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西洋史
107
:
とはずがたり
:2019/01/06(日) 19:11:48
>>106
アッパー・ミドルの「条件」
階級を考える際に気をつけなければならないのは、ここまで強調したような収入だけで全てが語れないということである。
…小説『ハワーズ・エンド』には、従来的なアッパー・ミドルであるシュレーゲル姉妹と、どうやら植民地における商売で財をなしているウィルコックス家が登場する … ウィルコックス家は桁外れ(おそらく数万ポンド)の収入を得ていると考えられる。
ところが、それでもあくまで、社会的な階級という意味ではシュレーゲル家の方が「上」なのである。それは彼女たちが音楽や文学といった文化資本をもっている(ドイツ系であることがそれを強調する)というだけではなく、彼女たちが「商売」に従事せず、遺産から生じる利子や株の配当で生活する、「金利生活者」であることに由来するのだ。
…
階級は変化する
ここまでは、階級社会を、絵を描くようにして示すことができるものとして語ってきた。だが、実は、ある時代(この場合は20世紀初頭)の階級社会をいわば輪切りにして図解することは、それはそれで社会を理解することにつながるけれども、決定的に社会を見えなくもする。つまり、前回の終わりに示唆したように、階級社会は変化しつづけるものであり、その変化をとらえる方法を私たちは学ばなければならない。
というのも、階級は歴史的に変化していくのだという当たり前のことを超えて、「変化すること」そのものが近代の階級の重要な構成要件なのである。どういうことだろうか?
イギリスの文学批評家・小説家で、カルチュラル・スタディーズ(文化研究)の始祖であるとされるレイモンド・ウィリアムズに『キーワード辞典』(1976年)という著作がある。これは、社会を客観的に記述するための専門用語集ではなく、社会の中に存在する重要な言葉=キーワードとそれをとりまく社会との関係を論じる著作である。
ある言葉の意味の変化が重要な形で社会の変化と関係している──このウィリアムズの発想は、階級を考える上でも重要だ。「階級(class)」の項目で、ウィリアムズは以下のように述べている。
「『階級』という言葉は、社会的分割を表すより古いさまざまな名称に取って代わるであろう言葉として導入されたのだが、その導入の本質的な歴史は、社会的な地位は単に相続されるものなのではなく、作られるものだ、という意識の増大に関連するものだ」
…
オーウェルと階級からの疎外
最後に、自らを「ロウワー・アッパー・ミドル」と定義したオーウェルに立ち戻りたい。オーウェルが自分の階級をこのように細かく分類したことには、単なる階級への執着だとか、同時代の階級を図として正確に記述したいという以上の意図があったのではなかろうか。その意図とは、「変化」の表現である。
オーウェルの父はインド勤務の政府役人で、年収500ポンド、アッパー・ミドルとして一家を養うにはぎりぎりの収入であった。『ハワーズ・エンド』で独身女性のマーガレット・シュレーゲルが600ポンドを得ていたことを想起されたい。そのような中、オーウェルはイギリスの「エスタブリッシュメント」の中核ともいうべき、パブリック・スクールのイートン校に奨学生として通う。
そこで、金持ち学生たちに囲まれて一種のスクール・カーストのトラウマ的な経験をしたオーウェルは、アッパー・ミドルの基本的な進路であるオクスフォードまたはケンブリッジ大学に進学するために必要な奨学金を得ることができず、政府の官吏となり、ビルマで警官となる。だがそこで帝国主義の暴力の現実を目にした彼は、職を捨ててパリとロンドンの貧民街に身を投じ、その体験を書く物書きとなったのである。
オーウェルの人生は、ヴィクトリア朝期に隆盛を誇った旧来的なアッパー・ミドルの没落のタイミングにあたっている。オーウェルの家族自体、時代が時代ならもう少し余裕をもってオーウェルに教育をほどこせたかもしれない。だが彼は奨学生となってパブリック・スクールで他の金持ち学生との格差を痛感し、しかも最終的にアッパー・ミドルの道を踏み外していく。
オーウェルが、自分はロウワー・アッパー・ミドルだと言うとき、そこにはそのような経験のすべてが込められている。…
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