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ロシア・韃靼・ユーラシアスレ

1151チバQ:2019/03/29(金) 22:49:50
 ◇違和感を覚えた「勝者にとっての真実」

 クリミアで話を聞いてみると、次のことが分かった。本人の真意はともかくとして、編入に賛成したと答える市民が多かった一方で、自分の考えが第三者に聞かれることを恐れている人も相当数いるようだった。

 例えば、ある50代の女性に話を聞きたいと頼むと、まずは「記者証を見せてほしい」と求めてきた。その時には取材協力者の知人である私服警察官が私の近くにいたことに「何か」を感じたようだ。この女性のつぶやきが漏れ聞こえてきた。「この男はFSB(情報機関の連邦保安庁)にちがいない」。そうすると、文字通りに表情を取り繕ってから、クリミアの現状を褒め始めた。「何にも大きな問題はないと思う。物価も高くないし、作られたばかりの橋は素晴らしいし……」。私は旧ソ連圏を取材して累計6年を迎えるが、ここまで如実に当局に発言を聞かれることを恐れて取り繕う例は見たことがなかった。

 一方で多くのロシア系住民などはクリミア編入により「勝者」となった。彼らは自分たちが考える真実を訴えることに躍起になっている。そのような印象を拭えなかった。彼らが考える真実とは、以下のようである。

 14年2月のウクライナでは、親露派だったヤヌコビッチ大統領が反政権運動に耐えきれず、首都から逃亡し政権が崩壊した。親欧米派が権力を握ったことから、クリミアの人たちはロシア語を使い続ける権利などが奪われるのではないかと恐れた。だからクリミアが住民投票を経てロシアへの編入を決めたのは、自衛的な措置だった。ましてやクリミアは歴史的にロシアの土地である。

 「ぜひ真実を書いてほしい」「あなたが見たままの、話を聞いたままのクリミアを書いてほしい」「欧米の記者たちの取材に応じても、彼らは私の発言を違う趣旨で書くことが多いから」――。今回の取材を通じて、シンフェロポリの市議会議長や現地の政治評論家から、このようにも言われた。

 確かに現在のクリミアでは、表面的に平穏な生活が営まれているし、ロシア政府が橋や発電所の建設に取り組んでいる。多くの住民が編入を喜んでいたし、「すでに起きてしまったことは仕方がない」と現実を受け入れる住民も少なくなかった。これは紛れもない真実である。一方でロシアが半ば力でクリミアを奪ったことに対し、憤りを感じている人たちも少なくなかった。こちらも別の真実なのだ。

 自らが考える真実だけを振りかざし、クリミア編入の5年を正当化する主張を聞かされても、私は大きな違和感を抱かざるを得なかった。シンフェロポリの空を見上げても、灰色がどこまでも続いていた。【大前仁】


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