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Tohazugatali Economic Review

2021とはずがたり:2019/12/10(火) 20:40:04
>>4019-4021
労働組合の影響力の低下など、社会規範の変化仮説についても、イノベーション仮説やグローバリゼーション仮説と切り分けることは難しい。利益が上がっていても、労働組合が弱体化し、資本市場からのプレッシャーで、従業員のサラリーを簡単に上げることができなくなっているのは、間違いなく社会規範の大きな変化が影響している。ただ、資本市場からのプレッシャーに経営が大きく左右されるようになっていることは同時に、グローバリゼーションの大きな影響とも言える。また、非正規雇用を増やし人件費を抑えること自体が社会規範の変化であると同時に、経営イノベーションとも言える。

…市場参加者好みの、ゴルディロックス・ストーリー(とは註:ゴルディロックスの原理 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%8E%9F%E7%90%86 経済の緩やかな持続的成長と低インフレ率を言う。この場合、市場親和的な金融政策が可能になる。ゴルディロックス市場は、消費財の価格がベア市場 とブル市場の価格の間にあるときに可能になる。)がしばらく続く可能性がある。

…ちろん、ゴルディロックス・ストーリーというのは、後知恵で見ればまやかしとなる可能性が高い。…支出性向の低い経済主体の所得が増え、支出性向の高い経済主体の所得が抑制されることは、貯蓄と投資を均衡させる自然利子率の低下をもたらし、金融政策の有効性をさらに低下させる可能性もある。元日本銀行理事の早川英男氏は、後述するオーター教授のスーパースター企業仮説を元に、市場集中度の高いIT企業の出現によって、貯蓄が積み上がり自然利子率の低下で、金融政策の有効性が低下する可能性を指摘している。

…リスク資産はもう十分に割高だが、さらなる資産価格上昇を正当化するような理論が語られ始めていること自体が金融不均衡の蓄積が始まっていることの現れという可能性もある。

最後。労働分配率の低下を説明する最近話題の理論は、MITのオーター教授らのスーパースター企業仮説である(とは註:スーパースターの経済学はそもそもシカゴ大の労働経済学者のSherwin Rosen「スーパースターの経済学」1981年)。…IT独占企業の出現が労働分配率の低下をもたらしていると論じている。…高いスキルを持つ限られた従業員は、多くの場合、同時に株主でもあり、高い所得を獲得している。…

鶴光太郎『労働分配率低下の“真犯人”「スター企業」の興隆主因か』日本経済新聞・経済教室 2017年9月14日

早川英男『スーパースター企業が招く長期停滞』週刊東洋経済・経済を見る眼 2017年9月16日号

ブランコ・ミラノヴィッチ著、立木勝訳『大不平等 エレファントカーブが予測する未来』みすず書房 2017年

Autor, D., Dorn, D., Lawrence F.K., Patterson, C., and Van Reenen, J.(2017),“The Fall of the Labor Share and the Rise of Superstar Firms”, NBER Working Paper No.23396

Elsby,M.,Hobijn,B.,andSahin,A.(2013),“The Decline of the U.S. Labor Share”, Brookings Papers on Economic Activity, vol47,no.2,pp.1-63

Karabarbounis,L.,Neiman,B.(2013),“TheGlobalDeclineoftheLaborShare”,NBERWorkingPaperNo.19136.


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