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重工業・造船・航空機スレッド

569とはずがたり:2015/07/21(火) 13:02:42
>>568-569
 もちろん中国の強みは異例の取引を持ちかける外交力だけではない。中国の高速鉄道は2007年に日本、ドイツ、フランス、カナダの技術を導入し誕生。海外から供与された技術を輸出することは禁止されていたはずだが、その数年後には「自主開発の国産高速鉄道」を売り込んでいる。中国国内の高速鉄道も雨後のタケノコのように建設が進み、今や営業距離は1万キロ超。日本の3倍を超える自称「世界一の高速鉄道大国」となった。

 意外かもしれないが、建設ペースの速さだけではなく安全性も評価されている。2011年に40人が死亡する温州高速鉄道事故があったが、事故原因を調査した結果、高速鉄道の設備そのものに問題があったわけではないことが判明している。もっとも、事故原因は落雷で信号機が故障した際の閉塞措置(一定区間内に一編成までしか列車を入れないようにして安全を確保する仕組み)に失敗していたという、鉄道運営の基本の「キ」ができていなかったという残念な話ではあるのだが。それはともかく、温州以外では大きな事故もなく、安全性についても日本でイメージされているより高い評価を受けているのが現状だ。

 クーデターによるインラック政権の崩壊に伴い「大米換高鉄」はなかったものとされたが、タイ軍政も中国とは良好な関係を維持している。そのかいあって、2014年12月に中国はノンカイ・ラヨーン間、バンコク・サラブリ間の鉄道建設を受注している。

日本の巻き返しの理由とは?

 あるいは中国がタイの高速鉄道建設を“総取り”するのではとの憶測まで広がっていたが、今回、バンコク・チェンマイ間路線の受注で日本が大きくリードした。日本の巻き返しは何によってもたらされたのか。

 今年2月にタイ軍政のプラユット首相が日本を訪問した際、東京・新大阪間の移動で新幹線を利用、高く評価している。バンコク・チェンマイ間路線は台湾に続く世界2例目となる新幹線方式の輸出が有力視されていることを考えれば、日本の新幹線の「品質」が首相の心を動かしたのではないか……。

 と想像するとなにやら美しい物語ができあがるのだが、残念ながら決定打となったのは美しさのかけらもないお話だ。昨年12月の合意後、タイと中国は建設計画の詳細について協議を重ねてきたが、最大の課題となっているのが建設資金だ。中国は利子2%、20年間返済で打診したが、タイ側は高すぎるとの答え。融資条件を続いてはなお交渉が続いている。

 一方、日本が受注するバンコク・チェンマイ路線は120億ドル(約1兆4800億円)の建設費が想定されている。資金調達の詳細は未定とはいえ、タイ側は利子1%という低利のODAに期待を寄せている。今回の件に限っては日本が札束の力を見せたというところだろうか。

 そもそも旅客専用高速鉄道は採算が厳しい。台湾新幹線も巨額の累積赤字に苦しみ、減資後の再増資が決まった。高速鉄道の建設を続ける中国鉄道総公司も累積債務は3兆7400億元(約74兆円)に達し、採算性は疑問視されている。うがった見方をすれば、中国は昆明・シンガポールをつなぐパンアジア鉄道の主線となるノンカイ・ラヨーン線(こちらは貨物との兼用)はキープし、建設費が高額で採算が厳しいチェンマイ・バンコク線を放棄したという見方もできる。

 新幹線輸出の報は喜ばしいかぎりだが、話はそれだけでは終わらない。資金調達はどうなるのか、運営の責任はどこが取るのかも重要だ。中国との競争に勝つためとのめりこみ、ジョーカーを引かされてしまう……この悲惨なシナリオを回避できるのか、日本は冷静さと智慧を問われている。


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