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Tohazugatali Economic Review

1999とはずがたり:2019/10/09(水) 12:36:16
>>1998-1999
日本は設備投資を積極果敢に行っているものの、その年の所得にしかなっておらず、将来の収益につながっていない。つまり日本の設備投資は有効に活用されていないのだ。これはマクロ的なデータなので、個別企業の様子を示したものではないが、具体的なケースは容易に想像できる。最初に頭に浮かぶのはシャープのような事例だろう。

シャープはもともと、家電を得意とする消費者向けの電機メーカーだったが、本格的に液晶デバイス事業への転換を図り、液晶関連の生産ラインを大幅に拡大した。ところが、液晶の価格破壊が一気に進んだことから、同社は巨額の設備投資負担に耐えられなくなり、巨額赤字を連続して計上。2015年3月期には累積の損失が1兆円近くに達し、経営危機に陥った。

液晶がもはやコモディティ(汎用品)となっており、一気に価格破壊が進むことは業界の誰もが認識していたはずだが、なぜかシャープは設備投資に邁進し、大方の予想通り、液晶事業は巨額の損失をもたらした。

シャープが行った数兆円の設備投資は、投資したその年に限っては、購入した資材や支払った人件費などを通じて経済に貢献したかもしれないが、十分な収益を生み出していないため、その後の経済成長にほとんど寄与していない。シャープの例は極端にしても、こうしたムダな設備投資があちこちで行われているのだとすると、設備投資全体の効率は大きく低下する。日本はまさにこうした状況にあり、これが低成長の原因となっているのだ。

有能な経営者をトップに据えるしか解決方法はない
安倍政権は、日本企業が設備投資に対して消極的であることが成長を阻害しているとして、企業の内部留保を問題視。これを取り崩して設備投資を増やすよう何度も経済界に要請してきた。これに加えてGDPの計算方法を変更し、中間生産としてGDPにカウントしていなかった研究開発費をGDPに参入するなど、設備投資を重視する姿勢を鮮明にした。

これまで計上していなかった費用を設備投資に算入すればその分だけ名目上のGDPは増えるのは当たり前だが、すでに投資して効果が得られなかった費目を設備投資にカウントし直したところで、個人消費や輸出が増えるわけではない。設備投資の金額が大きくなった分、個人消費や輸出の割合が低下し、投資効率という点ではむしろ悪化するという皮肉な結果となっている。

状況を整理すると、日本の設備投資は深刻な問題を抱えており、これが全体の成長を阻害しているのだが、根本的な問題は「額」ではなく「質」にある。そうだとすると、内部留保課税や設備投資減税といった施策を実施して投資総額を増やしても、ムダな投資が増えるだけで、長期的な成長には寄与しない。

経済学の世界では常識的な話だが、どの設備投資に効果があるのか、政府が事前に予見することは不可能である(これが実現可能なのかという学術的な議論はかなり以前から存在しているが、予見は不可能という形で決着している)。そもそも、国会議員や公務員にそのような資質があるならば、彼等に企業を経営させれば、半永久的な成長が実現できるはずだが、当然、そのようなことはあり得ない(むしろ彼等はもっとも企業経営に向いていない)。

効果的な設備投資を実現する唯一の手段は、適切な市場メカニズムを通じて、有能な経営者を企業のトップに据えることである。政府にできることがあるとすれば、ガバナンス改革を強化し、国民の経済活動を貯蓄から投資にシフトさせることで、企業の行動原理を変化させることだ。その意味では、アベノミクスの中で唯一、効果を発揮しているともいえるガバナンス改革については、もっと強力に推し進めていく必要があるだろう。

結局のところ、日本経済を復活させるカギとなるのは、企業経営という個別の課題解決であり、その原動力となるのは、最終的には国民一人ひとりの経済行動ということになる。


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