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【場】『 大通り ―星見街道― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:00:31
星見駅を南北に貫く大街道。
北部街道沿いにはデパートやショッピングセンターが立ち並び、
横道に伸びる『商店街』には昔ながらの温かみを感じられる。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
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        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
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          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
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                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
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★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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172小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/07/30(土) 22:54:14
町を包む宵闇が徐々に濃くなり始め、夕暮れ時から夜に変わろうとしている時のことだった。
一台の自販機の前に、喪服姿の女が佇んでいる。
不思議なことに、飲み物を買う気配もなく、ただひたすら立ち続けている。
その姿は、何かを待っているように思えた。
しかし、辺りには人気はなく、人待ちをしているようにも見えない。

            ガサッ
                    ガササッ

不意に、自販機と地面の間にある隙間から物音がした。
その奥で『何か』が蠢いているような音だ。
光が届かない暗がりの中で、『何か』が這いずっている。

    ザザッ!

やがて、自販機の下から『何か』が這い出してきた。
自販機の明かりが、その輪郭を映し出す。
それは――大きな『蜘蛛』のように見えた。

173小角 宝梦『イル・ソン・パティ』:2016/07/31(日) 00:55:57
>>172

少年探偵風に、サスペンダーで吊ったズボン――
はともかくとして、創作探偵風の鹿撃ち帽と銀髪が目立つ小角。

(推理するに……お葬式でもあったのだろうか?
 まあ、わたしにはあまり関係のないことではあるが。)

       ザッ

自販機に近付く。
べつに、お葬式と推理された女性に――ではない。

「……〜♪」

            ガサッ
                    ガササッ

(……なんだろう、物音がするぞ。)

鼻歌など歌いつつ、コインを投入――


    ザザッ!

       「わわわわッ!?」

かなり大きく驚いた。
蜘蛛だか何だかわからないが、こわそうだ。

   チャリン

           コロコロコロ

「あぁぁっ! わ、わたしとしたことが!!」

小銭まで落としてしまう始末なのだ……しかも自販機の下へ。

174小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/07/31(日) 01:32:11
>>173

「あ……。ごめんなさい。驚かせてしまったようね……」

被っている帽子の陰に隠れていた顔を上げて、穏やかな口調で小角に謝罪する。
気にする程のことでもないかもしれないが、帽子の角度は左側に傾いている。
しかし、今はそれよりも奇妙なことがある。
小角が驚いたとしても、何故この女性が謝る必要があるのだろうか?
そして、近くで見れば、這い出してきた『何か』の正体が分かるだろう。

     ゴ   ゴ   ゴ   ゴ   ゴ   ゴ   ゴ

それは蜘蛛ではなく、五本の指を持つ人間の『右手』だった。
切断された手首が、まるで生きているかのように、その指を動かして這いずっているのだ。

そして――小角が気付いたかどうかは分からないが、よく見ると、傍らに立つ女性には『右手』がない。

     ザザザッ

そして、『右手』は蜘蛛を思わせる動きで、再び自販機の下に潜っていく。
しかし、すぐに戻ってくると、糸で吊るされているかのように『浮遊』する。
『浮遊』した『右手』は、喪服の女の右腕にある『切断面』へ移動し、元通りの位置に『結合』を果たした。

     チャリッ

「――はい。どうぞ……」

右手の中に握っている小銭――自販機の下から拾ってきたそれを小角へ差し出した。
どことなく陰はあるものの、柔らかく人当たりの良さそうな微笑みを浮かべる。
少なくとも、害意はないらしい――と思える。

175小角 宝梦『イル・ソン・パティ』:2016/07/31(日) 01:59:13
>>174

「あっ、ひっ……手っ、手ッッ……!?」

    「こっこれは」

       「なにがどうなって」

   ブルッ

落ち着いた物腰に恐怖心を煽られた。
この前見せられたホラー映画みたいじゃないか。

「きみは……きみはいったい……」

     ザザザッ

「うわっ――」        

     チャリッ

         「あっ!」

せわしなく表情を変えリアクションする小角。
その姿はまさしく『フクロウのゆるキャラ』だ・・・・

     「お、おほん!」

もっとも、小角自身にそのような自覚は無い。
どうやら少しずつ飲み込めてきたらしく、咳払いをして。

「どうも、あ、ありがとう。どうやら悪い手ではない……
 というよりは、きみの手、なんだよね……? う、浮いていたが。」

浮いてはいたが、今はこうして繋がっている。
帽子を押さえつつ小さく頭を下げて、小銭を受け取った。

    (わ、悪い人ではないように見えるが……!
     いや、人は見かけによらないというのは鉄則!
     しかし見かけによらないなら手もノーカンでは?)

                 ・・・・内心、錯綜している。

176小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/07/31(日) 20:30:07
>>175

  「――ええ……。そうね……。ただ……何と言えばいいのかしら……」

言葉を選びながら、やや躊躇いがちに言葉を返す。
少女が来る少し前、自分も自販機の下に落し物をしていた。
それを探すために、『スーサイド・ライフ』の能力を使っていたのだ。
切り離した『パーツ』の操作に集中していたせいで、この探偵姿の少女を驚かせてしまった。
自分が彼女を怖がらせているというなら、それを取り除いてあげなければならない。
しかし――どう説明するべきなのだろうか。

     スッ

考えた末に、今までバッグの中に突っ込んでいた左手を、おもむろに外に出した。
そこには自身のスタンドである『スーサイド・ライフ』が握られている。
『パーツ』は誰にでも見えるが、『スーサイド・ライフ』は、スタンド使いにしか見えない。
これで少女が何らかの反応を示せば、説明するのは簡単になる。
ただし――仕方がないとはいえ、『抜き身のナイフ』というヴィジョンは、あまり穏やかとは言えない。
この行動が、さらに少女を怖がらせることにならなければいいのだが……。

  「もし――この左手に何も見えなかったら、この言葉は聞き流してちょうだい……。
   私は決してあなたを傷つけるつもりはないわ……。
   だから、どうか落ち着いて聞いて欲しいの……」

  「信じられないとは思うのだけど……。
   私には……他の人とは少し違う不思議な力があって……。
   今は……落し物を探していた所なの……」

できる限り不安を与えないように、少女に優しく語りかける。

177小角 宝梦『イル・ソン・パティ』:2016/07/31(日) 22:28:35
>>176

    ザリ

「うっ……」

小角は一歩、後ずさりをした。
しかし、逃走するには――続く言葉は理解できた。

「そ、そのナイフは――いや。
 その言い方は、それに手……つまり。
 なるほど、それならば、が、合点がいく。」

     「……わ、わかる。知っている。
      きみの言っている事はわかるぞ。」

恐る恐る、そう答えた。
自分の『力』では、攻撃されればどうしようもない。

    ジリ

だから、少し下がりながら答えた。
お返しに見せる――という事も、しない。

「す、すまないが。わたしは武闘派ではない。
 むしろ知性派……ゆえに、少しだけ警戒するぞ。」

「き……きみは、いい人そうには見えるけれども!」

小角は臆病だ。
けれど、表情に浮かぶ不安は削られる。

それは、小石川の言葉に悪意を感じなかったから。

「探し、物? それは……わたしの得意分野だ。
 しかし、きみの『手足』のほうが得意そうにも見えるね……」

先ほどまで切り離されていた『右手』に、ゆっくり視線を遣った。

178小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/07/31(日) 23:44:32
>>177

  「――そう……。これが見えるの……。では、これ以上の説明は必要ないようね……」

小角の言葉を聞いて納得した表情を浮かべる。
そして、左手を静かにバッグの中に戻した。
まだ解除する訳にはいかないが、これ以上見せておく理由はない。

  「『今も』探しているのだけど……。暗いから、なかなか見つからなくて……。いえ……あったわ」

      コロロッ……
               キラッ

何かに押し出されるようにして、自販機の下から、小さな光る物が転がり出てきた。
金属質の輝きを放つそれは、どうやら指輪のようだった。
宝石の類は付いておらず、全体的にシンプルなデザインだ。

                  コロロロロロロ・・・…

そして、その後から、もう一つ出てきたものがあった。
ピンポン玉のような球形だが、大きさはだいぶ小さい。
ガラス質の表面が、自販機の明かりを反射している。
それは――人間の『眼球』だった。
緩いカーブを描きながら、自販機の下の隙間から、指輪の後に続いて転がってきている。

  「――本当に良かった……。これが見つかって……。これからは気をつけないと……」

思わず安堵のため息が漏れた。
拾い上げた指輪を、右手の薬指にはめ直す。
そして、帽子のつばを少し持ち上げる。
そこには、普通はあるべき『左目』がなかった――。

          フワッ

先程と同じように浮遊した『眼球』が、空洞になっている左の眼窩に収まり、元通りの状態となった。

179小角 宝梦『イル・ソン・パティ』:2016/07/31(日) 23:59:15
>>178

「う、うむ……」

    ホッ

隠されたナイフに、内心、安らぐ。
危険はなさそうだが、断定は出来ないのだ。

「そ、そうなのかい。……しかし、そうまでして――」

一体何を、と聞きかけた。
が、それはすぐに判明して。

  「あっ、指輪」

      「……ん?」

指輪、なるほど大事そうなものだ。
そう思ったのもつかの間、後から出てきた物。

「ひっ――――」
  
    バッ

ひろわれた指輪を追うように、思わず顔を上げた。
予想通りの恐怖光景がそこにあった。

空っぽの眼孔――

「めっ、目……目まで、切り離せるのか……」

あまり意味もなく事実をただ述べ、精神の安定を図った。
あるべき場所にあるべき器官が収まると、不安も収まる。

「お、おほん……ううむ。
 どうにも見ていて不安になる能力だ。」

「けれど――み、見つかって良かったね、探し物。」

            「……」

小角は探偵のたまごだ――から、一応考える生き物だ。
だから、今考えているのは、彼女の喪服と――『指輪』の関係。

しかしそれは、迂闊に触れて良い物では、とうていないのだろう。

「もし……また、なくしたら。
 わたしに相談してみるのもいいかもね。」

「いや、もちろん、無くさないのが一番なのだが……うむ……」

勝手になんとなく気まずい気がして、そのようなことをまくしたてた。

180小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/08/01(月) 00:39:02
>>179

  「ごめんなさい。本当に不安にさせたくはないのだけど……。
   こうするのが一番探しやすかったものだから……」

深く頭を下げて、謝罪の言葉を述べる。
自分でも、あまり町中で能力を使うべきではないことは理解しているつもりだ。
それが原因で騒ぎになったり、何かのトラブルを引き起こしてしまう可能性もある。

しかし、この結婚指輪は、自分にとって命の次に大切なものだ。
その指輪が手元からなくなってしまったことで、内心では激しく動揺していた。
とにかく早く見つけなければ――頭の中が、その考えで一杯になっていた。

そのせいで、小角が傍らにやって来たことにも気付くのが遅れ、驚かせてしまった。
しかし、こうして指輪は無事に自分の下へ戻ってきてくれた。
今は、精神的にも安定を取り戻した状態にあった。

  「――あなたも探し物は得意そうね……。とても似合ってるわ……」

小角の探偵姿を改めて見つめ、素直な感想を告げる。
その両手の薬指には、おそらくは一揃いであろう同じデザインの指輪が光っている。
未来の名探偵を目指す少女探偵の慧眼ならば、彼女の相棒の力を借りずとも、
その手がかりから真実を導き出せるかもしれない。

  「でも――突然おかしなことを言うようだけど……。何だか嬉しいわ。
   この町に来て、私と同じような人に出会ったのは、初めてだから……」

そう言って、柔らかく人当たりの良い微笑みを浮かべる。
少なくとも、明確に自分と同じスタンド使いに出会えたのは初めてのことだ。

  「――私は小石川……。小石川文子。
   もし、良かったら――あなたの名前を聞かせてもらっても構わないかしら……?」

だからこそ、この出会いを、記憶の中に留めておきたかった。

181小角 宝梦『イル・ソン・パティ』:2016/08/01(月) 01:00:37
>>180

「いや、うむ……」

「きみがそれを大事なのは、その、分かるよ。
 だから……うん、わたしは気にしていないとも。」

  コクリ

両手の薬指の――『結婚指輪』。
あるいは、『形見の』――

「ふふん、ありがとう。
 わたしは探偵になる女だからね。
 この夏服も……とても気に入っている。」

「……きみも、ええと。お、おほん。」

何か褒め返そうとしたが、喪服に指輪。
意味を推理したいま、上手い褒め言葉が、見当たらず。

「その帽子は、とても似合っているように見えるよ。」

などと、言った。
それから、柔らかい笑みに釣られるように笑って。

「おお、そうだったのかい。
 わたしはそれなりに会っている。
 この町には、案外多いみたいだよ。」

「ああ失礼――――
 わたしの名前は小角 宝梦(おづの ほうむ)だ。」

         ニコ

丸い顔を笑顔で満たして、名前を返した。
それは、不安が一種の友好へと変わっていく証でもあった。

「……おっと、買い物に行くところだったんだ!
 それでは小石川さん、また機会があれば会おうじゃないか。」

              「では、さようなら!」

     タッ

そして、小角はその場を、やや急ぎ足で去ったのだった。
後になって、喉が渇いていたことを思い出すのだが……別の話だ。

182小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/08/01(月) 01:38:37
>>181

  「――ありがとう」

この帽子は、確かに自分でも気に入っているものだ。
しかし、それを褒められたことが嬉しいのではない。
自分の言葉を受け止め、それに応じようとしてくれた少女の心遣いが嬉しかった。

そして、また一つ繋がりを得ることができたことも、自分にとっては喜ばしいことだった。
些細なことかもしれないが、こうした小さな出会いが自分の支えになってくれる気がする。
この世界で生きる力を、彼らから分けてもらえる気がするから――。

  「ええ。またどこかで……。さようなら、小角さん……」

立ち去っていく少女の後姿が見えなくなるまで見送る。
そう――生きていれば、彼女ともまた会うことができる。

     スッ
         ドクン ドクン ドクン……

心臓の鼓動を確認するように、そっと胸に手を置く。
生きる理由の一つが、また一つ増えた。

きっと、今夜は、よく眠れるだろう。
『鎮静剤』を使う必要もなさそうだ。
小角宝梦――銀髪の少女探偵との出会いが、その代わりとなってくれたから。
そんな思いを胸に抱きながら、家路に着いた――。


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