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貧困スレ

806とはずがたり:2018/01/25(木) 19:19:21
>>805-806
 そのうえ近年では、社会全体が余裕を失い、これまで「高福祉高負担」を支持していた高所得層まで、そこから離れ始めた。武川の調査によると、2010年には7割近くあった「高福祉高負担」への支持は、15年には00年の水準である5割台まで下がり、かわって「低福祉低負担」への支持が上昇したという。

 この変化は、雨宮処凛(かりん)の感慨とも合致する。雨宮は09年の「年越し派遣村」には支持が集まったのと対照的に、12年には生活保護叩(たた)きが広がったことへの変化をこう述べる〈3〉。「多くの人がこの国の『格差と貧困』に麻痺(まひ)し、諦め、『そんなもんなのだ』と受け入れていく過程そのものに思えた」

 つまり問題はこうだ。もともと日本の福祉は、貧しい人の支持を得ていなかった。そのうえ近年は、社会全体が余裕を失うなかで、ますます福祉への支持が失われ、格差が拡大しているのだ。

 だが思うに、人々は格差と貧困を肯定しているわけではない。彼らが不信の目をむけているのは、福祉そのものではなく、本当に必要な人に恩恵がまわっていない現在の制度だ。それならば、まず制度の歪(ゆが)みを正すことが先決だろう。

 歪みを正すには、正確な現状認識をもたらす報道が必要だ。小林美希は保育士の待遇が悪いことを問題視し、東京23区内の私立認可保育所の財務諸表を調べ、「園長、事務長、用務員」の人件費率が異様に高い保育所、その保育所での活動以外に収入や補助金が転用されている保育所をリスト化した〈4〉。この調査報道は、23区だけで約85億円の公費が「本業」に使われていないこと、各種の歪みを是正すれば現在の補助金額でも保育士の待遇改善が可能なことを示している。

 働いて税や社会保険料を納めれば、それだけいいことがある。そのような「働いたら報われる」という実感が持てる制度への改革が急務だと大沢はいう。それは福祉だけでなく、日本の政治や社会への信頼そのものを取り戻す道だ。

     *

 〈1〉大沢真理・宮本太郎・武川正吾 座談会「本来の全世代型社会保障とは何か」(世界2月号)

 〈2〉西澤由隆 論文「世論調査による政治的格差の時系列分析」(http://www1.doshisha.ac.jp/~ynishiza/ynishiza2014/downloadables/jpsa16_NIshizawa_v160913_FINALa.pdf別ウインドウで開きます)

 〈3〉雨宮処凛「貧困は誰もが陥る可能性 『流行(はや)りもの』超え、構造解決を」(Journalism1月号)

 〈4〉小林美希「職業としての保育園」(世界2月号)

     ◇

 おぐま・えいじ 1962年生まれ。慶応大学教授。『生きて帰ってきた男』で小林秀雄賞、『社会を変えるには』で新書大賞、『〈民主〉と〈愛国〉』で大佛次郎論壇賞・毎日出版文化賞、『単一民族神話の起源』でサントリー学芸賞。


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