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芸術・美術・音楽

510とはずがたり:2015/06/12(金) 13:32:17
>>509-510
スポティファイは「大砲のない黒船」

 よって、スポティファイが国内で収益を上げるためには、邦楽ラインナップの充実は不可欠になる。しかしながら、現状の国内の選曲型サービスを眺めると、邦楽の曲数を100万以上揃えるには、ガラケー時代から10年以上にわたり「着うた」などの配信サービスを手がけてきたレコチョクの力を借りざるを得ない状況になっている。選曲型のフルサービスの月額料金が1000円前後で揃っているのは、そのためだ。14年にNTTドコモがレコチョクに出資してその筆頭株主に躍り出たのは、そうした事情を知った上での深慮遠謀があるのかもしれない。
 もしスポティファイが邦楽のラインナップを揃えてすぐに参入したいと思えば、どうしてもレコチョクと提携せざるを得ない。音楽ソフト会社と個別に交渉することもできるが、時間とコストがかかりリスクが高い。

 しかも、広告付きであってもスポティファイ流の無料配信では、CDが売れなくなったりダウンロード収入が落ちる懸念があるため、音楽ソフト会社が難色を示すことが予想される。スポティファイがレコチョクと組んだ場合、有料会員は月額1000円前後で邦楽でもフルサービスを受けられるとしても、無料会員が聴ける邦楽の曲数は条件をつけられて大きな制約を受け、無料の破壊力は他社が恐れるほどにはならない。それでは、「大砲のない黒船」といえよう。
 洋楽だけで満足できる無料会員は、音楽業界関係者が思っているほど多くはない。3000万曲以上といってもローカルなセミプロ音楽家の曲や、アフリカや中南米やケルトなど「ワールドミュージック」、60年代以前の古い曲もすべて含めた数字であり、一般的な国内消費者は誰も聴かないような曲が8割以上を占めることになるといわれている。ビジネスとして見た場合、洋楽と邦楽では事情が異なる。若い頃に洋楽をさんざん聴いて脳に刷り込まれた50代以上や一部マニアの声に惑わされると、状況を見誤りかねない。

音楽配信サービスは「構造不況業種」

 ソニーは12年7月、定額制音楽配信サービス「ミュージック・アンリミテッド(Music Unlimited)」を開始した。業界最多の約2000万曲を揃えていたが15年3月にサービスを終了し、3年足らずで消えてしまった。もっともスポティファイと提携して「プレイステーション・ミュージック(PlayStation Music)」を立ち上げたと発表しており、決してあきらめたわけではない。また、ソニー・ミュージックはLINE MUSICに出資しており、間接的なかたちでこのマーケットへの参入を図っている。
 一方、ソーシャルゲーム大手のDeNAは13年3月、定額制音楽配信サービス「グルービー(Groovy)」を始めたが、1年後の14年3月にほとんど撤退してしまった。

 そもそも、国内の音楽配信のマーケットは全体として縮小傾向にある。日本レコード協会の統計によれば、有料音楽配信の市場規模は09年は910億円あったが、14年は437億円で、5年で半分以下に縮小してしまった。誤解されがちだが、決して音楽配信がCDに取って代わったわけではないのだ。
 統計の有料音楽配信には定額制だけでなくアップルの「iTunes Store」のような1曲ごとの販売も含まれているが、マーケットが半分になってしまった大きな原因として考えられているのは、パソコンでもスマホでも無料で視聴できるYouTubeやニコニコ動画のような動画サイトの存在である。音楽関連の動画も多数あり、検索すれば邦楽も洋楽も、著作権法上で合法なものも、CDやプロモーションビデオをコピーした非合法なものもあふれ返っている。音質など品質を度外視すれば、好きな音楽を無料で聴けてしまう。そのように、無料視聴がはびこってCD販売もダウンロードも苦戦している中で有料音楽配信のサービスを展開するのは、ビジネスとしては厳しいものがある。

 ある業界が「戦国時代」といわれる場合、たいていは成長しているマーケットを狙って異業種、新興企業も含めて新規参入が相次ぐ「群雄割拠」の状態になり、ふくらむパイを奪い合う競争激化の状況を指している。ところが音楽配信全体のマーケットの実態は、「タダには勝てない」と撤退する企業も出ている苛酷なサバイバルゲームで、いってみれば「構造不況業種」なのである。
 AWAは5月27日に参入を果たし、ユーザーを着々と獲得しているが、スポティファイが「近々日本上陸か」と言われ続けながらいまだにアナウンスがなかったり、LINE MUSICが予告を流すだけでサービスの詳細を明らかにしていないのは、音楽配信サービスというビジネス全体の右肩下がりの状況から脱出する突破口をいまだに見いだせていないからなのか。定額制としてどんな事業展開を行えば生き残ることができるのか、慎重に様子をうかがっているのかもしれない。
(文=寺尾淳/ジャーナリスト)


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