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新・鉄道綜合スレ
1744
:
チバQ
:2017/11/27(月) 21:29:58
「フル規格」求める沿線に衝撃
全国新幹線鉄道整備法は、新幹線について「主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道」と定義している。ミニ新幹線は、在来線区間の運用が通常の「特急」と変わらないため、厳密には「新幹線」とは呼べない。それでも、フル規格の整備新幹線の着工を求める地域は、先を越された形になり、微妙な衝撃が走った。さらに、思わぬ余波も生じた。
フル規格の整備新幹線の着工が難航する中、運輸省は1988年8月、東北(盛岡以北)、北陸、九州新幹線について、フル規格とミニ新幹線、さらに、在来線型の特急を新幹線規格の線路に走らせる「スーパー特急」を混在させた「暫定整備案」を公表した。そして、政府・与党申し合わせを経て、翌1989年に北陸新幹線が、1991年には東北(盛岡以北)、九州新幹線が着工した。
だが、沿線は「ウナギを頼んだら、アナゴやドジョウが出てきた」と猛反発し、全線フル規格への“昇格”を強く求め続けた。その結果、これまで開業した路線に関する限り、ミニ新幹線やスーパー特急が想定された区間はすべてフル規格となった。ただ、整備新幹線で最も早く列車が走った北陸新幹線・高崎―長野間(旧長野新幹線)でも、開業は山形新幹線より5年遅い1997年10月までずれ込むとともに、並行する信越本線は「しなの鉄道」として経営分離された。同年3月には、やはりミニ新幹線の秋田新幹線も開業したが、在来線もJR東日本の傘下にとどまり、2つのミニ新幹線は大きな存在感を見せつけた。
山形新幹線が注目を浴びた要因は、技術的ハードルを越えたことだけではない。在来線の新たな有効活用策という位置付けから、国から補助金を引き出し、山形県とJR東日本などが工事や車両新造のため第三セクター会社を設立するといった取り組みもなされた。1993年には山形―新庄間の延伸構想が浮上、1997年には着工に至ったが、建設資金を県の外郭団体や地元金融機関がJR東日本に融資するなど、前例のないスキームをつくって実現にこぎ着けた。
ただ、ミニ新幹線は、線路の改良や車両開発に多くの費用を伴う半面、ミニ新幹線区間に限れば速度向上面のメリットは乏しく、利用者からも「遅い」と不評が漏れる。しかし、在来線をJRから経営分離する必要がない点、停車駅が在来線特急とほとんど変わらない点などをみれば「地元に優しい」新幹線でもある。
新庄駅はホールなどさまざまな機能を盛り込み、新しい駅の在り方を呈示した(筆者撮影)
沿線の各駅は、ホールなどの公民館的な機能や物販・飲食施設を組み合わせてリニューアルされた。さらには「上ノ山駅」を「かみのやま温泉駅」に改称したり、「さくらんぼ東根駅」という、当時としては斬新なネーミングの駅が誕生したりと、多くの話題を呼び、沿線ぐるみで、「まちづくりの拠点としての新幹線駅」という新たなモデルを提示した形になった。筆者は2000年から2002年にかけて、青森県八戸市で東北新幹線の開業準備の様子を取材していたが、当時、多くの人が意識し、話題にしていたのは、山形新幹線の沿線地域だった。
「置いていかれる」不安と不満
だが、山形開業から四半世紀の間に、沿線にはじわじわと不安、そして不満が溜まり続けてきた。山形県総合交通政策課が作成した資料によれば、1993年から2015年の間に、青森―東京間(714km)の所要時間は最短で3時間55分から2時間59分へ、仙台―東京間(352km)は1時間48分から1時間30分へ、長野―東京間(222km)は2時間51分から1時間20分へ短縮された。金沢―東京間(450km)は6時間36分から2時間28分への劇的な短縮をみている。
にもかかわらず、山形―東京間(360km)は2時間27分から2時間26分へ1分短縮されただけ……。
「このままでは置いていかれる。地域間競争に勝てない」という声を、山形県内では何度も聞いた。荒天や、カモシカなど野生生物との衝突による運休・遅延も年間、数百本単位で発生している。所要時間そのものよりも、運行の不安定さと、各地で進む東京への所要時間の「短縮」が、不安と不満の根源にある。ミニ新幹線という、地域経営的には安定した1つの形を編み出したが故に、四半世紀の間、「変わらずに済んだ、変われずにきた」事情が裏目に出た形だ。
加えて、太平洋側の高速・高規格鉄道や高速道路整備が進む半面、日本海側総体の交通インフラ整備が立ち後れている現状への批判も根強い。実際、講演の折、ミニ新幹線地域に我が身を置いてみると、700km以上の区間を3時間足らずで駆け抜ける東北新幹線「はやぶさ」は、フル規格新幹線への渇望を呼び起こす“魔性”を伴っているようにも見えた。
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