
スタンドの掌を中心にひとみの身体に染みのように広がる黒い汚染地帯…
フルムーンの触手鞭で肩を掴む手を滅多打ちにするが、ネズミは妙な嬌声を上げるだけで手を離そうとしない。

「なっ…何なの?コイツ…ダメージは無効化…瞬間移動みたいにイキナリ現れるなんて…反則的すぎるッ…」

抵抗むなしく時間は過ぎていく。
1秒…………2秒………2.5秒………2.7秒――――――!
黒い染みは指の第二関節辺りまで迫っている。


「じょッ冗談じゃないわ!!こんなクズネズミの仲間になるなんてッ!!
 有葵!あんた、私が鬼になったら、何を置いても私の尻尾から切り落としてよォオォォォォォ!!!」


語尾は自然に叫び声に変わっていく。
とうとう観念して目を瞑って――――――

3秒…………4秒…………5秒…………6秒…………………

………『その瞬間』は訪れない。
そういえば、肩に感じていた圧力が無くなっている。
ひとみはそうっと目を開く。掌も腕も足も、常の肌色に戻っていた。

>「……ですが、それでは私が助からない。私は幸せになる為に貴女達を殺すのです。私まで死んでは、意味がない」
>「だから手を組みましょう。お互いが幸せになれる、素晴らしい提案だと思いませんか?」

開口部に佇んで、医務室内のドタバタを静観していた少女が冷ややかに口を開いた。
冷や汗まみれのひとみは言い返す気力も無かった。

【レス終了時の時間軸はよねさんと御前等さんがライブラリに侵入してバトルをおっぱじめた頃です】
【天野さんこの後合流しますか?】
【生天目さん、レス内での疑問『スタンドの重ねがけ』に関しては結論を言っちゃうとNOですw】
【吉野さん傍観者にしちゃってごめんなさいw】

36佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2010/12/04(土) 00:11:53
背後からひとみの肩を掴んでいたネズミの姿が消えた――――
押し寄せる安堵と混乱に、ドッと冷や汗が吹き出す。ひとみは暫し茫然と立ちつくしていた。
手を広げて掌に目を落とす。
極度の緊張によって汗ばんだ掌は、血の気を失って真っ白だ。
―――ひとみはホールの光景を思い起こした。鬼になった御前等祐介の掌は黒く変色していた。
自分は"鬼"になったのか否か……?自覚症状はない……肉体的にも精神的にも変化は感じられない。
……しかし何故ネズミは目的を達せずに、忽然と消えたのか――――?


>「と言うより、組まざるを得ないと言うのが正しい所ですかね」
戸口に立つ少女が、畳み掛けるように『提案』を持ちかける。

>「で、どうしますか?答え、急いだ方がいいと思いますけど」

嘲笑を潜めたイケ好かない物言いが、ひとみの神経を酷く逆撫でした。
込み上げる怒りが意識を現実に引き戻し、少女への敵愾心が却ってひとみに冷静さを取り戻させた。
ひとみは溜め込んでいた呼気を吐き出してから、静かに口を開いた。


「私を殺すためにストーキングしてた…なんて言う、頭のおかしい女と手を組むなんて虫唾が走るッッ!
 …と言いたい所だけど……いいわ……。
 こんな外部と隔絶された場所で揉めたって得な事は一つも無い。
 ゲーム参加者同士での内輪揉めなんて、それこそ悪趣味なネズミの喜びそうなことだわ。
 共通の敵である糞ネズミを倒して外に出るまで、一時手を組みましょう。臨時の対ネズミ協定ってとこね。」

少女への返答は『限定的YES』。
彼女に向けていた視線を逸らし、ひとみは背後を振り返った。
そこには白い壁があるばかりで『あのネズミ』がいた痕跡は何も残っていない。


「それにしても、『あのネズミ』は何で急に消えたのかしら?
 あとコンマ0.何秒か待てば、私を"鬼"に出来たのに……少なくとも原因は、ここにいる私達じゃないわよね? 
 私の攻撃は全く効いていなかったし、あんた達が何かした訳でもなさそうね…?」

有葵と戸口の少女、交互に視線を向けて確認を取る。

「ネズミが消えた原因を探るとして、まず考えるべきなのは、私達以外の参加者の行動ね。
 ゲームのフィールドである『場』が消えてないところを見ると、誰かが本体を見つけて倒した訳ではない。
 でも何か…ネズミの弱点…とか、『場』を持続させる為の秘密とか…
 私達以外の誰かが、その類のものを発見して何かしたのかも……?
 あくまで一つの可能性にしか過ぎないけど、合流して確認を取る方がよさそうね。」

37佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2010/12/04(土) 00:12:18
ひとみの手の下に淡く光るスタンドシートが出現した。
4層に分離したシートには各階の見取り図と、数個の光点が浮かび上がっている。


「鬼化した馬鹿は、まだ4階ライブラリにいる。よね君は3階…スポーツジムのロッカー付近ね。
 よね君、あの馬鹿を上手く巻いて、下の階に脱出したのかしら?
 天野って子は3階、調理室辺り。
 さて…これからどうするか?選択肢は2つ。
 ネズミ消失の謎解きを優先させるなら、よね君か天野って子と合流して話を聞く。
 若しくは、リスク軽減を優先させるなら、あの馬鹿の尻尾の始末を先にやっておく手も……」


言葉尻を呟きに変え、頬に指を当ててちょっと考え込むひとみ。
今一度スタンドシートを覗き込む。
何かがおかしい―――シートを眺めているうちに、ようやく違和感の正体に思い至った。
自分達の現在地――医務室周辺の光点の数が足りない……
ひとみと有葵の二つだけで、少女の光点が表示されていないのだ。
特殊なフィールドである『場』によって、ひとみの探知能力は狂わされている。
存在を認識していない能力者を捕捉出来ない可能性はあるとしても、目の前にいる人間に反応が出ないなど考えられない。

「これ…どういうこと?あんたまさか……?」

医務室周辺を拡大したシートを少女に向け、ひとみは少女を問い詰めた。


【引き続き調整のため大きな動きなしです。スイマセン】
【天野さん合流したかったら、いつでも言ってくださいね】

38吉野 ◆H7TeP6yEkU:2010/12/10(金) 11:49:41
佐藤ひとみが『ザ・ファンタジア』に肩を掴まれた時、
吉野は沈黙と共に衣服のポケットに右手を潜り込ませていた。
布地の内に秘めているのは、比較的大きめの果物ナイフだ。
スタンド使いでも、胸を刺せば死ぬ。
首を切っても死ぬ。頭部を強打しても死ぬ。
吉野はもしも佐藤が鬼になってしまったら、その時は間髪入れず彼女を殺す気だった。

けれどもそれは未遂に終わる。
『ザ・ファンタジア』は一体どうした事か、
佐藤ひとみを鬼にする事なく消え去ったのだ。

ナイフを手放し右手をポケットから出して、吉野は小さく息を吐く。
そして改めて協力の是非を問い掛けた。

>「私を殺すためにストーキングしてた…なんて言う、頭のおかしい女と手を組むなんて虫唾が走るッッ!
 …と言いたい所だけど……いいわ……。
 こんな外部と隔絶された場所で揉めたって得な事は一つも無い。
 ゲーム参加者同士での内輪揉めなんて、それこそ悪趣味なネズミの喜びそうなことだわ。
 共通の敵である糞ネズミを倒して外に出るまで、一時手を組みましょう。臨時の対ネズミ協定ってとこね。」

「……貴女がそれを言いますか?まぁ、深くは言及しませんけど。どうぞよろしく」

佐藤の返答に吉野はもう一度、今度は嘲笑混じりの吐息を零した。
愛する者が自分の手に入らないのならばいっそ殺してしまおう。
そう考え、あまつさえ実行に移した女から、まさか頭がおかしいと謗られるとは思わなかったのだ。
だが佐藤の言う事は、彼女が言えた事ではないが――それでも正しかった。

幸せになる為に殺す。
誰かを不幸にすれば、相対的に自分は幸せになれる。
吉野きららが抱き締めていた信条は、致命的に壊滅的に破綻しているのだ。

それは彼女の現状を見れば明らかな事だ。
九頭龍一は殺し損ね、一度は手にした完成した能力も瓦解して。
躍起になって人殺しを繰り返している内に、訳の分からない男に絡まれ、顔面を殴られて。
そして今、九頭との戦いで『何かを得た者』を殺す事で
『何も得られなかった自分』を乗り越えようとした彼女は、
生死を分かつゲームへの参加を余儀なくされている。
彼女は段々と不幸に陥っていた。

そしてそれに気付いてしまったが故に、吉野きららはスタンド能力を失った。
スタンド能力は精神力の具現化した物だ。
幸せになりたいと願う精神に根差していた彼女の能力は、文字通り力の源泉を失ってしまった。
今や吉野は「ここでやめてしまっては何も残らない」と言う惰性の下で、動いている。

>「それにしても、『あのネズミ』は何で急に消えたのかしら?
 あとコンマ0.何秒か待てば、私を"鬼"に出来たのに……少なくとも原因は、ここにいる私達じゃないわよね? 
 私の攻撃は全く効いていなかったし、あんた達が何かした訳でもなさそうね…?」

「そう、ですね……」

何も出来なかったのだとは言わない。
露呈するまでは敢えて明かす必要のない情報だ。
むしろ悟られてしまえば、役には立たず、
敵になっても怖くない存在だと盾にされてしまうかもしれない。

39吉野 ◆H7TeP6yEkU:2010/12/10(金) 11:51:03
>「ネズミが消えた原因を探るとして、まず考えるべきなのは、私達以外の参加者の行動ね。
 ゲームのフィールドである『場』が消えてないところを見ると、誰かが本体を見つけて倒した訳ではない。
 でも何か…ネズミの弱点…とか、『場』を持続させる為の秘密とか…
 私達以外の誰かが、その類のものを発見して何かしたのかも……?
 あくまで一つの可能性にしか過ぎないけど、合流して確認を取る方がよさそうね。」

「貴女のそのシート、過去の位置情報も分かるのですか?もしそうなら
 さっきネズミが消えた時、他の参加者が何処にいたのか。分かるんじゃないでしょうか。
 少なくともいざ合流した時「今から何分前、何をしていた?」と聞いても答えは得られないでしょう。
 この状況でまともな時間間隔が保てるとは思えませんし、時計だってそうそう確認している余裕はない筈ですからね」

他の参加者達の現在位置を確認している佐藤に、吉野は問いと提案を投げかける。
佐藤の能力でそれが分からなければ、それは合流後に他の面々の曖昧な時間間隔に頼るしかない。

「知るべき情報は現在だけじゃなく、過去だと思いますわ」

だが、時間で言うのならまだ一分ほど前、『ネズミが消えた瞬間』に他の参加者は何処にいたのか。
その正確な情報が得られれば、それは現状に対する値千金の突破口に成り得る。

>「これ…どういうこと?あんたまさか……?」

けれども返って来たのは、吉野が求めた情報ではなかった。
佐藤が示す『これ』――即ちスタンドシートを、吉野は顔を上げて見下すように覗き込む。
恐らくは各階の見取り図と思しい映像に、幾つかの光点が点在している。
先ほどの口振りからして光点は生物や仲間の位置かと吉野は予想した。
しかし突き付けられたシートを見ると、光点が一つ足りない。
丁度自分が立っている位置にあるだろう点が、無いのだ。
そして、吉野は察した。
この点が示しているのは生物でも仲間でもなく――スタンド使いの反応なのだと。

「……お察しの通りですわ。私のスタンドは幸せになる為の物でしたから。
 私、気付いてしまいまして。こんな事を続けても幸せになんかなれる筈がないと」

自嘲の笑みを零して、吉野は自白した。

「ですから私がスタンド能力を失ったのは、当然の事ですわ。……正確には、殆ど全てを」

言葉に伴って、彼女は右手を胸の高さに掲げた。
そして掌を上にして、伸ばした人差し指の先に小さな花の蕾を兆させて見せる。

40吉野 ◆H7TeP6yEkU:2010/12/10(金) 11:51:24
「このちっぽけな蕾が、今の私のスタンド能力。そして未練ですわ。
 咲く事がないと分かっていても尚、捨てられない。
 捨ててしまえば、後には何も残らない、最後の未練」

己を嘲るような口調で、吉野は続けた。

「だから私は貴方達を殺さなきゃいけないんです。
 勿論このゲームも生きて打破しなくては。なので暫くの間ですけど、仲良くしましょうか」

彼女の宣言は佐藤へ向けた物でありながら、一方で彼女が自分自身に言い聞かせているようでもあった。

「……ところで先ほどの選択肢ですけど、私は後者を推しますわ。
 あの男を元に戻すと言う事は敵の数を減らし、こちらの数を増やす。
 一つの行動で二つの利があるのですから」

明瞭で明快な理屈に従って、吉野は提案した。
そして佐藤に一つ、問いを放つ。

「……で、あの男は今何処にいるんですか?そのシートならすぐに分かるのでしょう?」

【知りたい情報→『ネズミが消えた時、他の参加者は何処にいたのか』
 合流後聞きたい情報→『そこで何をしていたのか』
 吉野の能力→蕾を咲かせるだけの能力。物体に咲かせる事でスタンドに対して影響力が付加出来る
 佐藤に「天野を追跡中?」の御前等の位置を尋ねる】

41佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2010/12/12(日) 04:03:42
>「……お察しの通りですわ。私のスタンドは幸せになる為の物でしたから。
> 私、気付いてしまいまして。こんな事を続けても幸せになんかなれる筈がないと」
>「ですから私がスタンド能力を失ったのは、当然の事ですわ。……正確には、殆ど全てを」

スタンド能力を失った――――少女の告白を境に沈黙の間が場を支配した。
細い指の先に兆す小さな蕾を挟み、対峙する佐藤ひとみと吉野きらら。
ひとみは無言でスタンド探知センサーの感度を上げシートに目を落とした。
シート上の見取り図、丁度少女立つ戸口付近に、ぼんやりとした光点が現れた。
少女の言う通り彼女の能力は弱まっている。が、失っている訳ではない。
嘲りを込めた小さな吐息を漏らし、ひとみは口を開く。

「気分が下がってスタンド絶不調ってわけ?思い通りに行かないから?随分気紛れな能力ね。」

ひとみが少女と顔を突き合わせるのは二度目だ。初顔合わせは決戦の地となった廃校のグラウンド。
あの時、「九頭龍一を乗り越えることで『幸福』に至る」と宣言する少女に、ひとみは激しい嫌悪感を抱いた。
九頭は誰かの幸福の踏み台になるような安い男ではない。
が、少女が九頭を通じて幸福を得られると感じていることさえ許せなかった。
幸福なんて感覚の位相次第でどうにでも変わる下らないモノ。
そんなものに拘る女に、その無意味さを知らしめて叩きのめしてやりたい―――少女と敵対していた時の気持ちが蘇る。
少女は自ら求めるものの虚しさを知ったのか……いや、この女はそんなしおらしいタマではない。
事実彼女がひとみに向ける敵意は少しも和らいではいない。

「あんたが落ち込んで能力を失おうがどうしようが、そんなこと知ったことじゃないわ。
 今問題なのはあんたが役に立つかどうか。
 戦力として二軍以下なら多少損な役割でも引き受けてもらうわよ。」

ひとみは言葉を加え、一旦スタンドシートの映像を切った。
数秒後、再びシートに全階の見取り図が浮き上がる。


「ネズミが消えた瞬間の参加者の位置……確かに確認しておく方が良さそうね。
 誰がどこで何をしていたか…参加者の行動を映像として見るのは無理だけど、
 マーカーの位置だけならキャッシュが残っている数分前のものまでなら表示できるわ。」

ネズミ消失時の全員の位置を問う少女の提案は、中々的を射たものだ。
誰ともつるまず、たった一人で九頭に挑もうとした女の胆力と洞察力は馬鹿にできない。
姿を隠した敵相手のゲーム…"かくれんぼ"は言ってみれば知力勝負。
機転や推理力はスタンド能力に負けない有効な武器である。
騒々しいばかりの御前等、インテリの割に肝心なところが抜けているよねよりも、案外戦力になるやも知れない。


シートの光点がせわしなく動き始める。現在の情報ではない。数分前までマーカーの位置を巻き戻している。
光点がある位置に到達すると、ひとみは声を上げた。

「ここ…確か有葵が鏡に向かって走り始めた時よね!ネズミが消えた瞬間って……!」

光点は一度静止し、再び動き出した。ネズミ消失の数秒前から再生させているのだ。

「他の参加者の位置は……3F…天野って子は調理実習室でじっとしてる。
 4Fは…丁度、馬鹿男がよね君に襲い掛かった?二人のマーカーがライブラリに入り込んで接触してるわ。」

その後、暫く接触と離脱を繰り返していた2つのマーカーだが、よねを現すマーカーが突然消失し3Fに現れる。

42佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2010/12/12(日) 04:04:57
シートを見つめ一通りマーカーの位置を確認した少女は、別の提案を持ちかけた。
すなわち、ひとみの持ちかけた選択肢…情報収集か、はたまたリスク潰しが先かの答えを。

>「……ところで先ほどの選択肢ですけど、私は後者を推しますわ。
>あの男を元に戻すと言う事は敵の数を減らし、こちらの数を増やす。
>一つの行動で二つの利があるのですから」
>「……で、あの男は今何処にいるんですか?そのシートならすぐに分かるのでしょう?」

少女は"リスク潰し"の選択を選んだ。ひとみも同意を示し、シートを現在の位置情報に切り替える。
御前等の現在地はエレベーター横の階段、3Fから2Fの間の踊り場付近。
少し距離を置いて御前等の前を移動するマーカーが一つ……天野だ。
二つのマーカーは一定の距離を開けたまま動いている。
御前等は天野を付けている……!

天野はエレベーター横の階段を下り2Fに至ると、廊下を真っ直ぐ進む。
天野のマーカーが廊下の途中にある音楽スタジオの扉付近で、突如移動のスピードを上げた。
御前等に付けられていることに気づいたらしい。
廊下は一本道。他に逃げ場は無い。天野は廊下の突き当たりから、そのままホールに入り込んだ。

「…天野君、あの馬鹿から逃げ切れるかしら。これ以上鬼が増えたらたまったもんじゃないわ。
 ホールに行きましょう。遠回りになるけど、ホールなら1Fからでも入れる。
 あの馬鹿に悟られずに近づくチャンスよ。」

ひとみはシートを指でなぞり西側の階段を下り、南ロビーからホールに至る順路を示した。



*************************************

――― 一方、よねの現在地、スポーツジムのロッカー

天井付近に渦巻く白い霧の渦が現れた。
渦は床上に降り立ち、数秒後には『あのネズミ』の姿が出来上がっていた。
よねのすぐ目の前、2m程離れた位置に立つ『あのネズミ』。

「あ〜〜♪メガネ君!♪やっぱりココにいたんだぁ〜♪
 メ〜ガネ君♪あっそび〜ましょ〜♪』

いかにして知ったのだろう?ネズミは、よねの位置を特定してこの場に現れたのだ。
ネズミは真っ黒な掌を広げ、じりじりとよねに近づいてくる…!
ロッカー室の扉は全て霧の塊で鍵がかけられている。ひとみ達を医務室に閉じ込めた時のように。
よねは正にロッカー室の中で"袋のネズミ"となっている。


【天野さんが逃げ込んだのはホールの2Fとしていますがいいでしょうか?(ホールの温度低下はもう解除してます…よねw)】
【吉野さん、生天目さんに御前等さん&天野ッチを追いかけてホールに行かないかと提案】
【御前等さん、1ターンほど天野さんを追いかけてくれるとうれしいな】
【黒化よねさんの前にネズミさんが現れました。タッチして鬼化しようとしています】

43名無しさん:2010/12/12(日) 23:46:36
行ってくる

44名無しさん:2010/12/12(日) 23:49:26
完了

45スレ立てテンプレ:2010/12/13(月) 21:23:12
なな板TRP『異能者達の奇妙な冒険』とは……荒木飛呂彦先生の『ジョジョの奇妙な冒険』を元ネタにしたTRPスレです。
と言っても【登場人物であるプレイヤーキャラクターが『スタンド使い』である】ということ以外原作とストーリー的な繋がりはありません。
要するにスタンド使いのオリキャラを作ってキャラクター同士絡みながらストーリーを進行させていこう…という趣旨のスレであります。


前スレ
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1288537445/

荒らし対策レス保管庫(読み直し用)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/9925/1282660345/

避難所
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1281558067/

まとめwiki
http://www44.atwiki.jp/jojo2nd/

新規さん歓迎!避難所にもお気軽にお立ち寄りください

46スレ立てテンプレ:2010/12/13(月) 21:27:06
本スレは原作「ジョジョの奇妙な冒険」とストーリー的な繋がりを持ちません。
スレッドタイトルにある【ジョジョ】という要素は異能者が『スタンド使い』であるという一点にかかっています。
ジョジョのコアなファンも原作を知らない人も共に楽しめるように、
原作に表記のあるスタンドルールを、本スレのスタンド能力運用ルールとして掲げさせてもらっています。


スタンド概略
・スタンドは『超能力をヴィジュアル化したもの』
・スタンドには通常ヴィジョンがあり、人型、動物型、機械型と、その姿は様々です。
・能力を発動する際にヴィジョンが現れます。能力の発動以外に体当たりや殴打などの物理攻撃や本体の防御もこなします。

スタンドのルール
①スタンドは一人につき一能力
スタンドを進化させて能力を発展させることはできますが、一人が2体以上のスタンドを持つことはできません。

②スタンドを見ることが出来るのはスタンド使いだけ。
例外は物質に同化するタイプのスタンドやレクイエム化したスタンド。

③スタンドに触れるのはスタンドだけ

④スタンドは本体の意思によって動く
自我を持つスタンドは本体の意向を無視する場合もある。

⑤スタンドが傷付けば本体も傷付く
例外は本体と意思を切り離された自動操縦型や物質に同化するタイプのスタンドである。
また、群集体型のスタンドは数体倒してもダメージのフィードバックはほとんどない。

⑥スタンドが行動できる距離には限界がある
これを射程距離という。本来、破壊力と射程距離は反比例の関係にあるが例外は自動操縦型のスタンドである。
-破壊力がAならば、射程距離はE(よくてD)
-射程距離がAならば、破壊力はC以下が一般的です

⑦スタンドは成長する
精神的成長や外的要因によってスタンド形状の変化や新能力が発現する場合がある。
(と言ってもポンポン安っぽく進化しては興ざめしてしまうもの。進化や成長はここぞ!という場面で。希少価値を持たせましょう)



★とりあえず①『一人につき一能力』と⑥『破壊力と射程距離は反比例する』
これさえ押さえておけば概ね大丈夫!
人型などのヴィジョンを持つ特殊能力を作れば、あら不思議スタンドの出来上がりですw

47スレ立てテンプレ:2010/12/13(月) 21:28:54
【あらすじ】
N県北条町。
特に目立った産業もなく、海に面した物静かな中都市だが一般には余り知られていない特徴がある。
一つはスタンド使い…と呼ばれる異能力者の出現率が異様に高い事。
もう一つは十年周期で未解決の失踪、行方不明事件が多発することであった。
――この失踪事件を起こしていた者こそ、九頭龍一。
九頭は古来より封じられてきた邪悪なスタンド使いの集合体…『魔』なるものを封じるエネルギー確保のために
十年ごとにスタンド使いを狩り集めていたのだった。

――九頭の死から数ヵ月後…
辛くも九頭に勝利した北条市の面々は謎のスタンド使いから攻撃を受ける。
捕らえた敵スタンド使いへの尋問により以下の情報を得た佐藤たち。

・北条市には【悪魔の手のひら】なる異能の源が発現する条件が整っており
 その完成を目論む謎の集団が【悪魔の手のひら】完成の為の生贄としてスタンド使いを襲っている。
・首謀者はNEWDIVIDEと名乗る謎の骨男。
 スタンドなのか生物なのかすら分からないこの男は、前回の『ゲーム』で九頭と共に暗躍していた
 ボブ・バンソンの成れの果て。ゲームで命を落としたボブの肋骨から生まれた新生物らしい。
・ボブ…もといNEWDIVIDEはスタンドと記憶をディスク化する能力を持っており
 以前ディスク化したシンシン刑務所の超長期服役囚…通称『ワースト』と呼ばれる22人のスタンド使いに
 肉体を与え、生贄収集要員として街に放った。


守りたいものやら好奇心やら克己心やら…それぞれの思いに縛られた北条市のスタンド使い一同は
否応無く【悪魔の手のひら】争奪戦に巻き込まれていくのだった。


※【悪魔の手のひら】の正体はまだ確定していません。言ったもん勝ち、伏線を重ねた者勝ちになるかと…
まあそんなもんの正体より気軽にスタンドバトルの楽しめるスレでありたいッ!

48スレ立てテンプレ:2010/12/13(月) 21:30:00
【参加希望者の方へ】
★一般スタンド使い希望の方


新手のスタンド使い用テンプレ

【本体】
名前:
性別:
年齢:
身長/体重:
容姿の特徴:
人物概要:


【スタンド】
名前:
タイプ/特徴:
能力詳細:


破壊力- スピード-   射程距離-
持続力- 精密動作性- 成長性-


A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下


ワーストは北条市のスタンド使いを無作為に狙っています。
元々殺人狂の多いワースト達、欲望のままに殺人を犯すこともあるでしょう。
街をぶらつくだけで殺人事件に遭遇したりワーストに狙われたり、巻き込まれる理由には事欠きません。
取り合えず導入だけ書いていただければ誰かが敵をけし掛けてくれるでしょう。
自分で敵NPCを用意して戦う導入もOK!

49スレ立てテンプレ:2010/12/13(月) 21:33:06
★敵スタンド使い(ワースト)希望の方

囚人用テンプレ

【本体】
名前:
性別:
年齢:
身長/体重:
容姿の特徴:
人物概要:
懲役年数:
被害者推定:

―逮捕後の供述―


【スタンド】
名前:
タイプ/特徴:
能力詳細:
アルカナ/

破壊力- スピード-   射程距離-
持続力- 精密動作性- 成長性-

A-超スゴイ B-スゴイ C-人間と同じ D-ニガテ E-超ニガテ
射程距離の目安
A:100m以上 B:数10m(50m) C:10数m(20m) D:数m(5m) E:2m以下

50スレ立てテンプレ:2010/12/13(月) 21:34:27
★ワースト希望の方

◎未使用アルカナは↓参照
http://www44.atwiki.jp/jojo2nd/pages/36.html

ワースト達は肉体の提供にあたりNEWDIVIDEと契約を結んでいます。
・ワーストはタロットの大アルカナ(0愚者〜22世界)を象徴したスタンド使いである。
・【悪魔の手のひら】完成の暁にはその恩恵を共に受けられる(口約束程度?)
・ワースト達はNEWDIVIDEから再起不能にしたスタンド使いをディスク化する能力を貸与されている。
 (ワーストに倒されたスタンド使いが自動的にディスク化されるだけ。意図的に相手をディスク化をすることは無理)
・肉体の使用は期限付き。
 一定期間経過までに22枚のイケニエディスクを集められなければ肉体を奪われディスクに戻る。
(期間は今のところ作中で明言していませんが1〜2ヶ月にするかと)

契約とは別にワーストはNDに一部記憶を操作されています。
と言っても『北条市が大好きで何となく街の外に出る気にならない』程度の軽い縛りです。
(北条市に舞台を限定する為の苦肉の策、中の人事情です…)

・現在、首謀者のニューディバイド、協力者の影貫行方の入手したスタンドディスクは11枚
必要なディスクの半分を入手したことで不完全な『悪魔の手のひら』を呼び出せるようになっています。
そこらへんの経緯はこのレスで↓
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/9925/1282660345/162-163



★ワースト以外の敵役…黒幕、無所属スタンド使いなども大歓迎!



質問・相談等がありましたらお気軽に避難所までどうぞ。
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1281558067/

51吉野 ◆H7TeP6yEkU:2010/12/14(火) 17:06:41
佐藤の皮肉に、吉野は何一つ反駁しなかった。
彼女にとって幸せになる事は、人生を貫く命題だった。
だと言うのに自分は、それとは真逆の方向に突き進んでいたのだ。
彼女の精神力は荒廃し、衰退しきっている。
今の彼女を動かしているのは、後戻り出来ない程に誤ってしまったのなら、いっそ最後貫いてしまおうと。
要するに捨て鉢な感情だけだった。

>「…天野君、あの馬鹿から逃げ切れるかしら。これ以上鬼が増えたらたまったもんじゃないわ。
 ホールに行きましょう。遠回りになるけど、ホールなら1Fからでも入れる。
 あの馬鹿に悟られずに近づくチャンスよ。」

佐藤の提案に異論はない。
吉野は無言のままに頷いて、移動を開始する。

>「わかったわ。じゃあヒトエモン。透明シート出して。あと鬼に3メートルまで近づくと音楽がなるんだよね?
 それはステポニがノイズキャンセラでどうにかする。それといい作戦とかあったら教えて」

「……透明シート、あるんですか?あの子行っちゃいましたけど」

言葉を交わす暇もなく、生天目はホールに飛び込んだ。
彼女の背中を細めた双眸で見送りながら、吉野は呟く。

「まあ、無かったら無かったで悪くないと思いますけどね。三人纏まって動く必要はありませんから。
 誰か一人があの男の背後を取れば良い訳で。貴女の触手なら姿を晒さずに捕縛が出来るでしょう」

一旦言葉を切り、吉野は開かれた扉の奥に広がるホールを一望した。
規則正しく並んだ椅子がずらりと広がっている。

「あの椅子の下、触手を通せばあの男にはさっぱり見えないんじゃないですか?
 万が一ネズミが出ても、ここなら逃げ道を塞がれる事は無いでしょう。
 散り散りになった時の集合場所は、決めておいても損はないと思いますけどね」

ともあれ、彼女は「と言う訳で」と言葉を繋いだ。
ポケットからナイフを取り出し、右腕をだらりと下ろして、彼女は言う。

「行ってきますわ。出来れば私やあの子がやられる前に、事を済ませて下さいな」

錆びたような笑みを零して、吉野はホールへと向かう。
自分と生天目が注意を引き、その隙に隠密行動が可能な佐藤が御前等の尻尾を切る。
作戦としては筋が通っている。
だがその裏には、いっそここで死んでしまえれば、
自分の体に満ちて精神を蝕む失意から逃れられる。
楽になれると言う、無自覚の願望が潜んでいた。

そして吉野はホール一階の中心に姿を晒した。
ナイフを微かに揺らして、その存在を強調する。
スタンドの拳に殴られるよりも確実な死をもたらすそれを見せる事で、警戒心を煽るのだ。
無論、今の吉野に二階にいる御前等にナイフを届かせる術はない。
それでもブラフ程度にはなるだろう。
それにもしも一方的な攻撃に撃ち抜かれたのなら、それはそれで吉野にとっては救済だ。

【吉野は佐藤さんの透明化能力を知りません。
 姿を晒して囮モード】

52佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2010/12/18(土) 12:59:29
【1Fホワイエ、ホール入口】

>「行ってきますわ。出来れば私やあの子がやられる前に、事を済ませて下さいな」

鉄砲玉の有葵に続いて、花使いの少女もホールの扉をくぐった。
二人の背中を見送り、ひとみも僅かに開いた扉の隙間からホールの中に身体を滑り込ませる。
舞台だけがスポットライトに照らされている。客席は薄暗い。
ホールの中は不自然に蒸し暑かった。
にわか雨が降った直後の真夏の路上のような不快な湿気が肌に纏わりつく。

差し当たっての仕事は、ホールに飛び込んでいった有葵に事情を伝えて誤解を解くことだ。
インビジブルはスタンドと共に本体を透明化する能力。
ひとみ以外の人間に光学迷彩を施すには、フルムーンの作る触手製皮膜の内側に居なければならない。
皮膜をフルムーンから切り離してしまうと透明化の機能は失われる。
フルムーンと行動を共にしなければ透明化の恩恵は受けられないのだ。


薄闇に満たされた客席、壁際は一層暗く、そこに誰かが居ても目を凝らさねば視認できないほどだ。
壁際の闇に潜み、ひとみはスタンドシートを出し、有葵の位置を捕捉する。
有葵は舞台に近い座席の影に隠れていた。人並みに警戒心はあるらしい。
ひとみは触手を床に這わせ、有葵の足首に巻きつけた。
ディープダイブ(精神干渉)を開始し、有葵の精神に呼びかける。

『言っておくけど"透明シート"なんて都合のいいもの無いわよ!
 透明化するにはフルムーンと繋がってなきゃならないの!
 ステレオポニーを透明化してあの馬鹿を奇襲する気かもしれないけど、
 私のフルムーンでは、ステポニのスピードについていけないわ。その作戦は却下!
 あんたのスタンドなら透明にならなくてもスピードで翻弄できるでしょ?!
 私がアイツの体を拘束する!それまであの女と一緒に時間を稼いで!』


精神干渉の続く10秒を限界まで使い、早口で用件だけを捲くし立て、有葵の足首に巻いた触手を解く。
その後、二階席の手摺に巻き付けていた触手に掴まり、ワイヤーを巻き取る要領で触手を縮め二階席の通路に上がった。
ひとみの位置から離れてはいるが、通路には先客がいる。
人を襲う鬼と化した御前等だ。

幸い御前等は、一階座席中央に現れた少女―――吉野きららに気を取られている。
二階席の手摺に立ち一階を見下ろす御前等。見上げる少女。視線を交わす両者。

ひとみは姿勢を低くし闇に紛れて通路を移動する。
二階に上がるに当たり選んだのは、御前等の後ろを通らずとも目的の場所に至れる位置。
このまま少女と有葵が陽動を続けていてくれれば、御前等に気づかれることは無いだろう。


向かう先は通路の奥に位置する楽屋……そこに天野が身を隠している。

53佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2010/12/18(土) 13:06:35
【現在地:楽屋3】

二階席を抜け楽屋廊下に至ると、ひとみは再びスタンドシートを出して目標物の位置を捕捉した。
廊下の突き当たり、一番奥の部屋に天野がいる。
フルムーンの触手で鍵をこじ開け、ドアを開く。ひとみは一見誰もいない楽屋に向かって語りかけた。

「天野君…いるんでしょ?さっさと出て来なさいよ。言っておくけど私は鬼じゃないわよ。」

隠れ場所からおずおずと顔を出す天野。ひとみは両の掌を広げ天野に向けた。
肌色のままの掌は『鬼』でないことの証明。

「この蒸し暑さ……あんたの能力ね?」

能力を推理して天野に問う。

スタンドシートはホール全体のサーモグラフィーに切り替えている。
ホールの空調が故障しているわけではない。エアコンの吹き出し口からは冷気が出ている。
しかし、その効果も及ばぬ速度で上昇する気温と湿度。何らかの"能力"を使ったと考える方が自然だ。

「鬼になったあの馬鹿はまだホールにいるわ。さっさとアイツの処理をしてゲームを進めましょう。
 …その雲みたいなスタンド…それで気温や湿度を操れるのね?
 君にも力を貸してもらうわよ。」

天野の後ろに現れた白い雲のようなスタンドを指差し、協力を迫る。

「ところで、天野君。その雲のスタンドでミニチュアの積乱雲を作れる?」
ひとみは尋ねる。

天野の能力が気温と湿度の操作と仮定して……
気温を局地的に変化させられるならば、空気の温度差による対流で気流を起こすことも可能な筈だ。
雲は上昇気流に乗った湿度の高い空気が、上空の冷たい空気に触れて、水蒸気が凝結または固化することで形成される。
蒸し暑いホールの天井付近だけを冷気で満たしておけば、
気流と湿度の操作で小型の雲を作ることが出来るのでは…と踏んでの問いかけだ。


「これから、ホールの座席下にスタンドの触手を張り巡らせて罠を張るわ。
 この罠はあの男が、ホール1階の床に足を付けなれば発動できない。
 あの馬鹿…人間離れした動きでホール中を飛び回って、ウザったいったら!

 それに、私のスタンドのパワーはあの男よりずっと下。
 例え上手く捕えたとしても、普通の状態では直ぐに触手を引き千切られてしまう。
 相応のダメージを与えなければ確実に捕獲出来ない。

 そこで…君の力を借りたいのよ。
 積乱雲は成長を終えると、強烈な下降気流を発生させる。
 いわゆる『ダウンバースト(下降噴流)』…!上から下に叩きつける突風よ。
 アイツが飛び上がった拍子にダウンバーストを起こして床に叩きつけて欲しいのよ。
 その機を狙って、私が罠を作動させてアイツを捕獲するわ。
 雲の成長に多少時間が必要なら、時間稼ぎ要員(吉野&有葵)に頑張ってもらうわ。
 どうこの作戦…?君のスタンドで雲が作れなければ別の方法を考えるしかないわね。」


【吉野さん、有葵ちゃんに御前等陽動作戦を丸投げ】
【天野さん結構限定的に動かしちゃってごめんなさい。
 位置は、一番奥の楽屋(楽屋3)としてしまいましたがいいでしょうか?】
【楽屋3で天野っちと合流。ダウンバースト作戦を話す(作戦の意味が分かりづらかったら避難所で質問ください)】

54生天目:2010/12/18(土) 17:03:19
>『言っておくけど"透明シート"なんて都合のいいもの無いわよ!
 透明化するにはフルムーンと繋がってなきゃならないの!
 ステレオポニーを透明化してあの馬鹿を奇襲する気かもしれないけど、
 私のフルムーンでは、ステポニのスピードについていけないわ。その作戦は却下!
 あんたのスタンドなら透明にならなくてもスピードで翻弄できるでしょ?!
 私がアイツの体を拘束する!それまであの女と一緒に時間を稼いで!』

「……」足首から伝わってくる情報に、生天目の顔は薄闇の中で真っ赤になっていた。
無知である自分への恥かしさとホール内の蒸し暑さが頭のなかでバタフライをしていた。
だが今は、兎にも角にも陽動作戦を成功させなくてはならない。
唾を一つ飲み込んだあと意を決して、座席の影から頭を出してみるとホール中央には吉野きらら。

一見無謀にも見える吉野の行動だったが理にかなっている。少女の存在は御前等に何かしらの疑問を与え、
作戦上、最悪の展開とも言えるが吉野を鬼に変えるための3秒は御前等の隙を生む。

「でも…感情を殺さなくっちゃあんなことできない…すごい女…」
少し生天目の体は震えた。すでに吉野の視線の先には御前等。

「私って今まで自分のことしか考えていなかったけどがんばろ…」
ステレオポニーはスポットライトまで飛んで行くと御前等の顔面を照らす。
「まぶしいでしょ?」
生天目は知っている。御前等のスタンド能力の片鱗を。廃校でみたジャングルジムを。

(今つっこむのって危ないわよね。ひとみんもまだ動いてないみたいだし…。
陽動っていうか時間稼ぎって言うか、ホールの女がぐっちゃりやられそうになったら…
そのときはいかせてもらうけど…)

【御前等さんの顔にスポットライトを浴びせました】

55吉野 ◆H7TeP6yEkU:2010/12/21(火) 05:30:39
何故だか、ホールは蒸し暑かった。
熱気と多湿が肌にじんわりと汗を滲ませる。
上昇し続ける室温はやがて、五感や思考にさえも靄を掛けるだろう。
そうなれば不利になるのは吉野の方だ。思考がなくても力は振るえる。
だが彼女には振るうべき力が無いのだから。
しかしながら一方で、吉野の目的は時間を稼ぐ事でもある。
矛盾だ。だがこの矛盾は容易に解消出来る。
吉野がどちらか一方を諦めてしまえば、それでいいのだ。
そして彼女は既に、諦めている。
無意識の内にではあるが、彼女は自ら進んで死に歩み寄っているのだ。
幸せになれない、やり直しのきかない、失意に苛まされるばかりの生など終わってしまえばいいのにと。

>「久し振りだな吉野さん。何故君がここに"居る"かは興味ないが――何故ここに"来た"かは目下知りたいところだ。答えてもらおう」

見下し、スタンドの両腕を突き付けて、高圧的に御前等が問うた。
対して吉野は、嘲りの笑みを浮かべる。矛先の定まらない、自嘲にも見える笑みを。

「……さあ、何故でしょうね。ほんの少し前なら、幸せになる為と答えていたのですけれど」

要領を得ない答えだ。時間稼ぎの目的に適った回答。
けれども吉野は本当に、自分が何故ここにいるのか明確な答えを出せないでいた。
ここにいる限り、スタンド使いである限り、生きている限り、幸せにはなれないと言うのに。

彼女は今、目先の目的と上辺だけの意識で動いている。
極論、この市民会館から生きて出られたとしても、彼女は幸せになれはしない。
それでも心の表層でなんとなく、死ぬのは不幸な事だと思っているから、
彼女は薄弱な意志で御前等と対峙しているのだ。

>「まぶしいでしょ?」

不意に、御前等の顔に眩い光が浴びせられた。
生天目が操作したスポットライトだ。
直後、吉野はナイフにスタンドの蕾を付加する。
そして振り被り、御前等目掛け投擲した。
蕾自体には何の効果もないが、それでもスタンドに対する影響力は与えられる。
これは牽制であり、攻撃だ。
御前等が油断し生半可な防御をすれば、ナイフは彼のスタンドを傷付けるだろう。
そうでなくとも、吉野に彼を殺傷する術があると知らしめる事が出来る。

【スポットライトに合わせてナイフを一本投擲。
 蕾付きナイフは、ピストルズの乗った弾丸がスタンドに効くってのと同じ感じで】

56佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2010/12/25(土) 18:45:07
【現在地 楽屋3 佐藤・天野】
>「なるほど。ダウンバーストですね。了解しました。
>…ところで佐藤さん。この暑さで貴方の集中力が切れて反応が遅れたら元も子もありませんから…」

周囲の空気から熱気が引いていくのを感じる。
スタンドシートのサーモグラフィーを見ると、ひとみの周囲は摂氏30度以下を示す緑色に変化していた。
ホール全体は未だ50度以上の高温域を示す明るい黄色が覆っているというのに……
天野の周りも、ひとみ同様の色を示している。

「なるほど…冷気のスーツってわけね。あと二人、これやってもらわなきゃならない人間がいるわ。
 天野君、ホールに行きましょう。」

天野を促しホールへ向かう。楽屋廊下とホール二階を繋ぐ出入り口の前で、ひとみは足を止めた。
多少死角はあるが、出入り口の開口部から一階座席が俯瞰できる。
ホール内では以前、御前等と吉野きららが交戦中。
スタンドシートに吉野と有葵の現在地を表示し、天野に向かって語りかける。

「冷気で覆って欲しいのはこの二人。
 それと…天野君、携帯出して。私の番号送るからずっと通話中にしておくのよ。
 私はこれから一階に降りて罠を張る。君はここで雲を成長させていて。
 ここならアイツ(御前等)の動きが見えるでしょう?
 タイミングが合えばダウンバーストを起こしてアイツを床に叩きつけて!場合によっては私が合図を送るわ。」

天野への指示を残し、透明化した状態で浮遊するフルムーンの触手に掴まり、一階に身体を降ろした。
透明化したまま触手を急速に成長させることはできない。座席の影に身を隠すと、ひとみは迷彩を解き、
フルムーンから伸びる無数の触手を床に這わせ、ズラリと並ぶ座席下を通していく。
やがてホール全体の座席下に網の目のように張り巡らされた触手。
御前等を捕獲するための"罠"は完成した。あとは機を図るだけだ。


分離させたシートに浮かび上がるのは、ホールの縦断面の温度分布図。
4階まで吹き抜けになっているホールの天井は高い。
1、2階にいる者には体感できないが、天井付近の温度が急速に低下していく。温度は上空数十キロ圏内と同じ氷点下20度。
上下の気温差と天野の操作する気流に乗って湿度の高い空気が天井に向けて立ち昇る。

シートを室内の水分分布図に切り替える。
立ち昇った空気は天井付近の冷気に冷やされ、水蒸気が結露または直接氷に固化し雲が生まれる。
薄暗いホールの天井付近に生まれた雲。
視認は困難だが、スタンドシートには直径3mほどの積乱雲が水分子の塊として映し出されている。

積乱雲は上昇気流によって形成される。が、成長中、雲によって蓋をされた上昇気流は行き場を失い、
積乱雲の下は一時的に気圧が高くなり『メソ・ハイ』という局地的な高気圧が生まれる。
自然界では、雲の中で成長した雨や雹が落ちることで上昇気流が解消される。
ここでは天野が能力を以って上昇気流を停止させれば良い。
上昇気流の下支えを失ったメソハイが一気に崩れ突風(ダウンバースト)が発生するはず…!


「天野君、雲の成長は充分よ…!アイツの動向に注意して!」

携帯を片手に小声で天野に訴え、ひとみはただ、罠発動の機を待つ。

【ダウンバースト作戦準備完了】
【現在地 天野2F通路入口、佐藤1Fどっかの座席の影】

57ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2010/12/26(日) 02:37:19
【よね、ザ・ファンタジア 現在地:3Fスポーツジム ロッカー】

御前等との戦闘後、3階に逃れたよねを襲う白い霧のネズミ―――ザ・ファンタジア
出入り口の扉は、全て霧の鍵で塞いでいる。
余裕綽々のネズミは白い顔に邪な笑みを浮かべ、真っ黒な掌を突き出してよねに迫る。

>「待てよ、待て。私と交渉しないか、聞こえてるでしょう。そのスタンドの本体。…エイドリアン、だったかな?
>今、私は私がここに入ってきたときの米コウタではない。
>私は米コウタの深層心理の顕在。二重人格、とでも捉えてくれれば分かり良いでしょう。

突然の告白。ネズミは眼を丸くして立ち止まった。
ネズミはフンフン頷きながら、よねの話を大人しく聞いている――――が、表情に出さぬも内心はかなり呆れていた。

『私は以前の私とは別人格ですから、あなたの敵ではありません。協力しましょう』
こんな説得を受け入れて、攻撃を思い留まる御目出度い敵がどこの世界にいるだろうか?
このインテリ風メガネの青年が、その愚かさを認識していないはずはあるまいに…。
苦し紛れの命乞いとしか思えないタワゴトを口走るほど、精神的に追い詰められているのか?


(メガネ君にはガッカリだな〜♪もうちょっと気の利いた抵抗をして楽しませてくれると思ったんだがなあ〜♪)

そもそもザ・ファンタジアは、ゲームの参加者を"捕えて鬼化する"ことにそれ程執着してはいなかった。
霧のスタンドは『場』において無敵。さらに2時間経てば『場』は消失する。
タイムアップを待てば、何もしなくとも、自動的に参加者全員の命とディスクを奪うことが出来るのだ。
開放条件である『本体の発見』とて、現在のゲーム参加者に叶えられる筈がない…と絶対の自信を持っていた。
『場』に取り込んだ時点で、命はこちらが握っているようなものだ。
変則鬼ごっこは時間つぶしの為の慰み……
自らの手に命運を握られた囚われ人が、逃げ惑い恐怖に怯える様を楽しみたいが為、ゲームを持ちかけたに過ぎない。
そう……抵抗など不可能な、力の劣る小児を捕えて嬲り殺しにしていた時のように……。


(アレに感づかれたかと焦ったけど、ビビッて損したなー♪メガネ君のおつむも所詮この程度だったってコトか♪
 なら折角だから利用させてもらおうっカナー♪)


ネズミは目を細め最上級の笑みを零してよねに語りかけた。ご丁寧に揉み手までしながら。

『わかったよ!メガネ君♪。君の中にいた、もう一人の君が目覚めたってことなんだね!裏人格♪!!
 そういうことって往々にして在り得るよねぇ♪まったく在り得る話だよ!
 君が味方の振りをして奴らをおびき寄せる作戦も、超グッドだよ♪グー♪
 まさか中身が『裏人格』に入れ替わっていようとは奴らも予想しやしないだろうからね♪
 君が『鬼でない証拠』を見せて近寄れば一網打尽だネ♪ヒーホ〜〜♪やろうやろう♪その作戦!』


ザ・ファンタジアはハナから『よねが別人格と入れ替わった』という話を信じていない。
ただ助かりたい一心でヨタ話を捻り出したのだ…と思っている。
だがこの青年が、そんなヨタ話を持ち出すほどに自らの安全に執着しているのなら……
他人を犠牲にしても自分だけは助かりたい…という下衆な精神の持ち主なら……それはそれで利用価値がある。

『僕の性質柄、握手はできないけどヨロシクね♪メガネ君♪』

白いネズミは胸の前に構えていた手を引っ込めて、にっこり微笑んだ。


【よね君の提案(共同戦線の申し入れ)を一応受け入れる】
【ザ・ファンタジアはよね君を利用しようとしているだけで、身の安全を確保するつもりはさらさら無いようです】

58吉野きらら◇HQs.P3ZAvn.F:2010/12/27(月) 22:30:43
>「……下らん。実に反吐の出る話だ。かくも人とはこの短期間でこうも劣化できるものなのか?
 短期間でこうも、己の進むべき道を――誤るのではなく、違えるのでもなく。見失うものなのか。その覇気のない顔をやめろ」

ナイフを投げ終えた後で、吉野きららは小さく独りごちる。

「……見失っただけなら、どれだけ良い事でしょうね。私にはまだ、しっかりと見えていますわ。
 幸せになる為の道が。だけどもう、その道に戻る事は出来ません。見えているのに、戻れないのです
 それはただ見失うよりもずっと……ずっと辛い事だと思いませんか?」

九頭龍一のゲームに巻き込まれなければ、北条市に来なければ、幸福になる為だと人殺しをしなければ、
スタンド能力に目覚めなければ、日常に転がっている些細な分岐路を誤らなければ、吉野きららは幸せになれた筈だった。
だが過去に積み重ねられた間違った選択を、運命がどう転んだのかを正す事など出来る訳がない。
彼女はもう幸せになる事は出来ない。
スタンド使いは惹かれ合う。例えこの場を凌いだとしても、新たなスタンド使いがやってくるのだ。
切り刻まれ、殴られて、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされるような不幸が必ずやってくる。
絶対に不幸が訪れると分かり切った未来に歩んでいく事は、それさえもが既に不幸な事だ。

>「思い出をくれてやろう――冥土の土産というやつだ!」

それでも、降り注ぐ鈍色の死を慈雨と受け入れられる程、吉野は達観していない。
痛みも死も、嫌に決まっている。故に彼女は身を投げるように横に跳んだ。
だが避け切れない。雨霰と発射された歯車の一つが彼女の顔面へ迫る。
スタンドを使えない彼女に、それを防ぐ手立てはない。

「ぐっ……!」

歯車は吉野に直撃した。くぐもった鈍い音が皮膚の内側から響く。
アンバーワールドの歯車は、彼女の骨を容易く砕いた。彼女の、腕の骨を。
彼女には歯車を防ぐ手立てはなかったが、それでも最悪を回避する事は出来た。
頭部への直撃の代わりに、左腕を犠牲にする事で。

「そしてこのまま倒れ込めば……ひとまずは一段落ってところでしょうか」

腕の真芯で疼く熱を帯びた痛みに顔を顰めながらも、吉野は呟く。
ホールの一階には座席がずらりと並んでいる。
倒れ込んでしまえば、それこそ真上から覗き込まない限り御前等は吉野を視認出来ない。
或いは階下を塗り潰すように歯車を撃ち込まれれば、
最早吉野には虫ケラのように這いずり回るしかなくなってしまうが。

「何だか涼しくはなってきましたが……まさかこれだけさせておいて、それだけって事はないでしょう?」

ともあれこれで御前等は何らかの動きを見せる事だろう。

【頭部コースの歯車を左腕で防御。並んでいる座席の下に倒れ込んで身を隠す】

59佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2011/01/01(土) 18:57:47
2階から降りた佐藤ひとみは、壁際に近い座席の影に身を潜めていた。
しゃがんだ体勢のひとみの側には、浮遊するフルムーンが床上10cmほどの低い位置に控えている。
眼球を内包するケースから伸びる触手は床を這い伝い、植物の根のように枝分かれしながら伸びていく。
1分かからぬ内に、床全面に網の目状に成長した触手が張り巡らされた。
薄暗い座席、視力の良い者であっても、よくよく眼を凝らさねば触手の成長を捉えられぬはずだ。
再びスタンドと本体の体表を迷彩で覆い、罠発動の機を窺う。

>「思い出をくれてやろう――冥土の土産というやつだ!」

御前等の一声と共に回転する歯車の乱舞―――吉野きららに降り注ぐ歯車の雨!
金属質の落下音がホール中に響き渡る。あの数の歯車に身体を撃ち抜かれたら、無事で済むはずがない。
ひとみは少女の絶命を覚悟したが―――否、歯車は目的を達していない。
シートには少女の生命反応がある。
いくつもの座席を透視し、視界に捉えた少女は出血する腕を庇い座席の下に身を伏せていた。

>「たった一度、進まんとしていた道を違えた程度で下を向くなよ求道者。人生にやり直しが効かないなどと勘違いしてるんじゃあないだろうな。
>どこにも道がないのなら、そこに道を拓けば良い。届かない道ならば、"その道へ至る道"を拓け。可能なはずだ、俺達には!
>悟りきったような顔して、悟りきったようなことをほざく君に、俺から一つだけ常識を贈ろう」
>「――諦めたらそこで試合終了だ!」

少女に止めの一撃を見舞わんとするか、
二階席から飛び降りる御前等。自らのスタンドの背に足をつき、その背筋をバネに虚空に跳ねる―――!

通話中の携帯電話から天野の声が漏れる。
>「作戦実行します。フリーシーズン!」


―――御前等に向けて、吹きつける突風!
上空から下方に吹き降ろす強烈な下降気流―――ダウンバーストだ。
天野の気流操作によって正確無比なコントロールを得た噴流は、ピンポイントで目標を撃ち落とす。
ゆっくりと弧を描き宙を舞っていた御前等の身体は、慣性を失い座席を繋ぐ通路の床に叩きつけられた。

吹き降ろした風が床にぶつかり余波が四方に広がる。立ち上がったひとみは風に大きく髪を煽られた。

クモが巣にかかった獲物の場所を知るように、触手の網は御前等の落下点を感知していた。
触手は御前等を中心に急速に収束し、その手足に絡み付く。
一瞬の後には、両手両足と胴体を固定された簀巻き状態の男が床に転がされていた。
最後の仕上げとばかりに、口元まで触手で覆い発声の自由さえ奪う。

風に煽られ顕になった右目を掌で庇い、乱れた髪を直しながら、ひとみは男に歩み寄る。

「ああ!せいせいしたわ!コイツには二度と喋らせたくないッ!
 酒飲みながら絡んでくる酔っ払いの説教も最悪だけど、攻撃しながら説教ってどういう了見なのッ?!
 な〜にが『"その道へ至る道"を拓け』よ?!
 どうせ近所のコンビニに行く程度の安っすい道しか持ってないくせに!
 もう、ウザすぎて吐きそうだわ!
 誰の為にこんな手間負ってると思ってんのよ!このクズ男ッ!
 
 このまま転がしておきたいけど、そうも行かないのがツライところね。
 有葵!動けるんでしょ?あんたのスタンドで、この男の尻尾をスッパリ切り落として!」


物陰から姿を現した有葵は左手から血を流していた。よく見ると簀巻き男も掌を傷つけている。
歯車を被弾した少女の左腕の負傷も決して軽くは無いだろう。
これから施す治療の手間を考えて、ひとみは大きな溜め息を漏らした。

【御前等さん決定ロール的に動かしちゃってすいません】
【御前等さん捕獲成功。有葵ちゃんに尻尾切り落としを依頼】

60吉野 ◆H7TeP6yEkU:2011/02/16(水) 03:54:07
>「ムカデや南京虫もイチコロな強力バ○サンよ。さっさと出てこないと窒息しちゃうわよ〜!」

(こちらには気付いていない……。この分なら問題なく尻尾は切れそうですね……)

二階に上がり、果物ナイフを片手に、吉野は座席の谷間を進んでいた。
佐藤は相変わらず半狂乱の状態で、吉野の接近には全く気付いていない。

>「わかったか、このドアホッ!?よくも私の身体に傷を付けてくれたなァァッ!許さん!
  Sum41、Re・Birthッ!このメガネは強い磁力を帯びるッ!」

が、不意に吉野が握るナイフが、彼女の意図に反して揺れた。
よねの作り出した、超磁力を帯びたメガネに引き寄せられているのだ。
吉野は強く握り締めてナイフを保持し続けようとするが、叶わない。磁力が強すぎる。

(自信家で激情家……最も厄介な人種ですわね。それが自分を優秀だと思い込んでいるのなら、尚更に)

同時に、かつて自分もそうであったと思い出して、吉野は状況にそぐわない自嘲の笑みを零す。
だが、その表情は長く続かない。磁力に負けて、彼女の手からナイフが滑り抜けた。
横合いからのナイフが佐藤に刺さる事は無いが、間違いなく接近を悟られる。
故に――吉野は即座に立ち上がり、駆け出した。
予備のナイフはもう無い。無手のまま、それを隠さず、さらけ出して床を蹴る。

「貴女は、私を嘲笑うでしょうね。武器もスタンドも持たず何をするつもりだと。ですが……」

言葉と同時に彼女は身を屈めた。
疾駆の勢いは殺さぬまま、床を滑り、佐藤の背後に回る。
両手を伸ばした。左手は佐藤に生えた尻尾へ。
そして右手は――もう一本、メガネに引き寄せられたナイフへ。
先ほど御前等へと投擲した、ナイフへと。

「ナイフは二本あった。平時の貴女なら、気付いたでしょうに」

小さな蕾の兆したナイフが、白線となって一閃する。
しかし佐藤の尻尾は、完全には切断出来なかった。
磁力に引き寄せられたナイフを、吉野が御しきれなかったのだ。

「……失敗、ですか。これでもう、打つ手なしですわ」

苦々しく吐き捨てた吉野が、ナイフを手放した。
磁力に誘われたナイフは床へと直下せず、メガネに吸い寄せられる。

「ところで、最後の一つ教えてもらえませんか?今のその状態、頭の中はどうなってますの?
 自分の現状はサッパリ忘れている?その方が、これからなる身としては幸せですけど」

吉野が尋ねた。
最後のと銘打った問いは、けれども自暴自棄から来る物では、ない。
佐藤の尻尾を掴んだ時、吉野は手の平に異様な冷たさを覚えた。
間違いなく、スタンド能力によるものだ。
誰かが何かをしようとしていると理解して、故に吉野は時間稼ぎを図った。

61吉野 ◆H7TeP6yEkU:2011/02/28(月) 02:42:26
>「忘れた方が幸せなこともある…ってこと?残念ながら、そう都合よく何でも忘れられる訳じゃないわ…
  いけ好かない泥棒猫の顔なんかは、特に……!」
>「あんたは鬼になんかしない……!あんただけは、生かしておけない……!」

フルムーンの触手が吉野の首を締める。
スタンドを持たない吉野に抵抗の術はない。
冷気のスタンド使いの一手は、未だに訪れない。
このままでは死ぬ。目的を見失った生だが、弄ばれるように死ぬのは御免だった。
ならば佐藤になら、どうだろうか。佐藤には吉野を殺すに足るだけの熱量がある。
理由はどうあれ、彼女は本気で自分を憎んでいると、吉野は佐藤の眼光から悟った。

「けれど……今の貴女に殺されるのは癪……ですわ」

吉野が詰まる息を振り絞る。
頭上から降り注ぐ超音波に揺れる脳裏で、『ザ・ファンタジア』の笑い声が反響した。
ここで死んでしまったら、『ザ・ファンタジア』はそれを大いに嘲笑うだろう。
顔も知らぬ相手に、死んだ後で一方的に侮辱される。それは耐え難い恥辱だった。

ふと、超音波が途絶えた。頭上を仰ぎ見る。
蚊の群体となっていた『ザ・ファンタジア』は、一匹残らず消え失せていた。

>「ライブラリに着きました。どぉ〜?ねずみは消えた?
 なぁんて聞くまでもない?だって誰かがいるみたいなんだもん」

磁力のせいか酷く雑音の混じった声が携帯から聞こえた。
もしかしたら、脱出まではあと一歩なのかもしれない。

「……やっぱり、まだ死ねませんわね」

呟いて、吉野が佐藤の足を――釘によって負った傷を蹴り抜いた。
頭上を見上げた時、吉野は『ザ・ファンタジア』の代わりに、氷の刃を見ていた。
気を逸らして、隙を作る事が出来れば、氷の刃が今度こそ佐藤の尻尾を切り落とすと踏んだのだ。

62吉野 ◆H7TeP6yEkU:2011/03/04(金) 11:17:43
佐藤ひとみの尻尾は切れた。
吉野の首を絞めていた触手が緩んで、吉野は床に打ち捨てられる。
何度も咳き込み、体を大きく上下させて、吉野が息を整えた。
触手の痕が残る首を、一度撫でる。

>「何故あんたなの……?何故あんたが選ばれて……私が…私は……一体何だったの…?
 力を得たからってそれが何なのよ?結局その力さえ失って!あんたみたいな女……死ねばいいのよ…!!」

佐藤の言葉を思い出して、吉野は彼女を一瞥した。

「……殺したければ、どうぞ殺してみて下さいな。どうせもう、私の人生に、幸せに至る為の道は残っていないのですから。
 ただし……この下らないゲームを仕組んだ者の手のひらから、降りた後で。死んで尚、嘲笑されるなんて、御免ですから」

そう告げて、今度は床に落とした携帯を拾い上げた。

>「……ぇ。…そんな、誰もいないなんて。そんなバカなことって…」

「……落ち着いて下さい。いいですか、貴女がライブラリに着いた時、確かにこちらのネズミは消えました。
 そこには間違いなく何かがある。……相手がミスリードを狙っているのでなければ、ですが」

もしもそうであった場合、つまりライブラリとネズミの消失が本来無関係で、
あたかも関連性があると思わせ、時間を浪費させる為に事が仕組まれていたのなら、
今度こそ手がかりはなくなってしまう。
だが確実に仕留められる状況でわざわざそうする必要があったとは思えない。
まず大丈夫だろうと、吉野は踏んでいた。

「何かと言うのは、つまり目的と必要性です。参加者を鬼にして、
 または殺害すると言う目的よりも優先して、スタンドを消失させなくてはならない理由がある筈です。
 例えば……ルールに嘘がないのなら動く事の出来ない本体を隠す為、とか」

そうでなくても、ルールに『特定の行動によるネズミの消失』が記されていない以上、
そこには何らかの意図がある筈だ。

「ライブラリを隈なく探しましょう。それ以外に当てがあるのなら、別ですが」

63吉野:2011/03/24(木) 06:11:57
生天目の携帯からザ・ファンタジアの声が届いた。
続けざまに、生天目のけたたましい笑い声が響く。
それは彼女の鬼化をこれ以上なく明確に示唆していた。

「……往生際の悪いネズミですね。これで、奴は自らライブラリに何かがあると
明かしたようなものです。
 あの子も、鬼になる直前、何か手応えを感じていたようですし」

高笑いを最後に一切音を届ける機能を放棄した携帯を睨んだまま、吉野が言う。

「本体がライブラリにいて、何らかの方法で姿を隠しているのだとしたら……佐
藤ひとみ。
 貴女のスタンドならば、それを探り出せる筈です」

もちろん、『フルムーン』のスタンド探知能力は使えない。
そんな事は吉野も分かっている。

「貴女のスタンドの触手、結構な射程を持っていますよね。
 それで文字通り、手探りでライブラリを探索すればいい。
 どんな手段で身を隠してるにせよ、スタンドなら通常の物体は透過出来る。
 にも関わらずその触手に触れる物があったのなら……それは奴の終わりを掴ん
だと言って間違いない」

立て板に水を流すように澱みなく、吉野は説明する。

「今更、鬼が一人増えた所で焼け石に水、貴女がライブラリに着けば決着です。
 今、一番厄介なのは……あのネズミがそれを見越して、
 ライブラリ到着前にもう一度仕掛けてくる事ですね」

破壊も捕縛も出来ない相手が本気で妨害を仕掛けてきたとしたら。
対処は困難を窮めるに違いないのだ。

「……急ぎましょう。もうあまり、時間はありません」

携帯の画面に表示された時間を見て、吉野が歩き出した。

「あと、そこの三人。いざと言う時はもう一度、あのネズミと戦ってもらいます
から。
 佐藤ひとみがライブラリに辿り着けるようにね」

と、吉野は足を止めないまま振り返って、延々と漫談を繰り広げている三馬鹿を
薮睨みにした。

【ライブラリに向かいました。現状がどんなもんか、一応くっちゃべらせてもら
いました。
 間違ってたら佐藤さんの方でこっそり訂正しちゃってください】

64倉橋 ◆FGI50rQnho:2013/08/24(土) 21:55:50
代理投稿スレ
一応上げておきます。

65スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/02(月) 20:45:19
避難所で代理頼もうとしたらwwwww避難所すら途中から閲覧不可能wwwwwwwなにこのいじめ仕様wwwwwww代理お願いします

スレURL:tp://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1376928290

>「まず最初に……この犯行声明文を出したのはお前ではないな?」

帰ってきて早々、トラブルがまいこんできた。
ギルド幹部の一人が、ご丁寧に帰宅直後を狙って突撃訪問をかますなり、これである。

「『黄金のハクトウワシは戴きに参る。怪盗ファントム』……ねえ」

文章が安直である。二重三重の意味でだ。変に小洒落た言い回しより好感は持てる。

>「そりゃ確かにファントムだけどさあ!」
>「うむ、確認までに聞いてみただけだ。確認ついでに依頼を受けて欲しいのだが……」
>「ついでかよ!」

グランがちょっとした漫才を繰り広げている横で、スタンプは予告状を眺め回した。
長い歴史の中で、鮮やかな盗みで名をあげた怪盗は多い。
だが怪盗ファントムという名など聞いたことがない。おそらく無名の泥棒だろう。

「しかし、黄金のハクトウワシ像がこれ一体って訳じゃあないんだろう?」
「ああ。毎年、市が予算を出して手製の像を作らせてるのさ。因みに予算の7割くらいが像の製造に費やされてる」

実に阿呆臭い。
ということは、ほかにも所有者が存在しているということだ。
わざわざ大運動会で贈呈される一個体を狙うというのは、些か理解しがたい。

「どうも引っかかるな……パフォーマンス的にもネームバリュー的にも、あまりにお粗末じゃないか?」
「さあてな。だがこうして犯罪予告を送りつけてきた以上、こちらも警戒せざるを得ないのでね」

頼んだよ、と押し付け、断る隙も与えずさっさと幹部は帰っていった。

>「どうする? この際ウルズの泉チームに入れてもらおっか」
「……まあ、それが一番だろうがな……あー面倒くせー、面倒くせー!」

わああっとスタンプは頭を抱えた。
どうやらトラブルの神様は、まだまだ自分を見逃してくれるつもりはないらしい。

「……あー、いろいろあって俺たちも参加することになった。よろしくな」

参加するにあたって、バルムンテへの挨拶は必須である。
朝から渋い表情を顔いっぱいに広げ、スタンプはジムに赴いていた。
流石に「像泥棒をとっ捕まえるから潜入捜査で参加します」などといえず、
「医者に運動不足を解消するよういわれて」との言い訳で通すことにした。

「いいかグラン、うっかりでも依頼のことは喋るんじゃないぞ。わかったか」

相方への注意も忘れない。
だがここで、スタンプははたと思い至り、普通の人ならば耳を疑うようなことを口にした。

「……運動会って、具体的に何するんだ?かけっこか?」

まず彼に運動会が何たるかを教える必要がありそうである。

【依頼を受諾、チームに入ろうか】

66名無しさん:2013/09/02(月) 21:09:19
>65完了

67グラン ◆lgEa064j4g:2013/09/02(月) 22:10:11
>65
66さん代行ありがとうございます
つまり…避難所の板でも規制に巻き込まれたっていうことかな?
避難所引っ越ししないとな
ここに1スレお借りしてもスタンプが専用掲示板を借りてもらってもオレが専用掲示板を借りてもいいぜ

68スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/03(火) 06:44:03
>>65さん代理感謝!

>>グランさん
うんにゃ、どうにもサーバーの方に問題があったみたいです。今はちゃんと書き込めるので問題ないですよ!お騒がせして申し訳ない!

69スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/07(土) 15:54:49
何故かまたも避難所に入れなくなる事案が発生。代理途中だったのに!畜生!
ttp://774san.sakura.ne.jp/test/read.cgi/hinanjo/1376928417/ の最新レスとあわせて代理お願いします!


「こりゃ堪らん、バルムンテさん呼んで来い!」「きゃああ、お尻に火が!」

戦闘に巻き込まれてはかなわないと、みな一目散に奥へと隠れる。その中にはスタンプもいた。
今現在、スタンプ達は一個人であり、公務を宣言しない限り一般人との戦闘は許されていない。
ギルドバッヂを回収してグランに手渡さなければ、罰せられるのは自分たちだ。
バッヂはロッカールームの中だ。それに見取り図によれば、ロッカールームに非常時魔力制御装置が設置されている。
そろりそろりと人ごみを抜け、ロッカールームへ向かうが……。

「あ、こいつ!一人だけ逃げようってハラか!?」

目ざといバンプスの一人に見つかってしまった。
ロッカールームはジムの出入り口側にある。バンプス団員と真正面から対峙する形となった。
咄嗟に、スタンプは団員に向かって駆け出した。相手が構える間もなく、体当たりを決める。

「こりゃ、ルームランナー走ってた成果が出たか?」

完全にただの不意打ちでしかないのだが、かまわずロッカールームへ。

「どこだ、怪盗ファントム!男なら潔く出て来い、俺様が成敗してやる!」

ゲオルグは完全に憤っている。しかし、彼らの十八番である爆発呪文を使っている気配はない。
室内であの呪文を使うのは気が引けてるのか。だとしたらまだ行動しやすいほうだ。
問題は、バルムンテに怪盗ファントムのことが知れる可能性だ。
参加の時も若干、不審がるそぶりを見せていた。そんなタイミングで彼に知られたら……。

(畜生、何で俺ばっかりこんな目に〜……!)

物陰から様子を伺うと、どうやらグランは団員たちを相手に素手で戦っている。
バンプスの舎弟たちもまた、素手でグランと応戦しているようだ。
ゲオルグはバルムンテを見つけるや、ずんずんとそちらに向かって近寄る。

「おいお前、ここの経営者か?スタンプっつーオッサンを出せ。そうすりゃ何もせずすぐに引きあげてやる」

まずい、と直感した。ゲオルグの目的はスタンプだ。
スタンプが騒動の原因だと知られたら、バルムンテのことだ、すぐさまつまみ出すやもしれない。
そうなればせっかくの潜入も水の泡とかす。それだけは避けなければならない!

「アイツは怪盗ファントムだ!黄金ハクトウワシ像を盗むって、堂々と俺様に宣戦布告しやがったんだ。出しやがれ、あの腐れ親父をよォ!」
「リーダーやばいよ、相変わらずグランの奴つよ、ぐえっ」
「自分らでどうにかしろ!いいか、あの黄金ハクトウワシは俺のジジイの遺作なんだ。俺様が貰うってのが道理ってもんだ。
 それを横から掻っ攫うなんざ俺がゆるさねえ!アイツを庇うってならデカブツの兄ちゃん、お前もかまわず潰してやる!」

舎弟たちはグランを相手に身体強化の術でやり過ごすのが関の山らしい。
ゲオルグはこちらに背を向けた状態で、バルムンテを相手に喚いている。
ロッカールームに進入するためには、どうしたってバルムンテの視界の中を動かざるをえない。

(頼むから気づかないフリしてくれ……!)

【ロッカールームにバッヂを取りにいく、ついでに非常時魔力制御装置を起動しにいく腹づもり】
【ゲオルグはスタンプの身柄を要求、これを拒否すると戦闘態勢に入るっぽいよ】

70倉橋 ◆FGI50rQnho:2013/09/07(土) 20:05:24
代行しようとしたけどなぜか忍法帳レベルが下がっていて
レスが超細切れになってしまいそうで断念。すいません

どなたか代行可能な方お願いします。


それと代行依頼はageでお願いします〜

71倉橋 ◆FGI50rQnho:2013/09/07(土) 21:20:22
しばらく時間おいたらなぜか普通に代行できました。

72スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/07(土) 22:29:55
>>70-71倉橋さん
代理ありがとうございます!

73スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/15(日) 15:52:14
毎回、代理頼もうとすると閲覧できなくなるのは何の呪いなんだ!!やっぱり避難所を別に建ててもらうべきか。
代理お願いします

>「はあ?スタンプが怪盗ファントム?」

バルムンテが素っ頓狂な声をあげた。
その際ばっちり彼の視界に入っている上に目線まで合っちゃった訳だが、騒ぎ立てようともしない。

(よしっ、恩にきるぜバルムンテ!)

下手をすれば騒ぎの原因として突き出される可能性もあっただけに、安堵も大きい。
急いでロッカールームに駆け込み、自分のロッカーを探す。

(あった!)

乱暴にロッカーを開け、トレンチコートを引っ張り出す。
ポケットにはちゃんと、スタンプとグランのバッジが収まっていた。
グランの身分は学生であるため、保護者であるスタンプが二人分のバッジを保管しているのだ。

(魔力制御装置は……だめだ、壊れてやがる)

しぶしぶ引き返し、グランたちの元へ駆けつける。
丁度、ゲオルグが写真と思しき紙を突きつけていた。

>「別人じゃねえかああああああああああああああ!!
>スタンプが帰って来たらよく見ろ、生活習慣病一歩手前だから運動しろと言われてここに入ったんだぞ!
>こんないい感じに引き締まった体のわけがない!」

「ぎゃああーーーーーー!それを言うな馬鹿野郎ォーーーーーー!!」

身内以外の第三者に生活習慣病と知られ、怒りと羞恥のあまり叫ぶ。
叫ぶついでにグランに向け、剛速球でバッジを投げる。
ゲオルグ達が一斉に振り向く瞬間、バッジが輝く。

「『正義の名の下、公務を宣言する』!バルムンテ、危ないから下がってろ!」
「ついに出たな、この泥棒野郎!」

ゲオルグが吠え、右手をゴキリと鳴らす。
室内とはいえ、前回と違い障害物の多いジム内で爆炎魔法を使う可能性は低い。
じりじりと間合いをはかる。

「なあゲオルグ、俺が言うのも何だが、落ち着け。俺が泥棒なんぞして何のメリットがある?」
「俺の知ったことかよ!一度ならず二度までも喧嘩売りやがって、舐めてんのか!?」

今度はスタンプが素っ頓狂な声をあげた。
一瞬できた隙を突き、ゲオルグは右手から火花を散らす。
瞬く間に、火花の群れは蛇のように空中をうねり、陣を描く。
するとグラン、バルムンテ、スタンプ、三者の足元に全く同じ模様が浮かび上がった。
反射的に、スタンプは懐に手を入れていた。

「何の真似だ!」
「動くなよ、怪盗ファントム。一歩でも出たら火達磨だぜ」

おそらくは拘束のための魔法だろう。
ゲオルグの言葉から推察するに、出たら即魔法の炎が襲い掛かるに違いない。

「これから、俺様が華麗なる推理を披露してやる。心して聞きやがれ」
「(大人しくしていたほうが良いぜ)」
「(そうそう、こういう時のリーダーって話の腰を折られると癇癪起こすからな)」

グランとバルムンテの背後で、舎弟たちがそう忠告する。

74スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/15(日) 15:54:42
「まず、俺の実家はヴァルカン・カンパニーっつーでっけー金属興業会社なんだけどよ。
 その当主が毎回、会社の宣伝も兼ねて黄金のハクトウワシ像をこさえてたんだ」

ヴァルカン・カンパニーの名はアメリカで知らない者はそういない。
元はイタリアで企業した会社であったが、イマイチ名が売れず新天地アメリカに移転。
アメリカ内で戦争が勃発した際、魔導兵器を幾つも生産したことで成功した、かなりブラックじみた一面を持つ。
余談であるが、ゲオルグの本名はジョージ・ヴィオレッタ・ヴァルカンである。至極どうでもいい。

「この手紙が届いたのは、うちのジジイが死ぬ一週間くらい前のことだ」

取り出したるは一枚の紙。怪盗ファントムの予告状だ。
達筆で『黄金のハクトウワシは戴きに参る。怪盗ファントム』と記されている。

「怪盗(Pphantom thief)ファントム(Phantom)とか、お前ネーミングセンス壊滅的なんてレベルじゃねーぞ。ナメてんのか」
「だから俺じゃねーって。何度言ったら分かるんだ、このゴリラ、ケツ毛毟るぞ」

メンチを切りあう二人。
「リーダー、推理!推理!」と舎弟たちに諭され、咳払いひとつし話を続ける。

「そんでここに!俺の舎弟が撮影した決定的瞬間がバッチシ写ってる!」

次に見せるは、ある男の後ろ姿である。
撮影した時は夜だったらしい。ライトに照らされ、トレンチコートを翻した男が、巨大な門の前を駆けていく。
魔術をかけたカメラで撮影したのか、男が何か紙を郵便受けに押し込み、逃げていく姿がループしている。
髪型と服装だけ見れば、スタンプに見えないこともない。

「体型が違うのは、あれだよ。写真届けた日からバカ食いし続けたから体型変えたんだろ。馬鹿だな」

なんと適当な推理か。これにはスタンプも呆れてものも言えない。
馬鹿はお前だ、とよっぽど言ってやりたいが、怒らせた所でロクな未来が見えない。
「それにな!」とゲオルグは指を突きつけた。

「ショーコはもう一つ、じゃなかった、あと二つ残ってんだぜ!見ろ、これを!」

全員に見せるように、ゲオルグはそれを掲げた。
古く黄ばんだ紙に、「黄金のハクトウワシは戴きに参る」と記されている。
しかし肝心の差出人の名前は滲んでいる。かろうじて「Ph nt m」と読める。
筆跡は、最初に見せられた予告状と酷似している。

「これは5年前に、俺の家に送られてきた予告状だ!つまり怪盗ファントム、テメーは一度ウチに侵入した!
 が、この時は黄金のハクトウワシ像は盗まれなかった。何せこの俺が!像を守ったんだからな!
 俺という堅固な番人のおかげで像を盗みそこねたお前は、雪辱のため再び俺に手紙を送りつけた!」

そして!と、もう一枚写真を取り出す。

「俺の舎弟が、一枚目を撮ったあと、後を尾けて撮ったんだ!」

その写真には、一枚目の写真の物と同一人物らしき男が映っている。
白熱灯の黄色い光に照らされ、グリーンに輝く髪の男、金髪でツインテールの少女、2m以上もありそうな巨大な男が立っている。
三人とも一様に怪しげなマスクをつけ、なにやら頭を寄せ合い企んでいるかのようにも見える。

「どうだ!お前と、そこのチビ(グラン)じゃねえのか!
それにそこのデカブツ!これ、よく見たらお前じゃねえのか?こんなにデケー奴はそうそういねーからな」

ジロジロとバルムンテを見上げ、写真の巨大な男と同一人物かどうか見極めようとしている。
このままでは、「三人揃って怪盗ファントム一味」などと言いがかりをつけ始めるのも時間の問題である。

【炎の檻発動。魔法陣から外に出ると炎が襲い掛かってきます】

75スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/15(日) 15:56:11
ここまで。どなたかお願いしまーす

76倉橋 ◆FGI50rQnho:2013/09/15(日) 22:38:57
代行完了

77スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/16(月) 08:26:36
代行感謝です!

78スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/21(土) 15:45:56
代理お願いします。


>「なんじゃこりゃ!ふざけんなよテメーら。
  真面目に聞いてた俺がバカだったわ」

ゲオルグの推理をすっかり聞いた、バルムンテの第一声がそれだった。
全くもって同意する、とスタンプも渋い顔を浮かべる。
納得がいかないのか、迫力たっぷりに迫るバルムンテに、バンプスの舎弟もたじたじのようだ。
素直に白状する舎弟も、兄貴分のゲオルグに睨まれ鉄拳制裁を食らっている。
板ばさみ状態とはこのことだろう。

(ま、俺とて釈然としない部分もあるんだがな)

「理由」だ。
仮に写真の男たちが、怪盗ファントム一味だとする。
怪盗ファントムが同じような服装・背格好でスタンプ・ファントムに扮したとする。

「その理由は何だ」?

スタンプは、怪盗ファントムとの面識はない。正体に心当たりもない。
だとすると、向こうが一方的にこちらを知っているということになる。
確かに同じ「ファントム」ではあるが、名前の一致だけで罪を被せるものだろうか。

写真も怪しさ満載だ。
スタンプだけでなく、特定の人物を陥れるような構図。
タイミングよく現れ、「いかにも」な手法で去っていったという三人組。
考えれば、初めから分からないことだらけなのだ。

「どういうことか、教えてほしいもんだ…」

>「仕方ねー教えてやる!
オレ達は怪盗ファントムからハクトウワシを守るようにギルド上層部から直々に依頼を受けてんだよ!(中略)」
「おーーーーーーーーいッ!?何しれっとバラしてんだお前ェーーーー!!」

ギョッとした表情を浮かべるバンプス一同。
それはゲオルグも同じことだが、一番驚いているのはスタンプのほうだった。無論、別の意味で。
バッジを付けている間、公務の内容を一般人に公開することは通常、禁じられている。
緊急を要する場合は後日、会議で評議されるのだが、その間、ギルド組合員としての行動は一切禁止される。

(それ、分かってて言ってんのかよ、グラン――!!)

>「そ、そうっすよ! 参加者として参加しながら泥棒も出来る程こいつら器用じゃないっすよ」
>「ほ、ほら! もしもハクトウワシが無くなったら「お前らのせいだーっ」てぶっとばしに行く大義名分が出来やしたし今日の所は……」

グランの暴露を耳にし、舎弟たちは一斉にゲオルグに詰め寄る。
当のゲオルグは、沈黙し何かを考えあぐねている。というより、半ば困惑の表情も混じっている。
刹那、ゲオルグはピンッと人差し指を突きたてた。
室内の温度が急上昇する気配を感じ、スタンプの背筋は逆に冷えていく。

「腑に落ちねえことが幾つかある」

ゲオルグの人差し指が、三人をそれぞれ指す。
まるで、銃口を突きつけられた気分に陥らせる動きだ。

「さっき見せた写真、あれは8日前の『夜9時半』くらいのだ。まずはお前らの『8日前の夜9時半』のアリバイを聞こうか」

79スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/21(土) 15:46:26
間違えてsageちゃった


要は「手紙を出してきた時間帯に3人がいなかった証拠」を求めているらしい。
ゲオルグは手始めに、容疑の薄そうな二人の説明を聞くことにしたらしい。
スタンプは記憶を思い出しつつ、自分の順番が回ってくると、話し始めた。

「その日なら俺は無罪だな。ちょうど、ある依頼が入ってて、一日中仕事してたんだ」
「ほー。アリバイってのは証人が必要なんだぜ。当然、いるんだろうな?」
「いるとも。だけど、その、相手がな」

急に口をもごもごとさせ始める。
なんだよ、とゲオルグは視線で促す。

「もう終わった依頼だから話しても問題ないだろうが、プライバシーってもんがあるし」
「言えって。でないとお前が怪盗ってことになるぞ」

はあ、とため息をつく。観念した様子で、打ち明ける。

「浮気調査だったんだよ。その数日前に男がきてな、妻の動きが怪しいから浮気してないか調べてくれって」
「ほお、それで?」
「それで調べてたんだ。そしたら、色々トラブルがあって、そのー」
「はっきりしねえな。何だよ、そのトラブルって」

「その妻は男の睨みどおり、浮気してたんだ。
けれどその浮気ってのがまた特殊で、何でも匿名のメンバーが集まってコスプレして何やかんやする出会い系みたいなものでよ。
俺はそれを事前に知ってたから、俺もその出会い系に潜り込んで、ターゲットに近づいて徹底的に証拠をつかもうと思ったんだ。
そしたら向こうから声をかけてきてな……オフで会わないかって」
「それで?」

おもむろに、スタンプは黙り込む。
そして左手で輪を作り、右手で輪に指をつっこむしぐさをしてみせ、開き直ったかのように舌を出した。
はじめ、ゲオルグは訝るように眉をひそめるが、その真意を汲み取った瞬間、みるみる表情が変わる。

「うわ、お前…サイッテーだろ!?サイテーだ、腐ってるにも程があるぞ!?」
「か、確実な証拠は掴んだからオッケーかなーって。双方納得してたし」
「ミイラ取りがミイラじゃねーかァアア!ただれてやがる!おいグラン、こいつ怪盗以前に別の罪で裁かれるべきじゃねーの!?」
「怪盗じゃねーけど、『戴きました』、なんつって」

省略。
その時間帯、スタンプには(少々恥ずかしすぎる)完璧なアリバイがあったということになる。
つまり、写真の男がスタンプであるはずがないのだ。

「ま、まあ、そのアリバイは認めてやるとして……だったら、こいつ等はなんなんだよ!?」

こいつ等とはつまり、写真の男たちだ。
予告状を送りつけてきたのがスタンプらに扮しているなら、別の疑惑が持ち上がる。
「なぜ、スタンプらに扮装する必要があるのか」?

「こう言っちゃなんだが……この写真、俺とグラン、バルムンテをピンポイントではめようとしているかのように見えるんだよな」

スタンプは率直にそう意見をのべる。

「共通点でいえば、ジムのメンバーでしかない俺たち3人を、しょぼい怪盗なんぞに仕立て上げようとする理由……か」

舎弟たちは、「さあこれでもまだ犯人を捜そうなんて言うんじゃないでしょうね」という視線を兄貴分に向ける。
ゲオルグもようやく興奮の熱が下がってきたようで、無言で灼熱の檻を解除した。
だが、まだ不満があるのか、帰る気配を見せない。
何かしら「怪盗ファントムの正体を知る何か」あるいは「彼を納得させる案」を提案しない限り、てこでも動かないだろう。

【アリバイに欠点がなければゲオルグの灼熱の檻解除、しかしまだ納得がいっていない様子】

80スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/21(土) 15:46:47
ここまで。お願いしマース

81名無しさん:2013/09/21(土) 20:25:36
完了

82スタンプ:2013/09/21(土) 21:23:42
代行感謝!

83スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/27(金) 18:30:09
代理オネシャス

>「まあ、ギルドの二人は誰かに恨まれる心当たりはあるかも知れねーが
俺までセットでいる理由は不思議だな。
もしかして、ライバルチームの罠か?
それかグランが言った通りの作戦を事前に潰すための作戦か?」

そう発言したのはバルムンテだ。
成程、この秋の大運動会で優勝を狙う者は多い。それこそ個人から大学の運動チームまで、その参加者数を数えればきりがない。
元々スタンプやグランをよく思わない輩たちが、これ幸いと蹴落としにかかることもあるのかもしれない。

「しかし、それならわざわざ怪盗なんて古臭い、面倒な手を使うか?
 もし俺だったら、そんな意味のないことせずに、選手に下剤をしこむとか、一人きりの夜道を襲う方を選ぶがな」

そこまで意見し、「あ、もしもの話なだけであって、本当にやったことは無いぜ」と言い訳する。
よしんばライバル達がその手を使ったとして、バルムンテには両方とも効果がないような気もするが。
しかし、スタンプたちの正体や任務内容が漏れていたとなると話は別だ。
今回の任務内容こそしょうもないものだが、それでもギルド組合が扱う情報なのだから外部に漏れるわけがない。
もし怪盗ファントムが事前にスタンプ等の潜入を知っていたとすると、とんでもない結論に至る。
つまり、情報を流した者が存在するということになるのだ。それも、ギルドの内部に。
でなければ、最悪の場合、ギルド組合の中に怪盗ファントムが潜んでいる可能性が浮上する。

「こりゃ、思った以上に深刻な問題だぞ……ウォーリーを探すより難しいんじゃないか」

うむむ、と不精髭の散った顎を撫でると、ぱたん、と何か開く音がする。
それはスタンプの脳内の記憶の扉が開く音で、「ウォーリー」の単語に自ら反応したからに他ならない。




記憶の中の自分は今より10歳ほど若く、TVのそばで本を開いていた。
向かい合うように、「彼女」がいる。

『相変わらず読んでるのね。……あら、絵本だなんて珍しいじゃない。ウォーリーを探せ、でしょ。それ』
『視覚探索力を鍛えてるんだよ。たまには文章を読むだけじゃなくて、脳自体を鍛えないと』
『ああ、もう!私の前でむずかしい言葉を使わないで!』

彼女は喚いて、本を取り上げる。返せ、と眉尻をさげると、いやよ、と笑われる。
買ったばかりのTVでは、近頃話題のドラマが流されている。
熱血敏腕弁護士が、『怪盗』の濡れ衣を着せられた青年の無実を晴らすという内容だ。

『怪盗かあ、本当にいるのかなあ。アルセーヌ・ルパンだって、結局はフィクションでしょ』
『空想に憧れて真似るような阿呆なら、いるんじゃないのか。ほら、最近英国で騒がれてるこそ泥とか』
『ファン何とか、だっけ。大胆不敵に予告して、狙った獲物は必ず奪う!有限実行なところは、かっこいいね』
『毎回、ぎりぎりの所で失敗しているらしいけどな』

「彼女」はタオルケットを体に巻いて、「ふはーはは!」と高らかに笑う。怪盗の真似のつもりらしい。

『誰も姿を見たことがないんでしょう?なんだか幽霊みたいよね、彼』
『彼女、かも。怪盗らしく変装でもしてるんじゃないか?』
『どうかしら、そうなのかしら。私が怪盗になったら、誰に変装しようかしら』
『へえ。君が怪盗になったら、何を盗むんだい』
『何を言ってるのよ、私は物を盗んだりなんかしないわ。盗むフリだけよ、ちゃんと返すわ』
『……じゃあ、怪盗になる意味がないじゃないか』
『意味はあるわよ。魔法を使わずに、幾多の罠を潜り抜けて、皆の前で颯爽とお宝を手にするのよ?
 絶対、びっくりするわよ。それで、そんな凄い奴が盗もうとしたお宝ってどんなだろうって、見にくるでしょう。
 ……あっ!怪盗の目的って、もしかして案外それだったりして。結局は、皆に見てもらいたいだけなのかもね』

なんだか、サーカスのピエロみたいね。彼女は一人合点すると、にっこりと笑っていた。



84スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/27(金) 18:30:55
>「今、おめーんちってガラガラじゃねぇの?
こんだけ手下引き連れて、黄金の像は誰が守ってんだよ!?」

バルムンテの一言で、スタンプははっと我に返る。
流石にそりゃないだろう、とグランは意見する。話題は黄金像のセキュリティについて移っていた。
まったくの同意見……と言いたいところだが、この不良は毎回必ず何か「トラブル」を引き起こす。
それこそ、地面に埋め込んだ地雷のように。つまりは、油断ならないのである。
現に、ゲオルグの表情はみるみると青ざめていく。

>「え、まさか……まだ引き渡してないのか!? もしかして心配すぎて自分のアジトに置いちゃったとか!?」

ことごとく当たっていたようである。
最初は笑っていた舎弟たちも、兄貴分の表情を察して同時に顔色を変える。

>「しまったぁああああああああああああああ!! 野郎ども、撤収だ!」

わっと表に飛び出すバンプスのメンバー。
スタンプはそれを目で追いながら頭をかき、グランに振り返る。

「グラン、俺はあいつ等を追う。黄金像に何かあっちゃ大変だからな。それと……」

決まり悪そうにバルムンテのほうへ振り向いた。
先日の嘘と潜入捜査のことがばれた今、ジムのメンバーとして参加する意味もないだろう。

「悪かったな、また変な騒ぎに巻き込んで。今日のことは悪い夢だと思って、忘れちまいな。
 って、無理があるか……大運動会、俺の参加は取り消しておいてくれ。もう要らないからな」

バンプスが消えた方へ目をやり、追いかけ始める。
ゲオルグたちのアジトはヴァルカン社の付近にあると見ていいだろう。
ストリートを走り、箒に乗ったゲオルグたちの姿を探す。

「(お、あんな所にいた。案外、箒ってトロイのな)」

姿を見つけるや、走るスピードを上げる。そういえば、あまり息切れしないな、と感じた。
大運動会に向けて、ずっとトレーニングしていた成果かもしれない。

「(参加できないのはちょっと、勿体無かったかもな)」

【ゲオルグのアジト】

バンプスのアジトは、ヴァルカン社のすぐ近くにある倉庫を改良したものだ。
外見は普通の小屋だが、中は広々とし、様々なトラップがかけられている。
ゲオルグ自身がかけた罠も幾つか存在し、最奥部に黄金像が保管されている。

「早くトラップを解除しろ!」
「そ、それが、……知らない複合魔法が掛けられてて!」
「はあ?どういうことだ!おいどけ、俺が解除する!」

スタンプがたどり着くと、バンプスのメンバー全員が入り口の前で立ち往生している。

「……なんだこれ!『堅牢の呪護』じゃねえか!誰がこんなトラップを!」
「こ、これ、大爆発魔法か、でなきゃ同じくらいの力でぶち抜かない限り無理ですよ!どうするんです!?」

ゲオルグは悩んでいる。アジトに向けて大爆発魔法なんて使ったら、黄金像に傷がつきかねない。
さりとて、この魔法を物理的な力で抜く道もなさそうである。今のところは。

【ゲオルグのアジトにて謎のトラップが出現。特大のパワーでしかぶち抜けないっぽい】

85スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/27(金) 18:31:10
ここまで。

86名無しさん:2013/09/28(土) 09:41:45
完了

87スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/09/28(土) 15:52:46
>>86
代行感謝!

88スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/10/05(土) 14:24:28
代理オナシャス

スレ:ttp://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1376928290/

>「怪盗ファントムの行動を何故って理由付けしてたら、
>腑に落ちねぇことだらけだが
>ただ優勝トロフィーを盗まれちまったら俺等が困るんだよな。

「……おいおい、何でお前まで来てるんだよ」

バンプスが奮闘している最中、背後から声が。
振り返ると、グランはまだいいとして、てっきり店にいるとばかり思っていたバルムンテまでもが仁王立ちしている。
正直な所、これ以上一般人(?)が介入することは喜ばしくない。

>つーことで……」
「お、おい、何するか知らねえけど……」

呼び止めるも耳を貸すつもりはないらしい。
上着を脱ぎ捨て、『堅牢の呪護』がかけられた扉に手をかけた。
しかし如何に彼が怪力とて、一人で開けるには無理があるのではないか。
その場にいた全員がそう思い、またグランも同じことを考えたらしく、声をかける。

>「バルムンテ、同時にパンチを叩き込めば壊せるかも……ほげぇええええええ!?」
「う、うええええええええええっ!?」

青白い光が、バルムンテの怪力に反抗するように、バチバチと鳴る。
巨人の腕に負けてなるものかと、呪いが咆哮するかのようだ。
だがお構いなしに、バルムンテはその扉を、容赦なくこじ開けた。
力に押し負けた呪いの印が、断末魔をあげるような音を立て、光とともに霧散する。

>「おら、とっとと怪盗ファントムを見つけて取っ捕まえっぞ」
「お……おお!俺が先頭をいく、お前らも続け!」

一瞬は呆然としたバルムンテだが、威勢よく中へと入っていく。
室内は外観より広く、玄関から廊下へと一直線に進む。

「黄金像はどこに?」
「最奥の金庫の中だ!俺たちがかけた術もあるから、迂闊に手を出せねえとは思うが…」
>「堅牢の呪護をかけたのが怪盗ファントム一味だとすれば魔術師か……。
 よく分からないけど中に立てこもっている可能性が高い!」

屋敷に入るなり、その場にいた殆どの人間が絶句した。
壁一面に大きく、「怪盗ファントム参上」とペンキで汚く落書きされている。
更に、唯一の進行方向である廊下を、巨大な刃物が行ったり来たりしている。

>「ベタすぎるだろ!」
「インディ・ジョーンズかよ……ここはアマゾンの遺跡か何かか?」

呆れて物も言えない、とはこのことだ。
しかし、何となくではあるが、怪盗ファントム達の目的が見えた気がした。

「だがよ、これで分かった。アイツ等はまだ、黄金像を盗めてないだろうな」
「ああ?何で分かるんだよ、んなこと」

ゲオルグが食って掛かる。
暑苦しい、とゲオルグを押しのけ、スタンプは罠が張られた廊下を見据える。

「簡単だよ、メリットがねえ。盗んだ後ならば、とっくにオサラバしても良いはずだ。
 わざわざ呪護やトラップなんて手の込んだもの仕込んで嫌がらせするほど、あいつ等も暇じゃねえはず」

89スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/10/05(土) 14:28:24
ならば、何のために呪いや罠を仕掛けたりするのか。

「発想の逆転だ。『わざわざトラップや妨害を作る理由』が、怪盗たちにはある」
「じゃあ、その理由は何なんだよ」
「考えてもみろ、『黄金像を手に入れてない』前提で、トラップを仕掛けるとすれば、どういう理由だと思う」

はあ?とゲオルグが素っ頓狂な声をあげる。その時、部下の一人がおずおずと手をあげた。

「そ、そういえば……この辺り、俺が侵入者用にトラップを仕掛けたはずなんだけど…
 こんなトラップしかけた覚えがないんスよ。多分、解除された上で、このトラップ魔法が仕掛けられてるんじゃ…」

スタンプは頷いて、言葉を続ける。

「ゲオルグだって底抜けの馬鹿じゃねえ。怪盗用の対策魔法くらい掛けている。とすれば、それを解除するにも時間がかかる」
「あ!じゃあこの魔法、俺たちが駆けつけてきた時のための足止めってことか!?」

注釈しておくと、トラップ魔法にもいくつかの法則が存在する。
トラップを発動している間、術者にも負担がかかるし、トラップを破れば術者もそれを感知する。
つまり、トラップが解除されれば、怪盗は自身に敵が近づいていることを知ることができるのだ。

「堅牢の呪護が解けた時点で、相手も俺たちに気づいてるだろうな。こっからはスピード勝負だ」
「け、けど、このトラップはどうすんだ!俺たち総出で解除するにも、5分はかかるぞ!」
「じゃ、お前たちはそうしてろ。
 バルムンテ、お前もこの先はくるな。グラン、バルムンテを見張ってろ。ここで怪我でもされたら適わん」

まるで邪魔なハエでも追い払うかのような、厳しい言葉を放った。
縦横無尽に動き回る刃物のトラップは、何物も、近づこうものなら引き裂いてやる、という気概を感じる。

「俺は、『ここを切り抜ける』」
刃物よりも、スパッと切れのある答えを出し、クラウチングスタートのポーズをとった。
移動式トラップは、スピードこそ早いが、規則正しく動いている。
タイミングさえ見計らい、その間を潜っていけば、抜けることはできる。

「(1、2、3……刃の数は4つか。ギリギリだな)」
おいおいまさか、と周囲が眉を顰めるが、気にしない。
誰かがおい、止めろよ、と言う暇も与えず――地面を蹴る!

待ってましたとばかりに、刃物が迫る。
八つ裂きにしてやる、という意思を持つがごとくだ。一つ目の刃が、空を裂く音を呻らせる。

避けた。勢いあまって、刃は壁に突き刺さった。本物の刃を使っているらしい。
すかさず、二本目の刃に意識を向ける。
鎖の先端にぶら下がる鎌の刃が、スタンプを真っ二つにせんとする。
これも辛うじて避け、刃先が壁にめり込んだ。冷や冷やしつつ、先に進む。

「おい、後ろ!」
3本目を見据えたその時、誰かが大声をあげた。
その大声でとっさに、スタンプは後ろを見る。しかし全員、誰かが声をあげた様子はない。
罠だ、と気づいた瞬間、胴体に。切り裂くような激痛が走る。

「あああああーーーーッ!!!」

実際に胴体が切れたわけではない。
刃はスタンプの体をすり抜けて、悠々とぶら下がっている。3本目は幻覚の刃だったようだ。
しかし幻覚魔法は、精神に直接痛覚を与えてくる魔法だ。実際に切り裂かれたかのような痛みも襲ってくる。
激痛に耐えかね、スタンプは動けなくなってしまった。
まもなく、4本目が、倒れて身悶えする不運な男にむけ、慈悲なき刃を振るう!

90スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/10/05(土) 14:28:55
ここまで。現代幻影避難所の、グランさんのレスも、どなたか代行してくださるとうれしいです。

91名無しさん:2013/10/05(土) 21:09:55
完了

92スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/10/05(土) 21:25:17
代行感謝!

93スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/10/14(月) 14:31:10
代理お願いしまーす
スレ:ttp://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1376928290/


神経をズタズタに引き裂かれたような痛みが、全身にまわる。
幻影魔法の特徴は、視覚的な幻を脳に刷り込み、あたかも本物に触れたかのような錯覚を与えることだ。
トラップも例に漏れず、真っ二つに切断されたかのような感覚を与えた。
おかげで、指一本動かすこともままならない。

「(あ、これ、死んだかな)」

呑気にも、激痛でイカれてしまいそうな脳味噌で、スタンプはそう考えた。
以前も何度か死にかけた経験はあったが、こんな間抜けな死に際もなかろう。
なんとか痛みに抗って、這って逃げ出すこの瞬間も、空を切り裂き、真っ直ぐ刃が落ちてくる気配を感じる。
いよいよおしまいか、と思われた、その時。

視界が、吹っ飛んだ。
何かに抱きかかえられるまま、ハリケーンの風に煽られたように、吹き飛んだ。
そしてそのまま、廊下の先にある階段へと落下した。

>「おおおおおおおおおおおお!?」
「あっだっ、いでっ!?」

階段を転げ落ち、スタンプは背中から全身を強かに打ちつけた。
まやかしの痛みは抜け落ちたものの、今度は現実で食らった鈍痛がうったえてくる。

>「だ、大丈夫かーっ?」
>「うん、なんとか……」
「……俺は、大丈夫じゃねえよ……降りろ、グラン……ってえ!」

虫の息とはこのことか。スタンプが下敷きとなったため、グランは事なきを得た。
意識がはっきりしてくると、スタンプはがばりと起き上がる。

「お前、何してんだ!バルムンテを見てろって言ったろ!」

そう、本来ならばトラップの向こう側にいるはずのグランがここにいる。
しかも、危険を冒して、自分を助けたのだ。
状況を理解したスタンプは、腹の奥底から怒りが沸き上がるのを感じた。

「この、バカ!考えなしのアホンダラ!お前ごと真っ二つになってたらどうする気だ!」

先ほど、自分こそ無理強いしてトラップを切り抜けようとしたことは棚に上げ、ぎゃんぎゃんと喚き散らす。
一方で、トラップよりあちら側では、解除に成功したゲオルグ達とバルムンテがこちらに向かってくる。

「グラン、俺は言ったはずだ。バルムンテを止めろって。何故そうしない?
 お前なら重力を扱うなりで、あいつを抑え付けるくらい簡単だったはずだ」

合流したゲオルグ達が、何事かと様子を見ている。勿論、傍にはバルムンテもいる。

「お前、『もう殆ど当事者だし、事件に関わっちゃったから〜』とか、フ抜けた考えしてたんじゃないだろうな」

スタンプの三白眼が釣り上がる。

「この際だから言っておく。『邪魔』だ。御用じゃないんだよ。忘れるな、これはギルドの仕事だ。
 どれだけ当事者ヅラしてたって、一般人(バルムンテ)にゃ関係のない話なんだよ。
 いくら駄々こねられたって、ギルドの人間としちゃ、巻き込むわけにはいかねえな。分かったら帰れ、帰れ!」

しっしっと蝿を追い払うが如し。にべもない言葉で、バルムンテを帰らせようとする。
例え反論されようと、意地でもこれ以上介入させるつもりはなかった。
が、意外にも、異議を唱える男がいた。ゲオルグだ。

94スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/10/14(月) 14:31:59

「でもよお、アンタを助けようとしたのはバルムンテも一緒だぜ」
「だから何だ。感謝すべきだろうがな、それとこれとは話が……」
「それに、呪護のかけられた扉を開けたのも、バルムンテだよな。お前は?何も出来なかったじゃん」

この反論には、うぐ、と言葉に詰まる。
確かに、スタンプ自身は何もしていない。
扉のトラップを開けたのも、スタンプの救助に一役買ったのも、バルムンテだ。

「お前よりよっぽど、バルムンテの方が頼りになるぜ?俺は気に入ったよ、こいつのこと」
「」

最早、ぐうの音もでない。
アジトの家主すら、彼の肩を持つ以上、こちらが何か言ったところでつまみ出されるのだろう。
何だか仕事を横から掠め取られたようで、別の怒りと悔しさがこみあげてきた。

「……じゃあもう、好きにしろ!何かあったって俺は知るもんか!」
「役立たずだからってヒネてんなよ、オッサン」

暗闇の中、ゲオルグが作り出した小さな火の玉の明かりだけを頼りに、先に進む。
部下達は万が一のために、各所に散らばって見張りをしている。
奥に進むは、グラン、バルムンテ、ゲオルグ、そしてスタンプの4人。

「良いか、こっから先は自己責任だからな。俺は手を貸さねえし、貸されるのもごめんだぞ!」
「あのさあー、そう捻くれねえで素直に協力してくれって言えばいいじゃねーか。つーか煩い」
「い・や・だ・ね!俺にもメンツってもんがあるんだよ!」
「(俺も大概だけど、ガキかよ、このオッサン……)」

小姑のように喚くスタンプに、さしものゲオルグもゲンナリせざるをえない。
スタンプからしてみれば、怪盗だと疑われたり、一般人を巻き込んだり、あまつさえ助けられたりと、気に食わないことだらけなのだ。
酒や煙草を我慢していることも相まって、ストレスが溜まっているのである。

>「う、うおお!?」

その時、突如、バルムンテが悲鳴を上げる。
何事かと驚いて足を止めると、今度はグランが姿を消した。

「お、おい!?大丈夫か!」

急いで駆け寄ると、床がない。ぽっかりと穴が開いて、暗闇が見える。
否、よく見ると、暗闇の中心に、開け放たれた金庫がある。

「まさか、もう怪盗が……?」
>「スタンプ気を付けろ! 奴が近くにいる!」
「(奴?何のことだ?)分かったから落ち着け、今引き上げてやる……」

床のへりに四つん這いになり、まずはバルムンテに手を差し出そうとする。
さっきは自己責任だと騒いでおきながら、いざハプニングが起きると民間人を優先する。
最早、癖のようなものだ。だが、それより早く、別の誰かの悲鳴があがった。

「うわああっ!!」
「ゲオルグ!?」

まるで突き飛ばされたかのように、ゲオルグが真っ逆さまに落ちていく。
そちらに手を伸ばそうとするが、圧倒的に足りない。
だがゲオルグとて、ただ落ちるだけの馬鹿ではない。咄嗟に掌を下方に向け、小規模な爆発を起こす。
その爆風で体を浮かし、激突だけは免れた。

95スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/10/14(月) 14:33:52

「大丈夫かー!?」
「こんくらいの落下、どうってことねえよ。それより黄金像が!」

ゲオルグは血相を変えて、金庫に駆け寄る。
存外元気そうなので、スタンプは安心して二人を引き上げようとする。

「あった!像はまだ盗られてねえみたいだ!」

ハクトウワシ像は、金庫の中で鈍く輝いている。
その事に安心したゲオルグは、胸を撫で下ろしている。だがスタンプは、何か引っかかるものを感じていた。
今までのトラップが、怪盗ファントムが仕掛けたものだと仮定する。
ならば何故、黄金像は目の前にあるのか。こんなに無防備に、鍵まで開いているのに。
金庫が開いたまま、放置されている。ならば……それ自体が罠なのではないか。

「ゲオルグ!そいつに触るな!」
「へ?」

その時、予期していた不安が現実となった。
金庫の形が、ぐにゃりと歪み、突如として肥大し始める。
硬質な外見は、分厚く毒々しい色合いの皮膚となり、その形は不定形に変わる。
金庫の扉は、歯のない巨大な口となって、黄金像をばっくり飲み込んだ。

「『ミミック』だ!ゲオルグ、逃げろ!」

ありったけの声で叫ぶが、ゲオルグは目の前のミミックにすっかり腰を抜かしている。

「だ、駄目だ……逃げらんねえよ……俺、ブヨブヨとか無理ぃいーーーーーーー!」
「女子か、テメーはァアア!」

どうやら、ゲオルグは恐ろしさのあまり動けないらしい。
言うが早いが、スタンプは飛び降りた。着地地点は、ミミックの頭部。
まさか戦闘になるとは思わなかったが、コートを着たまま正解だったようだ。
コートからデザートイーグルを引っ張り出し、銃口をミミックの皮膚に突きつける。

「これでも……食らえ!」

ゼロ距離射撃。容赦なく、ミミックを撃ちぬく。
しかしミミックは堪えた様子がない。急所を外したようだ。

「クソッ……グラン!重力でゲオルグ達を逃がせ、お前なら出来るだろ!?」

ミミックの体から、ニュルリと触手が生え、ゲオルグに狙いを定める。
スタンプはすかさず、触手を撃ちぬいた。

「早くしろ!コイツは相当腹ペコと見た。このままじゃ、全員食われるぞ!」

問題は、それだけではない。
おそらく像か、その周辺にも、ゲオルグが仕掛けたトラップがあるのだろう。
それを解くことが出来なかった怪盗は、ミミックに像を食わせることで、ゲオルグに何かアクションをさせようとしている。
ならば、近くに怪盗もいるはずだ。

▼MONSTER DATA▼
ミミック/擬態生物/危険度・中
洞窟やダンジョンに生息する、不定形生物。
宝箱や宝石、美しいものなどに化け、近寄ってきた獲物に襲い掛かる。
スライム系とは違い脳や心臓を持つが、その位置は個体によってさまざま。

【トラップ・ミミック発動】

96スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/10/14(月) 14:34:04
ここまで。お願いします

97名無しさん:2013/10/15(火) 21:27:07
完了

98スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/10/16(水) 22:08:19
代行感謝!

99スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/10/22(火) 19:02:37
代理お願いします!
スレ:ttp://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1376928290/

>「よしきた、そーおれ!」
グランは軽快な調子で、ゲオルグを重力で上方へ弾き飛ばす。
あの巨体がゴムボールのように弾んでしまうのだから、魔法ってものは恐ろしいものだ。
たまに彼女の魔法を見ていると、いずれ自分がバレーボールの玉代わりにされる日も近いのでは、と戦々恐々する。
仕事は評価できるのだが、同居人としては複雑な心境である。

>「さっき見ていた様子だと、ミミックは黄金の像を飲み込んだように見えたけどよぉ。
 いったいファントムの狙いはなんなんだよ〜っ?」
>「黄金像自体に何か魔法的な仕掛けがしてあってそのままでは触れなかったとしたら……
>それをミミックもろとも爆発魔法で吹っ飛ばさせるのが狙いかもしれない!
「ハッ、だとすりゃ嬉しい誤算だな!」

グランの言う通りならば、怪盗ファントムはゲオルグの好戦的な性格を見越していたことになる。
しかし、彼の弱点までは把握しきれていなかったようだ。
だが、それだけだろうか?ただ吹き飛ばすだけで解除されるような魔法なら、こんな乱暴な手を使ったりはしないだろう。
ミミックは、バルムンテから強烈な蹴りを食らったダメージからか、ぶよぶよと震え、触手を一斉に差し向ける。
すかさず発砲し、触手を弾き飛ばすが、捌ききれない。幾つかはバルムンテを締め上げようと迫る。
蹴りを浴びた部分は、泥のような体色から、よりどす黒く変色し、膨らんでいく。損傷すると、変色して膨張するらしい。

>スタンプ、銃で気を引いておいてくれ!」

「オーライ、マシな作戦なんだろうな!?こうなりゃバルムンテ、お前も手伝え!」

ミミックから飛び降り、ぎょろつく目玉と目が合う。
胴体部分から伸びる触手に向け、発砲すると、触手の幾つかが一斉にスタンプへ向かう。

>「――ボクシングダンス! あだだだだだだだっ!」

妨害がいくらか減ったところで、グランがミミックへ肉迫し、先ほどバルムンテが蹴りをいれた場所に高速で拳を叩き込む。
拳が接触した部分が、紙にインクが染み込んでいくように、みるみるどす黒くなっていく。
そして、パンパンにヘリウムを注入したかのように、膨らんでいく。

>「どうだ……!?」
「! 下がれ、グラン!」

スタンプは咄嗟に、コートを放った。ほぼ同時に、勢いよく、膨張していたミミックの胴体が弾け、液体を放出する。
液体をモロに被ったコートは、硫黄のような臭いを発しつつ溶けた。
ミミックの弾けた部分は、粘土をこね合わせたかのように元に戻っていく。

「消化液だな……ああやってダメージを食らうと、消化液をばら撒くんだろうよ」

体液を放出したからか、ミミックのサイズが幾らか小さくなっている。
皮膚も薄くなり、血管や消化器官、そして、鈍く輝く黄金像が、うっすらと見えてくる。

「こりゃ、やりやすくなったな。このまま奴こさんに液を吐かせ続けりゃ、急所が見えてくるかもしんねえ。
バルムンテ、ミミックの背中側に回って特大のキツイのを叩き込んでやれ!
グランはサポートだ、バルムンテに消化液が被らねえよう上手く弾け!
例によって俺が疑似餌だ、奴をひきつける!」

【作戦開始!】

100スタンプ ◆4z2BSlJwrs:2013/10/22(火) 19:02:51
ここまで!


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