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ホラーテラー作品群保管庫

82なつのさんシリーズ「狐狗狸さん」4:2014/06/08(日) 20:12:01 ID:BgaWrcjA0
「こっくりさんなんてものは、人の無意識下における筋肉の運動かつ、無意識化のイメージがそうさせるんだ。
 さっきも言ったが、不覚筋動。もしくはオートマティスム、自動筆記とも言うな。
 つまりは、意識してないだけで、結局自分で動かしてんだ」
「俺は動かしてねーぞ」
「……ひ、と、の、は、な、し、を、聞けボケが。無意識下つったろうが。
 その証拠に、参加者の知りえない、もしくは想像しえない問題に関して、こっくりさんは何も答えられないんだよ。
 ビデオ見ただろ」
今、十円玉は動かない。
けれど、それでも僕とKの二人は指を離せないでいた。
こっくりさんでは指を離すと失敗となり。失敗すればどうなる、万が一……。そんな不安が胸の奥で根をはっているのだ。
そんな二人を見てSは心底呆れたように、もしくは馬鹿にしたように、「あーあーあー」と嘆いた。
「じゃあ訊くが、俺の記憶が正しければ、こっくりさんは漢字では狐に狗に狸と書く。
 その名の通り、こっくりさんで呼びだすのは、キツネやタヌキといった低級霊って話だが……。
 ここで問題だ。どうしてそんな畜生に、人間の文字が読める?
 文字を扱えるのは、死んでからも、人間以上のものでないと無理だと思うがな」
それは予想外の問いだった。と言うより、僕はこっくりさんで呼びだすのがキツネだとすら知らなかった。
「それは……、死んだ化けキツネだからじゃ。ほら、百年生きたキツネは妖怪になるって言うし……」
「お前は百年生きたら、キツネの言葉が完璧に理解できるようになるのか?」
「……無理です」
「それと、だ。こっくりさんの元になったものは、外国のテーブルターニングって言う降霊術らしい。
 が、そいつは完全に人間の勘違いだと、すでに証明されている」
そう言うと、Sは無造作にヴィジャ盤の上の十円玉に指を当てた。
そして、僕とKが『あ』っと言うより先にこう呟いた。
「こっくりさんこっくりさん。
 こっくりさんという現象は全部、馬鹿な人間の思い込み、勘違い、または根も葉もない噂話に過ぎない。
 はい、か、いいえ、か」
すると三人が指差した十円玉が、すっと動き、『はい』の上でピタリと止まった。
Sが僕とKを見やる。その顔は少しだけ笑っている様にも見えた。
「俺は何もしてないぜ?意識上はな」
そして十円玉から指を離し、彼はまた部屋の隅で一人、読書タイムに没頭し始めた。
僕とKは互いに顔を見合わせ、半笑いのままどちらからとも無く指を離した。

その日はこっくりさんに関してはそれでお開きとなり、
三人で夕食を食べた後、僕はK宅からの帰りに自動販売機に立ち寄り、
今日使用した十円玉を使って缶ジュースを一本買った。
それ以降、身体に異変が起きただの、無性に駅のホームに飛び込みたくなっただの、そういった害は今のところ無い。

ちなみに、Sがあれほどオカルトに詳しいのは、
Kの部屋の家主も把握しきれてない程の蔵書を、「つまらん」と言いながらもほとんど読みつくしているからだ。

あと最後に一つ。あの日撮影したビデオカメラには映っていたのだ。
Sが計算問題を出すまでの間、僕とKの他に、もう二本の手が十円玉に触れていたことだけは付け加えておきたい。
Sが問題を出したとたん、朧げな手は、ひゅっと引っ込んだ。
それを見て僕は、やはりオカルトに対抗するのは学問なのだなあ、と思った。


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