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化学・薬品産業総合スレッド

1370とはずがたり:2014/05/19(月) 11:06:25
>>1369-1370
そこで研究チームは今回、気液界面に存在する化学種を選択的に検出できる新しい実験手法を用いて、研究を進めた。その結果、気液界面で起こるフェントン反応[Fe(II)+H2O2]、また「フェントン様反応」の[Fe(II)+O3]のメカニズムの解明に成功したのである。

「ネブライザー(霧吹き)」によって塩化鉄(II)(FeCl2)を含む水のマイクロジェット(液体の噴流)を作り、その垂直方向から過酸化水素ガス(H2O2)またはオゾンガス(O3)を吹き付ける。鉄イオンとこれらの反応性ガスの反応によって、気液界面部分に生成する中間体・生成物を瞬時に質量分析法で検出するというわけだ(画像3)。

今回の実験手法には、ほかの手法にはない以下の3点の特徴があるという。

水の界面に生成する化合物を選択的に検出できること
非常に短いタイムスケール(1万分の5秒以下)で生成する中間体・生成物を検出できること
高感度なために低濃度(1000万分の1モル濃度程度まで)の化合物を直接検出できること
としている。

その結果、Fe(II)と過酸化水素またはオゾンの反応は、水中での同様の反応と比べて約1000〜1万倍速く進むことが判明。またこれらの反応によって瞬時に生成する四価鉄Fe(IV)=O中間体と三価鉄Fe(III)を直接検出することにも成功した(画像4〜6)。

また塩化鉄(II)を含むマイクロジェットに・OHラジカルの捕捉剤である「tert-ブチルアルコール」を大過剰[塩化鉄(II)の100倍の濃度]加えても、これらの生成物は消失しないことも確認されている。これは、同実験条件下では・OHラジカルは生成していないことを意味するという。

まとめると、今回の実験の条件下における気液界面のフェントン反応は、(1)液中に比べて千〜1万倍速く進む、(2)四価鉄Fe(IV)=Oと三価鉄Fe(III)を生成する、(3)・OHラジカルを生成しない、の3点が明らかになった。

通常、二価の鉄イオンは水中で六つの水分子に囲まれることで安定に存在しているが、水の界面では水分子そのものが不足しているか、もしくは水のそのような配位構造が歪んでいるために、過酸化水素やオゾンなどの反応物が鉄イオンの中心部に入りやすくなっているためであると考えられるという。

今回の結果はこれまでに想定してこなかったものであり、さまざまな分野に大きなインパクトを与えることが予想されるとする。例えば、大気中の雲の水滴界面では過酸化水素と鉄イオンが予想よりも速く反応してFe(IV)=Oを生成するため、これまでの・OHラジカル生成のみ用いてきた大気モデルの再構築が必要になるとした。

また、生体内では細胞膜や脂質などの多くの疎水性物質(油や空気などのように、水に溶解しにくい、あるいは水と混ざりにくい物質のこと)がある。これらは水と接触しているため、その境界相で起こるフェントン反応は気液界面と同様に想定以上に速く進み、Fe(IV)=Oを生成する可能性があるとする。

さらに、Fe(IV)=Oは・OHラジカルとは異なる独自の反応性を持つため、生体内の水の界面で未知の働きをしている可能性があるという。そのため、フェントン反応を金属ナノ粒子と組み合わせることで、ナノ粒子-水の界面を積極的に用いた新しいタイプの水の浄化システムが開発される可能性があるとする。

今回の研究では空気-水の気液界面におけるフェントン反応のメカニズムが解明された形だ。今後は空気以外の疎水性物質である細胞膜やナノ粒子などで同様の反応が起こるかどうかを確かめる必要があるという。現在、そのような研究を計画中とした。


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