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機動戦士ガンダム 〜Mission The Destroy 『TINZYU』〜
1
:
名無しさん
:2010/10/16(土) 17:54:22
―久々に夢を見た。
―親父やお袋、兄貴や妹まだ生きてた頃の夢。
―いつか失った記憶。
―何処に置いてきてしまったのだろうか。
―いや、捨ててしまったのだろうか。
―今日も俺はコントロールスティックを握る。戦いを終わらせるため。答えを見つけるために。
海面上昇、生活環境の変化から人類が宇宙に移民を始めて18年、世界は不況の末、恐慌状態に突入した。
宇宙からの輸入品に高い関税を設け、地球全体の経済の回復を図る地球連邦政府。
宇宙連合、U2はこれを越権行為と非難。関税撤廃を主張するも、連邦政府は聞く耳を持たず、とうとうU2は宣戦布告、同時に生物兵器「グエルト」の地球侵攻を開始し、2陣営の血で血を洗う戦争が始まった。
開戦から4年後。
泥沼状態の中、少しずつ戦況が動き始めた…
2
:
なめこ
:2010/10/16(土) 21:52:48
第一話「始まりのとき」
「味方のMS部隊はまだかッ!?」
日本国関東地方茨城県沿岸部。
空は隅々まで晴れ渡り、絶好の海水浴日和である。
しかし、サーフボードをつんだワゴンや家族連れのミニバンは一台も見られない。あるものと言えば連邦軍の戦車かハンヴィー。
そしていかにも海水浴場には不釣合いな装備を施した兵士が、目の前に広がる無数の怪物に向かってありったけの携行ミサイルを放っていた。
「増援はいつ来るんだと聞いている!答えろッ!!」
《最低でもあと10分は掛かる、それまで持ちこたえろ》
「クソッたれ!能無しの上層部め!!」
地面にインカムを叩きつけ、顔を上げた兵士が見たものは―――自分に迫り来る、一筋の光条だった。
《現状を報告します》
《現在味方部隊の35%が壊滅、敵戦力は依然として90%を残しています》
《敵の種類及び数は砲撃型20、近接型10。MSタイプは確認されていませんが、十分注意してください》
「了解した」
空を切り裂くように飛行する一機の白いMS。
それは、敵めがけて飛んでゆく一本の矢の如く。
3
:
なめ
:2010/10/16(土) 23:00:38
「増援が着たぞ!!!」
轟音に気付いた一人の兵士が碧空に映える白い機体を指差す。
「一機だけだと…俺たちも見捨てられたのか」
「いや待て、あの機体は確か…」
兵士たちは様々な気持ちで、その機体を仰ぎ見た。
1体、また1体と、次々に2丁のビームマシンガンの光芒が怪物を貫く。
その動きは連邦軍主力MSのヒュドラを軽く凌駕している。
しかし、その動きにパイロットが惑わされている訳ではない。むしろ人馬一体という形容がそのMSにとても良く当てはまる。
「・・・」
パイロットの少年は、膨大な量の敵に臆することも無い。
―こんな戦いに…
―こんな戦いに、意味などあるのだろうか。
ただひたすらと目の前の脅威を排除し続ける、もう一人の自分と対峙しながら。
《敵グエルトの排除を確認。増援が来る様子も見られません。帰還してください》
間髪いれずに別の通信が入ってきた。
下の地上部隊だ。
《こちら地上部隊、本当に助かった!支援に感謝する!》
若干のノイズに混じって、兵士たちの歓喜の声が聞こえてくる。
「兵士として、当たり前の事をしただけです。それほど感謝されることでも…」
そう、褒め称えられることではない。少なくとも自分にとっては。
四年前のあの日、家族を、ましてや恋人すら守ることが出来なかったのだ。
―じゃあ、この強さは何のため?
その答えは、今日も出ることは無かった。
4
:
nameko
:2010/10/24(日) 13:07:10
―おい、ミハル。起きろ。
誰かが俺を呼んでいる。
どこかで聞いた声だ、だけど思い出せない。
―ミハルさーん、朝ですよー。
その話し方はお袋?
いや、声の太さは親父や兄貴に似たところがある。
―もう!お兄!いい加減にしてよ!
…まさか。
「だぁぁぁめんどくせぇ!!!早く起きろってんだクソボケ!!!!!」
「うわぁぁっ!」
テーブルクロス引きの要領で引っ張られたベッドシーツごと、ミハル・カトウは床に叩きつけられた。
痛む背中を擦りながら見上げた先には―
「イダチ!何すんだよ!」
「それはこっちの台詞だっつーの!昼寝かと思ったら朝まで寝やがって、こっちはこの冷た〜い床で一晩過ごす羽目になったんだぞ!」
同僚、シュンスケ・イダチは半泣きで床を指差し檄を飛ばす。
ああ、思い出した。
昨日珍獣撃退し帰還して即効寝たんだっけ。
ベッドに寝転んだときは多少の違和感があったけど、眠気と疲労でそんなの気にしてられる状態じゃなかったし。
「しかも変な声色まで使う羽目になるしよぉ!」
それは別に関係ないだろ…
そう言い掛けた所で、ドアベルが鳴った。
『イダチ、朝ぐらい静かにしたらどうなんだ』
「コグレか、今開けるからちょっと待ってろ」
イダチが手元のコントロールパネルを操作しドアロックが解除すると、もう一人の同僚、ノブタカ・コグレが部屋に入ってきた。
どうやらこの騒ぎで起きてしまったらしい。無造作な髪を掻きながら欠伸をしている。
「一体何の騒ぎだよ」
「ミハルのバカが俺のベッドで寝やがるから俺は床で寝る羽目になっちまったんだよ!」
指を指されたミハルはわざとらしく苦笑した。
「いや、ソファーで寝れば良いじゃん」
一蹴され驚愕しているイダチを他所に、視線はミハルへ。
「お前もどうしてこんな所で寝てるんだよ」
「…まぁ、それはだな…」
どこか恥ずかしそうにミハルはこれまでの経緯を説明し始める。
5
:
なめこ
:2010/10/24(日) 14:42:49
どこか修学旅行気分が抜けない少年3人組と対照に、司令室は物々しい雰囲気に包まれていた。
《それで、どの程度の被害を我々は被っているのだ?》
《日本の茨城県、ブラジルのサンパウロ、イギリスもイギリス海峡からロンドンに向けて侵攻してきましたが、すべて撃退に成功しています》
地底ケーブル通信を用いた多数の中継モニターには、いかにもな服装をし、勲章をぶら下げた軍幹部の人々が映し出されている。
中でも一際大きな髭を生やした男は《そうか》と呟くと、手元のキセルを咥えては離す。
最近のU2のグエルトによる強行偵察は目に余るものがあり、形成逆転を恐れている人間も現れ始めた。
次第に恐怖は幹部にも感染し始め、戦艦の建造や新型MS「パペットプロジェクト」のテスト機の実験を実戦と平行して行うまでに至った。
冷戦状態だった戦争が少しずつ動き始めたのだ。
かくして、「パペットプロジェクト」の試験先に選ばれたここ―群馬県の邑楽基地も、例外的に幹部会議に参加しているのだった。
《それで、試験機のテストは良好か?アキツ君》
「ええ、異常といったものはこれといって見当たりません。戦績も上々です」
顎鬚を生やした基地指令アキツは、凛々しい表情で返答した
《そうか、では引き続き頼むぞ》
「了解しました」
すぐさまモニターは暗転、会議は終了。司令室も重苦しい空気から開放された。
「お疲れ様でした。アキツ司令」
基地オペレーターのマヤが持ってきたコーヒーを一口すすると、愚痴が突いて出てきた。
「…やっぱりこの仕事は俺に向いてないな」
「そんなこと無いですよ、司令はがんばっていると思います」
重役達による会議はまだ続くのだろうが、おおよそ手駒の自分たちが知るような内容でもないのだろう。
そうぼんやり考えると、コーヒーを一気に飲み干し、カップをテーブルに置いた。
おかわりを勧めるマヤに断りを入れ、窓際のブラインドに手を伸ばす。遮られていた朝日が、質素な部屋を暖かく照らし始めた。
外を見ると、ジョギングをする兵士達。
「俺もあれぐらい若ければなぁ」
そっと呟く。
現役を引退した老兵の、ちょっとした反発心からでた言葉だった。
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