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222暇人:2012/01/23(月) 07:44:09
(六)シュターツ説
 イェーガーの『大書簡』暫定的校訂版が刊行されてからちょうど十年後の
一九六四年、H・デリースからの委託を受け『大書簡』の批判校訂という労
多き仕事を引き継いだR・シュターツは、同年、ゲッティンゲン大学神学部
に提出した学位論文に基づいた『ニュッサのグレゴリオスとメッサリア派』
と題する著書をさらにその四年後に上梓した33)。「本質から逸れた押し付け
がましい仮説の一切を振り捨て、グレゴリオスの『綱要』と擬マカリオスの
『大書簡』の間で常々議論の絶えることのなかった、どちらが他に先行しそ
の原本となるかという問題を、能う限り厳密に文献学的原理に則って解くこ
と」34)を主眼とした同書において、ほぼ時を同じくしてイェーガー説への疑
念を表明したJ・グリボモン35)やM・カネヴェ36)らの主張を纏める形でシ
ュターツは以下のような明瞭な解釈を展開した。
まず、擬マカリオスの『大書簡』の方がより先にオリジナルとしてあった。
したがって、通常グレゴリオスに帰される『綱要』の方は、『大書簡』にお
いて擬マカリオス(ないしメソポタミアのシメオン)の説く修道生活に関わ
る様々な教説を、その表現方式に到るまで文字通り手本としつつ、哲学的語
彙を用いたより洗練された形に書きかえようとした試みに他ならない。その
ような『綱要』の企ての目的は、『大書簡』に含まれるメッサリア派的な表
現を和らげ、当時のギリシア語を解する知識人層により受容可能なように、
彼らに馴染みのある哲学的概念を『大書簡』の表現に溶け込ませるためであ
った。おおよそ以上のような解釈がシュターツら反イェーガー陣営の主張す
なわち『大書簡』オリジナル説である。この立場はその後、擬マカリオスの
テクスト集成としては現在もっともテクスト上の問題が少なく信頼できると
見られる第三集成の最新校訂版37)編者V・デプレの参入を得てますます勢
いを増し、さらにはシュターツ自身のほぼライフワークとさえ言い得る
『大書簡』の批判校訂版38)(彼自身による『綱要』の最新校訂版も見開きで
並置)が一九八四年についに完成するに到って、解釈上の大勢をほぼ決した観がある。」


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