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ロシア・韃靼・ユーラシアスレ

1653とはずがたり:2022/03/11(金) 12:31:54

なお、ウクライナ・EUのこうした対応にもかかわらず、ロシアは結局、2016年からウクライナ産品に関税を課し(ウクライナ側も応戦)、またウクライナを欧米に適用している食品禁輸措置の対象にも加えました。その後、ウクライナとロシアは全面的な貿易戦争状態にあります(とは註:2016年には既にウクライナはロシア経済圏から離脱してたって事か。2014年のヤヌコービッチ政権が崩壊後のEU接近の中でロシアの決意は固まっていったということか。)。

ともあれ、このような紆余曲折を経て、2016年1月1日から、ウクライナ・EUのDCFTAは全面的に施行されました。それまではEU側が片務的に関税の減免を実施していましたが、2016年からはウクライナの側もEUに市場を開くこととなりました。

貿易は順調に伸びているか?

それでは、DCFTAの下で、ウクライナとEUの貿易は順調に拡大しているでしょうか? 図1に見るように、もともとウクライナの輸出に占めるEU向けの比率は、4分の1程度でした。それが次第に拡大し、2017〜2019年には40%の大台に乗るまでになりました。輸入についても然りで、EUのシェアは政変前は30%台、政変後は40%台と、拡大する方向にあります。連合協定を擁護する論者たちは、このようなシェア拡大をもって、DCFTAの成果を強調する傾向があります。

ただ、輸出入の実額を示した図3、4を見ると、やや印象が異なってくるのではないでしょうか。EUとの貿易は、政変後の危機的状況を背景に、2015〜2016年に大きく落ち込みます。その後、2019年にかけて、回復・増加に転じたことは事実です。しかし、ウクライナとEUの貿易自体が期待どおりに伸びているかと言えば、今のところ慎重な評価にならざるをえません(コロナに揺れた2020年の縮小はやむをえませんが)。図1、2でEUとの貿易比率が拡大しているのは、むしろ対ロシア貿易の激減が招いたものという側面の方が大きそうです。

図3に見るとおり、ウクライナからEUへの輸出で、伸びが目立つのは農産物・食品です。ウクライナは世界的な穀物およびヒマワリ油の輸出大国であり、EUはその主要な販路の一つです。ただ、穀物にしてもヒマワリ油にしてもグローバルな商品であり、どうしてもEUに輸出しなければいけないという性格のものではありません。EU向けの輸出条件が有利になったので、これまで他の市場に輸出していた穀物・植物油を、EU向けに切り替えたというだけのことであったら、ウクライナにとっての経済的恩恵は限定的です。

安い労賃を活かせるか

今日では、ウクライナは隣国モルドバと並んで、欧州で最も賃金水準の低い国となっています。本来であれば、EUとの連合協定が成立したことで、安い労賃を目当てに外資がウクライナに投資をしてくれて、ウクライナがEU市場向けの輸出加工基地になると期待したいところです。

しかし、現実にはそのような投資が大きく進展しているとは言えません。自動車用の電装品(ワイヤハーネス)の分野で、成功例がある程度でしょうか。もちろん、投資が思うように進まないのには、ウクライナの国情が不安定だったということもあるでしょう。それに加え、今日の欧州では、生産拠点が国境を越えて移転するというよりも、労働者が国境を越えて移動する度合いの方が大きくなっていることがあります。

実際のところ、ウクライナとEUとの間で、最も関係が深まっているのが、労働移民の分野と言えるでしょう。外国で働く出稼ぎ労働者が本国に送る送金を「レミッタンス」と呼びますが、ウクライナのレミッタンス受入額を四半期ごとに跡付けたのが、図5になります。以前は、ウクライナ国民にとって、ロシアが最大の出稼ぎ先でした(図5のCISがほぼロシアに等しい)。それが、2014年を境に、EU圏に働きに出るウクライナ国民が目に見えて増えていきました。ウクライナとEUが2017年5月にビザ免除協定を締結し、同年6月11日からウクライナ国民がEUのシェンゲン協定諸国にビザ無しで渡航できるようになったことも、その流れを強めました。

今や、ウクライナ国民は、欧州労働市場を底辺で支える存在になっていると言っても、過言ではありません。

EU統合路線は変わらず

2019年2月、ウクライナの議会に当たる最高会議は、ポロシェンコ大統領(当時)が提出したEUと北大西洋条約機構(NATO)へのウクライナの加盟路線をウクライナ憲法に明記する憲法改正法案を可決しました。その結果、憲法序文には、ウクライナ民族の欧州アイデンティティとウクライナの欧州・欧州大西洋路線の不可逆性に関する文言が加筆されましたた。また、第102条には、「ウクライナ大統領は、ウクライナのEUとNATOへの完全な加盟に向けた国家の戦略的方針の実現を保証する者である」との文言も追加されたのです(とは註:まあロシア的には許せんわなぁ。。)。


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