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新・大中華世界的話題

732とはずがたり:2015/12/04(金) 21:08:15
>>731-732

 一方の米国は南シナ海における中国の行動に対して強い姿勢を取るようになった。

 前述したように米艦を12カイリ内に立ち入らせ、また、オバマ大統領自身、国際法違反の行為を控えるよう中国を説得することを各国に求めてきた。今般のASEAN会議やその直前のAPEC会議が米国にとって関係国へのさらなる働きかけのために格好の場となったのは当然だ。

 米国は、中国の違法な行動に反対する国際的連帯を形成しようとしていると言えるだろう。軍事的な包囲網を作り上げようとしているのではない。12カイリ内への立ち入りは、それが軍事的衝突に発展しないとの確信の下に実行したものと思う。しかし、南シナ海で中国がこれまで通りの行動を続けると、海洋の自由など国際法の重要な原則が損なわれると強い危機感から行動していると思われる。

 東南アジア諸国は中国との関係において一枚岩でなく、まだ完全にはこの国際連帯に加わっていない。今回の会議でも、カンボジアなど一部の国は中国との関係に配慮する発言を行った。また、積極的に態度を表明しない国もあった。しかし、その他の国、大多数の国は中国の行動に批判的だった。とくに南沙諸島に最も利害関係が深いフィリピンは、自国でAPECの首脳会議を開催した時とは打って変わって率直な中国批判を名指しで行っている。

 中国の影響力はどの東南アジア諸国にとっても大きな問題だが、このように多数の国が中国の行動について明確に立場を表明したことにより、これまで発言を控えていた国も発言しやすくなるだろう。

また、フィリピンの発言の背景には、国際仲裁裁判所がフィリピンの提訴に応じて仲裁を開始するという判断があった。これも中国の行動を批判する側にとって追い風となっている。

 安倍首相は、会議後の記者会見で「海の平和と安全を守り、航行の自由を確保するため、各国が国際法に基づいて責任を持って行動し、緊張関係を生み出す行動を厳に慎むことで、強いコンセンサスが得られた。共通のルールの上に関係国が対話を重ねることによって、相互の信頼を培っていくことができると考える」と説明した。会議では当然この趣旨を述べたのだろう。これは中国を牽制する秀逸な発言といえる。

 今後、日本は米国、オーストラリア、ニュージーランドなどと協力して、国際法の尊重とルールに基づいた紛争の解決に関するコンセンサスが東南アジア諸国でも形成されるよう努めていくべきだ。

 また、韓国に対する働きかけも必要だ。可能であれば、日韓中の首脳会談でもそのことを話し合うべきである。

 朴槿恵大統領は、さる10月中旬訪米した際、オバマ大統領から「中国に国際法違反の行為があれば声を上げてほしい」と要請されたのに対し、明確に返答しなかった。今回のASEAN会議でも朴大統領の発言は注目されなかった。韓国は中国の行動に批判的な表明をしなかった国の一つだったのではないか。

 最後に、ASEAN首脳会議の重要性の高まりについて指摘しておきたい。ASEAN首脳会議は域外国との意見交換を行うようになって以来、東アジアで最も重要な政治協議の場になりつつある。域外国は当初客分に過ぎなかったが、今や、南シナ海問題のような困難な国際問題についてASEAN諸国も域外国も真剣に発言する場となっている。会議の内外で様々な外交活動が可能になっている点も大きな特徴だ。

 今回、安倍首相が会議場内でミャンマーのテイン・セイン大統領に、同国での選挙後の新しい政権樹立が円滑に運ぶことを期待していると話したのも、その一例。これはきわめて重要なメッセージである。短時間の会話であっても、直接会うことによって重要な事項を伝達することは可能であり、これこそが外交なのである。


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