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ロシア・韃靼・ユーラシアスレ

1149チバQ:2019/03/29(金) 22:49:04
◇検問所を越えるとルーブルを使う世界に

 と、面白くもない会話を繰り広げているときだった。後に控えていた男性職員の表情が崩れてきた。にやにやしながら会話に入ってくる。

 「君の携帯電話の機種はどこの社だ?」

 はっ? 何で、そんなことを聞いてくるのか意図が読めない。と思ったのも一瞬だ。ああ、この人は日本に関する話をしたいのだな、と悟った。幸いにも胸のポケットに収まっているのは、機種を変えたばかりのソニー製の携帯だった。

 「ソニーだよ。Xperiaだ」と即座に答える。

 やっぱりなという表情を見せた男性職員だ。日本人は自国の製品を誇りに思っているのだろ。そんなメッセージをにじませてくる。旧ソ連圏では一般的に日本に対する好奇心や、技術力に対する尊敬の念が小さくない。かつてジョージア(旧グルジア)の国境地帯で警察官と会話したときにも「俺は日本でUWF(かつて存在したプロレス団体)の試合に出たことがある」と打ち明けられた。彼らにしても予期せぬところで日本人と会うと、日本の話題を話したくなるのだろう。この男性職員からの質問が続いた。

 「車はどこのブランドだい?」

 これも偶然だが、私はモスクワで黒のカローラに乗っている。

 「トヨタだよ」

 その答えを聞くと、男性の笑顔が止まらなかった。こちらは、さながら看守を喜ばせている囚人のような心境なのか。「面倒くさい」入境の手続きを前にして、職員との会話にホッとしていたのも事実だ。

 ガシャリ。女性職員が私のパスポートに押した「入境」のスタンプの音が響いた。晴れてロシアが実効支配するクリミアへと足を踏み入れた。国境警備隊の事務所を出ると、半月が雲間から顔をのぞかせていた。そして目の前には売店を兼ねたカフェが店を開けていた。スーツケースを引っ張り、店に入ろうとすると、路上の男性が声をかけてきた。

 「(ウクライナの通貨)グリブナから(ロシアの通貨)ルーブルに換金するよ」

 そうなのだ。ウクライナや国際社会が正当性を認めていなくても、クリミアではロシアの通貨が流通して5年がたつ。時計もウクライナ時間からロシア時間へと切り替えなければいけない。 5年前の3月、ウクライナ本土と切り裂かれて、ロシアに編入されたクリミアの現実が目の前に待ち構えていた。 

 ◇ウクライナ危機が変えた国際社会

 2014年2月に始まった一連のウクライナ危機は、冷戦後の国際社会を大きく変えた。力により国境を変更しない。この不文律を破ったことにより、ロシアは欧米諸国との関係を著しく損なった。欧州諸国もロシアを「一つの欧州」の屋根の下に迎え入れるという理想を捨て去った。

 そしてウクライナは自国の領土を無残に奪い取られただけではない。同じ年の4月には東部ドネツクとルガンスクの両州で戦闘が始まった。表面的にはロシアが支援する武装勢力とウクライナ軍の衝突とされているが、ウクライナ国内ではロシア軍が大々的に介入していると信じられている。やがて5年を迎える戦闘では、民間人を含めて1万3000人が亡くなっているが、収束の見通しは立っていない。

 私は2月末からの半月、ウクライナ各地を回った。キエフ、クリミア、東南部のマリウポリ、親露派組織が統治するドネツク、南部のオデッサ、西部のリビウ、そして再びキエフと。毎日新聞の紙面では「プーチンのロシア ウクライナ危機5年」と題した連載で紹介していく。そして書ききれなかった題材や、通常の記事では紹介しづらいエピソードについて書いていく。【大前仁】


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