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ロシア・韃靼・ユーラシアスレ

131とはずがたり:2014/08/06(水) 12:03:44
>>130-131
 その後、極東開発を推進する国家プログラムがロシア政府によっていくつも作成され、その都度、日本側の関心を呼んだが、総花的に過ぎる内容や資金手当ての不足などでまともに実現されず、失望を買ってきた。

 この間、日本企業が協力するサハリンにおける2件の石油・天然ガス開発の進展とロシアでは初めてのLNG工場の稼働、また東シベリアからの太平洋パイプラインの敷設が実現し、石油・天然ガスの対露輸入が本格化して日露貿易は大きく拡大した。

 日本の中古車が大々的にロシア極東に輸出された時代もあった。しかし現状では、日本の経済界の大方の「ロシア極東」観と言えば、石油・天然ガスの供給源、その石油ガスを現地で加工するプラントの輸出先といった資源エネルギー関連ビジネスのほかには、事業環境が劣悪で人口がわずか600万人台と市場規模も極めて小さく、まともな事業を行える場所ではない、というのが率直なところだろう。

 では、ガルシカ極東開発相が始めつつある新しいロシア極東開発戦略とは、これまでとは何が違うのか。

… もう1つは、ガルシカ極東開発相を支えるチームの存在である。最も重要な役割を果たしているのが直接の上司であるトルトネフ副首相であろう。

 ガルシカ氏はチトフ氏の直系であって、トルトネフ氏から見て自分の個人的な子分ではない。それでもトルトネフ副首相はロシアでも有名な強い個性を持つ政治家でありながら、ガルシカ極東開発相には「やりたいことをさせる」姿勢に徹しているように見える。

 特に老獪な地方政府の首長からするとガルシカ氏はいわば軽量で未熟な若輩に見えるはずであり、自ら閣僚経験も知事経験もあり、重厚な政治家というイメージのトルトネフ氏が地方の首長に対する重石としてよく機能しているようだ。…

 しかし、新たに発動されつつある極東開発戦略が成功するかどうか、予断は許さない。極東開発の制約は非常に大きく、この開発戦略も我々から見れば、よくできているとは言え、まだ改善の余地がいくつもありそうだ。

 第1に、アジア太平洋市場における競争の本当の凄まじさをガルシカ極東開発相とそのチームが理解し、実感しているとは思えない。…

 第2に、ロシア極東開発の主要な問題は、開発促進区が解決すべき企業の立地環境にもあるが、それとともにソフト面を含む輸送インフラの抜本的な改善にある。…

 アジア太平洋市場は、アジア開発銀行が「シームレス・アジア」と唱うように、大量の物資、人員、資金を円滑に循環させるシステムを構築してきており、ロシア極東はその流れに完全に取り残されてきた。このシステムの一環にロシア極東の輸送システムが組み入れられない限り、極東経済とアジア太平洋経済が真に一体化して発展していくことにはならない。

 第3に、極東において地場産業を興し、雇用を増大させて定着人口の増加を目指すロシア政府の本来の目標と、極東を単に資源の供給源、物流の通過線と見がちな内外の企業の意図とのウィン・ウィンの関係をこの開発戦略を通じて本当に構築できるのか。…

 第4に、すでにその予兆が見えているが、もしこの開発戦略を通じてインフラの整備と規制緩和が進んだとして、極東の多くの地方で最も進出が進むのはおそらく中国企業になる。

 新たなインフラ投資先、労働力の移転先、資源の供給源として、中国にとってロシア極東は地理的に絶好の位置にある。地政学的にも産業連関的にも中国への依存度を抜本的に高めることが、ロシアの国益になるのか。極東開発戦略には何らかの地政学的なバランスの志向が必要になるのではないか。

 日本企業の中には、極東において停滞気味の事業案件の形成に向け、極東開発省の新たな動きを注視しつつ、連携できるところを模索する動きも見られる。




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