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なぜエスペラントは普及しないのか?

21松戸彩苑:2008/01/19(土) 12:11:21
ルイ=ジャン・カルヴェ(著)『超民族語』(文庫クセジュ776 1996年 白水社)という本
があるんですが、この本のはじめのところに田中克彦氏が執筆した「解説:この本を手に
する読者へ」という小文があって、このなかに次のように書いてあるんですね。

  エスペラント語は、たとえばトルストイは2時間でマスターしてしまったほど学びやすい
  言語だと言われ、私もそのように宣伝してはいるが、やはり使ってなれないと、そう自由
  にというわけには行かない。私はかつて同好の市民をさそって、国立(くにたち)公民館
  で学習会を開いたことがある。噂を聞いてある日、古参の老練なエスペランチストでチェ
  コ文学者でもある栗栖継さんが突然会場に現われて授業参観をなされ、「田中さん、エ
  スペラントはやってみると案外むつかしいもんですよ」と言い残して立ち去られたときの
  ことをありありと思いうかべるのであるが、全くその通りなのだ。ことばの勉強ほど、口さ
  きでごまかせないものは他にあまりないのである。

  (同書8ページ)

私はこれを読んで「アーア」と思ったんですよね。

これまでエスペランティストは一生けんめい「エスペラントは学習容易である」と宣伝してき
たわけですね。
しかし、エスペラントについて多少は知っている著名な言語学者に、それを真っ向から否定
するようなことを本に書かれてしまったわけです。

なお、この本の著者であるカルヴェというのは、1942年生まれの世界的に有名なフランス
の言語学者なんですが、そういう人の本(しかも1000円弱の新書)ですから、言語社会学
あるいは言語学一般に関心のあるすべての日本人が目にする可能性があるわけですね。
そういう本のなかにこんなことを書かれたというのは、やはりマズイよなと思いました。

とは言っても、考えてみれば、この本が出る以前から、エスペラントには社会的な信用は
無かったわけです。
そもそも、もし本当にエスペランティストが言うように、エスペラントが学習容易でなおかつ
レベルの高いものだったら、もっと広まってるはずなのに、そうなってないのですから、世
間の人たちがエスペランティストの言うことを信用するはずがありません。
ですから、進歩的な人たちでさえも、エスペランティストの言うことに耳を傾けようともしてく
れないわけですね。
ということで、この本によって信用が無くなったというわけではないのですが、いわば「ダメ
押し」にはなってるのではないかと思いました。

この発言の主である栗栖氏も、自分の発言が、まさか本に書かれるなどとは夢にも思わな
かったのでしょう。
また、おそらく栗栖氏は「そうは言ったが、でも英語などの民族語を自由自在に使えるよう
になるのと比べれば、やはりエスペラントは易しいんだ」ということも考えておられたのだろ
うと思います。
しかし、エスペラントについてまったく知らない一般の人たちには、そんなことは判るはずが
ありません。
「エスペラントは、ドイツ語・ロシア語・モンゴル語なんかに堪能な田中氏にとっても、やっぱ
り難しいんだ」としか思われないだろうと思います。

ということで、いろいろと考えてきましたが、問題は、栗栖氏や田中氏の個人的な責任に帰
せられるものではなく、

(1) 学習途中で挫折したり eterna komencanto になってしまう人が昔からたくさんいたの
    に、学習方法の改善についてあまり真剣に考えてこなかった。

(2) それでいて、宣伝のときには「エスペラントは学習容易である」と言っていた。

ということにあると思うんですね。
つまり、エスペラント界あるいはエスペラント運動全体の問題だと私は考えます。

もちろん、このように言えば「学習方法をどのように改善すれば良いのか」という質問が出て
くることになるのでしょうが、それは「エスペラントの学習法」スレで論じることにします。


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