トマ・ピケティというフランス人の左派のスターが現れた。2014年3月に発刊された、698頁もある彼の著書 『21世紀の資本』“CapitalintheTwenty-FirstCentury”(Harvard University Press)が米国でベストセラーになっている。ニューヨークタイムズで特集が組まれ、辛辣なクルーグマンが「彼の知性が羨ましい」とまで賞賛している。マンキューやロゴフなど、共和党寄りの経済学者もその分析を評価している。
ただし、ピケティの主張は、ノーベル経済学賞を受賞したサイモン・クズネッツの「経済発展の初期には所得不平等度は拡大するが、やがて平等化する」という、よく知られた議論とは反対である。ピケティは、それは戦後から1980年代まで続いた偶然にすぎないとする。図はCapital in the Twenty-First Centuryから引用したものだが、米国の所得上位10%層の全所得に占める比率は戦前の状況に戻っている。ピケティは、平等化が進んだ時代は戦後から80年代までに限られているという。