破棄対象とされたのは、米ニューヨーク(New York)の動物園で雄のペンギン2匹が赤ちゃんペンギンを育てた実話に基づいた「And Tango Makes Three」(邦題:タンタンタンゴはパパふたり)、異性愛者や同性愛者、異人種間カップル、シングルマザーなどに養子にとられ育てられた子どもたちを描いた「The White Swan Express」、同性カップルなどさまざまな家庭形態を描いた「Who's In My Family」の3作品。
この決定について、同国の芸術・文学関係者らは「焚書(ふんしょ)」や検閲に等しい行為だと非難し、NLBのボイコットを呼び掛けたり、NLB主催行事への参加を取り止めたりする行動に出ている。シンガポール内外の書籍を扱うオンライン書評サイト「シンガポール・レビュー・オブ・ブックス(Singapore Review of Books)」も、本を破棄するというNLBの決定について「一線を越え、本を燃やして葬り去る恐怖の域に達している。そこからは何の希望も生まれない」と表明している。
13日には保護者らを含む約400人が図書館で、破棄対象となった3作品を自分たちの子どもに読み聞かせる抗議集会を開いた。さらに16日には同国最高峰の文芸賞「シンガポール文学賞(Singapore Literature Prize)」の審査員3人が、NLBの計画に抗議して辞任した。
こうした中、シンガポール・メディア開発庁(Media Development Authority、MDA)は16日、AFPに宛てた声明で、1950年代から続く米国の長寿コミックシリーズ「ライフ・ウィズ・アーチー(Life with Archie)」の中の「アーチー:結婚生活 第3巻(Archie: The Married Life Book Three)」について、同国の「社会的規範」に背いているとして、今年3月に発禁処分としていたことを認めた。
問題とされた児童書3作品のうち、ニューヨークの動物園で赤ちゃんペンギンを育てる2羽の雄ペンギンの実話を描いた「And Tango Makes Three」(邦題:タンタンタンゴはパパふたり)と、同性愛カップルやシングルペアレントに引き取られた子どもたちを描いた「The White Swan Express」の2作品について、同国のヤーコブ・イブラヒム(Yaacob Ibrahim)情報通信相は、児童書コーナーから一般コーナーに移動するよう命じた。一般コーナーで親が子どものためにこの2作品を借りることは問題ないとされた。
一方、残る1作品で、同性愛カップルを含め様々な家族の形態を描いた児童書「Who's In My Family」は、国立図書館委員会(National Library Board)によってすでに破棄された。