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Tohazugatali Economic Review

1693とはずがたり:2016/06/27(月) 22:49:29

 また日本では、サラリーマン、自営業者、パート社員などの属性によって異なる社会保険制度に加入するが、スウェーデンは国が一括管理するシステムなので、企業は労働者を雇えば属性にかかわらず一律の社会保険料の事業者負担分を収めることになる。こうして、無期雇用と有期雇用、フルタイムとパートタイムにかかわらずすべての労働者を同じ「身分」として扱うことが可能になるのだ。

 各業種・職能別に団体協約が結ばれ、勤続年数や職務内容、経験、教育水準、職階ごとに細かな賃金水準が決められるため、結果として男女の賃金格差も小さくなる。同じ仕事の場合、女性の給与水準は男性の92%とほとんど遜色はないが、政府はこの8%が「説明できない賃金格差」すなわち性差別の結果だとして、2001年から企業の「賃金調査」を義務化した。

 賃金調査は従業員の給与が経験や勤続年数、職務内容や職階に基づいた体系的なものかどうかを示すもので、そこで差別の疑いがあれば司法機関のひとつである平等委員会に訴えることができ、差別と見なされれば雇用主に罰金が課せられる。

スウェーデンでは、M字型カーブがまったくない
 労働力率を比較すると、日本では男性の85.2%に対し女性は62.3%とかなりの開きがあるが、スウェーデンは男性81.5%、女性77.0%とほとんど差がない(2008年)。さらに日本の年齢階級別労働力率を見ると、女性は結婚・出産・育児を理由に労働市場からいったん退出し、育児が一段落すると労働市場に復帰するため、20代後半から30代にかけて比率が落ち込む「M字型カーブ」が顕著だが、こうした現象はスウェーデンではまったく見られない。スウェーデンは、男女を問わず「誰もが働くことが当然の社会」なのだ。

 女性の社会進出を大きく推し進めるきっかけとなったのが、1971年に導入された個人単位の課税だ。それまでスウェーデンも日本と同様に夫婦(世帯)単位で課税が行なわれていたが、夫の所得が高いと妻が働いて追加所得を得るメリットが小さくなる問題があった。

 個人単位の課税だと、妻の所得に対する課税額が夫の所得に依存することがなくなった。日本では妻の年間所得が103万円を超えると夫が受ける配偶者控除が減額され、130万円を超えると健康保険の被扶養者の適用が受けられなくなるが、こうした制度も当然、スウェーデンにはない。また年金の受給額も個人単位で計算されるため、専業主婦を長く続けていると高齢になってからの年金受給額はわずかなものになる。スウェーデンの女性にとって、社会に出て働くことは死活問題なのだ。

 スウェーデンでも女性の働き方は、フルタイムよりもパートタイムが一般的だ。だがパートタイムでは男性とのあいだに生涯賃金や将来の年金額で格差が生じるため、政府はパートタイムの女性をフルタイムに誘導したいと考えている。そのために2007年から導入されたのがタックスクレジット(勤労所得税額控除)で、長い時間働く(所得が多くなる)ほど税率が低くなる。これによって、日本円換算で年収130万円程度の低所得者層は実効税率が8.7ポイント低下し、年収330万円程度の労働者で実効税率が6.8%下がった。

 女性も働かなければ年金を受け取れない以上、子育ての負担はできるかぎり社会で支援する仕組みがつくられている。出産前の各種手当はもちろん、育児休業保険は男性も積極的に活用するよう求められる。子どもが1歳半から2歳になると保育施設に通いはじめるが、こうした就学前保育所は(市に相当する)コミューンが運営し、費用の6分の5はコミューン税(市税に相当)を主とする行政の予算で賄われるため自己負担はわずかだ。

 子ども関連費用は原則無料で、18歳以下なら外来・入院を問わず医療費はかからない(歯科も無料なので成人になるまでに歯の矯正を済ませる若者も多い)。教育費用は教材費を含めて無料(ただし学校からの貸与で一般には使いまわし)で、一部に給食費を徴収するところがあるくらいだ。子どもを持つ家庭の経済的負担を軽減するため、所得制限なしに、国内に居住する16歳未満の子どもを持つ親は子ども1人あたり月額1050クローナ(1万3400円)の児童手当を受け取り、少子化対策として複数の子どもを持つ親に対しては、子どもの数が多いほど給付額が増える多子加算ボーナスがある。こうしたさまざまな施策の効果もあって、スウェーデンの合計特殊出生率は1.94(2009年)と、日本(1.37)よりずっと高い。

 ここまでスウェーデンの雇用政策を見てきたが、日本とのあまりのちがいに愕然とするのではないだろうか。日本からも多くの労働組合関係者が北欧に視察に行っているが、最初は意欲的なのだが、帰国する頃になるとみな口が重くなり「こんなのは参考にならない」「見なかったことにしよう」といいはじめるという逸話は、日本の北欧研究者のあいだでよく知られている。


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