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Tohazugatali Book Review

297名無しさん:2015/08/23(日) 15:07:20
>>296

楽天的でいいじゃないか
 伊集院 生きるということは、多分にそういうものなんだよ。悪いことをして隠れていたら、そこでたまたま埋蔵金の地図を見つける、ということが往々にしてある(笑)。話を聞いていると、あなたはとても楽天的なのかもしれないな。でも、小説家は楽天的じゃなきゃダメだと、私は思う。

 東山 そうですか。

 伊集院 そうでもなきゃ、にっちもさっちもいかない小説を書いて「もしかしてこれ、ベストセラーになるんじゃないか?」なんて思えないし(笑)。

 東山 たしかに。僕も、悲観的なふりをした楽天家かもしれません。自分の精神が壊れるところなんか、想像できない。

 伊集院 そのくらいでないと、開き直って小説は書けないと思うね。たぶんあなたは、次は全然違うタイプの作品を書くんじゃないかという気がするんだけど……。

 東山 はい。次に考えているのはSFです。

 伊集院 読者はたぶん『流』と同じタイプのものを求めると思うよ。それで「前のものと比べるとちょっと」とか、失礼なことを言うんだ(笑)。

 東山 おぉーっ。

 伊集院 それに対しての私の返し方は「読者は王様ですから」。でも、そこには裸の王様も含まれている(笑)。だから、媚びすぎてもしょうがないんだな。作家は一人で考えて一人で決着をつけていかないといけない仕事だし、小説は常に変化し続ける生き物だから、次に書く作品がいつも一番新しく、厄介なものだと思っておかないといけない。

 東山 そうですね。自分の中で準備ができたらまた、『流』に連なるものを書くつもりです。

 伊集院 それは甘い(笑)。ゆっくり準備してないで、もっと追い込まれて、書き続けてください。

 (構成/大谷道子 写真/熊谷貫)

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いじゅういん・しずか/1950年山口県生まれ。CMディレクターを経て、'81年短編小説『皐月』でデビュー。'92年『受け月』で直木賞を受賞。現在は同賞の選考委員を務める。近著は『無頼のススメ』(新潮社刊)。本誌上にて『それがどうした 男たちの流儀』連載中
ひがしやま・あきら/1968年台湾生まれ。5歳まで台北で過ごし、9歳の時に日本へ。福岡県在住。'02年『タード・オン・ザ・ラン』で第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞を受賞。'03年同作を改題した『逃亡作法TURD ON THE RUN』でデビュー。『流』で第153回直木賞受賞
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 『流』
著者:東山 彰良 講談社:1600円
1975年、偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。17歳。無軌道に生きるわたしには、まだその意味はわからなかった。大陸から台湾、そして日本へ。歴史に刻まれた、一家の流浪と決断の軌跡。台湾生まれ、日本育ち。超弩級の才能が、はじめて己の血を解き放つ! 友情と初恋。流浪と決断。圧倒的物語。

 「週刊現代」2015年8月15日・22日合併号より

週刊現代


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