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怖い話Part2

1名無しさん:2013/04/11(木) 20:47:22 ID:kJlroZZA0
霊的な怖い話を集めてみましょう

前スレ
http://jbbs.livedoor.jp/study/9405/storage/1209619007.html

199『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:43:21 ID:Ugm8l/Kw0
 少女を姫に任せ、俺はSさんと一緒に祭壇を片づけた。
タオルの上の白い紙に真っ赤な染みが拡がり、その中心に縫い針が刺さっている。
少女の人型は大きく破れ、ちぎれかかった部分から髪の毛が見えていた。
Sさんがベッドに面した窓を少しだけ開ける。
少女の人型から取り出した髪の毛を空き缶の燭台に置き、窓際で焚き上げた。
残った人型と紙の祭壇、折りたたんだタオルをまとめて紙袋に入れて封をする。
「ホントはすぐに燃やした方が良いんだけど、これ以上は多分火災報知器が反応するから。
明日の朝まで、そうね、浴室に置いといて。呪いの効力は消滅してるから
このままでも問題ない。針がそのままだから気を付けてね。」
俺は浴室の棚の上に紙袋を乗せてベッドへ戻った。Sさんが缶チューハイを飲んでいた。
「さっきのは、禁呪ですか?」 「いいえ、呪い返しは禁呪じゃない。心配しないで。」
姫が俺にも缶チューハイを渡してくれた。

200『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:44:18 ID:Ugm8l/Kw0
 「術者自身の憎しみで相手を殺すのは禁呪ですが、
さっきの術は相手の呪いを再構成して返しただけだから大丈夫です。それよりも。」
「それよりも、何ですか?」
「どんな理由があれ、術者が血縁に手をかけるのは禁呪だし、大罪です。
血縁相克の大罪。だからSさんは呪いの始末を引き受けたんです。」
「呪いの本体は、やはり瑞紀ちゃんの血縁なんですね?」
「多分、叔父。つまりあのノロ雲上の息子。」
「そんな。」
「あのノロ雲上ほどの力を持つ人は術者の中にも滅多にいない。
できるだけ長生きしてあの土地を護るべきだし、是非そうして欲しい。」
あの老女が呪いを返せば相手は息子。結果的に、それは禁呪だ。
老女の寿命を削らせないように。
「さて、もうこの話はお終い。明日の予定なんだけど。」 「はい。」
Sさんはレンタカーの中にあったパンフレットを取り出した。
「天気も良くなるみたいだし、この水族館に行ってみたいな。ジンベエザメ、どう?。」
「賛成です。きっと瑞紀ちゃんにとっても良い気分転換になりますよ。」
「そうですね。翠も生きた魚を見るのは初めてだから喜ぶかも知れません。」

201『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:45:09 ID:Ugm8l/Kw0
 「さめさん、おおきいね〜。」 「さめさん、おっきい。ど〜ん、ゆらゆら〜。」
世界でも有数の大きさを誇る水槽の前で、姫と翠は大小様々な魚たちに見入っている。
大学生になった姫はますます美しく、親馬鹿かも知れないが翠はとても可愛い。
2人に気付いた観光客たちは、小声で話しながら振り返ったり、
一度通り過ぎたのにそれとなく戻ってきて近くから2人を見つめたりした。
ジンベエザメには負けるだろうが、2人も結構な数の視線を集めている。
俺とSさんは通路を隔てて少し離れた階段状の席、最上段に座った。そこから水槽を眺める。
ここまで上がってくる客はほとんどいない。広いスペースが貸し切り状態だ。
俺とSさんの間に少女が座っている。当然だが、朝からあまり元気がない。
俯いたまま、独り言のように話し始めた。
「〇吉おじさんは、私が本土に行く時助けてくれた人なんです。
母が私の事を相談したら『もうノロの時代じゃない』って、お金も出してくれたって。
なのに、何故私を。私、何か悪いことしたのかな。」
「昨夜返した呪いに関わるおじさんの記憶、それなら話してあげられる。聞きたい?」
少女はSさんの顔を見て、もう一度俯いた。
「聞かせて下さい。」

202『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:46:31 ID:Ugm8l/Kw0
 「あなたの姿、特に占いをしてるあなたの姿が沢山見えた。
おそらく定期的にあなたの様子を監視してたんだと思う。
沖縄から出る時、おじさんから何か貰ったんじゃない?」
「はい、カバンを。大好きなブランドのカバンをプレゼントしてくれました。」
「多分、その中に呪物が仕込んである。それを通してあなたの様子を探ってたのね。」
「でも、何故私を監視してたんですか?」
「どんな手を使っても、あなたがノロになるのを阻止したかったから。
あなたが占いのアルバイトを始めたのもおじさんには好都合だった。
あなたが力を玩具にしてるなら、自分が手を下さなくても、
そのうち寄ってくる色々なものに影響されて、あなたの魂は闇に侵食されていく。
当然あなたがノロになる可能性もなくなる。
友達を遠ざけたのもそのためよ。あなたに『良い出会い』をさせたくなかった。
『良い出会い』には闇を祓う力があるから。
でも、あなたは2人に出会い、力の使い方を考え始めた。これが『良い出会い』。
その直後、あなたの部屋に結界が張られ、監視するのがかなり難しくなった。

203『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:47:41 ID:Ugm8l/Kw0
 結界を張れる人間があなたに接触したのを知って、おじさんは焦ったでしょうね。
あなたが2人と交流を続けたら、力を正しく使おうと思う可能性は十分にある。
そして、あなたが力を正しく使うことはあなたがノロになる可能性に繋がる。
だからおじさんは最後の手段を取った、つまり呪いを掛けてあなたを殺そうとした。
その意味では、あなたに掛けられた呪いの責任が、私たちにもあるってこと。」
「私がノロになるのが、どうしてそんなに。」
「おじさんはあの集落からノロがいなくなるのを待ってたんだと思う。
ノロ雲上は高齢、あなたがノロにならなければ、集落からノロがいなくなるのもそう遠くない。
あなたが沖縄を出るのを助けたのもそれが目的。もしあなたが誰かに説得されて
ノロになると言い出したら厄介だから。ノロがいると困る理由、何か心当たりある?」
少女はハッとしたように顔を上げた。
「集落の大部分を再開発する計画があるんです。
大きなリゾートホテルを建てたり、ビーチを整備したり。
おじさんは建設会社を経営してるから賛成してるけど、お祖母さんは反対。
集落の人たちもほとんど反対だって。両親から聞きました。」
「多分それね。ノロがいなくなれば集落の人たちを説得しやすい。
でも、おじさんがあの集落に住んでるなら、力を使う時にノロ雲上が気付いた筈なんだけど。」

204『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:48:49 ID:Ugm8l/Kw0
 「おじさんは若い時から那覇に出て、今も那覇に住んでます。
お正月やお盆でもあの家には来ません。お祖母さんと仲が悪いって聞きました。」
「それなら力を使ってもノロ雲上は気付かない、納得。
それから、おじさんの力は生まれつきのものというより、後から身につけたものだと思う。
生まれつきのものなら、当然ノロ雲上が気付いた筈だから。
あなたに掛けた呪いも、ノロ雲上が使った術とは違う系統のような気がする。
もしかしたら沖縄以外の場所で術を習ったのかも知れないわね。
そして親戚や集落の人たちには自分の力を上手く隠して、
ノロ雲上が亡くなり、あなたの心が闇に侵食されるのをじっと待っていた。
でも事情が変わったからあなたに呪いを掛けた。ノロの後継者を確実に消すために。
結局失敗して、昨夜その報いを受けた訳だけど。」
「あの、おじさんは、どうなったんですか?」
「それはおじさん次第。そういう返し方をしたの。

205『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:50:12 ID:Ugm8l/Kw0
 もし心が完全に闇に侵食されたら、とても普通の生活は出来ない。
逆に言えば、呪いで他人に害をなすような人間でも、普通に生活しているのなら
闇に侵食されているのは心の一部だけ。そこが呪いの源になる。
この方法で返された呪いは呪いの源を壊すから、
返された呪いの効果は心がどの程度闇に浸食されているかによって違う。
記憶の一部と力を失うだけで済むかもしれないし、心が完全に壊れてしまうかも知れない。
心が完全に壊れてしまえば体もやがて壊れる。つまり、死ぬ。
勿論そうなっても私は良心の呵責を感じない。もちろん、ノロ雲上には気の毒だけど。
私のこと、冷たい人間だと思う?」
「ううん、Sさんが呪いの始末を引き受けてくれなかったら
お祖母さんが呪いを返して...そしたらお祖母さんはもっと辛い思いをしたはず。
それに、Sさんが冷たい人間なら、私をこんな風に助けてくれるなんて思えない。」
「力を玩具にし続けて、あなたの心が闇に侵食されてしまっていたら
私はあなたを殺すことになったかもしれないのよ?」
「でも、私の弱さがもとで私が私でなくなるなら、そして誰かを呪うくらいなら、
Sさんに殺して貰った方が良いのかも知れない。考えると、とても、怖いけど。」
「そこまで分かったなら、もう教えることはない。あとは自分で考えて決めるだけ。
力を封じるか、それとも使い続けるか。」 Sさんは少女の髪を優しく撫でた。

206『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:51:08 ID:Ugm8l/Kw0
 「R君、其処でちょっと停めて頂戴。」
水族館のカフェで昼食を食べてから、俺たちはナビを頼りに車を走らせていた。
姫が『山道を走らせていればヤンバルクイナが見られるかも知れない』と言ったからだ。
しかし当の本人はもう30分も前から翠と一緒に寝息を立てている。
Sさんは車を降り、脇道の入り口にある案内板を見つめた。
そしてしばらく脇道の奥を眺めてから車に戻ってきた。穏やかな笑顔。
「ありがと、車を出して。」
「どうしたんですか?」
「あの道の奥にも、ノロに護られた集落がある。探せばもっとあるでしょうね。
こういう場所も、ノロの後継者がいなければ、やがて聖域ではなくなってしまう。
私がおばあさんになるまでは、幾つか残っていて欲しいけれど。」
「なぜ、『おばあさんになるまで』なんですか?」
「もしおばあさんになって、術者を辞めることができたら、あんな場所に住みたいからよ。
立派なノロに護られた聖域で穏やかに余生を過ごすなんて、夢みたいでしょ?」
「出来れば海に面した場所が良いですね。」 「どうして?」
「おじいさんになったら、僕も術者を辞めて毎日魚を釣ってきます。」
「ふふ、素敵。約束よ?」 「はい、必ず。」

207『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:52:05 ID:Ugm8l/Kw0
 「あの、すみません。」 後部座席の少女がおずおずと俺たちに声をかけた。
「何?」
「どうしてSさんはノロが護っている場所に住みたいんですか?
Sさんなら自分で自分の住んでいる場所を護れるはずなのに。」
「私たちだって、心から望んで術者になった訳じゃない。
折角の力を封じるより、何かに役立てた方が良いと思ったからこの道を選んだの。
でも術者を続けていれば辛いこともあるし、嫌な思いも悲しい思いもする。
せめて年を取ってからは術を使わず、心静かに暮らしたい。
力のあるノロが護ってくれている場所でならその夢が叶う。長生きできれば、だけどね。」
「私、私がもしノロになったら、Sさんたちはいつかあの集落で暮らしてくれますか?」
「悪くない話ね。海に面してるからR君も不満ないでしょ?」 「それはまあ、そうですね。」
「それから、もう1つ聞きたいことがあって。」
「今度は何?」
「あの、翠ちゃんはSさんとRさんの子供なんですよね?」 「そうよ。」
「それでLさんはRさんの奥さん、それって一体どういう。」
「お嫁さんが2人いるの。私たちの一族では良くあること。」
「じゃあ私...ううん、何でもないです。」
これ、何だかややこしい展開じゃないのか?
何故Sさんは何故わざわざあんな、いや、事実なのだからあれ以外に答えようが無い。
ホテルへ戻る間、少女はずっと何か考え事をしているようで黙ったまま。
Sさんは興味深そうに窓の外を眺めながら黙ったまま。姫と翠はずっと寝たまま。
車の中は不思議な静かさで満たされていた。

208『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:52:58 ID:Ugm8l/Kw0
 「じゃ、出掛けましょう。約束通り私が御馳走します。いっぱい食べて下さいね。」
「実はもう、予約してあるの。それも個室のお座敷。」 「和食、ですか?」
「沖縄ソバの店。」 「ソバ?」
「そう、折角沖縄に来てるのに沖縄ソバ食べないで帰る訳にはいかないでしょ。」
「大賛成です。」 「まだ食べたことないですしね。」
「でも、それじゃお金が全然。」
「約束したのはみんなの夕食、金額じゃない。」
「Sさん...」

 「私、高校を卒業したら沖縄に戻ります。」
沖縄ソバを食べ終え、食後のアイスコーヒーを飲みながら少女が口を開いた。
「大学に通いながらノロになる勉強をしようと思って。」
「え、瑞紀ちゃんノロになるの?」 姫は寝ていたのであの話を聞いていない。
「また気が変わるかも知れないけど、今はノロになりたいと思ってます。」
「何故ノロになろうと思ったの?あれ、顔、赤い...あっ!」
突然耳鳴りがした、これは? Sさんと姫の顔も緊張している。
「みず き」
立ち上がった翠が姫の肩越しに少女に向かって右手を伸ばしていた。
でも、これは翠の声じゃない。

209『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:53:34 ID:Ugm8l/Kw0
 「お祖母さん。」 「瑞紀ちゃん。あなたなら。」
姫が翠を少女の前に立たせる。少女が翠の手を取った。
そのまま深く息を吸って眼を閉じる。やがてその頬を涙が伝った。
「Sさんの術のお陰で、〇吉おじさんは死なずに済んだ。
Sさんと皆さんに、くれぐれもお礼を申し上げるようにって。」
「あなたには何を?」
「ノロになろうと思ってくれたのは嬉しいけど、半端な気持ちではノロになれない。
時間をかけて、しっかり考えて、それでもノロになるなら面倒を見る...」
少女は声を詰まらせて涙を拭った。
「これで一件落着ね。さて、それにしても。」
Sさんは翠を抱き上げた。
「あの時にノロ雲上と共振、したんでしょうけど。一歳半の依り代なんて聞いたことがない。
感覚を少し、封じておく必要がありそうね。」
Sさんは翠に頬ずりをした後、その眼を見つめて溜め息をついた。

210『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:54:18 ID:Ugm8l/Kw0
 飛行場のロビーを出て、駐車場からすぐに少女のアパートへ車を走らせた。
姫が部屋の中を清め、結界を張り直している間に
俺とSさんは少女のカバンを調べた。呪いの本体である叔父から贈られたカバン。
学校やアルバイトにも持っていくし、大好きなブランドなら捨てることは考えられない。
もちろん紛失する可能性も小さいという訳だ。
「やっぱり。これは琉球神道のものじゃない。むしろ道教に近い系統ね。」
カバンの底、中敷きの裏に隠された紙には、文字と文様がびっしりと書き込まれていた。
「これを通して、ずっと私を監視してたんですね。」
「そう、これが通路になったから呪いの一部が結界を抜けてあなたに届いた。
結界を張っていなかったら首のアザでは済まなかったかも知れない。」
Sさんはその紙を折りたたんで白い封筒に入れた。
「これは後でちゃんと始末しておく。新しい結界を張ったから
あなたの力に引き寄せられるものもこの部屋には入れない。まずは一安心。」
「本当にありがとう御座います。」
「ただ、問題が1つ残ってる。あなたのアルバイト。
占いハウスのアルバイト、どうするつもり?」
「辞めます。ちゃんとノロの勉強をするまで、なるべく力を使いたくないから。」
「でも、それだと生活費が苦しいわよね?」
「はい、でも...」

211『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:54:56 ID:Ugm8l/Kw0
 「ねぇ瑞紀ちゃん。私の知人の家で働かない?住み込みのお手伝いさんを探してるの。」
「住み込みのお手伝いさん、ですか?」
「そう、給料は安いけど、住み込みだから部屋代も食費も要らない。
その家から高校に通えるし、家事の手伝いをしながら規則正しい生活をするのは
きっと将来あなたの役に立つ。遊ぶ時間はなくなっちゃうけど。どう?」
「今までたくさん遊んだから、遊ぶのはもう良いです。その人の家で、働かせて下さい」
「じゃ、決まりね。知人と相談したらすぐに連絡する。
夏休みだし、部屋の手続きと引っ越しの準備、出来るだけ速く済ませておいてね。
占いハウスを辞める時に問題が起きたら私たちが一緒に交渉してあげる。」
「はい、頑張ります。」
「うん、良い返事。じゃR君、L、私たちも帰りましょう。」
俺たちがアパートの駐車場に停めた車に乗り込むと、少女は深々と頭を下げた。
「何から何まで、本当にありがとう御座いました。」
Sさんが後部座席の窓を開けた。
「本当にあなたがノロになったら、私たちも引退後の話、ちゃんと考える。約束ね。」
「はい、それで、あの。」
少女は口ごもって俯いた。

212『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:56:41 ID:Ugm8l/Kw0
 「ノロになって、そして25歳になってもお嫁に行けなかったら、
R君に相談しなさい。あなたの望み、案外すんなり叶うかも知れないわよ。」
「ちょっとSさん、勝手に変な事決めないで下さい。」
「相談しなさいって言ってるんだから『勝手に』じゃないでしょ。ね〜。」
「はい。相談します。ノロになって、25歳になったら、必ず。」
晴れやかな笑顔で手を振る少女を残し、俺は車を出した。
「あんなこと言って、彼女が本気にしたらどうするんです。」
「あの子はとうに本気よ。だからノロになるって決めたんじゃないの。
こんな時だけは妙に鈍いのね。不思議。」
「瑞紀ちゃんがRさんを好きなのは知ってましたけど、
それと彼女がノロになろうと思ったことに関係があるんですか?」
「術者を引退して余生を過ごすなら、ノロが護ってくれてる場所が良いって、Sさんが。」
「あの子がノロになったら、あの集落で私たちに余生を過ごして欲しいそうよ。
そしたらいつまでもR君と一緒に住めるから。」
「同じ家に住むなんて言ってません。第一そんな、何て言うか、不純な動機で良いんですか?
ノロになるのは、一生を賭けた大仕事なのに、痛たたたた。」
左頬をつねられた。
「動機としてはともかく、あの子の気持ち自体は不純じゃない。
それに、一生を賭けた大仕事だからこそ、モチベーションが大切なの。
そのためならどんな辛いことにも耐えられるっていう目標。健気よね。」

213『道標(下)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 20:58:09 ID:Ugm8l/Kw0
 「不純じゃなくて健気ならかえって厄介でしょうに。彼女がノロになって、25歳になって、
それで本当に相談に来たら一体どうするつもりなんです。僕は責任持てませんよ?」
「あんな可愛い子が真面目に頑張ってたら、周りが絶対にほっとかない。
沖縄に帰ったら、あっと言う間にふさわしい相手が見つかる。」
「でも、もし相手が見つからなかったら。」
というより、あの笑顔じゃ相手を見つける気があるのかどうか疑わしい。
「あと8年、私36ね。その歳で子供を産むのは難しいかもしれないから、
良いんじゃない、あの子にR君の子を産んでもらうのも。
集落と其処に住む人たちを護るノロは、ただの術者とは系統が違う。
きっと術者になるのとは別の、大変な修行を何年も続けなければならないはず。
もし、それほどの努力をして、本当にノロになって相談に来るのなら、
私はあの子の望みを叶えて上げたいな。力を持った子も生まれそうだし。」
「Rさんの子供が全部で10人くらい生まれたら、半分くらいは力を持ってるかも知れませんね。
その中には術者になる子も、瑞紀ちゃんの跡を継いでノロになる子だっているかも。
私も、力のあるノロとノロが護っている聖域は、いつまでも残っていて欲しいです。」
「ちょっと、Lさんまで一緒になって何を言い出すんです。僕はあの子の事、いや。」
あの子の事は問題じゃない。深呼吸を1つ。落ち着け、俺。
「僕は何時だってSさんとLさんの事で頭がいっぱいなんです。2人が本当に大好きですから。
こんな美人が目の前に2人もいるのに、他の女の人の事を考えるなんて絶対無理ですよ。」
「あら、ありがと。綺麗な言霊。L、どうしたの?顔、真っ赤よ。」

『道標(下)』 了

214『道標(結)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 21:01:17 ID:Ugm8l/Kw0
『道標(結)』

 肌を刺すような冷たい風に乗って白いものがひらひらと舞っている。初雪だ。
産婦人科での定期検診を終えてお屋敷へ帰る途中。辺りは既に薄暗い。
Sさんのお腹の子は妊娠三ヶ月目に入った。俺たちの二人目の子。
信じられないような幸せの中、俺がお屋敷で迎える4度目の冬。

 「瑞紀ちゃんから葉書が届いてますよ。お仕事、頑張ってるみたいですね。」
「この間電話して様子を聞いたら『すごく真面目な子』って、評判良かった。
最初の頃に比べたら字も文章もすごく上手になったし。モチベーションって、大事よね。」
Sさんは悪戯っぽく笑って俺に葉書を手渡した。
確かに、簡潔な文章で近況を報告する葉書の文字は美しかった。
「モチベーションの件は突っ込みませんよ?それよりお仕事って、
あれはSさんが親戚に頼んであの子の面倒を見て貰ってるんですよね。」
少女の給料をSさんが負担していることを、既に俺と姫は知っていた。

215『道標(結)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 21:02:03 ID:Ugm8l/Kw0
 「力を持って生まれた子は、皆13歳になったら1年間親元を離れる。
『範師』の家に預けられて礼儀作法や力と向き合う心構えを学ぶの。
1年経って術者になる事を選んだ子は裁許を受けて更に2年間、
適性に応じた術者を師として基本的な修行をする。それが一族のしきたり。
そのしきたりの半分を利用しただけ。無理に頼み込んだ訳じゃない。
範師には『子供を預かるのは久し振りだから嬉しい』って感謝されたし。
一族の子より4年遅いけど、学び始めが遅れたことは問題にならない。
一年半、一族の子と同じように基礎をしっかり鍛えて貰える、それが重要。
それに範士の家には変なものが近づくこともない。あの子も安全、一石二鳥。
単独で活動する術者の経過観察するのに比べたら、時間とお金の大幅な節約だわ。」
「本当に、力を持って生まれた子は全員、なんですか?」 この話は初めて聞いた。
「そう、でないと力を玩具にする子が出てきてしまうから。
ね、裁許を受けた日、当主様の館を案内してくれた女の子。憶えてる?」
「はい、何処かで見たような子だと思ってました。」

216『道標(結)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 21:02:51 ID:Ugm8l/Kw0
 「去年の7月、遷宮の祭礼で舞を奉納した子よ。2人のうち背の高い方。」
川の神様の...お化粧のせいですぐには分からなかったが、それで見覚えがあった訳だ。
「去年舞を奉納したってことは、今年で基本的な修行を終えて家に戻る。
最後の年に当主様の館で奉公してるなら、とても素質がある子なのね。」
「じゃあSさんとLさんも?」 「もちろん。」
「私は11歳の時からSさんに教えて貰いました。」
姫が分家から助け出されたのは何歳の時だったのだろう。
「Lさんも舞を奉納したことがあるんですか?」 「はい、何度も。」
「Lは舞が上手で評判だったのよ。一族で最高の舞手と言われてた。L、どう?」
俺が代わりに翠を抱くと、姫はすっと立ち上がった。 Sさんがひとつ手拍子を打つ。
これは。
姫は手拍子に合わせて軽やかに舞った。姿勢を高く、低く、また高く。
眼にも止まらぬ速さで回転したかと思うと跳び上がり、着地して緩やかに回転しながら蹲る。
確かにあの祭礼で見た舞だ。
そして蹲ったまま左掌を床に着けて、ぴたりと動きを止めた。
「はい、そこまで。これ以上舞うと降りてしまうかも。」

217『道標(結)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 21:03:37 ID:Ugm8l/Kw0
 俺は思いきり拍手をした。 「すごく上手でした。とても美しかったです。」
「ありがとう御座います。踊ったのは4年振りですけど、三つ子の魂百まで、ですね。」
姫の頬は少し紅潮していたが息づかいに乱れはない。すごい身体能力だ。
「降りるっていうのは、神様が降りるってことですよね?どんな感じなんですか?」
「踊っているうちに、自分が自分でなくなるような気がするんです。
視界が白っぽく霞んで、自分の心が周りの空気に溶けていくような。
そんな感じが強かった時ほど上手だって褒められました。でも、本当は、とても怖かった。
このまま自分が自分じゃなくなるんじゃないか、Sさんの所に帰れなくなるんじゃないか、
いつもそう思って。だから私、舞を奉納するのは、あまり好きじゃなかったです。」
俺の手から翠を抱き上げた姫の横顔は、どこか儚げで美しかった。

218『道標(結)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 21:04:34 ID:Ugm8l/Kw0
 『力を持って生まれた子は皆、親元を離れて1年間の修練を積む。』
それは、力を持って生まれた子が、その力故に道を誤ることがないよう、
長い長い時間をかけて練り上げられてきたしきたりなのだろう。
優れた術者を育てる前に、まず力を持つ子供の人格を鍛え上げる。
力を持っていても、それを鼻にかけることも玩具にすることもなく、子供達は育っていく。
その上で、力と向き合う覚悟をした子が、自ら術者の道を選ぶのだ。
時代の流れとはいえ、現代では陰陽道の系統の多くが
祭祀の儀礼を取り仕切る技術のみを扱うようになってしまったと聞いた。しかし、
遠い古から現代に至るまで、俺たちの一族は途切れることなく優れた術師を輩出してきた。
その理由が1つ、分かった気がする。
そして、俺がお屋敷で暮らし始めてから裁許を受けるまでに約3年を要した理由も。
Sさん、Lさんと過ごした日々の記憶が走馬燈のように甦る。

219『道標(結)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 21:06:12 ID:Ugm8l/Kw0
 基本的な訓練を受けていない俺のために、2人はそれとなく教えてくれたのだ。
何気ない日常の生活を通して。あるいはこの世のものでない存在との関わりを通して。
人として、術者として生きていくための覚悟。
以前、Sさんは俺に『あなたの資質が無いほうが、私もLもどんなにか』と言って
涙を浮かべたことがあった。今はその涙の意味が痛い程分かる。
たとえ俺に力が無く、裁許を受けられなくても、2人は俺を夫として認めてくれたろう。
俺の力を封じてしまうことも出来た筈だし、その方が2人の気は楽だったかも知れない。
でも、2人は敢えて困難な道を選んだ。
力の発現に合わせて俺の心を鍛え、少しずつ覚悟を促す。
自らの命さえ危うい事件に巻き込まれることもあったというのに、
3年間、一体どれ程の配慮と忍耐を俺のために費やしてくれたことだろう。
お陰で俺は術者としての人生を選び、裁許を受けることが出来た。
まさにそれは、2人の深い愛情と、『力』への敬意が可能にした奇跡。

220『道標(結)』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 21:07:23 ID:Ugm8l/Kw0
 「R君、何ボンヤリしてるの。夕食、あなたが当番でしょ。」
「あ、はい。今日は腕によりをかけて美味しいもの、沢山作りますよ〜。」
「Rさん、何だかニヤニヤしてちょっと気味が悪いです。
二人目の子供の事が嬉しいのは分かりますけど、翠ちゃんの時にはそんなに。」
「いや〜僕は本当に幸運だなぁと思って。」
「今更何言ってるの。急に冷え込んだから風邪ひいて熱でもあるんじゃない?」
「熱は無いですが、心は熱いですよ。へへ、ふふふふふ。」
「本当に、熱、計った方が良いかも知れませんね。」

『道標(結)』 完

221 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/14(金) 21:13:34 ID:Ugm8l/Kw0
お陰様で無事投稿を終えることが出来ました。ありがとう御座います。
投稿の時期をどうするか迷っていたのですが、明日は午後からの出勤なので
少し疲れましたが、前倒し投稿の判断で良かったと思います。
次の作品を送って貰えるのか、投稿の許可が貰えるのか、全く分かりませんが、
次も此所で投稿出来ればと、思っています。

222名無しさん:2013/06/15(土) 00:45:04 ID:wA9ZbGpU0
藍さんお大変疲れさまでした。
今回もとても面白かったです。また沖縄編があるといいなと思います。
それにしてももう3年とは早いですね。
主人公たちの成長と、今後の物語の展開がとても楽しみです。

223名無しさん:2013/06/15(土) 00:51:45 ID:wA9ZbGpU0
すみません。誤植です。
大変お疲れさまでした。

224名無しさん:2013/06/15(土) 01:22:52 ID:9.23cJGI0
藍さんお疲れ様でした。作者さん書いてくれてありがとう。
お二人の投下される話はいつも気持ちのいいもので心が満たされる気がします。
次の話はいつになるのか、そもそも投下されるかもわからないようですが、
待つのは得意なんで、ずっと待っていますよ。

藍さん、早く読めるのは嬉しいんですが仕事も忙しそうだし、
あまり無理しないで頑張ってくださいね。

225名無しさん:2013/06/15(土) 07:36:20 ID:RsoCIAjs0
蘭さん投下ありがとう

最近主人公が別の意味で、予定調和を始めましたな

次はどんな女性にモテるのでしょうかWW

226名無しさん:2013/06/15(土) 17:53:18 ID:M9e2PC1.O
予定調和…うらやましい…

227名無しさん:2013/06/16(日) 22:04:25 ID:BnsURJwYO
澄んだ心で書かれた、真っ直ぐで、それでいて深いお話だと思います。いろんなことを隠し、変えて書いてあるのでしょう。でも、たとえ創作を交えても、媚びることも、おもねることもない。日本の神々に捧げるに値する物語だと思います。無理をなさらず続けて頂ければ、愛読者の一人として大変うれしく思います。

228名無しさん:2013/06/16(日) 23:33:27 ID:g1X7h61Q0
未回収フラグ気になりますな

Kさんが実際にどんな血縁だったか(死ぬ寸なのに華麗にスルーしたし)
Kさんにトドメを刺したのは誰なのか
Sさんが「Kにあんな事を」で言い切ってない点
「出会い」の「虐げられてきた私たち」って、分家本体の意思なのか、分家の中でも叛意があったのか?

妄想が膨らみますな。

229 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/17(月) 20:37:35 ID:sxlVnAAM0
 皆様、今晩は。藍です。
今回投稿した『道標』は、個人的に興味のある沖縄が舞台だったのと
主人公たちの一族がどのように術者を育てているのだろうという疑問に
答えてくれるものだったので興味深いです。あと、翠ちゃんの初台詞もお気に入りです。

>>222
>>223
温かいコメントと次の沖縄編へのご期待感謝致します。
色々と障りがあり、どうしてもカットせざるを得なかった部分がなければ
もう少し満足頂けたかも知れませんが...事情をお察しの上、ご了承下さい。

>>224
いつも(と勝手に思っています)温かいコメントありがとう御座います。
これからも生温く知人の説得は続けていきますので
次回作、共にお待ち下さればと存じます。

>>225
>>226
『予定調和』については良く分かりませんが
改めて『卯の花腐し』『誓詞』『道標』を読み直してみましたら
『道標』が物語の大団円でもおかしくない気がしてきました。
そう言えば『道標』は丁度投稿10話目です。不安になってきたので
こうなれば、何が何でも次回作(11話目)を知人に催促したいと存じます。

>>227
身に余る高評価のコメント、知人に変わり心からお礼申し上げます。
私自身、八百万の神々のおられる日本に生まれた事を何よりの幸運と承知しております。

>>228
前述の通り、これらの物語について、私の予想が当たった試しはありません。
それをご承知の上、私の検討結果による以下のレスをお読み下さい。
①年代とK自身が拉致されたという設定から考えて、
 語り手Rの曾祖母とKの曾祖母が同一人物の可能性があると思います。
②『出会い(下)』の記述の中に、Kが最後の干渉以前に
 前もってLさんの術を解いたのではないかと感じる描写があります。
 ならばKに致命傷を負わせたのは『上』の対策班でなく分家の者かと。
③『誓詞』の記述からして 『虐げられてきた』のは、依り代の力で
 術者を増やそうとして一族を追放された分家本体の意志でしょう。
 ただ、Rの曾祖母の行動、Kの行動からみて、Lさんの件については
 分家内部にも 意見の違う者がいたのは間違いないと思います。

今後、私の予想が外れていることが判明しましたら、どうぞお笑い下さい。

230名無しさん:2013/06/17(月) 21:32:30 ID:oB.MLZ3s0
蘭さんこんばんわー。

ううむ、曾祖母さん同一設定。さすがにそこまでは想像できませんでしたが
もしかしたら曾祖母さんのお孫さんが分家と本家に分かれて嫁いだかもしれませんね。
Rさんのお母さんはどこまで知ってるんでしょうね


231名無しさん:2013/06/17(月) 21:36:30 ID:oB.MLZ3s0
うーん。もしかしたら炎氏が再登場するのなら、Kさんにトドメを刺したのは炎氏の様な悪寒がしますな

ダークヒーローがあのままもう登場しないとかちょっと消化不良ですな

232名無しさん:2013/06/17(月) 22:25:49 ID:7/lY8eGIO
妄想ですが…
最終回は、Sさん、Lさん、みずきさん、翠ちゃん、皆さんセーラー服で舞を舞っての大団円。

233名無しさん:2013/06/18(火) 12:35:13 ID:WYamiZs20
まあ、KさんがLさんと同じ資質を受け継いでいるのならRさんと共振したのは筋が通りますな

Kさんが分家の内紛ではなく、元々本家から拉致されたのなら、Lさんとの対比で怒りを顕にする理由の説明にもなる

つまり、本家からは見捨てられた存在という事になるな。

234名無しさん:2013/06/18(火) 16:31:04 ID:QpnAu4uw0
俺は別にヲタでも何でも無いんだが、L姫についてはどうしても渡辺麻友が思い浮かんでしまう。

235名無しさん:2013/06/18(火) 22:28:49 ID:PiyhVVcYO
管さんがどこかに行っちゃいましたね。ひょっとしたら四国お遍路でしょうか。

236名無しさん:2013/06/18(火) 22:52:13 ID:iq3.Y1B.0
俺は

237名無しさん:2013/06/18(火) 22:58:44 ID:WYamiZs20
管さん・・

そうですね、朽ち縄さんと一緒に出張中の様ですね

238名無しさん:2013/06/18(火) 23:01:32 ID:iq3.Y1B.0
何故か書き込み失敗。俺は、Kさん拉致は分家内紛の結果と思います。
KさんとRさんが共振したのは近い血縁だったから、と。
でも、233の解釈もありそうな気がして来ました。

239名無しさん:2013/06/18(火) 23:07:26 ID:iq3.Y1B.0
管さんらしき最後の描写は、『忘却の彼方(下)』でしたかね。
ずっと翠ちゃんの世話にかかりきりかと思っていました。
『出会い』で出て来たもう一体の式(小さな紅い光の渦)も気になります。

240名無しさん:2013/06/19(水) 00:42:27 ID:6zHdnotE0
本家の姫の苦しみをRさんが言おうとした時のKさんの反応は、本家に近い位置の分家で、放逐された時のある程度新鮮な感情を受け継いでいるか、
彼女自身が直接不条理を感じていなければ説明が難しい気がしますね。

分家との交流が途絶えて久しかったという描写がありましたよね。
Kさんの能力は、Lさんのお母様のあの力とは別だったから、Kさんが代にならなかったという事になりますが
能力者の衰退の事が遠因になってる事の対策で、分家同士が食い合うのも変な気がします

241名無しさん:2013/06/19(水) 20:25:59 ID:PaeyPIJc0
誓詞の中に、
あなた(R)やKを生んだ分家の血そのものは尊敬してる
とありますから、Kさんの出自が分家なのは確定でしょうね。
Rさんの曾祖母・祖母・母のラインは、Kさんが拉致された事を知っていたから
Rさんの感覚を封じる対策をしたと考えるのが自然な気がします。

242名無しさん:2013/06/19(水) 20:52:56 ID:6zHdnotE0
そう、そこ重要ですね。「SさんがRさんに直接口頭で言った」処です。

「ほーんとうなのそれ?」と考えてみた訳です。

Sさんのお父さんかおじいさんの代で、分家と騒動があって追放処分

Sさんのお父さんがおじいさんの代で、分家出身の「内縁の妻と子」が分家側に引き取られた

そういう出来事があって分家と表現した可能性もありますね

243名無しさん:2013/06/19(水) 21:30:40 ID:PaeyPIJc0
>>242
くーっ、細かい。良いですね。藍さん自身が
「楽しむためなら、どんな想像もあり」と仰っていますし。

あと、道標の中で出て来た「がーらだま」、気になって調べたら、勾玉の事ですね。
ノロ雲上の台詞が「勾玉を授けられた神人が孫を守ってくれて」という意味なら
ちょっとドキドキします。川の神様から下賜された勾玉が見えていたんでしょうか?

244名無しさん:2013/06/20(木) 00:05:11 ID:Jp5u0EhQ0
えーと、陰陽道の衰退が歴史的に決定づけられたのが明治。今年は数えで大正101年ですから
少なくともお家騒動は昭和でしょうね。

24歳くらいで子供を作っても三代で72年です

少子化が健在したのは昭和40年後半。第二次ベビーブーム世代はようやく40歳になった処です

そう考えると、Rさんの曾祖母は本家に近い分家(ほぼ第一世代の分家)と言うのは非常に信憑性がありますね。

Rさんのおばあさんの娘さん=Sさんのお母さん、Lさんのお母さんRさんのお母さんの年代は重要な舞台になった事でしょう。

小さいころのLさん、Rさんの姿はKさんの記憶に基づくものだとしたら、分家と付き合いがないというのは矛盾します

もしかしたら、放逐されてない分家とRさんの家系は何らかの交流があったとみてもいいかも

そうすると、炎氏の家系(分家?)が何か知っててもおかしくはないという、ダークヒーロー再登場の妄想が湧き上がってきます

245名無しさん:2013/06/20(木) 00:33:40 ID:X0QJAEgQ0
分析能力の高い方たちが集ってきているようです。
私も妄想がふくらみます。子供はあと何人くらいできるんでしょう。

246名無しさん:2013/06/20(木) 05:29:09 ID:odxcmGVg0
古い陰陽道の家系にまつわる話なのに
投稿済みの10話の中で安倍家(土御門家)や賀茂家の話が全くでてこない。
明治政府の廃止令に関わらず現在もかなりの社会的影響力を持つ。
平安時代初期に成立した陰陽道の源流を受け継ぐ一族なんでしょうか。
一夫一婦制の普及で子供の数が減り始め、一人っ子があたりまえになって術者が不足。
ちょっとしょぼい感じの描写がかえって妙にリアルなんですよね。不思議。

247名無しさん:2013/06/20(木) 22:18:39 ID:Jp5u0EhQ0
やー、具体的な家名が出たら話の前提としてダメでしょWWW

流石にこれは最後まで秘される流れではありませんか?

四国の流派かもしれませんし、ねぇ?WW

248名無しさん:2013/06/21(金) 00:31:51 ID:BvFrGkBA0
あなおもしろの ものかたりなれ

249 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/21(金) 03:07:06 ID:e4eNxVo60
 皆様こんばんは、藍です。

 仕事から戻りましたら、沢山のコメントが有って驚きました。
本当にありがとう御座います。さすがにへろへろでして
大変深い考察をなされているコメントも有りますし、
失礼があるといけませんので、今夜は個別のレスを控えます。
申し訳ありません。

 さて本日、知人から11話目の作品が届きました。
掌編ですが、取り敢えず前作が完結編でなくてホッとしました。
来週まで多忙なので投稿時期は未定ですが、なるべく早く投稿出来るよう頑張ります。

250名無しさん:2013/06/21(金) 05:03:41 ID:ZJg0TXB6O
>>249
藍さんお疲れさまです。
いつも素晴らしいお話をありがとうございます。

11話目が届いたんですね!
掌話というのは、一話完結のお話のことですか?

楽しみにお待ちしていますが、無理はしないでくださいね。
作者さまにもよろしくお伝えください。

251名無しさん:2013/06/21(金) 08:54:46 ID:VAYteqPAO
期待に応えて頂いて続編、とても楽しみです。
無理をなさらず、ゆっくり休みを取って着手して頂きたいです。

252名無しさん:2013/06/21(金) 21:59:04 ID:Q2xkeI5Y0
おおお、次回北斗の拳2ぅ〜う(予告)ですと?

ありがたや、ありがたや(TT)

藍さん、知人さん有難うございます〜

253名無しさん:2013/06/22(土) 22:37:33 ID:K7Vc7WDk0
11話 o(^o^)o ワクワク

254名無しさん:2013/06/23(日) 18:01:54 ID:g3QTvRmo0
>>249
藍さん、いつも忙しい中での投稿ありがとう^ ^
今後の展開も、とても楽しみです。
作者の知人様にも、みんなの声が届いていると嬉しいです^ ^

255名無しさん:2013/06/23(日) 23:43:50 ID:pn.yMNhI0
私の大好きな話は「出会い」です。あれだけは何度も読み返してしまいますね。

本日疑問に思ったのは分家の動機です。

一応、本家も分家も力の衰退には危機感を覚えていたのは共通していますね?
しかし、Sさんの説明上、外法は許されないと方針の衝突があったと。
でもこれだけじゃ説明になりません。分家は追放され、社会的な影響力は削がれました。
そんな集団に誰が期待するというのでしょう?

あくまで力の強さを純粋に評価し、結びつく第三者が居るのではと考察しました。

有体に言えば古い形態の自営業が何故力の維持に汲々とするのか?

神職の継続と言う悲壮な決意を除けば、力の保持を純粋に評価する集団が無ければ説明がつきません。

彼らは一体誰に、その力の存在を証明したかったのでしょうか?

256名無しさん:2013/06/24(月) 00:45:05 ID:4YElQ9bI0
>>255
分家が自らの力を証明したかった相手は、時の権力者達だと思います。
ただ、既に246の考察に有る通り、時の権力者と結びついた系統は昭和までに衰退してしまいました。
いくら力があっても、自らの命をも危うくするかもしれない術士は目の上のたんこぶですから、当たり前と言えば当たり前ですよね。
247の考察にある四国の流派(い〇な〇流)は当初から市井に下ったから、今も一定の力を保持しているのでしょう。
当主が世襲ではなく、一族の意志を『上』という集団指導体制で決めてきたという描写からも、
当時この一族がかなり進歩的な集団だったのは間違いありません。
『本家』が時の権力者と距離を置き、対等に渡り合って来たのなら、自前の武力は必須だった筈。
それが現代の『対策班』に繋がるなら『出会い』の描写も納得出来る気がします。

257名無しさん:2013/06/24(月) 02:02:51 ID:C047FCDE0
ううーむ、権力者・・・明日になったら民主党から自民党のようなうつろう権力ではないのだと思います
ですが、そのうえの権力となると、もはや権威であり、そもそも一般的には神の加護を受けていると思われます。

一方、文面から読み取れるのは、本家も分家も等しく同じ術を持っており、同じ術でも外法とされるのは
単に対象が違うとか、用法要領を守らなかった程度の違いに留まる印象を受けます(なのでSさんは外法で転生を成功させた)

術の有る・なしで組織の善悪は定まっていなうと言う点は術士独特の世界観と言えるでしょう。

さて、神様も、鬼神も人の世に使うにしては大味すぎます。そんな事をしなくとも通常の術士の業務はこなせます
日常的なヤクザの抗争に鬼神が登場なんて事はおそらく「理」から外れ世界中の神や術者から攻撃されるでしょう
洪水とか天変地異を望んでも単なる漫画の世界の破壊願望にすぎません。

鬼神を使役する力、相克する力を行使するのに受けるペナルティを帳消しにする技術が必須である点と、それに対する需要がはっきりしないようが気がします。

258名無しさん:2013/06/24(月) 06:30:49 ID:4YElQ9bI0
分家が依り代の力に頼って術士を生み出す計画を『上』は容認していたと思います。
外法だから放逐した、でもその一派を滅することは無かったのですから。
また、Kの拉致についても、奪還に動いたと思われる記述はありません。
Lさんの拉致は『上』にとって容認できない別の計画の一部だったのでしょう。
Sさんの父上が当主であるとすれば、244の考察にあるように、
本家の当主すら代わるような事件がその年代に起こったとも考えられます。
今後、この点について語られるかどうか、興味深いです。

259名無しさん:2013/06/24(月) 12:38:50 ID:C047FCDE0
おお、大胆な考察。しびれます〜

上の容認ですか。ある程度の過程まではそのように考えてたとしてもおかしくないですよね。考えてみれば

あと、Kさんの私怨として私も考えたのが本家による救出がなかった点です。
Lさんの立場とKさんの立場が入れ替わってたらと考えてた節がありますね。

Kさんのお母さんかおばあさんは、本家にかなり近い立場だったと思われます。

260名無しさん:2013/06/24(月) 21:35:44 ID:4YElQ9bI0
藍さん、この時間まで投稿が無いなら、投稿は今週末ですかね。
お体を大切に、ゆっくり準備をして頂きたいです。
枯れ木も山の賑わい。藍さんの投稿を待つ間、今夜も私の考察を書いてみます。

この物語群が備忘録の体裁で書き始められたことは私も気になっていました。
この点についての質問に、珍しく藍さんは掲示板の説明を再掲しただけで正面から答えていません。
私も最初は特に意味は無い、ただの枕詞のようなものかと思っていたのですが、
「道標(下)」の中の、Sさんの台詞を呼んで慄然としました。
「もし長生き出来たら、だけどね。」
備忘録が意味を持つとしたら、その記憶が失われた時。つまり3人の主人公の内、誰かが亡くなった時でしょう。

藍さんはまとめサイトのコメントの中で、「2011年末と思われる作品を読ませてもらった」と書いています。
何故、作者である知人さんは時系列を無視してその作品を藍さんに提示したのでしょうか?
恐らく備忘録の体裁に藍さんも疑問を持ったのでしょう。未投稿の2011年末の作品は、その答えかも知れません。
そして、2011年と言えば・・・。語り手、R君がまさかに備えて残そうとしたのがこの作品群だとすれば、
備忘録(というか遺言・または人生の記録)という体裁も、有り得ると思うのです。
もしR君が真の読み手として想定しているのは3人(4人?)の間に生まれた子供達であり、
生き方指南の書であると同時に、恋愛指南、夫婦の愛情指南の書として記録したのなら、
物語内に散見される大胆な性描写も納得出来る気がします。
術士になるかどうか悩む子供達がこの物語を読む。もしやこの物語群は、妄想が一気に拡がりました。

あくまでこの考察は藍さんのお言葉に甘えた私個人の私見であり、
他の方々の考察を否定するものではありません。投稿初期からの愛読者として
みんなの意見を聞きたいと考えての考察です。長文、悪しからずご了承下さい。

261名無しさん:2013/06/25(火) 00:35:32 ID:rTIQYcyEO
>>260
すごい洞察だと思います。だから「全ての記憶が色褪せてしまう前に」なんですね。
沖縄編は「道標」という題も含めて伏線のひとつなんでしょう。

262名無しさん:2013/06/25(火) 01:19:26 ID:qH2Qqhus0
藍さんのお話に関しては、みんなこうして意見を述べることを遠慮してたんですねぇ・・・

263名無しさん:2013/06/25(火) 01:22:40 ID:HcIzbSFA0
>>260
私も、改めて1から読み返して、初めはそんなに気にならなかった
「備忘録替わりに」がめちゃめちゃ気になっていました。
初見のときとは違って、通して読み返し、物語の全体像が見えてくると
確かに「出会い(上)」の書き出しが、一番気がかりになっています。
考えたくはないですが、やはり誰か(Rくん以外の)がいなくなってしまったのでは…と。

みんなが「力」を失って「普通の人」として生きることになったとか
そういう状況だったらいいのですが、最初の書き出しから考えて、
それはありえないだろうと思います。

物語の本筋というか、分家本家等の考察も非常に興味深いのですが、
私はこの「備忘録」という部分にとらわれてしまい、
何か非常に怖くなってしまっています。
ちょっとRくんSさんLさん翠ちゃんたちに感情移入し過ぎたかな。
長文すみません。

264名無しさん:2013/06/25(火) 01:24:59 ID:qH2Qqhus0
知人さんは自分の為に原稿を書き、原文を知る藍さんはここにモザイク変換した物語を投下した・・・

インタビューを書きとったものとされているこの物語ですが、忘備録としての側面を同時にあわせもっていますね?

この違和感を楽しむのも本当にいいですね。

もしかしたら最初の出会いで終わりだったかもしれません。あくまで藍さんの知人さんとの約束は、当初は「出会い」の発表だったと思われるからです

265名無しさん:2013/06/25(火) 01:59:07 ID:YbcV7F8Y0
>>263
いたずらに不安をかき立てる考察になったかもしれない事を、心からお詫びします。
3人の姫君は川の神様から勾玉を授かっていますし、R君も霊剣を授かっていますから、
あくまで主人公たちの子供達に読ませたい記録。そう、お考え下さればと思います。

>>264
最新の投稿が10話目。何度読み返しても、明らかな矛盾がないのは不思議ですね。
実は知人さんの原稿としては、この物語は既に完結しているのではないだろうか?
それなら「出会い」の発表が「当初の約束」だったとしても矛盾はありません。

>>262
藍さん(知人さん)のお墨付きが出ている以上、遠慮は無用かと。
明日も、この物語群の『迷い方』マニュアルを書きたいです。お題は「場所」で。

266名無しさん:2013/06/25(火) 02:27:01 ID:qH2Qqhus0
>>265

ああいや、単純に出会いの最終部分で、藍さんが、「知人との約束を果たせてよかった」と書かれているからそう思ったのです。

あれが一番残したかった記憶だったのですかねぇ。

Sさんがもし居なくなるとするのなら、分家の生き残りによってですかね?

Rさんが居なくなったのだとするのなら、誰の記憶の再生なんでしょうね。

みんなを惹きつけるいい物語だなぁ。高き山に注いだ水が何年も経て人間の体に入りこみ、沁みるように
この記憶もいろいろな形を持って広がり、やがては薄まるかもしれませんが、きっと縁のある人にまた還っていくのでしょうね

267枯れ木も山の賑わい:2013/06/25(火) 19:50:51 ID:YbcV7F8Y0
この物語の主人公達が住んでいる場所を推定する手がかりを思いつくままに。

1.「道標」、北海道と沖縄は除外できます。
2.「忘却の彼方」、Sさんが熊に言及しているので九州も除外。
  (元々いないならわざわざ言及しませんよね)
3.「入学式と卒業式」、車で往復1時間以内の距離に私立の女子高あり。
4.「卯の花腐し」、車で送迎可能な範囲に大学有り。公立・私立・距離は不明。
5.「卯の花腐し」、隣県に川沿いのキャンプ場(BBQ可)?
6.「光と影」、車で約半日の距離、恐らく隣県に温泉地あり。
7.「大晦の宴」、雪は降るが大晦日にほとんど積雪なし。比較的温暖な気候?
8.「出会い」、片道3時間はフェイクだとしても海まではかなりの距離。

中国地方、四国、紀伊半島あたりですかね。可能性があるのは。
もし四国とすれば、あの流派との関連も考えられるので面白いですね。

268名無しさん:2013/06/25(火) 23:52:39 ID:ktXfgnFY0
確かに
( ;∀;)イイハナシダナー

269名無しさん:2013/06/26(水) 00:13:21 ID:JGC1Aft20
テスト中です。

270 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:15:05 ID:JGC1Aft20
 皆様、こんばんは。藍です。
何故だか全く分かりませんが、突然コメントが増えて正直困惑しております。
『楽しむためならどんな想像もアリ』とは書いたものの、ヒヤリとする内容も多く、
個別のレスを控えざるを得ない状況になりました、文字通り嬉しい悲鳴です。
ただ、以前と変わらず、全てのコメントを有り難く読ませて頂いております。
また、知人もこの掲示板を閲覧しておりますので
皆様のご期待が今回の投稿に繋がったとものと存じます。
この場を借りて、皆様に心からの感謝を。本当にありがとう御座いました。

 さて、準備が出来ましたので11話目を投稿致します。
前述致しましたが、一話完結の掌編です。
『道標(結)』に続く作品ですので、季節が盛大にずれてしまいました。
知人は「正月に合わせて投稿した方が良いのに」と愚痴っておりましたが、
幾ら何でもそんな気の長いことは出来ません。
それでは以下、『呪物』。お楽しみ頂ければ幸いです。

271 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:16:19 ID:JGC1Aft20
『呪物』

 「正月早々かなり珍しい仕事が来たわよ。もし本物なら、だけど。」
電話を切ったSさんが明るい笑顔でリビングに戻ってきた。
「どんな仕事ですか?私とRさんで出来る仕事なら何でも。」
姫はSさんの体を気遣っている。Sさんは妊娠5ヶ月目に入っていた。
「呪物の処理はLやR君の分野じゃない。この仕事はどうしても私が行かないと。」
Sさんは何だか楽しそうだ。まあ、検診の結果は順調だし、
やる気になっているのは、何より体調の良い証拠だろうけれど。
「場所、遠いんですか?呪物なら依頼人に持って来てもらうという方法も。」
「依頼人は私の従姉弟たちなの。前から翠とR君に会いたいって言われてたし、
良い機会だからみんなで出掛けましょ。私、体調は良い。全然平気。」
「従姉弟たちって、もしかして碧(あおい)さんと暁(あきら)君ですか?」
「そう、久し振りよね。R君と翠は初めてだから紹介してあげる。」

272『呪物』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:19:32 ID:JGC1Aft20
 40分程車を走らせて、市街地の山手にある閑静な住宅街に着いた。
広いガレージに車を停め、玄関に廻る。Sさんがインターホンのボタンを押した。
「はい、どなた?」 「私よ、S。早速みんなで押しかけてきたわ。」
「ちょっと、じゃ、翠ちゃんも一緒なの?」
応答が途切れ、玄関の向こうで気配が勢いよく近づいて来る。 ドアが開いた。
「いらっしゃい。あ、ホントだ。」 女性はしゃがんで翠と視線を合わせた。
「翠ちゃん、こんにちは。」 「こんにちは。」 「可愛い〜。ね、抱っこして良い?」
人見知りした翠が姫の脚の後ろに隠れてしまったので女性は立ち上がった。
「ま、初めてだから仕方ないか。S、Lちゃん、久し振り。」
華やかな笑顔。2人とはタイプが違うがこの人も美人だ。
くっきりした目鼻立ち、背の高さは姫と同じくらい。宝塚の男役みたいな雰囲気。
「本当に久し振り。紹介するわ、こちらがR君。」
「初めまして、Rです。」
一礼して顔を上げると女性の顔が目の前にあった。思わず後ずさる。
「ふ〜ん、なかなかの美形ね。君が今一族中で話題の言霊使いなんだ。
さすがに2人とも御目が高い。私、碧。宜しくね。」
「姉さん、Sさんはお腹に赤ちゃんがいるんでしょ。立ち話は良くないよ。」
玄関の奥に少年が立っていた。姉弟だから当然だが、かなりの美少年だ。
高校生? どちらかというと女顔で線が細い。 ちょっとコンプレックスが。
「あ、御免なさい。私ったら気が利かなくて。これ、弟の暁。さ、中へ入って。早く早く。」

273『呪物』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:21:57 ID:JGC1Aft20
 案内された客間でソファに腰掛けた。
とにかく広い、豪華なソファとテーブル。翠は姫に抱かれて飾り棚の中身に興味津々。
やがてコーヒーとケーキが運ばれてきて雑談になった。
お互いの近況や俺の裁許のこと、そして翠のこと。Sさんと碧さんはとても楽しそうだ。
碧さんと暁君は術者ではないらしい。御両親が海外に長期出張、始めは一家で移住したが
暁君の高校進学を機に碧さんと暁君は帰国。去年の3月から2人暮らしを始めた。
一族の人で術者ではない人に会うのは初めてだ。何だか普通の会話が新鮮に感じる。
ふと、暁君の視線に気が付いた。時折Sさんに向けられる憧憬の眼差し。
純粋な慕情が伝わってくる。Sさんは暁君の初恋の人、なのかも知れない。
「さて、おしゃべりも楽しいけど、そろそろ仕事の話をしないと。」
「そうね、お願い。」
テーブルの上が片づけられ、暁君以外は全員ソファに腰掛けた。
飾り棚の中身に飽きた翠は姫に抱かれて眠そうにしている。
「今、暁が取りに行ってる。怪しいと思ってからはずっと『保管庫』に入れてあったから。」
「ホントに呪物なの?」 「分からないけど、ちょっと嫌な感じ。あんなの初めて。」
暁君が応接間に戻ってきた。白い布の包みを持っている。
「これです。」 テーブルの上で包みを解く。 トランプ?
厚手の紙にレトロな絵柄のトランプだ。箱もある。状態は良いが、古いものなのだろうか。
「暁君、これ、何処で?」 Sさんの眼が輝いている。
「去年のクリスマス前にネットのオークションで手に入れました。
もしかしたら19世紀のものかも知れません。安かったし、状態が良かったから
レプリカだと思ってたんですけど、どうもオリジナルの木版印刷みたいで。」
少年は緊張した口調で答えた。頬が少し赤く染まっている。
なるほど、暁君と碧さんの趣味はアンティークの収集と言う訳だ。
飾り棚の中、綺麗にディスプレイされたチェスの駒やタロットカードも2人の収集物だろう。

274『呪物』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:25:21 ID:JGC1Aft20
 「どうしてこれが呪物だと思ったの?」
「手に取ると、凄く嫌な感じがするんです。絵や模様はとても、綺麗なのに。」
Sさんがトランプを手に取った。慣れた手つきでシャッフルし、扇形にカードを広げる。
途端に全身の毛が逆立った。
このトランプはまるで『窓』だ。 窓の向こう側にいる、何者かの、禍々しい気配。
そして今、少しだけ開いた窓の隙間から『それ』がこちらの様子を窺っている。
カードを配ってゲームを始めれば、間違いなく『それ』は窓から手を伸ばしてくる。
「確かに呪物ね。それもかなり強力。呪物を使う呪いは、時間と相手を限定できないから
成功率はそれほど高くないし、作るのにも手間がかかる。本物は滅多に無いんだけど。」
「本物って、それ持ってるとやっぱり悪いことが起こるの?」
「『保管庫』に入れておく分には問題無い。でも、手に取ったり眺めたりすると影響を受ける。
遅かれ早かれ体を壊すし、心も蝕まれる。 強い呪いを封じて、呪う相手に贈ったもの。
作られてから、多分100年以上は経ってるのに力はほとんど弱まっていない。
使用された痕跡は感じない。多分、想定外の事態が起きて倉庫か屋根裏にでも埋もれてた。
これを贈られた人はとても運が良かったのね。それに、運が良いのは暁君と碧も同じ。
変だと感じて、直ぐにこれを『保管庫』に入れておいたのは正しい判断だった。」
「あの、やっぱり焚き上げないと駄目ですか?」 暁君は不安そうな表情だ。
駄目どころか、一刻も早く処理しないといけない気がするが、
暁君はそこまで強い気配や憎悪を感じていないということだろう。
術者ではないのだから無理もないし、変だと感じただけで大したものだ。
「焚き上げると中の呪いが解放されるから何が起こるか分からない。却って危険なの。」
そうか、焚き上げるだけで良いのなら、Sさんでなければならない理由はない。
「でも呪いの力を消してしまえば、これは呪物ではなく洒落たアンティークのトランプ。」
暁君はホッとした表情を浮かべた。

275『呪物』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:29:18 ID:JGC1Aft20
 Sさんが白い布の4隅に星のような形の紙片を置く。 初めて見る特殊な結界。
眼を閉じて深く息を吸った。小声で何事か呟き、胸の前で印を結ぶ。微笑んで眼を開けた。
「見てて、もうすぐよ。」
やがて、扇形に広げられたカードの端に小さな炎が見えた。
炎は次第に勢いを増し、カード全体が炎に包まれた。
しかし、全く熱気を感じないし、カードや白い布が焦げる事もない。
驚いて何か言いかけた碧さんと暁君に、Sさんが『黙ってて』の合図を送る。
突然、トランプの上、50cmほどの高さに小さな紫色の光が現れた。
それは、一度強く輝いた後、ゆっくりと降下し、
白い布の上で小さく跳ねて輝き続ける。まるで紫色の火花のようだ。
もう一つ、また一つ。見る間に無数の小さな光が白い布へ舞い降りてゆく。
その幾つかは白い布から零れ落ちて、テーブルの上で輝いている。
しかし何故かカードの上には一つも降下しない。
「とても、綺麗。これが、『○◆の雪』。初めて見ました。」 姫は小さく溜息をついた。
小さな紫色の光が舞い降りるにつれ、カードを包む炎の勢いは弱まっていく。
しばらくすると降下する光の数は減り、ついには現れなくなった。
白い布やテーブルの上の光もかなり輝きを弱めている。カードを包む炎も消えた。
「これで良し。光が見えなくなったらそれでお終い。」

276『呪物』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:31:31 ID:JGC1Aft20
 「『○◆の雪』って」 「さっきカードに火が」
碧さんと暁君が同時に口を開き、顔を見合わせた。
2人が笑い合う仕草が実に絵になる。まるでドラマのワンシーンみたいだ。
とても仲の良い姉弟なのだろう。2人の間の特別な、強い絆を感じる。
「あの炎はカードに込められていた呪いが形をとったもの。
呪いのエネルギーを光に還元したから炎は消えた。もう大丈夫。
もう暫く、そうね、あと30分もすれば暁君が触っても、全然障りはない。」
「ありがとう御座いました。」 暁君は丁寧に頭を下げた。
「どう致しまして。アンティークはどうしても色々あるから、変だと思ったらすぐに連絡して。
呪物じゃなくても、何か問題があれば対応してあげる。」
「はい。」 満面の笑み、暁君は本当に嬉しそうだ。
「呪物の処理ってもっと時間が掛かると思ってたわ。何十年とか。」
「厳重に保管して呪いが弱まるのを待つだけなら、術者に頼む意味が無いでしょ。
そのままで置いておくと呪いが弱まるのにはすごく時間がかかるし、
下手をするとその間にも被害者が出てしまう。やり方は色々あるけど、さっきのが一番早い。」
「本当にありがとう。あ、お昼ご飯食べていくよね?
美味しいお節があるの。さ、支度するから暁も手伝って。」 「はい。」
2人は慌ただしく応接間を出て行った。廊下を走る足音。

277『呪物』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:33:31 ID:JGC1Aft20
 「相変わらずね。気が早くて、自分勝手で。」 Sさんは懐かしそうに微笑んだ。
確かに、従姉妹だけあって碧さんはSさんと少し似ている。気が早くて、あ。
「R君、何か?」
「いや、その、碧さんはすごくきれいな人で。Sさんに少し似てると思っただけです。
暁君もすごいイケメンですよね。」
考えてみれば一族の人たちは皆、美男美女揃いだ。
当主さまの館でドアを開けてくれた男性も、案内してくれた少女もそうだった。
「そう言えば、どうして一族の人は美男美女ばかりなんでしょうね?」
炎という名の男、俺とSさんの前に現れたその分身も、時代劇の二枚目みたいな美形だった。
「多分進化論よ、ダーウィンの。」 「進化論?」
「R君だって、依頼するなら美人の術者に依頼したいでしょ?男性の術者でも同じ。
力が同じなら当然美形の方が依頼が多い。依頼が多ければ経済的に余裕が出来るから
綺麗な女性を何人も妻に娶ってたくさんの子を残すことが出来る。
1000年近くそれが繰り返されてきたんだから、あたりまえなのかも。」
「依頼人の印象を良くするための適応ってことですか?」
「印象を良くするというより信頼を得やすくするための適応。
陰陽師にはカウンセラー的な資質も要求されるから、術者が美形なほど有利。
依頼人が術者ともっと深い関わりを持ちたいと思うほど術の成功率は高まる。当然よね。
逆に、依頼人に信頼して貰えなければ術の成功率も落ちてしまう。」
なるほど、道理だ。 「まずは依頼人に信頼されるのが大切、なんですね。」

278『呪物』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:36:12 ID:JGC1Aft20
 「そう、依頼人の前で何か簡単な術を使って見せても良いけど、
できれば無駄な力は使いたくない。だからこんな方法を使うこともある。」
Sさんはカードを手に取り、シャッフルしてから扇形にひろげた。
最初に感じた禍々しい気配や憎悪は、もうほとんど感じられない。
「一枚取って何のカードか憶えておいて。私に見えないように。」
姫に抱かれて寝ていた翠が眼を覚まし、姫と一緒にSさんの手元を見つめている。
カードを一枚取り、Sさんに見えないようにそっとめくった。ハートの3だ。
「憶えたらカードをここに。」
テーブルの上に置かれたカードは2つの山に分けられていた。
Sさんが指さしたのはカードが多い方の山だ。
カードをのせるともう一方のカードの山を更に重ねた。シャッフル、手の動きが美しい。
やがてSさんはテーブルの上にカードをまとめて置いた。
「あなたの選んだカードはこれ。」 一番上のカードをめくる。 ハートの3。
「手品、なんですか?」
「そう、手品。今のはこうしたの。」
Sさんは扇形に開いたカードを2つに分けた。
「こっちは10枚、これを選んだカードにのせて10回シャッフルするふりをする。」
なるほど、一番上のカードを一枚ずつ取って行けば、10回目には選んだカードが一番上だ。
「もっと高等なトリックもあるけど、カードを手に持って当てるなら手品で十分、術は必要ない。
虚仮威しだけど安上がりで効果は高い。お得よね。」

279『呪物』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:37:44 ID:JGC1Aft20
 「術を使うのなら、全く手を触れなくても当てられますか?」
「もちろん。じゃ、こういうのはどう?あなたが思い浮かべたカードを当てるの。
私だけじゃなく、あなたもカードには手を触れない。面白いでしょ。」
Sさんが真っ直ぐに俺を見つめる。綺麗な目、ドキドキして思わず目を逸らした。
集中してカードを思い浮かべる。 できるだけ地味なカードが良いのか、いやいっそ。
「ダイヤの6」 「正解です。」
「クラブの2」 「また、正解です。」
Sさんが俺の意識に同調した気配はない。どうやって俺の心を読んでいるのだろう?
「心を読んでいるんじゃありません。」 翠と並んで座った姫が微笑んだ。
「じゃあ何で思い浮かべたカードを?」
「カードを1枚選んで憶えて下さい。憶えたら裏返しにしてテーブルの上に。」
カードを一枚取り、憶えてから裏返しにしてテーブルの上に置く。
一呼吸置いて、Sさんは言った。
「スペードのJ。」 「正解です。」 「じゃあもう一度。そのカードはここに。」
俺はSさんに渡すつもりでカードに触れた。
「待って。」 「え?」

280『呪物』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:40:07 ID:JGC1Aft20
 Sさんの眼がキラキラと輝いている。 「それ、本当にスペードのJ?」
どういう意味だ。 首筋がヒヤッと冷たくなる。 さっき、俺は確かに。
そっとテーブルの上のカードをめくった。 これは。
クラブの4、だ。 「何を、したんです?」
「Rさんが選んだのは確かにそれですけど、Sさんは『声』でRさんの記憶を変えたんです。」
「そう、『スペードのJ』って指定されたから、選んだのはスペードのJだったと思い込んだ。」
「いや、でもおかしいですよ時間的に。『声』を聞くのは選んだ後なんですから。」
「電話が鳴ってる夢を見て、起きたら目覚ましが鳴ってた。経験ない?
あれ、本当は音を聞いてから電話が鳴る夢を見てる。時間的には逆だけど。」
「あ。」
『声』を聞いた後に、そのカードを選んだ記憶を作った? しかも俺自身が?
「脳は何時だって都合良く記憶を変える。それを利用した術。だから絶対に、間違えない。」
「相手の心を読むより、高等な術なんですね?」
「ご名答。やっと調子出てきたわね。あんまり得意な術ではないし、同じ結果を得るために
複数の方法があるなら、力を節約出来る方法を選ぶのが鉄則なんだけど。今日は特別。」
俺の記憶を変えられる。もちろん心も読める。なら。
「僕が『これから選ぶカード』も、指定出来ますか?」
未来なら俺の心を読むことはできないし、『声』を聞くのは選ぶ前だから記憶とも関係ない。
俺の思惑を見透かしたように、Sさんは悪戯っぽい笑顔を浮かべた。

281『呪物』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:43:05 ID:JGC1Aft20
 「折角のお正月だし、良いわよ。それ、見せてあげても。
ただ、仕事した後だし、少し面倒な術だからR君も力を貸して。それが条件、どう?」
「もちろんOKです。Sさんの体に障ったら大変ですから。」
「じゃ右手を。」 俺が差し出した手を取って眼を閉じた。温かい。
やがて眼を開けたSさんは俺の手を離し、かなりの時間をかけて一枚のカードを探し出した。
アンティークの価値を損ねないための配慮だろう。 とても丁寧な手つきだ。
選んだカードを左掌に載せて、俺の目の前に差し出す。
カード中央の大きなハートを取り囲む美しい唐草模様。そして筆記体の文字。
「あなたが選ぶカードはこれ。ハートのA。」
裏返したカードを戻してシャッフルし、扇形に開いてテーブルに置く。
「さ、選んで。」
ハートのAを選ぶつもりでいればいいのか、それともそれ以外を選ぶつもりで。
「お待たせ。食事の用意が出来たわよ、みんなダイニングに。
あれ、R君、トランプで何やってるの?」
「あ、え〜と、これは、占い。そう、占いです。」
「翠ちゃんも一緒にトランプ占いしたいのかな?」
いつの間にか翠がテーブルの脇に立っていた。
「あっ、翠、ちょっと、今それお父さんが。」
無造作にカードを一枚取り、てててっと歩いて碧さんに手渡す。
ちらりと赤い色が見えた。 ハート? 一気に心臓の鼓動が早くなる。
「わ〜嬉しい。翠ちゃんありがと。R君、これ、絶対良いカードでしょ?どんな運勢?」
碧さんが持っているのは、ハートのA。 まさか。 軽い目眩。

282『呪物』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:47:11 ID:JGC1Aft20
 これまでも、Sさんは前もって術をかけ、俺の意識や行動を操作したことがある。
今回もその術を使えば俺自身がカードの中からハートのAを探し出し、
そして自分がカードを探したこと自体を忘れてしまうだろう。
つまり、我に返った俺はいつの間にかハートのAを持っている。
だからSさんは俺の手に触れる必要があった。そう、予想していた。
しかし、カードを取ったのは翠だ。あの術ではない。
誰が選んでも、最初のカードはハートのA。 それを、予知していたのか?
いや、あり得ない。
神や高位の精霊なら知らず、人間にとって、未来は無数の偶然と選択肢の積み重ねであり、
確定してはいない。確定していないのに、予知することは不可能だ。そう、例えSさんでも。
それなら、残る答えは1つ。手元のカードを一枚めくる。ハートのA、やっぱり。
もう一枚、これもハートのA。さらにもう一枚、やはりハートのA。笑いがこみ上げてくる。

283『呪物』 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:51:38 ID:JGC1Aft20
 初めて見た。 そして、恐らく二度とは見られない、ハートのAのフォーカード。
これも一種の後催眠暗示だ、『声』による視覚の操作。 凄い、面白過ぎる。
「あとどのくらい、この状態が続くんですか?」
「からくりが分かったなら、もう見えるはずよ。」
いったん目を閉じて深呼吸、ゆっくりと目を開ける。
碧さんが持っているのはハートのK。
俺の前にある3枚のカードはハートのJ、ハートの10、そして、ハートのA。
え、本物の、ハートのA?
Sさんは得意そうに微笑んで、一枚のカードを取った。ゆっくりとめくる。
ハートのQ。
「はい、これで完成。 お正月らしい、お目出度い役でしょ? 呪物の始末もこれで完璧。」

『呪物』 完

284 ◆iF1EyBLnoU:2013/06/26(水) 00:56:35 ID:JGC1Aft20
 お約束のように出だしの題名で躓きましたが、
今回も無事に投稿を完了できて有り難く思います。
明日から週末にかけて多忙となり、失礼を致します。
ありがとう御座いました。

285名無しさん:2013/06/26(水) 01:00:08 ID:S7ptmiUk0
藍さんこんばんわー。UP乙です。

>ヒヤリとする内容も多く、個別のレスを控えざるを得ない状況になりました、文字通り嬉しい悲鳴です。

勿論藍さん、まずい事はスルーで(笑)大変な事になってしまいます

>知人もこの掲示板を閲覧しておりますので

ゲロゲロッ(汗)私の危惧も勿論そこにありましたが、私を含め皆妄想が抑えれませんでした。
今のところ、原稿提供の意欲減退の直接の原因にはならなそうでホッとしています

知人さんも有難うございました。

286名無しさん:2013/06/26(水) 01:30:08 ID:S7ptmiUk0
な・・・なんという恐ろしい術なのだ・・・

SさんがR氏の浮気を防止しようと思ったら、エロ本や、街中の女性をみんな高木ブーに見えるようにすればいいだけなのか・・

287名無しさん:2013/06/26(水) 09:17:20 ID:.oDWp29UO
藍さん知人さんありがとうございました。
ハートのエースのフォーカードは高度な催眠術とでもいうか、言霊の力を持つRさんがこれをマスターすればもっとすごいんでしょうね。この応用編がまたどこかでみられるのでしょうか。今回もとても面白かったです。

288名無しさん:2013/06/26(水) 16:50:21 ID:S7ptmiUk0
応用すれエピメニデスの逆説=究極の選択が出来るな。

うん○味のカレーと、カレー味のうん○WW

ハートのエースって、実際には別のカードだったかもしれませんね。

ハートのエースが出てこなーいって曲にかけたのかも

289名無しさん:2013/06/27(木) 00:24:13 ID:2gYbyW8w0
怖い話。
ひょっとしとしら、実は私たち読者も術にかけられてたりして。
ほら、管さんが光の管(ケーブル)を通ってやってくる・・・。

290枯れ木も山の賑わい:2013/06/27(木) 01:04:49 ID:kIfH4iNs0
藍さん、新作乙です。

291枯れ木も山の賑わい:2013/06/27(木) 01:43:37 ID:kIfH4iNs0
掌編とは「短いお話」というほどの意味でしょうか?でも、凄く興味深いお話です。
ハートのAの4カード、当然R君自身が有り得ない役だと気付いていますね。
しかし、SさんがハートのQをめくって完成したハートのロイヤルストレートフラッシュが
Sさんの術によるものなら、この術は最初から2重構造。

呪物だった力の残滓を利用しながら、このトランプを祝福されたアンティークへと変化させる。
どんな人も物も、決して雑に扱うことのない、いかにも、Sさんらしい術。本当に素敵ですねぇ。

292名無しさん:2013/06/27(木) 02:52:22 ID:k/bWlXv60
藍さん
お忙しい中、投稿ありがとうございます。
知人さん
毎回、話に引き込まれています。
今後も、無理をしない範囲で、よろしくお願いしますm(_ _)m

293名無しさん:2013/06/29(土) 11:15:01 ID:U0qBlWKUO
昔の術師はトランプでなく花札でこれをやってたんでしょうね。梅に鶯のフォーカードとか…。

294名無しさん:2013/06/30(日) 12:04:16 ID:7Nd6kNRs0
精神干渉の力が強かったKさん

Sさんの今回の術は、本来のRさんとKさんの戦いだった可能性を示唆している

記憶や感情を入れ替えることが出来る攻撃の可能性もあったのだ。

RさんどんだけイケメンなのよWWW

295名無しさん:2013/06/30(日) 23:27:35 ID:7HSyv42Q0
 「出会い(下)」、Kさんの最後の干渉と、Rさんの対応は印象的な場面です。
記憶や感情を入れ替える攻撃を予想し、Sさんは反撃の準備をして罠を掛けていた。
しかし、Kさんは術士としてでなく、ただ、1人の女性としてRさんに会いたかった。
だから、Sさんには反撃の方法が無かった。

 もし、Rさんが「行くよ、一緒に。」と言わなかったとしたら、結末は変わったでしょうか?
Rさんなら、必ずそう言ったと思うし、それがRさんが「心の」イケメンである所以でしょう。
でも、読み返す度に、そう考えてしまうのです。もしも、と。

 さて、この一族が「生きている存在」に対して使う術は、ほとんど精神に干渉する系統ですね。
その術の詳細が一部明らかになったと言う点で「呪物」は私にとって重要な作品です。
藍さん、知人さん。次回作、心から期待しています。

296黒い瞳:2013/07/01(月) 00:12:18 ID:.LmJ2Sko0
不思議な体験をした
オチはない
たまに思い出すので文章にして
曖昧な記憶を確定して残したいから
書かせて下さい

創作じゃなく実体験です

社会人になって結婚して
5年ほどたった頃

妻と近所の家電量販店に出かけた
163号線の近くで
駅で言えば京阪線の古川橋駅

妻が商品を物色している間
私は特に見る物も無く手持無沙汰に
突っ立っていた

私の目の前には電池が並んでいて
棚の一番下の段には
安い電池が無造作にカゴに入っていた

私の足元でそのカゴを覗きこんでいる女の子がいた
見た感じ小学校1年生くらいかな
歳で言えば7歳くらいの女の子

その子が急に顔を上げて
私を覗きこむように見上げて
ニッコリと笑った
本当に楽しそうな顔で私に笑顔を見せた

私は大人なので
笑顔を返してやるべきだったんだけど
それが出来なかった
その事は今となっても後悔している

297黒い瞳:2013/07/01(月) 00:14:54 ID:.LmJ2Sko0
その子は障害持っているようだった
ご両親と一緒に来ていたんだけど
言葉をちゃんと話せていない

本当に可愛らしい顔をしていた
でも
笑顔を向けられた時
私は気持ちの悪い物を見たという
驚きのような嫌な表情で
その子を見てしまった
本当に後悔している

その子の目はとても大きくて
白目がなかった
大きな目の全てが黒い瞳だった
ドキっとして
咄嗟にそんな表情を返してしまった

それから3年ほどたった頃

298黒い瞳:2013/07/01(月) 00:15:53 ID:.LmJ2Sko0
私は梅田駅ビルの前の国道を挟んで
向かい側のビルで働いていた

たぶん春だったと思う
大雨が降っていた
私は階段に出てその雨を眺めていた
すると一人の女性が目に入った
服装から見て20代くらいなのかな
大雨が降っているのにもかかわらず
傘をささずに濡れていた

ありえないと思った
5mも移動すれば駅ビルの下の
雨にかからない場所に移動できるのに
濡れて突っ立っていた

不思議に思ってしばらく見ていたのだけど
どんな人か見たくなって
傘をさして見に行った
横を素通りする時に
足を止めずに少し顔を見てやろう


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